2: 2011/01/19(水) 19:53:34.57
人を不幸にしたいのなら簡単だ。
その人の一番大切なものを目の前で壊すといい。
勿論、君も不幸になる勇気があるならの話だが。
霧間誠一 「殺戮者は気が変わる」
3: 2011/01/19(水) 19:54:57.83
これは全てが終わったあとに交わされた会話である
「結局、幸せって何なんだろうね」
「さあね、生憎と僕は自動的だから主観で見た場合の実感は分からないな」
「幸せって、こんなことをしないと手に入らないものだったのかな?」
「他人の不幸を想像することが、自己の幸福の創造に繋がる
今回の敵―――『オクトパス・ショップ』はそう考えたはずだ」
「……私には分からないよ」
「分からない事は分からないままでいい
きっと、幸せとはそんなことだと思うよ」
「でもこんなことになってしまった今だから思うよ
私は幸せだったし、幸せになりたかった」
「それは『オクトパス・ショップ』も同じだったんだろうね
それゆえに世界の敵になってしまった」
「……私の親友を、そんな呼び方しないで」
「失礼、謝るよ」
「ううん、いいよ」
そう言って彼女、平沢唯は友達の亡骸を抱きしめた。
6: 2011/01/19(水) 20:00:08.99
ブギーポップ・ティータイム
「蛸壷のクリエイト」
YUI HIRASAWA,s THAT IS IT
7: 2011/01/19(水) 20:03:31.99
琴吹紬は統和機構の戦闘型合成人間として生み出された。
攻撃と防御に重点を置いて作られた《特別製》(スーパービルド)と呼ばれる彼女の能力は強力無比である。
だが、そんな彼女にも悩みがあった。
「もうすぐ卒業……か」
卒業すれば大学への進路は決まっている。
だが統和機構の命令に従わなければいけない彼女は、突然大学を中退させられるかもしれない。
世間体もあり、琴吹財閥の仮の姿のために高校の卒業までは保障されていた。
だが、これからはどんな職業に就かされるか分からない。
それは高校生活で出会った仲間達との別れを意味する。
「そんなのいやよ」
その彼女の悩みが周囲への監視を怠らせ
本来の任務―――MPLSの探索の放棄へと繋がり
悲劇を招いたしまった。
攻撃と防御に重点を置いて作られた《特別製》(スーパービルド)と呼ばれる彼女の能力は強力無比である。
だが、そんな彼女にも悩みがあった。
「もうすぐ卒業……か」
卒業すれば大学への進路は決まっている。
だが統和機構の命令に従わなければいけない彼女は、突然大学を中退させられるかもしれない。
世間体もあり、琴吹財閥の仮の姿のために高校の卒業までは保障されていた。
だが、これからはどんな職業に就かされるか分からない。
それは高校生活で出会った仲間達との別れを意味する。
「そんなのいやよ」
その彼女の悩みが周囲への監視を怠らせ
本来の任務―――MPLSの探索の放棄へと繋がり
悲劇を招いたしまった。
9: 2011/01/19(水) 20:07:14.64
「ムギせんぱ~い!」
「あら、梓ちゃん」
「今日はバイトだったんですか?」
「ええ」
(実際は統和機構の仕事だったけど)
「梓ちゃんは?」
「私は純に誘われてカラオケについつい長居を……」
「うふふ、楽しそう」
「純ッたら、特撮の歌ばっかり入れるんですから!」
「あらあら」
「あら、梓ちゃん」
「今日はバイトだったんですか?」
「ええ」
(実際は統和機構の仕事だったけど)
「梓ちゃんは?」
「私は純に誘われてカラオケについつい長居を……」
「うふふ、楽しそう」
「純ッたら、特撮の歌ばっかり入れるんですから!」
「あらあら」
10: 2011/01/19(水) 20:13:36.88
紬が可愛い後輩の一人である中野梓と話し込んでいると
彼女は急に警戒態勢をとった。
(トラックが突っ込んできた!?)
琴吹財閥の令嬢としても、統和機構の合成人間としても狙われる彼女は
常に周囲の警戒を怠らないはずだった。
だが、先刻の悩みと後輩との会話の安心感。
そのギャップで生まれたわずかな隙を『敵』に付け込まれた。
「あれ、あのトラックなんだかふらふらしていませんか?」
「梓ちゃん、危ない!」
急加速してきたトラックは、信号前に立っていた二人を急襲する。
自分ひとりなら逃げられたかもしれない紬は、
位置的に逃がすことも突き飛ばすことも出来ないあずさを守るため
戦闘型合成人間タークアーンとしての能力を使用した。
彼女は急に警戒態勢をとった。
(トラックが突っ込んできた!?)
琴吹財閥の令嬢としても、統和機構の合成人間としても狙われる彼女は
常に周囲の警戒を怠らないはずだった。
だが、先刻の悩みと後輩との会話の安心感。
そのギャップで生まれたわずかな隙を『敵』に付け込まれた。
「あれ、あのトラックなんだかふらふらしていませんか?」
「梓ちゃん、危ない!」
急加速してきたトラックは、信号前に立っていた二人を急襲する。
自分ひとりなら逃げられたかもしれない紬は、
位置的に逃がすことも突き飛ばすことも出来ないあずさを守るため
戦闘型合成人間タークアーンとしての能力を使用した。
11: 2011/01/19(水) 20:23:34.95
傍目にはスリップしたようにしか見えないドリフトをして
トラックは車体全体でこちらを押しつぶしに来た。
紬は両手を前にかざして、大質量を受け止める姿勢をとった。
「ムギ先輩!?」
梓が悲鳴を上げる。
このままでは二人ともトラックの下敷きになるのは目に見えていた。
だが、そうはならなかった。
「えい!」
これがスーパービルドと呼ばれる戦闘型合成人間の能力。
触れたものに生体パルスを送り込み、質量自体を変化させる。
どのような質量の物体でも、彼女の前では意味をなさない。
また、衝撃自体も合成人間の基礎体力でほぼ吸収することができる。
これが単純な近距離戦闘においては他の追随を許さない、タークアーンの能力だった。
トラックは車体全体でこちらを押しつぶしに来た。
紬は両手を前にかざして、大質量を受け止める姿勢をとった。
「ムギ先輩!?」
梓が悲鳴を上げる。
このままでは二人ともトラックの下敷きになるのは目に見えていた。
だが、そうはならなかった。
「えい!」
これがスーパービルドと呼ばれる戦闘型合成人間の能力。
触れたものに生体パルスを送り込み、質量自体を変化させる。
どのような質量の物体でも、彼女の前では意味をなさない。
また、衝撃自体も合成人間の基礎体力でほぼ吸収することができる。
これが単純な近距離戦闘においては他の追随を許さない、タークアーンの能力だった。
12: 2011/01/19(水) 20:33:28.22
「大丈夫、梓ちゃん!?」
「……きゅう」
「……気絶しちゃったのね、覚えていないといいけど」
(それにしても、こんな大雑把な攻撃、敵対組織がやるとは思えないけど)
「……梓ちゃんを狙った?」
(まさかね)
「とにかく組織に連絡して後始末を頼まないと」
(運転手は目が虚ろで口が半開き……明らかに正気じゃないわね)
「とにかく、まずは梓ちゃんを病院に運ぶのが先決ね」
15: 2011/01/19(水) 20:40:39.91
「ええっ!? 梓がトラックに轢かれそうになった!?」
『そうなの、それでお家の方に連絡してもらったんだけど留守みたいで……」
「ひ、轢かれたって、怪我とかは……」
『落ち着いて澪ちゃん、轢かれてはいないわ、転んだから一応運んでもらっただけよ」
「よかったよ~」
『とにかく電話じゃ話しにくいから、病院に来てもらえる?』
「ああ、着替えとか適当に持っていくから」
「びっくりしたよ~」
「ああ、唯ならうっかりトラックに轢かれそうなイメージがあるけど」
「ひどいよ、りっちゃん!」
『そうなの、それでお家の方に連絡してもらったんだけど留守みたいで……」
「ひ、轢かれたって、怪我とかは……」
『落ち着いて澪ちゃん、轢かれてはいないわ、転んだから一応運んでもらっただけよ」
「よかったよ~」
『とにかく電話じゃ話しにくいから、病院に来てもらえる?』
「ああ、着替えとか適当に持っていくから」
「びっくりしたよ~」
「ああ、唯ならうっかりトラックに轢かれそうなイメージがあるけど」
「ひどいよ、りっちゃん!」
16: 2011/01/19(水) 20:46:08.47
「すみません先輩方、わざわざ来てもらって」
「け、怪我は大丈夫なのか!?」
「ああ、胸がこんなにへこんで!」
「澪先輩は落ち着いてください、律先輩はふざけんなです」
「元気そうでよかったよ~」
「ご心配おかけしたみたいですみません」
「ムギが助けてくれたんだって?」
「ええ、とっさにトラックから身をかわしたの」
「……そうでしたっけ?」
「あらあら梓ちゃん、夢でも見たの?」
「うーん、そう言われればそんな気も」
18: 2011/01/19(水) 20:52:50.80
「じゃー、帰るね、あずにゃん元気でね!」
「唯先輩、くっつかないでください!」
見舞いを終えて律達が病室を出ると、そこには女子高生がいた。
部活帰りに見舞いにでも寄ったのか、スポルディングのバッグを抱えて立っていた。
(梓の知り合いか?)
律が適当に会釈して道を譲ろうとする。
すると、桜校のものではない制服を着た高校生は口を開いた。
「彼女から目を離さないほうがいい
彼女は今また『敵』に目をつけられた」
その少女は、少女なのに少年のような中性的な雰囲気で
左右非対称な笑みを浮かべて、そう言った。
20: 2011/01/19(水) 21:00:38.46
「え、あの、敵って……」
律は見ず知らずの少女にそんなことを言われて立ちすくんでしまった。
その時、背後からものすごい力で紬が割り込んできたので驚く。
「『敵』って、やっぱり梓ちゃんが狙われたんですか!?」
「ムギちゃん?」
「彼女に限らない、君達もまた標的となりえるのだからね」
「あ、の、さっきから何を言ってるんですか?」
「これだけは言える」
明らかに場違いな雰囲気に怯える澪に構わず、
目の前の少女はあくまでも真剣な目で語った。
「『敵』の目的は君達の不幸だ」
律は見ず知らずの少女にそんなことを言われて立ちすくんでしまった。
その時、背後からものすごい力で紬が割り込んできたので驚く。
「『敵』って、やっぱり梓ちゃんが狙われたんですか!?」
「ムギちゃん?」
「彼女に限らない、君達もまた標的となりえるのだからね」
「あ、の、さっきから何を言ってるんですか?」
「これだけは言える」
明らかに場違いな雰囲気に怯える澪に構わず、
目の前の少女はあくまでも真剣な目で語った。
「『敵』の目的は君達の不幸だ」
22: 2011/01/19(水) 21:13:51.08
「やれやれ、一日泊まったくらいでみんな大袈裟なんだから」
梓そう一人呟くと、猫科の動物のように伸びをした。
一夜明けて心配する両親を横目に、
早々に退院して昼から学校に登校することになったのだ。
(ま、どこも怪我してないんだから当たり前だよね)
事件のことは新聞で事の顛末を知った。
どうやら、あの規模のトラックの転倒で周囲に危害が及ばなかったのは奇跡的らしい。
梓はその記事を読んだとき、自身の幸運と紬の機転に心から感謝した。
今もそのことを思い出して、顔がにやけてしまう。
(いくらムギ先輩が力持ちだからって、あんな夢見るなんて)
紬がいつも通りの笑顔で「あらあら」と言いながらトラックを持ち上げる。
非常に現実味のあるそんな夢を見てしまったことを思い、
このことを親友の憂や純にどう語ろうかと幸せな気分で歩いていた。
もちろん、彼女の幸福な気分はここで終わる。
梓そう一人呟くと、猫科の動物のように伸びをした。
一夜明けて心配する両親を横目に、
早々に退院して昼から学校に登校することになったのだ。
(ま、どこも怪我してないんだから当たり前だよね)
事件のことは新聞で事の顛末を知った。
どうやら、あの規模のトラックの転倒で周囲に危害が及ばなかったのは奇跡的らしい。
梓はその記事を読んだとき、自身の幸運と紬の機転に心から感謝した。
今もそのことを思い出して、顔がにやけてしまう。
(いくらムギ先輩が力持ちだからって、あんな夢見るなんて)
紬がいつも通りの笑顔で「あらあら」と言いながらトラックを持ち上げる。
非常に現実味のあるそんな夢を見てしまったことを思い、
このことを親友の憂や純にどう語ろうかと幸せな気分で歩いていた。
もちろん、彼女の幸福な気分はここで終わる。
25: 2011/01/19(水) 21:22:57.80
「うーん、腹がペコちゃんだから、どこかで外食でもしてから……」
「はあはあはあ、あ、あずにゃんにゃん、あずにゃんにゃん!」
「わぁ、な、なんですか、いきなり!」
「孤独のグルメのセリフを真似しちゃうあずにゃん可愛いにゃん!」
「ひ、気持ち悪い、それになんで私のあだな……」
「かずにゃんだよ!」
「きゃあ! だ、誰か助け……」
「む、無駄なのにゃん、かずにゃんが100%メイドインあずにゃんヨーグルトを食べることで
かずにゃんのジュニアから違う( )が溢れちゃうのにゃん!」
「だ、誰か、誰かぁ!」
「はあはあはあ、あ、あずにゃんにゃん、あずにゃんにゃん!」
「わぁ、な、なんですか、いきなり!」
「孤独のグルメのセリフを真似しちゃうあずにゃん可愛いにゃん!」
「ひ、気持ち悪い、それになんで私のあだな……」
「かずにゃんだよ!」
「きゃあ! だ、誰か助け……」
「む、無駄なのにゃん、かずにゃんが100%メイドインあずにゃんヨーグルトを食べることで
かずにゃんのジュニアから違う( )が溢れちゃうのにゃん!」
「だ、誰か、誰かぁ!」
26: 2011/01/19(水) 21:29:55.83
「ええ!? 梓が今度は変質者に襲われた!?」
「そ、それで梓は……」
「私の知り合いのリィ舞阪さんに警護を頼んでおいたから、無事に済んだわ」
「よかったよ~」
(まさか『最強』がボディーガードを引き受けてくれるなんて……上も本気のようね)
「でもそれって、あの子のいってたことが本当になったってことだよね」
「ああ、あの変な女子高生か」
「そう、いつの間にか消えていた、あの女の子が何か知ってるんじゃ」
「……もういやだ」
「澪ちゃん?」
「そ、それで梓は……」
「私の知り合いのリィ舞阪さんに警護を頼んでおいたから、無事に済んだわ」
「よかったよ~」
(まさか『最強』がボディーガードを引き受けてくれるなんて……上も本気のようね)
「でもそれって、あの子のいってたことが本当になったってことだよね」
「ああ、あの変な女子高生か」
「そう、いつの間にか消えていた、あの女の子が何か知ってるんじゃ」
「……もういやだ」
「澪ちゃん?」
27: 2011/01/19(水) 21:37:51.24
「最近、怖いことが多すぎるよ、人を頃す氏神の噂とか」
「澪、あれは都市伝説だって」
「そうだよ~、人が一番、美人な時に頃してくれるんだって!」
(氏神の噂、確かによくは知らないけど、MPLSと関係が……?)
「本当なら、さわちゃんとかとっくに氏んでるもんな」
「そ、そういう冗談を言うな!」
「ご、ゴメンって澪~」
「とにかく! みんなが狙われてるならこんなところにいられない! 帰る!」
「澪ちゃん、それは氏亡フラグだよ!」
「澪、あれは都市伝説だって」
「そうだよ~、人が一番、美人な時に頃してくれるんだって!」
(氏神の噂、確かによくは知らないけど、MPLSと関係が……?)
「本当なら、さわちゃんとかとっくに氏んでるもんな」
「そ、そういう冗談を言うな!」
「ご、ゴメンって澪~」
「とにかく! みんなが狙われてるならこんなところにいられない! 帰る!」
「澪ちゃん、それは氏亡フラグだよ!」
28: 2011/01/19(水) 21:46:43.24
「あ、出ていっちゃった」
「追いましょう、りっちゃん!」
「そうだな、行くぞ唯!」
「うん!」
秋山澪は昔から怖がりだった。
それは恐怖が怖いのではなく、恐怖に出会ったときにどうしたらいいのか
分からないが故の恐怖だったのだが、彼女はそれらを頑なに遠ざけた。
律が怖がらせてくるのも、本当はそれらを克服させるためだと分かっていた。
それでも彼女は逃げた。
目をふさいで耳をふさいで。
本当はこんなことではダメだとわかっていたのに。
「ううう……。ダメなのに、逃げちゃダメなのに……」
ふと、公園で澪が塞ぎこんでぶつぶつ呟いていると口笛が聞こえてきた。
「追いましょう、りっちゃん!」
「そうだな、行くぞ唯!」
「うん!」
秋山澪は昔から怖がりだった。
それは恐怖が怖いのではなく、恐怖に出会ったときにどうしたらいいのか
分からないが故の恐怖だったのだが、彼女はそれらを頑なに遠ざけた。
律が怖がらせてくるのも、本当はそれらを克服させるためだと分かっていた。
それでも彼女は逃げた。
目をふさいで耳をふさいで。
本当はこんなことではダメだとわかっていたのに。
「ううう……。ダメなのに、逃げちゃダメなのに……」
ふと、公園で澪が塞ぎこんでぶつぶつ呟いていると口笛が聞こえてきた。
30: 2011/01/19(水) 21:54:30.59
ふと、公園で澪が塞ぎこんでぶつぶつ呟いていると口笛が聞こえてきた。
彼女の前にいつの間にかシルエットが浮かんでいた。
人と言うよりも筒のような黒い影が。
「本当にそうなのかな?」
《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の音色を止めて、影は言った。
「恐怖や脅威から身を隠すことはそんなにダメなことなのかな?」
(な、なんだ、あれは―――)
影は帽子でマントをかぶっているから筒のように見えていたのだが、
澪にとってはそんなものどうでもよく、
ただ目の前の奇妙な人物がひたすら怖かった。
その姿はまるで―――
「し、氏神……!?」
彼女の前にいつの間にかシルエットが浮かんでいた。
人と言うよりも筒のような黒い影が。
「本当にそうなのかな?」
《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の音色を止めて、影は言った。
「恐怖や脅威から身を隠すことはそんなにダメなことなのかな?」
(な、なんだ、あれは―――)
影は帽子でマントをかぶっているから筒のように見えていたのだが、
澪にとってはそんなものどうでもよく、
ただ目の前の奇妙な人物がひたすら怖かった。
その姿はまるで―――
「し、氏神……!?」
31: 2011/01/19(水) 21:58:07.93
彼女の脳裏には先程の会話が浮かんでいた。
「そうだよ~、人が一番、美人な時に頃してくれるんだって!」
(ぶ、ブギーポップ!)
氏神の噂を聞いていた澪の恐怖は最大限まで跳ね上がった。
ああ、そうか私は殺されるのか。
なにせファンクラブまであるくらいだからな卒業前に殺そうってことか。
恐怖が限界を超えて、逆に思考が冷えていく。
そして確信と共に一つの感情が全身を支配する。
(この氏神は―――『危険』じゃない?)
「君は、その予感を大切にした方がいい」
命の危機にあるにも関わらず、澪はその言葉に耳を傾けた。
なにかとても―――とても重要なことをこの氏神は伝えようとしているのではないか。
そんな『予感』がしたからだ。
「君の『能力』が今回の敵―――『オクトパス・ショップ』を倒す鍵になるかもしれないからね」
32: 2011/01/19(水) 22:03:52.62
「おくとぱ……え?」
「それは悲劇を望んでいる、身近な人間の、親しい人間の」
「何を言って……」
「まるで自らの蛸壺に獲物を引きずり込むように、触手を使って獲物を貪る
そして他人の不幸を自らの幸せとして換金している
だから名づけたのさ『オクトパス・ショップ』とね」
(勝手に名づけたのかよ!?)
「謎の現象も名前をつければ怖くなくなる
怖がりの君なら分かるんじゃないかな?」
「べ、別に怖がりじゃ……」
(ん、ちょっと待て、この氏神はなんて言った?)
「あの、親しい人間って……」
「ああ、そうだ、敵は君達のすぐ近くにいる」
「それは悲劇を望んでいる、身近な人間の、親しい人間の」
「何を言って……」
「まるで自らの蛸壺に獲物を引きずり込むように、触手を使って獲物を貪る
そして他人の不幸を自らの幸せとして換金している
だから名づけたのさ『オクトパス・ショップ』とね」
(勝手に名づけたのかよ!?)
「謎の現象も名前をつければ怖くなくなる
怖がりの君なら分かるんじゃないかな?」
「べ、別に怖がりじゃ……」
(ん、ちょっと待て、この氏神はなんて言った?)
「あの、親しい人間って……」
「ああ、そうだ、敵は君達のすぐ近くにいる」
34: 2011/01/19(水) 22:49:21.81
「うううううう……」
平沢憂は怯えていた。
まさか親友の梓が襲われるとは思っていなかった。
それも、自分のせいで。
(そうだよね、梓ちゃんが襲われたのは)
「私のせい―――だよね」
自分でも何故あんなことをしたのか分からない。
ネットの一部で熱狂的な人気を誇る放課後ティータイム。
その中でも強敵に熱心なファンの一人に、梓の入院している病院の情報を教えてしまったのだ。
衝動的といっていいほど、何も考えずにやってしまった。
(違うよ)
「私は憎かったんだ、お姉ちゃんにくっついている梓ちゃんが」
(そうだよ、無事だったらしいし許せないよ)
「梓ちゃんは―――私が」
『オクトパス・ショップ』の次の攻撃は既に始まっていた。
35: 2011/01/19(水) 23:11:50.23
「ったく、澪の奴、どこに行ったんだ」
(まずい、統和機構の監視が振り切られるなんて)
それは脅威から姿をくらますという澪に発現した能力だったが
そんなことは分からない紬は組織の無能を呪った。
「ど、どうしよう」
(フォルテッシモを呼び戻す? いえ、現状狙われている梓ちゃんの監視は外せない)
友人が絡んだことで合成人間としての冷静な思考は出来ず
紬の思考は千々に乱れていた。
「落ち着いて、ムギちゃん!」
「! 唯ちゃん……」
「澪ちゃんは家に帰るって言っていたから、その付近から探せばきっといるよ!」
「おお、賢いぞ唯!」
紬は唯の冷静な判断に驚いた。
彼女は時々、周囲を驚かせるような天性の輝きを見せる。
唯のそんな笑顔に紬は何度も癒されていた。
(まずい、統和機構の監視が振り切られるなんて)
それは脅威から姿をくらますという澪に発現した能力だったが
そんなことは分からない紬は組織の無能を呪った。
「ど、どうしよう」
(フォルテッシモを呼び戻す? いえ、現状狙われている梓ちゃんの監視は外せない)
友人が絡んだことで合成人間としての冷静な思考は出来ず
紬の思考は千々に乱れていた。
「落ち着いて、ムギちゃん!」
「! 唯ちゃん……」
「澪ちゃんは家に帰るって言っていたから、その付近から探せばきっといるよ!」
「おお、賢いぞ唯!」
紬は唯の冷静な判断に驚いた。
彼女は時々、周囲を驚かせるような天性の輝きを見せる。
唯のそんな笑顔に紬は何度も癒されていた。
36: 2011/01/19(水) 23:29:36.05
「ムギ、唯から離れろ!」
「澪ちゃん!?」
「今の私には分かる! 唯に『触っては』いけないんだ!」
「おい澪、いきなり何を言ってんだ」
「……お姉ちゃん」
「! 憂、どうしたの包丁なんかもって」
「お姉ちゃんに触る奴は……みんな、みんな」
「りっちゃん、唯ちゃん、下がって!」
「うあああぁぁぁ!」
39: 2011/01/19(水) 23:35:05.29
包丁を振り上げて、唯の妹である憂が襲い掛かってきた。
それはもはや常人の目をしていなかった。
(くっ、憂ちゃんが敵!? でも洗脳されているにしては……)
憂の動きは合成人間である紬の目から見ても、常人離れをしていた。
十メートルはあろうかという距離を一気につめて、確実に急所を狙ってくる。
人間の持てる能力を最大限まで引き出されていた。
「なんだよ……いったい、なんなんだよ……」
目の前で人外のバトルをはじめた憂と紬を見つめて、律がおののく。
見えない包丁さばきで人を襲う憂も異常だが、
それを確実に防御している紬も充分異常だった。
(くっ、防御で精一杯!)
攻撃に転じれば合成人間タークアーンに敵はない。
だが、親友の妹である平沢憂を傷つけることは『琴吹紬』には出来なかった。
かといって無傷で取り押さえるには今の憂は強すぎた。
彼女は包丁の質量をゼロにして、攻撃を耐えるしかなかった。
それはもはや常人の目をしていなかった。
(くっ、憂ちゃんが敵!? でも洗脳されているにしては……)
憂の動きは合成人間である紬の目から見ても、常人離れをしていた。
十メートルはあろうかという距離を一気につめて、確実に急所を狙ってくる。
人間の持てる能力を最大限まで引き出されていた。
「なんだよ……いったい、なんなんだよ……」
目の前で人外のバトルをはじめた憂と紬を見つめて、律がおののく。
見えない包丁さばきで人を襲う憂も異常だが、
それを確実に防御している紬も充分異常だった。
(くっ、防御で精一杯!)
攻撃に転じれば合成人間タークアーンに敵はない。
だが、親友の妹である平沢憂を傷つけることは『琴吹紬』には出来なかった。
かといって無傷で取り押さえるには今の憂は強すぎた。
彼女は包丁の質量をゼロにして、攻撃を耐えるしかなかった。
40: 2011/01/19(水) 23:38:37.65
「やれやれ」
キンッ
憂の持っている包丁の刃の部分が弾けとんだ。
他の軽音部員には何が起こったのか分からなかったが、
合成人間の強化された視力で紬は見た。
細いワイヤーのようなものが超高速で飛来して、
包丁を絡めとったのだ。
「敵も大分、能力の使い方が分かってきたみたいだ
まぁ、人間の能力を100%引き出す、なんていうのはありふれているけどね」
そう言って黒帽子の影が、泡のように湧いてきた。
ワイヤーを操り、憂の体を拘束する。
「だが、人の幸せを、不幸へと転化する。
世界とは相容れない、世界の敵となってしまったようだね」
「な、なんだあれ」
「氏神……?」
キンッ
憂の持っている包丁の刃の部分が弾けとんだ。
他の軽音部員には何が起こったのか分からなかったが、
合成人間の強化された視力で紬は見た。
細いワイヤーのようなものが超高速で飛来して、
包丁を絡めとったのだ。
「敵も大分、能力の使い方が分かってきたみたいだ
まぁ、人間の能力を100%引き出す、なんていうのはありふれているけどね」
そう言って黒帽子の影が、泡のように湧いてきた。
ワイヤーを操り、憂の体を拘束する。
「だが、人の幸せを、不幸へと転化する。
世界とは相容れない、世界の敵となってしまったようだね」
「な、なんだあれ」
「氏神……?」
43: 2011/01/19(水) 23:43:23.00
「うぅ、おねえちゃん……」
「憂、何でこんなこと」
「彼女を責めないであげて欲しいな、姉妹愛という幸せを
シスターコンプレックスという不幸に変換されてしまっただけなんだから」
(シスコンは元からのような……)
「やっぱり唯が原因なんだな、私には見えるぞ!」
「さっきから澪は何言ってるんだよ」
「だから、梓を襲った犯人は唯なんだよ!」
「ええ、私、襲ってないよ~」
「だから唯は襲ってないけどあ~、だから私には『敵』が見えるんだよ!」
「シャアかよ」
「憂、何でこんなこと」
「彼女を責めないであげて欲しいな、姉妹愛という幸せを
シスターコンプレックスという不幸に変換されてしまっただけなんだから」
(シスコンは元からのような……)
「やっぱり唯が原因なんだな、私には見えるぞ!」
「さっきから澪は何言ってるんだよ」
「だから、梓を襲った犯人は唯なんだよ!」
「ええ、私、襲ってないよ~」
「だから唯は襲ってないけどあ~、だから私には『敵』が見えるんだよ!」
「シャアかよ」
44: 2011/01/19(水) 23:49:07.71
「ま、待って、唯ちゃんには不思議な能力があって
それが原因で梓ちゃんや憂ちゃんがおかしくなったってこと?」
(唯ちゃんはMPLS? それに、それが分かるってことは澪ちゃんも……)
「そ、そうだ、多分、唯は無意識だろうけど」
「そんな、私のせいであずにゃんや憂が……」
「それは違うな、彼女は原因ではあるけど元凶ではない」
「ふえ?」
「よく分からんけど、澪、間違えたんだな、はずかし~」
「う、うるさい!」
「今の君なら見えるはずだ、今回の事件の真の敵がね」
「ジー」
「み、澪ちゃん、そんなに見つめられたら恥ずかしいよ~」
「! わ、わかった、『オクトパス・ショップ』は……」
45: 2011/01/20(木) 00:14:15.25
「残念ながら時間切れのようだ」
「え?」
人の気配がない公園に騒音が近付いてきていた。
狭い路地に大量のトラックが殺到してきた。
「ええ!?」
「何でこんなにトラックが……」
「どんだけトラックに愛されてるんだよ唯は!」
「私じゃないよ~!」
「見えない聞こえない見えない聞こえない」
「いや見ろよ、逃げるぞ!」
(こんなに大量だと私の能力『リリー・リリー』でも防げないわ!)
「正体を知られて焦っている……ヤケになっているといった方が近いかな」
「え?」
人の気配がない公園に騒音が近付いてきていた。
狭い路地に大量のトラックが殺到してきた。
「ええ!?」
「何でこんなにトラックが……」
「どんだけトラックに愛されてるんだよ唯は!」
「私じゃないよ~!」
「見えない聞こえない見えない聞こえない」
「いや見ろよ、逃げるぞ!」
(こんなに大量だと私の能力『リリー・リリー』でも防げないわ!)
「正体を知られて焦っている……ヤケになっているといった方が近いかな」
46: 2011/01/20(木) 00:20:49.49
大量のトラックを素手で受け流す紬。
ワイヤーでタイヤをパンクさせるブギーポップ。
どちらも前後を守り、身動きが取れない。
圧倒的な物量の前に、防戦一方だった。
「ムギも力持ち過ぎるだろ!」
「で、でも、ムギは怖くないぞ」
「そうだよ~、守ってくれてるんだよ~」
「そりゃそうだけど、っていうか唯は元凶じゃないけど原因の癖に……」
「でへへ、お恥ずかしい」
(こんな時でも、みんなは変わらないわね)
どんな状況にあっても普段のテンションを保っている軽音部の面々。
その明るさに紬はいつも励まされてきたのだ。
「君達の幸せは仲間といること……だから卒業という、この時期が狙われたわけだ」
「……え?」
ワイヤーでタイヤをパンクさせるブギーポップ。
どちらも前後を守り、身動きが取れない。
圧倒的な物量の前に、防戦一方だった。
「ムギも力持ち過ぎるだろ!」
「で、でも、ムギは怖くないぞ」
「そうだよ~、守ってくれてるんだよ~」
「そりゃそうだけど、っていうか唯は元凶じゃないけど原因の癖に……」
「でへへ、お恥ずかしい」
(こんな時でも、みんなは変わらないわね)
どんな状況にあっても普段のテンションを保っている軽音部の面々。
その明るさに紬はいつも励まされてきたのだ。
「君達の幸せは仲間といること……だから卒業という、この時期が狙われたわけだ」
「……え?」
48: 2011/01/20(木) 00:29:29.78
黒帽子が話しかけた一瞬の後、トラックが上空から襲ってきた。
横に倒れた車体を踏み台にして、飛来してきたのだ。
その飛来物ははるか頭上を越えて、唯たち三人の方へ突っ込んできた。
両手がふさがっていた紬はそれに反応が出来なかった。
(間に合わない!)
紬の心が絶望に支配された。
車体が地面と激突する音。
だが悲鳴と血しぶきはそこにはなかった。
「悪いね、君の防御は完璧だったから一瞬、隙を作らせてもらった」
ブギーポップの悪びれる様子もなく平然と言ってのけた。
その言葉を聴きながら、紬は見た。
ライダースーツを着た少女が、三人を引っつかんでバイクで疾走するのを。
「彼女が割り込む隙をね」
炎の魔女―――霧間凪
正義の味方は颯爽と登場した。
横に倒れた車体を踏み台にして、飛来してきたのだ。
その飛来物ははるか頭上を越えて、唯たち三人の方へ突っ込んできた。
両手がふさがっていた紬はそれに反応が出来なかった。
(間に合わない!)
紬の心が絶望に支配された。
車体が地面と激突する音。
だが悲鳴と血しぶきはそこにはなかった。
「悪いね、君の防御は完璧だったから一瞬、隙を作らせてもらった」
ブギーポップの悪びれる様子もなく平然と言ってのけた。
その言葉を聴きながら、紬は見た。
ライダースーツを着た少女が、三人を引っつかんでバイクで疾走するのを。
「彼女が割り込む隙をね」
炎の魔女―――霧間凪
正義の味方は颯爽と登場した。
49: 2011/01/20(木) 00:39:08.53
「さて―――ここは、場所が悪い。彼女達を静かなところへ運んでもらえるかな」
「ちっ、運び屋扱いかよ、じゃあここは任せるぞ」
怪人と魔女は軽く会話を交わすと、さっさと別れてしまう。
凪は唯だけを背に乗せたまま、バイクで走り去る。
その場で下ろされた澪と律はポカンとしている。
「え、ど、どこに行ったの?」
「……多分、学校だ」
「澪ちゃん?」
「彼女の言うとおり、君達のホームに行けばこんな乱暴な手は使わないだろう」
いつの間にかトラックの猛攻は収まっていた。
嘆くような怒るような左右非対称な表情で怪人は言う。
「最愛の人との心中を図ったが、それも失敗に終わったんだ
炎の魔女にまで目をつけられては観念するしかない」
「一体、敵って言うのは誰なの?」
「ああ、梓を襲わせて憂ちゃんを操った
『オクトパス・ショップ』は私たちもよく知ってる……」
「ちっ、運び屋扱いかよ、じゃあここは任せるぞ」
怪人と魔女は軽く会話を交わすと、さっさと別れてしまう。
凪は唯だけを背に乗せたまま、バイクで走り去る。
その場で下ろされた澪と律はポカンとしている。
「え、ど、どこに行ったの?」
「……多分、学校だ」
「澪ちゃん?」
「彼女の言うとおり、君達のホームに行けばこんな乱暴な手は使わないだろう」
いつの間にかトラックの猛攻は収まっていた。
嘆くような怒るような左右非対称な表情で怪人は言う。
「最愛の人との心中を図ったが、それも失敗に終わったんだ
炎の魔女にまで目をつけられては観念するしかない」
「一体、敵って言うのは誰なの?」
「ああ、梓を襲わせて憂ちゃんを操った
『オクトパス・ショップ』は私たちもよく知ってる……」
50: 2011/01/20(木) 00:46:03.72
「ギー太?」
桜ヶ丘高校の校庭。
バイクから降りたライダースーツ姿の少女と、
『ギターを抱えた』制服姿の少女が向かい合っていた。
「名前は知らないが、とにかくそのギターが今回の元凶ってわけだ」
「な、なんでギー太がそんなことするの?」
「私も末真から聞いただけでよくは知らないんだが、
付喪神っていうのが、現象としては近いらしい」
「つくも?」
「調査でクラスメイトから聞いたんだが、
アンタはそのギターを恋人のように扱ってたんだろ?」
「……うん」
「そうやって、物に感情が移って
最後には物自体が意思を持つらしいんだ
あたしに言わせれば運が悪かったってだけの話だな」
51: 2011/01/20(木) 00:50:38.52
「で、なんでギー太が梓を襲うんだよ」
「ブギーポップも言ってたろ、不幸を幸福に変換するって」
「つまり唯ちゃんを幸せにするために、ってこと?」
「梓を襲って唯が幸せになるわけないだろ!?」
「私たちはもうすぐ卒業だろ?」
「な、なんだよ澪、いきなりそんな話」
「思わなかったか? みんなと、特に梓と離れたくないって」
「……思ったけどさ」
「そうやって悩む唯を見たくなかったんだよ」
「それって……」
「ああ、ギー太は嫉妬していたんだ」
52: 2011/01/20(木) 00:55:41.72
「じゃ、じゃあ、やっぱり私のせいであずにゃんは……」
「それは違う」
いつの間にかギターの横に黒いシルエットが生えていた。
「『彼』はぼくとおなじように、生まれたときから役割が決まっていた
蛸壷のように待っているだけだった彼が、
弾き手を得て歌うことを覚え、愛を知った
それに報いる手段が他のタコを捕まえることしかなかった時点で
彼が世界の敵になることは決まっていたんだよ」
(なんでタコに例えるんだ、こいつは)
「で、でも、つまり、あずにゃんを助けるには……」
「ああ、『彼』を破壊するしかない」
53: 2011/01/20(木) 01:01:45.42
「そんな!」
「澪、それしか方法はないのか?」
「……ギー太は私たちを憎んでいる
そして、それ以上に唯を愛している」
「私たちが唯ちゃんと一緒にいる以上、不幸は続くってことね」
「ああ、それに最後は唯自身も不幸になる」
「……唯」
「……唯ちゃん」
「それにブギーポップは絶対にギー太を消すつもりだ
もし、それを邪魔するなら唯だって……」
「澪、それしか方法はないのか?」
「……ギー太は私たちを憎んでいる
そして、それ以上に唯を愛している」
「私たちが唯ちゃんと一緒にいる以上、不幸は続くってことね」
「ああ、それに最後は唯自身も不幸になる」
「……唯」
「……唯ちゃん」
「それにブギーポップは絶対にギー太を消すつもりだ
もし、それを邪魔するなら唯だって……」
54: 2011/01/20(木) 01:04:06.00
「出来ないよ……ギー太を壊すなんて」
「それがある以上、周りの人間はどんどん不幸になっていくんだぞ?」
「……!」
「ティータイムのような甘い時間は永遠には続かない
いつかは席を立たなければならない時がくる
まどろむ様なときを生きるのは
ぼくのようなな不安定な存在だけなんだよ」
「あずにゃん……憂……」
ぽろぽろと。
ただ何も考えずに生きてきたはずの少女。
ギターと出会って音楽と出会って仲間と出会って成長した少女。
彼女は初めて別れの決断をした。
涙を流しながら。
「ゴメンね……ギー太……」
55: 2011/01/20(木) 01:06:15.17
「ねぇ、壊す前に一曲弾いてもいいかな?」
「構わないよ
『彼』がそのつもりだったら飛行機でも隕石でも降らせて
抵抗してくるはずだからね」
「うん、えへへ、私ね、三年間ずっとギー太と一緒に生活して
一緒にうんと練習して、声がかれても風邪をひいても
みんなに内緒で二人だけの曲も作ったんだ」
「幸せだったろうね」
黒いルージュの唇を吊り上げて、見つめている。
「うん、……うん、幸せだったよ」
演奏が終わり、
「やっぱり噂は本当だったね
氏神は一番美しいときに頃すんだって」
唯はギー太を叩き壊した。
「結局、幸せって何なんだろうね」
56: 2011/01/20(木) 01:08:17.11
結局、紬は統和機構にMPLSの報告をしなかった。
友人を危険に晒したくなかったし、澪には危険を察知する能力が消えていたからだ。
「あのあと、急に見えなくなったんだよ
ブギーポップは、君に勇気が芽生えたからだよ
って、例の変な表情で言っていたけど」
そう言って妙に晴れ晴れとした表情で黒髪の親友は笑った。
自称『元最強』のフォルテッシモには散々嫌味を言われた。
「あずにゃんかわいいって言ってたくせに」
と言う声がどこからか聞こえた気がして、ペンダントを変にいじくっていたのが妙に印象に残っている。
律は「まぁ、人生そんなこともあるよな」と、特に気にしていない感じだった。
もちろん、それがみなを気遣ってのことだとは全員が知っている。
唯は一人暮らしをすることを決めた。
憂に「私のせいなの?」と言われ一悶着あったらしいが
「自分で決めただけだよ」と笑って決着したようだ。
今度、梓と新しいギターを買いに行くらしい。
友人を危険に晒したくなかったし、澪には危険を察知する能力が消えていたからだ。
「あのあと、急に見えなくなったんだよ
ブギーポップは、君に勇気が芽生えたからだよ
って、例の変な表情で言っていたけど」
そう言って妙に晴れ晴れとした表情で黒髪の親友は笑った。
自称『元最強』のフォルテッシモには散々嫌味を言われた。
「あずにゃんかわいいって言ってたくせに」
と言う声がどこからか聞こえた気がして、ペンダントを変にいじくっていたのが妙に印象に残っている。
律は「まぁ、人生そんなこともあるよな」と、特に気にしていない感じだった。
もちろん、それがみなを気遣ってのことだとは全員が知っている。
唯は一人暮らしをすることを決めた。
憂に「私のせいなの?」と言われ一悶着あったらしいが
「自分で決めただけだよ」と笑って決着したようだ。
今度、梓と新しいギターを買いに行くらしい。
57: 2011/01/20(木) 01:10:36.77
結局あの事件はなんだったんだろうと紬は時々、考える。
形のない幸福や不幸といったものに振り回され、
事態の中で自分は何も出来ずにもがいていただけ。
友人達はそれぞれ成長したけど自分はどうなんだろう。
私は唯ちゃんみたいに、選択できないと思う。
今でもまだ甘い蜜のようなティーテイムを過ごしていたいと思う。
それでもいつか、辛い選択をするときがくるのだろう。
不幸にもがき苦しむときがくるのだろう。
それでも別れを想像することは出来た。
いつかの未来を創造するための別れだ。
そのために今は何も考えずに眠ろうと思う。
蛸壷の中で、大きなタコが不幸か幸福を運んでくるまで。
形のない幸福や不幸といったものに振り回され、
事態の中で自分は何も出来ずにもがいていただけ。
友人達はそれぞれ成長したけど自分はどうなんだろう。
私は唯ちゃんみたいに、選択できないと思う。
今でもまだ甘い蜜のようなティーテイムを過ごしていたいと思う。
それでもいつか、辛い選択をするときがくるのだろう。
不幸にもがき苦しむときがくるのだろう。
それでも別れを想像することは出来た。
いつかの未来を創造するための別れだ。
そのために今は何も考えずに眠ろうと思う。
蛸壷の中で、大きなタコが不幸か幸福を運んでくるまで。
58: 2011/01/20(木) 01:13:26.83
"YUI HIRASAWA,s THAT IS IT" closed.
BGM "ギー太に首ったけ" by YUI HIRASAWA
62: 2011/01/20(木) 04:41:49.60
乙乙
引用元: 唯「ぶぎーぽっぷ!」


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