1: 2014/05/06(火) 16:30:10.18
ー魔王の宮殿ー

ワイワイガヤガヤ

魔王「皆の者、静まれぇー!」

「魔王様だ!」
「今日も麗しゅうございますー!」
「魔王様ー!」
「モフモフしたいお!」

魔王「静まれと言ったそばからうるさくするなぁー!」

シンッ ……

魔王(今度は静か過ぎる……)
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1302100759/

2: 2014/05/06(火) 16:32:37.92
魔王「えー、君達魔族に集まって貰ったのは言うまでもない」

魔王「この中から対勇者用の魔物を一匹、選出するためだ!」

ザワザワ

竜「ちょいと待ちな、魔王様は一人でも勇者に勝利してきたじゃねぇか」

竜「別に俺達の協力なぞ無くても良いだろう」

魔王「そう、私は今まで全ての戦いにおいて勇者に勝利している」

魔王「しかし……」

魔王「勇者まだピンピンしてんだよ! 擦り傷の一つも負ってねぇの!」

魔王「これっておかしくない!?」

3: 2014/05/06(火) 16:35:08.64
竜「まぁなー」

ゴブリン「割とどうでもいい」

魔王「私は勇者の『息の根』を止めたいんだよ!」

竜「誰かが5で止めてやがる……」

ゴブリン「誰ですかねぇ」

人魚「あら、私じゃないわよ」

魔王「なに七並べとかしてんの!? 国の危機よりゲームの方が重要なわけ?」

4: 2014/05/06(火) 16:37:48.92
竜「そう熱くなりなさんな。勇者だってすぐには来ねぇよ」

魔王「あいつら遊牧民族なんですけど……馬に乗ってパカラって来るんですけど……」

魔王「火矢とか平気で使うし……」

ゴブリン「ちゃんと馬止めは作ったのかい?」

魔王「いや……スライム程度なら」

ゴブリン「なるほど、これは統治者に問題がありますな」

ゴブリン「もっと早くから堤防を築いておくべきだったのですよ」

5: 2014/05/06(火) 16:41:37.33
魔王「とにかく! 5分後に面接を開始するから各々準備するように!」

魔物達「ふわ~い??」

魔王(ぬっ……)

魔王(士気が低い……これでは勇者を屠れないではないかっ)

魔王(今まで通り一人で闘えば良かったのか……?)

魔王(いや、些細な事を気にしている様では魔王稼業はやって行けぬ)

魔王「ではNo.1、入れ!」

6: 2014/05/06(火) 16:47:27.68
サラマンダー「こんにちは~」

魔王「君は何ができる」

サラマンダー「火が吐けます」

魔王「つまらん、却下」

サラマンダー「はい?」

魔王「火が吐けるなど、人間でもできる芸当だ。つまらんよ」

サラマンダー「え……」

魔王「おい、帰って良いぞ」

サラマンダー「えっえっ?」

魔王「No.2、入れ!」

7: 2014/05/06(火) 16:48:32.76
ゴーレム「ウッス!」

魔王「君は何ができる」

ゴーレム「硬くてデカいです!」

魔王「素早くはないのか」

ゴーレム「ふぁい!」

魔王「なら却下、勇者は馬に乗っているのだぞ。君みたいな『でくの坊』ではまるで相手にならん」

魔王「帰って良いぞ」

ゴーレム「ショボーン」

魔王「No.3、入れ!」

8: 2014/05/06(火) 16:51:44.86
竜「うぃーっす」

魔王「なんだ、君か」

竜「ゴーレムがメッチャ悲壮感漂わせて去って行くのを見たが、あんた何か言ったのか?」

魔王「ん、特に何も」

竜「馬鹿言え、また自信を打ち砕く様な事でも言ったのだろう」

竜「例えば『このでくの坊が!』とかさ」

魔王「ギクッ!」

竜(言ったな、こいつ)

9: 2014/05/06(火) 17:02:07.16
竜「深い詮索はせんが、あまり冷たく接し過ぎない事をお勧めする」

竜「下剋上って言葉もあるしな」

魔王「……」

竜「ところで、俺は採用されんのかい? されないのかい?」

魔王「……却下」

竜「だろうな、何となく予想はしてたぜ」

竜「ま、落選者とポーカーでもしながら気長に見守るとするよ」

竜「わっはっはっは……」

魔王(冷たくするな……か)

10: 2014/05/06(火) 17:03:42.03
その後も数え切れない程の魔物達が面接を受けに来たが、皆無惨にも却下されていった。

「アホウドリを自在に操る能力」却下!

「蟹味噌をスマートに抉る能力」却下!

「宇宙の真理を悟る能力」却下!

「取り敢えず芋を蒸す能力」却下!

「呼吸をする能力」却下!

魔王「ふぅ……ふぅ、もう却下と言い続けるのも辛くなって来たぞ」

魔王「最後の方はもはや能力でも何でもないな」

11: 2014/05/06(火) 17:09:29.47
ゴブリン「結局全員不合格、ですか」

竜「そりゃ魔王のことだ、自分より優れた能力を持ってなけりゃ合格にはしないさ」

竜「なぁ、一つ気になったんだけどよ」

竜「魔王の能力って何なんだ?」

竜「俺達一度も見てないよな」

ゴブリン「確かに……」

魔物達「そうだそうだ! 他人の能力を批判ばかりしていないで、自分のも見せろ!」

魔王「うっ……!」

魔王(まさか無能力者、だとは言えまい……)

魔王(こうなれば!)

12: 2014/05/06(火) 17:32:11.68
魔王「最終奥義を使うしかあるまいッ!」バッ

ゴブリン「あ、魔王様が逃げた!」

ゴブリン「逃げるとは卑怯千万!」

魔王「フハハハハー!」

魔王「『逃げるが勝ち』という言葉を忘れたかーッ!」

魔王「私はいつもこうやって勇者に勝って来たんだーッ!」

竜「魔王を城から逃がすな! おいサラマンダー、入り口を火の海にしろ!」

サラマンダー「もうしてるよ!」ゴォッ

13: 2014/05/06(火) 17:51:23.23
魔王「愚かな真似を!」

魔王「そんなちゃっちい火、私には効か……」

魔王「あちッあちちッ!」

竜「思いっきり効いてるじゃねぇか!」

ともあれ城外へ躍り出た魔王様!

黄金色の朝陽を一身に受けながら立ち上がりました。

魔王「地平線から土煙が挙がっている……まさか!」

勇者「我に続けーッ! 魔族を皆頃しにするのだッ!」ドドドドド

騎馬隊「おぉー!!」ドドドドド

魔王「ヤッベ、勇者だ!」

14: 2014/05/06(火) 17:58:13.32
魔王「もう能力見せる見せないの話じゃないよ」

魔王「気迫が違う、気迫が違い過ぎますって」

ゴブリン「遊びは終いだ!」

ゴブリン「魔王様をお守りするのが先です!」

勇者「フンッ」シュッ

勇者の弓から放たれた矢が空を切り、ゴブリンの喉笛を貫いた。

ゴブリン「おごッ……」バタ

魔王「1km離れた場所から放った弓矢が……あいつ化け物だわ」

15: 2014/05/06(火) 18:16:01.83
勇者「我々は裏から回る。戦士達は正面から魔族を圧迫してくれ」

戦士「はいよ!」

勇者「30年間続いた因縁……今こそ終わらせる!」

勇者「もう逃がしはしないぞ、魔王!」

僧侶「そーれっそーれっ!」

ゴーレム「おぐぐ」ドサッ

僧侶「フーッ中々強かったね」

魔法使い「違うわ、私達の魔力が単に落ちただけよ」

僧侶「痛た……張り切ったら腰が痛くなっちゃった」

魔法使い「私達も今年で55、大分年食ったわねぇ」

16: 2014/05/06(火) 18:25:34.76
魔王「ゴーレムもゴブリンも殺られてしまった……」

魔王「私が殺られるのも時間の問題かもしれない」ブルブル

竜「おいこら、待ちな!」

魔王「竜!」

竜「そんな抜け切った腰で逃げてちゃあ格好が悪りい」

竜「俺が東の都まで乗せて行ってやる」

魔王「……そうだ! あそこは私の息がかかった場所だ!」

魔王「至急東の都に撤退し、軍を立て直そう」

魔王「恩に切るぞ、竜」

竜「初乗り金貨5000枚だぜ」

魔王「はは、その落ち着きっぷりには敬服するよ」

17: 2014/05/06(火) 18:36:23.10
僧侶「あ、何だかでっかいトカゲがびゅーんって空を飛んでる!」

魔法使い「どう考えてもドラゴンでしょう! ほら、さっさと撃ち落とすわよ」

魔法使い「少しでも敵を殲滅するのが勇者様の命令なんですからね」

魔法使い「良いこと? 私が火炎弾を放つから、僧侶さんはその弾道を調節するのよ」

僧侶「はいはい、ちょっと老眼鏡かけさせて下さいな」

僧侶「ややっ! よく見たら竜の首に魔王らしき女がしがみついてる!」

魔法使い「ほう、逃げようって算段ね」

魔法使い「悪いけど、もう『勝ち』の椅子には座らせない」

18: 2014/05/06(火) 18:51:09.41
魔王「今回は本当に酷い戦いだった……」

魔王「前回まではたった四人のはずだったのに」

魔王「まさか騎馬隊を連れてくるなど……」

竜「魔王、また嫌な事から逃げちまったな」

魔王「は?」

竜「背中を見せて逃げまくって……そんなものが王と言えんのか?」

竜「こんな時だからこそ、軍の先頭に立って皆を鼓舞するのが真の王なんじゃないのか?」

魔王「竜族に説教を受ける気は無い」

竜「……済まなかったな、説教好きな竜で」

19: 2014/05/06(火) 19:03:10.66
不意に竜の横顔を火炎弾が掠めた。

僧侶「うーん、年のせいか全然当たらないですよー」

魔法使い「火炎弾結構MP消費するんだから、調節しっかりしなさい!」

竜「フン、どうやら地上では楽しいシューティングゲームが始まったみてぇだな」

竜「お客様、こっから少々揺れますが、耐えられるよな?」

魔王「……うむ」

言葉の後、竜が急激に錐揉み回転をしながら急降下した。

その感覚はフリーフォールを頭から回転も付加し、落ちるのに似ている。

魔王(これっ少々じゃないっ!)

20: 2014/05/06(火) 19:21:56.51
東の都付近を流れる川まで来た時、竜は魔王様をそっと降ろした。

竜「さ、勇者が来ない内に早く都へ行け」

魔王「……でも」

竜「お前には軍を立て直す使命がある、俺はあくまで兵士だからな」

竜「あのシューティングゲーム野郎二人や勇者と戦わにゃならん」

竜「いや、最後に一つだけ言わせてくれ。この先、お前を様々な困難が待ち受けるはずだ」

竜「しかしその時は、地に足踏ん張って困難に立ち向かって行け」

竜「氏んでも逃げるが勝ちなんて思うなよ、嫌な事があろうと、指導者は逃げてはならないんだ」

竜「それだけ言いたかっただけさ」

竜「もし生きて帰る事ができたら、二人でポーカーでもしようぜ」

竜は大きな翼を広げると、バッと雲の彼方へ飛び去った。

……そのまま竜が帰る事は、無かった。

21: 2014/05/06(火) 19:30:28.57
魔王「……皆、ありがとう」

魔王「私は間違えていたのかもしれないな」

魔王「これからは……逃げないよ」

この後、勢力を盛り返した魔王軍が勇者騎馬隊を見事撃破する事になる。

ーーーーー

竜「逃げてばかりの人生じゃ何も生み出せないんだぜ?」

ゴブリン「誰です5止めてる方!」

ゴーレム「ふぁい!」

竜「ちょw自らカミングアウトw」

ゴーレム「次のポーカーで巻き返すから良いもん!」

竜「……魔王とも一緒にやりたかったな」

ーFinー

22: 2014/05/06(火) 20:07:24.99
なんで魔王だけやられてんだよwww
おつ

引用元: 魔王「対勇者兵器を雇いたいのだが……」