2: 2021/12/05(日) 14:00:30.97





~南の大陸南西・港の街・酒場~


女「はぁぁ...」グビ


店主「なんだい嬢ちゃん。真っ昼間っからそんなデケェため息なんかついて」


女「聞いてくれる~?店主さん」


店主「おう。俺ぁ仕事柄いろんな奴の話聞いてんだ、何でも話せ」


女「...あたしさぁ~こう見えてぇ...あの勇者の娘なんだよねぇ~」グビ


店主「へぇ、そうなのか。そいつはすげぇじゃねぇの(場酔いか?ジュース飲んでるよな?)」


女「勇者の娘ーってだけでさ、みーーんなからチヤホヤされるわけ」


店主「そりゃあ、あの勇者の娘なんだったら周りが放っておくはずないだろ」


女「最初は良いよ?チヤホヤされるのだって悪い気はしないよ?でもね、何してても誰かに必ず見られてる。これが何十年も続くのってどう思う?」


店主「んーまぁ、ちょっと嫌かもな」


女「でしょ?第二の勇者だの持て囃されてもさ、私は両親とは違う」


店主「よくある重圧に耐えきれずってやつか?」


女「それもあるけど、私はそれが嫌で逃げ出したんじゃないの」


3: 2021/12/05(日) 14:03:45.40


店主「逃げ出してきたのか嬢ちゃんは」


女「うん。だからお母さんとお父さんみたいに冒険がしてみたい。何もしてない私を持て囃すなら、何かを成し遂げた私を褒めてほしい」


店主「偉いじゃねぇか嬢ちゃん。大抵、親の後光が強い奴は嬢ちゃんみたいに強くねぇ、押し潰されちまう奴が多い。でも嬢ちゃんは何かを成し遂げようってんだからな、良い気前だ」


女「えっへへ。でもね、世界はビックリするくらい平和でしょ。そんな中で私に出来ることってあるのかな」


店主「魔族は滅んでも魔物は居るしな。そんな事は無いんじゃないか」


女「魔物...かぁ」


店主「言いたい事はわからなくもねぇが、魔物の被害は小さいとはいえ続いてるんだ。困ってる人を助けるのも勇者の仕事じゃないのか?」


女「そんな事言われたら何も言えないけど...」


店主「それで、何処から来たんだ?見慣れない格好はしてるは思ったが」


女「勇国からだよ」


店主「へぇ、勇国......えっ...まさか中央のあの?」


店主(勇国って言ったら...先の戦争で作られた中央大陸の...通称『勇者の街』)


女「そうだけど。何?あたしなんか変なこと言った?」


店主「い、いや...嬢ちゃんもしかして、本当に勇者の娘なのかい?」


女「だからそう言ってるでしょ!信じてなかったの?」ドンッ


店主「いやぁだって、勇者の娘が真っ昼間っから酒場って...信じろって方が無理あんぜ。大体嬢ちゃん歳はいくつだ?」


女「17だけど...べっつに酒場くらい良いでしょ」


店主「俺は気にしねぇけどよ、知ってる奴に見られたらマズくないか?」


女「平気ですよ~だ。あいつらはどうせ勇国からは出てこないし。置き手紙もしたから大丈夫
!」


店主「そういうもんかねぇ。話はわかったけどよ、じゃあ嬢ちゃんはここに何しに来たんだ?」


女「あ、そうそう。すっかり忘れてた。店主さん、ここいらで腕の立つ傭兵とか冒険者とか知らない?私仲間を探しに来たの」


4: 2021/12/05(日) 14:37:58.47


店主「なるほどねぇ、仲間探しか。夜になれば傭兵も来るし冒険者も来るぜ。それと冒険者や傭兵の間で最近話題になってる傭兵がウチに来てるらしい。どうだい、興味は」


女「噂になってる傭兵かーアリかも。ありがと店主さん!また夜に来るね!」ダダダ


店主「お、おい別に毎日来てるわけじゃ...って行っちまった」


店主「...ん?嬢ちゃん!金!金!」







~同場所・夜~


女「店主さーん、こんばんは!」


店主「おお来たな嬢ちゃん。ツイてるな、例の奴来てるぞ」


女「えっ!ほんとですか!どこ?」


店主「あそこで一人で飲んでる奴居るだろ。あいつだ」


女「ありがと店主さん!行ってくる!」


店主「おお、交渉頑張れよ」





女「あの~」


傭兵「なんだ?仕事の依頼なら名前だけ置いてギルドに張り出してくれ」


女「(こ、怖いな...)えっとその、ちょっとお願いがあって...」


傭兵「...よく見たら餓鬼じゃねぇか。遊びに付き合う程俺は暇じゃねぇ、帰れ」


女「ちょっと待って!お願い話を聞いて...」


傭兵「はぁ...ったく。俺だって鬼じゃねぇ、聞くだけは聞いてやる」


女「...っ!ありがとう!」





女は自分が勇者の娘である事、何かを成し遂げたい事、その為に旅の仲間を集めている事
それらを傭兵に話した。


傭兵「...それで?」


女「え?」


5: 2021/12/05(日) 15:49:43.42


傭兵「仮にお前が勇者の娘だとして、だ。これは百歩譲って信じても良い。勇者の一行に入れてもらえるのは名誉でもある。何かを成し遂げたいなら好きにすれば良い」


女「う、うん...?」


傭兵「問題はここからだ。俺が傭兵なのはわかってるよな?」


女「そりゃ......うん」


傭兵「わからないか?金だよ、金。いくら勇者の娘だって、家出してきたんなら金はそんなに無いだろう」


女「うっ...それはそうだけど。でも仲間っていうのは...」


傭兵「馬鹿かお前は。俺は名誉なんて肩書きに興味は無いし、その日の日銭があれば十分。勇者の娘、勇者一行という名誉だけで俺が動くとでも思ったか?俺を雇いたいなら一日5000ゴールドだ」


女「ご、5000!?ちょっとそれは...」


傭兵「だろうな。じゃあ話は終わりだ、失せろ」


女「うぅ...そんなぁ...」


「そこのお嬢さん、ちょっと良いかな?」


女「...?」


「申し訳ない。盗み聞きするつもりは無かったんじゃが、聞こえてきてしまっての。おっと自己紹介が遅れました、私は爺。少し遠い離島に住んでおります」


女「は、はあ...」


6: 2021/12/05(日) 16:57:53.54


傭兵「......」


爺「何やら腕の立つ者が欲しいと?」


女「は、はい...もしかして心当たりが?」


爺「もちろん。ワシのとこに住んでおる倅じゃ。腕は保証しますぞ」


女「倅ですか...」


傭兵「やめときな」


女「え?」


爺「ほお...」


傭兵「そのジジイ、ここら辺じゃ有名でな。良い噂は聞かねぇ。なんでも男女構わず島に連れて行ってはそいつら帰ってこねぇらしい」


女「え...」


爺「そんなのただの噂です。ワシはそんな事はしておりません」


傭兵「どうだかな」


女(ど、どうしよう...)


爺「ふむ、仕方ないですな。ワシは明日の朝に港から出ます。もしお話に興味があれば、どうぞおいでください。それでは」トボトボ


女「明日の朝...港から」


傭兵「悪い事は言わねぇ、別の奴を当たれ」


女「...もしかして、心配してくれてるんですか?」


傭兵「馬鹿が。勇者の娘ってのをあの爺のとこにノコノコ送り出したら夢見が悪いだけだ」


7: 2021/12/05(日) 17:00:27.98


女「あ、あはは、なるほど...」


女「......あの」


傭兵「...なんだ」


女「お話があります!」







~同場所・翌朝・発着所


爺「よいしょ...おや?」


女「どうも!お爺さん!」


爺「これはこれは、どういう風の吹き回しですかな?」


傭兵「ふん。俺は傭兵だ。雇い主に従っている。それだけだ」


爺「ほっほ、なるほど。それじゃあ早速向かうとしましょうか」


女「どのくらいかかるんです?」


爺「大体半日で着きますぞ」


女「半日かぁ...」


傭兵「不安なら用は足しとけ。船の上で漏らしてもらっちゃ困るからな」


女「う、うるさいなぁ!そんな事言われなくてもわかってますぅー!」







~離島・北西部~


爺「着きましたね」


女「遠くから見てた時にも思ったんですけど、小さい島なんですね」


傭兵「さて、何が出るやら」


8: 2021/12/05(日) 17:03:10.81


爺「ジジイと倅しか出ませんよ。ほっほ」


「お~爺さん、おかえり。それに...」


女「あっ...もしかして」


爺「その通り、ワシの倅、名を男と言います」


男「誰?そいつら」


傭兵「俺は雇われの傭兵だ、気にするな」


女「あ、えっと...女です。初めまして」


男「ふーん。まぁ良いけど。お前ら腹減ってるか?今から飯作るけど食うか?」


爺「ほっほ。たしかに朝から軽食しか摂ってないですしの」


女「あっ、おかまい...」グゥゥ


女「あぅぅ...」


傭兵「......」


爺「ほっほっほ」


男「なぁ傭兵のアンタ」


傭兵「なんだ?」


男「そんなに睨むなよ。さっきから怖くてしょうがない。大丈夫、毒なんて入れないから」


傭兵「......」


爺「さ、行きましょう。お嬢さんがお腹を空かせてますし」


女「ご、ごめんなさいぃ」







~離島・中心部・爺家


女「ご馳走様でした~美味しかったです!」


男「そりゃ良かった」


傭兵「......」


9: 2021/12/05(日) 17:05:43.58


爺「それでな、男。大事な話があるんじゃが」


男「なんだよ改まって」


女「あ、あのお爺さん!それは私から!」


爺「ほっほ、そうか。そうじゃな」


男「?」


女「あの!男さん!いや、男!あなたに頼みがあるの!」


男「良いよ」


女「ありがと!......え!?今なんて!?」


男「だから良いよって」


女「まだ何も言ってないんだけど...」


爺「ほっほっほ」


女「え、えっと...改めて言うけど、私の旅についてきてほしいんだけど...」


男「島から離れるって事か?」


女「まぁそうなるんだけど...」


男「ふーん。まぁ良いよ」


女(かっる!大丈夫なのコイツ!)


男「爺さん、一人でも大丈夫だろ?」


爺「当たり前じゃ。ワシを誰だと思っておる」


傭兵「ちょっと待った」


男「?」


傭兵「勇者様の旅の仲間になるのは良い。だが、その勇者様も守れないんじゃ話になんねぇよな?ましてや餓鬼だ」


女「......」


傭兵「俺が試してやる。良いよな?」


女「...」コクコク


女(これも、依頼の一部だから...)


12: 2021/12/05(日) 18:52:08.81


男「よくわかんないけど、それでさっきから殺気飛ばしてたのか?」


傭兵「まぁそんなとこだ」


爺「ほっほ。裏に大きい建物があったじゃろ。あそこを使うとよい。だだっ広いだけじゃが明かりもあるし、道場みたいなものじゃ」


傭兵「...行くぞ」スタスタ


男「なあ爺さん、あいつを倒せば良いのか?」


爺「そうそう。ちゃーんと手加減するんじゃぞ」


男「りょーかい」


女(結構な手練れの傭兵に手加減?腕は立つって聞いてたけどそんなに...?)







~同場所・道場(仮)~


傭兵「氏ぬ気で来いよ。俺は手加減しねぇぞ」


男「そっちこそ。あんまり張り切りすぎるなよ、疲れるから」


傭兵「ふん...お前、得物は?」


男「ああ、俺のは...これ」スッ


女(...!素手!?)


13: 2021/12/05(日) 18:53:53.59


傭兵「成程な...」シュルシュル...


女(傭兵は大剣...大丈夫なの?)


傭兵「ジジイは?」


女「あ、うん...もう寝るって」


傭兵「ふん。呑気なもんだ」


男「もういいか?始めようぜ」


傭兵「ああ、待たせたな。行くぞ」







~離島・南部・海岸・夜中~


女「......」


女「...凄かったなぁ」


女(たったの1発...1発でやっつけちゃった...)







~時は戻って道場(仮)~


傭兵「はぁっ!」ブンッブンッ


男「......」


女(あんなに重そうな大剣を早く振ってるだけでも凄いけど、男の方も凄い。ギリギリで交わしてる...見切ってる?この一瞬で?)


傭兵「へぇ...少しは動けるみたいだな」


男「それほどでも。アンタも結構やる方なんじゃない?」


14: 2021/12/05(日) 18:55:44.76


傭兵「ちっ。なら...次もちゃんと交わせよ」グッ


女(体勢が低い!何をする気?)


男(本気の一太刀って所かな)スッ


傭兵「ふっ!」ダッ


女(たった一歩で間合いまで!?凄い脚力!これは決まるんじゃ!?)


傭兵「はぁっ!」ブンッ


女(素早い袈裟斬り!当た...!ってない!?)


男「結構速いじゃん。まぁそれだけだけど」スッ


バキィッ!


傭兵「うっそだろ!?」


女(大剣を腕と身体で挟んで折った!?あんな分厚いのに!)


男「軽く軽く...ね」ドンッ


傭兵「ぐぁっ!?」ビュンッ ズドーンッ


女(今のって押した...だけ?)


男「あちゃ~やりすぎたか。難しいな加減って」ポリポリ


傭兵「ぅぅ...げほっ」


女「しょ、勝負あり!もう良いよ!傭兵さん大丈夫!?」タタタ


15: 2021/12/05(日) 18:57:07.85


男「ごめんな、もうちょっと弱くしてやれば良かった」トコトコ


女「もうちょっと弱くって...(あれで?)あなたって本当に強いのね...」


男「そうだろ?実は結構強いんだ俺。爺さんにも褒められた」


女「あ...はは。何というか、あなた変わってるよね」


男「そうか?自覚はないけど...それより」


女「?」


男「どうだ?俺はアンタを守れそうか?」


女「...!うん!合格だよっ!それより傭兵さんの手当てしなきゃ!」


男「おお、そうだな」







~離島・爺家・翌朝~


傭兵「んんっ...」


女「あ、傭兵さん起きた!大丈夫?」


傭兵「俺は...」


男「おー昨日は悪かったな。ちょっと力加減間違えたみたいだ。俺ちょっと爺さんとこ行ってくる」


女「あ、うん。また後で」


傭兵「...そうか。あの一瞬で俺は、気を失っちまったのか」


女「うん。傭兵さん、依頼とはいえごめんなさい!まさかこんな事になるなんて...」


16: 2021/12/05(日) 18:58:31.99


傭兵「いや、良い。気にするな。俺は払うもん払ってくれりゃそれで」


女「少し多めに出すから、ごめんね」


傭兵「馬鹿。ただでさえ少ない所持金を減らすなよ。この先も使うんだろ。依頼通りの金額で良い」


女「あ、うぅ...そっか。そうだよね」


傭兵「まったく...とんでもねぇ奴も居たもんだな」


女「そうだね。凄い強かった」


傭兵「あれなら安心だろ。並大抵の奴じゃ勝てねぇよあれは」


女「うん、だね。改めてありがと」







~南の大陸南西・港の街・発着所・夕方~


男「送ってもらわなくても良かったのに」


爺「何を言っておる。倅の出立に顔を出さない親はおらん」


男「ふーん。そういうもんか」


女「ちょっと!長い間お別れだよ?ちゃんと挨拶しないと!」


男「そっか。じゃあ爺さん、元気でな」


女「えー!それだけ?軽すぎ!」


17: 2021/12/05(日) 19:00:32.83


爺「ほっほ。気にするでないお嬢さん。男はこういう男じゃ。男よ、しっかりとお嬢さんを守るんじゃぞ。旅の終わりまでな。これがワシからの最後の課題じゃ」


男「終わりまでね。りょーかい」


女「ありがとうございます!お爺さん!もし寄れたら寄っていきますね!」


爺「その日を楽しみに待っておるよ。ほっほ。ではワシは宿でゆっくり休もうかの。では、失礼」トボトボ


女「さよならー!あ、傭兵さん!これ、お金!」


傭兵「ああ、確かに」


男「アンタは来ないのか?」


傭兵「俺は傭兵だ。金がない奴とは連まない主義なんだ。それに、お前が居れば十分だろ」


男「そっか。じゃ、また何処かでな」


傭兵「せいぜい旅で苦労するんだな。女ってのは面倒くせぇぞ」


女「え?あたしの事?」


男「そうか、気をつける」


傭兵「ちっ。じゃあな」スタスタ


女「あたしの事?ねぇねぇ?あたし?」


男「わからん。次はどこに行くとか決まってるのか?」


女「あ、えっと...このまま南東の方に水の都って所があるから行ってみようかなって」


男「水の都ね。りょーかい」



18: 2021/12/05(日) 19:02:59.62











~南の大陸中央部・道中~


女「ねぇねぇ、あなたの事もっと聞かせて?どうしてそんなに強いのとか」


男「アンタ質問ばっかりだな」


女「仲間の事は知りたいでしょ!こうやって絆が深まるの!」


男「なんだそれ。面倒だな」


女「あ!面倒って言った!言ったね!」


男「いや、今のは...」


男(傭兵の言った事はこう言う事か...?)


女「ちょっと!聞いてるの!」


男「あーはいはい」


女「はいはいって何よーー!」






~こうして、2人の旅は始まった






19: 2021/12/05(日) 19:05:18.20
特に先も考えずに見切り発車だから、俺達の旅は続く締めで
また何か書くか、続きか
読んでくれた人ありがとう

20: 2021/12/05(日) 19:11:16.46
おつおつ

引用元: 離島の最強は、勇者と共に