1: 2012/01/17(火) 03:53:41.13
 それは大学生活も2年目になり、成人式も終えた1月の事だった。

 休日を利用して桜が丘の実家に里帰りしていた私は、突如律の家に呼ばれた。


律『澪ー、今からウチ来ない?』

澪「今から? 別にいいけど」

律『うん、待ってるからねー』

 ――ピッ

澪「律のやつ、いきなりどうしたんだろ?」


 そして準備をしてから律の家まで歩いて数分、数年ぶりに訪れた律の家の呼び鈴を鳴らしてみる。




 ――ピンポーン…

澪「おーい律ー、来たぞー」

律「はーい、今行く~」

 待つこと数秒、玄関の戸を開けると、律がスリッパを用意してくれていた。

4: 2012/01/17(火) 03:55:26.24
律「いきなり呼びつけて悪いなぁ、ま~上がってよ」

澪「うん、お邪魔します」

 律に招かれるままに部屋に上がり込む。


律「みんなー、主役が来たぞー」

澪「あれ、唯にムギも来てたんだ?」

 以前来た時と大して変わらない律の部屋には、唯とムギの姿が見えた。

 珍しいな、ここでこうして4人が集まるなんて。

9: 2012/01/17(火) 04:04:41.50
唯「澪ちゃんやっほー♪」

紬「澪ちゃんこんばんわ、今日も寒いわねぇ~」

澪「うん……最近よく冷えるよなぁ……」

律「お茶どうぞ~」

澪「ああ、わざわざありがとう」

 律の淹れてくれたお茶を一口いただく。

 少し熱めのお茶だけど、冷え切った身体が暖まる感じがする。 ……律もこうした気遣いが出来るようになったんだなぁ、と思う私だった。


唯「澪ちゃん今日は何してたの?」

澪「久々に帰って来たからずっと家族とのんびりしてたよ」

唯「あはは、たまには実家も良いよねぇ……私もさっきまで家で憂と一緒にいたんだけど、りっちゃんに呼ばれてさ」

澪「そうだったんだ。 あっ、そうだ律」

律「ん?」

 椅子に座って漫画を読んでいる律に向かい、私はみんなを呼んだ理由を尋ねてみる。


澪「律、いきなりみんなを集めて、どうかしたの?」

11: 2012/01/17(火) 04:10:04.38
律「どうかしたのって澪、お前今日が何の日だか忘れたのか?」

澪「今日って……ああ、そっか」


 …今日は、1月の15日。

 そう、私の誕生日の日だった。


 確かにここ最近、大学の講義やらバンド活動やら作詞やらで、自分の誕生日の事なんてすっかり忘れてたな……。

 まぁそれだけ充実してたって事なんだろうけど、自分の誕生日も忘れる程とは……


 ……私も、今日で20歳になるのか。

律「せっかくの澪の誕生日だし、みんなで集まってパーティーでもやろうかなと思って、数日前からこっそり準備してたんだよ」

澪「……なんか悪いなぁ、でもありがとう、嬉しいよ」

唯「憂とあずにゃんは遅れて来るみたい、先に始めててってメール来てたよ」

律「そっか…じゃー、あんま遅らすのもアレだし、私らで一足先に始めちゃおっか?」

唯「うん、そうしよっ♪」

13: 2012/01/17(火) 04:16:53.59
 唯の一声で私達は部屋を抜け、居間に降りる。

 ここでの食事も懐かしいなぁ、確か高校の時に1回みんなで集まって、律の手料理を食べたんだっけ。


紬「りっちゃん、お料理の準備私も手伝うわ」

律「うん、あんがと、じゃあムギはスープの方お願い~」

紬「かしこまりました~♪」


澪「律、私も何か手伝うよ」

律「澪はそこで座ってていいよ、今日の主役なんだしさ」

澪「でも、なんか悪いしさ……」

律「いいから主役は大人しく座って待ってる、ほら、唯の隣空いてるから」

唯「澪ちゃん、おいで~♪」

澪「……わかった、じゃあ、待ってるよ」

 どうあっても律は譲ってくれなさそうだったので、その言葉に従い、私はテーブルに並べられていく料理を見ていた。

15: 2012/01/17(火) 04:21:05.10
澪「……お、おいしそう……」

律「だろ? これでも料理の腕上がったんだぜぃ♪」

 フライドチキンにスパゲティにサラダにスープ……どれも彩りがとても綺麗で、見てるだけでも思わずよだれが出そうになる。

 いつの間にこれだけの料理を作れるようになったのか、律の手料理はすごく美味しそうに見えた。


紬「りっちゃん食器はこれでいいのかしら?」

律「うん、人数分と……梓や憂ちゃんの分も用意しといてもらっていいかな?」

紬「はいはーい♪」

澪「……もしかして、これ全部律が?」

律「まーねぇー♪」


唯「りっちゃん張り切って作ってたみたいだもんねー、あ、私も一応作ったんだよっ」

16: 2012/01/17(火) 04:25:56.86
 得意気な顔で唯が言う。

澪「へー、唯はどれを作ったの?」

律「唯はケーキにイチゴ乗っけてただけだろー?」

唯「りっちゃぁ~ん、それ言っちゃダメぇ~~~」

紬「うふふっ♪ なんだか懐かしいわねぇ~」

澪「確かに、前にもあったな、こんな事……」

 確か、高1のクリスマスの時だったかな。

紬「急いで作ったから出来栄えはあまりよくないけど、味は美味しいと思うの、澪ちゃんも是非召し上がってね」

澪「ああ、何から何まで本当にありがとう、みんな……」


 そうして、楽しくお喋りをしつつも、次々と料理が並べられて行く。

紬「はい、澪ちゃんの為にみんなで作ったケーキでーす♪」

唯「ムギちゃんの手作り、すっごく美味しそうだよ~~♪」

律「なーんか、これも懐かしいよなぁ」

澪「ああ、大学入ってから、こんなに大きなケーキをみんなで食べる事なんてあまりなかったからなぁ」

18: 2012/01/17(火) 04:31:20.36
 そして、唯とムギの手作りのケーキがテーブルの上に置かれる。

 普通のよりもやや大きめのイチゴのショートケーキ、

 その上のチョコプレートには手書きで「みおちゃん20さいおめでとう~♪」と書かれていた。

紬「唯ちゃんったら、漢字で書こうとしてぐちゃぐちゃにしちゃって」

唯「だって、チョコホイップで字を書くのってすっごく難しいんだよ~」

澪「だから全部ひらがななのか、唯らしいなぁ」

唯「えへへへ……♪」


律「んじゃ、一通り準備も終わったし、そろそろ始めよっか?」

唯「うんっ、そうだね~」


 そして……

19: 2012/01/17(火) 04:34:21.77
律「はっぴーばーすでー澪、20歳の誕生日おめでと♪」

唯「おめでとーーっ♪」

紬「澪ちゃん、おめでとう♪」

 律の言葉を皮切りに、唯もムギも、祝福の言葉を述べてくれた。


澪「みんなありがとう、わざわざ時間作って祝ってくれてすごく嬉しいよ……本当にありがとう!」


 みんなからのおめでとうの言葉に、私は照れる感覚を抑えながら、笑顔で応えたのだった。


―――
――


唯「はいこれ、お誕生日のプレゼントだよっ♪」

 唯が小さな袋を渡してくれた

澪「ありがとう唯、中、開けてもいい?」

唯「うん、きっと気に入ってくれると思うんだけど、どうかな?」

21: 2012/01/17(火) 04:48:55.69
 袋の中には、一昔前に流行ったゆるキャラのキーホルダーが入っていた。

澪「これ、私がこっそり集めてたキャラクターの……わざわざ探してくれたのか?」

唯「えへへ、あずにゃんに頼んでインターネットで届けてもらったんだぁ」

 頭をかきながら照れる唯だった。 きっと自分のプレゼントが私に気に入って貰えた事が、よほど嬉しいのだろう。


澪「ありがと唯、これ、大事にするよ」

唯「うん、可愛がってあげてね♪」


紬「私はこれを…」

 ムギが唯のそれより小さな布袋を渡してくれた。

 小さい布袋は丁寧にリボンで止められていて、すごく可愛らしく見える。

 リボンをほどき、中身を取り出してみると、見慣れない形の……ああ、おそらくこれはピックだろう。


 ベース用のピックが数枚、私の手の中に転がった。

22: 2012/01/17(火) 04:52:10.47
澪「これは、ピック?」


紬「ええ、お父様の会社で開発された新商品らしいの。よく手に馴染む上に指の負担を抑える素材でできててしかも丈夫、お父様曰く、たとえ1000回演奏しても壊れないって言ってたわ」

律「相変わらずすげーよな、ムギんとこの会社は……」

澪「ああ……もっとさわってもいい?」

紬「ええ、どうぞ」

 ムギのくれたピックを触ってみる。

 確かに、普通のピックに比べて持ちやすさが違う。 それに、しっかりと手に馴染む感じがする。


 裏には放課後ティータイムのロゴマークも彫ってあり、それがムギの手作りなんだと言う事がよく伝わる。

澪「このロゴは……ムギ、ありがとう、 このピック、明日から使わせて貰うよ」

紬「ええ、思いっきり使ってあげて♪」


唯「ねーねーりっちゃん、りっちゃんは何を用意してきたの?」

律「ああ、私はだな~」

23: 2012/01/17(火) 04:59:10.59
律「ちょーっと待ってて、今持って来るからさ」

澪「……?」

 そして律が居間を抜け、キッチンからやや大きめの袋を取り出して戻ってきた。

 袋には「酒の中島」という名前がプリントされているけど……もしかして、中島って……


律「ま、これでめでたくみんな成人した事だし、私はこれを用意しました」

唯「えー、なんだろ?」

律「へへへ……じゃーんっ!!」

 律が袋の中から青い瓶に入った飲み物を取り出す。

澪「これは……酒か??」

 そう、律が取り出したのは酒。

 青い瓶に『松竹梅白壁蔵 澪-MIO-』と書かれたラベルが貼られている、正真正銘のお酒だった。


松竹梅白壁蔵 澪-MIO- 

24: 2012/01/17(火) 05:09:44.28
紬「そっか……澪ちゃんも成人した事で、私達全員20歳になったのよねぇ」

唯「そうだね~」

律「これでやーっと堂々と酒を飲めるんだよ私達はさ、ついでにタバコも吸い放題だ」

唯「えー、りっちゃんたばこ吸うの~?」

律「まー、興味ないワケじゃないけどな、ほら、ロックバンドにもヘビースモーカー多いし」

澪「憧れで吸うなんて子供っぽいからやめた方がいいと思うぞ」

律「まーまー、私らもそーゆう事が出来るトシになったってわけだよ、別に明日から吸うとは言ってないさ」

澪「そうだけどさ……」


 正直な所、出来る事なら律には吸ってもらいたくないかな。

 ……タバコの匂い、私あまり得意じゃないし……。

26: 2012/01/17(火) 05:15:21.58
唯「私達も、もう大人なんだよねぇ~、今更だけど」

律「ま、唯はハタチになっても変わってないけどなー」

澪「……それは律もだろ?」

律「なにをー! 私だって大人になったんだぞー!」

澪「……ほう、どこが?」

律「ブラのサイズがいっこ増えた! 私的にはすごく大きな成長ですよこれは」

 言いながら必要以上に胸を張る律だった。  確かに、前に比べて胸の膨らみが大きくなった気はするが……

澪「って、そこだけかっ」

律「おーおー、どーせあたしの貧相なコレじゃあ澪の爆乳には敵いませんよーだ」

 そう言いながら、私の胸をまじまじと睨む律だった。

 ついでに言うと、私らのやり取りをどこか期待するような眼で見続けるムギの顔も視野に入っていた。


 ……ムギもムギで相変わらずだなぁ……

澪「胸の話はもういい……まったく、他に成長したって言えることは無いのかお前は……」

27: 2012/01/17(火) 05:23:46.87
 ま、20歳になっても特別変わらないのは、私も含めたこの場の全員に言えた事なのかも知れない。

 正直な所、誰もがまだ実感が沸かないのだろう。

 ……こう考えてしまうのは、私達がまだ子供だからなのかな?


澪「そう言えば、その袋にある『酒の中島』ってやっぱり……」

律「うん、信代んとこの酒屋さんで買ってきた」

澪「やっぱりな」


 中島信代、私達と同じ3年2組の仲間で、ライブの時はよく場を盛り上げてくれていたっけ。

 教室で開かれた最後のライブでは堅物だった堀込先生を参加させてくれたりと、活発で元気な子だったなぁ。


唯「信代ちゃん元気だった?」

律「ああ、相変わらずパワフル全快だったよ」

紬「うふふ……高校生かぁ、懐かしいわねぇ~」

澪「ああ……もう、私達があそこを卒業してから2年になるんだよな……」

29: 2012/01/17(火) 05:32:39.36
 修学旅行にライブに体育祭に卒業旅行……高校の頃は毎日がお祭り騒ぎだった。

 大学に入り、新たな仲間に囲まれて音楽をやってる今も楽しいけど、それでも私は、高校の頃が一番楽しかったと思う。

 唯に律にムギに梓、それに和や憂ちゃん、純ちゃんやさわ子先生……多くの仲間に囲まれて、幸せな高校生活を送っていた。

澪「ほんと、懐かしいな」


律「それで、前に桜が丘に帰った時に信代ん家寄ってさ、んであいつに今日の事話して用意して貰ったんだ、私達が澪の誕生日を祝うのに相応しい、最高の酒をさ…!」

唯「義兄弟の杯ってやつだねぇ~、私、みんなでお酒飲むの楽しみだったんだぁ~♪」

律「あはは、まー唯のそれとはちょっと違うけど、信代曰く、『澪の誕生日にはこれしかない!』って絶賛してたよ」

紬「なんたって、澪ちゃんの名前が付いたお酒なんですものね」

澪「私の名前の……酒……」

唯「オシャレで可愛いデザインだよねぇ♪」

紬「青い瓶がすごく澪ちゃんらしいと思うわ、これ……」

澪「私の名前のお酒……律と信代でわざわざ探し出してくれたのか……」


 あまりの感激に言葉が出なかった。

 こんな綺麗なお酒を、私の為にわざわざ用意してくれるなんてな……。

30: 2012/01/17(火) 05:35:42.84
澪「ん、これは……手紙?」

律「ああ、そいや信代のやつ、何か入れてたっけ」

澪「どれどれ……?」

 袋の中にに入ってた手紙を開き、声に出して読んでみる。


澪「ええと……澪、お誕生日おめでとう、20歳の誕生日を迎えた澪にぴったりのお酒を用意しましたので、軽音部の皆さんで是非召し上がってください……」

澪「追伸、またみんなの歌が聴きたいよー、いつかまた、みんなの演奏を聴ける日を楽しみに待ってます、中島信代……だってさ」


 それは短い文章だったけど、信代の素直な気持ちがつづられた、暖かい内容の手紙だった。

 
律「……へへへ、すっかり人気者だよな、私ら」

唯「そうだねー……またいつか、みんなにも聞かせられると良いね、私達の演奏」

紬「ええ、いつかきっと……みんなでやりましょうね♪」

澪「ああ……絶対に……な」


澪(信代……ありがとう!)

35: 2012/01/17(火) 05:46:51.63
―――――――――

律「んじゃー、グラスでも持って来るよ、あ、電気少し暗くしたら雰囲気出るかもな」

唯「んじゃー、ちょっと電気暗くするね?」


 律が棚から持って来てくれたカクテルグラスに酒を注ぎ、唯が電気の明かりを少し下げる。

 トクトクとカクテルグラスに注がれる酒が薄暗い部屋の照明とマッチして、ものすごく上品な感じに映って見える。

 酒には炭酸が入っているのだろう、瓶の中の透明な液体はグラスの中でかすかに泡立ち、それが尚の事大人な雰囲気を演出しているようにも見え、何処か落ち着いた気にさせてくれる。


 いつか見た洋画でもこんなシチュエーションがあったけど、まさかそれを自分で演じるなんてな……。


紬「なんだか、私達、大人~って感じがするわぁ♪」

唯「うんうん、映画みたいで、私達、かっこいいかもね……♪」

律「あははっ、あんま言い過ぎるとかえってガキっぽいけど……確かに、なんかかっこよく見えるよなぁ」

澪「酒に酔う前に、場の空気に酔ってるな、みんな……」


 それは、きっと私も同じ事だ。

 本当の大人がいたらきっと笑われるかもしれないけど……それでも、今はそれも良いと、そんな事を思う私達だった。

36: 2012/01/17(火) 05:50:13.35

澪「…………」

 グラスに注がれたその香りを嗅いでみると、アルコールの独特の香りに少し顔が赤くなる気がする。

 酒の味なんて分からない私達だけど、それがどこか心地よく……場の雰囲気と相まって、きっとこれは良いお酒なんだろうと、勝手ながらにそんな気になっていた。

 ……ああ、完全に場の空気に酔いしれてるな、私達。


澪「もう私、こういうお酒も飲める歳になったんだよなぁ……」

紬「ええ、澪ちゃんも私も、ううん、私達も、もう大人になったのよ?」

澪「うん………当たり前だけど、そうなんだよな……」

 そう、ムギの言葉に頷く私。

 ……この時、今更ながらに私は、自分が大人になったんだと言う事を認識していた……。


 こういう雰囲気が似合ってもきっとおかしくない、そんな歳になったんだ……私達も。

38: 2012/01/17(火) 05:52:47.21
律「みんな、グラス持ったかー?」

 律がグラスを手に立ち上がり、乾杯の音頭を取り始める。


唯「うんっ♪」

紬「いつでも行けるわよー♪」

澪「ああ、こっちも大丈夫だ」

律「じゃあ……えー、みなさん待ちに待ったこの日を迎える事が出来ました」

律「私も唯もムギも澪もみんな20歳……立派な大人になったので、こうやって堂々とお酒を飲める歳になりました」

律「今日はその記念と、放課後ティータイムの一員であり、みんなの大好きな澪の誕生日をお祝いして……この酒で、澪と同じ名前のお酒で乾杯したいと思います!!」

律「みんな……かんぱーーいっっ!!」


一同「かんぱーーいっっ!!」

 ――キンッ

 甲高い乾いた音を立て、それぞれがグラスを合わせる。


 そして……みんなでそれを一気に飲み干す。

40: 2012/01/17(火) 05:58:04.53
律「っっっくううぅぅぅ………!! これが酒の味か……! なんかイイ! すっごくいい!!///」

唯「んっく……んんん……なんか…にがいぃぃ……」

紬「あら、私は美味しいと思うけど?」

澪「……………………」


 ―――人生で初めて口にしたそれは……不思議な味がした。

 若干ほろ苦く、でも、どこか暖かくなるような……不思議な感じ……。


 今まで味わった事のない感覚……だけど、とても楽しい……そんな……不思議な……………

 …ふしぎ……な…………。

 ………


45: 2012/01/17(火) 06:08:04.13



 乾杯してから数分、酒が入った事もあってか、場の盛り上がりは一層高まって行った。

 おそらくそれは、後に起こるとんでもない展開への警鐘だったのかも知れないけど、そん時の私達にはそんな事、予測できる由もなかったわけで……



律「ん~~……いいなぁ、この感じ…♪」

 私は上機嫌に別の酒を注ぎ、それを飲み干す。

 これも信代一押しの梅酒で、酸味が若干あるけど、さっきのに比べたらだいぶ飲みやすい方だった。


律「おほ、梅酒って案外飲みやすいんだなぁ……ねえ、唯もどう?」


 梅酒を唯に勧めてみる、さっきのに比べたら苦みはあまり無いし、これなら唯でもさっくり飲めるんじゃないかな?

46: 2012/01/17(火) 06:09:07.22
唯「えへへ……うんっ♪ いただきまーすっ」

 そうして私の注いだ酒を火照った顔で一気に飲む唯だった。

 ……ありゃ、もう出来上がってんのかな、こいつ。


律「おいおい…まだまだあるんだから、そんな一気に飲まなくても……」

唯「今日はとくべつだよぉ~、ね、ムギちゃん♪」

紬「ええ、でも唯ちゃん、あまり飲みすぎないようにね?」


 ムギはムギで確かに顔は若干赤くなってるけど冷静そうに見える。

 けど……


紬「うふふ……えへへへへ…♪ うふふふふふふっ♪ 酔って赤くなってるりっちゃんと唯ちゃん、可愛いわぁ……♪」


 意味もなくいつも以上に笑っている辺り、ムギもしっかりと酔っ払っているようだった。

 ……もしかして、ムギって笑い上戸なのかな?

50: 2012/01/17(火) 06:10:58.78
唯「ひっく……ちょっとすっぱいけど……えへへへ……おいしいい~~♪ りっちゃん、もう一杯飲んでい~い?」

律「ああ、まだまだあるからいいけど……唯、マジで飲みすぎんなよ…?」

唯「えへへへへ……♪ だいじょーぶっ! ふんすっ!」

紬「あらあら、唯ちゃんったら…♪」


律「ま、とりあえず唯はムギに任せておけば大丈夫かな……えと、澪は……」

 隣で無言になってる澪に声をかけてみる。

 初めての事に緊張でもしてるのか、固まったように動いてないけど、大丈夫なのかな?


律「みーおー♪ えへへ、澪ももう一杯どう?」

澪「……ああ、ありがとな……」

 唯やムギに比べると随分落ち着いている澪だった。

 …澪は酔ってもあまり変わらないのかな?


律「へへへ……こうして澪と酒を交わせる日が来るなんてなんか不思議……ささ、どうぞどうぞ」

澪「……いただきます」

52: 2012/01/17(火) 06:13:55.98
澪「んんっ…………ふぅ……美味しい……」

 私の注いだ酒を一気に空ける澪だった。

 ……ありゃ、てっきり1杯で潰れそうなイメージあったけど、結構豪快に行くのな……意外。


澪「……………うん、おいしい……♪」

律「一気に行ったなぁ……大丈夫?」

澪「…うん…律……ありがとな……」

 そう、少し赤くなった顔で、澪は優しく微笑んでくれた。


律「いいって、私も、こうやってみんなで飲めるの、楽しみだったからさ」

澪「律は優しいなぁ……いっつもみんなの事考えてくれて……ほんと、律に会えてよかった……」

律「んもー、そんなに褒めるなって……照れるだろ?」

澪「……りつ………」

律ん~? どーした澪?」

 言いながら私の背後に回り、子猫の様に甘えて来る澪。


 ――その時だ。

53: 2012/01/17(火) 06:16:24.10
 ――ちゅっ…


律「…………へ?」


 突然、唇に柔らかい感触がした。


 一瞬何事かと思ったが、私の手をがっちりと掴み、目の前にあるうっとりとした澪の顔を見て、私は私の身に何が起こったのかを瞬時に理解した……。


 私、今……澪と…………き……キキ………キス…………ッ


律「………え………ええええええええっっっ!?!?!?!?!?」


唯「わお!! 澪ちゃんたら大胆!!」

紬「え? み、澪ちゃん今何をしたの!? 澪ちゃん??」


澪「へへへ……律のはじめて……いただいちゃった……///」

律「………………っっっっっっっ!!!!! み……澪ーーーーっっっ!!!」

澪「うふふふっっ…………えへへへへへ……っ♪」

54: 2012/01/17(火) 06:21:37.23
 咄嗟に唇を抑えながら、私は澪から後ずさる。

 今こいつ、私に………!!


律「………っっっ!!! みお……っっ!! お、お前いきなり何すんだーーーー!!!」

 顔が赤くなるのが自分でも分かる。 でもこれは酒に酔ったのもあるが、それ以上に澪の突然の奇行によるのもあった……つーかそれがほとんどだ!


澪「……えへへへ…っ 律の唇……すごく柔らかかった……♪」

 私の動揺とは裏腹に、まるで悪戯をした子供のような顔で笑っている澪だ。

 こいつ……まさか……!!

律「澪……お前まさか酔ってる?」

澪「だいじょーぶ、私は普通だよ…♪」

56: 2012/01/17(火) 06:26:51.72
 絶ッッ対大丈夫じゃねえ!!

 顔色こそ若干赤くて普通と変わらないけど、間違いなく澪は酔っ払ってやがる。

 ……まさか、酔った澪がこんな風になるとは思わなかった……。

 普段のこいつなら、こんな事絶対にしないだろうし、どっちかってえとそれは唯がよくやる事だ。

 むしろ、こいつならそんなシチュエーションを想像しただけで卒倒するに決まってる……!


 ……酔うとキス魔に変貌……それが、澪の正体だったなんてなぁ……。


澪「………………律ぅ……」

 澪はうっとりとしたような眼で私をじっと見てる……

 やばい、こいつ……完全に初めの1杯で出来上がってる……!!

 まさか、たかだか1杯の酒ででこんなになるだなんて……

 これがよく大人が言う酒の恐ろしさなのか、それとも単に澪が人一倍酒に弱いのか、今はもう分からないが、今更ながらに自分のしでかした事を後悔し始めている私だった……。

58: 2012/01/17(火) 06:32:05.35
紬「澪ちゃんいいわあ……すっごくいいわぁぁぁぁ♪♪」

唯「ふえぇ……澪ちゃん……すっごく色っぽく見えるよぉ……」

 唯とムギは人の気なんて知らず、完全に傍観を決め込んでいやがる。

律「唯もムギも見てないで私の気持ちを少しは……」

律「って……よくよく考えたら、なんか二人だったらすんなり受け入れそうだよなぁ……あははは……」


澪「えへへへ………ねえ律……もう一回……ね?」

律「待てコラおい、あ……あたしにそんな趣味は!」

澪「照れるなよ……いつもの律らしくないよ??」

律「お前こそいつもの澪じゃないだろ!!」

澪「うふふふふふ………ねえ律……」

律「ちょっ!! み…澪……や、やめ……っっ!!」

 尚も澪は私に擦り寄って来る……。

 どーにかしようと他の二人に助けを求めてみるけど、ムギも唯もその光景を楽しそうに眺めてるだけで助ける気なんて微塵もない。 むしろムギに至っては「澪ちゃんもっと強引に!」なーんて事を言っている。

 冗談じゃない、あたしにそんな趣味は毛頭ないし……いくらなんでもあり得ないだろ、女同士でなんて!!

59: 2012/01/17(火) 06:35:16.87
 にじり寄って来る澪から後ずさり、なんとか距離を開けようとしたその時、居間のドアから弟の聡が顔を覗かせた。


聡「ねーちゃんにお客さん来たよー……って、あれ? みんな酒飲んでんの?」

律「あ、ああ、そ、そっか……き、きっと梓達が来たのかな?? な、なあ澪、梓達も来たみたいだし……そろそろ……」

澪「さとし……」

聡「……え??」

律「え? おい…澪」


 私ににじり寄る体制のまま澪は顔を聡の方に向け、今度は聡をじっと見つめている。

 そして、獲物に狙いを定めた雌豹のように聡に近付いて行く……。

澪「さとしぃ~~♪」

唯「をを!!! 今度は澪ちゃん聡君??」

紬「…チッ」

律「おいムギ、なんだ今の舌打ちは」

60: 2012/01/17(火) 06:40:15.96
聡「み、澪さん、どーしたの? って……ふえ??」

澪「聡は可愛いなぁ~~~……律の弟なんかやめて私の弟にならないか……? なあ、さとし~~」

 胸元を無駄に開け、完全に聡を誘惑してやがる。

 ただのキス魔ならいざ知らず、男女見境なくここまで変わるかこいつは……!

 って冷静に分析してる場合じゃねえ。 さすがに弟の貞操が酔っ払いに…それもあたしの親友に持ってかれたなんて、姉としては容認できる話じゃないからな。


聡「え……えっと………その……っっ!!」

澪「聡…………」


 澪の顔が聡に急接近する。

律「こんの……戻って来いこのバカ!!」


 ――かこーんっ!


 咄嗟に空き瓶を澪に投げつけ、澪を聡から引き離す。

61: 2012/01/17(火) 06:42:34.03
律「なーに私の弟誘惑してんだこら、そして聡もまんざらな顔してんじゃねえ!」

聡「………//////」

澪「痛いなぁ……律、もしかしてやきもち? も~~、かわいいなぁ律は……///」


 ……ダメだ、こいつ早く何とかしないと……。


律「む…ムギ、唯! 澪を…澪を止めてくれー!」

澪「りつぅぅぅ~~~♪」

律「だーー! お前は離れろ~~!!」


紬「いいわぁっっ……澪ちゃん、すっごくいいわぁぁ♪♪」ポワポワポワ…

唯「えへへ、仲良しだねえ二人とも」ニヤニヤ…

律「こいつらもダメだ……」


聡「あ…あのその、お、おれ……! 失礼しましたっっ!!//」

律「あ、ああ……お前はもう向こう行ってろ」

律(……夜中に変な事してなきゃいいけど……)

62: 2012/01/17(火) 06:51:43.29
 そんなどーでもいい事が頭をよぎるが、そんな事とはお構いなしに澪が服を脱ぎ、四つん這いの姿勢で私に近付いてくる……。

 右に左に揺れるそれがまた無駄に工口く見えて逆に腹立つ、つーかどこのグラビアのビデオだコラ、お前そんなキャラじゃねーだろ。


澪「律………」

律「まずお前は服を着ろ、そして正気に戻れ」

澪「だって……暑いんだもん……律も一緒に……ね?」

紬「ぶっ……!」

唯「ムギちゃん鼻血! 鼻血!!」

紬「どんと来いです…」


 だあああ!! 収集着かねえなおい!!

 このまともな人間が皆無な状況をどーしたもんかと考えあぐねいていた時、居間のドアが開かれ、見知った顔が3人上がってきた。

 まずい、今はまずい……!

63: 2012/01/17(火) 06:53:48.72
梓「こんばんわ~、みなさんお久しぶりでーす♪」

憂「すみません、遅れちゃって…あれ? なんかすっごく盛り上がって……」

純「りつせんぱーい! 入りますよー?」

律「梓!! 憂ちゃん!! 純ちゃん!! 今来ちゃダメだあああッッ!!!」


梓憂純「……へ?」

澪「あーずさぁぁ~~~♪ 待ってたよも~~~~~♪」

 顔を覗かせる梓に、澪が抱きつきにかかる。

 それに便乗する形で唯も飛び付いていって……


唯「あーーーずにゃん♪♪ うい~~~~♪ 純ちゃぁぁん♪」


梓「ちょ…!! 唯先輩と澪先輩まさか酔って……ひっ!」

憂「お、お姉ちゃん?? 澪先輩??」

 突然のことに唖然とする3人だが、そんな事はお構いなしに、澪は梓に顔を寄せ……

64: 2012/01/17(火) 07:00:08.33
律「澪、ちょっと待て澪!!」

澪「あーずさ…♪」

梓「み、みおせんぱ……んっ……?」

律「あちゃーー……」


 私の静止の声はどこへやら、強引に梓の唇を奪う澪だった。


梓「~~~~っっっ!!!!……~~~っっっっ!!!!!!」

 もがもがと暴れ、涙目になっては半裸の澪になすがままにされてる梓。

 そして口を付けたまま、澪は数秒ほど梓を離さずにいた……。


 つーかお前それ普通のやつじゃないだろ、絶対にさっきよりも濃くしてるだろ。


澪「……へへへ……あずさのはじめて……いただき……♪」


梓「んにゃ………ふぇ………ええええっっっ????」

66: 2012/01/17(火) 07:07:36.22
唯「ああーーーっっ! みおちゃんずるいいーー!! あずにゃんの初めては私のものだったのにーー!!」

澪「じゃあ唯にもおすそ分け……」


唯「あふ…っ……んんっっ……」

憂「え……えええええ~~~っっ???????」

 標的を唯に切り替え、今度はその口を唯に向ける澪。

 ああ、もうその姿は、もはや私の知る幼馴染じゃない。

 そこにいるのは、かつて私の幼馴染だった奴の姿をした、ただの雌豹だ。

 私の知る澪は、こんな事しない……する筈がない……。


紬「うふふふふふふふふ……あははははははは……おほほほほほほほほ♪♪♪」

 ムギは変わらず鼻血を垂れ流しながらその一部始終を見続け、たまに絶叫を上げている。


 ……って、おいムギさんや、その手に握り締めてたまに光ってるそれはなんですかね。

67: 2012/01/17(火) 07:15:16.00
憂「ぁぁぁ……お、お姉ちゃんが………み………みみみ澪さんと…そんな……!」

梓「いま……わたし……澪せんぱいと………っっ//////」

律「あーーーー……もーどーすんだよこれ………」

 突然の事に硬直する梓と、まんざらでもなさそうな唯と……目を疑うような光景に唖然とする憂ちゃん……。

 酒が入っただけでこんなになるんだったら、わざわざ用意なんてするんじゃなかったかぁ……

 いや、酒ってマジでおっそろしいもんだと実感したわ。


紬「あははははは……えへへへへへ……」じゅるり…

 ムギに至っては完全に違う世界にトリップしてやがる、いいからお前はそのヨダレとも鼻血とも着かん体液を戻せと。


純「あの澪先輩がこんなに……一体どれだけ飲んだんですか……???」

律「いや……ほんの2杯ぐらいなんだけど……」

純「どんだけ弱いんですか……」

律「うん、ほんっとごめん、せっかく来てくれたのに……」


 呆れ顔で引く純ちゃんに向かい、土下座で謝りたいぐらいに申し訳のない顔をする私だった……。

68: 2012/01/17(火) 07:20:25.87
梓「み……みおせんぱい……」

憂「み、澪さんっっ! お……お姉ちゃんから離れて下さいっっ!!」

澪「……憂ちゃんも可愛いなぁ……」

憂「…え? その……! わ、私はその……! お、お姉ちゃんが……っっ」

唯「澪ちゃんだーめー! 憂のは私のものなの~~! いくら澪ちゃんでもそれだけはだーーめーーー!!」

澪「むぅ……それじゃあ……純ちゃん……」

純「ふえ?? あ……あああ!! そ、そーいや私スミーレと予定が!! あ、あははははっっ!!」


 もう完全に見境ないな。

 逃げ出そうとする純ちゃんの腕をがっちりと掴み、澪はずいっと抱きつきにかかった。


純「い、いやあのその澪せんぱい…、わ、私……」

澪「純ちゃんの髪……柔らかくて良い香り……♪」

純「た、助けてください律先輩ぃぃぃ!!」


律「澪ーーー!!いいかげんにしろこの酔っ払い!!!!」

69: 2012/01/17(火) 07:22:50.66
 人ん家で暴走しまくる澪に向かい、強烈なゲンコツを見舞う。

 が……まるで効いてない!

澪「もーー、そんなに妬くなよりつ……じゃあ律も一緒に……ね?」

律「離せこのバカ澪ーーー!!!」


純「ふええぇぇっっ!! ど、どこ触ってんですか澪先輩ぃぃぃ!!」

梓「わたし……はじめて……キス……澪先輩と………//////」

澪「律も梓もみんなかわいいなぁぁ……もう、今日は帰さないぞ~~♪」

唯「う~い~……ちゅーー♪」

憂「お……お姉ちゃぁん……////」

憂(あああ……なんだろ…とっても嬉しいような恥ずかしいような……)


律「だ……誰かなんとかしてくれええええ!!!!」

紬「みんな…最っっ高よ!! もっと、もっと~~♪」

70: 2012/01/17(火) 07:29:38.45
 暴走する澪にムギに唯……固まる梓と憂ちゃんと私…

 私達の人生初の飲み会はこうして巨大なトラウマを残しながら、明け方まで続いて行った………。


 必氏にしがらみから解放されようと抵抗を試みる私と純ちゃんだったけど、ムギの腕力で容赦なく戻されていっては、澪の餌食にされて行く。

 途中からムギと澪の暴走に唯も交じり、もう言葉では言い表せないような事が繰り広げられた。


 全身にキスマークを付けられながら、私は誓う……。


 ―――決めた、もうこいつらには金輪際、一滴の酒も飲ませやしねえ……と。

72: 2012/01/17(火) 07:34:33.85

 翌日


澪「…………ん………」

 いつの間にか寝てしまっていたんだろう、酷い頭痛と共に目が覚めた。

澪「あれ……私………どうして……あいたたた…っ」

 まるで鉛のように頭が重く痛い……なんでこんなに痛いんだ……??

澪「それになんだか寒いな……え?」

 あまりの寒さに気付き、ふと、自分の身体を見てみる。

澪「え……? なんで私……ハダカなんだ……??」


律「おはよう、やっと起きたかこのバカ」

澪「お、おはよう律……一体、何がどうなって……??」


 額に青筋を浮かべながら律は私を睨みつけている。

 ……どうしたんだろうか、律のその顔中に付いた赤いアザみたいなのがすごく気になる……

 酔っ払ってテーブルに頭突きでもかましたのか、なんだか酷い有様だった。

73: 2012/01/17(火) 07:36:57.93
律「お前、やーっぱり何も覚えてないのな……」

澪「……え?」

律「周りをよく見てみやがれ」

 言葉に従い辺りを見回してみる。

 私の横には、これはきっと梓だろう、服がはだけたままの状態で私に抱きついていた。

 その横には幸せそうな顔で寝てるムギがいるけど……その鼻の下に付いた血の跡はなんなんだ?

 他にも、くんずほぐれつの状態で寝ている唯に憂ちゃんに純ちゃん……。

 みんな、服を脱いでは抱き合っていて、明らかに異常な光景だ、一体、私が寝てる間に何が……??

74: 2012/01/17(火) 07:38:59.34
梓「んん……みお……せんぱい……」

澪「あ、梓、目が覚めたか…?」

梓「ふぇ……あ、あのその……み、澪先輩……//////」

澪「……?」

 やけに落ち着かない様子の梓だ、一体どうしたんだろうか?


澪「ねえ、梓……服、ちゃんと着よう、いくら女同士でも下着姿だと恥ずかしいし、風邪引くぞ…?」

梓「あぅ…、す、すみません……///」

梓「澪先輩………その……責任……取ってくださいよ……?」

澪「せ、責任って……梓?」

梓「澪先輩……ふつつかものですが…その、よ、よろしくお願いしますっ!」

 言いながら突然頭を下げる梓だった。

 責任って、よろしくお願いしますって……一体何の話?

76: 2012/01/17(火) 07:43:32.73
澪「待て待て梓、どうしたんだよ??」

梓「だって……澪先輩が強引に……わ、私の……//////」

澪「私が……??」

唯「むぅぅ……澪ちゃん……私も……//////」

純「わ……私も……あんなに攻められたの……その……///」

 梓を筆頭に目を覚ました唯と純ちゃんまでが私に言い寄って来る。

 みんなどうしたんだ……昨日の酒がまだ残ってるのか?? 


澪「り、律!! よ、よく分からないけどその…助けて……」

律「……澪……」

 優しい顔で律は手を差し伸べてくれた。

 そして、その手を大きく振り上げ……

律「ふんっっ!!!」


 ――ごちーーんっっ!!!
 
 その拳を勢いよく、私の頭に振り降ろしたのだった。

77: 2012/01/17(火) 07:47:36.35
 これまでに味わった事の無い痛みが私をのた打ち回らせる。


澪「な……何するんだよ律ぅぅぅぅ!!!!」

律「ふう、スッキリした」

澪「はぁぁぁ??」

律「乙女の純潔を玩んだ罰だ」

律(私だって…初めてだったんだからな!!)


澪「純潔って……なあおい律!! 何があったか知ってるんだろ?? お、教えてくれ!! 頼む!!」

律「あたししーらね」

澪「そんなぁぁぁ!!!」

唯「澪ちゃーん♪ 昨日の続き、またやろ♪ 今度は憂も一緒に~♪」

梓「澪先輩~~っっ私、女同士でも構いません!! もっと私に大人の世界を教えてください~~っっ///」

純「澪先輩のぴゅあぴゅあはーと、もっと私にください~~!!」


澪「一体なんなんだよーー!! 何があったのかだれか教えてくれー!!」

79: 2012/01/17(火) 07:56:12.60
律「シャワーでも浴びて来よ、顔のこれ、明日までには取れるかな…?」

澪「ま、待って律!! だ、だだ誰か助けてくれえええ!! ムギ!! 憂ちゃん!!」


紬「うふふ……澪ちゃん……良かったわ……これはもう永久保存よねぇ……♪)

憂「紬さん……その映像、お姉ちゃんと私のも入ってますか?」

紬「ええ、ばっちり撮ってあるわよ♪」

憂「……あとでください///」

紬「いいわよ~~♪」

澪「ムギいいい!! 事情を知ってるなら教えてくれーーー!!」

紬憂「うふふふふっっ///♪」

 そして……。

唯「澪ちゃーん♪」
梓純「澪せんぱーい♪」

澪「一体何がどうなってるんだーーっっ!」


 家主のいなくなった家の居間には、私の絶叫と、その他大勢の不気味な笑い声が絶えず響いていった……。

80: 2012/01/17(火) 08:08:35.94
 後日、事の真相をムギから聞いた私はその場で平身低頭、全力で律や梓らその場にいた全員に土下座で謝り、二度と酒を飲む事は無い事を誓うのだった。


 『酒は飲んでも飲まれるな』という格言があるが、まさにその通りだ。

 酒には恐ろしい魔力がある。 それは人格を無視し、常軌を逸した行動に人を駆り立てる、恐ろしい魔力だった。

 もしもこの話を誰かから聞いた人がいるのなら、それを是非心得てもらいたい。


 そして、大人なら、自分の行動には責任を持って貰いたい。

 何故なら、それが、飲酒を許された年齢、二十歳を超えた『大人』としての義務なのだから……。

 ちなみに、私はと言うと………。

――――――


律「おーい澪ー、お茶~~、あと肩もみも~」

澪「はい……かしこまりました律お嬢サマ…」

律「ん~~、なーんか感情こもってないよーな気がするなぁ」

澪「い、いいえお嬢様、そ、そそそそんな事は……!!」

澪(律にこんな事されるなんて……なんって屈辱………!!!)

81: 2012/01/17(火) 08:17:13.00
唯「最近りっちゃんいつも以上に澪ちゃんと一緒にいるよね~、あんなメイド服まで着て……いいなぁ~、私も着たいなぁ~」

紬「ええ、今度唯ちゃんにも持って来てあげるわね~」

梓「…澪先輩……」

純「む~、なーんか腑に落ちないなぁ……」

紬(うふふっ、やきもち妬いてる梓ちゃんに純ちゃんも可愛いわねぇ♪)


澪「いかがでしょうか……律お嬢さま」

律「~~♪ うむ、苦しゅうない」


律(……ま、あの日をきっかけに実は私も澪の事……なんて、言えるわけないもんな)

律(でも、今はいいよな、少しだけ……梓や純ちゃんよりも長く、私だけの時間を楽しんでも、罰、当たんないよな)


律「ほら澪ーー、次はあたしの足を揉む~」

澪「か……かしこまりました……」

律(もう少しだけ……澪を私の傍に……ふふふっ…///)


 おしまい。

82: 2012/01/17(火) 08:19:41.98

84: 2012/01/17(火) 08:24:24.69
あとがき


すみません、途中で余計な事書き連ねてしまいましたがこれで投下終了です、ありきたりなオチの駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

前に律の誕生日で書いたのが幼少の頃の真面目な話だったので、今回はそれとは真逆の大人になり、酒を飲める歳になったみんなを書いて見ましたが、どうだったでしょうか。

結局慣れないギャグ路線で行って、失敗してやいないかが気になりますが、また宜しければお付き合い下さいませ。。。


そして澪、遅れたけどお誕生日おめでとう。

引用元: 澪「誕生日会か」