148: 2013/12/24(火) 23:30:40.07
残念だがこの特別な日にも仕事な社畜です。

こんな日にまでやってきてくれた野郎共に感謝を込めて!番外編を! 投下します!

152: 2013/12/24(火) 23:40:01.35


番外編

八幡「やはり俺のクリスマスは……あ、いや、やっぱ何でないです」


八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「その3だよ」



153: 2013/12/24(火) 23:41:08.54



ある冬の日。

シンデレラプロダクションの事務スペース。
そこに二人はいた。



八幡「……さみぃな。でも暖けぇ」

凛「……うん。……あれ? なんかデジャヴ」



私こと比企谷八幡と、その担当アイドル渋谷凛である。

いつの間にか事務所に設置してあったコタツに入り、俺はパソコン、凛はiPhoneと睨めっこしている。



凛「プロデューサー、また報告書?」

八幡「いや、まどマギオンライン」

凛「……艦これですらなかった」


154: 2013/12/24(火) 23:42:33.64


別にいいだろ。同じゲームやってっと飽きんだよ。
しかしワルプルギスの夜はもう15夜か……ほむほむはあと何回繰り返したのだろう。



凛「……ねぇプロデューサー」

八幡「んー……」

凛「まだ家には帰らないの?」

八幡「あーもうちょっと休んでからな。今日は結構疲れてよ」



全く、あの事務員はことあるごとに俺に雑用を押し付けやがる。
……でもしっかり見返りにスタドリは貰う俺。何だろう。最近美味しく感じるようになってきた。末期?



凛「……プロデューサー、今日が何の日か分かってる? ……あれ。またデジャヴ」



俺の態度が不思議だったのか、怪訝な表情で聞いてくる凛。


今日? 今日が何の日かだと?

そんなの、そんなのーー




155: 2013/12/24(火) 23:43:26.54



八幡「クリスマス・イブだが、それが何か?」キリッ


凛「っ」ビクッ



八幡「クリスマス・イブとはクリスマス前夜、12月24日の今日を意味する。元々クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う祭りであり、つまりは12月の25日。すなわち明日だ。は? 有浦? そんな奴は知らん。そもそも日本でクリスマスが受け入れられ始めたのは明治の始めから。それから序所に浸透していって、昭和に入った頃には年中行事と呼ばれるまでになっていた。日本現金だなオイ。それからクリスマスは日本のイベントの目玉とも言える程の発展を遂げ、今ではその日をどれだけ幸せに過ごせるかがステータスにすらなっていたりもする。いやいや、何でだよ。クリスマスってのは元々家族で過ごすのが当たり前だったんだ。それが何で恋人と過ごさなくちゃならないみたいになってんだ? なんでクリスマスは家族と過ごすって言っただけで『ぷーくすくすww寂しい奴www』みたいな視線を受けなきゃならないんだ? おかしい。こんなのは絶対に間違っている。間違ってるに決まってる!! 爆ぜろリア充! 弾けろパカップル!! バニッシュメント・ディスワールドォォォオオオオッ!!」



凛「お、落ち着いてプロデューサー!!?」




156: 2013/12/24(火) 23:44:34.80


俺のあまりの豹変に戸惑ったのか、慌てて止めに入る凛。


はぁはぁ……

やばい、久々に全力を使ってしまった。
何かこう、溢れ出るモノを抑え切れなかったんだ。


しかし、ちょっとこれはマズイな。凛が結構ガチなレベルで引いている。

よし。ここは何事も無かったかのように振る舞おう。



八幡「……と、まぁ。そんな風に思う奴も世の中いるって事だ」

凛「いや。今のを誤摩化すのはさすがに無理だと思うよ」



ですよねー

なんかもう、色々情けなかった。


157: 2013/12/24(火) 23:46:07.18


八幡「はっ、別にクリスマスがそんな嫌いなわけじゃねぇよ。これは本音だ」



実際、俺も数年前まではこの訳も無く一喜一憂する季節に、心躍らせていた。


サンタさんはいると信じてた。

雪が降るだけで次の日が楽しみだった。

家族との晩ご飯が、いつも以上に美味しく感じた。


今日という日を、心待ちにしていたんだ。



八幡「けど、何でだろうな。歳くって、恋人だの何だのを理解をする歳になりゃ、家族とのクリスマスも虚しく感じちまうんだよなぁ」

凛「……」

八幡「ホント、贅沢な悩みだわ」



家族と過ごすクリスマス。

それだけで、随分と恵まれているはずなのに。



158: 2013/12/24(火) 23:47:56.12





凛「……別に、いいんじゃない?」

八幡「え?」



俺がセンチメンタルな気持ちに浸っていると、不意に凛が話し出す。



凛「それが分かってるなら、充分だと思うよ。家族との時間が大事って、ちゃんと分かってるなら」

八幡「いや、別にそんなじゃねーって。俺だって恋人がいりゃ、家族なんか放っておいてデートに行くぞ?」

凛「なら、それはプロデューサーの親御さんにとっては、寂しくも嬉しい事なんじゃないのかな」

八幡「……お前、そんなにポジティブキャラだったか?」

凛「誰かさんを反面教師にしたのかもね」クスクス



凛は可笑しそうに笑い、ふと窓の外を見る。
俺もつられて見てみれば、奇麗な夜景に、ぽつりぽつりと雪がちらついて見えた。


159: 2013/12/24(火) 23:50:24.93



凛「……きっと、何が幸せかなんて、その人にしか分からないよ」

八幡「……?」



凛は俺に視線を向けず、窓の外を眺めたまま言う。



凛「家族と過ごす人はもちろん、友達と遊ぶ人だっていっぱいいる。大好きなペットと戯れる飼い主だっているだろうし、中には、一人でゆっくりするのが好きな人だっているかもしれない。……そして、恋人も」

八幡「……」


凛「だから、他の人と比べる必要なんてないよ。自分が良いと思ったんなら、それでいいと思う。……ね?」



俺の方へと向き直り、笑顔を見せる凛。

……やれやれ。



160: 2013/12/24(火) 23:51:38.61


八幡「……凛よ」

凛「うん?」

八幡「それって結局、クリスマスを楽しめるから言えることじゃね?」

凛「あ、バレた?」アハハ



あちゃーといった様子で笑う凛。
全く、説得力があるんだか無いんだか。



凛「……でも、誰だってこの日を楽しむ事は出来ると思うな」

八幡「そうか?」

凛「うん。だって、クリスマスだよ?」



なんじゃそりゃ。
まるで子供みたいな理由である。

……けど、さっきも言ったように、俺だって昔はこの日を最高に楽しんでたんだよなぁ。

思い出が、いつまでも消えないくらい。


161: 2013/12/24(火) 23:54:01.83


八幡「……はっ、そうかもな」

凛「ふふ……そうだよ」



意味も無くこうして笑いあえるのも、クリスマスのおかげなんかね。



八幡「つーか、お前は家族とも過ごさずに仕事終わりにここでダラダラしてていいのか?」

凛「いいの。さっきも言ったように、これが私にとっての一番過ごしたいクリスマスなんだから」

八幡「……コタツでゴロゴロするのがか?」

凛「……それ本気で言ってる?」



その後もウダウダとダラダラと過ごし、俺たちは帰った。

凛を送る道中、彼女がいたらこんな感じなんかね、と意味の無い事も考えた。いやいやダメだろ俺。凛は担当アイドルだぞ? いやでもなんかアイツ終始顔赤かったし……煩悩退散煩悩退散。


ちなみに帰ってからのイブは小町も含め、家族でクリスマスを過ごした。
いつもより暖かく感じたのは、きっとアイツのおかげなんだろう。


そして何故か、翌日の25日は奉仕部部室でクリスマスパーティーをする事になってしまった。主催は由比ヶ浜。言わなくても分かるな。

まぁでも、行ってやらん事もないか。凛と、あとは……友達でも、誘ってみるか。



162: 2013/12/24(火) 23:55:50.26



そして朝起きた時、数年ぶりに俺の枕元にはプレゼントが置いてあった。


それは形は無くて、たかだか数キロバイトしかないけれど。
とても、愛おしいものに感じられた。

思わず笑みが零れてしまうくらい、幸せな気分になれたのは秘密である。


さて、俺も送んねぇとな。









【mail@ Rin → Hachiman 】






『 Merry Christmas ♪ 』






* end *




164: 2013/12/25(水) 00:00:33.42
つーわけで番外編でした!

仕事はアレですけど、自分で稼いだお金で大きなケーキを家族に買って帰れたのでそこは嬉しかったですな(愛犬用ケーキも)。
皆さんも良い日を! メリークリスマス!!

あと、8巻でヒッキーが「俺のこと気にする前に、自分の老後とか健康とか気にしろっつーの。長生きしろよなまったく」って両親に思ってるのを見て思わず頬が緩んだのは秘密。

165: 2013/12/25(水) 00:02:31.66
イヴに一緒にいたいと思われてるとか八幡好かれすぎだな