1: 2010/08/11(水) 22:48:44.93
梓「えっ?」

ギュッ

そう言うと唯は梓に抱きついた

パッ

すぐに唯が梓から離れる

唯「ばいばい、あずにゃん」ニコッ

梓「ゆ、唯先輩待ってください! まだ一緒にいたいです! みんなで一緒にバンドやりたいです! 唯先輩!」

―――

ガバッ

梓「はぁはぁ……夢か……」


3: 2010/08/11(水) 22:55:41.36
ジャー ザブサブ

梓「ぷぅっ……」

ふきふき

梓「はぁ……」

梓母「あずさー早くご飯食べちゃいなさいー」

梓「はーいー、今いくー」

5: 2010/08/11(水) 22:59:10.56
梓「ぱくぱく、もぐもぐ」

梓父「梓、最近バンドの方はどうだ?」

梓「……ん、先輩達が受験だから最近はあまり活動できてないんだ」

梓父「そうか……知り合いのバンドでギターを募集してるんだが梓どうだ?」

梓「私は先輩達と今のバンドでやりたいから……」

梓父「そうか」

梓母「ほらほら、二人とも早く食べてちょうだい」

梓「うん」

6: 2010/08/11(水) 23:01:40.57
ぷちぷち ぬぎぬぎ

ばさっ

梓「はぁ……」

しゅるっ

梓「……」

ぷちぷち

梓「りぼんりぼん」

しゅっ きゅっ

梓「なんで私だけ一年遅く生まれたんだろ……はぁ……」

7: 2010/08/11(水) 23:12:12.95
―学校―

「あずゃんっ!」

だきっ

梓が廊下を歩いていると、後ろからいきなり抱きつかれた

梓「唯先輩! 離れてください!」

唯「そんなこと言わずに~」すりすり

梓「み、みんな見てますから!」

唯「誰も見てなかったらいいのかな?」

梓「だ、だめ……かな?」

律「おい、今なんで一瞬考えたんだ」

梓「あ、律先輩」


8: 2010/08/11(水) 23:12:44.43
律「もしかして梓、お前……目覚めたのか?」

梓「ち、違いますよっ!」

11: 2010/08/11(水) 23:44:05.84
誰か続き書いてよ

14: 2010/08/12(木) 00:02:39.78
唯「目覚めるって何に~?」

梓「唯先輩はわからなくていいです」

律「あらあら~、梓ちゃんは大人ですこと」

澪「いい加減からかうのはやめろ」

ゴンッ

律「いった~~、冗談だよみぉ~」

梓「あれ?澪先輩にムギ先輩も。どうしたんですか?」

15: 2010/08/12(木) 00:31:27.59
澪「うん、今日は久しぶりに演奏しようかって話になってな」

律「最近頭使ってばっかでさー。久々にドラム叩いてスカッとしたいなあって」

澪「お前はサボってばかりだろ!」

紬「まあまあ。それに、学園祭が終わってから梓ちゃんとなかなか会えなかったからね」

唯「あずにゃん寂しかったよね?よしよ~し」

スリスリナデナデ

唯が梓に頬擦りし、頭を撫でる

梓「そ、そんなことないです!寧ろ前より練習がはかどるようになったぐらいです!寂しくなんか……」

梓は強気な態度を見せようとするも次第に体からダランと力が抜けてしまった

久しぶりに感じたこのぬくもり
この香り
この柔らかさ

2年近く毎日のように抱きつかれていたおかげですっかり免疫ができていたと思っていた梓だが

すっかり入部当初の梓に戻ってしまったようだ

梓(ああ……どうしてだろ。ずっとこうしていたい)

17: 2010/08/12(木) 00:46:59.00
律「というわけだから放課後な!」

紬「じゃあね、梓ちゃん」
唯「あずにゃんまたね~」
パッ

梓「あ……」

唯が体を離し身を翻した

途端に梓は夢から覚める

梓「はい、放課後にまた……」

梓は立ち去る4人の背中に弱々しく手を振った

まるでこれが今生の別れといわんばかりに

純「梓ー、何やってんのー?授業始まるよー」

梓「あ、うん。今行くー!」

23: 2010/08/12(木) 01:01:16.65
―放課後、部室―

唯「それでね、そこで姫子ちゃんがー」

律「そりゃ唯が悪いんだろ~。お!このお菓子うまいな!さっすがムギ!いつもサンキューな!」

紬「いえいえ~。たくさんあるからどんどん食べてね」

澪「…なあ」

唯「この前うちでまた和ちゃんがー」

律「あはは。唯はバカだなあ」

紬「和ちゃんもかわいいところあるのね」

澪「……なあ」

律「聡の奴ゲーム全然うまくならないから張り合いがなくってさあ」

澪「なあっ!」

24: 2010/08/12(木) 01:19:18.42
律「お?どうした~澪ぉ?」

紬「おかわりならあるわよ~」

澪「あ、ありがとうムギ。って違う!何でまたのんびりお茶してるんだ!演奏しに来たんだろ!」

いつも通りのぐだぐだティータイムになってきた所で澪が一喝した

律「えー、いいじゃん。久しぶりなんだしさ。受験生には息抜きが必要だろー」

澪「そんなこと言ってずっと休むつもりだろ。今までだってそうだったじゃないか。ほら、梓も言ってやれ。このサボリ魔に…」

梓「……」

ズズッ

澪「梓?」

梓「えっ?何ですか、澪先輩?」

紬「梓ちゃん、大丈夫?ずっとぼーっとしてたけど」
梓「あ、大丈夫です。ムギ先輩、このお茶おいしいですね。おかわり頂けますか?」

28: 2010/08/12(木) 01:36:26.58
澪「あのー、梓?練習はいいのか」

梓「へっ!?あ、そうです。練習です!唯先輩いつまでダラダラしてるんですか。練習しますよ!」

唯「え~、もうちょっとだけぇ~」

梓「全くシャキッとしてください。そんなんじゃ受験も失敗しちゃいますよ」

唯「うぅ…あずにゃんがいじめる。ハッ!そうだ!!留年すればあずにゃんや憂と同じ学年になれるよ!」
梓「バカなこと言ってないでほら、ギター持ってください。律先輩もお菓子食べてないで」

律「梓だってさっきまでのんびりお茶してたくせに~」

梓「そ、それはせっかく用意してくれたムギ先輩に悪いと思って……」

実際は違った

本当はこの五人で過ごす放課後が懐かしくて浸っていたのだ

澪「いいから早く始めるぞ」

30: 2010/08/12(木) 01:57:35.74
ジャ-ンジャ-ンジャ---ン


紬「うん!みんなよく合ってたね」

澪「ああ。なかなかだ!」
律「ふぅ。久々の演奏は気持ちいいなぁ。何かこう頭がスッキリするよ」

梓「そんなこと言って、勉強した内容を頭からふっ飛ばさないでくださいよ」

律「な~か~の~。ちょっとは受験生をねぎらいやがれ」

グリグリ

梓「あはっ、痛っ。やめてください」

唯「澪ちゃんせんせー。田井中さんが中野さんをいじめてまーす」

律「な!おい、澪やめっ、アァン…」

紬「まあまあまあまあ」

ワ-ワ-キャッキャッゴンッニャ-ウフフ

いつも通りの時間だった

これが放課後ティータイムだった

31: 2010/08/12(木) 02:22:46.61
―帰り道―

梓「澪先輩、ムギ先輩、律先輩、失礼します」

澪「またな、唯、梓。また今度一緒に演奏しような」
律「ああ、ムギのお茶が恋しいからまた今度…って冗談冗談」

紬「じゃあね。梓ちゃん、できる限り時間を作って部室に顔を出すからね」

唯「みんなバイバーイ。また明日ー」


家が同じ方向の唯と梓は並んで歩いていた

唯「いやー、今日はうまくいったよぉ~。ギー太もよくがんばったね」

梓「唯先輩にしてはミスが少なかったですけどどうしたんですか?もしかして練習してたとか」

唯「『唯先輩にしては』ってあずにゃんひどい…。今日演奏しようって決めた時からがんばって練習したのに……」

梓「勉強はどうしたんですか…。憂は唯先輩は毎日がんばってるって言ってたけどそうでもなかったみたいですね」

唯「うぅ…あずにゃぁん。久しぶりなんだからもっと優しくしてよ」

「久しぶり」

そう言われて唯とこうして二人で下校するのは久しぶりであることに梓は気付き

32: 2010/08/12(木) 02:42:40.67

それを自覚した途端梓はまた黙り込んでしまった

唯「あずにゃん?」

唯に声を掛けられ梓は顔を上げた

急に黙った梓を不思議に思ったのか、唯の顔からはいつもの笑顔が消えていた

梓(唯先輩……)

不安がらせてはいけないと無理やり言葉を捻り出そうとするも口は開かない

唯「ねぇ、あずにゃん。あそこ行かない?」

沈黙を破ったのは唯だった

梓「……あそこ?あそこってどこです?」

唯「いいからいいから。ほら、行こっ!」

梓「ちょ、ちょっと唯先輩!」

唯は半ば強引に梓の手を引っ張った

33: 2010/08/12(木) 02:52:36.23
―河原―

梓「ここって…」

唯「そう!ゆいあずのふるさとだよ!」

梓「ふるさとって…」

梓は呆れながらも懐かしく思っていた

ここはかつて演芸大会に向けて二人で練習した河原だった

唯「まあ座りんさい」

唯がしゃがみこみ自分の隣をポンポン叩く

梓「は、はい」

35: 2010/08/12(木) 03:10:02.89
唯「それでその時のりっちゃんがおかしくてさぁ」

梓「律先輩らしいですね。想像しただけで吹き出しそうです。プッ」

唯「あー、駄目だよあずにゃん。先輩は敬わなきゃ!」フンス

梓「唯先輩や律先輩はもっと先輩らしくしてください。下手したら来年私と同級生ですよ」

唯「いいじゃんいいじゃん。あずにゃんと同じクラスになったらたのしそーだし。……ねぇ、唯って呼んでみて?」

梓「!や、やめてください!恥ずかしい」

唯「えぇ~何でぇ?」

梓「何ででもです!」


――――――――――――――


唯「あはは。やっといつものあずにゃんに戻ったね」

36: 2010/08/12(木) 03:28:23.14
梓「え?」

唯「いやー、今日のあずにゃん何かいつもと違うなあって思ってたんだ。うーん、そういえば今日だけじゃなくて最近ずっと元気なかったかも」

穏やかな調子で話す唯の横顔を梓はじっと見つめた

こんな唯の顔を見たのは今回が初めてではなかった

抜けているようでいて人一倍自分のことを思ってくれていることを梓はわかっていた

梓「唯先輩はどうしてたまに先輩らしくなるんですか…」

唯「そりゃあ、一日中あずにゃんのこと考えてますから!」フンス

そう言って唯は梓の背後から抱きつく

梓は拒まない

唯「……ねぇあずにゃん」

梓「はい」

唯「言いたいことは言っていいんだよ」

37: 2010/08/12(木) 03:43:06.97
梓「私は思ったことが口に出るタイプですよ」

唯「そうかな?ちょっと一人でがんばり過ぎちゃう子に見えるよ」

梓は抱きしめてくる唯の腕に手を添える

唯「大丈夫だからね。みんなあずにゃんのことが大好きだから。澪ちゃんもりっちゃんもムギちゃんも憂も純ちゃんも」

梓「……唯先輩は?」





唯「大好きだよ。あずにゃんを好きな気持ちは誰にも負けない」

38: 2010/08/12(木) 04:14:49.68
梓「……」

唯「あはは……私らしくないかな?こんなこと言っちゃうのは?澪ちゃんや憂みたいに頼りになる子の方が私なんかより…」

梓「そんなこと…ウッ…ない…グスッ…です」

唯「あずにゃん?」

梓「唯…先輩、私離れたくありません。ずっとずっと……放課後ティータイムを続けたいです。唯先輩と……一緒にいたいです」

唯「……うん」

梓「父から他のバンドに参加しないかって誘われました。でも私は先輩達とじゃなきゃ嫌でしたから断ったんです」

唯「あずにゃんはもっとレベルの高い音楽をやりたいんじゃないの?私たちなんかよりも」

梓「…前の私ならそうだったかもしれません。でも今は違います。今日先輩達と過ごしてみてよくわかりました。
  例えだらしなくても私が『音楽』をできる場所は放課後ティータイムだけです」

唯「……うれしいな」

39: 2010/08/12(木) 04:40:28.77
既に日は沈みかけていた

ひんやりとした秋の風から身を護るように唯は梓を強く抱きしめた

唯「私たちちゃんと練習しなかったし後輩集められなかったし、いつかあずにゃんに愛想尽かされちゃうんじゃないかって思ってた。
  卒業したら縁が切れちゃうんじゃないかって不安だった。今日練習したのも私たちのことあずにゃんに忘れて欲しくなかったからなんだ。
  やっぱりちょっとグダグダになっちゃったけどね」

梓「そんなこと、ないです。私の方こそ、こんなに思ってもらえてうれしいです」

唯「えへへ~」

梓「ねぇ、唯先輩。私今日もうひとつ気付いたことがあるんです」

唯「なあに?」

梓は体の向きを変えて正面から唯を見据えた

紅潮気味の唯の顔が10㎝足らずの距離にあった。

40: 2010/08/12(木) 05:07:56.46
梓「私唯先輩がいなきゃ駄目みたいです」

唯「あずにゃんは駄目な子じゃないよぉ」

梓「いいえ、駄目なんです。唯先輩に抱きつかれなきゃ駄目だし、唯先輩を世話してなきゃ駄目。
  唯先輩が私の目が届く範囲にいなきゃ駄目」

唯「何だか私が駄目な子扱いされてるみたい…」

梓「いいじゃないですか。駄目な子同士手を取り合って、抱き合って生きていけばいいじゃないですか。そこのけそこのけです!」

唯「うーん、ちょっと複雑な気分。っていうかあずにゃん段々テンション上がってきたね」

梓「私たちにはしんみりした空気は似合わないですよ。あ、私のせいなのにすみません」

唯「ううん、謝らないで。そだねー、ゆいあずは明るくがモットーだからね。でももうちょっとだけこの空気を楽しみたかったなぁ」

梓「どうしてですか?」

唯「だって……あずにゃん、私たちの今の体勢をどう思う?」

42: 2010/08/12(木) 05:20:34.74
梓「…すごく……近いです」

唯「だよねー。せっかくのムチュチュ~のチャンスだったのにまたお預けだよ~」

唯はプイッと顔を逸らす

梓「……」

梓「……」フッ

梓「唯先輩」

唯「…ん?うみゅっ!?」

チュッ


梓「ふふっ、顔真っ赤ですよ唯先輩?」

唯「や、やってくれるねぇこの子は」

44: 2010/08/12(木) 05:47:30.44
梓「やってからいうのもなんですが、唯先輩はその…女の子同士は……」

唯「何言ってるの、あずにゃん。言ったでしょ私は誰よりもあずにゃんが好き。大好き。
  大好きな子と一緒になれてうれしくないはずないよ」

梓「辛い道だと思いますよ。後々ただの先輩、後輩だった頃の方が幸せだったと思うようになるかも」

唯「関係ないよ。だって“今”強く、深く愛してるから!」フンス

梓「あはは、唯先輩らしいですね。そうですね。思い出に浸るのは大人の贅沢です。
  私たちは私たちの道を行きましょう!」

唯「そうともー!私、絶対あずにゃんを幸せにするよ!」

ガバッ

梓「うわっ、唯先輩!いきなり飛び付かないで下さ……」



ムチュ---

45: 2010/08/12(木) 06:00:00.05
梓「もうっ。これだから唯先輩は困るんですよ」

唯「許せあずにゃん……これで最後だ」ニコッ

梓「……」

唯「あずにゃん?」

梓「…最後じゃなくていいです」

唯「いいの?」

梓「いいんです」

唯「ずっと一緒にいても?」

梓「いいんです」

唯「大好きだよ」

梓「私も大好きです」

唯「ありがとう」



お し ま い

46: 2010/08/12(木) 06:40:16.40
おまけ

唯が帰らず携帯も繋がらないことに不安を覚えた憂は軽音部メンバーに当たってみた
しかし梓も行方不明であることが発覚し、軽音部メンバー、憂、和、純、梓の両親は二人の行方を追った

―河原―

憂「ハァハァ、律さんここですか?」

律「しっ、今いいところだから!」憂「えっ」
紬「いいわぁ、二人とも」憂「えっ」
澪「いい詞が浮かんできたぞ」憂「えっ」
さわ子「何よ!見せつけちゃって!」憂「えっ」
和「唯をよろしくね、梓ちゃん」憂「えっ」
純「悔しくなんかないもん!」憂「えっ」
梓母「これがあの子の選んだ道なのね」憂「えっ」
梓父「ロッカーはいつだって“今”やんちゃ盛りだからしょうがない」憂「えっ」


憂の視線の先には―――


憂「寒く…ないのかな? 」


お し ま い

47: 2010/08/12(木) 06:43:04.64
ろくな支援もなしによく書き続けたな

49: 2010/08/12(木) 07:40:47.67
>そこのけそこのけです!

なんでだろう、ここむっちゃ好きだ

55: 2010/08/12(木) 11:05:41.11

引用元: 唯「許せあずにゃん……これで最後だ」ニコッ