1: 2021/11/24(水) 21:00:19.118
―テレビ―
博士『よくSFなどで時間停止能力というものが出てきますよね』
記者『はい、時間を止めてその中で自分だけ動ける……というやつですよね』
博士『あれって実は……私たちみんなに備わってる能力なんですよ』
記者『そうなんですか?』
博士『しかし、それに気づいていないだけなのです』
……
男「えっ、時間を止める能力って誰でも使えるのか!?」
博士『よくSFなどで時間停止能力というものが出てきますよね』
記者『はい、時間を止めてその中で自分だけ動ける……というやつですよね』
博士『あれって実は……私たちみんなに備わってる能力なんですよ』
記者『そうなんですか?』
博士『しかし、それに気づいていないだけなのです』
……
男「えっ、時間を止める能力って誰でも使えるのか!?」
3: 2021/11/24(水) 21:03:32.243
博士「例えば、一流のスポーツ選手がボールが止まって見えたなんて場面ありますよね」
記者「“ゾーン”といわれる現象ですね」
博士「あれは、時間を止めてるだけなのです。時間を止めたら、ボールも止まるに決まってますよね」
記者「ええっ!?」
博士「他にも事故の直前、車が止まってるように見えたという現象も時間を止めただけなのです」
博士「時折ふと時計を見ると秒針が止まって見える現象、あれもそうです」
博士「我々にはみな、時間を止める能力が備わっているのです」
記者「“ゾーン”といわれる現象ですね」
博士「あれは、時間を止めてるだけなのです。時間を止めたら、ボールも止まるに決まってますよね」
記者「ええっ!?」
博士「他にも事故の直前、車が止まってるように見えたという現象も時間を止めただけなのです」
博士「時折ふと時計を見ると秒針が止まって見える現象、あれもそうです」
博士「我々にはみな、時間を止める能力が備わっているのです」
4: 2021/11/24(水) 21:06:19.528
記者「とても信じられませんが……」
博士「それはそうでしょうね。結局のところ、自分で止められるようにならなければ誰も信じないでしょう」
博士「というわけで、“時間を止める能力”のやり方をお教えします」
記者「知ってるんですか!?」
博士「でなければ、こうしてテレビに姿を現したりしませんよ。やり方はこうです」
博士「体から力を抜き、息を止め、意識を集中し……『止まれ』と強烈に念じる。これだけです」
記者「それだけで時間が止まるんですか?」
博士「はい、止まります。ほんの一瞬程度でしょうが、止められるはずです」
博士「一流のスポーツ選手などはこれを自然と行っているんですね」
博士「それはそうでしょうね。結局のところ、自分で止められるようにならなければ誰も信じないでしょう」
博士「というわけで、“時間を止める能力”のやり方をお教えします」
記者「知ってるんですか!?」
博士「でなければ、こうしてテレビに姿を現したりしませんよ。やり方はこうです」
博士「体から力を抜き、息を止め、意識を集中し……『止まれ』と強烈に念じる。これだけです」
記者「それだけで時間が止まるんですか?」
博士「はい、止まります。ほんの一瞬程度でしょうが、止められるはずです」
博士「一流のスポーツ選手などはこれを自然と行っているんですね」
6: 2021/11/24(水) 21:09:13.989
博士「訓練には水滴を使うとよいでしょう」
博士「ポトッ、ポトッ、と垂れてる水滴を見ながら、先ほどの練習を行うと」
博士「やがて水滴が空中で停止する瞬間に出会えるので非常に分かりやすいです」
博士「水道の蛇口などがいいのではないでしょうか。ただし水道代にはご注意を」
記者「なるほど……どうもありがとうございます」
この放送が大反響を呼んだのは言うまでもない――
博士「ポトッ、ポトッ、と垂れてる水滴を見ながら、先ほどの練習を行うと」
博士「やがて水滴が空中で停止する瞬間に出会えるので非常に分かりやすいです」
博士「水道の蛇口などがいいのではないでしょうか。ただし水道代にはご注意を」
記者「なるほど……どうもありがとうございます」
この放送が大反響を呼んだのは言うまでもない――
8: 2021/11/24(水) 21:12:20.800
男「なぁ、こないだの変な博士が出たテレビ見たか?」
友人「ああ、見たよ」
男「時間を止める能力は誰でもできるって、あんなのできるわけねーよな?」
友人「え、できるよ」
男「は?」
友人「あの後試したら、本当にちょっとだけだけど時間止められてビックリしたよ!」
男「そんなバカな……!」
友人「ああ、見たよ」
男「時間を止める能力は誰でもできるって、あんなのできるわけねーよな?」
友人「え、できるよ」
男「は?」
友人「あの後試したら、本当にちょっとだけだけど時間止められてビックリしたよ!」
男「そんなバカな……!」
9: 2021/11/24(水) 21:15:25.758
男「だったらやってみろよ!」
友人「いいよ。この石ころ持っててくれ」
男「おお」
友人「これを気づかぬうちに取ってみせる」
男「よーし、やってみろ」
パッ
友人「ほら」
男「あ、あれ!?」
友人「な?」
男(手先が器用なタイプじゃないはずなのに……いつの間に……!)
友人「いいよ。この石ころ持っててくれ」
男「おお」
友人「これを気づかぬうちに取ってみせる」
男「よーし、やってみろ」
パッ
友人「ほら」
男「あ、あれ!?」
友人「な?」
男(手先が器用なタイプじゃないはずなのに……いつの間に……!)
10: 2021/11/24(水) 21:18:42.868
バイト先でも――
店長「時間停止? 私も出来るよ。あの通り練習したらね」
後輩女「あたしもできます!」
学生「俺も出来ますよ」
男「マジで!?」
学生「ほんの一瞬ですけどね。たとえば、このアイスクリームを倒しそうになっても……」
パッ
学生「時間を止めてバランスを整えれば、倒れないようにすることができます」
男「……!」
店長「時間停止? 私も出来るよ。あの通り練習したらね」
後輩女「あたしもできます!」
学生「俺も出来ますよ」
男「マジで!?」
学生「ほんの一瞬ですけどね。たとえば、このアイスクリームを倒しそうになっても……」
パッ
学生「時間を止めてバランスを整えれば、倒れないようにすることができます」
男「……!」
11: 2021/11/24(水) 21:21:08.301
男(俺の周囲の人間はどうやら、みんな時間を止められるようになったらしい)
男(せいぜい0.1秒とかその程度のものだろうが、それでも止められるに越したことはない)
男「よ~し、俺だってぇ!」
男「俺だって時間を止めて、自分だけ動けるようになってみせるぞ! 水滴見つめて特訓だ!」
ポタッ… ポタッ… ポタッ…
男「……」
男「ダ、ダメだ! 出来ない! 何時間やっても! 時間を止めるために時間を浪費してる!」
男(せいぜい0.1秒とかその程度のものだろうが、それでも止められるに越したことはない)
男「よ~し、俺だってぇ!」
男「俺だって時間を止めて、自分だけ動けるようになってみせるぞ! 水滴見つめて特訓だ!」
ポタッ… ポタッ… ポタッ…
男「……」
男「ダ、ダメだ! 出来ない! 何時間やっても! 時間を止めるために時間を浪費してる!」
12: 2021/11/24(水) 21:24:17.421
男(みんな時間を止められるのに、俺だけ出来ないなんて……なんて不公平な)
ビラ配り「……」サッ
男(いらねえ。無視しよ)
ビラ配り「……」サッ
男(あれ!? かわしたはずなのに! さては時間を止めたな!)
男(くそっ、受け取るか)パッ
男「このチラシは……『時間の止め方講座』……?」
男(こんな商売も出来たのか! まさに俺にピッタリの講座じゃないか!)
ビラ配り「……」サッ
男(いらねえ。無視しよ)
ビラ配り「……」サッ
男(あれ!? かわしたはずなのに! さては時間を止めたな!)
男(くそっ、受け取るか)パッ
男「このチラシは……『時間の止め方講座』……?」
男(こんな商売も出来たのか! まさに俺にピッタリの講座じゃないか!)
13: 2021/11/24(水) 21:27:26.151
当日――
受付「いらっしゃいませ」
男「講座に参加したいのですが……」
受付「受講料として一万円頂きます」
男(俺としちゃ大金だけど、これ払って時間が止められるなら安い安い!)
男「どうぞ」
受付「それでは中にお入り下さい」
受付「いらっしゃいませ」
男「講座に参加したいのですが……」
受付「受講料として一万円頂きます」
男(俺としちゃ大金だけど、これ払って時間が止められるなら安い安い!)
男「どうぞ」
受付「それでは中にお入り下さい」
14: 2021/11/24(水) 21:30:34.791
男(おお、結構人がいるな。50人ぐらいか)
講師「ここにいる方々は、現在急速にみんなが身につけつつある時間停止能力をまだ身につけられてない方々だと思います」
講師「しかし、ご安心下さい。私の講義を受ければ、あなた方も自分だけの時の止まった世界を体験できます」
男「おお……!」
講師「では私が独自に開発した意識の集中方法などを教えますので、今日はぜひ能力を身につけて帰って下さい!」
男「はいっ!」
講師「ここにいる方々は、現在急速にみんなが身につけつつある時間停止能力をまだ身につけられてない方々だと思います」
講師「しかし、ご安心下さい。私の講義を受ければ、あなた方も自分だけの時の止まった世界を体験できます」
男「おお……!」
講師「では私が独自に開発した意識の集中方法などを教えますので、今日はぜひ能力を身につけて帰って下さい!」
男「はいっ!」
15: 2021/11/24(水) 21:33:14.344
講師「いかがでしょう?」
生徒A「今止まりました!」
生徒B「一瞬だけ水滴が止まりました!」
生徒C「出来るようになった! やったぁ!」
講師「そうでしょう、そうでしょう」
男(……出来ない! どうして俺だけ……?)
生徒A「今止まりました!」
生徒B「一瞬だけ水滴が止まりました!」
生徒C「出来るようになった! やったぁ!」
講師「そうでしょう、そうでしょう」
男(……出来ない! どうして俺だけ……?)
16: 2021/11/24(水) 21:36:14.693
講師「後はあなただけですが、どうですか?」
男「……できません」
講師「え?」
男「どうしても出来ないんです! お願いです、先生! 俺にも能力を身につけさせて下さいぃ!」
男「一人だけ出来ないなんて嫌ですぅ!」ガシッ
講師「ちょ、ちょっと……」
パッ
男「わっ、消えた!」
男「……できません」
講師「え?」
男「どうしても出来ないんです! お願いです、先生! 俺にも能力を身につけさせて下さいぃ!」
男「一人だけ出来ないなんて嫌ですぅ!」ガシッ
講師「ちょ、ちょっと……」
パッ
男「わっ、消えた!」
17: 2021/11/24(水) 21:39:02.208
男「さすがですね、先生……」ニヤッ
講師「……!」
男「教えて下さい! あなたならきっと、俺にも時間停止を体験させてくれる!」
講師(嘘をいってるようには見えない。どれだけ素質がないんだ、こいつは……)
講師(こんな奴に付き合うなんて、それこそ時間の無駄だ!)
講師「お金はお返しします! ですからお引き取り下さい!」
男「そんなぁ……」
講師「……!」
男「教えて下さい! あなたならきっと、俺にも時間停止を体験させてくれる!」
講師(嘘をいってるようには見えない。どれだけ素質がないんだ、こいつは……)
講師(こんな奴に付き合うなんて、それこそ時間の無駄だ!)
講師「お金はお返しします! ですからお引き取り下さい!」
男「そんなぁ……」
18: 2021/11/24(水) 21:42:21.134
その後――
ワァァ… ワァァ…
選手(このままドリブルでゴールまで……!)
敵選手(時間を止めて追いついてやる!)ダッ
選手「!」
選手(だったら俺も時間を止めて、こいつを抜いて――)サッ
選手「シュートだッ!」ドカッ
キーパー「フンッ!」パシッ
キーパー(鋭いシュートだったが、時間を止めて対処できたぜ……)ホッ
ワァァ… ワァァ…
選手(このままドリブルでゴールまで……!)
敵選手(時間を止めて追いついてやる!)ダッ
選手「!」
選手(だったら俺も時間を止めて、こいつを抜いて――)サッ
選手「シュートだッ!」ドカッ
キーパー「フンッ!」パシッ
キーパー(鋭いシュートだったが、時間を止めて対処できたぜ……)ホッ
19: 2021/11/24(水) 21:45:38.166
キキーッ!
運転手「うわっ!」
通行人「ひえええっ!」
運転手(時間を止めて、ハンドルを切る!)
通行人(時間を止めて、少しでも車の軌道から出る!)
ブロロロロ…
運転手&通行人(セーフ!)
時間停止のせいで世の中に混乱が生じるかと思いきや、
みんながみんな使える状態になってしまったので、意外に混乱は生じなかった。
一部を除いて……
運転手「うわっ!」
通行人「ひえええっ!」
運転手(時間を止めて、ハンドルを切る!)
通行人(時間を止めて、少しでも車の軌道から出る!)
ブロロロロ…
運転手&通行人(セーフ!)
時間停止のせいで世の中に混乱が生じるかと思いきや、
みんながみんな使える状態になってしまったので、意外に混乱は生じなかった。
一部を除いて……
20: 2021/11/24(水) 21:47:26.144
時間停止のバーゲンセールだな
21: 2021/11/24(水) 21:48:11.816
男「……」イライラ
男(今や時間停止能力は誰もが使える時代になった……)
男(なのに……なのに! どうして俺だけ未だに出来ない!?)
男(みんな、“他の奴が止まって自分だけ動ける状態”を体験してるっていうのに……)
男「止まれ!」
男「止まれ!」
男「止まれったらぁぁぁぁぁ!!!」
男(今や時間停止能力は誰もが使える時代になった……)
男(なのに……なのに! どうして俺だけ未だに出来ない!?)
男(みんな、“他の奴が止まって自分だけ動ける状態”を体験してるっていうのに……)
男「止まれ!」
男「止まれ!」
男「止まれったらぁぁぁぁぁ!!!」
22: 2021/11/24(水) 21:51:27.803
助手「博士、時間停止能力は世の中にすっかり浸透しましたね」
博士「うむ、そうだな。私の名が歴史に残ることは間違いない」
助手「おめでとうございます」
助手「それにしても、時間を止める能力にもやはり個人差があるようですね?」
博士「それはそうだろうな。才能がある人なら、0.5秒は止めてられる人もいるという」
助手「それだけ止められれば、だいぶ自分の有利になるでしょうね」
博士「羨ましい限りだ」
博士「うむ、そうだな。私の名が歴史に残ることは間違いない」
助手「おめでとうございます」
助手「それにしても、時間を止める能力にもやはり個人差があるようですね?」
博士「それはそうだろうな。才能がある人なら、0.5秒は止めてられる人もいるという」
助手「それだけ止められれば、だいぶ自分の有利になるでしょうね」
博士「羨ましい限りだ」
23: 2021/11/24(水) 21:54:38.824
助手「もしも、“世界で最も時間停止の才能を持つ人”がいたとしたら、どれぐらい止められると思います?」
博士「うーむ、止められる時間を体感できるのは結局自分だけだから、なんともいえんが……」
博士「もしかすると、5秒、あるいは10秒ぐらい止められるかもしれんな」
助手「そんなに止められるのなら、やりたい放題ですね!」
博士「それどころか、もっともっと長い時間を止められる可能性だってある」
博士「それこそ、一度止めたら二度と戻せなくなったり……。たとえ本人が氏んでも……」
助手「ひえっ、それは恐ろしい!」
博士「冗談だよ、冗談。そんなことあるわけがない」
助手「アハハ。ですよねえ」
博士「うーむ、止められる時間を体感できるのは結局自分だけだから、なんともいえんが……」
博士「もしかすると、5秒、あるいは10秒ぐらい止められるかもしれんな」
助手「そんなに止められるのなら、やりたい放題ですね!」
博士「それどころか、もっともっと長い時間を止められる可能性だってある」
博士「それこそ、一度止めたら二度と戻せなくなったり……。たとえ本人が氏んでも……」
助手「ひえっ、それは恐ろしい!」
博士「冗談だよ、冗談。そんなことあるわけがない」
助手「アハハ。ですよねえ」
24: 2021/11/24(水) 21:57:14.986
男「止まれぇぇぇぇぇ!!!」
ピタッ
男「やった! 止まった!」
男「時計……動いてない!」
男「外見たら……みんな止まってる!」
男「バンザーイ! やっと時間を止められたぞ! 俺もみんなに追いつけたぁ!」
ピタッ
男「やった! 止まった!」
男「時計……動いてない!」
男「外見たら……みんな止まってる!」
男「バンザーイ! やっと時間を止められたぞ! 俺もみんなに追いつけたぁ!」
25: 2021/11/24(水) 21:59:05.000
男「あれ? 戻らないな? もう何分も経ってるけど……」
男「もしもーし。もう動いていいんだよ。もしもーし……」
END
男「もしもーし。もう動いていいんだよ。もしもーし……」
END
26: 2021/11/24(水) 22:04:30.349
乙
一生眠らせておくべき才能だったな
一生眠らせておくべき才能だったな
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