～翌日～

長門「バカテンポ試験は数時間後だ。皆、本番に備えて身体を暖めておくように」

長門「それから告知しておいた通り、試験が不合格だった者は……解体だ。心してくれ」

吹雪（結局、昨日は一回も成功しなかったけど……大丈夫かな、夕立ちゃん）ﾁﾗｯ

夕立「ぽ、ぽいぽい……ぽ、ぽい……すぽぽい……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

那珂「ポンポンスポポンバカテンポ♪　ポンポンスポポンポンスポンポンポ♪　サタデーナイトにまた会おう」

ﾋﾞｼｯ

響「ハラショー」

電「わー、上手なのですー」

那珂「でしょー？　ま、アイドルならこれぐらい楽勝だよー」

暁「単純なテンポだし、できて当たり前よ」

夕立「うっ……ぽいぽい……す、すぽぽい……ｸﾞｽﾝ」

雷「いつものレディーのたしなみってやつ？」

暁「そんなわけないでしょ！　バカテンポなんて全然優雅じゃないんだから！」

吹雪「あ、あの！　皆さん！　夕立ちゃんの練習を手伝ってください！」

神通「え？　練習って……バカテンポの？　もしかして、夕立ちゃん……」

那珂「バカテンポできないのー？」

夕立「で、できないっぽい？」

川内「なんで疑問形なのさ。ちょっとやってみなよ」

夕立「ぽいぽいすぽぽいぽいすぽいぽぽいぽいすぽぽい」

雷「こ、これは」

電「え、えっと、じょ、上手……なのですー？」

島風「いや、全然できてないねー」

夕立「……ぽいぃ」

吹雪「このままだと夕立ちゃん、解体されちゃう……」

暁「なんで『い』になっちゃうのよ。『い』じゃなくて『ん』なのに」

響「普段からぽいぽい言ってるから……その反動？」

那珂「ポン！　ポンだよ！　ポン！　せーの！」

夕立「ポン！」

川内「言えてるけど」

吹雪「夕立ちゃんだってポンは言えますよ。『味ポン』を『味ぽい』なんて言いませんし」

睦月「でも、リズムに合わせると……」

夕立「ぽいぽいすぽぽいぽい」

那珂「すとーっぷ！」

電「ぽいになっちゃったのですー」

夕立「ぽ、ぽいぽ、い……ぽいすぽぽい……ｸﾞｽﾝ、ぽいすぽい」ｼｸｼｸ

「がんばれー！」「夕立ちゃーん！」「ファイトー！」「泣かないでー」


高雄「どうかしたの？　ぽいぽい言っているみたいだけれど」

電「あ、えっと、夕立ちゃん……バカテンポがうまくいかなくて」

高雄「今日が本番なのに？」

愛宕「大変、手伝ってあげないと」

高雄「愛宕、お手本を見せてあげたら？」

愛宕「いいわよー。パンパンスパパンパンスパンパンパ♪」

吹雪「……え？　パン？」

夕立「『パ』なのー？」

睦月「あれ？　ポじゃないの……？」

暁「ちょ、ちょっとちょっと！　パンって！」

高雄「パンでしょう？」

愛宕「パンパカパーン！　って、パンだと思ってたんだけど……」

夕立「パ、パン？　パンパン？　パンパンっぽい～！？」

睦月「夕立ちゃんが混乱しちゃってるよ！」

那珂「ポンでしょ！？　実はパンなの！？　どっちぃ！？」

吹雪「ほ、本家を聞いて見ましょう」


アクセルホッパー『―――サタデーナイトにまた会おう』


雷「言われてみれば……パンにも聞こえる……？」

神通「たしかに……パン……かも？」

長門「時間だ。トップバッターは金剛」

金剛「イエース！　頑張るデース！」

吹雪「ええ！　ど、どうしよう！　始まっちゃったよ！」

金剛「ponponspooponponsponponpo♪　SaturdayNightにまた会いマショー♪」

長門「いかがでしたか？」

提督「……」ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｭ

長門「発音が良かった。今後も精進するように。合格」

金剛「ヘーイ！　やったネー！」

睦月「吹雪ちゃんどう？　パンだった？　ポンだった？」

吹雪「パ……うーん、ポ……？　わからないよー」

赤城「落ち着いて、吹雪さん」

吹雪「あ、赤城先輩！」

赤城「皆が判別できないなら、司令官だって同じはず。きっと重要なのはそこじゃない」

赤城「気持ちを込めて、バカテンポを歌えばいいの。その気持ちをきっと汲んでくれるはずよ」

吹雪「そ、そうですよね！　パもポも似たようなもんですよね！」

夕立「それを聞いて安心したっぽい」

睦月「夕立ちゃんは『パ』か『ポ』以前に『ん』と『い』の違いが大きい気が……」

夕立「一生懸命やれば、きっと大丈夫！　提督なら、わかってくれるっぽい！」

赤城「……でもさすがに、『ん』と『い』の違いは司令官も気にするんじゃないかしら」

夕立「ぽいー！　……やっぱり、無理っぽい……？」

吹雪「夕立ちゃん！　負けるとわかっていても戦わなければならないときがあるよ！」

睦月「当たって砕けよう？　応援してるから！」

夕立「砕けたくないー！」

長門「次、夕立！」

夕立「ぽい！」

長門「返事は『はい』だ」

夕立「はい！」

吹雪「頑張って！」

提督「……」

夕立「あわわわわ」ｶﾞｸｶﾞｸ

長門「では合図をしたら始めろ」

陸奥「……サタデーナイトに、おバカよ、集まれ……！」

夕立「……」

長門「……？　どうした？　始めろ」

夕立「パ！　……パ、パ……ポ……パ……ポパ、ポイ、パ」ｶﾞｸｶﾞｸ

陸奥「……？」

夕立「ぽ、パ……イ……パイ！」

提督「……！」

夕立「パイパイスパパイ！　パイスパイパイパ！」

長門「！？」

陸奥「！？」

提督「……」

吹雪「パ、パイになっちゃってるよ！」

睦月「夕立ちゃん……！」


夕立「パイパイスパパイ！　パイスパイパンポ！　ぽんぽんすぽぽん！」


吹雪「あ！」

睦月「ポンになった！」


夕立「ぽんすぽんぽいぽ！　ぽいぽいすぽぽい！　さ、サタデーナイトでまた会うっぽいぃ！」

提督「……」

夕立「はぁ……はぁ……」


吹雪「結局『ぽい』になっちゃった……」

夕立「……し、失格っぽい～？」ｶﾞｸｶﾞｸ

提督「……」

長門「……いかがでしたか？」


吹雪「これは……たぶん……」

睦月「か、解体……！？」

川内「だろうね……」

雷「ええっ！？」

電「か、可哀想なのです……」

提督「……」ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｭ

長門「……えっ、それはつまり……」

夕立「……っ！？」ﾋﾞｸｯ

提督「……」ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｭ

長門「…………夕立」

夕立「ぽ、ぽい……」ｼｭﾝ

提督「……」

長門「可愛いから合格」

夕立「……え？」

提督「……」

長門「可愛かったから合格、だそうだ」

夕立「ぽいいいいいいいいいいいい！！！！」ﾊﾞﾝｻﾞｰｲ


吹雪（司令……実は深い考えなんて無いのかもしれないなぁ……）

～完～

おつおつ