1: 2013/01/09(水) 22:11:46.96
――――――



凛(……)ジー



雪歩「……どうですか? プロデューサー」

P「久しぶりだな、雪歩の淹れてくれたお茶も。……うん。おいしい。それにすごく落ち着くよ」

P「この前も春香にクッキーをもらったんだが、やっぱりお茶もお菓子も毎日いただきたいところだな」

P「……なんてな。俺の方からみんなと距離を置いたのに、勝手なこと言ってちゃだめだよな」

雪歩「いえ、安心しました。さびしいのは私たちだけじゃなかったんですね」

雪歩「……でも、凛ちゃんの前でそんなこと言っちゃだめですよ? せっかく今いい調子なのに、不安にさせちゃいますから」

P「もちろんだ。気をつけるよ」

3: 2013/01/09(水) 22:12:51.18
P「……でも、すっかり先輩が板についてきたな? 『せんぱいなんて、そんなのむりですぅー!』 なんて言ってたのに―――」

雪歩「そっ、そ、そのことはもう忘れてくださいー!! ううー……」

P「ははは」



凛(……)

凛(……ごめんなさい雪歩さん。聞いちゃいました)

凛(でも大丈夫です。プロデューサーが私のためにやっているっていうことは知ってるから)

凛(むしろ二人が私のことを思ってくれていることがうれしい……)

凛(……なにか、お礼……この前はお菓子だったから、今度は……)

凛(……うん)

4: 2013/01/09(水) 22:14:39.65
――――――


凛「……どう?」

P「……」

凛「……ぷ、プロデューサー……?」


P「……おどろいた。おいしいよ、凛」

凛「本当? ……よかった。急に黙ったから失敗したかと思った」

P「あはは、悪かったよ。本当におどろいたからさ。……もしかしてこれ、高いお茶なんじゃないか?」

凛「ううん。普段よりも淹れ方をこだわってみただけだよ。ちょっと勉強してきたんだ」

P「本当か? 結構変わるもんだな……あ。だったら今度、雪歩にも教えてもらったらどうだ? 独学でこれなら、かなり上達すると思うぞ」

5: 2013/01/09(水) 22:16:13.21
凛「そうだね。機会があったらそうしてみる。……きびしそうだね、雪歩さん」

P「だろうな。……お茶のこととなると豹変しそうだな。雪歩師匠は」

P「お茶、ありがとうな凛。また淹れてくれるか?」

凛「……うん。もちろん」


凛(……やった。よろこんでもらえた……)

凛(……)

凛(……ん? でも……これじゃあこの前、お菓子を作ってきたときと一緒だ)

凛(……なんだろう……なにか……もう一ひねり……)



P「……? 凛? どうかしたか? ……りーん」

6: 2013/01/09(水) 22:17:18.52
――――――



凛(……)



伊織「―――ちょっとアンタ! なんなのこれはっ!?」

P「な、なんなのって差し入れだよ。好きだろ? オレンジジュース」

伊織「……それ本気で言ってるわけ?」

P「……え?」

伊織「これっ。よく見てみなさいよ。そして思い出しなさい」

P「いや、思い出せって……どう見てもただのオレンジ―――あっ」

伊織「……ようやくわかったようねえ……」

7: 2013/01/09(水) 22:18:17.54
P「すっ、すまん伊織! そうだった! 果汁100%だったよな!?」

伊織「しばらく会わないうちに、自分の立場をすっかり忘れたようね? いい度胸じゃない……」

P「い、いや、違うんだぞ? 俺が伊織のこと忘れるわけがないだろ? 当たり前じゃないか、なんたって俺はまだ伊織のプロデュー」

伊織「ごちゃごちゃ言い訳する前にやることがあるでしょ?」

P「……はい。すぐに買ってきます」

伊織「よろしい」



凛(……うわあ)

凛(すごいな伊織さん……プロデューサーの手綱を完璧に握ってる)

凛(……私も……いや、さすがにそれはどうだろう)

9: 2013/01/09(水) 22:20:51.81
P「……ふふふ」

伊織「……なに笑ってるの。とうとうおかしくなった?」

P「いや……こういう感じも久々だなあ、と。久しぶりだとなかなかいいもんだな。うれしいよ、伊織」

伊織「……っ!?」ガタッ

伊織「きっ……持ちの悪いこと言ってないで、さっさと買ってきなさぁーーーいっ!!!」

P「がっ、合点っ!!」ダッ

伊織「……」

伊織「……相変わらず、バカね。まったく」



凛(……な……)

凛(……あれだけ罵倒されて……う、うれしいって……)

凛(どれだけ訓練されてるの……プロデューサー)

凛(そ、それとも……プロデューサーって……そっち?)

凛(ど、どうしよう)

10: 2013/01/09(水) 22:22:52.04



凛(……なんてね)

凛(大丈夫。さすがにその発想はおかしいって、私でもわかる)

凛(あれはあくまで伊織さんの魅力であって、プロデューサーの趣味嗜好とは関係ないよ)

凛(ふう……また早まって、恥ずかしい思いをするところだった)

11: 2013/01/09(水) 22:24:34.09
凛「……冷静に。クールにいこう。うん」

P「? そうだな。まあ、熱くならないように心掛ければ問題なく合格できるだろう」

P「凛もわかってきたじゃないか」

凛「……え?」

P「え?」

凛「……」

P「……」

凛「……。ああ。うん。そうだね。そうそう。がんばるよ」

P「……大丈夫かよ」

12: 2013/01/09(水) 22:25:11.97
――――――



凛(……)



凛(……なんて、惨状)


凛(……たらい。バケツ。倒れているプロデューサー。そして床にはガムテープ……)

凛(……い、生きてるよね?)

14: 2013/01/09(水) 22:27:32.95
亜美「ま、真美……どうしよう……とうとう兄ちゃんがおかしくなった……」

真美「これだけされて笑ってるなんて……落としたたらいが大きすぎたんだよ……は、はやく誰か呼ばなきゃっ」

P「えっ!? いやいやっ、大丈夫大丈夫! 平気だからっ!」


真美「……ほんと?」

P「本当だぞ。……伊織にも言ったんだが、こういういたずらも久々にされると、なんだか……こう、うれしくて。つい笑ってしまったんだ」

亜美「なあんだ……頭つよく打ちすぎたのかと思ったよ」

15: 2013/01/09(水) 22:30:59.63
真美「……まあぶっちゃけ、真美たちもひさしぶりだったから、ちょっと力いれすぎちゃったよね。ごめんね兄ちゃん」

P「いや。気にするな……だが、凛にはほどほどにしてくれよ? 俺ならいくらでもいいんだが……その……凛にこれは、刺激が強すぎる」

亜美「あ、それは大丈夫。ここまでやるのは兄ちゃんだけだし」

真美「まあ確かに、しぶりんもイタズラしがいがありそうですな。くーるなお顔をゆがませてやろうか……くくく」

亜美「いいこと言いますな~、真美さんや……くっくっく」

P「……お前らな……まあいいか」

16: 2013/01/09(水) 22:35:02.05
P「二人のイタズラが100%悪意ってわけじゃないのは知ってる。……そんな感じで、凛とも自然な感じで接してやってくれ。年下といっても二人のほうが先輩なんだし……先輩として、後輩を引っぱってくれよ?」

真美「……兄ちゃん……うん。わかったよ」

亜美「まかせておいて、兄ちゃん」

P「ありがとうな。亜美、真美」


亜美「……」


真美「……」


真美「……でも兄ちゃん。かっこつけてるけど、今の状態わかってる?」

P「今? ……今は……ガムテープのせいで、動けないな」

17: 2013/01/09(水) 22:38:31.58
亜美「……ねえ兄ちゃん。さっきのセリフ、忘れてないよね……?」

真美「……『凛にはほどほどにしてくれよ? 俺ならいくらでもいいんだが』……俺なら……いい……いくらでも……」


P「え? ……あっ。いやちょっと待っ」


真美「もんどーむよーっ!!」ダッ

亜美「兄ちゃんかくごーっ!! んっふっふ~☆」ダッ

P「ちょっやめ――――――」

 ―――ギャアアアアアア―――



凛(……お、おそろしい……亜美さんも真美さんも……)

凛(……今度会ったときは、ちょっと気をつけよう)

18: 2013/01/09(水) 22:43:09.50
凛(……でも……)

凛(またプロデューサー、ひどいイタズラされても笑ってた。しかも、いくらでもって……)

凛(この前は違うと思ったけど……やっぱり、プロデューサーは……え、えむ? それなら……)

凛(伊織さん、亜美さん、真美さん。そして雪歩さん……)


凛(……プロデューサーが喜ぶような、お礼……)



凛(……! そうか、これだ!)

19: 2013/01/09(水) 22:47:34.25
――――――



P「おつかれ、凛。……ほら、これ。差し入れ」

凛「……」

P「……? どうかしたか?」

凛「……別のがいい」

P「……えっ」

凛「ジュースじゃなくて、別の」

P「……そ、そうか? 悪いな……なら、なにがいい?」

凛「え? ……えっと……じゃあ……え、エナドリ?」

P「エナドリ!? ま、まあいいか。エナドリだな? 買ってくるから待っててくれ」ガチャ

22: 2013/01/09(水) 22:52:41.09
凛(……あ、あぶない。なに飲むかは考えてなかった)

凛(でも、うまく部屋から出ていった。今のうちに……)


ガチャ

P「ただいまー。買った来たぞ凛」

凛「……おっ、遅いよっ!」


P「えっ」


凛「わ、私をこんなに待たせるなんて、な、何を考えているのプロデューサー。おつかいもまんぞくにでき、できないわけ?」

P「……え、り、凛さん?」

凛「そん、そんなとこにたってないで、はやくはいってきてよ」

24: 2013/01/09(水) 22:54:05.40
P「……凛どうした? 顔がひきつってるぞ? 大丈―――」

 ベタッ

P「―――ぶっ!? おわっ! 危なっ……!?」ドサッ!


P「……いてて……。なんだ……足元に、ガムテープ?」

ヒュッ―――ガンッ!!

P「ぐあっ!? ……ぐう……こんどは、頭にたらい……」

凛「……」テクテク


P「……なんなんだいったい……ん? 凛……」


凛「……」スッ


P「……? お茶?」

26: 2013/01/09(水) 22:59:32.88
凛「あつあつのお茶……無理やり飲まされるのと、頭からかけられるの、どっちがいい?」

P「えっ、なにその二択っ!? どっちもいやですよ!?」


凛「遠慮しなくていいよ。これはプロデューサーへのお礼の気持ちだから……ふふ」


P「こわい!! こわいぞ凛!? 俺なにかしたか!? 謝るっ、謝るから許してくれ凛っ!! りーん!!!」

――――――

30: 2013/01/09(水) 23:04:23.64



P「正座」

凛「……はい」


P「……じゃあ確認していこう。なにをどう勘違いしたら、俺が……その……Mだってなるんだ?」

凛「だって……伊織さんと、亜美さんと、真美さん……」

P「あー……なるほど。だいたいわかった」

32: 2013/01/09(水) 23:07:47.54
P「……凛。あれはな、伊織と亜美と真美だからだ。あの三人とは昔から、そういうコミュニケーションをとってきたからだ」

凛「あの三人……だから?」

P「そうだ。あの三人だからこそ、あんな感じのやり取りになってしまうんだ。……考えてみろ凛。俺が春香や雪歩ややよいにも、罵られてるときがあるか?」



凛「……けっこう、ある」

P「ですよね」

33: 2013/01/09(水) 23:14:32.80
P「あー……それはおいといて。……つまり、先輩に影響されず、凛は凛らしくってことだ。」

P「まだ俺たちは、活動はじめて一年くらいだろう? 俺たちは、俺たちだけのコミュニケーションを見つけていこう。一緒に、な?」

凛「……」

P「……まあ見つけた結果、凛に罵られるような関係になったならしょうがないが」

凛「……ふふ」

P「ん、それだ。ムスッとしてるより笑ったほうがいい。凛にはツンデレキャラは似合わない」

凛「なにそれ……」

35: 2013/01/09(水) 23:15:08.33
凛「うん。でも、わかったよ。プロデューサーが言うならそうしてみる」

凛「……これからも隣にいてくれるよね?」

P「もちろん。……ああそうだ。言い忘れてた」

凛「なに?」


P「これからは演技力のレッスンに力をいれていこう。正直、さっきの小芝居はひどかった」

凛「う……はい……」



凛(……また、失敗しちゃったけど)

凛(……プロデューサーと私だけの、か……)

凛(ふふ。ちゃんと見ててね、プロデューサー)


 めでたしめでたし

36: 2013/01/09(水) 23:15:45.99
――――――


凛(……な……なに……これ……)ワナワナ


P「zzz……」

貴音「ふふ……よく眠っていますね。まるで美希のようです」

貴音「なかなか目を覚まされない所をみると、大分お疲れのようですね……」

貴音「ですが、むしろちょうどいいでしょう……しばらく会えなかった分です。しばらくこのままで……」


P「……んん」

貴音「おや……夢でも見ているのでしょうか。可愛らしい寝顔ですね、あなた様。ふふっ」

39: 2013/01/09(水) 23:18:42.95
凛(た、貴音さんの……ひ、ひっ、ひざまくらっ!?)

凛(わ、私も……いやいや無理っ、あんな大胆なことできないよ!!)

凛(……で……でも……絶対に……)

凛「……先輩たちに、追いついてみせる……!!」


貴音「おや? 今の声は……なるほど。ふふっ、日々精進してください」

P「……んー……zzz」


 おわり

43: 2013/01/09(水) 23:21:56.49
説教される凛というのもなかなか

44: 2013/01/09(水) 23:29:42.11
がんばりんりん☆

引用元: 凛「先輩アイドルに追いつく」