勇者「なんだ?なんか燃え……てる!」
店長「ああクソッ!こうなったら仕方ない、お前も来てもらうぞ」ガシッ
勇者「なにすんだよ!一体どういうつもりだ!」
店長「みんな、手伝ってくれ!部外者がいた!」
市民1「部外者だって!?」
市民2「捕まえてどうすんだよ!」
店長「役員に引き渡す!
とにかくこのまま帰すわけにはいかないだろ!」
市民3「確かに……仕方ねぇな」
ゾロゾロ
勇者「ざけんな!全員すっこんでろ!」
バッ!
市民1「うわっ!?」ズテンッ
市民2「ギャッ!」つるん
店長「お前らなにやってんだ!」
勇者「オッサンもあっち行け!」ドンッ
店長「うおおっ!?」ツルルッ
ズテッ
店長「チクショ!?な、なんだこれは!」ズルッ
勇者「早く戻らねぇと……!先生!」
タタタッ
医者「大丈夫か!?君が襲われてるのは見えたんだけど、なにもできなくて」
勇者「それでいいんです、俺なら大丈夫ですから。
それより、俺は向こうへ戻らねぇと」
歴史学者「戻るだと!?なんでまたあんなところに……!」
勇者「向こうでなにかが燃えてんだろ。
アイツら魔物のとこにまで火ぃつけるつもりかもしれねぇ。
俺は止めに行かなきゃならねぇから」
歴史学者「……そんなの放っておけばいい。
君が危険な目に遭うことないじゃないか」
勇者「お前な、あんなことぐらいで負けてんじゃねぇよ。
お前は魔物の味方で、俺と先生は魔物の敵だ。
俺ももうちょっとブレねぇで考えてみるから、お前もブレるなよ」
歴史学者「……なら、君はどうして魔物を助けに行くんだ」
勇者「お前のためだよ。誰がなんと言おうとな」
歴史学者「……」
医者「じゃあ、俺達はどうしたらいい?」
勇者「そうですね……逃げられるか分からないし……。
俺と一緒に来てくれませんか。絶対守りますから」
医者「足手まといにはなりたくないけど……仕方ないね」
勇者「お前も頼む」
歴史学者「……行けばいいんだろ?行くよ」
勇者「そうか、じゃあ走るぞ!」
ダッ
歴史学者「全く……」
医者「また筋肉痛かな……」
タタタッ
店長「ああクソッ!こうなったら仕方ない、お前も来てもらうぞ」ガシッ
勇者「なにすんだよ!一体どういうつもりだ!」
店長「みんな、手伝ってくれ!部外者がいた!」
市民1「部外者だって!?」
市民2「捕まえてどうすんだよ!」
店長「役員に引き渡す!
とにかくこのまま帰すわけにはいかないだろ!」
市民3「確かに……仕方ねぇな」
ゾロゾロ
勇者「ざけんな!全員すっこんでろ!」
バッ!
市民1「うわっ!?」ズテンッ
市民2「ギャッ!」つるん
店長「お前らなにやってんだ!」
勇者「オッサンもあっち行け!」ドンッ
店長「うおおっ!?」ツルルッ
ズテッ
店長「チクショ!?な、なんだこれは!」ズルッ
勇者「早く戻らねぇと……!先生!」
タタタッ
医者「大丈夫か!?君が襲われてるのは見えたんだけど、なにもできなくて」
勇者「それでいいんです、俺なら大丈夫ですから。
それより、俺は向こうへ戻らねぇと」
歴史学者「戻るだと!?なんでまたあんなところに……!」
勇者「向こうでなにかが燃えてんだろ。
アイツら魔物のとこにまで火ぃつけるつもりかもしれねぇ。
俺は止めに行かなきゃならねぇから」
歴史学者「……そんなの放っておけばいい。
君が危険な目に遭うことないじゃないか」
勇者「お前な、あんなことぐらいで負けてんじゃねぇよ。
お前は魔物の味方で、俺と先生は魔物の敵だ。
俺ももうちょっとブレねぇで考えてみるから、お前もブレるなよ」
歴史学者「……なら、君はどうして魔物を助けに行くんだ」
勇者「お前のためだよ。誰がなんと言おうとな」
歴史学者「……」
医者「じゃあ、俺達はどうしたらいい?」
勇者「そうですね……逃げられるか分からないし……。
俺と一緒に来てくれませんか。絶対守りますから」
医者「足手まといにはなりたくないけど……仕方ないね」
勇者「お前も頼む」
歴史学者「……行けばいいんだろ?行くよ」
勇者「そうか、じゃあ走るぞ!」
ダッ
歴史学者「全く……」
医者「また筋肉痛かな……」
タタタッ
230: 2015/05/12(火) 18:15:15.64
タタタッ!
勇者「おい!テメェらなにやってんだ!」
市民5「えっ!?」
市民6「な、なんだ君達は!」
勇者「それはこっちのセリフだ!
……そこのクソ男も、なにしてやがんだ」
記者「フフフ……こんばんは、ボクちゃん。それにご両親も」
医者「どうしてアナタがここに……」
勇者「こいつ、クラショーとかいうのに所属してるみたいですよ」
歴史学者「クラウン商会だと……!」
記者「そのとおり、愛と幸福を売ってまーす」
医者「どうして記者だなんて嘘をついたんですか?」
記者「仲間を探すためですよ。
クラウン商会って言うだけで、顔をしかめる人もいますから。
ほら、奥さんみたいにさ」
勇者「なんだかよく分からねぇが、一体なにをするつもりなんだよ」
記者「俺は商品を売るだけだ。
そして動作確認のために、立ち会ってるんだよ」
勇者「向こうの方が燃えてるのも、お前らの仕業か」
市民7「アナタ達には関係ないでしょう?
なんでこんなところにいるのよ」
勇者「お前らが怪しいことしようとしてっから、止めに来たんだよ」
記者「うっわ、そんなめんどくさいことすんなよ」
勇者「ふざけんな、お前らがなにもしなきゃいいんだよ」
記者「なにもしないでなにが変わる?
タケオのせいで、タケオ以外の農家の皆さんは、それはそれは貧乏なんだぜ。
それをボクちゃんが変えられっか?」
勇者「それは……俺の」
記者「ボクちゃんの金だけじゃ無理。
魔物を頃して手に入れた金なんかじゃな」
勇者「……!」
記者「さぁ、みなさん。どんどん燃やしちゃって下さい。
いくら使っても料金は変わりませんから」
市民8「お、おう」
勇者「させるかよ!」
バッ!
市民9「わっ!」ツルンッ
市民10「うわぁっ!」ズテッ
ツルルッ
医者「これは……なにをしたの?」
勇者「地面をゲル化したんです。
氷より摩擦係数を低下させたんですよ」
歴史学者「分かりそうでよく分からないな。
なんで私達は大丈夫なんだ?」
勇者「俺たちのとこは水分を蒸発させてっからな。
だから、あんまりここから動くなよ」
記者「ふーん……魔法か」ガサガサ
ポシュンッ
231: 2015/05/12(火) 18:20:38.02
記者「よいしょっと」
スタッ
勇者「なっ……!」
市民11「アンタ、それは……」ズテッ
記者「ご希望とあらばお売りしますよぉ。
五万円でございます」
市民12「早くまいてくれ!」ツルッ
記者「かしこまりましたぁ。ぱぱっと」
ポシュウッ
市民13「あ、立てる……」スタッ
市民14「ふぅ……」スタッ
勇者「どういうことだ……テメェ、どうやって!」
記者「秘密だ。俺達はこういう事が出来るし、なんでも知ってっぜ。
ヨウコさんのこともな」
勇者「なんだと……!!」
記者「ほら、さっさと燃やして下さいよ。
彼は俺が抑えておきますから」
市民15「は、はぁ」
勇者「テメェ……どうして俺の母親の名前を……」
記者「なぜでしょう!今話してやろうか?」
勇者「……!」
記者「まぁ、ボクちゃんが俺たちの仲間になるなら、だけどな」
勇者「仲間だと?」
記者「俺は自分の意思でクラショーにいる。他の奴らも強制された奴は誰もいない。
まぁ、きっとボクちゃんも参加したくなると思うよ?」
勇者「ふざけんな……!調子にのるんじゃねぇぞ!」シュバッ
パリリッ
記者「これは氷の魔法ってやつ?でも無駄っすよ」
ポシュンッ!
勇者「氷が消えた……!」
記者「これは魔法を無効化するんだよ。
欲しいなら、一本五万で売ってあげるよ?」
勇者「いるか!この野郎……!」
ボオオオッ!
勇者「なんだ!?」
スタッ
勇者「なっ……!」
市民11「アンタ、それは……」ズテッ
記者「ご希望とあらばお売りしますよぉ。
五万円でございます」
市民12「早くまいてくれ!」ツルッ
記者「かしこまりましたぁ。ぱぱっと」
ポシュウッ
市民13「あ、立てる……」スタッ
市民14「ふぅ……」スタッ
勇者「どういうことだ……テメェ、どうやって!」
記者「秘密だ。俺達はこういう事が出来るし、なんでも知ってっぜ。
ヨウコさんのこともな」
勇者「なんだと……!!」
記者「ほら、さっさと燃やして下さいよ。
彼は俺が抑えておきますから」
市民15「は、はぁ」
勇者「テメェ……どうして俺の母親の名前を……」
記者「なぜでしょう!今話してやろうか?」
勇者「……!」
記者「まぁ、ボクちゃんが俺たちの仲間になるなら、だけどな」
勇者「仲間だと?」
記者「俺は自分の意思でクラショーにいる。他の奴らも強制された奴は誰もいない。
まぁ、きっとボクちゃんも参加したくなると思うよ?」
勇者「ふざけんな……!調子にのるんじゃねぇぞ!」シュバッ
パリリッ
記者「これは氷の魔法ってやつ?でも無駄っすよ」
ポシュンッ!
勇者「氷が消えた……!」
記者「これは魔法を無効化するんだよ。
欲しいなら、一本五万で売ってあげるよ?」
勇者「いるか!この野郎……!」
ボオオオッ!
勇者「なんだ!?」
232: 2015/05/12(火) 18:22:06.14
ゴォオオ!
医者「建物が……!」
歴史学者「……!!」
市民16「お前らがいつまでもグダグダやってっから、俺が燃やしてやったぜ」
記者「おお!よくできました!」
市民16「……」
ゴォオオオ!!
歴史学者「そんな……」ガクッ
勇者「諦めんな!こんな火……!」パリッ
パリリリッ!!
医者「やった……!」
記者「どうかな?」
ピキッ ピキキ
勇者「クソッ……ォオオオ!」
パリリリッ!
記者「頑張るねぇ。氷の魔法って疲れるんじゃなかったっけ?」
勇者「…………!」
ピキッ パキパキ
ボンッ!
勇者「!!」
メラメラ……ゴォオオオ!
医者「建物が……!」
歴史学者「……!!」
市民16「お前らがいつまでもグダグダやってっから、俺が燃やしてやったぜ」
記者「おお!よくできました!」
市民16「……」
ゴォオオオ!!
歴史学者「そんな……」ガクッ
勇者「諦めんな!こんな火……!」パリッ
パリリリッ!!
医者「やった……!」
記者「どうかな?」
ピキッ ピキキ
勇者「クソッ……ォオオオ!」
パリリリッ!
記者「頑張るねぇ。氷の魔法って疲れるんじゃなかったっけ?」
勇者「…………!」
ピキッ パキパキ
ボンッ!
勇者「!!」
メラメラ……ゴォオオオ!
233: 2015/05/12(火) 18:23:46.22
勇者「嘘だろ……」
医者「魔法でも駄目だなんて……」
記者「さぁ、あと三十秒もすれば丸焦げですよぉ。
ボトルを使うタイミングを間違えないで下さいね。
すぐに原子がプラズマ化しちゃいますから」
市民17「プラズマ?」
記者「はい、だからよぉくタイミングを計らないとダメっすよ。
それより良いのかなぁ。お客様方は、この農場を乗っとるつもりなんでしょう?」
市民18「……これ以上なにをしろって言うんだ。
タケオは始末したし、ここの魔物達だって……」
記者「俺が言ってるのは、目撃者のことですよ。
この人達やさっきの魔物も始末するべきでは?」
市民19「……!」
市民20「……」
勇者「クソ……させねぇよ!」
バッ!
市民21「ぎゃあ!」ツルッ
市民22「またっ!」ズテンッ
勇者「逃げっぞ二人とも!」
歴史学者「……」
勇者「しっかりしろよ、学者ヤロー!」
歴史学者「あ、ああ、そうだな。走ろうか」
医者「ここから動くと滑るんじゃ……」
勇者「足元だけ蒸発させますから行きましょう!」
記者「全くしつけぇな」
ポシュウッ
勇者「……!」
バッ! ツルルッ
勇者「さっ、今のうちに!」
医者「ああ!」
歴史学者「……」
タタタッ
記者「……ホントにしつけぇ。クソヤローが」
ポシュウッ
市民23「ほっ……」スタッ
市民24「……」スタッ
記者「あ、マズイ。
早くボトルを使って下さい。氏にますよ」
市民25「あ、ああ」ポイッ
ぼしゅぅぅぅ……
医者「魔法でも駄目だなんて……」
記者「さぁ、あと三十秒もすれば丸焦げですよぉ。
ボトルを使うタイミングを間違えないで下さいね。
すぐに原子がプラズマ化しちゃいますから」
市民17「プラズマ?」
記者「はい、だからよぉくタイミングを計らないとダメっすよ。
それより良いのかなぁ。お客様方は、この農場を乗っとるつもりなんでしょう?」
市民18「……これ以上なにをしろって言うんだ。
タケオは始末したし、ここの魔物達だって……」
記者「俺が言ってるのは、目撃者のことですよ。
この人達やさっきの魔物も始末するべきでは?」
市民19「……!」
市民20「……」
勇者「クソ……させねぇよ!」
バッ!
市民21「ぎゃあ!」ツルッ
市民22「またっ!」ズテンッ
勇者「逃げっぞ二人とも!」
歴史学者「……」
勇者「しっかりしろよ、学者ヤロー!」
歴史学者「あ、ああ、そうだな。走ろうか」
医者「ここから動くと滑るんじゃ……」
勇者「足元だけ蒸発させますから行きましょう!」
記者「全くしつけぇな」
ポシュウッ
勇者「……!」
バッ! ツルルッ
勇者「さっ、今のうちに!」
医者「ああ!」
歴史学者「……」
タタタッ
記者「……ホントにしつけぇ。クソヤローが」
ポシュウッ
市民23「ほっ……」スタッ
市民24「……」スタッ
記者「あ、マズイ。
早くボトルを使って下さい。氏にますよ」
市民25「あ、ああ」ポイッ
ぼしゅぅぅぅ……
234: 2015/05/12(火) 18:25:50.56
タタタッ
勇者「クソッ……なんでこんなことに……!」
医者「あ!なぁ、あっちに魔物が!」
勇者「えっ!?あれはさっきの……!」
歴史学者「あ、ああ、縛られてるな」
勇者「……仕方ねぇな。助けに行ってきます!」
医者「えっ、ちょっと!」
タタタッ バッ!
市民26「うおぉっ!?」ツルンッ
勇者「立てっ!逃げっぞ!」グイッ
魔物「えっ……」
タタタッ
勇者「お待たせしました!行きましょう!」
医者「君は本当に凄いな……頼もしいよ」
勇者「ありがとうございます。
じゃあ、もう一回塀に穴空けますから、飛び込んで下さい」
医者「分かった」
魔物「……?」
歴史学者「……」
スッ
勇者「全員通ったな!?穴消すぞ!」
フッ
医者「これからどうする?」
勇者「どうしましょう……俺、分かりません」
医者「そうだね、宿屋でかくまってもらえれば一番いいんだけど」
勇者「そう、っすね……そうできれば……」
歴史学者「……どうした?」
勇者「なんでも……な…………」フラッ
バタッ
歴史学者「おい!?」
医者「どうしたんだ!しっかりしろ!」
勇者「」
医者「おい!」
235: 2015/05/12(火) 18:31:25.14
ーーー
勇者「うぅ……」
歴史学者「先生!」
医者「ああ」
勇者「う……あれ、ここは……」
医者「宿屋だよ。マリちゃんにかくまってもらった」
勇者「なんで俺寝てたんだ……?」
歴史学者「覚えてないのか?
タケオの農場から抜け出した直後に、君は突然ぶっ倒れたんだ。
先生がここまで抱えて走って来たんだよ」
勇者「えっ……!マジですか?」
医者「うん……ちょっと氏にそう……」
勇者「……すいません」
歴史学者「それに、君が助けた彼も無事だぞ」
勇者「彼?」
魔物「……お礼を言うべきでしょうね。ありがとうございます」
勇者「ああ、お前か……別に礼なんていらねぇよ」
歴史学者「しかし、突然ぶっ倒れるのはやめてくれ。本当にびびったぞ」
勇者「仕方ねぇだろ。ああ、アゴいてぇ」
医者「扁桃腺が大きく腫れてたからね。どうしてこんな……」
勇者「ああ、昔からこうなんですよ。
魔法使い過ぎると倒れたり喉が腫れたり。
でも、すぐに元に戻りますから」
医者「そう?でも……」
勇者「心配しないで下さい。魔法でなんとかなりますから」
医者「うーん……」
236: 2015/05/12(火) 18:32:42.98
ガチャッ
マリ「みなさーん、サプライズご飯ですよ。
じゃーん」
歴史学者「おお!これオデンじゃないか!
買ってきてくれたのか?」
マリ「違う違う。屋台のおっちゃんが、なにも聞かずにくれたんよ。
みんなで食えって」
歴史学者「あの屋台の人か……優しそうな人だったもんな。
一緒に食べましょうか」
魔物「私は別に……」
マリ「なんだ、ノリ悪いなー。
オカマおじさんは?」
医者「お、俺はいいから、みんなで食べて?
ほら、君も貰いなよ」
勇者「……」
マリ「なによ……。なんでそんな目で見るの。
そんなにオデン嫌い?」
勇者「……」
マリ「ねぇ、一体どうしたのよ……」
勇者「…………誰を頃した?」
マリ「!!!」
歴史学者「頃した……?」
医者「……?」
魔物「……」
勇者「……」
マリ「…………へぇ、アンタよく分かったわね」
マリ「みなさーん、サプライズご飯ですよ。
じゃーん」
歴史学者「おお!これオデンじゃないか!
買ってきてくれたのか?」
マリ「違う違う。屋台のおっちゃんが、なにも聞かずにくれたんよ。
みんなで食えって」
歴史学者「あの屋台の人か……優しそうな人だったもんな。
一緒に食べましょうか」
魔物「私は別に……」
マリ「なんだ、ノリ悪いなー。
オカマおじさんは?」
医者「お、俺はいいから、みんなで食べて?
ほら、君も貰いなよ」
勇者「……」
マリ「なによ……。なんでそんな目で見るの。
そんなにオデン嫌い?」
勇者「……」
マリ「ねぇ、一体どうしたのよ……」
勇者「…………誰を頃した?」
マリ「!!!」
歴史学者「頃した……?」
医者「……?」
魔物「……」
勇者「……」
マリ「…………へぇ、アンタよく分かったわね」
237: 2015/05/12(火) 18:35:43.30
歴史学者「そんな…………。
まさか、オデン屋のおじさんを襲ったのか?」
マリ「はっ、なんでそんなことすんのよ。バカじゃないの?」
歴史学者「だって頃すって……冗談なんだろ?」
マリ「……」
勇者「……血のにおいがすんだよ……。
誰をやった。父親か?」
医者「……!」
マリ「……そうよ。それにあの女もね。
これで清々したわ」
歴史学者「バカな……!そんな嘘つくんじゃない!
なに言ってるか分かってるのか!」
マリ「分かってるに決まってるじゃない!
……アイツは、母親が氏んだのは、私のせいじゃないって……言ったのよ……!」
歴史学者「なに……?」
まさか、オデン屋のおじさんを襲ったのか?」
マリ「はっ、なんでそんなことすんのよ。バカじゃないの?」
歴史学者「だって頃すって……冗談なんだろ?」
マリ「……」
勇者「……血のにおいがすんだよ……。
誰をやった。父親か?」
医者「……!」
マリ「……そうよ。それにあの女もね。
これで清々したわ」
歴史学者「バカな……!そんな嘘つくんじゃない!
なに言ってるか分かってるのか!」
マリ「分かってるに決まってるじゃない!
……アイツは、母親が氏んだのは、私のせいじゃないって……言ったのよ……!」
歴史学者「なに……?」
238: 2015/05/12(火) 18:36:50.05
マリ「……私が9才の頃、母親は氏んだのよ。
あの頃の私は虐待されてんのに父親が好きで、アイツの手下だった。
無理矢理じゃなくて、進んで言うことを聞いてた」
歴史学者「……」
マリ「私は……アイツと一緒になって母に暴力をふるった。
アイツがいなくても、母を殴った。
あの日も私は、どうでもいいことで母を蹴った。
そうしたらどうなったと思う?
……母は氏んだよ」
医者「……」
勇者「……」
マリ「アイツは私が頃したんだと罵った。
日常的な暴力と、最後のきっかけになったのも私だと、全てを私のせいにした。
私は自分が殺人犯だと思って生きてきた……ずっとね」
歴史学者「……」
マリ「でもね、家出を決意して、さっき宣言しに行ったら言われたのよ。
『全て俺が悪いから、出ていかないでくれ。母さんのこともお前のせいじゃない』って。
フフフ……私のせいで氏んだんじゃないってさ。
五年間抱えてきた物はなんだったんだろうね。
ただの病氏だってさ」
歴史学者「マリ……」
マリ「なんで私ばっかり、こんな目にあわなきゃならないのよ。
……そう思ったら刺してた。刺しちゃったよ。
もう終わりだね」
勇者「……二人の氏体はどこだ?」スクッ
マリ「……一階の奥よ。包丁も刺さったまま、放置してる……」
勇者「そうか、分かった。
先に言っとくが、誰もこの部屋から出るなよ」
医者「ちょっと、一体なにをする気なんだ?」
勇者「……お願いだから聞かないで下さい。
うまくいったら話しますよ。
だから、今はオデンでも食べてて下さい」ガチャッ
バタンッ
医者「もう……」
マリ「……」
魔物「……」
歴史学者「……とりあえず、オデンを食べよう。
先生もそこの人も強制ですよ」
医者「うーん……分かったよ」
魔物「……」
マリ「私は……」
歴史学者「いいから今は彼に任せて、言う通りにしようじゃないか。
はい、これマリの分な」カチャッ
マリ「……」
医者「彼、大丈夫かな……。さっきまで意識失ってたのに……」
歴史学者「はい、先生の分ですよ」カチャッ
先生「う、うん」
歴史学者「はい、これはアナタの」カチャッ
魔物「……」
歴史学者「じゃあ、いただきまーす」
モグモグ
あの頃の私は虐待されてんのに父親が好きで、アイツの手下だった。
無理矢理じゃなくて、進んで言うことを聞いてた」
歴史学者「……」
マリ「私は……アイツと一緒になって母に暴力をふるった。
アイツがいなくても、母を殴った。
あの日も私は、どうでもいいことで母を蹴った。
そうしたらどうなったと思う?
……母は氏んだよ」
医者「……」
勇者「……」
マリ「アイツは私が頃したんだと罵った。
日常的な暴力と、最後のきっかけになったのも私だと、全てを私のせいにした。
私は自分が殺人犯だと思って生きてきた……ずっとね」
歴史学者「……」
マリ「でもね、家出を決意して、さっき宣言しに行ったら言われたのよ。
『全て俺が悪いから、出ていかないでくれ。母さんのこともお前のせいじゃない』って。
フフフ……私のせいで氏んだんじゃないってさ。
五年間抱えてきた物はなんだったんだろうね。
ただの病氏だってさ」
歴史学者「マリ……」
マリ「なんで私ばっかり、こんな目にあわなきゃならないのよ。
……そう思ったら刺してた。刺しちゃったよ。
もう終わりだね」
勇者「……二人の氏体はどこだ?」スクッ
マリ「……一階の奥よ。包丁も刺さったまま、放置してる……」
勇者「そうか、分かった。
先に言っとくが、誰もこの部屋から出るなよ」
医者「ちょっと、一体なにをする気なんだ?」
勇者「……お願いだから聞かないで下さい。
うまくいったら話しますよ。
だから、今はオデンでも食べてて下さい」ガチャッ
バタンッ
医者「もう……」
マリ「……」
魔物「……」
歴史学者「……とりあえず、オデンを食べよう。
先生もそこの人も強制ですよ」
医者「うーん……分かったよ」
魔物「……」
マリ「私は……」
歴史学者「いいから今は彼に任せて、言う通りにしようじゃないか。
はい、これマリの分な」カチャッ
マリ「……」
医者「彼、大丈夫かな……。さっきまで意識失ってたのに……」
歴史学者「はい、先生の分ですよ」カチャッ
先生「う、うん」
歴史学者「はい、これはアナタの」カチャッ
魔物「……」
歴史学者「じゃあ、いただきまーす」
モグモグ
239: 2015/05/12(火) 18:38:37.10
ーーー
医者「……」
コンコン
医者「なぁ……」
シーン
医者「……」コンコン
シーン
医者「……」ガチャ
ギィッ
勇者「……」ガッ!
医者「うわっ!
……な、なんだ、良かった」
勇者「なにがですか」
医者「いや、また倒れてるんじゃないかと思って。
ずっと戻ってこないから、みんな心配してるよ」
勇者「用件はそれだけですか」
医者「いや……一旦休憩したら?って言いに来たんだよ。
オデン以外にも、俺がご飯作るからさ」
勇者「今はいりません」
医者「そんなこと言っても……顔が真っ青だよ?
ちょっとぐらい休憩したって」ギィッ
勇者「やめてください」ガッ!
医者「……」
勇者「これ以上開けないで下さい。
なにも見たくないでしょう?
俺が村でなにしてたかなんて、知りたくないでしょう?」
医者「でも……」
勇者「お願いだからみんなといてください。
もうすぐ終わりますから。
俺なら大丈夫ですから」
医者「……」
ギィ バタン
医者「…………」
240: 2015/05/12(火) 18:41:21.70
ーーー
医者「お待たせー、サンドイッチが出来たよー」
歴史学者「おお!私ツナがいいです」
医者「ごめん、一種類しかないんだ。
まぁ、みんなで食べようよ」
マリ「私はさっきのオデンがまだ……」
医者「大丈夫よ、だらだら食べても良いんだから。はい」スッ
マリ「うーん……」
歴史学者「おっ、女性恐怖症は克服したんですか?」
医者「そうね、ちょっと慣れてきたみたいだわ」
歴史学者「……まだダメそうですね」
医者「はい、アナタも」スッ
魔物「……」
歴史学者「なんだか素っ気ない厚みですね」
医者「あはは……。でも、これはちょっと自信作なんだよ。
さ、食べてみて」
歴史学者「あれ、ウマイ!」パクパク
マリ「なにこれ、梅?」
医者「そうよ、梅の種をとって潰したやつを、みりんで溶きのばしたの。
パンにはマーガリンを塗って、それを挟んでみたわ」
歴史学者「すごいな……めちゃくちゃウマイですよ」パクパク
マリ「まー、悪くないかな……」パクパク
魔物「……」モグモグ
医者「うん、やっぱりおいしい。
自画自賛だけど」パク
歴史学者「先生、おかわり!」
医者「じゃあ、俺の分食べる?」
歴史学者「いただきます」パクッ
マリ「はぁ……なんだかなぁ」
歴史学者「どうした?」
マリ「……こんなに平和でいいのかね。
なんだか全部、悪い夢でも見てたみたいでさ」
歴史学者「……」
医者「今はそれで良いんじゃないかしら。休憩ってことで、ね。
アナタもゆっくりして下さい」
魔物「休憩ですか……ですが、私はもう……。
タケオもいなくなった今、どうしたらいいのか……」
医者「とりあえず、梅パン食べましょう。
ささやかですが、お詫びの気持ちでもあるんです。
私は……魔物を誤解してた面もあるようですから」
241: 2015/05/12(火) 18:42:35.63
歴史学者「先生……」
魔物「……」
医者「価値観が全て変わった訳ではありません……。
ですが、アナタは憎むべき相手ではなかったようです。
失礼な態度ばかり、申し訳ありませんでした」
魔物「……いいんですよ、慣れてますから。
でも、謝られたのは初めてです。
生きてると、こんなこともあるものなんですね」
マリ「そりゃあね。生きてれば色々あるでしょーよ。
美味しいサンドイッチ食べれたりね」
医者「あら、やっぱり美味しい?うれしいわ」
歴史学者「あーあ、もっと食べたいな。
これはなんなんです?」
医者「これは彼のだよ。
戻ってくるまで、とっておこうと思って」
歴史学者「そうですか、いただきます」
マリ「やめなさいよ。私の食べかけあげるから」
歴史学者「いいよ、我慢するから。
……大丈夫かな、彼」
マリ「うん……」
魔物「……」
医者「……あ、足音が」
ガチャッ
勇者「……あー、疲れた」フラフラ
歴史学者「……」
医者「……大丈夫か?」
勇者「とりあえず横にならせて下さい……」フラフラ
ボフンッ
勇者「あー……」ゴロン
マリ「……」
医者「……」
歴史学者「……」
魔物「……」
医者「価値観が全て変わった訳ではありません……。
ですが、アナタは憎むべき相手ではなかったようです。
失礼な態度ばかり、申し訳ありませんでした」
魔物「……いいんですよ、慣れてますから。
でも、謝られたのは初めてです。
生きてると、こんなこともあるものなんですね」
マリ「そりゃあね。生きてれば色々あるでしょーよ。
美味しいサンドイッチ食べれたりね」
医者「あら、やっぱり美味しい?うれしいわ」
歴史学者「あーあ、もっと食べたいな。
これはなんなんです?」
医者「これは彼のだよ。
戻ってくるまで、とっておこうと思って」
歴史学者「そうですか、いただきます」
マリ「やめなさいよ。私の食べかけあげるから」
歴史学者「いいよ、我慢するから。
……大丈夫かな、彼」
マリ「うん……」
魔物「……」
医者「……あ、足音が」
ガチャッ
勇者「……あー、疲れた」フラフラ
歴史学者「……」
医者「……大丈夫か?」
勇者「とりあえず横にならせて下さい……」フラフラ
ボフンッ
勇者「あー……」ゴロン
マリ「……」
医者「……」
歴史学者「……」
249: 2015/05/13(水) 18:50:02.18
医者「あ、オデンとサンドイッチがあるよ。
食べる?」
勇者「えーと……サンドイッチは食べたいです」
医者「はい」
カチャッ
勇者「うん……ああ、ウマイ」ぱくっ
歴史学者「ずいぶん疲れたみたいだな」
勇者「そりゃあ疲れんだろ。
生き返らせるのはキツいからな」
歴史学者「生き返らせたのか……!?」
マリ「……!」
勇者「そうだよ、もうさすがにねみーわ」
医者「まさか、そんなことまで出来るなんて……」
勇者「俺は勇者ですから。なんでも出来ますよ」
マリ「……ははは、アンタたち本気?生き返らせられる訳ないじゃん。
アンタら神様かなんかなの?」
勇者「……」モグモグ
マリ「ねぇ……冗談よね?そんなバカなことってないわよね?
だってせっかく頃したのに……」
勇者「冗談でも嘘でもねぇよ。俺が生き返らせたんだ」
マリ「意味分かんない。
どうもおかしいと思ってたけど、アンタたち本当にイカれてんのね。
マジで気持ち悪いんだけど」
勇者「信じなくてもいいけどよ。
お前は殺人犯じゃなくなった、それだけだ」
マリ「じゃあ、なにか?またアイツらと過ごせっていうん?
やっと解放されたのに、また同じ毎日を続けろってこと?」
勇者「そりゃ、逆に無理だ」
マリ「どういうことよ……」
勇者「お前と顔合わせちまうと、アイツらまた氏んじまうんだよ。
だから、お前とはもう暮らせねぇ」
マリ「ねぇ、バカみたいなことばっかり言うのやめてよ。
私、疲れてんの」
勇者「俺も疲れてっから、もう休ませてくれ。
ふわぁーあ……」ゴロン
マリ「ちょっと、ふざけないでよ!
アンタ一体なにしたのよ!」
勇者「もう話しただろ……。
俺が起きるまで、お前は部屋から出るなよ…………」コテンッ
マリ「なに寝ようとしてんのよ!ねぇ!」ゆっさゆっさ
勇者「……ぐー」
マリ「もう、なんなのよ……!」
食べる?」
勇者「えーと……サンドイッチは食べたいです」
医者「はい」
カチャッ
勇者「うん……ああ、ウマイ」ぱくっ
歴史学者「ずいぶん疲れたみたいだな」
勇者「そりゃあ疲れんだろ。
生き返らせるのはキツいからな」
歴史学者「生き返らせたのか……!?」
マリ「……!」
勇者「そうだよ、もうさすがにねみーわ」
医者「まさか、そんなことまで出来るなんて……」
勇者「俺は勇者ですから。なんでも出来ますよ」
マリ「……ははは、アンタたち本気?生き返らせられる訳ないじゃん。
アンタら神様かなんかなの?」
勇者「……」モグモグ
マリ「ねぇ……冗談よね?そんなバカなことってないわよね?
だってせっかく頃したのに……」
勇者「冗談でも嘘でもねぇよ。俺が生き返らせたんだ」
マリ「意味分かんない。
どうもおかしいと思ってたけど、アンタたち本当にイカれてんのね。
マジで気持ち悪いんだけど」
勇者「信じなくてもいいけどよ。
お前は殺人犯じゃなくなった、それだけだ」
マリ「じゃあ、なにか?またアイツらと過ごせっていうん?
やっと解放されたのに、また同じ毎日を続けろってこと?」
勇者「そりゃ、逆に無理だ」
マリ「どういうことよ……」
勇者「お前と顔合わせちまうと、アイツらまた氏んじまうんだよ。
だから、お前とはもう暮らせねぇ」
マリ「ねぇ、バカみたいなことばっかり言うのやめてよ。
私、疲れてんの」
勇者「俺も疲れてっから、もう休ませてくれ。
ふわぁーあ……」ゴロン
マリ「ちょっと、ふざけないでよ!
アンタ一体なにしたのよ!」
勇者「もう話しただろ……。
俺が起きるまで、お前は部屋から出るなよ…………」コテンッ
マリ「なに寝ようとしてんのよ!ねぇ!」ゆっさゆっさ
勇者「……ぐー」
マリ「もう、なんなのよ……!」
250: 2015/05/13(水) 18:52:08.77
歴史学者「……とりあえず、私達も寝ようか。
マリも明日になってから考えよう、な?」
マリ「……」
医者「俺は床で寝るから、マリちゃんはベッドで寝ていいわよ。
アナタは、ソファでもいいですか?」
魔物「ええ……構いませんよ」
歴史学者「いや、私がソファで寝ますから、アナタはベッドで寝て下さい。
私、ソファの方が眠れるんで」
魔物「……どちらでも良いですよ。
気にしないで下さい」
歴史学者「じゃ、私はソファで寝ますからね。
みんな、一旦寝ましょう」
医者「じゃあ、隣の部屋から布団持ってこないと……」スタッ
マリ「……」
歴史学者「マリ……、寝よう?」
マリ「……」
魔物「……生きていれば色々ありますからね。
どうやら私も君も、辛い1日だったみたいだ」
マリ「……アンタも街の人に追われてたんだっけね。
住んでたとこが燃えたんだっけ?」
魔物「ええ……、私の人生が燃えたようなもんですよ」
マリ「なら、私なんかを気遣わなくていいよ。
アンタも辛いんなら、気遣ってる場合じゃないでしょ」
魔物「……私も辛いからですよ。
だからこそアナタの顔を見ていると、冷静になってきてしまいましてね。
つい、声をかけたくなったんです」
マリ「あっそう。悪いけど私は同族嫌悪するタチなんよ。
だから、ほっといて」
魔物「……」
ガチャッ
医者「はい、これ。君の分の布団」
歴史学者「ありがとうございます。じゃあ、私は先に寝ますから。
マリもベッドで寝るんだぞ」
マリ「いいからさっさと寝て。私のことはほっといて」
医者「……電気は豆にするからね。おやすみ」
パチッ
マリ「……」
マリも明日になってから考えよう、な?」
マリ「……」
医者「俺は床で寝るから、マリちゃんはベッドで寝ていいわよ。
アナタは、ソファでもいいですか?」
魔物「ええ……構いませんよ」
歴史学者「いや、私がソファで寝ますから、アナタはベッドで寝て下さい。
私、ソファの方が眠れるんで」
魔物「……どちらでも良いですよ。
気にしないで下さい」
歴史学者「じゃ、私はソファで寝ますからね。
みんな、一旦寝ましょう」
医者「じゃあ、隣の部屋から布団持ってこないと……」スタッ
マリ「……」
歴史学者「マリ……、寝よう?」
マリ「……」
魔物「……生きていれば色々ありますからね。
どうやら私も君も、辛い1日だったみたいだ」
マリ「……アンタも街の人に追われてたんだっけね。
住んでたとこが燃えたんだっけ?」
魔物「ええ……、私の人生が燃えたようなもんですよ」
マリ「なら、私なんかを気遣わなくていいよ。
アンタも辛いんなら、気遣ってる場合じゃないでしょ」
魔物「……私も辛いからですよ。
だからこそアナタの顔を見ていると、冷静になってきてしまいましてね。
つい、声をかけたくなったんです」
マリ「あっそう。悪いけど私は同族嫌悪するタチなんよ。
だから、ほっといて」
魔物「……」
ガチャッ
医者「はい、これ。君の分の布団」
歴史学者「ありがとうございます。じゃあ、私は先に寝ますから。
マリもベッドで寝るんだぞ」
マリ「いいからさっさと寝て。私のことはほっといて」
医者「……電気は豆にするからね。おやすみ」
パチッ
マリ「……」
251: 2015/05/13(水) 18:53:30.22
ーーー
チュン チュン
勇者「うぅ……ふわぁー」ムクッ
医者「おはよう、気分はどう?」
勇者「うん……まぁまぁっす」
医者「それは良かった。
うどんがあったから、焼きうどんを作ってみたよ。
みんなが起きたら食べようと思ってさ。
君も食べるだろ?」
勇者「うーん……えっ!?下に降りたんですか!?」
医者「ま、まぁ……台所は一階だし」
勇者「……マリの父親たちは見かけました?」
医者「いや、早い時間だったから。コソコソ作ってきたよ」
勇者「そうですか……」
歴史学者「うーん……なんだよ、うるさいぞぉ」ゴロン
勇者「お前も起きろよ。もう朝だぞ」ゆっさゆっさ
歴史学者「やめてよー……まだねむいー」
勇者「マリとオッサンも起きろー。焼きうどん食おうぜ」
医者「オッサン……」
マリ「……ん、朝?」
魔物「……」
勇者「じゃあ、俺はトイレ行ってきますから、とり分けといて下さい」
医者「えぇ……うん、頑張る」
歴史学者「……なんかいいにおいがするー。ごはんー」コテンッ
医者「ひっ」ビクッ
勇者「あー……。まぁ、頑張って下さい」ガチャッ
バタンッ
医者「薄情……!」
252: 2015/05/13(水) 18:54:53.47
勇者「じゃあ、メシ食うか。いただきまーす」
医者「いただきまーす」
歴史学者「……これ、粉チーズですよね。なんで焼きうどんに……」
医者「まずは食べてみてよ」
魔物「……」ぱくっ
勇者「おお!ウマイ」
歴史学者「あれ……美味しい!どういうことですか?」
医者「どういうことって……どう説明すればいいの?」
歴史学者「そうですね、味付けを教えて下さい」
医者「特別なものは入れてないよ。
マーガリンと砂糖と醤油と和風ダシ入れただけだから」
歴史学者「へぇー、和風のダシが粉チーズと合うなんて……」
医者「喫茶店で出してた味を真似したんだよ。
あれはマーガリンじゃなくて、バターだったけどね」
マリ「なーんか、料理の才能あるんじゃない?イケるわよこれ」
医者「そ、そうかな。ありがとう」
魔物「……いいですね。美味しいです」
勇者「当たり前だろ。先生が作ったんだから」
モグモグ
勇者「あー、うまかった」
医者「ごちそうさまでした」
歴史学者「お肉が入ってたら、もっと良かったけど」
マリ「そりゃ無理よ。ウチに肉なんてないもん」
魔物「キャベツの新鮮なシャキシャキ感が良かったですね」
医者「えっ、シャキシャキしてました?」
魔物「えっ、わざとじゃないのですか?」
医者「えっと……わざとです」
勇者「先生はテキトーなヤローですね。
美味しかったからいいですけど」
医者「……ごめんなさい」
魔物「そういうつもりで言ったんじゃないんですがね。
私はシャキシャキの方が好きなんですよ」
歴史学者「そんなことどうでもいいじゃないですか。
外はこんなに良い天気だし」
勇者「旅するには絶好の日だな」
チュン チュン
全員「……」
チュン チュン
勇者「……みんな、旅支度すっか」
医者「いただきまーす」
歴史学者「……これ、粉チーズですよね。なんで焼きうどんに……」
医者「まずは食べてみてよ」
魔物「……」ぱくっ
勇者「おお!ウマイ」
歴史学者「あれ……美味しい!どういうことですか?」
医者「どういうことって……どう説明すればいいの?」
歴史学者「そうですね、味付けを教えて下さい」
医者「特別なものは入れてないよ。
マーガリンと砂糖と醤油と和風ダシ入れただけだから」
歴史学者「へぇー、和風のダシが粉チーズと合うなんて……」
医者「喫茶店で出してた味を真似したんだよ。
あれはマーガリンじゃなくて、バターだったけどね」
マリ「なーんか、料理の才能あるんじゃない?イケるわよこれ」
医者「そ、そうかな。ありがとう」
魔物「……いいですね。美味しいです」
勇者「当たり前だろ。先生が作ったんだから」
モグモグ
勇者「あー、うまかった」
医者「ごちそうさまでした」
歴史学者「お肉が入ってたら、もっと良かったけど」
マリ「そりゃ無理よ。ウチに肉なんてないもん」
魔物「キャベツの新鮮なシャキシャキ感が良かったですね」
医者「えっ、シャキシャキしてました?」
魔物「えっ、わざとじゃないのですか?」
医者「えっと……わざとです」
勇者「先生はテキトーなヤローですね。
美味しかったからいいですけど」
医者「……ごめんなさい」
魔物「そういうつもりで言ったんじゃないんですがね。
私はシャキシャキの方が好きなんですよ」
歴史学者「そんなことどうでもいいじゃないですか。
外はこんなに良い天気だし」
勇者「旅するには絶好の日だな」
チュン チュン
全員「……」
チュン チュン
勇者「……みんな、旅支度すっか」
253: 2015/05/13(水) 18:56:02.57
マリ「……そうね、私も捕まりたくはないし」
勇者「なににだよ?」
マリ「警察に決まってんでしょ。なんたって人刺したんだかんね」
勇者「警察なんかには捕まらねぇよ。生き返らせたって言ってるだろ」
マリ「また下らないことを……」
勇者「じゃあ、ちょっと一階の方見てみろよ。
もう起きてるはずだから」
マリ「……!」
勇者「間違っても声はかけるなよ。
後ろからそっと見るだけだからな」
マリ「…………ふん、訳分かんないことばっかり。
そんなんで私が騙されっと思う?」
勇者「だから、見てみろって言ってるだろ。静かにな」
マリ「バカみたい……こんなこと……」ガチャッ
ギィ
マリ「……」キョロキョロ
店主「……」
店主の妻「……」
マリ「……!!」
勇者「な、生き返っただろ」
マリ「そんな……嘘よ……」
勇者「とりあえずドア閉めろよ。見つかっちまうから」
マリ「……」
バタンッ
勇者「だから、お前は殺人犯なんかじゃねぇんだよ。もう大丈夫だ」
マリ「……」
歴史学者「まさか、本当に生き返ってるとは……君は勇者だったんだな」
勇者「最初からそう言ってんだろ」
マリ「……でも、アイツ私の読んでた雑誌読んでるわよ。女の方は掃除してるし」
勇者「まー、そりゃ、そういう気分なんだろ。
なんでかなんて、俺には分かんねぇよ」
マリ「……本当に生き返ったの?」
勇者「俺は勇者だからな。なんでも出来んだよ」
マリ「……」
勇者「なににだよ?」
マリ「警察に決まってんでしょ。なんたって人刺したんだかんね」
勇者「警察なんかには捕まらねぇよ。生き返らせたって言ってるだろ」
マリ「また下らないことを……」
勇者「じゃあ、ちょっと一階の方見てみろよ。
もう起きてるはずだから」
マリ「……!」
勇者「間違っても声はかけるなよ。
後ろからそっと見るだけだからな」
マリ「…………ふん、訳分かんないことばっかり。
そんなんで私が騙されっと思う?」
勇者「だから、見てみろって言ってるだろ。静かにな」
マリ「バカみたい……こんなこと……」ガチャッ
ギィ
マリ「……」キョロキョロ
店主「……」
店主の妻「……」
マリ「……!!」
勇者「な、生き返っただろ」
マリ「そんな……嘘よ……」
勇者「とりあえずドア閉めろよ。見つかっちまうから」
マリ「……」
バタンッ
勇者「だから、お前は殺人犯なんかじゃねぇんだよ。もう大丈夫だ」
マリ「……」
歴史学者「まさか、本当に生き返ってるとは……君は勇者だったんだな」
勇者「最初からそう言ってんだろ」
マリ「……でも、アイツ私の読んでた雑誌読んでるわよ。女の方は掃除してるし」
勇者「まー、そりゃ、そういう気分なんだろ。
なんでかなんて、俺には分かんねぇよ」
マリ「……本当に生き返ったの?」
勇者「俺は勇者だからな。なんでも出来んだよ」
マリ「……」
254: 2015/05/13(水) 18:57:25.97
歴史学者「マリ……?」
マリ「……」
歴史学者「なぁ……」
マリ「……良かった……」ポロッ
医者「!!!」ビクッ
マリ「……」ポロポロ
勇者「お、おい、泣くなよ。先生が怯えて」
医者「うわぁああああ!!」ダッ
ダダダッ バタンッ!
勇者「あーあ……まーた風呂場に」
魔物「……どういうことなんです?」
歴史学者「彼は女性恐怖症なんですよ。
状況から察するに、特に涙が苦手みたいですね」
勇者「まったく……引きこもんないで下さいよー、先生?」
医者『アタシのことはほっといて!もーイヤッ!』
マリ「……ぷっ、フフフ……あーもう、バカじゃないの?気持ち悪い」
勇者「ホント大迷惑だな。俺、風呂に入ろうと思ってたのに……」
歴史学者「そういえば、なんで風呂はあるのにトイレはないんだ?」
マリ「風水がどうとかって言ってたよ。
私もよく分かんないけど」
勇者「あークソッ。どうすっかな」
マリ「隣の部屋のお風呂使いなよ。こっちと同じだから」
勇者「マジで?じゃー行ってくるわ」
歴史学者「私もあとで借りていいかな?」
マリ「全然良いわよ。アイツらになんか聞かれたら、テキトーに誤魔化しといて」
勇者「ああ、それなら大丈夫だ」
マリ「なにが?」
勇者「いや……なんでもねぇ。じゃ、借りっぞ」ガチャ
バタン
マリ「……あ。
アンタも入りたいなら勝手に使ってよね」
魔物「ああ、ありがとう」
歴史学者「じゃー、私達は旅支度だな。
先生も早く出てきて下さいねー」
医者『うぅ……もうイヤよ……』グスッ
マリ「……」
歴史学者「なぁ……」
マリ「……良かった……」ポロッ
医者「!!!」ビクッ
マリ「……」ポロポロ
勇者「お、おい、泣くなよ。先生が怯えて」
医者「うわぁああああ!!」ダッ
ダダダッ バタンッ!
勇者「あーあ……まーた風呂場に」
魔物「……どういうことなんです?」
歴史学者「彼は女性恐怖症なんですよ。
状況から察するに、特に涙が苦手みたいですね」
勇者「まったく……引きこもんないで下さいよー、先生?」
医者『アタシのことはほっといて!もーイヤッ!』
マリ「……ぷっ、フフフ……あーもう、バカじゃないの?気持ち悪い」
勇者「ホント大迷惑だな。俺、風呂に入ろうと思ってたのに……」
歴史学者「そういえば、なんで風呂はあるのにトイレはないんだ?」
マリ「風水がどうとかって言ってたよ。
私もよく分かんないけど」
勇者「あークソッ。どうすっかな」
マリ「隣の部屋のお風呂使いなよ。こっちと同じだから」
勇者「マジで?じゃー行ってくるわ」
歴史学者「私もあとで借りていいかな?」
マリ「全然良いわよ。アイツらになんか聞かれたら、テキトーに誤魔化しといて」
勇者「ああ、それなら大丈夫だ」
マリ「なにが?」
勇者「いや……なんでもねぇ。じゃ、借りっぞ」ガチャ
バタン
マリ「……あ。
アンタも入りたいなら勝手に使ってよね」
魔物「ああ、ありがとう」
歴史学者「じゃー、私達は旅支度だな。
先生も早く出てきて下さいねー」
医者『うぅ……もうイヤよ……』グスッ
255: 2015/05/13(水) 18:58:42.49
ガチャッ
勇者「あー、すっきりした。次入っていいぞ」
歴史学者「あ、その前に話があるんだ。
二人だけの、お・は・な・し」
勇者「なんだよ、気持ち悪ぃな」
歴史学者「いいから一緒にこい。マリ達は待っててくれ」
マリ「はいはーい。いってらっしゃーい」
ガチャッ バタン
勇者「で、なんだよ話って」
歴史学者「ここでは駄目だ。外までこい」グイッ
勇者「おい!なんなんだよ……」
スタスタ
勇者「なにをもったいつけてんのか知らねぇが、俺は」
歴史学者「もったいつけてなんてない。
マリに聞こえないところまで来ただけだ」
勇者「……」
歴史学者「君がマリは顔を合わせるなっていうから、私が一階を歩き回って、マリの荷物を集めたんだ」
勇者「……だからなんだよ」
歴史学者「…………本当に生き返らせたのか?あの二人を」
勇者「生き返らせたっつってんだろ。何度も同じ事を……」
歴史学者「君は悪魔だな」
勇者「……」
歴史学者「でも、良い悪魔だ」
勇者「……俺は悪魔じゃねぇ、勇者だよ。
テメェもさっさと風呂に入れ」
歴史学者「そうするよ。
今、七ならべをやってたから、君が私の代わりに入ってくれ」
勇者「七ならべ?」
歴史学者「暇つぶしに、三人で遊んでいたんだ。
ルールはマリに聞けばいいんじゃないか?」
勇者「ふーん、なんだかつまんなそうだな」
歴史学者「まぁ、そう言うな」
ガチャッ
マリ「お、秘密の話は終わったの?」
歴史学者「ばっちりだ。
じゃあ、私は風呂に行ってくるから、続きは彼とやってくれ」
勇者「なんだよこれ。ハートが書いてあんな」
マリ「アンタ、トランプも知んないの?そこから説明するわけ?」
勇者「トランプ?」
魔物「トランプって言うのは遊びに使う……」
ーーー
勇者「あー、すっきりした。次入っていいぞ」
歴史学者「あ、その前に話があるんだ。
二人だけの、お・は・な・し」
勇者「なんだよ、気持ち悪ぃな」
歴史学者「いいから一緒にこい。マリ達は待っててくれ」
マリ「はいはーい。いってらっしゃーい」
ガチャッ バタン
勇者「で、なんだよ話って」
歴史学者「ここでは駄目だ。外までこい」グイッ
勇者「おい!なんなんだよ……」
スタスタ
勇者「なにをもったいつけてんのか知らねぇが、俺は」
歴史学者「もったいつけてなんてない。
マリに聞こえないところまで来ただけだ」
勇者「……」
歴史学者「君がマリは顔を合わせるなっていうから、私が一階を歩き回って、マリの荷物を集めたんだ」
勇者「……だからなんだよ」
歴史学者「…………本当に生き返らせたのか?あの二人を」
勇者「生き返らせたっつってんだろ。何度も同じ事を……」
歴史学者「君は悪魔だな」
勇者「……」
歴史学者「でも、良い悪魔だ」
勇者「……俺は悪魔じゃねぇ、勇者だよ。
テメェもさっさと風呂に入れ」
歴史学者「そうするよ。
今、七ならべをやってたから、君が私の代わりに入ってくれ」
勇者「七ならべ?」
歴史学者「暇つぶしに、三人で遊んでいたんだ。
ルールはマリに聞けばいいんじゃないか?」
勇者「ふーん、なんだかつまんなそうだな」
歴史学者「まぁ、そう言うな」
ガチャッ
マリ「お、秘密の話は終わったの?」
歴史学者「ばっちりだ。
じゃあ、私は風呂に行ってくるから、続きは彼とやってくれ」
勇者「なんだよこれ。ハートが書いてあんな」
マリ「アンタ、トランプも知んないの?そこから説明するわけ?」
勇者「トランプ?」
魔物「トランプって言うのは遊びに使う……」
ーーー
256: 2015/05/13(水) 19:01:51.41
ガチャ
歴史学者「良いお湯だったー。ありがとなマリ」
マリ「別に。それよりこのアホを殴って」
歴史学者「なんだ、ルールが分からなかったのか?」
勇者「バカにすんな。
ルールなんて一瞬で把握したっつーの」
歴史学者「じゃあ、なにがあったんだ」
マリ「こいつダイヤ止めてやがんのよ。
おかげでパスが残り一回しかないわ」
歴史学者「なんだ、楽しくやってるんじゃないか。
……あれ、先生も風呂場から出てきたんですね」
医者「うん……もうダメ……」
歴史学者「とりあえず、状況が悪化してなくて良かった。安心したよ」
マリ「これ以上は悪化しようもないっしょ。
ドライヤー使う?」
歴史学者「いいのか?助かるよ」カチッ
ブオオン
歴史学者「イロトリドリにひーかるせかいをつくーってくぅ♪」
勇者「うるせぇな、なんで歌まで歌うんだよ」
歴史学者「ドライヤー中って暇だろう?私はいつも歌いながら乾かしてたんだ」
勇者「ここはテメェんちじゃねぇだろ。
うっとうしいからやめろ」
歴史学者「ふむ、そうかい。
僕らはそーれっぞれぇに輝くCOLOR♪」ブオオ
勇者「チッ……」
マリ「いいから早くダイヤ出してよ。
私が負けちゃうじゃない」
勇者「……俺は止めてねぇよ。止めてんのはオッサンだ」
マリ「えっ、マジで?」
魔物「まさか。違うよ」
マリ「えーもう、どっちなんよ!
二人とも手札見せなさいよ」
勇者「…………そんなことより、考えなきゃいけねぇことがあんだろ。
トランプなんかに逃げてねぇでさ」
257: 2015/05/13(水) 19:02:48.74
マリ「……」
魔物「……」
ブオオ パチッ
歴史学者「……私も話に参加させてもらおうか。ドライヤーはあとでも良い」
勇者「そうだな。……お前はどうするのがいいと思う?」
歴史学者「どうするか……誰もここで暮らすことは出来ないのは確かだな」
マリ「……誰も、ねぇ。
ま、うさんくさい勇者様の話を信じるなら、そうだねぇ」
勇者「お前、まだ俺のこと信じてねぇのか?
二人とも生き返らせただろ」
マリ「まぁね。顔をあわせちゃいけないっていうのも、信じるしかないわ」
勇者「じゃあ、ちゃんと考えろよ。
アンタも、これからどうすんだ?」
魔物「これから……故郷にでも帰りますよ。
私にはそれしか出来ません」
勇者「お前は?」
マリ「どっかの街に宿の売り上げ持ってトンズラするわ。
生きていけるまで生きていくよ」
歴史学者「そうか…」
魔物「……」
ブオオ パチッ
歴史学者「……私も話に参加させてもらおうか。ドライヤーはあとでも良い」
勇者「そうだな。……お前はどうするのがいいと思う?」
歴史学者「どうするか……誰もここで暮らすことは出来ないのは確かだな」
マリ「……誰も、ねぇ。
ま、うさんくさい勇者様の話を信じるなら、そうだねぇ」
勇者「お前、まだ俺のこと信じてねぇのか?
二人とも生き返らせただろ」
マリ「まぁね。顔をあわせちゃいけないっていうのも、信じるしかないわ」
勇者「じゃあ、ちゃんと考えろよ。
アンタも、これからどうすんだ?」
魔物「これから……故郷にでも帰りますよ。
私にはそれしか出来ません」
勇者「お前は?」
マリ「どっかの街に宿の売り上げ持ってトンズラするわ。
生きていけるまで生きていくよ」
歴史学者「そうか…」
258: 2015/05/13(水) 19:04:18.45
勇者「……先生、ここで出番じゃないっすか?」
医者「えっ?」
勇者「オッサンはともかく、マリは行くあてがないんすよ。
お得意の勧誘のチャンスじゃないんすか」
マリ「勧誘?」
医者「ああ……君が言ってるのはトクシュクのことだろ。
俺も良いとは思うけど……」
マリ「なによトクシュクって。村の名前だっけ?」
医者「そう……あ、あの、トクシュク村に住んだ方が、君も楽なんじゃないかって……多分……」
マリ「はぁ?なんでそんなヘンピなとこなんよ」
勇者「そう言うなよ。あの村のやつら、良いやつばっかだったぞ。
俺も助けてもらったんだ」
歴史学者「しかし、トクシュクは確か、国に認可されていない村のはずだが。
本当に大丈夫なんですか?」
医者「どこかをさまよって辛い思いをするよりかは、マシだと思う。
とりあえずの間、住んでみたらいいんじゃないかな」
マリ「私はイヤよ。そんなとこに行くぐらいなら、この人についていった方がマシ」
歴史学者「そんなこと言ったって……」
魔物「私は構いませんよ。本人が本当に良いのなら」
マリ「えっ」
勇者「マジかよ。本気なのか?オッサン」
魔物「昨日寝るまでに、彼女には私の話を聞いてもらいましてね。
彼女からも話を聞きました。辛い話だった」
マリ「だからって……そんなの一時的な感情っしょ?
テキトーなこと言わないで」
魔物「……じゃあ、正直に言いましょう。
私は、アナタのお母さんを知っています」
マリ「へっ?」
魔物「そもそも私がこの街に来たのは、アナタのお母さんを追ってだった。
うろついていただけで捕まった私は、気がついたらタケオの農場にいたんですがね。
遠い過去の話です」
マリ「どういうこと……?あの女のことを言ってんの?」
魔物「違いますよ、アナタのお母さんのことです。
私は化粧とかつらとサングラスをつけて、人間のフリをしていた時期があったんです。
……そうして別の街にいたとき、アナタのお母さんに一目惚れしてしまったんです」
マリ「は、はぁ」
魔物「結局思いを伝えることはなかったのですが、アナタのお母さんとはお友達になりましてね。
アナタを見ていると、懐かしくて…… 。
だから、アナタを助けたいと思ったんです」
マリ「……たぶん私、お母さんからアンタの話聞いたことあるわ。
ハマナスにいた頃、魔物の友達がいたってね」
魔物「まさか……!魔物だと知っていたのか……」
マリ「だからこそ、アンタ達をかくまったんよ。
お母さんから話を聞いていたからこそね。
……でも、おかしいと思わない?」
医者「えっ?」
勇者「オッサンはともかく、マリは行くあてがないんすよ。
お得意の勧誘のチャンスじゃないんすか」
マリ「勧誘?」
医者「ああ……君が言ってるのはトクシュクのことだろ。
俺も良いとは思うけど……」
マリ「なによトクシュクって。村の名前だっけ?」
医者「そう……あ、あの、トクシュク村に住んだ方が、君も楽なんじゃないかって……多分……」
マリ「はぁ?なんでそんなヘンピなとこなんよ」
勇者「そう言うなよ。あの村のやつら、良いやつばっかだったぞ。
俺も助けてもらったんだ」
歴史学者「しかし、トクシュクは確か、国に認可されていない村のはずだが。
本当に大丈夫なんですか?」
医者「どこかをさまよって辛い思いをするよりかは、マシだと思う。
とりあえずの間、住んでみたらいいんじゃないかな」
マリ「私はイヤよ。そんなとこに行くぐらいなら、この人についていった方がマシ」
歴史学者「そんなこと言ったって……」
魔物「私は構いませんよ。本人が本当に良いのなら」
マリ「えっ」
勇者「マジかよ。本気なのか?オッサン」
魔物「昨日寝るまでに、彼女には私の話を聞いてもらいましてね。
彼女からも話を聞きました。辛い話だった」
マリ「だからって……そんなの一時的な感情っしょ?
テキトーなこと言わないで」
魔物「……じゃあ、正直に言いましょう。
私は、アナタのお母さんを知っています」
マリ「へっ?」
魔物「そもそも私がこの街に来たのは、アナタのお母さんを追ってだった。
うろついていただけで捕まった私は、気がついたらタケオの農場にいたんですがね。
遠い過去の話です」
マリ「どういうこと……?あの女のことを言ってんの?」
魔物「違いますよ、アナタのお母さんのことです。
私は化粧とかつらとサングラスをつけて、人間のフリをしていた時期があったんです。
……そうして別の街にいたとき、アナタのお母さんに一目惚れしてしまったんです」
マリ「は、はぁ」
魔物「結局思いを伝えることはなかったのですが、アナタのお母さんとはお友達になりましてね。
アナタを見ていると、懐かしくて…… 。
だから、アナタを助けたいと思ったんです」
マリ「……たぶん私、お母さんからアンタの話聞いたことあるわ。
ハマナスにいた頃、魔物の友達がいたってね」
魔物「まさか……!魔物だと知っていたのか……」
マリ「だからこそ、アンタ達をかくまったんよ。
お母さんから話を聞いていたからこそね。
……でも、おかしいと思わない?」
259: 2015/05/13(水) 19:07:03.99
勇者「なにがだよ」
マリ「だってさぁ……こんな偶然ってある?
私が困った時に、偶然お友達がたすけてくれるなんて……ねぇ?」
歴史学者「いいんじゃないか?マリがそれでいいと思うならな」
マリ「……いやいや、だって今まではだーれも助けてくれなかったんよ?
まわりには汚い人間しかいなかったんよ?
……私自身だって綺麗な人間じゃないのに、こんなの……」
勇者「いいんだよ。これは、お前が掴んだ偶然だ。
お前が俺達をかくまってくれなきゃ、今はないんだからな」
マリ「でも……こんなんダメっしょ。
私には、似合わないってかさ。
ダメなんよきっと……」
勇者「きっとお前はさ、今まで辛い思いしかしなかったから、辛いことしか現実に思えないんだろ?」
マリ「……!」
勇者「多分これからも、そう思って生きていくのかもしれないな。
幸せな人生に不安を感じて、不幸に逃げ込みたくなるかもしれないし。
過去の自分が忘れられなくて、罪悪感に苛まれるかもしれない」
マリ「突然なんなのよ……」
マリ「だってさぁ……こんな偶然ってある?
私が困った時に、偶然お友達がたすけてくれるなんて……ねぇ?」
歴史学者「いいんじゃないか?マリがそれでいいと思うならな」
マリ「……いやいや、だって今まではだーれも助けてくれなかったんよ?
まわりには汚い人間しかいなかったんよ?
……私自身だって綺麗な人間じゃないのに、こんなの……」
勇者「いいんだよ。これは、お前が掴んだ偶然だ。
お前が俺達をかくまってくれなきゃ、今はないんだからな」
マリ「でも……こんなんダメっしょ。
私には、似合わないってかさ。
ダメなんよきっと……」
勇者「きっとお前はさ、今まで辛い思いしかしなかったから、辛いことしか現実に思えないんだろ?」
マリ「……!」
勇者「多分これからも、そう思って生きていくのかもしれないな。
幸せな人生に不安を感じて、不幸に逃げ込みたくなるかもしれないし。
過去の自分が忘れられなくて、罪悪感に苛まれるかもしれない」
マリ「突然なんなのよ……」
260: 2015/05/13(水) 19:08:07.82
勇者「でもな、お前は幸せになっていいんだ。
お前がお前自身を許したくなくても、許していいんだよ。
それに父親のことも恨んでいいし、恨まなくてもいい。
少なくともそう思うことは罪じゃない」
マリ「変な宗教に引き込もうとするのはやめて。
私には、自分の過去を帳消しにするような身勝手さはないの」
勇者「だけど、これからずっと辛い顔して生きてくなんて、馬鹿げてっだろ?
辛い顔したって、お前が思う罪が無かったことになる訳じゃないんだからな」
マリ「……すごーく客観的な意見ね。
アンタん中では、それは正しくて納得できるんでしょうよ。
でも押し付けないでちょーだい」
勇者「確かに、今のは俺のエゴだ。
……でも、そうでも考えなきゃ、俺も生きてこられなかったんだ。
だから、お前もたまにでいいから思い出してみてくれよ」
マリ「でも……」
勇者「さて、じゃあマリはオッサンと行くのな。
俺達はどーします?」
医者「そうだね……どうしたらいいかな」
歴史学者「とにかく、隣の町に行かないか?
そこでこれからのことを決めようじゃないか」
勇者「隣?」
歴史学者「ああ、シモヅマという町があるんだ。
いつまでもここにいる訳にはいかないし、とりあえず移動した方が良いだろう」
勇者「じゃあ、それがいいな。もう、みんな出発できるだろ?」
歴史学者「私はオッケーだ」
医者「俺も大丈夫だよ……」
マリ「……アンタは風呂に入んなくて良いの?」
魔物「少しぐらい我慢出来ますよ。到着すればなんとかなるだろうし。
魔物の村にも、お風呂はありますからね」
マリ「あのさ……私はアンタみたいな見た目じゃないでしょ。
村の人に変な目で見られたりしない?」
魔物「大丈夫ですよ。人間と結婚して、暮らしている者もいくらでもいるから。
だから、心配しないで下さい」
マリ「ふーん……あっそ。
なら、ついていってもいいかなぁ、なんて」
歴史学者「よし、じゃあ出発するか。私が髪を乾かしてからな」
勇者「うぜーな。さっさとしろよ」
歴史学者「約束はいらーないわー。果たされないことなど大っ嫌いなのぉ♪」ブオオ
勇者「……」イライラ
お前がお前自身を許したくなくても、許していいんだよ。
それに父親のことも恨んでいいし、恨まなくてもいい。
少なくともそう思うことは罪じゃない」
マリ「変な宗教に引き込もうとするのはやめて。
私には、自分の過去を帳消しにするような身勝手さはないの」
勇者「だけど、これからずっと辛い顔して生きてくなんて、馬鹿げてっだろ?
辛い顔したって、お前が思う罪が無かったことになる訳じゃないんだからな」
マリ「……すごーく客観的な意見ね。
アンタん中では、それは正しくて納得できるんでしょうよ。
でも押し付けないでちょーだい」
勇者「確かに、今のは俺のエゴだ。
……でも、そうでも考えなきゃ、俺も生きてこられなかったんだ。
だから、お前もたまにでいいから思い出してみてくれよ」
マリ「でも……」
勇者「さて、じゃあマリはオッサンと行くのな。
俺達はどーします?」
医者「そうだね……どうしたらいいかな」
歴史学者「とにかく、隣の町に行かないか?
そこでこれからのことを決めようじゃないか」
勇者「隣?」
歴史学者「ああ、シモヅマという町があるんだ。
いつまでもここにいる訳にはいかないし、とりあえず移動した方が良いだろう」
勇者「じゃあ、それがいいな。もう、みんな出発できるだろ?」
歴史学者「私はオッケーだ」
医者「俺も大丈夫だよ……」
マリ「……アンタは風呂に入んなくて良いの?」
魔物「少しぐらい我慢出来ますよ。到着すればなんとかなるだろうし。
魔物の村にも、お風呂はありますからね」
マリ「あのさ……私はアンタみたいな見た目じゃないでしょ。
村の人に変な目で見られたりしない?」
魔物「大丈夫ですよ。人間と結婚して、暮らしている者もいくらでもいるから。
だから、心配しないで下さい」
マリ「ふーん……あっそ。
なら、ついていってもいいかなぁ、なんて」
歴史学者「よし、じゃあ出発するか。私が髪を乾かしてからな」
勇者「うぜーな。さっさとしろよ」
歴史学者「約束はいらーないわー。果たされないことなど大っ嫌いなのぉ♪」ブオオ
勇者「……」イライラ
267: 2015/05/15(金) 15:24:42.59
スタスタ
マリ「ここまでくれば、街のやつには見つかんないんじゃない?」
勇者「そうか。じゃあ、そろそろお別れだな」
マリ「アンタらは自転車あっていーわね。私達はこっから先も歩きよ」
歴史学者「まぁまぁ。じゃあ、元気でな。
またいつか会おう」
マリ「はいはーい。そっちもお元気で」
勇者「ああ。また、トランプやろうぜ」
マリ「私はイヤよ。あ、そうそう。
おじさん、梅パンと焼きうどん以外のレシピってない?」
医者「え、えっと、じゃあ今書いてみるよ」
マリ「なるべくお菓子系にしてね。生チョコなんかあると良いんだけど」
勇者「生チョコってなんだよ?」
歴史学者「生っぽいチョコレートのことだ」
勇者「チョコレートって?」
マリ「アンタそれはないでしょ。なんでチョコも知らんの?」
勇者「仕方ねーだろ。よく分からねぇんだから」
医者「知ってるのはクッキーだけなんだけど……いいかな?」
マリ「仕方ないね。材料だけ教えて」
医者「材料だけでいいなら書けたよ。どうぞ」
マリ「ふーん、ありがと。作ってみるわ」
魔物「では、また」
マリ「じゃあね」
歴史学者「ああ」
勇者「じゃあな」
医者「またいつか会いましょう」
スタスタ
マリ「あ!一つ言い忘れたわ」クルッ
勇者「なんだよ」
マリ「カズキのアンモナイト、大事にしてね。私の分も」
勇者「……ああ」
マリ「それじゃあ、さよーなら」
スタスタ
268: 2015/05/15(金) 15:25:45.80
勇者「大事にするに決まってんだろ……」
歴史学者「なんか言ったか?」
勇者「別に。なんでもねぇよ」
医者「じゃあ、自転車乗ろうか。もう歩くの疲れたよ」
歴史学者「私はどっちの後ろに乗れば良いんだ?」
勇者「ああ?テメェが自分でこげよ」
歴史学者「なんだよケチ。先生は乗せてくれますよね?」
医者「いや……ちょっと無理かな」
勇者「先生は俺の後ろに乗ってください。顔色悪いですし」
医者「え、でも」
歴史学者「仕方ないな。じゃ、シモヅマに向けて出発だ!」
勇者「うるせぇよ。ま、ダラダラ行くか」
医者「次の街で自転車や服も買おうか。その方が楽だろうし」
歴史学者「いいですね。セクシーなやつ買おうか」
勇者「想像しただけでげんなりだな」
歴史学者「パーカーの勇者様に言われたくないな」
勇者「うるせーんだよバーカ」
キコキコ
歴史学者「なんか言ったか?」
勇者「別に。なんでもねぇよ」
医者「じゃあ、自転車乗ろうか。もう歩くの疲れたよ」
歴史学者「私はどっちの後ろに乗れば良いんだ?」
勇者「ああ?テメェが自分でこげよ」
歴史学者「なんだよケチ。先生は乗せてくれますよね?」
医者「いや……ちょっと無理かな」
勇者「先生は俺の後ろに乗ってください。顔色悪いですし」
医者「え、でも」
歴史学者「仕方ないな。じゃ、シモヅマに向けて出発だ!」
勇者「うるせぇよ。ま、ダラダラ行くか」
医者「次の街で自転車や服も買おうか。その方が楽だろうし」
歴史学者「いいですね。セクシーなやつ買おうか」
勇者「想像しただけでげんなりだな」
歴史学者「パーカーの勇者様に言われたくないな」
勇者「うるせーんだよバーカ」
キコキコ
269: 2015/05/15(金) 15:27:21.07
ーーー
キコキコ
勇者「でな!もうそのシーンがカッコいいのなんの」
歴史学者「ちょっと待て。なんでこんな話になったんだっけ?」
医者「確か、なにを買うか話してたら、ラーメンの話になったんだよね」
歴史学者「あー、そうですね。それでみそラーメンの話をしてたんですよね、私達は」
勇者「だから、俺はマンガの話をしてんだろ」
歴史学者「そこだよ。どうして君だけ、マンガの話なんか」
勇者「だって、みそラーメンと言えばこのマンガなんだよ。
主人公がうまそうに食っててさ。
まさか実在してるとは思わなかったな」
歴史学者「実在って……食べたことないのか?」
勇者「ねぇよ。いつもうまそうだなと思って、見てただけだ。
先生の村で屋台見たときは、すげー期待したのにさ。
売ってんの焼き鳥だったし」
医者「あー、そういえば言ってたね。
どこかで食べれるところがあるといいけど」
歴史学者「私も食べたくなってきましたよ。
やっぱりイチバンはみそラーメンですよね」
医者「うーん、俺はトンコツの方が好きだなぁ」
勇者「それより聞いてくれよ。このマンガって本当に良い話でさ。
全てがスゲー深いんだ。
術の名前もカッチョいいし、セリフに適度にカタカナを使うとこなんか、本当に良い軽薄さで」
歴史学者「うるさいぞ。大体そんなマンガ、私は知らないんだよ」
勇者「……そりゃ知らねぇだろうな。いつの物かも分からねぇマンガだし」
歴史学者「そんなに古いのか?」
勇者「まぁな。全部お前じゃ読めねぇような、古代の文字で書いてあったよ。
魔王に捕まってた頃に、色んな本を解読させられてたんだ」
歴史学者「どういうことだ?なぜ魔王が古代のマンガなんか……」
勇者「さぁな、俺も未だに分からねぇ」
歴史学者「……あれ?
なら君はマンガなんかを通して、もっと色々知ってて良いはずだと思うんだが」
勇者「……」
歴史学者「いや、ちょっと思っただけだぞ。
君はあまりにも知識が偏ってるから……」
勇者「……知ってて当たり前なことを、わざわざ読者に説明したりしないだろ。
だから分かんねーとこは、読み飛ばすしかなかった。
俺は言葉を訳せば良かっただけで、理解することは求められてなかったし。
それに俺は……もうなにも知りたくなかったんだ」
270: 2015/05/15(金) 15:29:09.56
歴史学者「……古代文字はどうして読めるんだ?」
勇者「村のやつらに教わってたから、読めただけだよ」
歴史学者「その時に、言葉の意味は教わらなかったのか?」
勇者「……まぁな」
歴史学者「ふむ…………なぁ」
勇者「なんだよ」
歴史学者「……君の過去について聞いてもいいか?」
勇者「はぁ?なんでだよ」
医者「……俺も聞いてみたいな。君が良ければだけど」
勇者「別に……俺は村に住んでて、滅ぼされて、魔王に捕まってただけですよ。
それだけです」
歴史学者「そうじゃなくて、もっと詳しい話を」
勇者「聞いてどうすんだよ。俺をどうしたいんだ?」
歴史学者「……嫌なら無理にとは言わない。
ラーメン屋探す方が楽しいしな」
勇者「なら、最初から聞くなよ。どうせ面白い話なんかねぇんだから」
キコキコ
歴史学者「ん、あれは?」
医者「えっ?」
歴史学者「ほら、あれですよ。なにか浮いてる」
勇者「ああ、なんか文字も書いてあんな……。
『ようこそフタエサクランドへ!』だってよ」
歴史学者「なんだろうな、あれ。
それにフタエサクランドって……」
勇者「ちょっとよってみっか。
先生もいいですよね?」
医者「ああ。俺も気になるし、行ってみよう」
歴史学者「どんなところかな」ワクワク
勇者「村のやつらに教わってたから、読めただけだよ」
歴史学者「その時に、言葉の意味は教わらなかったのか?」
勇者「……まぁな」
歴史学者「ふむ…………なぁ」
勇者「なんだよ」
歴史学者「……君の過去について聞いてもいいか?」
勇者「はぁ?なんでだよ」
医者「……俺も聞いてみたいな。君が良ければだけど」
勇者「別に……俺は村に住んでて、滅ぼされて、魔王に捕まってただけですよ。
それだけです」
歴史学者「そうじゃなくて、もっと詳しい話を」
勇者「聞いてどうすんだよ。俺をどうしたいんだ?」
歴史学者「……嫌なら無理にとは言わない。
ラーメン屋探す方が楽しいしな」
勇者「なら、最初から聞くなよ。どうせ面白い話なんかねぇんだから」
キコキコ
歴史学者「ん、あれは?」
医者「えっ?」
歴史学者「ほら、あれですよ。なにか浮いてる」
勇者「ああ、なんか文字も書いてあんな……。
『ようこそフタエサクランドへ!』だってよ」
歴史学者「なんだろうな、あれ。
それにフタエサクランドって……」
勇者「ちょっとよってみっか。
先生もいいですよね?」
医者「ああ。俺も気になるし、行ってみよう」
歴史学者「どんなところかな」ワクワク
271: 2015/05/15(金) 15:30:20.55
チャーラチャッチャー……
勇者「なんか聞こえてきません?」
医者「なんだろう。明るい楽器の音だね」
歴史学者「なんだか良いにおいもするな」
キコキコ キッ
勇者「うわ……」
歴史学者「これは……なんなんだろうか」
医者「うーん……?」
ガヤガヤ
医者「とりあえず、賑わってるね」
勇者「あっちでなんか、スゲー勢いの物が動いてますよ」
歴史学者「……ん!?あれ、人が乗ってるぞ!」
勇者「本当だ……なんなんだここ……」
ピ工口「皆さまいらっしゃいませ」ピョコ
勇者「うわっ!な、なんだよお前」
ピ工口「わたくし、ピ工口と申します。公認のマスコットでございます」
医者「マスコット?」
ピ工口「さあさ、中へお進み下さい。
本日無料の大盤振る舞い。
皆さん幸せ大笑い」
医者「ちょ、ちょっと待って下さい。
ここは一体なんなのですか?」
ピ工口「移動遊園地でございます。
愛と幸福をモットーに、各地を回っているのです」
勇者「先生、移動遊園地ってなんですか?」
医者「いや……俺にも分からないな」
ピ工口「そんな顔なさらないで。ここは楽しむ場所ですよ。
皆さまの笑顔が我々のカテなのです」
歴史学者「うーん、とても興味深いな。
二人とも、中に入ってみよう!」
勇者「まぁ、俺も気になるけど……」
医者「ここにいる人達も楽しそうにしてるし、良いんじゃないかな」
歴史学者「じゃー行こう!
私はあの速く動くやつを見に行きたいな」
ピ工口「あれはオススメでございますよ。ぜひご搭乗下さい。
ただし、心臓の弱い方はご遠慮頂きます」
勇者「なんだかコエーこと言ってねぇか?」
歴史学者「まぁ、いいじゃないか。とりあえず見るだけだ。な?」
勇者「分ーかったよ。じゃあな」
ピ工口「ええ、心行くまでお楽しみ下さい。
わたくし、いつでもここにいますので、またお声をどうぞ」
医者「あのでっかいのはなんだろうね。動いてないみたいだけど」
歴史学者「いや、ちょっとずつ動いてますよ。ほら、さっきより左に……動いてるよな?」
勇者「分かんねぇよ。俺見てねーし」
スタスタ
272: 2015/05/15(金) 15:31:55.04
ゴーッ
歴史学者「ぎゃああああ!」
勇者「うおおおお!」
ゴーッ
医者「大丈夫かな二人とも。スゴい音が聞こえるけど…………」
ゴーッ
歴史学者「ぎゃああああ!」
勇者「うわああああ!」
ゴー…
ぷしゅん
勇者「ハァハァ……」
歴史学者「あー……」
係員「お疲れさまでした。バーをゆっくり持ち上げてください」
勇者「……」
歴史学者「……」
ガコッ
医者「……二人とも、大丈夫?」
勇者「……」
歴史学者「……」
医者「おーい……」
勇者「……いや、これスゴいっすよ。マジでスゲーっす!」
医者「えっ?」
歴史学者「なぁ、もう一周しないか?」
勇者「行くか!先生も乗ってください」
医者「いや、でもこれ怖いよね?
それに、ジェットコースターって心臓の弱い人は」
勇者「先生、心臓弱いんですか?」
医者「そういう訳じゃないけど……」
勇者「なら大丈夫ですって!これは乗っとかなきゃ後悔しますよ。
なぁ?」
歴史学者「そうだな。これは体験するべきだ」
医者「えぇ……でも……」
係員「ご搭乗の方は座席に腰かけて、安全バーをゆっくり下ろしてくださーい」
医者「うーん……。じゃあ、俺も乗るよ」
勇者「絶対ハマりますよ。こんなクレイジーなの、なかなかありませんから」
医者「クレイジー!?ってか君、クレイジーなんて言葉をよく」
係員「それではみなさん、シモヅマの風になりましょう。
いってらっしゃーい」
ぷしゅー ガタガタガタ
医者「や、やっぱりやめようかな」
勇者「大丈夫ですって。気を確かに持って下さいね」
医者「え」
ゴーッ!
医者「いやああああ!」
273: 2015/05/15(金) 15:33:22.50
医者「うう……」グスッ
勇者「スイマセンって。ホント、悪かったっす」
歴史学者「こんなに爽快感があるのにな。もったいない」
医者「もったいなくていいし……。もうムリ……うぅ……」グスッ
勇者「はぁ……あ、ほら。
あっちのゆっくりしたやつ乗りましょうよ。
なんだっけあれは……」
歴史学者「観覧車だな」
勇者「そうそう、観覧車!あれなら怖くないですよ、多分」
医者「もう、俺はいいよ……君たちだけで乗ってきなよ……」
勇者「……だとよ。どうする?」
歴史学者「やっぱり君も乗りたいよな。先生には悪いが、待ってて貰おうか」
勇者「という訳ですから。ちょっと待ってて下さいね」
医者「うん……行ってらっしゃい」
スタスタ
係員「二名様ですか?」
歴史学者「ええ」
係員「一つだけ注意を。ドアは係りの者が開けますので、絶対に開けないで下さーい」
歴史学者「分かりました」
係員「では、どうぞ空の旅をお楽しみ下さい」
スタッ ガチャ
勇者「おお、乗ってみるとはえーな」
歴史学者「すごいな、もう景色が良いぞ」
勇者「うわ……さっき乗ったやつも、スゲー小せぇ」
歴史学者「あ、先生が見えるぞ。おーい」ブンブン
勇者「スゲー、手ェ振ってくれてんな!おーい!」ブンブン
歴史学者「おーい!
……ふふ、なんかいいな、こういうの。
手を振ってくれる人がいるってさ」
勇者「……そうだな。下に戻ったら、もうちょい先生に優しくしよ」
歴史学者「しかし、やっぱり遅いな。まだ前半だろ?やることないじゃないか」
勇者「景色見りゃ良いだろうが。
ほら、あっちで洗濯物干してるやついっぞ」
歴史学者「それ景色じゃないだろ。退屈だなぁ。
あ、じゃあ自己紹介でもするか」
勇者「はぁ?」
歴史学者「私は好きな色は赤で、好きな食べ物はどら焼きだ。君は?」
勇者「……俺は好きな色は青で、焼き鳥が好きだ。
これでいいか?」
歴史学者「そうか。じゃあ、今度真っ青な焼き鳥を作ってやろう」
勇者「真っ青?もっとウマイのか?」
歴史学者「全く、予想通りの反応だよ」
勇者「ん?」
ーーー
勇者「スイマセンって。ホント、悪かったっす」
歴史学者「こんなに爽快感があるのにな。もったいない」
医者「もったいなくていいし……。もうムリ……うぅ……」グスッ
勇者「はぁ……あ、ほら。
あっちのゆっくりしたやつ乗りましょうよ。
なんだっけあれは……」
歴史学者「観覧車だな」
勇者「そうそう、観覧車!あれなら怖くないですよ、多分」
医者「もう、俺はいいよ……君たちだけで乗ってきなよ……」
勇者「……だとよ。どうする?」
歴史学者「やっぱり君も乗りたいよな。先生には悪いが、待ってて貰おうか」
勇者「という訳ですから。ちょっと待ってて下さいね」
医者「うん……行ってらっしゃい」
スタスタ
係員「二名様ですか?」
歴史学者「ええ」
係員「一つだけ注意を。ドアは係りの者が開けますので、絶対に開けないで下さーい」
歴史学者「分かりました」
係員「では、どうぞ空の旅をお楽しみ下さい」
スタッ ガチャ
勇者「おお、乗ってみるとはえーな」
歴史学者「すごいな、もう景色が良いぞ」
勇者「うわ……さっき乗ったやつも、スゲー小せぇ」
歴史学者「あ、先生が見えるぞ。おーい」ブンブン
勇者「スゲー、手ェ振ってくれてんな!おーい!」ブンブン
歴史学者「おーい!
……ふふ、なんかいいな、こういうの。
手を振ってくれる人がいるってさ」
勇者「……そうだな。下に戻ったら、もうちょい先生に優しくしよ」
歴史学者「しかし、やっぱり遅いな。まだ前半だろ?やることないじゃないか」
勇者「景色見りゃ良いだろうが。
ほら、あっちで洗濯物干してるやついっぞ」
歴史学者「それ景色じゃないだろ。退屈だなぁ。
あ、じゃあ自己紹介でもするか」
勇者「はぁ?」
歴史学者「私は好きな色は赤で、好きな食べ物はどら焼きだ。君は?」
勇者「……俺は好きな色は青で、焼き鳥が好きだ。
これでいいか?」
歴史学者「そうか。じゃあ、今度真っ青な焼き鳥を作ってやろう」
勇者「真っ青?もっとウマイのか?」
歴史学者「全く、予想通りの反応だよ」
勇者「ん?」
ーーー
274: 2015/05/15(金) 15:35:56.84
係員「お疲れさまでしたー」
歴史学者「いやぁ、意外と良かったな。
また機会があったら乗ろう」
勇者「なんだよ、退屈だとか言ってたクセに。
先生、お待たせしました」
医者「なんだか楽しそうで良かったよ。手振ったの見えた?」
勇者「ええ、バッチリ。ちょっと嬉しかったです」
医者「そっか、よかった。じゃあ、次はどうする?」
歴史学者「あの占いの館ってとこに行きませんか?いかにも怪しそうだし」
勇者「怪しいとこなんて行ってどうすんだよ」
歴史学者「今日の運勢でも占ってもらえばいいじゃないか。
先生も行きたいですよね?」
医者「あ、うん。あれよりは怖くなさそうだしね……」
勇者「やだなぁ、根に持たないで下さいよ。じゃ、行くか」
スタスタ
歴史学者「いやぁ、意外と良かったな。
また機会があったら乗ろう」
勇者「なんだよ、退屈だとか言ってたクセに。
先生、お待たせしました」
医者「なんだか楽しそうで良かったよ。手振ったの見えた?」
勇者「ええ、バッチリ。ちょっと嬉しかったです」
医者「そっか、よかった。じゃあ、次はどうする?」
歴史学者「あの占いの館ってとこに行きませんか?いかにも怪しそうだし」
勇者「怪しいとこなんて行ってどうすんだよ」
歴史学者「今日の運勢でも占ってもらえばいいじゃないか。
先生も行きたいですよね?」
医者「あ、うん。あれよりは怖くなさそうだしね……」
勇者「やだなぁ、根に持たないで下さいよ。じゃ、行くか」
スタスタ
275: 2015/05/15(金) 15:37:18.02
歴史学者「お、魔法使いみたいなのがいるな。いかにもって感じ」
勇者「運勢を占ってもらうって、具体的になにがどうなるんです?」
医者「君にとって、物事の巡り合わせがいいか悪いかを予測してもらうんだよ。
まぁ、当たるかどうかは分からないけどね」
勇者「ふーん、そうなんですか」
スタスタ
歴史学者「こんにちは。ここはなに占いをして頂けるんですか?」
占い師「ほほほ、ウチは水晶玉の上に手をのせるだけじゃよ。
そうすれば、幸運が訪れるんじゃ」
歴史学者「なんだか占いって感じじゃないんですね」
勇者「うさんくせぇ婆さんだな。幸運なんてさ」
医者「ちょっと!……あはは、すいません」
占い師「ほほほ、お疑いなら乗せてみればええ。
坊っちゃんからにするかえ?」
歴史学者「そうだな、早くやってみろ」
勇者「なんでだよ。お前が先にやれよ」
歴史学者「いーから君が先にやれ。
イチバンは譲ってやる」
勇者「へっ、ビビりが。こんなことで、なんか起きるわけねぇだろ」
スッ
勇者「ほら、置いたぜ」
占い師「ほほほ、だんだんと気分がよくなってきたじゃろ」
勇者「別にこんな……!」
歴史学者「どうした?」
勇者「なんだこれ……スゲェ……!」
歴史学者「なにがどうしたんだ。早く教えろ」ワクワク
勇者「なんか胸がすっきりしていくんだよ。
まるで、ずっと悩んでた問題が解決していくみたいだ」
歴史学者「そんなバカな。私をからかってるのか?」
勇者「ちげーよ。ホントにモヤモヤがすっきり」
医者「聞いてくれ。今すぐ水晶玉から手を離すんだ」
勇者「先生もやりたいんですか?
でも、もうちょっと待って下さい。
今はとても」
医者「いいから早く!」
勇者「……?」
医者「壁のビラに書いてあったんだ。ここを主催してるのはクラウン商会なんだよ」
勇者「……!」
歴史学者「なんだって……!」
占い師「……」
勇者「運勢を占ってもらうって、具体的になにがどうなるんです?」
医者「君にとって、物事の巡り合わせがいいか悪いかを予測してもらうんだよ。
まぁ、当たるかどうかは分からないけどね」
勇者「ふーん、そうなんですか」
スタスタ
歴史学者「こんにちは。ここはなに占いをして頂けるんですか?」
占い師「ほほほ、ウチは水晶玉の上に手をのせるだけじゃよ。
そうすれば、幸運が訪れるんじゃ」
歴史学者「なんだか占いって感じじゃないんですね」
勇者「うさんくせぇ婆さんだな。幸運なんてさ」
医者「ちょっと!……あはは、すいません」
占い師「ほほほ、お疑いなら乗せてみればええ。
坊っちゃんからにするかえ?」
歴史学者「そうだな、早くやってみろ」
勇者「なんでだよ。お前が先にやれよ」
歴史学者「いーから君が先にやれ。
イチバンは譲ってやる」
勇者「へっ、ビビりが。こんなことで、なんか起きるわけねぇだろ」
スッ
勇者「ほら、置いたぜ」
占い師「ほほほ、だんだんと気分がよくなってきたじゃろ」
勇者「別にこんな……!」
歴史学者「どうした?」
勇者「なんだこれ……スゲェ……!」
歴史学者「なにがどうしたんだ。早く教えろ」ワクワク
勇者「なんか胸がすっきりしていくんだよ。
まるで、ずっと悩んでた問題が解決していくみたいだ」
歴史学者「そんなバカな。私をからかってるのか?」
勇者「ちげーよ。ホントにモヤモヤがすっきり」
医者「聞いてくれ。今すぐ水晶玉から手を離すんだ」
勇者「先生もやりたいんですか?
でも、もうちょっと待って下さい。
今はとても」
医者「いいから早く!」
勇者「……?」
医者「壁のビラに書いてあったんだ。ここを主催してるのはクラウン商会なんだよ」
勇者「……!」
歴史学者「なんだって……!」
占い師「……」
281: 2015/05/16(土) 14:25:49.36
パッ
勇者「クラウン商会だと……どういうことだよ婆ーー」
歴史学者(クラウン……)
ーーー
ゴオオオオ!
歴史学者『そんな……全て燃えた……』
ーーー
勇者「ーーよなぁ!……なぁ?」
歴史学者「へっ?」
医者「……どうしたの?ボンヤリしてたようだけど」
歴史学者「あ、いや、なんでもないです」
占い師「ほほほ、気丈に振る舞い続けるのも辛いのぉ。
お前たちは強がりすぎなんじゃよ」
歴史学者「別に強がりなんかじゃない。
……ただ、本当になんともないだけだ」
勇者「えっ……」
医者「……」
占い師「ほう、ならなによりじゃ。
しかし、こらからも旅を続けるのかえ?」
歴史学者「ああ、続けるとも。
私の研究が正しいと証明するためにな」
占い師「立派な心がけじゃな。
では、最後にお前達を占ってやろう」
勇者「ふざけんなよ。今さらそんなの」
占い師「お前は氏ぬ。そして疑う心を手にいれるじゃろう」
勇者「はぁ?」
占い師「そこのお前は、過去を垣間見るかもしれぬ」
医者「……!」
占い師「お前は、執着と抑圧の波に漂うことになるじゃろうな」
歴史学者「…………」
勇者「なにを訳わかんねぇこと言ってやがんだ。
一体何を企んでやがる」
占い師「ワシは事実を述べたまでじゃ。
あとはお主らが決めるんじゃな。
本当にこの旅が正しいかどうかを」
勇者「いい加減にしろ!
お前らが何を企もうと、好きにはさせねぇからな。
絶対にぶっ潰してやるよ」
占い師「ほほほ、楽しみにしておるよ。
お主らの愛と幸福を祈ろう」
勇者「二人とも、こんなとこ出るぞ!ふざけやがって!」
スタスタ!
歴史学者「…………」
医者「俺達も行こう。ね?」
歴史学者「……ええ」
スタスタ
282: 2015/05/16(土) 14:27:28.32
勇者「くそっ……!なんなんだよ、ムカつくな……」
ピ工口「どうされました?」ピョコ
勇者「うわっ!……突然現れんのはやめろ」
ピ工口「みなさま憂鬱なご様子。
わたくし、心配になってしまいまして」
勇者「ふん、ふざけんな。
お前らクラウン商会の奴らだったんだろ?」
ピ工口「ええ、そうですが」
勇者「そうですが、じゃねぇ!
あのクソ男の仲間なんかに、心配されたかねぇんだよ。つきまとうな」
ピ工口「……私もね、よく分からないのですよ。
クラウン商会は正義の味方じゃないんじゃないかってね」
歴史学者「……!」
勇者「はぁ?そんなの当たり前だろ!」
ピ工口「でもね、わたくしピ工口でございますから。
ぜひとも皆さんに笑って頂きたかった。
笑顔でないのはよろしくない」
ぷくー ぽんっ
ピ工口「さ、これを差し上げましょう。ハート型の風船でございます」
勇者「んなの、いらねぇよバーカ!」
歴史学者「なら、私が貰おう」
ピ工口「ありがとうございます。
ではまた、ぜひお越しくださいませ。
わたくし、いつでも入り口におりますので」
勇者「……」
歴史学者「なんだ、怒るなよ。
風船ぐらい貰ってあげてもいいだろ?」
勇者「……そりゃま、好きにすりゃいいだろうよ。
先生も貰ってきたらどうですか」
医者「いや……俺は別に……」
勇者「ふん……。さっさと宿探しに行こうぜ」
歴史学者「ああ、そうだな」
医者「……」
キコキコ
ピ工口「どうされました?」ピョコ
勇者「うわっ!……突然現れんのはやめろ」
ピ工口「みなさま憂鬱なご様子。
わたくし、心配になってしまいまして」
勇者「ふん、ふざけんな。
お前らクラウン商会の奴らだったんだろ?」
ピ工口「ええ、そうですが」
勇者「そうですが、じゃねぇ!
あのクソ男の仲間なんかに、心配されたかねぇんだよ。つきまとうな」
ピ工口「……私もね、よく分からないのですよ。
クラウン商会は正義の味方じゃないんじゃないかってね」
歴史学者「……!」
勇者「はぁ?そんなの当たり前だろ!」
ピ工口「でもね、わたくしピ工口でございますから。
ぜひとも皆さんに笑って頂きたかった。
笑顔でないのはよろしくない」
ぷくー ぽんっ
ピ工口「さ、これを差し上げましょう。ハート型の風船でございます」
勇者「んなの、いらねぇよバーカ!」
歴史学者「なら、私が貰おう」
ピ工口「ありがとうございます。
ではまた、ぜひお越しくださいませ。
わたくし、いつでも入り口におりますので」
勇者「……」
歴史学者「なんだ、怒るなよ。
風船ぐらい貰ってあげてもいいだろ?」
勇者「……そりゃま、好きにすりゃいいだろうよ。
先生も貰ってきたらどうですか」
医者「いや……俺は別に……」
勇者「ふん……。さっさと宿探しに行こうぜ」
歴史学者「ああ、そうだな」
医者「……」
キコキコ
283: 2015/05/16(土) 14:28:41.02
勇者「……つーか、お前はクラウン商会なんて、大嫌いなんじゃねぇのかよ」
歴史学者「私は……嫌いだよ」
勇者「ならなんでその……よくわかんねぇもの貰ったんだよ」
歴史学者「……あのピ工口の人の言葉が気になってな。
『クラウン商会は正義の味方じゃない』なんて、聞けるとは思わなかった」
勇者「なんでだよ。当たり前のことだろ?」
歴史学者「クラショーは、今こそ攻撃的だが、最初はただのボランティア団体だったんだ。
先生は知ってますよね?」
医者「ああ、俺は良いイメージも持ってたよ。
あんなのを目の前で見るまではね……」
勇者「マジっすか……」
歴史学者「彼らの言う愛と幸福は、当初は正しく振り撒かれていたんだ。
善意を義務と課し、自己犠牲を貫く姿を、人々は正義の味方が現れたと囃し立てていた。
まるで、聖典から抜け出してきたような存在だったからな」
勇者「なら、なんであんなふうになったんだよ」
歴史学者「……トウガサキ村の悪魔教の信者が、団体を乗っ取ったというウワサがある。
そこからおかしくなり始めたんだと……」
勇者「ちょっと待てよ。
なんでトウガサキ村のやつが悪者扱いされんだ?
トウガサキは」
歴史学者「君の村だろ。分かってる。
私はそんなウワサは信じていない」
勇者「そうじゃなきゃ困るっつーの。
なんでトウガサキが……」
歴史学者「君の村は謎だらけだからな。
今どき電気も水道もないだろ?
おまけに外との交流もないんだから、悪魔教なんてウワサをたてられるのも無理はない。
というか、ここはそういう国なんだ」
勇者「……」
医者「……いやな話だが、考えても仕方がないね。宿を探そうか」
勇者「ええ……分かってますよ」
キコキコ
歴史学者「私は……嫌いだよ」
勇者「ならなんでその……よくわかんねぇもの貰ったんだよ」
歴史学者「……あのピ工口の人の言葉が気になってな。
『クラウン商会は正義の味方じゃない』なんて、聞けるとは思わなかった」
勇者「なんでだよ。当たり前のことだろ?」
歴史学者「クラショーは、今こそ攻撃的だが、最初はただのボランティア団体だったんだ。
先生は知ってますよね?」
医者「ああ、俺は良いイメージも持ってたよ。
あんなのを目の前で見るまではね……」
勇者「マジっすか……」
歴史学者「彼らの言う愛と幸福は、当初は正しく振り撒かれていたんだ。
善意を義務と課し、自己犠牲を貫く姿を、人々は正義の味方が現れたと囃し立てていた。
まるで、聖典から抜け出してきたような存在だったからな」
勇者「なら、なんであんなふうになったんだよ」
歴史学者「……トウガサキ村の悪魔教の信者が、団体を乗っ取ったというウワサがある。
そこからおかしくなり始めたんだと……」
勇者「ちょっと待てよ。
なんでトウガサキ村のやつが悪者扱いされんだ?
トウガサキは」
歴史学者「君の村だろ。分かってる。
私はそんなウワサは信じていない」
勇者「そうじゃなきゃ困るっつーの。
なんでトウガサキが……」
歴史学者「君の村は謎だらけだからな。
今どき電気も水道もないだろ?
おまけに外との交流もないんだから、悪魔教なんてウワサをたてられるのも無理はない。
というか、ここはそういう国なんだ」
勇者「……」
医者「……いやな話だが、考えても仕方がないね。宿を探そうか」
勇者「ええ……分かってますよ」
キコキコ
284: 2015/05/16(土) 14:29:44.25
ーーー
キコキコ
勇者「宿屋まだっすかぁ?」
歴史学者「もう疲れたんですけどぉ」
医者「俺に言われても……あ、ほら、あの人に聞いてみようよ」
勇者「仕方ないっすね。おーい」キキッ
村人「なんですか?」
勇者「ここら辺に宿屋ってねぇのか?
探しても全然ねぇんだけど」
村人「宿屋は知りませんね……。
あ、でも、キリーク教の宿泊所ならありますよ。
誰でもお金を払えば泊まれるはずです」
医者「それって、どんなところなんでしょうか?」
村人「調度品も少ない質素なホテルに、調理設備がついてる感じみたいです。
私もよくは知りませんが」
勇者「場所は?」
村人「国道を北に行けば、看板が出ているはずです」
医者「ありがとうございます。早速行ってみます」
村人「いえいえ。では」
スタスタ
歴史学者「国道ってさっき通ったとこですよね。
看板なんかあったかな」
医者「小さな看板だったんじゃない?大々的に宣伝してるわけはないし」
勇者「よく分かりませんが、戻るってことですか?」
医者「そうだね。もう暗くなってきたし、急いで探そっか」
歴史学者「アイアイサー」
キコキコ
285: 2015/05/16(土) 14:31:34.06
キコキコ キッ
勇者「もしかしてこれか?キリークって書いてあるぞ」
歴史学者「おお、よく見つけたな。きっとこれだろう」
医者「泊まれるといいけどなぁ。野宿は辛いし」
スタスタ
受付「よう。巡礼の方?」
医者「あ、いえ。宿泊所をお借りしたいのですが」
受付「よかったなぁ。今日は記念日だから、宿泊代が半額なんだよ。
アンタらついてるぞ」
医者「そうなんですか、やっと運が向いてきたみたいです。
おいくらお支払すれば?」
受付「3000万だ」
歴史学者「はぁ!?」
医者「はい、3000万」
受付「はい、確かに」
歴史学者「なんだ3000円か……ビビった」
受付「おう、良いリアクションだったぞ。じゃあ、ついてきな」
スタスタ
勇者「あー腹減った。早くメシ食いてぇ」グー
歴史学者「とは言ってもな。自分達で作らなきゃいけないんだぞ」
勇者「えっ!マジかよ、氏ぬ……」グー
医者「まぁまぁ、急いで作るから」
スタスタ
286: 2015/05/16(土) 14:32:35.01
受付「部屋はここだ。知ってるみてぇだが、ウチはメシは出さねぇ。
礼拝堂の近くに売店があるからよ、自分達で作って食ってくれ」
歴史学者「あざーっす」
受付「じゃあな。用があったら呼べよ」
医者「あ、待って下さい」
受付「なんだ?」
医者「今日はなんの記念日なんですか?」
受付「俺のお誕生日だよ。家族と祝うんだ」
医者「そうですか……おめでとうございます」
受付「おう、どういたしまして。じゃあな」
スタスタ
勇者「どういたしましてっておかしくねぇ?」
歴史学者「……」
勇者「おい、どうかしたか?」
歴史学者「あ、いや、別に。早く入ろうか」
ガチャ ギィ
勇者「……」
医者「……」
バタンッ
礼拝堂の近くに売店があるからよ、自分達で作って食ってくれ」
歴史学者「あざーっす」
受付「じゃあな。用があったら呼べよ」
医者「あ、待って下さい」
受付「なんだ?」
医者「今日はなんの記念日なんですか?」
受付「俺のお誕生日だよ。家族と祝うんだ」
医者「そうですか……おめでとうございます」
受付「おう、どういたしまして。じゃあな」
スタスタ
勇者「どういたしましてっておかしくねぇ?」
歴史学者「……」
勇者「おい、どうかしたか?」
歴史学者「あ、いや、別に。早く入ろうか」
ガチャ ギィ
勇者「……」
医者「……」
バタンッ
287: 2015/05/16(土) 14:34:15.95
医者「ああー、疲れた……」ボフンッ
勇者「疲れたって、俺の後ろに乗ってただけじゃないですか」
医者「そうだけど……腰とおしりが痛くなるんだよー……」
勇者「仕方ないですね。じゃー、俺がメシ作りますよ」
医者「う、うーん……」
歴史学者「いや、今日は私が作ろう。
先生、材料買ってくるのでお金ください」
医者「じゃあ、頼んじゃおうかな。これでお願い」
歴史学者「頼まれました。行ってきまーす」
ガチャ バタンッ
勇者「……なんすか。そうやって俺をバカにして。
俺だって料理ぐらい作れますよ」
医者「何が作れるの?」
勇者「えーっと、サソリのくん製とか、蜂の巣のサラダとか、マムシ酒とかですね」
医者「……きっと材料が揃わないだろうからさ、今回は遠慮しとくよ」
勇者「ちぇっ、つまんねーの……」
医者「……」
勇者「……」
医者「……あのね、ちょっと聞いてくれる?」
勇者「えっ、やっぱり食べたいんですか?」
医者「そうじゃなくて……彼女のことなんだけど。
明日二人で出掛けようと思うんだ」
勇者「急にどうしたんです?」
医者「いや、やっぱり気になっててさ……。
彼女、ずっと無理してるみたいだし、ちゃんと話を聞いた方がいいかなって。
ほら、きっと君の前だと、意地はっちゃったりするだろ?」
勇者「さぁ……俺の前だけじゃないと思いますけど」
医者「まぁ、そうだったら俺も諦めるけどさ。
とりあえず時間が欲しいんだ。どうかな?」
勇者「別に全然構いませんよ。先生は女好きですからね」
医者「……せっかく忘れてたのに。次言ったら許さないからね」
勇者「許さないって、具体的には?」
医者「……くすぐろうか」
勇者「まぁ、変態。いやだわ」
歴史学者「なにが変態なんだ?」ガチャ
勇者「おまっ、突然入ってくんなよ!」
歴史学者「まぁ、ごめんなさい。次から気を付けるわ」
勇者「……」
医者「今のは君が悪いからね。味方はしないよ?」
勇者「……フン、別に?気になりませんし」
歴史学者「あら、そお?恥ずかしい子ねえ」くねっ
勇者「なに気に入ってんだよバーカ」
歴史学者「フフン、そう照れるなよ。
あ、先生。カレーの材料とって下さい。
シチュー作るんで」
医者「全く、君も素直じゃないね」
トントントン ぐつぐつ
勇者「疲れたって、俺の後ろに乗ってただけじゃないですか」
医者「そうだけど……腰とおしりが痛くなるんだよー……」
勇者「仕方ないですね。じゃー、俺がメシ作りますよ」
医者「う、うーん……」
歴史学者「いや、今日は私が作ろう。
先生、材料買ってくるのでお金ください」
医者「じゃあ、頼んじゃおうかな。これでお願い」
歴史学者「頼まれました。行ってきまーす」
ガチャ バタンッ
勇者「……なんすか。そうやって俺をバカにして。
俺だって料理ぐらい作れますよ」
医者「何が作れるの?」
勇者「えーっと、サソリのくん製とか、蜂の巣のサラダとか、マムシ酒とかですね」
医者「……きっと材料が揃わないだろうからさ、今回は遠慮しとくよ」
勇者「ちぇっ、つまんねーの……」
医者「……」
勇者「……」
医者「……あのね、ちょっと聞いてくれる?」
勇者「えっ、やっぱり食べたいんですか?」
医者「そうじゃなくて……彼女のことなんだけど。
明日二人で出掛けようと思うんだ」
勇者「急にどうしたんです?」
医者「いや、やっぱり気になっててさ……。
彼女、ずっと無理してるみたいだし、ちゃんと話を聞いた方がいいかなって。
ほら、きっと君の前だと、意地はっちゃったりするだろ?」
勇者「さぁ……俺の前だけじゃないと思いますけど」
医者「まぁ、そうだったら俺も諦めるけどさ。
とりあえず時間が欲しいんだ。どうかな?」
勇者「別に全然構いませんよ。先生は女好きですからね」
医者「……せっかく忘れてたのに。次言ったら許さないからね」
勇者「許さないって、具体的には?」
医者「……くすぐろうか」
勇者「まぁ、変態。いやだわ」
歴史学者「なにが変態なんだ?」ガチャ
勇者「おまっ、突然入ってくんなよ!」
歴史学者「まぁ、ごめんなさい。次から気を付けるわ」
勇者「……」
医者「今のは君が悪いからね。味方はしないよ?」
勇者「……フン、別に?気になりませんし」
歴史学者「あら、そお?恥ずかしい子ねえ」くねっ
勇者「なに気に入ってんだよバーカ」
歴史学者「フフン、そう照れるなよ。
あ、先生。カレーの材料とって下さい。
シチュー作るんで」
医者「全く、君も素直じゃないね」
トントントン ぐつぐつ
288: 2015/05/16(土) 14:35:44.96
ーーー
医者「ああ、美味しかった」
歴史学者「我ながら良いできだったな」
勇者「まー、悪くねぇけど。でも、先生のメシの方が全然うめぇ」
医者「そうかな。俺はこのシチュー好きだけど」
歴史学者「ねー、美味しいですよね。
彼には細かい味が分からないんですよ」
医者「そう言えばなんだか不思議な味がしたね。なにを入れたの?」
歴史学者「え、いや、別に?
あっ、そーいえばあれがなんだか知ってます?」
勇者「なにを入れたんだよ」
歴史学者「あのオブジェはですね、『キリークの目』と言うんですよ。
先生はご存じでした?」
医者「壁にかかってやるやつだよね。なんかどっかで見た気がするよ。
でも、あんなに大きかったっけ?」
歴史学者「あれより大きいのもあれば、手のひらサイズのもあるんですよ。
キリーク教のお守りなんです」
勇者「それより、なにを入れたんだよ」
歴史学者「しつこいぞ!どうでもいいじゃないか、そんなこと。
それより、キリークの話をしてやろう」
勇者「そんなの興味ねーし」
医者「俺は気になるな。話してくれる?」
歴史学者「ええ、もちろん。キリークというのはですね」
勇者「……くだらねぇ。俺は寝るからな」バサッ
歴史学者「なんだよ、つれないな。
じゃ、簡単に話しますね」
医者「ああ、お願い」
289: 2015/05/16(土) 14:38:39.02
ーーー
歴史学者「ーーというわけで、民の信頼を集めていたキリークは、神様からご褒美があったんです。
ひとつだけ願いを叶えてやると、お告げがありました」
医者「へぇ、それはすごいな」
歴史学者「お告げがあったことはみんなの知るところになり、色んな人がキリークの元に集まりました。
自分の願いを叶えて欲しい人が、キリークに思いを語りに来たんです。
でも、キリークはとんでもない願いをしちゃうんですよ」
医者「とんでもない?」
歴史学者「ええ。彼女は、自分と血のつながった子供が欲しいと願うんです。
生まれて初めて、自分のために願った思いでした」
医者「……」
歴史学者「その結果、彼女は世界中から怒りを買い、子供は殺されてしまいました。
彼女も子供の魂と一緒に天に上り、神様になったと。
彼女は、特に女性のための神様になったそうですよ」
医者「そう……なんだか、辛い話だね」
歴史学者「でも、話しはここで終わりではないんです。
そのキリークなんですが、この国の主流な宗教では、悪魔だとされてるんですよ」
医者「そうだよね、俺もおかしいと思ってたよ。
遠い昔に、悪女の名前として覚えたはずだったんだ」
歴史学者「ええ。身勝手な願いをした、性悪女とだけ説明があったはずです。
私もそう教わりましたし」
医者「ということはキリーク教も、もともとはひとつの宗教だったってこと?
それが宗派によって、解釈が違っちゃったとか」
歴史学者「そうなんですよ。400年前の戦争の後、解釈が180度変わってしまったんです。
私の調査では、戦争後に国をまとめた国王の仕業らしいんですけどね。
教科書には載ることがない、非公式な歴史です」
医者「へー、180度か。
結構、極端な国づくりをしたんだね」
歴史学者「ええ。魔物が魔物として扱われるようになったのも、この時からっぽいんです。
当時の記録は、ほとんど残ってないんですけどね」
医者「そうだった……君は魔物について研究していたんだよね。
お母さんのために」
歴史学者「……別に、あんなやつのためじゃありませんよ。
自分のために研究してただけです。
ホント、氏んでくれて清々しました」
医者「そうかな……。本当は辛いんじゃないか?
だって目の前であんなこと」
歴史学者「先生はなにがおっしゃりたいんです?
私が清々したって言えば、そうなんですよ。
勝手にチンケな解釈しないで下さい」
医者「……」
歴史学者「……はぁ、バカみたいですね私。
本当にキリークについて聞きたいのかと、はしゃいじゃいましたよ。
もう……ちょっと出てきます」スタッ
ガチャ バタンッ
医者「……」
293: 2015/05/16(土) 22:40:19.07
医者「……」
バサッ
勇者「先生、なにしてるんです?」
医者「起きてたの?はぁ……」
勇者「はぁ、じゃありませんよ。
追いかけないんですか」
医者「でも……」
勇者「だから先生は駄目なんですよ。
タイミング悪すぎるし、そりゃ相手も傷つきます」
医者「……」
勇者「今から追いかけて、謝って、心配してるって素直に伝えた方がいいっすよ」
医者「……うるさいんだよ。いちいち指図しないでくれ」
勇者「えっ」
医者「あ……!いや、違うんだ!
なんでこんなこと……」
勇者「……いえ、確かにでしゃばり過ぎましたね。すいません」
医者「違うんだよ、やめてくれ。
君の言ってることは正しいんだ。分かってるんだけど……」
勇者「悪いっすけど、俺も出てきます。そこらへん散歩してきますよ」スタッ
医者「ちょっと待って」
ガチャ バタンッ
医者「…………ッ!」ドンッ
バサッ
勇者「先生、なにしてるんです?」
医者「起きてたの?はぁ……」
勇者「はぁ、じゃありませんよ。
追いかけないんですか」
医者「でも……」
勇者「だから先生は駄目なんですよ。
タイミング悪すぎるし、そりゃ相手も傷つきます」
医者「……」
勇者「今から追いかけて、謝って、心配してるって素直に伝えた方がいいっすよ」
医者「……うるさいんだよ。いちいち指図しないでくれ」
勇者「えっ」
医者「あ……!いや、違うんだ!
なんでこんなこと……」
勇者「……いえ、確かにでしゃばり過ぎましたね。すいません」
医者「違うんだよ、やめてくれ。
君の言ってることは正しいんだ。分かってるんだけど……」
勇者「悪いっすけど、俺も出てきます。そこらへん散歩してきますよ」スタッ
医者「ちょっと待って」
ガチャ バタンッ
医者「…………ッ!」ドンッ
294: 2015/05/16(土) 22:43:15.69
スタスタ
勇者「……」
勇者「……全く、先生はダメダメだな。俺らなんかに気ぃ使いすぎなんだよ……」
勇者「……」
勇者「……さみー。月が出てねぇと、余計さみぃな。そんな気がする」
勇者「……」
勇者「……別に寂しくなんかねぇぞ。
俺はずっと一人だったんだ。この程度、別に……」
勇者「……」
勇者(……誰と喋ってんだよ、俺。こんなに夜って暗かったかな)
シーン
勇者「はぁ……」
295: 2015/05/16(土) 22:44:37.67
勇者「……」
スタスタ
男の子「……」
勇者「あれ?なんだアイツ……」
男の子「……」ガタガタ
勇者「おーい、なにやってんだよ」
男の子「……!」ガタガタ
勇者「寒いのか?」
男の子「別に……。アンタには関係ねぇだろ」ガタガタ
勇者「全く、仕方ねぇな。これ着ろよ」
男の子「は?」
勇者「穴開いてっけど、洗ってはあっから。ほら」
男の子「なんだよこれ……切れてんじゃねぇか」
勇者「ちょっとな。まぁ、無いよりマシだろ?」
男の子「……」
勇者「いーから着ろって。金とったりしねぇよ」
男の子「……」
スポッ
勇者「温かいだろ?」
男の子「別に……」
勇者「俺、パーカーって好きでさ。柔らかいし最高だよな」
ストッ
男の子「……なんで隣に座るんだよ」
勇者「暇だからお前と話そうと思って。お前も話したいだろ?」
男の子「別に……」
勇者「俺はさみしーから誰かと話してぇの。自己紹介でもすっか?」
男の子「なんでだよ……」
勇者「俺は勇者だ。お前は?」
男の子「勇者ってなんだよ……」
勇者「いーから。お前の名前は?」
ケンタ「……ケンタ」
勇者「そうか。よろしくな」
ケンタ「……」
勇者「なんかずっとつまんなそうな顔してんな。なんかあったのか?」
ケンタ「別に、なんでもねぇよ……」
勇者「そうか。ならいいけどよ」
ケンタ「……」
勇者「……」
スタスタ
男の子「……」
勇者「あれ?なんだアイツ……」
男の子「……」ガタガタ
勇者「おーい、なにやってんだよ」
男の子「……!」ガタガタ
勇者「寒いのか?」
男の子「別に……。アンタには関係ねぇだろ」ガタガタ
勇者「全く、仕方ねぇな。これ着ろよ」
男の子「は?」
勇者「穴開いてっけど、洗ってはあっから。ほら」
男の子「なんだよこれ……切れてんじゃねぇか」
勇者「ちょっとな。まぁ、無いよりマシだろ?」
男の子「……」
勇者「いーから着ろって。金とったりしねぇよ」
男の子「……」
スポッ
勇者「温かいだろ?」
男の子「別に……」
勇者「俺、パーカーって好きでさ。柔らかいし最高だよな」
ストッ
男の子「……なんで隣に座るんだよ」
勇者「暇だからお前と話そうと思って。お前も話したいだろ?」
男の子「別に……」
勇者「俺はさみしーから誰かと話してぇの。自己紹介でもすっか?」
男の子「なんでだよ……」
勇者「俺は勇者だ。お前は?」
男の子「勇者ってなんだよ……」
勇者「いーから。お前の名前は?」
ケンタ「……ケンタ」
勇者「そうか。よろしくな」
ケンタ「……」
勇者「なんかずっとつまんなそうな顔してんな。なんかあったのか?」
ケンタ「別に、なんでもねぇよ……」
勇者「そうか。ならいいけどよ」
ケンタ「……」
勇者「……」
296: 2015/05/16(土) 22:45:51.43
ーーー
勇者「……」
ケンタ「……」
勇者「……」
ケンタ「……お前、いつまでここにいるつもりだよ」
勇者「えっ?どうすっかな」
ケンタ「……」
勇者「……」
ケンタ「……俺の親に頼まれて来たのか?」
勇者「そんなことはねぇけど。
俺は先生とケンカして飛び出して来ただけだ」
ケンタ「先生?」
勇者「ああ、一緒に旅してるんだけどな。……いつまでも、心許してくれねぇの」
ケンタ「……」
勇者「原因は分かってんだよ。俺が心を開かねぇのが悪ぃんだ。
……でも、怖いんだよなー。全てを失いそうで」
ケンタ「……」
勇者「どうすればいいと思う?俺、決断できねぇんだ」
ケンタ「……知らねぇよ」
勇者「そりゃそうだよな……」
ケンタ「……」
勇者「……」
297: 2015/05/16(土) 22:47:04.64
ーーー
勇者「……」
ケンタ「……お前、さっき勇者だとか言ってたけど……」
勇者「ああ、勇者だぜ」
ケンタ「……」
勇者「光ってみっか?俺は勇者だから光れるんだよ」
ピカー
ケンタ「……!」
勇者「な?」
ケンタ「……くだらねぇ」
勇者「へっ、俺も同感だよ」フッ
ケンタ「……」
勇者「……」
ケンタ「……つまんねぇな。ホントに」
勇者「そうだな……つまらねぇことばっかりだ」
ケンタ「……」
勇者「……」
ケンタ「……寒くねぇのかよ」
勇者「さみーよ。お前こそ寒くねぇのか?」
ケンタ「……そりゃ、さみーに決まってんだろ」
勇者「そりゃそうか」
ケンタ「……」
勇者「……」
ケンタ「……俺のこと、ウザくねぇのかよ」
勇者「まぁ、ちょっとはな。
でも、俺も似たような状態になったことあっから」
ケンタ「……」
勇者「俺な、ずっと良い子ちゃんだったんだよ。
誰に対しても良い顔してきたんだ」
298: 2015/05/16(土) 22:50:24.22
勇者「俺が物心ついたころには、母親はもう氏んでた。
父親は誰だか分からねぇし。
でも、お前は勇者だって育てられて、俺の周りには村の大人たちがいた」
ケンタ「……」
勇者「勉強も頑張ったし、狩りもやったし、俺は頑張った。
そうしなきゃ、見捨てられる気がして怖かった。
俺は役に立つってことだけが取り柄だったし。
村のやつらとは、当たり障りなく接してた」
ケンタ「……」
勇者「でもな、ある日気がついちまったんだよ。
他のガキは、大人にとって役に立たなくても誉められてたんだ」
ケンタ「……」
勇者「逆立ちが出来ただけで誉められてて、俺はなんだかバカらしくなった。
俺は勇者として人には言えねぇこともやって、それでも誉められやしねぇのにさ。
もう全てがどうでもよくなっちまった。
そのくせ考えれば考えるほど、今居るところは地獄かなんかみたいに思えた」
ケンタ「……!」
勇者「唯一村で俺が望んだことはな、親の名前を知ることだった。
俺は最後の賭けにでて、教会の地下に忍び込んだよ。
そして信用を失い、なにかを知ることは罪だと思わなきゃいけなかった。
もう俺はうんざりして、とにかくそこから逃げ出したくなった。
そこ以外ならどこでもいい気がして、でもそんな気力もなくて、俺は……村が滅ぶことを望んだ」
ケンタ「……」
勇者「だから、俺は分かったぜ。お前も辛い思いしたんだろうなってな」
父親は誰だか分からねぇし。
でも、お前は勇者だって育てられて、俺の周りには村の大人たちがいた」
ケンタ「……」
勇者「勉強も頑張ったし、狩りもやったし、俺は頑張った。
そうしなきゃ、見捨てられる気がして怖かった。
俺は役に立つってことだけが取り柄だったし。
村のやつらとは、当たり障りなく接してた」
ケンタ「……」
勇者「でもな、ある日気がついちまったんだよ。
他のガキは、大人にとって役に立たなくても誉められてたんだ」
ケンタ「……」
勇者「逆立ちが出来ただけで誉められてて、俺はなんだかバカらしくなった。
俺は勇者として人には言えねぇこともやって、それでも誉められやしねぇのにさ。
もう全てがどうでもよくなっちまった。
そのくせ考えれば考えるほど、今居るところは地獄かなんかみたいに思えた」
ケンタ「……!」
勇者「唯一村で俺が望んだことはな、親の名前を知ることだった。
俺は最後の賭けにでて、教会の地下に忍び込んだよ。
そして信用を失い、なにかを知ることは罪だと思わなきゃいけなかった。
もう俺はうんざりして、とにかくそこから逃げ出したくなった。
そこ以外ならどこでもいい気がして、でもそんな気力もなくて、俺は……村が滅ぶことを望んだ」
ケンタ「……」
勇者「だから、俺は分かったぜ。お前も辛い思いしたんだろうなってな」
299: 2015/05/16(土) 22:51:42.05
ケンタ「……別に、アンタと比べたらなんでもねぇことだよ」
勇者「そうか?俺にはそうは見えねぇぞ」
ケンタ「……俺はな、学校で先生に怒られなかっただけだ。
くだらねーだろ」
勇者「怒られねぇのか。……それは辛ェな」
ケンタ「……」
勇者「なんでそんなことになっちまったんだ?」
ケンタ「……最初からそうだったんだ。
ここら辺はキリーク教の信者が多いから……。
差別につながる行動をしないように、いつもビクビクしてんだよ」
勇者「キリーク教って少数派らしいからな。そんだけデリケートになんのは分かるよ」
ケンタ「でもな、生徒がなにやっても怒らねぇんだぜ?
先生と親達の対立があってから、ずっとそうなんだよ。
中にはキツいこと言おうとしてる先生もいるけど、言い訳しながら説教しやがんだ。
「俺は嫌われ役でいいんだ。本当は怒りたくなんかないけど」なんて……、知るかっつーんだよな」
勇者「そうか……」
ケンタ「俺の周りは全員グレたよ。けど、俺は頑張ってたんだ。
勉強も運動も頑張った。
周りから良い子ちゃんって言われても頑張りたかったんだ。
でもある日ふっと思ったんだよ。
これをやめたらどうなるんだろうって」
勇者「……」
ケンタ「俺はトイレ掃除をサボった。
先生はどうしたと思う?
なにも言わなかったんだよ。
もしかしたら気づかれてもいなかった。
無意味だって……思った」
勇者「……そうか」
ケンタ「バカバカしくなって、なんのやる気もなくなっちまった。
頑張りたいときも、頑張れなくなっちまったよ。
……ここから逃げ出したいと、俺も思った」
勇者「そうだよな……。そう思っても無理はねぇよ」
ケンタ「……」
勇者「……よし。じゃあここで、俺たちには何が足りないか教えてやる」
ケンタ「は?突然なんだよ……」
勇者「俺達に足りないのは、悪の心だ」
ケンタ「……は?」
勇者「そうか?俺にはそうは見えねぇぞ」
ケンタ「……俺はな、学校で先生に怒られなかっただけだ。
くだらねーだろ」
勇者「怒られねぇのか。……それは辛ェな」
ケンタ「……」
勇者「なんでそんなことになっちまったんだ?」
ケンタ「……最初からそうだったんだ。
ここら辺はキリーク教の信者が多いから……。
差別につながる行動をしないように、いつもビクビクしてんだよ」
勇者「キリーク教って少数派らしいからな。そんだけデリケートになんのは分かるよ」
ケンタ「でもな、生徒がなにやっても怒らねぇんだぜ?
先生と親達の対立があってから、ずっとそうなんだよ。
中にはキツいこと言おうとしてる先生もいるけど、言い訳しながら説教しやがんだ。
「俺は嫌われ役でいいんだ。本当は怒りたくなんかないけど」なんて……、知るかっつーんだよな」
勇者「そうか……」
ケンタ「俺の周りは全員グレたよ。けど、俺は頑張ってたんだ。
勉強も運動も頑張った。
周りから良い子ちゃんって言われても頑張りたかったんだ。
でもある日ふっと思ったんだよ。
これをやめたらどうなるんだろうって」
勇者「……」
ケンタ「俺はトイレ掃除をサボった。
先生はどうしたと思う?
なにも言わなかったんだよ。
もしかしたら気づかれてもいなかった。
無意味だって……思った」
勇者「……そうか」
ケンタ「バカバカしくなって、なんのやる気もなくなっちまった。
頑張りたいときも、頑張れなくなっちまったよ。
……ここから逃げ出したいと、俺も思った」
勇者「そうだよな……。そう思っても無理はねぇよ」
ケンタ「……」
勇者「……よし。じゃあここで、俺たちには何が足りないか教えてやる」
ケンタ「は?突然なんだよ……」
勇者「俺達に足りないのは、悪の心だ」
ケンタ「……は?」
300: 2015/05/16(土) 22:54:20.49
ーーー
スタスタ
勇者「よっ、待たせたな」
ケンタ「一体何してきたんだよ……」
勇者「なんだと思う?じゃーん、お酒でっす」
ケンタ「……はは、バカかアンタは」
勇者「まぁ、飲もうぜ。コップも買ってきたからよ」
ケンタ「……いらねぇ」
勇者「なんでだよ」
ケンタ「……」
勇者「……あのな、一回飲んだらアル中になるわけじゃねぇから。
とりあえず今日を乗りきろうってだけだよ」
ケンタ「そんなオッサンみてぇなノリはやめろ。俺はただ……」
勇者「ただ?」
ケンタ「……とにかく酒なんかいらねぇよ。
アンタに話しただけで、ちょっとスッキリしたからな」
勇者「そうか?つまんねーの」
ケンタ「アンタだけだったよ。俺に指図しねぇのは。
ただ、誰かに一緒にいてもらうのは、初めてだった」
勇者「ふーん」
ケンタ「……アンタ、名前は?」
勇者「忘れちまった。俺は勇者だよ」
ケンタ「へっ、真面目に聞いた俺がバカだった」
スクッ
勇者「おい、どこ行くんだよ」
ケンタ「帰るんだよ。
……明日どうするかはわかんねーが、今日は帰るよ」
勇者「まー、気を付けろよ」
ケンタ「アンタもな。最近変なやつがよく出るみてぇだからさ」
勇者「お前に心配されるほどよわっちくねぇよ」
ケンタ「そうかよ。じゃあな」
スタスタ
勇者「……けっ、なんだよアイツ。結局一人になっちまった」
キュポッ トクトク
勇者「いいよ、別に俺一人で飲むから」
ゴクゴク
301: 2015/05/16(土) 22:56:01.36
ーーー
スタスタ ピタッ
歴史学者「……気づいてますよ。ついてきてるのは」
医者「……」
歴史学者「ちょっとズルいんじゃないですか?
私から声かけられるの待ってましたよね」
医者「……ごめん」
歴史学者「……はぁ、本当にズルい。
ここに来たのも先生の意思じゃないんでしょう。
アイツが起きてたのも、気づいてましたから」
医者「……君の言う通り、彼に言われて来たんだ」
歴史学者「じゃあ、帰って下さい。ウソもつけない人は嫌いです」
医者「……妻にもよく怒られたよ。俺は嘘が下手だし、子供との関わり方もイマイチ分からなかった。
だから君たちを相手に、やり直そうとしていたのかもしれない」
歴史学者「……どういうことですか」
医者「俺は君たちにとって、頼れる大人でありたかった。
あの子には親としてなにもしてやれなかったから、もう一度やり直したかったんだ。
でも……それはただのエゴだったよ。
君たちにはなんにも関係ないし、俺はすごく身勝手だって気がついたんだ。ごめん」
歴史学者「……ずいぶん長い言い訳ですね。本当に謝る気あるんですか」
医者「あるけど、どう伝えたら良いか分からないんだ。
それに、君のことは本当に心配だった。
けど、俺はどうしてもうまくいかなくて……」
歴史学者「どうすればいいか?
相手の目を見て、真剣に謝るんですよ。
逃げ腰のやつにくどくど言われて、許す人はいません」
医者「…………ごめん!俺が悪かった。
お願いだから、一緒に帰ってくれない?」
歴史学者「……やればできるじゃないですか。
じゃ、仕方ありませんね」
医者「……許してくれるの?」
歴史学者「ええ、渋々ですが。
先生の過去も聞けたんで、許してあげますよ」
医者「よかったー。ホントによかった……」
歴史学者「大丈夫ですか?」
医者「うん……。でもさ、俺の過去なんて知りたかったの?」
歴史学者「そりゃあ、まぁ。先生は得体が知れませんからね」
医者「うーん……俺もね、自分でもよく分からないんだ。
何かが抜け落ちてる気がして」
歴史学者「抜け落ちてる?」
医者「もしかしたら、俺の妻と娘は」
302: 2015/05/16(土) 22:57:29.47
フラフラ
勇者「うぃっく。なんだよ、ふざけやがって。
大体先生のクセに生意気なんだよなぁ。俺は勇者だぜ?なぁ」
ねこ「にゃーん」
勇者「にゃーん、じゃねぇし。
オメー、ちょっと可愛いじゃねぇか。なでさせろよ」グリグリ
ねこ「にゃっ……フギャー!」ダダダッ
勇者「お、おい。なんだよ、置いてくなよ……あーあ」
ガサッ
勇者「なんだ?」
スタッ スタッ
勇者「……へへ、不審者でも来たのか?」
スタッ ぬらり
勇者「……!」
「アウウ……」
勇者「なんだよ……なんなんだよ、お前……」
「辛いのは俺だ」
勇者「へっ?」
「一番辛いのは俺だ!!」
バキッ
勇者「がっ!?」ズザザ
ぬらり
「俺だ!俺なんだ!お前じゃない!」
勇者「お前……」
「一番辛いのは俺だ!」
バッ!
勇者「やめろ!」ガシッ
「……一番辛いのは俺なんだ!俺だ!」
勇者「やめてくれ……!そんなの聞きたくない!」
ガスッ!
「がはっ……グウウ」ダッ
タタタッ
勇者「はぁ、はぁ……」
勇者「アイツは……俺だ……」
303: 2015/05/16(土) 22:58:44.63
医者「もしかしたら、俺の妻と娘は」
ダダダッ
「があっ!」ベキッ
歴史学者「ギャッ!?」ズザッ
医者「うわっ!?だ、大丈夫?」
歴史学者「イテテ……まぁ、なんとか」
「……辛いのは俺だ……」
医者「なんだ?」
「一番辛いのは俺だ!」
歴史学者「……!」
「俺が一番辛いんだ!お前じゃない!」
医者「君は……!」
歴史学者「いや、違いますよ。こんなのがアイツのはずがない」
医者「いや、分かってるよ?分かってるけど……」
歴史学者「なんででしょうね……。こんな真っ黒なチビが勇者に見えるなんて」
「辛いのは俺だ!」ガシッ
歴史学者「うおっ!離せコノヤロー!」
「お前じゃない、俺だ!」ブンッ
医者「危ない!」バキッ
「ぐえっ!」
医者「俺の後ろに隠れて!」
歴史学者「は、はい!」
「なんで……俺はこんなに辛いのに……」ポロッ
歴史学者「……!」
「なんで……」ポロポロ
歴史学者「お前……」
医者「……」スチャッ
歴史学者「えっ、ちょっと、先生!?」
医者「……」
ドンッ!!
ダダダッ
「があっ!」ベキッ
歴史学者「ギャッ!?」ズザッ
医者「うわっ!?だ、大丈夫?」
歴史学者「イテテ……まぁ、なんとか」
「……辛いのは俺だ……」
医者「なんだ?」
「一番辛いのは俺だ!」
歴史学者「……!」
「俺が一番辛いんだ!お前じゃない!」
医者「君は……!」
歴史学者「いや、違いますよ。こんなのがアイツのはずがない」
医者「いや、分かってるよ?分かってるけど……」
歴史学者「なんででしょうね……。こんな真っ黒なチビが勇者に見えるなんて」
「辛いのは俺だ!」ガシッ
歴史学者「うおっ!離せコノヤロー!」
「お前じゃない、俺だ!」ブンッ
医者「危ない!」バキッ
「ぐえっ!」
医者「俺の後ろに隠れて!」
歴史学者「は、はい!」
「なんで……俺はこんなに辛いのに……」ポロッ
歴史学者「……!」
「なんで……」ポロポロ
歴史学者「お前……」
医者「……」スチャッ
歴史学者「えっ、ちょっと、先生!?」
医者「……」
ドンッ!!
304: 2015/05/16(土) 22:59:27.11
ーーー
勇者「……ん?あれ?」
歴史学者「グー」
勇者「なんだここ……おい」
歴史学者「ん……うおっ。目が覚めたのか」
勇者「ここどこなんだよ。それになんで俺……」
歴史学者「ここは病院だ。もう外は昼だぞ。
全くいつまで寝てるんだか……」
勇者「寝てた……んだよな?」
歴史学者「さぁな。君は昨日の夜、公園に倒れてたから運ばれたんだよ」
勇者「昨日は確か先生とケンカして……そうだ、先生は?」
歴史学者「隣のベッドで寝てる。だが、先生も目を覚まさないんだ」
勇者「目を覚まさない!?どういうことだよ!」
歴史学者「バカッ、静かにしろ。他にも人がいるんだぞ」
勇者「先生になにがあったんだよ!」
歴史学者「よくは分からない。
まぁ、ちょっと喉がはれてるが、先生はただ寝ているだけだ。
落ち着いてくれ」
勇者「寝てるだけか……ビックリさせんなよ」
歴史学者「先生より、君はどうなんだ。君なんか氏にかけてたんだぞ」
勇者「氏にかけてた?」
歴史学者「うーん……なにから話したらいいのか。
真っ黒で小柄なやつに、心当たりはあるか?」
勇者「あっ……!そういえば俺、そいつに襲われたんだよ。
公園で酒飲んでたら突然……」
歴史学者「公園で酒……」
勇者「うっせー。今はそっちはいいだろ」
歴史学者「まぁな。それはそうと、私もそいつに襲われたんだよ」
勇者「マジかよ……」
歴史学者「……私と先生はな、そいつを君だと思った」
勇者「えっ」
歴史学者「いや、君じゃないことは分かってるぞ。
でも、君だと思った思ったんだ。
何を言ってるのか分からないだろうが」
勇者「いや……分かるよ。俺もそう思った」
歴史学者「そうか、君自身もか……」
309: 2015/05/17(日) 01:48:33.11
歴史学者「……実はな、さっきこの病室の人に聞いたんだ。
ここ数日、似たような事件がいくつも起きているらしい」
勇者「俺の偽物が、ちょくちょく現れてるってことか?」
歴史学者「いや、その時それぞれで、誰の偽物かは違うみたいだ。
見た目は君や私が見た通り、黒いやつなんだが」
勇者「なんだそれ……おかしな話だな」
歴史学者「ああ。とりあえず、今分かってることが一つある。
その偽物を頃すと本物も氏んでしまうらしいんだ」
勇者「本物も氏ぬ?
……だから、俺も氏にかけてたのか」
歴史学者「ああ……。先生がな、君の偽物を吹っ飛ばしたんだ」
勇者「えっ……」
歴史学者「私が襲われたからだぞ?
だからきっと先生は……でもな……」
勇者「……」
歴史学者「……君の偽物は泣いてたんだ。
少なくとも私は、その姿に胸をえぐられた。
なにか訴えるものがとてもあったのに……先生はよく分からない方法で、そいつを破裂させたんだ」
勇者「破裂……」
歴史学者「私にも分からないが……。その直後、なぜか君が氏ぬと私たちは悟った」
勇者「……」
歴史学者「だが、君を生き返らせたのも先生なんだぞ。
先生は君のところへ、一目散に駆けていったんだ。
謎が多すぎるが、先生が手をかざしたら君は息を吹き返した」
勇者「……」
歴史学者「その代わりなのか、先生まで倒れてしまって。
仕方ないから、君たちを病院まで馬車で連れてきたんだよ」
勇者「ちっとも意味が分からねぇ。
……けど、お前が嘘をついてねぇのは何となく分かるよ」
歴史学者「そうか……ごめんな」
勇者「いや、謝んなよ。
多分、原因は俺だ」
歴史学者「いや、それは」
勇者「いいからちょっと聞いてくれ。
……なんかな、胸に穴があいてんだ。
そこにつまってたのが、あの黒いやつなんだと思う……。
訳わかんねーだろ」
歴史学者「……まぁな。でも君が嘘をついてないのも分かるよ」
勇者「そうか……」
歴史学者「……じゃあ、もう一つ分かったことを教えてやろうか」
ここ数日、似たような事件がいくつも起きているらしい」
勇者「俺の偽物が、ちょくちょく現れてるってことか?」
歴史学者「いや、その時それぞれで、誰の偽物かは違うみたいだ。
見た目は君や私が見た通り、黒いやつなんだが」
勇者「なんだそれ……おかしな話だな」
歴史学者「ああ。とりあえず、今分かってることが一つある。
その偽物を頃すと本物も氏んでしまうらしいんだ」
勇者「本物も氏ぬ?
……だから、俺も氏にかけてたのか」
歴史学者「ああ……。先生がな、君の偽物を吹っ飛ばしたんだ」
勇者「えっ……」
歴史学者「私が襲われたからだぞ?
だからきっと先生は……でもな……」
勇者「……」
歴史学者「……君の偽物は泣いてたんだ。
少なくとも私は、その姿に胸をえぐられた。
なにか訴えるものがとてもあったのに……先生はよく分からない方法で、そいつを破裂させたんだ」
勇者「破裂……」
歴史学者「私にも分からないが……。その直後、なぜか君が氏ぬと私たちは悟った」
勇者「……」
歴史学者「だが、君を生き返らせたのも先生なんだぞ。
先生は君のところへ、一目散に駆けていったんだ。
謎が多すぎるが、先生が手をかざしたら君は息を吹き返した」
勇者「……」
歴史学者「その代わりなのか、先生まで倒れてしまって。
仕方ないから、君たちを病院まで馬車で連れてきたんだよ」
勇者「ちっとも意味が分からねぇ。
……けど、お前が嘘をついてねぇのは何となく分かるよ」
歴史学者「そうか……ごめんな」
勇者「いや、謝んなよ。
多分、原因は俺だ」
歴史学者「いや、それは」
勇者「いいからちょっと聞いてくれ。
……なんかな、胸に穴があいてんだ。
そこにつまってたのが、あの黒いやつなんだと思う……。
訳わかんねーだろ」
歴史学者「……まぁな。でも君が嘘をついてないのも分かるよ」
勇者「そうか……」
歴史学者「……じゃあ、もう一つ分かったことを教えてやろうか」
310: 2015/05/17(日) 01:49:36.87
勇者「……なんだよ」
歴史学者「現れる偽物に共通してるのが、その本物の方が移動遊園地に行ったってことなんだ」
勇者「マジか……。
じゃあ、クラウン商会がなんかしやがったんだな」
歴史学者「たぶんな。特に怪しいのは、占いのばあさんだと思う。
占いの館に行って、水晶に触った人だけ、偽物が現れているらしい」
勇者「だから俺の偽物だけなのか……」
歴史学者「……そうだな、なにがどうなってるのかは全く分からないが……。
クラウン商会はとことん怪しいからな。
君の魔法と同じくらい、うさんくさい」
勇者「はぁ?ざけんな、テメーも十分うさんくせぇよ」
歴史学者「そんなことで言い争いたいんじゃない。
それより厄介な事になったぞ」
勇者「まだなんかあんのか?」
歴史学者「あの移動遊園地について、警察が聞き込みに来るみたいなんだ。
君たちも、顔をあわす訳にはいかないんだろう?
早く、病院を抜け出さないと」
勇者「なんで警察なんかがくるんだよ。魔物が指示したのか?」
歴史学者「は?魔物?」
勇者「だってあいつら、魔物の仲間なんだろ」
歴史学者「少なくとも、私はそんな話は知らないぞ。
警察は国の機関で、悪人を捕まえるための組織なはずだが」
勇者「そうだったか?」
歴史学者「ああ。魔物の仲間だなんて、誰から聞いたんだ?」
勇者「誰からって……先生だよ」
歴史学者「…………」
勇者「……」
歴史学者「……まぁ、いい。
病院の服から着替えたら、先生を抱えてくれ。早いとこ逃げよう」
勇者「……」
歴史学者「なぁ……」
勇者「……俺の服は?」
歴史学者「君のカバンの中だ。急ごう」
勇者「ああ……」
ガサガサ
歴史学者「現れる偽物に共通してるのが、その本物の方が移動遊園地に行ったってことなんだ」
勇者「マジか……。
じゃあ、クラウン商会がなんかしやがったんだな」
歴史学者「たぶんな。特に怪しいのは、占いのばあさんだと思う。
占いの館に行って、水晶に触った人だけ、偽物が現れているらしい」
勇者「だから俺の偽物だけなのか……」
歴史学者「……そうだな、なにがどうなってるのかは全く分からないが……。
クラウン商会はとことん怪しいからな。
君の魔法と同じくらい、うさんくさい」
勇者「はぁ?ざけんな、テメーも十分うさんくせぇよ」
歴史学者「そんなことで言い争いたいんじゃない。
それより厄介な事になったぞ」
勇者「まだなんかあんのか?」
歴史学者「あの移動遊園地について、警察が聞き込みに来るみたいなんだ。
君たちも、顔をあわす訳にはいかないんだろう?
早く、病院を抜け出さないと」
勇者「なんで警察なんかがくるんだよ。魔物が指示したのか?」
歴史学者「は?魔物?」
勇者「だってあいつら、魔物の仲間なんだろ」
歴史学者「少なくとも、私はそんな話は知らないぞ。
警察は国の機関で、悪人を捕まえるための組織なはずだが」
勇者「そうだったか?」
歴史学者「ああ。魔物の仲間だなんて、誰から聞いたんだ?」
勇者「誰からって……先生だよ」
歴史学者「…………」
勇者「……」
歴史学者「……まぁ、いい。
病院の服から着替えたら、先生を抱えてくれ。早いとこ逃げよう」
勇者「……」
歴史学者「なぁ……」
勇者「……俺の服は?」
歴史学者「君のカバンの中だ。急ごう」
勇者「ああ……」
ガサガサ
311: 2015/05/17(日) 01:50:49.45
勇者「……」
歴史学者「……」
医者「……うーん」
勇者「あ、先生起きました?」
医者「あれ……警察は?」
歴史学者「来る前に逃げ出せましたよ。ってか、どうして知ってるんです?」
医者「いや、うーん、待って……。
あ、夢だこれ」
勇者「夢?……夢の中でも警察に追われてるんすか?」
医者「そうみたい、怖かったよ。
それより、俺なんでこんな服着てるの?」
歴史学者「病院から抜け出してきたからですよ。
もう、さっさと着替えて下さい。
警察に見つかっちゃいますから」
医者「……外に来てるのか?」
歴史学者「いえ、まだ。
でも、ちょっとヤバいです」
医者「どうしよう。どこに逃げるべきかな」
勇者「先生が寝てる間に話してたんですけどね。
次はハマナス町に行ったら良いんじゃないかって、こいつが」
医者「ハマナス?」
歴史学者「クラショーも気になりますが、移動遊園地もいなくなってしまったようですし。
魔物の噂を追うなら、ハマナスがいいかと思って」
医者「うーん……。ハマナスにも魔物の噂があるの?」
勇者「魔物と人間が一緒に仕事をしているようです。
にわかには信じられませんが」
医者「そう……」
歴史学者「噂だけは前から知ってたんですけどね。
私もちょっと信じられなかったので、今までお話ししませんでした」
医者「うん……」
勇者「……なんか不満があんなら、言ってくださいよー。
別に怒ったりしませんから」
医者「あ……昨日は本当にごめんね」
勇者「全然大丈夫ですって。
それよりどうしたんですか?顔が暗いですよ」
医者「…………俺ね、ぼんやり思い出したんだよ。俺の妻と娘が氏んだこと……」
歴史学者「……」
医者「……うーん」
勇者「あ、先生起きました?」
医者「あれ……警察は?」
歴史学者「来る前に逃げ出せましたよ。ってか、どうして知ってるんです?」
医者「いや、うーん、待って……。
あ、夢だこれ」
勇者「夢?……夢の中でも警察に追われてるんすか?」
医者「そうみたい、怖かったよ。
それより、俺なんでこんな服着てるの?」
歴史学者「病院から抜け出してきたからですよ。
もう、さっさと着替えて下さい。
警察に見つかっちゃいますから」
医者「……外に来てるのか?」
歴史学者「いえ、まだ。
でも、ちょっとヤバいです」
医者「どうしよう。どこに逃げるべきかな」
勇者「先生が寝てる間に話してたんですけどね。
次はハマナス町に行ったら良いんじゃないかって、こいつが」
医者「ハマナス?」
歴史学者「クラショーも気になりますが、移動遊園地もいなくなってしまったようですし。
魔物の噂を追うなら、ハマナスがいいかと思って」
医者「うーん……。ハマナスにも魔物の噂があるの?」
勇者「魔物と人間が一緒に仕事をしているようです。
にわかには信じられませんが」
医者「そう……」
歴史学者「噂だけは前から知ってたんですけどね。
私もちょっと信じられなかったので、今までお話ししませんでした」
医者「うん……」
勇者「……なんか不満があんなら、言ってくださいよー。
別に怒ったりしませんから」
医者「あ……昨日は本当にごめんね」
勇者「全然大丈夫ですって。
それよりどうしたんですか?顔が暗いですよ」
医者「…………俺ね、ぼんやり思い出したんだよ。俺の妻と娘が氏んだこと……」
312: 2015/05/17(日) 01:51:51.55
勇者「……!」
歴史学者「……」
医者「俺はなんで、思い出そうともしなかったんだろうね。
こんな大事なこと……」
勇者「……旅をやめたいんですか?」
医者「分からない……。俺はどうしたらいいんだろう……」
歴史学者「……焚き付けるようですが、先生は復讐のために魔物を追っているんですよね。
続行してもいいのでは?」
医者「そうだよね……。続けるべきなんだろうね、きっと」
勇者「辛いなら無理しないで下さい。俺が代わりにカタキをとって来ますよ」
医者「……いや、俺がやらなきゃ。
多分、そうしなきゃいけないんじゃないかな。
あの二人は俺の全てだったから」
勇者「……」
歴史学者「……じゃ、準備しましょうか。先生は早く着替えて下さい」
医者「あ、うん」
歴史学者「君も、その棚の荷物とってくれ」
勇者「ああ……。ん、なんだこれ」
歴史学者「あっ!!待て!やっぱり自分で」
勇者「コガネムシパウダー……?コガネムシだと!?
テメェ、なんだよこれ!」
歴史学者「ああんもう。別にいいだろ。食べてみたかったんだもん」
勇者「昨日のメシに、これ入れやがったな!
なんでテメェ1人で食わねぇんだよ!」
歴史学者「だって、1人で食べんの怖かったんだもん。
いいじゃないか、金運アップするらしいぞ」
勇者「なんにもよかねぇよ!
なにが悲しくてコガネムシなんか……このクソヤロー」
歴史学者「まぁ、これは私が悪いな。すまん」
勇者「覚えてろよ、ボケナス女。必ず仕返ししてやっからな」
歴史学者「そう怒るなよ。意外と美味しかったじゃないか」
勇者「テメェのそういう態度が気に食わねぇんだ!」
医者「まぁまぁ、落ち着いて。俺も準備出来たよ」
歴史学者「じゃー、出発しましょうか。
ほら、すねてないで行くぞ」
勇者「いつかぜってーぶっ飛ばす……」
ギィ バタンッ
歴史学者「……」
医者「俺はなんで、思い出そうともしなかったんだろうね。
こんな大事なこと……」
勇者「……旅をやめたいんですか?」
医者「分からない……。俺はどうしたらいいんだろう……」
歴史学者「……焚き付けるようですが、先生は復讐のために魔物を追っているんですよね。
続行してもいいのでは?」
医者「そうだよね……。続けるべきなんだろうね、きっと」
勇者「辛いなら無理しないで下さい。俺が代わりにカタキをとって来ますよ」
医者「……いや、俺がやらなきゃ。
多分、そうしなきゃいけないんじゃないかな。
あの二人は俺の全てだったから」
勇者「……」
歴史学者「……じゃ、準備しましょうか。先生は早く着替えて下さい」
医者「あ、うん」
歴史学者「君も、その棚の荷物とってくれ」
勇者「ああ……。ん、なんだこれ」
歴史学者「あっ!!待て!やっぱり自分で」
勇者「コガネムシパウダー……?コガネムシだと!?
テメェ、なんだよこれ!」
歴史学者「ああんもう。別にいいだろ。食べてみたかったんだもん」
勇者「昨日のメシに、これ入れやがったな!
なんでテメェ1人で食わねぇんだよ!」
歴史学者「だって、1人で食べんの怖かったんだもん。
いいじゃないか、金運アップするらしいぞ」
勇者「なんにもよかねぇよ!
なにが悲しくてコガネムシなんか……このクソヤロー」
歴史学者「まぁ、これは私が悪いな。すまん」
勇者「覚えてろよ、ボケナス女。必ず仕返ししてやっからな」
歴史学者「そう怒るなよ。意外と美味しかったじゃないか」
勇者「テメェのそういう態度が気に食わねぇんだ!」
医者「まぁまぁ、落ち着いて。俺も準備出来たよ」
歴史学者「じゃー、出発しましょうか。
ほら、すねてないで行くぞ」
勇者「いつかぜってーぶっ飛ばす……」
ギィ バタンッ
313: 2015/05/17(日) 01:55:27.67
ーーー
男「ーー聞こえてない?おーい」
女「いくらその名で呼んだって、私は振り返らないよ」
男「でも、こうやって返事はしてくれるじゃない」
女「ふん……。私なんかは名無しの魔物で十分だろ」
男「君がそう言うならそれでいいよ。ただ、たまに俺に付き合ってくれればそれでいい」
女「今のは最後のお遊びだよ。これからは一切お断りだ。
二度とその名前で呼ぶんじゃない」
男「あら、つれないね。せっかく薬を持ってきたのに」
女「もったいつけて、さっさと渡さないお前が悪いんだろ。早くよこしな」
男「奪い取りに来てもいいんだけどね。前みたいに」
女「……」
男「……悪かった。そう暗い顔するなよ。
俺は……少しは頼って欲しいだけなんだ」
女「私を襲った犯人に弱音を吐けってかい」
男「……」
女「……ふん、そっちこそ辛気くさいツラはやめな。
私にはアンタへの恨みはない。あるのは酷い頭痛だけだよ」
男「……そんなに酷いのか?」
女「ああ、頭が割れそうだ。スポッと取り替えたいぐらいだよ」
男「……」グスッ
女「いちいち泣くな!お前が聞いてきたんだろ!?
いい加減その顔やめないとぶちのめすよ!」
男「はいはい、悪うございました。
……ま、それ飲んでしっかり休んでちょーだいよ」
女「フン、私は魔王様の手下なんだよ。休んでなんかいられないね」
男「でも、まっちゃんは休んでていいってさ。
むしろ休んでくれって」
女「……まーったく、魔王がそんなんでどうするんだか。
で、その手に持ってるやつはなんだい」
男「いやさ、ついに新しいお面が完成したのよ。
これ、すげーよくない?」
女「ダサい」
男「そこがいーんじゃない。こういうダサくてセンスの欠片もないデザイン、俺は好きだな」
女「私はイヤだよ。のしつけてお返ししといてくれ」
男「えー、いいのになぁこれ。
……じゃ、君はゆっくりしててね。俺が君の代わりにパパパッと片付けてくるから」
女「お前なんかに私の代わりは無理だよ……賭けてもいい……」
男「賭けるって、なにを?」
女「名前……お前を名前で……呼んでやる……」
コテン
314: 2015/05/17(日) 01:56:21.87
男「……あらまぁ、凄い睡眠作用だこと。それとも副作用か……」
女「グー」
男「……俺の名前なんかどうでもいいからさ、名前で呼ばせてくれよ。
それか……出来ることなら、俺より先に氏なないでくれって。
頼むから……」
女「グー……」
男「…………じゃ、行ってくるよ。仕事するフリしてくるね」ガチャ
バタン
女「……バーカ」
女「グー」
男「……俺の名前なんかどうでもいいからさ、名前で呼ばせてくれよ。
それか……出来ることなら、俺より先に氏なないでくれって。
頼むから……」
女「グー……」
男「…………じゃ、行ってくるよ。仕事するフリしてくるね」ガチャ
バタン
女「……バーカ」
315: 2015/05/17(日) 01:57:32.35
スタスタ
魔王「……」
男「おや、魔王様。ここへ来てもパフェはありませんよ」
魔王「……ダサくてセンスの欠片もなくて悪かったな」
男「あら、立ち聞きしてたの?やぁねぇ」
魔王「やぁねぇ、じゃねーよ。
なにが名前で呼ばせろだ……バーカ」
男「いいじゃない。俺、彼女のこと大好きなんだもの」
魔王「俺だって好きなんだよ。あとから割り込んできたくせに、図々しいな」
男「あとから割り込んだのはアナタ。
まぁでも、彼女のことを殺そうとしたのも俺だけどね」
魔王「……」
男「あら、優しくなったじゃないの。まさか、追い打ちかけなくなるなんて」
魔王「うっせーよ、バーカ。さっさと勇者連れてきやがれ」
男「いいともぉ」
魔王「じゃ、俺は寝顔の写真でも撮ってくっか」
男「まぁ、なんて小汚ない。焼き増ししてね」
魔王「いいから早く行けよ」
男「行ってきまーす」
魔王「はいはい」
316: 2015/05/17(日) 01:58:31.00
ーーー
キコキコ
医者「そーいえば、自転車買うの忘れてたね。次の街で探そうか」
歴史学者「やっぱりメタリックな赤がいいな。
燃えるレッド!って感じが好きなんで」
勇者「お前はコガネムシでも食ってろバーカ」
歴史学者「しつこいぞ。さっきからそれしか言ってないじゃないか」
勇者「うるせぇ、コガネムシヤロー」
医者「全く、会話が不毛過ぎるよ。もうそろそろ許してあげたら?」
勇者「……チッ、先生に感謝しろよな」
歴史学者「ありがとうございます。このご恩はそれなりに忘れません」
医者「すぐ忘れていいって。
あ、境界の看板だ」
勇者「ホントだ。ハマナスって書いてありましたね」
医者「そうだね。今回はすぐに宿が見つかるといいな。
お風呂に早く入りたいし」
歴史学者「先生はシチュー作ってる間に入ったじゃないですか」
医者「まぁ、そうだけど……昨日は色々あったから」
勇者「……」
歴史学者「……あ、誰かいますね。宿の場所聞いちゃいましょうよ」
医者「ああ、それがいいね。すいませーん」
「……!」
医者「ちょっと宿の場所をお聞きした」
「先生!先生ですか!?」
医者「へっ?」
「私のこと覚えてます!?私ですよ!」
医者「え、えっと……」
勇者「なんだこいつ」
317: 2015/05/17(日) 01:59:48.12
「あ、ごめんなさい。つい、嬉しくなっちゃって。
私のこと思い出せません?」
医者「ええ……申し訳ありませんが」
「敬語……そんなぁ……」
医者「えっと……」オロオロ
勇者「結局、誰なんだよお前は」
女医「……トクシュク出身の精神科医です。先生とは産婦人科医になるって約束してたんですけどね」
医者「えっ……!ってことは、まさかあの」
女医「思い出すの遅いですよ、もう」
医者「いや……凄くキレイになったね。全然分からなかったよ」
女医「やめてください、本気にしちゃいますよ?」
医者「いや、ホントだって。
……でも、懐かしいな。なんで精神科医になったの?」
女医「最初はちゃんと産婦人科医を目指してましたよ。
だけど、子供を産んだお母さんの、精神的なサポートをしたくなりまして。
まだまだトクシュクには帰れそうにないです」
医者「そうかー、進む道を自分で決めたんだね。応援するよ」
女医「ホントですか?私、先生との約束が胸のつかえだったんですよー。
本当に会えて良かったです」
医者「俺も会えて嬉し」
勇者「ずいぶんとお二人で楽しそうですね。俺達、先に宿に行ってましょうか」
医者「いやいや、そんなこと言わないで。今、紹介するから」
女医「ごめんなさい。悪気はなかったの」
勇者「フン……紹介なんていりませんよ。ちゃーんと分かってますから。
その人のことが好きになっちまったんでしょ」
医者「なっ……!なんでそんなこと言うんだ!」
勇者「なんすか急に……。怒鳴ることないでしょう」
医者「俺は誰かを簡単に好きになったりはしない……!
妻と娘がいるって言っただろ!
二人が氏んでたって、俺は……っ!」
女医「先生、落ち着いてください!きっと、彼にも悪気はないですよ」
医者「…………」
勇者「……ケッ、くすぐるんじゃなかったんですか?
先生はいっつもそうですね。もう、ウンザリですよ」
医者「……」
勇者「やっぱり一緒に旅するのはやめましょう。お互いのためです。さよなら」ガチャッ
シャーッ!
歴史学者「おいっ!……先生、どうします?」
医者「……」
女医「……ちょっと診療所で休みましょうか。そうしたら、仲直りしたくなりますよ」
医者「……」
歴史学者「じゃあ、とりあえず私が追いかけます。診療所に二人で行きますから」
医者「……」
歴史学者「それじゃあ、お願いします」
タタタッ
私のこと思い出せません?」
医者「ええ……申し訳ありませんが」
「敬語……そんなぁ……」
医者「えっと……」オロオロ
勇者「結局、誰なんだよお前は」
女医「……トクシュク出身の精神科医です。先生とは産婦人科医になるって約束してたんですけどね」
医者「えっ……!ってことは、まさかあの」
女医「思い出すの遅いですよ、もう」
医者「いや……凄くキレイになったね。全然分からなかったよ」
女医「やめてください、本気にしちゃいますよ?」
医者「いや、ホントだって。
……でも、懐かしいな。なんで精神科医になったの?」
女医「最初はちゃんと産婦人科医を目指してましたよ。
だけど、子供を産んだお母さんの、精神的なサポートをしたくなりまして。
まだまだトクシュクには帰れそうにないです」
医者「そうかー、進む道を自分で決めたんだね。応援するよ」
女医「ホントですか?私、先生との約束が胸のつかえだったんですよー。
本当に会えて良かったです」
医者「俺も会えて嬉し」
勇者「ずいぶんとお二人で楽しそうですね。俺達、先に宿に行ってましょうか」
医者「いやいや、そんなこと言わないで。今、紹介するから」
女医「ごめんなさい。悪気はなかったの」
勇者「フン……紹介なんていりませんよ。ちゃーんと分かってますから。
その人のことが好きになっちまったんでしょ」
医者「なっ……!なんでそんなこと言うんだ!」
勇者「なんすか急に……。怒鳴ることないでしょう」
医者「俺は誰かを簡単に好きになったりはしない……!
妻と娘がいるって言っただろ!
二人が氏んでたって、俺は……っ!」
女医「先生、落ち着いてください!きっと、彼にも悪気はないですよ」
医者「…………」
勇者「……ケッ、くすぐるんじゃなかったんですか?
先生はいっつもそうですね。もう、ウンザリですよ」
医者「……」
勇者「やっぱり一緒に旅するのはやめましょう。お互いのためです。さよなら」ガチャッ
シャーッ!
歴史学者「おいっ!……先生、どうします?」
医者「……」
女医「……ちょっと診療所で休みましょうか。そうしたら、仲直りしたくなりますよ」
医者「……」
歴史学者「じゃあ、とりあえず私が追いかけます。診療所に二人で行きますから」
医者「……」
歴史学者「それじゃあ、お願いします」
タタタッ
318: 2015/05/17(日) 02:01:18.58
勇者「……」
タタタッ
歴史学者「見つけたぞ。全く、なにをしているんだ」
勇者「……」
歴史学者「おーい、戻らないか?先生も診療所で待ってるぞ」
勇者「……」
歴史学者「なにをこの世の終わりみたいな顔してんだ。
私も一緒に謝ってあげるから、元気だせ」ポンッ
勇者「……別に、どうでもいーんだよ。あんな身勝手なやつ……」
歴史学者「本当か?そうは見えないぞ」
勇者「……」
歴史学者「いいから戻ろう。大丈夫だよ。
まだ怒ってるようなら、私がガツンと言ってやるから」
勇者「余計なことすんな!……もういいんだよ、全て……」
歴史学者「はぁ……。うっとうしいな、全く」
勇者「なら、どっか行けよ……」
歴史学者「そう簡単に追っ払われたりしないぞ。
私が辛いとき、私と一緒に居てくれた奴がいたからな。
私も同じことをしたくてね」
勇者「俺は辛くなんかねぇよ!先生だって辛くなんかねぇはずだ!」
歴史学者「感情を無視したって、どうにもならないさ。
もし無視できても、いつかツケを払わなくちゃいけなくなるもんだ」
勇者「じゃあ、その『いつか』に払うよ。ほっといてくれ」
歴史学者「イヤだ。君も諦めろ。
君が私にしたことだ」
勇者「チッ……。ふざけんなよ……」
歴史学者「ま、そんなに心配するな。
案外、仲直りなんて簡単なもんだろ?」
勇者「……」
タタタッ
歴史学者「見つけたぞ。全く、なにをしているんだ」
勇者「……」
歴史学者「おーい、戻らないか?先生も診療所で待ってるぞ」
勇者「……」
歴史学者「なにをこの世の終わりみたいな顔してんだ。
私も一緒に謝ってあげるから、元気だせ」ポンッ
勇者「……別に、どうでもいーんだよ。あんな身勝手なやつ……」
歴史学者「本当か?そうは見えないぞ」
勇者「……」
歴史学者「いいから戻ろう。大丈夫だよ。
まだ怒ってるようなら、私がガツンと言ってやるから」
勇者「余計なことすんな!……もういいんだよ、全て……」
歴史学者「はぁ……。うっとうしいな、全く」
勇者「なら、どっか行けよ……」
歴史学者「そう簡単に追っ払われたりしないぞ。
私が辛いとき、私と一緒に居てくれた奴がいたからな。
私も同じことをしたくてね」
勇者「俺は辛くなんかねぇよ!先生だって辛くなんかねぇはずだ!」
歴史学者「感情を無視したって、どうにもならないさ。
もし無視できても、いつかツケを払わなくちゃいけなくなるもんだ」
勇者「じゃあ、その『いつか』に払うよ。ほっといてくれ」
歴史学者「イヤだ。君も諦めろ。
君が私にしたことだ」
勇者「チッ……。ふざけんなよ……」
歴史学者「ま、そんなに心配するな。
案外、仲直りなんて簡単なもんだろ?」
勇者「……」
325: 2015/05/17(日) 13:33:54.49
スタスタ
勇者「……」
歴史学者「あ、すいません。
ここら辺に病院ってありませんか?
待ち合わせしてるんですよ」
男性「病院ですか?メンタルクリニックぐらいしか知りませんが」
歴史学者「多分そこです。道を教えて頂けませんか?」
男性「もしよろしければ、一緒に行きましょうか。
ちょうどヒマですから」
歴史学者「えっ、本当ですか。ぜひ、お願いします」
勇者「おい……」
歴史学者「いやぁ、助かります。
私、道聞いても覚えられないんですよ」
男性「俺もそうなので分かります。
病院には、誰かお知り合いの方がいらっしゃるのですか?」
歴史学者「えーっとですね。
私達の旅の仲間が、病院の医師と知り合いなんです。
なので、話し込んでるみたいで」
男性「……そうですか。旅人さんなんですね」
歴史学者「ええ、彼がそのリーダーなんですよ」
男性「へぇ、君が。どうして旅をしているんですか?」
勇者「別に……魔物追っかけてるだけだよ」
男性「魔物を……。なら、この街に来たのは正解ですね」
歴史学者「どうしてですか?」
男性「……ここは魔物に乗っ取られた街だからですよ」
326: 2015/05/17(日) 13:35:10.85
スタスタ
医者「あっ……!二人とも無事だった?」
歴史学者「ええ、先生こそ大丈夫ですか?」
医者「うん、なにかされたりはしてないよ。
どうやら説明はいらないみたいだね」
歴史学者「はい。噂の裏付けは、彼のおかげで出来ました。
ここまで案内して下さったんですよ」
医者「そうですか、本当にありがとうございます」
男性「いえ、では私はこれで……」
スタスタ
医者「これからどうする?ここに留まって、この街を調べるのもありだと思うけど」
勇者「えっ…………そうですね、調べましょう」
歴史学者「ちょっと危なくないですか?」
医者「そうだね。でも、このまま放っておく訳にはいかないでしょ?」
歴史学者「ほっとくもなにも、私達にはなにもできませんよ。
どうにかできるとしたら、彼だけじゃ」
勇者「俺は先生に従うつもりだぜ」
歴史学者「……君は本当にそれでいいのか?」
勇者「ああ。魔物に乗っ取られた街を、勇者様が放っておくわけないだろ」
歴史学者「そうかい……。なら、宿屋でも探しましょうか」
医者「一応、あの人に教えてもらった宿もあるけど、行ってみる?」
勇者「ええ、行きましょう。なにかあっても、俺が守りますから」
歴史学者「頼もしいな、君は。
そんなに必氏になることないと思うがな」
勇者「いちいちうるせぇんだよ。さ、先生、行きましょう」
医者「ああ、ちょっと気を引き締めて行こうか」
勇者「はい」
歴史学者「……」
327: 2015/05/17(日) 13:36:30.00
医者「この宿には魔物はいないみたいだね」
歴史学者「その事を売りにしているような看板もありましたからね」
勇者「裏方にいるかもしれねぇぞ」
医者「疑ってたらキリがない。ここにしよう」
ーーー
勇者「なんだこれ」
歴史学者「テレビだ。映像を映し出す電気製品だよ。知らないか?」
勇者「全然わかんねぇ」
歴史学者「資産家の娯楽用の製品だからな。
実は私も使い方は知らないんだ。
しかし、これがあるということは……」
医者「どうしたの?」
歴史学者「宿賃が気になるんですが」
医者「なんだ、心配いらないよ。俺に任せて」
歴史学者「ですが……」
勇者「そんなことより、魔物がいる街で寝泊まりできますかね。
今パパッとやっつけた方が良いんじゃないですか」
医者「町を一度調査してからじゃないと、行動を起こすわけにはいかないよ。
それに力で解決しようとしては駄目だ」
勇者「……」
歴史学者「今日は寝て、明日調査を開始する。それでいいじゃないか」
勇者「こんな町で眠れなんて、俺は無理だね」
医者「それなら俺が見張りをするよ。ところで、食事はどうする?」
歴史学者「私はなんでも構いませんよ。ルームサービスでも食堂でも」
勇者「……俺も、なにかしらは食いますよ」
医者「じゃあ、ルームサービスにしようか」
歴史学者「その事を売りにしているような看板もありましたからね」
勇者「裏方にいるかもしれねぇぞ」
医者「疑ってたらキリがない。ここにしよう」
ーーー
勇者「なんだこれ」
歴史学者「テレビだ。映像を映し出す電気製品だよ。知らないか?」
勇者「全然わかんねぇ」
歴史学者「資産家の娯楽用の製品だからな。
実は私も使い方は知らないんだ。
しかし、これがあるということは……」
医者「どうしたの?」
歴史学者「宿賃が気になるんですが」
医者「なんだ、心配いらないよ。俺に任せて」
歴史学者「ですが……」
勇者「そんなことより、魔物がいる街で寝泊まりできますかね。
今パパッとやっつけた方が良いんじゃないですか」
医者「町を一度調査してからじゃないと、行動を起こすわけにはいかないよ。
それに力で解決しようとしては駄目だ」
勇者「……」
歴史学者「今日は寝て、明日調査を開始する。それでいいじゃないか」
勇者「こんな町で眠れなんて、俺は無理だね」
医者「それなら俺が見張りをするよ。ところで、食事はどうする?」
歴史学者「私はなんでも構いませんよ。ルームサービスでも食堂でも」
勇者「……俺も、なにかしらは食いますよ」
医者「じゃあ、ルームサービスにしようか」
328: 2015/05/17(日) 13:37:44.15
ーーーーー
「こんなことはやめよう。きっと何か解決策があるはずだ」
「表面上待遇がよければ満足か。お前らだって裏でなに言われてっか分からないぞ」
「そうだとしても、力で解決しようとするのは間違ってる」
「じゃあ、我慢し続けろって言うのか!
具体的なことはなにも言わねぇで、適当に片付けようとしてんじゃねぇぞ!」
「……」
ーーーーー
329: 2015/05/17(日) 13:38:51.74
ジャー
勇者「……ん?」
歴史学者「起こしてしまったか。悪い」
勇者「……なにかあったのか?」
歴史学者「トイレに起きただけだ。それより、先生を知らないか?」
勇者「寝てたから……居ないのか?」
歴史学者「ああ、見張るために座ってただろう椅子も、ベッドも空だ」
勇者「トイレにでもこもってんだろ……」ゴロン
歴史学者「トイレは今私が入った」
勇者「ふわぁーあ……仕方ねーな。探しに行くぞ」
330: 2015/05/17(日) 13:39:53.79
スタスタ
医者「こんな夜中にごめんね」
女医「いえ、先生といられるならいつでも構いませんよ」
医者「はは……。なぁ、本当のことを聞かせてくれないか」
女医「本当のこと?」
医者「君も魔物に脅されているんだろう?」
女医「いいえ……、違います」
医者「……やっぱり俺じゃ頼りないか」
女医「それも違います。頼りないのは私ですよ。
私にはなにかを変える力はない。なーんにも……」
医者「なにを変えたいの?」
女医「そうですね……。
たくさんありますけど、一番は先生を変えたいです」
医者「俺を?」
女医「ええ……」
331: 2015/05/17(日) 13:42:18.57
ーーーーー
歴史学者「さーむーいー。もう寒いぞ。部屋に戻らないか?」
勇者「勝手に戻れよ。俺は先生を探す」
歴史学者「それを先生が望んでいなくても、か?」
勇者「…………」
歴史学者「全く、いちいち悩むのはやめたらどうだ。
君は、君のやりたいようにすればいいんだよ。
それが間違ってたら、私がとめる」
勇者「……すごい自信だな。なにが間違ってるのか、お前には分かんのか」
歴史学者「ああ。少なくともそう思ってなきゃ、生きてはいけないぞ。
みんなそんなもんだ」
勇者「…………おい」
歴史学者「どうした?」
勇者「あのベンチに座ってるやつ、確か……」
歴史学者「ああ、昼間に道案内してくれた人だな。
こんな真夜中にどうしたんだろう」
勇者「……へっ、どうして疲れた顔したやつは、公園に誘われんのかね。
おい!」
男性「……!」
勇者「なにしてんだよ。さみーだろ」
男性「……いや、別に。家の中に比べたら天国だよ」
勇者「まぁ、なんでもいい。
どうせオメーもなんか悩んでんだろ。
聞かせろよ」
歴史学者「態度がでかすぎるぞ。それじゃ話せるものも話せないだろう」
男性「いえ、俺なんかの話でよければ聞いてくださいよ。えへへ」
勇者「なんだ兄ちゃん、酒飲んでんのか。俺にも分けてくれよ」
男性「どうぞお好きなのをとって下さい。
やっすいチューハイしかないけどね」
歴史学者「おいおい。子供に酒はまずいでしょう。
君も飲もうとするんじゃない」
勇者「チッ、うぜーな。どうでもいいだろ……」
歴史学者「さて、そろそろアナタの話を聞きましょうか。
一体、なにがあったんです?」
男性「別に、今日に限ってなにかあった訳じゃありません。
でも、なにもないこともありませんよ。
いつものことです」
332: 2015/05/17(日) 13:43:22.49
勇者「だから、なにがあったんだよ」
男性「……妻がね、俺をけるんです。
息子も殴られて、わんわん泣きまして。
でも、二人とも寝付いたみたいなので、私だけ逃げ出してきたんです」
歴史学者「なんですか、それ。卑怯な人ですね」
男性「ええ……。ですが、全部飲んだら帰るつもりです。
また炊飯器が飛んでくるかもしれませんが、仕方ないでしょう」
歴史学者「なんでそんな環境で我慢しているんですか。
今すぐ子供を連れて、逃げ出して下さい」
男性「……でも、ウチは中途半端に不幸なんですよ。
お金も無いことが多いけど、結局実家が助けてくれますし。
妻の暴力も怪我が残るほどではありません。
子供が抱えてる病気も、もうちょっと酷かったら入院という、ビミョーなラインなんですよ。
俺達より不幸な人はいくらでもいる。
なのに、逃げ出すというのは大げさじゃないでしょうか」
歴史学者「そんなの……子供の将来を考えれば、逃げ出すべきでしょう。
取り返しのつかないことになるかもしれませんよ」
男性「分かってます。でも……」
男性「……妻がね、俺をけるんです。
息子も殴られて、わんわん泣きまして。
でも、二人とも寝付いたみたいなので、私だけ逃げ出してきたんです」
歴史学者「なんですか、それ。卑怯な人ですね」
男性「ええ……。ですが、全部飲んだら帰るつもりです。
また炊飯器が飛んでくるかもしれませんが、仕方ないでしょう」
歴史学者「なんでそんな環境で我慢しているんですか。
今すぐ子供を連れて、逃げ出して下さい」
男性「……でも、ウチは中途半端に不幸なんですよ。
お金も無いことが多いけど、結局実家が助けてくれますし。
妻の暴力も怪我が残るほどではありません。
子供が抱えてる病気も、もうちょっと酷かったら入院という、ビミョーなラインなんですよ。
俺達より不幸な人はいくらでもいる。
なのに、逃げ出すというのは大げさじゃないでしょうか」
歴史学者「そんなの……子供の将来を考えれば、逃げ出すべきでしょう。
取り返しのつかないことになるかもしれませんよ」
男性「分かってます。でも……」
333: 2015/05/17(日) 13:44:37.00
男性「……でも、私は怖いんです。彼女から離れたら生きていけないんじゃないかって。
息子を育てていく自信もないし……私も体が強い方じゃないから、とても怖いんです……」
歴史学者「いい加減にしてください。説得が通じる相手じゃないでしょう?
そういう輩は、世の中にいくらでもいるんですよ。
本当におかしな人って、なにをやっても効果はないんです」
男性「ですが、精神科の薬はちょっと効いたみたいなんですよ。
酷い目にあう回数も減ったし、ちょっとずつ改善してきたみたいなんです。
だから」
歴史学者「だから、許すんですか。
精神科なんて役に立つはずないじゃないですか。
おかしな薬を大量に出して、患者をもっとおかしくするのが関の山でしょう。
第一、お子さんがかわいそうじゃないですか。
母親がコロッと態度を変えたからって、それでいいんですか?」
男性「いいんですよ!息子はそれで喜んでます。
俺だけじゃ息子に母親の分の愛は注げない。
分かってるんですよ……」
歴史学者「……なら、なんでこんなところで酒なんか飲んでるんですか」
男性「……」ゴクゴク
勇者「……吐き出しちゃえよ。俺たちは誰に広めるわけでもねぇ。ただ聞いてやるよ」
男性「…………俺は許せないんだ……今更、母親面して子供に接するアイツが……!
なにが精神病だ!ただワガママ言ってダラダラして、気ままに暴力ふるってただけじゃねぇか!
その間ずっと耐えてきた俺に、今さら感謝の言葉?
なにを信じろって言うんだよ!!」
歴史学者「その通りです。許す必要はありません。
相手だって、どうせ反省なんかしてませんから」
男性「…………でも、本当に悪いのは魔物なんですよ。
私の仕事を魔物が奪ったから、こんなことになったんだ……魔物さえいなければ……!」
歴史学者「違いますよ。奥さんは生まれつきのクズなんです。
原因なんてないんですよ」
勇者「おい、お前はなんでそう決めつけんだよ。
相手だって、相手なりになんか考えてんだろ」
歴史学者「ははは、そんなわけないだろ。暴力をふるう奴なんて人間じゃないんだよ。
そういう奴は生きてる価値はない」
勇者「じゃあ、マリもか?」
歴史学者「……!」
勇者「生まれた瞬間から暴力的なやつなんていねぇだろ?
そいつはそいつなりの人生があったから、そうなってんだよ」
歴史学者「……お人好しだな君は。
なら、一番祖先を殴れってか?
今存在してるやつに、責任はないって言うのか」
女医「彼はそんなことは言っていませんよ。どんなことにも原因があるというだけです」
スタスタ
息子を育てていく自信もないし……私も体が強い方じゃないから、とても怖いんです……」
歴史学者「いい加減にしてください。説得が通じる相手じゃないでしょう?
そういう輩は、世の中にいくらでもいるんですよ。
本当におかしな人って、なにをやっても効果はないんです」
男性「ですが、精神科の薬はちょっと効いたみたいなんですよ。
酷い目にあう回数も減ったし、ちょっとずつ改善してきたみたいなんです。
だから」
歴史学者「だから、許すんですか。
精神科なんて役に立つはずないじゃないですか。
おかしな薬を大量に出して、患者をもっとおかしくするのが関の山でしょう。
第一、お子さんがかわいそうじゃないですか。
母親がコロッと態度を変えたからって、それでいいんですか?」
男性「いいんですよ!息子はそれで喜んでます。
俺だけじゃ息子に母親の分の愛は注げない。
分かってるんですよ……」
歴史学者「……なら、なんでこんなところで酒なんか飲んでるんですか」
男性「……」ゴクゴク
勇者「……吐き出しちゃえよ。俺たちは誰に広めるわけでもねぇ。ただ聞いてやるよ」
男性「…………俺は許せないんだ……今更、母親面して子供に接するアイツが……!
なにが精神病だ!ただワガママ言ってダラダラして、気ままに暴力ふるってただけじゃねぇか!
その間ずっと耐えてきた俺に、今さら感謝の言葉?
なにを信じろって言うんだよ!!」
歴史学者「その通りです。許す必要はありません。
相手だって、どうせ反省なんかしてませんから」
男性「…………でも、本当に悪いのは魔物なんですよ。
私の仕事を魔物が奪ったから、こんなことになったんだ……魔物さえいなければ……!」
歴史学者「違いますよ。奥さんは生まれつきのクズなんです。
原因なんてないんですよ」
勇者「おい、お前はなんでそう決めつけんだよ。
相手だって、相手なりになんか考えてんだろ」
歴史学者「ははは、そんなわけないだろ。暴力をふるう奴なんて人間じゃないんだよ。
そういう奴は生きてる価値はない」
勇者「じゃあ、マリもか?」
歴史学者「……!」
勇者「生まれた瞬間から暴力的なやつなんていねぇだろ?
そいつはそいつなりの人生があったから、そうなってんだよ」
歴史学者「……お人好しだな君は。
なら、一番祖先を殴れってか?
今存在してるやつに、責任はないって言うのか」
女医「彼はそんなことは言っていませんよ。どんなことにも原因があるというだけです」
スタスタ
334: 2015/05/17(日) 13:45:39.95
歴史学者「……やぁ、こんばんは。
先生も彼女と一緒だったとは」
医者「ちょっと話をしたくてね。君たちはどうしたの?」
勇者「このにーちゃんの話を聞いていただけですよ。
もともとは先生を探していたんですけどね」
男性「あの、俺は帰ります。ありがとうございました」
勇者「待てよ。……ちょっとだけ話を聞いてくれ」
男性「なんですか?」
勇者「アンタ、態度が改善してきた奥さんに、悪意を持っちゃうのが辛いんだろ?」
男性「……」
勇者「でもな、悪意は持って当然のもんだ。アンタはなにも悪くねぇ。
奥さんのことは恨んだままでいいんだ。
だけどそれを表には出しちゃなんねぇんだよ」
男性「……分かってますよ。だから、ただ毎日耐えてます」
勇者「それだけじゃ、ダメだ。
明日までになんでもいいから、奥さんに好きなもの買ってってやれよ。
それで『一緒にいてくれてありがとう。大好きだ』って伝えるんだ」
男性「どうして俺がそんなこと……」
勇者「一回でいいんだよ。一回だけなら出来そうだろ?
無理そうなら酒の勢いでもいいから、試してくれ。
きっと、なにかいいことがあるはずだから」
男性「…………考えてみるよ。じゃあ……」
スタスタ
歴史学者「なんであんなこと……あの人はもっと不幸になるぞ」
勇者「そうとも限らねぇよ。
相手には改善の意志があんだからな。
もしかしたら、上手くいくかもしれねぇだろ」
歴史学者「上手くいくわけないだろ!
いったとして、なんの価値があるんだ!
さっさと離婚するのが一番いいに決まってるじゃないか!」
女医「まぁまぁ、とりあえず落ち着いてくださいよ。
ゆっくりお話ししましょう」
先生も彼女と一緒だったとは」
医者「ちょっと話をしたくてね。君たちはどうしたの?」
勇者「このにーちゃんの話を聞いていただけですよ。
もともとは先生を探していたんですけどね」
男性「あの、俺は帰ります。ありがとうございました」
勇者「待てよ。……ちょっとだけ話を聞いてくれ」
男性「なんですか?」
勇者「アンタ、態度が改善してきた奥さんに、悪意を持っちゃうのが辛いんだろ?」
男性「……」
勇者「でもな、悪意は持って当然のもんだ。アンタはなにも悪くねぇ。
奥さんのことは恨んだままでいいんだ。
だけどそれを表には出しちゃなんねぇんだよ」
男性「……分かってますよ。だから、ただ毎日耐えてます」
勇者「それだけじゃ、ダメだ。
明日までになんでもいいから、奥さんに好きなもの買ってってやれよ。
それで『一緒にいてくれてありがとう。大好きだ』って伝えるんだ」
男性「どうして俺がそんなこと……」
勇者「一回でいいんだよ。一回だけなら出来そうだろ?
無理そうなら酒の勢いでもいいから、試してくれ。
きっと、なにかいいことがあるはずだから」
男性「…………考えてみるよ。じゃあ……」
スタスタ
歴史学者「なんであんなこと……あの人はもっと不幸になるぞ」
勇者「そうとも限らねぇよ。
相手には改善の意志があんだからな。
もしかしたら、上手くいくかもしれねぇだろ」
歴史学者「上手くいくわけないだろ!
いったとして、なんの価値があるんだ!
さっさと離婚するのが一番いいに決まってるじゃないか!」
女医「まぁまぁ、とりあえず落ち着いてくださいよ。
ゆっくりお話ししましょう」
335: 2015/05/17(日) 13:47:08.73
女医「あの人の奥さんは、私のクリニックに通ってる人なんですよ。
今日もあの人が代わりに薬を取りに来たし、ちゃんと治療は続けています」
歴史学者「それは本当に治療なんですかね。
患者を非人格化して扱いやすくし、金を吸いとろうとしてるんじゃないですか」
女医「……そういう医者も中にはいるでしょう。否定はできません。
ですが、精神科医というのは、普通の医者より倫理観に敏感に生きている者が多いんですよ。
ですから、アナタの考えるような、閉鎖的な治療はおこなってません」
歴史学者「フン、ならアナタ、私の母親は治せますか?
人を騙し、自分の利益しか考えないで、子供を道具のように扱い暴力をふるう。
しかもどこからか精神薄弱と書かれた手紙が来て『私、精神薄弱だってよ、ハハハ』なんて言う腐れに、なにか治療法が思い浮かびますか」
女医「……本人とお話ししなければ分かりません。
ですが、尊重しなければいけないのは、お母様にも過去があったということです」
歴史学者「分かってますよ。虐待された子供は、自分の子供にも暴力をふるう可能性が高い。
……だから、私は結婚なんてしないと決めたんだ。
母が失敗したことを、私まで繰り返したくないですからね。
これ以上の解決法はないでしょうよ!どうですか!」
女医「……」
歴史学者「どこの医者も同じなんですね。
通りいっぺん常識を言い放つだけ。
内科に行けば、バランスよく食って運動しろと言われるでしょう。
そんなの、なんの解決策にもならないんですよ。
出来ないから困ってるんですから」
女医「……では、なぜ出来ないか。
それはアナタが現実と向き合っていないからです」
歴史学者「はっ?」
女医「アナタ、母親を恨んでるんじゃないですか?訳もわからずに」
歴史学者「はは……訳も分からずにってのは、どういうことですか」
女医「アナタがやっているのは理由付けに過ぎません。
これだけのことをされたから、恨む権利がある。
そう初対面の私にまで主張しているのは、肯定して欲しいからですか?
それとも、止めて欲しいのですか?」
歴史学者「ッ……」
今日もあの人が代わりに薬を取りに来たし、ちゃんと治療は続けています」
歴史学者「それは本当に治療なんですかね。
患者を非人格化して扱いやすくし、金を吸いとろうとしてるんじゃないですか」
女医「……そういう医者も中にはいるでしょう。否定はできません。
ですが、精神科医というのは、普通の医者より倫理観に敏感に生きている者が多いんですよ。
ですから、アナタの考えるような、閉鎖的な治療はおこなってません」
歴史学者「フン、ならアナタ、私の母親は治せますか?
人を騙し、自分の利益しか考えないで、子供を道具のように扱い暴力をふるう。
しかもどこからか精神薄弱と書かれた手紙が来て『私、精神薄弱だってよ、ハハハ』なんて言う腐れに、なにか治療法が思い浮かびますか」
女医「……本人とお話ししなければ分かりません。
ですが、尊重しなければいけないのは、お母様にも過去があったということです」
歴史学者「分かってますよ。虐待された子供は、自分の子供にも暴力をふるう可能性が高い。
……だから、私は結婚なんてしないと決めたんだ。
母が失敗したことを、私まで繰り返したくないですからね。
これ以上の解決法はないでしょうよ!どうですか!」
女医「……」
歴史学者「どこの医者も同じなんですね。
通りいっぺん常識を言い放つだけ。
内科に行けば、バランスよく食って運動しろと言われるでしょう。
そんなの、なんの解決策にもならないんですよ。
出来ないから困ってるんですから」
女医「……では、なぜ出来ないか。
それはアナタが現実と向き合っていないからです」
歴史学者「はっ?」
女医「アナタ、母親を恨んでるんじゃないですか?訳もわからずに」
歴史学者「はは……訳も分からずにってのは、どういうことですか」
女医「アナタがやっているのは理由付けに過ぎません。
これだけのことをされたから、恨む権利がある。
そう初対面の私にまで主張しているのは、肯定して欲しいからですか?
それとも、止めて欲しいのですか?」
歴史学者「ッ……」
336: 2015/05/17(日) 13:48:19.11
女医「アナタは私の患者じゃないし、はっきり言いましょう。
ただアナタは、愛されたかっただけなんですよ。
母親に受け入れて貰えなかったから、憎しみに変わっただけです」
歴史学者「愛されたかった……?ハハハ…………アンタになにが分かる」
女医「分かりますよ。アナタみたいな人は、何人か知ってます。
みんな、普通の人から見たら呆れるぐらい、過去に執着してましたよ」
歴史学者「……ハハハ……ふふ。
アナタみたいな人から見たら、私なんてうっとうしい他人の一部でしょうよ。
もしかしたら、アナタという物語のスパイスにもならないような存在かもしれない。
けどねぇ……」
女医「……」
歴史学者「私にとっては、それしかないんですよ。
こき下ろすのも、すがり付く対象も全て過去なんです。
今も未来も、全て過去任せなんです。
きっと永遠に抜け出せないし……抜け出すのも怖いんですよ」
女医「……」
歴史学者「なにを言ってるのか、アナタには一生分からなくていい。
私は帰ります。さよなら」
スタスタ
勇者「……俺も帰ります。
先生は俺達のことは気にしないで下さい。じゃあ」
スタスタ
医者「……」
女医「……申し訳ないことをしてしまいましたね。ごめんなさい」
医者「……仕方ないよ。彼女の気持ちは俺にも分からないから。
多分、一生分かってあげられないんじゃないかな。
でも、君の気持ちは少しだけ分かるよ」
女医「えっ?」
医者「君もトクシュクに住んでたんだもんね。
過去になにかあったけど、きっと君は乗り越えたんじゃない?
だから、うじうじしてる人が、どうしても受け入れられないんでしょ?」
女医「……」
医者「まぁでも、今の仕事を続けるなら、理解しようとする気持ちも必要かもしれないね」
女医「……私にはなにも出来ませんよ。
私自身も周りも、なにも変えられませんから……」
医者「周りか……。診療所にいた魔物のことは、残念だけど受け入れられないよ」
女医「……私は、先生なら、この街の問題に気がつくんじゃないかと思います。
だから、結論はもう少し待ってください。
先生が待ってくれるなら、私ももう少し頑張ってみますから」
医者「……」
ただアナタは、愛されたかっただけなんですよ。
母親に受け入れて貰えなかったから、憎しみに変わっただけです」
歴史学者「愛されたかった……?ハハハ…………アンタになにが分かる」
女医「分かりますよ。アナタみたいな人は、何人か知ってます。
みんな、普通の人から見たら呆れるぐらい、過去に執着してましたよ」
歴史学者「……ハハハ……ふふ。
アナタみたいな人から見たら、私なんてうっとうしい他人の一部でしょうよ。
もしかしたら、アナタという物語のスパイスにもならないような存在かもしれない。
けどねぇ……」
女医「……」
歴史学者「私にとっては、それしかないんですよ。
こき下ろすのも、すがり付く対象も全て過去なんです。
今も未来も、全て過去任せなんです。
きっと永遠に抜け出せないし……抜け出すのも怖いんですよ」
女医「……」
歴史学者「なにを言ってるのか、アナタには一生分からなくていい。
私は帰ります。さよなら」
スタスタ
勇者「……俺も帰ります。
先生は俺達のことは気にしないで下さい。じゃあ」
スタスタ
医者「……」
女医「……申し訳ないことをしてしまいましたね。ごめんなさい」
医者「……仕方ないよ。彼女の気持ちは俺にも分からないから。
多分、一生分かってあげられないんじゃないかな。
でも、君の気持ちは少しだけ分かるよ」
女医「えっ?」
医者「君もトクシュクに住んでたんだもんね。
過去になにかあったけど、きっと君は乗り越えたんじゃない?
だから、うじうじしてる人が、どうしても受け入れられないんでしょ?」
女医「……」
医者「まぁでも、今の仕事を続けるなら、理解しようとする気持ちも必要かもしれないね」
女医「……私にはなにも出来ませんよ。
私自身も周りも、なにも変えられませんから……」
医者「周りか……。診療所にいた魔物のことは、残念だけど受け入れられないよ」
女医「……私は、先生なら、この街の問題に気がつくんじゃないかと思います。
だから、結論はもう少し待ってください。
先生が待ってくれるなら、私ももう少し頑張ってみますから」
医者「……」
337: 2015/05/17(日) 13:49:26.41
ーーー
ガチャ バタンッ!
歴史学者「……」
ガチャ
勇者「おい、目の前で閉めんなよ」バタンッ
歴史学者「……私は、ついてきてくれなんて頼んでないぞ。
君は先生を探してただけだろ。
一緒にいればいいじゃないか」
勇者「けど、先生がそれを望んでねぇから。
望んでねぇならやめることにしたんだ」
歴史学者「ああそうかい。なら、もう私は寝る。
今は誰とも話したくないんだ」
勇者「分かったよ。おやすみ」
歴史学者「おやすみ!」
バサッ
338: 2015/05/17(日) 13:51:30.19
ーーー
チュン チュン
勇者「……んー」
歴史学者「ぐがー」
勇者「ふわぁ……あれ、先生?」
医者「ああ、おはよう」
勇者「……なにしてるんですか?」
医者「ちょっとね。……写真を見てたんだよ」
勇者「写真……」
医者「……」
勇者「……」
医者「……そろそろ彼女も起こそうか。よいしょっと」スタッ
スタスタ
勇者「あ、ちょっと」
医者「おーい、朝だよ」ユサユサ
歴史学者「……うふふ、おはよーん。センセ」
医者「ひっ」
勇者「もう、先生はあっち行ってて下さい。
……おい!起きろ!!」バチンッ
歴史学者「うおっ!なにすんだ君は!」
勇者「さっさと起きねーのが悪ぃんだろ。早く顔洗え」
歴史学者「ちっ……。今度はカナブン混ぜてやろ……」
勇者「なんか言ったかぁ?」
歴史学者「別に?先生、おはようございます」
医者「ああ、おはよう。今日は良い天気だね」
歴史学者「ええ、キレーに晴れましたね。じゃ、顔洗ってきまーす」
勇者「その爆発頭もなんとかしろよ」
歴史学者「うっさいぞ。ほっといてくれ」
スタスタ ジャー
339: 2015/05/17(日) 13:52:27.95
医者「……なぁ」
勇者「あの」
医者「どうしたの?」
勇者「いや、先生こそどうしたんですか?」
医者「……」
勇者「先生?」
医者「…………まだ彼女に、家が燃えてたこと話してないなって……」
勇者「……!」
医者「どうしようか……」
勇者「……」
スタスタ
歴史学者「ちょっとタオル貸してくれ。すっかり忘れてたよ」
医者「あ、はい」
歴史学者「ありがとうございます。あー、目ぇイタッ」
スタスタ
医者「……」
勇者「……」
勇者「あの」
医者「どうしたの?」
勇者「いや、先生こそどうしたんですか?」
医者「……」
勇者「先生?」
医者「…………まだ彼女に、家が燃えてたこと話してないなって……」
勇者「……!」
医者「どうしようか……」
勇者「……」
スタスタ
歴史学者「ちょっとタオル貸してくれ。すっかり忘れてたよ」
医者「あ、はい」
歴史学者「ありがとうございます。あー、目ぇイタッ」
スタスタ
医者「……」
勇者「……」
340: 2015/05/17(日) 13:53:33.68
ーーー
スタスタ
医者「朝ごはん、美味しかったねー。コンポタージュが温かくってさ」
勇者「あのパンもいいですよね。中になんか入っててうまかったー」
歴史学者「私は君がパンばっかり食べるからヒヤヒヤしたぞ。
いくらバイキングだからって食べ過ぎだ」
勇者「お前だって朝から甘いものばっか食ってたろ。太るぞ」
歴史学者「うるさいっ。今日も自転車乗るからいいんだ」
医者「でもどこに行こうか。この街は建物が多いから」
歴史学者「どこでも良いんじゃないですか?
あっちに商店街もあるみたいですし」
医者「じゃあ、ちょっとあっちまで行こうか」
341: 2015/05/17(日) 13:55:44.13
ーーー
勇者「いねぇな」
歴史学者「そうだな。八百屋にいるかと思ったら、派手なオバチャンだったし」
医者「アハハ……。もしかして工場とかにいるのかな。
あっちに煙突が見えるけど」
勇者「……でも、本当に魔物なんて働いてるんでしょうか。
全然そんなふうには見えませんけど」
医者「昨日、俺は実際に会ったよ。
……診療所で、にこやかに挨拶までされた」
勇者「そうですか……」
歴史学者「……だとしたら、ここの人は魔物と共存してるってことなんじゃないですか?
それなら良いんじゃ」
医者「良くないよね。人を頃したり村滅ぼしたりするやつらと、一緒に生きていけるわけないじゃないか」
歴史学者「……」
医者「……ごめん、どうしても辛くて……。
いつも、写真の中の二人は笑ってるから……」
勇者「やっぱり……奥さんたちの写真を見てたんですね」
医者「……」
歴史学者「……分かりました。私も余計なことは言わないように気を付けます。
だから、とりあえず移動しましょうよ」
医者「うん……ごめんね」
歴史学者「気にしないで下さい。大丈夫ですよ」
勇者「でもあれ、なんの工場なんでしょうね」
医者「……なんだろう。こういう工場の正体って、地元の人も知らなかったりして」
342: 2015/05/17(日) 13:56:55.15
歴史学者「さすがに地元民は知ってるでしょう。
地元の人が働いてるんじゃないですか?」
医者「そんなこともないよ。俺の地元の工場は、都会から来た人が働いててさ。
誰もなんの工場か知らなかったんだ」
歴史学者「へー、そういうこともあるんですね」
医者「俺の地元だけかもしれないけどね。
そういえば、その工場の横に壊れた馬車があってさ。
いっつもホロがかかってて、中は見えないんだ。
だから誰も見たことがなくて、みんなのウワサの的だった。
でも一度だけ、俺は中を見たことがあるんだよ」
勇者「なんかいました?」
医者「いや。でもね、布団がしいてあった。
学校ではその馬車、『生にんじん』ってオッサンの住みかだってウワサだったんだよ。
だから怖くなって、走って逃げたなぁ」
歴史学者「面白いですね。生にんじんって名前なんですか?」
医者「そう。畑のにんじんを勝手にとって、しかも生のままかじってたから、生にんじん。
学校の池の魚を釣ろうとして、先生とケンカしたり、変な人だった。
いっつも細長い棒と青いバケツを持っててさ、棒の先を地面にペチペチ当てながら歩くんだ」
勇者「それって杖のことですか?」
医者「違う違う。もっと細い木の枝みたいなやつだよ。
……ホントに懐かしい……」
歴史学者「生にんじんに会いたくなりました?」
医者「アハハ、いやぁ……。
でも、どうだろ……会いたいかもね」
勇者「…………先生はやっぱり、旅が終わったら家に帰るんですか?」
医者「そうだね……。
でも、トクシュクの方じゃなくて、イナカの方に帰ろうかな。
実家は無くなっちゃってるから、どっか借りてさ」
勇者「……」
歴史学者「先生、勇者様がついていきたそうにしてますよ」
勇者「ば、バカッ」
医者「うん、それもいいかもね」
勇者「えっ」
歴史学者「私もついてって良いですか?」
医者「あ、うん。いいよ」
歴史学者「なんでちょっと迷うんですか。酷いな」
医者「いや……君は寝起きがね……」
スタスタ
勇者(……)
地元の人が働いてるんじゃないですか?」
医者「そんなこともないよ。俺の地元の工場は、都会から来た人が働いててさ。
誰もなんの工場か知らなかったんだ」
歴史学者「へー、そういうこともあるんですね」
医者「俺の地元だけかもしれないけどね。
そういえば、その工場の横に壊れた馬車があってさ。
いっつもホロがかかってて、中は見えないんだ。
だから誰も見たことがなくて、みんなのウワサの的だった。
でも一度だけ、俺は中を見たことがあるんだよ」
勇者「なんかいました?」
医者「いや。でもね、布団がしいてあった。
学校ではその馬車、『生にんじん』ってオッサンの住みかだってウワサだったんだよ。
だから怖くなって、走って逃げたなぁ」
歴史学者「面白いですね。生にんじんって名前なんですか?」
医者「そう。畑のにんじんを勝手にとって、しかも生のままかじってたから、生にんじん。
学校の池の魚を釣ろうとして、先生とケンカしたり、変な人だった。
いっつも細長い棒と青いバケツを持っててさ、棒の先を地面にペチペチ当てながら歩くんだ」
勇者「それって杖のことですか?」
医者「違う違う。もっと細い木の枝みたいなやつだよ。
……ホントに懐かしい……」
歴史学者「生にんじんに会いたくなりました?」
医者「アハハ、いやぁ……。
でも、どうだろ……会いたいかもね」
勇者「…………先生はやっぱり、旅が終わったら家に帰るんですか?」
医者「そうだね……。
でも、トクシュクの方じゃなくて、イナカの方に帰ろうかな。
実家は無くなっちゃってるから、どっか借りてさ」
勇者「……」
歴史学者「先生、勇者様がついていきたそうにしてますよ」
勇者「ば、バカッ」
医者「うん、それもいいかもね」
勇者「えっ」
歴史学者「私もついてって良いですか?」
医者「あ、うん。いいよ」
歴史学者「なんでちょっと迷うんですか。酷いな」
医者「いや……君は寝起きがね……」
スタスタ
勇者(……)
343: 2015/05/17(日) 13:59:04.88
ここで一旦切ります。
読んでくださってる方、ありがとうございます!
レスいつも楽しみにしてます!
読んでくださってる方、ありがとうございます!
レスいつも楽しみにしてます!
347: 2015/05/17(日) 19:16:00.91
ーーー
作業員「魔物なんて、ウチの工場には存在しやしません。
マ、そういうウワサはありますがね」
医者「では、そのウワサはどうして広まったんでしょうね。
アナタはどう思います?」
作業員「さぁ……。そう言えば、裏通りの方に精神科の病院があるでしょう。
あそこの先生は患者よりの先生ですからねぇ。
魔物も探せば、一匹ぐらいは居るかもしれませんよ」
医者「あの病院には行きました。
だから、聞き込みをしているんですよ」
作業員「そうですか。なら、アナタ方も分かってなさるでしょ」
勇者「魔物が働いてるってことか?」
作業員「いやぁ、働いているだなんて……。
我々は社会奉仕をしているんです」
歴史学者「社会奉仕?」
作業員「ええ。魔物なんて、放っといたらなにをしでかすか分からないでしょう?
そんな魔物たちを、我々は使ってやってんです。
これを社会奉仕と言わなかったらなんですか」
歴史学者「……それは対等な賃金で雇っているのですか?」
作業員「ン……?ハッ、そんなこと気にしなさるなんて。面白い方だ」
勇者「質問に答えろよ」
作業員「ン……マ、対等ではないですねぇ。
そんなことしたら、デモが起きますよ」
歴史学者「やっぱりか……。魔物から不満の声はあがらないのか?
きっと、同じ働きはしているんだろう?」
作業員「ン、いいでしょう。
あなたの望む通り、魔物の権利を人間サマと同じように保護したとします。
雇い主は同じ条件なら、魔物でなく人間を雇いますよねぇ。
そうすると、魔物のみなさんも困るんじゃないですか?」
歴史学者「……」
作業員「マ、これでもバランスがとれてるってことですよ。
じゃ、マ、お代を頂きましょう」
医者「構いませんが……。
私達はこの事を公表するかもしれませんよ。
アナタはそれでも良いんですか?」
作業員「ハッ。アナタ方この街の魔物のこと、調べてなさるんでしょ。
なら、ここからは生きて帰れない。
だから、私も困りゃしませんよ」
医者「……」
作業員「じゃ、また、生きてたらお目にかかりましょうか。それでは」
スタスタ
348: 2015/05/17(日) 19:17:12.27
勇者「……」
医者「……」
歴史学者「……ムカつく」
医者「えっ?」
歴史学者「だって、ムカつきません?あのしゃべり方!」
勇者「お前はどこを気にしてんだよ」
歴史学者「ン、とかマ、とか!それにあの顔!あー、ムカつく」
医者「それより、内容が気になるね。生きて帰れないって言ってたけど……」
歴史学者「どーせデタラメですよ。あんなうさんくさい奴、ホントのこと言うはずありません!」
勇者「マ、本当でも俺がいるから大丈夫ですよ」
歴史学者「やめろ、真似するんじゃない!」
医者「まぁまぁ……。とりあえず宿に帰ろうか。
魔物がいることは分かったし」
勇者「そうっすね。でも解決法、なんかありますかねぇ……」
医者「それも宿で考えようよ。じゃあ、後ろに乗って」
歴史学者「ン、ありがとうございます」
勇者「気に入ってんじゃねぇよ」
歴史学者「気に入ってなんかないぞ!うームカつく」
キコキコ
医者「……」
歴史学者「……ムカつく」
医者「えっ?」
歴史学者「だって、ムカつきません?あのしゃべり方!」
勇者「お前はどこを気にしてんだよ」
歴史学者「ン、とかマ、とか!それにあの顔!あー、ムカつく」
医者「それより、内容が気になるね。生きて帰れないって言ってたけど……」
歴史学者「どーせデタラメですよ。あんなうさんくさい奴、ホントのこと言うはずありません!」
勇者「マ、本当でも俺がいるから大丈夫ですよ」
歴史学者「やめろ、真似するんじゃない!」
医者「まぁまぁ……。とりあえず宿に帰ろうか。
魔物がいることは分かったし」
勇者「そうっすね。でも解決法、なんかありますかねぇ……」
医者「それも宿で考えようよ。じゃあ、後ろに乗って」
歴史学者「ン、ありがとうございます」
勇者「気に入ってんじゃねぇよ」
歴史学者「気に入ってなんかないぞ!うームカつく」
キコキコ
349: 2015/05/17(日) 19:18:23.01
ーーーーー
「……分かった、もう反対しないよ。俺たちも参加する」
「決断するのがおせぇんだよ。土壇場で言いやがって。
裏切るつもりじゃねぇだろうな」
「まぁ、落ち着けよ。クラウン商会にはちゃんと依頼してあるんだ。
こいつらが裏切ったところで、なにも変わらないさ」
「……」
「……今夜、なんだよな?」
「ああ、今夜だよ。全て終わらせよう」
「キリークの導きのままに」
「「「導きのままに!」」」
ーーーーー
350: 2015/05/17(日) 19:19:31.67
医者「うーん……。俺たちじゃ、警察に訴えることも出来ないしね。
どうしようか」
歴史学者「やっぱりほっといた方が良いんじゃないですか?
私たちじゃ、なにも出来ませんよ」
勇者「いや、だから俺が証拠をとってくるって。
それをどこかに送りつければいいんだろ?」
歴史学者「出来たとして、告発したとして、魔物はどうする?
関係者も全員処刑されるかもしれないぞ」
勇者「うーん……」
カサッ
勇者「……ん、ちょっとトイレ行ってきます」カサッ
医者「行ってらっしゃい。
……とりあえず晩ごはんはどうしようか。
外に食べに行ってもいいけど」
歴史学者「私はステーキが食べたいです。君はどうする?」
勇者『あ、俺は一人で食いに行ってくるよ』
歴史学者「えっ?なんで」
勇者『たまには一人でいたいときもあんだろ?
今日はそういう気分なんだよ』
歴史学者「今、トイレに一人でいるじゃないか」
勇者『ふざけたこと言うなよ。先生、そういう訳ですから』
医者「うん……。君がそう言うなら仕方ないね。
でも、彼女は連れてってあげたら?」
歴史学者「いやー、私は三人で一緒にいたいなっ」
勇者『うっ、さぶいぼ。いいから黙ってろよボケ』
ジャー ガチャ
歴史学者「……なにしに行くつもりだ」
勇者「なんでもいいだろ。俺は心配はされたくねぇ」
医者「確かに……俺に君を心配する資格はないからね」
勇者「ええ。じゃあ、行ってきます」
医者「行ってらっしゃい……」
ガチャ バタンッ
医者「……」
歴史学者「……」
医者「……」
歴史学者「……はぁ、ホントに行かせていいんですか?
なんか暗い顔してましたよ」
医者「……俺に彼は止められないよ」スクッ
歴史学者「じゃあ、どこに行くんです?」
医者「俺は、俺の行くべき場所があるから……。じゃあね」
バタンッ
歴史学者「……あーあ、どうすっかなぁ」
どうしようか」
歴史学者「やっぱりほっといた方が良いんじゃないですか?
私たちじゃ、なにも出来ませんよ」
勇者「いや、だから俺が証拠をとってくるって。
それをどこかに送りつければいいんだろ?」
歴史学者「出来たとして、告発したとして、魔物はどうする?
関係者も全員処刑されるかもしれないぞ」
勇者「うーん……」
カサッ
勇者「……ん、ちょっとトイレ行ってきます」カサッ
医者「行ってらっしゃい。
……とりあえず晩ごはんはどうしようか。
外に食べに行ってもいいけど」
歴史学者「私はステーキが食べたいです。君はどうする?」
勇者『あ、俺は一人で食いに行ってくるよ』
歴史学者「えっ?なんで」
勇者『たまには一人でいたいときもあんだろ?
今日はそういう気分なんだよ』
歴史学者「今、トイレに一人でいるじゃないか」
勇者『ふざけたこと言うなよ。先生、そういう訳ですから』
医者「うん……。君がそう言うなら仕方ないね。
でも、彼女は連れてってあげたら?」
歴史学者「いやー、私は三人で一緒にいたいなっ」
勇者『うっ、さぶいぼ。いいから黙ってろよボケ』
ジャー ガチャ
歴史学者「……なにしに行くつもりだ」
勇者「なんでもいいだろ。俺は心配はされたくねぇ」
医者「確かに……俺に君を心配する資格はないからね」
勇者「ええ。じゃあ、行ってきます」
医者「行ってらっしゃい……」
ガチャ バタンッ
医者「……」
歴史学者「……」
医者「……」
歴史学者「……はぁ、ホントに行かせていいんですか?
なんか暗い顔してましたよ」
医者「……俺に彼は止められないよ」スクッ
歴史学者「じゃあ、どこに行くんです?」
医者「俺は、俺の行くべき場所があるから……。じゃあね」
バタンッ
歴史学者「……あーあ、どうすっかなぁ」
351: 2015/05/17(日) 19:21:35.92
スタスタ
勇者「……」
ーーー
『先生、勇者様がついていきたそうにしてますよ』
『うん、それもいいかもね』
ーーー
勇者「……」
勇者「……俺も、先生と一緒にいたいですよー……」
勇者「……」
勇者「……」カサッ
ーーー
《女を連れて宿を出ろ》
ーーー
勇者「……」カサッ
勇者「……どうすっかな。なんかと戦わなくちゃいけねぇのかな」
勇者「……殺さなきゃなんねぇのかな」
勇者「……」
スタスタ
勇者「……ん?あれ……」
男『……』モグモグ
勇者「あ……!アイツは魔王の!」
男『……』モグモグ
勇者「なんで店屋の中にいんだ……アイツがこの手紙の犯人だな……!」
ガチャ! ズカズカ
男「オッサン、刺身こんにゃく追加ねー」
勇者「おい!テメェ!」
352: 2015/05/17(日) 19:22:41.16
男「んー?」
勇者「なんで魔王の手下がこんなとこにいやがんだ……なにしてやがる!」
男「こんにゃく食ってる。オッサン、ホットミルクも追加ね」
店長「ホットミルクだと?」
勇者「なに注文してやがんだよ!」
男「もちろん、君の分よ。カルシウムが足りなそうだから」
勇者「大きなお世話だ!」
男「分ーかったよ。分かったから大きな声だすなよ。
他のお客様に迷惑じゃない」
勇者「ふざけんなよ……お前の存在の方がよっぽど」
男「おっと、それ以上はダーメ。
君は勇者なんでしょ?言葉選びには気をつけてね」
勇者「うるせぇ!こんな手紙置いていきやがって……。どういうつもりだ!」
男「んー?そんなの俺のじゃないよ。俺の字ってもっとプリティーだもん」
勇者「はぁ?」
男「まぁま、坊ちゃん座りなよ。今日は頼みたいことがあって来たのよ」
勇者「……頼みたいこと?」
勇者「なんで魔王の手下がこんなとこにいやがんだ……なにしてやがる!」
男「こんにゃく食ってる。オッサン、ホットミルクも追加ね」
店長「ホットミルクだと?」
勇者「なに注文してやがんだよ!」
男「もちろん、君の分よ。カルシウムが足りなそうだから」
勇者「大きなお世話だ!」
男「分ーかったよ。分かったから大きな声だすなよ。
他のお客様に迷惑じゃない」
勇者「ふざけんなよ……お前の存在の方がよっぽど」
男「おっと、それ以上はダーメ。
君は勇者なんでしょ?言葉選びには気をつけてね」
勇者「うるせぇ!こんな手紙置いていきやがって……。どういうつもりだ!」
男「んー?そんなの俺のじゃないよ。俺の字ってもっとプリティーだもん」
勇者「はぁ?」
男「まぁま、坊ちゃん座りなよ。今日は頼みたいことがあって来たのよ」
勇者「……頼みたいこと?」
353: 2015/05/17(日) 19:24:07.17
勇者「……なんだよ、頼みたいことって」
男「まっちゃんのとこに来てくんない?ちょっとでいいからさ」
勇者「誰だよ、まっちゃんって」
男「もちろん、魔王サマ」
勇者「ふざけんな、お断りだ」
男「ちぇっ、器のちっせー勇者だな。なんでそうケチなんだよ」
勇者「お前、本気で言ってんのか?俺の肩えぐったのお前だろ」
男「もう治ってるでしょ。ちゃーんと知ってんのよ」
勇者「治ってりゃ協力すると思ってんのかよ……。そもそも、お前ら俺の村滅ぼしたの忘れたのか?」
男「だーから、知らないよそんなん。俺達、そんなつまんねぇことはしません」
勇者「じゃ、魔王サマのつまることってのは、なんなんだ?」
男「壁に落書きしたり、アリの巣水攻めにしたりとかだな」
勇者「ざけんな。そんなの魔王じゃねぇよ」
男「ウチの魔王サマは変わってんのよ。
多分、頭ん中はパフェとマンガしかないだろーし」
勇者「はぁ?……お前、なんでそんな奴にしたがってんだよ」
男「俺の女が魔王の手下だからだよ」
勇者「……あのクソ女か」
男「なめた口きくんじゃありません。ぶっ頃すぞ」
勇者「ケッ、あんな物騒なやつ、どこがいいんだか。
まぁ、アンタにはお似合いだろうけどな」
男「お似合いね……。嬉しいのか悲しいのか分からんよ」
勇者「は?」
男「だって俺、あの人と結ばれることないんだもの」
勇者「……」
スタスタ
店員「お待たせしました。刺身こんにゃくとホットミルクです」
男「あら、ホントに?おっちゃん、やるぅー」
勇者「俺はいらねぇぞ」
男「いいから飲めよ。こんにゃくも食えば?俺も食うし」
勇者「なんでお前なんかとメシ食わなきゃなんねぇんだよ」
男「いーじゃんかさぁ。ここでメシ食えるのも、今日で最後なんだぞ」
勇者「は?」
男「だって今日、この街滅びるし」
勇者「はぁ!?なにするつもりだよ!」ガタッ
男「すぐ立つのはやめろよ。TPOをわきまえろ」
勇者「メシ食ってんじゃねぇ!」ガシッ
グイッ
男「まっちゃんのとこに来てくんない?ちょっとでいいからさ」
勇者「誰だよ、まっちゃんって」
男「もちろん、魔王サマ」
勇者「ふざけんな、お断りだ」
男「ちぇっ、器のちっせー勇者だな。なんでそうケチなんだよ」
勇者「お前、本気で言ってんのか?俺の肩えぐったのお前だろ」
男「もう治ってるでしょ。ちゃーんと知ってんのよ」
勇者「治ってりゃ協力すると思ってんのかよ……。そもそも、お前ら俺の村滅ぼしたの忘れたのか?」
男「だーから、知らないよそんなん。俺達、そんなつまんねぇことはしません」
勇者「じゃ、魔王サマのつまることってのは、なんなんだ?」
男「壁に落書きしたり、アリの巣水攻めにしたりとかだな」
勇者「ざけんな。そんなの魔王じゃねぇよ」
男「ウチの魔王サマは変わってんのよ。
多分、頭ん中はパフェとマンガしかないだろーし」
勇者「はぁ?……お前、なんでそんな奴にしたがってんだよ」
男「俺の女が魔王の手下だからだよ」
勇者「……あのクソ女か」
男「なめた口きくんじゃありません。ぶっ頃すぞ」
勇者「ケッ、あんな物騒なやつ、どこがいいんだか。
まぁ、アンタにはお似合いだろうけどな」
男「お似合いね……。嬉しいのか悲しいのか分からんよ」
勇者「は?」
男「だって俺、あの人と結ばれることないんだもの」
勇者「……」
スタスタ
店員「お待たせしました。刺身こんにゃくとホットミルクです」
男「あら、ホントに?おっちゃん、やるぅー」
勇者「俺はいらねぇぞ」
男「いいから飲めよ。こんにゃくも食えば?俺も食うし」
勇者「なんでお前なんかとメシ食わなきゃなんねぇんだよ」
男「いーじゃんかさぁ。ここでメシ食えるのも、今日で最後なんだぞ」
勇者「は?」
男「だって今日、この街滅びるし」
勇者「はぁ!?なにするつもりだよ!」ガタッ
男「すぐ立つのはやめろよ。TPOをわきまえろ」
勇者「メシ食ってんじゃねぇ!」ガシッ
グイッ
354: 2015/05/17(日) 19:25:06.89
男「……あのね、手ぇ離さないと僕ちゃん怒るよ」
勇者「答えろ!なにをするつもりだ……!」
男「やぁねぇ、俺達になんか出来るわけないじゃない。
勝手に滅んじゃうのよ」
勇者「そんなわけねーだろ!」
男「全く……いいから離せよ」スッ
バキッ
勇者「あぐっ」
男「俺なんかを目の敵にしてるより、大事な先生を追っかけたら?」
勇者「先生が……どこかに行ったのか……!?」
男「さっき見かけたよ。こんなときに、全くのんきな」
スゥッ……
男「……!」
勇者「で、テメェはここでなにしてんだ?」
男「へぇ……幻影なんて使えるようになったの」
勇者「テメェんとこのクソ女が使えんだからな。
俺も使えるに決まってんだろ」
男「はぁ……背後に立たれるとは、俺も落ちたもんだな」
勇者「あのへぼパンチに何を期待してんだよ。
あんなの痛くもかゆくも」
ドカンッ!!
勇者「なんだ!?」
男「一つ忠告しとくけどな。現実離れした力は、どんどん現実離れしていくぞ。
使う前によく考えたら?」
勇者「は?」
フッ
勇者「あ……!?どこ行きやがった!?」キョロキョロ
勇者(目の前にいたはずだろ……?)
ドカンッ!!
勇者「また……!なんだよこれ!?なんの音なんだ」
ガチャッ ズカズカ
勇者「……なんだお前ら!」
魔物1「残念ながら、あなた方には一緒に氏んで頂きます」スッ
勇者「それはクラウン商会の……!」
ボッ! ゴォオオ!
客「うわっ!燃えた!」
勇者「俺が凍らせる!全員逃げろ!」パリッ
魔物1「……!」
パリリリッ!
勇者「答えろ!なにをするつもりだ……!」
男「やぁねぇ、俺達になんか出来るわけないじゃない。
勝手に滅んじゃうのよ」
勇者「そんなわけねーだろ!」
男「全く……いいから離せよ」スッ
バキッ
勇者「あぐっ」
男「俺なんかを目の敵にしてるより、大事な先生を追っかけたら?」
勇者「先生が……どこかに行ったのか……!?」
男「さっき見かけたよ。こんなときに、全くのんきな」
スゥッ……
男「……!」
勇者「で、テメェはここでなにしてんだ?」
男「へぇ……幻影なんて使えるようになったの」
勇者「テメェんとこのクソ女が使えんだからな。
俺も使えるに決まってんだろ」
男「はぁ……背後に立たれるとは、俺も落ちたもんだな」
勇者「あのへぼパンチに何を期待してんだよ。
あんなの痛くもかゆくも」
ドカンッ!!
勇者「なんだ!?」
男「一つ忠告しとくけどな。現実離れした力は、どんどん現実離れしていくぞ。
使う前によく考えたら?」
勇者「は?」
フッ
勇者「あ……!?どこ行きやがった!?」キョロキョロ
勇者(目の前にいたはずだろ……?)
ドカンッ!!
勇者「また……!なんだよこれ!?なんの音なんだ」
ガチャッ ズカズカ
勇者「……なんだお前ら!」
魔物1「残念ながら、あなた方には一緒に氏んで頂きます」スッ
勇者「それはクラウン商会の……!」
ボッ! ゴォオオ!
客「うわっ!燃えた!」
勇者「俺が凍らせる!全員逃げろ!」パリッ
魔物1「……!」
パリリリッ!
355: 2015/05/17(日) 19:26:22.41
歴史学者「おーい、二人ともどこにいるんだー!ヤバイぞー!」
男「あら、お嬢さん。こんな夜に出歩いてちゃ危険よ」
歴史学者「きゃー、変態!」
男「ひどい。今のはさすがに傷ついた」
歴史学者「誰なんですか、こんなときに」
男「勇者様の知り合いです。二人とも大丈夫ですよ。
もう少ししたら勇者様が来ますから、一緒に病院に行かれては?」
歴史学者「……なんで病院なんですか?」
男「さっき病院でお仲間と会ったので。それより、お頼みしたいことがあるんですよっ」
歴史学者「なんですか?うさんくさいな」
男「アハハ、あなたストレートですね。
そんなアナタにピッタリの、この古代文字。訳せます?」ピラッ
歴史学者「古代文字?これは『卵の黄身』と『虹』じゃ……いや、今はそれどころじゃ」
勇者「おーい!大丈夫か!?」
歴史学者「お、無事だったのか」
勇者「んだよ、それ!なにヘーキな顔してやがんだ!」
歴史学者「いや、もっと慌ててたんだが……あれ?」
勇者「なんだよ」
歴史学者「うーん、今までここに人がいたんだよ。
その人が、君と一緒に病院へ行けって。
先生が病院にいるらしい」
勇者「病院?気はすすまねぇが、行くしかねーか……その紙はなんだよ」
歴史学者「古代文字が書いてあるんだが、なんなのかは私も」
ボッ! ゴォオオオ!
歴史学者「あ……」
男「あら、お嬢さん。こんな夜に出歩いてちゃ危険よ」
歴史学者「きゃー、変態!」
男「ひどい。今のはさすがに傷ついた」
歴史学者「誰なんですか、こんなときに」
男「勇者様の知り合いです。二人とも大丈夫ですよ。
もう少ししたら勇者様が来ますから、一緒に病院に行かれては?」
歴史学者「……なんで病院なんですか?」
男「さっき病院でお仲間と会ったので。それより、お頼みしたいことがあるんですよっ」
歴史学者「なんですか?うさんくさいな」
男「アハハ、あなたストレートですね。
そんなアナタにピッタリの、この古代文字。訳せます?」ピラッ
歴史学者「古代文字?これは『卵の黄身』と『虹』じゃ……いや、今はそれどころじゃ」
勇者「おーい!大丈夫か!?」
歴史学者「お、無事だったのか」
勇者「んだよ、それ!なにヘーキな顔してやがんだ!」
歴史学者「いや、もっと慌ててたんだが……あれ?」
勇者「なんだよ」
歴史学者「うーん、今までここに人がいたんだよ。
その人が、君と一緒に病院へ行けって。
先生が病院にいるらしい」
勇者「病院?気はすすまねぇが、行くしかねーか……その紙はなんだよ」
歴史学者「古代文字が書いてあるんだが、なんなのかは私も」
ボッ! ゴォオオオ!
歴史学者「あ……」
356: 2015/05/17(日) 19:27:31.07
勇者「……おい、どうしたんだよ」
歴史学者「……」ボー
勇者「しっかりしろ」ブンブン
歴史学者「……うあ、うあ。やめろ、揺らすな」
勇者「ぼんやりしてたらヤベーだろ。早く先生のところへ行くぞ」
歴史学者「ああ……。どうやって病院まで行く?
瞬間移動とか透明になったりとか、なんかできないのか」
勇者「透明にはなれるけどやると」
魔物2「そこをどいて下さい。どかないとあなた方も燃やしますよ」
歴史学者「……!」
勇者「またお前らか。よるんじゃねぇ!」ドガッ
魔物2「うぐっ」バタッ
歴史学者「ほら、モタモタしてるとヤバイぞ。早く透明になれ!」
勇者「でも、やると目が」
魔物3「テメェ、よくも!」
魔物4「この野郎!」
歴史学者「おいっ、早く!」
勇者「……くそっ!」スッ
パッ
魔物達「……!?」
歴史学者「すごいな、私まで透明になったぞ」
勇者「いいから、自転車のところまで逃げるぞ」
コソコソ
歴史学者「いやー、いいなぁスケルトン。男だったら女湯入るのに」
勇者「おい……大丈夫か?」
歴史学者「……全然大丈夫だぞ。なにを気にしてる?」
勇者「いや……。それより、おかしいんだよ。目が見えなくなるはずだったのに……」
歴史学者「目が?なんともないが」
勇者「……」
コソコソ
歴史学者「……」ボー
勇者「しっかりしろ」ブンブン
歴史学者「……うあ、うあ。やめろ、揺らすな」
勇者「ぼんやりしてたらヤベーだろ。早く先生のところへ行くぞ」
歴史学者「ああ……。どうやって病院まで行く?
瞬間移動とか透明になったりとか、なんかできないのか」
勇者「透明にはなれるけどやると」
魔物2「そこをどいて下さい。どかないとあなた方も燃やしますよ」
歴史学者「……!」
勇者「またお前らか。よるんじゃねぇ!」ドガッ
魔物2「うぐっ」バタッ
歴史学者「ほら、モタモタしてるとヤバイぞ。早く透明になれ!」
勇者「でも、やると目が」
魔物3「テメェ、よくも!」
魔物4「この野郎!」
歴史学者「おいっ、早く!」
勇者「……くそっ!」スッ
パッ
魔物達「……!?」
歴史学者「すごいな、私まで透明になったぞ」
勇者「いいから、自転車のところまで逃げるぞ」
コソコソ
歴史学者「いやー、いいなぁスケルトン。男だったら女湯入るのに」
勇者「おい……大丈夫か?」
歴史学者「……全然大丈夫だぞ。なにを気にしてる?」
勇者「いや……。それより、おかしいんだよ。目が見えなくなるはずだったのに……」
歴史学者「目が?なんともないが」
勇者「……」
コソコソ
357: 2015/05/17(日) 19:28:34.33
ーーー
女医「へぇ、少しは進歩したんですね。奥さん達が氏んだことは受け入れたんですか」
女医「なら、これはどうです?奥さんと娘さんは」
ーーー
358: 2015/05/17(日) 19:29:30.25
シャーッ キキッ
勇者「先生っ!!」
歴史学者「……静かだな。誰もいないのか?」
勇者「俺はここを探してみる。お前は向こうを見てこい」
歴史学者「仕方ないな。勝手にいなくなるなよ?」
勇者「この状況でんなことしねぇよ。じゃあ、頼んだぜ」
歴史学者「ああ、分かった。先生ー!」タタタッ
勇者「いたら返事して下さい!先生ー!」
ガララッ
勇者「いねぇ……」
ガララッ ガララッ
勇者「先生……どこにいるんですか……!」
歴史学者「うわあああああ!!」
勇者「なんだ!?」タッ
ダダダッ
勇者「おい、どうした…………」
歴史学者「これ……血…………」
勇者「……」
歴史学者「……」
359: 2015/05/17(日) 19:30:30.57
勇者「……」
歴史学者「……」
歴史学者「……」
勇者「…………とりあえず逃げるぞ。先生のカバン持ってくれ」
歴史学者「……」
勇者「おい……」
歴史学者「……」
勇者「……」バチンッ
歴史学者「はっ……ああ、すまん」
勇者「逃げるぞ。俺が先生を抱える」
歴史学者「ああ……」
ガララッ スタスタ
歴史学者「……」
勇者「……」
歴史学者「……正直言って、私は怖い……君はどうだ?」
勇者「……俺は…………」
歴史学者「……」
勇者「……」
スタスタ
歴史学者「……」
歴史学者「……」
勇者「…………とりあえず逃げるぞ。先生のカバン持ってくれ」
歴史学者「……」
勇者「おい……」
歴史学者「……」
勇者「……」バチンッ
歴史学者「はっ……ああ、すまん」
勇者「逃げるぞ。俺が先生を抱える」
歴史学者「ああ……」
ガララッ スタスタ
歴史学者「……」
勇者「……」
歴史学者「……正直言って、私は怖い……君はどうだ?」
勇者「……俺は…………」
歴史学者「……」
勇者「……」
スタスタ
360: 2015/05/17(日) 19:31:58.39
ーーー
キコキコ
医者「ん……」パチッ
歴史学者「おい、先生が」
勇者「先生?」
医者「……」
勇者「……起きてるんですか?」
医者「……」
勇者「…………今、ハマナスから逃げてるんです。突然街がひどい騒ぎになって」
医者「……」
勇者「それで先生が倒れてたから……洋服で結んで、先生のこと自転車に固定したんです。
すいません」
医者「……」
勇者「とりあえず俺に掴まってくれませんか?
自転車が安定しないんですよ」
医者「……」
勇者「先生……」
医者「……」
歴史学者「……そこ、左に曲がってくれ」
勇者「ああ……。この先の街、なんて言うんだっけ?」
歴史学者「カシマオーノだ。国には認可されてないから、警察もいない」
勇者「そうか……」
歴史学者「……」
勇者「……」
医者「……」
361: 2015/05/17(日) 19:33:05.45
ーーーーー
キコキコ
勇者「あ、看板があるな。ここからカシマオーノか」
歴史学者「住民が勝手に立てたんだろう。さて、宿屋があるといいが」
勇者「なぁ、ホテルって宿のことだよな?」
歴史学者「ああ。それがどうかしたか?」
勇者「別の看板に、『にゃーるホテル』って書いてあったんだよ」
歴史学者「近いのか?」
勇者「まぁな。直進1キロって書いてあったぜ」
歴史学者「そうか、今は他を探し回るよりはいいだろう。
行ってみよう」
勇者「ああ。だけど、なんかネコの絵が描いてあったんだよなぁ」
歴史学者「ネコ、苦手なのか?」
勇者「そうじゃねぇけど。……なんだか嫌な予感がするぜ」
歴史学者「ん?」
医者「……」
362: 2015/05/17(日) 19:35:21.54
キコキコ
勇者「もうそろそろか?」
歴史学者「さぁな、私は距離の感覚がイマイチないんだ」
勇者「全く、役に立たねぇな」
歴史学者「君こそどうなんだ。分かるのか?」
勇者「……そうだ、あのガキに聞いてみよ。おーい!」
キキッ
男の子「なんすか?」
勇者「ここら辺に、にゃーるホテルっていうとこねぇか?」
男の子「なぁ、にゃーるだってよ」
女の子「ん?」
女の子2「にゃーるホテルってアンタんとこでしょ。
なにとぼけたツラしてんのよ」
女の子「うるさいわね。かえるヅラのアンタに言われたくないわよ」
女の子2「なんですって!?言ったわね、オバサン!」
女の子「フン、ちょっと遅く産まれたからって、チョーシ乗ってんじゃないわよ!」
勇者「おおーい……なんなんだよお前ら。道を教えてくれよ」
男の子「諦めろよにーちゃん。ミカとカナはこうなったら止まらねぇの」
勇者「お前が教えてくれればいいだろ」
男の子「俺は五才児だから分かんないよ」
ミカ「なによ、オバサン。やろうってぇの?」
カナ「いーえ、やめとくわぁ。ミカちゃんったら、すぐブサイクづらで泣くんだもの」
ミカ「フン、大した自信じゃない。
みにくい顔で泣くのはカナちゃんよ」
男の子「おい、やめろよ。お前ら二人とも可愛いって」
二人「五才児は黙ってろ!」
男の子「……ほらな?」
勇者「めんどくせー。俺は行くからな」
ミカ「待ちなさいよ!そもそもアンタが悪いんでしょ?」
勇者「はぁ?」
363: 2015/05/17(日) 19:36:27.16
カナ「アンタが決着つけていきなさいよ」
勇者「なにを言ってんだよ。俺はただホテルに」
二人「さぁ、どっちがカッコいい!?」
勇者「……カッコいい?」
男の子「この二人、今戦隊モノにはまってんだよ。舞台見に行ってからずっとこうなんだ」
カナ「ほら、早く選びなさいよ!」
勇者「ああん?意味わかんねぇな……」
ミカ「どっちがカッコいいのよ!」
勇者「……じゃあ、よくわかんねーけどお前」
カナ「えっ……やったあ!」
ミカ「ちょっと、なんでカナちゃんなのよ!」
勇者「なんとなくだよ。それよりホテルの場所を」
カナ「まぁ、当然の結果よねぇ。お子さまとはオーラが違うのよ」
ミカ「フン、そんなわけないじゃない。おねぇさんにも聞いてみるわよ」
歴史学者「なんだ?」
ミカ「私の方がカッコいいわよね?」
歴史学者「うーん、まぁな」
ミカ「ほら、みなさい。私の方がカッコいいのよ」
カナ「なに、勝ち誇ってんのよ。ねぇ、オジサンはどっちだと思う?」
医者「……」
カナ「ちょっと、起きてよオジサン」スッ
勇者「触んな!」
カナ「!!」ビクッ
ミカ「……なによ突然」
歴史学者「この人は具合が悪いんだ。だから早く宿に行きたいんだけど」
男の子「カナちゃん、教えてやれよ。すぐだろ?」
カナ「……仕方ないわね。
あそこの角を曲がれば分かるわよ。ウチの宿は目立つから」
勇者「……悪い、ありがとな」
キコキコ
勇者「なにを言ってんだよ。俺はただホテルに」
二人「さぁ、どっちがカッコいい!?」
勇者「……カッコいい?」
男の子「この二人、今戦隊モノにはまってんだよ。舞台見に行ってからずっとこうなんだ」
カナ「ほら、早く選びなさいよ!」
勇者「ああん?意味わかんねぇな……」
ミカ「どっちがカッコいいのよ!」
勇者「……じゃあ、よくわかんねーけどお前」
カナ「えっ……やったあ!」
ミカ「ちょっと、なんでカナちゃんなのよ!」
勇者「なんとなくだよ。それよりホテルの場所を」
カナ「まぁ、当然の結果よねぇ。お子さまとはオーラが違うのよ」
ミカ「フン、そんなわけないじゃない。おねぇさんにも聞いてみるわよ」
歴史学者「なんだ?」
ミカ「私の方がカッコいいわよね?」
歴史学者「うーん、まぁな」
ミカ「ほら、みなさい。私の方がカッコいいのよ」
カナ「なに、勝ち誇ってんのよ。ねぇ、オジサンはどっちだと思う?」
医者「……」
カナ「ちょっと、起きてよオジサン」スッ
勇者「触んな!」
カナ「!!」ビクッ
ミカ「……なによ突然」
歴史学者「この人は具合が悪いんだ。だから早く宿に行きたいんだけど」
男の子「カナちゃん、教えてやれよ。すぐだろ?」
カナ「……仕方ないわね。
あそこの角を曲がれば分かるわよ。ウチの宿は目立つから」
勇者「……悪い、ありがとな」
キコキコ
364: 2015/05/17(日) 19:37:27.84
キコキコ
勇者「うお、なんだありゃ……」
歴史学者「やばいな」
勇者「ああ……ずいぶんファンシーだな」
歴史学者「ある意味ファンキーだな」
キキッ
勇者「……なんでこの宿ネコの形してんだよ」
歴史学者「面白いじゃないか。中もこの調子なんだろうか?」
勇者「へっ、嫌な予感が当たったな。
……先生、自転車降りましょう。宿につきましたから」
医者「……」
勇者「先生……行きましょうよ。先生だって中が気になるでしょう?」
医者「……」
歴史学者「……私が支えてるから、君は服をほどいて降りてくれ。
そのあとおぶっていけばいいだろう」
勇者「…………分かった」
くるくる スタッ
365: 2015/05/17(日) 19:38:40.24
スタスタ ガチャッ
店主「いらっしゃいませぇ」
勇者「うっ……」
歴史学者「はは……中もヤバイな」
店主「お客さま、どうされましたぁ?」
勇者「……なんでネコのぬいぐるみだらけなんだよ」
店主「それはにゃーる君ですよぉ。かわいいでしょん?」
勇者「……」
店主「お泊まりになられるならぁ、宿帳にサインをどうぞ」
勇者「……」
歴史学者「……これ、全員分の名前書くんですか?」
店主「代表者だけでいいわよん」
歴史学者「そうですか」サラサラ
店主「ところで……アータの背中のお方、どうされたの?」
勇者「別に……ちょっと具合が悪いだけだよ」
店主「そーお?ならいいけど」
歴史学者「はい、書き終わりました」
店主「ありがとねん。
じゃ、お部屋までごあんないー」
歴史学者「あの……部屋の中までにゃーる君だらけなんですか?」
店主「もちろん当たり前じゃなぁーい」
歴史学者「ハハハ……」
勇者「……」
医者「……」
366: 2015/05/17(日) 19:39:47.50
ガチャ
店主「では、ごゆっくりー」
バタンッ
歴史学者「ふぅ……。あー、疲れた」
勇者「先生、降ろしますね」
医者「……」
ドサッ
勇者「いやー……しかし、すげぇ部屋だな。
ネコのぬいぐるみでびっしりじゃねぇか」
歴史学者「君の好みのやつを当ててやろう。これだろ?孤高のヒューマニズムにゃーる君」
勇者「孤高のヒューマニズムってなんだよ」
歴史学者「私も知らん。じゃあ、これはどうだ?
やさぐれにゃーる君、目付きの悪さマシマシバージョン」
勇者「かっ……かわいくねぇよ!」
歴史学者「やっぱりな。いつかプレゼントしてやろう」
勇者「いらねーよバーカ!
……先生もなんか言ってやって下さいよ」
医者「……」
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……」
歴史学者「……そうやって黙ってられていいですね」
勇者「おい……」
歴史学者「ホント、たまったもんじゃありませんよ。
あんなもの見せられて……血の海なんてね」
勇者「おい!」
歴史学者「君だって気になってるだろ!……あの部屋血まみれだったんだぞ」
勇者「……」
歴史学者「……」
医者「……」
勇者「……先生、病院でなにがあったのか教えてください。
先生はなにか知ってるんじゃないですか?」
医者「……」
歴史学者「……彼が言いたいのは、アナタがあの女の医者を頃したんじゃないかってことですよ」
勇者「黙れ……」
歴史学者「すごんでどうするんだ。先生は人を頃したんだぞ。
あの黒い手袋をはめてやったんでしょう。
ねぇ、先生」
勇者「黙れっつってんだろ!」グイッ
歴史学者「手を離せ。いくら君でも許さないぞ」
勇者「うるせぇ!」
医者「ククク……」
367: 2015/05/17(日) 19:40:57.14
勇者「……!」
歴史学者「……」
医者「俺が頃した……ククク……」
勇者「先生……?」
医者「……ククク……クク……」フラッ
フラフラ ガチャ
勇者「先生、どこ行くんですか」
医者「どこだっていいだろ……ほっといてくれ……」
ギィ バタンッ
歴史学者「……」
勇者「……テメェ!」
歴史学者「フン……君にとってはこの方がいいんじゃないか?
あんな人のことは忘れればいい」
勇者「いい加減にしやがれ!先生がお前になにをしたってんだよ!?」
歴史学者「……私になにかしてなくても、あの人は人頃しだ。
あの血の飛び散り方は尋常じゃなかっただろう。
私は前にも見たから分かる」
勇者「……!」
歴史学者「先生は黒い皮の手袋みたいなものをはめて、手をかざしたんだ。
そうすれば、相手は背中が吹っ飛ぶ。
倒れてた氏体もそうだっただろ?
きっと帰り血を浴びないように、開発されたんだろうな」
勇者「くっ……!チクショウ……!」ドンッ
歴史学者「……」
勇者「…………だからって、俺達にはなにもしてねぇだろ!
俺達を助けてくれたのはあの人なんだぞ!」
歴史学者「なら、君は先生を追いかけたらいいじゃないか。
追いかけないのは、真実を確認するのが怖いからか?
それとも、この期に及んで先生に気を使うアホだからか?」
勇者「……俺はアホなんだよ」
歴史学者「くだらないな。そうやってどうでもいいことばかり気にして。
先生は殺人犯なんだぞ」
勇者「うるせぇ……うるせぇよ!テメェは俺にどうしろっつーんだ!」
スタスタ
二人「!!」
ガチャッ
医者「ただいま!」
歴史学者「……」
医者「俺が頃した……ククク……」
勇者「先生……?」
医者「……ククク……クク……」フラッ
フラフラ ガチャ
勇者「先生、どこ行くんですか」
医者「どこだっていいだろ……ほっといてくれ……」
ギィ バタンッ
歴史学者「……」
勇者「……テメェ!」
歴史学者「フン……君にとってはこの方がいいんじゃないか?
あんな人のことは忘れればいい」
勇者「いい加減にしやがれ!先生がお前になにをしたってんだよ!?」
歴史学者「……私になにかしてなくても、あの人は人頃しだ。
あの血の飛び散り方は尋常じゃなかっただろう。
私は前にも見たから分かる」
勇者「……!」
歴史学者「先生は黒い皮の手袋みたいなものをはめて、手をかざしたんだ。
そうすれば、相手は背中が吹っ飛ぶ。
倒れてた氏体もそうだっただろ?
きっと帰り血を浴びないように、開発されたんだろうな」
勇者「くっ……!チクショウ……!」ドンッ
歴史学者「……」
勇者「…………だからって、俺達にはなにもしてねぇだろ!
俺達を助けてくれたのはあの人なんだぞ!」
歴史学者「なら、君は先生を追いかけたらいいじゃないか。
追いかけないのは、真実を確認するのが怖いからか?
それとも、この期に及んで先生に気を使うアホだからか?」
勇者「……俺はアホなんだよ」
歴史学者「くだらないな。そうやってどうでもいいことばかり気にして。
先生は殺人犯なんだぞ」
勇者「うるせぇ……うるせぇよ!テメェは俺にどうしろっつーんだ!」
スタスタ
二人「!!」
ガチャッ
医者「ただいま!」
368: 2015/05/17(日) 19:42:27.84
勇者「先生……!」
スタスタ
医者「この宿の近くに小さなお店があってさ、どらチョコっていうお菓子知ってる?
知らないよね。一口サイズのどら焼みたいなやつで可愛くてさ。
もうホントに可愛いんだから。
300個も買っちゃったよ。
箱で下さいって言ったら店番のおばあさんが驚いちゃって。
そんな人は初めてだって何回も言われちゃったよ。
まぁ、大人が買いに来ること自体あんまりないだろうしね。
なんだか俺まで恐縮しちゃった」
勇者「先生……」
医者「それ好きに食べていいからね。
ああでも、中に入ってるのあんこじゃなくてチョコだから。
でも美味しいよ。俺は大好きなんだ。
じゃあ…ちょっと…俺は…トイレに入るから」ガチャ
バタンッ
勇者「…………」
歴史学者「……」
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……先生……、大丈夫ですか……?」コンコン
医者『……ほっといてくれ……』
勇者「……」
歴史学者「行こう。こっちまでおかしくなる」
スタスタ ガチャ
歴史学者「おい」
勇者「先生……俺……」
歴史学者「行くぞ!」ぐいっ
バタンッ!
医者『……』
スタスタ
医者「この宿の近くに小さなお店があってさ、どらチョコっていうお菓子知ってる?
知らないよね。一口サイズのどら焼みたいなやつで可愛くてさ。
もうホントに可愛いんだから。
300個も買っちゃったよ。
箱で下さいって言ったら店番のおばあさんが驚いちゃって。
そんな人は初めてだって何回も言われちゃったよ。
まぁ、大人が買いに来ること自体あんまりないだろうしね。
なんだか俺まで恐縮しちゃった」
勇者「先生……」
医者「それ好きに食べていいからね。
ああでも、中に入ってるのあんこじゃなくてチョコだから。
でも美味しいよ。俺は大好きなんだ。
じゃあ…ちょっと…俺は…トイレに入るから」ガチャ
バタンッ
勇者「…………」
歴史学者「……」
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……先生……、大丈夫ですか……?」コンコン
医者『……ほっといてくれ……』
勇者「……」
歴史学者「行こう。こっちまでおかしくなる」
スタスタ ガチャ
歴史学者「おい」
勇者「先生……俺……」
歴史学者「行くぞ!」ぐいっ
バタンッ!
医者『……』
369: 2015/05/17(日) 19:45:19.96
スタスタ
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……やっぱり俺」
ガシッ
歴史学者「今戻っても、状況が悪化するだけだ」
勇者「……」
カナ「あら?アンタ達まだ迷ってんの?」
歴史学者「え?」
カナ「え?じゃないわよ。私のこと、もう忘れちゃった?」
歴史学者「あ、さっきの子か。他の二人はどうしたの?」
カナ「全く、質問してるのは私なのに。身勝手ね」
歴史学者「ああ、ごめん。ホテルは君のおかげで見つかったよ」
カナ「じゃあ、もうお父さんと会ったってことね」
勇者「お父さん?」
カナ「そうよ。変なしゃべり方するオッサンがいたでしょう」
勇者「マジかよ……まさか、父ちゃんだなんて……」
カナ「昔、外国に住んでたからなまりが酷いって、本人は言い張ってるわ。
まぁでも、私は気に入ってるけどね」
ガサガサ
ミカ「ちょっと、かくれんぼほったらかしでお喋りとはいいご身分ね」
カナ「あーら、アナタの隠れてる場所がバレバレだから、わざとほっといたのよ」
男の子「俺もか?」
カナ「もちろん」
男の子「なんだよ。けっこう頑張って隠れたんだぜ」
カナ「なに言ってんのよ。生け垣の下にねっころがってただけでしょ」
勇者「お前らかくれんぼなんてやってんのか。いいな」
カナ「なによ、まざりたいわけ?」
勇者「まぜてくれんのか?」
カナ「どうしようかしら」
男の子「俺は賛成だ」
ミカ「じゃ、決定ね。ジャンケンで鬼決めるわよ」
カナ「ちょっと、なに勝手に進めてんのよ!リーダーは私なのよ!」
ミカ「ふん、リーダーに決断力が足りないから、こうなってるんじゃない?
やっぱり年取るともうろくしちゃうのね」
カナ「アンタ私と1年差しかないのよ。バカバカしい」
ミカ「バカバカしいですって?」
勇者「いーからやめろよ。ジャンケンしようぜ。お前もやるだろ?」
歴史学者「私がか?」
勇者「ああ。ヒマだろ?」
歴史学者「だが……」
勇者「……」
歴史学者「……分かった。じゃあ、やるか」
370: 2015/05/17(日) 19:46:39.75
カナ「仕方ないわね……最初はグー」
五人「ジャンケンポン!」
勇者「クソ……」
歴史学者「君が鬼な。ほら、早く数えろ」
勇者「チッ。いーち、にーい」
カナ「どこにしようかしら」
ミカ「私の方にはこないでよね」
カナ「分かってるわよ。誰がアンタなんかと」
勇者「さんしごろくななはち」
男の子「やばっ」
勇者「きゅじゅっ!もういーかーい」
歴史学者「もういいよ」
勇者「よっしゃ。十秒で全員見つけてやる」
タタタッ
五人「ジャンケンポン!」
勇者「クソ……」
歴史学者「君が鬼な。ほら、早く数えろ」
勇者「チッ。いーち、にーい」
カナ「どこにしようかしら」
ミカ「私の方にはこないでよね」
カナ「分かってるわよ。誰がアンタなんかと」
勇者「さんしごろくななはち」
男の子「やばっ」
勇者「きゅじゅっ!もういーかーい」
歴史学者「もういいよ」
勇者「よっしゃ。十秒で全員見つけてやる」
タタタッ
371: 2015/05/17(日) 19:47:46.41
ーーー
男の子「アンタ強すぎんだろ!走るのも速いしこえーよ」
勇者「ハッハッハ。人は俺を勇者と呼ぶよ」
カナ「勇者?なにそれダッサ」
勇者「なんでだよ。いいじゃん、勇者」
カナ「だって、勇者って一体なにしてくれんのよ。
私たちには良いことなにもないでしょ?
ただのショーチョーって誰かが言ってたわ」
勇者「……」
歴史学者「まぁ、いいじゃないか。次はなにする?」
男の子「馬跳びやろーぜ」
ミカ「バカね。そんなことより、もっと面白いことがあるじゃない」
男の子「面白いこと?」
ミカ「そうよ。この人達が鍵を借りてくれれば、公民館の中に入れるのよ」
男の子「おお、それはいいな」
歴史学者「公民館?なんで公民館に入りたいの?」
男の子「そりゃ、妖怪に会えるからだよん」
ミカ「妖怪じゃなくて妖精よ。どんな姿なのかしら」
勇者「面白そうだな。詳しく教えろよ」
ミカ「いーい?あのね、そこの公民館って中世の優美さを感じさせる内装なのよ。
とってもゴージャスなの」
勇者「ふーん」
ミカ「せっかくそんな内装なら、舞踏会を開きたくなるじゃない?
で、自由参加のイベントがおこなわれたのよ。
ドレスとかゴージャスな服を着て、まぁなんとなく踊ったわけ。
みんなダンスなんて出来ないけど、それなりに楽しんだのよ」
勇者「それで、妖精は?」
ミカ「もう、今から話すの。
……でね、しばらく経ったとき女の子が現れたのよ。
ドレスを着て、髪を結ったそれはそれは綺麗な女の子。
この世のものとは思えないほど綺麗で、怖いぐらいだったらしいわ」
勇者「それが妖精なのか?」
ミカ「ええ、そう。
その子は『教えてあげる』と呟いた。
誰かが『なにを』と聞いたら、『アナタの知りたいことを』とだけ返事をしたの。
そうしたら、その誰かは気絶して夜まで目を覚まさなかったの」
勇者「へー。誰か、ねぇ」
ミカ「誰なのかは分かんないのよ。仕方ないでしょ」
勇者「はいはい」
372: 2015/05/17(日) 19:49:00.61
歴史学者「それで、その人は?」
ミカ「別に。なにも言わず終いで、街からいなくなっちゃった。
女の子の姿もこの街の人はずっと見てないし、公民館は閉鎖されたままなのよ。
これが、私たちの産まれる前の話」
歴史学者「へぇ、興味深いな。
じゃあ、その女の子を見たって人は、まだこの街にいるのか?」
ミカ「ええ、その話はあまりしたがらないけどね。
でも、その評判を聞き付けて遠くからも人が来るのよ。
そういう人達には、自己責任ってことで鍵を貸してるの。
お金もとってね」
男の子「けど、お金とる代わりに衣装やCDプレーヤーも貸してくれんだぜ。
ちょっとした観光の名所にでもしようとしてんだろーな」
カナ「観光なんて軽々しい気持ちで行くもんじゃないわ。
妖怪が出るのよ?」
ミカ「妖精よ。やっと喋ったと思ったらそれね。
別にアンタは来なくて良いのよ。怖がりなんだから」
カナ「別に怖くなんかないわ。
ただ……ちょっと子供の行くところじゃないなって」
ミカ「私より年上のクセになに言ってんのよ。
私たちは行くわよ。ねぇ、シュウト」
シュウト「ああ、俺は気になるからな」
勇者「どうでもいいけど、お前シュウトっていうんだな」
シュウト「おろ、名乗ってなかったか?
まぁ、いいや。俺はシュウト。二人はミカちゃんとカナちゃん。
アンタらは?」
勇者「俺は勇者だ」
歴史学者「私はさすらいの歴史学者だよ」
シュウト「それ名前じゃねぇだろ」
勇者「ま、細かいことは気にすんなよ。鍵借りに行こうぜ」
歴史学者「おー」
シュウト「よっしゃ。じゃあ、俺らは公民館の方で待ってるから」
ミカ「公民館はあっちにまっすぐ行けばあるわ。
ほら、行くわよ怖がり」
カナ「だから、怖くなんかないって言ってるでしょ!」
スタスタ
ミカ「別に。なにも言わず終いで、街からいなくなっちゃった。
女の子の姿もこの街の人はずっと見てないし、公民館は閉鎖されたままなのよ。
これが、私たちの産まれる前の話」
歴史学者「へぇ、興味深いな。
じゃあ、その女の子を見たって人は、まだこの街にいるのか?」
ミカ「ええ、その話はあまりしたがらないけどね。
でも、その評判を聞き付けて遠くからも人が来るのよ。
そういう人達には、自己責任ってことで鍵を貸してるの。
お金もとってね」
男の子「けど、お金とる代わりに衣装やCDプレーヤーも貸してくれんだぜ。
ちょっとした観光の名所にでもしようとしてんだろーな」
カナ「観光なんて軽々しい気持ちで行くもんじゃないわ。
妖怪が出るのよ?」
ミカ「妖精よ。やっと喋ったと思ったらそれね。
別にアンタは来なくて良いのよ。怖がりなんだから」
カナ「別に怖くなんかないわ。
ただ……ちょっと子供の行くところじゃないなって」
ミカ「私より年上のクセになに言ってんのよ。
私たちは行くわよ。ねぇ、シュウト」
シュウト「ああ、俺は気になるからな」
勇者「どうでもいいけど、お前シュウトっていうんだな」
シュウト「おろ、名乗ってなかったか?
まぁ、いいや。俺はシュウト。二人はミカちゃんとカナちゃん。
アンタらは?」
勇者「俺は勇者だ」
歴史学者「私はさすらいの歴史学者だよ」
シュウト「それ名前じゃねぇだろ」
勇者「ま、細かいことは気にすんなよ。鍵借りに行こうぜ」
歴史学者「おー」
シュウト「よっしゃ。じゃあ、俺らは公民館の方で待ってるから」
ミカ「公民館はあっちにまっすぐ行けばあるわ。
ほら、行くわよ怖がり」
カナ「だから、怖くなんかないって言ってるでしょ!」
スタスタ
373: 2015/05/17(日) 19:52:48.37
一旦切ります。
ホントにきわどくてすいません……。というかアウトでしょーか。
でも、精一杯書いてるので怒らないでください。
もうちょっとがんばります。
ホントにきわどくてすいません……。というかアウトでしょーか。
でも、精一杯書いてるので怒らないでください。
もうちょっとがんばります。
377: 2015/05/17(日) 22:45:41.49
管理人「ほう、公民館の鍵か。
一人一万払えば貸してやろう」
歴史学者「一万はぼりすぎでしょう。もう少しなんとかなりません?」
管理人「あのな、アンタらになにかあったら、面倒事を引き受けるのはワシらなんだ。
妥当な額だと思うがね」
勇者「なぁ、一万円ってこれで足りるか?」
歴史学者「二人あわせて二万だから、それをもう一枚だ」
勇者「二人って、アイツらは?」
管理人「アイツら?」
歴史学者「いえ、なんでもないですよ。鍵貸してください」
管理人「……ほらよ。小さいのはロッカーの鍵だ。
衣装は公民館のロッカーに入ってるから、出るときもロッカーに戻してくれ」
歴史学者「どうも。じゃ、行くか」
勇者「お、おう」
スタスタ
一人一万払えば貸してやろう」
歴史学者「一万はぼりすぎでしょう。もう少しなんとかなりません?」
管理人「あのな、アンタらになにかあったら、面倒事を引き受けるのはワシらなんだ。
妥当な額だと思うがね」
勇者「なぁ、一万円ってこれで足りるか?」
歴史学者「二人あわせて二万だから、それをもう一枚だ」
勇者「二人って、アイツらは?」
管理人「アイツら?」
歴史学者「いえ、なんでもないですよ。鍵貸してください」
管理人「……ほらよ。小さいのはロッカーの鍵だ。
衣装は公民館のロッカーに入ってるから、出るときもロッカーに戻してくれ」
歴史学者「どうも。じゃ、行くか」
勇者「お、おう」
スタスタ
378: 2015/05/17(日) 22:48:54.90
勇者「なんだかなぁ。アイツらのこと言わなくて良いのか?」
歴史学者「あの子達にはすぐに帰ってもらうからな。
危ないことに巻き込めないだろ?」
勇者「まぁな……」
スタスタ
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……あのさ」
歴史学者「なんだ?」
勇者「……別に。なんでもない」
歴史学者「そうか」
勇者「……」
歴史学者「……」
歴史学者「あの子達にはすぐに帰ってもらうからな。
危ないことに巻き込めないだろ?」
勇者「まぁな……」
スタスタ
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……あのさ」
歴史学者「なんだ?」
勇者「……別に。なんでもない」
歴史学者「そうか」
勇者「……」
歴史学者「……」
379: 2015/05/17(日) 22:50:03.78
スタスタ
歴史学者「あ、ここが公民館か。おーい!」
ミカ「遅い!子供が寒空の下で待ってんのよ?」
勇者「それは大げさだ。今日はそこまで寒くねぇだろ」
ミカ「うっさいわね。細かい男は嫌われんのよ」
シュウト「鍵もらえたか?」
歴史学者「ばっちりだ」
シュウト「よっしゃ、早く入ろうぜ」
ガチャガチャ ギィィ……
歴史学者「お邪魔しまーす」
勇者「うおっ、本当にすげぇな。これは確かに優美だ」
ミカ「ホントね……。私も初めて見たわ」
カナ「すごい……。お姫様がでてきそう……」
歴史学者「なんで天使の絵って裸なんだろうな。寒そうだぞ」
シュウト「じゃー、さっさと着替えちまおうぜ」
勇者「お前ら感動とかないんだな。そんなんで生きてて楽しいか?」
歴史学者「失礼だな。私はこれでも感動してる方だぞ」
シュウト「俺もね」
勇者「ウソくせー」
シュウト「じゃ、着替えようぜ。兄ちゃんはこのタキシードな」
勇者「この黒いやつか?」
シュウト「ああ。タイはホックでつけるやつと、自分で結ぶのとどっちがいい?」
勇者「タイってなんだよ」
シュウト「……ホックな」
ミカ「おねーさんはどうする?一応ドレスは二枚あるけど」
歴史学者「情熱のレッド!……は、やめとこう。
もう一つの方にするよ」
カナ「ここって更衣室あったっけ?」
シュウト「トイレで着替えりゃ良いんじゃねーの。なんとかなんだろ」
歴史学者「いやー、でもやっぱりなぁ。こんなブリブリのを着るのは勇気いるな」
勇者「お前はジャージの方が似合いそうだもんな」
歴史学者「失礼だな。君だってパーカーの方が似合うんじゃないか?」
勇者「パーカーが似合うならいいじゃねぇか。十分だろ」
歴史学者「全く、なにを言ってんだか」
ミカ「いいから早く着替えましょ。髪結ぶの手伝ってあげるから」
歴史学者「おお、それは助かるな」
勇者「それでタイってなんだ?」
シュウト「蝶ネクタイのことだよ」
勇者「ん?」
スタスタ
380: 2015/05/17(日) 22:51:20.36
ーーー
シュウト「ま、こんな感じで良いんじゃない?」
勇者「おー、なんか面白い服だな。
あ、蝶みたいだから蝶ネクタイなのか」
シュウト「今ごろかよ……。まぁ、いいや。行こうぜ」
勇者「なぁ、待てよ」
シュウト「なんだよ……」
勇者「お前、どっかで俺と会ったことねぇか?」
シュウト「ねぇよ」
勇者「即答だな。もう少し考えろって」
シュウト「だってわかんねぇし。
それより早く行こうぜ。待たせたらまたギャーギャー言われんだから」
勇者「ま、そうだな」
スタスタ
ミカ「あら、丁度そっちも終わったみたいね」
勇者「……!」ハッ
歴史学者「おお、なかなか悪くないじゃないか」
勇者「……」
シュウト「おい、どした」
勇者「い、いや、別に」
カナ「ははーん……おねーさんに見とれてたね」
勇者「んなわけねーだろ!そうだ、お前らは着替えねぇのか?」
シュウト「子供服は置いてねーから。じゃあ、CDかけるぞ」
勇者「CDって……ああ、音楽鳴るやつだな」
歴史学者「あ、その前に君たちには帰ってもらうぞ」
ミカ「えっ!」
歴史学者「なにかあったら困るからな。さぁ、帰ってくれ」
シュウト「そんなのずりーや。ここまで手伝ってやったのによ」
歴史学者「だって、お金払ったのは私たちの分だけなんだよ。
仕方ないだろ?」
カナ「仕方ないわね。帰りましょう」スタスタ
ミカ「ちょっと、カナちゃん。待ちなさいよ!」
シュウト「ちぇー、全くよぉ。妖怪見たかったな」
スタスタ バタンッ
381: 2015/05/17(日) 22:52:32.10
勇者「……で、どうすんだよ」
歴史学者「せっかくだし踊ってみるか。君は踊ったことは?」
勇者「ない」
歴史学者「じゃあ、私がエスコートしてやる。CDかけるぞ」
勇者「……なんかまったりした曲だな」
歴史学者「速い曲じゃ君が踊れないだろう?」
勇者「うわっ!なんで手掴むんだよ」
歴史学者「仕方ないだろ、ダンスなんだから。左手は脇腹だ」
勇者「こうか?」
歴史学者「違う、私の脇腹に手を添えろ」
勇者「なんでだよ、嫌だね」
歴史学者「なんでもクソもないだろ……そういうものなんだよ!」
勇者「うるせぇな。分かったよ」
歴史学者「おい、バカ、くすぐるな、やめろ!」
勇者「なんだよ、くすぐるっていうのはこうだろ」
歴史学者「やめろバカッ!もう怒った。許さないぞ」
勇者「やめろ、このっ、やめろって!ボケナス!」
歴史学者「そっちこそやめろ、この!」
『教えてあげる』
二人「!?」
『教えてあげる』
ゆらり
勇者「おい……踊ってないのに出てきたぞ」
歴史学者「ヤバイな……ホントに出るなんて……」
『教えてあげる』
勇者「へっ、なんだか知らねぇが教えてくれよ」
歴史学者「私も……教えてくれ」
『いいわ』
勇者「うっ……?」グニャリ
歴史学者「なん……だ……?」グニャ
フラフラ バタッ
『……』
歴史学者「せっかくだし踊ってみるか。君は踊ったことは?」
勇者「ない」
歴史学者「じゃあ、私がエスコートしてやる。CDかけるぞ」
勇者「……なんかまったりした曲だな」
歴史学者「速い曲じゃ君が踊れないだろう?」
勇者「うわっ!なんで手掴むんだよ」
歴史学者「仕方ないだろ、ダンスなんだから。左手は脇腹だ」
勇者「こうか?」
歴史学者「違う、私の脇腹に手を添えろ」
勇者「なんでだよ、嫌だね」
歴史学者「なんでもクソもないだろ……そういうものなんだよ!」
勇者「うるせぇな。分かったよ」
歴史学者「おい、バカ、くすぐるな、やめろ!」
勇者「なんだよ、くすぐるっていうのはこうだろ」
歴史学者「やめろバカッ!もう怒った。許さないぞ」
勇者「やめろ、このっ、やめろって!ボケナス!」
歴史学者「そっちこそやめろ、この!」
『教えてあげる』
二人「!?」
『教えてあげる』
ゆらり
勇者「おい……踊ってないのに出てきたぞ」
歴史学者「ヤバイな……ホントに出るなんて……」
『教えてあげる』
勇者「へっ、なんだか知らねぇが教えてくれよ」
歴史学者「私も……教えてくれ」
『いいわ』
勇者「うっ……?」グニャリ
歴史学者「なん……だ……?」グニャ
フラフラ バタッ
『……』
382: 2015/05/17(日) 22:54:52.31
ーーーーー
勇者「……なんだここ。俺、なにしてたんだっけ?」
ザザーン
勇者「ん……海だな。誰かいねぇのか?」
ザザーン
勇者「あ。あっちになんかいるな。おーい!」
ザザーン
勇者「……聞こえてねぇのかな?」
スタスタ
勇者「おい、じいさん。おい」
じいさん「ん……?」
勇者「なんだよ、聞こえてんじゃねぇか」
じいさん「……ほっほっほ。こんなところでお前さんはなにをしているのじゃ?」
勇者「うーん、よく分かんねぇや。
じいさんこそなにしてんだよ」
じいさん「ん……。人々にとって正しい景色とはなにか、考えているところじゃ」
勇者「正しい景色?
……それを考えるために、釣竿が必要なのか?」
じいさん「いや、これは実験じゃよ。ワシは魚が釣れるのか、な」
勇者「波打ち際では釣れねぇと思うぞ。魚って結構向こうの方にいるから」
じいさん「ほっほっほ……」
勇者「なんだよ」
じいさん「ワシの隣のやつは、釣れたようじゃぞ」
勇者「!!」クルッ
医者「……」
勇者「先生……こんなところでなにを……」
383: 2015/05/17(日) 22:55:59.75
医者「……」
勇者「どうして波打ち際で…………やっぱり先生は……」
じいさん「違うぞ。お前さんが見ているのは、お前さんが見ている世界じゃ。
間違ったことを正しいと思い込んでも、正しくはならんじゃろ?」
勇者「……」
じいさん「お前さんは自分で解決することを望んでいる。
なら、ワシは不要じゃの。頑張ってみるといい」
勇者「……」
医者「……」
勇者「先生……俺、先生のこと助けますから……。多分、きっと」
医者「……」
勇者「だから……。また、ご飯作って下さい。
俺、クッキーも食べたいな。
先生作れるんでしょ?」
医者「……」
勇者「だから…………」
医者「……」
勇者「…………俺は、諦めませんからね。なにがあっても」
医者「……」
歴史学者『おーい』
勇者「ん?」
歴史学者『おーい』
勇者「どうして波打ち際で…………やっぱり先生は……」
じいさん「違うぞ。お前さんが見ているのは、お前さんが見ている世界じゃ。
間違ったことを正しいと思い込んでも、正しくはならんじゃろ?」
勇者「……」
じいさん「お前さんは自分で解決することを望んでいる。
なら、ワシは不要じゃの。頑張ってみるといい」
勇者「……」
医者「……」
勇者「先生……俺、先生のこと助けますから……。多分、きっと」
医者「……」
勇者「だから……。また、ご飯作って下さい。
俺、クッキーも食べたいな。
先生作れるんでしょ?」
医者「……」
勇者「だから…………」
医者「……」
勇者「…………俺は、諦めませんからね。なにがあっても」
医者「……」
歴史学者『おーい』
勇者「ん?」
歴史学者『おーい』
385: 2015/05/17(日) 22:57:15.44
ゆさゆさ
歴史学者「おい!大丈夫か!?」
勇者「うわっ!」ガバッ
歴史学者「うおっ!」
勇者「……はぁ。んだよ、おどかすなよ」
歴史学者「君が呼んでも答えないからだろ。全く、肝が冷えたぞ」
勇者「……にしても、ずいぶん暗いな。夜なのか?」
歴史学者「ああ、月が出てるよ。ずっと気絶してたらしい」
勇者「……お前はなんか見たか?」
歴史学者「……ああ」
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「じゃあ……着替えてホテルに帰るか」
歴史学者「そうだな……着替えよう」
スタスタ
386: 2015/05/17(日) 23:00:17.58
スタスタ
勇者「あー、さみぃ。温かいコーヒーが飲みてぇよ」
歴史学者「ブラック派か?」
勇者「え?」
歴史学者「砂糖やミルクは入れない方が好きか?」
勇者「いや。前に先生が飲んでるのを分けてもらって、真っ黒で飲んだんだよ。
そうしたら苦くて苦くて、あんなの飲みものじゃねぇな」
歴史学者「私はブラックも好きだぞ。あれは香りを楽しむものだ」
勇者「……そんときは鼻水びたびただったから、香りはな。
ずっと泣いてて、鼻水が止まらなかったんだよ」
歴史学者「へぇ、君が泣くなんて……」
勇者「先生も困っちゃってさ。あのCDってやつで、明るい曲をかけてくれたんだよ。
でも、そんな気分じゃなかったから曲を変えてもらったんだ。
ノエルって知ってっか?」
歴史学者「さぁ……洋楽はあまり聞かないんだ」
勇者「機会があったら一回聞いてみろよ。俺はデス・オブ・ユー・アンド・ミーっていうのが好きだ」
歴史学者「デスって入ってる時点で気乗りしないけどな。まぁ、覚えとく」
勇者「そんでな、その曲聞いてたらちょっと落ち着いてきてさ。
先生が出してくれたご飯を食ったんだよ。
すげぇ、うまくて。温かくてうまいって言ったら、先生も笑って。
先生の笑顔って目が糸みたいになって、柔らかい顔なんだよな……」
歴史学者「……」
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……なんか、月が綺麗だな」
歴史学者「ん?」
勇者「いや、その、綺麗だよな、月。なんとなく」
歴史学者「ふーん。そうだな、まんまるで美味しそうだ」
勇者「なんでお前は……あーあ」
歴史学者「いや、ツレちゃんのゆううつってマンガで、猫が月を食べるんだよ。
それに憧れがあって」
勇者「そうかよ。楽しそうだな」
歴史学者「だろ?チーズの味がするらしいぞ」
勇者「あっそーかよ」
387: 2015/05/17(日) 23:01:13.64
ガチャ
勇者「じいさん、鍵返しに来たぞ」
管理人「おお。ちょっと聞きたいことがあるんだが」
勇者「なんだよ」
管理人「にゃーるホテルに、お前らの連れが泊まってないか?」
勇者「えっ」
歴史学者「……なにかあったんですか?」
管理人「ワシもよくは知らないが、早く行ってやった方がいい」
歴史学者「……分かりました。ありがとうございます」
勇者「……」
歴史学者「ここで考えても仕方ない。行って確認しよう」
勇者「ああ……」
388: 2015/05/17(日) 23:02:24.44
ダダダッ
歴史学者「ちょっと待ってくれ……疲れた……」
勇者「けど……!じゃあ乗れよ!」
歴史学者「へっ……?」
勇者「背中に乗れ!」
歴史学者「仕方ないな……」
のしっ
勇者「走るぞ!」
ダダダッ
歴史学者「……」
勇者「……」
歴史学者「……もし、先生が誰かになにかしてたら……どうする?」
勇者「……」
歴史学者「……」
勇者「……俺がなんとかするよ」
歴史学者「……」
勇者「……」
389: 2015/05/17(日) 23:03:28.04
ダダダッ
カナ「あ!アンタ達……」
勇者「先生は!?」
カナ「今は寝てるみたい。さっきまでは酷かったけど……」
勇者「酷かった?」
カナ「うん……呼びにいかなくてごめんね。あそこには誰も近づきたがらないから」
歴史学者「おい、とりあえず私を下ろしてくれないか?」
勇者「あ、ああ」
スタッ
勇者「……先生になにがあったんだよ」
カナ「……」
歴史学者「誰かになにかをしたのか?」
カナ「いいえ、違うわ。
……薬を飲みすぎたのよ。黄色いビタミンでコーティングされた痛み止め、見たことある?」
勇者「ああ……先生が飲んでるのは見たことあるよ」
カナ「それを沢山飲んだらしいの。一番大きなビンを……四つも」
歴史学者「四つ!?」
カナ「……黄色い砂みたいなもの、吐き出してた。ずっと……それに、喉が渇いたって水を沢山飲んでたの……。
飲んでは吐いて……ずっと……」
勇者「……ごめんな、怖かったよな。俺も想像しただけでコエーや……」
カナ「ううん……今は落ち着いてるみたいだし。
魔王様に貰った薬が効いたのね」
勇者「魔王?」
カナ「そう。でも勘違いしないでね。いい魔王様だから」
歴史学者「いい魔王様ねぇ……」
カナ「ええ。ここは魔王様の城下町なのよ。
どこにお城があるのかは、大人しか知らないけど」
勇者「ま、とにかくありがとな。俺達は部屋に戻るよ」
カナ「うん……なんかあったら言ってね」
スタスタ
勇者「……じゃ、行くか」
歴史学者「ああ」
スタスタ ガチャ
390: 2015/05/17(日) 23:04:44.70
バタンッ
勇者「……」
歴史学者「……」
スタスタ
勇者「先生……」
医者「ぐー」
歴史学者「……イビキが酷いな」
勇者「ああ……」
歴史学者「……くちびるもガサガサだし、肌も脂ぎってガサガサしてる。
素人目でも、なにかあったのは分かるな」
勇者「……先生な、普段からいっつも体がいてぇって言っててよ。
黄色いやつ、いつもバカみてぇに飲んでた」
歴史学者「ああ、私も見たから知ってるよ」
勇者「……痛かったのかな。いつもよりずっと」
歴史学者「……」
医者「ぐー」
391: 2015/05/17(日) 23:06:13.96
ーーー
勇者「本当にお前が起きてるのか?」
歴史学者「ああ、今日はなんだか寝付けないんだ。
明日は君に頼むから、今日はゆっくり休んでくれ」
勇者「……ありがとな」
歴史学者「礼はやめてくれ。私がそうしたいだけなんだから」
勇者「そうか……おやすみ」
歴史学者「おやすみ。
…………また明日な」
ーーー
歴史学者「……」
医者「……」
歴史学者「……もう起きてるんでしょう?先生……」
医者「……」
歴史学者「それとも……コウイチ教授とお呼びした方がいいですか?」
医者「……!」
歴史学者「私はね……問題から逃げたりできない性分なんですよ。
だから、アナタのことも思い出してしまったんです」
医者「……」
歴史学者「なにを思い出したのか、言わなくても分かりますよね。
それとも忘れたフリを続けますか?」
医者「……」
歴史学者「……アナタの奥さんと娘さんは、アナタが頃したんだ。コウイチ教授」
医者「…………」
ドンッ!!!
396: 2015/05/18(月) 12:17:50.01
モゾモゾ
勇者「ん……。おい……今なんか……ふわぁーあ」
スタスタ
勇者「あれ……先生はソファで寝てなかったか?
それに……おい、どこにいんだよ」
スッ
医者「電気はつけないでくれ」
勇者「……!」
医者「つけなくても君なら分かるんじゃないのか?
なにが起きたのか」
勇者「いえ……目がかすんじゃって。
鼻水も止まらないんですよ。先生がいるってことしか分かりません」
医者「そう……。じゃあ、寝室の方で話そうか」
勇者「ええ……」
スタスタ
医者「ふぅ……」
勇者「先生……ここも電気はダメですか」
医者「君とは静かに話したかったんだ。照明はうるさすぎる」
勇者「……話ってなんですか?」
医者「俺達は魔王を追っていただろ?
でも、俺はもう目標を達成していたんだ。八年も前にね」
勇者「えっ?達成していたって……」
医者「魔物が妻と娘を頃したんじゃない。魔物はあの二人の方だったんだ」
勇者「……!?」
医者「フフフ……簡単なことさ。俺は窓ガラスに写った俺を見てたんだ。
俺そっくりの魔物なんていなかったんだよ」
勇者「先生……それって……」
医者「あの二人は耳を貸そうともしなかった。
だから、君が起きるのを待っていたんだ。
君なら聞いてくれるだろ?」
勇者「……ええ、話して下さい」
医者「あれは、俺がしたっぱの研究員だったころのことだ。
俺は、新しい発見をしようと躍起になっていた」
397: 2015/05/18(月) 12:20:13.71
勇者「……」
医者「俺は火事場の馬鹿力の正体を探っていた。
そして特殊なホルモンを見つけたんだ。
俺は一時的にもてはやされて、妻も俺の将来性にひかれて近寄って来たようだった。
でも、俺はそれでもよかった。彼女を幸せにしようと誓ったよ」
勇者「……」
医者「だけど、俺達には問題があった。
子供ができなかったんだよ。
彼女は俺を治療に誘った。でも俺は治療に行くかわりに彼女を責めた。
子供ができないなんて、お前は呪われているんだと。
研究が思うようにいかない鬱憤を、彼女にぶつける形だった」
勇者「……」
医者「……それでも気がつくと子供ができて、俺達は平和を取り戻した。
俺の研究が乗っ取られるその時まではね。
その研究は俺の手を離れてから成功した。
俺の見つけたホルモンを妊婦に投与して、胎児に与える影響を調べるというものだった。
……その胎児が君だ」
勇者「お、俺ですか?」
医者「ああ。君は魔法の素質があるということで、研究はまた脚光を浴びた。
……だが、褒め称えられたのは俺じゃなかった。
俺は苛立ち、闇の取引を始めた。
ホルモンの軍事利用さ。俺は人頃しの道具を作ることにした」
勇者「……!」
医者「妻はそれが気に食わなかったらしい。何度も止められたよ。
でも俺は耳を傾けようともしなかった。
業を煮やした彼女は、衝撃的な事実を口にした。
娘が……娘が俺の子供じゃないってね」
勇者「えっ……」
医者「父親が別にいるらしい。
だから娘をつれて、そいつのところへ出ていくと言われたよ。
俺は相手の名前を問いただした。
彼女は正直に答えてくれた。一番聞きたくなかった名前を」
勇者「……研究を乗っ取ったやつですか」
医者「フフ……やけにカンがいいじゃないか。
そう、アイツは俺の生きがいを全て奪ったんだよ。
家族も仕事も、俺にはなにも残っていなかった。
……まわりにいたのは魔物だけだ」
勇者「そんな……」
医者「俺は、俺の唯一の成果を持って外に出た。
彼女と喧嘩をしたそのままの勢いで」
医者「俺は火事場の馬鹿力の正体を探っていた。
そして特殊なホルモンを見つけたんだ。
俺は一時的にもてはやされて、妻も俺の将来性にひかれて近寄って来たようだった。
でも、俺はそれでもよかった。彼女を幸せにしようと誓ったよ」
勇者「……」
医者「だけど、俺達には問題があった。
子供ができなかったんだよ。
彼女は俺を治療に誘った。でも俺は治療に行くかわりに彼女を責めた。
子供ができないなんて、お前は呪われているんだと。
研究が思うようにいかない鬱憤を、彼女にぶつける形だった」
勇者「……」
医者「……それでも気がつくと子供ができて、俺達は平和を取り戻した。
俺の研究が乗っ取られるその時まではね。
その研究は俺の手を離れてから成功した。
俺の見つけたホルモンを妊婦に投与して、胎児に与える影響を調べるというものだった。
……その胎児が君だ」
勇者「お、俺ですか?」
医者「ああ。君は魔法の素質があるということで、研究はまた脚光を浴びた。
……だが、褒め称えられたのは俺じゃなかった。
俺は苛立ち、闇の取引を始めた。
ホルモンの軍事利用さ。俺は人頃しの道具を作ることにした」
勇者「……!」
医者「妻はそれが気に食わなかったらしい。何度も止められたよ。
でも俺は耳を傾けようともしなかった。
業を煮やした彼女は、衝撃的な事実を口にした。
娘が……娘が俺の子供じゃないってね」
勇者「えっ……」
医者「父親が別にいるらしい。
だから娘をつれて、そいつのところへ出ていくと言われたよ。
俺は相手の名前を問いただした。
彼女は正直に答えてくれた。一番聞きたくなかった名前を」
勇者「……研究を乗っ取ったやつですか」
医者「フフ……やけにカンがいいじゃないか。
そう、アイツは俺の生きがいを全て奪ったんだよ。
家族も仕事も、俺にはなにも残っていなかった。
……まわりにいたのは魔物だけだ」
勇者「そんな……」
医者「俺は、俺の唯一の成果を持って外に出た。
彼女と喧嘩をしたそのままの勢いで」
398: 2015/05/18(月) 12:21:47.77
ー八年前ー
妻『……やっと帰ってきたわね。こんな時間にどういうつもり?』
医者『彼に会ってきたんだ。君の彼氏にね』
妻『そんなことは分かってるわ。私が聞きたいのは、アナタがなにをしたかよ』
医者『彼はね、虚栄心の塊みたいな男だったよ。俺は薄汚い間男だってさ』
妻『……』
医者『大丈夫、俺は怒ってないよ。
悪いのは全部彼であって、君の責任ではないからね』
妻『責任?責任ですって?』
医者『ああ。彼には責任をとってもらったから。この件に関して、君に追及する気はないんだよ』
妻『ふざけないでよ……。
一体彼になにをしたの!』
医者『彼はもうこの世にはいない。これで、全て元通りだ。違うかい?』
妻『……!!
分かったわ……。つまり、アナタはあの怪しい研究を実らせたって訳ね。
おめでとう、さようなら』
医者『待ってくれ。ただ一言だけ謝ってくれさえすれば、俺は君を許そうと思ってる』
妻『私を許す……?アナタまだ分からないの?
アナタはエミの父親を頃したのよ』
医者『父親は俺だよ。エミだって俺を父親だと思ってるはずさ』
妻『おめでたい人ね。エミはあの人が父親だって、ずっと前から知ってるのよ』
医者『なんだって?』
妻『エミもあの人と暮らすことを楽しみにしていたのに……。
アナタはただの人頃しよ』
医者『……』
妻『自首する前に離婚して。金輪際アナタとは縁を切らせてもらうわ』
医者『そうか、分かったよ』
バッ
妻『なによ、なんのつもり?こっちに向けるのはやめてちょうだい』
医者『俺は精一杯手を尽くしたはずだ。
エミの入園式も卒園式も入学式にも出席した。
家事もよその父親より、よっぽど手伝ってたはずだ』
妻『アナタはいつもそう。
俺はこれをしてやったんだ。家庭にも気を配って、頑張っているはずだって。
形だけでそこに心はないのよね。
そういうとこ本当に……アナタのお父さんそっくりよ』
医者『……』プチンッ
ドンッ!!!
妻『』ドサッ
医者『……なぁ、エミ。そこに居るんだろ』
エミ『あぁ……』ブルブル
医者『ママと俺を捨てようとしたんだって?酷いな』
エミ『……パパ……!』
医者『俺はお前のパパじゃない』
ドンッ!!!
399: 2015/05/18(月) 12:23:04.41
ーーーーー
医者「俺はカバンに金を詰めるだけ詰めて、トクシュクに転がり込んだ。
村の人はちょうど医者を必要としててね。
俺はそのときから医者として生きてきた」
勇者「…………はは、そんな。まっさかー。先生が殺人なんて……ははは」
医者「君を宿から追い出して、精神科医を頃したのも俺だよ。
彼女も魔物だったからね」
勇者「……!」
医者「俺のまわりはいつも魔物だらけだ。
気持ち悪くて仕方ないよ。
妻と娘だと思ってたやつらのことも、愛してなんかいなかったのに」
勇者「…………そんなはずはありませんよ。
先生は二人のことを愛してたから、二人を頃したんです。
だって、二人の写真を見て泣いてたじゃないですか」
医者「それはただの強迫観念だよ。君と同じさ」
勇者「えっ?」
医者「君は魔物を憎まなきゃいけないと思い込んでるだろ。
トウガサキの村人を愛していたはずだから。
本当はこれっぽっちもそんな気持ちはないのに」
勇者「……!」
400: 2015/05/18(月) 12:24:29.75
勇者「違う……俺は本当に魔物を憎んでますよ……」
医者「残念だけど、俺には無理してるようにしか見えないな。
君はトウガサキでの暮らしは幸せじゃなかったんだろう。
君が憎んでるのは、村人達の冥福を祈れない自分自身なんじゃないのか?」
勇者「やめろ!俺は魔物が憎いんだ!アイツらを頃してやりたいんだ!」
医者「頃して幸せだったのか?
そう、彼女も同じだ。憎き母親が氏んだのに、少しも幸せなんかじゃないだろう。
この数年で俺が唯一学んだのは、罪悪感と愛は違うってことだ」
勇者「やめろ……!アイツだって……アイツは……?」
医者「……」
勇者「……先生、アイツはどこにいるんですか」
医者「電気をつけるといいよ……。
かすんだ君の目でも見えるんじゃないか?」
勇者「……」
パチッ
勇者「……ぁ……!」
医者「……」
勇者「そんな……嘘だろ……?」
歴史学者「」ゴロン
勇者「うっ……うう……うあぁ……」
医者「……さぁ、どうする?俺を頃すか?」
勇者「…………いや……俺は……もう……疲れた……」
医者「えっ?」
勇者「俺を……頃して下さい……もう……」
医者「……!」
勇者「……」
医者「残念だけど、俺には無理してるようにしか見えないな。
君はトウガサキでの暮らしは幸せじゃなかったんだろう。
君が憎んでるのは、村人達の冥福を祈れない自分自身なんじゃないのか?」
勇者「やめろ!俺は魔物が憎いんだ!アイツらを頃してやりたいんだ!」
医者「頃して幸せだったのか?
そう、彼女も同じだ。憎き母親が氏んだのに、少しも幸せなんかじゃないだろう。
この数年で俺が唯一学んだのは、罪悪感と愛は違うってことだ」
勇者「やめろ……!アイツだって……アイツは……?」
医者「……」
勇者「……先生、アイツはどこにいるんですか」
医者「電気をつけるといいよ……。
かすんだ君の目でも見えるんじゃないか?」
勇者「……」
パチッ
勇者「……ぁ……!」
医者「……」
勇者「そんな……嘘だろ……?」
歴史学者「」ゴロン
勇者「うっ……うう……うあぁ……」
医者「……さぁ、どうする?俺を頃すか?」
勇者「…………いや……俺は……もう……疲れた……」
医者「えっ?」
勇者「俺を……頃して下さい……もう……」
医者「……!」
勇者「……」
401: 2015/05/18(月) 12:26:33.85
ドンドンッ
店主『アータ達、なにやってるのよ!さっきの音はなに!?ドア開けなさぁい!』
医者「……」
勇者「……」
医者「……」
勇者「……あっ……ひとつだけ……」
医者「……どうしたの?」
勇者「先生を傷つけてごめんなさい……ちゃんと謝ってなかったから……」
医者「……」
勇者「あっ、それともう一つ……。
本当にありがとうございました……先生といたから、生きてるのが楽しかった……」
医者「……」
勇者「……」
医者「……じゃあ、俺もひとつだけ、いいかい?」
勇者「ええ……」
医者「……ごめんね。俺はクソ野郎だよ」
ドンッ!!!
医者「」ドサッ
勇者「……?」
医者「」
勇者「先生……?」
ガチャガチャ ギギギッ!
店主「やっと開い……なにこれ……」
歴史学者「」
医者「」
勇者「先生……?」
医者「」
勇者「………………!!」
医者「」
勇者「…………!!!!!!!!……!!!!」
医者「」
勇者「…………!!!!!」
店主「ちょっと、しっかりして!ねぇ!」
勇者「…………!!!!!……!!!」
店主「なにがあったの!こっちを見て!しっかりしなさい!」
勇者「………………!!!!!」
402: 2015/05/18(月) 12:29:14.33
ーーーーー
カナ「……」
勇者「……酒……」
カナ「えっ?」
勇者「……酒をくれ……」
カナ「……ねぇ、落ち着いて。一体なにがあったのよ?」
勇者「うるせぇな……酒出せよ!一本ぐらいあんだろ!」
カナ「……」
店主「ウチの子を脅すのはやめてちょうだいな。ほら」スッ
ガッ!
勇者「……」ゴクゴク!
店主「お酒なんて、それ以上は出せないからねん。あるのは温かいココアだけ」
勇者「……」
カナ「……」
店主「なにがあったのか、言わなくてもいいわ。
どうせこの街に警察はいないもの。
……でもね、アナタを引き取りたいって人が来てるのよ」
勇者「……」
店主「……ま、好きなだけここにいなさい。
気が向いたら外に出るといいわ。
部屋の荷物は預かっておくし……うん、ゆっくりしなさい」
勇者「……」
ガチャ
シュウト「こんちわー……」
ミカ「……」
403: 2015/05/18(月) 12:30:30.07
スタスタ
カナ「ミカちゃん、シュウト……」
シュウト「いや、なんかさ……とりあえず様子見に来た」
ミカ「……やっぱり帰った方がいいわね。それじゃ」
ギュッ
ミカ「……!」
勇者「……一緒にいてくれ……」
ミカ「……」
シュウト「……」
カナ「……」
ミカ「……全く、袖つかむなんて小さい子みたい。カナちゃんそっくりよ」
カナ「……なに言ってんのよ。私よりシュウトの方が甘ったれでしょ。
この間まで指しゃぶってたのよ」
シュウト「いいじゃない。俺まだ五才だもん。
指がソーセージに見えるんだよ」
ミカ「アンタ指太かったもんねー。腕もボンレスだったし」
カナ「アンタも似たようなもんよ。
赤ん坊のころ医者に『うーん、デラックス』って言われたんでしょ?」
勇者「……先生……」
シュウト「ん?」
勇者「……うぅ……ぅぅぅ……うっ……」
カナ「……」
ミカ「……」
シュウト「……」ポンポンッ
勇者「う……うあああああ……!うわあああああああ!」
404: 2015/05/18(月) 12:32:01.25
ーーー
勇者「……俺を待ってるってやつ、連れてきてくれ」
カナ「オーケー。ちょっと待ってて」
タタタッ
カナ「連れてきたよ」
職員「こんにちは。……大変な目にあったわね」
勇者「まぁな……アンタは何者だ」
職員「クラウン商会の者です。アナタを迎えに来ました」
ミカ「ねぇ、クラウン商会ってなに?」ボソッ
シュウト「知らねぇよ。なんかうさんくさいな」ボソッ
勇者「俺を迎えに?クラウン商会が?」
職員「ええ」
勇者「……いいよ、着いてってやる。行くところもねぇしな」
職員「よかった、ありがとうね。
……そうだ、これお父さんに渡しといてくれる?」
カナ「なによ、これ」
職員「これから、いろいろお金がかかると思ってね。その足しにしてくれていいわ」
カナ「いいえ、困ったら魔王様のところへ行きますから。
どうぞお引き取り下さい」
職員「あらそう……。じゃあ、行きましょうか」
勇者「……」
スクッ
カナ「ねぇ……!」
勇者「……」スタスタ
シュウト「おい……!」
勇者「……」スタスタ
ミカ「……アンタそれでいいの?
こんな終わり方で本当にいいの?」
勇者「別になにも終わらねーよ。
最初からなにも始まっちゃいなかったんだ……」
ミカ「……」
勇者「じゃあな」
ガチャ バタンッ
405: 2015/05/18(月) 12:33:49.91
スタスタ
勇者「……俺がなんで着いていくのか、アンタには分かるよな」
職員「ええ……説明が欲しいんじゃない?なぜ、クラウン商会がアナタを仲間にしたいのか」
勇者「へっ……仲間だなんてバカバカしい……。
本当のこと話せよ」
職員「……アナタは、キリークの話は知ってる?」
勇者「少しはな。……学者のヤローが話してた」
職員「そのキリークの弟子の子孫が私たちなの。
トウガサキ村の人はほとんどそうだわ」
勇者「じゃあ、アンタらはトウガサキ出身なのか……」
職員「ええ。トウガサキから逃げ出した人間で構成されてるの。
村が滅ぶ前の話よ」
勇者「……」
職員「キリークは私たちの一族を世界の監視役にしたわ。
もう同じ悲劇を繰り返さないようにね」
412: 2015/05/19(火) 13:54:53.99
職員「キリークの子供が殺されてからのことは、私たちの一族しかしらないわ。
でも、アナタには知らされてないわね。
アナタは勇者様だから」
勇者「……どうせ、キリークは人々に復讐したとか言うんだろ。
子供殺されたらそりゃムカつくよな」
職員「ええ……。彼女は優れた科学者だったから、ある兵器を作ったのよ。
プスタ・テクルコという破壊兵器よ。それを使って世界を焼きつくしたの」
勇者「……」
職員「そして弟子達に世界を見張るように言い渡した。
もし世界がまた間違いを犯すようなら、勇者様に世界を作り替えさせるように言って、彼女は自頃したわ。
トウガサキの文明が遅れてるのは、世界の発達に干渉しないためでもあるのよ」
勇者「……へっ……へへ。
そんなのただのおとぎ話だろ。アンタは信じてんのか?」
職員「私には本当かは分からないわ。
でも、トウガサキの人は信じてた。
それに、プスタ・テクルコは実在したのよ」
勇者「なんだと?」
職員「400年前には戦争なんて起こってなかった。
ある青年による虐殺が始まったのよ。
肌がピンク色の一族と、私たちの一族に家族を踏みにじられたって言ってね。
その青年が言うには、プスタ・テクルコを作り出せたらしいの。
そして青年はこの国の王になり、それまで支配していた私たちの一族はトウガサキに追いやられた」
勇者「じゃあ、その……プスタなんとかってやつを、王族はまだ持ってるのか?」
職員「いいえ……青年が破壊したらしいわ。
でも、王族の科学力を恐れて、未だに支配が続いているのね」
でも、アナタには知らされてないわね。
アナタは勇者様だから」
勇者「……どうせ、キリークは人々に復讐したとか言うんだろ。
子供殺されたらそりゃムカつくよな」
職員「ええ……。彼女は優れた科学者だったから、ある兵器を作ったのよ。
プスタ・テクルコという破壊兵器よ。それを使って世界を焼きつくしたの」
勇者「……」
職員「そして弟子達に世界を見張るように言い渡した。
もし世界がまた間違いを犯すようなら、勇者様に世界を作り替えさせるように言って、彼女は自頃したわ。
トウガサキの文明が遅れてるのは、世界の発達に干渉しないためでもあるのよ」
勇者「……へっ……へへ。
そんなのただのおとぎ話だろ。アンタは信じてんのか?」
職員「私には本当かは分からないわ。
でも、トウガサキの人は信じてた。
それに、プスタ・テクルコは実在したのよ」
勇者「なんだと?」
職員「400年前には戦争なんて起こってなかった。
ある青年による虐殺が始まったのよ。
肌がピンク色の一族と、私たちの一族に家族を踏みにじられたって言ってね。
その青年が言うには、プスタ・テクルコを作り出せたらしいの。
そして青年はこの国の王になり、それまで支配していた私たちの一族はトウガサキに追いやられた」
勇者「じゃあ、その……プスタなんとかってやつを、王族はまだ持ってるのか?」
職員「いいえ……青年が破壊したらしいわ。
でも、王族の科学力を恐れて、未だに支配が続いているのね」
413: 2015/05/19(火) 13:55:56.84
勇者「くだらねぇな。アンタの話は、何一つ根拠がねぇ。
それにグダグタと無駄になげぇ。
クラウン商会はどうして俺を狙うんだよ?」
職員「アナタが勇者だからよ。世界を作り替えることの出来る、ね。
今の世界は間違ってる。ラジオは無いのにテレビはある。レコードは無いのにCDがある。
それはおかしいことらしいのよ」
勇者「質問を変えればいいか?
アンタらは俺になにをやらせるつもりなんだよ」
職員「この世界を変えてほしいの。
私達が導きやすいように。
それが世界を救う唯一の方法なのよ」
勇者「はは……。残念だが、俺にはなにも出来ねぇよ。
今までに俺がなにかできたか?なにか、勇者様の功績を知ってるのか?」
職員「街を救ったらしいじゃない。魔物の群れを倒してあげたんでしょう?
素晴らしいことだわ」
勇者「魔物は倒したんじゃない、頃したんだよ……!
俺は血まみれになって笑ってた!それだけだ!」
職員「なにを怒ってるのよ。アナタのその力は素晴らしいのよ。
世界を救う力があるわ」
勇者「へっ、やっぱり俺がバカだったぜ。
いくらヤケクソだからって、アンタらに協力しようとするとはな。
アンタの話は理解したくねぇ。もう俺は行かねぇよ。じゃあな」
職員「アナタだって世界は汚いと思ったでしょう?
私たちがトウガサキの出だって知っただけで、世間は眉をひそめるのよ。
トウガサキの悪魔教の信者が、ボランティア紛いの偽善を振り撒いてるってね」
勇者「どうせアンタらの行動が異常だったからだろ。
いきすぎた善意はただの狂気だよ。
もう、ついてくんな」
職員「……アナタも、こんな世界滅べばいいと思わなかった?
氏んだ方がマシだと思わなかった?
私は両親が氏んだときそう思ったわ」
勇者「……」
プシュッ
勇者「な!?」
職員「油断したわね。これでしばらく目は見えないはずよ」
勇者「この……!」
男「ったく、なにいいようにやられちゃってんのよ。
やぁねぇー」
それにグダグタと無駄になげぇ。
クラウン商会はどうして俺を狙うんだよ?」
職員「アナタが勇者だからよ。世界を作り替えることの出来る、ね。
今の世界は間違ってる。ラジオは無いのにテレビはある。レコードは無いのにCDがある。
それはおかしいことらしいのよ」
勇者「質問を変えればいいか?
アンタらは俺になにをやらせるつもりなんだよ」
職員「この世界を変えてほしいの。
私達が導きやすいように。
それが世界を救う唯一の方法なのよ」
勇者「はは……。残念だが、俺にはなにも出来ねぇよ。
今までに俺がなにかできたか?なにか、勇者様の功績を知ってるのか?」
職員「街を救ったらしいじゃない。魔物の群れを倒してあげたんでしょう?
素晴らしいことだわ」
勇者「魔物は倒したんじゃない、頃したんだよ……!
俺は血まみれになって笑ってた!それだけだ!」
職員「なにを怒ってるのよ。アナタのその力は素晴らしいのよ。
世界を救う力があるわ」
勇者「へっ、やっぱり俺がバカだったぜ。
いくらヤケクソだからって、アンタらに協力しようとするとはな。
アンタの話は理解したくねぇ。もう俺は行かねぇよ。じゃあな」
職員「アナタだって世界は汚いと思ったでしょう?
私たちがトウガサキの出だって知っただけで、世間は眉をひそめるのよ。
トウガサキの悪魔教の信者が、ボランティア紛いの偽善を振り撒いてるってね」
勇者「どうせアンタらの行動が異常だったからだろ。
いきすぎた善意はただの狂気だよ。
もう、ついてくんな」
職員「……アナタも、こんな世界滅べばいいと思わなかった?
氏んだ方がマシだと思わなかった?
私は両親が氏んだときそう思ったわ」
勇者「……」
プシュッ
勇者「な!?」
職員「油断したわね。これでしばらく目は見えないはずよ」
勇者「この……!」
男「ったく、なにいいようにやられちゃってんのよ。
やぁねぇー」
414: 2015/05/19(火) 13:57:19.33
勇者「その声は……!なんでこんなとこにいんだよ!」
女「アンタがクラショーに連れ去られたって言うから、助けに来てやったんだ。感謝しな」
勇者「連れ去られたなんて誰が……」
男「俺のカワイー甥っ子の、シュウトから教えてもらったんだよ」
勇者「甥っ子……マジかよ。ああ、だから……」
職員「アナタ達なにを話してるの……!なんなのよ!」
男「俺達は魔王様の手下ですよー。アナタから勇者様を奪いに来ました」
職員「……フフフ、たった二人で私の相手をしようとは。ずいぶんと自信があるようね」
男「いやぁ、正直言って怖いですよ。オシッコちびりそうだ」
女「だから、お前は残ってろって言ったじゃないか。
どうせ役に立たないんだからねぇ」
男「君を一人にする訳いかないじゃない。俺は君の手下なんだから」
女「私はアンタを手下にした覚えはないよ」
職員「私を前に無駄話とは、本当に命知らずね。そっちから来ないなら、私が行くわ」
シュタンッ
男「うひょっ。じゃ、任せた」
女「はいはい。アンタも勇者様を見てるんだよ」
男「オッケー」
グイッ
勇者「なにすんだよ!離せよ!」
男「そばにいると巻き込まれるから。ちょっと逃げましょ」
ズルズル
女「アンタがクラショーに連れ去られたって言うから、助けに来てやったんだ。感謝しな」
勇者「連れ去られたなんて誰が……」
男「俺のカワイー甥っ子の、シュウトから教えてもらったんだよ」
勇者「甥っ子……マジかよ。ああ、だから……」
職員「アナタ達なにを話してるの……!なんなのよ!」
男「俺達は魔王様の手下ですよー。アナタから勇者様を奪いに来ました」
職員「……フフフ、たった二人で私の相手をしようとは。ずいぶんと自信があるようね」
男「いやぁ、正直言って怖いですよ。オシッコちびりそうだ」
女「だから、お前は残ってろって言ったじゃないか。
どうせ役に立たないんだからねぇ」
男「君を一人にする訳いかないじゃない。俺は君の手下なんだから」
女「私はアンタを手下にした覚えはないよ」
職員「私を前に無駄話とは、本当に命知らずね。そっちから来ないなら、私が行くわ」
シュタンッ
男「うひょっ。じゃ、任せた」
女「はいはい。アンタも勇者様を見てるんだよ」
男「オッケー」
グイッ
勇者「なにすんだよ!離せよ!」
男「そばにいると巻き込まれるから。ちょっと逃げましょ」
ズルズル
415: 2015/05/19(火) 13:58:31.00
スタスタ
勇者「……お前らはなんなんだよ。あのオバサンも……」
男「あのオバサンは、お前んとこの先生が見つけたホルモンを注射してんだよ。
だから、魔法が使えちゃうってわけ」
勇者「……じゃあ、お前も注射してんのか?あの女も」
男「俺の女は国の機関にやられたよ。
俺は魔法が使えるようになる道具を使ってるだけ。
お前の先生が作ったのをもとに、魔王様が作ってくれたのよ」
勇者「ケッ……魔法が使えて満足か?魔法なんてなんの役にも立たねぇのによ」
男「あらまぁ、やさぐれちゃって。
俺は、色々と便利だと思うけどね。
それにこれしか方法がないんだよ」
勇者「なにがだよ」
男「……俺の女はもうすぐ氏ぬんだ。俺のせいで、な」
勇者「……?」
シーン…
勇者「戦ってる音が……」
男「もう決着がついたんでしょ。じゃ、そろそろ行きますか」
勇者「……」
スタスタ
職員「」
女「う……あ……」
男「どうやら勝ったみたいだな。良かった」
勇者「良かった……!?こいつ氏にかけてんだろうが!良かったなんて……」
男「……だから今から俺が治すんだよ。
こうなることは分かってたからな。準備は万端だ」
勇者「……どういうことだよ」
男「ま、勇者様を助け出すのは命がけだったってわけ。俺たちにとってね」ヒュッ
ヒュルンヒュルン
勇者「……なにやってるんだよ」
男「体の怪我を治してる。それに頭の中も掃除中だ。
俺のせいで、ずっと血だまりがあったからな……」
勇者「…………話せよ。聞いてやる」
男「全く、優しい勇者様だこと……。じゃあ、少し聞いてもらおうかな」
勇者「……」
416: 2015/05/19(火) 14:00:22.99
ーーー
女「……ん。なんだいここは……」
勇者「やっとお目覚めかよ……頭はなんともねぇのか?」
女「そういえば痛くないね……。いや、そんなことより状況がさっぱりだよ。
なんでこんなところで、私は寝てるんだい?」
勇者「アンタの連れが、アンタを助けたからだよ」
女「私の……連れ……」
勇者「……アンタが記憶喪失だったこと、アイツから聞いたぜ。
アイツが原因だってこともな」
女「そうだ……私は研究員だったアイツの親をころ……なのにアイツの家に逃げ込んだんだ」
勇者「思い出したのか?」
女「ああ……。私はアイツに竹馬で殴られて……あのガキに助けられた……」
勇者「……アンタのこと、アイツは大好きだったんだと。
でも、助けを求めに来たアンタをめった打ちにしちまったらしい。
親を殺されて、その時は我を忘れてたって言ってた。
……後悔してるって言ってたよ」
女「アイツから話は聞いてたが……まさか本当だったとはね……全く。
それで、アイツはどこにいるんだい?」
勇者「……氏んだよ」
女「氏んだ……?」
417: 2015/05/19(火) 14:01:27.84
勇者「アンタを助けるには魔法を使わなくちゃならなかった。
それも難しい魔法だ。俺にもよく分かんねぇようなやつだった」
女「……魔法を使ったから氏んだのかい」
勇者「非現実的な力は……体を溶かしちまうらしい。
……アイツは溶けちまった……」
女「もしかして、あの緑色の塊がそうだとか?」
勇者「……」
女「全く気持ち悪い奴だよ。溶けちまうとは、想像もつかないことをするもんだ」
勇者「触んなよ、溶けるから」
女「……」
勇者「……今まで治さなくて悪かった。辛い思いをさせてごめんね。
これからは自由に生きてくれ、だって」
女「……」
勇者「じゃあ、俺は伝えたから……じゃあな」
女「ちょっと待ちな。私からも頼まれてくれないかい?」
勇者「なんだよ」
女「私も帰れないって、魔王様に伝えてくれ。
……それに気が向いたら、あのガキの友達になってやってくれ」
勇者「……」
女「魔王様は、森を道なりに行った先にいるからねぇ。これが鍵だ」ぽいっ
パスッ
女「……」
勇者「……」
女「頼むから……」
勇者「……仕方ねぇな。行ってきてやるよ」
女「そうかい。助かるよ」
勇者「……またな」
女「はいはい」
スタスタ
それも難しい魔法だ。俺にもよく分かんねぇようなやつだった」
女「……魔法を使ったから氏んだのかい」
勇者「非現実的な力は……体を溶かしちまうらしい。
……アイツは溶けちまった……」
女「もしかして、あの緑色の塊がそうだとか?」
勇者「……」
女「全く気持ち悪い奴だよ。溶けちまうとは、想像もつかないことをするもんだ」
勇者「触んなよ、溶けるから」
女「……」
勇者「……今まで治さなくて悪かった。辛い思いをさせてごめんね。
これからは自由に生きてくれ、だって」
女「……」
勇者「じゃあ、俺は伝えたから……じゃあな」
女「ちょっと待ちな。私からも頼まれてくれないかい?」
勇者「なんだよ」
女「私も帰れないって、魔王様に伝えてくれ。
……それに気が向いたら、あのガキの友達になってやってくれ」
勇者「……」
女「魔王様は、森を道なりに行った先にいるからねぇ。これが鍵だ」ぽいっ
パスッ
女「……」
勇者「……」
女「頼むから……」
勇者「……仕方ねぇな。行ってきてやるよ」
女「そうかい。助かるよ」
勇者「……またな」
女「はいはい」
スタスタ
418: 2015/05/19(火) 14:02:57.63
ーーー
スタスタ ガチャ
勇者「……」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「……俺が起きたらな、あの二人はいなかった。
そしてお前が現れた」
勇者「……」
魔王「……あの二人になにしやがった。勇者様よ」
勇者「……お前に伝言がある。もうあの二人は、ここには帰れないってよ」
魔王「それを伝えに来たのか……?
人の仲間頃しといて、用件はそれだけかよ!」
勇者「俺は頃してねぇよ。
男の方は女を助けるために氏んだ。
女は……俺は知らねぇ」
魔王「……」
勇者「本当に俺は頃してねぇ。
……でも、俺を助けるためにこんなことになったらしい。
だから、謝りに来た」
魔王「……謝る?謝罪なんていらないね。
もう、俺はお前に興味はない。こんな世界にもな!」
スタスタ
勇者「待てよ。……あの女が、お前の友達になってやってくれってさ。
俺に言い残したんだよ」
魔王「じゃあ、親友の勇者様。世界を滅ぼすのを手伝ってくれよ」
勇者「世界を滅ぼす?」
魔王「そーだよ。俺の母ちゃんは科学者だった。
テレビやCDを作り出したのも母ちゃんだ。
その他もろもろ、家電製品のほとんどを手がけたよ」
勇者「……それと世界と、なにが関係あるんだよ」
魔王「母ちゃんは世界を憎んでた。
そして自分の設計に発火する装置を加えたんだ。
そんなことも知らずに、世の中のアホどもは、量産を繰り返してる。
設計図をうのみにして、疑いもせず未だによ。
ここに起動装置があるってのにな!」
勇者「……そんなことしたら、カシマオーノの人もヤバイんじゃねぇのか?
お前の城下町なのに」
魔王「……誰から聞きやがったんだよ。口止めしてたのに」
勇者「お前が薬をくれたおかげで、俺の先生が助かったからな……。
薬の飲みすぎでへばってたの知ってんだろ?」
魔王「まさかアンタのお仲間のためだったとはな……。
そういえば、そのお仲間はどうした。
せっかく魔王の居場所を突き止めたのに、逃げちまったのか?」
勇者「氏んだよ……」
魔王「……!」
419: 2015/05/19(火) 14:04:23.45
勇者「……なぁ、世界を滅ぼすなんてやめろよ。俺達には仲間がいた。
仲間だって世界の一部だろ」
魔王「今はもういない。
……それに、俺は産まれたときから呪われてんだ。
俺の父親は誰だと思う?……俺のじいさんなんだよ!母ちゃんの父親だ!」
勇者「……親だけが全てを決めるわけじゃない。
現にお前は城下町のやつらに慕われてんだろ」
魔王「どうだか。
アイツらは、俺が甘い言葉を囁いたからここにいるだけだ。
装置が完成したら、願いを一つずつ叶えてやるってな」
勇者「装置ってなんだよ」
魔王「プスタ・テクルコだよ。あれの完成のためにアンタが必要だった。
まぁ、今となってはただのガラクタだ」
勇者「プスタ・テクルコってのは破壊兵器じゃねぇのかよ。願いなんて叶わねぇだろ」
魔王「いや、こいつはどんな願いでもひとつだけ叶えてくれるんだ。
アンタもこれを作るために、色んな古代文字の文献読まされただろ?」
勇者「……!」
魔王「だが、もうこいつに用はない。世界を滅ぼせば全てが終わるからな」
勇者「待てって!……お前キリークと同じ間違いをするのか?
世界を焼きつくすんじゃなくて、仲間を生き返らせろよ」
魔王「もういいんだよ!こんな世界に希望はない!
……アンタだって分かるはずだ。俺のイトコなんだからな」
勇者「なんだと……」
魔王「お前の母親は、俺の母ちゃんの姉だ。お前の父親は俺達のじいさんだよ。アハハ」
勇者「まさか……」
魔王「他にも話してやろうか?
アンタの母ちゃんは、人生を諦めて自分とアンタを研究所に売った。
訳の分からねぇホルモンで母ちゃんはボロボロだ。
それをトウガサキのやつがさらった。
助けに来たんだと思うだろ?」
勇者「……」
魔王「でもな、トウガサキのやつらはホルモン注射を続けたんだ。
母ちゃんは氏んで、お前は魔法を使える勇者様だ。
輝かしい過去だよなぁ。えぇ?」
勇者「……」
魔王「ついでに教えてやるよ。お前の愛しのトウガサキを襲ったのは魔物じゃねぇ。
クラウン商会だ」
勇者「……!」
魔王「魔物の村も一個潰せて、いいことづくめだったんだろうな。
で、アイツらのバックにいるのは国だよ。
クラウン商会のパトロンは、なんと国王様だ。
魔物の擁護団体も国お抱えの組織だからな。
アイツらのリンゴと蛇のマークは見たことあるはずだ」
勇者「……」
魔王「これで分かっただろ……この世界は腐ってる!
腐りきってるんだよ!
だから俺がぶっ潰してやるんだ!」
勇者「……ふざけんなよ。それが世界の全てだとでも思ってんのか。
お前は世界の何を見たんだよ」
仲間だって世界の一部だろ」
魔王「今はもういない。
……それに、俺は産まれたときから呪われてんだ。
俺の父親は誰だと思う?……俺のじいさんなんだよ!母ちゃんの父親だ!」
勇者「……親だけが全てを決めるわけじゃない。
現にお前は城下町のやつらに慕われてんだろ」
魔王「どうだか。
アイツらは、俺が甘い言葉を囁いたからここにいるだけだ。
装置が完成したら、願いを一つずつ叶えてやるってな」
勇者「装置ってなんだよ」
魔王「プスタ・テクルコだよ。あれの完成のためにアンタが必要だった。
まぁ、今となってはただのガラクタだ」
勇者「プスタ・テクルコってのは破壊兵器じゃねぇのかよ。願いなんて叶わねぇだろ」
魔王「いや、こいつはどんな願いでもひとつだけ叶えてくれるんだ。
アンタもこれを作るために、色んな古代文字の文献読まされただろ?」
勇者「……!」
魔王「だが、もうこいつに用はない。世界を滅ぼせば全てが終わるからな」
勇者「待てって!……お前キリークと同じ間違いをするのか?
世界を焼きつくすんじゃなくて、仲間を生き返らせろよ」
魔王「もういいんだよ!こんな世界に希望はない!
……アンタだって分かるはずだ。俺のイトコなんだからな」
勇者「なんだと……」
魔王「お前の母親は、俺の母ちゃんの姉だ。お前の父親は俺達のじいさんだよ。アハハ」
勇者「まさか……」
魔王「他にも話してやろうか?
アンタの母ちゃんは、人生を諦めて自分とアンタを研究所に売った。
訳の分からねぇホルモンで母ちゃんはボロボロだ。
それをトウガサキのやつがさらった。
助けに来たんだと思うだろ?」
勇者「……」
魔王「でもな、トウガサキのやつらはホルモン注射を続けたんだ。
母ちゃんは氏んで、お前は魔法を使える勇者様だ。
輝かしい過去だよなぁ。えぇ?」
勇者「……」
魔王「ついでに教えてやるよ。お前の愛しのトウガサキを襲ったのは魔物じゃねぇ。
クラウン商会だ」
勇者「……!」
魔王「魔物の村も一個潰せて、いいことづくめだったんだろうな。
で、アイツらのバックにいるのは国だよ。
クラウン商会のパトロンは、なんと国王様だ。
魔物の擁護団体も国お抱えの組織だからな。
アイツらのリンゴと蛇のマークは見たことあるはずだ」
勇者「……」
魔王「これで分かっただろ……この世界は腐ってる!
腐りきってるんだよ!
だから俺がぶっ潰してやるんだ!」
勇者「……ふざけんなよ。それが世界の全てだとでも思ってんのか。
お前は世界の何を見たんだよ」
420: 2015/05/19(火) 14:06:35.17
魔王「へっ……勇者様も見てきたでしょうよ。
この世界は汚い。そう思いませんでした?」
勇者「思ったね。ろくでもないことばっかりで、心底疲れちまった。
氏にたいとも思ったよ。
……けど、本質は違う」
魔王「本質だと?」
勇者「ああ。どんなやつも、みんな自分が憎いんだ。
でも自分を憎めるだけの強さがない。
だから必氏に演技してるんだよ。
良いやつのふりしたり、子供のふりしたり、愛してるふりしたり、スッゲー辛いのに平気なふりしたり、みんな自分と周りを騙そうと必氏なんだ。
そうしてなんとかやり過ごそうとして、世界を汚していくんだよ」
魔王「……」
勇者「だから、みんなが自分と向き合えば、世界は汚くならねぇんだ。
俺もお前も含めてな」
魔王「はっ……なにをきれいごとを……」
勇者「きれいごとでもなんでもねぇよ。俺はきっとそうだと思いたいだけだ。
……だって俺達『世界が』って言うけど、まだこの国のことしか知らねぇんだぜ?
知ろうとすれば、うまくいってる素敵な国も見つかるかもしれねぇんだぞ」
魔王「……そんな国、存在しねぇかもしれねぇだろ」
勇者「なら、俺達の国がそうなるよう努力したらいいんじゃねぇか。
勇者と魔王が手をとりゃ、怖いものなんかねぇだろ」
魔王「フフ……勇者気取りのアンタには悪いが、魔王はアンタなんだよ。
国が追いかけてる魔王ってのはアンタのことだ。
残念だったな」
勇者「いーや、俺は勇者だ。この状況を打開する策もある」
魔王「なんだって?」
勇者「アンタの仲間が残したメモを見たぜ。
足りないのは『卵の黄身』と『虹』だろ?
文脈から察するに、虹はきっとこいつだ」
スッ
魔王「虹色のアンモナイト……」
勇者「こんな偶然、俺もコエーけどよ。こいつでなんとかならねぇかな」
魔王「ああ……黄身は解決した。
そいつが本当に虹なら、プスタ・テクルコは完成する」
勇者「じゃあ起動装置なんて捨てろよ。アイツらを生き返らせれば終わりだ」
魔王「……単純だな、アンタは。
あの二人を生き返らせても、世界は腐ったままだ。
生き返らせる価値がどこにある?」
勇者「俺達が望むからだよ。生き返らせたいから、生き返らせるんだ。
世界が腐ってるのは今に始まったことじゃねぇしな。
身勝手だなんて言われても、気にしねぇよ」
この世界は汚い。そう思いませんでした?」
勇者「思ったね。ろくでもないことばっかりで、心底疲れちまった。
氏にたいとも思ったよ。
……けど、本質は違う」
魔王「本質だと?」
勇者「ああ。どんなやつも、みんな自分が憎いんだ。
でも自分を憎めるだけの強さがない。
だから必氏に演技してるんだよ。
良いやつのふりしたり、子供のふりしたり、愛してるふりしたり、スッゲー辛いのに平気なふりしたり、みんな自分と周りを騙そうと必氏なんだ。
そうしてなんとかやり過ごそうとして、世界を汚していくんだよ」
魔王「……」
勇者「だから、みんなが自分と向き合えば、世界は汚くならねぇんだ。
俺もお前も含めてな」
魔王「はっ……なにをきれいごとを……」
勇者「きれいごとでもなんでもねぇよ。俺はきっとそうだと思いたいだけだ。
……だって俺達『世界が』って言うけど、まだこの国のことしか知らねぇんだぜ?
知ろうとすれば、うまくいってる素敵な国も見つかるかもしれねぇんだぞ」
魔王「……そんな国、存在しねぇかもしれねぇだろ」
勇者「なら、俺達の国がそうなるよう努力したらいいんじゃねぇか。
勇者と魔王が手をとりゃ、怖いものなんかねぇだろ」
魔王「フフ……勇者気取りのアンタには悪いが、魔王はアンタなんだよ。
国が追いかけてる魔王ってのはアンタのことだ。
残念だったな」
勇者「いーや、俺は勇者だ。この状況を打開する策もある」
魔王「なんだって?」
勇者「アンタの仲間が残したメモを見たぜ。
足りないのは『卵の黄身』と『虹』だろ?
文脈から察するに、虹はきっとこいつだ」
スッ
魔王「虹色のアンモナイト……」
勇者「こんな偶然、俺もコエーけどよ。こいつでなんとかならねぇかな」
魔王「ああ……黄身は解決した。
そいつが本当に虹なら、プスタ・テクルコは完成する」
勇者「じゃあ起動装置なんて捨てろよ。アイツらを生き返らせれば終わりだ」
魔王「……単純だな、アンタは。
あの二人を生き返らせても、世界は腐ったままだ。
生き返らせる価値がどこにある?」
勇者「俺達が望むからだよ。生き返らせたいから、生き返らせるんだ。
世界が腐ってるのは今に始まったことじゃねぇしな。
身勝手だなんて言われても、気にしねぇよ」
421: 2015/05/19(火) 14:08:27.39
魔王「……それでもアンタは身勝手だよ。生き返らせたあとはどうするか、考えてんのか?」
勇者「俺が願うなら……一緒にいたいって願うだろうな。
三人で一緒にいたいって願いを叶えてもらって、あとは自分でなんとかする」
魔王「……もし二人が氏にたいと言ったら?」
勇者「泣きつくよ。泣いてすがって一緒にいてもらう。
土下座でもなんでもするね」
魔王「その先にアンタの思う未来があるのか、アンタは考えないのかよ?」
勇者「しつけぇな……理屈じゃねぇんだよ。会いたいか会いたくねぇかってだけだ。
俺はあの二人に会えるなら地獄に落ちたっていい……それでも会いてぇんだよ。
世界平和なんてあの二人が生き返ったあとでいい」
魔王「…………へっ、俺の装置を使う気満々なんだな」
勇者「手伝ってやるんだから、あたりめーだ。
それに俺は絶対諦めねぇって約束したんだよ」
魔王「……」
勇者「お前も、本当は復讐なんかより大事なことがあるはずだ。
お前が寂しいってことは、俺も分かるよ」
魔王「……」
勇者「泣いてみるとちょっとだけすっきりするぞ。
で、ゆっくり寝る。
メシは俺が作ってやるから、それも食え」
魔王「……なんでそんなに俺に関わるんだよ。願いを叶えてもらうためか?」
勇者「まぁな、それはなにをおいても重要だ。
……それに、今お前の気持ちを一番分かるのは、恐らく俺だからな」
魔王「へっ……大した勇者様だ。
お仲間が氏んでるのに優しいことで」
勇者「……氏んだからだ。なにかをしてないと頭がおかしくなっちまう。
今だって手の震えが収まらねぇよ。
お前も分かるだろ」
魔王「……」
勇者「じゃあ、俺はメシを作るから……しばらくゆっくりしてろ。
起動スイッチは押すなよ」
魔王「信用できないなら奪えよ。勇者様ならお手のものだろ」
勇者「……」
バタンッ
魔王「……」
魔王「……へっ……」
魔王「……へへっ……なんだよ、あの二人が氏んだなんてよ……。
意味分かんねぇ……!!」
魔王「分かんねぇよ……!!」
魔王「……!」ポタッ
ポロポロ
勇者「俺が願うなら……一緒にいたいって願うだろうな。
三人で一緒にいたいって願いを叶えてもらって、あとは自分でなんとかする」
魔王「……もし二人が氏にたいと言ったら?」
勇者「泣きつくよ。泣いてすがって一緒にいてもらう。
土下座でもなんでもするね」
魔王「その先にアンタの思う未来があるのか、アンタは考えないのかよ?」
勇者「しつけぇな……理屈じゃねぇんだよ。会いたいか会いたくねぇかってだけだ。
俺はあの二人に会えるなら地獄に落ちたっていい……それでも会いてぇんだよ。
世界平和なんてあの二人が生き返ったあとでいい」
魔王「…………へっ、俺の装置を使う気満々なんだな」
勇者「手伝ってやるんだから、あたりめーだ。
それに俺は絶対諦めねぇって約束したんだよ」
魔王「……」
勇者「お前も、本当は復讐なんかより大事なことがあるはずだ。
お前が寂しいってことは、俺も分かるよ」
魔王「……」
勇者「泣いてみるとちょっとだけすっきりするぞ。
で、ゆっくり寝る。
メシは俺が作ってやるから、それも食え」
魔王「……なんでそんなに俺に関わるんだよ。願いを叶えてもらうためか?」
勇者「まぁな、それはなにをおいても重要だ。
……それに、今お前の気持ちを一番分かるのは、恐らく俺だからな」
魔王「へっ……大した勇者様だ。
お仲間が氏んでるのに優しいことで」
勇者「……氏んだからだ。なにかをしてないと頭がおかしくなっちまう。
今だって手の震えが収まらねぇよ。
お前も分かるだろ」
魔王「……」
勇者「じゃあ、俺はメシを作るから……しばらくゆっくりしてろ。
起動スイッチは押すなよ」
魔王「信用できないなら奪えよ。勇者様ならお手のものだろ」
勇者「……」
バタンッ
魔王「……」
魔王「……へっ……」
魔王「……へへっ……なんだよ、あの二人が氏んだなんてよ……。
意味分かんねぇ……!!」
魔王「分かんねぇよ……!!」
魔王「……!」ポタッ
ポロポロ
428: 2015/05/20(水) 19:34:15.77
モグモグ
魔王「……」
勇者「うめぇか?これ、先生の焼きうどんを真似したんだ」
魔王「……まぁ、かなりうめーよ」
勇者「良かった……。じゃあ、食い終わったらすぐに装置作れよ」
魔王「作るもなにも、あとは虹を組み込むだけだ。
そんなに手間はかからねぇ」
勇者「そうなのか。あっけないもんだな」
魔王「……完成させんのはな。だけど俺は……」
勇者「なんだよ」
魔王「……あの人に生き返らせないでくれって、頼まれたんだよ。
延命処置もいらないし、人間氏ぬときに氏ぬもんだって……」
勇者「まだ迷ってんのか?
……人間なんて身勝手なもんなんだよ。
お前も、魔王なんてやってたんだから分かるだろ」
魔王「まぁな……あの人と一緒に万引きしたり、壁に落書きしたり……。
くだらないほど身勝手なことばっかしてきたよ」
勇者「でも、それじゃ寂しいから城下町なんて作ったんじゃねぇの?」
魔王「……アンタはどうなんだよ。人のことばっかり言いやがって」
勇者「俺は、積極的に人の人生を引っかき回してきた。相談に乗るふりしてな」
魔王「へっ、ろくでもねぇ勇者様だな」
勇者「……多分、寂しかったからだ。誰かの記憶の中にいたかったんだ。
……でも、今はあの二人がいればなにもいらねぇ」
魔王「……氏んだことを、受け入れるべきだとは思わねぇのか?」
勇者「…………思うけど、お前は諦められんのか?」
魔王「……」
勇者「じゃあ、作ろうぜ。あとちょっとなんだろ?」
魔王「ああ……」
スクッ
429: 2015/05/20(水) 19:37:18.25
ーーーーー
ゆっさゆっさ
勇者「……うーん。まだ眠いんだよ」
バチンッ
勇者「イデッ!なにすんだよボケナス!」
歴史学者「ちゃんと起きてるじゃないか。早く顔洗え」
勇者「あ……待ってくれ」
歴史学者「どうした?」
勇者「もう一回、顔叩いてくれ……」
歴史学者「……」
バチンッ!!
勇者「イテェ!!」
歴史学者「全く、こっちの手だって痛いんだ。
いい加減にしてくれ」
勇者「……」
歴史学者「……大丈夫だ、夢じゃないよ。私はちゃんといる。先生もな」
勇者「……あたりめーだろ。いなきゃ困るっつーの」
スタスタ
医者「ああ……おはよう」
勇者「今日のご飯はなんですか?結構ガッツリ食いたいんすけど」
医者「オムライスだよ。ちょっと甘めに味つけてみた」
勇者「やった。早く食べましょうよ」
医者「そうだね……」
カチャ モグモグ
歴史学者「……」
勇者「……」
医者「……」
歴史学者「……うん、うまい」
勇者「ああ、ほっとする味だな」
歴史学者「うん……」
医者「……なぁ」
430: 2015/05/20(水) 19:38:43.51
勇者「……」
医者「俺はやっぱり……君達といるべきじゃないと思うんだ」
歴史学者「……全く、まだ言ってるんですか?こいつに免じて許してあげるって言ったでしょ」
医者「でも……俺は……」
歴史学者「……あの時は私もタイミングが悪すぎました。
私は自分の思いに忠実に生きようって、それしか考えてなかったんですよ。
そうしなきゃ自分が自分じゃなくなるような気がしてたんです」
医者「……だけど……許されることじゃないよ……」
歴史学者「確かにそうですね。
でも、あの勇者様が泣いてすがりついて来たんですもん。
だから先生だって腹を決めたんでしょう?」
勇者「……」
医者「……俺は君にも酷いことを言った……なのに……」
勇者「そりゃあ傷つきましたけど、本当のことだからこそ傷ついたんです。
俺は自分が一番辛いと思ってるようなやつですから。辛かった……」
医者「……」
勇者「……でも、今はもういいんです。三人でいられないことより辛いことはないですから」
医者「……ごめん……」
歴史学者「さ、そんなことより、さっさと部屋を片付けましょう。
今日はパーティーなんですから」
勇者「そうか……そうだったな」
医者「……じゃあ、俺は料理を作るよ」
勇者「あ、クッキーも作って下さい。俺が食べたいんで」
医者「いいけど……パーティーには出さない方が良いんじゃないかな」
勇者「そんなことないですよ。なぁ?」
歴史学者「うーん、ビミョーだ。
私は好きだけど、やぼったいからな」
勇者「とにかく、作って下さい。いいですね?」
医者「ああ……分かったよ」
医者「俺はやっぱり……君達といるべきじゃないと思うんだ」
歴史学者「……全く、まだ言ってるんですか?こいつに免じて許してあげるって言ったでしょ」
医者「でも……俺は……」
歴史学者「……あの時は私もタイミングが悪すぎました。
私は自分の思いに忠実に生きようって、それしか考えてなかったんですよ。
そうしなきゃ自分が自分じゃなくなるような気がしてたんです」
医者「……だけど……許されることじゃないよ……」
歴史学者「確かにそうですね。
でも、あの勇者様が泣いてすがりついて来たんですもん。
だから先生だって腹を決めたんでしょう?」
勇者「……」
医者「……俺は君にも酷いことを言った……なのに……」
勇者「そりゃあ傷つきましたけど、本当のことだからこそ傷ついたんです。
俺は自分が一番辛いと思ってるようなやつですから。辛かった……」
医者「……」
勇者「……でも、今はもういいんです。三人でいられないことより辛いことはないですから」
医者「……ごめん……」
歴史学者「さ、そんなことより、さっさと部屋を片付けましょう。
今日はパーティーなんですから」
勇者「そうか……そうだったな」
医者「……じゃあ、俺は料理を作るよ」
勇者「あ、クッキーも作って下さい。俺が食べたいんで」
医者「いいけど……パーティーには出さない方が良いんじゃないかな」
勇者「そんなことないですよ。なぁ?」
歴史学者「うーん、ビミョーだ。
私は好きだけど、やぼったいからな」
勇者「とにかく、作って下さい。いいですね?」
医者「ああ……分かったよ」
431: 2015/05/20(水) 19:41:17.32
ーーー
ピンポーン
歴史学者「はいはーい」
ガチャ
カナ「こんちは!遊びに来てやったわよ」
ミカ「なんだ、キレーなとこに住んでんじゃない」
シュウト「ヤッホー、ゾンビのお姉さん」
歴史学者「失礼な!私は不氏身なだけだ」
勇者「よく来たな。ま、入れよ」
ミカ「お邪魔しまーす」
カナ「わぁ、風船がいっぱいね」
勇者「すげぇだろ。ピ工口に作ってもらったんだよ」
シュウト「ピ工口?ああ、遊園地から逃げてきたやつか。
俺達の街にいたよな」
勇者「魔王経由で来てもらった。俺達も顔見知りだからな」
ピ工口「ようこそみなさん。星形にハートにスマイルちゃん。
色々ありますよ」
カナ「私ハートがいい!」
ミカ「私は星かなぁ」
シュウト「俺、スマイルちゃんがいいな」
男「俺もスマイルちゃんもらおうかな」
勇者「お前も風船欲しいのかよ」
男「いいじゃない。だってカワイーんだもの」
勇者「魔王達はどうしたんだ?」
男「俺は今日はこの子達の保護者だから。魔王様のお守りまで出来ないよ」
魔王「テメェのお守りなんかいらねーよ」
男「あらら……」
勇者「よぉ、よく来たな」
女「私を呼ぶってことは、お酒もあるんだろうねぇ」
勇者「多少はな。その抱えてんのはなんだよ」
魔王「これか?電子レンジって言うんだよ。すげぇぞ。テメェにくれてやる」
マリ「ちょっと、後ろつかえてんのよ。早く入って」
歴史学者「マリ……!」
魔王「頼まれた通り見つけ出して来たぜ。
じゃ、俺はジュースでももらおうかな」
スタスタ
432: 2015/05/20(水) 19:42:42.97
歴史学者「よく来てくれた……。会えて嬉しいよ」
マリ「大げさ。これからはカシマオーノに住むし、いつでも会えるよ」
勇者「そうなのか?」
マリ「魔王様からお誘いがあったんよ。この人も一緒にね」
魔物「こんにちは。もう一人のお仲間は?」
歴史学者「奥でご飯つくってますよ。ぜひ声かけてあげてください」
魔物「ええ。では失礼します」
勇者「全く、相変わらずだな。
……でも、元気そうでなによりだ」
マリ「なーに言ってんのよ気持ち悪い。アンタらこそ元気でなによりよ」
歴史学者「ははっ。じゃ、入ってくれ。
先生手作りのご飯が並んでるぞ」
マリ「それはちょっと楽しみね。お邪魔します」
スタスタ
歴史学者「良かった……本当に元気そうだ」
勇者「そうだな。俺もほっとしたぜ」
ピンポーン
勇者「おっ、また誰か来たな」
マリ「大げさ。これからはカシマオーノに住むし、いつでも会えるよ」
勇者「そうなのか?」
マリ「魔王様からお誘いがあったんよ。この人も一緒にね」
魔物「こんにちは。もう一人のお仲間は?」
歴史学者「奥でご飯つくってますよ。ぜひ声かけてあげてください」
魔物「ええ。では失礼します」
勇者「全く、相変わらずだな。
……でも、元気そうでなによりだ」
マリ「なーに言ってんのよ気持ち悪い。アンタらこそ元気でなによりよ」
歴史学者「ははっ。じゃ、入ってくれ。
先生手作りのご飯が並んでるぞ」
マリ「それはちょっと楽しみね。お邪魔します」
スタスタ
歴史学者「良かった……本当に元気そうだ」
勇者「そうだな。俺もほっとしたぜ」
ピンポーン
勇者「おっ、また誰か来たな」
433: 2015/05/20(水) 19:44:23.13
ガチャ
ケンタ「よう」
勇者「おー!お前も来てくれたのか」
ケンタ「まぁ、あの時、酒の誘いは断っちまったからな。
今回は乗ってやるよ」
勇者「いや、もう酒はすすめねぇよ。入ってくれ」
ケンタ「ああ……そういえば言いたいことがあってな」
勇者「なんだよ」
ケンタ「今はそこそこうまくいってる。先生に誉められんのは諦めることにしたよ」
勇者「そうか……。俺もな、やっとうまくいきそうなんだ」
スタスタ
歴史学者「……じゃ、これで全員か?」
コソコソ
歴史学者「ん?」
町長の息子「やべっ」
歴史学者「おい……そこの不審者二人」
町長の息子「ふ、不審者だなんて言うことないだろ!
せっかく来てあげたのに……」
歴史学者「私はアンタには会いたくなかったよ。
よくも私の家を焼いてくれたな」
町長の息子「うっ……それは……」
歴史学者「まぁ、のこのこ来てくれたんだし、許してやる。
その子は誰だ?」
カズキ「……俺は勇者に会いに来たんだよ」
ピタッ
勇者「……カズキ……!」
カズキ「……」
434: 2015/05/20(水) 19:45:47.83
勇者「なんでお前が……」
町長の息子「僕が連れてきたんだ。友達だから会いたいってせがまれてさ」
カズキ「……お前に謝りに来たんだ。ごめん」
勇者「……!」
カズキ「……」
勇者「……じゃあ、あれは幻じゃなかったってわけか」
カズキ「幻?」
勇者「いや……。俺は謝ってもらうより、許してもらいてーけどな」
カズキ「なんでだよ……俺の街のやつが魔物退治なんて頼んだから」
勇者「そんなことはお前の責任じゃねぇよ。
……あんな姿、見せて悪かった」
カズキ「……いいぜ、許すよ」
勇者「そうか……ありがとな」
歴史学者「話しは終わったか?」
勇者「な、なんだよ」
歴史学者「マリを連れてきた。無理矢理な」
マリ「もう、離しなさいよ!」
カズキ「マリなのかよ……!?」
マリ「全く、隠れてようと思ったのに……」
カズキ「良かった……元気だったんだな……」
マリ「……怒んないの?アンタとの約束破ったのに」
カズキ「いや……なんか……嬉しくて泣きそうだ……」グスッ
マリ「ちょっと、やめてよバカ。やっぱりガキね……」グスッ
歴史学者「……じゃ、私達も食べようか。せっかくの料理が無くなる」
勇者「そうだな……食うか!」
カチャ モグモグ
町長の息子「僕が連れてきたんだ。友達だから会いたいってせがまれてさ」
カズキ「……お前に謝りに来たんだ。ごめん」
勇者「……!」
カズキ「……」
勇者「……じゃあ、あれは幻じゃなかったってわけか」
カズキ「幻?」
勇者「いや……。俺は謝ってもらうより、許してもらいてーけどな」
カズキ「なんでだよ……俺の街のやつが魔物退治なんて頼んだから」
勇者「そんなことはお前の責任じゃねぇよ。
……あんな姿、見せて悪かった」
カズキ「……いいぜ、許すよ」
勇者「そうか……ありがとな」
歴史学者「話しは終わったか?」
勇者「な、なんだよ」
歴史学者「マリを連れてきた。無理矢理な」
マリ「もう、離しなさいよ!」
カズキ「マリなのかよ……!?」
マリ「全く、隠れてようと思ったのに……」
カズキ「良かった……元気だったんだな……」
マリ「……怒んないの?アンタとの約束破ったのに」
カズキ「いや……なんか……嬉しくて泣きそうだ……」グスッ
マリ「ちょっと、やめてよバカ。やっぱりガキね……」グスッ
歴史学者「……じゃ、私達も食べようか。せっかくの料理が無くなる」
勇者「そうだな……食うか!」
カチャ モグモグ
435: 2015/05/20(水) 19:47:30.37
ーーー
ガヤガヤ
シュウト「俺は緑の風船な!カナちゃんは黄色を集めてくれ!」
カナ「アハハ!もう、バカ!そんなふうにやったら割れるって!」
ミカ「ねぇ、ジャグリングってできる?」
ピ工口「できるよ。特別にお見せしましょう」
男「おおすげぇ。お手玉なら俺も出来るんだけどなぁ」
魔王「じじくせぇな。お手玉かよ」
女「私もお手玉は好きだったんだけどねぇ」
魔王「いやぁ、とっても素敵!」
ガヤガヤ
勇者「……」
マリ「なに遠い目してんのよっ。勇者様が主役でしょ」
勇者「いや……今日は幸せだなってさ」
カズキ「ふーん。そうは見えねぇけど」
勇者「……」
マリ「……アンタが色々と大変だったのは聞いたよ。魔王が話してくれた」
勇者「……」
カズキ「幸せだなんて、無理に思わなくていいんじゃねぇの。
三人でいるのが幸せだって、思いてぇのは分かるけどさ。
まだ時間がかかんだろ」
勇者「なんだよ、お前ら……。俺は……幸せなんだよ……」
マリ「だから、そんなふうには見えないんよ。無理しちゃダメだって」
勇者「……」
マリ「そんなふうに自分を責めなくても、アンタは幸せになっていいんよ。
アンタがアンタ自身を許したくなくても、許していいんだよ」
勇者「それ……俺が言ったことだろ」
マリ「そうよ。これからずっと辛い顔して生きていくのは馬鹿げてる。
アンタがそう言ったんよ」
勇者「……」
カズキ「話聞いてやっから、言えよ。なにを抱えてる?」
勇者「……生き返らせて良かったのか、分からねぇんだ。
このままずっと、あの二人がギクシャクしてるままなら……こんなこと……」
マリ「……」
カズキ「……」
436: 2015/05/20(水) 19:49:11.57
勇者「……俺はどうしたらいい?あの二人は俺のために一緒にいるだけなんだ……。
もうわかんねぇよ……」
マリ「……じゃ、まだ大丈夫よ。アンタを通して繋がってるんだから」
勇者「えっ……」
カズキ「お前がなんとかしてやれっかもってこと。
まだ可能性はあんだろ」
勇者「本当か……?」
マリ「ええ。それに、アンタ達また旅に出るんでしょ。
王様ぶっ飛ばしに。
みんなで同じ目標追っかけんのはいいことよ」
勇者「……」
カズキ「俺も応援してるよ。あのアンモナイトまだ持ってんだろ?
まー、あれを俺だと思ってさ」
勇者「悪い……あれは使っちまった」
カズキ「使う?なんか使い道あったのか?」
勇者「……あれのおかげで二人が生き返ったんだ」
カズキ「なら、文句はねぇよ。
じゃ、代わりにこれをやる」
ぽいっ
勇者「なんだこれ」
カズキ「怪獣の化石だよ。マリにもやる」
マリ「怪獣じゃなくて恐竜っしょ。ゴジラみたいなのがいたら困るわ」
勇者「……」
カズキ「ま、俺からのアドバイスは心を開くってことだな。
自分が心を開けば相手もまた然り!」
勇者「お前に言われても説得力ねーよ。
……ま、ありがとな」
スタスタ
医者「みなさん、デザートができましたよー……」
シュウト「スゲー!でっけぇケーキだな!」
魔王「本当に手作りかよ。よく作れんな」
歴史学者「ほら、三人とも。
そこでウジウジしてないで、食べようじゃないか」
マリ「じゃ、いっくよー」
カズキ「なんかスゲー豪華だぞ。行こうぜ」
勇者「……ああ!」
スタスタ
もうわかんねぇよ……」
マリ「……じゃ、まだ大丈夫よ。アンタを通して繋がってるんだから」
勇者「えっ……」
カズキ「お前がなんとかしてやれっかもってこと。
まだ可能性はあんだろ」
勇者「本当か……?」
マリ「ええ。それに、アンタ達また旅に出るんでしょ。
王様ぶっ飛ばしに。
みんなで同じ目標追っかけんのはいいことよ」
勇者「……」
カズキ「俺も応援してるよ。あのアンモナイトまだ持ってんだろ?
まー、あれを俺だと思ってさ」
勇者「悪い……あれは使っちまった」
カズキ「使う?なんか使い道あったのか?」
勇者「……あれのおかげで二人が生き返ったんだ」
カズキ「なら、文句はねぇよ。
じゃ、代わりにこれをやる」
ぽいっ
勇者「なんだこれ」
カズキ「怪獣の化石だよ。マリにもやる」
マリ「怪獣じゃなくて恐竜っしょ。ゴジラみたいなのがいたら困るわ」
勇者「……」
カズキ「ま、俺からのアドバイスは心を開くってことだな。
自分が心を開けば相手もまた然り!」
勇者「お前に言われても説得力ねーよ。
……ま、ありがとな」
スタスタ
医者「みなさん、デザートができましたよー……」
シュウト「スゲー!でっけぇケーキだな!」
魔王「本当に手作りかよ。よく作れんな」
歴史学者「ほら、三人とも。
そこでウジウジしてないで、食べようじゃないか」
マリ「じゃ、いっくよー」
カズキ「なんかスゲー豪華だぞ。行こうぜ」
勇者「……ああ!」
スタスタ
437: 2015/05/20(水) 19:50:48.48
ーーーーー
歴史学者「ふわぁーあ。今日は疲れたよ。片付けは明日だな」
医者「そうだね……俺も疲れた。早く寝よう」
勇者「そうですね……」
スタスタ ボフン
歴史学者「あー、布団が気持ちいい。本当に疲れたー」
勇者「なぁ……今日は床に布団しいて寝ないか?」
歴史学者「なんで?」
勇者「……みんなで一緒に寝たいんだ」
歴史学者「……仕方ないな、甘ったれ」
勇者「先生……」
医者「いいよ。俺もそうしたかったから」
バサッ ゴロン
勇者「……」
医者「……」
勇者「……俺、言ってなかったことがあるんです。
言ってもいいですか?」
医者「ああ、いいよ」
勇者「……俺の村が滅ぶ前に……俺……滅べって、思ったんです」
医者「……」
勇者「俺のせいで滅んだんじゃないかって……怖くて言えなかった……」
歴史学者「……」
医者「……俺も、妻と娘を愛してるって思いたかった……自分が悪かっただなんて、考えたくなかった……」
勇者「……」
歴史学者「……じゃあ、私は母親の墓でも立てようかな……立派なやつをさ……」
医者「……」
勇者「……ありがとう」
医者「それは俺のセリフだね。……二人とも、ありがとう」
歴史学者「いえいえ。まぁ、私は過去は振り返らない主義ですから」
勇者「うそくせー」
歴史学者「なんだよ。嘘なんかじゃないさ、たぶんな」
勇者「そうか……」
医者「……じゃあ、もう寝ようか。おやすみ」
歴史学者「おやすみ」
勇者「おやすみ……」
438: 2015/05/20(水) 19:54:19.36
ーーーーー
キコキコ
勇者「王都ってどんなとこなんですか?王様がいるんすよね?」
歴史学者「やっぱゴージャスな感じなんでしょうか。
きらびやかーみたいな」
医者「いや、普通の街と変わらないよ。ただ、大きなお城があるけどね」
勇者「お城か……魔王のヤローのウチみたいなやつですか?」
医者「まぁ、あんな感じかな。壁はまっ白だけど」
歴史学者「なぁ、思ったんだが。
ただ国王を倒したってしょうがないんじゃないか?
この国が変わるわけじゃないだろう」
勇者「まぁな。だから、人助けをして賛同者を地道に増やしていくんだ。
そんで、この国が変わってきたら国王をボコる」
歴史学者「最後のはいらないな。ボコったってろくなことにはならないぞ」
勇者「一発は殴るべきだろ。ってか、殴ったら許してやるんだ。
そこらへんは俺の優しさじゃねぇか」
医者「確かにね。……でも、長い道のりになりそうだ」
勇者「いいじゃないですか。どうせヒマなんだし」
歴史学者「まぁな。ヒマ潰しにはもってこいだ」
勇者「だろ?俺、ナイスアイディーア」
歴史学者「けど、その旅の前に聞きたいことがあるんだ」
勇者「なんだよ」
歴史学者「君の名前は?」
キキッ
勇者「……」
439: 2015/05/20(水) 19:55:47.92
勇者「……」
歴史学者「私はエリカだ」
医者「俺はコウイチだよ。俺も、君の名前は知りたいな」
勇者「……」
歴史学者「……」
医者「……」
勇者「……マコトだよ。これでいいですか」
歴史学者「じゃあ、これからもよろしく」
医者「よろしくね」
勇者「ええ、よろしく。
……ところで、先生はあれつけないんですか?
ヘアバンドとチョーカーでしたっけ」
医者「必要なくなったから。もうあの手袋は使わないからね……」
勇者「……そうですか。あれうっとうしかったから良かったです」
歴史学者「私はチョーカーとかは好きだけどなぁ。
まぁ、先生には似合いませんけどね」
医者「俺もそう思うよ。とれてスッキリした」
勇者「じゃ、そろそろ行きますか。まずは飯屋に」
歴史学者「腹へったもんな。そうだ、あのクッキーはないんですか?」
医者「さっき君が食べたので最後だよ。また焼かなくちゃね」
勇者「じゃ、一旦帰ります?クッキー食べたいし」
医者「うーん……」
勇者「冗談ですよ。この国が平和になったら、また焼いてください。
ゆっくり食べたいんで」
歴史学者「えー、それまで待つのか?せっかくクセになってきたのに」
勇者「うるせー。行くぞ」
この糸が切れかかっていたとしても、俺は離さないと決めた。
これからもずっと、俺は俺のために糸を結ぶ。
何度でも俺が結び続ける。
ー終わりー
歴史学者「私はエリカだ」
医者「俺はコウイチだよ。俺も、君の名前は知りたいな」
勇者「……」
歴史学者「……」
医者「……」
勇者「……マコトだよ。これでいいですか」
歴史学者「じゃあ、これからもよろしく」
医者「よろしくね」
勇者「ええ、よろしく。
……ところで、先生はあれつけないんですか?
ヘアバンドとチョーカーでしたっけ」
医者「必要なくなったから。もうあの手袋は使わないからね……」
勇者「……そうですか。あれうっとうしかったから良かったです」
歴史学者「私はチョーカーとかは好きだけどなぁ。
まぁ、先生には似合いませんけどね」
医者「俺もそう思うよ。とれてスッキリした」
勇者「じゃ、そろそろ行きますか。まずは飯屋に」
歴史学者「腹へったもんな。そうだ、あのクッキーはないんですか?」
医者「さっき君が食べたので最後だよ。また焼かなくちゃね」
勇者「じゃ、一旦帰ります?クッキー食べたいし」
医者「うーん……」
勇者「冗談ですよ。この国が平和になったら、また焼いてください。
ゆっくり食べたいんで」
歴史学者「えー、それまで待つのか?せっかくクセになってきたのに」
勇者「うるせー。行くぞ」
この糸が切れかかっていたとしても、俺は離さないと決めた。
これからもずっと、俺は俺のために糸を結ぶ。
何度でも俺が結び続ける。
ー終わりー
440: 2015/05/20(水) 20:01:18.32
ここで一旦終わりです。長い間ありがとうございました。
一応ですが、続きもあるので興味がある方はぜひ読んでください。
それと、おふざけで作った勇者達のプロフィールがあるのですが、読みたい方は言ってください。喜んでのせるんで。
あと、なにか質問があれば答えます。でも、そんなに作り込んでないので、答えられないかもしれません。
とにかく、本当にありがとうございました!
一応ですが、続きもあるので興味がある方はぜひ読んでください。
それと、おふざけで作った勇者達のプロフィールがあるのですが、読みたい方は言ってください。喜んでのせるんで。
あと、なにか質問があれば答えます。でも、そんなに作り込んでないので、答えられないかもしれません。
とにかく、本当にありがとうございました!
444: 2015/05/20(水) 23:42:49.28
乙
面白かった
面白かった
448: 2015/05/21(木) 12:13:53.10
ー番外編・前編ー
歴史学者「自分を虫に例えるなら、なんだと思う?」
勇者「は?なんだよ突然」
歴史学者「いや、さっきアゲハ蝶のステンドグラスを見かけたんだよ。
なんて優雅なんだろう、まるで私のようだ、と思ってな」
勇者「勝手に言ってろバーカ」
歴史学者「なんだよ冷たいな。先生は答えてくれますよね?」
医者「うーん……虫に例えるとかぁ。なんて言うか、青虫は好きだよ」
歴史学者「えっ」
医者「そんな顔しないで……。生まれたてのやつ限定だから。
変な模様もなくて、ただ緑色で、結構可愛いんだよ」
歴史学者「うーん……青虫ねぇ……」
医者「……ほ、ほら、君も答えなよ。君だけ答えないのはズルいよ」
勇者「なんすかズルいって。俺は虫じゃなくて人間ですもん」
歴史学者「ノリが悪いな。じゃあ、私が考えてやろう。君は…………」
勇者「……ゴキブリ」
歴史学者「は?」
勇者「……俺はゴキブリだよ」
449: 2015/05/21(木) 12:15:26.28
歴史学者「なんとまあ。ゴキブリが好きなのか?」
勇者「まぁな。空も飛べるし、黒いし、触覚もなんとも言えねぇし」
歴史学者「ふーん。でも、そんなこと言われると、なんだか叩き潰しづらくなるな」
勇者「いや、気にすんなよ。ゴキブリは叩かれてこそゴキブリだからな。
コソコソ人の気配伺って、メシも隠れながら食って、みんなに嫌われてさ」
歴史学者「なんだ、自分語りか?なにをいじけてんだ」
勇者「別に。俺はちょうちょ様のお友だちにはなれねぇってことだよ」
歴史学者「蝶だってもとは青虫だったんだぞ。先生と同じ最下層だ」
医者「最下層……」ガーン
勇者「そうか、なら俺の方が上だな。ゴキブリならその気になれば、青虫ぐらい食うだろ。
頭からバリバリと」
医者「……」ゾー
歴史学者「なにを怖いこと言ってんだ。やめろ」
勇者「……ま、そうなりそうになったら、容赦なく叩き潰して下さい。俺は気にしないんで」
歴史学者「全く、無駄な心配だよ。私はのらりくらりと逃げるからな。
蝶のように舞い、青虫を生け贄に捧げてやる」
医者「それだと俺がヤバイね。まぁでも、食べられても諦めるよ。
来世で人間になって、蝶とゴキブリを仲間にするから」
勇者「……先生は優しすぎますねー。じゃあ、俺も青虫を食べるのはやめます」
歴史学者「なら、私は誰を生け贄にすればいいんだ?」
勇者「知るかよ。まぁ、アゲハ蝶なんて食ったら頭悪くなりそうだしな。
やっぱりやめてやるよ」
歴史学者「ふざけるな。アゲハ蝶は栄養価が高いぞ。
頭が良くなるサプリにしてもいいぐらいだ」
勇者「ほらな。バカがうつる」
歴史学者「くーっ、むかつく」
医者「全く、変なケンカしないでよ。あ、食堂があるけど、どうする?」
歴史学者「えー、こんな話をしたあとに食事ですか?」
勇者「お前がふった話だろ。嫌なら外で待ってろ」
歴史学者「私は刺身定食がいいです!」
医者「はいはい。じゃ、入ろっか」
ーつづくー
勇者「まぁな。空も飛べるし、黒いし、触覚もなんとも言えねぇし」
歴史学者「ふーん。でも、そんなこと言われると、なんだか叩き潰しづらくなるな」
勇者「いや、気にすんなよ。ゴキブリは叩かれてこそゴキブリだからな。
コソコソ人の気配伺って、メシも隠れながら食って、みんなに嫌われてさ」
歴史学者「なんだ、自分語りか?なにをいじけてんだ」
勇者「別に。俺はちょうちょ様のお友だちにはなれねぇってことだよ」
歴史学者「蝶だってもとは青虫だったんだぞ。先生と同じ最下層だ」
医者「最下層……」ガーン
勇者「そうか、なら俺の方が上だな。ゴキブリならその気になれば、青虫ぐらい食うだろ。
頭からバリバリと」
医者「……」ゾー
歴史学者「なにを怖いこと言ってんだ。やめろ」
勇者「……ま、そうなりそうになったら、容赦なく叩き潰して下さい。俺は気にしないんで」
歴史学者「全く、無駄な心配だよ。私はのらりくらりと逃げるからな。
蝶のように舞い、青虫を生け贄に捧げてやる」
医者「それだと俺がヤバイね。まぁでも、食べられても諦めるよ。
来世で人間になって、蝶とゴキブリを仲間にするから」
勇者「……先生は優しすぎますねー。じゃあ、俺も青虫を食べるのはやめます」
歴史学者「なら、私は誰を生け贄にすればいいんだ?」
勇者「知るかよ。まぁ、アゲハ蝶なんて食ったら頭悪くなりそうだしな。
やっぱりやめてやるよ」
歴史学者「ふざけるな。アゲハ蝶は栄養価が高いぞ。
頭が良くなるサプリにしてもいいぐらいだ」
勇者「ほらな。バカがうつる」
歴史学者「くーっ、むかつく」
医者「全く、変なケンカしないでよ。あ、食堂があるけど、どうする?」
歴史学者「えー、こんな話をしたあとに食事ですか?」
勇者「お前がふった話だろ。嫌なら外で待ってろ」
歴史学者「私は刺身定食がいいです!」
医者「はいはい。じゃ、入ろっか」
ーつづくー
450: 2015/05/21(木) 12:17:39.12
ここからはプロフィールです。
451: 2015/05/21(木) 12:20:26.28
歴史学者(本名・エリカ) 24才
服装
(最初は赤いジャージとスニーカー)
デニムのロングシャツ
白いスキニーパンツ
貝殻のネックレス
メガネ
大きなトートバッグ
白いスニーカー
好きな歌手
椎名林檎
ゆず
いきものがかり
好きな作家
ゆうきゆう
星新一
苦手な歌
軍歌
演歌
(母親が好きだったから)
好きな早口言葉
かえるぴょこぴょこ~
(ぴょこぴょこっていう語感が好き)
信じてるもの
FSM教
医者(本名・コウイチ) 45才
服装
テーラードジャケット
白いタートルネック
ベージュのズボン
トートバッグ
ヘアバンド
腕時計
好きな歌手
サザンオールスターズ
安全地帯
BUMP OF CHICKEN
Oasis
(ノエルよりオアシスの方が好き)
苦手な歌
クラシック
好きな作家
東野圭吾
海堂尊
好きな早口言葉
生麦・生米・生卵
(早口言葉のボスって感じがするから)
好きなもの
青いふわふわのホコリキャッチャー
ハイビスカスのキーホルダー
服装
(最初は赤いジャージとスニーカー)
デニムのロングシャツ
白いスキニーパンツ
貝殻のネックレス
メガネ
大きなトートバッグ
白いスニーカー
好きな歌手
椎名林檎
ゆず
いきものがかり
好きな作家
ゆうきゆう
星新一
苦手な歌
軍歌
演歌
(母親が好きだったから)
好きな早口言葉
かえるぴょこぴょこ~
(ぴょこぴょこっていう語感が好き)
信じてるもの
FSM教
医者(本名・コウイチ) 45才
服装
テーラードジャケット
白いタートルネック
ベージュのズボン
トートバッグ
ヘアバンド
腕時計
好きな歌手
サザンオールスターズ
安全地帯
BUMP OF CHICKEN
Oasis
(ノエルよりオアシスの方が好き)
苦手な歌
クラシック
好きな作家
東野圭吾
海堂尊
好きな早口言葉
生麦・生米・生卵
(早口言葉のボスって感じがするから)
好きなもの
青いふわふわのホコリキャッチャー
ハイビスカスのキーホルダー
452: 2015/05/21(木) 12:21:31.36
勇者(本名・マコト) 13才
服装
ポケット付きのパーカー
ジーパン
ブラウンのエンジニアブーツ
ショルダーバッグ
好きな歌手
Noel Gallagher
(オアシスよりノエルの方が好き)
苦手な歌
ノエル以外のバラード
好きな本
星の王子さま
(新訳より古い方が好き)
さよならは霊界から
パコと魔法の絵本
人の心はどこまでわかるか
好きな早口言葉
東京特許許可局
(本当は実在しないことを知っている)
好きなマンガ
NARUTO。これより面白いマンガは無いと確信している。
服装
ポケット付きのパーカー
ジーパン
ブラウンのエンジニアブーツ
ショルダーバッグ
好きな歌手
Noel Gallagher
(オアシスよりノエルの方が好き)
苦手な歌
ノエル以外のバラード
好きな本
星の王子さま
(新訳より古い方が好き)
さよならは霊界から
パコと魔法の絵本
人の心はどこまでわかるか
好きな早口言葉
東京特許許可局
(本当は実在しないことを知っている)
好きなマンガ
NARUTO。これより面白いマンガは無いと確信している。
453: 2015/05/21(木) 12:22:54.00
魔王(本名・マサト) 13才
服装
(外に出るときは黒のロングコートと角と自作のお面)
Tシャツ
迷彩のフルジップパーカー
ジーパン
スニーカー
好きな歌手
乃木坂46
KANA-BOON
モー娘。(母の影響で)
苦手な歌
暗い曲
好きな作家
マンガしか読まない
好きな漫画家は中村光となもり
好きな早口言葉
隣の客はよく柿食う客だ
(柿が好きだから)
嫌いなもの
鏡
女・魔王の手下(本名・サヤカ) 25才
服装
(魔王が作ったお面をたまにつけたりする)
黒のVネック
赤いフレアスカート
黒のレザーのロングブーツ
黒のストッキング
ビジュー(?)のネックレス&ブレスレット
好きな歌手
赤い公園
東京事変
ゲスの極み乙女。
苦手な歌
アイドルの歌
好きな作家
宮部みゆき
好きな早口言葉
バスガス爆発ブス自爆
(爆って字はバランスよく上手く書けるから)
服装
(外に出るときは黒のロングコートと角と自作のお面)
Tシャツ
迷彩のフルジップパーカー
ジーパン
スニーカー
好きな歌手
乃木坂46
KANA-BOON
モー娘。(母の影響で)
苦手な歌
暗い曲
好きな作家
マンガしか読まない
好きな漫画家は中村光となもり
好きな早口言葉
隣の客はよく柿食う客だ
(柿が好きだから)
嫌いなもの
鏡
女・魔王の手下(本名・サヤカ) 25才
服装
(魔王が作ったお面をたまにつけたりする)
黒のVネック
赤いフレアスカート
黒のレザーのロングブーツ
黒のストッキング
ビジュー(?)のネックレス&ブレスレット
好きな歌手
赤い公園
東京事変
ゲスの極み乙女。
苦手な歌
アイドルの歌
好きな作家
宮部みゆき
好きな早口言葉
バスガス爆発ブス自爆
(爆って字はバランスよく上手く書けるから)
454: 2015/05/21(木) 12:24:08.88
男・魔王の手下(本名・アキラ) 25才
服装
(魔王が作ったお面をたまにつけたりする。結構気に入っている)
黒のライダースブルゾン
豊天のTシャツ
黒いズボン
黒の編み上げブーツ
シルバーのネックレス
好きな歌手
大瀧詠一
ポルノグラフィティ
たま
keytalk
西野カナ
苦手な歌
なし
好きな作家
有川浩
筒井康隆
スティーブン・キング
金子みすゞ
あまんきみこ
好きな早口言葉
なし
(最後まで言えたことがないから)
服装
(魔王が作ったお面をたまにつけたりする。結構気に入っている)
黒のライダースブルゾン
豊天のTシャツ
黒いズボン
黒の編み上げブーツ
シルバーのネックレス
好きな歌手
大瀧詠一
ポルノグラフィティ
たま
keytalk
西野カナ
苦手な歌
なし
好きな作家
有川浩
筒井康隆
スティーブン・キング
金子みすゞ
あまんきみこ
好きな早口言葉
なし
(最後まで言えたことがないから)
455: 2015/05/21(木) 12:27:41.23
これで終わりです。
書いたあとになんですが、読まなくても全く支障はありません。
でも、魔王側の名前を紹介できたので、満足です。
このあとは、書き終わり次第、続編をのせようと思います。
続編が終わったら、番外編の後編をのせます。
読んでくださってる方、本当にありがとうございます!
書いたあとになんですが、読まなくても全く支障はありません。
でも、魔王側の名前を紹介できたので、満足です。
このあとは、書き終わり次第、続編をのせようと思います。
続編が終わったら、番外編の後編をのせます。
読んでくださってる方、本当にありがとうございます!
引用元: 勇者「ゴキブリ勇者」
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