1: 2015/12/15(火) 22:14:20.752
春香(私が目を覚ました時――そこは真っ白なベッドの上だった)

春香(何が何かも分からない、そんな状況で私の両親は私を力強く抱きしめていた)

春香(溢れんばかりの涙を流す二人の肩越しに――プロデューサーさんは心配そうな目でこちらを見ていた)

春香(……それが、私が意識を取り戻して初めての記憶だった)

春香(それが……私と、私たちの物語の終わりだった)

――――
――

2: 2015/12/15(火) 22:15:15.379
春香「…………」

P「春香……聞いてくれ」

春香(暫くしてプロデューサーさんに呼び出されたとき、私はやはり頭がぼやけたままだった)

春香(ただ眉を寄せて事実を語るプロデューサーさんの顔を見つめていた)

6: 2015/12/15(火) 22:15:45.448
春香(そして、突きつけられた事実はあまりにも残酷なものだった)

P「残念だが……春香以外はみんな亡くなったんだ」

春香「…………え?」

春香(そのとき私は初めて声を出すことが出来た)

春香(そして記憶から呼び覚まされるのは、あの凄惨な光景だった)

7: 2015/12/15(火) 22:16:38.647
律子『みんな車に掴まって――!』

伊織『ちょっと律子どうなって――』

雪歩『きゃああああああああっ!』

真『雪歩! ボクにしがみついて!』

真美『あっ――――』



キィィィィィィイイイイイ

8: 2015/12/15(火) 22:17:49.345
春香(擦れるホイールの音)

春香(横転する車)

春香(悲鳴が飛び交う車内)



春香(私はそこで意識を失ったんだ)

10: 2015/12/15(火) 22:18:59.544
P「……マイクロバスの劣化したタイヤがパンクして、そのまま車が横転してガードレールの外へ落ちたんだ」

春香「…………」

P「遠征の土地が離れていたからレスキュー隊の到着が遅れたんだって弁解されたよ」

春香「…………」

P「……俺がとった仕事だったんだ」

春香「…………」

11: 2015/12/15(火) 22:20:39.705
春香(奇跡的に私は助かった――プロデューサーさんはそう言った)

春香(だけど、私は奇跡的に無傷だったわけじゃなかった)

春香(たまたま、蘇生措置が可能な損傷だった――ただそれだけのこと)

春香(退院前に私は、私が生き残るために支払われた"対価"を聞くことになった)

春香(…………)

14: 2015/12/15(火) 22:23:44.710
医師『天海さん、今回あなたが助かったのはほかでもない、あなたの友人たちが関わっている』

春香『……』



医師『損傷が激しかった”友人たちの体の一部”は移植手術によって君の中でまだ生きている』




春香『それって……』

医師『HLA型が奇跡的に一致したのは幸か不幸か……私にはまるで君の友人たちがキミに生き続けるように言っているかのようにも思えたよ』

15: 2015/12/15(火) 22:26:37.349
春香『…………』

医師『天海さん、これからどうするか決めてるかい?』

春香『いえ……何も』

医師『……私の娘が765プロのアイドル達が好きだったんだ』

医師『だから……』

春香『……失礼します』ガタリ

春香(あの後、不愛想な表情の私に医師は何も言わなかった)

春香(……ただ、悲しそうな目をしていた)

――――
――

17: 2015/12/15(火) 22:31:35.397
春香(退院後のことはあまり覚えていない)

春香(記者がたくさん事務所に乗り込んできて、たくさん質問をされた)

春香(でも何も話せない私を庇うようにプロデューサーさんが淡々と質問に答えていた)

春香(記者は、”奇跡の生還を遂げたアイドル”だとか”765プロアイドルの事故氏の真実”なんかのゴシップ記事を書き連ねた)



『なぜ天海春香だけが生き残ったのか?』



春香(――その記事を見た時、ずきりと胸が痛んだ)

――――
――

18: 2015/12/15(火) 22:36:25.707
春香(ほとぼりが少しだけ冷めた頃、私の家に誰かが訪ねてきた)

春香(初めて見たその顔に私は少しだけうろたえた)


雪歩父「邪魔するぞ」


春香(決して穏やかではない表情に私の顔は強張った)

雪歩父「……アンタが天海春香か?」

春香「……はい」

19: 2015/12/15(火) 22:37:29.067
春香(決して高圧的ではなく、ただ静かにこちらをじっと眺めるその姿に私は脂汗を浮かべる)

雪歩父「……雪歩は」

春香「……え?」

春香(雪歩のお父さんは、ただ静かにこういった)

雪歩父「……アンタの体のどの部分なんだ?」

春香(その瞳に寒気が走った)

22: 2015/12/15(火) 22:42:11.552
春香「……あ、えと、その」

雪歩父「そのころころした目ん玉か?」

春香「……ッ!」ガタッ

春香(私はその表情を見て、すぐに家を飛び出した)

春香(取り返しに来たんだ――私の体から、雪歩の一部を!)

春香(どこへ逃げるかもわからない、ただ一心不乱に走り続けた)

春香(夜の街はキラキラと輝いていた)

――――
――

24: 2015/12/15(火) 22:45:28.950
ピンポーン

P「はい誰ですか……って、春香?」

春香(私は息を切らしながら、プロデューサーさんの家にたどり着いた)

春香「た、助けてください」

P「……中に入るんだ」

春香(プロデューサーさんは私を中に入れると、あったかいココアを入れてくれた)

25: 2015/12/15(火) 22:47:29.699
P「……なるほど、雪歩のお父さんが」

春香「……はい」

春香(何があったのかを伝えると、プロデューサーさんは困ったように頬をかく)

P「確かに、うちの事務所にも訪ねてきたけど……まさか春香の家まで行くとは……」

春香「あの……私……」

P「……そうだな、親御さんには連絡を俺から入れよう」

春香(プロデューサーさんはすぐに両親に連絡を入れてくれた)

春香(私はどこか肩の力が抜けるのを感じた)

26: 2015/12/15(火) 22:50:28.331
春香「あの……ありがとうございました」ペコ

P「いや、気にしなくていいぞ。俺は春香のプロデューサーだからな」

春香(プロデューサーさんの笑顔は私の顔を赤くさせた)

春香(……こんど、お礼しなくちゃ)

春香(私は心の中が少しだけ温かくなるのを感じた)

春香(――いつか、この気持ちが伝えられたらいいなあ)

――――
――

27: 2015/12/15(火) 22:52:31.515
春香「え……? それってどういう……」

社長「……音無君からも話してやってくれ」

小鳥「……分かりました」

28: 2015/12/15(火) 22:54:09.480
春香(小鳥さんがゆっくりと話す内容は、到底私の頭には入ってこなかった)

『アイドル事務所としても、この前の事故の一件が――』

『もう芸能界でも続けていけない――』

『業界からの悪印象が――』

『会社は一度経営を止めて――』

春香(耳からすり抜けていくのは、不穏な単語ばかりだった)

29: 2015/12/15(火) 22:56:16.274
春香「ぷ、プロデューサーさん」

P「…………」

春香(プロデューサーさんは私の呼びかけに応じず、ただ茫然と床を見つめていた)

春香(そのとき――プロデューサーさんの何かが崩れる音が聞こえた)

31: 2015/12/15(火) 22:57:13.502
P「俺が……あんな仕事を取ったから」

P「俺が……あんな仕事を」

P「お、俺が、あ、あ……」

春香(泣き叫ぶプロデューサーさんを見たのはそのときが初めてだった)

春香(社長も小鳥さんもプロデューサーさんの肩を支えていたけれど、私はそのとき動くことは出来なかった)

春香(少しずつ、何かが壊れていくように思えた)

32: 2015/12/15(火) 23:00:24.837
春香(いや違う)

春香(きっと、あの時から私たちの運命は決まっていたのかもしれない)



春香「あはは」



春香(私は気づけば笑っていた)

春香(なんで笑ったのかもわからない)

春香(なんでだろ?)

――――
――

35: 2015/12/15(火) 23:07:56.700
小鳥「プロデューサーさん、ずっとあのこと引きづってたのね」

春香「……」

春香(社長が病院へ連れていくのを見送ったあと、私と小鳥さんは事務所で話していた)

小鳥「我慢強い人だから、あんなことがあってずっと誰にも吐き出せなかったのよね」

春香「そう、ですね」

春香(私は昨日のことを思い返していた)

春香(あのときも、もしかすると何も言わないだけで抱え込んでいたのかもしれない)

春香(そんなことにも気づけないで、私は……)

36: 2015/12/15(火) 23:08:41.084
小鳥「だから、私が支えてあげなくちゃね」

春香「え?」

春香(突然言われたその一言に、私は目を丸くさせた)

春香(支える? どういうこと?)

38: 2015/12/15(火) 23:10:54.612
小鳥「……結婚するの、私たち。……この前プロポーズされちゃって」

春香(結婚?)

小鳥「ずっと付き合ってたんだけど、言い出せなくて……」

春香(ツキアッテタ?)

小鳥「仕事無くなっちゃったら、二人で頑張らなくちゃ」

春香(…………)

39: 2015/12/15(火) 23:12:54.570
小鳥「結婚式、春香ちゃんも来てくれる?」

春香(……)

春香「……もちろんですよ」ニコリ

春香(私は笑った)

春香(私は笑った)



春香(ワタシハワラッタ)



――――
――

42: 2015/12/15(火) 23:16:20.118
春香(自宅に戻ると、私はトイレに駆け込んだ)

春香「う……」

春香(お腹の中身を全部吐き出してしまうくらい嘔吐は続いた)

春香(これは失恋なんかじゃない)

43: 2015/12/15(火) 23:16:54.282
春香(息切れしながら、また私は嘔吐する)



医師『移植後は発作や嘔吐も起きやすくなる』



春香(私は便器を掴みながら、何もかもを吐き出す)

44: 2015/12/15(火) 23:17:38.333
春香「はあ……はあ……」


P『なあ、春香。今度一緒にご飯でも行くか』


春香「う……」


P『今日のクッキーは、塩味が効いてるのか?』




春香「……」




P『俺、春香のこと最後までプロデュースするから』

春香『本当ですか?』

P『ああ、目指せトップアイドルだ!』


――――
――

46: 2015/12/15(火) 23:23:18.886
春香「……」

春香(部屋の中で、私はロープを片手に持っていた)

春香(生きることに疲れたわけじゃない)

春香(何もかもがどうでもよくなっただけ)

春香(生きていても、氏んでいても一緒だよこんなの)

春香「……」

春香(私はゆっくりとロープを首にかける)

48: 2015/12/15(火) 23:25:12.728
春香(そのとき――私の耳に医師の言葉が蘇る)



医師『私にはまるで君の友人たちがキミに生き続けるように言っているかのようにも思えたよ』



春香「……みんな」

春香(ドクンと心臓が高鳴った)

49: 2015/12/15(火) 23:26:08.812
春香(……そうだ、この体はもう”私のもの”だけじゃない)

春香(みんながいる)

春香(私の中で、生き続けている)

春香(……だったら、私は氏ぬ権利はない)


春香(――その日は、いつ寝てしまったのかもわからなかった)

春香(ただ、目覚めた時の朝日はいつもより輝いて見えた)

――――
――

51: 2015/12/15(火) 23:31:59.529
小鳥「おはよう、春香ちゃん」

春香「……おはようございます」

春香(良かった、すんなり返せた)

春香(私が事務所に着いた時、事務所には小鳥さんしかいなかった)

春香「……プロデューサーさん?」

小鳥「今日は安静にするようにって、社長に言われちゃってね」

春香「そう、ですか」

52: 2015/12/15(火) 23:35:06.586
春香(私はボスッとソファに座り込んだ)

春香(いつもは誰かがここで談笑してて、私の作ってきたクッキーを食べたりしてて――)

小鳥「そう言えば、春香ちゃんあれどうするか決めた?」

春香「あれ、ですか?」

春香(私は小鳥さんの言っていることが分からずに頭に疑問符を浮かべる)

53: 2015/12/15(火) 23:39:59.745
小鳥「プロデューサーさんがとってきた最後の仕事のこと」

春香「あっ……」

春香(私は思い出したように声を上げる)

小鳥「……本当はユニットで出るライブだから、取りやめることももちろんできるんだけど」

春香「……」

春香(昨日までは、出る気なんてさらさらなかった)

54: 2015/12/15(火) 23:44:07.481
春香(このままアイドルなんて辞めて、ライブなんて出ずにひっそりと終わろうってそう思ってた)

春香(でも……)

春香「出ます、私」

小鳥「……大丈夫なの?」

春香(何度か尋ねてきた小鳥さんに私は相槌をうった)

春香(なんでこんなことを言ったんだろうって思ったけど、思うよりも先に口から出ていたのだ)

春香(だってこのライブが私の……)

――――
――

56: 2015/12/15(火) 23:48:07.084
春香(帰路、私は小鳥さんの言っていたことを反芻していた)

小鳥『仕事内容は、中規模のライブイベントよ』

小鳥『色んなユニットが出る予定で、765プロも声をかけてもらったんだけど……』

春香(移植後すぐなんて、本当は病院からも止められてるけど……でもそれでもやるしかないよね)

春香「……よしっ」

春香(揺れる電車の中で、私は小さく拳を作った)

春香(赤いリボンを揺らして……)

――――
――

57: 2015/12/15(火) 23:51:44.265
春香(夜になると、月が綺麗だと思うようになった)

春香(……本当は怖くて眠れないだけだけど)

春香(これまでのこと、あのときのこと、色んなことが私を取り巻いて、そして私は明日ライブを控えている)

春香(事故の前はまさかこんなことになるなんて思いもしなかった)

春香(……みんなともっと話したかった、お仕事したかった)

春香(でも、それもこれで終わり)

春香(明日が終われば、全部終わり)

58: 2015/12/15(火) 23:55:03.963
春香(……もう寝よう)

春香(月明かりはずっと私を照らしていた)

春香(まるで、貴音さんみたい……)

春香(なんてね……?)

――――
――

60: 2015/12/15(火) 23:59:34.244
ワアアアアアアアアアア

司会「さあ始まりました! 冬のライブイベント開催です!」



春香(当日、私は一人で会場まで来ていた)

春香(いつもなら千早ちゃんやみんなを誘っていくんだけど……そんなことも言ってられないし)

「ねえ、あれって……」

「うわ、ほんとだ……」

「天海春香じゃん……」

春香(それに、私は異端な存在として見られていた)

61: 2015/12/16(水) 00:03:26.214
春香(あの事件から、ずっと影を潜めていたからそれもそのはずだ)

春香(……仕方ない、よね)

春香(いつもならプロデューサーさんと話して、時間調整して……それで……)

冬馬「天海か?」

春香「……冬馬くん」

春香(そこには、ジュピターの冬馬くんが立っていた)

春香(その瞳は、私をじっと鋭く差してくる)

62: 2015/12/16(水) 00:05:18.184
冬馬「……お前、事務所が大変なことになったんだってな」

春香「…………」

春香(何も答えない私に冬馬くんはさらに言葉を続ける)

冬馬「いいか、俺はお前に同情する気なんてさらさらねぇ」

冬馬「観客はお前がうじうじして情けないパフォーマンスをしても何とも思わないだろうな」

冬馬「今日は一人で立つんだろ? せいぜい一人で頑張りな」

63: 2015/12/16(水) 00:08:06.998
春香(冬馬くんは、そう言うと颯爽と去っていった)

春香(……何も言い返せなかった)

春香(私は一人でやらなくちゃいけない)

春香(あのステージで……)


司会「次のグループは、ジュピター!」

ワアアアアアアアアアア


――――
――

65: 2015/12/16(水) 00:13:14.793
スタッフ「それじゃあ、天海さんここでスタンバイお願いします」

春香「は、はい」

春香(誰もいないステージ)

春香(いつもなら、ステージ裏で励まし合って笑ってステージに立っていた)

春香(でも……今日はそんなことは出来ない)

春香(本当に出来るのかな?)

66: 2015/12/16(水) 00:16:43.192
春香(そもそも、今日のライブだって本当は出なくても良かった)

春香(……みんなが居なくなって、765プロがなくなって、プロデューサーさんにフラれて……)

春香(ついてなかったなあ……ここ最近ずっと)

スタッフ「それじゃあ、天海さんスタンバイを」

春香(やっぱりやめよう)

春香(きっと、このまま出ても何もできないまま終わるだけだよね)

67: 2015/12/16(水) 00:21:22.180
春香「あの」

スタッフ「はい?」

春香「私――」

春香(だけど、なんでかその声は出てこなかった)

春香(……なんで?)

春香「が、頑張ります」

スタッフ「……ええ、みんな待ち望んでますよ」ニコリ

68: 2015/12/16(水) 00:25:07.664
司会「それでは――次は、765プロダクションより天海春香さんのご登場です! どうぞー!」

春香(司会さんの声を受けて、私はステージに飛び出した)

春香(誰もいない、ステージの上に)


ザワザワ


「天海春香って……」

「ああ、あの765プロの……」

「事故があったって聞いたけど……」


春香(予想通り、私の登壇に会場はざわついていた)

70: 2015/12/16(水) 00:30:37.551
春香(その光景に私は思わず動揺してしまう)

春香(喉が震える――足も、手も)

春香(声が……)



春香(そして――イントロがかかりだす)

71: 2015/12/16(水) 00:34:54.848
春香(relations……どうしよう、最初のステップはどっちからで、ええと――)



美希『ステップは右足からなの』



春香「……美希?」



美希『こうやって、こうなの!』



春香(私が思うよりも先に、体は勝手に動いていた)

春香(――まるで、私じゃなくて他の誰かが動かしているかのように)

72: 2015/12/16(水) 00:36:28.451
「あれ? 天海春香ってダンスこんなに得意だっけ?」

「……なんか、このダンスどこかで見たことあるような」

春香(どういうこと?)


美希『ほら、春香! お客さんをもっとよく見て!』


春香(言われるがままに私は観客席に目を向ける)


美希『すっごくキラキラしてるの!』


春香(relationsを踊りきった後、私は大きな歓声に包まれていた)

73: 2015/12/16(水) 00:41:23.833
春香(だけど……どうして今美希の声が?)


響『春香、よそ見はよくないぞー』


やよい『うっうー! 春香さん、次の曲はGO MY WAY!!ですよ!』


――GO MY WAY!! GO 前へ!! がんばってゆきましょう 一番大好きな 私になりたい



春香(これは……幻覚? それとも夢?)

74: 2015/12/16(水) 00:44:18.523
律子『shiny smile ちゃんと歌詞覚えてるわよね?』

伊織『しっかりしなさいよね、ボケっとしてるとまたこけるわよ!』



――泣きそうな思いを乗り越えたら いつだってキラキラでいたい 私 shiny smile ずっと

76: 2015/12/16(水) 00:47:14.450
雪歩『iはここで右手をたくさん挙げた方がいいって真ちゃんが……』

真『春香、ボクたちと頑張ろう!』



――みんな楽しく笑顔で舞台に立とう 歌やダンスで自分を伝えよう

77: 2015/12/16(水) 00:51:49.602
あずさ『あらあら~、次はREADY!!ね』

貴音『春香……ここが正念場です』

真美『はるるーん!』

亜美『準備は出来てるかなー?』



――ALREADY!! WE'RE ALL LADY!! 踊り踊ろう 一歩一歩 出逢いや別れは愛になる AMUSEMENT

78: 2015/12/16(水) 00:55:14.178
春香(みんな……)


「うおー! 春香ちゃーん!」

「いいぞー!」


春香(……私はいつの間にか、5曲ものセットリストをこなしていた)

79: 2015/12/16(水) 00:57:18.001
春香(でもこれは私だけの力じゃない……これは……みんなの……)


『春香』


春香(そのとき、私は私の親友の声を聴いた)

80: 2015/12/16(水) 00:59:52.038
千早『次が、最後の曲ね』

春香「……うん」

千早『この歌の練習一緒にしたものね』

春香「…………うん」

千早『……だから、泣くのはもうちょっとだけ後よ』

春香「…………」

春香(私は瞳に涙を浮かべながら、最後の曲を歌うためにマイクを握りしめた)

82: 2015/12/16(水) 01:04:09.361
千早『私たちは、春香と一緒にいる――だから、最後まで頑張りましょう』

春香(私の肩を誰かが抱いてくれたような気がした)

春香(……千早ちゃん、私最後まで頑張るよ――みんなの分まで)

春香「――最後の曲は、Colorful Daysだよー!」

春香(私の煽りに会場が盛り上がる)

春香(そうだ、みんなでライブをしたときも確かこんな光景だったよね)

春香(お客さんが笑ってくれる、それだけで私はアイドルでいられる)

83: 2015/12/16(水) 01:08:40.913
――自由な色で描いてみよう 必ず見える 新しい世界


――ホワイト イ工口ー

雪歩『春香ちゃんの頑張ってる姿見てるとね、私も頑張るぞーって気になるんだあ』

真美『おやおや~? はるるん今日も一人で練習?』

亜美『つれないなあ、亜美たちも誘ってくれればいいのに』


――ブルーにレッド

千早『春香、歌うまくなったわね……』

84: 2015/12/16(水) 01:11:45.521
――カーマイン グリーン

貴音『春香、見てください。今日は月がとても綺麗です』

律子『春香が頑張ってるのは私も、みんなもきっと分かってるわ』


――ライトブルー きれい

響『自分ね、春香も765プロの皆もすーっごく大好きだぞ!』

85: 2015/12/16(水) 01:14:02.259
――フレッシュグリーン オレンジ ピンク

美希『春香はミキのライバルなの』

やよい『春香さーん! はいたーっち!』

伊織『あんた見てると心配になるのよっ』


――パープル ブラック

あずさ『泣きたいときは、泣かなくちゃだめよ?』

真『ボクも春香みたいになりたいんだ』



――みんなきれいだね とてもきれいだね

86: 2015/12/16(水) 01:18:41.349
――――
――



春香母「春香、段ボール詰めた?」

春香「うん、全部詰めたよ」

春香母「そう……」

春香(……お母さんは少しだけ心配そうに眉を顰めると、ちょっとだけ笑った)

春香母「この町も、これでお別れね」

春香「うん」

春香(お母さんは、そう言うと家の中へと入っていった)

87: 2015/12/16(水) 01:22:08.544
春香「ふう……」

春香(この短い間に色んなことがあって、辛いことも悲しいこともあった)

春香(……)

春香(今でもあの時のライブのことは覚えてる)

春香(あの時、私は私の中の皆に助けられた)

春香(みんながいたから、最後までやり遂げることが出来た)

春香(……もしも、あんな風にステージで765プロの仲間が困っていたとしたら、私もあんな風に助けに行ったかもしれない)

春香(……だって私たち――)

88: 2015/12/16(水) 01:24:59.281
春香「ライブ、楽しかったなあ」

春香(765プロを辞めて、私は新しい生活に向けて引っ越しをすることになった)

春香(新しい土地で、どんなことに出会うのかも分からない)

春香(だけど――私はいつだって一人じゃない)

春香「……仲間だもんね」

春香(空を仰ぐと鳥が羽ばたいていた)

春香(……また会おうね)

春香(私はちょっとだけ笑った)


おわり

89: 2015/12/16(水) 01:25:09.899
もんげ!!!

くぅ~w

90: 2015/12/16(水) 01:26:04.885
いちおつ

91: 2015/12/16(水) 01:30:37.223
つらい

92: 2015/12/16(水) 01:38:56.046
おもろかった
おつ

引用元: P「残念だが……春香以外みんな亡くなったんだ」