1: 2011/01/20(木) 23:15:03.57
唯「ご飯できてるよ!」

憂「ん…おはようお姉ちゃん。今日も作ってくれたんだ…」

唯「今まで頼りっぱなしだったからねー。憂、飲み物は何がいい?」

憂「えーっと…お茶が良いな、日本茶」

唯「オッケー、淹れてるから顔を洗って待ってなさい!(キリッ」

憂「うん!ふふっ」

6: 2011/01/20(木) 23:15:54.43
モグモグ…
ズズズ…
唯「…どうかな!」
憂「うん!今日もすごく美味しいよ!もう私も敵わないなー」
唯「それほどじゃないよー、まだまだ憂には敵わないもん!」
憂「そうかな…でも、ほんとにすごく上手くなったよね!お姉ちゃん、何でもやればできるんだもん、尊敬するよ!」
唯「えへへ~」

唯・憂「「ご馳走様~」」
憂「…って!もうこんな時間!!」
唯「ほんとだ!急がなきゃ!!」
  ドタドタドタ
唯・憂「「いってきまーす!!!」」

8: 2011/01/20(木) 23:17:12.54
昼休み!
ガラッ
唯「うーいー!」
梓「!唯先輩?」
唯「あずにゃんもやっほー!」
憂「お姉ちゃん!別に待っててくれたらそっちに行ったのに…」
唯「いや~こっち終わるの早かったからさ~」
憂「そうなんだ、じゃあここで…って、梓ちゃんもそれでいい?」
梓「もちろん!」

唯「ハイこれお弁当!」
梓「唯先輩がもってきてたんですか。今日憂カバン薄いから購買行くのかと思ってました」
唯「憂にこんな重いもの持たせられないよ~」
憂「私そんなに貧弱じゃないよ!?」
梓「あはは…じゃあ私ちょっと購買行ってきますから、先食べててください」
唯「いいよ~待ってるよ~」
憂「私もまってるよ」
梓「そうですか?ありがとうございます!じゃあ急いで買ってきますね!!」
唯「転んじゃだめだよ~」憂「転ばないようにね~」
梓「転びません!!」

9: 2011/01/20(木) 23:21:18.29
ムシャムシャ
憂「わ~美味し~!」
唯「ホント!?よかった~」
梓「それって唯先輩が作ったんですか?盛り付けもすごく綺麗ですね…」
唯「えへへ~。そだ!あずにゃんも味見どうぞ!」
梓「良いんですか?じゃあいただきます」
パクッ
梓「…」
唯「どうかな?」
梓「すごく美味しいです…いつからこんなの作れるようになったんですか?」
唯「一月前から憂に特訓してもらってたんだ~」
憂「いまじゃあお姉ちゃんのほうが上手だけどね~」
唯「だからそれは言い過ぎだってば!///」
梓「ふふ…本当に仲がいいですね…」
唯・憂「「うん!」」

10: 2011/01/20(木) 23:24:37.90
モグモグ
憂「…」
唯「…」
梓「…どうかしましたか?」
唯「えっと…あずにゃん、それなに?」
梓「トルコライスサンドです」
唯「…」
憂「…」
梓「…美味しいんですよ?」

ほうかご?
ガラッ
唯「うい~!か~えろ!」
憂「おねえちゃん!?ちょ、まだHR終わってないよ!」
先生「平沢のお姉さん?終わるまでもうちょっと待っててね~」
唯「ぅえ!?ご、ごめんなさーい!」
ガラガラピシャッ
クスクス…アハハ…
憂「もう///」
梓「これで五回目…」

11: 2011/01/20(木) 23:27:03.47
唯「うい、どっかいきたいとこある?」
憂「う~ん…そうだ!ゲームセンターとかいってみたいな!」
唯「分かった!じゃあ今からいこっか!」
憂「うん!」
―ゲームセンター―
憂「わ~このぬいぐるみ大っきいね~」
唯「!?ねえうい、それほしい?とってあげよっか!」
憂「え?うん…でも、取れるの…?」
唯「まっかせなさい!!」

12: 2011/01/20(木) 23:28:37.18
かえりみち
憂「やっぱり私が持つよ~」
唯「だめだよ!憂にこんなおもいものもたせられないよ!」
憂「だからそんな貧弱じゃないって!」
唯「まあまあいいから、それに今日は長い時間付き合わせちゃったしね~」
憂「白熱してたね~、お姉ちゃんがあんなに格ゲー上手いとは思わなかったよ~」
~回想~
ポチョムキンッッッバスター!!! KO!
唯「やったー!」
憂「お、お姉ちゃん…向いに長蛇の列が…」
唯「どんとこい!どんどんこい!私は誰にも負けないよ!!」
ポチョムキンッッッバスター!!! KO!
~回想終わり~
憂「結局誰にも負けなかったね~」
唯「ごめんね~退屈だったでしょ?…やりだすと時間忘れちゃって」
憂「いいんだよ、私も見てて楽しかったし!」
唯「そう?えへへ~」
憂「うん♪」

14: 2011/01/20(木) 23:30:50.54
憂「晩御飯も美味しかったね~」

唯「そう?よかった~憂にほめられると自信付くよ~」

憂「…ごめんね。いままでは私が作ってたのに…」

唯「いいんだよ!今までまかせっきりだったんだから、ね?」

憂「そう…?」

唯「うん!でも、ありがとうって言葉でいってくれるとうれしいな」

憂「うん!ありがとうお姉ちゃん!」

唯「えへへ~どういたしまして♪」


>>13こうですかね?

16: 2011/01/20(木) 23:32:56.68
唯「憂、もうそろそろ寝る時間だよ」

憂「そうだね、もうねよっか」

唯「明日は休みだから、どこでも好きなところ連れてったげるよ!」

憂「ありがとうお姉ちゃん。…ねえ、ちょっとお願いがあるんだけど…」

唯「?な~にうい」

憂「今日、一緒に寝ちゃダメかな…?」

唯「!?…いいよ!もちろん!いっしょに寝よ~!!」

憂「ありがと、お姉ちゃん!」

18: 2011/01/20(木) 23:34:21.83
次の日
憂「お姉ちゃん、朝だよ♪」

唯「…は!?憂?もう起きてたんだ?」

憂「うん、今日お出かけするんだって思うとなんだか眠りが浅くなっちゃって」

唯「そっか…あ!朝ごはん作ってくるね!!」

憂「あ!待ってお姉ちゃん!私も手伝う!!」

唯「憂にそんな重労d」

憂「いいの…手伝わせて?」

唯「…うん!じゃあ今日は二人でつくろっか!」

憂「うん!ありがとう!」

19: 2011/01/20(木) 23:35:52.47
ズズズ…
唯「…やっぱり昨日よりおいしいなぁ、憂が手伝ってくれたからかな」

憂「そうかな?…そんなこと無いと思うけどなあ」

唯「モグモグ…」
憂「モグモグ…」

唯「…そういえば、二人で朝ごはん作るなんてあんまり無かったよね」

憂「そういえばそうだね」

唯「ズズズ・・・」
憂「ズズズ・・・」

唯・憂「「ご馳走様!!」」

唯「じゃあいこっか!」
憂「うん!」

20: 2011/01/20(木) 23:38:29.11
お昼
唯「ここの屋台が美味しいんだって~」

憂「そうなんだ、食べてみよっか!」

律「お?唯に憂ちゃん、学校外で会うのは久しぶりだな~」

唯「りっちゃん!それに皆も!」

澪「!?…憂ちゃん…」

紬「あら、お久しぶりです」

梓「憂、唯先輩、偶然ですね」

21: 2011/01/20(木) 23:39:38.99
憂「みんなもここの屋台で?」

律「ああ、ククラ・コ・ツォエラドッグってのが美味かったぞ!」

梓「私はホビロンハーブサンドを…」

澪「!!う、うぇ…、ご、ごめん私はあれはちょっと…ぅぅ」

律「梓…」

紬「梓…」

梓「え?ちょ、ちょっとなんですかその目は!おいしいんですってば!!しかも紬先輩なんかいつもと呼び方が違いません!?」

憂「あ、あはは…」

唯「ほびろん?」

22: 2011/01/20(木) 23:42:09.49
唯「…そっか~もう皆食べちゃってたんだ…残念だな~」

澪「ま、まあせっかく姉妹水入らずなんだから、そのほうが良いんじゃないか?」

律「そうだな!せっかくの姉妹デートだし、みんな、邪魔にならないように、な!」

紬「唯ちゃん、憂ちゃん、またね」

澪「唯、ま、またあさって学校で、な」

唯「うん!みんなまたね~」

憂「さようなら~」

梓「・・・」

唯「ん?あずにゃんどうかしたの?」

梓「憂」

憂「…何?梓ちゃん」

梓「…また、ね」

憂「…」

憂「…うん!またね!!」

梓「…っ」ダッ

24: 2011/01/20(木) 23:44:17.16

憂「…」

唯「うい…」

憂「ん、じゃあたべよっか、お姉ちゃん」

唯「うん!」

唯「美味しかったね~」
憂「おいしかったね…」

唯「…うい?」

憂「お姉ちゃん、けいおん部の皆から誘われてたの?…ごめんね、つき合わせちゃって」

唯「いいんだよ…憂より優先しなきゃいけないことなんて無いんだから!」

憂「…ありがとう、お姉ちゃん」

唯「それでさ!次はどこいきたい!?」

憂「ううん…なんだかちょっと疲れちゃったな」

唯「!?…じゃあ今日はもう家でゆっくりしよっか」

憂「うん!」

26: 2011/01/20(木) 23:45:48.57
―夜―
唯「はい!晩御飯!」

憂「わぁ~美味しそう!」

唯・憂「「いただきまーす!!」」

憂「美味しいよお姉ちゃん!」

唯「ふふ、よかった~」

憂「もう一人でもこんなに美味しいもの作れるなんて、やっぱりおねえちゃんは天才だね!」

唯「…そんなこと、ないよ。憂が丁寧に一から教えてくれたから、できるようになったんだよ?」

憂「教わっただけじゃここまでできないよ、自信もって良いとおもうよ?」

唯「憂…うん、じゃあお姉ちゃん自信持っちゃうぞ~♪」

憂「ふふっ」

27: 2011/01/20(木) 23:47:23.91

唯・憂「「ご馳走様!!」」

憂「美味しかったね~」

唯「うん!さ、うい先お風呂入ってきなよ」

憂「…おねえちゃん?」

唯「なに?憂」

憂「一緒に入っちゃダメ?///」

唯「ふふ、いいよ、うい」

憂「寝るときも…」

唯「わかってるよ、甘えん坊さん♪」

憂「///」

28: 2011/01/20(木) 23:49:28.44
次の日
憂「おはよ、お姉ちゃん」

唯「おはよ!うい、今日は早かったね~」

憂「うん、…朝ごはんもうつくっちゃったんだ」

唯「え?ご、ごめん!一緒に作りたかった!?」

憂「ううん、いいの。それに今日はちょっと」

唯「?どうかしたの?」

憂「昨日歩き回った疲れが抜けてないかんじ…かな」

唯「…そっか、それは仕方ないね。」

憂「うん…」

唯「じゃ」

唯・憂「「いただきます!!」」

29: 2011/01/20(木) 23:51:55.19

唯・憂「「ご馳走様!!」」

唯「じゃあいこっか、憂」

憂「うん、お姉ちゃん」

唯「…何かほしいものある?何でも買ってあげるよ?」

憂「ううん…それよりも」

唯「それよりも?」

憂「今日はずっとお姉ちゃんと一緒にいたいな」

唯「うい…。うん、今日はずっといっしょにいるよ、ずっと一緒。ね」

憂「ありがとう…」

唯「どういたしまして♪」


32: 2011/01/20(木) 23:54:26.85

唯「でね~澪ちゃんが…」

憂「え~ほんとに?それでそれで?」

唯「なんかこう…ブヮーって!」

憂「…ぷっくふふふ」


33: 2011/01/20(木) 23:55:45.28

憂「ん…もうこんな時間…なんだかもう眠くなってきちゃった」

唯「そっか、お話ばっかりで疲れちゃったんだね」

憂「ふゎぁあ…」

唯「…ねえうい」

憂「なあに?お姉ちゃん」

唯「今日は、ちゃんと楽しかった?」

憂「うん、とっても」

唯「そっか。」

憂「お姉ちゃんは?」

唯「…たのしかったよ」

憂「そっか。」

34: 2011/01/20(木) 23:57:22.10
唯「ねえうい、子守唄うたってあげよっか!」

憂「い、いいよおねえちゃん、恥ずかしいし///」

唯「遠慮せずにさ、ね~んね~ん~ころ~りよ~」

憂「ふふ…いいって、一緒にいてくれるだけで」

唯「…そう?うん、ういが寝ちゃうまでずっと一緒にいるからね」

憂「うん…」

唯「…」

憂「手…」

唯「?」

憂「手、握ってて?」

唯「うん、はい」ギュ

憂「ありがと…また明日。ね、お姉ちゃん」

唯「!?うい…うん、『また明日』ね、おやすみ、うい」

憂「えへへ、おやすみなさい」

36: 2011/01/20(木) 23:59:06.24
朝、目が覚める。まだ少し眠いけど、そんな事も言ってられないよね。
目覚まし時計に目をやる。3,2,1、

ピピピpカチッ
唯「えへへ、今日も私の勝ちだね、時計くん」
顔を洗い、歯を磨き、身だしなみを整えてキッチンに立つ。お味噌汁に焼き魚にご飯、二人分を二つの器によそい、テーブルに並べる。
お茶を入れるための水をやかんに入れ、火にかける。沸くまでの時間に妹の部屋へ。
唯「う~い~朝だよ~!」


38: 2011/01/21(金) 00:01:05.74
唯「今日もちゃんと一人で起きれたでしょ!それに朝ごはんももう一人でだって作れるんだからね!」
テーブルの上には二人分の朝食。私の向かいには憂…ではなく、憂が最期まで抱きしめていた、あの日私が取ってあげたぬいぐるみが、すわっていた。大きさはちょうど憂の座高と同じくらいだ。
唯「だからね、心配することなんてなにもないんだよ?ういは寝てるだけでも、私はちゃんとやっていけるから…」
馬鹿だと思う、それは分かってる。居ない人の食事をよそって、ぬいぐるみなんか置いちゃって。
…でも、今日は、今日くらいは。
唯「ご馳走様…」
唯「憂は美味しいって言ってくれたけど、やっぱり憂の作ってくれたのに比べたらまだまだだな~…だって、なんか、ご飯まで、しょっぱいし…」
まただ、またこみ上げてくる。一ヶ月前には分かってた結果なのに、覚悟していたのに、…覚悟していた、つもりだったのに。
唯「…わ!もうこんな時間だ!早く行かなくっちゃ!…うい、今日は昼に帰ってくるからね。じゃあ」
唯「いってきます」

39: 2011/01/21(金) 00:05:41.78
昼休み
午前の授業くらいちゃんと受けようかと思っていたけど、結局三限が限界だった。
先生も察してくれたみたいで、すぐに保健室に行くか、いっそ帰るかと聞かれた。
まだ時間でもなかったし、できれば四限も受けるべきだと思ったから、私は保健室に行った。
けど、結局今まで寝てしまった。
今日は昼から憂の…だから、もう帰らなきゃいけないんだけど…気づいたら、私はけいおん部の部室前に来ていた。
唯「だれも、居ないだろうな…」
ガラッ
律・澪・紬・梓「「「「!?」」」」
唯「みんな!?」

40: 2011/01/21(金) 00:07:29.55
律「ここにいれば唯が来るかと思ってさ」

澪「もしここに来るなら、そのときの唯はきっと誰かに支えてほしいと思ってるだろうって…」

紬「私たちができることなんて何も無いかも知れないけど、…でも」

梓「気持ちを受け止めてあげることぐらいなら…できると思いますよ」

唯「みんな…ううん、大丈夫、一ヶ月前にお医者さんに聞かされてから、ずっと分かってたことだもん。
くよくよしてたら、憂が安らかに眠ってられないよ!」

律「唯…」

澪「強いな、唯は」

唯「そんなことないよ、それに、あずにゃんも親友だったんだし…」

梓「私も悲しいです…でも、唯先輩は…」

紬「唯ちゃん、憂ちゃんには及ばなくても、私たちもあなたの居場所に、
…帰る場所になれると思うから。だから」

唯「わかってる。むぎちゃん、ありがと。それに皆も」

41: 2011/01/21(金) 00:09:34.44
唯「私、そろそろ行くね。…だいじょうぶだよ、憂の分も私が生きなきゃ」

律「そっか、いや、正直自殺とかするんじゃないかって冷や冷やしてたんだぞ?」

澪「ちょっと律!…まあ、私も少しは」

梓「先輩たちは心配の方向が明後日なんですよ!憂がそんなので喜ぶはず無いって、
一番知ってるのは唯先輩なんですから」

唯「ふふ、ありがとあずにゃん。じゃあ、みんな」

唯・律・澪・紬・梓「「「「「また明日!!!!!」」」」」
Fin

43: 2011/01/21(金) 00:14:47.45
孫娘「ねぇねぇおばあちゃん」
老婆「なぁに?○○ちゃん」
○○「今ね、けいおんって言うアニメがはやってるの!」
老婆「アニメ、ねぇ…」
○○「それに出てくる唯ちゃんと憂ちゃんっていう姉妹がね、あたしと××ねぇちゃんに似てるの!ちょっと見てみてよ!」

老婆「へぇ…確かに似てるねぇ、でもこれだと妹の○○ちゃんが唯ちゃんね」
○○「そうなの!でも、ね?似てるでしょ!すごいでしょ~♪」
老婆「ふふふ、すごいねぇ」

というようなことがあって、アニメという老後の趣味を見つけてしまいました。
皆様に何かしらの感想を抱かせられましたなら、私としてはうれしい限りでございますが。
稚文失礼いたしました。

45: 2011/01/21(金) 00:26:52.55

55: 2011/01/21(金) 01:35:20.46
「う~い~朝だよ~!」

「今は夜だよ……お姉ちゃん」

私の姉、平沢唯は一年前から同じ時を繰り返している。

56: 2011/01/21(金) 01:39:57.77
「今日は遊園地に行くって約束だったよね?」

「うん……そうだね……」

「昨日から楽しみで眠れなかったんだ~!」


彼女は夜に起き、一年前のあの日を繰り返す。
前に進めず、ずっと、壊れたレコードの様に同じ事を繰り返し続けている。

57: 2011/01/21(金) 01:45:52.07
「憂っ!はやくっはやくっ!」

「待ってよ!お姉ちゃん~」

だから私はお姉ちゃんとあの日の再現を繰り返す。
紬さんには感謝しなくてはいけない。

58: 2011/01/21(金) 01:54:45.98
一年前


「っ!お姉ちゃんは……!?」

「命はなんとか助かったわ……」

「本当ですか!?……よかったぁ……」

人騒がせなお姉ちゃんだ。退院したらすっごく心配したんだよって怒りながらもきっと私は泣いちゃうんだろうな。お姉ちゃんが家に帰ってきたら好きな物をたくさん作ってあげよう。

そんな安堵感は


「……唯ちゃんは……」




「もう……学校には戻れない」


絶望の音で壊された

60: 2011/01/21(金) 02:06:37.37


「……どう……いう、こと……ですか?」

「唯ちゃんは……もう……」

なぜ?どうして?命は助かったのになんで?戻れないってどういうこと?お姉ちゃんになにかしたの?――

「……ご、めんな、さい……」

気がつくと目の前で紬さんはポロポロと大きな瞳から涙を零していた。
それでようやく、自分が激情の赴くまま彼女に掴みかかっていたことを、知った。

62: 2011/01/21(金) 02:18:02.12
私は紬さんからお姉ちゃんは身体に異常はないが、意識を失った日。
つまり一緒に遊園地へ行き、倒れる直前の記憶で時が止まっていることを告げられた。


「……どう……したらっ……なお、りますか」

堪えようとしても、次から次へと涙が溢れた。

「お医者様が言うには……記憶が止まった時と同じ体験をさせれば……もしかすると……」

だとしても記憶が戻る事はほぼゼロに近い。そうお医者さんは言っていたそうだ。


それでも――

「わかり……ました」

「憂ちゃん……?」

「きっと……きっとお姉ちゃんは記憶が戻ります。……戻してみせます!」


―― 私は、またお姉ちゃんと日常を過ごしたかった。



66: 2011/01/21(金) 07:21:48.18


紬さんは私達の為に、琴吹家の所有する遊園地を夜だけ貸切にしてくれた。
そればかりか近くに療養所まで作り、お姉ちゃんをそこで過ごさせるようにとりはからってくれた。


「憂、楽しい?」

「……うん、楽しいよ。お姉ちゃん。」

「よかったぁ!」

不安げだった表情から一変して安堵の色をみせる。それが私の胸を締め付けた。

68: 2011/01/21(金) 07:40:06.02
「憂っ!お化け屋敷だよ!行こうよ!」

「えー…私怖いの苦手だからなぁ」

「お姉ちゃんもついてるからいこうよっ!憂を怖がらせるお化けなんてやっつけてあげる!」

お化け屋敷の中、手を握り、先を歩いてくれる姉の背中を見ながら、私はあぁやっぱり、お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだ。と薄ぼんやり感じていた。


69: 2011/01/21(金) 07:51:49.21
「ぐすっ……」

「そんなに怖かったの?お姉ちゃんがいるから大丈夫だよ」

よ~しよ~しと変な抑揚をつけながら、お姉ちゃんは抱きしめながら頭を撫で続けてくれた。

70: 2011/01/21(金) 08:00:11.79
「もう大丈夫?」

「……うん。ありがとう……お姉ちゃん」

涙でぐしゃぐしゃになった私の顔を、お姉ちゃんがハンカチで拭いてくれる。いつもと逆だね。といってお姉ちゃんはまた笑った。

80: 2011/01/21(金) 19:47:41.01
「憂は好きな人はいるの?」

「えっ?急にどうしたの?お姉ちゃん」


「いるんだ?」

「いないよぉ!」

からかうように聞いてくる姉に笑いながら答える。
こうしているとお姉ちゃんは昔のままのようで一緒にいると心が休まる。


この話が既に何度も繰り返されているとしても。

81: 2011/01/21(金) 20:00:16.11
「たまにはこうやって遊びにくるのも楽しいね~」

「そう……だね、お姉ちゃん」

こうしていると忘れそうになるが、やっぱり記憶はあの時のまま、その歩みを止めたままでいる。

82: 2011/01/21(金) 20:06:30.49
徐々に夜も深まり、辺りの気温がピリピリと肌に突き刺さるような冷たさへと変わっていく。

「いや~楽しかった!」

「満足した?お姉ちゃん?」

「よし、最後にあれに乗ろう!」

そういって姉が指差したのはこの遊園地にそびえ立つ、大きな観覧車だった。

83: 2011/01/21(金) 20:21:02.94
「おおおぉぉ~!」

私の正面にいる彼女は、子供のように座席によじ登り、外の世界を見ていた。

「お姉ちゃんったら……恥ずかしいよ……」

「大丈夫っ!こんなに高いと誰も見てないよ!」

遊園地なのに誰もいないなんて不思議だねぇ~と下界を見下ろす姉は、これ以上進むことも出来ず、グルグルと同じところを周り続ける観覧車と似てるなと思った。

85: 2011/01/21(金) 21:20:39.08
沈黙が辺りを包む。もう私もわかってはいるのだ。
姉の記憶は観覧車の頂上に差し掛かる頃、巻戻ることぐらい。
だが、頭では理解していても、心で納得することはどうしてもできなかった。

86: 2011/01/21(金) 21:23:44.25
2人を乗せた小さなゴンドラはゆっくりと、だが確実に上がっていく。

「……ねぇ。う~い~?」

「なにかな……お姉ちゃん」

「いつまでもーーこんな時が続くといいのにね」


感情を抑えるのが辛かった。

88: 2011/01/21(金) 21:33:18.89
「……お姉ちゃんは大きくなったら何になりたい?」

顔をあまり向けないようにして何気ないように聞く。

「えぇ~?急に聞かれても困るよぉ。」

お姉ちゃんは、困ったようにはにかんだ。

90: 2011/01/21(金) 21:47:08.64
「ケーキ屋さんがいいな~。甘いお菓子をお腹いっぱーい食べるんだよ!」

「あはは、お姉ちゃんらしいね。」

「えー、そうかなぁ?」

「そうだよぉ」

「……」

「……」

「……」


姉が小さくなった世界を背に呟く。

「……私達って高校生だもん。まだ、将来っていうかな、明確な未来って遠いことのように感じるんだ」

少しずつ、その唇から言葉を紡ぐ。

「今は律っちゃん、澪ちゃん、紬ちゃん、あずにゃん、憂、純ちゃん、それに他のみんなと一緒にいることが一番楽しいんだ。」

それは初めて聞く、姉の本心だったのかもしれない。

91: 2011/01/21(金) 22:06:16.55
空が白んでいく。もうすぐ朝を迎え、よるが終わる。
そして姉の記憶も。

「ねぇ、お姉ちゃん。」

「なぁに、憂?」

「ずっと、大好きだよ。」


そして小さなゴンドラを、朝の光が照らした。

92: 2011/01/21(金) 22:08:15.23
これにて幕を引かせて頂きます。

稚拙な文章でしたが、なにかを心に感じて頂けたら幸いです。

93: 2011/01/21(金) 22:22:19.43
お疲れ
俺はこういうのも好きだよ

これからも頑張ってください

引用元: 唯「う~い~朝だよ~!」