1: 2010/12/29(水) 00:57:31.39
純「悪い梓、さっきの授業のノート貸して? 寝ちゃってた」

梓「……まったく純ってば。しょうがないわね。はい」

純「サンキュー、梓。恩に着るよ」

梓「あとで購買のパン奢ってよね」

純「わかったわかった。……あれ?」

梓「なに?」

純「そのツインテールの髪留め、変えた?」

2: 2010/12/29(水) 00:58:51.59
梓「ああ、これね。プレゼントしてもらったの」

純「え? まさか彼氏に!?」

梓「バカ。違うわよ、ムギ先輩によ」

純「? 軽音部の先輩?」

梓「うん。琴吹紬って名前の先輩。おっとりとしていてね、ぽわぽわって感じでね、金色の髪で、すっごく可愛いの!」

純「ふぅん、わかるようでわからない解説ありがとう」

梓「まあ、一回見てみたらわかると思うけど。とっても綺麗よ?」

3: 2010/12/29(水) 00:59:38.69
放課後

純「梓―、借りてたノート返しに来たよ」

言いながら、純は音楽室の扉を開けた。

純「梓……ってあれ?」

紬「あら、確か……純ちゃん、だったかしら」

純「あ、はい」

5: 2010/12/29(水) 01:00:20.35
純(金髪、ぽわぽわとしている雰囲気、ああ、梓が言っていた――)

純「もしかして、紬……先輩ですか?」

紬「ええ、そうよ」

純「あの、梓は……?」

紬「梓ちゃんはまだ来てないわね。何か御用?」

純「あ、こ、このノート渡してほしいなーって」

紬「あぁ、わかったわ」

9: 2010/12/29(水) 01:01:06.06
純「あ、それだけですので、あの……失礼しました!」

純が音楽室を出ようとするよりも早く。

紬「待って、純ちゃん」

純「……はい?」

紬「お茶してかない? 一人で暇だったの」

純「はあ……」

10: 2010/12/29(水) 01:01:50.36
純が部室のテーブルの一角に座る。

紬「お待たせ、純ちゃん」

純「あ、どうも」

純(レモンティー、かな? それとケーキ)

純「あの、飲んでもいいんですか?」

紬「もちろん」

純「では……」ズズズ「あぁ……憂の淹れたヤツより美味しいです」

紬「そう? ありがとう。ケーキも、ほら」

11: 2010/12/29(水) 01:03:10.18
純「あの、でも、これ食べちゃったら他の部員の分のケーキ、なくなっちゃうんじゃ……」

紬「大丈夫よ、今日は余分に持ってきているから」

純「あ、そうなんですか……」

純はケーキを食べ始める。美味い。思わず、食べ進める手が止まらなくなる。

紬「お味はどう?」

純「とても美味しいです! 今まで食べたケーキの中で一番ですよ!」

12: 2010/12/29(水) 01:03:58.39
紬「そう言ってもらえると嬉しいわ」

にこ、とほほ笑む紬。

純「何か、紬先輩ってお母さんって感じですね」

紬「そう?」

純「はい」

紬「あら、純ちゃん。頬にクリームが付いてるわよ。……ほら」

14: 2010/12/29(水) 01:04:45.34
と、紬が人差し指で純の頬に付いていたクリームを取る。

純「あ、ありがとうございましゅ」

何故か、呂律が回らなかった。頬が赤くなる。

紬「それにしても純ちゃん、綺麗な顔をしているわね。お人形さんみたい」

純「あ、は、はい……」

とても気恥ずかしい。

15: 2010/12/29(水) 01:05:29.34
梓「こんにちは~」

そのとき、音楽室の扉が開いて、梓が現れた。

梓「……って、純。何やってんのよここで」

純「あ、べ、別に、ケーキ食べてただけだし?」

紬「あぁ、梓ちゃん。はい、ノート」

梓「あ、純。これ返しに来たのね」

純「そ、そうだよ、悪い?」

16: 2010/12/29(水) 01:06:15.75
紬「梓ちゃんも食べる? ケーキ」

梓「あ、はい。頂きます」

紬「そう、じゃあちょっと座って待っててね」

純「わ、私はこれで……失礼しました」

紬「あら、もう帰っちゃうの?」

純「はい。ジャズ研もありますし」

紬「そっか。じゃあね、ばいばい」

18: 2010/12/29(水) 01:07:43.84
純「はい。あ、ケ、ケーキとても美味しかったです。ありがとうございました」

紬「うん」

そして純は音楽室から出た。

そこから少し歩いて、立ち止まる。

純「……どーしよ。まだドキドキしてる……」

純は胸を抑えた。

19: 2010/12/29(水) 01:08:28.49
純(……それにしても、紬先輩……綺麗な人だったなあ……)

純(………………やばい、私。好きになったかも)

紬の顔を思い出す。思わず、頬が緩む。

純(ほんとうに、綺麗な人だったなあ…………)

純(………………うん、好きになっちゃった)

20: 2010/12/29(水) 01:09:13.34
翌日  学校

梓「おはよう、純」

純「ああ、梓。お早う」ジトー

梓「……なに? その眼」

純「いやあ……軽音部の人は毎日練習もせずにあんな美味しいケーキを食べてるなんて羨ましいなあ、と考えていただけだよ」

梓「ケ、ケーキ食べてるだけじゃないよ。ちゃんと練習もしているもん!」

純「どうだか……」

梓「まあ、ケーキを毎日食べているってのは否定しないけどね」

21: 2010/12/29(水) 01:10:02.61
純「……ねえ、梓」

梓「ん?」

純「あのさ……紬先輩の写真とかない?」

梓「ムギ先輩の……? ケータイのでよかったら、あるけど」

純「! 送ってよ! その写真!」

梓「……何で?」

純「え、えーと、ジャ、ジャズ研の女の子がね紬先輩の大ファンなんだって! 写真もらってきて下さいって言われちゃってさー」

22: 2010/12/29(水) 01:10:55.42
とっさの言い訳にしては上出来だと純は思った。

梓「まあ、いいけど」

梓は携帯を操作し、純に写真添付のメールを送った。

純「おお、どれどれ……梓、私は梓と言う友人をもって良かったと心から感謝するよ」

梓「なに? それ。大げさね」

純(……ああ、紬先輩の顔写真……素敵)

23: 2010/12/29(水) 01:11:45.18
純(おっと、いけない。よだれが)

純(…………可愛いなあ…………)

純(………………えへへ)

梓「…………純、何か気味悪いよ? その笑顔。どうしたの?」

純「あ、え、何でもないよ。うん。本当に何でもないってば」

梓「そう。ならいいんだけど」

24: 2010/12/29(水) 01:12:32.44
純「あのさ、梓。まだ写真ない? 紬先輩の」

梓「あるけど……そんなにあげるの? 後輩とやらに」

純「わ、私はいつでもいい先輩でいようと思っているんだよ」

梓「まあ、いいけど」

そして再び、純の携帯に送られてくる。

純(……えへへ、ああ、紬先輩っていいなあ)

25: 2010/12/29(水) 01:13:22.42
憂「純ちゃん、梓ちゃん、おはよう~」

梓「ああ、憂、お早う」

憂「純ちゃん、どうしたの?」

純「……………………」ニヨニヨ

憂「おーい、純ちゃーん?」

純「……………………」ニヤニヤ

26: 2010/12/29(水) 01:14:08.76
憂「ねえ、純ちゃん?」

憂は純の肩を揺すぶる。

純「って、何!? 憂、ど、どうしたの? いきなり」

憂「いや……何度呼んでも反応がなかったから。何見ているの?」

憂は純の携帯を覗き込む。

純「あ、これは…………」

27: 2010/12/29(水) 01:15:06.54
憂「ああ、紬さんの画像だね」

純「う、うん。そうだよ」

梓「純ったら変なのよ。さっきからムギ先輩の写真見てにやにやにやにや、笑っているの」

純「ち、違うよ。思い出し笑いだよ。そう、思い出し笑いだよ」

梓「……何で同じことを二回言うのよ」

28: 2010/12/29(水) 01:15:52.87
放課後

梓「じゃあ、私軽音部行くから。 ばいばい」

憂「あ、私も今日お姉ちゃんに用事あるんだった。私も行かなきゃ」

梓「何の用?」

憂「晩御飯何がいいかって聞くの」

梓「へえ……それはそれは」

29: 2010/12/29(水) 01:16:43.48
純「わ、私も行こうかな、軽音部」

梓「純……ジャズ研は?」

純「あ、た、たまには休まないとね。腕が疲れちゃうよ、うん」

梓「ふーん、まあいいけど」

純「あ、勘違いしないでよね。別に、紬先輩に逢いたくて行くんじゃないよ?」

梓「いや……誰もそんなこと聞いていない」

30: 2010/12/29(水) 01:17:28.18
音楽室

梓「こんにちはー」

唯「あ、あずにゃん! それに憂! 純ちゃんまで!」

梓「何かすみません。沢山連れてきちゃって」

唯「多い方が楽しいよー」

憂「ねえ、お姉ちゃん? 今日の晩御飯何がいい?」

唯「えーとね、んとね、パスタ!」

31: 2010/12/29(水) 01:18:19.85
憂「私もそうしようと思っていたところだよ~」

唯「え、ほんとう? さすが私たち姉妹! 以心伝心だね!」

言いながら、ハグし合う二人。

憂「お姉ちゃん…………」

唯「ういいぃ…………」

32: 2010/12/29(水) 01:19:04.50
律「おー、梓、来てたのか」

梓「あ、こんにちは。律先輩」

律「うん。……で、そちらの方は? 佐々木さんだっけ?」

純「あ、いえ。鈴木です」

律「ああ、そっか。鈴木さんね」

と、そこで紬のお茶にしましょう、という声が響く。

全員がテーブルのところに座った。

33: 2010/12/29(水) 01:20:17.89
紬「あら、今日は七人もいるのね。どうしよう……ケーキ6個しかないわ」

梓「あ、純にはやらなくていいですよ」

純「え、何でさ梓! 仲間外れはんたーい!」

梓「だって純、軽音部じゃないでしょ?」

純「じゃあ憂もそうじゃん!」

梓「憂は別よ。唯先輩の妹なんだし」

34: 2010/12/29(水) 01:21:00.62
純「わ、私だってジャズ研会長候補の一人だよ!」

梓「うん……で?」

紬「ああ、じゃあ純ちゃん。私と半分こしない?」

純「え? いいんですか?」

紬「ええ。私、ダイエット中なの」

純「じゃあ、……お言葉に甘えて」

半分にされたケーキの片方が、純の皿に置かれる。

35: 2010/12/29(水) 01:22:16.63
紬「はい、どうぞ」

純「あ、ありがとうございます…………」

純(紬先輩のケーキ、紬先輩のケーキ、紬先輩のケーキ!)

純「じゃ、い、頂きます……」 ムグムグ 「昨日のもおいしかったですけど、これも、美味しいですね!」

紬「そう? ありがとう」

純(……ああ、紬先輩って本当にいい人だなあ)

36: 2010/12/29(水) 01:23:11.55
紬「はい、どうぞ」

純「あ、ありがとうございます…………」

純(紬先輩のケーキ、紬先輩のケーキ、紬先輩のケーキ!)

純「じゃ、いあ、頂きます……」 ムグムグ 「……昨日のヤツより、美味しいですね」

紬「そう? ありがとう」

純(……ああ、紬先輩って本当にいい人だなあ)

37: 2010/12/29(水) 01:24:14.91
あ、貼り間違えた

純(そのうえ可愛いし、綺麗だし、声も素敵だし……)

純(…………もっと、紬先輩と一緒に入れたらいいのに……)

純(……どうやったら紬先輩と一緒にいられるんだろう?)

純(ジャズ研辞めたらいいんだろうけど……気が引けるしなあ……)

純(……そういえば、紬先輩の家ってどこにあるんだろう)

純(明日、梓に訊いてみようかな)

39: 2010/12/29(水) 01:25:00.28
憂「じゃあ、私帰るね。お姉ちゃん」

唯「え! もう行っちゃうの? もう少しいてもいいのに」

憂「ううん、お姉ちゃんに早くご飯を作ってあげたいから……」

唯「そっか、じゃあまたね……」

憂「うん。お姉ちゃん……」

純「あ、憂! わ、私も帰るよ」

41: 2010/12/29(水) 01:25:46.56
梓「……結局純、何しに来たのよ」

純「ほら憂、早く帰ろう? ね?」

憂「え、う、うん」

紬「またね~、憂ちゃん、純ちゃん」

その紬の言葉を聞きながら、純と憂は音楽室を出た。

43: 2010/12/29(水) 01:26:33.92


憂「うう、寒いね、もう冬だよ」

純「本当だね」

憂「あのさ、純ちゃん。一つ訊いていい?」

純「? うん」

憂「今日どうかしたの? 朝からなんか変だよ?」

純「え? あ、あはは。やだなー、憂。私は普通だよー?」

45: 2010/12/29(水) 01:27:25.10
憂「携帯見ながらニヤニヤしててさ、授業中も何かぼーっとしていたよ?」

純「べ、別に何でもないってば」

憂「ううん、嘘。純ちゃん、いつもより声が上ずっているもん」

純「ははは……まさか」

憂「ほら、目も逸らしちゃってるし」

純「……ああ、憂には隠し事できないね。憂、きっと鬼嫁になるよ」

46: 2010/12/29(水) 01:28:11.90
憂「はぐらかさないで。何かあったの? 相談に乗るよ?」

純「あ、あれだよ。好きな人が出来ただけだって」

憂「へえ、誰?」

純「…………誰にも言わないでよ」

憂「言うわけないよ。だから、教えて?」

純「紬先輩」

47: 2010/12/29(水) 01:28:57.45
憂「…………へ?」

純「私、紬先輩のこと好きになっちゃった」

憂「……本気?」

純「うん。ヤバい。重症。本気で紬先輩のことが気になっちゃってる」

憂「うーん、でも、それは……」

純「……どうしよう、嫌われるかな? レズだって」

憂「ううん。それ以前にね、紬さん、付き合っている人いるよ?」

49: 2010/12/29(水) 01:29:49.92
純「え! え、え、え、誰それ!」

憂「…………梓ちゃん」

純「」

純「……うそ?」

憂「……本当」

50: 2010/12/29(水) 01:30:38.21
純「嘘嘘嘘嘘! 梓が紬先輩と!?」

憂「うん…………残念ながら」

純「な、何で憂知ってるの?」

憂「『私ムギ先輩と付き合うことにしたんだ~』って、二、三か月前に言ってきたよ。梓ちゃんから」

純「そ、そん、な………………」

憂「多分……告白しても、振られるのが関の山だと……」

51: 2010/12/29(水) 01:31:25.05
純「…………………………」

憂「…………………………」

純(………………ああ、だから梓、紬先輩の写真一杯持っていたんだ)

純(…………私じゃなくて、梓、か)

憂「…………純ちゃん?」

純「あ、ああ、何? 憂」

52: 2010/12/29(水) 01:32:18.75
憂「ハンカチ、貸そうか?」

純「え? 何で?」

憂「純ちゃん、泣いているよ?」

純「え」

純は目をこする。ぬめり、とした感触。涙だ。

純「あぁ……本当だ」

53: 2010/12/29(水) 01:33:04.92
憂「はい、ハンカチ」

純「うん……ありがと」

憂「あの、言わない方が良かったかな?」

純「ううん。言ってくれてよかったよ。うん、ずっと片想いをしていることもなくなったわけだし?」

憂「……そっか」

純「いやー……それにしても梓と紬先輩が付き合っているなんてね……、アメリカ人もびっくりだよ」

あはは、と力なく笑う。

54: 2010/12/29(水) 01:33:48.39
憂「うん…………あ、私の家ここだから」

純「ああ、……じゃあね。唯先輩に美味しいパスタ作ってあげてね。あ、あとハンカチ洗って返すよ」

憂「……うん、ばいばい」

憂が平沢家の中に入って行く。

純が一人取り残される。

55: 2010/12/29(水) 01:34:49.27
純(……………………梓と紬先輩が付き合っている……アベック……)

純(………………何で、私じゃないんだろう)

純(…………二日間の恋、か。早すぎるなあ)

純(……ううん。諦めちゃあ駄目だ。そう簡単に好きになった人を忘れられるものか)

純(梓と付き合っている? それがなんだ。奪えばいいんだ。私が紬先輩を寝とってやる!)

純(そうだ、そうしよう。梓から紬先輩を奪おう。ゆっくりと、慎重に……)

純(まずは……手を繋ぐところから、かな)

56: 2010/12/29(水) 01:35:36.98
翌日   放課後

純「ねぇ、梓」

梓「ん?」

純「その髪留めってさ、紬先輩からもらったものなんだよね?」

梓「うん」

純「デートした時に?」

梓「…………え?」

57: 2010/12/29(水) 01:36:22.62
純「梓、紬先輩と付き合っているんだってー? このこの!」

梓「な、何で知ってるの!?」

純「憂に教えてもらったんだー」

梓「くぅぅ、憂のヤツ。誰にも言わないでって言ったのに」

純「ところで。軽音部っていつ活動終わるの? 六時くらい?」

梓「え? うん、まあ、六時とかそれくらいかな」

58: 2010/12/29(水) 01:37:08.22
純「そっか」

梓「それがどうかしたの?」

純「ううん。何でもないよ、それよりさ」

梓「なによ」

純「私も、紬先輩のこと好きなんだ」

純は逃げるように教室を出た。

梓「は? って、ちょっと、純!?」

59: 2010/12/29(水) 01:38:26.82
PM 6:00

純(軽音部の練習が終わるのは6時……)

純(校舎の外で待って、もう二時間がたっているけど……まだ来ない……)

純(ん? 唯先輩の声!)

純(あ、紬先輩が校舎から出てきた。梓もいる、唯先輩もいる)

純(よーし、紬先輩が一人になるまでストーキングして……)

60: 2010/12/29(水) 01:39:14.84
数分後

純(よし! やっと紬先輩一人になった!)

純(自然に、ナチュラルに、ごく普通に声をかけるぞ…………)

純はゆっくりと、紬に近づいていく。

そして――――。

純「あれ? 紬先輩じゃないですか?」

61: 2010/12/29(水) 01:40:03.19
紬が振り返る。

紬「あら、純ちゃん?」

純「はい。奇遇ですね、先輩」

紬「本当ね~」

純「あの、部活の帰りですか?」

紬「ええ、そうよ」

62: 2010/12/29(水) 01:40:50.93
純「あの、良かったら、どこかに寄り道しませんか?」

紬「私と?」

純「はい。あの、ゲームセンターとか、えーと、マックとか」

紬「ゲームセンター! 行きましょう!」

純「あ、はい」

純(ゲームセンターにこんなに食いつくとは思わなかった……)

63: 2010/12/29(水) 01:41:42.52
ゲームセンター

紬「あぁ……りっちゃんと来た時より内装が綺麗になってる……、それに少し広くなっているみたい……」

紬「あ、UFOキャッチャー! 純ちゃん、出来る?」

純「あ、はい。得意ですよ、昔はUFOキャッチャーの女帝とも呼ばれていましたからー」

紬「本当!? じゃあじゃあ、あのお人形さん取れる?」

キティの人形を指差した。

純「楽勝です」

64: 2010/12/29(水) 01:42:38.80
純はUFOキャッチャーに二百円を投入する。紬の視線を感じながら、アームを操作し、紬のお目当てであるキティの人形を掴んだ。

純「やったぁ! 取れましたよ! 紬先輩!」

紬「すごい! 純ちゃんカッコいい!」

純「えへへ、ありがとうございます」

ゲットしたキティを、紬に渡す。

紬「ああ……可愛い」

65: 2010/12/29(水) 01:43:27.45
むぎゅ、とキティを抱きしめた。

純(いいなあ……キティと代わりたい)

紬「私にもやらせて?」

純「あ、はい、いいですよ」

紬「コツとかあるの?」

純「取りたい物の手前でアームを下ろしてください。アームは挟む力が緩いですから、足より頭を狙った方が取りやすいです」

67: 2010/12/29(水) 01:44:13.27
紬「ふぅん。やってみるわね」

紬はお金を投入する。

どうやら、狙っているものはドラえもんのようだ。

アームがドラえもんの頭を掴み……そして、アームからすり抜けるようにして落ちた。

紬「あ…………」

純「だ、誰でも初めてで取るのは難しいですよ、何度かチャレンジしたら取れますよ」

68: 2010/12/29(水) 01:45:36.63
紬「わかった、やってみるわね」

二回目……失敗 三回目……失敗

そして四回目のチャレンジの果てに、ドラえもんをゲットした。

紬「やったわ!」

純「おめでとうございます! 紬先輩!」

69: 2010/12/29(水) 01:46:24.97
取りだし口からドラえもんを取り出す。

紬「はい、純ちゃん」

純「え? くれるんですか?」

紬「ええ。お返しに」

純「あ――ありがとうございます!」

70: 2010/12/29(水) 01:47:11.82
純(一生物の宝にしよう! この人形!)

紬「あ、次はあれがやりたいわ!」

メダルゲームを指差す紬。

純「はい、やりましょう!」

そして二人は、パチンコ型のメダルゲーム機が並んでいる場所へと向かった。

71: 2010/12/29(水) 01:47:55.70
****************************************

ゲームセンターで遊び疲れた頃には、九時を過ぎていた。

純「そろそろ帰りますか? ここも十時に閉まっちゃいますし」

紬「そうね。そうしましょうか」

二人は外に出た。

紬「あら、寒くなってるわね」

純「はい、もう九時過ぎてますから」

72: 2010/12/29(水) 01:48:40.26
紬「ごめんね、何か連れまわしちゃって」

純「いえ。誘ったのは私ですもん」

純はドラえもんを、紬はキティをそれぞれ握っている。

純「楽しかったですね」

紬「ええ。また行きたいわ」

純「今度、また行きませんか? あ、空いているときとかに」

73: 2010/12/29(水) 01:49:25.12
紬「いいわね、楽しみ~」

純「じゃあ、あの……メルアド、交換しませんか?」

紬はいいわよ、と肯定した。

純「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」

二人は携帯を取り出し、赤外線通信でお互いのアドレスを交換した。

純(ああ……紬先輩のメールアドレスだぁ……)

74: 2010/12/29(水) 01:50:25.57
純(……これで、朝でも夜でも休日でも、紬先輩とやり取りが出来る……なんて素敵!)

純(なんか、やっと第一歩を踏み出せたって気がするなあ……)

純は携帯をポケットにしまう。

冬の夜、辺りは人気がないからか余計に寒く感じられた。

二人の脇を、風が通り抜ける。

76: 2010/12/29(水) 01:51:18.80
純(うう、寒っ)

純(…………手、繋ぎたいな)

純(…………いいよね、少しくらい大胆になってもさ)

純(梓が見ているわけでもないんだし)

純「あの、紬先輩」

紬「なに? 純ちゃん」

純「……手、繋ぎませんか? ほら、寒いですし」

77: 2010/12/29(水) 01:52:07.33
紬「いいわよ」

紬は空いている方の手を差し出す。

純「あ、はい」

純はその手を握る。

冬の寒さなんか忘れてしまうくらいに、紬の手は温かかった。

78: 2010/12/29(水) 01:52:52.07
純「温かいですね、先輩の手」

紬「よく言われるわ」

手を握った二人は、ゆっくりと歩いて行く。

純(出来ればもっと先、キスとかをしたいけれど、それはあまりにも欲張り過ぎだよね)

純(まあ、これはこれでいいかもしれないし)

純(今はまだこの温かさに、ひたっていよう……)

純は紬の手を、強く強く握りしめる。

悪い気分じゃない、と純は思った。

79: 2010/12/29(水) 01:53:45.66
翌日 朝

梓「ねえ、純。昨日ゲームセンター行ったの? ムギ先輩と」

純「え? ええ? 何で知ってるの?」

梓「昨日ムギ先輩からメール来てね、『純ちゃんとゲームセンター行ったの。すごく楽しかったわ』だって」

純「い、いいでしょ? そのくらい。ただ帰り道に偶然出会ったからどこか行きませんかって誘っただけだよ」

梓「何が『いいでしょ』よ。私とムギ先輩が付き合っているの知ってるなら、ちょっとは自重してよね」

80: 2010/12/29(水) 01:54:38.61
純「やだ梓、独占欲はっげしー! そんなに紬先輩を自分のものにしたいんだー!」

梓「ち、ちが、そう言うことじゃなくて!」

純「でもね、梓」

梓「何が?」

純「私は絶対に、紬先輩のこと振り向かせろうって決めたんだよ」

それは純の、ささやかな逆襲だった。
                              終わり

81: 2010/12/29(水) 01:56:34.87

結末まで書いてほしかったという気持ちもあるけど、面白かったよ

82: 2010/12/29(水) 01:58:59.56
これ以上は凄惨な状況になりかねないしな

引用元: 純「私、紬先輩のこと好きになっちゃった」