1: 2014/09/01(月)20:38:44
「ねぇ、ジョン。最近何か変わったことあった?」

ジョンって誰だ?俺だ。

ジョンと呼ばれ始めて早くも一年が経過しようとしていた。

ハルヒのやつが俺のことをジョンと呼んでくれたおかげで、俺のあだ名はキョンからジョンへと変化した。
ジョンもキョンも、正直なところあだ名としては勘弁してもらいたいと思っている。

しかしながら、一度定着してしまったモノをいまさら誰も変えようとはせず、俺はこのあだ名を受け入れねばならないのだ。
それもこれも、涼宮ハルヒに出会ってしまったのが運の尽きなのだろう。

やれやれだ。

2: 2014/09/01(月)20:40:56
そんな奇妙奇天烈なハルヒと過ごした一年間なのだが、はっきり言って凄まじく慌ただしかった。
と言うのも、我らがSOS団の団長である、前述の人物が次々にトラブルを運んで来てくれるからだ。

いや、当の本人はそのことに気付いていないのが、尚更質が悪い。
無意識の産物というモノに、どれほど悩まされたことか。

そのおかげで、宇宙人や未来人、さらには超能力者と知り合いになれた。
それが俺にプラスになったかと言えばそうでもなかったりする。

ハルヒの無意識が作り出す閉鎖空間というのに入ったり、美少女宇宙人に襲われたり、可愛い未来人さんと過去へ飛んでハルヒに会い、ジョン――
つまり、俺と知り合うきっかけを作ってみたり、夏休みをループしてみたり、おかしな映画を撮ってみたり、世界が改変されそうになったりと、少し例を挙げただけでもこの有様だ。

実際のところ、事の大小はさておき、これの数倍以上のトラブルまたは思いつきによる突飛な行動があったりする。
これだけで、俺が波乱万丈な一年を過ごしたことが判るだろう。

3: 2014/09/01(月)20:45:36
さて、そんな一年間だったわけなのだが、今日もそのトラブルの種に為りかねない状況にある。
どんな状況かと言うと、公園のベンチにハルヒと肩を並べているという状況だ。

それだけを聞くと、甘酸っぱい恋などと勘違いされそうだが、実際のところ毎週欠かさずやっている不思議探索と呼ばれるソレである。
その休憩として、公園に来ている次第だ。

「……あるわけないだろうが。何度も言うように、俺はただの一般人だ」

ため息混じりに、幾度となく吐いたセリフを繰り返す。確かに、この一年間で数えきれない程の不思議には出会ってきた。
しかし、俺自身によって引き起こされた不思議というものは存在しない。

結局のところ、頼んでもいやしないのに俺は巻き込まれてしまう形にある。
少しぐらいハルヒに分けてやりたい気もするが、それはそれで厄介なことになりそうだ。

4: 2014/09/01(月)20:50:51
「つまんないの…」

ハルヒが口を尖らせる。

不機嫌そうに取れる仕草ではあるのだが、目は楽しそうに輝いているわけだから、別に不機嫌という程のことでも無いようだ。

ハルヒから視線を外して空を見上げる。春の空は青々と澄みきっとおり、鳥が悠々と飛んでいく。

「UFOでもいた?」

「いない」

「そう?」

「そうだ」

当たり障りの無い会話が終わり、沈黙。この不思議探索に於いて、いつのまにか決まった暗黙のルール。
俺はハルヒとペアを組むということ。

ハルヒが強制したわけでも、俺が誰かに強制されたわけでもなく、自然な流れとしてこうなった。
俺個人としても、そのことに文句は無い。

要は慣れということだろう。

5: 2014/09/01(月)20:53:22
「ねぇ、ジョン。そろそろあたしたちも良いんじゃない?」

「何がだ?言っておくが、時間なんてものは跳べないぞ」

「違うわよ」

ハルヒがあからさまに不機嫌そうな顔をする。どうやら俺は地雷を踏んでしまったらしい。

「じゃあ何だよ?とりあえず判るように説明してくれ」

「……別にいい」

そのまま黙り込み、再びハルヒはアヒルのように口を尖らせる。取りつく島もない。全くわけがわからん。
ハルヒの言わんとしていることがさっぱり伝わってこない。

首を捻ること数分、諦めてハルヒにもう一度訊ねようとそちらに顔を向けた時である。
ハルヒの見事なポニーテールが風に揺れているのに気が付いた。

なんと言うか、物凄く触ってみたい。言うなれば猫じゃらしを目の前にした猫といったところか。
とにかく、ポニーテールを触ってみたい衝動が俺を突き動かす。

6: 2014/09/01(月)20:55:45
「ちょっと、何すんのよ!バカジョン!」

当然のことながら、ハルヒが驚いて怒鳴る。

「いや、急に触りたくなってな。ダメか?」

いまさら言い訳をしたところで意味はない。なら、敢えて正直に願望を伝えるのも一種の策ではなかろうか。

…そうでもないな。まるっきり変態だ。言ってしまってから後悔してももう遅い。ビンタの一つや二つを覚悟する。
しかし、いつまで経ってもハルヒは何もしない。ただ顔を赤くして…照れているのか?

「ジョ、ジョンがどうしても触りたいって言うなら触らせてあげなくもない…わよ」

いったいこれはどういう風の吹き回しなんだろうね。考えたところで、結論は出そうにない。
なら、ここはハルヒの言葉に甘えて触らせてもらうとするか。

「や、優しくしてよ」

「わかってるさ」

そうして、俺はハルヒのポニーテールを撫で続けるのであった。

7: 2014/09/01(月)20:56:00
終わり

8: 2014/09/01(月)21:02:22
素晴らしいストーリーだと思う

9: 2014/09/01(月)21:52:12
これからってとこで終わっちゃった(´・ω・`)

引用元: キョン「Am I Jhon?」ハルヒ[You Are John!]