35: 2011/05/18(水) 01:28:39.40
唯「久しぶりの休みで帰って来たよ!」

憂「おかえりお姉ちゃん」

唯「ただいま憂。寂しい思いさせてごめんよぉ」

憂「ううん……。毎日メールとか電話とかしてくれるしこうして週末には帰って来てくれる大丈夫!」
唯「憂はいい子だね」
憂「えへへ」

憂「……そう言えば和ちゃんも帰って来てるよ」

唯「そうなんだ! 会うの久しぶり~」
憂「……」

ピンポーン

唯「噂をすればだよ! 私が出るね」
憂「う、うん……」

ピンピンピンポーン

唯「はいは~い今開けますよ~」

ガチャ

和「遅いのよこのスカタン」
唯「……誰っ!?」

玄関には黒いライダースーツに黒いサングラスと言う厳つい格好をした人が立っていました。

40: 2011/05/18(水) 01:34:32.70
和「ったく必殺三連撃お見舞いしちゃったじゃないのアンタんちのインホンに。無駄ゲーよ無駄ゲー」

唯「む、無駄ゲー??」

和「はあ? 無駄ゲージもわかんないの? あんな基本っしょそんなの」

唯「え、と……和ちゃん……だよね?」

和「見りゃわかんでしょ。それともなに? あんた頭の中だけじゃなくて視力まで逝ってんの?」

唯「そんな言い方……」

和「あ~暑い暑い。バイク(自転車)ぶっ飛ばして来たから汗かいたし。憂、麦茶速攻な」

憂「は、はい!」スタコラ

唯「憂!?」

44: 2011/05/18(水) 01:43:48.63
唯「憂……和ちゃんどうしちゃったの?」

憂「お姉ちゃん……実はね、お姉ちゃんがいなくなってから段々と人が変わっていって……」

唯「そんな……」

憂「『もう唯にとって私は必要ないんだ! なら自由に生きてやる!』って……」

唯「……自由にって……完璧グレちゃってるよ?!」

憂「和ちゃんってずっと私とかお姉ちゃんの面倒見てくれてたよね?」

唯「うんうん」

憂「だからその反動じゃないかと思うの。もうお姉ちゃんの世話をしなくていい、だから自由にやろう。
やったことないことをやろうって……真面目に生きてきた反発もあるのかもしれないけど」

唯「そんな……和ちゃんグレちゃやだよぉっ! 私にはまだまだ必要なんだもんっ!」

憂「お姉ちゃん……」

46: 2011/05/18(水) 01:50:41.11
和「いつまで台所でお茶と格闘してんだコラ。速攻って言ったわよね私? 憂はまた¨アレ¨やられたいの? あ?」

憂「ごっ、ごめんなさい! すぐ持ってくから」スタコラ

唯「憂……」

和「ったく……」

唯「むぅっ」イラッ

唯「和ちゃん!!!」

和「んだよ」

唯「めっ!!!」

和「はあ?」

唯「グレちゃめっ! なの!」

和「……」

唯「元の和ちゃんに戻って、ね?」

和「……誰のせいでこうなったと思ってんのよ」

唯「えっ……」

和「あんたが私より軽音部をとったからでしょうが!!!!」

50: 2011/05/18(水) 01:57:14.29
和「私は唯と大学に行きたかった!!! 唯と一緒に行けるなら大学なんてどこでも良かったのに……」

唯「和ちゃん……なら」

和「なら私と同じ大学受けたら良かった、とでも言うつもりかしら?
ふざけないでよ……私の気持ちも知りもしないで!!! あなたが軽音部と毎日毎日仲良くしてるのをただ黙って見てるだけの眼鏡かけた人形世話焼きとでも思ってたのかしらあなたは!!?」

唯「和ちゃん……」

和「遠くに行くあなたをただ黙って見てることしか出来なかった私も悪いわ、けどね、唯。
そうやって自分から離れたくせにいつまでもいつまでも私の一番の友達面するのやめてくれない? 迷惑なのよ」

唯「…ぅ…ッ……ごめんなさい……ごめんなさい……」

52: 2011/05/18(水) 02:05:25.75
和「今のあんたに私をどうこう言う資格なんてないわ。わかったらさっさと茶菓子でも用意しなさいよこの偽幼馴染み!」

唯「ッ……」

和「は~あ。昔からあんなに世話焼いてきたのにちょっと他と仲良くなったらポイだものね~ビックリよほんと」

唯「……」

和「クリスマスとかも惰性で呼ばれてた感アリアリだしさ~。三年の時クラス別だったら絶対遊びにとか来なかったでしょ?
私の為にわざわざクラス跨いで来るわけないよね~。2年の時はどうせ澪がいたからでしょ~?
わかってるわかってる」

唯「……そんなことないよ」

和「あーりーまーすーぅー」

54: 2011/05/18(水) 02:12:28.83
唯「いつだって和ちゃんのこと考えてたもんっ」

和「じゃあ聞くけど大学決めるとき私と一緒のところに行くって選択肢が少しでもあったかしら?」

唯「えっ……そ、その……」

和「ないわよね~? 軽音部のみんなとこれからもバンドしていきたい!(フンスッ(爆)とか言ってたものねぇ?」

唯「だってぇ……和ちゃんは賢いから私なんかが一緒の大学に行けるわけないから……」

和「ならそれをどうして言ってくれなかったのかしら? 別に私は大学なんてどこでも良かったのに……」

唯「それは……」

和「もういいわ。今更こんなこと言っても今の私には関係ないし。
このノドーカを止めることは出来ないのよ。例え嘗て幼馴染みだったあなたでもね、唯」

唯「和ちゃん……」

55: 2011/05/18(水) 02:20:03.85
憂「和ちゃん……お茶置いとくね」

和「ったくたらたらしてんじゃないわよ! 駄菓子かっての!」

憂「ごめんなさい……」

唯「憂にそんな酷いこと言わないで! 悪いのは私なんでしょ!? 憂には関係ないよ!」

和「悲劇のヒロイン気取り? スカしてんじゃないわよ!!!」

唯「和ちゃん、ちゃんと話しよ?」

和「してるじゃないのさっきから」

唯「してないよ」

和「はあ? あんた何言って……」

パシンッ──

和「えっ……」

唯「人と話すときは目を見ろ。和ちゃんが教えてくれたことでしょう?」

和「あ、あの……」

唯「いいからグラサン外してこっち見ろ」

和「は、はいっ」グラサンを眼鏡にチェンジ

58: 2011/05/18(水) 02:26:34.56
唯「さっきの続きだけどね。私はそうやって和ちゃんが私にかまって行く大学を制限して欲しくなかったの」

和「でも……私は唯と一緒が」

唯「私も一緒なら良かったってどれだけ思ったことか。でもね、和ちゃんはもっともっと上に行ける人間さんなんだよ」

和「そんなこと……」

唯「ううん。私だってバカじゃない。和ちゃんが将来有望ないつざいってやつぐらいわかるよ」

和「そんなことより私は唯の方が……」

唯「そうやって和ちゃんが私を思ってくれてるように私も和ちゃんを思ってるんだよ!!! それをわかってよ……」

和「唯……」

60: 2011/05/18(水) 02:33:39.24
唯「私は和ちゃんとの関係を確信してた。この先何があっても和ちゃんとはずっと友達のままでいられる。
何年経っても……私がもしかしてプロになっても……何かの拍子でグレて白いふりかけ(くすり)しちゃってニュースとかで報道されて居場所がなくなっても……」

唯「会ったら、「変わってないわね、唯」って優しく言ってくれるって……私達の関係は何があっても変わらないって思ってたのに……」

和「唯……」

唯「和ちゃんはそうじゃなかったのっ!? 信じてくれなかったの? 私のこと……」

和「私は……」

憂「……もういいでしょ、和ちゃん。本当のこと言いなよ?」

和「憂……」

63: 2011/05/18(水) 02:40:27.40
唯「本当のこと?」

憂「実はね、和ちゃんったらお姉ちゃんが構ってくれないからって私のことを唯ぃぃぃって言いながら抱きしめ(ry」

和「グラサンブーメラン!!! はいこれかけたから憂は喋れなくなりましたー! 目を見て喋らない子はダメなのよ!?」

憂「ふふ、はーい」

唯「じゃあ……さっきのアレって……」

和「……そ、そうよ! 唯がいなくて寂しかったのよ! 悪いかしらっ!?」

唯「……悪くないけど憂が可哀想だよぉ」

和「大丈夫よ。その後憂ぃぃぃって叫びながら抱き締めたから」

憂「」ニコニコ

64: 2011/05/18(水) 02:47:28.77
唯「それじゃあ……!」

和「……ええ、グレたりなんかしてないわ。さっきのは憂と一緒にどうしたら唯に構ってもらえるか考えて……ちょっとやってみただけよ」

憂「和ちゃんがどうしてもって言うから。ごめんねお姉ちゃん」

唯「……」

和「ごめんなさい、色々悪口も言ったりして。嫌いになったわよ……ね?」

唯「それぐらいで嫌いになったりしないよ。今までの大好きがいっぱい貯まってるからね!」

和「唯……」

和「唯ぃぃぃっ!」ガバッ

ライダースーツを脱ぐとそこには私達の最後のライブに配られたTシャツがあり、更にそれに唯命という刺繍が施されていました。

67: 2011/05/18(水) 02:53:04.27
唯「よしよし」

和「会いたかった……寂しかったの……唯」

唯「うんうん」

和「大学で友達も出来たけど……やっぱり唯は一番だったわ」

唯「私も和ちゃんが一番だよ。ずっとずっと……何があっても」

和「約束よ? その言葉忘れないでね? 絶対よ?」

唯「うん。忘れないよ、何があっても」

憂「~~~~っ!」

憂「私は二人の二番にしてねっ!!!」ぎゅっ

唯「ふふ」ぎゅっ

和「当たり前よ」ぎゅっ

こうして、和ちゃんは元に戻りました。

そして……時間は経ち……

68: 2011/05/18(水) 02:59:40.54
次のニュースです。
人気ガールズバンド、HTTのボーカル平沢唯さんが未明、くすり所持の現行犯で逮捕されました。

本人は身に覚えはないとこれを否定している模様で、警察はこれについて詳しく調べて行く方針です。

次のニュースです。

2016年度のノーベル賞受賞候補に、東京大学技術教授の真鍋和さんが上がり、日本人最年少でノーベル賞受賞の可能性が……

────

69: 2011/05/18(水) 03:04:41.71
「私はやってない」

「やってようがやってなかろうが関係ないんだよ! 持ってたってだけでHTTのイメージダウンになるぐらいわかんだろ!」

「ファンの人からプレゼントだって言われただけだもん……」

「そんなの警察が信用するわけないだろ! もういい、唯、お前は抜けろ」

「えっ……」

「そんな……! 酷いわりっちゃん!」

「HTTを守る為なんだ。唯もわかってくれ」

「……」

「ボーカルは澪、頼んだぞ」

「……ああ」

「唯先輩……」

「……あずにゃん」

「さよなら……」

「!!! …………ごめんね、みんな」

72: 2011/05/18(水) 03:11:41.14
次のニュースです。
人気ガールズバンド、HTTの平沢唯さんが脱退を表明しました。
メンバーに迷惑をかけたくない為に決断した、とのことです。

これにより4ピースとなったHTTですが「唯の決断は私達を思ってのこと。意思は固く引き留めることは出来なかった。これからは唯の為にも今以上にHTTは音楽界を盛り上げて行く」とリーダーの田井中律さんからコメントが入っております。


では、次のニュースです──

73: 2011/05/18(水) 03:15:05.86
無実だった。

ファンの人に見せかけた他のグループからの嫌がらせと判明し、私は無罪となった。

しかし、もうHTTに私の居場所はない。
元々音楽の価値観やボーカルの変更などで度々りっちゃんとは揉めていたのだ。
これ幸いと押し退けられた私に戻る場所なんてない。

唯「どこに行こう……」

私はただ歩き始めた。

どこに向かうのでもなく……ただ、さまよった。

75: 2011/05/18(水) 03:19:36.44
家、と言っても私のマンションじゃない。
一番最初の家、楽しかった思い出がいっぱい詰まった家。

憂も家を出て働いてる為、今はたまに帰ってくるお父さんとお母さんが使うぐらいになっている。

唯「……開いてる」

何となく開けてみた玄関のドアは私を迎い入れる様にすんなりと開いた。

唯「久しぶり帰って来たし掃除でもしようかな……。どうせお父さんもお母さんもほとんど帰ってないだろうし」

多分私がこうなってることも知らないだろう。のんきな親である。

78: 2011/05/18(水) 03:24:43.52
唯「ただいま……」

返事がないことがわかってなくてもついつい言ってしまうのは何故だろう。
期待してるのだろうか? 何かに……。

唯「あれ? 埃まみれだと思ったのに……綺麗」

憂が片付けたのだろうか?

唯「まあいいや。これでゆっくりお茶でも飲みながらこれからを考え……」

そうぼやきながらリビングへの入り口を開けた時だった。

唯「あっ……」

誰かがリビングでゆっくりとお茶を飲んでいる。白衣のようなものを身につけ、目元には赤いフレームの眼鏡……。

和「あら、唯。お帰りなさい」

唯「和ちゃん……?」

80: 2011/05/18(水) 03:32:51.07
和「お茶、飲む?」

唯「…うん」

淀みない動作で私の分のお茶を注いでくれる和ちゃん。

和「大変だったわね」

と、だけ言った。

本当にそれだけで、後は何も聞いてこなかった。

その優しさが学生時代を思い出させて、私は自然と泣いてしまっていた。

唯「っ……っぅ……」

和「ほら、泣かないの。いい歳してるんだからお互い」

唯「まだ……23だもん……」

和「23って言ったら十分おばさんよ?」

クスクスと笑いながら私の涙をハンカチで拭いてくれる。
優しかった、和ちゃんは……今でも。

81: 2011/05/18(水) 03:39:13.27
それからいっぱいいっぱい話をした。
音楽のこと。芸能界のこと。みんなと喧嘩別れしちゃったこと……。

和ちゃんは話せばきっとわかってくれるからもう一度会って来なさいと助言をくれたり、エスパー伊藤の体の構造に興味があるから今度東大の方まで来てくれと言って欲しいなんて笑いをとってくれたりもした。

和「もうこんな時間。私そろそろ研究室行くわね」

唯「うん、ありがとう……掃除とか、色々」

和「気にしないで。好きでやってることだから。じゃあね、唯」

唯「うん……」

そうして去っていく私の最後かもしれない友達、寂しかった、どこにも行って欲しくなかった。
でもそんなこと……言えない。

もう私達は子供じゃないんだ。甘えちゃいけないんだ……。

82: 2011/05/18(水) 03:48:10.69
そんな心を読み取ったように、彼女は振り向いた。

和「……やっぱり今日はここに泊ろうかしら」

唯「え?」

和「だってこのまま唯を一人で残したらグレちゃいそうだもの」

唯「そんなことしないよぉ。和ちゃんじゃあるまいし」

和「そのことは言わない約束でしょ!」

唯「はいはい」

和「……唯」

唯「ん? なに?」

和「約束、守ってるから。ずっとずっと……どんなに離れても、私は唯の一番の友達だから」

唯「……はんそくだよぉ……」

ほんと反則すぎるよ、和ちゃん。
そんなに私を泣かせて楽しい?

83: 2011/05/18(水) 03:52:01.28
こうなったらこちらも何か手を打たなければいけない、ので、精一杯の泣きながらの笑顔で、言ってやる。

唯「私も和ちゃんが一番の友達だよ。ずっと……ずぅっと……」

唯「グレても、ね?」

ふふ、困ってる困ってる。

そんないつまでも変わらない、

眼鏡がとてもよく似合う、


私の一番大切な友達の和ちゃんが大好きです!

ずっと、いつまでも


おしまい

87: 2011/05/18(水) 04:50:42.00
乙!

引用元: 唯「和ちゃんがグレた!」