4: 2013/07/02(火) 20:58:15.53
誕生日プレゼントは何がいいか聞かれたとき、つい言っちゃいました。

紬「私は唯ちゃんが欲しいの!」

大胆な告白ともとれるこの発言。
私が慌てて訂正しようとすると、唯ちゃんは照れたように笑って、こう言ってくれました。

唯「それじゃあムギちゃんの誕生日に私とデートだね」

そんなわけで、私の誕生日に唯ちゃんとデートすることになったんです。

7: 2013/07/02(火) 20:58:53.02
デートでどこに行きたいか聞かれた私は、水族館と答えました。
唯ちゃんとのデートならどこでも良かったんです。
でも、せっかく行くならデートっぽいところがいいなって。
だから水族館。

そして、当日。

唯「はい、ムギちゃん。これムギちゃんの分のチケットだよ」

紬「ありがとう。今お金を渡すね」

唯「いいよ。今日はムギちゃんの誕生日だし」

紬「でも悪いわ」

唯「今日は私がエスコートするんだからいいんだよ」

8: 2013/07/02(火) 20:59:29.43
ちょっと自慢げにそう言う唯ちゃん。
あまり意固地になるのも悪いかと思い、奢ってもらうことにしました。
水族館に入ると、唯ちゃんは目を輝かせて水槽に近づきました。

唯「わっ、おおきなお魚だねー」

紬「あれは、マンタね」

唯「マンタ? ギー太の親戚みたいな名前だね」

紬「うふふ。そうかしら」

唯「じゃあ、あれは」

紬「あれは……カツオじゃないかしら」

唯「え、カツオってタタキにする?」

紬「うん」

9: 2013/07/02(火) 20:59:55.20
唯「カツオって、あんな魚だったんだ」

紬「食卓に出てくるときは切り身だもんね」

唯「ねぇムギちゃん、見て見て、あれ」

紬「鮫さんがガラスにくっついてる?」

唯「やっぱり鮫さんなんだ」

紬「うん。そうみたい」

唯「鮫って他の魚と一緒な水槽でいいのかな?」

紬「鮫さんにもよるんじゃないかしら」

唯「ふーん」

10: 2013/07/02(火) 21:00:34.57
こんな感じで私達は水槽をまわっていきました。

トンネルみたいになった水槽。
蟹さんだけ入った水槽。
オウム貝が入った水槽。

どれも興味深くて、私たちは夢中になって水槽を覗きこみました。

足の長い蟹さんを見て美味しくなさそうだねと言った唯ちゃん。
クサフグさんを気に入って一匹一匹に名前をつけてる唯ちゃん。
ラッコを見て、寝ながらご飯を食べるなんて羨ましいとつぶやいた唯ちゃん。

本当に唯ちゃんが愛おしくて、私は……。
ううん。駄目。
今日は誕生日プレゼントとしてデートしてくれただけだから。
勘違いしちゃ駄目です。

11: 2013/07/02(火) 21:01:24.33
気を引き締め直した後、私たちはイルカショーへ向かいました。
近くで見るイルカはダイナミックで、唯ちゃんも私も興奮しぱなっしでした。

唯「ムギちゃんムギちゃん」

紬「うん。いまのジャンプすごかったね」

唯「私でもあんなに飛ぶのは無理だよ」

紬「あら、でも唯ちゃんならお菓子がご褒美ならいけるんじゃないかしら」

唯「ムギちゃんのお菓子があったら……うん頑張れる気がするよ」

紬「うふふ。でもイルカさんってすごいわね」

唯「うん。立ったまま泳いだり、わっかをくぐったり」

13: 2013/07/02(火) 21:01:50.72
紬「あら、大きなジャンプをする……! 危ない!!」

唯「え、ムギちゃん」

イルカさんの大きなジャンプで、こちらに大量の水が飛んできました。
私は咄嗟に唯ちゃんの前に出ました。
後ろを振り向くと、唯ちゃんはあまり濡れてないみたいでした。
良かった……。

唯「ムギちゃん……かばってくれたんだ」

紬「うん。唯ちゃんが濡れなくてよかったわ」

唯「でもムギちゃんがべちょべちょだよ」

紬「そうね。どこかで拭かないと……」

14: 2013/07/02(火) 21:02:39.98
私と唯ちゃんは、スタッフの人に話をして、更衣室とジャージを貸してもらいました。
唯ちゃんはタオルで優しく私を拭いてくれました。

私は制服を脱いで、ジャージに着替えました。
渇くまでしばらく水族館をまわったあと、制服に戻す予定です。

私はジャージ。唯ちゃんは制服。
服装は変わってしまいましたが、引き続き水族館を楽しみました。

ペンギンを見たり、アシカを見たり。
哺乳類コーナーもちゃんと堪能したんです。

16: 2013/07/02(火) 21:03:15.93
唯「ね、ムギちゃん。ちょっと休憩しない」

紬「うん。いいね」

唯「じゃあ私飲み物……」

紬「あっ、実は紅茶を持ってきたんだ?」

唯「紅茶?」

紬「うん。水筒に冷えたのをいれてきたの」

唯「えへへ~。ムギちゃんの紅茶!」

紬「うん。いま注いであげるね。はい」

唯「……うん。いつもの味~」

紬「私も貰うね」

17: 2013/07/02(火) 21:04:22.34
唯「ねぇ、ムギちゃん」

紬「なぁに?」

唯「さっきのムギちゃんかっこよかったよ」

紬「イルカショーのこと?」

唯「うん。サッ! と私を庇ってくれて」

紬「うふふ。身体が勝手に動いちゃったの」

唯「ムギちゃん、映画の登場人物みたいだね」

紬「でも、唯ちゃん。今日は良かったの? チケット奢ってもらっちゃって」

唯「いいよ。だってムギちゃんの誕生日だもん」

紬「……デートなんて無理なお願いしてごめんね」

唯「え」

紬「だってデートって本当は好きな人とするものでしょ」

19: 2013/07/02(火) 21:05:36.54
唯「えっと……私は好きな人とじゃなくてもデートしちゃうかも」

唯「うふふ。そうなんだ」

唯「でもね、好きじゃない人とデートはしても、キスはしないかな」

紬「えっ」

そう言い終えるやいなや、唯ちゃんは私の唇を奪いました。
とっさのことに、私は全く反応できなくて。
しばらく呆けた後、私は自分の顔が真っ赤になっていくのに気づきました。
唯ちゃんの顔を見ると、唯ちゃんの顔も真っ赤に染まってました。

紬「ねぇ、唯ちゃん。今のって」

唯「うん……そういうこと」

紬「唯ちゃん、私ね……私、嬉しい!」

20: 2013/07/02(火) 21:05:58.70
唯「ねぇ、ムギちゃん。ムギちゃんの気持ちも聞かせて欲しいな」

紬「聞かないとわからない?」

唯「ムギちゃん、大好き!!」ダキッ

紬「私も大好き!!」ダキッ

唯「……」ギュ

紬「……」ギュ

唯「……ねぇ、ムギちゃん」

紬「……あ、うん」

唯「そのジャージクサイね」

紬「うん。お魚さんの匂いがこびりついてて生臭いね」

唯「あはは。今告白するのは失敗だったかも」

紬「そうだね。でも……」ギュ

唯「うん。ムギちゃん、私今、幸せかも」ギュ

22: 2013/07/02(火) 21:06:25.14
それから私はジャージを脱いで、制服に着替えました。
お口直しに唯ちゃんともう一度抱きしめあいたいな、なんて思っていると、
唯ちゃんが携帯を見て慌てた顔をしていました。

唯「ムギちゃん。大変大変!」

紬「え、どうしたの」

唯「今日、ムギちゃんのサプライズ誕生パーティーがあるんだった」

紬「え、本当!?」

唯「うん。……それも1時間前に始まる予定だった」

紬「えっと……それは」

唯「あはは。澪ちゃん達に怒られちゃうよ」

紬「うん。急いで向かいましょう」

23: 2013/07/02(火) 21:07:07.64
会場は唯ちゃんの家。
私たちは走りながら、ちょっとだけお話した。

紬「ねぇ、唯ちゃん」

唯「なぁに、ムギちゃん」

紬「私達付き合ったら何か変わるのかな」

唯「ムギちゃんは変わりたい?」

紬「うーん。そうでもないかも」

唯「そっかぁ、じゃあ今のままでいいんじゃないかな。でも……」

紬「うん?」

唯「こうやって、手を繋いでいこう」


唯ちゃんは私の手を取って走りだした。
唯ちゃんに引っ張られる私。
けど唯ちゃんはすぐにバテて、今度は私がひっぱることになった。
いつも握ってきた唯ちゃんの手。
これからもずっと、握り続けたいな。


おしまいっ!

引用元: 紬「私は唯ちゃんが欲しいの!」