1: 2011/02/10(木) 18:31:35.81
駅前。

唯「……」

唯「」ソワソワ

唯「」サッサッ

唯「」チョイチョイ

唯「んー……」

唯「」フンッス!

6: 2011/02/10(木) 18:33:43.45
唯「……あっ♪」

唯「おーい、男くーん!!」

男「ちょっ!?」

男「ゆ、唯さん声大きいって!」

唯「えぇ~だってぇ~」

唯「……男くんの顔を見たら嬉しくなっちゃったんだもん♪」

男「」

9: 2011/02/10(木) 18:34:44.77
男「と、とにかく行こう! 早く行こう!(周りの視線が痛い……)」

唯「うんっ!」ギュッ!

男「うぇいっ!? ゆ、唯さん、何をして……」

唯「えへへ~♪」

男「(う、腕に柔らかい感触が……!)」

唯「……いやだった?」

男「そんな! 滅相もございません!」

唯「よかったぁ♪」

10: 2011/02/10(木) 18:35:55.36
男「あ、そういえば待たせちゃってすみません」

唯「いいよぉ、男くんだって待ち合わせの時間には10分も早いじゃない」

男「そういえばそうですよ。なんでそんなに早く来てたんです?」

唯「えぇ~だってぇ~」

唯「男くんに早く会いたかったんだもん」

男「う……///」

唯「それと!」

唯「敬語禁止」

男「」

13: 2011/02/10(木) 18:37:06.71
男「あ、すみません」

唯「ほらっ!」

男「あっ、え、と……ごめん?」

唯「そうそう♪」

男「あ、あの唯さん」

唯「さん付けもだめ~!」

唯「唯、って呼んでほしい、な……」

男「」

18: 2011/02/10(木) 18:38:43.55
男「ゆ、唯?」

唯「はいっ! なんでしょう!」

男「え、あ、いや呼んでみただけ……」

男「あれっ!? なんかこの言い方だと違う意味になってしまう!?」

唯「むふふ……♪」


男「と、とりあえずこの喫茶店に入ろう!」

唯「うんっ♪」

19: 2011/02/10(木) 18:39:58.70
──。

5日前。

唯「(今日も大学疲れたな……)」

唯「(昨日夜遅くまで起きていたから……)」

唯「(ねむ……)」フラフラ

?「危ないっ!!」グイッ

唯「えっ? ふわっ!」ドサッ


パッパーッ! ブオオオォォォ……──。

唯「……」ポカーン

?「大丈夫で……あっ」

唯「え……あっ! この前助けてくれた人!」

男「ま、またあなたですか……」

唯「ふえ~、ほんっとありがとう! まさか同じ場所で同じ人にまた助けられるとは……、お恥ずかしい」

男「俺も同じ人を3度も助けることになるとは思っていませんでしたよ」

22: 2011/02/10(木) 18:41:45.12
唯「えっ、3度? この前と今の2回じゃなくて?」

男「えっ? あ、2回だったか……?」

唯「な~に~? 他にも助けた人がいてごっちゃになってるとか? ヒーローですなぁ」

男「いや、そういうわけじゃ……ところであの」

唯「?」

男「そろそろ俺の上からどいてもらえないと……その……」

唯「!」バッ!

男「はは……」


唯「いや~ほんっとうに! ありがとうございました!」

男「もう気をつけてくださいよ。いつもここに俺がいるわけじゃないんですから」

唯「うん……。あ、待って! あの!」

唯「……メルアド教えてくれない?」

24: 2011/02/10(木) 18:43:14.88
──。

アパートの一室。

唯「それでその教授っていうのが面白い人でね~♪」

憂『そうなんだ~。……ねえお姉ちゃん、なにかいいことでもあったの?』

唯「えっ? ……んふふ~わかっちゃいます~?」

憂『?』

唯「いや~一目で惚れることって本当にあるんですな~♪」


憂『!?』

唯「わたくし平沢唯! 20年生きてきて初めて恋に落ちてしまったようです!」

25: 2011/02/10(木) 18:45:13.17
──。

憂『そんなことがあったんだ~』

唯「うん~♪ これが運命ってやつ?」

憂『それはわからないけど……でもお姉ちゃん、おめでとう!』

唯「えぇ~、おめでとうってのはなんか違うんじゃない?」

憂『そんなことないよ! お姉ちゃんに好きな人が出来たなんて、お祝いしなきゃ!』

唯「そ、そこまでしなくていいよ憂」

憂『ところでお姉ちゃん』


憂『また車にだなんて……本当に気をつけなきゃダメだよ!』

唯「あぅ~……言葉もありません」

28: 2011/02/10(木) 18:47:36.55
──。

喫茶店。

唯「私、このケーキセットで!」

男「俺もそれで」

店員「」カシコマリマシター

唯「……男くん」

男「なに?」

唯「あらためてお礼をさせてください。2度も命を救っていただいて、本当にありがとうございました!」

男「そんな、命なんて大げさな……たかが車くらいで」

唯「いや、車にはねられたら氏んじゃうでしょ、普通に」

男「そういうもんなの?」

唯「そういうもんだよ」

男「そういうもんか……。でも本当に大したことしてないよ」

唯「ううん! お礼してもしきれないくらいだよ。それなのにあつかましいんだけど……」

唯「また……、こうやって誘ったりしてもいい……、かな?」

30: 2011/02/10(木) 18:49:40.25

男「そ、それはもちろん! むしろそれがお礼になるくらい!」

唯「えっ?」

男「いや、忘れてくだ……くれ」

31: 2011/02/10(木) 18:51:01.86
店員「」オマタセシマシター

唯「わぁっ! 美味しそう~♪」

男「ほんとだ」

唯「んん~、美味ひぃ~♪」

男「じゃあ俺も」

男「……あ」カラーン

男「フォークが……」

唯「どうしたの?」

男「へ、変だな……ちょっと手がすべって」

男「うっ」ズキッ!

唯「えっ、何!? だいじょうぶ!?」

男「うん、なんでもない……」

32: 2011/02/10(木) 18:52:34.73
唯「フォーク変えてもらわないと……あっ」ピーン

唯「むふふ~♪ フォークを変えてもらう必要はないよっ!」

男「へ?」

唯「はいっ、あ~ん♪」

男「えっ、ちょっ」

唯「あ~ん♪」


──。

唯「こうしてると、高校のころを思い出すな~」

唯「部活の休憩時間にこうやってケーキを食べたりお茶を飲んだりしてね~」

唯「すっごくかわいい後輩がいてね、こうやってあ~んってしたり~抱きついたり~」

男「目に浮かぶようだよ」

35: 2011/02/10(木) 18:53:58.15
男「でも、部活中にそんなもの食べられるなんて、いったいどんな部活だったの?」

唯「軽音楽部! こう見えてもバリバリのロックミュージシャンだったのだよ!」

男「こう見えても?」

唯「こう見えても」

男「結構イメージしやすいけど」

唯「そんなこと言われたの初めてだよ……嬉しいような嬉しくないような」


男「でも、"だった"ってことは、今は……」

唯「うん、やめちゃったんだ」

男「そんな……どうして?」

唯「ま、まあ、色々とね~。大学生のお姉さんには色々とあるのだよきみ!」

36: 2011/02/10(木) 18:55:24.77
唯「そういえば、男くんは何をしている人なの?」

男「えっ? 高校には行っていたことがあるけど……えっと……」

唯「はは、言いたくなかったら言わなくてもいいよ。プライバシーってやつだね!」

男「ちょっと違うような」


──。

唯「ふぁ~美味しかったぁ」

男「うん。出ようか」

37: 2011/02/10(木) 18:57:15.85
店員「」……エンニナリマース

男「俺が払うよ」

唯「ええっ? ダメだよ! 今日は私のお礼も兼ねてるんだから!」

男「いや、でもここは……」

唯「ダメっ! 私が払うよ!」

男「男の意地ってやつなんですよ」

唯「私にだって女の意地があるのですよ! ……う~ん、じゃあ」

唯「"次"に来たときは私に払わせてよね」

男「」

38: 2011/02/10(木) 18:58:56.75
──。

男「さて、どこに行きましょうか」

唯「私はどこでもいいよ~。男くんと一緒ならっ♪」

男「うっ、あっ……カ、カラオケ! そうだ、カラオケに行こう!」

唯「カラオケ?」

男「軽音楽部だったってことは、歌ったりもしてたんでしょ? 聞きたいな~」

唯「えぇ~。男くんもちゃんと歌ってよ~?」

41: 2011/02/10(木) 19:00:26.37
──。

澪「唯のやつ、まるで恋人を失ったみたいな落ち込みようだったな……」

紬「うん……」

律「おやおや、恋人がいたことなんてない澪ちゅわんからそんな例えが出てくるとは~」

澪「律!」

梓「無理もありませんよ。だって唯先輩は本当に彼のことが……」


──。

カラオケボックス。

男「あの、唯?」

唯「なに?」

男「広い部屋なのに、なんでこんなに密着して座っていらっしゃるんでしょうか……」

唯「えへへ~♪ 私の口からそれを言わせたいのぉん?」

男「あ、いえ、問題ないです……」

44: 2011/02/10(木) 19:02:12.86
男「そ、それじゃあ早速歌ってもらおう!」

唯「え~っ。一方的に聞かせるだけなんてやだよ~?」

男「俺も次に歌うからさ」

唯「そんなのよりさ、デュエットしようよデュエット!」

男「え、えぇ!? いきなり、そんな、俺たち初めてですし……あ、また変な言い方に」

唯「いいからいいからっ♪」ピッ

パヤパヤパッパヤッパヤッ パッパッパヤッパー♪

男「……なぜ3年目の浮気?」

唯「デュエットって考えて、真っ先にこれが浮かんだ~」

46: 2011/02/10(木) 19:03:49.44
──。

男「ふ~っ(恥ずかしかった……色々な意味で)」

唯「すご~い、100点だって! 私たちったらもしかして相性抜群!?」

男「え、あ、そうかもね。俺もすごく歌いやすかったよ」

唯「えへへ」

唯「(別の意味も含ませたつもりなのにぃ)」

47: 2011/02/10(木) 19:05:02.31
──。

通り。

男「いや~、あっという間に時間がたってしまった」

唯「好きな人と一緒にいる時間は、速く感じるっていうもんね~」

男「えっ」

唯「……」

男「……うん、そのとおりだと、思、う」

唯「~!///」ギューッ

男「……///」ポリポリ

48: 2011/02/10(木) 19:06:45.51
──。

駅前。

男「今日は誘ってくれてありがとう。すごく楽しかった」

唯「うん、私も嬉しかった……」

男「……」

唯「……」


唯「まだお別れしたくない」

51: 2011/02/10(木) 19:11:18.59
男「えっ」

唯「男くんのおうちに行きたい、な……」

男「えっ……」

男「」ズキッ!

男「ぐっ……!」

唯「お、男くん!? どうしたの!?」

男「いや、なんでも……」

男「電車、乗ろう……」

唯「……うん」

52: 2011/02/10(木) 19:13:25.23
──。

唯「へぇ~っ。この駅、実家にいたころよく使ってたよ~」

男「そうなんだ」

唯「今は一人暮らししているんだけどね~。ほら、あのときの交差点の近くのアパートなんだよ」

唯「憂がいないと家事とか大変だけど……あっ、憂っていうのは妹ね! 大変だけど楽しいよ~」

男「へぇ」

唯「でも、少しさびしいかな……」

男「……」

53: 2011/02/10(木) 19:15:13.33
──。

唯「夕日が綺麗ですな~」

男「うん……」

唯「ねえ、知ってる?」

唯「夕日にはね、見た人に昔を思い出させる力があるんだって」

男「昔って?」

唯「思い出話から、前世の記憶まで……」

男「それはそれは」

唯「夕日を見た赤ちゃんが泣くのも、前世で氏んじゃったときのことを思い出しちゃうからなんだって~」

唯「まあ、漫画の受け売りなんだけどね~」

男「へぇ……」

54: 2011/02/10(木) 19:16:20.20
──。

唯「おお、方向まで実家と同じだよ!」

男「ほんとに?」

唯「うんっ。もしかしたら、これまでにも何度も会っているのかもね~」

男「そんな気がするよ」

男「……初めて会った気がしない。前からずっと唯のことが好きだったような気がする」

唯「~っ!!///」ボッ

55: 2011/02/10(木) 19:19:34.85
──。

男「つい……た」

唯「え……」

男「……」

唯「どう……したの?」


唯「ここ、私の実家だけど……」

唯「男くんの……おうちは……?」

58: 2011/02/10(木) 19:36:21.03
男「……どうして」

唯「えっ?」

男「あれ……俺……なんで、この家……なんで……」

唯「お、男くん?」

男「」ズキッ!!

男「うっ、ううっ」

唯「えっ、なにっ!? どうしちゃったのっ!?」

男「頭が……! どうして、どうしてっ……!!」

唯「男くんっ!!」ギュッ!!

男「あっ……」

唯「大丈夫……落ち着いて。大丈夫だからね……」

男「(あたたかい……懐かしい……)」

男「(前にもこうやって抱きかかえられていたことがあるような……)」

59: 2011/02/10(木) 19:38:53.13
──。

2年前。

病院。

憂「先生っ! お姉ちゃんは!?」

医者「妹さんですか。大丈夫です、命に別状はありません。全く」

医者「ブレーキも間に合ったんでしょうか、押し倒される形で転んで頭を軽く打って気を失っていますが、怪我は肘の擦り傷だけです」

憂「そうですか……」

医者「ですが」

唯「う……い……?」

憂「!! お姉ちゃん!」

唯「憂……あれ、ここは……?」

ガラッ!

律「唯!! 無事かーっ!!?」

澪「律! 病院だぞ、静かにしろっ!」

60: 2011/02/10(木) 19:40:55.46
──。

律「梓……あれは……」

梓「直りませんよ。完全に壊れてしまっていて、どうこうできるレベルでは……」

律「だよなぁ」

澪「唯のやつ、まるで恋人を失ったみたいな落ち込みようだったな……」

紬「うん……」

律「おやおや、恋人がいたことなんてない澪ちゅわんからそんな例えが出てくるとは~」

澪「律!」

梓「無理もありませんよ。だって唯先輩は本当に彼のことが……」



梓「ギー太のことが大好きでしたから」

61: 2011/02/10(木) 19:43:28.67
──。


唯「ギー太……」


男「ギー、太……俺の名前……」


唯「やっぱりそうなんだ……」


男「わからない……俺は……」


唯「ううん、きっとそうだよ」


唯「私が一目で好きになったんだもん! ギー太に決まってるよぉっ……」ギュゥッ

64: 2011/02/10(木) 19:47:07.55
唯「大学に入学したてで浮かれていてね、私馬鹿だから」


唯「憂に散々言われていたのに、左右の確認もおこたってね……あの交差点で」


唯「あのね、ギー太が私の背中にいてくれたからね、私は助かったんだよ」


男「唯……俺……」


唯「へへっ。私、ギー太に助けてもらってばっかりだねっ。3回も……」グシュッ

65: 2011/02/10(木) 19:49:37.33
男「唯……」


唯「なに……?」


男「また……ギターを弾いてほしい」


唯「無理だよぉ……。ギー太はもう……」


唯「ギー太以外のギターに浮気なんて……出来ないよ……」


男「だめなんだ……。唯は、そんなことで音楽を捨てちゃいけない」

66: 2011/02/10(木) 19:52:15.82
男「一緒に歌って……楽しかった。自分が歌うのももったいないくらい、ずっと聞いていたかった……」


男「同じように思っているやつが、他にもいるだろ……?」


唯「……」スンッ


男「まだ俺たちの知らないところにも、たくさんいるはずだ……」


男「そして、唯自身も……」


唯「……」

67: 2011/02/10(木) 19:54:45.66
男「唯……お前は幸せにならなきゃ……」


男「俺なんかの幻影にとらわれて、止まっていちゃあいけないんだ……」


男「はは……苦しそうにしていながら、饒舌すぎたかな……?」


男「唯のおかげで、こうなれるんだ……」


男「俺を手に取ってくれて……俺の手を取ってくれて……」

69: 2011/02/10(木) 19:58:45.10
唯「……っ!」ギュゥーッ


唯「!?」フッ


唯「ギー太!!!」


唯「……」


唯「ギー太ぁ……」




──。


唯「……」グシュグシュ

70: 2011/02/10(木) 20:01:46.29
唯「……」グッ


唯「」ピッピッ


唯「もしもし、りっちゃん?」




──。

唯「そんなわけで、放課後ティータイムに復帰することになりました!」

澪「に、にわかには信じがたい話だが……」

律「とりあえず、その交差点お祓いしてもらえ」

71: 2011/02/10(木) 20:07:14.11
紬「いえ、むしろ唯ちゃん自身を」

梓「単に唯先輩の注意力がないのがいけないんです! しっかりしてくださいよ、もういい歳なんですから」

唯「うーっ、みんながひどいよう」

律「それにしても、その男くんってのは、つまるところギー太の幽霊みたいなものなのかな?」チラッ

澪「ゆ、ゆうれいっ!?」ガタッ

紬「こわがらなくて大丈夫よ~」ナデナデ

72: 2011/02/10(木) 20:09:46.04
唯「うーん、どうなんだろう。触れることは出来てたし……」

律「きっと、壊れたときからずっとあの場所にいて、唯を助けなきゃっていう強い思いから姿を現したんだな」

梓「地縛霊ですか」

澪「じばくれいっ!?」ガタタッ

紬「それか、ずっと唯ちゃんのそばで唯ちゃんのことを見守っていたのかも」

澪「はいごれいっ!?」ドタッ

梓「澪先輩、どおどお」

律「それなら、ギー太は今でも唯のそばにいるのかもしれないな」

唯「そうなのかな? そうだったら嬉しいな……」

律「たとえば……ほらっ! 今カーテンが揺れたのはギー太の仕業だ!」

澪「い、いやああああぁぁっ!!」バタバタ

唯「澪ちゃ~ん、幽霊は幽霊でもギー太の幽霊だよ~? 怖くないよ~」

紬「それにしても、男の人にデレデレする唯ちゃんをこの目で見られなかったのは惜しいわ……」

梓「この人たちはほんとに……」


おしまい。

引用元: 唯「今日はデート!」