1: 2009/02/10(火) 20:01:45.06
姉1「ええ、お城でね、明日開かれるのよ」
姉2「女もどうかしら?お城のパレードよ?行ってみない?」
姉3「きっと楽しいわぁー」
女「・・・別に」
姉2「ええーっ?いいじゃないのー、一緒に行こうよー」
姉3「そうよー、こんな催し、もう無いかもしれないのよ?」

女「・・・あんな鋼鉄の・・・品性の欠片も無い城で、何を踊るんだよ」
姉2「それはぁー・・・ね?」
姉3「・・・お、お食事も出るじゃない?ほら・・・お城のお食事、美味しいわよ?」
姉1「女はいつも、私達のかわりに家事をやってるけど・・・たまにはいいじゃない、羽目を外してみるのも」
女「・・・いいよ、私は掃除してるから・・・姉貴達で楽しんでいってよ」

女「私、そういうの興味ないからさ」

姉2「えー・・・」
姉3「うーん・・・たまには一緒に、楽しもうって思ってたんだけど・・・」
姉1「・・・女、本当にいいの?」
女「ああ」

姉1「・・・そう」

4: 2009/02/10(火) 20:07:18.22
姉2「ごちそうさまー!」
姉3「今日も女ちゃんの料理は美味しかったわぁー」
姉1「ごちそうさまー・・・さて、と」カチャ

女「あ、食器は私がやるから」
姉1「え?でも」
女「いいよ、私がやる」
姉1「・・・そう、いつもいつも悪いわね・・・」
姉3「私達も、何か女ちゃんのためにしてあげたいんだけどねー・・・」
女「気にするなって、家族なんだから」
姉1「・・・うん」

女「お風呂沸いてるから、姉2はもう入れば?」
姉2「ほんと!?入ってくる!」バタン

姉1「・・・」
姉3「・・・」

姉1「(・・・女、この家に引き取られてから随分経つけど・・・)」
姉3「(・・・ずっと働きっぱなし・・・可哀想・・・)」

女「・・・なんだよ、その目」
姉3「え?えっ?」
女「私が好きでやってるんだよ、気にするなって」
姉3「あ・・・うん、うん・・・そう、ね・・・」
姉1「・・・」

6: 2009/02/10(火) 20:13:05.23
姉3「・・・んーっ・・・ふぁ、眠いわぁ・・・」
姉1「あら、もう寝るの?」
姉3「そうねぇ・・・もう寝ちゃおうかしら・・・」

女「・・・じゃあ、ベッドの用意してくる」
姉3「へっ?え、いいわよぉ、そのくらいは自分で・・・」
女「いいから」
姉3「・・・そう、ありがとうねぇ、女ちゃん・・・でも、」
女「でも、は良いから」
姉3「・・・」

姉1「・・・」

姉1「・・・ねぇ、女・・・本当に良いの?ダンスパーティ」
女「ああ、何度も言ってるだろう、気が向かないんだ」
姉1「良い人が見つかるかもよ?」
女「いいよ、私にはまだ早い・・・それより姉貴達が先だよ」
姉1「う」
女「・・・私は、別に良いし」

姉1「・・・でも、ほら、いつかは旦那さんを持たなきゃならないわけじゃない?」
姉3「そうよー、そのためにも、ほら、練習ってことで・・・」
女「別にいいよ、そんなの」

姉1「(・・・うーん・・・)」

8: 2009/02/10(火) 20:17:04.52
姉3「すぅすぅ・・・」
姉2「ぐかーぐかー・・・」

姉1「(・・・姉達は、寝たみたいね・・・)」

ガチャ
姉1「あら」
女「ん」

姉1「女はまだ寝てなかったの?」
女「・・・あ、ああ・・・なかなか寝つけなくてな」
姉1「・・・」

姉1「たまには、寒い居間じゃなくて・・・私達の部屋で寝てもいいのよ?」
女「・・・いいよ、別に」
姉1「堅い事は言わなくていいのよ、私達は家族なんだから」
女「・・・私が寝ると、ベッド、厳しいだろ」
姉1「大丈夫よ、まだあなたくらいなら・・・」
女「いや、いいから」

姉1「・・・」
女「私ももうすぐ、寝るから・・・」
姉1「・・・そう、わかった・・・じゃ、おやすみなさいね」
女「ああ」

バタン

女「・・・・」
女「(家族・・・)」

11: 2009/02/10(火) 20:28:52.85
それは、ほんの少し昔の出来事。

男『頼む!10万だけで良いんだ!貸してくれないか!?』
母『じゅっ・・・10万と言われてもねぇ、そんな大金・・・』

男と母は、いわゆる旧友の縁にあった。
初等学校がら高等な理学学校まで、長い時間を共に過ごしてきた関係である。

しかしその縁は愛や恋で結ばれていたというわけではなく、単に友達、クラスメイトのような、特に深くも浅くも無い、微妙な関係にあった。
特にお互いが互いを意識していたわけでもないし、彼らの親の代に何らかの縁があったわけでもない、本当にただの、知り合いというだけのものだったのだ。

ただの旧友、それだけである。
がしかし、この男は今日、わざわざ女の家まで出向き、深々と頭を下げ、決して少なくは無い金額を貸してくれと頼み込んでいる。
ただの旧友、それだけである。

女は早くに夫を亡くし、3児の母である。今の生活は決して裕福ではない。
いくら女が人に甘いとはいえ、この男が頼み込んだ金額は、今の生活状況を考えれば到底、頭を下げたくらいでは出してはやれないものだった。

男『・・・頼む、必ず返す・・・!』
女『・・・でも・・・こっちもねぇ、そんな・・・』
男『そうだ、必ず・・・これを、こいつを担保にしてやっても良い!』

娘『・・・』

12: 2009/02/10(火) 20:36:31.90
後に、男は音信不通となった。
担保と称し、自分の娘を身代わりにしたまま、雲隠れしたのである。

母『・・・騙された・・・』

母はこの時、自分の人に対して甘い性格が、自分の家族を傷つけるものであるということを思い知った。
自分の3人の娘は今が大事な時期だというのに、夫が残してくれた財産の大半が、こんな下らないことで消えてしまったのだ。

持ち逃げされた10万は帰ってくることは無く、家には貧困だけが残った。

母『ううっ・・・これから、これからどうしていけば・・・!』
娘『・・・』
母『こんなっ・・・ううっ・・・!』
娘『・・・』

置き去りにされた娘は、悔しさに泣き崩れる女を見ていた。
同じくらいの悔しさと怒りで、唇を噛み締めて。

13: 2009/02/10(火) 20:39:15.52
チュンチュン・・・

女「・・・!」
女「はっ・・・は・・・」

女「・・・胸糞悪い」


ガチャ
女「(・・・今日は、姉貴達がダンスパーティーの日か)」
女「(・・・)」
女「(・・・ダンスパーティねぇ)」
女「(あの完全要塞の鉄城で、どんな踊りをするんだか・・・剣の舞か?)」

女「(・・・ま、いいか・・・姉貴達が楽しんでくれれば)」

女「(・・・朝食の準備、しないとな)」

15: 2009/02/10(火) 20:43:36.86
ガチャ
姉1「ふぁあ・・・あら、おはよう・・・もう起きてたの」
女「ああ、姉貴・・・おはよう」

姉1「・・・んー、良い香り」
女「レモン絞ってるからな」
姉1「レモン?あらあら、サラダかしら・・・楽しみにしてるわね」

ガチャ
姉2「おっはよー!」
姉3「おはよぉー」

姉1「あらおはよう、二人とも」
女「おはよう、姉貴・・・今朝食作ってるから」
姉2「おおっ、準備が良いねぇ女は!楽しみにしてるわよ!」
姉3「今日は何かしらねぇ」

17: 2009/02/10(火) 20:49:51.11
姉2「それでさー、これがまたすんごい怖くてさー」
姉3「あはは、楽しそうねぇ、私も見たかったわぁー」
姉1「・・・」

姉2「おーい、どうしたのよ?浮かない顔して」
姉1「え?」
姉2「どうしたどうしたー、私に相談してみなさいよ」
姉1「・・・ああ、うん・・そうね」

姉1「今日は、せっかくだし・・・新しい服でも買いにいこうかと思ってたんだけどね」
姉3「服・・・?あ、なるほど、そうねー」
姉2「なるほどなるほど、せっかくのダンスパーティだものね!」

姉1「うん、それでね?女の服も買ってあげようかなって・・・」
姉3「女ちゃんの?」
姉1「そう、女ちゃんっていつも暗い服ばかりだから、気付かないけど・・・もう結構古い服なのよ」
姉2「あーそう言われてみれば、女の新しい服なんてしばらく見ないわねぇ」
姉1「だから・・・ほら、買ってあげようかなって」
姉3「良いんじゃないかしら?私達も女ちゃんにはお世話になってるものー」
姉2「むしろ今まで、なんで女に買ってやらなかったのかって感じよねー」

女「・・・」
女「(別に、そんなの良いのに・・・)」

18: 2009/02/10(火) 20:55:20.16
姉1「・・・それでね」
姉2「うんうん」
姉3「それで?それで?」
姉1「・・・せっかくだし、とびっきり豪華な服を・・・プレゼントしようかと」
姉2「おおー」
姉3「あらー、良いんじゃない?」
姉1「普段お世話になってるし・・・外へ出ても恥ずかしくない、むしろ誰もがうらやむような可愛い服を着せてあげたいと思うの」
姉2「良いわねそれ!」
姉3「私は賛成よー」

女「・・・ご飯、できたぞ」
姉2「おっ、きたきたきたきたー」
姉3「あらあら、美味しそう!」
姉1「さすが女ねぇ」

姉1「(・・・それで)」
姉1「(服を買ってあげて・・・あわよくば)」
姉1「(・・・女も、一緒に・・・パーティへ連れていってあげよう)」

23: 2009/02/10(火) 21:07:10.31
姉2「もぐもぐ・・・んー!美味しい!」
姉3「あらあら、頬に付いてるわよー」
姉2「お、ありがと」
姉3「どういたしましてー」

姉1「・・・」
女「・・・(モグモグ」

姉1「(・・・女は、いつも・・・自分の食べる分が少ない)」
姉1「(本人は小食だからって言ってるけど・・・きっと、私達に遠慮してるんだろうな・・・)」

女「・・・何見てんだよ」
姉1「あっ、ごめんね、つい・・・」
女「・・・いいよ、別に・・・(モグモグ」

姉1「・・・」
姉1「(お父さんの償いなんて・・・しなくても良いのに・・・)」
姉1「(・・・食べよう)」

姉1「もぐもぐ・・・あ、美味しい」

24: 2009/02/10(火) 21:13:28.01
姉2「よし、食後はゲームの時間よー!」
姉1「せっかくの休暇なんだから、もっと有意義な事をしましょうよ・・・読書とか」
姉3「あらあら、私は良いと思うわよ?」
姉2「ほら!こう言ってるんだし!」
姉1「・・・そうね、じゃあ久々にやりましょうか」

女「・・・」
姉2「おーい!女も一緒にやるぞー!」
女「・・・私は良いよ、そんな」
姉2「いいからいいから!やるの!」グイグイ
女「ちょっ・・・姉貴ひっぱんな・・・」
姉2「なんだって遊びは多い方が楽しいもんでしょ?」
女「・・・そうだけど」
姉2「だけど、じゃなくてやーるのー」
女「・・・うん」

姉1「・・・ふふふ」
姉1「(そうね・・・このゲームが終わったら、買い物に行こうかしら)」

25: 2009/02/10(火) 21:23:35.29
姉1「んーっと、そろそろ・・・じゃあ、“盗賊”」
ピラッ

姉1「あれ、まだだった・・・」
姉3「読みが甘いわねぇ、“剣士”」
姉2「うがー!来るなぁ!“盾持ち”!」
女「・・・パス」
姉1「私もパスかしら」
姉3「パスね」
姉2「・・・むむむ」
姉3「使う?使わない?」
姉2「・・・使う!“盗賊”!」
ピラッ

姉2「・・・」
姉3「はいはずれー」
姉2「おかしい・・・もう勝てたはずなのに・・・!」
女「“盗賊”」
ピラッ

姉2「あ」
姉3「あら?」
姉1「・・・これで0枚なの・・・」
姉2「だああぁあー負けたー」ペシッ
姉3「こーら、カードをぞんざいに扱わないの」
姉2「また女の一人勝ちー?卑怯よおー!」
女「・・・ふっ」

姉1「(・・・何だかんだで)」
姉1「(楽しそうね、良かった・・・)」

26: 2009/02/10(火) 21:31:18.20
姉2「まさか全敗するとは思わなかったわ・・・」
姉3「よしよし」
女「姉貴はカウントしないで刺そうとするから弱いんだよ」
姉2「ふ、ふんっ!踏ませるなんて邪道よっ!邪道!」
姉1「女はしっかり刺しのスタイルじゃない」
姉2「・・・うわああああん!」
姉3「よしよし」

姉1「・・・じゃあ、そろそろ・・・」
姉3「あ、そうね・・・良い時間かしら」
姉2「ん?」
姉1「服を買いに行くのよ、もう忘れたの?」
姉2「わお、忘れそうだったわ!」
女「私は留守番してるから」
姉1「・・・うーん」

姉1「女も一緒に」
女「行かない」
姉2「・・・」
姉3「・・・」
女「まだ自分の服あるし・・・いらないから、いいよ、別に」
姉3「・・・でもそろそろ新しいものがないと・・・」
女「良いんだよ、着慣れた物の方が」
姉3「そ・・・そう」

姉1「(・・・)」

28: 2009/02/10(火) 21:38:37.24
姉2「じゃ、行って来る!」
姉3「留守を頼んだわよー」
女「ああ」
姉1「・・・じゃ、すぐに帰ってくるから」
女「・・・ああ」

バタン

女「・・・」
女「(ふぅ・・・やっと・・・一人か)」
女「(・・・別に姉貴達が嫌いってわけじゃないが・・・)」
女「(・・・)」
女「(・・・居心地、悪くもないが)」
女「(・・・)」

女「そうだ、食器洗わねーと・・・」


ガチャガチャ・・・
女「(・・・別に居心地悪いわけじゃない・・・姉貴達と話していると楽しいし、優しいし・・・)」
女「(でも何か・・・劣等感・・・のようなもが、拭えないというか)」

ガチャガチャ・・・

女「(・・・ダンスパーティーか・・・)」
女「(どうせ、出会いを求めてる騎士団の男と女の社交場だろ・・・)」

31: 2009/02/10(火) 21:45:47.03
女「・・・」
女「やる事、何か無いかな・・・」

女「・・・掃除はしたし」
女「・・・・あ、鏡・・・鏡を拭くか」

キュッキュッ

女「・・・」
女「(・・・ダンスパーティー・・・か)」
女「・・・いや、」
女「(関係ない・・・)」
女「(・・・興味ないし)」

キュッキュッ

魔女「・・・」
キュッキュ・・・
女「・・・えっ!?」

ババッ
女「・・・」
女「(・・・今、鏡に何か・・・写ってたはずなのに)」

女「・・・はー、疲れてんのかな、私」

33: 2009/02/10(火) 21:52:30.96
女「・・・」
女「ふぁぁ・・・んーっ・・・」

女「・・・やばい、やっぱり寝不足だったか・・・欠伸が・・・」
女「・・・」
女「(姉貴達がダンスパーティーに行ったら・・・そうしたら、寝るか)」
女「(今寝たら、姉貴達が帰ってくるかもしれないし・・・)」

ガチャ

女「ん」
姉2「たっだいまー!」
姉3「ただいまー」
姉1「ただいま、女居るー?」

女「・・・いるけど」
姉1「あ、良かった良かった・・・渡したいものがあって」
姉2「見て驚かないでよー?」
女「・・・」

34: 2009/02/10(火) 21:59:32.76
姉2「じゃっじゃじゃーん!」

女「・・・」
姉2「驚きなさいよ!」
女「姉貴が驚くなって言ったんじゃないか」
姉2「・・・少しは驚いてよー」

姉1「どうかしら、女に合うものを買ってきたつもりなんだけど」
女「・・・別にいらないんだけど」
姉3「もう買ってきちゃったものは返品できないのよー」
姉2「そういう事!さっ、着てみなさいよ!」
女「・・・強引だな・・・ちょっと待ってて、着替えに行くから」

バタン

姉1「・・・ふう、なんとか渡してあげられたわね」
姉3「きっと似合うわー」
姉2「女は美形だからね、何着ても似合うわよ」

ガチャ

43: 2009/02/10(火) 22:37:51.07
女「・・・なんだよこれ」
姉3「!」
姉1「・・・わーお」
姉2「可愛い!」
女「・・・白、とか・・・嫌いなんだけど」
姉2「良いじゃない、すごく似合ってる!可愛い!」
姉3「・・・うふふ、これからはもっと丈の短い服を・・・」
女「おい」

姉1「私から見ても、悪くはないと思うわよ?」
女「・・・短くないかこれ」
姉2「なぁに言ってるの、今時はこういうのが普通なのよー」
女「・・・」
姉1「とっても素敵よ?似合ってるわ」
女「・・・・そうかい」

姉1「・・・だからってわけじゃないけどさ、ほら、今夜・・・」
姉3「ええ、せっかくだもの、女ちゃんも一緒に」
女「断わる」
姉2「・・・ちょっと、せっかく姉1が誘ってるのに」
女「好きじゃないんだ、そういうの」
姉1「・・・んー、やっぱり、そう・・・わかったわ、無理にとは言わないわ」
女「・・・」

姉1「(・・・せっかく綺麗なのに・・・)」
姉1「(ダンスはいいから、一緒に・・・せめて食事だけでも一緒に、行きたかったんだけどな・・・)」

44: 2009/02/10(火) 22:43:34.75
姉2「ねえねえ、ちょっと、カチューシャ知らない?」
姉3「えー?いつもの所に置いてあるんじゃないのー?」
姉2「それが無いのよー」
姉3「あらあら、どこに行っちゃったのかしら・・・探してみるわねー」

女「・・・(トントントントン」
姉1「・・・(ヒョコッ」
女「・・・姉貴・・・見るなよ、集中できないだろ」
姉1「あ、ごめんね」

トントントントントントントントン・・・

姉1「・・・カボチャ?」
女「・・・ああ、まだ青いが・・・スープにするから関係ない」
姉1「ふーん・・・」
女「・・・パーティへは」
姉1「え?」
女「パーティへは、何時くらいに行くんだ?」
姉1「え?えーっと、そうねぇ・・・やっぱり5時くらい?」
女「・・・まだ薄暗い頃だな」
姉1「ええ、早く出ておかないと・・・お城まではちょっと距離があるしね?」

女「・・・じゃあ、晩御飯はいらないか」
姉1「あっ・・・うん」

トントントントントントン・・・

女「・・・そうか、楽しんで来なよ」
姉1「・・・うん」

46: 2009/02/10(火) 22:49:14.14
トントントントントントントン・・・

女「(・・・)」
女「(・・・新しい服・・・ダンスパーティ・・・)」
女「(・・・)」
女「(別に・・・行きたく無いし・・・)」
女「(別に、どうだっていいし・・・)」

トントントントントントントン・・・

女「・・・」
女「(・・・行きてえよ・・・)」
女「(行きてえよ、当然だろ)」
女「(でも、・・・でも私が行って、どうするんだよ)」

トントントントントントントントン・・・

女「(踊りなんて・・・踊りも、言葉遣いも、最低限の礼儀も・・・何も)」
女「(何も無いのに、どうするんだよ、私が行ってよ・・・)」
女「(・・・姉貴達と楽しく、お喋りだってしたいよ・・・)」
女「(・・・)」
女「(・・・でも、私は・・・そんなことできる立場じゃない)」

トントントントントントントントン・・・

女「・・・はー」
女「(・・・もう、気にするのはやめよう・・・行かない、そう決めたんだから)」

48: 2009/02/10(火) 22:53:45.41
姉1「お化粧はいらないわよね」
姉2「いらないいらない!素材で勝負よ!」
姉3「うふふ、みんなお化粧してたらどうしよう?」
姉2「・・・化粧品も、持って行こうか」
姉1「素材で勝負はどうなったのよ」

女「・・・ん、もう出発するのか」
姉1「あ、女・・・うん」
女「そうか・・・馬車は手配するのか?」
姉1「ううん、そんな距離でもないから、歩いていくわ」
女「・・・そっ、か、じゃあ馬車に気をつけろよ」
姉1「うん」
姉2「・・・ねー、女は本当に来ないのー?」
姉3「楽しいわよー?」
女「・・・だから、別にいいって」

女「そういう柄じゃないから」
姉2「・・・わかった」
姉1「・・・じゃあ、行ってくるわね?」
女「ああ」

ガチャ バタン

女「・・・」
女「・・・行ってらっしゃい」

49: 2009/02/10(火) 22:58:14.90
女「・・・」
女「・・・はー」

女「(部屋の掃除・・・もうやったか)」
女「(やること・・・ない、か)」

女「(・・・少し・・・横になろうかな・・・眠くなってきた・・・)」
ゴロン

女「・・・」
女「ダンスパーティ・・・かぁ」
女「豪華な食事・・・人・・・踊り・・・灯り・・・笑顔・・・」
女「・・・素敵な、人が・・・手とか、取って・・・ダンスに誘って・・・」
女「・・・」

女「・・・憧れねーよ!そんなもん!」
女「くそっ・・・くそが・・・くそ・・・」

女「(・・・あー、ムシャクシャする・・・)」
女「(・・・外に出よう)」
女「(別に、パーティには出ない・・・ただ外で、何か・・・買い物を・・・)」

50: 2009/02/10(火) 23:03:12.42
ガチャ

女「(・・・あ、姉貴達から貰った服のまま・・・別にいっか)」
女「(何かしようってわけでもないし・・・別に)」

??「・・・お嬢さん、お嬢さん」

女「ん・・・?」
魔女「こんばんは、素敵なお嬢さん」
女「・・・」
魔女「何やら、ご機嫌が優れないようですね」
女「・・・別に」

女「お前に関係ないだろ」
魔女「ええ、その通り」
女「・・・構うなよ」

スタスタスタスタ・・・

魔女「・・・」
魔女「お嬢さん、後悔しますよ?」

女「・・・は?」
魔女「後悔を、します」
女「・・・あっそ」

スタスタスタスタ・・・


魔女「・・・良いんですね?それで」

52: 2009/02/10(火) 23:10:15.30
女「(・・・何買おうかな・・・何を・・・)」
女「(・・・そうだ、久々に・・・姉貴達のために酒でも・・・グログでも買うか)」
女「(また姉3が暴れそうだけど・・・あれはあれで楽しいし・・・)」
女「(・・・ふふっ)」

女「すいません、これ一本」
店主「おう、134YENになるよ」
女「安いな」
店主「はっは、それが売りだからねぇ」
女「・・・ん、ありがとう」
店主「また来ておくれよ」
女「おう」

女「(・・・さて、あとは・・・)」
女「(・・・・別に、買わなくてもいいか)」
女「(あまり無駄遣いするのも悪いし・・・)」

女「・・・帰ろう」

バシャッ!

女「う・・・わっ!?」
??「あ、すんませーん」
女「てめ・・・!泥水掛かったじゃねーか・・・!」
??「悪ィ悪ィ、文句は水溜りに言ってくれ」
女「お前よくも・・・!」

女「(・・・どうするんだよ、これ・・・新品なのに・・・)」

53: 2009/02/10(火) 23:16:10.24
ガチャ バタン

女「ただいまー・・・って、誰もいない、か」
女「・・・はー」

女「(どうしよう・・・せっかく姉貴達から買ってもらったのに・・・)」
女「(・・・泥水が・・・うっわぁ・・・すっごい掛かってる・・・もうだめだな)」
女「(くっそ、着てかなきゃ良かった・・・くそ)」

女「・・・はー、最悪だ・・・」

女「・・・」
女「暗く、なってきたな・・・もう、暗い・・・」
女「・・・パーティはもうそろそろ、始まる頃なのかな・・・」

女「パーティ・・・」
女「・・・いや」
女「私は行けるような人間じゃない・・・姉貴達が行って、私はその土産話を聞く・・・それだけでいい」
女「・・・それだけでありがたいんだ」

女「・・・それだけでいい」
女「それだけで・・・」

56: 2009/02/10(火) 23:25:55.74
ドンドン

??「すみませーん」

女「ん・・・?誰だ、訪ねてくるなんて・・・今日は特に何も・・・」

ガチャ
女「・・・あれ」
女「誰もいない・・・」

魔女「こちらです」
女「!?」

魔女「美味しいスープですね」
女「・・・どうして、居間にいるんだよ」
魔女「さっき、入りました」
女「・・・お前、夕方に会った奴か・・・」
魔女「はい、そうです」
女「・・・盗賊か?この家の物を盗る気なら、こっちにだって考えは・・・」
魔女「盗賊はみな、機械の体でしょう」
女「・・・生身の盗賊だっている」
魔女「稀な話です」
女「・・・」

魔女「・・・ほぅ、本当に、美味しいスープですね」
女「・・・」
魔女「とても美味しいです」
女「・・・おう」

58: 2009/02/10(火) 23:30:40.58
女「お前、何しに来たんだよ」
魔女「・・・」
女「私に何か、用でもあんのかよ」
魔女「はい」

魔女「私は、魔女です」
女「・・・へぇ」
魔女「信じていただけますか?」
女「・・・別に、珍しい事でもないだろ」
魔女「そうですね」

魔女「しかし」
女「・・・あ?」
魔女「今、ここで私が本当に魔女なのかの確認をしなければ」

魔女「後悔、するかもしれませんよ」

女「・・・何をだよ」
魔女「何をかはわかりません」
魔女「しかし、不備はすべからく、後悔を招くものなのです」
女「・・・お前はわざわざ、私に説教でもしに来たのか?」
魔女「いいえ」

魔女「ただ私は」
魔女「あなたの後悔を、洗い流しにやってきました」
女「・・・?」

61: 2009/02/10(火) 23:36:04.30
女「後悔を・・・洗い流す?」
魔女「はい」
女「・・・別に後悔なんて・・・」
魔女「あなたの人生は」
女「・・・」
魔女「およそほとんどが、後悔です」
女「・・・勝手に決めてんじゃねーよ」
魔女「反射的に否定することもまた勝手な決定です」
女「・・・ッ」

魔女「しかしご安心下さい、お嬢さん」
魔女「人は誰しも失敗するものなのです」
魔女「失敗には2種類あります」
魔女「やってみて失敗するか、やらずに失敗するか」
魔女「後悔は、やらずに失敗する事から、主に現れます」

女「・・・」
魔女「お嬢さん、あなたが、それです」
女「・・・何が言いたい」
魔女「さあ」
女「・・・」

魔女「ただ私は」
魔女「あなたの過ち、過ぎ去ってしまった選択肢、後悔を」
魔女「願いを」
魔女「3回だけ、叶えてさしあげます」

63: 2009/02/10(火) 23:41:07.73
女「・・・はっ、随分と景気のいい話だな・・・」

ジャラッ・・・
魔女「これは懐中時計・・・今は、6時32分」
女「・・・」
魔女「お嬢さん、あなたの後悔は既に始まっている」
女「・・・」
魔女「あなたは、もう自分には関係ないと言い聞かせながらも、知らずのうちに、焦燥感に囚われている」
女「・・・」
魔女「諦めた選択肢、とうに過ぎ去ってしまった分岐点・・・もはや自分には関係のない分岐点」

魔女「それが今、あなたを焦らせ、後悔させている」

女「・・・」
魔女「パーティは何時だかご存知で?」
女「・・・!お前・・・!」
魔女「ダンスパーティは7時から始まります」
女「・・・!」

魔女「もう一度言いますが」
魔女「あなたの過ち、過ぎ去ってしまった選択肢、後悔を」
魔女「願いを」
魔女「3回だけ、叶えてさしあげます」

女「・・・」

64: 2009/02/10(火) 23:52:03.47
女「・・・私は」
女「・・・ダンスパーティに・・・行きたかったんだ・・・」
魔女「何故行かなかったのですか?」
女「・・・だって」

女「私は・・・行けるわけないだろう!」
魔女「何故ですか?」
女「だって・・・だって!何故、私がここにいて、贅沢をできる!?」
魔女「それはあなたのせいなのですか?」
女「私の・・・せいも、同じだ・・・」
女「あの親父の・・・事なんて、真に受けて・・・信じたから・・・!」
女「他人まで迷惑に巻き込んで・・・そして・・・!」
魔女「しかし」
女「姉貴らのお母さんは・・・私の親父のせいで・・・気を病んで・・・!」
魔女「それは、あなたがダンスパーティへ行けない理由にはなりませんよ」

女「・・・なるさ」
魔女「ダンスパーティは贅沢だから?」
女「・・・」
魔女「それは、今の三姉妹方が望んでいる事ですか?」
女「・・・お前、どこまで知って・・・」
魔女「全て」
女「・・・」

魔女「ただひとつ言えることは」
魔女「・・・7時になれば、あなたの後悔は、またひとつ増えるということです」
女「・・・」

66: 2009/02/10(火) 23:56:11.26
女「・・・行きたい」
魔女「はい」
女「ダンスパーティに・・・行きたい・・・」
魔女「本当ですか?」
女「本当だよ、本当に・・・姉貴達と一緒に、楽しく喋って・・・」
魔女「はい」
女「一人ぼっちでここにいるなんて、嫌だ・・・嫌に決まってるだろ・・・!」
魔女「では」

魔女「あなたの願い事、3つのうちの一つ」
魔女「“ダンスパーティへ行きたい”」
魔女「よろしいですね?」
女「・・・・ああ」

魔女「・・・(ジャラッ」
女「・・・?」
魔女「懐中時計です」
女「・・・」
魔女「おそらく今は、これは関係無いでしょう」
女「・・・?」

魔女「では、あなたを7時までに・・・お連れしましょう」
女「ほ・・・本当か!?」
魔女「はい」

69: 2009/02/11(水) 00:01:24.78
ガチャ
女「・・・!!」

魔女「馬車を見るのは初めてですか?」
女「そ・・・いうわけじゃないけど・・・」
魔女「さあ、お嬢さん、中へどうぞ」
女「お、おう・・・」
バタン

魔女「出発します、城へ」
女「・・・うん」
魔女「飛ばします、しっかり掴まっていてください」
女「お・・・おう」

ゴトン・・・ゴトトン・・・

魔女「・・・」
女「・・・魔女って」
魔女「はい?」
女「皆・・・こんな、お人よしなのか」
魔女「いえ」

魔女「私だけでしょう」
女「・・・」
魔女「それに、魔術とはいえ何でもかんでもできるわけではありません」
女「ん・・・ま、そりゃあ・・・な」
魔女「それに」
女「?」

魔女「私のこれには、反動があるのです」

72: 2009/02/11(水) 00:06:43.59
女「・・・反動って・・・?」
魔女「着きました」
キキッ

女「・・・!っとと・・・!」
魔女「降りてください、あと3分しかありません」
女「マジか・・・!」
ガチャ

女「ありがとう、魔女!」
魔女「はあ」
女「・・・?何だ、どうした」
魔女「その姿で、ダンスパーティに?」
女「え・・・?」

女「・・・!!」
魔女「泥の汚れがついていますが」
女「そ、うだった・・・!どうしよう・・・!」
魔女「・・・」
女「・・・」

魔女「いいのですか?願い事は3つだけ」
魔女「これを使えば、残りの願い事は1つだけとなります」
女「ああ・・・ああ、良い・・・それでいいから、頼む・・・」
魔女「・・・まあそうですね」

魔女「汚れた服ではダンスも踊れません」
魔女「“汚れた服を直したい”」
魔女「よろしいですね?」
女「ああ・・・」

74: 2009/02/11(水) 00:11:13.81
女「・・・すごい、元通りだ・・・」
魔女「・・・」
女「・・・ありがとう、本当に」
魔女「いえいえ」
女「これで、ダンスパーティに出れる・・・」
魔女「・・・」
ジャラッ

女「・・・?時計が、どうかしたのか?」
魔女「持っていてください」
女「・・・?」
魔女「深夜の0時になると同時に、服は元の状態へと戻ります」
女「え・・・!」
魔女「元に戻れば、薄汚れた姿を大衆に晒す事となるので」
女「・・・それは・・・嫌だな・・・」
魔女「地味にですけどね」
女「・・・わかった、ありがとう・・・時間になったらそそくさと退場させてもらうよ」
魔女「それが良いです」

魔女「では、お楽しみください」
女「おう、ありがとうな」
タッタッタッタッタ・・・・

魔女「・・・反動」
魔女「・・・全てが終わった時、ひとつだけ、過ちをおかしてしまう」

78: 2009/02/11(水) 00:15:55.76
女「はっ、はっ、はっ・・・!」

兵士「(・・・うおっ、美人・・・ていうか、階段を3段飛ばしか・・・すごいな)」
兵士「(あんな急いで・・・よほどパーティに出たいんだろうなぁ)」

女「はっ・・・はっ・・・!あの・・・!」
受付「あははは・・・そんなに焦らなくても、大丈夫ですよ」
女「・・・そう、か・・・はっ・・・はっ・・・」
受付「お名前をよろしいですか?」
女「名前・・・?ああ・・・私の名前か・・・私は女という者だ」
受付「・・・はい、女さんですね、どうぞ、奥へお進みください」
女「ああ・・・・ありがとう」

女「(・・・ふぅ、なんとか間に合った・・・良かった)」
女「(これで・・・これで、今日は・・・楽しく過せる・・・)」

女「(良かった・・・来て良かった・・・本当に)」

女「(・・・でも)」
女「(・・・する事ねぇんだよな・・・ダンスも踊れないしな・・・)」

女「(・・・とにかく、姉貴達を探すか)」

80: 2009/02/11(水) 00:22:43.07
門番「ようこそ、鉄の城へ・・・」
ガチャ

女「・・・!」
ガヤガヤ・・・ガヤガヤ・・・

女「(人・・・多っ・・・!)」
女「(うわ・・・姉貴達を探すとかいう広さじゃねぇ・・・さすが城だ・・・!)」
女「(どうしよう・・・いや、とにかく姉貴達を探さないと・・・他に知り合いもいないし・・・)」
??「もしもし、お嬢さん」
女「・・・ん?」

魔女「どうも、こんばんは」
女「・・・なんだ、その格好は」
魔女「これはドレスですが」
女「・・・そうだな、いや、それより・・・どうして中にいるんだ」
魔女「まだ願い事はひとつ、残っていますから」
魔女「叶えるまでは、あなたについていなくてはなりません」
女「あ、そうか・・・ありがとうな」
魔女「いえいえ」

魔女「・・・ああ、三姉妹なら、あそこにいますよ」
女「本当か?ありがとう」
魔女「シャンパンを飲んで、バイキングを漁っています」
女「・・・姉3だな、止めてこなくちゃ・・・」
魔女「いってらっしゃいませ」

魔女「・・・」
魔女「悔やまないよう、頑張ってください」
魔女「まあ、必ず何か後悔が残る・・・それは、避けられませんが」

83: 2009/02/11(水) 00:28:43.56
姉1「ちょ、ちょっとー、あまりお酒飲んじゃ駄目よ」
姉3「あははーいいじゃなーい、今日はパーティなのよー」
姉2「肉うまーい!」
姉1「・・・もう」

女「姉貴」
姉1「えっ・・・えっ!?」
姉2「あれ!?」
姉3「あれー・・・?」
女「・・・来ちゃった・・・悪ぃ、姉貴、来ないって言ったのに・・・」
姉1「・・・ううん!嬉しい!」
女「え」
姉2「やった!これでいつもの4人が揃ったわね!」
姉1「良かった・・・女、家で一人だと・・・なんだか、申し訳なくて・・・」
女「・・・そんな」
姉1「ずっと、女の事が心配で・・・ううん、でも今日は、一日中楽しめる・・・」

姉1「・・・今日はいっぱい・・・楽しもう?」
女「・・・ああ」
女「・・・楽しもう!」

84: 2009/02/11(水) 00:34:15.01
姉3「うーん・・・あれ?お酒きれたー?おかわりー」
姉2「飲みすぎよ、もっとセーブしないと吐いちゃうわよー?」
女「・・・どれ、一口・・・」
姉1「・・・どう?」
女「・・・うん、甘口だけど、良いな」
姉1「もうちょっと苦くても良いんだけどねー」
女「ああ、そうだな・・・いつもはもっと辛口のものを飲んでるし・・・」

姉2「・・・それにしても」
姉1「うん?」
姉2「王様・・・どこにいるんだろうね?」
女「王様・・・?」
姉2「ん、知らないの?この中に王様が紛れ込んでるっていう話」
女「・・・そうなのか?」
姉1「ええ、会場の人の一部は王様と踊って玉の輿を狙っている・・・って話よ」
女「・・・へぇ」

女「どうでもいいな」
姉1「あはは、そうね」
姉2「だから私ら、結婚できないのかなー」

86: 2009/02/11(水) 00:38:48.02
姉2「・・・でもさ」
女「?」
姉2「ちょっとはさぁ・・・踊ってみたくない?」
姉1「男の人と?」
姉2「うん・・・だってさ、せっかくのパーティだし・・・」
姉1「・・・そうねぇ・・・ダンスパーティだしね」
女「・・・私は別に・・・」
姉1「あら、女なんかはすぐに相手が見つかると思うわよ?」
女「・・・私はいいって」
姉2「・・・よっし、じゃあ私はお相手探そうかなー!」
姉1「おっ、いきますかー?」
姉2「いっちゃうわよー」

女「・・・(コクコク」
女「(・・・やっぱり、姉貴達といると・・・楽しいな)」

87: 2009/02/11(水) 00:43:29.77
姉1「・・・それじゃ、これからは別行動しましょうか?」
女「え」
姉1「ほら、一緒にいると・・・男の人からは誘いにくいでしょ?」
女「・・・なるほど」
姉1「だから一旦、解散ということで、ね?」

女「・・・姉貴も、踊りたいんだな?」
姉1「う・・・うん、まぁね・・・」
女「・・・素敵な人、見つかると良いな」
姉1「えっ?」
女「・・・じゃ・・・気は乗らないが、私も探すとしようかな」
姉1「・・・うん!じゃ、お互い頑張りましょう!」

女「(・・・一旦、解散か・・・)」
女「(・・・とはいえ、ダンスなんてできないしな・・・参ったな)」
女「(ダンス・・・踊れるようにしてもらうか・・・?)」
女「(・・・いや、それはさすがに・・・無駄使いか)」
女「(直感で踊れば良いわけだしな)」

女「(・・・とはいえ)」
女「(ダンスはできないし・・・やることが無い・・・)」
女「(・・・はぁ、一旦・・・外に出るか)」

88: 2009/02/11(水) 00:47:03.44
女「(・・・おーっ・・・バルコニーは寒いな・・・風が・・・さすが秋だ)」
女「(・・・ふぅ)」

女「(しっかしこう、何で・・・バルコニーまで鋼鉄にするかね・・・)」
女「(主要産業だからって、品性ってものが・・・)」
女「・・・はぁ」

騎士「・・・」

女「(・・・ん?)」
女「(あれは・・・兵士さんか、甲冑着て・・・寒そうだな、この季節は)」
女「(・・・)」

女「(・・・ま、別にダンスをするわけじゃないが・・・)」
女「(じっと食事ってのも・・・なんだしな)」

女「(少しは、気を利かせるか・・・)」

90: 2009/02/11(水) 00:50:53.02
騎士「(・・・全く、何故こんな催しに・・・)」

女「おい」
騎士「ん・・・?」
女「・・・シャンパン、いるか」
騎士「・・・おお、いただこう」

騎士「・・・」
女「・・・」
騎士「君も、黄昏か」
女「ん、まぁ・・・そうだな」
騎士「・・・そうか、私もだ」
女「・・・何というかな、勢いで来てみたはいいんだけどな」
女「別に、何もする事が無いっつーか」
騎士「踊らないのか?」
女「・・・踊れないんだよ」
騎士「はは、そうかそうか・・・」
女「・・・やっぱり可笑しいか・・・」
騎士「はは、いやいや・・・」

騎士「私も同じだ」
女「ん?」
騎士「ダンスというものが、どうも昔から苦手でな」
女「・・・はは」
騎士「ははは」

91: 2009/02/11(水) 00:56:20.59
騎士「剣を扱っていると、どうしてもな」
女「・・・ああ」
騎士「手先が不器用になる・・・いや、そればかりか、こうした踊りでさえも、粗雑になってしまう」
女「そうなのか・・・(コクコク」
騎士「うむ、だからこのような催しでは困ったものだ・・・こうして、誰からも誘われない場所にいる他ないからな」
女「・・・城での勤めも大変なんだな」
騎士「ああ、大変だ」

ビュゥウウウウ・・・

女「・・・寒・・・悪い、騎士さん・・・私は会場に戻る」
騎士「ん、そうか」
女「話せてよかった、ありがとうな」
騎士「はは、構わないさ」

騎士「君となら、私も気兼ねなく踊れそうだ」
女「ふふ、そうか・・・いや、でも私は断わるよ、踊れないしさ」
騎士「そうか、残念だな」
女「悪いね」

94: 2009/02/11(水) 01:00:27.26
女「(あー寒かった・・・酔いも醒めちまったな・・・)」
姉2「おーい、女ぁー」
女「ん?」
姉2「どうだった?誰かと踊れた?」
女「いいや、誰とも」
姉2「そうか・・・ふっふーん」
女「・・・なんだよ、その鼻息は」
姉2「聞いて聞いて!私ねぇー」
女「はいはい」
姉2「・・・ちょ、聞いてよー」

姉3「ふはぁーお酒お酒ー」
姉2「うわっ、酒臭っ・・・!」
女「・・・ふふっ」

女「(やっぱり、姉貴達と一緒にいるのが一番だ・・・一番、幸せだ)」

女「(・・・そうだ)」
女「(姉1は・・・誰か男の人と踊れたのかな・・・?)」
女「(・・・探してみるか)」

96: 2009/02/11(水) 01:05:41.77
姉1「・・・(ポーッ・・・」
男「・・・あ、足元気をつけて」
姉1「あ、はい・・・」

女「・・・」
姉2「・・・ヒュー、なかなか良い男じゃないの」
女「・・・さあ、どうだかな」
姉2「何よー、姉1が選んだ男よ?優しい良い人に決まってるわ」
女「・・・どうだろう(コクコク」

女「ふぅ・・・男は、何をするかわからないからな」
姉2「・・・あ」
女「あ」
姉2「・・・ごめんね」
女「・・・いや、私こそ・・・ごめん」
姉2「・・・ま、でも大丈夫よ」

姉2「姉1は男を見る目はちゃんとあるわよ」
女「・・・そうか・・・うん、そう・・・だな」
姉2「三姉妹の中では一番お母さんに似てるけどね」
女「・・・心配だ」
姉2「・・・心配ねぇ」

女「・・・姉貴さ」
姉2「・・・んー?」
女「・・・私、の事・・・さ、どう思う?」

98: 2009/02/11(水) 01:12:33.25
姉2「どう思うって?」
女「・・・だからさ、私・・・ここへ来たのってさ」
姉2「・・・」

姉2「うーん・・・別に、女が何かしたってわけじゃないでしょ?」
女「・・・でも」
女「私がいなければ、姉貴達のお母さんはさ・・・」
姉2「なぁに言ってるのよ、普段は冷静そうにしてるくせに」
女「・・・」

姉2「・・・お母さんは優しい人だったよ、今でもちゃんと覚えてるわ」
姉2「お母さんは心労で亡くなった・・・一時期の貧困が堪えて・・・」
姉2「そうさせた女の父親は・・・今でも許せないよ」
女「・・・」
姉2「でもね、私はね・・・女が家族の一員になってくれて・・・すごく嬉しいわよ?」
女「・・・」
姉2「家事はなんでもこなせるからねー、あはは」

姉2「・・・だからってわけじゃないけど・・・でもね、女がいなかったら・・・なんて、そんなの、私は嫌よ?」
女「・・・」
姉2「だって、女は私達の家族なんだもん」
女「・・・ぐすっ・・・」
姉2「あっはは、泣かないのー、柄じゃないんでしょ?そういうのはっ」

101: 2009/02/11(水) 01:16:24.75
魔女「・・・」
姉3「ふぁー・・・お酒お酒・・・」
魔女「お注ぎします」
姉3「あらぁ?まぁ、かわいこちゃんねぇ、ありがとー」
魔女「いえいえ」

コポポポ

姉3「・・・ふーん・・・良いものねぇ」
魔女「?」
姉3「家族って」
魔女「・・・そうなのですか」
姉3「ええ、良いものなのよぉー」

姉3「いるだけで、ポカポカ暖かいじゃない?」
魔女「・・・まぁ、はい」
姉3「誰かが側にいてくれて、自分の心の側にいてくれて・・・それって、幸せよねぇー」
魔女「・・・そうですね、そう思います」
姉3「うんうん、話がわかる子ねぇ」

コポポポ

魔女「・・・」
魔女「(・・・11時・・・か)」

116: 2009/02/11(水) 01:48:08.86
騎士「・・・うーむ」

兵士「お、・・・ここに居られましたか」
騎士「ん?ああ」
兵士「ここは冷えるでしょう、それに、もうすぐ時間です・・・どうぞ中へ」
騎士「・・・勘弁してくれ、どうもパーティというものは苦手なんだ」
兵士「と言われましても・・・来客が黙っちゃいませんから・・・」
騎士「・・・ううむ」
兵士「誰か一人、見つけて・・・踊りませんと」
騎士「・・・見せ物ではないのだぞ」
兵士「はい、ですが・・・」

騎士「・・・ふー、わかった、わかった」
兵士「・・・」
騎士「踊るのは一度だけ、それでいいな?」
兵士「はい、一度で良いので・・・」
騎士「・・・民は、それで納得してくれるのか」
兵士「まぁ、大丈夫でしょう」
騎士「・・・ふーむ」

騎士「・・・ん、おお、そうだ」
兵士「?」
騎士「一人、気になる者がいてな」
兵士「・・・?」

117: 2009/02/11(水) 01:53:04.13
兵士「皆様!」

ザワザワ・・・ザワザワ・・・

女「・・・?」

姉1「・・・?」
男「おっ、始まりますね」
姉1「・・?何がですか?」
男「今日の、メインイベントのようなものですね」
姉1「メインイベント・・・?」

女「・・・なんだ、それは」
姉2「あら、最初の方に言わなかったっけ?」
女「・・・」


兵士「えーでは、これより・・・王が直々に、来賓の方を1名、指名します」

女「・・・?どういうこと?」
姉2「うーん、ま、王様と二人っきりで踊れる・・・ということかしらね」
女「へぇ・・・(コクコク」
姉2「・・・すっごく興味なさそうね」
女「ん?・・・ああ・・・うん、どうでもいいし」
姉2「・・・まぁ、私もどうだっていいんだけどね」

ザワザワ・・・ザワザワ・・・

119: 2009/02/11(水) 01:58:15.61
姉2「大体ね、こういうのは大抵、既に踊る相手が決まっているものなのよね」
女「ああ、出来レースか」
姉2「そんなもんよ、だってここはお城よ?王様よ?」
女「・・・ま、それもそうか」

女「(・・・今は・・・げ、もう11時を回ってる・・・)」
女「(・・・タイムアップになっても泥のシミが戻るだけだけど・・・やっぱり格好悪いからな・・・)」
女「(・・・そろそろ、退散の準備をしておこうかな)」

パタパタ・・・
姉1「ごめーん、ちょっと、男の人と踊ってて・・・」
姉2「あら、おかえりー、知ってるわよぉー、ラブラブだったじゃないの」
姉1「えっ・・・えっ!?見てたの・・・っ!?」
姉2「見てるこっちが恥ずかしかったわ、ほんとーに」
女「ふふっ・・・」

姉1「女はどう?誰かと踊れた?」
女「え?いや・・・私は誰とも」
姉1「あ、そうなの・・・」
姉2「聞いて聞いて!私ねー」
姉1「あれ?姉3はどこ?」
姉2「聞いてよー」

123: 2009/02/11(水) 02:03:29.81
女「・・・あのさ、もうパーティも終わりそうだし・・・」
姉1「え?あ、そう・・・ねぇ、そうね、帰りは混みそうだし・・・」
姉2「じゃー私らは早めに帰りましょーかね?」
姉1「あはは・・・なんだかお城に失礼ね」
姉2「いいのよ、もう充分楽しんだものー」

姉3「そうよぉー、沢山のんだー」
女「姉貴、いたのか」
姉1「あーらら、泥酔しちゃって・・・」
姉2「仕方ないわよ、酒癖は私らの中で一番悪いんだもの」

女「・・・よっ、こいせ・・・っと」
姉3「ふにゃぁー・・・」
姉1「どう?担げる?」
女「ああ、大丈夫」
姉2「・・・じ、帰りましょうかー」
姉1「ええ、そうしましょうか」

女「(・・・パーティは終わり・・・か)」
女「(・・・一度も踊れなかったけど・・・でも、本当に)」
女「(楽しかった・・・)」

騎士「おい」
女「え?」

125: 2009/02/11(水) 02:08:18.79
女「・・・ああ、バルコニーにいた・・・」
騎士「すまない、帰る所だったか?」
女「んー、まぁ、ね」

姉1「・・・誰?」
姉2「・・・さぁ?」

ガヤガヤ・・・ザワザワ・・・

女「(・・・?なんだか、周囲が騒がしい・・・)」
騎士「・・・すまない、君が踊りが苦手だと・・・知っていたんだが」
女「・・・え?」
騎士「大丈夫、私も苦手だ」
スッ

騎士「さあ、手を」
女「えっ・・・?え?ちょっと・・・」

姉1「・・・・ねえ、この人って・・・もしかして」
姉2「・・・あー思い出した・・・ずっと鎧を着てる・・・この・・・国の・・・」

騎士「私と、踊ってくれないか?」
女「・・・王・・・様・・・?」

127: 2009/02/11(水) 02:13:31.18
騎士「端にいるのもなんだ、全ての客から見える所へ」
女「えっ・・・え・・・あの・・・私・・・」

ガヤガヤ・・・ガヤガヤ・・・

女「(え?周りの人たちがどんどん離れて・・・会場の中心・・・私達・・・だけって・・・)」
騎士「緊張するか?」
女「あ・・・あの・・・」
騎士「私もダンスは初めてだ、緊張するな、これは」
女「あなたは・・・・あの・・・」

騎士「私か?私はこの国の王・・・鉄の王だ」
女「・・・!」

女「(王様・・・この人が・・・?うそ・・・!)」
女「(そんな、そんな・・・恥ずかしい・・・ちょっと、姉貴・・・!)」

姉2「ヒューヒュー」
姉3「ひゅー、ひゅー・・・むにゃ」

女「(・・・ちょっと、助けて・・・!)」
騎士「・・・嫌か?」
女「え?あの、いや・・・そういうわけじゃ・・・その」

女「(皆に見られてる・・・恥ずかしい・・・!)」

128: 2009/02/11(水) 02:17:14.45
女「(こんな、こんなの・・・初めてだし・・・!)」
女「(足の動かし方とか、わからないし・・・!)」

女「(足・・・足・・・!!)」

女「(しまった・・・靴・・・ボロボロの・・・そのまま履いてきちゃった・・・!)」
女「(どうにかして・・・靴、どうにかして!)」

魔女「・・・」
魔女「“靴をどうにかして”」
魔女「よろしいですね?・・・聞えてないか」

魔女「最後の願いが、よりによって・・・あっけないですね」
魔女「・・・でも、」
魔女「良かったじゃないですか」

ぽんっ
女「(!! 靴が・・・ガラスに!?)」

魔女「・・・それでは、さようなら」
女「(あ・・・魔女・・・)」

女「(・・・ありがとう・・・本当に・・・)」

131: 2009/02/11(水) 02:22:22.02
ガヤガヤ・・・ザワザワ・・・

騎士「・・・」
女「・・・」
騎士「はは、やはりなかなか、難しいものだな」
女「・・・そ、そう・・・ですね」
騎士「畏まらなくて良い、先ほどのような、気さくな話し方で頼む」
女「え・・・あ、ああ・・・」
騎士「・・・」
女「・・・」

女「(・・・なんだか・・・不思議な気分・・・)」
女「(なんだろう、こう、ゆったりと踊っていると・・・本当に、時間を忘れてしまいそう・・・)」
女「(時間・・・・時間・・・あ)」

女「(時間!!)」

“11:57”

女「・・・・!!」
騎士「ん?どうした?」
女「その・・・」
騎士「どうした、気分でも優れないのか?」
女「・・・・ごめんっ!」バッ

騎士「! おい!」
姉1「えっ!?」
姉2「ちょっ・・・!?ええ!?」

タッタッタッタッタッタッタッ・・・

132: 2009/02/11(水) 02:25:07.17
駆ける。夢中で駆ける。

夜の中、闇の中、暗い鉄の地面、

駆ける。早く、駆ける。

魔法が解ける前に、早く駆ける。

懐中時計の針は進む。それよりも早く、駆ける。

黒い鉄の階段、一段飛ばしで駆け下りる。

駆ける、駆ける、駆ける・・・。


ただ、靴は、履いたまま・・・。



“0:00”

136: 2009/02/11(水) 02:35:08.43
服は元通り、いや、元通りとは言えないのかもしれないけど、元通り。泥を被った状態に戻っていた。
こんなにすごい魔法が使えるんだから、完璧に綺麗にしてくれたっていいじゃないか。
夜道の上で一人、そう思った。

でもあの魔術師に感謝しなければならないだろう。贅沢は言ってはいけない。

女「・・・はぁ、逃げちゃった・・・私」

ガラスの靴は丈夫で、ここまで全力疾走で走っていても壊れることはなかった。
しかしどうもつま先とかかとが痛い。これを日用品にするには、少し無理がありそうだ。
明日にでも新しい靴を買わなければならないだろう。

女「・・・王様・・・せっかく、私・・・踊ってたのに・・・」

ガラスの靴に、同じくらい透明な雫が落ちる。雫は跳ねて散り散りになり、地に落ちた。
雫は次々に落ちてゆく。止まらない。

女「うっ・・・うう・・・やっぱり・・・逃げなきゃ良かったかなぁ・・・」

後悔の念が、今更になって押し寄せてくる。
もう戻っても間に合わないし、仮にまだパーティをやっていたとしても、この格好では戻れない。

私はただ、ただ、悔しかった。


暗い帰路、私は一人泣きながら、嗚咽を上げながら、悔しさの中、歩いていた。

139: 2009/02/11(水) 02:40:46.78
姉2「こーらぁっ!」
ゴツッ
女「いたっ・・・!」
姉2「王様を放り出して帰るなんて、どういう神経してるのよー!」
姉1「せっかくいい感じに踊ってたのに・・・」
女「・・・」

女「・・・姉貴ぃ・・・ぅっ・・うう・・・」
姉1「!え、ど、どうしたの?」
姉2「・・・はは、なんだなんだ、もしかして、恥ずかしくなって逃げ出しちゃったの?」
女「私、私・・・もっと踊っていたかったのに・・・」
姉2「ははは、よーしよしよし・・・」
姉3「ふにゃふにゃ・・・よしよし・・・むにゃ・・・」

姉1「・・・!ちょっと女、どうしたのよその格好!」
女「え・・・?」
姉2「あっ、うはぁー・・・すごいシミになってる・・・」
女「あ・・・こ、これは・・・」
姉2「走ってる時に転んじゃった?大丈夫ー?怪我無かった?」
女「・・・」
姉1「どうしたの?大丈夫?」
女「・・・」

女「姉貴・・・姉貴ぃ・・・」
姉2「・・・んー、どうしたのー」
姉1「ほらほら、泣かないの」
女「うっ・・・うう・・・姉貴・・・姉貴ぃ・・・!」

141: 2009/02/11(水) 02:48:40.74
魔女「・・・反動」
魔女「・・・全てが終わった時、ひとつだけ、過ちをおかしてしまう」

魔女「・・・一つだけ」
魔女「とても、とても大きな過ち・・・だけど」

魔女「・・・その過ちを犯しても・・・最後の最後で失敗しても・・・」
魔女「・・・後悔しても・・・それでも」
魔女「・・・幸せなら」

魔女「幸せなら・・・それはとても、」
魔女「・・・素敵な事ですね」

“0:12”

魔女「・・・(ジャラッ」
魔女「それでは、また」
魔女「お会いしましょう」

魔女「くれぐれも、後悔の無きよう」


   おわり

142: 2009/02/11(水) 02:50:21.62
おわり……だと……

引用元: 女「・・・ダンスパーティだと?」◆