1: 2011/01/23(日) 18:58:06.24
憂「お姉ちゃん、ご飯出来たよ」

唯「いただきま~す。今日も美味しいよ憂」



憂「お姉ちゃん、お風呂沸いたよ。お先にどうぞ」

唯「ありがと~。じゃあ、入ってくるね」



憂「お姉ちゃん、6×8は48だよ」

唯「あ、そっか~。46じゃあちょっと少なかったか~」



憂「お姉ちゃん、そこはこうやって弾けばいいんじゃないかな」ジャカジャン♪

唯「なるほど~、そうやって弾けばいいのか~」

憂「ちゃんとそう楽譜に書いてるよ」



憂「お姉ちゃん、もうこんな時間だよ。明日も学校だしもうそろそろ寝よっか」

唯「うん、おやすみ~憂」

5: 2011/01/23(日) 19:02:35.07
唯「……」

唯「……おかしいよ」

唯「同じ親から生まれて、同じような環境で育ってきたのに
  なんでこんなにも差が出来たんだろう……」

唯「憂は家事をやらせれば、その辺の主婦以上のことをやってのける。とくに料理はプロ級」

唯「おまけに、勉強も出来る。ギターだってちょっとやっただけで覚えた」

唯「私といえば、家では常にゴロゴロ。家事なんてやった事が無い」

唯「勉強も一学年下の憂に教えてもらうこともしばしば」

唯「ギターだって毎日触ってないとすぐ忘れる」

唯「これじゃあ、どっちが姉かわからないよ」

唯「ん? そもそも、本当に私が憂のお姉ちゃんなんだろうか……」

唯「実は、本当の姉妹じゃないのかも……」

唯「だって、こんなにも差があるとなるとその可能性も捨てきれない……」

唯「きっと、憂はこんな不出来な私を救うために22世紀の未来から来た憂型ロボット!」

唯「未来では、そんな憂型ロボットが沢山いて、一家に一台憂の時代が来るに違いない」

唯「なんて素敵な未来。人類の明日は明るい!」

9: 2011/01/23(日) 19:08:37.18
 ・ ・ ・ ・ ・

唯「と、昨日の私はここで考えるのをやめて眠りについたのです」

澪「馬鹿がいる」

唯「だって、そうでもなきゃ有り得ないよ」

梓「確かに、憂の高性能っぷりを思うと、唯先輩のポンコツっぷりは考えられないですね」

唯「でしょ~。まるで私ったら引き立て役だよ」

律「顔はすっげー似てるのにな」

梓「中身は月とスッポンですよね」

唯「さっきからあずにゃんさりげに酷いよね」

紬「でも、私も家のことは全て執事や家政婦に任せっきりよ」

唯「そっか~、そういう意味では私とムギちゃんは一緒なのかもね」

澪「何言ってるんだ、平民風情が」

梓「憂はお手伝いさんじゃありませんよ、妹じゃないですか」

12: 2011/01/23(日) 19:13:07.34
律「姉として恥ずかしくはないのか?」

唯「恥ずかしいと感じているなら、家でゴロゴロしたりしないよ!」

律「なんという正論!」

澪「いや、せめてそこは恥ずかしがれ」

唯「だって憂の家事の邪魔にならないようにゴロゴロするのも結構難しいんだよ」

梓「だって、の意味がわかりません」

唯「ゴロゴロするにも経験が必要だってことだよ」

梓「はぁ……そうですか」

澪「まぁ、唯がそれでいいならいいんじゃないか」

律「そうそう、憂ちゃんも好きでやってるみたいだし」

唯「でも、姉の威厳ってもんが」

澪「お前はどうしたいんだよ……」

16: 2011/01/23(日) 19:17:04.33
唯「なんとか私に姉の威厳を取り戻せるようにご指導をお願いします!」

澪「指導たって……」

律「よし! わかった! ここは私に任されよ!」

紬「そうね、唯ちゃんを除けばお姉ちゃんなのはりっちゃんだけだもんね」

唯「りっちゃん……、ありがとう!」

澪「まぁ、いつもはこんな律だけど家ではちゃんとお姉ちゃんしてるもんな」

梓「律先輩の家でハンバーグご馳走になったときは驚きました」

紬「洗濯物も取り込んでちゃんと畳んだりしてたのもりっちゃんだったのよね?」

律「うん、ウチの親そこのところ結構厳しいからさ」

律「弟と当番で洗濯物の取り込みや風呂掃除や食器洗いやってる」

唯「私は全部憂に任せっきりだ」

梓「せめて少しは手伝ったらもっとお姉ちゃんっぽくなるんじゃないですか?」

唯「え~、それは面倒くさいよ~」

梓「……」

18: 2011/01/23(日) 19:20:55.38
唯「もっとこう手っ取り早くお姉ちゃんって感じの、なんか無い?」

澪「なんだよそれ……」

律「そうだな~、やっぱり私の方が上だって思い知らしめることじゃないか」

律「私は常に聡より先にお風呂に入るし
  ご飯のおかずだって聡のお皿に盛ってる方が美味しそうだったらそれを奪う!」

律「こうやって、姉には服従するものだと身に沁みこませるんだ」

唯「そっか……、確かに私はいつも憂には感謝してばっかりだった」

律「そうだよ、だから唯自身も姉の自覚が足らないんだよ」

唯「わかった! 今日からは強気で憂に対して接してみるよ!」

律「ああ! その意気だ!」


梓「いいんですか? なんだか変なことになってません?」

澪「もう突っ込む気にもならないよ……」

紬「唯ちゃんと憂ちゃんは姉妹愛が売りだっていうのに……」

梓「売りって……」

澪「こっちにも少しズレた人がいた……」

19: 2011/01/23(日) 19:24:37.40
 平沢家

憂「お姉ちゃん、ご飯できたよ」

唯「ほほう、今日の献立は豚バラ煮込みですか」

憂「う、うん。ごめんね……」

唯「なんで謝るの?」

憂「な、なんでもないよ。さぁ、食べよ」

唯「いただきま~す」

唯「美味しいね~憂……」

唯(っと、いけないいけない。今日りっちゃんに言われたように偉そうにしないと)

唯「……」

憂「どうしたの? お箸置いて」

唯「この豚バラ煮込みはできそこないだ、食べられないよ」

憂「!?」

唯(ふっふっふ。面食らってるね憂。もう優しいお姉ちゃんは今日限りだよ!)

21: 2011/01/23(日) 19:28:18.17
唯「明日もう一度ここへ来て下さい。本物の豚バラ煮込みをご覧に入れますよ」

憂「お姉ちゃん……」

唯(あれっ? 私って豚バラ煮込み作れたっけ?)

憂「ごめんなさい……」

唯(ま、まぁいいか。どうやら、私の気迫に憂もビビリまくりだし
  これで姉の威厳を保つことができ……)

憂「でも、嬉しい……」

唯「へっ?」

憂「やっぱり、お姉ちゃんにはバレバレだったんだね」

唯「?」

憂「今日は学校で先生に頼まれごとされちゃって帰ってくるのが遅かったから
  ご飯の支度が間に合わなくって、スーパーのお惣菜物で済ませちゃおうって横着しちゃった」

唯「じゃあ、この豚バラ煮込みは」

憂「うん、私が作ったやつじゃないの」

唯「そ、そうなんだ……」

23: 2011/01/23(日) 19:32:35.08
憂「お姉ちゃん、私の味付けちゃんと覚えてくれてたんだね
  正直、何食べても美味しいって言うタイプの人かと思ってたけど」

唯「う、うん。まぁね(実際美味しかったんだけどね……)」

憂「スーパーのお惣菜物作ってる人には悪いけど
  やっぱり私の作った物の方が美味しいってことだよね!」

憂「私、これからは、どんなに帰りが遅くなってもちゃんとご飯作るようするよ」

憂「だって、お姉ちゃんの喜んでくれる顔が私にとって一番なんだもん!」

唯「そ、そうだよ! 憂が作ってくれるご飯が一番だよ!」

憂「私、こんなにわかってくれる人がお姉ちゃんで良かった!」

唯「お姉ちゃんは何でもお見通しだよ!」

憂「うん! お姉ちゃんすごい!」

唯(まぁ、結果オーライかな)

25: 2011/01/23(日) 19:38:12.75
 ・ ・ ・ ・ ・

唯「さて、次はどうしようか……」

唯「りっちゃんは、絶対弟よりも先にお風呂に入るって言ってた」

唯「よし、今度はそれで!」

憂「お姉ちゃん、何ブツブツ言ってるの?」

唯「な、なんでもないよ」

憂「そう? あ、もうすぐお風呂沸くからね」

唯「わ、私が先に入るからね!」

憂「へっ? うん、いいよ。っていうかいつもそうじゃない?」

唯「そうだったね……」

26: 2011/01/23(日) 19:40:50.75
  カポーン

唯「ふぃ~、いい湯じゃの~」

唯「なんかいまいち姉の威厳を取り戻そう作戦が上手くいってない気がするなぁ」

唯「ここで一発ドカンとかまさないと」

唯「よし、いっちょやってやっか!」

27: 2011/01/23(日) 19:44:54.48
 ・ ・ ・ ・ ・

憂「お姉ちゃん、勉強わかる?」

唯「……」

憂「お姉ちゃん?」

唯「憂、それがお姉ちゃんに対する態度かな?」

憂「えっ?」

唯「確かに憂は頭が良い。だけど、一学年下の子に勉強を見てもらうなんて
  こんな屈辱的なことないよ!」

憂「!?」

唯「わかったら出ていってくれるかな?」

憂「ご、ごめんね、お姉ちゃん」

唯(そうだよ、これだよ! 私に足りなかったのはこの突き放す姿勢だよ!)

28: 2011/01/23(日) 19:49:10.17
憂「そうだよね、もう大学受験も近いんだから自分で勉強しなきゃいけないもんね」

憂「ちょっとでも、お姉ちゃんの力になれたらって思ってたけど
  これからは、お姉ちゃん自身の力で難問を解いていくのも必要になってくるよね」

憂「わかった。これからはもうお姉ちゃんの宿題手伝ったりしないよ!」

唯「わかればよし!」

憂「頑張ってね! お姉ちゃん!」








唯「これで、憂には厳しい姉像を植えつけることができたかな」

唯「さてと……」

29: 2011/01/23(日) 19:51:36.76
 翌日

唯「和ちゃん、宿題見せてください」

和「あんた、最近はちゃんと自分でやってきてたのに……」

唯「昨日ほど自分が無力だと感じたことはなかったよ……」

和「何言ってるの?」

唯「人は一人では生きていけないんだね……」

和「そ、そうね」

30: 2011/01/23(日) 19:56:01.82
 放課後

律「で、突き放したはいいけど、結局一人で宿題できなかったと……」

唯「……はい」

梓「典型的な駄目人間の例ですね」

唯「そんなぁ~、あずにゃんのいぢわるっ!」

澪「そもそもなんで唯はそんなにお姉ちゃんぶりたいんだ?」

唯「だって、悔しいじゃん」

紬「悔しい? けど感じちゃう?」ビクンビクン

唯「誰に聞いたって憂の方がよく出来た子だって言われるんだよ」

澪「それには、同意せざるを得ないな」

梓「明らかに憂の方がお姉ちゃんっぽいですもんね」

唯「まぁ、ああ見えて夜は甘えん坊さんだっりするんだけどね」

紬「そこのところ詳しく教えてもらえないかしら?」

律「ムギはもう黙ってろ、な」

31: 2011/01/23(日) 20:01:36.59
梓「でも、よく考えたら、軽音部ってお姉ちゃんか一人っ子しかいないですよね」

唯「妹キャラならいるけどね」

梓「妹キャラ? トンちゃんですか?」

律「なに言ってんだよ。お前のことだろ」

梓「えっ? わ、私!?」

唯「そうだよ~。あずにゃんはこの軽音部の妹的存在だよ~」

梓「ただ年下ってだけじゃないですか!」

唯「唯お姉ちゃんって言ってみて」

律「私のことは律お姉様って呼んでもいいんだぞ~」

梓「そんなのまっぴらごめんです!」

梓「それに、どうせお姉ちゃんって呼ぶなら澪先輩やムギ先輩をそう呼びたいです」

律「おいおい、プライベートでも本物のお姉ちゃんを除け者にして何言ってるんだよ」

唯「私たちは十数年のお姉ちゃん実績があるんだよ!」

澪「実績があるだけで、その実力には疑問符がつくけどな」

唯「それは言わない約束だよ、澪ちゃん」

35: 2011/01/23(日) 20:08:48.35
梓「そうですよ、どっちかって言うとこの軽音部では一人っ子の方がしっかり者でお姉ちゃんっぽいです」

律「な、なにをー!!」

梓「唯先輩はだらけてるし、律先輩は何かと言うと遊びだすし」

梓「その点澪先輩はしっかりしてるし、ムギ先輩は落ち着きがあるし」

唯「でも、ムギちゃんだってどっちかって言うと私たちと一緒にはしゃぐことが多いよ!」

律「そうだそうだー! そういう意味ではムギは私たちと同じさぼるの大好きチームだな」

澪「駄目な方をアピールしてどうするんだよ……」

紬「一緒にしないでっ!!」

唯律「!?」

紬「私が、お姉ちゃん側と同じように見られているなんて……屈辱だわ……」

紬「あくまでも、私は一人っ子側よ!」

澪「む、ムギ!? 急にどうした!?」

37: 2011/01/23(日) 20:16:36.01
紬「えっ? これって一人っ子対お姉ちゃんって構図じゃないの?」

澪「ん? ああ……そうかもしれないけど……」

紬「だからこうしたほうがこの遊びも盛り上がると思って」

律「なんだビックリした」

唯「本気で嫌がってるのかと思っちゃったよ」

紬「じゃあ、改めて……。もっとお姉ちゃん側はしっかりすべきだと思います!」

律「お姉ちゃんにはお姉ちゃんにしかわからない苦悩があったりするんだぞ!」

紬「例えば?」

律「さすがに今はもうないけど昔はお姉ちゃんだから我慢しなさいとか、何かにつけて弟優先にされるんだよ。
  これは一人っ子のお前らには無いだろ」

澪「まぁ、確かにな」

唯「でも、憂はいつでも私優先でしてくれるよ」

律「バカ、今はお姉ちゃんが本当はいかに大変かをアピールする場面だろ」

唯「あ、そっか。しまった」

紬「ふふふっ。やっぱり、お姉ちゃんって大したことないみたいね」

梓(これを遊びにしてしまってるムギ先輩も結局のところあっちグループな気がする……)

39: 2011/01/23(日) 20:24:01.11
律「そもそも、一人っ子なんてわがまま放題に育てられたんじゃないのか?」

唯「そうそう、もうガマンなんて知らないって感じ」

澪「その言葉、そっくりそのまま唯に返すよ」

唯「へっ?」

律「澪なんて~、ちょっと怖いことがあったらすぐ蹲って『もう嫌だー』なんて言っちゃうし」

澪「くっ……」

唯「あずにゃんだってさ、ほぼ初対面の私たちに怒鳴ったりしてさ」

梓「うっ……」

律「きっと一人っ子で甘やかされて育ったから、そんな事しても許されるって思っちゃってるんだろうな」

唯「やだやだ、最近の若者は……」

澪「おい、同年代」

律「ムギなんて、一人っ子の上にお嬢様だから想像を絶する甘やかされっぷりだろ」

40: 2011/01/23(日) 20:29:50.00
唯「毎日ハーゲンダッツ! みたいなね」

律「なに? その例え」

唯「私はあっても週に1回なんだよね……」

律「あっそ……」

紬「確かに、むしろハーゲンダッツ以外のアイスがあったのを知ったのは皆と遊ぶようになってからだわ」

梓「さ、さすがお嬢様」

澪「いや、ただの世間知らずってだけだろ」

紬「甘やかされていたっていうのは否めないわ」

紬「私には、薪を背負いながら本を読んだ経験なんて無い……」

梓「私たちにもそんな経験ありませんってば」

律「お姉ちゃんってのは弟や妹を思いやる心ってのがないとやっていけないからな」

唯「そうそう、小さい頃は私だって憂のお守りしたことあるし」

律「そんな使命感っての? その辺が一人っ子には欠けてるんだよな」

紬「ごめんなさい……。私のせいで一人っ子の分が悪くなっちゃって……」

澪「気にするなよムギ、本当にどうでもいいことだから」

41: 2011/01/23(日) 20:36:01.74
梓「そんなことありません!」

澪「梓?」

梓「確かに、ムギ先輩はお嬢様で甘やかされて育ったかもしれません」

梓「でも、ムギ先輩がこの軽音部で一番苦労をした経験があるんじゃありませんか?」

紬「私が?」

律「な、なんだ?」

梓「ムギ先輩は唯一この中でバイト経験があるからです!」

梓「自分で働いてお金を稼ぐというのは中々大変なことだと思います!」

梓「それをやってのけたムギ先輩はこの中で一番人生経験が豊富で
  それ故にこの軽音部での一人っ子の優位性を表してると思います!」

律「あ、でもそれだったら私もバイトしたことあるぜ」

梓「えっ?」

唯「私も~」

梓「ええっ!?」

44: 2011/01/23(日) 20:41:14.54
澪「まだ、私たちが1年のころに唯のギター買うためにみんなで交通量調査のバイトしたんだよ」

梓「そ、そうなんですか」

紬「働いてお金をもらう感動をあのとき覚えちゃって
  何よりも楽しかったから、もう一度バイトしたいと思って当時募集してた
  マックスバーガーでバイトしたの」

律「さ~、これで私たちお姉ちゃん側にもバイト経験あるやつがいたって訳だ」

律「え~っと、何だっけ? バイトすると人生経験が豊かなんだっけ?」

律「と、なると、この中で一番しょぼい人生なのは……。
  あれあれ? もしかして一人っ子の梓ちゃんじゃありませんか!?」

唯「働かざるもの食うべからずだよ、あずにゃん」

律「まったく……、一人っ子はこれだから……」

梓「ううっ……」

澪「まぁ、あれが労働かと言われると私はどうかと思うけどな」

澪「とくに律はほとんどふざけてたし。
  今思うとあれでお金貰っちゃって良かったのかなって心配になるほどだよ」

唯「ああ~、確かにね~」

45: 2011/01/23(日) 20:46:31.78
梓「そんなに楽だったんですか!?」

澪「だって、どういう訳かこの4人でやらせて貰えたし」

澪「なにより人間相手の仕事じゃなかったからな。ある意味退屈すぎて大変だったけど」

梓「私の想像する仕事とはなんだか違いますね」チラッ

律「うぐっ……」

澪「それに比べてムギの接客業のバイトなんて人間相手だし
  もしかしたら怖い人とか来るかもしれないし……それに失敗したら怒られるだろうし」

澪「私には絶対に無理そうだから、それだけでもムギを尊敬するよ」

紬「確かに、最初は失敗して落ち込んだりもしたけど、そんな尊敬される程でも……」

梓「そう! これですよ!」

律「な、なにが!?」

梓「軽音部のお姉ちゃん側に無くて、私たち一人っ子側にあるものです!」

唯「なになに?」

46: 2011/01/23(日) 20:54:22.03
梓「話は変わりますけど、唯先輩は以前に比べてかなりギターが上手くなりましたよね」

唯「でしょ、でしょ! 私もそうじゃないかなって思ってたんだよね。さすがあずにゃんはわかってるね!」

梓「はい! もう私なんて足元にも及びません」

唯「なんせ、私はお姉ちゃんだからね! よかったら教えてあげるよ!」

梓「律先輩も普段はあえて言ったりしませんけど、私ずっと律先輩のドラムは世界にだって太刀打ちできるって思ってたんです」

律「まぁな! 私くらいになると世界レベルで通用しちゃうだろうな!」

梓「あ、すみません! 律先輩を世界レベルでなんて縛り付けちゃって。もはや宇宙で通用するレベルですよ」

律「そうだろ、そうだろ! 宇宙を股にかけるドラマーお姉ちゃんとは私のことだい!」

梓「ムギ先輩もキーボード上手いですよね、確かコンクールで賞を獲ったことあるとか」

紬「ありがとう、でもそれも昔のことだし。それに私より上手い人なんて沢山いると思うの」

梓「澪先輩はベースはもちろんですけど詞にはいつも感心させられます。
  このバンドを形作る元になってるのは言うまでもありません!」

澪「そんなに褒められると逆に恥ずかしいけど……。でもありがとう」

澪「だけど、ムギが言うように私よりも上手い表現をする人なんて沢山いるし、私もここで満足するつもりなんてないよ」

梓「これですよ! これっ!!」

唯「どれ?」

48: 2011/01/23(日) 20:58:59.94
梓「この謙虚さです!」

梓「お姉ちゃん側の二人は馬鹿みたいに喜んでいますが、それに比べて一人っ子側はちゃんと弁えています」

梓「ここに人間の大きさが出てきてるんだと思います!」

唯「そんなっ!? だったら、さっきのギターが上手くなったっていうのは……」

梓「そんなのお世辞に決まってます」

律「は、謀ったな梓ぁ!!」

梓「騙される方が悪いんです!」

唯「でも、謙虚すぎるのも逆に鼻につくことがあるけどね」

律「あ~。そうだよな」

梓「何のことです?」

律「梓が初めて軽音部に来たとき唯のギターを弾いたことがあったろ?」

梓「えっと、そういえばそうでしたっけ?」

唯「あずにゃんそのときすっごく上手かったんだよ」

49: 2011/01/23(日) 21:05:38.31
律「そうそう、だけどギター弾く前に言ったことが私には癪に障ったんだよな」

梓「なんて言いましたっけ?」

唯「まだ初心者なので下手ですけど、って」

律「ところがどっこい、ギター聞いたらさ……」

律「どこが!? 初心者!? はっ! ふっざけんな! って」

唯「さすがに私もあのときはイラッと来ちゃったよ」

梓「た、確かにあのときは最初だったしちょっと魅せてやれって気持ちがなかったとはいいませんが……」

律「下手だって言っといてあんなの聞かされちゃ嫌味にしかならなかったな」

唯「謙虚すぎるのも考えものよねぇ~」

梓「わ、若気の至りです……」

律「あらあら、これじゃあ一人っ子さん側の負けってことになるのかしら?」

唯「さぁ、ここにおひざまずきっ!!」

紬「あ、梓ちゃん! 負けないでっ!」

51: 2011/01/23(日) 21:12:27.46
梓「そ、それでも、お調子者のお姉ちゃんよりしっかり者の一人っ子の方がいいです!」

律「まだ言うかっ! 梓っ!」

梓「だいたい、そう大変でもなかった交通量調査なのに、いかにも働く辛さを知ってるって顔をする」

梓「そんな節操の無さがお姉ちゃん側の底の浅さを露呈してると思います!」

唯「うっ! 今のは結構グサッときたね……」

梓「練習だって私や澪先輩がやるって言わなきゃ中々重い腰を上げようとしませんし」

梓「お姉ちゃんだったらもっと私たちを引っ張っていって下さい!!」

律「引っ張っていってるじゃないか!」

唯「そうそう! あずにゃんはそのときいなかったけどクリスマス会だってお姉ちゃんであるりっちゃんが言い出したし
  夏フェスだってそもそも私が合宿しようって言ったから行けた訳だし」

梓「どっちも結局は遊び目的じゃないですか!」

律「ぐぬぬ……」

紬「梓ちゃん……決まった……!!」

澪「なぁ、どうでもいいけど早く試験勉強しないか?」

53: 2011/01/23(日) 21:20:24.35
律「ゆ、唯……押され気味だな……」

唯「このままじゃ我々お姉ちゃんの立場が危ういね……」

律「なんとか逆転する要素が欲しいな……」

唯「……はっ!」

律「どうしたんだ? 唯」

唯「りっちゃん、我に策あり! だよ」

律「マジか!?」

唯「うん! ちょっと待ってて!」

紬「あ、唯ちゃんどこ行くの?」

梓「ふふっ。さては勝つ見込みがないもんで逃げましたね」

律「なっ……! わ、私は唯を信じるぞ!」

澪「こんなんで入試大丈夫かな……」

55: 2011/01/23(日) 21:26:02.01
 ・ ・ ・ ・ ・

和「で、私が呼ばれたと」

唯「うん! 和ちゃんは私が知ってる中で一番お姉ちゃんらしいお姉ちゃんなんだよ~」

律「頼む和! お姉ちゃんの権威を取り戻してくれっ!!」

梓「外部から助っ人を呼ぶなんて卑怯ですよ!」

紬(なんだかんだ言って、一番梓ちゃんが楽しんでる?)

和「はぁ~……」

澪「ごめんな和」

和「まぁ、もう生徒会も2年生に引き継いじゃったし特にすることもないからいいんだけど」

澪「でも、和って兄弟いたんだな」

和「ええ、小学生の弟と妹が一人ずつね」

澪「結構歳が離れてるんだ」

和「まぁ、その分可愛くはあるわ」

57: 2011/01/23(日) 21:33:35.98
紬「けど、和ちゃんて確かにお姉ちゃんオーラが出てるわよね」

律「そうだろ、そうだろ」エッヘン

澪「なぜお前が偉ぶる」

梓「でも、真鍋先輩は軽音部ではないのでこの勝負には関係ありません!」

澪「勝負って……」

和「あら? 唯や皆のことは名前で呼んでるのに私は苗字なのね」

梓「え? だ、だって、あまり馴れ馴れしくするのも失礼かと思いまして……」

和「いいのよ、その方が私も嬉しいわ」

梓「そ、そういうことなら……。の、和先輩」

和「なぁに? 梓ちゃん」ニコッ

梓 ドッキーン!!

律「和ってけっこうジゴロタイプか?」

唯「私もたま~に和ちゃんにやられちゃうことあるんだよね」

澪「ああ、私も2年のクラス替えの時の和の笑顔にはコロッといきそうだったよ」

59: 2011/01/23(日) 21:37:40.18
和「で、私はいったいどうすればいいのかしら?」

紬「とりあえずお茶淹れるね」

和「ありがと」

澪「結局普通にお喋りしてうやむやになりそうだな」

律「いやいや、和は唯とは付き合いが長いだろ?」

和「そうね」

律「そんな長い付き合いの中には唯が『これぞお姉ちゃん!』って思えるようなエピソードがあるはず!」

和「ないわ」

律「即答!?」

唯「そんなっ!? 和ちゃん!」

和「冗談よ、深く思い出せばきっとあるはずよ」

唯「だよね~」

澪「逆に言えば、滅多にそんなことはなかったってことだけどな」

60: 2011/01/23(日) 21:43:47.13
和「……そうねぇ」

律「がんばれ和! 思い出せ!」

唯「お願い和ちゃん! どうか私にお姉ちゃんらしいエピソードをっ!」

梓「そんなのあるわけないです!」

紬「ああっ!? 立場としては一人っ子に不利になることは避けたいけど
  和ちゃんと唯ちゃんの幼い頃の話も聞きたい葛藤がっ!」

澪「賑やかだなぁ」

和「ちょっと静かにしてもらえる?」

律「はい」

和「……」

和「そういえば……」

唯「あった!?」

和「ええ、あれはまだ幼稚園のころ……」

65: 2011/01/23(日) 21:56:17.44
 十数年前

先生「みんな~、これからお遊戯の時間ですよ」

  「は~い!」

先生「先生のオルガンに合わせてカスタネットを叩きましょうね」

  「は~い!」

先生「♪~♪~」

唯「うんたん♪ うんたん♪」カタカタ♪

先生「唯ちゃん上手ね~」

唯「あはっ♪」


  カチョン!! カチョン!!

先生(な、なに!? この音は!?)

唯「あ~和ちゃんその木なに?」

和「これ? 拍子木」カチョン!! カチョン!!

先生「な、なんで和ちゃんはカスタネットじゃなくて拍子木を持ってるのかな~?」

69: 2011/01/23(日) 22:04:30.12
和「ごめんなさい、お母さんがカスタネット買うお金ないからとりあえず拍子木持って行きなさいって」

先生(あっ……。そういえば和ちゃんのところはお父さんの事業が失敗しちゃって大変なんだったわ……)

先生(でも、拍子木の方が高価な気が……)

唯「それいいなぁ~。どこで買ってもらったの?」

和「買ったんじゃないよ。今週はうちが夜の見回り当番なの。だからこれは町内会のもの」

唯「へ~」

和「どうせ夜しか使わないし、だからお母さんが持たせてくれたの」カチョン!! カチョン!!

唯「その音なんか聞いたことあるなぁ」

和「火の用心」カチョン!! カチョン!!

唯「!? それ知ってる! 夜に見回ってるやつだ!」

和「うん、さっき言ったよ」

唯「そうだっけ?」

73: 2011/01/23(日) 22:08:49.46
和「でもみんなと違うの、ちょっと恥ずかしい……」

唯「ねぇ、和ちゃん。ちょっと私のカスタネットと交換してみない?」

和「いいの!?」

唯「うん! 私そっちのがいい」

和「じゃあ、はい」

唯「うわ~い」

和 カタカタ♪

和「えへへ」

先生「よかったわね、和ちゃん」

和「うん!」

先生「唯ちゃんも優しいね」

唯「ふんふん!」カチョン!! カチョン!! カチョン!! カチョン!!

先生「夢中ね~。手を挟まないように気をつけるのよ」

74: 2011/01/23(日) 22:12:20.87
唯「ねぇねぇ、和ちゃん。こう?」

和「ん?」

唯「火のよ~じん!」カチョン!! カチョン!!

唯「ギンギラギンにさりげなく!」カチョン!! カチョン!!

先生「?」

和「近藤真彦?」

唯「そうマッチ」

先生「!?」

和「あはは、唯ちゃん面白い」

唯「えへへ~」

先生(よ、幼稚園児のくせに……)

75: 2011/01/23(日) 22:17:28.54
 ・ ・ ・ ・ ・

先生「みんな手を洗いましたか?」

  「は~い!」

先生「それじゃあ、手を合わせてください」

先生「お弁当を作ってくれたお母さんに声が届くくらいに」

先生「いただきます」

  「いただきます!!」

唯「うわ~、今日も大好きなミートボール入ってる♪」

和「……」モグモグ

唯「和ちゃんのお弁当今日もおかず玉子焼きだけだね」

和「うん、卵は安くて栄養もあるから」

唯「へ~」

和「……」モグモグ

78: 2011/01/23(日) 22:20:58.88
唯「美味しい?」

和「美味しいよ」

唯「ねぇ、和ちゃん」

和「なに?」

唯「私のミートボールと玉子焼き交換しようか」

和「えっ!?」

唯「あの……駄目だったらいいんだけど……」

和「むしろこっちがいいの? って感じだよ」

唯「だってすごく美味しそうだから」

和「そういうことなら……」

唯「やった~♪ じゃあ交換 一切れ貰うね。はいミートボール」

和「2個もいいの!?」

唯「大きさ的にはこれくらいだよ~」

和「なんだか騙してるみたい……」

唯「美味しい♪」

79: 2011/01/23(日) 22:24:14.90
和「そんなに美味しい?」

唯「うん! 和ちゃんもミートボール美味しい?」

和「うん、すごく美味しいよ」

唯「よかったね」

和「うん!」

唯 じ~~~~~っ…

和「どうしたの?」

唯「もう一つ欲しい……」

和「いいよ、好きなだけ食べて」

唯「本当に!?」

和「うん」

唯「じゃあ次はこのエビフライと交換ね」

和「えっ? いいよ、そんな高そうなの……」

81: 2011/01/23(日) 22:28:04.06
唯「だめだよ~。私が和ちゃんの玉子焼き沢山食べちゃったら和ちゃんが食べる分無くなっちゃうよ」

和「だけど……」

唯「はい、エビフライここに置くよ」

唯「いただきま~す!」

和「なんだか、わらしべ長者みたい」

唯「う~ん、やっぱり美味しい♪」

和「エビフライも美味しいよ」

唯「こんなに美味しい玉子焼きだったら毎日でも食べたいなぁ」

和「そんなに?」

唯「うん! ウチのとはまた違うよ」

和「だったら、私が料理できるようになったら、お母さんに習って
  唯ちゃんのために毎日玉子焼き作ってきてあげるね」

唯「本当に!? 約束だよ!」

和「うん」

唯「楽しみだなぁ」

82: 2011/01/23(日) 22:32:14.83
和「ミートボールとエビフライのお礼だよ」

唯「それは今食べたこの玉子焼きだよ?」

和「そう?」

唯「和ちゃんが玉子焼き作ってくれるなら私も何かお返ししなきゃ!」

和「え? 別にいいよ」

唯「だめ~。私も和ちゃんに何かあげる」

和「う~ん……。だったら」

唯「なになに?」

和「ずぅ~っと友達でいてくれる?」

唯「あたりまえだよ~」

────────────
────────
────
──

85: 2011/01/23(日) 22:37:36.91
和「なんてこともあったわね」

唯「そんなことが……」

律「お前は忘れてんのかよ」

和「その当時、家は貧しかったけど、唯が側にいてくれたおかげで心は豊かだったのよ」

梓「唯先輩は昔っから優しい子だったんですね」

和「そうね、困ってる人がいたら放っとけないって感じだったわ」

紬「なんだかいい話だったわ~」

澪「そうか、だから和のお弁当には毎日玉子焼きが入っているのか」

和「半分は自分の分、もう半分は唯のために作ってるのよ」

唯「そういえば、お弁当のある日は毎日和ちゃんの玉子焼きをつまんでるよ」

律「本当に毎日のように食べてるもんな」

唯「だって、美味しいんだよ?」

和「そう言ってもらえたら、私も頑張ってお母さんの味を再現したかいがあったってもんだわ」

紬「幼馴染っていいわねぇ」

87: 2011/01/23(日) 22:41:25.45
和「そういえばまだこんな話があるんだけど」

律「お? なんだなんだ?」

和「唯が私の家の湯船をザリガニでいっぱいにしたって話、したわよね?」

澪「ああ……。たまに自分ちのお風呂に入ってる時思い出しては青くなってるよ……」

梓「あの意味不明な行動ですか……」

唯「私もさすがにそれは覚えてるなぁ」

和「あの時はそれで話を終わりにさせちゃったけど、あの唯の行動はちゃんと意味があったのよ」

紬「湯船をザリガニでいっぱいにすることにどんな意味が……」

和「ほら、唯から話してあげたら?」

唯「えっとね~……」

88: 2011/01/23(日) 22:45:06.24
唯「NHKの教育の方で子供向けの生き物の番組ってあるじゃない?」

律「ああ、風邪なんかで学校休んだ時に良く観るやつな」

唯「あれでさ~、ザリガニは食べれるみたいなこと言っててさ」

紬「唯ちゃん、まさか……」

唯「そうなんだ、子供ながらも和ちゃんの家は貧しいってわかってたから
  なんとかお助けできないかと、当時の私はザリガニを沢山プレゼントすることを思いついたんだろうね」

唯「最初はバケツに一杯あったら充分かなって思ってたんだけど、思いの外沢山取れちゃって」

唯「夢中になったら止まらない性質だったから気づけば湯船一杯になってたんだよね」

梓「気持ちはわからなくもないですけど、それって和先輩からすれば嫌がらせの他ないですね」

和「確かに、そのおかげで3日は湯船に浸かることはなかったわ」

律「そりゃ、そうだろうよ……」

和「でも、3日は食べるに困らなかったけどね」

澪「食べたの!?」

93: 2011/01/23(日) 22:50:13.30
和「嫌ね、冗談よ」

澪「な、なんだビックリさせるなよ」

梓「和先輩もそんな冗談言うんですね」

和「さすがにあれだけの量を3日では無理よ」

梓「えっ!?」

和「5日は食卓にザリガニが絶えることはなかったわ」

澪「日数が冗談かよっ!」

律「結局食ったんだ!」

和「結構いけるのよ、ザリガニ」

唯「だよね~」

和「ムギ的に言えば、伊勢海老ってことかしら?」

紬「伊勢海老はとても美味しいわ」

澪「いやいやいやいや……」

梓「そうだとしても、さすがにザリガニを食べるのは……」

94: 2011/01/23(日) 22:54:09.04
和「でもその5日分の食費が浮いたおかげで色々助かったのよ」

澪「それはそうだろうけど……」

和「その浮いた分のお金で宝くじを買ってね」

律「なんで、和の家が貧乏だったかわかった気がした」

和「なんと、その宝くじが大当たり」

梓「ええっ!?」

紬「すごい!」

和「借金はそれで全部返すことができたし、本当に唯には感謝してるのよ」

和「言うなれば唯は私の女神様ね。ザリガニの女神」

唯「えへへ」

梓「もはや、お姉ちゃんとかそういう次元ではなくなってきましたね」

澪「ザリガニの女神っていうネーミングはどうかと思うけどな」

97: 2011/01/23(日) 22:57:25.83
和「まぁ、そのとき食べたザリガニの寄生虫が原因でお父さん氏んじゃったんだけどね」

律「えっ? 今なんて!?」

澪「急に凄いことさらっと言ったぞ!」

和「でも、あのままだったらどっち道一家で野垂れ氏にしてたかもしれないし
  その点では唯を恨んだことは一度だってないわ」

唯「ごめんね、和ちゃん」

和「ううん、お父さんもきっと天国で喜んでるわ」

和「その証拠に氏ぬ直前にお父さんから『真鍋家はジャンケンのときグーを出すのを禁ずる』って遺言が」

紬「それってどういう……」

和「ザリガニって常にチョキじゃない? だからグーを出したらザリガニが負けるからって」

和「ザリガニに対してそんな無礼は許さないって」

唯「そこまでして和ちゃんのおじさんはザリガニのことを思いながら氏んでいったんだね……」

澪律紬梓「……」

99: 2011/01/23(日) 23:01:18.62
律「なぁ和。突然だけどジャンケンしようぜ」

和「いいわ、負けないわよ」

律「じゃ~んけ~ん」

和「ぽん!」グー  チョキ 律

和「勝ったわ」

唯「やった~♪ 和ちゃん強い!」

澪「あ、嘘だ」

和「そうね、嘘よ」

梓「いったいどこからどこまでが……」

105: 2011/01/23(日) 23:07:00.52
律「ま、まぁさっきの話でいかに私たちお姉ちゃんが偉大であるかがわかったな!」

梓「正直言って、その話はもうどうでもいいですけどね」

律「奇遇だな、実は私も……」

澪「飽きんなよ」

紬「でも幼馴染って羨ましいわ」

梓「和先輩は憂の幼い頃のことも良く知ってるんですか?」

和「そうね、なんだかんだ言って、本当の兄弟と同じくらい付き合い長いわ」

唯「そう言われればそうだよね~」

紬「だとしたら、和ちゃんが長女で唯ちゃんが次女」

梓「で、憂が三女ってことですね」

律「しっかり者の長女、自由奔放な次女、少し苦労性な三女」

澪「そう考えると唯のその性格もピッタリと当てはまるな」

唯「そっか! 私も自分が長女ってなんだか違和感あったんだよね」

唯「私は次女だったんだ!」

和「こらこら、本気にしないの」

108: 2011/01/23(日) 23:10:21.97
唯「和お姉ちゃん!」

和「こら、唯! 急に抱きついてこない」

唯「お姉ちゃ~ん、勉強教えて~」

梓「なんだか大変ですね」

和「普段とあまり違わないけどね」

澪「確かに」

和「まぁ、私はむしろお母さん目線で唯をいつも見てるけど」

律「あぁ、どっちかっていうとそんな感じだな」

紬「でも兄弟がいるってどういう感じなのかしら?」

梓「ああ、それは気になりますね」

澪「私も、もしお姉ちゃんやお兄ちゃんがいたらどうかなって考えることはあるよ」

和「あら、まだその可能性はあるんじゃない?」

澪「えっ?」

109: 2011/01/23(日) 23:14:15.26
和「さすがに兄や姉は難しいけど、弟や妹だったらまだ両親にがんばってもらえば……」

律「す、ストップ和!!」

梓「あまり女子高生が口に出すことじゃありませんよ!」

紬「でも、私が生まれた時には父はすでに40代だったから……」

和「そう……それじゃあ種的に難しいかもしれないわね……」

澪「おい! なんか危険な会話のラリーが始まってるぞ!」

唯「コウノトリさんに頼めばいいんだよ」

律「その発言もちょっとどうかと思うけど、なんだか安心したよ」

唯「夕食のときにお父さんとお母さんの前でそんな話をすればもっと効果的かもよ」ニヤッ

澪「あれっ?」

114: 2011/01/23(日) 23:17:18.88
律「と、とにかく、確かに兄弟がいたほうが賑やかになるだろう」

律「でも、9割方はウザイ対象だからな」

梓「あぁ、やっぱりそういうもんなんですかね」

唯「私は憂がいなかったらたぶん氏んじゃうと思うけど」

律「お前は特別だ。私だって憂ちゃんなら欲しい。でもだいたいの場合は喧嘩が絶えないだろうな」

澪「それは姉の方に問題があるんじゃないか?」

律「な、なにっ!」

澪「もし、優しいお姉ちゃんやお兄ちゃんだったら私ならきっと甘えたくなるだろうな」

唯「和お姉ちゃんみたいにね!」

和「あんたのお姉ちゃんになった覚えはないけどね」

唯「ああ~ん……そんなこと言って~」

和「はいはい」

118: 2011/01/23(日) 23:23:18.33
紬「澪ちゃんは妹や弟は欲しいとは思わないの?」

澪「う~ん……、結構身近な存在で世話を焼かなきゃいけないやつがいるから」

澪「きっと妹がいたらこんなんだろうなってその点は想像できるからな」

律「なに? それって私のこと?」

澪「他にどう聞こえる?」

律「ええ~、私が妹かよ」

梓「ピッタリです」

律「そうは言うけど、私だって澪のその頼りないところは妹的な……」

律(……っと、ちょっと待てよ)

律(何も姉であることで得するってわけでもないしな)

律(なによりも……)

唯「和お姉ちゃ~ん」

和「もうやめさないって」

律(甘えた方が結構面白いかも)

121: 2011/01/23(日) 23:27:36.63
澪「ほら、梓だってこう言ってることだし、世間的に見たら私の方がお姉さんっぽい……」

律「澪お姉ちゃん」

澪「……え」

律「澪お姉ちゃんの可愛い妹りっちゃんでちゅ」

澪「うわっ、想像以上にきもっ……」

律「りっちゃんは寂しがりだから、澪お姉ちゃんに甘えちゃうんでちゅ」

澪「離れろ! くっつくな!!」

律「澪お姉ちゃんのおっOいがほちいでちゅ」

澪「おい! や、やめ……!」

律「帰りにアイスが食べたいでちゅ」

澪「わかった買ってやる、買ってやるから!」

律「澪お姉ちゃんは優しいでちゅ」

澪「こ、こいつは……」

124: 2011/01/23(日) 23:31:14.68
唯「和お姉ちゃ~ん」

和「はぁ……」


律「澪お姉ちゃん、りっちゃんは甘えたい年頃なんでちゅ」

澪「もうやめよう、な? 謝るから」



梓「なんかすごいことになってきてるなぁ……」

紬 チラッ チラッ

梓(そしてムギ先輩が何かを求めるように私に視線を送ってくる……)

梓(無理もないか……。ムギ先輩こういうスキンシップ好きそうだし)

梓(仕方ない、ここは私がムギ先輩の為に一肌脱ごう!)

127: 2011/01/23(日) 23:36:00.19
梓「つ、紬お姉ちゃん……」

紬「……」ショボン…

梓(えっ!? 逆!? 私がお姉さん役ってこと!?)

梓(さすがにその発想はなかった!)

梓(っていうか私がお姉ちゃんは何かと無理がある気が……)

紬「お姉ちゃん……」

梓「!?」

紬「梓……お姉ちゃん」

梓「な、なんだい紬?」

紬「梓お姉さまっ!!」ギュッ!!

梓(こ、これはこれでっ!!)

129: 2011/01/23(日) 23:39:37.08
紬「お姉さま」

梓「あはは、紬は甘えん坊さんだなぁ。もうすぐ大学生なのに恥ずかしくないのかい?」

紬「もう! お姉さまのイジワルっ!」

梓「冗談だよ、ほらおいで」

紬「嬉しいっ! お姉さまっ!」ダキッ!!

梓(ふぁぁぁぁぁっ!! なんだかすごくいい匂いがする)

梓(それに暖かくって柔らかくってふわふわだ)

梓(これ、柔軟剤使っただろ!!)







純「何やってんの? 梓……」

梓「!?」

131: 2011/01/23(日) 23:44:44.15
梓「じ、純……いつからそこに……」

純「えっとね~、梓が『ムギ先輩いい香りだよ~クンカクンカ』ってことろからかな」

梓「ちょ!? それは口に出して言った覚えはない!」

純「あ、だったら心の中ではそう思ってたってことだ」

梓「……」

純「ところで先輩たちが抱き付き合ってる状況……なんなの?」

梓「え、ええっと……」

梓「って言うか、なんで純がここにいるの?」

純「梓がたまには一緒に帰ろうって誘ってくれたんじゃん」

梓「……そうでした」

133: 2011/01/23(日) 23:46:39.83
純「それに……」

憂「やっほ~」

梓「なんで憂まで」

憂「今日は家にお母さん居るから夕食の支度しなくていいし
  たまには帰りに純ちゃんや梓ちゃんと寄り道して遊ぼうかなって思って」

純「私も部活も終わったし。で、梓迎えに来たらなんか抱き合ってるし」

純「本当に軽音部って変わってるよね」

梓「ふ、普段からこんなんじゃないよ!
  最近で一番おかしいのがたまたま今日だったってだけだから勘違いしないでね……」

唯「あ、憂~!」

律「おっ! 本物の妹様だ!」

憂「本物?」

紬「私たちさっきまで姉妹ごっこして遊んでたの」

憂「そうなんですか」

134: 2011/01/23(日) 23:49:40.06
唯「実は私は次女で和ちゃんが長女だったんだよ!」

和「もう、くっつくのもいい加減にしてもらえないかしら? 憂からも何か言ってやりなさい」

憂「うわ~! 和ちゃんがお姉ちゃんになってくれたら私も嬉しいよ!」

和「……」

律「うむ、さすが本物の姉妹」

律「ところでそこのダスキンちゃんは……」

純「純です」

澪(よく自分のことだってわかったな……)

律「ごめんごめん、えっと、純ちゃんは兄弟はいるの?」

純「はい、ちょっと歳の離れた兄が2人いますけど」

純「いつも『純は可愛いな』って言ってよくお小遣いもくれます」

梓「ああ、なんか純はそうやって育ってきたって感じ」

律「なんとっ! ここにきて第三勢力の『妹』が登場だっ!」

梓「まださっきの一人っ子とお姉ちゃんの続きやるんですか!?」

紬「妹か……これは厳しい戦いになりそうね……」

136: 2011/01/23(日) 23:51:04.63
純「なんです? それ」

律「いや~こっちにいるわがまま放題の一人っ子どもが私たちお姉ちゃんに対して宣戦を布告してきやがってさ」

純「は、はぁ……」

梓(さすがの純も呆れてる……)

澪「鈴木さん、あんまり相手しなくていいよ」

律「一人っ子は黙ってろ!」

澪「お前はさっきまで澪お姉ちゃんって抱きついてきてたのに……」

律「しかし妹である君たちがきてくれたことによって我々お姉ちゃんの勝ちは約束されたも同然だよ!」

紬「な、なんでそうなるの!? あくまで妹は第三の勢力!
  言うなれば中立だし、どちらに対しても敵になりうるんじゃ……!」

律「ふっふっふ、甘いなムギ。姉というのは妹弟がいてこその存在!
  その逆もまた然り! 姉の存在が妹の存在をも定義することになる」

律「姉と妹というのは切っても切れない縁なのだよっ!!
  よってここに姉妹同盟を締結することを宣言するっ!」

紬「くっ……!!」

梓「なんだか説得力あるんだかないんだかわかりませんが、勢いだけは認めざるを得ません!」

138: 2011/01/23(日) 23:52:20.66
純「あ、でも私お姉ちゃんにするんだったら澪先輩がいいなぁ」

律「な、なにっ!?」

梓「そうだった、純はこうやって空気を読まないやつだった」

紬「くっくっく、さっそくその同盟関係に綻びができたようね」

澪「ムギが悪そうな笑い方をしてる……」

純「だって澪先輩カッコイイし。私の憧れだから」

澪「あ、ありがとう」

律「クソッ、ファンクラブにしたってどいつもこいつも澪の容姿に騙されやがって」

澪「いつ私が騙した?」

唯「りっちゃん! まだまだ最強の妹が残ってるよ!」

律「おお! そうだった! この子がいればお姉ちゃんはあと10年は戦える!」

唯「憂はもちろん私たちお姉ちゃんの味方だよね?」

憂「う~ん……」

唯「う、憂っ!?」

140: 2011/01/23(日) 23:54:01.55
律「な、なんでだ憂ちゃん!」

唯「お姉ちゃんとして不足なことは重々承知しております!
  だけど憂に見捨てられたら私……私っ!!」

憂「そうじゃなくてね、私は皆さんにちゃんと良い部分があると思うんです」

憂「律さんは部長らしくポジティブな気持ちで皆さんを引っ張ってくれて
  澪さんは逆にネガティブな観点から冷静な判断をしてくれて」

憂「そんなお二人は幼馴染らしくとてもいいコンビネーションだと思いますし」

澪「憂ちゃん……」

憂「紬さんは皆さんが楽しく過ごすための土台を築いた縁の下の力持ち的存在
  お茶を美味しく淹れるのも実は結構大変なんですよ」

紬「そうやって想ってくれる人がいるってだけで嬉しいわ」

憂「梓ちゃんはそのまま軽音部の妹的存在だよね」

梓「先輩たちにも言われたけど、それって褒め言葉なの?」

憂「妹がしっかりするとお姉ちゃんもそれに釣られて引き締まるでしょ?」

憂「しっかり者の梓ちゃんが今の軽音部に刺激をあたえてるんだよ」

憂「山椒は小粒でもぴりりと辛いってね」

梓「まぁ、褒め言葉として受け止めておくよ」

142: 2011/01/23(日) 23:55:22.86
憂「そしてお姉ちゃんは……」

唯「……」ゴクリ…

憂「私のお姉ちゃんだからっ!」

唯「う~い~!!」ダキッ

憂「お姉ちゃ~ん!!」ヒシッ

憂「そんな皆さんが今のこんな楽しい軽音部を形作ってるんです
  誰一人欠けてもきっとこんな素晴らしい部にはならないと思います!」

律「なんか唯だけ誤魔化した感が……」

澪「さすがの憂ちゃんでも唯のしっかりした部分を探すのは難しかったのかもな……」

和「それは違うわ」

紬「和ちゃん?」

和「憂にとっては自分のお姉ちゃんというのは唯以外に考えられないっていうことなのよ」キラリッ

澪「なに言ってんだこいつ」

純「あ、メガネカッコイイ!」

梓(もう和先輩を見る目が変わっちゃいそう……)

145: 2011/01/23(日) 23:58:19.39
律「まぁ、憂ちゃんのおかげでこの姉一人っ子戦争もやっと終結を迎えることができたわけだ」

律「本当は軽音部でこうやっていがみ合うなんて下らないってことだってわかってたんだ……」

紬「私も……憎しみは憎しみしか産まないものね……」

澪「2人ともノリノリだったじゃないか」

唯「やっぱりみんな仲良しが一番だね!」

梓「もちろんです!」

和「あら? もうこんな時間よ。早く帰らないと生活指導の先生に怒られちゃうわ」

純「これからみなさんで遊びに行きませんか?」

憂「学校帰りに遊びにいくなんて久しぶりだから楽しみ♪」

146: 2011/01/24(月) 00:00:10.32

   ガチャ

さわ子「こらこら、あなたたちまだこんなところでお喋りして。
     こんな時間まで残ってちゃ駄目よ!
     もうとっくに最終下校時刻過ぎちゃってるんだから」

律「おっと! ここで第四の勢力『独身』の登場だっ!」

唯「早く結婚しろ!」

紬「親が泣いてるぞ!」

さわ子「な、なにっ!?」

 おしまい

148: 2011/01/24(月) 00:02:38.57

149: 2011/01/24(月) 00:03:44.50
オチはさわちゃんかwww
おつおつ

151: 2011/01/24(月) 00:04:39.57
迷走したなぁw

152: 2011/01/24(月) 00:05:14.77
楽しかったよ!乙!

引用元: 唯律「お姉ちゃん!」 VS 澪紬梓「一人っ子!」