1: 2014/12/27(土) 17:09:15.15
友奈「ありがとう夏凜ちゃん!」チュッ

夏凜「く、くれぐれも悪用するんじゃないわよ///」

3: 2014/12/27(土) 17:14:08.48
友奈「ちょっとwwww夏凛ちゃん それ私じゃなくてポストだよwww」

夏凛「友奈聞いてる?」

友奈「夏凛ちゃん私はこっちだよwwwあっ……そうか……」

9: 2014/12/27(土) 17:44:42.06
夏凜「使い方はこう、対象に先っちょを向けて」

友奈「ほう!」

夏凜「ボタンを押すだけ…わかった?」

友奈「ほうほう!」

夏凜「なんでも霊的なアレが勇者の適性を持つ者にアレして…どうにかなるらしいわ。詳しくは知らないけど」

友奈「へ~大赦のぎじゅつってすごいね~」

11: 2014/12/27(土) 17:52:21.25
友奈「でもなんでこんなのが?」

夏凜「もとは言うことを聞かない勇者をコントロールして、操り人形にするためのものだったとかで…」

友奈「うへぇ」

夏凜「流石にイカんでしょってことでお蔵入りになったものを、兄がこっそり引っ張り出してきてくれたのよ」

友奈「そうなんだ~…うーん、ちょっと怖くなってきたなあ」

夏凜「今さら何よ…解除ボタンはこっち。後遺症はないらしいから安心して」

友奈「そ、そうなんだ…」

友奈「なんかあれだね…大赦の人が言うとなんとなく逆に不安に感じるね…」

夏凜「た、確かに…」

14: 2014/12/27(土) 17:59:24.80
友奈「いきなり東郷さんに使うのもなぁ…うーん…」

夏凜「まあこれに関しちゃ嘘ついて大赦が得することもないし…大丈夫よきっと」

友奈「ちょっと貸して?」

夏凜「ほい、落とさないでよ」


友奈「えへへ~」

夏凜「…なんでこっちに向けるの?」

友奈「ごめんね夏凜ちゃん」

夏凜「なんで謝るの?ねえ友奈?友奈?」

友奈「先っちょをむけてスイッチを…こう!」ピピピピッ!!

夏凜「友奈!やめっ…友奈ぁああばばばばばば――ッ!!!」ビリビリビリビリ!!

17: 2014/12/27(土) 18:05:55.53
シュウウウウゥウ…

夏凜「……」

友奈「おお…お…思ったよりすごい派手だ~…」

友奈「煙がすごい…わー、夏凜ちゃん未来から来たターミネーターみたいだよ~」

友奈「…じゃない!夏凜ちゃん!夏凜ちゃん!?大丈夫!?」ササッ

夏凜「……」

友奈「夏凜ちゃん!!夏凜ちゃーーん!!」ユッサユユッサ

夏凜「……のに…」

友奈「夏凜ちゃん!」

19: 2014/12/27(土) 18:11:39.16
友奈「どこか痛いとこない!?かりんちゃ…」

夏凜「信じてたのに…」

友奈「…夏凜ちゃん?」

夏凜「信じてたのに…裏切られた…っ…」!ポロッ

友奈(泣いっ…!)サーッ

友奈「ご、ごめん夏凜ちゃん!本当にごめん!こんなにスゴイだなんて私思ってもなくて…!」


夏凜「…前座なのね」

友奈「えっ?」

夏凜「…やっぱりぃ…っぐず…私…わたしぃ…」ポロポロ

夏凜「しょせん…東郷の…!うう…前座でしかないんだぁ…うわぁああん…!」ポロポロ

友奈「えっ、え」

25: 2014/12/27(土) 18:22:28.53
夏凜「なによ…なによぅ…東郷東郷って…うう…」ポロポロ

友奈「夏凜ちゃん?」

夏凜「友奈はいつも東郷ばっかり…ひっく、今回こそはって思ったのに…がんばって…頑張ってもってきたのに!」ポロポロ

夏凜「…けっきょく…!やっぱり東郷じゃない!もうイヤだぁ…ううああん…!」ポロポロ

友奈「夏凜ちゃん落ち着いて?」

夏凜「構いなさいよ、一緒に居てよ…!東郷だけじゃなくて私も見てよっ…!友奈!!」ガシッ

友奈「ぎゅむっ!」ギュウウゥ


夏凜「友奈ぁ…友奈…私の友奈…はむ」カプッ

友奈「タップ!!!タップだよ夏凜ちゃん!!!」バンバン

夏凜「はむ…ゆうふぁ…はむ…」カプカプ

友奈「かか夏凜ちゃんぐるじいい!あと耳たぶ噛むのやめへェエ!!」バシバシ

28: 2014/12/27(土) 18:29:58.02



夏凜「友奈…友奈ぁ…」モソモソ

友奈「よーしよしよし夏凜ちゃんよしよし」ナデナデナデ

夏凜「んぅ…」モソッ

友奈(落ち着いてきた…かな?)

友奈「うふふ、頭撫でられるの好きなんだね~、夏凜ちゃんって」ナデナデ

夏凜「ん、好きなの…きもち…」

友奈「そっか~ふふ…かわいいね~、うふふふ」ナデナデ

夏凜「///…ゆ、友奈ぁ、友奈…すきぃ…」モゾモゾ

友奈「うわー嬉しいよ~!私も大好きだよ夏凜ちゃん!」ナデナデ

夏凜「ふぁあああぁ…//」トロン

34: 2014/12/27(土) 18:41:19.58
夏凜「ゆうな…ずっと一緒に居て…」スリスリ

友奈「すごいんだね~」ナデナデ


友奈(すごい!スゴイ効き目だよ…!)

友奈(ちょっと効果が強過ぎる気もするけど、相手はあの東郷さんだ!むしろ丁度いいくらいかも?ふふ)

友奈(ほんとに大丈夫だよね?これ…ボタン押したらちゃんと戻るって言ってたけど)

35: 2014/12/27(土) 18:45:28.60
友奈「…」

夏凜「ゆうな…ゆうな…ゆうな…」スリスリ

友奈「えいっ」ピピピピピピッ!


夏凜「ゆうな…ゆう…」スリ

夏凜「ゆ…」

夏凜「…」


友奈「夏凜、ちゃん?」ドキドキ

夏凜「ゆ、ゆ」ブルブル

友奈「湯?」


夏凜「ゆぅああああぁぁあああぁあキエエエエエエ!!」ド――ン!!


友奈「ぶええええ!!」ッズシャアアアア!!

39: 2014/12/27(土) 18:50:16.38
夏凜「ゆ、ゆ、結城友奈…!よくも…よくも…!」ブルブル

友奈「いづづ…」サスサス

夏凜「よくも!!よくも騙したアアアアア!!騙してくれたわねええええ!!」ブンッ

友奈「うわぁ!」サッ スカッ!


夏凜「ひゃぁあ!?」コロリン

友奈「危ないよ夏凜ちゃん!どうしたの!?」

夏凜「わたしに…わたしに使うなんてぇ…一言も言ってなかったじゃない…!くううっ…!!」ワナワナ

友奈「あ~…ごめんね夏凜ちゃん?つい出来ごころ、というか…てへ」

夏凜「……」ワナワナ

友奈「あ、でもちゃんともとに戻ったみたいだね?良かったよかっ――」


夏凜「出来ごころで済ますなあああ!」ブーン!

友奈「ひえっ!」スカッ

42: 2014/12/27(土) 18:57:24.23
夏凜「あ、あんな姿友奈に見られてぇ…うう、明日からどんな顔してあんたに会えば…えぐ」ポロポロ

友奈「えー?どうって別に普通で…というか今本人の」

夏凜「出来るかバカ友奈!!もう!!」

友奈「えぇー?」

夏凜「ううぅ…」ポロポロ

夏凜「あぁぁぁあぁ最悪…最悪だわ…なによあの機械いっそ記憶も奪ってよう…もうお嫁にいけないぃ…うう…」ポロポロ


友奈「あ、えっと…えっと…」オロッ


友奈「こ…根性だよ夏凜ちゃん!」ガシッ!

夏凜「キエエエエエエエ!!」ブンッ!

友奈「うひえええ!!」サッ スカッ!

63: 2014/12/27(土) 20:18:16.04
夏凜「ひゃああうっ」コロリン

友奈「なんかさっきから転がってばっかだね」

夏凜「う…うるさいうるさい!腰が抜けて立てないのよ!」

友奈「へぇ~そうなんだ!」


友奈「そっかぁ…」

クルッ!スタスタ

夏凜「ちょ…友奈?」

ガララッ!

夏凜「ちょっと…ちょっと!あんたどこ行くつもり!?」

67: 2014/12/27(土) 20:25:01.64
友奈「…さっきまでのことは本当にごめん、夏凜ちゃん」

夏凜「…友奈」

友奈「今はちょっと夏凜ちゃん冷静じゃないみたいだから、ね?埋め合わせは次に会った時に絶対するから」

夏凜「友奈?」

友奈「うどんでいいよね?」

夏凜「友奈…あんたまさか…」


友奈「…私、やらなきゃいけないことがあるから」

夏凜「友奈ぁ!!」

友奈「引き留めないで夏凜ちゃん!」

夏凜「留めるわ!!あんたこの状態のあたしを放っぽって行っちゃう気なの!?」

友奈「もうすぐ風先輩たちが来る時間だから大丈夫だよ、なんとかなる!」

夏凜「お――い!!」

69: 2014/12/27(土) 20:37:49.29
夏凜「あんたこれ誰のせいだと思ってるのよ!?ちゃんと最後まで面倒見なさいよ!」

友奈「後ろは振り向かない」スタスタ

夏凜「1人にするなっ!すっ…するな…」

夏凜「しないで…!しないで下さい!戻ってきてぇ!もうぶったりしないから!!友奈ぁ!!」

友奈「辛いこともあるけど、歩みを止めちゃいけない!なるべく諦めず、一歩ずつ前へ!」スタスタ

夏凜「待って!!せめて!せめて椅子か何かに置いていってってば!!」



友奈「だって私、勇者だから!」

ガラピシャン!!


夏凜「ゆっ…」

夏凜「…」


シーン…


夏凜「ううぐぐ…ち…畜生…ぐれてやる…!ぐれてやるもん…ううう…!」ポロポロ

73: 2014/12/27(土) 20:47:56.78
タタタタタ!!

友奈「待ってて東郷さん!」


「コラ――ッ!!廊下を走っちゃイカン!!」


友奈「ひえっ!ご、ごめんなさいごめんなさ…ってアレ?」


風「危ないじゃろうがー!…てね?へへ、似てた?」

友奈「…風先輩?樹ちゃんも」ドキドキ

樹「お姉ちゃんてば…いきなり怒鳴るからびっくりしたよ…」

友奈「ほ、ほんとですよ、もー!」ドキドキ

75: 2014/12/27(土) 20:53:41.68
風「すまんすまん…でもそんな急いでどうしたの?」

友奈「え…あ~…東郷さん迎えに行かなきゃって、つい焦っちゃって」

風「東郷?そういえば補習受けてるんだっけ」

友奈「そうなんです。脚が良くなったから、体育の履修義務があるとかなんとかで」

風「げ、体育の頑固オヤジとマンツーマンか…」

友奈「東郷さん疲れてるだろうから、迎えに行こうって思ってたのつい忘れちゃってて」

風「…そうかそうか、良し許す!でも早歩きくらいにしとかないとほんとにどやされても知らないわよー?」

友奈「えへへ…ごめんなさい!じゃ私行きますから!」

スタタタ…


風「全く健気ねえ…よし、私たちは先に部室行ってますか」

樹「うん!」

79: 2014/12/27(土) 21:05:09.97
スルスル…パサッ

東郷「はあ…」ヌギヌギ


ガララッ!!

友奈「東郷さーん!!」

東郷「ひっ!?ゆ、友奈ちゃん!?」

友奈「あっごめんね、御着換え中だったかー」

東郷「びっくりしたわ…誰も来ないと思ってたから」

友奈「えへへー、面目ない」


東郷「…あれ?そういえば友奈ちゃんどうしてこんなところに?忘れ物?」

友奈「えっと…大したことじゃないんだけどね?…敬っ!」ビシ

東郷「!?」

友奈「――不肖結城友奈!東郷さんのお迎えにあがりました!」

83: 2014/12/27(土) 21:11:30.87


プシュッ!

東郷「んっ…」コクコク

東郷「ぷぁ…ありがとう友奈ちゃん、お茶まで持ってきてくれて。助かったわ」

友奈「水筒を教室に忘れたー!なんて、結構東郷さんもおっちょこちょいだね~」

東郷「ふふ…そうね。友奈ちゃんと一緒だわ」

友奈「そ、そうかなー?あはは…」


東郷「…」

友奈「…」


ミーンミンミンミンミン…

カキーン…    

ファイッ オー! ファイッ! オー!…

85: 2014/12/27(土) 21:17:54.18
友奈「…脚」

東郷「ん?」

友奈「治ってよかった。本当に」

東郷「…うん、友奈ちゃんも」

友奈「でも、もう東郷さんのお世話が出来ないって考えると、ちょっと寂しい感じもするんだ」

友奈「…特にお着換えとか」チラリ

東郷「も、もう…!」

友奈「なんちゃって、えへへ」

89: 2014/12/27(土) 21:25:18.79
ミーンミンミンミン…

東郷「…いつまでも、友奈ちゃんに頼ってるわけにもいかないから」

友奈「…東郷さん」

東郷「体育の補習をお願いしたのも、実は私からなの。足腰を早く鍛えて、友奈ちゃん達の隣を歩くためにって」

友奈「…」

東郷「守られるだけじゃなくて、守る私になるために。勇者の力なんてなくたって、ね?」

友奈「…そっか」


カンッ

東郷「お茶、ありがとう友奈ちゃん」

東郷「次からは大丈夫だから。いつも迎えに来てもらってたら悪いもの」

友奈「…」

東郷「こう見えても私、1人の時はずっと車椅子を手で動かしてたから、スタミナはあるの!」ムンッ

友奈「は、は…」

91: 2014/12/27(土) 21:34:23.25
友奈「…東郷さん、ちょっとそのまま座っててくれる?」スック

東郷「?」


スタスタ ポサッ

東郷「ゆ、友奈ちゃん?」

友奈「…ここ、この位置だよ。東郷さんは私の前で、二人とも同じ方を向いてて…車椅子を押すのは私」

東郷「…」

友奈「東郷さんが元気になるのは嬉しいよ?でも私バカだから、ちょっと混乱しちゃってさー」

友奈「そうそう。東郷さんって私より背が高かったんだね~!」

東郷「ふふ、意外だった?」

友奈「えへへー、かなり!」

92: 2014/12/27(土) 21:34:52.83
友奈「…そんな東郷さんだから、すぐに私なんか追い抜かして、先に行っちゃって、すぐに見えなくなっちゃうんだろうって」

友奈「すごく怖くなった」


東郷「…友奈ちゃん?そんなことは…」

友奈「だからさ」



友奈「ごめんね?東郷さん」

ピピピピピピッ!!

96: 2014/12/27(土) 21:38:51.72
ミーンミンミンミン…

ファイッ オー! ファイッ! オー!…


東郷「…」

友奈「…」ゴクリ


東郷「…」

友奈「…東郷さん?」


東郷「…――ふぁいっ!?」

友奈「ぎょっ!?」ビクッ


東郷「…はっ!?あ…ゆ、友奈ちゃん?」

友奈「ど、どうしたの?急に…」ドキドキ

東郷「ん…?あれ…何かしら…突然ぼんやりして…ごめんなさい、何の話だったっけ」

友奈(…あれ?)

99: 2014/12/27(土) 21:50:22.54
友奈「東郷さん…何ともないの?」

東郷「立ちくらみかしら…やっぱり久しぶりの運動だったから…」

友奈「あのー?」

東郷「ごめんね友奈ちゃん、ちょっと先に部室に行っててくれる?」

東郷「もうちょっと休んだら私も行くから」

友奈「え…で、でも東郷さん…」

東郷「大丈夫、心配しないで…お行きなさい!さあさあ!」ガシッ

友奈「!? わっ…ちょ!と、東郷さん!?」グイグイ

グイグイ… ポイッ!  

友奈「わっとと…!」フラッ

バタンッ

友奈「! 東郷さん、待っ…ええー!そんなぁ!開けてよー!」ドンドン


オーイ!トウゴウサーン…!  

東郷「……」

104: 2014/12/27(土) 22:09:24.88



友奈「……」フラフラ

友奈(し…失敗した?失敗した失敗した失敗した失敗した…)


友奈「なんで…ちゃんと煙も出てたし、機械の動く音もしたし」

友奈「夏凜ちゃんの時はうまくいったのに…なんで…何で何で…」

友奈「こ、こんなのってないよ…あんまりだ…」

トボトボ


風「居たッ!!友奈――!!」ドドドド

友奈「…あ、風先輩」

風「あれ?東郷居ないじゃない?…じゃなくって!どういうことよ友奈!?部室に行ってみれば夏凜が…夏凛が!!」ガシッ

友奈「夏凜ちゃん…?」

風「あんたの名前と何か…呪詛?みたいなのを延々と繰り返す壊れたスピーカーみたいになってて…」

友奈「それはひどい」

風「とりあえず途切れ途切れにあんたがなんかしたってことだけ聞きとれて…ともかく来なさい!」

112: 2014/12/27(土) 22:31:42.32
そこからのことはよく覚えていません。

聞きかじったところによると、部室では…椅子に座って焦点の不確かな目で何事かをブツブツ呟く私を、夏凜ちゃんが体育ずわりで黙ってじーっと睨め上げていたとか。

その光景に樹ちゃんが大泣きして、風先輩はオロオロして、結局東郷さんは部室に来なかったとか。


なお、現在ではその日のことは勇者部一同結託し、なかったことにしています。

危惧された夏凜ちゃんとの関係も、特に変わることはありませんでした。機械の返品を求められたことも有りません。

ただあれからというもの、ふとした瞬間に夏凜ちゃんと目が合うことが多くなった気がします。

チラチラとこちらを伺う夏凜ちゃんですが、目が合った瞬間ぷいっと顔をそむけてしまいます。

真っ赤に染まった頬が正直いじらしいです。すごい!


東郷さんの一件に関しては…当時「機械の故障」ということで私の中では落着しており、失意の底にあった私は、それ以上鑑みることをしませんでした。


思えば…私はあの時、『依存』という言葉の意味について、もう少し考えてみるべきだったのです。

114: 2014/12/27(土) 22:38:04.49
少し考えれば分かることですが、霊的な機構によって働き、ほぼ軍事レベルの精度で設計されたあの機械が一回使っただけで故障するなど、そうそう起こることではなかったのです。


依存にはいろいろな形があります。

東郷さんにとっての『依存』とは一体何なのか。私はまず真っ先に親友の精神のカタチについて、隅々まで考えを巡らせるべきだったのです。


愚かな私は…そのとき地獄の釜底がほんの少し顔を見せたことにすら気付かず、考えることをやめてしまったのです―――

125: 2014/12/27(土) 23:10:15.75
キーンコーンカーン…


カパッ

東郷「はい、友奈ちゃん。今日の分のぼた餅よ」

友奈「わーい!東郷さん大好き!」


キャッキャ

夏凜「…最近毎日食べてない?流石に太るわよ…?」

樹「あはは…」

風「世話焼き夫婦っぷりがいよいよ板に付いてきたわね…とうごーう!私の分は?」

東郷「風先輩達の分はこっちです」

コトリ

風「…え?なんかちっちゃくない?」

東郷「そんなことないですよ」

130: 2014/12/27(土) 23:19:10.55
風「愛情分ってことかー?世知辛いわー…トホホ…」

樹「でもこのサイズなら太らないからいいかも?はむ、はむ…」モグモグ

夏凜「………」じっ…


東郷「友奈ちゃんはい、あーん♪」

友奈「あーん…むぐ…んんおいひい!」モグモグ

東郷「うふふ」


夏凜「…ほんとに『毎日』になったわね…もぐもぐ」


風「どったの夏凜?じ-っと見つめて…まさか羨ましいとかー?ぐふふ」

夏凜「なんっ…!違うわよ!なんでそうなるのよバカバカしい!」

風「ムキニになるとこがあやしー!」

夏凜「小学生みたいなこと言ってんじゃないのよ!」

ギャーギャー

樹「ごちそうさまでした!」

136: 2014/12/27(土) 23:33:00.99
風「じゃあねー」

樹「さよなら!」

友奈「ふたりとも気をつけてねー!」


東郷「また明日ね、友奈ちゃん」フリフリ

夏凜「……」



テクテク

東郷「私ひとりで家について来てほしいなんて、珍しいですね?夏凛さん」

夏凜「それは友奈払いの理由というか…まあ、ちょっと聞きたいことがあるだけだから。家に付く前に終わるわよ」

東郷「…そうですか」

東郷「なら丁度良かった、かな?私も夏凛さんに少し言いたいことがあったから…」

夏凜「へー?東郷が私に?それこそ珍しいわね…」

テクテク

137: 2014/12/27(土) 23:33:58.34
東郷さんって夏凛にさん付け&敬語だっけ

178: 2014/12/28(日) 02:12:19.80
テクテク


夏凜「東郷、あんた…最近友奈に何かされなかった?」

東郷「最近?ちょっと漠然とし過ぎてて…どういうことかしら?」

夏凜「んー、えっと…何て言ったらいいか…」

夏凜「突然ビリっときたら…こう、世界の何もかもが友奈色になっていたというか…」

東郷「…」

夏凜(い、いやこれじゃとんでもない変態みたいだわ…もっとこう…あるでしょ私!)ブンブン

東郷「…ないわ」

夏凜「…い、いや!何を言ってるのか分からないと思うけど私も何を…え?」

東郷「言いたいことは分かったから。でも、『最近』では心当たりはないわね…そういうことは」

夏凜「そ、そう…」

夏凜(伝わったのか…)

183: 2014/12/28(日) 02:17:46.24
テクテク

東郷「他には?それだけ?」

夏凜「えっ!?あ…ああ、うん…」

夏凜「ん…悪かったわね、急に変なことで呼び出して」

東郷「いえ、それはいいんだけれど…何故?」

夏凜「…」



夏凜『///…ゆ、友奈ぁ、友奈…すきぃ…』



夏凜「―――邪ッ!!」ドゴム!!

東郷「えっ…夏凜ちゃん?」

夏凜「私の!中から!出ていけええ!!」ドゴムドゴムダダドムゥ!!

東郷「夏凜ちゃん?血が出てるわ…頭大丈夫?夏凜ちゃん?」

185: 2014/12/28(日) 02:21:03.72
フキフキ

夏凜「見苦しいところを見せたわね…ハンカチ、洗って返すから」フキッ…

東郷「い、いえ…差し上げるわ」

夏凜「ふう…そういえば答えてなかったわね。さっきの問い」

東郷「?」

夏凜「呼びだした訳よ。『なぜ』って言ってたでしょ…自分で」

東郷「ああ」


夏凜「ちょっと、あんたの様子が…その、前と変わって見えたから」

東郷「…」

191: 2014/12/28(日) 02:35:30.53
夏凜「ちょっと前までの東郷はこう…前向きでおーぷんだった。体育のあれとか」

東郷「…」

夏凜「身体だけじゃなくて、社会的にも友奈に近づこうって心意気があった。風と一緒にニヤニヤしながら見守ってたの、あんたは気づいてないでしょうけど」


夏凜「…それが、さ…ここ数日の東郷には無くなってる気がして…」

東郷「…というと?」

夏凜「友奈にべったりじゃない?最近。なんというかたぶん…悪い意味で」

東郷「……悪い意味……」


夏凜「うん。視野狭窄というか…視界の全部が友奈になっちゃって、他の事が目に入らなくなってる感じ…」


東郷「……」


夏凜「…ごめん。変なこと言った。あんただって何となくでこんなこと言われたくないでしょうけど、でも…」



東郷「…違うわ、夏凜ちゃん」

夏凜「え?」

196: 2014/12/28(日) 02:46:57.29
東郷「悪い意味?とんでもないわ…これは進歩。いや、進化といってもいい」

夏凜「うん?」

東郷「視野狭窄?有り得ないわ。むしろ逆……これは覚醒よ」

夏凜「…」


東郷「一番大事に思ってて、何よりも尊くて、まあそれは前からなんだけど、今にして思えば全然足りなかったの」

東郷「愚かで済ますには重すぎる。気付かずに過ごした時間の無駄なこと!絶対不変の価値観!真実!!それに気付いたのはあの時、あの瞬間だった…!!」

東郷「済みきった視界から見える本当の世界は…なんて…なんて素晴らしいのかしら…!!」ブルブル

夏凜「とう、ごう…?」



東郷「っふっくく…うふ、あはははは……・!!うふふふふ…!」ブルブル


夏凜「―――!」ゾワッ…

204: 2014/12/28(日) 03:01:08.70
東郷「友奈ちゃん!友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん…!!ああっ…!そう!!友奈ちゃんなのよ!!全てはぁ!!」

東郷「友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃんあはっ!あははははははははははっ!!」ケラケラ


夏凜「―――」

夏凜(何言っ…笑っ…目の前…の…東郷?いや…違う…『誰』?…いや…違う…)クラッ…


東郷「あはっ!!はぁ!!くふっ!夏凜ちゃん!ねえ!?あなたもそう思うでしょ!?ねえッ!!あは!!そうでなきゃ…っふふふ、狂ってるもの!!きゃははははは!!」ゲラゲラ

夏凜(これは…一体…)クラクラ

夏凜(……『何』……?)クラクラ



東郷「ねえ」



ガ シ ッ



夏凜「――っひ――」


東郷「そう思うでしょ?夏凜ちゃん」

212: 2014/12/28(日) 03:17:26.28
東郷 『そう、そういえば私の言いたいことがまだだったね』

東郷 『夏凜ちゃん、夏凜ちゃんは友奈ちゃんに近過ぎる。夏凜ちゃんの最近の目線、友奈ちゃんに行ってること、知ってるわ。あなたは気づいてないでしょうけど』


ギュウウゥ…ッ!


東郷 『これだけは覚えておいて』

東郷 『全て友奈ちゃんは私のもので、全て私は友奈ちゃんのもの』


東郷 『友奈ちゃんに余計なことを吹き込んだり、良からぬ事をしでかした時には――――』




東郷 『   殺 す か ら   』

215: 2014/12/28(日) 03:22:34.46
夏凜「――――ッあ!!あああぁぁあああぁあぁぁああぁぁ!!!」ガバッ!!


夏凜「はあっ!!はあっ!!は…!あ、あれ…!はっ…」

夏凜「はあ…何ここ…?べ、ベンチ…?公園の…?」ダラリ

夏凜「は…はあああぁ…あ…」ダラダラ


夏凜「ゆ、夢…?何時の間に寝てたのかしら…なんちゅう悪夢を…」スッ


パサッ


夏凜「…」

夏凜「血…血のついた…はんかち…」ブルッ

夏凜「…は…はあ…!はあっ!はっ!!」ガバッ

スルリ

夏凜「あ、痣が…」


ヘナッ…

夏凜「東郷に…東郷に…握られたとこだ……」ペタン

268: 2014/12/28(日) 10:52:22.77
 タタタタ ガチャ! …バタン!

夏凜「はあ!はあ!…うえっ…!はあ…」ドタドタ ドサッ

夏凜「つ…伝えなきゃ!友奈に!今の東郷は普通じゃない!」

夏凜「そうよ!す、スマホッ!」ゴソゴソ


東郷 『友奈ちゃんに余計なことを吹き込んだり――――』


夏凜「……!」ピタリ

夏凜「じょ…冗談じゃない!友奈が危ないって時に保身なんて…!」ブンブン

夏凜「SNSは東郷にも見られる……!電話なら!」


prrrr…

271: 2014/12/28(日) 10:59:57.67
ガチャ!

「……はい」

夏凜「! もしもし友奈!?」

「…」

夏凜「急にごめん、でも急ぎなの!何も言わずに質問に答えて頂戴!」

夏凜「あんた私にア…アレをした日に!あの後あの機械を東郷に―――」

「私が?私がどうかしたのかしら」

夏凜「使っ…え?」

「…」

夏凜「その声…東、郷」

「…ええ」

夏凜「な、なんで…」ブルッ

「何でって…私と友奈ちゃんのお家は隣なのよ?」

夏凜「あ…」

「晩御飯くらい一緒する仲でも…別におかしくはないでしょう?くすくす…」

276: 2014/12/28(日) 11:16:20.51
「…夏凜ちゃん」

夏凜「う、うう…!」

「あなた…さっき私が言ったことを―――」

夏凜「ひ…ぃっ!わあああっ!」ポイッ!

ガンッ コッ  プツッ… ツー ツー…



東郷「……」スッ

ガチャ

友奈「ふう~」

東郷「あ、おかえり友奈ちゃん」

友奈「いや~東郷さんちのおトイレはいつ見ても綺麗だね!私感動しちゃうよ!」

東郷「そういうことは報告しなくてもいいのよ?」

277: 2014/12/28(日) 11:20:21.39
友奈「あれ?電話?東郷さん代わりに出てくれたの?」

東郷「ええ…夏凜ちゃんから。でも風先輩と間違えたって」

友奈「そっかー夏凜ちゃんデジタル弱いもんね…ありうる!」

東郷「ええ、ほんとに…」

東郷「おつむまで弱いようね」ボソ

友奈「え?何?」

東郷「…さ、こっちに座って?御飯のあとは…御勉強の時間です!」ポンポン

友奈「う…うひゃー、お手柔らかに…」

東郷「ふふ…」

288: 2014/12/28(日) 12:25:55.56
夏凜「……」ぼふっ!


夏凜(落ちついて…冷静に!冷静になるのよ三好夏凜…!)ギュッ

夏凜(東郷がえらいことになってるのは多分あの碌でもない装置のせい…)

夏凜(なら話は簡単よ…どこか東郷の目が届かないタイミングで友奈にぜんぶ話して、すぐに解除ボタンをおさせればいい。それだけ)

夏凜(電話はダメ…しかし焦ることはないわ…ぜんぜんない… 学校、そう学校よ!待てば必ず機会は訪れるはず!)

夏凜(問題は…やっぱり東郷に見つかったとき…)

夏凜(今の東郷をいつもの東郷と思ってはいけない…!『やる』と言ったら『やる』目だった…!あれは…)ブルッ

夏凜(おそらく電話の一件でただでさえ私はマークされているだろうし…もし失敗して、東郷にターンが回れば…)


夏凜「……」


夏凜(い、いや!ダメよ三好夏凜!何よ悪い想像ばっかり私らしくもない!勇気と根性さえあれば大抵なんとかなる!)ブンブン

夏凜「勇者部!!みよしかりーん!!ファイト――ッ!!」ガバッ!

294: 2014/12/28(日) 12:37:00.04
キーンコーンカーン…

きりーつ、礼!神樹様に…拝!


夏凜「…」チラリ

友奈「…」


夏凜「…」チラ

東郷「…」


夏凜(今のとこ何も変わったところは…ない…わよね?)

夏凜「…」ギュッ


夏凜(守って見せる…友奈も東郷も…!今度こそ、私の手で!)

296: 2014/12/28(日) 12:43:56.12
先生「――…よしさん…三好さん?」

夏凜「!? あっ…はいっ!?」ビシッ

先生「着席の号令、聞こえませんでしたか?」

夏凜「えっ…あれ…あ!ご、ごめんなさいっ!」ドサッ

ハハハ… クスクス…

夏凜「く、くう…っ//」

先生「まったくもう。ボーってしてないで?ほら、次は家庭科だから移動ですよ!」


友奈(夏凜ちゃんぼーっとしてたな…なんだろ?)ポケ~

夏凜「ぐ、ぐくく…!」キッ

友奈「えっ…何で私睨むの!?」


東郷(…)

302: 2014/12/28(日) 13:08:39.99
カチャカチャ… トン  ハハハ…

友奈「料理実習です!」ジャンッ!

夏凜「東郷はともかく…友奈!」

友奈「はいっ!」シャキッ

夏凜「こうして3人同じ班になった以上、一番の不安因子はあんたよ!くれぐれも足を引っ張らないでよね!」

友奈「いえす、サー!夏凜ちゃん!」ビシ

友奈「あれ?でも夏凜ちゃんもあんまり料理上手じゃ……」

夏凜「シャラップ!!」

友奈「あひ!!」

東郷「あらあら…まあまあ」ニコニコ


夏凜(…ひとまず何時も通りにふるまって、東郷の警戒を解く)

夏凜(私は何も見なかった!怖いのでもう口出しなんてしません…という感じを演出しつつ、ただ待つ!これが今私が打てる最善手!)


先生「この実習では包丁など刃物を使います。取り扱いには気をつけるようにー!」

ハーイ!

347: 2014/12/28(日) 15:22:54.11
カチャ カチャ  コトン ワイワイ…

トントントン…

夏凜「……」チラチラ


友奈「うー、ジャガイモなかなか剥けないよ~!」ガッチョン ガッチョン…

東郷「友奈ちゃん、ピーラーの構え方はそうじゃないわ。貸してみて?」

友奈「そうなの?はい」

東郷「こうして…こう!」シュウッ

友奈「ほう!」

東郷「こうこう!!」ヂュワッ!

友奈「ほうほう!」


トントントントン…

夏凜(平和ね…そして予想通り東郷は友奈にべったりだわ)

夏凜(まあまだ初日よ…そう簡単にチャンスなんて巡ってくるはずがない…ここは辛抱の時よ、私!)

350: 2014/12/28(日) 15:29:32.45
トントントンドッ!!

夏凜「あ痛づっ!!」カタン!

ジワリ…

友奈「夏凜ちゃん?」

夏凜「くっ…不覚だわ、指切っちゃった…」ポタ…


東郷「大丈夫?」カタリ

友奈「あちゃー血がでてるよ~…保健室いこう?」

夏凜「大げさね。平気よこのくらい…ちゅぅ」

東郷「でも、一応消毒くらいはした方がいいわ」

友奈「そうだね…あ!2回の手洗い場に消毒液がある筈だから、そこで!」

夏凜「んな配置までよく知ってるわねあんた…ちゅぅちゅぅ」

友奈「えへへー、勇者ですから!…あ、夏凜ちゃん舐めちゃダメだよそれ逆効果だよ!」むんず

夏凜「え…そうなの?」

355: 2014/12/28(日) 15:34:42.86
東郷「2階ね。夏凜ちゃんは場所が分かってないみたいだし、友奈ちゃん連れて行ってあげて?」

友奈「がってん!東郷さんはお鍋の火を見ててね!」

東郷「はーい」


夏凜「ちょ、ちょっと…それくらいひとりで…」

友奈「じゃあ…すいませーん!先生!夏凜ちゃんがケガしちゃったんで外で消毒してきまーす!」


ザワッ…

夏凜「ぎゃああああああなんでいちいち叫ぶのよ小ッ恥ずかしいいぃ!」ぺしっ!

友奈「あいてっ!?」


東郷「ふんふ~ん♪」トントントン…

357: 2014/12/28(日) 15:39:59.85
ジャ――――…


友奈「…だからね、口の中なんてどんなばい菌が居るかわかったもんじゃないんだから!」

夏凜「うるさいわね!も、もうわかったわよ!」

夏凜(くっ…今日は厄日だわ…!)

夏凜(それもこれももとは東郷の…!)

夏凜(東郷…あれ?)

夏凜「…」


友奈「十分洗えた?じゃこっちの消毒液…」

夏凜「…ふたりっきり?これってチャンスじゃない?」ボソ

友奈「ぁえ?」


夏凜「…ゆ、友奈!」ガシッ!!

友奈「ふぁっ!?か、夏凜ちゃん!?」ギョッ

358: 2014/12/28(日) 15:46:56.94
夏凜「わ、私!あんたに言っておかなきゃならないことが!!」グググ

友奈「なに!?なになんなの夏凜ちゃん!?」

夏凜「いきなりで困惑するかもだけど答えて頂戴!大事なことだから!落ち着いて聞いて!」グググ

友奈「落ち着いて!落ち着いて夏凜ちゃん!!」ペシペシ


夏凜「あんた前のあのこと覚えてる!?例の装置を私に使った日!」

友奈「覚えてる!覚えてるから!愛の告白はもうちょっとムードを保ってやってほしいな夏凜ちゃん!!」ペシペシ


夏凜「あんたあの時一番の目標は東郷だって言ってたわね!?」

友奈「言いました!ごめん!!ごめんよ怨んでるよね夏凜ちゃあああぁ!!」ペシペシペシ

363: 2014/12/28(日) 15:54:18.94
コツ… コツ…

夏凜「『使った』のよね!?あの装置を!!あの後に!」

友奈「う、うん?えっとぉ…?」ペシ…



コツ… コツコツ…


夏凜「そうじゃなきゃおかしい…おかしいもん…!あんな東郷…」ブルブル

友奈「とうごうさん?え?夏凜ちゃん…?」



夏凜「…友奈!!友奈ぁ…!あの時からなの!理由はそれしかない!それしか考えられない…!」ガシッ… ズルリ


友奈「わっと…!?」フラッ

夏凜「東郷がおかしくなったのは、絶対あの―――!!」




コツッ… コツンッ

391: 2014/12/28(日) 19:28:25.53
カツ――ンッ…



「私が」


夏凜「あの、あ――――――…あ、あぁ……」

友奈「あれ?あれはもしや…」



「何だっていうのかしら?」


夏凜「と、と、と…!!とう、っと、と…!!」ガタガタ




東郷「その話…私も聞きたいな、夏凜ちゃん……」ニコッ…


友奈「わー、東郷さん!」

夏凜「とう…ごうぅ………!!」ヘナヘナ


ヒュウウウウゥ…… ゴオオオオオォ…

397: 2014/12/28(日) 19:36:37.97
友奈「東郷さんも来ちゃったんだ!助かっ…じゃない、お鍋は見てなくて大丈夫なの?」

東郷「ええ平気よ…他の班の子に見てて貰ってるから」


夏凜「なんっ…なん…!なんで、東郷…あんた…っ!!」ガタガタ

東郷「…友奈ちゃんの事を先生が呼んでたから、呼びに来たの。夏凜ちゃんは任せて、先に戻ってて?」

友奈「わー、わざわざ伝えに来てくれたんだ。ごめんね?」

東郷「いいの。…それに私自身も…」


東郷「…『ばい菌』が……気になったって言うのも…あったから…ね…?」スッ

ジッ…

夏凜「っ、ひ…!」ガタガタ


友奈「そっかぁ…ふふ、なるほど!やっぱり東郷さんは優しいや!」

東郷「もう、照れるわ」

400: 2014/12/28(日) 19:40:20.24
友奈「そういうことなら…夏凜ちゃんのことは宜しくね!まだ消毒終わってませんので!」

東郷「ええ。あと…ちょっと夏凜ちゃんの様子がおかしいから、やっぱり保健室に連れてくわね」

夏凜「………!」ガタガタ

友奈「え?あ…ほんとだ…なんか震えてない?大丈夫?」

夏凜「ゆ、ゆう、ゆうなぁ…!ひ、ひとりに…しな…!」ガタガタ


友奈「気付かなかったよ、ごめんね…でもいきなりどうしたんだろ?心配だよ…」

東郷「私が責任持って連れて行くから。さ、友奈ちゃんは行った行った!」

友奈「う、うん…夏凜ちゃん!無理して戻ってこなくてもいいからね?またあとで保健室に迎えに行くから!」


タタッ

夏凜「…あ…っ!」ガタガタ


スタタタタタ…

夏凜「あ…あぁぁ…」ブルブル

東郷「さてと」

408: 2014/12/28(日) 19:46:04.40
ガッ!!

夏凜「ひぐっ…!」


ドンッ!  メキメキ…

夏凜「が、ぁ…あぐ…!」


東郷「騒がないで、振り向くな。無理に身をよじると腕が折れるわよ」グググ

夏凜「う、うう…」


東郷「どうにも動きが不自然だから、餌を撒いてみたら…案の定ね。あんな分かりやすい罠に…」

東郷「にぼし女は脳ミソのサイズまで小魚並かしら?…嗚呼ッ!おぞましい!!」

ミキミキ…!

417: 2014/12/28(日) 19:50:38.96
夏凜「う、ああっ…!あ!!と、東郷…!」

東郷「友奈ちゃんに…何を吹き込もうとしたッ!!」

ガシッ!

夏凜「痛っ…!髪…い、嫌!離しっ…」


東郷「―――言えッ!!」ブンッ!

ガンッ!!

夏凜「あぐっ!」


東郷「言えッ!!言えッ!!言えぇ!!」ブンッ!ブン!

ガンッ!ガンッ!

夏凜「やめ…がっ!!やめへ…ああぁぐっ!!」


東郷「私の!!友奈ちゃんを!どうする気だッ!!この腐れにぼし…がぁッ!!」ブンッ!

ガーンッ!!

夏凜「ぎゅぅっ!…うぐ、っく…ぅ…うぅ…」ポロポロ

422: 2014/12/28(日) 19:53:02.71
東郷「はぁっ!!はぁ!はっ…はぁ…ふーっ…」


夏凜「ひっぐ…っう…ぁう…」ポロポロ


夏凜「…う…!」ポロポロ

夏凜「と、東郷…!うう…っ!」ギュッ

夏凜(ダメ…だめだ…!ここで押し負けたら…友奈は…東郷は…!勇者部は…!)


ググッ…!

夏凜「…東郷…き、聞きなざい…!」

東郷「…」

夏凜「あ”…あんたは…おかしくなってるの!う…自分で分からない…?っふ…普通の東郷なら…絶対こんなこと…しないッ!」

429: 2014/12/28(日) 19:58:13.38
夏凜「ほんの少し!ほんのちょっとで良いから友奈に話をさせて…そしたら全部、元通りに…!」

東郷「…噛み合わないわね。阿呆に何を言っても無駄か」

夏凜「東郷!とうごうッ!!お願いだから…冷静に話を…!!」

東郷「まあいいわ」スッ


キラッ


夏凜「ぁえ?」

東郷「もとを断てば関係ないものね」


グッ

435: 2014/12/28(日) 20:03:04.21
プスッ


夏凜「あっ」

東郷「…ねえ、分かる?あなたの背中に、今何が刺さってるか」


夏凜「は…はぁっ!はぁ!」サーッ…


夏凜「―――う!うぁッ! とうごっ」

東郷「…嫌ね、まだ先っちょだけよ?」

東郷「そんなに慌てないで…」


ズブ…


夏凜「あ!っひ!ぁぁあぁああッ…!!」ビクビクッ

東郷「大きい声を出すなって…言わなかったかし…らっ」

クリッ


夏凜「!! い”っ…痛い!東郷やめてお願いだからぁ!やめてぇ!!」ガクガク

444: 2014/12/28(日) 20:13:47.94
夏凜「やめて!やめてやめて止めてっ!!とうごう!これ以上はっ!しゃっ!洒落にっ!なっ、てない…からっ!!ああ…!」ガタガタ

東郷「洒落や冗談でこんなことをすると?私が?」


東郷「物狂いじゃあるまいし…あは」

夏凜「………う、うううぅ、ひゅ…!」ガクガク



東郷「くすっ…怖がり過ぎよ…そんなに痛がるほどかしら?まだ何センチも入ってないわ」

夏凜「ぁ、ぁあ」ガタガタ

東郷「…まだ唾でも付けておけば完治する程度の傷…でも」スッ

ツ…

夏凜「―――ひ」ゾクゾク

東郷「この下は、丁度腎臓…」

東郷「私がこのまま…ほんの少し…体重をかけてあげれば…」


ツツ――…


夏凜「あ、あああああぁぁぁ…、ぁ…!」ゾクゾクゾク

453: 2014/12/28(日) 20:30:47.73
スッ

東郷「…なーんてね」


夏凜「へっ…あっ!?」グイッ!


ドンッ!  

夏凜「あぐぅっ!」ドサッ!


東郷「…帰してあげる。良く考えたら、夏凜ちゃんは未遂だもの」

東郷「『それ』はやりすぎだわ…ごめんね?くすくす…」


夏凜「あ、へ…あ…あぁぁ…」ガクガク

夏凜「ぁぁ…ぁ…」ヘニャ


チョロッ…

夏凜「!? あっ、やっ…ああ…!」

456: 2014/12/28(日) 20:32:03.10


…ピチャリ

東郷「…呆れた」


東郷「もういいわ、もういい。色々萎えちゃった」

東郷「さっさと保健室にでも何でも行ってしまいなさい。まさか”それ”で授業に戻るわけにもいかないでしょう?」


夏凜「うっ、うぐ…」ポロ


夏凜「うう…!ううぅぅ…ううう」ポロポロ

460: 2014/12/28(日) 20:33:25.00
東郷「さっさと居なくなって…私の気が変わらないうちに!」


ドン!


夏凜「ひぐっ!」ビクッ

夏凜「ぅ、ぁあ…うわぁああ…うわーん…」ポロポロ


ズルッ

夏凜「うわあぁぁーん…ひっぐ、うええぇぇ…」ポロポロ


ズッ ズッ…  ズルッ…


うわーん、っぐ…ぅぅぅ…


ズッ…




東郷「…」

467: 2014/12/28(日) 20:47:32.61



東郷「…行ったわね」

クルッ!  カツッ カツッ…


東郷「…」

東郷(保健室に行った?いえ、違うわね…『三好夏凛』が『あの恰好』で大人の眼の着く場所に行くはずがない)

東郷(汚れたスカート、額に傷、服をめくれば背中には刺傷。そんなものが大人の眼に触れればどうなるか)

東郷(事情を正直に話せば…すなわち私の凶行が明らかになれば、勇者部が…友奈ちゃんが今までどおりの日常を送ることは不可能になる)

東郷(夏凜ちゃんの言葉から察するに、彼女は私が狂気か何かに取りつかれていると考えているのでしょう)

東郷(であるならば尚のこと、『東郷美森』の人生を破滅させるような行動は彼女にとって禁忌!都合のいいことに…!)


東郷(今、現実的に彼女が取る行動は…教室で着替えて…傷を隠しながら…家に帰って震えて眠る。そんなところでしょう)

476: 2014/12/28(日) 21:04:51.48
ピタリ

東郷「…」

東郷(でも、困ったわ…夏凜ちゃん、生かしておいたらやっぱり友奈ちゃんにイヤナコトを吹き込むに違いないわ)

東郷(私だって友奈ちゃんを何時でも監視できるわけじゃない…夏凜ちゃん愚直なところがあるから、諦めずに…いずれ成功するかもしれない)

東郷「…」

東郷(…どうしよう…どうしよう…勇者部…夏凜ちゃん…)

東郷(夏凜ちゃん、夏凜ちゃ……友奈ちゃん…)

ドクン

東郷(…友奈ちゃん?)

東郷(…そうだ!仕方ないわね!友奈ちゃんの為だもの!)

東郷(氏んでもらいましょう!そう!残念だけど仕方がないわ!友奈ちゃんきっと悲しむだろうけど、私と一緒ならきっと乗り越えられるはず!)

東郷(殺さなきゃ!いざという時の為に考えていたあのプラン!実行に移す必要がある…!)

東郷(友奈ちゃんを『保護』できて、夏凜ちゃんをバレずに抹殺できて、風先輩たちにも悟られないあの作戦を!!)

482: 2014/12/28(日) 21:08:23.28
東郷「そうとなれば急いで…!」ポロポロ

東郷「あ、あれ?」ポロポロ


東郷「おかしいわね…涙?何時の間に」ポロポロ


東郷「変なの…熱に悲しいことがあったわけでもないのに」グシッ


東郷「さて、と…友奈ちゃんにはどう説明しようかな?先生が呼んでたって嘘の事」

東郷「夏凜ちゃんのことは…誤魔化す必要もないか。どうせあの調子じゃ誰にも何も言えない」


東郷「~♪」トトト



579: 2014/12/29(月) 00:18:34.89
皆さんこんにちは。結城友奈です!

突然ですが、夏凜ちゃんが最近おかしいです。


家庭科の実習があったあの日、夏凜ちゃんが家庭科室に戻ってくることはありませんでした。

東郷さん曰く「急に寒気がして、熱っぽかったので帰った」とのこと。保健室に寄らずに直帰したのを送っていたので、東郷さんも遅れたそうです。

お見まいに行こうと思ったのですが、「うつしたら悪いので来るなと言っていた」…ということをこれまた東郷さんから聞いたので、泣く泣く断念したのでした。くすん


三日後、熱がひいたらしい夏凜ちゃんが学校にやってきたときには、そのおでこには大きな絆創膏が張られていました。

びっくりしてどうしたのか聞くと、ぴしゃりと一言「転んだ」と呟くと、それ以上特に教えてくれませんでした。

風邪のせいでふらふらして打ったのでしょうか。心配です。


それからしばらく夏凜ちゃんは元気がありませんでした。

病み上がりでしんどいのかな、と陰ながら心配していましたが、ここの所はもとの調子を取り戻してくれています。


…ただその時期と一致して、夏凜ちゃんの様子…正しくは、「夏凜ちゃんが東郷さんと居る時の様子」がおかしくなったのです。

580: 2014/12/29(月) 00:19:37.32
まず目を合わそうとしません。

東郷さんはニコニコいつもの優しい笑顔で夏凜ちゃんを見ているのですが、夏凜ちゃんの方はというと…喋ることはふつうに喋るのですが、ほとんど目を合わせないんです。

前はこんなことはありませんでした。はてなです。


次に、東郷さんと二人きりになるのを嫌がっているように感じるのです。

私がおトイレなんかで二人を残してどこかに行こうとすると、夏凜ちゃんも必ず着いてきます。


3つ目。そういう時は必ず、人が変わったようにビクビクおどおどして、キョロキョロと周囲を確認しながらもごもごと口を開きかけて…つぐむ。ということを繰り返すのです。


察するに東郷さんと口喧嘩でもして、一方的にぶちのめされたのかな?と思うのです。東郷さん怒ったら怖いし、口達者だし。

事情が分かれば取り持ってあげたいのですが、がつがつ入りこんでいくのも気がひけます。

友人として、こういう時はどうすればいいのか。静かに見守って時が解決してくれるのを待つのが得策なんでしょうか?…わかりません。今度お父さんに聞いてみよう。



そう言えば、東郷さんは東郷さんで、私を家に誘って勉強会とか武道の稽古とか(私が指導役です!えへん!)をすることが多くなりました。

しかしその一方で、せっかく誘ってくれたのに途中でふいと抜け出して、しばらくしてまた戻ってくるというのをよくやるのです。

どうしたの?と聞いても、「秘密よ」としか答えは返ってきません。ミステリーです。

701: 2014/12/29(月) 10:18:13.56


風「また捨て犬!?今月これで3件目よ!?」

樹「荒んだ世の中だねお姉ちゃん…」モグモグ

友奈「クラスに飼いたいって子が何人かいたから、私当たってみますね!」

東郷「…」ニコニコ

夏凜「…」


夏凜(あれからだいたい一ヶ月…東郷に変わった様子はない。悪い意味で)

夏凜(風も違和感を覚えてきてる。…樹は何も勘づいてないみたいだけど)

夏凜(最悪なのは、慣れてしまうこと…!あんな…異常な東郷を、そのままずっと放っておくわけにはいかない!)

夏凜(兄貴を通じて大赦には当たってみた。でも分かったのは装置が一点物の試作品で…技術開発者も不明ということだけ。大赦へ直接メールしても、音沙汰はなし)

夏凜(解除ボタン以外の解決方法は今のところない…)

夏凜(発動と違って解除するのに本人に向ける必要はない。ただボタンを押すだけでいい…なんのこっちゃない。指先一つで解決する)

夏凜(友奈にひとこと、伝えさえすれば…)

夏凜「…」ギュ

704: 2014/12/29(月) 10:27:45.88
―――… 私がこのまま…ほんの少し…体重を …―――


夏凜「…」ブルッ


バーテックスなんか比ではない。狂乱した風のそれとも違う。発するのは同じ『殺意』でも、性質は全く異質なものだ。

無機質さや衝動的な情動からは程遠い、あの生々しい…


夏凜「…っふ、…!」ガチガチ



明らかに人気のないところに来ても、そこに有り得ない視線を感じるのだ。

身体が、舌が、思考回路が、凍りついたように動かなくなる。


夏凜「…」ガチガチ

東郷「友奈ちゃん、あーん」

友奈「はむっ!」


神様。どうか、私が立ち直るその時まで、どうか…何事も起こりませんように―――

706: 2014/12/29(月) 10:36:41.81
友奈「おーいすぃ―――!!」」バタバタ

東郷「…」ニコニコ


私の『愛情』をたっぷり詰め込んだぼた餅を頬張る友奈ちゃんを見て、私の心が満たされていく。


でも足りないの。


それに外は危ない。夏凜ちゃんの眼にも光が戻り始めている。


世界を変える必要なんてなかったのね。私たちが変わればいいだけだもの。

準備は整った。友奈ちゃんちゅっ。

710: 2014/12/29(月) 10:41:58.79



カー…  カァー…


東郷「これよ」

友奈「わぁ~すっごい土蔵だぁ~…近くで見るとまた違うねー」


東郷「ふふ、早い早い。見せたいものはこの中よ」

友奈「楽しみだなぁ!せっかくだし、暗くなる前に早くみちゃおうよ!」

東郷「ええ…」





ギイイィ…

713: 2014/12/29(月) 10:50:34.64
バターン…


友奈「うわっ!暗いよ東郷さん!」

東郷「電気つけるわね」パチッ

ヴーン…

友奈「あ、電気は通ってるんだ…ひえぇ、モノでいっぱいだぁ~」

東郷「全部家が建ち替わる前からあるらしいわ。前の土地の所有者のものか…もしかしてもっと前の時代の蔵かも」

友奈「はぇ~すっごいんだねー!」



スタ スタ

友奈「見た目の割に埃とかは溜まってないんだね」

東郷「ええ、それはまあ…掃除したから」

友奈「へえー?言ってくれた手伝ったのに~」

東郷「…くす、ありがとう友奈ちゃん」

715: 2014/12/29(月) 10:54:58.41
ガララ…  カコン

東郷「ほらこれ」

友奈「何これー!地面に蓋!」

東郷「地下室よ。私が見つけたの。父も母も蔵には興味がなかったみたいで…知ってるのは私だけ」

友奈「おっ!ピーンときた!今からここを探検ってわけだね!」

東郷「……」ニコニコ

友奈「うぉぉぉ勇者っぽいぞー!一番!結城友奈いっきまーす!」ダッ!

東郷「どうぞどうぞ」


ギシッ ギッ

友奈「…階段急過ぎて駆け降りれないね」

東郷「そうね、危ないわ。ケガしたら大変だもの…」

719: 2014/12/29(月) 11:07:25.27
ザッ…

友奈「よっと!一番乗り!」タン!

友奈「あれ、思ったより広…い…」

ヴーン…


友奈「電気暗くてよく見えないけど…これ…」


東郷「…」タン


友奈「…座敷牢?」

東郷「……」スタスタ


友奈「すごい錆びの匂い…ほんとに何時から有ったんだろう、これ…」サワサワ

東郷「…ちょっと退いて?友奈ちゃん」スッ

友奈「うん?」

東郷「…」 カチャカチャ… カキン


友奈「…って東郷さん?なんで扉開けて…というか鍵持ってたの!?」

722: 2014/12/29(月) 11:18:03.44
東郷「…」スタスタ


友奈「わわっ!ダメだよ入っちゃ危ないよ!罠とかあるかも!!…ってそれはないか」

東郷「平気よ。ほら、友奈ちゃんも」

友奈「う、うう…」スイッ


… ピチョン…

友奈「ひ、ひええ…格子を超えたら雰囲気が違うね…ね、東郷さん…」ヒヤッ

友奈「うぇ~、なんか怖いよ…」

725: 2014/12/29(月) 11:28:29.84
東郷「友奈ちゃんちょっと」チョイチョイ

友奈「なにー東郷さん?」トトト


東郷「これに手を置いてみて?」ニコニコ

友奈「なにこれ?…鎖が付いて、鉄の…えーと」

東郷「いいからいいから」ニコニコ

ガシッ

友奈「あう」



…カチャン


友奈「はえ?」

729: 2014/12/29(月) 11:30:44.46
東郷「さ、反対の手も」クイッ


カチャン


友奈「うん?ん?」


東郷「でーきた♪」

ジャラジャラ…

735: 2014/12/29(月) 11:37:30.88
友奈「おっ…お?…ふん!」グイッ!

ジャラララ… ガキン!


友奈「あ、あはは…すごーい手錠で繋がれちゃった~、あはは」

東郷「…」ニコニコ

友奈「なんか本物の罪人になっちゃったみたいだよー、なーんて、はは…」

東郷「…」ニコニコ


ピチョン…

友奈「…東郷さん」

東郷「…」ニコニコ

友奈「えーっと、そろそろ解いて欲しいかなーって…」

東郷「ダメです」

友奈「えっ」

東郷「友奈ちゃんはここに磔り付けます」

友奈「えっ」

754: 2014/12/29(月) 12:14:36.50 t
東郷「今日から友奈ちゃんはここで暮らすのよ?お世話は全部、私に任せて」

友奈「え、東郷さん…え?」


東郷「お食事もちゃんと持ってきてあげる。お昼は私も学校があるから…食べさせてあげられないけど…朝晩の2食、栄養はきちんと考えて作るわ」

友奈「ちょっと」


東郷「着替えも、湯あみも…髪をすくのもストレッチも勉強も、全部私がやる」

755: 2014/12/29(月) 12:16:33.01 t
友奈「は…」

東郷「そう…これからじっくり、友奈ちゃんの全部を…私に染めてあげる」

ニコニコ


友奈「…!」ブルッ


東郷「下の方は…うーん、こればっかりは仕方がないよね?…大丈夫、すぐに私が掃除してあげるから」ニコニコ


友奈「…と、東郷さん…その顔…やめてよ…東郷さんらしく、ないよ…」



東郷「誰にも邪魔はさせない。ずっと側に居て、どこにも行かないで…私と友奈ちゃんが同じ色に…ああ、素敵な色に染まったら…」フルッ

東郷「…っふ、ふうぅ…っくくく…!その時は…ふふ…!」ブルルッ


友奈「―――」ゾッ…

757: 2014/12/29(月) 12:18:28.33 t
友奈「…東郷さんっ!もう変な冗談はやめて!こんなの……!」


東郷「…その時は」スッ… 



ピトッ

友奈「―――ひっ」



東郷「…一緒に、『素敵なところ』に…イキましょう?」

758: 2014/12/29(月) 12:21:01.74 t
その瞬間、私の脳に湧きあがったものは恐怖ではなく、ただ一つの「疑問」だけでした。

生存本能とか…そういう生き物として優先されるべき諸々を押しのけて、なぜそんなものが前に出たのか。理由を考える暇はありませんでした。




東郷「…ん」スイッ

チュゥ…


友奈「!? ~~~~~!、!?」


ヂュ… チュ… レロ…  ニチャッ…

759: 2014/12/29(月) 12:21:28.09 t
目の前に居るコレは。東郷さんの顔で笑って、東郷さんの声で喋って、東郷さんの匂いを燻らせるこのヒトは…




ドンッ! バンッ! バタン!!

友奈「ん”!!んんんん”…ん…!!」ポロポロ



東郷「む…んっ…んぅ…っ!」

チュ… ヂチュ…  ペチャッ…




一体、誰だ?




…ピチャン

882: 2014/12/29(月) 21:53:48.04
友奈が消えて2週間になった。

現在、勇者部としての活動は行っていない。放課後の全ての時間は友奈の捜索に使われている。

市街地は駆けずり回るように探しつくした。今日は県西の山道まで足を伸ばし、探索だ。


はっきり言って普通に考えると居るわけもない。だいぶ前に勇者部でピクニックに来たことがあるから…訪れたのはただそれだけの理由による。

…要するに、私たちはそこまで切羽詰まっていた。

889: 2014/12/29(月) 22:03:49.26
ザッ… ザ…


風「っはー!…途中までバスだったとは言え…山道ってのは案外疲れるわね~」

樹「…うん」

夏凜「…」

ザッ ザクッ…

風「…人間って不思議よね」

夏凜「…」

風「数でいったらほんの5人のうちの1人よ? たったそれだけの人間の…居場所が分かんなくなるだけで…」

風「…部室…あんなに静かになるなんて…」

樹「…お姉ちゃん」ギュ

風「樹?」

樹「友奈さん、ほんとに…無事なのかな…」

890: 2014/12/29(月) 22:05:07.17
風「…樹」

樹「警察の人も、大赦の人まで…皆一生懸命探してくれてるって言ってたよ」

風「…」

樹「それなのに…これっぽっちも…てがかりも、何も見つからないなんて…」フルッ

風「やめなさい」

樹「もしかして…もしかしたら…!友奈さんは、もうっ…!」フルフル

風「――言うなっ!」

樹「…」ビクッ!




夏凜「…」


友奈の意識が無かった頃とはまた違う。

原因も何も分からない。「風や樹には」心当たりもない。勇者システムの一切と関連がないということは、逆に現実的な不安に繋がった。

戻りつつあった日常に、突如としてぽっかり空いた不気味な穴は、あるいはあのとき以上の混乱を勇者部にもたらしていた…

892: 2014/12/29(月) 22:07:28.12
風「あっ…ご、ごめん、怒鳴ったりして…」

樹「ううん、私こそ…」


ナデッ

樹「…ん」

風「大丈夫…!うん、大丈夫よ!」ナデナデ

風「あの時だってそうだったじゃない?ずっとこのままかも…って不安にさせといてさ、結局何もなかったみたいに急に起きたじゃん、友奈のやつ」ナデナデ

樹「…うん」

風「…勇者部五箇条。友奈自身が言ってたでしょう?為せばたいてい何とかなる…って」

樹「うん」

風「こんな…理由も、意味もわかんないまま…居なくなっちゃうような奴じゃない…絶対に」

風「だから…信じて待とう?」

樹「…お姉ちゃん」




夏凜「…」

895: 2014/12/29(月) 22:11:33.85
夏凜「…」

東郷は居ない。調べたいことがあるから、と最近は早々に家に帰ってしまう。

風もそれを無理に引きとめることはなかった。



夏凜「…っ!」ブル

東郷が関わっていないわけがない。

身体の震えはまだ収まらない…でも、きっともう行ける。友奈の居ない2週間を以て漸く、どうにもならないレベルから回復した。

896: 2014/12/29(月) 22:12:39.19
夏凜「…風」

風「ん?何さ夏凜」


風達まで危険に曝す訳にはいかない。…真実を追えるのは私だけだ。


夏凜「これからは、私も別行動をとらせてもらうわ。…その、探す範囲は広い方がいいでしょうし」


風「…夏凜、それは…」

風「…」

風「分かったわ、好きにしなさい」



夏凜「ありがとう。じゃ、早速だけど今日はこれで失礼するわ」クルッ

ザッ タタタタ…



風「は?…ちょ!?夏凜!?」

899: 2014/12/29(月) 22:18:02.82
ヒュー…

風「早いわね、もう見えなくなっちゃった」

樹「…」

風(ほんとーに分かりやすい…思いつめた顔って感じね…)

風「…どいつもこいつも、『悩んだら相談』って条文だけ無視し放題なんだから。困った困った」


樹「…」

…ポロッ  


風「…あらら」

スッ


風「…ぎゅー!ほれ、可愛い顔が台無しだぞー妹よ」ギュウ

樹「……お姉ちゃん…っ…!」ポロポロ

風「大丈夫。このまま勇者部をバラバラになんて…絶対させないんだから」

樹「う、うえーん…うう…!」ポロポロ

風「…」

900: 2014/12/29(月) 22:18:39.21
ガッ! ガササッ!

夏凜「よっ、ほっ…!」ヨジヨジ

ガサッ

夏凜「よい…っと!うわっ!」フラッ ガシ!

バササッ…

夏凜「とと、危ない危ない…流石に木の上は安定しないわね…」


夏凜(この距離なら大丈夫でしょう…中は見えないけど、東郷邸の様子は見渡せる)

902: 2014/12/29(月) 22:19:04.93
夏凜「双眼鏡はっと…あったわ」ゴソゴソ


夏凜「…」カチャ





夏凜(学校での動きは同じクラスだから把握できる。何かあるとすれば…当然だけど、放課後から翌日の登校までの間)

夏凜(暗視機能付きで夜もバッチリよ!家の中が分からない以上完全ではないけど…闇に紛れた外出なんかは把握できる)


夏凜(にぼしは常備!これさえあれば徹夜なんてなんのその)ゴソゴソ

夏凜「さあ、根比べよ東郷…!」ポリッ!

904: 2014/12/29(月) 22:26:14.54
ガチャン  …バタン


東郷「…」


手製の晩御飯が乗った盆を持って外に出ると、ヒリつくような視線を感じた。


東郷「やっと来てくれたのね、夏凜ちゃん」


丁度右前方に気配。監視が行われるならここだろう…といくつか当たりは付けていたが、こうも上手くいってくれるとは。

間違いなく川越しの小山の木立からだ。今目を合わすわけにはいかない。焦らずとも後で3番のカメラを確認すれば、あのにぼし女が映っている筈だ。

905: 2014/12/29(月) 22:27:00.15
東郷「…~♪ …おっと」

スキップしそうになるのを堪えて歩く。十数秒歩いて、土蔵に辿り着く。


ギイイィ… 

東郷「…」


     …バタン

東郷「…くふっ」

わざとらしく勿体つけて、見せつけるように土蔵に入ると、後ろ手に重い扉を閉めて、小さく顔をほころばせた。



嬉しくない筈がない。これで一番の懸案事項が排除されるのだから。

914: 2014/12/29(月) 22:41:03.96
年末で忙しくて遅いのごめんね
反応あったから嬉しくて細々と書いちゃったけど30朝から31まで居なくなるのん
今晩終わらなかったら年越して立て直すのよす 暇だったら見てね

923: 2014/12/29(月) 22:55:50.55
>>914

924: 2014/12/29(月) 23:01:46.78
>>914
乙!楽しみに待ってる

引用元: 夏凜「届いたわ友奈!東郷があんたに凄く依存する装置よ!」