1: 2020/12/07(月) 20:36:44.119
女「高い……ここから飛び降りたら苦しまずに氏ねるよね」
女「氏のう……」
ステラーカイギュウ「およしなさい」
女「誰!?」
ステラーカイギュウ「あなたという命が絶滅してしまいます。命を粗末にしてはいけません」
女「なにこれ……でかっ! アザラシ……? いくらなんでも大きすぎない……?」
ステラーカイギュウ「おっと、サイズはもっと小さくしておいた方がよさそうですね」シュルシュル…
ステラーカイギュウ「私、ステラーカイギュウと申します」
女「なにそれ……?」
女「氏のう……」
ステラーカイギュウ「およしなさい」
女「誰!?」
ステラーカイギュウ「あなたという命が絶滅してしまいます。命を粗末にしてはいけません」
女「なにこれ……でかっ! アザラシ……? いくらなんでも大きすぎない……?」
ステラーカイギュウ「おっと、サイズはもっと小さくしておいた方がよさそうですね」シュルシュル…
ステラーカイギュウ「私、ステラーカイギュウと申します」
女「なにそれ……?」
2: 2020/12/07(月) 20:38:23.068
リョコウバト「せやせや」
3: 2020/12/07(月) 20:40:33.676
ステラーカイギュウ「あ、ステラーカイギュウをご存じでない?」
女「申し訳ないけど……初耳」
ステラーカイギュウ「かいつまんで説明すると、ジュゴンやマナティーの仲間といったところです」
女「ああ……イメージできたわ」
ステラーカイギュウ「ただし、私の種族はすでに絶滅してしまっていますが」
女「絶滅? 絶滅って、あなた生きてるじゃない」
ステラーカイギュウ「私は生き残りが妖怪化した存在とでもいうべきでしょうか」
ステラーカイギュウ「日本でいう猫又、九尾の狐のようなものと思って下さい」
女「はぁ……」
女「申し訳ないけど……初耳」
ステラーカイギュウ「かいつまんで説明すると、ジュゴンやマナティーの仲間といったところです」
女「ああ……イメージできたわ」
ステラーカイギュウ「ただし、私の種族はすでに絶滅してしまっていますが」
女「絶滅? 絶滅って、あなた生きてるじゃない」
ステラーカイギュウ「私は生き残りが妖怪化した存在とでもいうべきでしょうか」
ステラーカイギュウ「日本でいう猫又、九尾の狐のようなものと思って下さい」
女「はぁ……」
4: 2020/12/07(月) 20:43:04.299
ステラーカイギュウ「修行の末、さっきやったようにサイズを変えることもできますし」
ステラーカイギュウ「言葉を話すこともできるようになりました」
ステラーカイギュウ「こうして陸で暮らすこともできています」
ステラーカイギュウ「やろうと思えばこの通り――」ドロンッ
紳士「人間に化けることもできます」
女「何でもありにも程があるわね」
紳士「こうして、地上ライフを満喫していたところ、いかにも氏のうとしてるあなたを見かけましてね」
紳士「止めにきたというわけなのです」
女「おせっかいしてくれちゃって……」
ステラーカイギュウ「言葉を話すこともできるようになりました」
ステラーカイギュウ「こうして陸で暮らすこともできています」
ステラーカイギュウ「やろうと思えばこの通り――」ドロンッ
紳士「人間に化けることもできます」
女「何でもありにも程があるわね」
紳士「こうして、地上ライフを満喫していたところ、いかにも氏のうとしてるあなたを見かけましてね」
紳士「止めにきたというわけなのです」
女「おせっかいしてくれちゃって……」
5: 2020/12/07(月) 20:45:20.901
紳士「私も種族が絶滅してる身、ついえようとしてるあなたの命を放っておけなかったのです」
紳士「私でよければ相談に乗りましょう。どうか氏ぬのはやめ――」
女「もうやめたわ」
紳士「え?」
女「あんたみたいなのと出会ったら、氏ぬのバカらしくなっちゃった」
紳士「それはよかった」
女「そうだ、よかったら私の家に来ない? あんたの話、色々聞いてみたいし」
紳士「では是非お呼ばれするとしましょう」
紳士「私でよければ相談に乗りましょう。どうか氏ぬのはやめ――」
女「もうやめたわ」
紳士「え?」
女「あんたみたいなのと出会ったら、氏ぬのバカらしくなっちゃった」
紳士「それはよかった」
女「そうだ、よかったら私の家に来ない? あんたの話、色々聞いてみたいし」
紳士「では是非お呼ばれするとしましょう」
7: 2020/12/07(月) 20:48:23.455
―自宅―
ステラーカイギュウ「ふぅ~、やはりこの姿の方が落ちつきますね」
女「やっぱり化けるのは疲れるんだ」
女「はい、コーヒーとお菓子」
ステラーカイギュウ「ありがとうございます。いただきます」
女「せっかくだからさ、あんたのことについて色々教えてよ。ステラー……カイギュウだっけ?」
ステラーカイギュウ「かしこまりました」
ステラーカイギュウ「ふぅ~、やはりこの姿の方が落ちつきますね」
女「やっぱり化けるのは疲れるんだ」
女「はい、コーヒーとお菓子」
ステラーカイギュウ「ありがとうございます。いただきます」
女「せっかくだからさ、あんたのことについて色々教えてよ。ステラー……カイギュウだっけ?」
ステラーカイギュウ「かしこまりました」
9: 2020/12/07(月) 20:51:35.866
ステラーカイギュウ「我々は北太平洋のベーリング海に生息していました」
ステラーカイギュウ「成体では体長はおよそ7メートル、体重は5トンから12トンにもなります」
女「部屋の中で絶対そのサイズにならないでね」
ステラーカイギュウ「ハハ、分かってます」
ステラーカイギュウ「この脂肪なのであまり深くは潜れず、浅瀬で浮かぶように暮らしてきました」
女「プールでも太ってる人はよく浮くっていうもんね」
女「だけど、それじゃなにを食べてたの?」
ステラーカイギュウ「海藻類です」
女「え、だったら昆布とか買ってこようか?」
ステラーカイギュウ「お気遣いなく。修行の末、なんでも食べられるようになりましたから」
女「修行すげえ」
ステラーカイギュウ「成体では体長はおよそ7メートル、体重は5トンから12トンにもなります」
女「部屋の中で絶対そのサイズにならないでね」
ステラーカイギュウ「ハハ、分かってます」
ステラーカイギュウ「この脂肪なのであまり深くは潜れず、浅瀬で浮かぶように暮らしてきました」
女「プールでも太ってる人はよく浮くっていうもんね」
女「だけど、それじゃなにを食べてたの?」
ステラーカイギュウ「海藻類です」
女「え、だったら昆布とか買ってこようか?」
ステラーカイギュウ「お気遣いなく。修行の末、なんでも食べられるようになりましたから」
女「修行すげえ」
10: 2020/12/07(月) 20:54:30.816
女「だけど、そんな生き物がなんで絶滅しちゃったの? クジラにでも襲われちゃった?」
ステラーカイギュウ「……」
女「どうしたの? 表情が曇ったけど……」
ステラーカイギュウ「我々が人間に発見されたのはおよそ300年近く前、1741年のことです」
女「1741……? 日本だといつぐらいだろ?」
ステラーカイギュウ「江戸時代ですね。徳川吉宗の時代です」
女「よく即答できるね」
ステラーカイギュウ「修行しましたから」
女「なんでもかんでも修行で済ませるのやめて」
ステラーカイギュウ「……」
女「どうしたの? 表情が曇ったけど……」
ステラーカイギュウ「我々が人間に発見されたのはおよそ300年近く前、1741年のことです」
女「1741……? 日本だといつぐらいだろ?」
ステラーカイギュウ「江戸時代ですね。徳川吉宗の時代です」
女「よく即答できるね」
ステラーカイギュウ「修行しましたから」
女「なんでもかんでも修行で済ませるのやめて」
11: 2020/12/07(月) 20:57:26.000
ステラーカイギュウ「1741年、探検家ベーリング率いる探検隊が、カムチャッカ半島付近で遭難しました」
ステラーカイギュウ「ベーリングも氏んでしまうのですが、彼の代わりにシュテラーという医師が指揮を執ります」
女「シュテラーってまさか……」
ステラーカイギュウ「ええ、彼が“ステラー”の由来になっています。この時、我々は発見されたんです」
ステラーカイギュウ「遭難した彼らにとって、私たちの肉や皮や脂肪はまさにお宝でした」
ステラーカイギュウ「食用にされたのはもちろん、皮は靴やベルトに加工され、脂肪は燃料にされ……」
ステラーカイギュウ「こうしてシュテラーは無事生還できたわけです」
女「……」
ステラーカイギュウ「ベーリングも氏んでしまうのですが、彼の代わりにシュテラーという医師が指揮を執ります」
女「シュテラーってまさか……」
ステラーカイギュウ「ええ、彼が“ステラー”の由来になっています。この時、我々は発見されたんです」
ステラーカイギュウ「遭難した彼らにとって、私たちの肉や皮や脂肪はまさにお宝でした」
ステラーカイギュウ「食用にされたのはもちろん、皮は靴やベルトに加工され、脂肪は燃料にされ……」
ステラーカイギュウ「こうしてシュテラーは無事生還できたわけです」
女「……」
12: 2020/12/07(月) 21:00:33.232
ステラーカイギュウ「生還した彼らの話を聞き、大勢のハンターが我々を狩りにやってきました」
ステラーカイギュウ「人間を知らなかった我々はハンターにとってはいいカモでした」
ステラーカイギュウ「警戒心もなく、動きものろく、戦う手段もなく、出来ることといえばうずくまることだけ」
ステラーカイギュウ「人間の銛や銃に次々と殺されていきました」
ステラーカイギュウ「さらに、傷ついた仲間を助けようとする習性も災いしました」
ステラーカイギュウ「特にメスが傷ついた時は、大勢のオスが駆けつけてしまう」
ステラーカイギュウ「銛に刺された仲間を助けようと仲間が集まり、さらに殺される」
ステラーカイギュウ「我々は面白いように狩られ、殺されていったのです……」
ステラーカイギュウ「この巨体ですから持ち帰ることも容易ではなく、大半の氏体は放置され、海の藻屑と消えました」
女「……」
ステラーカイギュウ「人間を知らなかった我々はハンターにとってはいいカモでした」
ステラーカイギュウ「警戒心もなく、動きものろく、戦う手段もなく、出来ることといえばうずくまることだけ」
ステラーカイギュウ「人間の銛や銃に次々と殺されていきました」
ステラーカイギュウ「さらに、傷ついた仲間を助けようとする習性も災いしました」
ステラーカイギュウ「特にメスが傷ついた時は、大勢のオスが駆けつけてしまう」
ステラーカイギュウ「銛に刺された仲間を助けようと仲間が集まり、さらに殺される」
ステラーカイギュウ「我々は面白いように狩られ、殺されていったのです……」
ステラーカイギュウ「この巨体ですから持ち帰ることも容易ではなく、大半の氏体は放置され、海の藻屑と消えました」
女「……」
13: 2020/12/07(月) 21:03:31.439
ステラーカイギュウ「やがて、1768年……『まだ二、三頭残っていたので頃した』という報告を最後に」
ステラーカイギュウ「人間たちに目撃された例はありません」
ステラーカイギュウ「こうして我々は、人間に発見されてからわずか27年で絶滅したのです」
ステラーカイギュウ「私だけを除いて……」
女「……」
ステラーカイギュウ「す、すいません。辛気臭い話をしてしまって。だから、あまり乗り気じゃなかったんです」
ステラーカイギュウ「さあ、もっと楽しい話を……」
女「許せない……」
ステラーカイギュウ「え」
ステラーカイギュウ「人間たちに目撃された例はありません」
ステラーカイギュウ「こうして我々は、人間に発見されてからわずか27年で絶滅したのです」
ステラーカイギュウ「私だけを除いて……」
女「……」
ステラーカイギュウ「す、すいません。辛気臭い話をしてしまって。だから、あまり乗り気じゃなかったんです」
ステラーカイギュウ「さあ、もっと楽しい話を……」
女「許せない……」
ステラーカイギュウ「え」
15: 2020/12/07(月) 21:06:28.079
女「人間ってやっぱりそういう生き物なんだよ」
女「薄汚くて、自己中で、平気で他人を傷つけて……」
ステラーカイギュウ「あ、あの……?」
女「ねえ、あなた妖怪ってことは今なら相当強いでしょ? 修行してるし」
ステラーカイギュウ「まあ、多少は……」
女「だったらさ、人類滅ぼそうよ」
ステラーカイギュウ「へ……!?」
女「薄汚くて、自己中で、平気で他人を傷つけて……」
ステラーカイギュウ「あ、あの……?」
女「ねえ、あなた妖怪ってことは今なら相当強いでしょ? 修行してるし」
ステラーカイギュウ「まあ、多少は……」
女「だったらさ、人類滅ぼそうよ」
ステラーカイギュウ「へ……!?」
16: 2020/12/07(月) 21:10:22.394
女「だって、あんたみたいな大人しい生き物を狙ってさ、優しい習性を利用して仲間おびき寄せて」
女「乱獲して、絶滅まで追い込むなんて鬼畜の所業じゃない」
女「滅んで当然よ!」
ステラーカイギュウ「いや、まあ、落ちついて」
女「はっきりいって、私も今まで生きてきて、ろくな目にあってこなかったもの」
女「だからあんたがやるなら、私も協力するよ、人類への復讐!」
女「なんなら、私から頃しちゃってもいいから。どうせ氏ぬつもりだったし」
ステラーカイギュウ「まあまあ、私にそんなつもりはありませんよ」
女「乱獲して、絶滅まで追い込むなんて鬼畜の所業じゃない」
女「滅んで当然よ!」
ステラーカイギュウ「いや、まあ、落ちついて」
女「はっきりいって、私も今まで生きてきて、ろくな目にあってこなかったもの」
女「だからあんたがやるなら、私も協力するよ、人類への復讐!」
女「なんなら、私から頃しちゃってもいいから。どうせ氏ぬつもりだったし」
ステラーカイギュウ「まあまあ、私にそんなつもりはありませんよ」
17: 2020/12/07(月) 21:13:15.960
女「なんで?」
女「仲間を殺されてるんだよ? 悔しくないの?」
ステラーカイギュウ「もちろん、悔しいです。今でも人間を恨んでます」
ステラーカイギュウ「復讐を考えたり、具体的な計画を練ったこともあります」
女「でしょ?」
ステラーカイギュウ「しかし……私も根っからのステラーカイギュウだったんです」
ステラーカイギュウ「復讐を考えれば考えるほど、やはり他人を傷つけたくないという思いが強くなりました」
ステラーカイギュウ「それに人間だって全員が全員ああなわけではない」
ステラーカイギュウ「現に今では、生き物を保護しようという流れも進んでますしね」
女「そうかもしれないけどさぁ……」
女「仲間を殺されてるんだよ? 悔しくないの?」
ステラーカイギュウ「もちろん、悔しいです。今でも人間を恨んでます」
ステラーカイギュウ「復讐を考えたり、具体的な計画を練ったこともあります」
女「でしょ?」
ステラーカイギュウ「しかし……私も根っからのステラーカイギュウだったんです」
ステラーカイギュウ「復讐を考えれば考えるほど、やはり他人を傷つけたくないという思いが強くなりました」
ステラーカイギュウ「それに人間だって全員が全員ああなわけではない」
ステラーカイギュウ「現に今では、生き物を保護しようという流れも進んでますしね」
女「そうかもしれないけどさぁ……」
18: 2020/12/07(月) 21:15:31.018
ステラーカイギュウ「そしてなにより、妖怪化したことで、私はあの世を訪ねることもできます」
ステラーカイギュウ「かつての仲間達は皆、天国で幸せに暮らしています」
ステラーカイギュウ「だから私も……いつしか復讐は考えなくなりました」
ステラーカイギュウ「そもそも時が流れすぎて、直接の仇はみんな氏んでますしね」
女「優しいなぁ……。優しすぎるよ、ステラーカイギュウ」
ステラーカイギュウ「あなたこそ……優しいですよ」
女「私が?」
ステラーカイギュウ「普通だったら私みたいなのを、こうして家に招かないですって」
女「からかわないでよ」
ステラーカイギュウ「かつての仲間達は皆、天国で幸せに暮らしています」
ステラーカイギュウ「だから私も……いつしか復讐は考えなくなりました」
ステラーカイギュウ「そもそも時が流れすぎて、直接の仇はみんな氏んでますしね」
女「優しいなぁ……。優しすぎるよ、ステラーカイギュウ」
ステラーカイギュウ「あなたこそ……優しいですよ」
女「私が?」
ステラーカイギュウ「普通だったら私みたいなのを、こうして家に招かないですって」
女「からかわないでよ」
19: 2020/12/07(月) 21:18:22.252
女「あーあ、あんたの過去を聞いたら自分の悩みなんてバカバカしくなっちゃった」
女「そうだ、あんたしばらくここにいたら?」
ステラーカイギュウ「いいんですか?」
女「うん、もっとあんたの話聞きたいしね」
ステラーカイギュウ「では、しばらく厄介になります」
女「これであんたはステイカイギュウね!」
ステラーカイギュウ「上手いことをおっしゃる」
女「そうだ、あんたしばらくここにいたら?」
ステラーカイギュウ「いいんですか?」
女「うん、もっとあんたの話聞きたいしね」
ステラーカイギュウ「では、しばらく厄介になります」
女「これであんたはステイカイギュウね!」
ステラーカイギュウ「上手いことをおっしゃる」
20: 2020/12/07(月) 21:22:02.184
―会社―
女「おはようございます」
シーン…
女「!」
女(私の机に……)
女「あの……私の机に私物を置かないでくれる?」
同僚女「ごめんなさ~い、てっきり物置きかと思っちゃって」
同僚女「せっかくなんでジュースとお菓子も置かせてくださぁ~い」トンッ
女「……」
女「おはようございます」
シーン…
女「!」
女(私の机に……)
女「あの……私の机に私物を置かないでくれる?」
同僚女「ごめんなさ~い、てっきり物置きかと思っちゃって」
同僚女「せっかくなんでジュースとお菓子も置かせてくださぁ~い」トンッ
女「……」
21: 2020/12/07(月) 21:25:13.187
同僚「あの女がいると空気重くなるよな」
若手「陰気臭いったらないっすよね。幽霊は成仏しろっての」
ヒソヒソ…
女「……」
課長「君」
女「はい」
課長「寿退社などする予定はないかね?」
女「今のところ、ありませんけど……」
課長「予定がなくても退職していいんだよ? 今ならまだ十分転職できる年齢だし」
女「そういうわけには……」
課長「そうか、残念だ」ハァ…
女「……」
若手「陰気臭いったらないっすよね。幽霊は成仏しろっての」
ヒソヒソ…
女「……」
課長「君」
女「はい」
課長「寿退社などする予定はないかね?」
女「今のところ、ありませんけど……」
課長「予定がなくても退職していいんだよ? 今ならまだ十分転職できる年齢だし」
女「そういうわけには……」
課長「そうか、残念だ」ハァ…
女「……」
22: 2020/12/07(月) 21:28:31.314
会社が終わり――
女(やっと終わった……)
女(フラれたばかりだけど、彼のことをまだ忘れられない)
女(電話してみよう。ちょっと愚痴を聞いてもらうだけでも)
プルルルル…
女「あ、もしもし? 私だけど……」
男『あ? 誰だよお前』
女「え」
男『キモイから電話してくんな。お前と付き合ってたとか黒歴史だわ』プツッ
女「……」
女(やっと終わった……)
女(フラれたばかりだけど、彼のことをまだ忘れられない)
女(電話してみよう。ちょっと愚痴を聞いてもらうだけでも)
プルルルル…
女「あ、もしもし? 私だけど……」
男『あ? 誰だよお前』
女「え」
男『キモイから電話してくんな。お前と付き合ってたとか黒歴史だわ』プツッ
女「……」
23: 2020/12/07(月) 21:32:19.998
―自宅―
女「ただいまー……」
ステラーカイギュウ「お帰りなさい」
女「……」
ステラーカイギュウ「今日はわかめスープを作ってみました。もちろん材料は自分で買ってます」
ステラーカイギュウ「よかったら召し上がって下さい」
女「……」
ステラーカイギュウ「どうしました?」
女「ステラーカイギュウ……」
女「ただいまー……」
ステラーカイギュウ「お帰りなさい」
女「……」
ステラーカイギュウ「今日はわかめスープを作ってみました。もちろん材料は自分で買ってます」
ステラーカイギュウ「よかったら召し上がって下さい」
女「……」
ステラーカイギュウ「どうしました?」
女「ステラーカイギュウ……」
24: 2020/12/07(月) 21:34:19.425
女「うわあああああんっ!」ガシッ
ステラーカイギュウ「!」
女「あぁぁぁぁんっ……!」
女「うわあああああああんっ……!」
ステラーカイギュウ「……」
ステラーカイギュウ「今日一日よく頑張りましたね」
ステラーカイギュウ「大丈夫、私はあなたの味方ですよ」
ステラーカイギュウ「!」
女「あぁぁぁぁんっ……!」
女「うわあああああああんっ……!」
ステラーカイギュウ「……」
ステラーカイギュウ「今日一日よく頑張りましたね」
ステラーカイギュウ「大丈夫、私はあなたの味方ですよ」
26: 2020/12/07(月) 21:38:37.661
女「……」
ステラーカイギュウ「落ちつきましたか?」
女「うん、ありがとう……」
女「もう……大丈夫……。私ったらなにやってんだろ……」
ステラーカイギュウ「……」
ステラーカイギュウ「……そうだ!」
女「え?」
ステラーカイギュウ「落ちつきましたか?」
女「うん、ありがとう……」
女「もう……大丈夫……。私ったらなにやってんだろ……」
ステラーカイギュウ「……」
ステラーカイギュウ「……そうだ!」
女「え?」
27: 2020/12/07(月) 21:40:40.440
ステラーカイギュウ「今度の休み、デートでもしませんか?」
ステラーカイギュウ「気晴らしにパーッと!」
女「……」
女「うん、それもいいかも!」
女「行こう行こう!」
ステラーカイギュウ「……」ホッ
ステラーカイギュウ「気晴らしにパーッと!」
女「……」
女「うん、それもいいかも!」
女「行こう行こう!」
ステラーカイギュウ「……」ホッ
28: 2020/12/07(月) 21:44:05.336
デート当日――
女「どう?」
紳士「お綺麗ですよ」
女「ホント?」
紳士「ええ、私の仲間にもあなたほどの美人はいませんでした」
女「あーあ、私もステラーカイギュウに生まれてたらモテモテだったのかなぁ」
紳士「きっとミス・ベーリング海だったでしょうね」
女「惜しいことしちゃったなぁ……」
女「どう?」
紳士「お綺麗ですよ」
女「ホント?」
紳士「ええ、私の仲間にもあなたほどの美人はいませんでした」
女「あーあ、私もステラーカイギュウに生まれてたらモテモテだったのかなぁ」
紳士「きっとミス・ベーリング海だったでしょうね」
女「惜しいことしちゃったなぁ……」
29: 2020/12/07(月) 21:46:31.043
―映画館―
『やっと……会えたね』
『もう君を離さない……』
女(やだ、泣きそう……)
紳士「ううぅ~……よかったよかった……」グシュッ…
女(ボロ泣きして、顔面がベーリング海になってる!)
『やっと……会えたね』
『もう君を離さない……』
女(やだ、泣きそう……)
紳士「ううぅ~……よかったよかった……」グシュッ…
女(ボロ泣きして、顔面がベーリング海になってる!)
30: 2020/12/07(月) 21:49:22.841
―水族館―
女「見て見て! 魚がいっぱい泳いでるよ!」
紳士「いいですねえ……」
女「……」
紳士「……」
女(ひょっとして……今でも水が恋しいんじゃ……)
女「ねえ、ステラーカイギュウ」
紳士「はい?」
女「プール行こっか! 一年中やってるところあるし!」
女「見て見て! 魚がいっぱい泳いでるよ!」
紳士「いいですねえ……」
女「……」
紳士「……」
女(ひょっとして……今でも水が恋しいんじゃ……)
女「ねえ、ステラーカイギュウ」
紳士「はい?」
女「プール行こっか! 一年中やってるところあるし!」
31: 2020/12/07(月) 21:52:15.656
―プール―
女「気持ちいい~!」バシャバシャ
紳士「……」プカー…
女「さすがステラーカイギュウ、浮くのが上手いね」
紳士「久しぶりですが、やはり体は覚えているものですね」
女「じゃあ、私も……」
ザブンッ!
女「ぶっ! やっぱり難しい……」
紳士「力を抜いて、水に溶け込むようにするのがコツですよ」
女「気持ちいい~!」バシャバシャ
紳士「……」プカー…
女「さすがステラーカイギュウ、浮くのが上手いね」
紳士「久しぶりですが、やはり体は覚えているものですね」
女「じゃあ、私も……」
ザブンッ!
女「ぶっ! やっぱり難しい……」
紳士「力を抜いて、水に溶け込むようにするのがコツですよ」
32: 2020/12/07(月) 21:55:21.264
女「今日は楽しかったー」
女「ありがとうね、ステラーカイギュウ」
紳士「え?」
女「デートに誘ってくれたの、“約束さえしちゃえばその日までは自頃しない”って思ったからでしょ」
紳士「いえ、そんなことは……」
女「私はもう、ホントに大丈夫だから」
紳士「おせっかいをしてしまいました」ニコッ
女「ありがとうね、ステラーカイギュウ」
紳士「え?」
女「デートに誘ってくれたの、“約束さえしちゃえばその日までは自頃しない”って思ったからでしょ」
紳士「いえ、そんなことは……」
女「私はもう、ホントに大丈夫だから」
紳士「おせっかいをしてしまいました」ニコッ
33: 2020/12/07(月) 22:00:02.717
―会社―
課長「今度、社内コンペが開かれる」
課長「社員が考えたキャラクターを、社長自ら審査して下さる」
課長「優秀なキャラクターには社長賞が与えられ、商品化するプロジェクトも立ち上げるそうだ」
課長「これはチャンスだぞ!」
同僚「よーし、狙うぜ社長賞!」
同僚女「あたしだって!」
ワイワイ… ガヤガヤ…
女「……」
課長「今度、社内コンペが開かれる」
課長「社員が考えたキャラクターを、社長自ら審査して下さる」
課長「優秀なキャラクターには社長賞が与えられ、商品化するプロジェクトも立ち上げるそうだ」
課長「これはチャンスだぞ!」
同僚「よーし、狙うぜ社長賞!」
同僚女「あたしだって!」
ワイワイ… ガヤガヤ…
女「……」
34: 2020/12/07(月) 22:03:22.507
―自宅―
ステラーカイギュウ「社内コンペ?」
女「うん、うちの会社ってキャラクター商品のメーカーだから。たまにこういう企画をやるんだよね」
女「社長はものすごいやり手だし、コンペで結果出せば給料だってぐんと上がる」
女「ま、私には関係ないけど。応募するつもりないし」
ステラーカイギュウ「せっかくだからチャレンジしたらどうです?」
女「へ?」
ステラーカイギュウ「この機会です。会社の人達を見返そうじゃありませんか!」
ステラーカイギュウ「社内コンペ?」
女「うん、うちの会社ってキャラクター商品のメーカーだから。たまにこういう企画をやるんだよね」
女「社長はものすごいやり手だし、コンペで結果出せば給料だってぐんと上がる」
女「ま、私には関係ないけど。応募するつもりないし」
ステラーカイギュウ「せっかくだからチャレンジしたらどうです?」
女「へ?」
ステラーカイギュウ「この機会です。会社の人達を見返そうじゃありませんか!」
35: 2020/12/07(月) 22:06:12.858
女「見返すっていってもねえ……」
女「キャラクターを作るってとても大変なんだよ? 特にセンスが不可欠」
女「テキトーに可愛いキャラやかっこいいキャラ描いたって、売れるわけないんだから」
ステラーカイギュウ「素人考えでしたか……」
女「優れたモチーフでもいるっていうなら話は別だけど……」
女「……」
女「いた」
ステラーカイギュウ「なにが?」
女「優れたモチーフが!」
ステラーカイギュウ「どこにです?」
女「あんたよ!」
ステラーカイギュウ「えええええ!?」
女「キャラクターを作るってとても大変なんだよ? 特にセンスが不可欠」
女「テキトーに可愛いキャラやかっこいいキャラ描いたって、売れるわけないんだから」
ステラーカイギュウ「素人考えでしたか……」
女「優れたモチーフでもいるっていうなら話は別だけど……」
女「……」
女「いた」
ステラーカイギュウ「なにが?」
女「優れたモチーフが!」
ステラーカイギュウ「どこにです?」
女「あんたよ!」
ステラーカイギュウ「えええええ!?」
37: 2020/12/07(月) 22:10:14.615
女「あんた、でっぷりしてるけど味がある外見してるし……」
女「ステラーカイギュウがモデルのキャラなんてそう多くないはずよ」
ステラーカイギュウ「そりゃまあ……」
ステラーカイギュウ「ですが、絶滅した動物なんてイメージ悪いんじゃ……」
女「恐竜がモチーフのキャラなんていっぱいいるじゃない」
ステラーカイギュウ「確かに!」
女「燃えてきた……」
女「私、元々キャラクターを作りたくて今の会社に入ったんだけど……」
女「あの頃の気持ちが蘇ってきた!」
ステラーカイギュウ「では、二人でキャラクターを作ってみましょうか!」
女「ステラーカイギュウがモデルのキャラなんてそう多くないはずよ」
ステラーカイギュウ「そりゃまあ……」
ステラーカイギュウ「ですが、絶滅した動物なんてイメージ悪いんじゃ……」
女「恐竜がモチーフのキャラなんていっぱいいるじゃない」
ステラーカイギュウ「確かに!」
女「燃えてきた……」
女「私、元々キャラクターを作りたくて今の会社に入ったんだけど……」
女「あの頃の気持ちが蘇ってきた!」
ステラーカイギュウ「では、二人でキャラクターを作ってみましょうか!」
38: 2020/12/07(月) 22:12:30.374
女「ううん……ステラーカイギュウの可愛さを生かしつつ……斬新な感じに……」
ステラーカイギュウ「仲間達のことを思い出しつつ……デザインは……」
…………
……
女「できた!」
ステラーカイギュウ「できました!」
女「じゃあ、お互い見せっこしようか」
ステラーカイギュウ「はい!」
ステラーカイギュウ「仲間達のことを思い出しつつ……デザインは……」
…………
……
女「できた!」
ステラーカイギュウ「できました!」
女「じゃあ、お互い見せっこしようか」
ステラーカイギュウ「はい!」
39: 2020/12/07(月) 22:15:10.487
女「私のステラーカイギュウは、人類を絶滅させられた恨みを晴らすため」
女「血肉を好み、隙あらば人類を滅亡させようと企むデンジャラスなメスカイギュウ!」
ステラーカイギュウ「私のステラーカイギュウは、海藻が大好きで穏やかなオスカイギュウです」
ステラーカイギュウ「いつも海をプカプカと漂っており、なによりも平和を愛します」
女「……」
ステラーカイギュウ「……」
女「真逆になっちゃったね」
ステラーカイギュウ「そうですね……しかし、どちらも捨てがたいです」
女「うん……どっちかに絞るのは勿体ない気がする」
ステラーカイギュウ「じゃあいっそ、二体作ってしまえば?」
女「それいい!」
女「血肉を好み、隙あらば人類を滅亡させようと企むデンジャラスなメスカイギュウ!」
ステラーカイギュウ「私のステラーカイギュウは、海藻が大好きで穏やかなオスカイギュウです」
ステラーカイギュウ「いつも海をプカプカと漂っており、なによりも平和を愛します」
女「……」
ステラーカイギュウ「……」
女「真逆になっちゃったね」
ステラーカイギュウ「そうですね……しかし、どちらも捨てがたいです」
女「うん……どっちかに絞るのは勿体ない気がする」
ステラーカイギュウ「じゃあいっそ、二体作ってしまえば?」
女「それいい!」
40: 2020/12/07(月) 22:18:41.585
―会社―
女「課長、今度の社内コンペ、私も参加します」
課長「君がぁ?」
課長「まあ、来る者拒まずだし、原則として応募は自由だ。好きにしたまえ」
女「はいっ!」
同僚「なーに考えてんだあいつ」
若手「社長賞だとか夢見てんじゃないっすか?」
同僚女「見るのは悪夢だけにしろって感じ~」
ハハハ…
女「課長、今度の社内コンペ、私も参加します」
課長「君がぁ?」
課長「まあ、来る者拒まずだし、原則として応募は自由だ。好きにしたまえ」
女「はいっ!」
同僚「なーに考えてんだあいつ」
若手「社長賞だとか夢見てんじゃないっすか?」
同僚女「見るのは悪夢だけにしろって感じ~」
ハハハ…
41: 2020/12/07(月) 22:22:17.210
……
秘書「いかがですか、社長?」
社長「どれもこれもつまらんな」
社長「どこかで見たような、可愛いだけだったり、かっこいいだけのキャラクターばかりだ」
社長「もっとこう……私の魂を揺さぶるようなキャラはないものか」
社長「!?」
社長「なんだこれは……ステラーカイギュウ……?」
秘書「たしか、絶滅した動物ですね。ジュゴンやマナティーに似ている生き物だったかと」
社長「平和を愛する兄≪ステ≫と、人類滅亡を企む妹≪ラー≫のコンビで……」
社長「ふむ……ふむ……ほう……」
秘書「いかがですか、社長?」
社長「どれもこれもつまらんな」
社長「どこかで見たような、可愛いだけだったり、かっこいいだけのキャラクターばかりだ」
社長「もっとこう……私の魂を揺さぶるようなキャラはないものか」
社長「!?」
社長「なんだこれは……ステラーカイギュウ……?」
秘書「たしか、絶滅した動物ですね。ジュゴンやマナティーに似ている生き物だったかと」
社長「平和を愛する兄≪ステ≫と、人類滅亡を企む妹≪ラー≫のコンビで……」
社長「ふむ……ふむ……ほう……」
42: 2020/12/07(月) 22:24:23.573
社長「おーいっ!」
課長「社長!? なにかご用でしょうか……?」
社長「このステラーカイギュウのキャラを応募したのは誰だね!? この課にいるはずなんだが……」
女「私ですけど……」
課長「あのぉ、こいつが何か……。いつも暗くて役立たずで困ってるんですよ」
社長「役立たずぅ? とんでもない!」
社長「君の考えたキャラクターが今回の社長賞だ!」
女「ええっ!?」
課長「社長!? なにかご用でしょうか……?」
社長「このステラーカイギュウのキャラを応募したのは誰だね!? この課にいるはずなんだが……」
女「私ですけど……」
課長「あのぉ、こいつが何か……。いつも暗くて役立たずで困ってるんですよ」
社長「役立たずぅ? とんでもない!」
社長「君の考えたキャラクターが今回の社長賞だ!」
女「ええっ!?」
44: 2020/12/07(月) 22:26:40.387
社長「さっそくプロジェクトを立ち上げる! もちろん、主導するのは君だ!」
女「……!」
社長「どうだね、やってみてはくれんか?」
女(就活の時――)
『御社のキャラクターに惹かれ、自分でもこのようなキャラクターを作ってみたいと思いました!』
女(業務に揉まれるうち、あんな志望動機、すっかり忘れてしまったけど……)
女(こんなチャンスが訪れるなんて……)
女「やります! やらせて下さい!」
女「……!」
社長「どうだね、やってみてはくれんか?」
女(就活の時――)
『御社のキャラクターに惹かれ、自分でもこのようなキャラクターを作ってみたいと思いました!』
女(業務に揉まれるうち、あんな志望動機、すっかり忘れてしまったけど……)
女(こんなチャンスが訪れるなんて……)
女「やります! やらせて下さい!」
47: 2020/12/07(月) 22:31:29.382
女「私が≪ステラープロジェクト≫の責任者となります」
女「本件のために集められた皆さん、よろしくお願いします!」
女「このプロジェクト、絶対成功させましょう!」
社員A「はいっ!」
社員B「はいっ!」
女「暴走しがちな妹ラーを、兄ステがなだめるというのが基本コンセプトで……」
社員A「この子、かなりのやり手だぞ。プレゼンもしっかりしてる」
社員B「いじめられてたらしいし、この件がなきゃずっと埋もれてたかもな」
女「本件のために集められた皆さん、よろしくお願いします!」
女「このプロジェクト、絶対成功させましょう!」
社員A「はいっ!」
社員B「はいっ!」
女「暴走しがちな妹ラーを、兄ステがなだめるというのが基本コンセプトで……」
社員A「この子、かなりのやり手だぞ。プレゼンもしっかりしてる」
社員B「いじめられてたらしいし、この件がなきゃずっと埋もれてたかもな」
48: 2020/12/07(月) 22:34:03.497
女「グッズは無事出来上がったし、宣伝もやるだけのことはやった……」
社員A「あとは……結果がどうなるか、ですね」
社員B「不安と期待が入り混じります……」
女「そうですね……」
社長「やっているね」
女「社長!」
社長「大丈夫、上手くいくさ。ステとラーは血の通ったとても素晴らしいキャラクターなのだから」
女「はいっ!」
社員A「あとは……結果がどうなるか、ですね」
社員B「不安と期待が入り混じります……」
女「そうですね……」
社長「やっているね」
女「社長!」
社長「大丈夫、上手くいくさ。ステとラーは血の通ったとても素晴らしいキャラクターなのだから」
女「はいっ!」
49: 2020/12/07(月) 22:36:31.869
―自宅―
女「大成功!」
女「優しいステとおっかないラー、どっちも好評で、グッズもものすごく売れてるの!」
女「近いうち、コミック化もされることになったわ。漫画家さんもなかなか面白い人で……」
ステラーカイギュウ「おめでとうございます」
女「これもあなたのおかげ……ありがとう」
ステラーカイギュウ「私は何もしていませんよ」
ステラーカイギュウ「せめて私もネット上で、ステとラーの可愛さをさりげなく宣伝するとしましょう」
女「ステマーカイギュウ!?」
女「大成功!」
女「優しいステとおっかないラー、どっちも好評で、グッズもものすごく売れてるの!」
女「近いうち、コミック化もされることになったわ。漫画家さんもなかなか面白い人で……」
ステラーカイギュウ「おめでとうございます」
女「これもあなたのおかげ……ありがとう」
ステラーカイギュウ「私は何もしていませんよ」
ステラーカイギュウ「せめて私もネット上で、ステとラーの可愛さをさりげなく宣伝するとしましょう」
女「ステマーカイギュウ!?」
51: 2020/12/07(月) 22:40:03.884
女「だいぶボーナス貰えたし、今度一緒に豪勢な食事しない?」
ステラーカイギュウ「いいですね、パーッとやりましょう」
女「おいしい海藻料理が食べられるところ、探しておくね」
ステラーカイギュウ「ありがとうございます」ジュルリ
女「あらら、口の中がベーリング海」
女(そういえば、ステラーカイギュウはいつまで私といてくれるんだろう)
女(できればこのままずっと……)
ステラーカイギュウ「いいですね、パーッとやりましょう」
女「おいしい海藻料理が食べられるところ、探しておくね」
ステラーカイギュウ「ありがとうございます」ジュルリ
女「あらら、口の中がベーリング海」
女(そういえば、ステラーカイギュウはいつまで私といてくれるんだろう)
女(できればこのままずっと……)
52: 2020/12/07(月) 22:42:16.913
……
社員A「お疲れ様でーす」
社員B「お疲れ様でーす」
女「お疲れ様でーす!」
女「あー、やっと会社終わった。忙しいったらありゃしない」
女「だけど、毎日が楽しいや」
女「今日はステラーカイギュウとお食事だから、楽しみ~!」
スタスタ…
女「ん?」
社員A「お疲れ様でーす」
社員B「お疲れ様でーす」
女「お疲れ様でーす!」
女「あー、やっと会社終わった。忙しいったらありゃしない」
女「だけど、毎日が楽しいや」
女「今日はステラーカイギュウとお食事だから、楽しみ~!」
スタスタ…
女「ん?」
54: 2020/12/07(月) 22:45:09.107
男「よぉ」
女「あんたは……!」
男「見違えたぜ。ずいぶん綺麗になったじゃないか。女は変わるもんだな」
女「……こんなところで会うなんてね」
男「実はここで会ったのは偶然じゃないんだ……お前を待ってた」
女「どういうこと?」
男「俺たち、やり直せないか?」
女「え?」
男「お前と離れて分かった……やっぱり俺、お前のことが好きなんだと!」
男「二度と別れてくれなんていわねえ! もう一度やり直そう!」
女「……」
女「あんたは……!」
男「見違えたぜ。ずいぶん綺麗になったじゃないか。女は変わるもんだな」
女「……こんなところで会うなんてね」
男「実はここで会ったのは偶然じゃないんだ……お前を待ってた」
女「どういうこと?」
男「俺たち、やり直せないか?」
女「え?」
男「お前と離れて分かった……やっぱり俺、お前のことが好きなんだと!」
男「二度と別れてくれなんていわねえ! もう一度やり直そう!」
女「……」
55: 2020/12/07(月) 22:47:29.442
女「ごめん……。私、もう好きな人がいるから……さよなら」スッ
男「!」
男「待てよォ!」ガシッ
女「痛っ! なにすんの!」
男「てめえだけ幸せになろうったってそうはいかねえんだよ……!」
男「こっち来い!」
女「は、放してよ!」
男「!」
男「待てよォ!」ガシッ
女「痛っ! なにすんの!」
男「てめえだけ幸せになろうったってそうはいかねえんだよ……!」
男「こっち来い!」
女「は、放してよ!」
57: 2020/12/07(月) 22:50:19.577
バシッ!
女「きゃっ!」
男「どうだ、俺とやり直す気になったか!?」
女「あんた、新しい女の子にフラれたか、お金がなくなったかしたんでしょ?」
女「ひょっとしたらどっちも?」
男「……!」
女「当たりだね。でなきゃ、私とよりを戻す理由がないもんね……」
女「だけど私はもう……」
男「そうかい、そうかい。お前がそんなに冷たい女だったとはな……」
男「だったら……頃してやるッ!」
女「!」
女「きゃっ!」
男「どうだ、俺とやり直す気になったか!?」
女「あんた、新しい女の子にフラれたか、お金がなくなったかしたんでしょ?」
女「ひょっとしたらどっちも?」
男「……!」
女「当たりだね。でなきゃ、私とよりを戻す理由がないもんね……」
女「だけど私はもう……」
男「そうかい、そうかい。お前がそんなに冷たい女だったとはな……」
男「だったら……頃してやるッ!」
女「!」
58: 2020/12/07(月) 22:53:07.530
女「なに考えてんの、やめてよ!」
男「うるせえ……全部お前が悪いんだ! お前と別れてからろくなことがねえ!」
女「あんたからフッたくせに! 散々貢がせてからポイ捨てするみたいに!」
男「うるせんだよォ! どうせ人生詰んでるし、お前頃してムショ行きだァ!」ダッ!
女「きゃああっ!」
女(せっかく前向きになれたのに……やっと人生が面白くなったのに……!)
女(ステラーカイギュウ……!)
男「うるせえ……全部お前が悪いんだ! お前と別れてからろくなことがねえ!」
女「あんたからフッたくせに! 散々貢がせてからポイ捨てするみたいに!」
男「うるせんだよォ! どうせ人生詰んでるし、お前頃してムショ行きだァ!」ダッ!
女「きゃああっ!」
女(せっかく前向きになれたのに……やっと人生が面白くなったのに……!)
女(ステラーカイギュウ……!)
60: 2020/12/07(月) 22:57:29.285
ボフッ!
男「うわっ!?」
ステラーカイギュウ「およしなさい」
男「なんだこりゃ!?」
女「ステラーカイギュウ!」
ステラーカイギュウ「お怪我はありませんか?」
女「私は平気……だけど」
男「うわっ!?」
ステラーカイギュウ「およしなさい」
男「なんだこりゃ!?」
女「ステラーカイギュウ!」
ステラーカイギュウ「お怪我はありませんか?」
女「私は平気……だけど」
61: 2020/12/07(月) 23:00:32.760
女「どうしてここへ……?」
ステラーカイギュウ「お忘れですか?」
ステラーカイギュウ「ステラーカイギュウは女性がピンチの時、すぐ駆けつける生き物なのですよ」ニッコリ
女「あ……」
ステラーカイギュウ「まして好意を抱く女性であればなおさらです」
男「なんだ、このでかいアザラシはァ!?」
ステラーカイギュウ「でかい? これがですか? これでもサイズは縮めているのですが」
ステラーカイギュウ「では私の“本当の姿”をお見せしましょうか」
ステラーカイギュウ「お忘れですか?」
ステラーカイギュウ「ステラーカイギュウは女性がピンチの時、すぐ駆けつける生き物なのですよ」ニッコリ
女「あ……」
ステラーカイギュウ「まして好意を抱く女性であればなおさらです」
男「なんだ、このでかいアザラシはァ!?」
ステラーカイギュウ「でかい? これがですか? これでもサイズは縮めているのですが」
ステラーカイギュウ「では私の“本当の姿”をお見せしましょうか」
62: 2020/12/07(月) 23:03:16.028
ムクムクムク…
ステラーカイギュウ「いかがです?」
男「え……」
男「まるでトラックじゃねえか……」
ステラーカイギュウ「私は争いを好みません……しかし、彼女を傷つけるのであれば話は別です」
ステラーカイギュウ「あなたという命を絶滅させるのに、良心の呵責は全くありません」
男「ひっ!」
ステラーカイギュウ「この巨体で、押し潰してあげましょう!」グオオオオッ
男「うわっ、ひっ!」
男「うわあああああああっ……!!!」
ズシンッ……!
ステラーカイギュウ「いかがです?」
男「え……」
男「まるでトラックじゃねえか……」
ステラーカイギュウ「私は争いを好みません……しかし、彼女を傷つけるのであれば話は別です」
ステラーカイギュウ「あなたという命を絶滅させるのに、良心の呵責は全くありません」
男「ひっ!」
ステラーカイギュウ「この巨体で、押し潰してあげましょう!」グオオオオッ
男「うわっ、ひっ!」
男「うわあああああああっ……!!!」
ズシンッ……!
63: 2020/12/07(月) 23:06:25.404
ステラーカイギュウ「……」
女「潰し……ちゃったの?」
ステラーカイギュウ「まさか。潰すふりをしただけです」サッ
男「……」ヒクヒク
女「……」ホッ
ステラーカイギュウ「しかし、恐怖は植え付けました。もう二度とあなたに近づくことはないでしょう」
男「潰れた……潰れた……俺、潰れた……」
ステラーカイギュウ「さて、予定通りお食事といきましょうか」
女「うん!」
女「潰し……ちゃったの?」
ステラーカイギュウ「まさか。潰すふりをしただけです」サッ
男「……」ヒクヒク
女「……」ホッ
ステラーカイギュウ「しかし、恐怖は植え付けました。もう二度とあなたに近づくことはないでしょう」
男「潰れた……潰れた……俺、潰れた……」
ステラーカイギュウ「さて、予定通りお食事といきましょうか」
女「うん!」
65: 2020/12/07(月) 23:09:09.859
―レストラン―
紳士「海藻のサラダですか……いただきます」ムシャムシャ
紳士「おおっ、これはおいしい! ドレッシングとの絶妙なハーモニー!」ムシャムシャ
女「探したかいがあったよ」
女「ねえ、ステラーカイギュウ」
紳士「はい?」
女「結婚しよっか」
紳士「ブッ!」
紳士「海藻のサラダですか……いただきます」ムシャムシャ
紳士「おおっ、これはおいしい! ドレッシングとの絶妙なハーモニー!」ムシャムシャ
女「探したかいがあったよ」
女「ねえ、ステラーカイギュウ」
紳士「はい?」
女「結婚しよっか」
紳士「ブッ!」
66: 2020/12/07(月) 23:12:27.667
紳士「私と……あなたが……!?」
女「うん、嫌?」
紳士「嫌……ではありませんが……」
女「じゃあ、しようよ」
女「それにさ、絶滅動物なんだから子供作らないと。妖怪だっていつまで生きれるか分からないよ?」
紳士「しかし、あなたと私だと種族が違いますし……子供ができるかどうか……」
女「あんたらしくもない」
紳士「え?」
女「修行すればいいじゃない」
紳士「うむむ……これは一本取られましたね」
女「うん、嫌?」
紳士「嫌……ではありませんが……」
女「じゃあ、しようよ」
女「それにさ、絶滅動物なんだから子供作らないと。妖怪だっていつまで生きれるか分からないよ?」
紳士「しかし、あなたと私だと種族が違いますし……子供ができるかどうか……」
女「あんたらしくもない」
紳士「え?」
女「修行すればいいじゃない」
紳士「うむむ……これは一本取られましたね」
67: 2020/12/07(月) 23:15:44.596
―自宅―
紳士「やはり、この姿の方がいいでしょうか?」
女「ううん、ステラーカイギュウの姿がいい」
紳士「え?」
女「お願い……。なるべくありのままのあなたと抱き合いたいの」
ステラーカイギュウ「分かりました」ドロンッ
ステラーカイギュウ「では……実は私、女性経験はないのですが……」
女「仲間が絶滅しちゃったんだから当然だよ。さぁ……」
ステラーカイギュウ「はい……あなたという海に飛び込みます!」
…………
……
紳士「やはり、この姿の方がいいでしょうか?」
女「ううん、ステラーカイギュウの姿がいい」
紳士「え?」
女「お願い……。なるべくありのままのあなたと抱き合いたいの」
ステラーカイギュウ「分かりました」ドロンッ
ステラーカイギュウ「では……実は私、女性経験はないのですが……」
女「仲間が絶滅しちゃったんだから当然だよ。さぁ……」
ステラーカイギュウ「はい……あなたという海に飛び込みます!」
…………
……
68: 2020/12/07(月) 23:18:29.861
……
女「妊娠してたって」
ステラーカイギュウ「おおっ……!」
女「人間、やればできるもんだね~」
ステラーカイギュウ「まったくです。これほど嬉しいことはありません」
女「産休も取らせてくれるし、どんな子が生まれるか楽しみだわ」ナデナデ
ステラーカイギュウ「私としては、とにかく元気であって欲しいです」
女「妊娠してたって」
ステラーカイギュウ「おおっ……!」
女「人間、やればできるもんだね~」
ステラーカイギュウ「まったくです。これほど嬉しいことはありません」
女「産休も取らせてくれるし、どんな子が生まれるか楽しみだわ」ナデナデ
ステラーカイギュウ「私としては、とにかく元気であって欲しいです」
69: 2020/12/07(月) 23:21:06.011
―病院―
タッタッタ…
紳士「はぁ、はぁ、はぁ……」
ナース「あ、あなたはもしかして……」
紳士「妻は!?」
ナース「母子ともに健康ですよ」
紳士「ありがとうございます!」ダッ
タッタッタ…
紳士「はぁ、はぁ、はぁ……」
ナース「あ、あなたはもしかして……」
紳士「妻は!?」
ナース「母子ともに健康ですよ」
紳士「ありがとうございます!」ダッ
70: 2020/12/07(月) 23:23:25.299
女「……あ、来てくれた」
女「ほぉら、赤ちゃん」
赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
紳士「どうやら、人間として産まれたようですね」
女「どことなく、ステラーカイギュウっぽくもあるけどね。とっても可愛いよ」
女「ほら、抱いてあげて」
紳士「はい……お父さんだよ」ギュッ…
赤子「ばぶ、ばぶ……」
女「ほぉら、赤ちゃん」
赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
紳士「どうやら、人間として産まれたようですね」
女「どことなく、ステラーカイギュウっぽくもあるけどね。とっても可愛いよ」
女「ほら、抱いてあげて」
紳士「はい……お父さんだよ」ギュッ…
赤子「ばぶ、ばぶ……」
71: 2020/12/07(月) 23:25:12.979
紳士「あなたに出会えてよかった……」
紳士「おかげで絶滅したはずの私が、こうして新しい命を生み出すことができました」
女「私もだよ。自分がママになれると思わなかったもん」
紳士「私はこの子を大切にします! 絶滅した仲間達の分まで!」
女「頼んだよ、パパ」
~おわり~
紳士「おかげで絶滅したはずの私が、こうして新しい命を生み出すことができました」
女「私もだよ。自分がママになれると思わなかったもん」
紳士「私はこの子を大切にします! 絶滅した仲間達の分まで!」
女「頼んだよ、パパ」
~おわり~
72: 2020/12/07(月) 23:33:19.956
乙
三人で幸せになってくれ
三人で幸せになってくれ
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります