1: 21/10/24(日)11:33:57
――普通の……テレビにしろネット配信にしろ、料理番組でまずいものをわざわざ作ることはしないだろう

――ましてや、アイドルが作りアイドルが食べる番組なら当人のイメージもあり、そんなことはしない……

――そういうことをするのは、昔からエンターテイメント……ぶっちゃけお笑い番組と相場は決まっている

――彼等なら、料理下手だろうと片付けるのは本人だから被害は少ないと……



――しかし、そのタブーをあえて崩すヤツラがいた!

2: 21/10/24(日)11:43:41
千枝「唯と」

唯「千枝と」

二人「ぽてとまっしゃー料理帖!」



唯「今日作るのは何カナー?」

千枝「今日は」



「興亜建国パンを作ります!」

唯「わーい」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%88%E4%BA%9C%E5%BB%BA%E5%9B%BD%E3%83%91%E3%83%B3

3: 21/10/24(日)11:46:26
……オリジナルの番組等、こちら独自の内容がありますのでよろしくお願いします



あと、このパン(もどき)は作るのはインスタ栄えとか以外で作らない方がいいですよ

4: 21/10/24(日)12:11:42
唯「で、wiki読んで大体はわかったけど、何でそんなに不人気だったワケ?」

菜々「はい。それなんですが当時既に砂糖が配給制になっていて、材料の1/3も必要なのに入手困難だったこと」

「それからふくらし粉(ベーキングパウダー)も手に入らなくて、重曹で代用したんですが、冷めると……」

みちる「イースト菌じゃなくて、ベーキングパウダーで膨らますって焼くパンじゃなくて蒸しパンですね!」

6: 21/10/25(月)18:52:28
菜々「後……これが一番問題なんですが」

「海草粉……はまだしも、魚粉を入れるってことなんですよ」

千枝「魚粉って……カルシウム一杯のふりかけとかのアレじゃないんですか?」

菜々「全然違います!!」クワッ

千枝「は、はいっ!」ビクッ

菜々「あー、思わず大声を出してしまいました……ごめんなさい」ペコッ

千枝「あ、だ、大丈夫です」

菜々「えーと、わかりやすく言うと、鰯のはらわた。アレを乾燥させて粉にしたものなんですよ!」

七海「肥料とか家畜の餌れすね」

夕美「園芸とかで、肥料を見に行くと独特の臭いがあるけど、あんな感じかな?」

菜々「例えるならそうですね……仮にですが、そんな所でパンを食べろと言われて食べたいですか?」

幸子「まぁ、ニューギニアのジャングルでマラリアに罹患し、さらに鉄砲水に襲われながら食べた乾麺麭に比べれば……」

芽衣子「あと、左派ゲリラの銃声の聞こえる中で、国連軍から分けてもらった解凍したてのパンの味とか……」

むつみ「それは、もはや冒険のレベルを越えてます……」



菜々「ま、まぁ、そういう例外もありますけど……」

唯「というか、それってホントにアイドルがやることかな?」

7: 21/10/25(月)19:04:16
菜々「ともかく、今のは無味無臭なんですが、当時のは臭いがひどかったんですよ!」

夕美「たしかに……鰯とかは昔から青魚だから体にいいとかカルシウムとか入ってるし、海草の粉だってヨードとかミネラルとか栄養はあるけど……」

七海「少なくとも、あれは人間が食べるものではないのれすね」

幸子「当時の人って、どんなものを食べていたんですか……」

菜々「逆に言うと、そんなのしか手に入る栄養価のあるものはなかったってことなんですよ」

むつみ「歴史の授業では、そこまで教えてくれませんからね」





千枝「というわけで実際に作ってみましょう!」

唯「今風にアレンジしてるんで、当時風にするなら……その……えっと」

七海「鰯を釣って来て、はらわただけ取って乾燥させるのれすよ」

幸子「それは、カワイイボクに相応しくないでパスします!」

8: 21/10/25(月)19:27:43
千枝「まず材料ですが、メリケン粉……強力粉370g、大豆粉110g、片栗粉35g、魚粉15g、砂糖150g、ふくらし粉10g、バター25g、食塩少々に野菜の細切れ……人参や大根菜にほうれん草等が推奨されてます」

「当時の『主婦之友』に掲載されたレシピよりは、糧友オフィシャルに近い量の割合になってますのでご注意を」

唯「まず、野菜を細かく刻んで、粉の類全て篩にかけちゃうよ☆」サッサッ

千枝「そうしましたら、砂糖と塩に野菜スープ140ccを入れて溶かし、これに篩った粉と野菜を約50g入れ練らないように混ぜます」

唯「混ぜ終わったら丸めて10等分ぐらいにしてっと」マルマル

千枝「あとは、180度のオーブンで20から30分焼きます」

唯「蒸しパン風がホントっぽいけど、あくまでアイドル風って感じでカワイクいっちゃうよ♪」

9: 21/10/25(月)19:28:52
チーン

唯「焼けた、焼けたっ!」

千枝「少し冷ましたら頂きましょう」

みんな『はーい』

10: 21/10/25(月)19:39:15
千枝「ではちょうどいいぐらいまで冷めましたので」

唯「手を合わせて」

『いただきま「フゴフゴ!」

幸子「ちょ!みちるさん!?」

みちる「ぷはーっ、なかなかイケますね」フゴフゴ

七海「意外に食べられるのれすよ」モグモグ

夕美「臭いとか気にならないし、やっぱり現代風にアレンジし過ぎたのかなぁ?」

むつみ「食べるもので冒険するのは、作ってくれた方に対する冒涜です!」

菜々「そうですね……あの時はメリケン粉すら手に入らなくて、うどん粉で代用したのを作りましたっけ……」

「野菜なんてクズ野菜すらもったいなかったから、茶殻や道端の草とか入れてましたし」

唯「ゑ?茶殻って、あの……お茶のアレ?」

菜々「はい……食べる物がだんだん無くなって、終いにはどんぐりの粉が配給で来ましたからね……」

千枝「どんぐりの粉……ですか?」

菜々「まだ、自分の家の庭で育てていたトウモロコシの方がマシでしたよ。ホント……」

夕美「菜々さん……」






菜々「はっ!」

「って話をおばあちゃんから聞きましてね」

「ナナは17歳ですから、そんなことはちっとも全然知らないですよ!」

「あはははーっ」

11: 21/10/25(月)19:48:25


千枝「菜々さん……」

(でも、千枝は見ちゃいました。そんな笑う菜々さんの目にうっすらと流れる涙を)

(昔を懐かしいと感じながら何かあったのかよくわかりませんが、少し淋しげな表情でした)

(もっと詳しく知りたいと思いましたが、その涙を見ると聞けなくなっちゃいます)

(でも、いつかきっと。菜々さんの……昔々のお話。また聞けるといいですね)

(その時は、ぜひ千枝の娘にも聞かせて上げたいです)

(あなたの生まれるずっと前に、こんなことが本当にあったんだよって)

(むかしむかしのおはなしを……)

12: 21/10/25(月)19:57:46


千枝(番組が放映されてから数日後。色んな人からのメールやお便りが届きました)

(そんな中には、今の生活がいかに贅沢であるかなんて難しいことがあったり、そんな状態にした戦争は反対だとかのお便りもありました)

(でも、千枝は思います。あれを作ったのは過去がとか今がとか難しいことじゃなくて)

(もう過去のことを千枝達はどうすることもできません。だからといって何もしないのはライブで負けたりレッスンで失敗するぐらい悔しいです)

(せめて、あの時代があったから千枝達がこうやって生きていることを改めて知るきっかけになれば……ってそれだけなんです)

13: 21/10/25(月)20:00:13
(そして千枝は……)





ワーワーワー

千枝「みなさーん!千枝のライブに来てくれてありがとうございまーす」

「最後まで楽しんでいってくださいね!」



(今日も一生懸命)

「アイドル佐々木千枝、頑張ります!」



おしまい

14: 21/10/25(月)20:03:15
というわけで、Yak…焼くと普通においしいパンでした

まずいのは蒸したモノですよ

まぁ、当時のかまどや囲炉裏しか無かった時代にそれは無理なんですがね



では読んで下さった方へ、さつまいもプリンを

引用元: 唯「歴史の検証だよ☆」千枝「頑張りますっ!」