第8話 すかうてっどがーるず!(後編)



―――街中


奈緒「……だいたいさ、これプロデューサーの仕事じゃんか。なんであたしがやるんだ?」

加蓮「もうそれ聞き飽きたから。いい加減諦めなって」

奈緒「それにあたしたち、ユニット名考えなきゃいけないっていうのに……」

加蓮「だから私も付いてきたんでしょ。考えながらスカウトしなよ」

奈緒「簡単に言うよ……」

加蓮「事務所の仲間が増えるのは、いいことじゃん」

奈緒「そうだけどさ……。……まあ、それはそれとして」

杏「……ねむ……」

奈緒「散々寝ただろ!」

杏「……あ、そこの公園通って。近道だから」

奈緒「ああ、はいはい―――じゃなくて! なんであたしが杏をおんぶして、家まで送らなきゃいけないんだよ!」

杏「ついでだからいいじゃん」

奈緒「何のついで⁉ こっちに用なんてないんだけど!」

杏「アイドルに向いてそうな子が、その辺を歩いてるかもしれないよ?」

奈緒「そんなポンポン見つかるか!」



少女「こんにちは~」



奈緒「? あ、はい、こんにちは」

少女「ふふっ♪ いいお天気ですね」

奈緒「そうですね~」

加蓮「……知り合い?」

奈緒「初対面だと思う……。あの、どこかで会ったことありました?」

少女「? いいえ、初対面だと思いますよ?」

奈緒「あ、やっぱりそうですよね」

加蓮「なら、どうして声を?」

少女「えっ? すれちがった人にご挨拶するのは、普通のことじゃありませんか?」

杏「確かにそうかもねー。……杏はしないけど」

奈緒「おんぶしてるから、小声でもあたしには聞こえてるぞ」

少女「私、お散歩してるワンちゃんやねこさんにも挨拶しますし……もちろん、あなたたちにもっ♪」

加蓮「あははっ、そういうことですか」

杏「ねぇ、ちょうどいいし、この人でいいんじゃない?」

奈緒「ちょうどいいとか言うなよ!……でもうん、確かにいいな、この人」

少女「どうかしましたか?」

奈緒「あのー、アイドルとか興味あります?」

少女「……アイドル?」


271: 2017/04/22(土) 14:10:31.73


―――公園


奈緒「―――ってわけなんだよ、藍子」

藍子「そうですか、奈緒ちゃんたちはアイドルをやってるんですね」

奈緒「ああ、そうなんだ」

藍子「それで……私もアイドルをやらないかって?」

加蓮「うん、どうかな?」

杏「印税もらえるよー」

奈緒「杏、ちょっと静かにしてような?」

杏「でもお金の話は大事じゃない?」

奈緒「ま、まあそうかもだけど、いきなり生々しい話しなくてもいいだろ」

杏「杏は誰かさんに、いきなりその生々しい話されたんだけどなぁ」

奈緒「……」

杏「あとの人生遊んで暮らせるとかも―――」

奈緒「ちょっと黙ろうか!」

加蓮「……奈緒、そんなこと言ってたの?」

奈緒「そんなことより藍子、アイドルやってみる気ないか?」

加蓮「誤魔化したね」

奈緒「……。やってみる気ないか?」

藍子「そうですね……でも、私にはつとまらないと思います。目立つことは得意ではありませんし……」

加蓮「うーん、そっか……」

藍子「それに、他の子にはない特技なんて、なにもありませんから……」

奈緒「特技があればいいってわけでもないって。杏の特技なんて、だらだらすることだし」

杏「それは別に特技じゃないぞっ!」

奈緒「じゃあ趣味?」

杏「趣味とも違うね……」



杏「杏はただ、だらだらしたいからするんだよ」



奈緒「なんか深いようで浅い言葉だな……」

杏「ま、杏はともかくさ、藍子は優しいのが特技なんじゃない?」

藍子「優しい? 私がですか?」

加蓮「あ、そうだね。まだ会ってからそんな経ってないけど、藍子が優しいの分かるもん」

藍子「私の、優しさ……? そんなものが特技になるんですか? 優しいのは、誰でも普通のことだと思いますけど……」

杏「家族とか友達に優しいっていうのは、ほとんどの人がそうだろうけどさ。誰にでも優しい人は、そんなにいないと思うよ。……いや、そういえば、ここにもう一人いたね」

奈緒「……え? あたし? あ、あたしは別にそんな優しいとかじゃ――」

杏「あ、違うか。奈緒はただのお人好しだった」

奈緒「――ないし、お人好しでもないよ!」


272: 2017/04/22(土) 14:11:01.92


加蓮「いや、お人好しではあると思うよ」

奈緒「加蓮まで⁉」

杏「やっぱりそうなんだ」

加蓮「うん、346プロのミスお人好し」

奈緒「そんな称号持ってないよ!」

加蓮「お人好しの奈緒がアイドルやってるんだから、優しい藍子もアイドルやれるよ」

藍子「そ、そうでしょうか?」

奈緒「……前半は肯定しないけど、後半はあたしもその通りだと思うぞ。優しい人って、他の人も優しい気持ちに出来るからさ」

藍子「他の人を……」

奈緒「だから、もう一度訊く……あたしたちと一緒に、アイドルやらないか?」

藍子「……。……私が誰かを優しい気持ちにしてあげられるなら、それってきっと、すてきなことですよねっ」



藍子「だから私、高森藍子は……アイドル、やってみようと思いますっ」



奈緒「! なら、これからよろしくな、藍子」

藍子「こちらこそよろしくお願いします、奈緒ちゃん、加蓮ちゃん、杏ちゃん」

加蓮「また1人、一緒に頑張る仲間が増えて、嬉しいよ」

杏「杏は頑張らないけどね」

奈緒「台無しだろ!」

藍子「あはは……」

奈緒「はぁ……じゃあ藍子、いつでもいいから、346プロに来てくれ。これ、うちの社長の名刺。これを受付で見せて、スカウトされたって説明すれば、アイドル部門の事務所に来られるからさ」

藍子「分かりました。……あ、今から行くのは駄目ですか?」

奈緒「え、今からで大丈夫なのか?」

藍子「はい、今日はお散歩の予定だったので」

奈緒「そっか。でもプロデューサー戻ってきてるかな……少し待つことになるかもしれないけど、それでもいいか?」

藍子「はい、大丈夫ですよ」

奈緒「なら一緒に346プロまで行くか」

加蓮「じゃあ、決まりだね」

杏「でもまずは杏を家まで送ってよ」

奈緒「何言ってるんだ? 杏も一緒だぞ」

杏「そっちが何言ってるんだ⁉ どうして杏も一緒に行くことになるのさ! 杏はもう今日は事務所に用はないんだぞっ!」

奈緒「どうせ家に帰っても、だらだらしてるだけだろ? それなら、一緒に事務所まで行こうぜ」

杏「もうあそこにマンション見えてるのに⁉」

奈緒「さ、行くぞー」

杏「こ、ここまで来て帰れないのか……! 藍子の優しさ分けてもらえーっ!」

加蓮(でも奈緒、またおんぶしてくんだ……やっぱりお人好し……)


273: 2017/04/22(土) 14:11:27.68


―――原宿


P「……で、なんで付いてきたの?」

奏「あら、駄目だった?」

P「まあ別にいいけどさ。つまんないと思うぞ?」

奏「そう? プロデューサーさんと一緒だと、面白いことの方が多そうよ」

P「そんなに面白くないと思うけどなぁ……スカウトするだけだし」

奏「スカウトね……。女の子ならたくさんいるけど……どの子にするの?」

P「手あたり次第スカウトするわけじゃないって。『これだ!』って感じの子じゃないと」

奏「ずいぶん感覚で決めるのね」

P「感覚の方が、頼りになるからな。俺は見た目だけじゃ決めないんだ」

奏「なるほどね……プロデューサーさんはそういう人なんだ」

P「? そういう人って?」

奏「自分で考えてみたら?」

P「……イケメンということか?」

奏「っ! そ、そうね……っ」

P「笑い堪えてるじゃん! 絶対違っただろ!」

奏「ふふっ、やっぱりあなた最高よ」

P「それ褒めてるのか⁉」

奏「それも自分で考えたら?」

P「……絶対褒めてないな!」

奏「さあ、どうかしらね?」

P「だから、どうなのかを言えって―――」

奏「! 前!」

P「え?」


《どんっ!》


P「おぁっ⁉」

???「きゃんっ⁉」



奏「ちょっと、大丈夫?」

P「いつつ……ああ、俺はな」

???「いたた……」

P「すみません、怪我はないですか?」

???「にょわ?」

P・奏『(にょわ?)』


274: 2017/04/22(土) 14:11:58.68


???「うん、きらりんならへーきだにぃ☆」

奏(きらりんさんって言うのかしら……?)

P「た、立てます? 良かったら、掴まってください」

きらりん?「あ……ううん、大丈夫だよ」

P「そうですか?」

きらりん?「うー、よいしょっ!」

P(でかっ⁉ お、俺より身長大きかったのか……倒れてたから気付かなかった)

きらりん?「にゅ? どうかした?」

P「あ、いえ、ぶつかってしまい、申し訳ありませんでした」

きらりん?「んーん、きらりんもよそ見してたから、おあいこっ!」

P「そう言ってもらえると……」

きらりん?「それじゃ―――」



P「ところで、アイドルとか興味ないですか?」



きらりん?「アイドル?」

奏「プロデューサーさん。ぶつかった相手をスカウトするのは、流石に失礼だと思うわ」

P「ま、まあそう思ったんだけど……でも『これだ!』って思って」

奏「『これだ』、ね……」

P「あの、実は私、芸能事務所のプロデューサーをしているんです」

きらりん?「プロデューサー?」

P「はい。それであなたをスカウトしたいんです。うちの事務所で、アイドルやってみませんか?」

きらりん?「え、えええっ⁉ す、スカウトって……まさかまさか、きらりんを⁉」

P「はい、きらりん――あの、お名前はきらりんさんでいいんですかね?」

きらりん?「あ、そうじゃないにぃ。名前はねー、諸星きらりって言うの!」

P「なら、きらりさん。うちでアイドルやりませんか?」

きらり「で、でも、その……きらりん、こんなおっきいし、みんなびっくりしちゃうゆ。アイドルって、ちっちゃくてきゃわゆい子じゃないと……」

P「ちっちゃくてきゃわゆい子なんて、うちの事務所にも2人しかいませんよ!」


275: 2017/04/22(土) 14:12:32.27


―――ちっちゃくてきゃわゆい子その1


ありす「へくちっ!」

まゆ「ありすちゃん、風邪ですか?」

ありす「いえ、大丈夫です。それより、ユニット名考えましょう」


276: 2017/04/22(土) 14:12:59.83


―――ちっちゃくてきゃわゆい子その2


杏「くしゅんっ!」

奈緒「おうわっ⁉ あ、杏! なんであたしの背中でくしゃみなんてするんだ!」

杏「ごめんごめん、急に出て」

奈緒「せめて横向いてしろよ!」

藍子「杏ちゃん、ティッシュ使います?」

加蓮(……奈緒、それでも降ろさないんだ)


277: 2017/04/22(土) 14:13:29.59


―――原宿


P「だから大丈夫です!」

きらり「……でも、こんなきらりんが、アイドルなんて、なれるわけないにぃ……」

P「いやそれは――」

きらり「も、もー! からかうと、ほっぺプニプニ! だよぉ?」

奏「からかってなんていないわ。本気よ、この人」

きらり「え……?」

奏「ね、プロデューサーさん?」

P「ああ、本気だ!」

奏「その証拠に、キスしてもいいって」

きらり「ふぇっ⁉」

P「そんなこと言ってないけど⁉」

奏「あ、するのは私によ?」

P「なんで奏にキスするんだよ! それ本気の証拠にならないだろ! むしろからかってるだろ!」

奏「なら本気の証拠ってどんなものなの?」

P「えっ⁉ え、えーっと……きらりさん、私の目を見てください! この目は本気の目ですよ!」

きらり「め、目?」

P「じー……!」

きらり「え、えぇっとぉ……」

P「じぃー……!」

奏(っ……やっぱり面白いわ、この人)

P「じぃいー……!」

きらり「も、もういいにぃっ! 本気、十分伝わったから!」

P「分かってもらえましたか!」

奏(見つめられて、照れただけの気がするけど……)

きらり「本気の本気だって言うのは、分かったけど……こんなきらりんが、アイドルになれるの?」

P「さっきから『こんな』とか言ってますけど、そんなに自分を卑下しなくていいですよ。きらりさんがアイドルになれるってこと、私が保証しますから」

きらり「……うん、分かった! そこまで言ってくれるなら、やってみるにぃ!」

P「そうこなくっちゃ!」

奏(あら、本当に上手くいっちゃった。……プロデューサー、意外と人を乗せるのが上手いのね。ふふっ、考えてみれば私も乗せられたようなものだし)

P「きらりさん、この奏もうちのアイドルなんですよ」

きらり「え、そうなの?」

奏「一応ね」

きらり「じゃあ、これからよろしく……おにゃーしゃー☆」


278: 2017/04/22(土) 14:13:59.72


―――346プロ前


藍子「おっきいビルですね……ここが346プロなんですか?」

奈緒「ああ、この中にあたしらの事務所があるんだ」

杏「本当にここまで戻ってくるとか……」

加蓮「まあ、また奈緒が送ってくれるよ」

杏「……ならいっか。杏は疲れないし」



???『Pちゃん、あそこのおっきいビルがそぉ?』

P『ああ、あれが346プロだ』



杏「ん? なんだ?」

奈緒「……あ、プロデューサーと奏じゃん」

奏「あら、奈緒たちじゃない」

P「事務所の前でどうしたんだ?」

奈緒「スカウトした藍子を連れてきたんだよ」

P「へぇ、それならちょうど良かった。俺たちもそこにいるきらりを―――何してんの、きらり?」

きらり「じー……」

杏「な、何? 杏のことじっと見て」



きらり「ちっちゃくてきゃわゆいーっ!」

杏「なんだぁっ⁉」



奈緒「うぉっ⁉ 杏がもぎとられた!」

きらり「Pちゃん! この子がPちゃんの言ってた、ちっちゃくてきゃわゆい子?」

P「あ、ああ、そうだけど」

きらり「本当に、ちっちゃくてきゃわゆいっ! きらりん、はぴはぴしちゃうにぃ!」

杏「は、放せ~っ! 杏は、杏はぬいぐるみじゃないぞっ!」

加蓮「す、すごい子スカウトしてきたね」

奏「中々の逸材だと思うわよ?」

藍子「こ、これが、アイドルなんですね……!」

奈緒「否定しようと思ったけど、うちの事務所わりと濃いのもいるから否定できない!」


279: 2017/04/22(土) 14:15:08.66


―――346プロ内 廊下


きらり「♪」

杏「どうしてこうなった……」

奈緒「良かったじゃんか、きらりに運んでもらえて」

杏「これは違くない⁉ 脇に抱えられるのは荷物と扱いが変わらないぞ!……あ、でも楽」

加蓮「楽ならなんでもいいんだ……」

藍子「アイドル部門事務所……あの部屋がそうですか?」

奏「ええ、そうよ」

P「藍子もきらりも、中で詳しい話をさせてもらうな」


《ガチャ―――》



少女「ようやく戻ってきましたね!」



P「……え、誰? 奈緒、お前がスカウトしたのか?」

奈緒「いや、知らないぞ」

加蓮「今日このパターン2度目だよね」

奈緒「もういいよなぁ。さすがに飽きたって」

少女「なんですかその扱いは⁉ 初対面なのに、ボクに対して失礼じゃないですか⁉」

P「あ、もしかして君……」

少女「ふっ、気づいたようですね。そうです、ボクは――」



P「不法侵入者?」



少女「そうなんですよー! ちょろっと警備の目をかいくぐって―――って、違いますよ! さっきから本当に失礼じゃないですか⁉」

P「あ、そうだ。ちひろさんに聞けばいいんだ。ちひろさーん!」

少女「ボクを無視しないでください!」

ちひろ「ふぁぁ……はい、プロデューサーさん。どうかしましたか?」

P「……もしかして寝てました?」

ちひろ「そんなわけないじゃないですか」

少女「嘘です! さっきからそこのソファで居眠り――」

ちひろ「あ、そこの彼女は不法侵入者です」

少女「――なんてしてなかったですよー! ボクが保証します、ちひろさんはずっと起きてましたとも!」

ちひろ「あ、不法侵入者ではなく幸子ちゃんでしたね。ついうっかり間違えちゃいました」

幸子「しらじらしいですね!」


280: 2017/04/22(土) 14:15:43.90


P「ちひろさん、誰なんですこの子?」

ちひろ「彼女は輿水幸子ちゃんと言いまして、社長曰く……『未央ちゃんの再来』らしいです」

P「未央の……再来?」

奈緒「そ、それどういう意味だ?」

加蓮「アイドルとしての才能が、未央と同じくらいにあるってこと?」

P「つまり、期待の新人ということですか?」

ちひろ「いえ」



ちひろ「未央ちゃんと同じように、アイドルオーディションと間違えて別のオーディションを受けに来たそうです」



『…………』

幸子「な、なんですかその残念なものを見る目は! カワイイボクをそんな目で見ないでください!」


281: 2017/04/22(土) 14:16:51.60


―――数時間前 オーディション会場


幸子「はい! 1番、輿水幸子です!」

社長「では、志望動機を……いや待て、輿水幸子?……君の番号は10番じゃないか?」

幸子「え? だってここに1……はぁ⁉……ぜ、ゼロがついてた」

社長「……」

他の面接官『……』

他の志望者『……』

幸子「い……い……いやいやいや、勘違いしてもらっちゃ困りますね!」

社長「勘違い?」



幸子「『一番』っていうのは、オーディションの順番ではなく『ボクが一番カワイイ』ってことですから!」



会場の全員『(なんか無茶苦茶な言い訳し始めた!)』

幸子「そうなんです。ボクは何でも一番! ハッキリ言って、ボクが一番カワイイでしょう! 成績で言っても……たぶん一番、身長順で並んでも一番です!」

社長「身長順で一番って、それむしろワースト――」

幸子「というか、アナタたちは相当にラッキーですね! ボクは将来、世界を席巻するであろう存在! そんなボクをオーディションで見つけ出せたわけですから!」

社長「……あ、うん。そうだな」

面接官A(社長、このまま続けるんですか? 番号10番なのに)

社長(今更やめさせるのも面倒だ。どうせ後でやることになるんだし、このまま続ける)

社長「……じゃあ次に特技でも言ってくれ」

幸子「え? 特技……ですか? んー? ノートの清書です! 趣味であり、特技ですからね!」

会場の全員『(趣味であっても特技とは違う気が……)』

幸子「世界で一番カワイイ、このボクの存在自体が、もはやスペシャル。ナンバーワンでありオンリーワン、それがボクなんです。だから、特技とか細かいことは気にしないでください!」

社長「……そうか」

幸子「それより、このオーディション会場にプロデューサーさんはいないんですか?」

社長「……なんて?」

幸子「プロデューサーさんですよ、プロデューサーさん。ボクの不安は、たったひとつだけです。それはプロデューサーさんが、この超新星・輿水幸子を、ちゃんとプロデュースできるか? ということだけです!」

社長(おい、嫌な予感がしてきたんだが……)

面接官A(私もです……)



幸子「ボクをちゃんとトップアイドルにすることが、ここのプロデューサーさんにできますか? どうなんですか⁉」



社長「……」

他の面接官『……』

他の志望者『……』

幸子「……あれ?」


282: 2017/04/22(土) 14:17:41.65


社長「……すまない、よく聞こえなかった。今の、もう一度聞かせてくれるか?」

幸子「あ、はい。えー、こほん……ボクをちゃんとトップアイドルに――」

社長「もういい分かった」

幸子「まだ途中ですけど⁉」

社長「……おい、お前もやっぱり聞こえたか?」

面接官A「……やっぱり聞こえました」

面接官B「またかよ……」

志望者A「嘘でしょ……」

志望者B「とんでもないわね……」

幸子「? ? な、何かおかしなこと言いましたか?」

社長「……君、これが何のオーディションか分かっていないだろう?」

幸子「はい? 分からないのに来たりしませんよ。所属アイドルを決めるオーディ―――」



社長「違う! 所属女優を決めるオーディションだ!」



幸子「……え?」

社長「……」

他の面接官『……』

他の志望者『……』

幸子「……。…………し……」



幸子「知ってましたよ⁉ あえてですよ、あえて!」



会場の全員『あえて⁉』

幸子「ほ、ほら、カワイイボクともなれば? 女優としても余裕でやっていけますし? あえて、女優のオーディションを受けてみるのも悪くないかなーと。あえて」

社長「嘘つけ、お前」

幸子「う、嘘じゃないですよっ!……あ、でもやっぱりボクはアイドルになるべきですよね、こんなにカワイイんですし! というわけで……これでボクは失礼しますっ!」


《ガチャ!》


社長「……また逃げたか」

面接官A「どうするんです社長? また追いかけるんですか?」

社長「いや、面倒だ」


《プルルルル―――》


受付嬢『はい、受付です。社長、どうされました?』

社長「今から顔を真っ赤にした少女がそっちに向かうから、捕まえてアイドル部門の事務所に放り込んでおけ」

受付嬢『よく分かりませんが、分かりました』


《――ピッ》


社長「さて、面接を続けるか。じゃあ本当の番号1番から―――」


283: 2017/04/22(土) 14:18:39.57


―――現在


P「そうか……君はアホなんだな」

幸子「しみじみと言わないでください! このカワイイボクを捕まえてアホとはなんですか!」

P「まさか、未央と同じことをする子がいるとは……」

奈緒「なあプロデューサー、同じことって……未央も間違えたのか?」

P「ああ、未央は元々モデルオーディションを受けに来たんだ。アイドルオーディションと間違えて」

加蓮「そんな面白エピソードがあったんだ……あとでからかお」

奈緒「ほどほどにしとけよ」

P「それでちひろさん、この子がここにいるということは……」

ちひろ「社長から伝言です。『こいつ、お前がプロデュースしろ』」

P「やっぱそういうことなんだ……まあ、所属アイドルが増えるのはいいことか」

幸子「いやー、あなたは幸運ですね! この世界一カワイイボクをプロデュースできるんですから!」

P「……そーですね」

幸子「なんですかその気のない返事は! そんなんでボクのプロデューサーが務まるんですか!」

P「俺が務まらなかったら、うちに他のプロデューサーいないし、このまま君にはお帰り願うしかないわけだが……」

幸子「そういう返事もいいですよね! 気があればいいってわけじゃないですよ!」

P「何言ってんだ? 返事は気があった方がいいに決まってるだろ」

幸子「だったら気のある返事してくださいよ!」

加蓮「この子、いじられオーラが出てるよね」

奈緒「既に大分いじられてるしな」

P「ま、幸子いじりはこれくらいにするとして」

幸子「幸子いじり⁉」

P「ちょっと言うのが遅くなったが……藍子、きらり、ついでに幸子」

幸子「ついで⁉」


284: 2017/04/22(土) 14:19:17.32


P「346プロにようこそ! 俺とちひろさんと愉快なアイドルたちは、お前たちを歓迎するぞ!」

奈緒「誰が愉快なアイドルだ!」


《ガチャッ》


みく「ただいにゃー! ネコチャンアイドル前川みく、ただ今戻ったにゃ!」



奈緒「愉快なのが来た!」

みく「戻ってきてそうそう、その言い草は酷くない⁉」

美嘉「あれ? 奈緒ちゃんたち戻ってきてるんだ」

楓「スカウトはどうだったの?」

加蓮「見ての通りですよ」

ありす「あ、知らない人が3人もいます」

まゆ「大成功みたいですね」


《ガチャッ》


卯月「なんだか事務所が騒がしいね」

凛「見た感じ、全員戻ってきてるみたい」

未央「へぇ、新顔も増えてる」

加蓮「あ、初代オーディション間違えの未央だ」

未央「なんでそれ知ってるの⁉ そして初代って何⁉ 2代目いるの⁉」

奈緒「ほい、2代目の幸子」

幸子「2代目ってなんですか⁉」

未央「え、この子も間違えたの?」

幸子「え、この人も間違えたんですか?」

P「未央はモデル、幸子は女優のオーディションと間違えたんだ」

未央「あはははっ! じょ、女優のオーディションと間違えるって、そんな子いるんだ!」

幸子「あはははっ! モデルのオーディションと間違えるとか、斬新ですね!」

奈緒「どっちも変わらないのに、よく相手のこと笑えるな!」

加蓮「自分を棚に上げてるよ……」

P「おっ、凛たちが帰ってきて、事務所のメンバー全員揃ったな。幸子が入ったから全部で……15人か」

奈緒「これだけいれば、とりあえず社長も満足するんじゃないか?」

P「そうだといいけどな」


285: 2017/04/22(土) 14:19:57.89


―――翌日 事務所


P「さて、じゃあユニット名は今日が締め切りなわけだが、その前に聞きたいことがある。……奈緒、加蓮、お前たちのその目の隈はなんだ?」

奈緒「隈? そんなの出来てるのか?」

加蓮「あ、ホントだ。奈緒、隈出来てるよ」

奈緒「そう言う加蓮もじゃんか」

奈緒・加蓮『あははははっ!』

美嘉「え、笑うとこ?」

みく「この2人、朝からテンションが変なんだよね」

ありす「朝ご飯の時、目玉焼きにジャムを塗って爆笑していました」

まゆ「その後、それを嬉々として食べていましたよ」

楓「そんな奇行を……?」

P「そのおかしなテンション……お前ら、昨日何時に寝た?」

加蓮「昨日? 昨日はねー」

奈緒「昨日は2人でユニット名考えてたから、朝まで起きてたぞ」

P「じゃあ徹夜ってことか⁉ 馬鹿か、お前ら!」

奈緒「いやー、しっくりくるのが思いつかなくてさー」

加蓮「結局、朝までかかっちゃったんだー」

P「この前、気楽に考えるとか言ってただろ⁉」

加蓮「やっぱりこれもアイドルとして、真剣にやった方がいいと思って」

P「その気持ちは大事だけども!」

奈緒「ふっふっふ……徹夜で考えたおかげで、最高のユニット名を思いついたぞ」

P「最高って……ど、どんなユニット名だ?」

加蓮「その名も……」



奈緒・加蓮『北神ガ蒼造セシ可憐ナル双姫(オーディンズ・プリンセスブルー)!』



Pたち『(うわぁ……)』


286: 2017/04/22(土) 14:21:12.67


奈緒「略してオープリ☆」

P「略さんでいい」

加蓮「北神が北条と神谷にかかってて――」

P「解説もいいから!」

美嘉(大分酷いの来たね……)

みく(Pチャン、このユニット名で大丈夫なの……?)

P(大丈夫なわけあるか!)

奈緒「なあなあ、どうだプロデューサー?」

加蓮「すごくいいユニット名でしょ?」

P「ああ、そうだな。いいユニット名だから、ちょっとこっち来いお前たち」

奈緒「なんだよ?」

P「いいから。2人とも、そこのソファに横になれ」

加蓮「なんで?」

P「いいから。そんでそのまま目を閉じろ」

奈緒・加蓮『?』

P「羊が一匹……羊が2匹……羊が3匹……」

奈緒「……くー……」

加蓮「……むにゃ……」

まゆ「もう寝ちゃってますね……」

P「とりあえず、このまま寝かしておこう」

ありす「正常な判断力を失っていましたからね」

楓「プロデューサー、今日の奈緒ちゃんたちのレッスンは?」

P「こんな状態でレッスンなんてやらせられませんよ。午前中は寝かしときましょう。ルキちゃんに伝えておいてもらえますか?」

楓「はい、分かりました」

P「さて、じゃあ楓さんたちとまゆたちのユニット名を―――」


287: 2017/04/22(土) 14:21:45.63


―――数時間後


奈緒「……ん……ふぁぁ……」

P「ん? やっと起きたか」

奈緒「ふぇ?……な、なんでプロデューサーがあたしの部屋にいるんだ⁉」

P「お前の部屋じゃないから! ここは事務所だ!」

奈緒「事務所?……あ、ホントだ」

加蓮「……ん……うるさいなぁ……」

奈緒「加蓮?」

加蓮「……なんで奈緒が私の部屋にいるの?」

奈緒「加蓮の部屋じゃないから! ここ事務所だよ!」

加蓮「……あ、ホントだ」

P「ようやく2人ともお目覚めか」

奈緒「……あたしたち、事務所で寝てたのか?」

P「そうだよ。朝からずっとな」

加蓮「朝からって……えっ、もう昼過ぎ⁉」

奈緒「げっ、マジだ! レ、レッスンは?」

P「午前中は休みにしといた。さて、起きたばかりであれだが……これから説教をします」

加蓮「せ、説教?」

P「お前たちなぁ……アイドルなんだから、体調管理はちゃんとしなさい!」

奈緒「うぅ!」

P「徹夜とか論外! 二度とやらないこと!」

加蓮「うぅ!」

P「はい、分かったら復唱!」

奈緒「これからはちゃんと体調管理します……」

加蓮「徹夜なんて二度としません……」

P「よろしい。……はぁ、マジでもうやるなよ?」

奈緒「分かった……」

加蓮「反省してるよ……」

P「それならいい。さて、ぐっすり眠ったお前たちに聞くが……ユニット名、本当にあれでいいのか?」

奈緒「ユニット名?」

加蓮「どんなのにしたっけ?」

P「北神ガ蒼造セシ可憐ナル双姫(オーディンズ・プリンセスブルー)」

奈緒「あたしたち、そんな痛々しいのにしたの⁉」

加蓮「や、やだよ! そんな恥ずかしいユニット名は絶対に嫌!」


288: 2017/04/22(土) 14:22:49.21


P「正常な判断が出来るようになってなによりだ。じゃあ、これは無しだな」

奈緒「なんであんなのいいと思ってたんだ……」

加蓮「徹夜って怖い……」

P「で、それが無しになると、お前たちのユニット名は白紙に戻るわけだが……残念ながら、もう締め切りは過ぎている」

奈緒「え?」

加蓮「ということは……」



P「お前たちのユニット名、俺がテキトーに決めたから」



加蓮「ホントにテキトーに決められたの⁉」

奈緒「も、もう少しだけ時間をくれ!」

P「残念ながら、もう決定事項だ」

奈緒「ちょっとぐらい待ってくれてもいいじゃんか!」

P「駄目なんだよ。今日の朝が締め切りだったのは、その後に雑誌の取材があったからなんだ」

奈緒「ざ、雑誌の取材?」

P「その取材の時に、お前たちのユニット名を記者の人に伝えることになっててな。……で、もう取材は終わった」

加蓮「終わったって……」

P「もう俺の決めたユニット名を伝えたってことだ」

奈緒「なんてことを!」

加蓮「じゃあもう変えられないの⁉」

P「そういうことだ」

奈緒「そ、その人に電話でもして変えてもらえば……」

P「あちらさんに迷惑かかるから駄目」

加蓮「そんなぁー……」

P「まあ別に変なユニット名にしたわけじゃないから、安心しろ」

奈緒「ど、どんなのにしたんだ……?」



P「『なおかれん』」



289: 2017/04/22(土) 14:23:33.10


加蓮「奈緒?」

奈緒「加蓮?」

P「平仮名で、『なおかれん』だ」

奈緒「そのまんま!」

加蓮「名前くっつけただけだし……」

P「文句は受け付けません! とっとと飯食って午後のレッスン行け、なおかれん」

奈緒「もう呼び始めた!」

加蓮「なおかれんかー……」

奈緒「はぁ……決まったからには仕方ないし、なおかれんで行くしかないか」

加蓮「まあ、シンプルでいいかもね」

奈緒「それじゃプロデューサー。なおかれん、お昼ご飯食べに行ってくるな」

加蓮「なおかれん、しゅっぱーつ!」

P「……わりと気に入ってね?」


第8話 終わり


290: 2017/04/22(土) 14:24:36.51


―――後日


凛「北神ガ蒼造セシ可憐ナル双姫(オーディンズ・プリンセスブルー)……これ何?」

P「ん? ああそれは―――」

凛「新曲のタイトルだったりするの? いい感じだね」

P「えっ?」

凛「えっ?」



 ほんとにおしまい


294: 2017/04/23(日) 15:02:22.96


第8.1話 明かされる真実



―――事務所


幸子「えっ、寮って料理当番制なんですか?」

奈緒「そうだぞ」

加蓮「だから幸子も当番の時はちゃんと作ってね」

幸子「えぇー……そんなルールがあったとは。仕方ないですね」

杏「……あのさー」

奈緒「どうした杏?」

杏「今ちょっと聞こえたんだけど、当番制っておかしくない? 寮で料理当番とか、聞いたことないけど」

みく「うーん……そうかもだけど、うちの寮はそういう風にやってるんだよ」

杏「でもさー、今は人数少ないから大丈夫なのかもしれないけど、もし寮の人数が今よりもっと多くなったらどうするの? 例えば20人分とか作れる?」

まゆ「そ、それは厳しいですね」

杏「でしょ? だから普通は、自分のご飯は自分で調達するんだしさ。寮で当番制は無理があるって」

ありす「言われてみれば……」


295: 2017/04/23(日) 15:03:08.77


幸子「そもそも、その当番制って誰が決めたんですか?」

加蓮「さ、さあ? 私が入った時には奈緒にそう言われて、そういうものなんだなって」

奈緒「あたしも未央に言われて…………待てよ? おい未央! あたしが入るまでは寮には未央だけだったはずだろ⁉ 当番も何もないじゃんか!」

加蓮「あ、そうじゃん!」

未央「……ついに気付いてしまったか」

奈緒「じゃあやっぱり……!」



未央「そう! 当番制とか、私が勝手に言い出したことなんだよ!」



寮組『な、なんだってーっ⁉』



296: 2017/04/23(日) 15:04:03.06


奈緒「どういうことだ、未央⁉」

未央「それはね……せっかくかみやんが入って来たのに、1人でご飯とか嫌だったんだよー! だってかみやんが入って来るまで、寮には私1人だけだったんだよ?……寂しいじゃん!」

奈緒「管理人のおばちゃんがいるだろ!」

未央「おばちゃんは別でしょ! とにかくそういうわけだよ……ご飯はみんなで作って、みんなで食べたほうが美味しいでしょ!」

加蓮「逆ギレしてるし……」

奈緒「じゃあ当番制でやる必要は別にないのかよ……でも今さら変えるのもなぁ」

加蓮「まあ、朝も作るから規則正しい生活を送れるし……そういう意味じゃ悪くないけどね」

未央「でしょ?」

奈緒「調子に乗るな!」

未央「はい……」


297: 2017/04/23(日) 15:04:43.23


奈緒「みんな、どうする?」

ありす「とりあえず、このままでいいんじゃないでしょうか」

まゆ「今は特に作るのに苦労はしませんしね」

みく「そうだね。人が増えたら、その時に考えればいいにゃ」

加蓮「私もそれでいいかな」

奈緒「幸子はそれで大丈夫か?」

幸子「そうですね……なら、ボクもそれでいいです」

奈緒「じゃあ、このままでいいか。……だが未央、お前は後で処罰するからな」

未央「処罰って何する気⁉」



―――未央のその日の夕食は、ありす特製『橘流イチゴパスタ改~ストロベリーづくし~』となった。



第8.1話 終わり


299: 2017/04/24(月) 20:28:59.53
第9話 オルゴールの小箱


―――事務所


奈緒「カップリング曲?」

P「そうだ。ファーストシングルのカップリング曲が出来たから、2人に歌詞と曲を渡そうと思ってな」

加蓮「そっか。収録する曲、もう一曲あるんだね」

P「ほれ、これがその歌詞だ」

奈緒「お、サンキュ」

加蓮「曲名は『オルゴールの小箱』だって」

奈緒「なんか洒落た感じの曲名だな。どれ、歌詞は……ふむふむ……こ、これラブソングじゃん!」

加蓮「あ、ホントだ」

P「ラブソングだけど、それがどうかしたか?」

奈緒「ら、ラブソング歌うのか? あたしが?」

P「いや、奈緒と加蓮がだけど……え、何か問題あった?」

奈緒「問題というか……い、いや、大丈夫だ。問題ない」

P「ならいいが。これから数日はこの曲のレッスンになる。2人とも、カップリング曲だからって気を抜くなよ?」

奈緒「わ、分かってるって」

加蓮「りょーかいしましたっ、プロデューサー殿」

P「うん、レッスンではふざけないようにな?」


300: 2017/04/24(月) 20:29:32.35


―――廊下


加蓮「奈緒、どうかしたの?」

奈緒「え? 何が?」

加蓮「『オルゴールの小箱』の歌詞見た時、明らかに挙動不審だったじゃん」

奈緒「き、挙動不審? そ、そんなわけないだろ? あ、帰りにポテト食べてく?」

加蓮「食べてくけど、話をそらさない。2人で歌うんだから、隠し事は無しでしょ?」

奈緒「う、そうだよな……」

加蓮「それで、何なの?」

奈緒「いや……あのさ? これ、ラブソングじゃん」

加蓮「うん、そうだね」

奈緒「歌詞にも、好きとかそういうの書いてあるし……」

加蓮「うん、書いてあるね」

奈緒「でもさ……どんな気持ちで歌えばいいか、分からないんだけど」

加蓮「……はい?」

奈緒「だからさ……恋愛の歌とか、どういう気持ちで歌えばいいんだ? あたし、経験ないから全然分かんないんだよ」

加蓮「経験ないって……奈緒、恋したことないの?」

奈緒「……ない」

加蓮「年頃の女子高生なら、普通は恋の一つや二つしてるのに、奈緒は全くしてないと?」

奈緒「そ、そうだよ! 悪いか!」

加蓮「悪くはないけど……私は今、とても残念な人を目の当たりにしてる」

奈緒「そこまで言わなくてもいいだろ⁉ じゃ、じゃあ加蓮は恋したことあるのかよ!」

加蓮「私? そんなの、聞くまでもないでしょ」

奈緒「え、まさかあるの――」



加蓮「ずっと入院してたのに、恋とか出来るわけないじゃん」



奈緒「あたしが悪かった!」

加蓮「あーあ、奈緒のせいで私のガラスのハートに傷が付いちゃったなー……。……ポテト食べたいなー」

奈緒「分かったよ! 見え見えの小芝居だけど、実際無神経だったし、おごってやるよ!」

加蓮「やった♪ 良かったね、傷が治ったよ」

奈緒「ガラス製なのに治るの早いな!……ったく、でもどうする? それなら加蓮も恋する気持ちとか、分かんないだろ?」

加蓮「まあ確かにね。でも、気持ちとかそんなに気にする必要ある?」

奈緒「気持ちが籠もってるかどうかは、大事なとこじゃんか。ルキさんにも、いつも言われてるだろ? 歌には自分の伝えたい思いを込めろって」

加蓮「うーん……でも、こればっかりはどうしようもなくない? 分からないものは分からないんだし」

奈緒「そ、そうなんだよなぁ。どうにかなんないかなぁ……」

加蓮「そうだなぁ……恋してる人に聞いてみるとかは、どう?」

奈緒「恋してる人? そんなのどこに……いたな」

加蓮「いるでしょ? 身近にさ」

奈緒「ああ、2人もいた」


301: 2017/04/24(月) 20:30:02.29


―――その日の夜 アイドル寮 まゆの部屋


まゆ「恋する気持ち、ですか?」

加蓮「うん。どんな感じなのか、教えてもらえないかな」

奈緒「ラブソングを歌うには、どうしても知る必要があるんだ」

まゆ「なるほど、そういうことなら構いませんよ」

加蓮「良かった。ありがとう、まゆ」


302: 2017/04/24(月) 20:30:34.04


―――1時間後



まゆ「―――つまり、まゆとプロデューサーさんは運命の赤い糸で結ばれているんです。他の誰であろうと、2人の邪魔をすることは出来ないんですよ。うふふ♪ プロデューサーさんのことを考えるだけで、ほっぺたまで真っ赤になっちゃいますよぉ。赤い薬指の糸は永遠に繋がっていて、まゆの心まで真っ赤に震えてて……もうこの恋は真っ赤――」



奈緒「す、ストップストップ! もういい分かった! 十分です!」

まゆ「え、もうですか? まだまだ話せることがあるんですけど……」

加蓮「う、ううん、もう十分参考になったから。ありがとね、まゆ」

まゆ「いえ、また何かあったら、遠慮なく聞いてください」

奈緒「ああ、その時は頼むよ」

奈緒(まゆの恋愛観は、独特過ぎてちょっと理解が難しかったな)

加蓮(プロデューサーのことが大好きだっていうのは、伝わったんだけどね……)

奈緒(こうなったら、もう一人の方に頼るしかないか)

加蓮(うん。でもあっちは素直に話してくれるか分からないから、作戦を―――)


303: 2017/04/24(月) 20:31:14.62


―――翌日 女子寮 奈緒の部屋


凛「大事な話って、何? わざわざ寮まで連れてくるなんて」

奈緒「実はだな……あたしと加蓮は今、アイドルとして大きな壁にぶつかってるんだ」

加蓮「このままだと、歌を歌えないかもしれないの」

凛「えっ⁉ そんなことになってたんだ……ごめん、気付かなかった」

奈緒「い、いやいいって。それでさ、その壁を越えるために、凛の力を貸してほしいんだ」

凛「うん、私に出来ることなら、何でもするよ」

奈緒・加蓮(ニヤリ)

加蓮「ありがと、凛」

奈緒「じゃあ遠慮なく聞くけど――」



奈緒・加蓮『プロデューサーへの恋心について教えて!』



凛「そうだね…………は⁉ な、何言ってるの⁉」

加蓮「だから、プロデューサーのことどう思ってるのか、教えてほしいな~って」

凛「なんでそんなこと教えなきゃ……壁にぶつかってるんじゃないの⁉」

奈緒「うん、そう。今度ラブソング歌うことになってさ。でもあたしたち、恋したことないからどういう気持ちで歌えばいいのか分かんないんだよ」

加蓮「それで、恋する乙女にご教授願おうと思ったんだ」

凛「そういうこと……。騙したね、2人とも……!」

奈緒「だ、騙してはいないぞ? 壁にぶつかってるのはホントだし!」

加蓮「そうそう、決して面白半分とかじゃないから。……興味本位とかじゃないから!」

凛「じゃあそのキラキラした目は何⁉ 嫌だよ、絶対にそんなの話したりしないからっ!」

加蓮「さっき何でもするって言ったじゃん」

凛「そ、それは……そうだけど……! で、でもこれだけは無理だから!」


304: 2017/04/24(月) 20:31:57.65


奈緒「そっか……」

加蓮「なら仕方ないか……」

凛「ほっ……分かってもらえて良かった――」



加蓮「仕方ないから、未央に聞くね。凛っていつからプロデューサーのこと好きなの?」

未央「そうさねぇ、意識し始めたのは――」



凛「未央――――――っ!」

未央「もがもごっ⁉」

奈緒「一瞬で口をふさいだ⁉」

加蓮「そんなに聞かれたくないんだ……」

凛「い、いつからいたの、未央⁉」

未央「もご……最初からいたよ? 押し入れの中に隠れてた」

凛「こざかしい真似を……っ!」

奈緒「未央に聞くのも駄目か?」

凛「当たり前でしょ!」

加蓮「じゃあしょうがないか……」



加蓮「卯月に聞こっと。凛、プロデューサーのこと好きになって何か変わったりした?」

卯月「えっとね、恋心を自覚してすぐの―――」



凛「卯月―――――――――っ!」

卯月「もごっ」

奈緒「また口を⁉」

凛「卯月までいたの⁉」

卯月「もご……クローゼットの中に隠れてたの」

凛「2人して何してるの!」


305: 2017/04/24(月) 20:32:45.43


未央「いやー、かみやんとかれんに頼まれてさ」

卯月「凛ちゃんのこと、教えてほしいって」

奈緒「凛に許可貰うまでは何も聞いてないから、安心しろよな」

凛「許可なんてあげてないよ!」

加蓮「だから、さっき何でもするって言ったでしょ?」

凛「い、言ったけど……言ったけどさ……!」

加蓮「大丈夫、聞くのは私と奈緒だけだから」

奈緒「ありすたちには、大事な話してるから入って来ないでくれって言ってあるし」

加蓮「だから遠慮なく話しちゃっていいよ」

凛「そういう問題じゃないよ!」

卯月「凛ちゃん。奈緒ちゃんと加蓮ちゃんが困っているのは本当みたいだから、ちょっとだけでも話してあげない?」

凛「く……で、でも……」

未央「じゃあさ、あの時のことだけでも話してあげたら?」

凛「あの時……?」

未央「バレ―――」



凛「未央、それ以上口を動かしたら絶対に許さない……!」



未央「……」

奈緒「凛から尋常じゃない殺気が!」

加蓮「バレ? 何、バレって?」

凛「加蓮、そこから先は考えない方がいいよ。思考をそこで停止させて――」



卯月「バレ……あ、そっか。バレンタインの――」



凛「卯月―――――――――――っ!」

卯月「もごご」


306: 2017/04/24(月) 20:33:32.35


奈緒「バレンタイン?」

加蓮「へぇ、バレンタインに何かあったの?」

凛「何にもないよ。……あ、そういえばプロデューサーに義理チョコ渡したかな。それだけそれだけ」

未央「……」

卯月「もごご」

奈緒「未央に殺気を送りつつ、卯月の口を封じながら言われても……」

加蓮「絶対何かあったでしょ」

凛「何もないって言ったよね? 聞こえなかったのかな……?」

奈緒「や、やばい。凛の目がマジで怖いぞ。も、もう詮索するのやめとかないか?」

加蓮「えー、でも気になるなー……恋する気持ちについて分かるかもしれないし」

奈緒「そうかもだけど……」

加蓮「凛、真面目に話を聞かせてもらえない? からかったりしないから」

凛「加蓮……で、でもあの時のことだけは……」

奈緒「そんなに話しにくいのか?」

卯月「えっと……そうだね、自分じゃ話しづらいかも」

未央「だからこそ、私たちが代わりに話そうじゃないか!」

凛「……未央、話したいだけじゃないの?」

未央「そ、そんなことないって。かみやんとかれんの為だよ!」

凛「……。…………。……はぁ、もう好きにしたらいいよ」

奈緒「い、いいのか?」

凛「うん。2人のために、私は犠牲になるから」

加蓮「大げさすぎでしょ」

凛「……奈緒、押し入れ貸して。話し終わるまで、籠ってるから」


《ガラッ――》


奈緒「籠るって……本当に入ったし」

加蓮「あの凛の様子……バレンタインに何があったの?」

卯月「あはは……じゃあ、話すね」

未央「事の始まりは、今年のバレンタインの少し前のことだったよ―――」


307: 2017/04/24(月) 20:34:14.50


―――2月上旬 事務所からの帰り道


未央「そういえばさー、もうすぐバレンタインだよね」

卯月「あ、そうだね。未央ちゃんは、誰かにあげたりするの?」

未央「兄弟とか、友達とかかなー。しまむーは?」

卯月「私はお父さんに。あと、プロデューサーさんにも渡そうと思ってるよ」

未央「あ、そっか。プロデューサーのこと忘れてた」

卯月「わ、忘れないであげて未央ちゃん」

未央「しぶりんはどうするの?」

凛「私もお父さんにはあげるつもりだけど」

未央「プロデューサーは?」

凛「そうだね……まあ、あげてもいいかな」



未央「本命チョコを?」



凛「……は⁉ な、何言ってるの未央! 義理だよ!」

未央「え、なんで義理なの?」

凛「なんでって……みんなだって義理じゃないの⁉」

卯月「う、うん、私たちはそうだけど……」

未央「しぶりんは本命渡すのかと思ってた」

凛「なんでそうなるの⁉」

未央「いや、だってさ……」



卯月「凛ちゃん、プロデューサーさんのこと好きなんだよね?」



凛「……えっ⁉ い、いやいやいやいやいや! す、好きとかじゃないよ! いや、好きではあるけど、でもそれは恋愛とかそういうのじゃないから! 全然違うから!」

未央「いや、その反応はどう考えても……」

卯月「だよね……」

凛「だ、だから違うのっ!」


308: 2017/04/24(月) 20:35:53.57


―――その日の夜、渋谷家 凛の部屋


凛(まったく……卯月も未央も何言ってるのかな……。私がプロデューサーのこと好きとか……)



凛(……好き? 私が、プロデューサーを?……いや、そんなわけないよ。うん、それはない)



凛「だって、プロデューサーだし……。あのプロデューサーだよ? 好きになるとか、そんなわけ…………そんな、わけ……」



凛(でも、そういえば、最近プロデューサーのことをよく考えてる気が……しかもプロデューサーのことを考えると、胸が苦しくなって……)



凛(……え? これって……い、いやいやいやいや、違うよ。そんなんじゃないよ。そんなのおかしいよ。でもこれでもこれ、まさかまさか……)


309: 2017/04/24(月) 20:37:00.39










凛「私、本当に……ぷ、プロデューサーのことが…………好き、に?」










310: 2017/04/24(月) 20:37:46.05


凛「…………う、うあうぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」


《ドタドタドタ―――ガチャッ》


凛母「り、凛⁉ どうしたの⁉」

凛「―――はっ⁉ な、なんでもない!」

凛母「でも今大声を上げて……」

凛「なんでもないから! 大丈夫だから!」

凛母「そ、そう? それならいいけど……」


《―――ガチャン》


凛「……あ、明日から私、どんな顔して、プロデューサーに会えば……っ」


311: 2017/04/24(月) 20:38:12.05


―――翌日、事務所


凛「……お、おはよう」

未央「おはよー、しぶりん」

卯月「おはよう、凛ちゃん」

ちひろ「おはようございます」

凛「う、うん……」

P「おはよう、凛」

凛「⁉」


《シュタンッ!》


P「うおっ⁉」

卯月「凛ちゃん⁉」

ちひろ「なんですか今の動き⁉」

未央「しぶりん、なんで飛びのいたの⁉」

凛「べ、別に特に理由は無いけど」

P「理由も無いのに飛びのいたの⁉」

未央「しぶりん、今の動き忍者みたいだったよ⁉」

凛「そ、そう……き、昨日呼んだ漫画のせいかな」

卯月「ま、漫画を読むとあんな動きが出来るようになるの?」

ちひろ「それは無いと思うけれど……」


312: 2017/04/24(月) 20:38:47.34


P「……なあ凛、なんで俺から目を逸らしてるんだ?」

凛「べ、別に特に理由は無いけど!」

P「理由も無く目を逸らされるって結構傷つくんだけど⁉ ほら、こっち向けって!」


《ぐいっ》


凛「ふあっ……⁉」


《ボンッ!》


P「どうした⁉ 急に顔が真っ赤になったぞ⁉ お、おいまさか熱でもあるのか⁉」

凛「無いから! 大丈夫だからあっち行って!」

未央(……ん?)

卯月(まさか凛ちゃん……)

ちひろ(あら……?)

P「いや、でも――」



凛「いいから私から離れて! 半径10m以内に近づかないで!」



P「えぇっ⁉」

凛「わ、私もうレッスン室行ってくるから! プロデューサー、レッスンの様子見に来たりしないでよ⁉」


《ガチャッ!》


P「……り、凛に……」

ちひろ(凛ちゃん、もしかして……)

未央(しぶりん、ついに自覚したみたいだね)

卯月(でも、今の凛ちゃんの台詞じゃ……)



P「凛に嫌われたぁあああああああああああああああ⁉」



卯月(……そうなっちゃいますよね)


313: 2017/04/24(月) 20:39:23.01


―――レッスン室


凛(あ、危うく心臓が爆発するかと思った……駄目だ、私。さっきので確信した……。私、プロデューサーのこと……本当に、好きなんだ……)



卯月「りーんーちゃんっ♪」
未央「しーぶーりんっ♪」



凛「ひきゃっ⁉ う、卯月に未央。いつの間に来てたの?」

未央「今来たとこ」

卯月「凛ちゃん、プロデューサーさん泣いてたよ? 『凛に嫌われたぁ!』って」

凛「えっ⁉ べ、別に嫌ってなんか……」

未央「だよねー。本当はその逆だもんね」

凛「逆……?」

未央「しまむー、嫌いの反対はー?」

卯月「好き、だよね」

凛「⁉ ち、ちがっ⁉ すすすすきとかそっそそそんなのじゃないから!」

未央「うんうん、それはもういいからさ。……認めちゃえよ、楽になるぜ?」

凛「だ、だから認めるとか認めないとかじゃなくて……!」

卯月「凛ちゃん、気持ちを隠す必要なんてないよ」

凛「卯月……」

未央「隠してるつもりでも、もうバレバレだからね」

凛「えぇっ⁉」

卯月「み、未央ちゃん!」

凛「うぅぅ…………す……き、だよ」

未央「え? なんて?」


314: 2017/04/24(月) 20:39:52.01










凛「私はプロデューサーのことが好きだよ! 悪いっ⁉」










315: 2017/04/24(月) 20:40:24.32


―――社長室


P「ひ、ひっく……こ、こんなのって無いですよ……」

社長「こ、後輩、お前な……」

P「凛が……凛に、嫌われるなんて……」

社長「だからと言って私の所に泣きついて来るな!」

P「先輩までそんな冷たいこと言わないでくださいよぉおおおお!」

社長「ええい、うざいやつだ! お前、そこまでメンタル弱かったか⁉」

P「ぐすっ……り、凛はなんというか……担当アイドルというより、妹みたいに思ってたので……ショックが大きすぎて……」

社長「妹か……確かに妹に嫌われるのは、きついものがあるな」

P「でしょう? 先輩、シスコンですもんね……」

社長「お前は私にも嫌われたいのか?」

P「先輩には別に嫌われても……」

社長「なら今度、北極へ出張に行かせてやろう」

P「嫌わないでください、先輩!……うぅ……凛……なんでだよぉ……!」

社長「……重症だな」


316: 2017/04/24(月) 20:40:56.07


―――アイドル部門 事務所


社長「千川、渋谷はどこにいる?」

ちひろ「あ、社長。凛ちゃんですか? 今はレッスン室だと思いますが……もしかして、プロデューサーさんがそっちに?」

社長「ああ、泣きついてきた」

ちひろ「どこに行ったのかと思っていましたが……」

社長「あいつ、邪魔にもほどがあるぞ。とにかく、レッスン室だな」


317: 2017/04/24(月) 20:41:46.48


―――レッスン室


未央「し、しぶりん、そんな隅っこにいないで、こっち来なよ」

凛「もう未央なんて知らない」

未央「ごめんって! からかった私が悪かったよー! ちゃんとしぶりんの恋、応援するから!」

凛「なっ⁉ お、応援とかいいから!」

未央「でもしぶりん許してくれないし……」

凛「もう許したから! 余計なことしないで!」

卯月「凛ちゃん、プロデューサーさんに告白したりしないの?」

凛「こくはっ⁉ そ、そんなのしないよ!」

未央「なんで?」

凛「なんでも何も……わ、私たちアイドルだよ⁉ 恋愛とか駄目に決まってるでしょ!」

未央「本音は?」

凛「告白する勇気が……はっ⁉」

未央「……うん、アイドルは恋愛駄目だよね」

凛「み、未央~っ!」


《ガチャ―――》


社長「おい渋谷」

凛「し、社長? どうしたんですか?」

社長「どうしたもこうしたもあるか。後輩をなんとかしろ。私の所に泣きついてきたんだぞ」

凛「プロデューサーが⁉」

未央「社長のとこに行ってたんだ……」

社長「まったく、うざくてかなわん。渋谷、あいつのことが嫌いになったというのは本当か?」

凛「い、いえ、嫌いになんてなっていないです」

社長「ふむ……ではあの馬鹿、勘違いで私の所に来たというわけか……一発殴らなくては気が済まんな……!」

卯月「し、社長さん⁉ 落ち着いてください!」

未央「プロデューサーが勘違いするのも仕方ないこと、しぶりんが言ったんです!」

社長「……なんと言ったんだ、渋谷?」

凛「え、いや、その……あの…………」

社長「なんだ、渋谷らしくない。はっきり言え」

凛「あ、あう……うぅ……」

社長「?」

未央「社長、実はゴニョゴニョ―――」


318: 2017/04/24(月) 20:42:53.01


社長「!……くっ……くくっ、ははははははははっ! なるほどな、そういうことか! どうりで渋谷の様子がおかしいわけだ!」

凛「未央、何言ったの⁉」

未央「何って、全部話したけど」

社長「くくっ、いや、うん。事情は理解した。そうかそうか……くふっ」

凛「そ、そんなに笑うようなことですか⁉」

社長「だってなぁ……人の恋愛話ほど面白いものはないだろう?」

未央「確かに」

卯月「み、未央ちゃん!」

社長「それにしても、ようやく自覚したのか」

凛「よ、ようやくって……」

未央「そうなんですよ。そしたらプロデューサーとまともに顔も合わせられなくなっちゃったみたいで」

社長「そこまでなのか?」

未央「しぶりん、ゆでだこみたいになってました」

凛「未央っ!」

社長「……こっちはこっちで重症というわけか。だが渋谷、後輩の勘違いは早く解け。このままでは仕事に支障が……いや、既に私の仕事に支障が出ているぞ」

凛「す、すみません」

社長「顔を合わせられないのなら、電話で話してみたらいいだろう。今持っているか?」

凛「は、はい。……。…………」

卯月「り、凛ちゃん? もしかして電話すら……」

凛「で、出来るよ⁉ さすがに電話くらい……くっ!」


《プルルルル―――プルルルル――》


P『はい、もしもし……?』

凛「ぷ、プロデューサー?」

P『凛⁉……ど、どうしました……?』

凛「あ、あのさ……私、べ、別にプロデューサーのこと、き、嫌いとかじゃないから」

P『ほ、本当ですか?』

凛「な、なんで敬語なの……?」

P『ああいや、つい……でも本当に?』

凛「ほ、本当に! だから変な勘違いとかして、落ち込んでないで!」

P『そ、そっか。……良かった。凛に嫌われるって、かなりショックだったからさ』

凛「そ、そうなんだ」



P『凛だって、好きな人に嫌われたりしたら、ショック受けるだろ?』



凛「す、好き⁉ 好きな⁉ わ、わた、すす好き⁉」



319: 2017/04/24(月) 20:43:25.12


未央「しぶりんが壊れた!」

卯月「り、凛ちゃん、しっかりして!」

社長(これはいいな……尋常でなく面白いんだが……!)

P『え、何? どした? 俺、なんか変なこと言った?』

凛「すすすす好きっててて、ぷぷぷプロろろろデューサー」

卯月「凛ちゃん、もう駄目だよ!」

未央「しぶりん電話、電話貸して!」

凛「あ、ああぅぅ……」

未央「プロデューサー、なんだか電波が悪いみたい!」

P『え、未央? 電波? あ、どうりでまともに聞こえないわけだ』

未央「とにかくそういうわけだから、もう切るね! ばいばい!」

P『ああ、じゃな』


《プツッ》


未央「なんとかごまかせたね……」

凛「あう、あ、うぁぁぅ……」

社長「普段クールな渋谷が、ここまで壊れるとはな……」

未央「恋は人を変えるというやつですね」

卯月「そ、それは意味が違うような……」

社長「……いや、待てよ? 今日は仕事が無いようだからまだ問題ないが……渋谷はこの状態でまともに仕事が出来るのか?」

未央「……」

卯月「……」

凛「ぁぁ……ぅぅ……」

未央「……プロデューサーが現場にいなければ、なんとかなるんじゃないですか?」

社長「あいつ、付いて行くこと多いんじゃないのか?」

卯月「プロデューサーさんは、他に仕事が無ければ、必ず付いて来てくれます」

社長「……なら無理だろう」

未央・卯月『どうしよう⁉』


320: 2017/04/24(月) 20:45:12.11


―――社長室


社長「おい、後輩」

P「あ、先輩。さっきはすみません。もう出ていくんで―――」



社長「お前にこれから少しの間、社長代理を任せる」



P「なに言い出すんですか突然⁉ そんなに怒ってるんですか⁉」

社長「怒ってはいるが、それとは別だ。少し、アイドルたちの普段の仕事ぶりを見てみたくなってな。お前の代わりに、私がプロデューサー代理をすることにした」

P「いや無茶苦茶言わないでくださいよ! そんなの出来るわけないでしょう⁉ 社長の仕事とか、代わりにやれるもんじゃないでしょうが!」

社長「大丈夫だ。今週はそこまで重要な仕事は入っていない。お前でも何とかなるだろう」

P「そうだとしても社長代理なんて――」

社長「いいからやれ! 他の者には私が説明しておく! 言っておくが、お前に任せている間に業績が下がったら、許さんからな!」

P「なら代理とかさせないでくださいよ!」


321: 2017/04/24(月) 20:45:46.89


―――アイドル部門事務所


社長P「これでしばらくは大丈夫だな」

未央「会社が大丈夫じゃないんじゃ……」

社長P「少しの間だ。あいつなら上手くやるだろう」

卯月「社長さん、プロデューサーさんのこと、信頼しているんですね」

社長P「まあ……仕事の腕はな。それより、そこでソファに顔を埋めている渋谷のことだ」

凛「……」

ちひろ「凛ちゃん、大丈夫?」

凛「……まだ、大丈夫じゃないです……」

社長P「早くいつも通りの渋谷に戻さなければ……」

未央「でも、どうすればいいんでしょうか?」

社長P「……分からん」

卯月「社長さん⁉」

社長P「うーむ……私は恋愛経験が無いからな……」

未央「え、その歳で?」

社長P「本田、お前も後輩と一緒に代理をするか?」

未央「失言でした! すみませんでした!」

社長P「まったく……。しかしどうすれば……そうだ! あいつに聞けば……」

卯月「あいつ?」

社長P「お前たち、少し待っていろ」

未央「? はい」

卯月「分かりました」


《プルルルル――プルルルル――》


???『お姉ちゃん? 何か用?』

社長P「あー、いや、実はだな―――」


322: 2017/04/24(月) 20:46:32.71


―――数分後


社長P「―――助かった。ありがとうな」


《プツッ》


未央「社長、今の誰なんですか?」

社長P「ん? ああ、妹だ」

卯月「妹さんだったんですか」

社長P「さて、渋谷を元に戻す方法だが……」

未央「何かいいアイデア教えてもらえました?」

社長P「今週末に、バレンタインデーがあるだろう? そこで渋谷には、後輩にチョコを渡してもらう」

凛「ちょ、チョコ⁉ ぷ、プロデューサーに……チョ……あぁぅ――――っ!」

ちひろ「凛ちゃん⁉」

未央「しぶりん、こんな状態でチョコとか渡したら氏んじゃうんじゃないですか⁉」

社長P「いや氏にはしないだろう。それに渡すチョコは別に本命でなくてもいい。義理というていで渡せばいいんだ」

卯月「てい、ですか?」

社長「妹によるとだな、今の渋谷は自身の恋愛感情が膨れ上がっている状態なんだ。そして上手くコントロールできていない。今まで自覚していなかったものを、急に自覚したからだと思われるな。ロマンティックが止まらないわけだ」

未央「ふざけるのやめません?」

社長P「バレンタインに後輩にチョコレートを渡すのは、一度、膨れ上がる恋愛感情に歯止めをかけるためだ。自身の恋愛感情を遠回しにでも相手に伝えられれば、ひとまず落ち着けるだろう」

卯月「な、なるほど……」

社長P「……下手をするとさらに恋愛感情が膨れ上がる可能性があるが、その時はその時だ」

未央「今、小声で何か言いませんでした?」

社長P「何も言っていない。とにかくそういうわけだ。渋谷、聞いていたか?」

凛「……はい」

社長P「やれるな?」

凛「……。…………」

社長P「やれ!」

凛「⁉ は、はい!」

社長P「本田と島村は、渋谷のサポートをしてやれ」

未央「了解!」

卯月「凛ちゃん、頑張ろうね!」

凛「うん……」


323: 2017/04/24(月) 20:47:11.46


ちひろ「あの、社長、一つ聞いてもよろしいですか?」

社長P「なんだ千川」

ちひろ「凛ちゃんはアイドルですけれど……恋愛ってしても大丈夫なのでしょうか?」

社長P「恋愛は個人の自由だろう。例えアイドルだろうと、好きにすればいい」

凛「社長……」

社長P「――というのが私個人の考えだが、社長の立場としては見過ごせないことだな。仮に渋谷が後輩に告白して上手くいったら、その時は最悪引退してもらうしかないだろう」

卯月・未央『引退⁉』

凛「引退、ですか……」

社長P「あくまで仮の話だ。そもそも渋谷、お前告白できんだろう」

凛「……うぅ」

社長P「だがまあ、もし本当にそうなったら、あいつと一緒に花屋でもやればいいんじゃないか?」

凛「ぷ、プロデューサーと……花屋……⁉」





P『じゃあ凛、今日も店を開こうか』

凛『うん。……あなた』





凛「きゃわぁ――――――――――――――――――――っ⁉」

卯月「凛ちゃん⁉」

未央「これまでで一番悶えてるよ⁉」

社長「……やはり、早く治さなくては駄目だな」


324: 2017/04/24(月) 20:47:48.91


―――島村家 キッチン


卯月「じゃあ手作りチョコ作り、始めよう!」

凛「……手作りの必要あるの?」

未央「本命なんだから、手作りに決まってるじゃん」

凛「ぎ、義理って話だったでしょ!」

未央「それはあくまで義理っていうていなだけでしょ? 実際は本命なんだからさ」

凛「ほ、本命……うぁぅ~~~~~っ!」

卯月「凛ちゃん落ち着いて!」

未央「し、しぶりん、本命って言ったぐらいで取り乱さないでよ!」

凛「……ご、ごめん。私、なんかもう駄目みたい」

未央「恋患いって、ここまで厄介な病気なんだね」

卯月「凛ちゃん、意識しすぎじゃないかな……?」

凛「自分でも分かってるんだけど……」

未央「まあ、それを治すためにチョコを渡すんだしね。チョコ渡せば、元のしぶりんに戻れるって」

凛「あのさ……それ、本当なのかな? いまいち、チョコを渡しても治る気が……」

卯月「凛ちゃん、社長さんを信じようよ!」

未央「そうだよ、しぶりん!」

凛「そ、そうだよね。今は、信じるしかないよね」



卯月・未央(正直、私たちもあの話、怪しいと思ってるけど)



325: 2017/04/24(月) 20:48:20.27


卯月「それじゃあ、チョコを作ろうか。型は……やっぱりハート型だよね」

凛「それは無理だからやめて! そ、そんなの渡せないから!」

未央「でも本命って言ったらハートの形じゃ――」

凛「私のハートが持たないのっ!」

未央「そ、そっか。じ、じゃあ別のにしようね」

未央(なんだろう……今のしぶりん、凄く可愛いんだけど。すごくなでなでしたい……!)

卯月「未央ちゃん、どうかした?」

未央「……ううん、ニュージェネの新しい愛玩枠について考えてただけだよ」

卯月「そもそもそんな枠無いよね⁉」

未央「……知らずは本人ばかりなり」

卯月「どういう意味⁉」

未央「さて、とにかく1回作りますか。やるよ、しぶりん」

凛「……うん」


326: 2017/04/24(月) 20:49:00.08


―――社長室


P社長代理「書類の山が、全然減らない……」

秘書「社長代理、この書類追加です」

P社長代理「また増えた! これ絶対代理のやる量じゃないですよ! 早く社長呼んできたほうが―――」

秘書「社長代理ならば、この程度は朝飯前だと―――いえ、むしろ半日戻って夕飯前だと社長がおっしゃっていました」

P社長代理「なんで半日戻ったの⁉ 夕飯前って日が暮れてますよね⁉」

秘書「では私はこれで」


《ガチャ――バタン》


P社長代理「事務的な対応ですね! くそぉ……なんでこんなことに……」


《コンコン》


P社長代理「ひぃっ、また来た⁉……ど、どうぞ」

ちひろ「お疲れさまです、プロデューサーさん」

P社長代理「ち、ちひろさん……! もしかして応援に――」

ちひろ「仕事が大変だと聞いたので、スタドリを差し入れにきました」

P社長代理「これ飲んでまだまだ働けと⁉」

ちひろ「では私はこれで」


《ガチャ――バタン》


P社長代理「また事務的! こ、こうなったらいいさ……やってやらぁ―――――っ!」


327: 2017/04/24(月) 20:49:33.42


―――そんなこんなで、バレンタインデー当日 アイドル部門事務所


未央「ついにバレンタインの日がやってきたよ、しぶりん」

凛「うん……」

卯月「いよいよだね……頑張ってね、凛ちゃん」

凛「うん……」

ちひろ「凛ちゃん、応援してるわ」

凛「うん……」

未央「……しぶりん、1+1は?」

凛「うん……」

未央「しっかりしてよ、しぶりん!」

凛「⁉ ご、ごめん未央……」

社長P「渋谷、別に告白しろと言っているんじゃないんだ。チョコを渡すだけなんだぞ?」

凛「わ、分かっているんですけど……」

社長P「それも本命ではなく、義理というていで渡すんだ。緊張することなど何もないだろう」

凛「そ、そうなんですけど……」

社長P「……あーもうっ、じれったい! 渋谷、お前の携帯を貸せ!」

凛「えっ⁉ な、何をする気ですか⁉」


《ピ、ポ、パ……ピッ!》


社長P「……よし! 屋上に後輩を呼び出してやったぞ」

凛「なに勝手なことしてるんですか⁉」

社長P「いいからとっとと屋上に行け! 私は社長室へ行って、後輩の社長代理の任を解いてくる! すぐに奴を屋上へ向かわせるから、それまでに覚悟を決めておけよ!」

凛「そ、そんな……」


328: 2017/04/24(月) 20:50:01.38


―――346プロ 屋上


凛「チョコを渡すだけチョコを渡すだけチョコを渡すだけチョコを渡すだけ―――」


329: 2017/04/24(月) 20:50:34.10


―――屋上 凛から少し離れた隠れ場所


未央「しぶりん、自分に自己暗示かけてるよ……」

卯月「よっぽど緊張してるんだね……」

ちひろ「見ているこっちまで緊張してきますね……」

社長「お前たち、もうすぐだぞ」

未央「社長⁉ 社長室に行ったんじゃ……⁉」

社長「後輩の任を解いて、すぐさまここに来たんだ。途中でばれないように後輩を追い越すのは大変だったぞ」

卯月「そ、そこまでして見に来たんですか……」

社長「ここまで来て見逃せるか」

ちひろ「あっ、来ましたよ!」


330: 2017/04/24(月) 20:51:20.34


―――凛side


P「……あ、凛」

凛「コを渡すだっ⁉ ぷ、プロデューサー⁉」

P「今、なんか変なこと言ってなかったか?」

凛「い、言ってない! プロデューサーの気のせい!」

P「そうか……まあ、疲れが溜まってるからなぁ」

凛「プロデューサー……やつれてない?」

P「社長代理とかやらされたせいで、もうくたくただ。まったく、先輩の気まぐれにも困ったもんだよ」

凛「そ、そっか」

P「凛にもしばらく会ってなかったな。この1週間、ちゃんとやれてたか?」

凛「ま、まあ、うん。だ、大丈夫だったよ」

P「それなら良かった。それで、用ってなんだ?」

凛「! あ、ああ、うん……その…………えっと…………あの……」


331: 2017/04/24(月) 20:51:52.54


―――野次馬side


卯月「凛ちゃん、頑張って!」

未央「いけいけ、しぶりん!」

ちひろ「凛ちゃん、ゴーゴー!」

社長「さて、どうなるか……」


332: 2017/04/24(月) 20:52:53.52


―――凛side


凛「あ、あの……ぷ、プロデューサー!」

P「お、おお? な、なんだ、凛?」

凛「こ…………これっ! あ、あげる!」

P「え? あ、ありがとう」

凛「……うぅ…………」

P「えっと……これ、何?」

凛「き、今日はバレンタインだからっ!」

P「バレンタイン?……あ、あれ今日か! 社長代理やってたせいで、日付の感覚が曖昧になってた! そっかそっか……じゃあこれ、チョコなんだな?」

凛「そうだけど! わ、悪い⁉」

P「えぇ⁉ い、いや悪くはないけどさ……」

凛「ぎ、義理だから! 義理だからね⁉ 義理チョコなのっ!」

P「3回も言わなくてもよくね⁉ 分かってるって。……でもすげぇ嬉しい。ありがとな」

凛「……う、うん」

P「……そういや、本命あげる相手とかいるのか?」

凛「うぁえぇぇ⁉」

P「そんなに驚くの⁉ ま、まさか本当にいるのか⁉」

凛「いや、それは、いな、いあ、あう……う、うううぁああああっ!」

P「どうした⁉ え、どうしたの⁉」

凛「き、聞いて! 聞いて、プロデューサー……!」


333: 2017/04/24(月) 20:53:22.22


―――野次馬side


未央「え、まさか告白しちゃうの⁉」

卯月「凛ちゃん、思い切ってそこまで⁉」

ちひろ「まさかの急展開ですか⁉」

社長「面白くなってきたぞ……!」


334: 2017/04/24(月) 20:54:34.50


―――凛side



凛「わ、わた…………私、は…………」




P「う、うん」






凛「…………プ、プロデューサーの…………こと、が…………」






P「うん?」








凛「すっ……………………………………す、き―――」










335: 2017/04/24(月) 20:55:39.01















凛「―――き、嫌いじゃないからっ! プロデューサーのこと!」















336: 2017/04/24(月) 20:56:11.05


―――野次馬side


卯月「え?」

未央「なんて?」

ちひろ「はい?」

社長「……ヘタレめ」


337: 2017/04/24(月) 20:57:01.02


―――凛side


凛「ほ、ほらプロデューサーこの前誤解してたよね⁉ 私から嫌われてるとか! 誤解解けてるか心配だから、ちゃんと言っておこうと思って! 嫌いじゃないからね⁉」

P「え、ああ、うん、そっか。……いや、でもそれはこの前の電話で分かって――」

凛「ちゃんと分かった⁉」

P「わ、分かりました!」

凛「はぁ……はぁ……」

P「……それで、本命の相手は結局い―――」

凛「⁉」

未央「ひっさしぶりー、プロデューサー!」

P「うおっ⁉ み、未央⁉ どっから出てきた⁉」

卯月「プロデューサーさん、お元気でしたか?」

P「卯月まで……お前たち、どっかに隠れてたのか?」

未央「そんなことより! 私からも義理チョコあげるね!」

P「お、おう? さ、サンキュな」

卯月「はい、プロデューサーさん。私からも義理チョコです」

P「卯月もありがとな。……でもさ、なんでお前たちわざわざ渡す時に義理って言うんだ? 別に言わなくても分かってるぞ」

未央「そこはまあ一応ね」

卯月「一応です」

P「一応ってなんだ」

未央(ふぅ……間一髪だったね、しぶりん)

卯月(ギリギリで間に合って良かった)

凛(2人とも、ありがとう。あのままだったら、私……)

未央(しぶりんはよく頑張ったよ)

卯月(もう十分だから)

凛(うん……。私、もう無理……)

P「? どうしたお前たち?」

未央「何でもないよ!」

P「なんか隠されてる気が……」


338: 2017/04/24(月) 20:57:28.17


ちひろ「気のせいですよ、プロデューサーさん」

P「え、ちひろさん? ちひろさんまでいたんですか?」

ちひろ「いたんです。そしてこれが義理チョコです」

P「おお、ちひろさんからも貰えるとは。ありがとうございます」

ちひろ「いえいえ、今日出勤する時にコンビニで買ったものですから」

P「その情報要らなくないですか⁉」

社長「後輩、私からも義理チョコをやろう」

P「先輩までいたんだ……。先輩、今年もチロ○チョコですか?」

社長「毎年それでは芸がないからな。今年は一味違うぞ」

P「お、ということはようやく10円チョコじゃなくなって――」

社長「5円チョコだ」

P「まだ下があっただと⁉」

社長「ホワイトデーには100倍返しでよろしくな」

P「図々しさ半端じゃないですね!……まあ100倍でも500円ですし、それぐらいいいですけど」

未央「プロデューサー、私たちの分も忘れないでね。……特にしぶりんの分を!」

卯月「ホワイトデー、楽しみにしています。……特に凛ちゃんが!」

凛「ふ、2人とも何言ってるの⁉」

P「なぜ特に凛なのかは分からんが、ちゃんとお返しはするよ。みんな、ありがとな」

凛「……チョコレート、溶けないうちに食べてよ」

P「冬なんだから、溶けたりしないだろ?」



凛「……プロデューサーの、ばか」


339: 2017/04/24(月) 20:57:57.65


―――社長室


社長「ふふ……今日は実に面白いものが見られたな」

秘書「し、社長」

社長「なんだ?」

秘書「社長が社長代理に業務を任せていられた間の、我が社の株価なのですが……」

社長「ああ、下がったか?……まあ仕方ない。なんとか元の――」

秘書「いえ、むしろ上がっていまして……」

社長「何だと⁉」

秘書「た、たまたま社長代理を任された期間に、上がっただけかもしれませんが……」

社長「あ、あいつ……そういえば、溜まっていた書類はどうした? 見当たらんぞ」

秘書「す、全て社長代理が処理しました」

社長「あれを全部だと⁉ あ、相変わらず後輩のやつ、仕事の腕だけはいいな……これからも、たまに任せてみるのも悪くないか……?」

秘書「そ、それはもうやめてください!」


340: 2017/04/24(月) 20:58:33.31


―――翌日 アイドル部門事務所


未央「そういえばチョコは渡せたけど、しぶりん、あの重度の恋患い治ったの?」

凛「うん、もう大丈夫。2人とも、昨日まで迷惑かけてごめん」

卯月「迷惑なんかじゃないよ。ふふっ、凛ちゃんが元に戻って良かった」



P『おーい凛。ちょっと次の仕事のことで話があるんだけど』



凛「あ、うん。分かった」


341: 2017/04/24(月) 20:59:00.58


P「―――そういえば、凛。貰ったチョコすげぇ美味かった。あれ、手作りなのか?」

凛「うん、そうだけど」

P「やっぱそうか。手作りだからか、市販のものより美味い気がしてな」

凛「味なんて大して変わらないよ」

P「違うって。……そう言われると自信無くなるけど」


342: 2017/04/24(月) 20:59:34.26


卯月「普通にプロデューサーさんと話せてる……本当に元に戻ったみたいだね、凛ちゃん」

未央「やっぱり、しぶりんはああじゃないと」

卯月「うん。……うん? あぁっ⁉」

未央「ど、どうしたの、しまむー?」

卯月「み、未央ちゃん! 凛ちゃんの右手!」

未央「右手?……あっ⁉ し、しぶりん―――」



未央「右手で自分のももをつねってるー⁉」



343: 2017/04/24(月) 21:00:02.89


P「―――いや、やっぱり美味かった。普通、手作りは市販より美味いだろ?」

凛「それ、どこの普通?」

P「だって手作りには作った人の愛情が籠ってるじゃんか」

凛「……作るの、片手間だったかも」

P「片手間だったの⁉ 愛情0じゃん⁉」

凛「冗談だよ。それなりにちゃんと作ったから」

P「それでもそれなりなんだ!」


344: 2017/04/24(月) 21:00:55.63


未央「しぶりん、澄ましてあんなこと言ってるけど、つねるの止めたら絶対また顔真っ赤になるよ⁉」

卯月「表情も、若干にやけが堪えられていないような……プロデューサーさんは気づいてないみたいだけど……」

未央「しぶりん治ってないじゃん! 無理矢理耐えてるだけじゃん、あれ!」

卯月「た、耐えられるほどにはなったって思えば……」

未央「見える、私には見えるよ……しぶりんから出る、恋する乙女オーラが……! 全然隠しきれてないもん!」

卯月「こ、これはもう……どうしようも……」

未央「……だね」


345: 2017/04/24(月) 21:01:30.65


P「えぇ……それなりかぁ……。……まあ、それでもいいか。美味かったし」

凛「……ぅぅ」

P「? どうかしたか?」

凛「何が? どうもしてないよ」

P「そっか。ならいいけど」


346: 2017/04/24(月) 21:03:12.29





凛(私の作ったチョコ、美味しいって……)










凛(……私、やっぱりもう駄目だ)















凛(プロデューサーのこと…………好きすぎる……っ)















347: 2017/04/24(月) 21:04:18.83


―――現在


未央「―――ということがありましたとさ。おしまい」

奈緒「そ、そんなことが……」

加蓮「あったんだ……」

卯月「あったんです」

凛『……笑いたければ笑えばいいよ。さあ笑いなよ、私の醜態を笑いなよっ!』

奈緒「い、いや、そんなこと言われてホントに笑ったらクズじゃんか。笑わないって」

加蓮「からかわないって約束したし、笑ったりしないよ。私たちがお願いして聞かせて貰ったんだしさ」

凛『……笑わないの? 『普段澄ましてるくせに、ぷふーっ』とか』

奈緒「だからそれ最低だろ! そんなこと思ってないから!」

加蓮「まあ恥ずかしいのは分かるけどさ。いい加減押し入れから出てきなよ」

凛『……うん』


《ガラ―――》


凛「―――2人とも、顔がにやけてるんだけどっ!」

奈緒「い、いやー、これは仕方なくないか? 『普段澄ましてるくせに、ぷふーっ』とは思わないけどさ」

加蓮「『普段澄ましてる、あの凛がねぇ……にやにや』とは思うよ」

凛「それ大して変わらないよね⁉……よく見たら、卯月と未央もにやけてるし!」

卯月「あ、あはは、あの時のこと思い出したら、こうなっちゃって」

未央「あの時のしぶりん、微笑ましくてねー」

凛「うぅ……だ、だから嫌だったのに……!」

加蓮「ふふっ、凛の意外な一面が分かったね」

奈緒「恋する乙女モードと名付けようか」

凛「名付けなくていいから!」


348: 2017/04/24(月) 21:05:01.83


卯月「それで2人は、恋する気持ちは分かったの?」

奈緒「そうだなぁ、なんとなく分かったような……」

加蓮「分からないような……」

凛「私がこんな思いをしてるのに、それはないよね……?」

奈緒「い、いやうん、分かった気がする! 今、唐突に理解した!」

凛「あからさますぎるよ」

奈緒「ほ、ホントに分かったって。あれだよな……恋って言うのは、自分でも制御できないほどに強烈な思いなんだよな」

加蓮「私も分かったよ。好きな人のことを考えると、その辺を転げまわるくらいになっちゃうんだよね」

凛「2人とも、遠回しに私をからかってるよね?」

奈緒「そんなつもりないって!」

加蓮「そうそう。凛の恋愛話、ホントに参考になったよ。ありがと♪」

凛「……ならいいけど。2人とも、さっきの話は他言無用だからね。誰かに話したら、絶対に許さないよ」

奈緒「わ、分かった分かった」

加蓮「はい、指切りげんまん」

凛「……卯月と未央もだよ? もうこれ以上、あのことを知っている人を増やさないで」

卯月「うん、分かった」

未央「別に隠す必要ないのに」

凛「未央?」

未央「了解しました、サー!」


349: 2017/04/24(月) 21:05:39.09


―――翌日 事務所


凛「おはよう」

P「おう、おはよう凛」


《シュタンッ!》


P「なんで飛びのいた⁉」

凛「ちょ、ちょっと今日は勘弁して……明日にはもう大丈夫だから」

P「何が⁉」

卯月(凛ちゃん、昨日あのこと話したから……)

未央(あの時みたいに意識しちゃってるね)

奈緒(あれがそうなのか)

加蓮(ふふっ。凛、かーわいっ♪)

凛「そ、そこの4人。今すぐ、そのにやにや笑いをやめて。……やめてったら!」



 第9話 終わり


350: 2017/04/24(月) 21:06:23.46


―――凛の話を聞いた日の夜 女子寮 大浴場


加蓮「まさか、凛にあんなことがあったなんてね」

奈緒「意外だったよな」

加蓮「恋かー……どんなのなんだろう?」

奈緒「話を聞いて、おぼろげには分かった気がするけど……やっぱ実際のとこは、自分が恋してみなきゃ分かんないもんな」

加蓮「奈緒は恋してみたいって思ったりは……しないよね、奈緒だし」

奈緒「それ、どういう意味だ⁉ あ、あたしだって、人並みにそういうのに憧れたりするよ!」

加蓮「えっ、意外。奈緒でもそう思うんだ」

奈緒「別に意外じゃないだろ⁉ あたしだって、年頃の女子高生なんだぞ!」

加蓮「あ、そういえばそうだったっけ」

奈緒「そんな今まで忘れてたみたいな⁉」

加蓮「あははっ。ねぇ、奈緒。私たちは、どんな人を好きになるんだろうね?」

奈緒「……さあなー、想像できない」

加蓮「私は、優しい人だったらいいなーって」

奈緒「そりゃ冷たいよりは優しい方がいいだろ」

加蓮「……そういうの、よくない? そういう揚げ足みたいなの、今はよくない?」

奈緒「うっ、悪かったよ。うんうん、優しい人がいいよな」

加蓮「それと……意地悪じゃない人がいいよね」

奈緒「今の間はなんだ? なんでこっち見てから目を逸らした?」

加蓮「別にー」

奈緒「あたしは加蓮も十分意地悪だと思うぞ!」

加蓮「いやいや、十二分に意地悪な奈緒には負けるよ」

奈緒「こ、このぉ……!」

加蓮「……やる気?」

奈緒「ああ、やろうじゃんか……!」

加蓮「なら、受けて立ってあげる……!」



奈緒・加蓮『くらえぇっ!』



351: 2017/04/24(月) 21:06:50.28


―――数分後


奈緒「あははははっ! あ、あたしの負けだからっ! もうやめっ!」

加蓮「そうはいかないなぁ♪……こちょこちょこちょこちょっ!」

奈緒「わひひひひっ! の、のぼせるって!」

加蓮「もみもみ」

奈緒「どこ触ってんだ⁉ や、やめっ、やめろぉ―――――っ!」


352: 2017/04/24(月) 21:07:31.62


―――加蓮の部屋


未央「で、ホントにのぼせちゃったんだ……かれんが」



加蓮「きゅぅ……」



幸子「逆じゃないですか?」

奈緒「ったく、自分がのぼせてちゃ世話ないよな」



 ほんとにおしまい


359: 2017/04/25(火) 22:04:20.43


―――レッスン室


ルキトレ「―――はい、お疲れさまでした!」

加蓮「ふぅ……」

奈緒「ルキさん、どうだった?」

ルキトレ「そうですねー…………十分合格点です!」

奈緒「よっし!」

加蓮「やった!」

ルキトレ「でも、ライブまでもう少しありますから、明日からは完成度を上げていきましょう」

奈緒・加蓮『はーいっ』


360: 2017/04/25(火) 22:04:55.17


―――レッスン後 事務所前廊下


奈緒「いよいよもうすぐデビューライブか」

加蓮「なんとか間に合って良かったね」

奈緒「だな」


《ガチャ―――》


奈緒「なおかれん、戻ったぞー」

P「おう、お疲れさん。お前たちにプレゼントが届いてるぞ」

加蓮「プレゼント?」

奈緒「誰から?」

P「俺からだ」

奈緒「加蓮、お菓子でも食べようぜ」

加蓮「確かポテチがあったはずだけど……」

P「一瞬で興味を失っただと⁉」

加蓮「だって、どうせびっくり箱とかでしょ?」

奈緒「そういうのは幸子にでもやれよ」

幸子「なんでボクなんですか!」

奈緒「あ、いたのか」

幸子「最初からいましたよ!」

藍子「まあまあ幸子ちゃん。クッキーでも食べて落ち着いてください」

幸子「そんなことで落ち着きますか! もぐもぐ……あ、美味しいですね、これ」

奈緒「落ち着いてるし……」

加蓮「藍子たち、ティータイム?」

藍子「はい、みんなでお茶会をしてたんです」

きらり「きらりたち、先にレッスン終わったから、事務所でまったりしてたんだぁ」

杏「うーん……飴には紅茶が合うね」

奈緒「え、合うか……?」

P「わりといけるんじゃないか?……じゃなくて! 奈緒と加蓮、俺の話を聞け!」

奈緒「だからびっくり箱とかいいって」

P「違うっつうに!」

奏「でも確かにプロデューサーなら、びっくり箱とかやりそうね」

P「お前らは俺をなんだと思ってるんだ……そんな小学生みたいなことするか」

奈緒「この前、ドアに黒板消し挟んでた奴が言えた台詞か!」

加蓮「もれなく幸子が食らってたね」

P「……たまには童心に返りたい時もある」

加蓮「しょっちゅう返ってるくせに……」


361: 2017/04/25(火) 22:06:29.42


P「……。……なぁ、前から気になってたんだけど、お前ら俺に冷たくないか? 気のせい?」

奈緒「冷たいって言うより……ぞんざいな扱いかな」

P「より酷くね⁉」

加蓮「プロデューサーがろくなことしないからでしょ……。まあでも、嫌いとかじゃないから、安心していいよ」

P「本当か?」

奈緒「特に好きでもないけどな」

P「その補足いらなくね⁉……ったく、せっかくライブの衣装が届いたってのに」

奈緒・加蓮『衣装⁉』

P「耳ざとい奴ら!」

奈緒「プレゼントって衣装のことだったのか!」

加蓮「どんなの? 見せて見せて!」

P「残念ながら、俺の扱いがぞんざいな2人には、最後に見せることにします。他のみんなが戻ってくるのを、今か今かと待つがいい……!」

奈緒「そういうことするからだろ!」


362: 2017/04/25(火) 22:07:07.86


―――少し経って


P「デビュー組、全員揃ったな。じゃあ衣装を出すぞー」

奈緒「マジでみんなが来るまで見せなかったな……」

加蓮「やることが小さいんだから……」

P「聞こえてるぞ!……はい、まずは楓さんたちの分です」

楓「ありがとうございます、プロデューサー」

美嘉「へぇ、かっこいいじゃん☆」

みく「……可愛くないよ、Pチャン!」

P「曲のイメージに合った衣装なんだから、そりゃそうだろ。前にも説明しただろ、みく」

みく「む……仕方ないにゃ」

奈緒「みくたちのデビュー曲、クールな感じの曲だったっけ」

P「みくの奴、それで合宿の時に文句言いに来たからな……」

加蓮「文句?」


363: 2017/04/25(火) 22:07:44.72


―――合宿中の一コマ


みく「どういうことにゃ、Pチャン!」

P「何が⁉」

みく「みくたちのデビュー曲、全然可愛くないよ! ネコチャンアイドルとして、異議を申し立てるにゃ!」

P「ああ、そういうことか。……ふっ、浅はかなり、前川みく」

みく「にゃ⁉」

P「確かに猫は可愛い。ネコチャンアイドルであるみくが、可愛らしい曲を歌う……道理だろう」

みく「うんうん、その通りにゃ。だからもっと可愛い曲に――」



P「それが浅はかだと言っているんだ!」



みく「にゃにゃ⁉」

P「みく、お前に問う……お前の言うネコチャンとは何だ?」

みく「それはもうプリティーで、キュートで、チャーミングで、みんなの心を癒してくれるカワイイ生き物にゃ!」

P「大分似たような単語ばかりだった気がするが……まあいい。確かに猫は可愛いな」

みく「そうでしょー?」



P「だがしかし!」



みく「にゃにゃにゃ⁉」

P「可愛いだけが猫じゃないだろう! よく考えてみろ、みく! お前が言うネコチャンは、そんなにいつも愛想を振りまいていたか⁉」

みく「⁉ ネコチャンは……ネコチャンは普段わりとそっけないにゃ!」

P「そう! 猫は甘えてくるときもあるが、普段は澄ましてる! いつもいつも可愛くにゃんにゃん言ったりはしない! それが本当の猫だろう! みく、お前が目指すのがネコチャンアイドルだと言うのなら、時にクールさも必要なんじゃないのか!」

みく「クールさ……! め、目から鱗にゃ……確かにPチャンの言うとおりかも……」

P「だろう? そしてクールさを見せてから、キュートアピールをすると……」

みく「ぎゃ、ギャップ萌え……! 相手はいちころにゃ!」

P「そう! だからデビュー曲はクールな感じで行こうぜ」

みく「分かったにゃ!……でもやっぱりカワイイのも歌いたいなぁ」

P「そう言うと思って、カップリング曲は可愛い感じのを用意してるから、安心しろ」

みく「さすがPチャン!」


364: 2017/04/25(火) 22:08:17.98


―――現在


加蓮「そんなやりとりがあったんだ……」

奈緒「それでクールなわけか」

P「そういうことだ。さて、じゃあ次はまゆとありすの衣装だな……これか。ほら、2人とも」

まゆ「ありがとうございます、プロデューサーさん♪」

ありす「これが私たちの衣装ですか……悪くないですね」

奈緒「悪くないって……ありす、目が輝いてるぞ」

ありす「⁉ そ、そんなことありません!」

加蓮「素直じゃないんだから」

P「そういえば、ありすも曲に文句を言いに来たな……」

奈緒「え、また回想入るのか?」


365: 2017/04/25(火) 22:08:45.72


―――合宿中の一コマ その2


ありす「どういうことですか、プロデューサー!」

P「今度はなんだよ⁉」

ありす「私たちのデビュー曲、全然大人っぽくないです! もっとクールな曲でお願いします!」

P「お前らはどれだけ注文が多いんだ……。逆に聞くが、大人っぽい曲ってどんなのだ?」

ありす「それは……クラシックとか?」

P「アイドルの曲にそれ求めるの⁉ オペラじゃないんだぞ!」

ありす「あ、あくまで例を挙げただけです!」

P「なんの例にもなっていない気がするが……。ありす、そもそも大人っぽい曲である必要はあるのか?」

ありす「そ、それはもちろんあります。え、えっとですね……」

P(今考えるのか……)

P「ありす……そもそも大人なら、大人っぽい曲を歌いたいとか言わないと思うが」

ありす「えっ⁉」

P「だってそうだろ? 大人なんだから、どんな曲を歌おうと、それは大人の曲。大人っぽいとか言わんだろ」

ありす「! 目から鱗が落ちました」

P「お前が大人なら、どんな曲を歌おうと大人っぽいんだ。そうだろ?」

ありす「そうですね、その通りです!」


366: 2017/04/25(火) 22:09:23.02


―――現在


奈緒「おい、今のはみくのと違って理由になってないだろ。テキトーにあしらっただけだろ」

P「人聞きの悪いこと言うな!……ちょっと誤魔化しただけだ」

奈緒「意味同じだろ!」

P「じゃあ奈緒は、ありすとまゆに大人っぽい曲歌わせた方がいいと思うのか?」

奈緒「……。……やめといた方がいいと思う」

P「そうだろ。優しい嘘と言うのも、時には必要なんだ。まあ、いつかはそんな曲も歌わせてやりたいけどな」

奈緒「ああ、いつかそうしてやってくれ」

P「さて……これで、ちゃんとみんなに衣装を渡し終えたな」

奈緒「おい」

加蓮「プロデューサー、いい加減にしないと本気で怒るよ?」

P「じょ、冗談だよ。えーと……ほれ、お前らの衣装だ」

加蓮「やっと私たちのだよ……。わ、いいね、この衣装♪」

奈緒「へー、これが……え、これ、あたしが着るのか?」

加蓮「何言ってるの?」

P「お前以外に誰が着るんだ」

奈緒「だ、だって、美嘉たちみたいな、かっこいい系じゃないのか?」

P「いや、お前たちの曲はクール系じゃないだろ」

加蓮「奈緒、あの曲にはこれで合ってると思うけど?」

奈緒「で、でもこんな……こんな可愛い衣装、あたしが着るのか⁉ む、無理無理無理無理無理っ! これ着てステージ立つとか、恥ずかしすぎるから!」

P「こ、これそこまで可愛い系か?」

加蓮「そうでもないと思うけど……ありすちゃんたちの方が、ずっと可愛らしい衣装だし」

奈緒「スカートひらひらしてる! そして短い! あと、なんかハート付いてる! この王冠、何⁉ あぅぁ―――――っ!」

P「お、落ち着け!」

加蓮「王冠関係ないし……」

奈緒「き、着れない! こんなのあたしは着れないからっ!」

加蓮「一回着ちゃえば、そんなに恥ずかしくないって」

奈緒「一回も着たくなーいっ!」

加蓮「あー、もう、わがまま言わない! みんな手伝って! 奈緒に無理矢理この衣装を着させるよ!」

美嘉「オッケー☆」

みく「分かったにゃ!」

楓「任せて」

ありす「了解です」

まゆ「奈緒ちゃん、すぐに済みますから」

奈緒「わ、馬鹿やめろ! っていうかプロデューサーいるだろ!」

加蓮「プロデューサー、今すぐ出てって。ついでに私たちも衣装に着替えるから、覗いたりしたら目を潰すよ」

P「怖い!」


367: 2017/04/25(火) 22:09:55.41


―――廊下


P「おかえりー」

凛「ただいま……こんなところで何してるの?」

P「女子の着替え待ちだよ。学生時代に戻った気分だ」

未央「着替え? 事務所で?」

P「ライブの衣装が届いたから、奈緒たちが着替えてるんだよ」

卯月「衣装が……それはすぐに着たくなりますよね」

P「まあ、約一名そうでもなかったんだが」

卯月「? じゃあ私、ちょっと中に――」

P「いや、今は開けるな! 俺の目が潰されるだろ!」

卯月「どういうことですか⁉」

P「もうすぐだろうから、とにかくちょっと待て」



美嘉『もういいよ、プロデューサー』



P「タイミングいいな……じゃあ開けていいぞ、卯月」

卯月「は、はい? じゃあ―――」


《ガチャ―――》


美嘉「じゃじゃーん☆」

みく「これぞ、クールみくにゃ☆」

楓「あら? 卯月ちゃんたち、戻ってきてたのね」

卯月「わぁ……! 楓さんたち、すごくかっこいいです!」

未央「へー、みくにゃんも意外と似合ってるね」

みく「そうでしょー? クールネコチャンだからね」

未央「何その宅急便みたいな」

みく「そっちじゃないにゃ!」

凛「まゆとありすは可愛らしい衣装だね」

ありす「大人は何を着ても大人ですから」

凛「……? そ、そう」

まゆ「プロデューサーさん、どうですか?」

P「似合ってるぞ、まゆ」

まゆ「うふふ♪ ありがとうございます♪」


368: 2017/04/25(火) 22:10:44.19

凛「……あれ? 奈緒と加蓮は?」

卯月「そういえば、いないね」

未央「2人の分の衣装も届いたんじゃないの?」

P「届いてるんだが……どこ行ったんだ?」

美嘉「2人なら、あそこ」



奈緒『やだ! あたしはここから出たくない!』

加蓮『なに杏みたいなこと言ってるの! 机の下なんかに入ってたら、衣装がしわになっちゃうでしょ! 早く出てきなって!』

奈緒『いーやーだーっ!』



凛「何をしてるの?」

みく「奈緒チャンがぐずってるんだよ」

P「往生際の悪い奴だ……」



加蓮『しょうがない……きらり、お願い』

奈緒『⁉ そ、それはずるいだろっ!』

きらり『奈緒ちゃん、良い子だから出てくるにぃ☆』

奈緒『や、やめ……いやぁ――――――――――っ⁉』



P「強硬手段に出たか」

凛「無理矢理引きずり出したね」

きらり「―――よいしょっと。奈緒ちゃんをお届けっ☆」

奈緒「うぅ……あたしは杏じゃないぞ!」

杏「その言い方おかしくない? 杏も荷物じゃないぞっ!」

幸子「いつも運ばれてるじゃないですか」

加蓮「全く、やっと出てきたよ。なんで隠れるかな」

奈緒「だ、だってさ……ん?」

P「へぇ……」

奈緒「っ! らぁっ!」

P「危ねっ⁉ の、覗いてもいないのに目を潰そうとするな!」

奈緒「プロデューサー、あたしのこと見てただろ!」

P「見てたけど⁉ 見てたら目を潰すのか、お前は⁉」

奈緒「その目が気に入らない……あたしを馬鹿にする目だ……!」

P「いや、馬鹿になんてしてないぞ⁉」

奈緒「嘘だっ!」



P『ぷふーっwww こいつ、この衣装似合わねーwww』



369: 2017/04/25(火) 22:11:27.34


奈緒「とか思ってるんだろ!」

P「被害妄想しすぎだ、お前! そんなこと思うか!」

奈緒「じゃあ、なんて思ってるんだ?」

P「いや普通に、似合ってるなって――」

奈緒「らぁっ!」

P「だからやめろっつうに! なんで似合ってるって言ったのに、再度攻撃するんだ⁉」

奈緒「こ、こんなカッコ似合うワケないだろ! 馬鹿にすんなっ!」

P「どう言えば満足なの、お前⁉」

加蓮「いい加減にしなって、奈緒。普通に似合ってるよ、その衣装」

奈緒「加蓮は似合ってるけどさ……あたしは別に―――」

加蓮「奈緒、本当はその衣装着られて嬉しいくせに」

奈緒「なっ⁉ う、嬉しいわけあるか! ちっとも嬉しくなんかないっ!」

加蓮「へー……でも、私は見逃さなかったよ? その衣装を着た時、奈緒の口元が一瞬にやけたのをね!」

奈緒「⁉ にゃ、にゃにを根も葉もないことを!」

P「図星か」

凛「分かり易いね」

奈緒「ち、違うっ! そんな、そんなにやけたとか――」

加蓮「奈緒、写真撮るよー? はい、決めポーズ」



奈緒「キラッ☆」

《パシャッ》



『………………』



奈緒「……はっ⁉」

加蓮「そ、そんなポーズまでやっといて、嬉しくないとか……っ」

P「最高に笑顔だったな」

凛「うん、今まで見た中で一番の笑顔だった」

卯月「奈緒ちゃん、可愛いです!」

未央「かみやん……ナイススマイル!」

奈緒「う……うぁ……うぁぁ……」

加蓮「奈緒、素直になりなって♪」

奈緒「う、うわ―――――――――――んっ!」


370: 2017/04/25(火) 22:12:20.18


―――数分後


P「―――よし。みんな、衣装のサイズが違ったりはしなかったみたいだな。問題なくて良かった」

凛「衣装とは別の所で問題が発生してる気がするけど」

奈緒「うぅ……もう嫌だ……恥ずかしさで氏ぬ……」

加蓮「氏なないから」

P「奈緒、お前そんなんでライブとか出来るのか?」

奈緒「! で、出来るに決まってるだろ!」

P「そんな真っ赤な顔で言われても説得力無いんだが……」

奈緒「あ、赤くなんかないっ!」

P「ゆでダコみたいだけど⁉」

加蓮「大丈夫、プロデューサー。このカッコを奈緒に慣れさせればいいだけだよ」

P「慣れさせる?」

奈緒「ど、どうやって?」



加蓮「このカッコで、今から社内をぐるりと回って来るの」



奈緒「なに馬鹿なこと言い出してるんだ⁉」

加蓮「馬鹿なことじゃないでしょ。人前に出れば、そのカッコも慣れるって」

奈緒「人前に出るのがおかしいだろ!」

加蓮「ついでにライブの宣伝もすれば、一石二鳥!」

奈緒「身内に宣伝してどうすんだ!」

加蓮「じゃあ外行きたいの?」

奈緒「い、行きたくないけど……」

加蓮「ならいいじゃん。さすがに私も、この衣装着て外歩くのはきついし。宣伝すれば、他の部署の人がライブに来てくれるかもしれないでしょ? 少しでも多くの人が来てくれた方が、嬉しいしさ」

奈緒「い、いや、確かにそうだけどさ」


371: 2017/04/25(火) 22:12:57.31


加蓮「というわけでプロデューサー、行ってくるけどいいよね?」

P「うーん……まあいっか。会議してるとことかには行くなよ?」

加蓮「りょーかい」

奈緒「ホントに行くのか⁉」

美嘉「あ、宣伝するなら、アタシたちも行くよ」

楓「みんなのライブだものね」

加蓮「じゃあ、全員で行こっか」

みく「うん、面白そうにゃ!」

ありす「わ、私もこの衣装で人前に出るのは多少恥ずかしいんですが」

まゆ「じゃあ、奈緒ちゃんと一緒に克服しましょう」

奈緒「なんでみんな乗り気なんだよ! は、放せ加蓮! あたしは行くとは――」

加蓮「奈緒が行かなきゃ意味ないでしょ。さ、行くよー」

奈緒「い、嫌だぁ―――――っ!」


《ガチャ―――バタン》


P「本当に往生際が悪いな、奈緒の奴」

凛「プロデューサー、大丈夫なの? 他の部署の迷惑になるんじゃ……」

P「まあ大丈夫だろ。もうすぐ定時だし。うちの会社、良い人ばっかだしな」

凛「楽観的なんだから……」


372: 2017/04/25(火) 22:13:27.36


―――1階 ロビー


加蓮「私たち、今度の日曜ライブやるので、良ければ見に来てくださーい!」

奈緒「場所言わなきゃ来れないだろ!」

加蓮「詳細はWEBで」

奈緒「サイトのアドレスは⁉」

加蓮「この辺に出てるでしょ」

奈緒「現実世界じゃテロップは実装されてないんだけど!」

若手社員「へー、漫才ライブをやるのか」

奈緒「いや漫才ライブじゃなくて、アイドルのライブですよ!」

若手社員「あ、言われてみれば、そんな感じの衣装だ。てっきり漫才コンビかと思ったよ」

奈緒「うち、お笑い事務所じゃないでしょう⁉」

女子社員「あなたたち、アイドル部門の子?」

加蓮「はい、そうです」

女子社員「ふふ、可愛い衣装ね。2人とも似合ってるわ」

加蓮「ほら奈緒、似合ってるって」

奈緒「い、いちいち言わなくていいっ!」


373: 2017/04/25(火) 22:13:55.18


―――3階 食堂


美嘉「カリスマJK、城ケ崎美嘉でーす☆」

みく「ネコチャンアイドル、前川みくにゃ!」

楓「夕飯はぶりの照り焼きにします、高垣楓です」

みく「楓さん、それ何の紹介にもなってないにゃ!」

美嘉「おばちゃんたち、暇だったらライブ見に来てね」

食堂のおばちゃんA「あいよ」

おばちゃんB「子供と一緒に行こうかねぇ」


374: 2017/04/25(火) 22:14:22.27


―――5階 廊下


まゆ「さあ、ありすちゃん」

ありす「ら、ライブやります。ぜひ来てください」

おじさん「ほう……お嬢ちゃんたちが?」

ありす「はい」

おじさん「ふむ……時間があれば、ぜひ行ってみるとしよう」

ありす「あ、ありがとうございます!」


375: 2017/04/25(火) 22:14:56.05


―――6階 廊下


奈緒「加蓮、まだやるのかー? もういいだろー」

加蓮「んー、じゃあこの階を回ったらね」

奈緒「この階は回るのかよ……」

社長「……何をしているんだ、お前たちは」

奈緒・加蓮『社長⁉』

社長「それはライブの衣装か? なぜそれを着てこんな所にいる?」

加蓮「え、えーっとですね―――」


―――説明中


社長「―――なるほどな。……社内で宣伝してどうする」

奈緒「あたしもそう言ったんですけど……」

社長「はぁ……、まあ好きにしろ。だが、あまり遅くならないうちに帰宅しろよ」

加蓮「あ、はい……社長って意外と優しいよね」

奈緒「確かにそうだな」

社長「……ああ、そういえば神谷」

奈緒「なんですか?」

社長「くくっ、中々いい笑顔だったぞ」

奈緒「? なんの話ですか?」

社長「この写真だ」

奈緒「写真?……これさっき加蓮が撮ったやつじゃん⁉」

加蓮「あれ? どうして社長が?」

社長「本田から送られてきた」

奈緒「未央の奴、なにしてんだ⁉……いや、そもそもなんで未央がこの写真のデータを……加蓮! 未央に送ったな⁉」

加蓮「うん。未央というより、事務所のみんなに送ったけど」

奈緒「あたしの恥ずかしい写真をみんなに送るなーっ!」

社長「その台詞は誤解を招きそうだな」

奈緒「い、今すぐそれ消してください社長!」

社長「こんな面白――もとい、可愛い写真を消せるはずないだろう?」

奈緒「今、面白いって言いかけましたよね⁉」

社長「アイドルらしくていいじゃないか。その調子で頑張れよ、神谷。……くくくっ」

奈緒「ニタニタ笑いで頑張れとか言われても、馬鹿にされてるとしか思えないんですけど!」


376: 2017/04/25(火) 22:15:30.76


―――事務所


未央「あ、戻って来た」

P「やっとか。どうだった?」

奈緒「最悪だ……なんで社長まで……恥ずかしさで氏ぬ……」

P「出てった時と変わってなくね⁉」

加蓮「これは別のことだから、大丈夫」

P「別って何だ」

加蓮「それよりプロデューサー、みんなは?」

P「もう遅いし、帰らせたよ。残ってるのは寮組の未央と幸子だけだ」

幸子「戻ってくるの遅いですよー。待ちくたびれました」

みく「ごめんね、幸子チャン。お詫びにこれあげるにゃ」

幸子「……なんでおせんべいなんですか?」

加蓮「プロデューサー。奈緒、もうこの衣装は恥ずかしがってないよ。人前でも普通にしてたから」

P「そうなのか?」

奈緒「恥ずかしくなくはないぞ……我慢してるだけだ」

加蓮「我慢できれば十分」

未央「かみやん、大丈夫そうじゃない?」

P「そうだな。それで、宣伝もちゃんとしてきたのか?」

美嘉「バッチリ☆」

みく「おばちゃんから、おせんべい貰ったよー」

幸子「あ、このおせんべい、そういうことですか」

ありす「私も、なぜかお菓子を貰いました」

まゆ「プロデューサーさんにおすそわけです♪」

P「お、サンキュ―――って、ハロウィンか! 宣伝しに行ったんじゃないのか⁉」

楓「宣伝していたら、なぜかみなさん色々とくださったんです」

P「楓さんまで貰ったんですか……仮装だと思われたのかな」

加蓮「でも、わりと興味持ってもらえたと思うよ」

P「それは良かったな。……身内だけど」

奈緒「ライブ当日、身内しかいなかったりしないよな……」

P「笑えないこと言うな! ちゃんとこれまでPR活動してきたんだから、それなりには来てもらえる!……多分」

奈緒「多分って言ったし!」

P「いや、100パー保証は出来ないからなぁ……」

未央「大丈夫、きっと来てもらえるって。最悪、もし誰もいなくても、私たちがいるしね!」

奈緒「未央……ライブ見に来るのか?」

未央「そこから⁉ 行くに決まってるじゃん! ね、さっちー?」

幸子「はい。カワイイボクが、ちゃんと見に行ってあげますよ」

未央「もちろん、他のみんなも一緒にね。だから、お客さんが0だったりはしないから、安心して、かみやん」

奈緒「そっか……サンキュな」


377: 2017/04/25(火) 22:16:11.15


―――そして、ライブ前日 アイドル寮 奈緒の部屋


奈緒「……いよいよか」

加蓮「……いよいよだね」

みく「……いよいよにゃ」

ありす「……いよいよですか」

まゆ「……いよいよです」

奈緒「いよいよいよいよ、うるさいな!」

未央「初めに言ったの、かみやんじゃん」

奈緒「そうだけど、続けとは言ってないぞ⁉」

幸子「みなさん、いよいよ明日がライブですね」

加蓮・みく・ありす・まゆ『いよいよ……』

奈緒「もういいって!」

未央「もしかしてみんな……緊張してる?」

みく「ぎくり。な、何言ってるのかにゃー?」

ありす「そ、そんなことないですよー?」

幸子「いや、どう見ても緊張してますよ」

まゆ「わ、分かっちゃいますか」

加蓮「あはは……当たり。すごく緊張してるよ」

未央「やっぱりそうなんだ。私もそうだったなー」

加蓮「未央も?」

未央「デビューライブの前日は、緊張して中々眠れなかったもん」

まゆ「へぇ……未央ちゃんでも緊張したんですね」

未央「そりゃするよー」

奈緒「そういえば前にライブ行った時も、緊張してるって言ってたな」

未央「そうだったっけ? まあ、何度やっても緊張はするよ。でも、それに飲まれちゃ駄目だよ、みんな。上手くコントロールしないとね」

奈緒「未央が……未央が先輩っぽいこと言ってる!」

未央「驚くとこじゃないよ⁉……ていうか、かみやんは緊張してないの? みんなと比べると、わりといつも通りな感じだけど」

奈緒「ふっ、あたしは緊張なんてしてない」

未央「嘘⁉ すごいね、かみやん!」

加蓮「奈緒、さっきからその貧乏ゆすりやめてくれない?」

奈緒「……え、そんなのしてた?」

未央「思いっきり緊張してるじゃん!」

奈緒「バレたか……そ、そりゃ、あたしだって緊張するよ」


378: 2017/04/25(火) 22:16:40.23


未央「なんかみんな心配になるなぁ……集まっといてなんだけど、今日はもう解散しよ。早いうちに寝たほうがいいよ」

奈緒「そ、そうか。そうだな。じゃあみんな、自分の部屋に帰れー」

加蓮「うーん……よし、そうしよ」

ありす「ね、眠れるでしょうか」

まゆ「でも寝ないと……」

みく「こうなったら、羊を1万匹くらいまで数えまくるにゃ」

幸子「逆に目が冴えそうですね、それ」

未央「それじゃあね、かみやん。おやすみー」

奈緒「おやすみー」


《ガチャ―――バタン》


奈緒「さて、じゃあとっとと寝ようかな。……寝られるか分かんないけど」


《ガチャ―――》


奈緒「? 誰か忘れ物でも……」

加蓮「―――よいしょ、よいしょ」

奈緒「加蓮⁉ な、なんで布団なんか持ってきてるんだ⁉」

加蓮「よい、しょっと……ふぅ。なんでって、ここで寝るからに決まってるじゃん」

奈緒「いや勝手に決めるなよ!」

加蓮「じゃあ奈緒、今日は一緒に寝ようよ」

奈緒「寝ようよって……まあ、別にいいけどさ」


379: 2017/04/25(火) 22:17:21.81


―――数分後


奈緒「電気消すぞー」

加蓮「はーい」


《ピッ》


奈緒「じゃ、寝るか」

加蓮「寝られるの?」

奈緒「……寝られなくても、寝るしかないじゃんか」

加蓮「寝られそうにないよねぇ……」

奈緒「もしかして、それで一緒に寝ることにしたのか?」

加蓮「そういうこと。1人だと、どんどん緊張してっちゃう気がして」

奈緒「そっか……それもそうかもな」

加蓮「というわけで……えいっ♪」

奈緒「ひゃんっ⁉ な、何だいきなり⁉」

加蓮「大げさだなぁ……手を握っただけじゃん」

奈緒「だから握る前に言えよっ!」

加蓮「ごめんごめん。ね、このまま繋いでていい?」

奈緒「……いいけど」

加蓮「ありがと。なんかこうしてると、落ち着く気がするんだ」

奈緒「……あたしもちょっと落ち着いた気がする」

加蓮「でしょ?」

奈緒「うん。……そういえばさ、加蓮」

加蓮「なに?」

奈緒「ニュージェネのライブの時にした話、覚えてるか?」

加蓮「覚えてるよ、もちろん。奈緒がへこんでた時のでしょ?」

奈緒「そ、そうだよ」

加蓮「ほっぺぷにぷにの」

奈緒「それは言わなくていいよ!」

加蓮「あははっ。それで、あの時の話がどうかした?」

奈緒「いや、あたしたちのスタートラインがあそこならさ……デビュー目前の今は、どの辺りなのかな?」

加蓮「うーん、そうだなぁ……まだ全然じゃない? ちょっと進んだくらい。下手すると一歩進んだだけかもね」

奈緒「そこまで進んでないの⁉ さすがにもうちょっと進んでるだろ!」

加蓮「どうかなぁ……確実に言えることは、ニュージェネはまだまだ遠いってこと」

奈緒「う。それは否定できない……でも、このまま突っ走っていけば、いつか追いつけるよ」

加蓮「……追いつけるかな。目標は遠いよ? 止まっててくれないしさ」

奈緒「なら、ニュージェネより早く走ればいいだけだろ?」

加蓮「……そうだね。うん、そうかも」

奈緒「そう考えると、明日のライブはスピード上げるのにちょうどいいよな。……なんか、緊張よりもワクワクの方が大きくなってきたかも」

加蓮「ふふっ……私、奈緒のそういうとこ、好きだよ」


380: 2017/04/25(火) 22:18:10.40


奈緒「すっ⁉ そ、そういうこと言うの、恥ずかしいからやめろぉ!」

加蓮「えー? なんでー? 奈緒のこと、好き好きだーい好きっ♪」

奈緒「うぁ―――っ! や、やめろって言ってるだろーっ⁉ からかうなーっ!」


《ガチャッ!》


未央「うるさいよーっ! みんな眠れないでしょーっ!」

奈緒「あっ⁉ わ、悪い、未央」

未央「……って、なんで2人で寝てるの?」

加蓮「んー、明日ライブだから、なおかれん2人で仲良く寝ようと思って。その方が緊張も薄れるしさ」

未央「なるほどねー……でも静かにしなよ? みんなただでさえ眠れないだろうに、余計に眠れなくなっちゃうからさ」

奈緒「ごめん、気を付ける」

未央「2人も早く寝なねー。でもユニットで寝る……はっ⁉ みくにゃんは美嘉ねーもかえ姉さまも寮にいないから……よーしっ!」


《―――バタン》


奈緒「……なあ、加蓮。今、未央の奴最後に……」

加蓮「多分、みくの所に行ったよね……」



みく『にゃーっ⁉ なんで布団持ってきたの、未央チャン⁉』

未央『みくにゃんが寂しくないように、私が一緒に寝てあげるよ!』

みく『どうしてそうなるの⁉』

未央『ついでにさっちーも連れてきたよ!』

幸子『どうしてボクまで⁉』



奈緒「やっぱり……」

加蓮「まあ、みくの緊張が薄れていいんじゃない?」

奈緒「そうだといいけどな」


381: 2017/04/25(火) 22:18:47.09


―――みくの部屋


幸子「……あの、狭くないですか?」

みく「2つの布団に3人で入ってるんだから、そりゃそうだよ」

未央「もう一つ敷けたらなー」

幸子「すみません。ボク、自分の部屋で寝ていいですか?」

未央「何言うの、さっちー! みくにゃん1人じゃ可哀想でしょ!」

みく「別に大丈夫だよ⁉ いつも1人で寝てるよ⁉」

未央「みくにゃん、無理しなくていいって。私とさっちーが、ちゃんと一緒に寝てあげるから!」

みく「話聞いてないにゃ!」


382: 2017/04/25(火) 22:19:13.12


―――まゆの部屋前


ありす「……」


《コン、コン―――》


まゆ『……ありすちゃん?』

ありす「⁉」


《ガチャ―――》


ありす「……ど、どうして分かったんですか?」

まゆ「なんとなくです」

ありす「そ、その……眠れなくて……」

まゆ「……今日は、一緒に寝ましょうか?」

ありす「あ……。……はい、お願いします」


383: 2017/04/25(火) 22:19:44.20


―――美嘉の家 美嘉の部屋


美嘉「莉嘉。本当に明日来る気?」

莉嘉「もちろん! お姉ちゃんのデビューライブだもん!」

美嘉(莉嘉が来るとなると、絶対に失敗できないなぁ……プレッシャーが増すよ)

莉嘉「? どうかしたの?」

美嘉「……なんでもないよ。楽しみにしてな、莉嘉。最高のライブを見せてあげる☆」

莉嘉「うん!」


384: 2017/04/25(火) 22:20:11.29


―――楓の家


楓(デビューライブかぁ……ライブって、どんな感じなんだろう?)

楓「卯月ちゃんたちのライブを見たことはあるけれど……自分でやるのとは、全然違うわよね」

楓(美嘉ちゃんとみくちゃんと一緒に立つステージ……どうなるのかしら?)

楓「……楽しみね」


385: 2017/04/25(火) 22:20:44.75


―――奈緒の部屋


加蓮「奈緒。未央にも言われたし、もう寝よっか」

奈緒「……もうからかうなよな」

加蓮「別にからかってないって」

奈緒「嘘つけ」

加蓮「手は……繋いだままでいい?」

奈緒「……うん。おやすみ、加蓮」

加蓮「おやすみ、奈緒」


386: 2017/04/25(火) 22:21:29.72


―――翌日 ライブ会場


凛「奈緒たち、大丈夫かな? 緊張してないといいけど」

卯月「どうだろうね……」

未央「もしまだ緊張してたら、私とさっちーの爆笑コントで緊張をほぐすから、大丈夫!」

幸子「そんなの準備してませんよね⁉」

奏「2人なら、アドリブで出来るんじゃない?」

幸子「無茶言わないでください!」

未央「なら、あーちゃんとのコンビで天然漫才を」

藍子「天然漫才? なんだか、体に良さそうですねっ」

未央「天然水とかとは違うから!」

幸子「既に出来てる⁉」

杏「そもそも、お笑いやる必要ないでしょ」

きらり「でもでも、2人の漫才すっごく面白いよ、杏ちゃん」

杏「面白いとか関係ないって……」

凛「……さて、ここに奈緒たちが――」



奈緒『いや、なんであたしなんだよ⁉』



凛「? 奈緒の声だ」

卯月「どうしたのかな?」

凛「入ってみよう」


387: 2017/04/25(火) 22:22:10.53


《コンコン、ガチャ―――》


凛「みんな、応援に来たよ」



奈緒「それなら、まゆの方が適任だろ!」

まゆ「私もそうしたいんですが……」

加蓮「まゆだと、意味が変わっちゃうでしょ」

まゆ「……そういうことみたいです」

奈緒「くぅう……で、でも――」

楓「奈緒ちゃんが適任だと思うわ」

美嘉「奈緒ちゃんはアタシたち2期生のリーダーなんだからさ」

奈緒「2期生なんて単語初めて聞いたんだけど⁉」

みく「とにかく任せたにゃ」

ありす「私たちは遠くから見守っていますので」

奈緒「お前ら、押し付けたいだけだろ!」



卯月「? なんの話かな?」

凛「さあ……?」

未央「みんなー、応援に来たんだってば―!」

奈緒「え? あっ、いつの間に⁉」

藍子「今のは、なんの話ですか?」

加蓮「悪いけど内緒。今はね」

奏「ふぅん……なんだか意味深ね」

杏「見た感じ、全然緊張してなくない?」

みく「してるよー」

ありす「でも、もうそれほどでもないかもしれません」

幸子「確かに昨日に比べると、そんな感じですね。どうしたんですか?」

まゆ「……どうしてでしょう?」

幸子「ボクがそれを訊いてるんですけど⁉」

加蓮「緊張よりも、ワクワクが大きいから……だよね、奈緒?」

奈緒「な、なんであたしに振るんだ!」

美嘉「ま、せっかくのデビューライブ、楽しまなきゃ損だし☆」

楓「早くライブの時間にならないかしら」

卯月「み、みんなすごいです」

凛「もっと緊張してるかと思ってたのに……」


388: 2017/04/25(火) 22:23:14.87


未央「しまむー、しぶりん……私たちの時とは時代が違うんだよ」

凛「まだ1年も経ってないよね」

未央「じゃあ違うのは器だとでも言うの、しぶりん⁉」

凛「そ、それは…………時代が違うよね、やっぱり。緊張しないのが、今のトレンドだよ」

卯月「? 凛ちゃん、緊張しないトレンドって何?」

凛「……。……卯月は深く考えなくていいから」

杏「みんな、ただ能天気なだけじゃないの?」

奈緒「なんてこと言うんだ!」

加蓮「まさか……奈緒の能天気が感染った?」

美嘉「そんな……!」

みく「悪夢にゃ!」

奈緒「さもあたしが感染源みたいな言い方するなよ! あたしは別に能天気じゃないだろ!」

楓「能天気……天気が悪いと、雨がうぇざーっと降るわね。ふふっ」

奈緒「楓さんも相当じゃないか⁉」

まゆ「楓さんは能天気と言うより……」

ありす「天然の方が近いかと」

楓「奈緒ちゃん、何言うてんねん」

奈緒「楓さんが何言ってるんですか!」


《コンコン》


P『入るぞー』


《ガチャ――》


P「なんか随分賑やかだな」

奈緒「ほら、ナンバーワン能天気が来たぞ! 感染源こいつだろ!」

P「いきなりなんの話だ⁉ お前、俺の扱いぞんざいにもほどがあるだろ!」

加蓮「あれ、プロデューサーが来たってことは……もうすぐ?」

P「そうだよ。……お前ら、準備出来てるか?」

奈緒「とっくに出来てるよ」

加蓮「いつでも大丈夫」

P「そうか……じゃあ、行くぞ!」



奈緒「おう!」加蓮「うん!」美嘉「オッケー☆」楓「行きましょう」みく「ゴーにゃ!」ありす「分かりました!」まゆ「はい、プロデューサーさん♪」



389: 2017/04/25(火) 22:24:38.14


―――ステージ裏


P「奈緒、加蓮、まずはお前たちだ。……恥ずかしがって、歌えなかったりするなよ?」

加蓮「しないでよ?」

奈緒「大丈夫だよ!」

P「よしっ、じゃあ行ってこい!」

奈緒「ああ、行ってくる!」

加蓮「行ってくるね、プロデューサー!」



奈緒「それじゃ、加蓮」

加蓮「うん、奈緒」





『……行こうっ!』





そして、あたしたちは輝くステージへと駆け上がった……!










―――SAY☆いっぱい! 輝く……輝く、星にな-れっ! 運命のドア開けよう―――今、未来だけ見上げて!


390: 2017/04/25(火) 22:25:34.61


―――なおかれんライブ終了後 ステージ裏


奈緒・加蓮『楽しかったーっ!』

P「お疲れ! じゃあ次は、まゆとありす。2人とも、大丈夫か?」

ありす「……はい」

まゆ「大丈夫です、プロデューサーさん」

P「……なんか堅いな」

奈緒「任せろ、プロデューサー」

P「ん?」

加蓮「ねぇ2人とも。ちょっと右手を上げてくれる?」

ありす「はい?」

まゆ「こうですか?」

加蓮「オッケー」

奈緒「それじゃ―――」


《パァン―――!》


奈緒「はい、交代」

加蓮「次、任せたよ?」

ありす「あ……はいっ!」

まゆ「ふふっ、任されました♪」

P「よし……行ってこい!」



ありす・まゆ『いってきます!』



391: 2017/04/25(火) 22:26:13.72


―――観客席



―――夢みたいに綺麗で泣けちゃうな、これから沢山イイコトあるよ



卯月「ありすちゃんとまゆちゃんのライブも、すごくいいね」

凛「うん。さっきの奈緒と加蓮も。……うかうかしてられないね、私たちも」

未央「もう、しぶりんは真面目だなぁ。ライブの時はそんなこと考えてないで、思いっきり楽しもうよ!」



―――もし手を伸ばしたら届くかな……明るい空、見つけた一筋の流れ星



凛「……それもそうかも。たまにはいいこと言うね、未央」

未央「たまには⁉ もっと沢山言ってるよー!」

卯月「あはは……」


392: 2017/04/25(火) 22:26:45.91


―――ステージ裏


まゆ・ありす『お、終わりましたー!』

P「お疲れ! それじゃあ最後は――」

美嘉「アタシたちだね☆」

みく「待ってました!」

楓「ステージに、上がりましょう」

ありす「あ、ちょっと待ってください」

美嘉「ん? なーに、ありすちゃん?」

ありす「そ、その……手を……」

美嘉「あ、さっき奈緒ちゃんたちとやってたやつ?」

みく「そうだね、みくたちもやろっか」

楓「じゃあはい、ありすちゃん」

ありす「! まゆさんも」

まゆ「はい、分かってますよ」


《パァン―――!》


ありす「交代、ですっ」

美嘉「うん、バトンタッチ☆」

まゆ「最後、お願いします」

みく「任せるにゃ!」

楓「綺麗に締めてくるわ」

P「じゃあ3人とも……」



美嘉・みく・楓『いってくるね☆(いってくるにゃ!・いってきます)』



P「先に言われた⁉……いってらっしゃい!」


393: 2017/04/25(火) 22:27:32.95


―――観客席



―――たとえ、孤独が滲み始め足が震えていても……遠い日の約束―――叶えなきゃ掴まなきゃ絶対!



莉嘉「お、お姉ちゃん……」



―――自由が歪み始め、歌の中舞い上がる……未来に響かせて―――勝ち取るの、この歌で絶対!



莉嘉「……ちょーかっこいいっ! すっごーいっ! さっすがお姉ちゃん!」



―――掴め! starry star!



莉嘉「よーし、決めた!……アタシもやるっ☆」



394: 2017/04/25(火) 22:29:01.63


―――デビューライブ終了後 楽屋


《ガチャ―――》


P「みんな、ライブお疲れ―――」

凛「しっ、プロデューサー」

P「へ?」

凛「……寝てるから」



『……くー……』



P「ぜ、全員寝てるのか?」

卯月「ライブが終わって、緊張の糸が切れたみたいです」

未央「やっぱり、昨日はあんまり眠れてなかったみたいだね」

幸子「……未央さん。みくさんが眠れなかったの、ボクたちのせいなんじゃ……」

未央「き、緊張で眠れなかったんだよ! むしろ私たちがいた方が眠れてたと思うよ!」

幸子「そ、そうですよね! きっとそうです!」

藍子「みんな、ぐっすりですね」

奏「ええ、幸せそうな顔」

杏「なんだか、杏も眠くなってきた……寝よ」

きらり「もう、杏ちゃんったら……」

P「やれやれ……」



P「……お疲れさま。最高のライブだったぞ、お前たち」





奈緒「……にへへ……」

加蓮「……ふにゅぅ……」





第10話 Star!!


 終わり


395: 2017/04/25(火) 22:30:28.28


―――数日後 事務所


奈緒「……」

P「……奈緒、今日ずっと俺のこと見てないか?」

奈緒「⁉ べ、別に見てないぞ? 気のせいだろ」

P「そうか……? ならいいけど」

奈緒「はぁ……」

加蓮「奈緒、いい加減にしなって」

美嘉「早くしてったら」

奈緒「だったら自分でやれよ! なんであたしなんだよ!」

凛「どうしたの?」

みく「ちょっとね」

加蓮「さあ、もう行っちゃえ」

奈緒「待て! ここで⁉ みんないるんだけど!」

ありす「別にいいじゃないですか」

奈緒「ありす、自分がやらないからって……!」

まゆ「奈緒ちゃん、やっぱり私がやりましょうか?」

奈緒「い、いいのか?」

加蓮「だからそれは駄目だって! あくまで私たちのなんだから!」

まゆ「……奈緒ちゃん、そういうことみたいです」

奈緒「くぅう……」

楓「プロデューサー、ちょっといいですか?」

P「はい?」

奈緒「楓さん⁉」

楓「いつまでもそうしていても、仕方ないわ」

加蓮「楓さんの言うとおり。そんな大したことじゃないんだから」

奈緒「うぅ……プロデューサー!」

P「な、なんだよ?」



奈緒「……こ、これ、受け取れ」



あたしは、プロデューサーに小さな箱を差し出した。


396: 2017/04/25(火) 22:31:17.92


P「? なんだこれ?」

未央「あれ? なんだか既視感があるよ?」

卯月「まさかあれって……」

凛「……それ、チョコじゃないよね?」

奈緒「違うから! 凛たち3人の考えてることとは全然違う!」

P「まさかこれ、びっくり箱か⁉」

奈緒「それもちげーよ! そんなくだらないことするか!」

P「じゃあ、これ何だ?」

奈緒「……プレゼントだよ。あたしたちからの」

P「プレゼント? 奈緒たちからって……」

加蓮「だから、デビューしたばっかりの私たち7人からの―――」



加蓮「プロデューサーへの、お礼のプレゼントだよ」



P「……え」

奈緒「あー、その……前にプロデューサーのこと、特に好きじゃないって言ったけどさ」

P「あ、ああ」

奈緒「それは本音だ」

P「本音なのかよ!」

奈緒「で、でも、特に好きじゃないけど……感謝はしてる」

P「感謝……?」

奈緒「あんたがスカウトしてくれたから、アイドルやろうと思ったし……あんたがプロデュースしてくれたから、デビューライブも上手くいったし……」

P「……」

奈緒「だ、だからその……い、一回だけしか言わないからな!」


397: 2017/04/25(火) 22:32:13.71















奈緒「……いつもありがと、プロデューサーさん」















398: 2017/04/25(火) 22:35:00.42


P「!」

奈緒「~~~っ! も、もう無理! あたし帰るっ!」


《ガチャ―――》


加蓮「あ、ちょっと奈緒!……そういうことだから、いつもありがとね、プロデューサーさんっ♪ 奈緒、待ってよー!」

美嘉「サンキュ、プロデューサー! じゃねっ☆」

楓「いつもありがとうございます、プロデューサー。お先に失礼します」

ありす「その、感謝してます、プロデューサー。それでは」

みく「Pチャン、ありがと! ばいばーいっ!」

まゆ「プロデューサーさん、いつもありがとうございます♪ また明日」


《―――バタン》


未央「……怒涛の勢いだったね」

卯月「みんな改まってお礼を言うの、照れたんだよ」

P「……なんだあいつら、言い逃げかよ」

凛「プロデューサー……泣くほど嬉しかった?」

P「な、泣いてなんかないだろ⁉」

凛「じゃあ、そういうことにしておいてあげるよ」

P「だから泣いてないっての! 泣いて、ないけど…………め、滅茶苦茶嬉しい……っ!」

凛「……やっぱり、泣いてるじゃん」



 ほんとにおしまい


402: 2017/04/27(木) 20:21:42.43


―――事務所


美嘉「おはよー☆」

奈緒「おはよ……う……?」

加蓮「おはよー、美嘉」

美嘉「最近暑くなってきたねー」

加蓮「ここはエアコン効いてるから、快適でいいよ」

奈緒「……」

加蓮「奈緒? どうかしたの?」

奈緒「どうもこうも……あれ」

加蓮「あれ?」



美嘉『さて、今日の予定はっと』

少女『そろーり……そろーり……』



加蓮「……何あれ」

美嘉「? 2人とも、どうかしたの?」

奈緒「それはこっちが聞きたいんだけどな」

加蓮「さっきから美嘉の後ろにくっついてる子、何?」

美嘉「後ろ?」

少女「⁉」


《ササッ》


美嘉「?……誰もいないじゃん」

奈緒「今度は前だよ」

美嘉「前?」

少女「⁉」


《ササッ》


美嘉「……やっぱり誰もいないし。何? からかってるの?」

奈緒「違うって」

加蓮「はい美嘉、鏡。これで後ろ見てみなよ」

美嘉「鏡で見たって何も――」

少女「やばっ⁉」

美嘉「……」

奈緒「見えたか?」

美嘉「……うん」

加蓮「良かった。背後霊とかじゃなかったみたいで」

美嘉「……アンタ、何してんの莉嘉―っ!」



莉嘉「……てへっ☆」



403: 2017/04/27(木) 20:22:22.92


―――少し経って


莉嘉「はじめまして! 城ケ崎莉嘉でーす! よろしくねーっ☆」

P「……美嘉、妹連れてきたのか?」

美嘉「勝手に付いてきたの!」

奈緒「よくあれで気付かなかったな……」

美嘉「全く……莉嘉、アンタなんで事務所に付いて来たの?」

莉嘉「決まってるじゃん、お姉ちゃん」



莉嘉「アタシもアイドルになるためっ!」



美嘉「はぁ⁉」

莉嘉「えっと……うだつが上がらないプロデューサーって、どの人?」

P「お前、俺のこと家でそんな風に言ってたの⁉」

美嘉「ち、違うよ⁉ そんなの初めの頃に一回しか言ってないって!」

P「いや、一回でも言ってんじゃねーよ!」

美嘉「ごめんごめん!」

莉嘉「あ、プロデューサーってアナタ?」

P「あ、ああ、そうだけど」

莉嘉「じゃあアタシをアイドルにして!」

P「えぇ⁉」


404: 2017/04/27(木) 20:22:58.83


莉嘉「いいでしょ? いいよね? いいんだ、やったぁー!」

P「俺、何も言ってないよね⁉」

莉嘉「え……駄目なの……?」

P「そんな悲しそうな目で見ないでくれ! そ、そうだなぁ…………やる気は十分あるみたいだし…………なら、美嘉とご両親の許可があればいいよ」

莉嘉「じゃあもう決まりだよ! お母さんたち反対なんてしないし。お姉ちゃんだって、ねー?」

美嘉「ねー、じゃないでしょっ!」

莉嘉「ふぇっ?」

美嘉「莉嘉。アタシ、アンタがアイドルやりたいなんて初耳なんだけど?」

莉嘉「あのねー? この前のお姉ちゃんのライブ見て、アタシもあんな風にかっこよくライブとかしたいなーって思ったの!」

美嘉「……そ、そっか」

奏「随分嬉しそうじゃない、美嘉」

美嘉「う、うるさいよっ! こほん……莉嘉、アンタ本当にやる気あるの?」

莉嘉「もちろん!」

美嘉「……じゃあいいよ、莉嘉。好きにしな」

莉嘉「わぁーいっ! お姉ちゃん、大好きっ☆」

美嘉「もう、調子いいんだから……」

莉嘉「プロデューサー!……なんかカタいね。じゃあPくん!」

P「ぴ、Pくん?」

莉嘉「それに事務所のみんなも!」



莉嘉「これからよろしくなんだからーっ☆」



405: 2017/04/27(木) 20:23:37.92
第11話 シンデレラガールズ



―――莉嘉が加入してから数日後、アイドル部門事務所


P「良い知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?」

奈緒「急になんだ」

加蓮「みんなを集めたと思ったら……」

P「一度言ってみたかったんだよ。さあ、どっちから聞きたい?」

未央「そりゃもちろん、良い方だよ」

奏「ふぅん……未央は持ち上げて落とされるのが好み?」

未央「……やっぱり悪い方。上げて落とされるの、けっこうきついよ」

P「よし、じゃあ悪い方だな。……実は昨日、先輩に呼び出されてな」

凛「社長に?」

P「ああ。それで……」

卯月「そ、それで……?」

P「それで晩飯奢らされたんだ! おかしいよな⁉ 普通、上司が奢る方だろ!」

美嘉「……えっ、悪い知らせってそれ?」

P「そうだ」

幸子「どうでもいい知らせの間違いじゃないですか⁉」

P「俺にとっては悪い知らせなんだよ!」

加蓮「わざわざみんな集めて言うことじゃないでしょ……」


406: 2017/04/27(木) 20:24:30.65


凛「はぁ……じゃあ、良い知らせって言うのは?」

奈緒「またどうでもいいことだろ」

P「良い知らせって言うのは……」



P「今度行われるフェスに、うちのアイドル全員で参加してもらうことになったってことだ」



奈緒「ほらな。果てしなくどうでもいい」

加蓮「だね」

凛「まったく、プロデューサーは」

卯月「……えっ? あれ?」

未央「美嘉ねー、その雑誌見せてー」

美嘉「いいよー」

莉嘉「アタシも見たいっ」

藍子「みくちゃん、何を読んでるんですか?」

みく「英語の参考書。テスト勉強してるんだ」

奏「幸子はテスト大丈夫?」

幸子「だ、大丈夫ですよ。ボクはカワイイですし」

ありす「ふふふ……ドロー4! そしてUNOですっ!」

楓「じゃあ私も、ドロー4で」

きらり「ならきらりもっ」

杏「ありす、悪いね。杏もドロ4」

ありす「そんな⁉」

まゆ「プロデューサーさん、お茶が入りました♪」

P「おう、ありがとな、まゆ。……ところで卯月。俺、フェスやるって言わなかった?」

卯月「い、言ったと思います」

加蓮「卯月もポテチ食べる?」

卯月「あ、うん、加蓮ちゃん。もぐもぐ……」

奈緒「お茶とポテチは合うよな」

P「あ、俺にもくれ」

凛「はい、プロデューサー」

P「サンキュー」


407: 2017/04/27(木) 20:25:15.59



『……』




『…………』





『………………ん?』






『フェスやるの⁉』






P・卯月『反応遅くない⁉』



408: 2017/04/27(木) 20:25:51.39


奈緒「プ、プロデューサー! フェスやるのか⁉」

P「そう言っただろ! お前ら、あまりに無反応だから何かと思ったわ!」

加蓮「し、しかも全員参加って言わなかった⁉」

P「そうだよ。みんなで出てもらう」

奏「みんなって……私たちも?」

P「ああ。奏たちも合わせて、全員でだ」

杏「じゃあ杏にもやれって言うの⁉」

P「嫌そうな顔するなよ!」

莉嘉「Pくん、アタシも出ていいの⁉」

P「あー、莉嘉はこの前入ったばっかりだろ? だから……」

莉嘉「え、じゃあアタシだけ……」

P「レッスンきついかもしれないが、大丈夫か?」

莉嘉「! だいじょーぶっ! ありがと、Pくん!」

凛「でも全員って……どういうことなの?」

P「つまりだな……お前たち全員で、1つの曲を歌ってもらうんだ」

卯月「私たちみんなで、1つの曲を……!」

P「どうだ、面白そうだろ?」

未央「すっごい面白そう!」



P「浮かれるんじゃないっ!」



未央「自分で訊いたくせに⁉」


409: 2017/04/27(木) 20:26:59.52


P「全員で1つの曲を歌うということは、全員の心を1つにしなければならないんだぞ。今のままのお前たちじゃ、ライブを成功させることは出来ないだろう!」

未央「むっ、そんなことないよ! 我ら346プロアイドル、生まれた時は違えど氏ぬときは同じ!」

凛「そんな誓いした覚えないよ」

P「なら試してみよう。卯月、ちょっとこい」

卯月「? はい、プロデューサーさん」

P「未央と卯月に訊きます。……今、食べたいものはなんですか?」



未央「フライドチキン!」
卯月「生ハムメロンです!」



P「ほら気持ちバラバラー!」

未央「そんな⁉」

卯月「がーん……」

凛「いやいやいや、今の質問と心を1つにすることは何ら関係ないでしょ。お互いに好物を言っただけだよね?」

P「どうだ、未央。よく分かっただろう?」

未央「くっ、完全に論破された……!」

凛「されてないよ!」

加蓮「奈緒、今日はあんまりツッコまないね」

奈緒「たまには休もうと思って」

莉嘉「ねぇ、お姉ちゃん。この事務所って、お笑い事務所みたいだよね」

美嘉「それは言っちゃ駄目! わりと的を射てるから!」


410: 2017/04/27(木) 20:27:30.64


P「まあ冗談はさておき。実際、お前たちは今まで同じユニットのメンバーぐらいとしか、一緒にステージに立ったことがないわけだ」

凛「それはそうだね」

P「さらに言うなら、デビュー前組は、そもそもステージに立ったことがない」

奏「まあ、当然ね」

P「だからフェスまでに、お前たち全員の結束力を高めたいと思う」

奈緒「でも結束力って……そんなもん、どうやって高めるんだよ」

加蓮「また合宿でもするの?」

P「そうしたいと思ったんだが、残念ながらスケジュールに空きがなくてな。合宿は無理だ」

奈緒「じゃあどうするんだ?」



P「これからフェスまでの間、全員で寮に住んでもらおうと思う!」



奈緒「……寮に?」

P「共同生活を送れば、絆が深まるだろうからな」

加蓮「まあ、確かにそうかもだけど」

P「寮の部屋は余ってるだろ?」

未央「そりゃ7人しか住んでないからね。余りに余ってるよ」

ありす「でもそんなこと、勝手に決めていいんですか?」

P「許可はちゃんと先輩に取ったし、寮の管理人のおばちゃんにも既に話はしてある」

奏「手回しがいいわね」

P「だから、あとはお前たち次第だな。どうだ? 寮での共同生活、やってみないか?」

未央「私、賛成! 寮が賑やかになるのは、ウェルカムだよ」

奈緒「確かに今はちょっと寂しいもんな」

加蓮「だね。みんなが来てくれるなら、楽しくなりそう」

P「寮組は全員賛成ってことでいいか?」

未央「うん、満場一致」

P「よし。じゃ、残るは凛たちだが……」

楓「プロデューサー、私は大丈夫です」

杏「杏も別にいいよー」

卯月「あの、プロデューサーさん。私も寮に住んでみたいんですが……お母さんに相談してみないと分からないです」

P「あー、まあそうだよな。なら、残りのメンバーは親御さんに相談してから返事を――」



凛「私は反対」



P「……えっ?」


411: 2017/04/27(木) 20:28:49.83


凛「結束力を高めるなら、一緒にレッスンするだけでも十分だと思うよ。わざわざ寮に住む必要はないんじゃないかな」

P「いや、まあそれも一理あるが。だけど同じ時間をより多く共有することでだな―――」

凛「多ければいいというわけでもないんじゃない? 大切なのは共有する時間の密度だと私は思うけど」

P「お、おぉふ……」

奈緒「さっきの茶番と違って、本当に論破されてるぞ」

加蓮「確かに、凛の言い分も分かるけど……」

未央「しぶりん、そんなに寮に住みたくないの……?」

凛「あ、いや、そうじゃないよ。ただ私は、わざわざみんなで寮に住む必要は無いんじゃないかって……」

未央「だから、要は寮に住みたくないんでしょ? うぅ……そんなに嫌なら、そう言えばいいじゃん!」

凛「嫌とは言ってないよ!」

未央「嫌じゃなきゃ反対なんてしないでしょ⁉ いいよいいよ、しぶりんは実家でハナコと仲良く暮らしてなよ!」

凛「うっ」

卯月「ハナコちゃん…………あっ、もしかして凛ちゃん」

凛「⁉ 卯月、余計なこと言わな―――」



卯月「寮が嫌と言うより、ハナコちゃんと離れたくないだけなんじゃ……?」



凛「…………」

未央「……しぶりん」

凛「ち、違うよ? そんなんじゃないよ? ハナコは一切関係ないよ?」

未央「あー、うん、そうだよね。ごめんね。しぶりん、ハナコ大好きだもんね」

凛「だ、だからハナコは関係ないから!」

奈緒「どう見ても関係あるうろたえ方だろ(にやにや)」

加蓮「やけにプロデューサーに突っかかると思ったら、そういうことだったんだ(にやにや)」

凛「み、みんな、そのにやけ顔やめてよ! 違うって言ってるでしょ!」

P「うんうん、そうかそうか」

凛「ななな、なんで頭撫でるの⁉……はっ⁉ まゆ、言っておくけど今のはプロデューサーから――」

まゆ「プロデューサーさん、次はまゆに撫でさせてください」

凛「えぇ⁉」

P「さて、困ったなー。ハナコと離れられないんじゃ、確かに寮に住むのは無理だよな……うーん、どうするか」

凛「くぅっ……も、もういいよ! 私も寮に住む! 住めばいいんでしょ、住めばっ!」


412: 2017/04/27(木) 20:29:31.63


―――数日後 アイドル寮 玄関


寮組『いらっしゃーいっ!』


未央「みんな、よく来たね! 私が寮長の本田未央だよ!」

奈緒「お前いつの間にそんな役職に就いた⁉」

未央「ここでは私が正義……! 寮長が白と言えば、黒いものだろうとそれは白になるんだよ……!」

藍子「わっ、オセロをするんですか? 楽しそうですねっ」

未央「おおっとぉ。さすがあーちゃん、その返しは予想してなかったよ……」

藍子「?」

加蓮「いつまでも玄関で話し込んでないで、みんなに上がってもらわない?」

ありす「そうしましょう」

凛「それで、私たちの部屋はどこになるの?」

みく「はい、これにゃ」

卯月「? みくちゃん、この箱は何?」

幸子「部屋決めBOXです」

『部屋決めBOX?』

まゆ「未央ちゃんが、せっかく一緒に住むのに、ただ空いている部屋に住んで貰うのはつまらないと言い出しまして」

未央「この中に私たちの名前の書いてある紙が入ってるから、引いた名前の人の部屋に一緒に住んで貰うよ!」

凛「またおかしなことを……」

杏「つまり、相部屋ってこと?」

きらり「楽しそうかもっ」

奏「まあ、絆を深めるのが目的なんだし、いいんじゃないかしら?」

凛「奏まで……」

未央「ささ、まずはしぶりん、引いてみて」

凛「……しょうがないなぁ」


《ガサッ》



【さくまゆROOM】



413: 2017/04/27(木) 20:30:52.96


凛「⁉…………ふーん」

未央「? 誰の部屋引いたの、しぶり―――げぇっ⁉ さくまゆの部屋⁉」

まゆ「!…………うふふ、凛ちゃんと一緒ですか」

凛「……お世話になるよ、まゆ」

奈緒「さっそく目と目で火花散らし合ってるぞ!」

加蓮「未央が余計なこと思いつくから……」

未央「さ、さあ! しまむー達もどんどん引いちゃって!」

卯月「えっと……あ、みくちゃんの部屋です」

みく「よろしくね、卯月チャン! あ、みくの部屋の中では猫耳付けてもらわないと駄目だからね?」

卯月「うえぇ⁉ う、うん、分かった。私、猫耳付けるねっ!」

奈緒「騙されるな卯月! そんなルールないから!」



莉嘉「アタシは幸子ちゃんの部屋だって☆」

幸子「カワイイボクと一緒とは、ツイてますね、莉嘉さん!」



奏「よろしくね、奈緒」

奈緒「ああ、よろしくな、奏」



美嘉「アタシは加蓮の部屋だってさ」

加蓮「……なんだ美嘉とか」

美嘉「なんだとは何⁉」



楓「私はありすちゃんの部屋みたい」

ありす(楓さんと一緒……大人らしさが学べるかも……!)

ありす「楓さん、よろしくお願いしますっ」

楓「よろしくでありんす、ありすちゃん。ふふっ」

ありす「……。……それ、前にも聞きました」

楓「⁉ わ、私としたことが……」



きらり「? きらりの引いた紙、☆が書いてあるよ?」

杏「杏が引いたのもそうなんだけど」

未央「あ、それはね? 寮に元々住んでるのって7人だから、2人余るんだよ。だからその☆マークを引いた2人は、一緒に空き部屋に住んでもらおうと思って」

杏「⁉ じゃ、じゃあ杏はきらりと一緒の部屋ってこと⁉」

きらり「やったぁー! 杏ちゃんと一緒なんて、きらり、はぴはぴするにぃ☆」

杏「あ、悪夢だ……」



未央「じゃあ最後のあーちゃんは、私の部屋だね」

藍子「オセロをするの、楽しみです♪」

未央「まだ言ってるの⁉ う、うん、じゃあやろっかオセロ」



こうして、あたしたちの短い共同生活が始まったのだった。


414: 2017/04/27(木) 20:31:38.62


―――とある日の奈緒と奏の部屋


『あなたのこと……愛してる!』

『俺も……俺も、君を愛してる!』

『あなた!』

『君!』



奈緒「奏、なんで恋愛ドラマなんか見るんだよ⁉」

奏「あら、年頃の女子高生が恋愛ドラマを見るのは、何もおかしいことじゃないと思うけど」

奈緒「そ、そうかもだけど……!」



『ああ、あなた……!』

『ああ、君……!』

『あな、た……』

『き、み……』



奈緒「キ、キスし始めたぞっ⁉」

奏「恋愛ドラマなんだから、キスくらいするわよ」

奈緒「あぅ、うぅ、ああぅぅ……!」

奏「……顔真っ赤にしながらも、しっかりとTV画面は見るのね」

奈緒「⁉ ベ、ベベ別にあたしこんなドラマ興味ないしっ! な、ないからな⁉ ホントだぞ⁉」

奏「ふぅん……じゃあ、興味があるのはキスにかしら? 試しに、私としてみる?」

奈緒「か、奏とキス⁉ そ、そそそそんなこと誰がするかぁ―――――――っ!」

奏(ふふっ……奈緒をからかうの、面白すぎるわね。癖にならないように気を付けないと)


415: 2017/04/27(木) 20:32:27.35


―――とある日の加蓮と美嘉の部屋


加蓮「なんかさ、美嘉と一緒ってあんまり新鮮味ないよね」

美嘉「若干その言い方気になるけど、まあ確かにそうかもね」

加蓮「……ハズレか」

美嘉「言い方! ちょっと加蓮! 最近アタシへの態度フランク過ぎない⁉ 言っとくけど、アタシの方が年上なんだからね⁉」

加蓮「今さら何言ってるの? うちの事務所って、年功序列とかほとんどないようなものじゃん」

美嘉「そ、それは……そうだけど」

加蓮「それにそれを言うなら……私の方が、この事務所では美嘉より先輩なんだけど?」

美嘉「うっ⁉」

加蓮「……美嘉さん。あなた、先輩への態度がなっていないんじゃなくて? ほら、お茶でも汲んできなさいな」

美嘉「急に先輩風吹かせてきた!」


416: 2017/04/27(木) 20:33:02.73


―――とある日のありすと楓の部屋


ありす「……どうして、こんなことに」



ちひろ「ごくごく……ですからね、楓さん。私そう思ったわけですよ」

楓「ごくごく……はい、その通りだと思います」

ちひろ「ごくごく……ですよね! 絶対そうですよね!」



ありす「どうしてお2人とも私の部屋で酒盛りとか始めてるんですか⁉ ちひろさん、プロデューサーの代わりに私たちの様子を見に来たんじゃなかったんですか⁉」

ちひろ「ええそうよ、ありすちゃん。でも、うちのアイドルって未成年の子ばかりだから、楓さんのお酒に付き合える人いないでしょう?」

楓「だから、今日はちひろさんが付き合ってくれることになったの」

ありす「だからといって普通小学生の私の部屋で飲みますか⁉ せめて食堂に行って飲んでください!」

ちひろ「ああ、それもそうね。なら行きましょうか、楓さん。……ひっく」

楓「そうしましょうか、ちひろさん。……ひっく」

ありす「お2人とも足がふらついているんですけど⁉ だ、誰か、誰か来てくださーいっ!」


417: 2017/04/27(木) 20:33:59.89


―――とある日のみくと卯月の部屋


卯月「にゃんにゃんにゃん♪ うづにゃんにゃん♪」

みく「いいよー、その調子にゃ!」

卯月「うづにゃん、うづにゃん、うづにゃんにゃん♪」

みく「いいねいいねー、もっと上げてくにゃ!」

卯月「にゃにゃにゃにゃ、にゃにゃにゃにゃ、にゃおにゃ~お♪」

みく「もっともっと!」

卯月「にゃあ! にゃあ? にゃあ♪ にゃあ☆」

みく「さあラストー!」

卯月「にゃ~んて甘い、子猫じゃにゃいのよ♪ うづにゃんっ♡」

みく「……完っ璧にゃ! いけるよ、卯月チャン! これならみくと組んで、ネコチャンユニット結成出来るにゃ!」

卯月「あ、あはは……ありがとにゃん」


418: 2017/04/27(木) 20:35:00.35


―――とある日のまゆと凛の部屋


凛「……」

まゆ「……」

凛「…………」

まゆ「…………」

凛「………………」

まゆ「………………」

凛「……………………」

まゆ「……………………」

凛「…………………………」

まゆ「…………………………」


《―――カタッ》



凛「女装したプロデューサー(学生時代)のウインク写真っ!」

まゆ「寝起きのプロデューサーさんの目こすり写真ですっ!」



凛「……」

まゆ「……」

凛「…………」

まゆ「…………かはっ⁉」

凛「この勝負は私の勝ちだね、まゆ」

まゆ「こ、こんなものを隠し持っていたなんて……! でも、次はまゆが勝ちます!」

凛「何度だって受けて立ってあげるよ……!」



まゆ「でも、その前にこの写真の入手経路を教えてもらえませんか?」

凛「社長に頼めば、喜んで譲ってくれるよ」


419: 2017/04/27(木) 20:35:43.51


―――とある日の幸子と莉嘉の部屋


莉嘉「ねー、幸子ちゃん。どうすればアタシ、お姉ちゃんみたいになれるかなー?」

幸子「美嘉さんみたいにですか?」

莉嘉「うん。アタシもお姉ちゃんみたいなカリスマギャルになりたいの!」

幸子「なるほど……」

莉嘉「ねー、ねー、どうすればいいかなぁ?」

幸子「な、中々難しい質問ですね。ち、ちょっと考えさせてくれませんか?」

莉嘉「はーいっ」

幸子「うーん………………どうすればいいかは、莉嘉さんが一番分かっているんじゃないですか?」

莉嘉「え? アタシが?」

幸子「莉嘉さんはずっと美嘉さんを見てきたんですよね? なら、美嘉さんが今の美嘉さんになるまで、何をしてきたのかも見ているはずです。それを参考にすればいいんじゃないでしょうか」

莉嘉「……なるほど! アタシが見てきたお姉ちゃんの真似をすればいいんだっ」

幸子「真似……ま、まあ大体そんな感じですかね」

莉嘉「幸子ちゃん、いいこと教えてくれてありがとーっ☆」

幸子「いえいえ。カワイイボクにかかれば、これくらいわけないですよ」


420: 2017/04/27(木) 20:36:27.28


―――とある日の杏ときらりの部屋


杏「……きらりさー」

きらり「なぁに、杏ちゃん?」

杏「なんか、思ったよりも静かだよね。もしかして、気を遣ってたりする?」

きらり「気を遣うっていうか……あんまりきらりがうるさいと、杏ちゃん、迷惑なんじゃないかなぁって」

杏「それが気を遣ってるって言うんだけど……別に、いつも通りでいいよ」

きらり「えっ?」

杏「きらりがそんなだと、なんか調子狂うっていうか……心置きなくだらだら出来ないっていうか……迷惑とか、杏思わないしさ」

きらり「杏ちゃん……。……うん、分かった! ありがとう、杏ちゃん!」

杏「お、お礼を言うことじゃないでしょ」

きらり「杏ちゃん、はぐはぐ☆」

杏「だ、抱きしめていいって言ったわけじゃないんだけど⁉ 杏はぬいぐるみじゃないぞ~っ!」



421: 2017/04/27(木) 20:37:25.24


―――とある日の未央と藍子の部屋


藍子「これで角を取れましたっ」

未央「げっ、しまったな~」

藍子「ふふっ、この調子でどんどん白くしちゃいますよ」

未央「私だって、まだまだ負ける気はないよ、あーちゃん」

藍子「……あ、2個目の角です」

未央「ま、また? 私、迂闊だな~……。……そういえば、今何時くらいだろ―――って、もう2時間もオセロやってるじゃん⁉」

藍子「え、もうそんなに経つんですか?」

未央「お、恐るべし、あーちゃんのゆるふわ空間……!」

藍子「? でも未央ちゃん。せっかくですから、この勝負が終わるまでは続けませんか?」

未央「あ、そうだね。よーしっ、ここから奇跡の大逆転を見せちゃうよー!」



そうして、普段よりも賑やかなアイドル寮の日々が過ぎていった。


422: 2017/04/27(木) 20:39:17.28


―――フェス前日の夜 アイドル寮 共同スペース


未央「いよいよ明日はフェスの日。……なので、今日はこの共同スペースで、全員で寝たいと思いまーす!」

奈緒「なんかこうしてると、合宿の時みたいだな」

加蓮「確かに。合宿もみんなで同じ部屋に寝泊まりしたもんね」

未央「そう。でも思い返すと、あの時やり忘れていたことがあったんだよ」

ありす「やり忘れていたこと?」

まゆ「なんですか?」

未央「それはね…………これだよっ!」


《シュッ―――ぽふっ!》


みく「ふにゃっ⁉」

卯月「みくちゃん⁉」

幸子「顔に枕が直撃しましたよ⁉」

凛「未央、まさかやり忘れていたことって……」



未央「枕投げ、開始――――っ!」



みく「汚いにゃ、未央チャン! 始める前にぶつけないでよ!」


《シュッ―――!》


未央「遅いっ!……汚い? ふっ……みくにゃん、忘れたの?」

みく「な、何を?」

未央「言ったはずだよ……」



未央「私は寮長の本田未央! ここでは私が正義なんだよ!」



みく「腐ってやがるにゃ!」

未央「我が正義の前に屈するがいい、みくにゃん! トドメ―――」


《シュッ―――ぽふっ!》


未央「かはっ⁉ ば、馬鹿な……今の狙撃は……?」

奈緒「後ろががら空きだぞ、自称正義の味方さんよ」

未央「かみやん、貴様か!……だが、残念ながら間違ってるよ」

奈緒「? 何がだ?」

未央「私は正義の味方じゃなくて―――」



未央「―――正義そのものなんだよ! やってしまえ、お前たちっ!」

美嘉・ありす・まゆ・莉嘉・きらり・杏・藍子『ははーっ!』



奈緒「いや、『ははーっ!』じゃないだろ⁉ なんで未央に従ってるんだお前ら⁉」


423: 2017/04/27(木) 20:40:43.30



美嘉「今こそ、加蓮への恨みを晴らす時!」


《シュッ―――!》


加蓮「お茶汲みさせたのそんなに根に持ってたの⁉」



楓「ありすちゃん、どうして……⁉」

ありす「忘れたとは言わせません……酔っぱらった楓さんが、私を無理矢理に抱きしめて眠り、そのまま朝までずっと離してくれなかったことを!」


《シュッ―――!》


楓「……ごめんなさい」



まゆ「34勝34敗2引き分け……決着をつけたいと思いませんか?」

凛「……そうだね。つけようか、ここで……!」



幸子「どうして莉嘉さんもそっちに⁉」

莉嘉「幸子ちゃんが、お姉ちゃんの真似すればいいって教えてくれたでしょ? だから、アタシもお姉ちゃんがいるこっちにつこうと思って!」

幸子「そういう意味じゃないんですけど!」



杏「やるよ、きらり! 未央様の敵を薙ぎ払うのだーっ!」

きらり「よーしっ、きらり、頑張っちゃうにぃ☆」


《シュッ―――!》


卯月「ふ、2人とも、どうしてそんなにノリノリなの?」

きらり「……杏ちゃん、未央ちゃんに飴で買収されたんだよぉ」

卯月「……そ、そういうことなんだ」

みく「卯月チャン、みくも加勢するにゃ! みくたちのネコチャンスピリッツで、杏チャンときらりチャンをやっつけるよ!」

卯月「う、うん! 分かったよ、みくちゃん!」



奏「藍子はどうしてそっちに?」

藍子「未央ちゃんに、どうしてもとお願いされたので」

未央「さあやるよ、あーちゃん! 私たちが(オセロとかで)培った絆で、悪を撃ち滅ぼそう!」

藍子「というわけです奏ちゃん。えーいっ」


《シュッ―――!》


424: 2017/04/27(木) 20:41:35.21


奏「そういうことなら、遠慮はしなくてよさそうね」

奈緒「あっちが2人なら、こっちも2人だ」

奏「私たちも、培った絆で戦いましょうか」

奈緒「なんか、ずっとからかわれてただけの気がするんだけど……」

奏「あら、気付いてたのね」

奈緒「やっぱりかよ!」

未央「戦闘中におしゃべりが多いよ!」


《シュッ―――ぽふっ!》


奈緒「あうっ⁉ や、やったな、未央っ!」


《シュッ―――!》


未央「残念! 当たらなければどうということは―――」


《シュッ―――ぽふっ!》


未央「なうぇ⁉ くっ、はやみん!」

奏「油断大敵よ、未央」

藍子「……えいっ」


《ぽふっ!》


奏「⁉ あ、藍子、いつの間にこんなに近くに……⁉」

藍子「未央ちゃん、やりましたっ!」

未央「さすが、あーちゃん!」

奏「……未央のこと言えないわね、これじゃあ」

奈緒「まだまだ勝負はこれからだ! 行くぞ―――」

美嘉「加蓮、逃げるな―っ!」

加蓮「甘いよ、美嘉! 奈緒ガード!」

奈緒「へ?」


《シュッ―――ぽふっ!》


奈緒「はぅ⁉」


425: 2017/04/27(木) 20:42:56.28


加蓮「所詮は美嘉……。その程度で私に当てようなんて、へそで茶が湧くよ」

美嘉「ど、どこまでもアタシに対して……! 加蓮、絶対に当てるからね!」

加蓮「やーだよーっ!」

奈緒「逃げる前にあたしに謝ってけ!」

楓「ごめんねっ!」

奈緒「なんで楓さん⁉」

ありす「私は、抱き枕じゃないんですっ!」


《シュッ―――ぽふっ!》


奈緒「おぁっ⁉」

ありす「あ、狙いがそれました……まあいいです。楓さん、覚悟してください!」

楓「許して、ありすちゃんっ!」

ありす「許すのはこの枕を当てた後ですっ!」

奈緒「だから、その前にあたしに謝れ!」

奏「あっ、奈緒また!」

奈緒「え?」


《シュッ―――ぽふっ!》


奈緒「うぁ⁉ こ、今度は誰だよ!」

奏「……あれの流れ弾よ」



凛「後から来たくせにっ!」


《シュシュシュッ――――!》


まゆ「運命の赤い糸は、まゆと繋がっているんですっ!」


《シュシュシュッ――――!》



奈緒「……あそこだけレベル違うな」

奏「……ううん、あっちも相当よ」



《シュッ―――どふっ!》


みく「かはっ⁉」

卯月「みくちゃん、しっかり!」

みく「杏チャンは後ろで指示出してるだけだから、実質きらりチャンだけなのに……つ、強すぎるにゃ……がくっ」

卯月「み、みくちゃあ―――んっ!」

きらり「あ、杏ちゃん、もうこれくらいでいいんじゃない?」

杏「未央様の望みは悪の殲滅だよ。正義は杏たちにあり!」



奈緒「どう見ても杏が悪にしか見えないんだけど……」

幸子「今こそ、好機です!」


426: 2017/04/27(木) 20:43:57.87


奈緒「幸子⁉ こ、好機って、なんでだ?」

幸子「カワイイボクのスマートな説得によって、莉嘉さんがこちらに寝返ってくれました!」

莉嘉「えへへ☆」

美嘉「莉嘉⁉ アタシたちを裏切ったの⁉」

莉嘉「お姉ちゃん……」



莉嘉「アタシはお姉ちゃんを倒すことで、お姉ちゃんを越えるっ!」



美嘉「! り、莉嘉……アンタ、いつの間にそんなに大きく……っ」

未央「いや美嘉ねー、感動してる場合じゃないよ! これじゃ―――」

奏「9対7。パワーバランスが崩れたわね」

未央「くぅっ! だ、だがまだこっちには―――」

杏「未央。飴舐め終えたから、杏抜けるね」

未央「ちょお―――――いっ⁉」

きらり「きらりも、卯月ちゃんたちが可哀想になってきたから……」

未央「きらりんまで⁉」

奈緒「これで11対5だな」

未央「くぅううううう……! で、でもあーちゃん! あーちゃんは、最後まで私に付いて来てくれるよね⁉」



藍子「ふぁぁ……ふぇ?」



未央「……」

藍子「あ、ごめんなさい、未央ちゃん。今何か言いました?」

未央「……うん、もう眠いよね。ごめんね、付き合わせて」

奈緒「さあ……覚悟しろよ、未央?」

みく「未央チャン、よくもさっきはやってくれたね?」

未央「あ、あはは……2人とも、顔が怖いよ? 枕投げは、みんなで楽しくね?」

奈緒・みく『お前が言えた台詞かっ!』


《シュッ―――ぽふっ!》


未央「あぶぅっ⁉」


427: 2017/04/27(木) 20:44:28.46


―――枕投げ終了後


未央「……あんまりじゃない? 最後は私一人を滅多打ちなんて」

奈緒「自業自得だろ」

みく「当然の報いにゃ」

未央「あーちゃん、かみやんとみくにゃんが冷たいよぅ!」

藍子「よしよし、未央ちゃん」

加蓮「もう寝るんだから、静かにしてよ」

ありす「その通りです。明日は朝早いんですし」

未央「……はーい」

みく「……あっ⁉」

卯月「どうしたの、みくちゃん?」

みく「とんでもなく大事なことを忘れてたにゃ……」

幸子「大事なことですか?」

凛「みく、もう枕投げみたいなことをやってる時間はないよ」

みく「そんなことじゃなくて!」



みく「みくたち、ユニット名決めてないでしょ⁉」



莉嘉「ユニット名?」

楓「ああ、そういえば決めていなかったわね」

奏「でも、決めていないと言うより、決める必要がないだけでしょう?」

まゆ「そうですね。プロデューサーさんは、私たちは『346プロオールスターズ』としてフェスに参加すると言っていましたし」


428: 2017/04/27(木) 20:45:58.14


みく「そんな名前つまんないにゃ! もっとちゃんとしたの考えようよー!」

杏「前日の夜に決めることじゃないでしょ……」

未央「いや、みくにゃんの言うとおりだよ。名は体を表すって言うでしょ?」

奈緒「未央、よくそんな言葉知ってたな」

加蓮「偉いね、未央」

未央「私、これくらいで感心されるの⁉ と、とにかく、みんなでいい感じのを決めようよ。さあ、意見出してー」

みく「プリティー☆ネコチャンズがいい!」

楓「私はバスがいいと思うわ」

美嘉「2人とも、まだ諦めてなかったの⁉」

まゆ「私はPDCがおすすめです」

ありす「だから嫌ですっ!」

幸子「カワイイボクと愉快なアイドルたち!」

奈緒「お前も愉快なくせに!」

莉嘉「カリスマぎゃるーず☆」

加蓮「それだと全員がギャルみたいになるって」

きらり「ハピ☆ハピガールズ!」

杏「そこまで悪くはないからツッコミにくいよ、きらり……」

藍子「わぁ、どれも素敵なユニット名ですね」

未央「あーちゃん⁉ 今の所ろくなの出てないよ⁉」

奏「凛は何かアイデアないの?」

凛「何を言っても馬鹿にされそうだから、何も言わない」

未央「こうなったらプリンセスブルーしか……」

凛「私が何も言わなくても、お喋りがいたね……!」

未央「ひっ⁉ じゃ、じゃあ北神ガ蒼造セシ可憐ナル双姫(オーディンズ・プリンセスブルー)で」

奈緒「未央。お前は今、3方向に喧嘩を売ったぞ……!」

加蓮「人様の過去を笑いものにするとは、良い趣味してるよね……!」

未央「じょ、冗談だって。ならしまむー、何かアイデアない?」

卯月「わ、私? うーん…………あっ!」

未央「おっ、何か思いついた?」

卯月「明日私たちが歌う曲から取って……こういうのは、どうかな?」


429: 2017/04/27(木) 20:46:49.73


―――翌日 フェス会場 ステージ裏


P「……さて、じゃあもうすぐお前たちの出番だ。せっかくだから、出る前に円陣でも組んでみるか?」

未央「あ、いいね、それ。……なら、まずはしぶりんの手が一番下で」

凛「? まあいいけど」

未央「次にしまむー!」

卯月「? うん、未央ちゃん」

未央「で、次が私」

奈緒「あ、分かったぞ。それじゃ、次はあたしだな」

加蓮「その次が私だね」

美嘉「あ、なるほどね」

莉嘉「お姉ちゃんの次、アタシがいいっ」

美嘉「莉嘉、悪いけどアンタは最後」

莉嘉「え⁉ なんでー⁉」

楓「ごめんね。美嘉ちゃんの次は私なの」

ありす「事務所に入った順、というわけですか」

みく「まゆちゃん、みくの方がちょっと先だよね?」

まゆ「はい、ちょっとだけ」

杏「次、杏だっけ?」

奏「それで私ね」

藍子「私たちはどっちが先なんでしょう?」

きらり「んー……藍子ちゃんが先でいいと思うにぃ☆」

幸子「はい、最後が莉嘉さんです」

莉嘉「やっとアタシだよ~……」


430: 2017/04/27(木) 20:47:15.32


未央「じゃ、円陣も組めたことだし。しぶりん、号令をお願いね」

凛「え、私? 年長者の楓さんがするべきじゃ……」

楓「ここは凛ちゃんの方がいいと思うわ」

卯月「凛ちゃんは、346プロの最初のアイドルだもん」

凛「卯月と未央も1日しか変わらないよね?」

未央「1日でも先輩は先輩だって」

卯月「うん、そういうこと」

奈緒「頼んだぞ、先輩」

加蓮「しゃんと決めてよね」

凛「もう……分かったよ」


431: 2017/04/27(木) 20:48:51.25





凛「えっと…………私たち、みんなでやるライブ」






凛「全力で楽しんで――――全力で、楽しませよう!」







凛「シンデレラガールズ!」



『ステージ―――オン!』










―――お願い! シンデレラ 夢は夢で終われない 動き始めてる……輝く日のために!



第11話 終わり


434: 2017/04/28(金) 20:02:49.67


―――とある日の夜 アイドル寮 奈緒の部屋


加蓮(……眠い)

奈緒「―――というわけでさ、あたしもそろそろ、そういうことに興味があるというか……なんというか……」

加蓮(昨日ちょっと夜更かししちゃったから……すごく眠いなぁ)

奈緒「それに、いつまでもこのままなのもどうかと思うわけで……」

加蓮「……ふぁ……」

奈緒「加蓮、ちゃんと聞いてるのか?」

加蓮「ふぇ? あ、聞いてるよ、もちろん」

奈緒「ならいいけどさ」

加蓮(ホントは全然聞いてなかったけど。何かに興味があるとか、いつまでもこのままがどうの言ってたような……なんの話だろ?)

奈緒「じゃあ、本題に入るぞ?」

加蓮「うん、何?」

奈緒「そ、その、つまりだな……あたし、ずっと気になってて……」

加蓮(気になる……? なんか奈緒、顔赤い……)

奈緒「……だ、だから……あの……」





奈緒「付き合ってくれ、加蓮!」





加蓮(ふーん、付き合うねぇ…………え、ちょっと待って? え、付き合ってって…………私と?)





加蓮「えぇぇぇえぇぇええぇぇぇぇぇぇええ⁉」





435: 2017/04/28(金) 20:03:55.40


奈緒「そ、そんな驚くことないだろっ!」

加蓮「いやいやいやいやいや、驚くでしょ⁉ つ、付き合ってって……冗談だよね⁉」

奈緒「ひ、人が勇気を出して言ったのに、冗談扱いは酷いぞっ!」

加蓮「じゃあ本気なの⁉」

奈緒「本気だよ!」

加蓮「で、でもそんな……私、女の子なんだよ⁉」

奈緒「知ってるけど⁉」

加蓮「奈緒も女の子なんだよ⁉」

奈緒「それも言われるまでもなく知ってるよ! だからどうした!」

加蓮「だからどうした⁉ な、奈緒には女同士とか関係ないってこと⁉」

奈緒「いや関係ないって言うか、むしろ女同士だから付き合ってくれって言ってるんだろ!」

加蓮「むしろ⁉ むしろ女同士のがいいの⁉ な、奈緒ってそうだったの⁉」

奈緒「だって男となんて、考えられないだろ!」

加蓮「えぇぇええええええええぇぇぇぇええ⁉」

奈緒「だから、そこまで驚くことか⁉」

加蓮「あ……ご、ごめん、そうだよね。うん、そういうのは人それぞれだもんね」

奈緒「人それぞれ……?」

加蓮「で、でもなんで私なの?」

奈緒「なんでって……」



奈緒「加蓮が好きだからに決まってるじゃんか」



加蓮「すっ⁉」

奈緒「あたしなりに色々考えたけど、加蓮と一緒がいいって思ってさ」

加蓮「一緒って!」

奈緒「さっきからなんだ、その反応! なんだよ……や、やっぱりあたしとじゃ……いや?」

加蓮(上目遣い⁉ ほ、本気だ……奈緒、本気なんだ! なら私もちゃんと答える必要が……でもそんなすぐに無理だからっ!)

加蓮「ごめん奈緒! ちょっと考えさせて!」

奈緒「え、考える?」

加蓮「私、すぐに返事できそうにない……でも、ちゃんと答え出すから!」

奈緒「ま、まあいいけど……なら、10分ぐらい待てばいい?」

加蓮「短い! そんなすぐに決められるわけないでしょ⁉」

奈緒「そ、そうか?」

加蓮「そう! と、とにかくそういうわけだから……私、もう部屋に戻るからね!」

奈緒「え、ちょっと加蓮⁉」


《ガチャ――――バタン!》





奈緒「……あたしと一緒に可愛い服買いに行くのって、そこまで悩むことなのか……?」


436: 2017/04/28(金) 20:04:35.21
第12話 アイドル部門のいちばん長い日



―――加蓮の部屋前


《コンコン》


未央「かれんー、この前借りた本返しに来たよー」


《ガチャ―――》



加蓮「スキ、キライ、スキ、キライ、スキ、キライ―――」

《ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち―――》



未央「かれん、何してるの⁉」

加蓮「見て分かるでしょ……花占い」

未央「いやそれ花じゃないよ⁉ 梱包材のぷちぷちじゃん! なに好き嫌い言いながらぷちぷち潰してるの⁉ すごく怖いよ!」

加蓮「だって花がなかったんだもん……」

未央「無いからって普通それ選ぶかなぁ⁉」

加蓮「……未央。私、どうしたらいいか分からないよ……」

未央「……え、何があったの?」


―――説明中


未央「―――かみやんに告白された⁉」

加蓮「大きな声出さないでよ! 奈緒、隣の部屋にいるんだからね⁉」

未央「あっ⁉ ご、ごめん……でも本当に?」

加蓮「私も信じられないけど……でも直接言われたし」

未央「そ、それは間違えようがないね」

加蓮「未央……私、どうすればいいと思う?」

未央「どうすればって……相談してもらったのに悪いけど、私にも分からないかな……」

加蓮「役立たず……」

未央「ストレートにぶつけてくるね⁉ だ、だって……そうだ! ここは恋愛経験豊富な、美嘉ねーに聞いてみようよ!」

加蓮「美嘉に……?」

未央「美嘉ねーなら、きっといいアドバイスしてくれるって」

加蓮「そうかなぁ……」

未央「そうだよ。じゃあさっそく電話してみよ」

加蓮「……未央、お願い。じ、自分で話すのちょっと……」

未央「しょうがないなぁ……」


437: 2017/04/28(金) 20:05:03.92


―――美嘉の家 美嘉の部屋


美嘉「ん? 電話? あ、未央からだ」


《ピッ》


美嘉「もしもし未央?」

未央『あ、美嘉ねー。ちょっと相談があるんだけど、いいかな?』

美嘉「相談? いいけど、何?」

未央『実は……告白されちゃったんだ』

美嘉「告白⁉」


《ゴトン!》


438: 2017/04/28(金) 20:05:34.51


―――加蓮の部屋


未央「実は……告白されちゃったんだ」

美嘉『告白⁉』


《ゴトン!》


未央「かれんが―――って美嘉ねー、今の音、何?」

美嘉『み、未央、それ本当なの⁉』

未央「あ、うん、びっくりでさ」


439: 2017/04/28(金) 20:06:22.15


―――美嘉の部屋


美嘉「はっ⁉ あ、あまりに驚いてスマホ落としちゃった。拾ってと……み、未央、それ本当なの⁉」

未央『あ、うん、びっくりでさ』

美嘉(まさか未央が告白されるなんて……)

美嘉「で、でも告白って……誰にされたの?」

未央『それは……え、遠回しに?』

美嘉「未央? どうしたの?」

未央『あ、ちょっとかれんがね』

美嘉「加蓮? 加蓮も一緒にいるの?」

未央『そりゃいるよ』

美嘉(なんだ、加蓮にも相談してたんだ)

未央『それでえっと……美嘉ねー、同じユニットのメンバーって言えば分かるよね?』

美嘉(同じユニットってことは……ニュージェネだよね。でも凛にはプロデューサーがいるから……卯月が⁉)

美嘉「う、嘘でしょ⁉」

未央『だから、ホントなんだって』

美嘉「え、でもそれって……女の子同士じゃん⁉」

未央『だから悩んでるんだよー。美嘉ねー、いいアドバイスくれない?』

美嘉「えぇー……そ、そうだなぁ……じゃあ未央の気持ちはどうなの?」

未央『へ? 私? 私は……正直、ちょっと複雑な感じ』

美嘉「ま、まあそうだよね」

未央『私は、どっちも(かみやんもかれんも)好きだからさ』

美嘉「どっちも⁉」

美嘉(どっちもってどういうこと⁉ 何の2択⁉……はっ! ま、まさか……男も女も好きってこと⁉)

美嘉「み、未央、アンタそうだったの?」

未央『うん、そりゃもちろん(友達だし)』

美嘉「もちろんって……い、いや、うん。そういうのは人それぞれだしね」

未央『人それぞれ?』

美嘉「で、でもそれなら、あとはあの子(卯月)のことをどう思ってるかじゃない?」

未央『あの子(かみやん)のことをどう思ってるかかー……まあ、やっぱりそこだよね』

美嘉「まあ色々と考えるのは分かるけどさ。あ、アタシはどういう選択をしても、2人のことを応援するよ。友達として」

未央『み、美嘉ねー……そうだよね! 友達として、応援するべきだよね!』

美嘉「え、自分で言うんだ。そ、そうだね、応援するから」

未央『ありがと、美嘉ねー! じゃ、また明日ね!』

美嘉「う、うん、また明日―」


《プツッ》


美嘉「……アタシ、これまでと同じように未央に接すること出来るかな……。……い、いや、そういうのもちゃんと理解しないとね、うん」


440: 2017/04/28(金) 20:06:56.88


―――加蓮の部屋


未央「かれん。私はかれんがどんな選択をしても、応援するから!」

加蓮「未央……ありがと……!」

未央「それでかれん。かれんはかみやんのこと、どう思ってるの?」

加蓮「ど、どう思ってるって……友達としては、もちろん好きだよ? で、でもそういうのは今まで考えたことも無かったし……」

未央「まあ、そうだよね……」

加蓮「付き合ってほしいなんて言われるとは、思ってもみなかったし……」

未央「うん、そうだよね……」

加蓮「だから、自分の気持ちとか、全然分かんないよ!」

未央「で、でもかれん。かみやんは、告白の返事待ってるんだから」

加蓮「……うぅ……」


441: 2017/04/28(金) 20:07:27.60


―――ありすの部屋 


ありす「……ふぅ、中々面白かったですね」

ありす(加蓮さんに借りたこの恋愛小説、読み終わったので返さないと)


442: 2017/04/28(金) 20:08:00.39


―――加蓮の部屋 前


ありす(今は自分の部屋にいるのかな……あ、そうだ。ちょっと中の音を聞いてみよう。なんだかスパイみたいで、一度やってみたかったし)



加蓮『―――付き合ってほしいなんて言われるとは、思ってもみなかったし』



ありす「……はい?」

ありす(え、加蓮さん、誰かに付き合ってほしいって言われたんですか? そ、それって告白……い、いやいやまだ決めつけるのは早いです。買い物に付き合ってほしいとかかもしれないですし。あ、きっとそうですね。もう一度聞けば――)



未央『―――告白の返事待ってるんだから』



ありす「……あ、あわ、あわわわわわ」

ありす(み、未央さんが、告白の返事を待ってる? そ、それって……わ、私、とんでもないことを聞いて……)


443: 2017/04/28(金) 20:08:29.32


―――加蓮の部屋


未央「でもまさか、かみやんがかれんのこと好きだったなんてね……全然気付かなかったよ」

加蓮「私だって……奈緒の恋愛対象が女性だったことも知らなかったし」

未央「……あ、そもそもさ。かれんはそういうの、大丈夫なの?」

加蓮「そういうのって?」

未央「かれん、女の子を恋愛対象として見られる?」

加蓮「えぇ⁉ そ、それは……少なくとも、今まではそんな風に見たことなかったけど……」

未央「じゃあ、これからは?」

加蓮「こ、これから……う、うぅ…………うにゃあ―――――っ!」

未央「かれん⁉ の、脳の処理限界を越えちゃったんだ! 落ち着いて! どうどう!」

加蓮「はっ⁉ ご、ごめん未央。取り乱しちゃって」

未央「いいって。私、かれんのことサポートするって決めたからさ」

加蓮「未央……! ありがとう! 未央の気持ち、すごい嬉しいよ!」


444: 2017/04/28(金) 20:09:06.26


―――加蓮の部屋 前


まゆ「ありすちゃん、流石にそれは聞き間違いだと思いますよ?」

ありす「で、でも、しっかりこの耳で聞いたんです! 付き合ってほしいとか、告白とか!」

まゆ「恋愛ドラマでも見ていたんじゃないですか?」

ありす「そ、そんな音してなかったです! 試しにまゆさんも聞いてみてください!」

まゆ「……仕方ないですね。盗み聞きは悪い気がしますけど……」



未央『―――かれん、女の子を恋愛対象として見られる?』



まゆ「……」

ありす「ど、どうでした?」

まゆ「い、いえ、聞き間違いです」

ありす「何を聞いたんですか⁉」

まゆ「も、もう一度聞けば……」



加蓮『―――未央の気持ち、すごい嬉しいよ!』



まゆ「……ありすちゃん、このことは私たちの胸にしまっておきましょう」


445: 2017/04/28(金) 20:09:34.99


―――加蓮の部屋


加蓮「……ふぁぁ……」

未央「かれん、眠いの?」

加蓮「う、うん。でも眠ってる場合じゃないから……」

未央「いや逆でしょ! そんな頭で考えることじゃないよ! 今日はもう寝て、また明日考えよう?」

加蓮「でも……」

未央「いいから、ね?」

加蓮「……分かった、そうする」


446: 2017/04/28(金) 20:10:28.11


―――廊下


みく「ん? まゆチャンとありすチャン、どうしたの?」

ありす「え、えぇっ?」

まゆ「ど、どうしたのとは?」

みく「なんか、深刻そうな顔してない? 何かあったの?」

ありす「な、ななななな何もないですよ? 私、何も聞いてないですし、何も知りません!」

まゆ「あ、ありすちゃん!」

みく「? よく分からないけど、何か悩みがあるなら聞くよ?」

まゆ「だ、大丈夫です。悩みとかではないですから」

ありす「(こくこく!)」

みく「それならいいけど……」


《ガチャ――》


未央「あれ? みんな廊下で何してるの?」

ありす「み、みみみみみみみ未央さん⁉」

未央「みが大分多いよ⁉ ど、どうしたの、ありすちゃん⁉」

ありす「あわわわわわ……」

まゆ「あ、ありすちゃん、動揺しすぎです……!」

ありす「み、未央さん。わ、私はどうもしてないですよ? 橘、平常通りに営業中ですっ!」

未央「そ、そう? 明らかに様子がおかしいような……」

みく「そういえば未央チャン、今部屋から出てきたけど、加蓮チャンと何してたの?」

未央「うぇ⁉ え、えーと、なんて言うか……ぷ、ぷちぷち潰し競争してたんだ!」

みく「そんなくだらないことしてたの⁉」

未央「い、いや、意外と楽しいよ? ぷちぷちって」

みく「未央チャン、よくその歳でそんなのに熱中できるね……ある意味尊敬するにゃ」

未央「あ、あはは、まあそれほどでもないって。じ、じゃあ私もう寝るから。おやすみっ!」

みく「あ、うん、おやすみー」

まゆ(あ、あの未央ちゃんの様子……)

ありす(や、やっぱり、加蓮さんと……)

みく「ふ、2人とも、大丈夫? すごい汗かいてるよ?」

まゆ「さ、最近暑いですから! ありすちゃん、お風呂入りに行きましょうか?」

ありす「い、いいですね! さっき入りましたけど、こんなに汗かいちゃいましたし!」

まゆ「じゃあ、もう一度入りましょう!」

ありす「レッツゴーです!」

みく「え、そんなに急ぐほど⁉……2人とも、何か隠してる気がするにゃ」


447: 2017/04/28(金) 20:11:07.46


―――大浴場


ありす「まさか未央さんと加蓮さんが……」

まゆ「あ、ありすちゃん、その話はもうやめましょう。2人が関係をオープンにするまで、触れないでおいた方がいいと思います」

ありす「そ、そうですね」

まゆ「今は別のことでも話して、そのことは頭の奥にしまいましょう。……そういえば、ありすちゃん、さっき本を持っていましたけど、あれは?」

ありす「あれは加蓮さんに借りた恋愛小説です」

まゆ「か、加蓮ちゃんから……」

ありす「はい、加蓮さんから……」

まゆ「そ、それで、どんな内容なんですか?……まさか、同性愛を扱った作品じゃ……」

ありす「い、いえ、男女の恋愛のお話でした」

まゆ「そ、そうですよね。ただの小説ですしね」

ありす「そ、そうですそうです」

まゆ「じ、じゃあ、どんなお話だったんですか?」

ありす「簡単に説明すると……主人公の少年が余命一ヶ月の女の子と恋をするお話なんです」

まゆ「余命一ヶ月ですか……それは悲しいお話ですね」

ありす「ですが2人は、その短い時間で一緒にたくさんの思い出を作るんです。最後の一ヶ月を最高の一ヶ月にするために」

まゆ「感動的なお話なんですね」

ありす「はい。恥ずかしいんですが読んでいる途中で……私、号泣してしまいました」


448: 2017/04/28(金) 20:11:59.67


―――大浴場 脱衣室


みく「あの2人、絶対何か隠してるにゃ」

幸子「……なんでボクも一緒に盗み聞きしなくちゃいけないんですか?」

みく「1人だと罪悪感あるけど、共犯者がいればそこまででもないでしょ?」

幸子「そんな最低の理由で⁉ 嫌ですよ! ボクもう部屋に戻ります!」

みく「ま、待つにゃ幸子チャン! 確かに盗み聞きは良くないことだけど……でも、友達が悩んでいたら、力になりたいでしょ? 幸子チャンは違うの?」

幸子「そ、それは……確かにそうですが……」

みく「直接訊いても何も教えてくれなかったんだから、もう盗み聞きするしかないよ」

幸子「でも、そこまで飛ぶ必要あるんですかね⁉ まだ他に出来ることありそうですよ⁉」

みく「さあ、幸子チャンも一緒に扉に耳を当てるにゃ」

幸子「えぇ……あんまり気乗りしないんですけど……」



まゆ『―――余命一ヶ月ですか……』



みく「……え」

幸子「……余命、一ヶ月……?」

みく「……い、いやいやいや聞き間違いにゃ」

幸子「そ、そうですよね。それはないですよね」

みく「もう一度聞いてみよ、幸子チャン」

幸子「はい、そうすれば聞き間違いだと―――」



ありす『―――私、号泣してしまいました』



みく「あ、あのありすチャンが……号泣……?」

幸子「あ、ありすちゃんが号泣した所なんて、今まで一度も見たことないですよね……?」

みく「そ、それじゃやっぱり、ありすチャン……不治の病なんじゃ……!」

幸子「そんな⁉」



ありす『? 誰かいるんですか?』



みく「ま、まずいにゃ! 離れるよ、幸子チャン!」

幸子「わ、分かりました!」


449: 2017/04/28(金) 20:12:33.10


―――みくの部屋


みく「とんでもないことを知ってしまったね……」

幸子「み、みくさん、不治の病って……」

みく「だって、余命一ヶ月って……それしか考えられないよ」

幸子「で、でもやっぱり聞き間違いということは?」

みく「それだけじゃないよ。さっきまゆチャンとありすチャンに会った時、2人とも凄く深刻そうな顔してたんだ……」

幸子「し、深刻……で、でもそれだけじゃ……」

みく「それにありすチャン、わざとらしく『何も聞いてないし、何も知らない』とか言ってたし……あれはきっと、お医者さんに病気のこと聞いたの、隠そうとしてたんだ……」

幸子「そ、そんな……じゃあ本当に……? そ、そんなのって……そんなのってないですよ!」

みく「ありすチャン、まだ小学生なのに……なんで……!」

幸子「み、みなさんにも知らせましょう!」

みく「待って、幸子チャン!」

幸子「どうして止めるんですか⁉」

みく「ありすチャンが病気のことを隠してるのは、きっと残りの1ヶ月を、みんなとこれまで通りに過ごしたいからじゃないかな……。だからきっと、同じユニットのまゆチャンにだけ話したんだよ」

幸子「な、なるほど……確かにそうかも……」

みく「でも、みんながこのことを知ったら……」

幸子「これまで通りには……いかないですね……」

みく「だから、このことはみくと幸子チャンの胸にしまっておこう? それで、ありすチャンともこれまで通りに接して……あげるのが……い、一番だよ……うぅ……」

幸子「み、みくさん……。分かりました、そうですよね……ありすちゃんの……望み通りに、してあげるべきですよね……ひっく……」


450: 2017/04/28(金) 20:13:07.64


―――翌日 アイドル部門事務所


奈緒「お、おはよーっす」

P「おう、おはよう。どうした? 調子でも悪いのか?」

奈緒「いや、あたしはいつも通りなんだけど……」

加蓮「お、おはよう……」

未央「お、おはよー」

奈緒「……なあ。なんであたしから視線を逸らすんだ?」

加蓮「な、なんでって……」

未央(かれん。かみやんはみんなの前では普通にしようって言ってるんだよ)

加蓮「あ、そ、そっか。そうだよね、うん。わ、分かったよ、奈緒。視線逸らしたりなんか……」

奈緒「……?」

加蓮「や、やっぱり無理ぃーっ!」

未央「か、かれん! あからさますぎるよっ!」

P「……加蓮の奴、どうしたんだ?」

奈緒「いや、あたしにもさっぱりでさ……。それに……」

まゆ「お、おはようございます……(ちらっ)」

ありす「お、おはようございます……(ちらっ)」

奈緒「まゆとありすは、なんで朝から加蓮と未央をちらちら見てるんだ?」

ありす「み、見てないですよ⁉」

まゆ「な、奈緒ちゃんの気のせいじゃないですか?」

奈緒「いや、絶対見てるだろ。それと、みくと幸子に至っては……」

みく「おはよー!」

幸子「おはようございます!」

みく「もう! Pチャン、元気ないよ!」

P「え、そうか? いつも通りだと思うんだが……」

幸子「もっともっと明るくです! さあ、今日も一日!」

みく「張り切っていくにゃ!」

みく・幸子『おぉーっ!』

P「な、なんだ、こいつらのこのテンション」

奈緒「朝からずっとこうでさ」

P「奈緒以外、全員様子がおかしいわけか……何か心当たりないのか?」

奈緒「それが全く……昨日の夕飯の時は、みんな普通だったんだけど」

P「うーん……それは謎だな……」


451: 2017/04/28(金) 20:14:02.48


《ガチャ―――》


美嘉「お、おはよー……」

莉嘉「おはよー☆」

P「お、美嘉、莉嘉。おはよう」

美嘉「う、うん……」

未央「あ、美嘉ねー。おはよー」

美嘉「⁉ お、おはようございます!」

未央「なんで敬語なの⁉」

美嘉「あっ⁉ み、未央、おはよー☆」

未央「ど、どうしたの、美嘉ねー」

美嘉「ど、どうもしないよ? アタシはいつも通りだよ?」

未央「そう? あ、昨日はありがとね」

美嘉「あはは、全然いいって、あれぐらい。……そ、それで、どうするか決めたの?」

未央「うーん……それがまだ。なんていうか、今は照れちゃって、相手の顔すら見られないんだよね」

美嘉「そっか……」

未央「だから、今日は仕事なくて良かったよ」

美嘉「そういえば、今日は珍しくみんな仕事が無い日だっけ」

未央「うん、だから―――」


《ガチャ――》


卯月「おはようございますっ」

未央「あ、おはよー、しまむー」

美嘉「って、普通に見てるじゃん!」

未央「え? かれん、見られたの?」

美嘉「いや加蓮に聞かなくても分かるでしょ!」

加蓮「ううん、まだ見るのとか無理そう……」

美嘉「節穴⁉ 加蓮の目、節穴なの⁉ 思いっきり目合わせてたよ⁉」

未央「み、美嘉ねー、本人が言ってるんだから、まだ無理なんだって」

美嘉「えぇ……ま、まあそうなのかな……」

ありす「み、美嘉さん!」

美嘉「? 何、ありすちゃん?」

ありす「空気読みましょう!」

美嘉「え? 空気?」

ありす「いいからこっちに来てください!」

美嘉「え、なんで? アタシ、どこの空気読めてなかった?」

みく「美嘉チャン! ありすチャンがこっちに来てって言ってるんだから、さっさと行くにゃ!」

幸子「そうです! うだうだ言ってないで、早く行ってあげてください!」

美嘉「そこまで言わなくてもよくない⁉ わ、分かったよ……いつでも話聞くからね」

加蓮「ありがと、美嘉」

未央「頼りになるなぁ、美嘉ねーは」


452: 2017/04/28(金) 20:14:43.46


奈緒「なあ、加蓮」

加蓮「⁉ な、なに?」

奈緒「そういえば、昨日の返事は?」

加蓮「ま、まだ決められないよ!」

奈緒「まだ決めてなかったの⁉」

未央「かみやん、そんなすぐ決められることでもないでしょ⁉」

奈緒「なんで未央が⁉ 関係ないだろ⁉」

加蓮「ご、ごめん、奈緒。未央にあのこと、話しちゃったの」

奈緒「え、未央に話したのか?」

未央「うん、かれんから話は聞いたよ……美嘉ねーにも話しちゃった」

奈緒「なんで美嘉にも話してんだ⁉」

加蓮「そ、相談に乗ってもらいたかったの!」

奈緒「相談って……ああ、そういうことか。ならいいかな」

奈緒(服買いに行く店の相談なら、仕方ないな……ん? なんだ、じゃあ一緒には行ってくれるってことか)

未央「あのさ、かみやん。返事はもうちょっと待ってあげて? かれん、今真剣に考えてるからさ」

奈緒「え、そんな真剣に考えてくれてるのか?」

加蓮「う、うん……」

奈緒「そっか……ありがとな。やっぱり加蓮に話して良かったよ」

加蓮「うにゃ⁉」

奈緒「何その鳴き声⁉」

未央「か、かみやん、ちょっとかれんから離れようか。考えまとまらなくなるからさ」

奈緒「そ、そこまで集中したいのか……」

奈緒(はっ! なるほど……加蓮と未央の様子がおかしかったのは、行く店をどこにするか考えてたからなんだな。あたしのために、そこまで考えてくれるなんて……!)

奈緒「……じゃあ、決まったら教えてくれよな」

加蓮「わ、分かった。ちゃんと決めるから……待たせてごめんね」

奈緒「いいよ、別に。あたし、待ってるからさ」


453: 2017/04/28(金) 20:15:19.18


―――レッスン室の一角 休憩中


奏「未央、今日はどうしたの? いつもみたいな元気がないけど」

未央「え⁉ そ、そうでもないって! 未央ちゃんはいつでも元気だよー!」

奏「そうかしら……嘘ついてたら、キスしちゃうわよ?」

美嘉「ちょっと奏、何言ってるの⁉」

奏「え、いや、少しからかっただけなんだけど……」

美嘉「冗談には言っていいことと悪いことがあるでしょ⁉ 本気にしたらどうするの⁉」

奏「ち、ちょっとどうしたの、美嘉? いつも私、似たようなこと言ってるわよね?」

美嘉「そ、そうだけど、相手を選びなよ! ほら、未央はその……年下でしょ!」

奏「え、そこ?」

美嘉「とにかく未央とか……卯月とかもからかっちゃ駄目!」

奏「わ、分かったわ。分かったから、落ち着いて美嘉」

莉嘉「お姉ちゃん、今日変だよ? 具合悪いの?」

美嘉「ぐ、具合? すこぶる快調だって! あー、有酸素運動したいなぁ!」

奏「……美嘉、あなた疲れてるのよ」

莉嘉「……休んだ方がいいよ、お姉ちゃん」


454: 2017/04/28(金) 20:16:07.20


―――レッスン室の別の一角


きらり「まゆちゃんとありすちゃん、何か気になることでもあるの?」

ありす「何もないです何もないです!」

まゆ「だからありすちゃん、挙動不審すぎです……!」

杏「どしたの? 未央と加蓮と、何かあった?」

ありす「なんで未央さんと加蓮さんが出てくるんですか⁉」

杏「いや、さっきから2人してチラ見してるじゃん」

まゆ「奈緒ちゃんにも言われましたけど……そ、そんなに見てました?」

杏「うん。本人たちは気づいてないみたいだけどね。なんか、あっちはあっちで様子変だし」

きらり「2人と喧嘩でもしてるの?」

まゆ「いえ、そうじゃないんですが……」

ありす「ワタシ、ナニモ、シリマセン」

まゆ「ありすちゃん……」

杏「ここまであからさまに何か隠してると、気になるよね。話せないことなの?」

まゆ「い、いえ、私たちだけで抱え込むには大きすぎるみたいです。……聞いてもらえますか?」


―――説明中


きらり「―――えぇー⁉」

ありす「しーっ! きらりさん、しーっです!」

杏「……いや、それは流石にないでしょ。まゆとありすの勘違いだと思うよ」

まゆ「私も最初はそう思ったんですが……あれを見てください」



未央『かれん、答え決まった?』

加蓮『……まだ』



まゆ「何を話しているのかは聞こえませんが、今日の未央ちゃんと加蓮ちゃん、ずっと一緒にいませんか?」

杏「そ、そういえばそうだけど……だからと言って、付き合ってるって言うのはさ……」

きらり「きらりもちょっと信じられないなぁ……」

ありす「ですが、事実なんです……」

杏「だからそんな事実はないと思うよ。試しに、2人に聞いてみたら?」

ありす「そ、そんなこと出来ません……」

まゆ「聞くのには勇気がいりますね……」

杏「しょうがないなぁ……じゃあ、杏が聞いてきてあげるよ」


455: 2017/04/28(金) 20:17:02.98


―――レッスン室のまた別の一角


杏「2人とも、ちょっといい?」

加蓮「杏?」

未央「どしたの?」

杏「2人って付き―――」

杏(あ、直接的な訊き方はやめた方がいいか。遠回しに訊こう)

杏「2人って、好きな人とかいるの?」

加蓮「げほっ、ごほっ!」

杏「加蓮⁉」

未央「だ、大丈夫、かれん⁉」

加蓮「だだだ、大丈夫大丈夫!」

杏(え、この反応まさか……本当に?)

杏「か、加蓮? それで、好きな人はいたりするの?」

加蓮「そ、それはその……分かんないよっ! もう自分の気持ちが分かんないよぉ!」

杏「えぇ⁉」

未央「お、落ち着いてかれん!」

加蓮「私、好きなの⁉ どうなの⁉ むしろ教えてよーっ!」

未央「あ、杏ちゃん、ごめん! かれん、今ちょっとナーバスだから! そういう恋バナとか、またの機会にしてあげて!」

杏「わ、分かった。なんか、ごめんね」


456: 2017/04/28(金) 20:17:28.57


―――レッスン室の別の一角


杏「……」

きらり「杏ちゃん、どうだった?」

杏「……限りなく黒に近い、グレー」

きらり「……そ、それって……」

杏「でも何か違う気も――」

ありす「やっぱり! やっぱりそうなんですね……!」

まゆ「2人は付き合って……!」

きらり「びっくりだにぃ……」

杏(付き合って……るのかなぁ? 確かに、加蓮のあの反応は何かありそうだったけど……)


457: 2017/04/28(金) 20:18:07.12


―――レッスン室のさらに別の一角


みく「ほら凛チャン、猫耳付けるにゃ!」

凛「い、いいよ、猫耳とか」

幸子「楓さんも、どうぞ!」

楓「どうして、猫耳を?」

みく「決まってるにゃ! 猫耳を付ければ可愛さ倍増!」

幸子「カワイイボクが、さらに可愛くなります!」

楓「なるほど……」

凛「いや、なるほどじゃないですよ」

みく「……それに、この方がきっと楽しいにゃ……」

幸子「少しでも……楽しい時間を……」

凛「ふ、2人とも、今日ちょっと変じゃない? やけにテンションが高いと思ったら、急に下がるし」

みく「……ひっく……」

幸子「……うぅ……」

凛「え、泣いてるの⁉」

楓「みくちゃん、幸子ちゃん、どこか痛いの?」

みく「なんでも……ないにゃ……」

幸子「いつも通りの……ボクたちですよ……」

凛「それは無理があるよ……辛いことでもあった?」

みく「辛いのは、みくたちじゃ……」

楓「え?」

幸子「もう、無理です……2人とも、聞いてください……」


―――説明中


凛「……いやいやいや、不治の病って、そんなことあるわけないよ」

みく「でもあれを見るにゃ!」



ありす『……わ、私、どうすれば……』

まゆ『……これからどういう風に、2人と接していけばいいんでしょうか……』



幸子「何を言っているのかは聞こえませんが、明らかに元気がないですよ!」

楓「……確かに、そう見えるわね」

みく「うぅ、ありすチャン……」

凛「だからないって。……仕方ない、私が確認してくるよ」


458: 2017/04/28(金) 20:18:43.24


―――レッスン室の別の一角


凛「ありす、ちょっといい?」

ありす「はい、なんですか?」

凛「えっと……」

凛(もし仮に本当だったら、ストレートに聞くのは悪いよね……)

凛「ありす、最近何か変わったことあった?」

ありす「⁉ な、ななななな何もないですよ⁉ なんですか変わったことって⁉」

凛(え、この反応まさか……本当に?)

凛「ま、まゆ、ありすから何か聞かされたこととかある?」

まゆ「⁉ な、ないですよ⁉ 何言ってるんですか、凛ちゃん! まゆは何も知りません! い、今、私たちその、あれなので、あっち行ってください!」

凛「そ、そう……」


459: 2017/04/28(金) 20:19:22.13


―――レッスン室のさらに別の一角


凛「……」

楓「凛ちゃん、どうだった?」

凛「……2人とも、何かを必氏になって隠してました」

みく「やっぱりにゃ!」

幸子「自分が病気であることを、隠そうと……っ!」

凛「そんな……ありす……っ」


460: 2017/04/28(金) 20:20:02.53


―――レッスン室の中心辺り


藍子「奈緒ちゃん、何を読んでいるんですか?」

奈緒「んー? ファッション誌」

卯月「珍しいね、奈緒ちゃんがファッション誌なんて」

奈緒「あたしも一応女子高生だからなー。今度加蓮と一緒に服買いに行くんだ。加蓮が今、行く店考えてくれてて」

卯月「へぇ~」



加蓮『……同姓の親友に告白されました。どうすればいいですか?』

未央『知恵袋に相談はやめない⁉』



藍子「何を話しているかは分かりませんが、確かにスマホで調べ物をしているみたいですね」

奈緒「加蓮、服選ぶのとか好きだろ? だから加蓮に頼んだんだ」

卯月「確かに、それなら加蓮ちゃんが適任だね」


461: 2017/04/28(金) 20:21:02.99


―――昼休憩


P(うっし! 仕事も終わったし、飯食うか。今日は凛たちもいるし、誰かのとこに混ぜてもらおうかな……あ、未央たちのとこでいいか。ちょうど事務所に居るし)

P「おい、未―――」



未央「かれん、かみやんに告白されて考え込むのは分かるけどさ。レッスンあるんだから、ご飯はちゃんと食べたほうがいいって」

加蓮「うん、分かった……。……はぁ、ホントに、どう返事すれば……」



P(……加蓮が、奈緒に告白された?……え、今そう言ったよな? え、え、え、どういうこと? そういうこと? え、え、え、マジで? 駄目だ俺混乱してる。と、とにかく、ここから離れよう)


462: 2017/04/28(金) 20:21:46.80


―――屋上



P(……奈緒が加蓮に告白か……ま、まあ、そういうのは人それぞれだもんな。うん。俺はあいつらのプロデューサーなんだから、そんぐらい広い心で受け入れないと)



奏「美嘉、それはさすがに……」

莉嘉「ないと思うよ……」



P(……ん? 奏たちじゃん。あいつら屋上で飯食ってたのか。よし、じゃあ奏たちと一緒に食べるか)

P「おい、かな―――」



美嘉「ホントなの! 昨日の夜に未央が卯月に告白されたって電話してきて! さらには男も女も好きだってカミングアウトされたのっ!」



P(うっし! エレベーター戻ろ!)


463: 2017/04/28(金) 20:22:29.45


―――社員食堂


P(……奈緒と加蓮だけじゃなく、未央と卯月までとは……。それに加えて未央、男も女もって………………い、いや、うん、人それぞれだからな。人それぞれ。人それぞれだ。広い心で受け入れろ、俺! プロデューサーだろ!)



杏「だからさ……まだ確実にそうとは言い切れないって」

きらり「ほ、ほら、杏ちゃんもこう言ってるよ?」



P(あ、まゆたちだ。……。…………。…………い、一緒に、食べようか、な。うん。だ、大丈夫。もうさすがに今までのみたいな話が聞こえることも無いだろ)

P「おい、ま―――」



ありす「言い切れてしまうんですっ! 未央さんと加蓮さんが付き合っているって!」

まゆ「流石にもう、疑いようもないです……!」



P(回れー、右っ!)


464: 2017/04/28(金) 20:24:11.89


―――廊下



P(OK、俺。いったん整理しよう)

P(まず、奈緒が加蓮に告白したらしい)

P(次に、卯月が未央に告白したらしく、ついでに未央が美嘉にカミングアウトしたらしい)

P(しかし、未央と加蓮は既に付き合っているらしい)

P(…………)

P「人間関係ドロドロかっ!」

P(え、うちの事務所いつの間にこんなことになったの⁉ なんか百合の花が狂い咲きしてない、これ⁉ これは流石に―――う、う、受け入れろ、俺! 俺は……俺はプロデューサーなんだ! アイドルたちにどんな人それぞれがあろうとも、受け入れるのがプロデューサーというもの! 人それぞれなんかに、俺は負けないっ!)



凛『……なんで……こんな……っ!』

楓『信じたく……無いわね……』



P(? 凛と楓さんの声?……あ、ここレッスン室の前じゃん。あの2人なんでまだレッスン室に?)



みく『どんなに、信じられなくても……っ!』

幸子『ありすちゃんの余命があと1ヶ月なのは、変えられない事実なんです……っ!』



P(……。…………。………………うん、もう、あれだよね)





P「もう無理だぁああああああああああああああああああああああああああああああっ!」





465: 2017/04/28(金) 20:24:47.04


―――カフェテラス



藍子「今日はいいお天気ですね」

奈緒「こんな日は、カフェテラスで食べるに限るよな」

卯月「お日様の日差しが暖かくて、落ち着くね」

ちひろ「これぞまさに、至福のひと時よね」


466: 2017/04/28(金) 20:25:31.47


―――社長室


P「俺にはもう無理ですっ! 何がプロデューサーだ! 俺の狭い心じゃ、あそこまでの人それぞれは受け入れられないっ! 人それぞれにもほどがあるでしょうがっ!」

社長「お前急にどうした⁉」

P「奈緒と加蓮と未央と卯月が告白で! さらに未央はカミングアウトで! でも未央と加蓮は既にデキてて! ありすがあと一ヶ月で! もうどうしたらいいのか俺には分かりませんよぉっ!」

社長「いや意味が分からん⁉ お、落ち着け後輩! お前がここまで取り乱すとは、何があった⁉ もっと要領よく説明しろ!」

P「かくかくしかじかぁ――――――――――――――っ!」



―――かくかくしかじかと説明中



社長「―――そんなわけあるか馬鹿が! 何を馬鹿なことを馬鹿みたいに喚き散らしながら馬鹿丸出しで言っているんだお前は!」

P「だ、だって! あいつらそう言って―――」

社長「そんな馬鹿は修正してやる!」


《どごぉっ!》


P「がはっ⁉」

社長「普段のお前なら、『これが……若さか……』とでも呟いているところだぞ。いい加減冷静になれ、後輩」

P「ふ、普段の俺って一体……でも俺、本当にそう聞いたんですよ」

社長「聞いたからどうした。お前はネットに書いてある情報を全て鵜呑みにするのか?」

P「そ、それは……しませんけど。でもそれとこれとは……」

社長「同じだ馬鹿者! 直接本人から聞いたならまだしも、他人の話だけで真偽を判断出来るものか!」

P「うぐぅっ⁉」

社長「行くぞ、後輩」

P「い、行くってどこへ?」

社長「今言っただろうが。直接本人に確かめる。まずは……他の話とは深刻さが異なる、ありすの所だ」


467: 2017/04/28(金) 20:26:05.13


―――食堂


P「ありす」

ありす「ひゃぅっ⁉ ぷぷぷ、プロデューサー⁉」

社長「私もいるぞ」

まゆ「し、社長さん? 何かまゆたちにご用ですか?」

社長「単刀直入に訊く。……ありす、お前余命一ヶ月なのか?」

P「ちょ⁉ もっとオブラートに――」

ありす「?……なんの話ですか?」

P「あれ?」

ありす「余命一ヶ月……あ、確かにこの前、それが題材になっている小説は読みましたけど」

P「小説⁉ え、じゃあ、ありすが余命一ヶ月ってわけじゃないのか⁉」

ありす「縁起でもないこと言わないでください! そんなことあるはずないじゃないですか!」

P「……」

社長「案の定だろうが、この馬鹿Pが」

P「……俺、今日大分馬鹿って言われてますね」

まゆ「あの、どういうことでしょうか?」

ありす「どうして、私が余命一ヶ月だなんてことに?」

P「ああ……実はな―――」



凛「ありすっ!」



ありす「? 凛さん?」

凛「ごめん……ごめん、ありす!」

ありす「な、なんで抱きしめるんですか⁉」


468: 2017/04/28(金) 20:26:49.36


凛「ありすが辛い思いをしてたのに……私、全然気付かなかった」

ありす「つ、辛い思い?」

楓「ありすちゃん、もう1人で抱え込むことないわ」

ありす「か、楓さん? 抱え込むって何を……はっ⁉ ま、まさか、楓さんたちも(未央さんと加蓮さんのことに)気付いて……?」

みく「昨日、みくと幸子チャンが、ありすチャンとまゆチャンが話しているのを聞いちゃったんだ……」

まゆ「き、聞かれてたんですか⁉」

幸子「聞かなかったフリをしようと思ったんですけど……やっぱり、そんなこと出来ません!」

みく「ありすチャン……」



みく「みくは、ありすチャンが大好きにゃ!」



ありす「大好き……え、えぇえええええええええええええええええええ⁉」



幸子「ボクも、ありすちゃんが大好きです!」

楓「もちろん、私も大好きよ!」

凛「私も大好きだよ、ありす!」



ありす「凛さんたちもですか⁉ ちょ、ちょちょちょままま待ってください⁉ そ、そそそそんなこと言われても私そんな……こ、困りますっ!」

まゆ「あ、ありすちゃんまで告白されるなんて……」

きらり「よ、4連続告白……⁉」

杏「……何か違う気がするんだけど」

社長「おい、後輩。これはまさか……」

P「ま、まさかかもしれません」


469: 2017/04/28(金) 20:28:06.78


ありす「と、ととととにかく、まずは離してください、凛さん!」

凛「ううん、離さない! もう……もう絶対離さないからっ!」

ありす「そんな⁉」

楓「私たちはずっと、ありすちゃんの傍に居るわ!」

みく「これからみんなで一緒に、色んなことしよう?」

幸子「そして、楽しい思い出をたくさん作りましょう!」

ありす「いいですいいです間に合ってます!」

凛「もう無理しなくていいんだよ、ありす」

ありす「無理してません! お願いですから離してください!」

凛「離さないって言ったよ、ありす。こうして、ぎゅっと抱きしめることで……」





凛「ありすの身体の温もりを、少しでも私に感じさせて……っ!」





ありす「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああっ⁉」

凛「ありす、温かいね……。すごく、温かいよ……っ」

ありす「誰か⁉ 誰か助けてくださいっ⁉」

まゆ「り、凛ちゃん、それはさすがにアウトです!」

凛「まゆ……まゆも抱きしめたいのかもしれないけど、今は私に抱きしめさせてほしいな」

まゆ「抱きしめるつもりないですよ⁉」

きらり「ま、まさかまゆちゃんも、ありすちゃんのこと好きだったのぉ⁉」

まゆ「違います違います! まゆはプロデューサーさん一筋です!」

P「え、なんでここで俺⁉」

みく「ま、まさかPチャンもなの⁉」

凛「う、嘘でしょ……プロデューサー……っ!」

幸子「そ、そんなことって……っ」

楓「私たちは……どれだけ大切なものを失うことに……っ」



社長「お前ら全員落ち着けっ!」



『⁉』


470: 2017/04/28(金) 20:30:15.05


社長「アイドル部門は馬鹿の集まりか⁉ さっきから聞いていれば、明らかに会話が噛みあっていないだろうが!」

みく「か、会話が?」

まゆ「噛みあって……いない?」

杏「社長の言うとおり、何かおかしいと思うよ。みんなでちゃんと話を整理するべきじゃないかな」

幸子「せ、整理と言われましても……」



―――ちゃんと話を整理中



ありす「―――私は不治の病なんかじゃありませんっ! なんですか余命一ヶ月って⁉ さっきプロデューサーにも言いましたけど、縁起でもない勘違いはやめてください!」

楓「ごめんなさい、ありすちゃん……」

凛「……みく、幸子」

みく「……」

幸子「……」

みく「……い、いやー、ありすチャンが何ともなくて良かったにゃ!」

幸子「そ、そうですね! 無事で何よりですよね!」

みく・幸子『めでたしめでたし!』

凛「めでたしじゃない! よくもまあ2人とも人騒がせなことを……!」

みく「助けてPチャン!」

幸子「凛さんがかつてなく怖いです!」

P「お、落ち着け凛!」

凛「私はこの上なく落ち着いてるよ。落ち着いてるからとっととその2人を渡して、プロデューサー……!」

P「落ち着いてる奴の目じゃないんだけど!」

社長「待て、渋谷。今はそんなことより、次の馬鹿話の真偽を確かめるのが先だ」

凛「馬鹿話?」

社長「本田と北条が交際している……だったか?」

凛「ああ……まゆ、ありす、それはないよ」

まゆ「で、でも確かに聞いたんです」

ありす「はい、この耳でしっかりと」

社長「しっかりも何も、盗み聞きなんだろう?」

まゆ・ありす『…………そうですけど』

杏「まあ、こうなってくると怪しいよね」

P「じゃあ、未央と加蓮のいる事務所に向かいます?」

社長「そうだな」

まゆ「ま、まゆたちも行きます」

ありす「真実を確かめたいので」


471: 2017/04/28(金) 20:31:12.43


―――廊下


美嘉「だから、なんで信じてくれないの⁉」

奏「ちゃんと信じてるわよ」

莉嘉「うん、信じてるよ、お姉ちゃん」

奏「信じてるから……」

莉嘉「……今日はもう帰って寝よ?」

美嘉「信じてる人の台詞じゃないでしょ、それ!」



P「……美嘉たちが何か口論してるな」

社長「そういえば城ケ崎(姉)も何かたわ言を言っていたんだったか?」

P「未央が卯月に告白されて……さらには、未央が男も女も好きだとカミングアウトしたとかなんとか」

凛「美嘉……」



美嘉「はっ⁉ り、凛、なんでそんな哀れなものでも見るかのような目でアタシを見てるの⁉」

凛「……美嘉、きっと疲れてるんだよ」

美嘉「だから疲れてないから!」

奏「プロデューサーたち、そんな大勢でどうしたの?」

P「実はな―――」


―――ここまでの流れを説明中


奏「―――そういうことね。なら美嘉、あなたのもまず間違いなく勘違いよ」

美嘉「アタシは別に盗み聞きしたわけじゃないんだよ⁉ 電話でちゃんと未央と話したんだから!」

P「まあ、確かにちょっと事情が違うが。でもなあ……冷静に考えると、まずありえないだろ」

美嘉「そ、そりゃ、アタシも最初は信じられなかったけど。でも、実際に未央がそう言ってたの!」

社長「ああ、もういい。ありすたちの件も含めて、まとめて本田に確かめた方が早い」

P「そうですね、事務所に行きましょう」


472: 2017/04/28(金) 20:32:26.12


―――事務所


加蓮「……未央」

未央「どうしたの?」



加蓮「私、決めたよ」



未央「ど、どうするか、決めたの?」

加蓮「うん。……今から奈緒に返事してくる。確か、カフェテラスに行くって言ってたよね?」

未央「そ、そうだったと思うけど……」

加蓮「じゃあ、行ってくるね。……未央。悩んでいる間、ずっとそばに居てくれてありがとう」

未央「!……かれん、どんな答えにしたかは今は聞かないよ。でも……全部終わったら、ちゃんと聞かせてよね?」

加蓮「ふふっ、分かった。一番に未央に話すよ」

未央「かれん……頑張れっ!」

加蓮「うん、頑張ってくる!」


《ガチャ―――バタン》


未央「……まったく、世話が焼けるんだから」

未央(さっきのかれんの晴れ晴れとした顔……あの顔は、きっとそういうことだよね)

未央「さて、じゃあ――」



《ガチャ―――》


美嘉「未央!」



未央「あぇ⁉ び、びっくりしたぁ。何、美嘉ねー?」

美嘉「あんた、昨日の夜アタシに電話したよね⁉」

未央「う、うん、したけど」

美嘉「告白されたから、その相談のためにだよね⁉」

未央「う、うん、そうだけど」

美嘉「ほら! ホントでしょ⁉」

P「……マジか」

奏「……信じられないわね」

未央「ど、どうしたの? みんな揃って。社長まで」

社長「あ、ああ、少しな……」


473: 2017/04/28(金) 20:33:26.51


美嘉「それで未央。あんたアタシに、男も女もどっちも好きって言ったよね?」

未央「う、うん、言っ―――てないよ! 何言ってるの美嘉ねー⁉ そんなこと言うはずないでしょ⁉」

美嘉「あれ⁉」

奏「……美嘉」

美嘉「い、いや、だって、どっちも好きとか言ってたでしょ⁉」

未央「ど、どっちも好き?……それはかみやんとかれんのことでしょ⁉」

美嘉「奈緒ちゃんと加蓮のこと⁉」

ありす「えぇ⁉」

まゆ「み、未央ちゃん、加蓮ちゃんだけでなく奈緒ちゃんのことも好きだったんですか⁉」

未央「なんでそんな驚いてるの⁉」

凛「み、未央……」

未央「なんで距離取るの、しぶりん⁉」

美嘉「そ、それじゃ卯月は? 卯月のことはどう思ってるの?」

未央「しまむー? しまむーのことだってもちろん好きだけど」

みく「もちろん⁉ 今、3人が好きなのをもちろんって言った⁉」

幸子「さ、最低ですよ、未央さん!」

未央「なんで⁉ 友達なんだからみんな好きに決まってるでしょ⁉」



『……友達?』



未央「ど、どうしたのみんな。今度はそんなキョトンとして」

社長「……おい、どこまでも話が噛みあっていない気がするんだが」

P「……整理しましょうか」



―――話を整理中



未央「なんで私がしまむーに告白されたなんてことになるの⁉ そんな話全然してないよ!」

奏「……ほら見なさい、美嘉」

美嘉「……アタシが愚かでした」

未央「それに私とかれんも付き合ってないから! 何言ってるの、みんな⁉ 正気⁉」

ありす「……正気じゃなかったかもです」

まゆ「……そうですよね、冷静に考えたらおかしいですよね」

未央「まったくもー!」

社長「本当に馬鹿ばかりだな、この部門……そろそろ解散するか?」

P「真顔で言わないでくれません⁉ 冗談に聞こえませんよ!」


474: 2017/04/28(金) 20:34:28.05


社長「はぁ……残る馬鹿話は、神谷が北条に告白したというやつか。どうせそれも勘違いだろう?」

未央「あ、社長、そう思うのも無理はないですけど……それはないですよ。かれん、かみやんから直接告白されたんです。昨日の夜、かみやんの部屋で」

社長「直接だと?……そ、そうか。なら勘違いのしようがないな……驚くべきことだが」

P「その話だけは本当ということか……」

凛「まさか奈緒が加蓮に……そ、そういえば、その加蓮はどこに行ったの?」

未央「……かみやんに、返事してくるって」

『⁉』

未央「どう返事するかは聞いてないけど……」

P「……。……みんな。あいつら2人の関係性がどうなっても、俺たちはこれまで通りに奈緒と加蓮と接していこう。いいな?」

凛「……うん、分かってる」


《ガチャ―――》


卯月「……あれ?」

藍子「どうしたんですか、みなさん集まって」

ちひろ「社長まで……何かご用でしょうか?」

社長「ああいや、大したことじゃない。もう済んだ」

ちひろ「はあ……」

未央「しまむー、かみやんは?」

卯月「奈緒ちゃんなら、加蓮ちゃんが何か大事な話があるからって、屋上に連れていったよ」

未央「……そっか」



『…………』



藍子「な、何でしょうか、この空気は?」

ちひろ「どうかされたんですか?」

P「い、いえ、何でもないです! え、えっと……あっ! う、卯月、その持ってるの何だ?」

卯月「はい? これはただのファッション誌ですけど……」

P「へ、へー、ファッション誌か。新しい服でも買うのか?」

卯月「あ、いえ、これは奈緒ちゃんのなんです」

藍子「今度、加蓮ちゃんと一緒に服を買いに行くそうですよ」



『もうデートのこと考えてるの⁉』



475: 2017/04/28(金) 20:35:49.58


卯月「うぇ⁉ な、なんですかみなさん⁉」

藍子「デート?」

ちひろ「なんの話ですか?」

P「い、いやいやいや何でもないです! ええ、何でもないですよ!」

未央「かみやん、返事OK貰えるって確信してるんだ……」

凛「奈緒……そこまで加蓮のこと……」

卯月「? あ、そういえば未央ちゃん、その買いに行くお店はどこになったの?」

未央「へ? なんで私に聞くの?」

藍子「なんでって……未央ちゃん、朝から加蓮ちゃんと一緒に、ずっとどのお店にするか考えていたんですよね? まだ決まっていないんですか?」

未央「? 一体何の話してるの? 私、そんなこと考えてなんかないよ?」

卯月「え? そうなの?」

藍子「でも、奈緒ちゃんがそう言っていたんですが……」

未央「かみやんが……?」

卯月「確か加蓮ちゃん、美嘉ちゃんにも相談したとか」

美嘉「え、アタシ? アタシもそんなの知らないよ?」

社長「……おい、城ケ崎(姉)が相談されたというのは、まさかさっきのあれのことじゃないのか?」

美嘉「あれ?……まさか未央の電話のこと⁉」

未央「え⁉ で、でもそれはそんな相談じゃないですよ⁉」

杏「もしかしてさ……奈緒が、そう勘違いしてるんじゃないの?」

『⁉』

未央「か、かみやんが⁉ なんでそんな……⁉」

奏「……そもそも、本当に告白なんてしたのかしら?」

未央「はやみん⁉」

奏「みんな、考えてみて。今日の奈緒、何かおかしなところはあった?」

凛「お、おかしな所?」

莉嘉「いつも通りだったと思うよ」

P「ああ。様子がおかしかった寮組の中で、奈緒だけが普段通りだったな」

社長「……おい待て。それは本当か?」

P「? はい」

社長「普段通りだと? あの神谷が? すぐに恥ずかしがって赤面する、あの神谷がか? 告白をした翌日に、なんら変わりなく普段通りにしていたと?」

P「……あっ」



社長「あいつにそんな器用な真似が出来るか!」



『ああああああああああああああああああああああああああああああっ⁉』



476: 2017/04/28(金) 20:36:50.72


未央「ど、どういうこと⁉ え、じゃあ、まさか、告白なんてしてないの⁉」

杏「まず間違いなく、してないと思うよ」

未央「で、でも、だって、かれん、かみやんの部屋で告白されたって!」

社長「島村、高森。神谷は服を買いに行く約束をしたのはいつだか言っていたか?」

卯月「確か、昨日の夜だと言っていました」

藍子「奈緒ちゃんのお部屋で、加蓮ちゃんに服を買いに行くのに付き合ってくれとお願いしたそうです」

P「……おい、未央。お前の話だと、加蓮はその時に……」

未央「……………………」

凛「で、でもそんな……普通そんな勘違いする? 目の前で話してるのに?」

未央「……そういえば昨日、かれん、すごく眠そうだった」

ありす「ね、眠そう……だった……?」

まゆ「そ、それって……」

みく「眠気のせいで、奈緒チャンの話……」

幸子「……中途半端にしか、聞いていなかったんじゃ……」

奏「付き合ってくれという単語しか、まともに聞いていなかった可能性があるわね……」

杏「……あーあ。杏知らないよ」

未央「……」

P「お、おい、未央……」

未央「い……い……」



未央「今すぐ止めなきゃ⁉ かれん、早まらないでっ!」



477: 2017/04/28(金) 20:38:05.57


―――屋上


奈緒「加蓮、屋上なんかに連れて来てどうしたんだ?」

加蓮「ここなら、落ち着いて話が出来るから」

奈緒「話?」

加蓮「昨日の……返事」

奈緒「あ、ようやく決まったのか?」

加蓮「うん、やっと答えを出せたんだ」

奈緒「そっかー」

加蓮「ごめんね、待たせちゃって」

奈緒「いいよ、そんなの。そもそもあたしのためなんだしさ。むしろあたしが加蓮にありがとうって言うべきだろ」

加蓮「ありがとうって……ふふっ」

奈緒「え、笑うとこじゃなくないか?」

加蓮「奈緒はこんな時も奈緒なんだね」

奈緒「? どういう意味?」

加蓮「すぅー……はぁー……。……奈緒」

奈緒「な、何だ、深呼吸なんかして」

加蓮「私、奈緒の気持ち聞いて、正直すごく戸惑ってた」

奈緒「え?」

加蓮「奈緒にあんなこと言われるなんて、思ってもみなかったから」

奈緒「思ってもみなかったの⁉ そこまで⁉」

加蓮「だって普通は、親友にあんなこと言われるとか……考えないよ」

奈緒「親友関係なくない⁉」

加蓮「それに、奈緒は女の子だし……」

奈緒「そうだよ! 女の子だよ! だからおかしいことなんてないだろ⁉」

加蓮「な、奈緒はそうなのかもしれないけどさ。私は、今まで奈緒をそういう風に見たことなくって……」

奈緒「そういう風って⁉ あたし、どんな風に見られてたの⁉」

加蓮「だから普通に友達としてしか見てなかったの!」

奈緒「……。……いやだから友達関係ないだろ⁉ むしろ友達だからこそ、あたしの気持ち分かるべきだろ!」

加蓮「そ、そんなの言われなきゃ分かんないよ!」

奈緒「言われなきゃって……ま、まあ確かに今までそんなこと言ったことないけどさ」

加蓮「もう、奈緒はそういうとこも奈緒だよね」

奈緒「さっきからあたしを何かの形容詞みたいに言うのやめろ!」

加蓮「あははっ。……それでさ、私、今日ずっと考えてたんだ。どうすればいいのかなぁって」

奈緒「あー……随分悩ませちゃったみたいだよな」

加蓮「うん、すっごい悩んだ。考えても考えても、全然分からないんだもん」

奈緒「分からないか……まあ、色々あるもんな」

奈緒(服売ってる店、あちこちにあるし)


478: 2017/04/28(金) 20:39:13.09


加蓮「でも、分からないんじゃなくて、分かろうとしてなかったみたい」

奈緒「? どういうこと?」

加蓮「奈緒の気持ちを聞いて……私、ずっと頭だけで考えてた。だけど頭じゃなくて、心に聞くべきだったんだよね。実際、そうしたら、すぐに分かったから」

奈緒「えっと……それはフィーリングで決めたってことか?」

加蓮「その言い方はあれだけど……そんな感じ」

奈緒「まあ、あたしは加蓮が決めたんなら、それでいいよ」

加蓮「奈緒……じゃあ、私の答え、聞いてくれる?」

奈緒「ああ、聞かせてくれ」

加蓮「私ね……」



加蓮「奈緒には、すごく感謝してるんだ」



奈緒「……え、何の話?」

加蓮「いいから。最後まで黙って聞いて」

奈緒「あ、うん……」


479: 2017/04/28(金) 20:39:57.97





加蓮「奈緒と初めて会ったあの日……私に奈緒が声をかけてくれなかったら、今、私はここにいない。事務所のみんなとも知り合えなかったし、アイドルにだってなれなかった」





加蓮「アイドルになった後だって、奈緒がずっと隣にいてくれたから、一緒に頑張れた。私1人だったら、途中で投げ出してたかもしれない」





加蓮「奈緒が、私の世界に色をつけてくれたの」





加蓮「だから、今の私があるのは……奈緒のおかげ」





奈緒「い、いや、加蓮。それは言い過ぎだと思うぞ」

加蓮「ううん、言い過ぎなんかじゃないよ……」


480: 2017/04/28(金) 20:40:32.22










加蓮「ありがとう、奈緒」










481: 2017/04/28(金) 20:41:30.29


奈緒「! そ、そんなお礼とか、やめろって。あたし別に、そんなあれじゃ…………そ、それを言うなら、あたしも加蓮に感謝してるよ!」

加蓮「えっ?」

奈緒「あたしだって……加蓮が一緒だったから、今まで頑張れたんだ。加蓮と同じだよ。だ、だから……」


482: 2017/04/28(金) 20:41:58.35










奈緒「ありがとう、加蓮」










483: 2017/04/28(金) 20:42:44.24


加蓮「あ……」

奈緒(うぅ……あ、あたしたち、なんでこんな恥ずかしいこと言い合ってるんだ……? ていうか、服屋は? 服屋はどうしたの?)

加蓮「……うん。やっぱり、奈緒ならいいかな」

奈緒「い、いいかなって?」

加蓮「ホントのこと言うとね? 私、まだ奈緒のことをそういう風には見られないんだ。そういう意味で好きかって訊かれると……好きじゃないと思う」

奈緒「えぇ⁉」

奈緒(好きじゃない⁉ え、加蓮、あたしのこと嫌いだったの? あ、いや、そういう意味とか言ってたな……どういう意味⁉)

奈緒「か、加蓮、それって―――」

加蓮「でも、奈緒の気持ちはすごく嬉しかった。驚きはしたけど……嫌じゃなかった。その気持ちに応えたいなって、思ったんだ。だから、その……これからじゃ、駄目かな?」

奈緒「へ?」

加蓮「これからは奈緒のこと……そういう風に見ようと思う。これからは奈緒のこと……そういう意味でも好きになっていこうと思う」

奈緒「あ、あのさ、『そういう』ってどういう―――」

加蓮「だから、奈緒……」


484: 2017/04/28(金) 20:43:34.18




















加蓮「そんな私でも、いいかな?」




















485: 2017/04/28(金) 20:44:14.57




















奈緒「……何が?」




















486: 2017/04/28(金) 20:45:37.74


加蓮「何がって、だから……そ、そういうこと!」

奈緒「……。…………。………………つまりどういうこと?」

加蓮「ここまで言っても分からないの⁉」

奈緒「分からないよ! 結局、何が言いたいんだ⁉ ていうか、決めたっていう答えはどうした⁉」

加蓮「今言ったじゃん!」

奈緒「え、言ってないだろ⁉ いつ言ったの⁉」

加蓮「に、鈍すぎでしょ……。だ、だからその……奈緒、いい⁉」

奈緒「う、うん」

加蓮「私、奈緒と付き合―――」



《ガチャ―――!》
未央「かれん、すとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっぷ!」



加蓮「うぇあ⁉」

奈緒「なんだぁ⁉」

未央「間に合った⁉ 間に合ったよね⁉ 間に合ったって言って、かれん!」

加蓮「な、何の話⁉ 今、私、奈緒に大事なこと伝えようとしてたんだけど⁉」

未央「『ようとしてた』ってことはまだ伝えてないんだね⁉ セーフ! ギリギリセーフ私!」

加蓮「いやセーフじゃないでしょ⁉ 人の大事な話邪魔しといて!」

未央「こっちのが大事な話だから!」

加蓮「そ、そこまで大事なことなの? 何?」

未央「かれん、いい? 落ち着いて聞いてね?」



―――落ち着かせながら説明中



加蓮「…………………………………………………………………………………………えっ?」

未央「……そういうことみたい」

加蓮「え、いや、だって、そんな、まさか……嘘でしょ?」

未央「かれん、思い当たる節、ないの?」

加蓮「お、思い当たる節って……」

未央「よく思い出して、かれん。昨日の夜にかみやんは、本当はなんて言ってた?」

加蓮「昨日の……夜……」


487: 2017/04/28(金) 20:46:16.96





奈緒『―――というわけでさ、あたしもそろそろ、そういうことに興味があるというか……あたしだって、たまには可愛い服着てみたいって思うんだよ』

奈緒『それに、いつまでもこのままなのもどうかと思うわけで……年頃の女子高生なんだから、もう少し可愛い服持ってるべきじゃないか?』

奈緒『そ、その、つまりだな……あたし、ずっと気になっててさ。この雑誌に載ってるような服、買いに行きたいんだ』





488: 2017/04/28(金) 20:47:10.73


加蓮「あ」

未央「思い当たる節、あったんだね……」

加蓮「……な、奈緒」

奈緒「何だよ? なんかさっきから未央とこそこそと話してるけど」

加蓮「奈緒、昨日の夜さ……私に、なんて言った?」

奈緒「なんて言ったって……一緒に服買いに行くの付き合ってくれって、頼んだじゃんか」

加蓮「………………………………………………………………………………………………」

奈緒「?」

未央「か、かれん?」

加蓮「……すぅ―――――――――――――――――――――――――――――――――」





加蓮「はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ⁉」





奈緒「ど、どうした、加蓮⁉」

未央「落ち着いて! 落ち着いてかれん!」

加蓮「落ち着けるわけないでしょ⁉」


489: 2017/04/28(金) 20:48:07.74





加蓮「私が!」



加蓮「あんなに!」



加蓮「真剣に!」



加蓮「悩んで!」



加蓮「勇気振り絞って!」



加蓮「雰囲気まで出して!」



加蓮「答えようとしたのに!」










加蓮「それが服⁉」



加蓮「服屋に付き合え⁉」



加蓮「何それ⁉」



加蓮「それ頬赤らめて言うこと⁉」



加蓮「上目遣いで言うこと⁉」



加蓮「あんな恥ずかしそうに言うことじゃないでしょ別にぃ――――――っ!」





490: 2017/04/28(金) 20:49:06.39


奈緒「な、何⁉ 加蓮どうしたんだ⁉」

未央「か、かれん、かみやんは何も悪くないよ⁉」

加蓮「良い悪いの問題じゃなーいっ! 奈緒! よくも……よくも私の気持ちを弄んで……!」

奈緒「さっきから何の話してるんだ⁉」

加蓮「奈緒の……奈緒の、大馬鹿奈緒――――――――――――――――――――――っ!」


491: 2017/04/28(金) 20:50:48.76


―――事務所


P「……結局、全部が誤解だったってことか」

未央「……そうみたい」

加蓮「ほんっと信じらんない……!」

奈緒「な、なあ、だからなんでそんな怒ってるんだよ? あたし、何かしたか?」

加蓮「話しかけないで!」

奈緒「なんで⁉」

凛「奈緒、とりあえず今は加蓮には近寄らないでおこうよ」

未央「かみやんは全然悪くないよ? でもね……さすがにね……」

奈緒「何なんだよ……」

社長「この部門のメンバー、本当に救いようがないな……」

P「だからそういうこと言わないでくださいよ!」

社長「…………まあ、馬鹿な子ほど可愛いとも言うか」

P「? 今、なんて呟きました?」

社長「さあな。では私は仕事に戻る。もうこんな馬鹿騒ぎはするなよ、後輩」

P「分かってますって。みんなもうこりごりですよ」


《ガチャ―――バタン》


P「さて―――」


《ガチャ―――》



ルキトレ「なんで誰も来ないんですかぁ―――――っ!」



P「うわ⁉ ル、ルキちゃん⁉ どうしたの?」

ルキトレ「どうもこうもないですよ! なんで誰もレッスン室に来ないんですか⁉ 私、ずっと待ってたんですよ⁉」

P「レッスン室?……あ、そうじゃん! お前らなんでまだ事務所に居るんだ⁉ もうとっくにレッスン始まってる時間だろ!」

『あっ、忘れてた⁉』

ルキトレ「忘れてた⁉ 忘れてたって言いましたか、みなさん⁉ 大事なレッスンを忘れるなんて、みなさんそれでもアイドルですか!」

『……返す言葉もございません』

P「ル、ルキちゃん、怒る気持ちも分かるけど、こっちも色々あってさ――」

ルキトレ「色々あったからなんですか! 色々あったらレッスンサボってもいいって言うんですか⁉」

P「……返す言葉もございません」


492: 2017/04/28(金) 20:52:40.95


ルキトレ「とにかく、みなさん早くレッスン室に来てください!……どうやら弛んでいるようですので、今日のレッスン内容は、レイお姉ちゃん直伝『地獄の猛レッスン~スーパーモード~』に変更しますからね!」

『そんな⁉』

ルキトレ「文句は受け付けません! さあ、早く行きますよ!」

ちひろ「……みんな、ご愁傷さま」

P「……骨は拾ってやるからな」

凛「まったく、なんでこうなるかな……」

卯月「み、みんな、頑張りましょう!」

未央「辛くなったら、未央ちゃんの元気パワーおすそ分けするねっ!」

美嘉「莉嘉、きついかもしれないけど頑張りなね?」

莉嘉「もっちろん! 頑張って、いつかはお姉ちゃんみたいに……!」

楓「地獄のレッスン……きっと、かなり体力がヘルわね。ふふっ」

ありす「楓さん、余裕ありそうですね……。私も、頑張らないと」

まゆ「いってきますね、プロデューサーさん♪」

杏「杏、事務所で寝てたいんだけど……」

きらり「だーめっ! さ、杏ちゃんも行くにぃ☆」

みく「みくたちも行くよ、幸子チャン! にゃんにゃんダッシュにゃ!」

幸子「う、腕を引っ張らないでください! カワイイボクの腕が伸びちゃいますよっ!」

奏「この事務所って、本当に賑やかよね」

藍子「ふふっ、そうですね。でも私、この賑やかさ大好きです」

奈緒「あたしたちも行こうぜ、加蓮。ったく、そろそろ機嫌直せよな」

加蓮「はぁ………………。……奈緒」

奈緒「ん?」



加蓮「服買いに行くの、今度のオフの時でいい?」



奈緒「!……ああ! サンキュな、加蓮!」

加蓮「はいはい、どういたしましてですよ~」



第12話 終わり





―――To Be Next Stage

493: 2017/04/28(金) 20:56:22.77
以上で、この物語は一旦の完結となります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


一応、続きも書きたいとは思うのですが、まだ全然書き上がっていません。
書き上がったら、新規スレを立てようと思います。


494: 2017/04/28(金) 21:01:12.06

奈緒の説明不足からの始まった、加連の暴走からのオチが地獄のトレーニングと言う平和だな

502: 2017/04/29(土) 13:55:13.68
おつ

503: 2017/05/01(月) 05:30:32.97
すんげーよかった
おつおつ

引用元: 奈緒「シンデレラガールズ」