1: 2011/01/17(月) 21:33:17.44

2: 2011/01/17(月) 21:35:43.17
ほうかご!


澪「唯。憂ちゃんと何かあったのか?」

唯「ほえ? 澪ちゃん、どうしたの急に」

澪「質問に答えてくれ。何か…上手く言えないけど、変だぞ」

唯「そんなことないよー。普通だよ?」

澪「……そうだな。どう見ても憂ちゃんのほうが無理してるからな。唯に言っても答えてくれないだろうとは思っていたさ」

唯「ぶー。……澪ちゃんに信頼されてないってのは、なんかすっごく落ち込む」

澪「あ、いや、そういう意味じゃないんだ。でも、それくらい変なんだよ、お前たち」

唯「そうかなぁ?」

澪「梓にな、教室の憂ちゃんと比べてどうなんだ? って聞いたんだけどな。やっぱり、若干の違和感を感じていたよ。あぁ、それと……梓から聞いたって?」

唯「……何を?」ジロリ

澪「ぶ、文化祭の日のこと。去年の、さ……」

唯「……聞いたけど、それがどうかしたの?」

澪(……な、なんだ、これ、唯なのか? なんか…怖い…)

4: 2011/01/17(月) 21:44:00.61
澪「ゆ、唯? どうした? 何か…怒ってる?」

唯「なんで? 何に怒るの?」

澪「い、いや、気のせいならいいんだ、はは……」

唯「……怯えた澪ちゃん、かわいいね」

澪「へっ!?」

唯「憂もね、そういう顔してる時ってすっごくかわいいんだよ」

澪「ゆ、唯…?」

唯「……なんてね。冗談だよ、また明日ね、澪ちゃん」ガラッ

澪「あ、唯……行っちゃった」

澪「……唯、お前はやっぱり、憂ちゃんに……」

澪「……お前の気持ちはわかるよ。わかるんだ。話してくれれば、お前の味方をするつもりだった」

澪「でも、話してくれないなら…」

澪「私は、友人として、お前を止める…!」ダッ

5: 2011/01/17(月) 21:55:35.11
澪「唯!!」

唯「澪ちゃん……今度はどうしたの?」

澪「……どうもしないさ。状況は何も変わっていない。だから、今私がお前に言いたいことは一つだけだ」

澪「……唯、もう止めよう?」

唯「何もないってばー。私、どこかおかしかった?」

澪「お前はどこもおかしくないよ。いつも通りだ。そして、それがおかしいんだ」

唯「澪ちゃんの言うことは難しいよー」

澪「辛うじてとはいえ、私が気づくくらいに憂ちゃんが最近おかしい。だから、それに唯が気づかないことがお

かしいんだ」

唯「…なーるほどー…」

6: 2011/01/17(月) 21:56:59.99
変な改行が入ったorz

安価とかしてみたかったけど人いないね

8: 2011/01/17(月) 22:06:07.11
澪「……なぁ、唯。止めよう、って言ったけどさ、別に止めろとまでは言いたくない――いや、言えないんだよ

、私は」

唯「……どういうこと?」

澪「大体の予想はついてるんだ。そして、私も唯の立場だったらきっと同じ事をする」

唯「………」

澪「だから、私が止めようって言ってるのは、単純に、さ」

澪「唯が、苦しいときに私に何の相談もしてくれなかったのが悔しいからなんだ。唯にとって、私はその程度だ

ったのか、って」

唯「っ……」

澪「悔しいから、唯の邪魔をする。子供じみた仕返しだよ。というか、私はまだまだ子供だ」

澪「だから、私は子供だからさ、唯。今からでもいい、事情を話してくれれば、すぐに手の平を返すよ」

唯「澪ちゃん……」

澪「私は、唯がどんな想いを抱いていても、どんな奴でも、唯の味方でいたいから」

唯(私は……)

12: 2011/01/17(月) 22:15:56.11
*話す


唯「……別に、そこまで大袈裟なことじゃないよ…」

澪「…じゃあ、どんなことなんだ?」

唯「…悔しかった。それだけだよ」

澪「充分だよ。唯は傷ついたんだ」

唯「っ……そんな大袈裟なことじゃないよ! 私が…! 私なんて、この程度だったんだって…! それだけだよ!」

澪「そうやって涙を流してるんだ。傷ついていないといえば嘘になるよ」

唯「違うよ! きっと、これくらいの挫折なんてみんな経験してる、超えなくちゃいけない壁なんだよ…! でも、私には…無理だよ……」

澪「ふふっ、まぁ唯はそういう争いみたいな競争みたいなのには向いてないからな」

唯「のんびり、みんなと楽しくやりながら、でも自分なりに努力もしてた……でも、やっぱり才能には勝てないんだよ!」

澪「うーん…それはちょっと違うな。才能のある憂ちゃんがダメってわけじゃないけど、私は唯がいい」

唯「どうして!? 憂のほうがギター上手いじゃん!」

13: 2011/01/17(月) 22:24:33.61
澪「放課後ティータイムは、別にギターの上手い人を欲しがってるわけじゃないよ。部員募集のチラシ、見ただろ?」

澪「確か…『ギタリスト募集』って書いたっけな。ギターを弾いてくれれば、誰でもよかった」

唯「誰でもよかったなら…それこそ憂でも!」

澪「ダメだよ。もうそこは唯の場所だから。入部してくれたあの時、決まったから」

唯「……じゃあ、もし、もしも私が軽音部辞めたら…そして憂が入部するって言ったら?」

澪「……唯は、私にこうして話してくれたからね。私は、唯の味方をしたい。だから、その時は私も辞めて、どこかスタジオでも借りて唯と演奏する」

唯「なんか話がズレてる気がするよ……憂じゃなくてもいいよ、私より上手いギターの人が入部したら、ってことにして」

澪「私は、唯とバンドがしたい。唯じゃないとダメだ。それだけだよ、何も話はズレてない」

唯「上手い人と一緒のほうが…いい演奏が出来るよ、きっと」

澪「でも、唯と演奏が出来ないなら意味ないよ」

15: 2011/01/17(月) 22:35:56.64
唯「なんで…私なの? 私じゃないとダメなの?」

澪「唯と一緒が一番いいから。何度も言うけど、それだけだよ。マンガやドラマみたいなカッコよくて深い理由はないよ」

唯「マンガやドラマも、カッコいいだけで別に深くはないけどね…」

澪「…うん、私も実はそうなんじゃないかって薄々思ってた。遠回しに言ってれば深く見えるし」

唯「…何の話だったっけ」

澪「放課後ティータイムのギターは憂ちゃんじゃなくて唯だって話」

唯「……卑屈なこと言っていい?」

澪「憂ちゃんよりもっともっと上手い人が来たら――っていう話は無しだぞ」

唯「なんで?」

澪「憂ちゃんより出来た人間が存在すると思うか?」

唯「…思わない」

澪(あ、そうか。『優』れた『人が無い』から『憂』なのか。なんちゃって)

17: 2011/01/17(月) 22:42:06.81
唯「……なんかものすごくシンプルで強引に納得させられた気がするけど…でも、ホッとしたよ」

澪「それはよかった」

唯「…私も、わかってたんだよ。憂も、私の為を思ってやったんだって。憂もシンプルな考えだったんだって」

澪「そうだな…憂ちゃんは唯のこと大好きだからな」

唯「それでも、許せなかった。私の為ってわかってるからこそ、私の努力を否定したのが許せなかった」

澪「……うん。わかるよ」

唯「私の居場所を奪おうとしたのが…許せなかった」

澪「…うん」

19: 2011/01/17(月) 22:47:52.64
唯「でもよく考えたら私のボーカルだって澪ちゃんに比べて評価されてないしねー」

澪「……へ?」

唯「いやー、私だって頑張ってるんだよ? ムギちゃんに音取りしてもらいながらさ」

澪「う、うん。知ってる」

唯「でもさー、世間は澪ちゃん澪ちゃんキャーキャー言ってるし。ファンクラブもあるし」

澪「いや、私は嬉しくないんだけど…」

唯「あずにゃんや憂が澪ちゃんの話してるときも、歌の上手さが話題になるのにさー」

唯「私のときはそういうのはサッパリで」

唯「私ってなんなんだろうねーって、思っちゃうよね」

澪「…あれ? なんだこの流れ…」

唯「選択肢を間違ったってことだよ、澪ちゃんは」

澪「え?え?」


唯「ばっどえんどだよ!」

24: 2011/01/17(月) 23:00:30.59
*話さない


――澪ちゃんは、ホントに優しい。
私のことも、憂のことも、同じようにちゃんと見てくれている。憂とはそんなに接点はないはずなのに。
でも、だからこそ、私は問いかけないと気が済まない。

唯「……澪ちゃんが助けたいのは、私なの? 憂なの?」

澪「助けるなんて崇高な気持ちじゃないよ。唯が何も話してくれないから、私には二人の問題は解決できない」

澪「だから、せめて何事もなかった時に『戻したい』だけなんだ」

我ながら残酷な問いだったと思うけど、澪ちゃんは素敵な答えを返してくれた。

唯「……澪ちゃんは優しいね。そういうところ、大好きだよ」

澪「…茶化すな。こっちは真剣なんだぞ」

茶化したワケじゃない。本当に、澪ちゃんのことは大好きだ。
でも、正直言って私は恋愛経験なんてロクにないから、これが恋なのか、ちょっと行き過ぎた友情なのかはわからないけれど。

唯「私だって真剣だよー。だからさ、澪ちゃん。正々堂々、勝負しよう?」

27: 2011/01/17(月) 23:08:40.08
澪「勝負? なにでだ?」

唯「憂で。憂が私と澪ちゃんのどちらを選ぶかで」

澪「……そんなの、憂ちゃんが唯を選ばないわけがないだろ」

唯「そうかなぁ? 澪ちゃん、気づいてるんでしょ?」

澪「………」

唯「澪ちゃんは決して私を責めないけど…気づいてる」

澪「そう、だな……唯は、憂ちゃんに何かしている。何をしているのか、そしてそれが酷いことなのかどうかはわからないけど」

唯「憂の様子がおかしいのなら…ひどいことだって思うのが普通だよ。無理しなくていいよ」

実際、私は憂を傷つけている自覚はある。
肉体的にはまだ何もしていないけど、あれだけ泣かせて『何もしていない』というのは絶対に無い。
でも、そんなひどい私にも、澪ちゃんは真っ直ぐ、正直にぶつかってきてくれる。

澪「…唯はそんなことをしないと信じたい。けれど、私が唯の立場だったら絶対にするだろうから。だから、わからないということにさせてくれ」

唯「えへへ…澪ちゃんらしいね」

澪「勝負、とか言いながらも笑えるのも…唯らしいよ」

唯「…じゃあ、憂を呼ぶよ?」

澪「ああ」

30: 2011/01/17(月) 23:16:54.12
唯「――さて、憂にはこれから私か澪ちゃんのどちらかを選んでもらいます」

憂「なんで…澪さんが?」

唯「私達を見かねて、ね。憂の演技が下手だからバレちゃったよ」

憂「ご、ごめんなさい、お姉ちゃん……」

澪「…唯。そういう言い方は…」

唯「わかってるよ澪ちゃん。でも、これで澪ちゃんも決意は固まったでしょ?」

澪ちゃんは、私たちを仲直りさせたい。
なら、私たち――じゃなくて、私が、いかに憂を嫌っているかを見せ付けたほうがいい。多少オーバーでも。

澪「…そうだな。憂ちゃん、私の手を取るんだ」スッ

憂「えっ…?」

澪「そうすれば、全て元通りだ。憂ちゃんも唯も、今まで通り笑い合えるようになる。唯も約束した」

唯「うん。そうだね、それは間違いないよ」

澪「…約束だけで足りないなら、私も手伝う、全力で」

憂「澪さん…」

31: 2011/01/17(月) 23:23:31.06
澪「…正直、私が唯の立場だったら同じ事をしたかもしれない。でも、逆に唯が私の立場でも今の私と同じことをすると思うから…!」

澪「そして、きっと最後はみんなで笑い合えると信じているから!」

憂「澪さん…っ…!」ジワリ

澪ちゃんらしい、心に響く言葉。
憂が涙を滲ませてる。正直、私も決意が揺らぎかけた。いや、そもそも決意と呼べるような大それたものは私には無かった気もするけど。
……うん、確かに無いね。だから、私は澪ちゃんみたいに多くを語れない。

唯「……じゃあ、私からは一言だけだよ、憂」


唯「――澪ちゃんの手を取って」


澪憂「「…えっ?」」

唯「…さ、憂、選んで?」

憂「………」

憂「…私は…」


憂「」ギュッ

32: 2011/01/17(月) 23:31:01.06
澪「…やっぱり、か。まぁ、仕方ないな」

唯「ふーん…憂は私の言うことを聞かないんだ?」

憂「聞けないよ…あんな命令。私はまだ、お姉ちゃんに何の償いも出来てないから…! 許してもらってないから!!」

唯「まぁ、いつも通りの憂といえばそうなんだけどね。真面目で、結局全部自分一人で抱え込んじゃって…そういう意味では、よくできました、かな」チュッ

澪「な…っ!?」

憂「あっ…お姉ちゃん…っ///」

澪「お、おまえら、な、何を……そういう関係なのか!?///」

唯「ただのデコちゅーじゃん、澪ちゃん…」

澪「ち、ちゅーは好きな人とするものだ!」

唯「唇は私もそう思うよ。こんな風にね」チュッ

澪「んむっ!?」チュ

憂「!?」

34: 2011/01/17(月) 23:40:54.56
澪「ゆ、唯!? 何するんだ!?」

唯「憂は私の言うこと聞かなかったからねー。こういうおしおきはどう?」

憂「あ……お姉、ちゃん…?」

澪「おしおきって、お前…そんなことで人のファーストキスを!!」

唯「だいじょーぶ、私も初めてだから♪」

澪「そういう問題じゃない! っていうかそれなら尚更だ! 好きでもない人と…」

唯「澪ちゃんのことは好きだよ。さっきも言ったじゃない。特に…憂よりは何倍も、何十倍も好き」

憂「っ……」

澪「唯! そんな言い方――」

唯「おしおきだって言ったでしょ? 憂に、現実を見せ付けるおしおき。憂が……私にしたことの、仕返し」

38: 2011/01/17(月) 23:49:14.59
憂「っ…おねえ、ちゃ……ごめ、ごめんなさい…」ポロポロ

澪「あ…唯、もう止めてや――んっ!?」チュ

唯「ん…っ……ふぅ。なんで止めないといけないの?」

澪「なんでって…憂ちゃんがかわいそうだろ…」

唯「……澪ちゃん、こういう時くらいはっきりしてほしいな」

澪「……なにげに酷い言い草だな…でも、どれも私の本心だよ」

唯「それでも、はっきりしてほしいよ。私と憂、どっちの味方なの?」

澪「……唯の気持ちはわかる、わかるよ。でも、私は憂ちゃんとも仲のいい第三者だから…敵には回れない」

唯「んー……じゃあ、それは今はとりあえず置いておいて。澪ちゃん、キスしていい?」

澪「……なんだ、急に改まって。今まで散々したくせに」

唯「さっきまでのは憂に見せ付けるキスだよ。今から私がしたいのは、澪ちゃんに伝えたいキス」

澪「伝えたい、って……」

唯「澪ちゃんのことが、好きだから。私を受け入れてくれるなら……キスで伝えたい」

澪「あ、相変わらず、恥ずかしいことをサラッと言うな…」

39: 2011/01/17(月) 23:57:38.08
澪嫌われすぎワロタ






澪(受け入れてくれるなら…ってことは、返事待ちってことだよな)

澪(そういう目で唯を見たことは……全く無い、とは言えないけど…)

澪(というか、一年のころはいろいろ唯に支えてもらったな。梓が入部してからは唯は梓にベッタリで…少し寂しかったけど)

澪(それなのに、私のこともしっかり見てくれていたってわかって……嬉しい)

澪(……嬉しい? ……そうか、私は喜んでいるんだ。唯に好きだって言ってもらえて。ということは…)


澪「私も…唯のこと、好きだったんだ、ずっと」

43: 2011/01/18(火) 00:04:37.53

唯「……過去形なの?」

澪「いや、今更気づいたって事。気づかせてくれて…ありがとう、唯」チュッ

唯「ん……っ、ぷはぁ。澪ちゃんからしてくれるなんて……嬉しい」

澪「そりゃ、好きな人相手なら…恥ずかしいけど、気持ちは示さないとな」

唯「んふふ~……聞いた? 憂」

憂「………」ポロポロポロ

澪「あ、し、しまった、すっかり忘れてた……憂ちゃん、その――」

唯「澪ちゃん、だいすき」チュッ

澪(んっ……なんだ、このキス…今までとは違う? すごく…あったかい。きもちいい)

澪(これが、伝えたいキス…なのか。唯、こんなにも私のことを……)

唯「……澪ちゃん、今でもまだ、憂とも仲良くしたい?」

澪(私は…)


48: 2011/01/18(火) 00:14:17.03
*八方美人



澪「……唯のほうが大事だよ、好きだから。でも、出来ることなら、憂ちゃんと……唯が仲直りは無理でも、私が仲良くするのは見逃して欲しい」

唯「はっぽうびじん、だね、澪ちゃん」

澪「……自分勝手なことを言っているとは思う。だから、唯が今この場でダメって言ったらもう二度と言わない」

唯「そんなこと言わないよ。誰にでも優しいのも澪ちゃんのいいところ。その優しさを独占したいって思うのは、きっと過ぎた欲張りなんだよね」

澪「でも、私の一番は唯だから! 絶対に、何があっても!」

唯「い、いやぁ、照れますなぁ~……そんな力強く言われると」テレテレ

澪「………///」

唯「ういー? 澪ちゃんに感謝しないとダメだよ?」

憂「え…? どういうこと?」グズッ

唯「……憂がちゃーんといい子にして、私の言うことを聞いてれば……そのうち、私の気も済むかもね、ってこと」

49: 2011/01/18(火) 00:18:57.02
澪「…それは、いいことだけど…なんで私?」

唯「なんていうか、私だけ意地を張るのも恥ずかしいっていうか、好きな人の前でみっともないところを見せたくないっていうか…」

澪「ふふっ、唯は可愛いなぁ」

唯「……それに、澪ちゃんだってそれを望んでるんでしょ? 好きな人の望みは…叶えてあげないと」

憂「お姉ちゃん…澪さん……ありがとう…ございます」グスッ

唯「気が早いよ、憂。まだ私は憂を許してない。でも……はい、よくできました」チュッ

憂「あ……///」

澪「………」ムッ

澪(って、あれ? なんだ、私、今イラッとした?? あんなの、姉妹の親愛の表現じゃないか…唯もそう言ってたし)

唯「よしよし」ナデナデ

憂「…おねえちゃぁん…」トロン

澪(…憂、気持ちよさそうだなぁ……)

54: 2011/01/18(火) 00:26:12.42

すうじつご!

唯「澪ちゃん、腕組んで歩こ?」

澪「う…まぁ、人目もないし、仕方ないな///」

唯「わーい」ギュッ

澪「///」

澪(唯と付き合うことになって、私は凄く幸せだ。こんな陳腐な言葉でしか表現できないのが悔しいほどに)

澪(ただ一つ、ずっと私を悩ませている事象を除けば、だけど)

憂「あ、お姉ちゃん!」トテトテ

唯「おー、憂だ」

憂「はい、頼まれてた物持ってきたよ!」

唯「おー、ありがとー」ナデナデ

憂「えへへ///」テレテレ

澪「………」


55: 2011/01/18(火) 00:33:07.52
澪(これも一種の嫉妬、なのだろうか)

澪(私の方が、憂ちゃんよりずっと幸せな場所にいるのに)

澪(私は、憂ちゃんみたいに幸せな顔で笑えているのか、不安になる)

澪(というか、なんで憂ちゃんがあんな幸せそうな顔で笑えるのかがわからない)

澪(私という恋人がいて、自分の想いは届かないと憂ちゃんだってわかっているはずだ。なのに…何故?)

澪(……そんなに、唯に尽くす事が幸せなんだろうか?)

澪(……私も、唯に褒められて頭をナデナデされてみたいな…)

澪(…恋人なんだし、頼めばやってくれるだろうけど、それは何か違うよな)

57: 2011/01/18(火) 00:37:53.06
憂「じゃあねーお姉ちゃん。夕食までには帰ってきてねー」トテテ

唯「あいあいさー」

澪「……よし!」フンス

唯「ど、どうしたの澪ちゃん? 急に気合入れちゃって」

澪「うん、唯、何か私にして欲しいことはないか!?」

唯「え、急に何なの?? 私は、澪ちゃんには…ずっと私のことを好きでいてくれたら、それだけで…」テレテレ

澪「うっ…/// そ、そうじゃなくて! 何かこう、行動で! やってほしい事とか!!」

澪「荷物持とうか? 料理しようか? 家までおぶって帰ろうか? 何でもするぞ!」

唯「う、う~ん??? えっと…ごめんね、澪ちゃん……私、恋人なのに、澪ちゃんが何を求めているのかわからないよ…」シュン

澪「あ、あぁ、違う、違うんだ唯……」

澪(違うんだ、悲しい顔をさせたかったわけじゃないんだ。私は、ただ……)

60: 2011/01/18(火) 00:47:56.51
澪「…そういえばこの前、唯に言われたっけ。ハッキリしろって」

唯「…あのときはごめんね? 偉そうなこと言っちゃって」

澪「いや、私が悪いんだ。だから、今度はハッキリ言うから……その、笑わないで聞いてくれ」

唯「うん、澪ちゃんが笑って欲しくないなら、笑わないよう努力するよ」

澪「努力だけか……。まぁ、とりあえず言うけど…、その、な。わ、私にも……」

唯「うん…」ドキドキ

澪「わ、私にも何か命令してくれ! そして、上手くできたら褒めてほしいんだ!」

唯「」ポカーン

澪「……………おーい、唯?」

唯「……えっと、なんで?」

澪「それは、その……あぁもう、喰らわば皿まで、か」

61: 2011/01/18(火) 00:51:12.53
澪「何と言うか…憂ちゃんに嫉妬してるんだよ私は!」

澪「憂ちゃんより私の方が、唯に大切にされてるはずなんだ!」

唯「う、うん…そんなの、当たり前だよ?」

澪「だから! 憂ちゃんにするようなことは、もちろん私にもしてくれるよな!?」

唯「も、もちろんいいけど……えっと、なでなでしたり、おでこにちゅーすればいいの?」

澪「そうなんだけどそうじゃなくて! 私も憂ちゃんみたいに、ごほうびとして欲しいんだ!」

唯「う、うん……わかったよ…うん」

澪「……ああああああぁぁぁ恥ずかしいぃぃぃぃ!!!」

唯「あ、み、澪ちゃんごめんね? 恥ずかしいこと言わせちゃって…気づいてあげられなくて」

澪「…いや、いいんだよ。言わないと伝わらないことって、やっぱりあるよな…特にこんな変なことは」

唯「変かどうかはわからないけど、とにかく聞いたからには任せて!」フンス

澪「う、うん。なんか変な感じだけど…」

64: 2011/01/18(火) 00:58:25.55
唯「じゃあ……よし、澪ちゃん! 家まで私をお姫様だっこしなさいっ!」

澪「………え、ええっ!? それはさすがに恥ずかしい…」

唯「人目は少ないから大丈夫だってー。人が増えてきたら降ろしてくれてもいいから」

澪「で、でも……」

唯「私、お姫様だっこされるのが夢だったの~♪」

澪「あんまり似てないぞ」

唯「ぶー。それよりー、してくれるの? くれないの?」

澪「……ごめんな。元々命令だったな、そういえば。よし、やるよ」

唯「わーい♪」

澪「よっ……と! ん、思ったより軽い…」

唯「…そんなにおでぶさんに見られてたのかな、私」

澪「そうじゃないよ。心の中では、唯の存在は誰よりも重いから」

唯「……なにそれ、ちょっとカッコイイ///」

66: 2011/01/18(火) 01:04:49.55
澪「一度言ってみたかったんだ、キザなセリフ。それより……ごほうび、忘れないでくれよ?」

唯「もちろん♪ っていうか、今ちょっとあげちゃう」ギュッ

澪「わっ、唯、首に手を回すな、危ない――」

唯「――かっこいいよ、澪ちゃん。素敵」フゥッ

澪(ひゃっ!? み、耳元に吐息が……あったかくて、ゾクゾクして…///)

唯「――私、どうにかなっちゃいそう」

澪「あふん」ガクン

唯「……って、ええっ!?」ドサッ

澪「こ、腰が抜けた……って、ゆ、唯!? ごめん、大丈夫か!?」

唯「い、いったぁ~い……おしり打ったぁ~」サスサス

澪「ご、ゴメン! 本当に!」

唯「う、ううん、一応原因は私みたいだし……調子乗っちゃってごめんね?」

澪「い、いや、それは……もっと調子乗って欲しいというか、気持ちよかったというか」ゴニョゴニョ

唯「そ、そう? 澪ちゃん相手だから、憂よりオトナなごほうびというか、ちょっと気合入れてみました!」

澪「……正直、すごく、よかった…」

70: 2011/01/18(火) 01:11:37.65
唯「…ん。じゃあ澪ちゃん、もう一回」

澪「お姫様抱っこ?」

唯「うん。家までちゃんと送り届けてくれたら、もう一回してあげる」

澪「……よし、わかった」


澪(……あ、なんか憂ちゃんの気持ちがわかったかもしれない)

澪(ごほうびという形で、唯に愛情を与えてもらうためなら、何でも出来る気がする)

澪(それに、唯のごほうびは、ちゃんと相手に合わせて考えてくれてる。私のことを考えてくれている)

澪(それは…すごく嬉しい。私は…というか憂ちゃんや私は、自分のことを見てくれているという実感を求めている)

澪(基本的に、どこか寂しがりだから。一人じゃないと思いたいから)

澪(そうか…だから最近の憂ちゃんは)

澪(命令と服従という形ででも、唯との繋がりを求めていたんだ――)



72: 2011/01/18(火) 01:16:03.04

憂「」チラッ

憂「ふふっ…澪さん、幸せそう」

憂「お姉ちゃんに尽くす幸せ、澪さんもわかったみたい」

憂「……でも、澪さん、気づいてますか?」

憂「そこは、恋人の居場所じゃないですよ?」

73: 2011/01/18(火) 01:16:49.77
――平沢唯です。

あれから、私と澪ちゃんは仲良くやっています。私と憂も…だいぶ元通りになりつつあります。
そもそも大前提として。憂は私のことを好きで、それ故にやってくれた、というのがあります。それだけは私にもわかっていました。ですから、本来その事でネチネチと言うつもりはなかったのです。
第一、私が憂に勝てるものが何一つ無いというのは、ずっと昔からわかっていたことです。
ただ、それでも私にだって譲れないものがある。ギー太の腕……ではなく、軽音部、放課後ティータイムの一員としての、平沢唯という人間の居場所が。
憂がギターを弾くこと自体は、私にとってはどうでもいいのです。私のフリをして弾いたことが問題なだけであって。
――ということを憂に伝えたかったわけですが、まぁ、今となってはどうでもいいかな。だって……



憂「お姉ちゃーん」ガラッ

律「おや、憂ちゃんだぞ唯」

唯「んー? どしたの憂?」

憂「うん、今日の晩御飯何がいいかな? と思って。何でも言ってね」

唯「うーん、そうだねぇ……明日は休みだし、豪華なもの食べたいねぇ。お鍋とか」

憂「豪華なお鍋……うん、任せて! いろいろ買って帰って片っ端から放り込むよ!」

梓「それって豪華って言うの…?」

75: 2011/01/18(火) 01:23:01.16
律「うちもたまにやるぞ? すげー量になってな、見た目は豪華だぜ? でも、そうなると憂ちゃん一人じゃ荷物持てないかもしれないけど」

澪「……よし、憂ちゃん、荷物持ち、私も手伝うよ」ガタッ

憂「え、いいですよそんな」

澪「いいやダメだ。憂ちゃんにばかり負担はさせられないし、それに回り回っては唯のためだ」キリッ

憂(後半が本音ですよね)ボソッ

澪(もちろんだ。憂ちゃんにばかり点数は稼がせない)ボソッ

唯「………」

76: 2011/01/18(火) 01:28:08.52
律「よっ、カッコイイぞ澪さん!」

梓「好きな人のために、ですか……なんか複雑な気分です」

律「梓は唯も澪も大好きだったもんな~?」

梓「茶化さないでください!」

紬「大丈夫よ梓ちゃん! 私はフリーよ!」バッ

律「なんの! 私もフリーだぞ!」バッ

紬「りっちゃん愛してる! 愛の証にこのパイナップルを受け取って!」ガシッ

律「ムギ! 私のために毎朝沢庵を作ってくれ!」ガシッ

梓「……あれ、私を放置する流れですか?」

唯「あずにゃんが寂しさに負けてツッコミを放棄している…」

78: 2011/01/18(火) 01:32:51.05
澪「とにかく、そういうわけで荷物は私に任せてくれ、唯」

憂「じゃあ料理は私に任せてね、お姉ちゃん!」

唯「……なんで二人とも私に言うの?」

澪「それは……なぁ」チラッ

憂「ですよねぇ」チラッ

唯「…………」

澪「……憂ちゃんには負けない!」ダッ

憂「……澪さんには負けない!」ダッ

律「……なんであいつら、行き先一緒なのに競争してんの?」

紬「唯ちゃんモテモテねぇ。何したの?」

唯「何もしてないよ……たぶん」

79: 2011/01/18(火) 01:45:10.49
とはいうものの、二人が私の『ごほうび』のために争っているのは目に見えて明らかなのですが。
最近はこんなことばっかりです。学校だからこそ二人は『私の世話をしている』という体を装っていますが、家に帰れば命令をねだる可愛い猫さんです。
いえ、むしろねだるというより、餌を取り合う感じでしょうか。猫さんはけんかの多い生き物です。
……猫さんといえば、あずにゃんには少し悪いことをしてしまった気もします。りっちゃんの言ったことはわりと的を射ていたようで、部活中もどこか寂しげです。
でも、私があずにゃんに抱きつくと澪ちゃんの視線が怖いんです。どうすれば。


梓「っていうか練習しましょうよ……澪先輩だけが頼みの綱だったのに…」

唯「じゃあ、今度私から澪ちゃんに言っておくよ」

梓「えー、唯先輩がそもそもいっつも練習しない人じゃないですか……」

唯「ぶーぶー。今度の部活の時の私は一味違うよ! 今度だけだけど!」

梓「はぁ……来年私が部長になったら練習はちゃんとやらせよう…」

律「言いづらいんだが、その前に部員集めだな……うん、私の責任も少しあるけどさ」

唯「憂には入るように言っとくよー。言わなくても大丈夫かもしれないけど、一応ね」

紬「ふふっ、なんか今日の唯ちゃんはお姉さんキャラみたいね? 頼もしいわ」

唯「そうかなー」テレテレ

80: 2011/01/18(火) 01:51:43.00
お姉さんってムギちゃんは言うけれど、実際はもっと濃いものだと思います。
なんていうか…ご主人様? いや、それは言いすぎかな。私と澪ちゃんは対等だから。少なくとも私はそう思ってるから。
そして、憂とも上下関係みたいなのは特に意識してません。あくまで姉妹です。少なくとも今の私は、そう思えるようになりました。


――澪ちゃんも憂も、私よりよく出来た子なのに、私がいないと生きていけません、と言います。
きっとそれは精神的なものなのでしょう。
でも私は、日常生活的な面から見ても二人がいないと生きていけません。もちろん精神的にも澪ちゃんを失うのは絶対に嫌です。憂でも…嫌だと思います。

それなのに、二人は私に縋るのです。
それは、ひどく歪で、不思議な光景だと私も思います。でも、同時に私の心は充足感を感じています。
歪なのは私の方でしょうか。二人の方でしょうか。頭の悪い私にはわかりません。
ただ、一つだけ言えることは。

81: 2011/01/18(火) 01:58:43.05
澪「……おい、憂! 次は私に譲るって言っただろ!」

憂「あれ、言いましたっけ? 私、お姉ちゃんに似て忘れっぽいんで…ごめんなさい」

澪「この――」

唯「二人ともー、けんかはダメだよ? 私の言うことが聞けないの?」

澪「まさか。私は唯の唯一無二の恋人だからな。何でも聞くぞ?」

憂「私だってお姉ちゃんの世界に一人の妹だもん。何でも聞くよ?」

唯「じゃあ、仲直りして?」

澪「ごめんな、憂。私の方が年上だもんな、譲るよ」ニコッ

憂「いえいえ、私の方こそ。私はずっとお姉ちゃんと過ごしてきたんで、今回くらいは澪さんに」ニコッ



――今日も、私たちはいつも通り、笑顔です。

82: 2011/01/18(火) 01:59:25.10
おわった 吊ってくる

86: 2011/01/18(火) 02:02:47.45
おつ

引用元: 唯「憂はいつも通り笑ってる」 澪「そうか?」