1: 2021/11/06(土) 18:12:12.742
DQN「君、あの男の彼女?」

女「はい、そうですけど」

DQN(ふーん、ちょっとからかってやるか)

DQN「よっと」ガシッ

女「なにするの!」

DQN「イェ~イ、見てるゥ~? お前の彼女、俺のもんになっちゃい……」

男「ボク……目が見えないんです」

DQN「え!?」

6: 2021/11/06(土) 18:15:10.951
DQN「全く見えないのか?」

男「はい……」

DQN「病気か?」

女「メーミエン病って難病なの」

DQN「聞いたことはあるな。治す方法はないのかよ?」

女「あるけど……とてもお金がかかるの」

DQN「どのぐらいだよ?」

7: 2021/11/06(土) 18:18:11.640
女「特殊な手術が必要で、最低でも1000万円」

DQN「1000万……!」

女「受けたって治る保証はないしね」

DQN「マジかよ……」

男「せっかく見てるっていってくれたのに、目が見えなくてすみません……」

DQN「あ、いや、お前全然悪くねえし……」

DQN(俺は……なんてことを……!)

9: 2021/11/06(土) 18:21:34.974
……

DQN「よっ、また会ったな」

女「あら、こんにちは」

男「この声はこの間の……こんにちは」

DQN「あのさ、こないだ手術に金かかるっていってたろ? で、俺こう見えてバイトで結構稼いでんだ」

DQN「よかったら……」

女「あ、彼そういうのは受け取るつもりはないらしくて……」

DQN「え」

女「誰かの負担になりたくないって気持ちがあるみたいだから」

DQN「あ、そうなのか」

10: 2021/11/06(土) 18:21:39.179
DQN「聞いたことはあるな。治す方法はないのかよ?」
インテリDQN

13: 2021/11/06(土) 18:24:31.051
DQN「だがよ、どうやって1000万を稼ぐつもりなんだ?」

女「彼、絵を描いてるの」

DQN「絵?」

女「目が見えない中、自分が見てる世界を描いてるんだって」

DQN「ふーん、いい絵だな(俺には絵は分からねえが、お世辞でなくそう思う)」

DQN「これを売ってるってわけか」

女「そう」

DQN「今までにどのぐらい売れてるんだ?」

女「……ぐらい」

DQN(1000万貯まるまでどんぐらいかかるか分からねえな)

14: 2021/11/06(土) 18:28:15.446
DQN(このままじゃ……よし)

DQN「なぁ」

男「なんです?」

DQN「募金活動していいか?」

男「募金……」

DQN「メーミエン病の治療費を、町ゆく人に募金するんだ」

男「ボク、あまりそういうのは……」

女(このままじゃ到底1000万なんか集まらないし……)

女「なにも全財産募金箱に放り込む人なんていないだろうし、やってもらったら?」

DQN「そうだぜ! 時には頼ることも必要だ!」

男「……分かりました。ぜひお願いします!」

DQN「おう! 俺が勝手にやることだから、気にすんなよ!」

15: 2021/11/06(土) 18:31:32.091
DQN「メーミエン病で苦しんでる人がいます!」

DQN「どうか、少しでいいのでご協力をお願いします!」



ザワザワ… スタスタ…

「ウソくせー……」

「どうせ詐欺だろ」

「あんなのに金入れるなら、ジュースでも買った方がマシだぜ」



DQN(誰も金を入れやしねえ。そう甘くねえか)

18: 2021/11/06(土) 18:35:17.433
酔っ払い「ウ~イ……募金か」

DQN「10円でもいいから入れてくんねえか。おっちゃん」

酔っ払い「だったら1000円を……」

DQN「!」

酔っ払い「入~……」

酔っ払い「れない」サッ

DQN「……!」

酔っ払い「入れると思ったか? バ~カ! ウケケケケケケケ!」

DQN(クソがッ! 我慢だ我慢……)

19: 2021/11/06(土) 18:37:01.539
良い奴だな

21: 2021/11/06(土) 18:37:32.123
DQNとは一体

22: 2021/11/06(土) 18:38:31.629
不良「お、DQNじゃん」

ピアス「なにしてんだ?」

DQN「(ゲ……)見りゃ分かるだろ、募金だよ募金」

不良「募金~? ギャハハハハ! マジかよ!」

ピアス「お前が募金て、バイキンマンがパン作るようなもんじゃね?」

不良「ウケる!」

DQN「うるせえな。冷やかしならとっとと帰れ」

不良「そうはいかねえよ。お前には一度やられてるからな」

DQN「あ?」

23: 2021/11/06(土) 18:40:01.470
ばいきんまんがパン作るってセンスあるな

24: 2021/11/06(土) 18:41:36.528
不良「あ、そうだ。殴らせてくれよ。そしたら一万入れてやる。どうだ?」

DQN「……!」

DQN(俺は病気の奴をからかっちまった……これぐらい!)

DQN「いいぜ、殴らせてやるよ」

不良「じゃ、いっぱーつ!」

バキッ!

DQN「うげっ!」

ピアス「俺は蹴りな!」

ドボッ!

DQN「ぐほっ!」

ガッ… ドガッ… ドコッ…

25: 2021/11/06(土) 18:44:12.866
DQN「うう……」

不良「じゃあ約束通り……あ、わりー、100円しか入ってねーわ」

ピアス「入ってねえならしょうがねえな!」

不良「ほらよ」チャリンッ

DQN「ぐ……」

不良「じゃあなー!」

ピアス「どっかでメシ食って帰ろうぜ! 1000円くれーの!」

ギャハハハハ…

28: 2021/11/06(土) 18:48:21.612
……

DQN「募金お願いしまーす」

不良「よう、また来たぜ」

ピアス「へへへ……」

不良「今度はちゃんと払うから、また殴らせてくれよ」

DQN「……やれよ!」

不良「ヒャッハーッ!」

バキィッ!

29: 2021/11/06(土) 18:51:41.274
DQN「がはっ……」

不良「トドメ刺してやるよ!」

DQN「ぐう……!」

大男「やめろ」ガシッ

不良「ひっ!」

ピアス「なんだてめえ!」

大男「消えろ。消えないと叩き潰す」

不良「……! く、くそっ!」

ピアス「ちっ!」

タタタッ…

大男「立てるか?」

DQN「ああ、すまねえ……てか、ホントあんた誰だよ」

30: 2021/11/06(土) 18:55:12.426
大男「ここ数日、お前を見てた者だ」

DQN「俺を?」

大男「最初はふざけて募金をやってるのかと思ったが、どうやらそうではないと分かってな」

大男「俺も治療費に協力させてもらおう。なんなら募金を手伝わせてくれ」

DQN「あ、ありがとよ……」

大男「ではやるか。メーミエン病患者の治療費に、皆様のお気持ちをお願いしまーす!」

DQN「お願いしまーす!」

33: 2021/11/06(土) 18:58:08.808
その後も仲間は増えていき――

リーゼント「俺も手伝わせてくれ!」

眼鏡「僕も!」

ギャル「アタシもやりたーい!」

DQN「協力してくれてありがとう!」

DQN「だが、あまり自分を削ってまで活動するなよ! あいつはそういうの望んでねえから!」

37: 2021/11/06(土) 19:08:24.364
ある日――

ドレッド「あのさー」

DQN「なんだ?」

ドレッド「俺っち、動画配信やってんだけど……」

DQN「おお、そういや結構人気らしいな」

ドレッド「メーミエン病の人、絵を描いてんだろ? 動画で宣伝してみたらどうだ?」

DQN「宣伝かぁ、いいかもしれねえな!」

38: 2021/11/06(土) 19:10:46.199
DQN「どうだ?」

男「宣伝ですか……」

女「配信する人に負担をかけるわけじゃないし、やってもらおうよ」

DQN「ああ、きっと買い手がつく!」

男「分かりました。お願いします!」

DQN「おう!」

男「すみません、なにからなにまで……」

女「長年連れ添ってる私ですら、そこまでやらなかったのに……」

DQN「いや、いいんだ。からかおうとした借りを返してるだけさ」

39: 2021/11/06(土) 19:12:36.276
ドレッド「さて、あのカメラで撮るわけだが……どんな動画にする?」

ドレッド「絵を見て、みんなで褒め称える感じにするか?」

DQN「いや、そういうわざとらしいのはやめよう」

DQN「あくまで絵を映して、絵そのものを見てもらう……って感じにいたい」

ドレッド「だが、それじゃ全然売れないかもしんねえぞ?」

DQN「そん時はそれがあいつの実力ってことだろ」

ドレッド「……その方がいいかもな。分かった、さっそく撮るぞ」

40: 2021/11/06(土) 19:14:44.368
~動画~

DQN「これから紹介する絵は……メーミエン病の奴が描いたものだ」

DQN「今そいつは治療費を稼ぐため、これらの絵を売っている」

DQN「もし絵に感動したら、どうか買ってくれ!」

DQN「ただし、同情心とかで買うのはやめて欲しい。あくまで絵がすげえと思ったら、だ」

DQN「じゃ、まず最初の作品から紹介する……」

…………

……

42: 2021/11/06(土) 19:18:14.945
女「動画が受けて、かなり絵が売れるようになったわ!」

男「……ありがとう」

DQN「いや、動画を配信してるのは俺じゃねえし、お前の絵にちゃんと魅力があったからだよ」

男「でも……アイディアは君じゃないか」

女「私たち、とっても感謝してるのよ」

DQN「よ、よせやい。照れるぜ……」

44: 2021/11/06(土) 19:21:07.415
やがて――

富豪「君かね、これらの絵を描いてるのは」

男「はい」

富豪「どの絵もとても素晴らしい。君が盲目であることとは関係なくね」

富豪「同情ではなく、正当に実力を評価した上で、高値で買わせてもらいたい」

女「ホントですか!」

男「ありがとうございます!」

DQN「やったな!」

男「ありがとう、DQN君!」

46: 2021/11/06(土) 19:24:09.841
女「これで……やっと手術できるよ!」

男「うん」

女「手術は海外ですることになるけど、もう一人は付き添いが欲しいね」

男「そうだね」

男「あのDQN君、できれば……」

DQN「俺でいいのか?」

男「君がいいんだ」

DQN「分かった……付き添わせてもらうぜ!」

49: 2021/11/06(土) 19:27:10.976
……

名医「ヘロー」

男「ヘ、ヘロー」

女「あなたが手術をしてくれるお医者さん?」

名医「そうでーす!」

DQN(なんだよ、日本語ペラペラかよ)

DQN「え、と……絶対助けてくれよな」

名医「助ける? ノンノンノン」チッチッチッ

DQN「え?」

名医「彼はもう助かってる。ワタシの手術を受けるんだからね」

DQN(なんつー自信たっぷりな……だが頼もしいぜ)

50: 2021/11/06(土) 19:30:05.164
手術が始まった。

女「始まったね……」

DQN「ああ……」

女「……」

DQN「……」

女「どうして?」

DQN「え?」

女「どうしてここまでしてくれたの? 見ず知らずの彼に対して……」

DQN「ああ、そのことか」

52: 2021/11/06(土) 19:33:38.392
DQN「俺は……お袋を病気で亡くしててな」

女「えっ……」

DQN「だから病気の人は絶対からかわねえって決めてたんだが……」

女「彼をからかったら、メーミエン病だったわけね」

DQN「そうだ。だから絶対助けてやろうと思ったんだ」

女「本当に助かったよ。あなたがいなきゃ、手術をいつ受けられたか分からない」

DQN「俺はきっかけを作っただけだよ。あいつの絵が評価されて金が集まったんだから」

53: 2021/11/06(土) 19:36:10.737
ギィィ…

名医「……」

女「あっ!」

DQN「手術は!?」

名医「成功(サクセス)!」ビシッ

女「ありがとうございます!」

DQN「やったぜぇ!」

名医「明日、包帯を取ろう。すっかり目が見えるようになってるはずだ」

57: 2021/11/06(土) 19:39:23.899
次の日――

女「さ、彼のところに行こう!」

DQN「……」

女「どうしたの?」

DQN「俺は……いいや」

女「どうして!?」

DQN「あいつ……俺を見たらきっとガッカリする」

女「そんなことないって!」

DQN「とにかく俺はやめとく。一人で行ってくれ」

女「……分かったわ」

58: 2021/11/06(土) 19:42:16.904
名医「さあ、包帯を取るよ」

シュルルッ…

男「……」

女「ヤッホー」

男「……」

女「見える?」

男「うん、見えるよ」

女「どう? 私の顔は? 感想を聞かせて欲しいな」

男「とても綺麗だよ。想像通りだ」

女「ありがとう! だけど、そこは想像以上っていってほしかったな~」

男「ご、ごめん」

女「アハハ、冗談だってば!」

59: 2021/11/06(土) 19:45:12.135
男「ところで……DQN君は?」

女「ああ、彼は……ちょっとね」

コソッ

女「って、すぐそこまで来てるじゃない! 入ってきなよ!」

男「そうだよ。ボクは……君の顔を見たいんだ。ぜひ見せてくれないか」

DQN「……」

DQN「分かった……ガッカリさせちゃうだろうけど……」

女「私が大丈夫だったんだから、大丈夫だって!」

61: 2021/11/06(土) 19:48:01.612
DQN「よ、よう」

男「……」

DQN「すまねえ。こんな悪そうなツラで」

男「ううん。想像通り、とても優しそうな人だ」

DQN「マジかよ。ハハ……ありがとよ」

女「あーあ、妬けちゃうなぁ。私の顔見た時よりいい表情してるもん」

男「そ、そうかな?」

アッハッハッハ…

62: 2021/11/06(土) 19:48:30.340
イイハヤシダナー

63: 2021/11/06(土) 19:51:22.987
男「本当にありがとうございました」

名医「いやいや、これから頑張ってくれたまえよ」

女「日本に帰ったらどうするの?」

男「また……絵を描きたいんだ」

DQN「お前なら、目が見えるようになったら、もっとすごい絵を描けると思うぜ!」

男「うん、きっとそうしてみせるよ、DQN君!」

女「私も精一杯サポートするからね!」

64: 2021/11/06(土) 19:54:25.867
しばらくして、男は視力を得て第一作目となる絵を発表した。

題名は――

『ボクが見てる景色』

そこには優しい笑顔を浮かべる彼女とDQNの姿が、鮮やかな筆致で描かれていた。

男は画家として、更なる飛躍を遂げることとなる。









65: 2021/11/06(土) 19:55:07.893
おつ

73: 2021/11/06(土) 20:09:18.081

いい話を見ることが出来たわ

引用元: DQN「イェ~イ!見てるゥ~?」男「ボク……目が見えないんです」