1: 2021/12/06(月) 22:40:22.67
千鶴(母親)「赤ずきん、おばあちゃんのところまでお見舞いに行って欲しいのだけど」

育(赤ずきん)「うん、分かった! わたしに任せて!」

千鶴「ふふっ、頼もしいのね。じゃあこれを持って行ってあげて」トンッ

育「これは……『当日限定スパークドリンク30』?」

千鶴「消費期限が早い物から使い切りませんと、もったいないですわ」

育(やりくり上手! お母さん凄い!)



2: 2021/12/06(月) 22:41:24.70
育「~~~♪」テクテク

響(狼)「うぅ……元気が出ないぞー……。今のままだと人間を食べる力も湧かない……」

育「あっ! あんなところに行き倒れてる狼さんが居る!」

育「大丈夫? 狼さん」

響「んぐぅ……あんまり大丈夫ではないぞ……」

育「大変! 狼さんが元気じゃなくなってる……。こんな時は……」

育「スパークドリンクの出番! はい狼さん、これを飲んで元気を出して!」

3: 2021/12/06(月) 22:43:27.30
響「ゴクッゴクッ……。おぉ! すっごい元気が溢れて来たぞ!」

育「4本持ってて良かったぁ。まだあるからお土産は大丈夫だね」

響「自分、こんなに優しい人間を食べようと思ってたなんて……うぅっ」

育「えぇっ!? 狼さんは人間を食べようとしていたのっ!?」

響「いや!? もう自分は人間を食べたりしないぞ! 果物とか野菜とかいっぱい食べるようにする!」

育「うんうん、野菜をちゃんと食べるのは大事! 良い子良い子~」

響「えへへっ……。そうだ! お礼に自分も付いていくぞ!」

育「ほんとに? ありがとう、狼さん!」

4: 2021/12/06(月) 22:46:23.94
のり子(猟師)「くぅ……。4日前から何も食べてない……」

のり子「猟銃も売っ払って食費にしちゃったし、もう罠とかでウサギ捕まえて食うしかないかな……あ、でも限界……」

のり子「もう……ダメだ……」バタッ

のり子「……あれ、こんなところに焼肉が落ちてるぞ~。うへへ、緑色の焼肉なんてあるんだなぁ」モグモグ

育「りんご美味しいね、狼さん」シャリシャリ

響「そうだな! 赤ずきんに喜んでもらえて嬉しいぞ! って何だあれ?」

育「あっ! あんなところに雑草を食べてる猟師さんが居る!」

育「大丈夫? 猟師さん」タッタッタ

のり子「……ん? 女の子? あ、あまり大丈夫ではないかな。お腹減って喉も乾いて限界かも……」

育「それは大変! こんな時はやっぱりスパークドリンクの出番! はい、猟師さんこれ飲んで!」

響(手ぶらなのになんで猟師って分かったんだ?)

5: 2021/12/06(月) 22:47:14.51
のり子「ゴクッゴクッ……っ! 凄い! 一気にやる気が満ち溢れて来たっ!」

響「お腹空いてるんだろ? ほら、このりんごも食べていいぞー」

のり子「ありがとう狼さん! ……美味い!」シャリシャリ

のり子「まさか少女と狼に助けられることになるなんて、君たちは命の恩人だよ!」

響「そこまで言ってもらえると、なんだか照れちゃうなー」

のり子「今まで動物を狩って悪かった。これからは動物を愛でまくる人間になるよっ!」

育「わぁ! それはとってもいいことだねっ!」

響「自分もこれで狩られなくて安心さー」

のり子「お礼に私も付いていくよ。森の中は危ないからね」

育「ありがとう、猟師さん!」

6: 2021/12/06(月) 22:48:40.84
紬(?)「……」

紬(?)「……」

紬(ハサミ)「あ、私はハサミです」

紬「……」

のり子「ね、ねぇ赤ずきん。あそこに直立不動の人間が居るんだけど……」

響「な、なんでこんな森の中で突っ立って居るんだ……? 自分、なんか怖いぞ……」

育「違うよっ二人とも! あそこに居るのはハサミだよっ!」

のり子「ハ、ハサミ?」

育「コホン……。あっ! あんなところに動けずにいるハサミさんが居る!」

響(そのリアクション、テンプレなのか……)

7: 2021/12/06(月) 22:49:42.80
紬「ご指摘の通り、私はハサミ。しかし、今はエネルギーが足りずに動けずにいます」

育「エネルギー?」

紬「はい。私みたいな人型ハサミには、動力となる液体が必要なのです」

響「というかどう見ても人間の女の子なんだけど……」

紬「人間ではありません。ハサミです」キッパリ

響「あっはい」

育「液体……? えーと、このスパークドリンクで大丈夫かな?」

紬「おそらく大丈夫だと思います」

のり子「大丈夫なのかな」

育「それじゃあはい、ハサミさん、これ飲んで!」

8: 2021/12/06(月) 22:54:02.90
紬「ゴクッゴクッ……。こ、これは……」

響「どうなるんだ……?」ドキドキ

紬「完全回復です。可愛らしい女の子、あなたは恩人です。私で良ければ力になりましょう」

育「ありがとう! ハサミさんはどんなことが出来るの?」

紬「私はハサミなので、紙を切ることから肉食動物のお腹を割くことまで可能です」

響「怖い怖い! 自分を見ながらそんなこと言わないで欲しいぞ!」

紬「そうですか、失礼しました。それならば何を切りましょうか? 物質はもちろん、概念だって切ることも可能です」

のり子「いきなり中二バトルものの能力みたいなこと言い出したんだけど」

育「切るのは今は大丈夫! それより、お友達になって欲しいな!」

紬「お友達……! なんだか素敵な響きですね。よろしくお願いします」

育「うんっ! よろしくねっ!」エヘヘッ

9: 2021/12/06(月) 22:55:02.15
育「おばあちゃんの家に着いた!」

響「今更だけど、おばあちゃんが何でこんな森の中に1人で住んでいるんだ?」

のり子「気にしたら負けだと思う」

育「おばあちゃーん、おじゃましまーす」

ガチャ

紬「赤ずきんのおばあさんらしき人影はありませんね

育「おばあちゃん……? あれ、ベッドの中に居るの?」

???「……」モゾモゾ

響「みたいだな、シーツを被って動いてるぞ」

10: 2021/12/06(月) 22:56:06.46
育「おばあちゃん、お友達と一緒にお見舞いに来たよ」

???「ありがとうね、赤ずきん」

育「……?」

響「なんかおばあちゃんの声、少女みたいな声がしたぞ?」

育「おばあちゃん? おばあちゃんはどうしてそんなに若い声なの?」

???「それはね……」

桃子(おばあちゃん)「おばあちゃんが若返ったからだよっ!」

育「えぇっ!!」

響&のり子「ええええっ~~~~!!」

紬「……え~」

紬(とりあえず驚いてみた)

11: 2021/12/06(月) 22:56:53.71
育「わあっ! 凄い! 昔のおばあちゃんの写真とそっくり!」

桃子「そっくりも何も正真正銘のおばあちゃんだからね、ふふん」

のり子「えっと……なんで若返っちゃったんですか?」

桃子「分かんない。朝起きて気が付いたら昔の姿になってたの」

紬「人間は若返ることもあるんですね、驚きました」

響「自分もびっくりしたさー」

のり子「いやいや、聞いたことないよ」

育「とりあえず、お見舞いのスパークドリンクを……って、あっ! もうドリンクが無くなっちゃってた!」

響「あれ? もう1本無かったっけ?」

紬「すみません、さっきもう一本拝借しました」

響「お前かーい!」

12: 2021/12/06(月) 22:57:32.87
育「もう、ハサミさんっ! めっ! だよっ!」

紬「はい……すみません」シュン

桃子「大丈夫だから。おばあちゃんは今スタミナ満タンだからね」ドヤッ

育「そっかぁ……。じゃあ他にしてほしい事とか無い?」

桃子「う~ん……強いて言うのなら、せっかく赤ずきんと同じくらいになったんだし、友達になりたいけど……」

育「うん! 友達になろうよ!」

桃子「でも、私はこの子のおばあちゃんでもあるし……」

のり子「なるほど、葛藤しているんだね」

育「えー! 私は気にしないのに……」

桃子「桃子は大人なんだから気にするものなのっ!」

のり子「若返った反動で一人称もだいぶ若返ったね」

13: 2021/12/06(月) 23:00:16.82
紬「2本もドリンクを頂いた償いではないですが、血縁関係というしがらみ、私が切って差し上げましょうか?」

響「このハサミ、とんでもないこと言い出したぞ」

のり子「そういや概念を切ることが出来るって言ってたね」

桃子「そんなことが出来るの? じゃあお願いしていい?」

のり子「おばあちゃん軽いね!?」

紬「分かりました……てぇいっ!」ブンッ

響「うわっ! 単に手刀を切っただけにしか見えないぞっ!」

14: 2021/12/06(月) 23:00:58.93
紬「これであなたたちは祖母と孫の関係ではなく、同年代の友達同士になります」

桃子「なんだかしがらみが消え去った気分……!」

響&のり子「「マジで!?」」

育「わぁい! ありがとうハサミさん!」

紬「ふふっ、赤ずきんに喜んでもらえて光栄です」

桃子「赤ずきん。桃子と仲良くしてくれる?」

育「うん! 桃子ちゃん、よろしくねっ!」

15: 2021/12/06(月) 23:04:03.37
育「お母さん、ただいまー」

千鶴「あら、おかえりなさい赤ずきん。お使いは大丈夫でしたの?」

育「うん! ちゃんと出来たよ! あとね、友達が4人も出来たんだっ!」

千鶴「それは凄いわね。いったいどんな子なの?」

育「えっと、狼さんと元猟師さんとハサミさんと元おばあちゃんだよっ!」

千鶴「それはまた、面白い巡り合わせですのね。そして元おばあちゃんというのは……」

桃子「桃子のことだね」ズイッ

千鶴「あら、お母さん。小っちゃくなってしまったんですのね。ふふっ、可愛らしい」

響「なんであっさり適応してるんだ」

16: 2021/12/06(月) 23:05:06.34
千鶴「ただ、流石にお母さんが子供になっちゃったというのは、妙な気分ですわね」

紬「てぇい!」ブンッ

千鶴「なんだかしがらみが消え去った気分ですわ……!」

響「自分、もう驚かないぞ……」

のり子「ツッコんだら負けってやつだね」

育「よーし! 皆でお菓子食べよー!」

こうして赤ずきんは、4人の新たな友達をお家に招いて、素敵なお茶会を楽しみましたとさ。

良かったね、赤ずきん。

めでたしめでたし。

17: 2021/12/06(月) 23:07:59.76
小鳥「――っていう感じの演劇なんですけど、今度の公演でどうでしょう?」

P「童話の作者に土下座してください」

小鳥「そんなにヒドイですかっ!?」

おしまい

18: 2021/12/06(月) 23:14:27.30
終わりです。

ひなたの赤ずきんのカードも可愛かったけど育も似合いそう

19: 2021/12/06(月) 23:32:17.16
おつー

引用元: 【ミリシタ】ミリオン童話劇場~赤ずきん~