3: 2021/11/16(火) 18:35:12.40
せつ菜 「侑さんは音楽科とはいえ、あのテストの成績じゃ留年してしまいますよ?」

侑 「……なんでせつ菜ちゃんが私の成績を知ってるの?」

せつ菜 「……」

侑 「……」

せつ菜 「とりあえず勉強してください侑さん!!!!」

侑 「大声で全てを誤魔化せるわけじゃないよ? なに生徒会長権限でも使ったの?」

4: 2021/11/16(火) 18:36:55.68
歩夢 「でも侑ちゃん、本当に勉強しないで留年しちゃったら大変だよ! もうちょっとだけ頑張ろう?」

侑 「別に良いもん! だって私が留年しても、歩夢も一緒に留年してくれるから一人じゃないし!!」

歩夢 「……えっ?」

侑 「ね!」

歩夢 「う、うん」

5: 2021/11/16(火) 18:39:07.96
その日、上原歩夢は一日中悩んだ。
就寝するその毛布の中でもずっと考えていた。
確かに侑ちゃんのことは大切だ。
でも、お金とか親のこととか考えると、いくら侑ちゃんのためとはいえ留年を自ら選ぶなんて普通できない。
だけど、それは本当に幼馴染と呼べるのだろうか?
この世界の辞書にしかない言葉として、『ラブライブ』と『幼馴染の誓い』というものがある。

6: 2021/11/16(火) 18:40:11.68
そして、幼馴染の誓い第743条には、常に幼馴染と同じ苦しみを選べ、とはっきりと明記されている。著者南ことりのありがたい言葉だ。
ならば、やはり私は侑ちゃんが留年したら、自分もそうするべきではないのだろうか。
でもでも、やっぱり留年なんてしたくない。
ヤダ!
もう一度同じ勉強もつらいし、色々と悩むことが増えてしまいそうだし。
上原歩夢は本当に悩んだ。悩んだ末、超現実逃避をすることを選んだのだ。

11: 2021/11/16(火) 18:48:43.74
せつ菜 「侑さん、本当に勉強しなければ大変なことになりますよ?」

侑 「青春に変えられないよ」

せつ菜 「それ言われちゃうと何とも言えなくなりますが……」

愛 「でもせっつーとかスクールアイドルと生徒会をやりながら、成績も良いよね」

侑 「それ言われちゃうと何とも言えなくなるね……」

12: 2021/11/16(火) 18:55:18.10
ガラッ

歩夢 「おはよう、侑ちゃん」

侑 「あ! 歩夢! 昨日ことなんだけど」

歩夢 「うん。留学のことだよね」

侑 「はい?」

歩夢 「手続きはもう済ませちゃったから、半年離れることになるけど、それでも侑ちゃんは大切な親友だからね」

侑 「留学???? 歩夢が????」

13: 2021/11/16(火) 18:56:43.33
上原歩夢は世界を回った。
留学なんて言葉は嘘で、実際は色んなところを旅したかったのだ。
ある日、海外で日本人と会った。関西弁のスピリチュアルな人だった。
その人が言うには、運命というものは用意されてるものであって、例えるならディナー。用意されたディナーに勝手に調味料を加えたり、焼いたり煮たりしてしまったら、大変失礼だろう。つまり運命も同様で、安易に一個人が変えてはいけないものなのである、と。

15: 2021/11/16(火) 19:00:46.33
しかし、さらにこうも付け加えた。でも周りの目も、道義(マナー)も全て無視する覚悟があって、それでもそのディナーに満足してないなら、足掻いてみるのもいいんやない? と。
上原歩夢は深々と彼女に感謝を告げながら、再び世界を回った。
世界のスクールアイドルも見て歩いたし、あるときはとある宗教の教祖に推薦されもした。しかし、彼女に欲はない。元々は現実逃避のためだったからだ。
迷いに迷った末、ようやく彼女はこの日本に帰ってきたのだ。

17: 2021/11/16(火) 19:05:32.77
歩夢 「……ただいま、みんな」

侑 「歩夢……!」

愛 「もうっ、勝手にいなくならないでよ歩夢……!」 ポロポロ

かすみ 「歩夢先輩がいないと張り合いがないんですよぉ」 ポロポロ

果林 「私は一ヶ月ぶりね。私がトイレに行こうと迷ったときにエジプトで会ったから」

エマ 「あのときは大変だったよね~」

しずく 「歩夢さん。行動力があるのはいいことですが、せめてもう少し考えてください」

彼方 「まさに寝る暇もなかったよ~」

璃奈 「発信機で居場所は分かってたとはいえとても心配だった」

19: 2021/11/16(火) 19:09:13.66
歩夢 「ごめんなさい、みんな。そして」

パチーーーーン

歩夢 「……」 ヒリヒリ

侑 「歩夢のバカっ!! 本当にバカなんだから!!」 ポロポロ

歩夢 「ごめんね、侑ちゃん、でも私はずっと侑ちゃんに会いたくてここに帰ってきたんだよ」

侑 「歩夢ぅ……」 ポロポロ

歩夢 「ほらおいで侑ちゃん、前みたいに抱きしめてあげる」 サッ

侑 「うわぁぁぁぁーーーーん歩夢ぅぅぅぅーー!」 タタタッ

21: 2021/11/16(火) 19:13:11.79
ガシッ

せつ菜 「侑さん?」

侑 「あ、せつ菜ちゃん……///」

歩夢 「は?」

せつ菜 「気持ちは分かりますが、ええっと、あの、ハグは私以外にはしないでほしいというか……///」

侑 「あはは、そうだね、ごめんねせつ菜ちゃん。私たち恋人だもんね」

歩夢 「は???」

24: 2021/11/16(火) 19:15:31.69
愛 「そりゃあ幼馴染置いていって一人旅立っちゃうんだもん」

かすみ 「せつ菜先輩が励ましてくれたから、先輩は今も元気でいれてたんです」

果林 「素直にお祝いしてあげなさい、歩夢。恋の成就はめでたいことなんだから」

しずく 「タイトルがゆうせつでしたから伏線はありましたよ歩夢さん!!」

歩夢 「……」

歩夢 「…」

歩夢 「」 チーン

せつ菜 「歩夢さん!?」

侑 「大丈夫歩夢っ!?」

26: 2021/11/16(火) 19:27:20.29
そこから上原歩夢は拗らした。
これからの上原歩夢は、文豪歩夢と呼んでくれ。
そう芥川を逆さに読みながら、メガネと枝を咥えて彼女は語った。
まるで中二病な彼女に、可愛い後輩たちは目を逸らすようになった。そして上原歩夢は、そんな後輩たちが哀れに見えて仕方なかったのである。
そして、侑ちゃんは。

28: 2021/11/16(火) 19:30:27.60
侑 「おはよう歩夢!」

歩夢 「……」

侑 「あ、芥川歩夢だったけ?」

歩夢 「……」

侑 「太宰歩夢だったかな、もしかして三島歩夢?」

歩夢 「……」

侑 「夏目歩夢?」

歩夢 「……なんだね、侑ちゃん。そう猫は言った」

侑 「猫は言ってないよ」

29: 2021/11/16(火) 19:40:39.13
歩夢 「学び舎に行く前に、寄りたい場所がある」

侑 「また墓?」

歩夢 「……こころ」

侑 「それは小説であって歩夢ではないでしょ? 毎度知らない人のを見に行くのも申し訳なくない?」

歩夢 「……」

侑 「……それは小説であって夏目歩夢ではないでしょ? 毎度知らない人のを見に行くのも申し訳なくない?」

歩夢 「戯言でも言っておけ。そして百年が経ち美しい花が咲いたのだ」

侑 「会話して一分しか経ってないよ」

32: 2021/11/16(火) 20:00:13.67
上原歩夢は自分探しの旅をした、あの日々のことを思い出していた。
そういえば、中華街で一人の美しい金髪の女性と会った日のことである。彼女はハラショーという謎の呪文を喋っては、私に料理を奢ってくれた。
そして彼女は言うのだ。自分探しというのは、決して無駄な時間ではないが、し続けるものでもない、と。

33: 2021/11/16(火) 20:03:09.10
さらに言う。自分を見つけるためには、他人が必要なのだ、なぜなら他人と比べる比較こそが自分を照らし合わせる秘訣だから、と。
だからいい加減自分探しはやめて、自分の大切な人がいる場所に戻れ、と。
その言葉を信じて私は帰ってきたのに、結末があれだ。名を口にするのも恐ろしい―ユウキセツナ―。しかし、そんな人を愛してしまったのは誰でもない高咲侑であった。

34: 2021/11/16(火) 20:06:12.84
歩夢 「……」 ブツブツ

かすみ 「今日も歩夢先輩、独り言言ってますね……」

愛 「うーん、やっぱりなんとかした方が良いのかなぁ」

彼方 「でもああいう思春期特有のものは、時期を待つしかないと思うよ~」

また、理解者になれなかった人たちが語ってる。
私はノートに悲しげに書いたストーリーの方がよっぽどこの世界を如実に映し出してると思う。しかし、架空の世界と人々は笑うからどうしようもない。
実際世界の全体図を高くから見ることのできない私たちにとって、世界の姿というのはイメージでしかない。例えばテレビ、例えば本、そんなものによって共有されたイメージでしかないのだ。なのに、その世界そのものは架空とは思わず、いつも私の語ることは偽だと考えている。実に空虚な人生じゃあありゃあせんか。

36: 2021/11/16(火) 20:09:30.15
しずく 「また地の文ですか」

璃奈 「地の文が多いssは名作」

愛 「歩夢は地の文さえすれば何とでもなると思ってる節があるからねぇ」

もしかして私の心の声が聞こえてるのであろうか?
いや、それは到底あり得ないことだろう。かつて日本のとある街のある和菓子屋に行ったときのことだ。一人の女性が私に語ってくれた。
気持ちというのは、言葉にしなきゃ届かないんだ、と。だからこそ、伝えたいことは口にしなきゃいけない、想いは願うだけじゃ足りないけど、願った分だけ強くなったその想いは、本気で届ければ伝わるから、と。
それはつまり逆に言えば、言わなきゃバレないということだ。私のこの気持ちの随筆を知られるわけがないのである。

37: 2021/11/16(火) 20:13:08.68
いやさっきから口にしてるし。
そう愛さんはつぶやいた。風で花が揺れて、桜が舞い散る季節を振り返ると、歩夢と出会ってからあっという間に時が経ったと思う。
でも、それでもまだ足りないんだ。それは歩夢が留学という名の旅行に行ってしまったからだ。愛さんは君をもっと知りたい、だから素直になってほしいと思う。

歩夢 (……! 私の心の声に!?)

愛 「歯には歯を、地の文には地の文を、だね!」

38: 2021/11/16(火) 20:16:19.02
しかし、私の気持ちは誰にも分からないと思ってしまった。
あれは山のてっぺんに登ったときのことだ。例えるなr
愛さんは山って言えば、山のアイスがすごい好きなんだよ。あれって酸素が足りてなくてなんでも美味く感じるから、なのかな?

かすみ 「地の文に地の文を重ねた!?」

しずく 「出ました!! 愛さんの地の文キャンセルです……!!」 ゾクゾク

歩夢 「やるね、愛ちゃん」

愛 「自分が成長したと思ったとき、周りも成長してるもんさ」

40: 2021/11/16(火) 20:19:27.56
ガラッ

歩夢・愛 ((誰かが入ってくる!?))

せつ菜 「歩夢さん!!!! おはようございます!!!!」 ペカー

歩夢 「……名を呼んではいけないあの人」

せつ菜 「おおっ!!!! なんかそれ漫画みたいでかっこいいです!!!! でも私の名前は優木せつ菜! 優木せつ菜ですよ!!!!」

かすみ 「名前連呼するし声は大きいしで選挙カーみたいですね……」

せつ菜 「事実私生徒会長ですからね。選挙は得意中の得意です!」

歩夢 「……」 ピリピリ

愛 「……」 ピリピリ

せつ菜 「……」 ペカー

42: 2021/11/16(火) 20:22:50.35
ガラッ

歩夢・愛 ((また誰かが入ってくる!?))

侑 「せつ菜ちゃーん! 今度の映画に行く日なんだけどー」

歩夢 「は?」

せつ菜 「ゆ、侑さん……/// その話は誰もいないところでするって言ったじゃないですか」

侑 「あ、そうだったね! デートってバレたくなかったからだよね!」

歩夢 「は???」

43: 2021/11/16(火) 20:26:08.46
しずく 「歩夢さんが病んでいた間に、また一歩二人の距離が近づいたみたいですね!」

彼方 「そこまで言ってやるな、しずくちゃん」

果林 「キャラに迷ってるうちに、人生に迷ってしまったみたいね」

歩夢 「……」

歩夢 「…」

歩夢 「」 チーン

せつ菜 「歩夢さん!?」

侑 「歩夢ーーー!?」






45: 2021/11/16(火) 20:29:50.08
侑 「勉強?」

せつ菜 「そうです!! 捗っていますか?」

侑 「うん、頑張ってるよ」

せつ菜 「それにしても音楽と医療、方向性の違う二つの学び事を同時にこなすなんて、やっぱり侑さんはすごいです!!」

侑 「あはは、教えてくれる人が良いんだよ。医者なんだけどピアノも弾ける人で、すごく分かりやすく教えてくれるんだ!」

せつ菜 「とても良い先生で良かったです!!」

侑 「……」

せつ菜 「……」

侑 「……そろそろ時間だね、行こうかせつ菜ちゃん」

せつ菜 「……はい」






46: 2021/11/16(火) 20:32:53.70
ピッ

ピッ

ピッ

歩夢 「……」 スピー スピー

菜々 「まさか私たちのデートプランを聞いてショックでそのまま……」

侑 「眠ったままなんてね、信じられないよ……」

菜々 「だけど歩夢さん、いつも笑ってるんです。まるですぐ目を覚まして喋り出すくらいに、笑顔なんですよ……」

侑 「ふふ、もし目を覚ましたら歩夢は最初なんて言うかな」

菜々 「きっと『侑ちゃん』ですよ」

侑 「あはは、多分そうだよね」

47: 2021/11/16(火) 20:36:10.02
菜々 「……」

侑 「……」

菜々 「今日は歩夢さんがハマっていた芥川さんの小説を持ってきましたよ。ここに置いておきますね」 ストッ

侑 「そういえば歩夢、あのときいろんな本にハマってたよね」

歩夢 「……」 スピー スピー

侑 「歩夢。私、頑張ってるから。いつか、歩夢を起こせるように。そして、起きた歩夢に最高のピアノを聴かせられるように……勉強も夢も頑張ってるから」

48: 2021/11/16(火) 20:39:55.17
侑 (……返事がないときは呼び方が間違ってるときだったけな)

侑 「夏目歩夢。起きて」

菜々 「侑さん……」

侑 「起きてよ歩夢っ!!」 ポロポロ

菜々 「侑さん! 病院内では静かにしないと……うぅ、侑さん……歩夢さん……」 ポロポロ

侑 「歩夢! 三島歩夢! 太宰歩夢! 上原歩夢! 宮下歩夢! 桜坂歩夢!」

菜々 「そんな思いつく限り名前を変えたところで、歩夢さんは……」

侑 「高咲歩夢っ!!」

歩夢 「」 ピクッ

49: 2021/11/16(火) 20:43:02.38
歩夢 「侑ちゃん……?」

侑 「歩夢!? 歩夢が目を覚ましたよ菜々ちゃん!!」

菜々 「歩夢さん!? 本当に歩夢さん起きたんですか!? 高咲歩夢で起きるなんて……がめついというか諦めが悪いというか……。でもそんなことどうでも良い、良かった……本当に良かったです……」 ポロポロ

歩夢 「会いたかったよ、侑ちゃん、―ユウキセツナ―」

菜々 「まだ私は名を呼んではいけないあの人扱いなのですね……」

侑 「歩夢っ! 歩夢!」 ポロポロ

50: 2021/11/16(火) 20:46:13.20
上原歩夢はようやく目を覚ました。
そこには懐かしの愛しいあの人の顔があった。
でも、あの人はもう違う人の心の中。もう一度私は目を閉じてもいいと思ってしまうほどに、絶望していた。
しかし、そんな私を見て神は奇跡をくれたのだ。
大好きだった歩夢が目を覚ますと同時に、高咲侑の頭の中には無数の思い出が蘇った。それは、愛とも呼べる長い長い歴史だったのである。

51: 2021/11/16(火) 20:50:34.29
菜々 「地の文でデタラメ言って事実を改変しようとしてませんか!?」

侑 「歩夢ぅぅぅぅーーーー! 大好きだよぉぉぉーーー!」 ダキッ

歩夢 「やったね」

菜々 「なっ!? 侑さん!? 侑さんが好きなのは私ですよね!?」

歩夢 「残念だけど幼馴染が勝つんだよ」

侑 「ヒトリダケナンテエラベナイヨーーーー!!」

52: 2021/11/16(火) 20:58:34.58
こうして、上原歩夢は侑と結ばれた。
もちろん、侑と菜々も結ばれているので、三人で暮らしていくことにしたのである。
最初は、侑の取り合いばかりではあったが、三人で暮らしていくうちにそれぞれ大切な気持ちが芽生え、今では三人とも仲良く幸せに過ごしている。
同好会のみんなは、この三人の恋の行方が無事叶ったのを見届けて、心から安心し祝福した。






53: 2021/11/16(火) 21:04:27.49
歩夢 「……せつ菜ちゃんの小説、読んじゃったんだけど」

せつ菜 「……///」 カァァ

せつ菜 (歩夢さんが好きなのにどうしてもゆうぽむじゃないと書けない病が発症してしまって、無理矢理三人で結ばれたことにしたとんでもない小説がまさかの歩夢さんに見つかるなんて……)

歩夢 「あのね……?」

せつ菜 (分かってます。侑さんと歩夢さんは、本当に強い想いで結ばれています。私も歩夢さんが好きですが、私が入る隙など……)

歩夢 「私はせつ菜ちゃんも好きだよ……?///」

せつ菜 「えっ!?///」

おわり

55: 2021/11/16(火) 21:12:00.59
ありがとうございました!
ゆうぽむせつです。地の文バトルです。
せつ菜ちゃんは歩夢が好きだけど、カップリングはゆうぽむが好きという設定。

前作 海未 「今日もssを書きましょう!」 にこ 「AIで書けるらしいわよ」

前々作 かすみ 「最近コッペパンが怖い」


引用元: 侑 「勉強?」 せつ菜 「そうです!!」