1: 2013/07/31(水) 21:23:59.29 ID:cMvCB/0/0
奉仕部の3人ののんびりとした日常の掛け合いを細々と書き連ねて行くものです。
基本短編集。当SSにはいじめは存在せず、基本的にいじり、ネタです。主なターゲットは由比ケ浜です。


「SS」


結衣「ヒッキー、今日は珍しく携帯いじってるけど何してるの?」

八幡「あ?ああ、今日は本持ってくんの忘れたからな。SS読んでんだよ」

結衣「えすえす?SSってナチスの?」

八幡「おい、今、由比ケ浜の口出たとは思えない単語がでてきたぞ」

雪乃「由比ケ浜さん、あなた世界史得意だったかしら?どの科目も満遍なく不得意な印象しかないのだけれど」

結衣「世界史?なんで世界史?」

雪乃「なぜってあなた、ナチスと言えば国家社会主義ドイツ労働者党、もしくはそれが支配していた頃のドイツをさすじゃない。それでSSと言えば親衛隊のことを言ったのでしょう?」

結衣「え!?ナチスってドイツのことだったんだ!?小魚のことかと思った」

八幡「は?………。あ、まさかお前、それシラスのこと言ってんの?最後のスしかあってねえし。どんな頭してんだよ。大体なに、Sirasu Shineitaiの略でSSとか言うつもりなの?踊り食いでもすんの?」

雪乃「比企谷くん。それはシラウオのことでしょう。あなたいくら由比ヶ浜さんが相手だからって、あまり適当なこというのはやめたほうがいいわよ」

結衣「な、なんか今ひどいことをサラリと言われた気がする!」

八幡「いや大丈夫、気のせいじゃねえから安心しろ。あまり馬鹿の前で馬鹿なこと言うと、馬鹿だから信じちゃうぞって言われただけだから」

結衣「あんま馬鹿馬鹿言うなし!これでも結構傷つくんだからね!てかゆきのんひどい!」




3: 2013/07/31(水) 21:33:16.18
「どくしょ」

結衣「ヒッキーとゆきのんってさ、いっつも本読んでるよね?」

雪乃「そうね」

八幡「ま、他にすることもないからな」

結衣「それって飽きない?」

雪乃「別にそんなことないわ、読んでいる本はいつも違うもの。私としてはいつも携帯電話をいじっているほうが、よほど不健全で退屈しそうに思うのだけれど」

結衣「うーん、そっかぁ…。あたしもたまには読書、してみようかなぁ」

雪乃「っ!?ごほっ!ごほっ!」

結衣「わわっ!ゆきのん大丈夫!?」

八幡「いまのは、完全に由比ヶ浜が悪いな。突然変なこと言い出すから、雪乃下が混乱してるじゃねぇか」

結衣「あ、あたしのせいなんだ!?」

雪乃「…ふぅ、由比ヶ浜さん、あなたは急に何を言い出すの?」

結衣「いやほら、二人はいつも本読んでるし、たまに本の内容で盛り上がったりしてるじゃん?あたしも本読めば、二人の会話に入れるかなーって」

雪乃「由比ヶ浜さん…」

八幡「んなら手始めに『ぐりとぐら』なんかいいんじゃないか?」

結衣「ぐりとぐら?」

雪乃「……。そうね、確かにあれなら由比ヶ浜さんにでも読みやすいんかも知れないわね」

結衣「そうなんだ!ねぇ、学校の図書館にあるかなぁ?」

八幡「どうだろうな…、まぁ一冊くらいはあんじゃねぇの?知らんけど」

結衣「そっか!よし!じゃあさっそく行ってくるね!」

ガラッ、トテトテトテトテ…

雪乃「…うちの学校にあるのかしら」

八幡「…さぁな。…まぁ、まず探そうと思ったことがないからな」

雪乃「…そうね」

八幡「……」

雪乃「……」

八幡「……」

雪乃「……」



パタパタパタパタ!

八幡「なんか、あったっぽいな…」

雪乃「そのようね…」

ガラッ!
結衣「これ絵本じゃん!!」

雪乃「だから、由比ヶ浜さんにも読みやすい本、と言ったでしょう?」

結衣「ひどい!ゆきのんひどい!って言うか馬鹿にしすぎだからぁ!」

八幡「つーか、マジで借りてきちゃったのかよ…」

5: 2013/07/31(水) 22:02:31.55
「おべんとう」

結衣「ねぇねぇ、ヒッキーにゆきのん。今度お弁当作ってこようかと思ってるんだけど食べてくれる?」

八幡「断る」

雪乃「絶対嫌よ」

結衣「即答された!?」

雪乃「当然でしょう?由比ケ浜さん、なぜお弁当なんて作ろうだなんて、恐ろしい考えを思いついたの?」

結衣「いや、ほら。ゆきのんやヒ、ヒッキーにはいつもお世話になってるじゃん?それでお礼の気持ちっていうか」

雪乃「由比ケ浜さん…あなたお礼という言葉の意味を理解しているの?お礼という言葉は基本的には相手への感謝の気持ちを伝えるものであって…
   たしかに、特定の条件下では「お礼参り」のように相手に危害を加える目的のもと使われることもあるけれど」

八幡「由比ケ浜の弁当とか食わされるとか、それもうお礼参り超えて暗殺の領域だろ」

結衣「あ、あんさつ…」

雪乃「だいたいあなたまだ卵焼き一つ、まともに作れないじゃない。そんな状態でお弁当なんか作っても、生ゴミの箱詰めが出来あがるだけよ」

結衣「な、生ゴミ…」

八幡「まぁ、白飯くらいしか食うもんなさそ……由比ケ浜、一応言っておくけどな。白米は洗剤で洗うもんじゃねえんだぞ?」

結衣「え!?……。い、いやヒッキーなに言ってんの!?そのくらい知ってたし!馬鹿にしすぎだからぁ!」

八幡「(まじかよ、こいつ)」

8: 2013/07/31(水) 23:01:29.87
「じょじゅじゅTrick」

八幡「ふー…」パタン

結衣「あ、ヒッキー。本読み終わったの?んー、『葉桜の季節に君を想うということ』?意外、ヒッキーって恋愛小説なんかも読むんだ」

八幡「いや恋愛小説じゃねえよ。ミステリ小説だよ、叙述トリック系のな」

結衣「じょ、じょじゅじゅTrick?」

八幡「なんでトリックのとこだけ妙に流暢なんだよ…」

雪乃「叙述トリックよ、由比ケ浜さん。読者の思い込みや、偏見なんかを利用して読者をだますタイプのミステリと言えばいいかしら」

結衣「例えばどういうのなの?」

雪乃「そうね。例えば、章をまたいで同じ名前の人物がでてくるのだけど実は別人、とか文章が実際の起こった時系列で並んでいない、とか。
   他にはしゃべり方や行動などで登場人物の年齢や性別を誤認させる、なんていうのもあるわね」

結衣「な、なんかいろいろ難しそう」

雪乃「そうでもないわ。ほかのミステリに比べて謎自体はむしろシンプルと言ってもいいわね。まぁ、私自身はあまり好きではないのだけれど」

八幡「そうなのか?俺は最後のほうで、いままで信じてきた前提が一気に覆される感じ、嫌いじゃないんだけどな」

雪乃「読んでいると、この文章で読者を騙してやろうとか、この表現はミスリードを誘っているとか作者の考えが透けて見えてしまって気分が悪くなるのよ。
   それに大概中盤をすぎるまでに、謎が解けてしまうから、タネがわかった手品を延々と見せられているような気分になるのよ」

結衣「う、うーん…」

八幡「なに唸ってんだよ。由比ケ浜」

結衣「い、いや、難しくて二人が何言ってんのか全然わかんない…」

八幡「ま、いいからお前はおとなしく『ぐりとぐら』でも読んでろよ」

結衣「だからそれやめてってばぁ!馬鹿にしすぎだからぁ!」

15: cMVCB/0/0 2013/08/01(木) 01:48:51.81
「おりょうり」

結衣「ふんふふーん、ふーん」ペラ

八幡「なんだ由比ヶ浜、今日は本読んでんのか。なに読んでんの『ぐりとぐら』?」

結衣「ヒッキーしつこいし!だいたいそれもう昨日返したし!」

八幡「昨日まで借りてたのかよ…。ていうか読んだのかよ…」

雪乃「『ちょっとした小技でおいしくなる100の裏技』…料理本ね」

結衣「うん!この前さんざん言われたから、ちゃんと勉強しなきゃーって思って」

八幡「まぁその心意気は買うが由比ヶ浜、一応言っとくけど本を読むだけじゃ料理は上達しないからな?」

結衣「そんなことわかってるし!この本で料理にいかせる小技を覚えるんだってば!」

雪乃「由比ヶ浜さん、小技とかそういう考え方を改めなさい。まずはレシピ通り作る、それさえ守っていれば普通はまともなものが出来上がるはずなのよ」

結衣「うーん、でもさ。隠し味とか入れたほうがおいしくなる、っていうじゃん?」

雪乃「それは最低限、人並みの料理ができるようになってから考えるものよ。まずはきちんと分量を計る、その一手間を惜しむから失敗するのよ」

八幡「由比ヶ浜の料理みたいにな」

雪乃「料理下手な人は、独自性だなんだと言って余計なものを入れてしまうものなのよ。その結果は大概、悲惨な結果を生むわ」

八幡「由比ヶ浜の料理みたいにな」

結衣「ヒッキーうっさい!でも、はやくゆきのんみたいに料理うまくなりたいし…」

雪乃「何事も一足飛びにうまくなろうとするのは、無理と言うものよ。私もアドバイスするから、少しずつできることを増やしていきましょう?」

結衣「ありがとうゆきのん!」ガバッ

雪乃「暑苦しい…」

八幡「でも料理ってなにさせんだ?卵焼きもうまくできないんだろ?」

雪乃「そうね、パンケーキとかどうかしら。卵を割って、粉と混ぜて焼くだけだし、焼き加減も卵焼きほどシビアじゃないわ。練習にはピッタリじゃないかしら」

結衣「そっか!じゃあ明日さっそく作ってくるね!ゆきのん、味見してくれる?」

雪乃「っ!?……あ!…それもいいのだけれど由比ヶ浜さん、上達には反復練習が欠かせないわ。毎朝あなたのお父様に作ってあげて感想をもらうというのはどうかしら?」

結衣「あ、確かにそれいいかも!うちのパパ朝はパン派だし、明日からさっそくやってみるね!」

雪乃「ええ、それがいいと思うわ。どんな感想もらったか聞かせてね?(ほっ)」

八幡「(雪ノ下のやつ、とっさに他人を生け贄にしやがった…。さようなら、パパ比ヶ浜さん…)」

18: 2013/08/01(木) 04:54:48.34
「ひごろのおこない」


八幡「……」カリカリ

結衣「あれー?ヒッキー今日は勉強してんの?」

八幡「あ?ああ…今日でた英語の宿題明日までだからな。めんどくせぇけどやっとくしかないだろ、変に目立ちたくないしな」

結衣「そっかー、ヒッキーって意外にまじめだね」ケイタイボチボチ

雪乃「由比ヶ浜さん?」

結衣「ん?なあに?ゆきのん?」

雪乃「なあに、じゃないわ。あなたはやらなくていいの?」

結衣「え?なにを?」

雪乃「なにを、じゃないでしょう、由比ヶ浜さん。存在感は薄いから忘れてしまうのも無理もないとは思うけれど、比企谷くんとは『一応』クラスメイトだったはずでしょう?あなたにも当然同じ宿題がでているんじゃなくって?」

結衣「う、うーん。あたしは…いいかな。まだ明日までは時間あるし…。ほら、家帰ったらやれるし、最悪、姫菜に見せて…もらえるし…」

雪乃「由比ヶ浜さん、そうやって物事をすぐ先延ばしにしたり、誰かをあてにするのはあなたの悪い癖よ」

結衣「うっ」

雪乃「日頃の行動の組み合わせであの男がより気持ち悪く見えるように、そうした日々の生活態度は成績に大きな影響を与えると言っていいわ」

結衣「ううっ」

雪乃「いい?比企谷くんは友達がいないので、見せてもらう相手がいないから選択肢がないとは言え、あの気持ち悪い比企谷くんさえ自分で課題をこなしているのよ」

結衣「うううっ!」

雪乃「もしあなたがさっき言ったような行動をとると言うのなら、残念だけれどあなたを比企谷のクズと判断せざるを得ないわ」

結衣「ひ、ヒッキー以下のクズ!?」

雪乃「さぁ、ここからはあなたが決めなさい。やるのか…やらないのか」

結衣「…る」

雪乃「……」

結衣「あたしやるよゆきのん!だってなるわけにはいかないもん!ヒッキー以下にだけは!」

雪乃「そのいきよ由比ヶ浜さん。さぁ、難しいところがあれば、ヒントくらいは出してあげるわ。早くはじめなさい?」

結衣「うん、あたし頑張る!」


八幡「ねぇ、おかしいでしょ?俺はすごいまじめに宿題してただけでしょ?なんで由比ヶ浜を叱る時、いちいち俺を攻撃しなきゃいけないの。なんかそういう条例でもあんの?流れ弾で蜂の巣なんだけど。俺は歩く教訓なの?キリギリスなの?おい、聞けよ雪ノ下!おい」


22: cMVCB/0/0 2013/08/01(木) 14:57:37.33
「らぶれたぁ」

コンコン
結衣「あ、誰かきた」

雪乃「どうぞ」

平塚「し、失礼するぞ」

結衣「あ、平塚先生ー」

雪乃「珍しいですね。先生がノックをしてから入ってくるだなんて。何か御用ですか?」

平塚「い、いやなんだ。今日は実は君たちに折り入って頼みたいことが、あってね」

雪乃「頼みたいこと…。それは先生から奉仕部への依頼ということですか?」

平塚「む…うむ、まあそういうことかな。いや、依頼というか、相談と言ったほうが正しいのかも知れない」

雪乃「相談、ですか」

平塚「いや、まあ。なに、しょ、少々デリケートな問題でね。学生側からの意見も聞いてみたいと思ったんだ」

雪乃「はぁ、なるほど…。先生にはお世話になっていますし、そういうことでしたらおうかがいします」

平塚「そうか、助かるよ。雪ノ下」

雪乃「いえ…」

平塚「………」

雪乃「あの、内容を言っていただかないと相談に乗りようがないのですが」

平塚「あ、ああ!そうか、そうだな!すまん!じ、実は…」

平塚「せ、生徒からラブレターをもらったんだ」

結衣「ら、ラブレター!?」キャー

八幡「先生…。モテないのはしょうがないにせよ、妄想に走るのは死亡フラグですよ」

平塚「比企谷、歯を食いしばれ!」ドゴッ

八幡「ぐふぅ!」

雪乃「まぁ、先生は見た目は美人ですし性格さえ知らなければ憧れる男子生徒の一人や二人いてもおかしくないかもしれないですね」

平塚「ぐはぁ!」フラッ

八幡「お前がそれ、言っちゃうのかよ…」

雪乃「なにか?」

八幡「いや、別に」

結衣「だ、大丈夫ですよ先生!蓼喰ふ虫も好き好き?っていうじゃないですか!」

平塚「ぐほぉ!」ヨロヨロ

八幡「由比ケ浜…。お前にしちゃ珍しく言葉はあってるけどフォローにはなってないからな、それ」

雪乃「それで、仮にそれが本物だとして、それを私たちに相談して先生はどうなさりたいのですか?」

平塚「それはあれだ、やはり教職員という立場上、生徒からこういうものをもらっても困るのだ」ニヤニヤ

八幡「(嬉しそうだ…。いまの俺ならオドロキ君の腕輪なしで嘘を暴けるな…)」

結衣「すっごい嬉しそうだし…」

平塚「とにかく立場的にも、倫理的にも、校内の風紀的にも断らねばならないとだろう?ま、まぁ、どうしても、というなら卒業まで待ってもらわねばならないし」

八案「(まじかよ、この人…。もう見境なしなんじゃねえの)」

平塚「と、とにかく相手があまり傷つかず、私への思いを保ったまましばらくは身を引いてもらうことを伝える文章を学生の立場から考えてもらえないか」

雪乃「そういうことですか…。先生、返事を書くというのなら、とりあえず見ないことには始まらないですし、手紙を見せてもらってよろしいでしょうか?」

平塚「う、うむ、そうだな。これだ…」

23: cMVCB/0/0 2013/08/01(木) 15:13:21.13
平塚先生へ

幸せにしたいんです!先生のことを。
ずっと見ていました。先生のことを。
彼氏になれたら、先生のことを
ちゃんと大事にします!
ヤンデレは得意じゃないんですが、ツ
ンデレは大好物です。先生
はそういうところもあって、
愛さずにはいられません!
ラブと言っても、過言じゃありません!
最愛の人に、高校でで
会えたなんて、僕の人生はなんて素晴らし
いものなんでしょう。この出会いは
きっと神様がくれた
贈り物なのだと思います。
連絡をお待ちしております。



八幡「…うわぁ」

結衣「うひゃー」カアア

雪乃「これは…なかなかに情熱的なラブレターですね」

平塚「そ、そうだろう。教師としては困ってしまうのだ」ニヤニヤ

結衣「幸せにしたいんです!だってうひゃー。ちゃんと大事にしますだって、きゃー」カァァ

雪乃「ちゃんと大事にします…なるほど…」

結衣「んん?ヤンデレ?ツンデレ?ねぇねぇヒッキー、これってなんのこと?」

八幡「あぁ、ヤンデレっつーのは依存型っていうか精神病むくらい相手のことを好きになる人のことで、ツンデレってのは本心隠して相手にきつい態度とったりすることを指す…まぁスラングみたいなもんだな」

結衣「なるほど!ヒッキーみたいな人のことだ!」

八幡「なんで、ツンデレで俺が出てくんだよ…」

雪乃「しかし、妙ですね。連絡をお待ちしております。と書いている割には本人の連絡先どころか名前さえ書いていません」

八幡「………」

平塚「そ、そうなのだ!できることなら連絡先も割り出して欲しいんだ。返事のしようがないからな!」

八幡「(普通は先生が真っ先に気づきそうなものなんだけどな。舞い上がっててそれどころじゃないのか)」

ピリリリリリリ
平塚「っとすまん。電話だ。ちょっとはずす。手紙は預けておいて構わないかな」

雪乃「ええ、どうぞ」

ガラガラ、ピシャ

24: cMVCB/0/0 2013/08/01(木) 16:03:29.85
雪乃「さて…、どうしたものかしら。内容は考えることはできるにしても、相手の名前も連絡先はわからないのでは返事の出しようがないわ。」

八幡「なぁ、由比ヶ浜はともかく。お前はさっきからわざと言ってんの?」

雪乃「?。どういうことかしら?比企谷くん」

結衣「ヒッキー!何か気がついたの?」

八幡「なぁ雪ノ下、その文章を読んで何か気づいたことはないか?」

雪乃「そうね。男子生徒にしては字は上手なほうね。けれど文章は…全体的におかしいわね。いきなり倒置法で始まっていたり、文章のつなぎも変だわ。お世辞にもよくできた文章とは言えないわね」

結衣「で、でも感情が高ぶってたらうまく文章に出来ないっていうのもあるんじゃないかな」

結衣「あ、あたしも手紙書こうとしてもうまく書けないし…」ゴニョゴニョ

八幡「違う。感情が高ぶっていたからって「で会う」が「で 会う」になったり、「素晴らしい」が「素晴らし い」になったりするのは不自然だ」

雪乃「確かにそうね。とするとその区切り方は意図的なものだと言うの?……っ!なるほど」

結衣「え?え?どういうこと?」

八幡「由比ヶ浜。これはな、立て読みなんだよ」

結衣「立て読み??」

八幡「ラブレターのすべての行の最初の一文字だけ抜き出して読んでみ」

結衣「ええと…幸、ず、彼、ち、ヤ、ン、は、愛、ラ、最、会、い、き、贈、連」

八幡「それをひらがなに直して続けて読むと?」

結衣「しあ、ず、かれ、ち、や、ん、は、あい、ら、さ、あ、い、き、おく、れん…」

結衣「……」

結衣「静ちゃんはアラサー行き遅れ!?」

雪乃「ようするに、この手紙はラブレターに見せかけた、平塚先生を中傷する手紙というわけね…」


25: cMVCB/0/0 2013/08/01(木) 16:36:50.52
結衣「ヒッキー、よくそんなこと気づいたね?」

八幡「まぁな。立て読みってのは陰湿な大型ネット掲示板ではよく見られるもんだからな。こんなのよりずっと出来のいいのがいくらでも転がってる」

結衣「うーん…でも、誰がそんなことしたんだろう。ゆきのんの言う通り性格を知らない生徒ということなら。先生が国語を教えていないクラスの生徒…?」

八幡「違うな。俺の見立てだと、逆に犯人は先生から国語を教わっている生徒、だ」

雪乃「比企谷くん、説明を」

八幡「雪ノ下、お前さっきこの手紙を見て男子にしては字がうまいって言ったよな?」

雪乃「ええ」

八幡「だが、俺の見立てでは違う。こいつは字がうまいんじゃない、整いすぎてるんだ」

結衣「どういうこと?」

八幡「近づけてよく見てみろ、その手紙の文字には普通、人間が文字を書いたら見られるはずのにじみや、ゆがみがまったく存在しない」

雪乃「なるほど、つまりこれは」

八幡「あぁ、これはパソコンで出力したもんだ。手書き風フォントを使ったんだろう、ぱっと見じゃよくわからないくらいだからな。よくできてる」

雪乃「そうまでして筆跡をごまかした、となると犯人は」

八幡「ああ、先生が国語を受け持っているクラスの生徒なら、テストなんかで先生に手書きの文字を知られている。となりゃ当然ごまかすよな」

結衣「じゃ、じゃあ、うちのクラスに犯人がいる可能性も…」

八幡「当然あるだろうな。加えて平塚先生は生徒指導の担当でもある。そのあたりで恨みを買っていたとしても不思議じゃない」

雪乃「なるほど。そうすると犯人は2Fの生徒で、たびたび生徒指導室に呼び出されており、ネット掲示板などに対する知識が深く、陰気な性格をしている、ということでいいのかしら」

八幡「まぁ、当たらずとも遠からずってところじゃないか?」

結衣「それってさ…」
雪乃「とすると犯人は…」



結衣「ヒッキーじゃん!」
雪乃「比企谷くん、いうことになるわね」

八幡「え!?」

28: cMVCB/0/0 2013/08/01(木) 18:39:56.41
八幡「いや、おかしいでしょ?俺が謎を解いてきたはずでしょ?それでなんで俺が犯人ということになんの?」

雪乃「古今東西、探偵役が犯人だなんて使い古された手、珍しくもないわ。もしあなたの主観で身に覚えがないとしても、犯行は行間で行われていたから覚えがないように感じるだけよ。クリスティが使った手だわ」

八幡「おい、そうやってさりげなくネタバレすんのやめろ。怒られんのは俺なんだぞ」

結衣「で、でもさでもさ。やっぱりヒッキーは犯人じゃないんじゃないかな」

八幡「ゆ、由比ヶ浜!」キュン

雪乃「根拠は?」

結衣「んー、なんちゅうかさ。やっぱり嘘ものでも、これはラブレターだったわけじゃん?ヒッキーにそんなの出す勇気なさそうっていうか」

八幡「おい、お前悪魔か。俺の今のトキメキ返せよ。根拠ないならせめて、信じてるくらいから、くらい言えよ」

雪乃「そうね…、比企谷くんの意気地のなさ、これを考慮に入れてなかったとは、私としたことが迂闊だったわ…。ごめんなさいね、比企谷くん、変な疑いをかけてしまって」

八幡「おい!そうやって微笑むのやめろ!人をヘタレ呼ばわりすんな」

結衣「でもさでもさ、犯人探しはともかく、今は先生にどう伝えるか考えたほうがいいんじゃない?」

八幡「あぁ、まあそりゃ言えてるな」

雪乃「どう伝えるかって、正直に、手紙はいたずらで本当は先生を罵倒する内容でした、って伝えればいいんじゃないかしら」

八幡「お前鬼かよ。今にも踊り出しそうな先生の様子見たろ?あれで嘘だって分かったらマジで何するかわかんねえぞ。ちょっとは気ぃ使ってやろうぜ」

結衣「い、言えてる…ヒッキーとかピンチかも…」

雪乃「ふむ、確かに一理なくはないわね。ごまかすのはあまり好きではないのだけれど、状況が状況だけに仕方がないわね。じゃあ、どうやって先生に伝えるか、それを考えましょう」

八幡「あ、すまんちょっとタイム。喉乾いたしマッ缶買ってくるわ」

雪乃「じゃあ私は野菜生活を」

八幡「ナチュラルにパシんなよ…、由比ヶ浜は?」

結衣「え?あ、あたしはいいよ、悪いし…」

八幡「なら適当に買ってくるわ」

ガラッ
八幡「あ」
平塚「あ」
雪乃「あ」
結衣「あ」

八幡「き、聞いてました?」

平塚「………」

平塚「う、うわあああああああああああああああああ!」
ダダダダダダダダダダダ

結衣「いっちゃった…」

雪乃「まぁ、いろいろ手間が省けたわね。今回の依頼はこれで完了ということでいいかしら」

八幡「お前、マジで鬼だろ…どんだけ鋼のメンタルしてるんだよ…」

30: cMVCB/0/0 2013/08/01(木) 19:29:14.19
「さんたくろーす」

結衣「ねえねえ、ゆきのんゆきのん。昨日ね。ケーキ屋さんの前通ったらクリスマスケーキの予約もう始まったって書いてたよ!」

雪乃「へぇ、それで?」

結衣「え?あっとそれだけだけど…」

八幡「いるよなー、そうやって『それで?』とか『だから?』とか言って場を白けさせるやつ、そういうやつは大抵嫌われるー」

雪乃「ソースは俺、とか言い出すのでしょう?」

八幡「ソースはお…え?」

結衣「ああー!ほらあれ!ゆきのんってサンタさん、いつまで信じてた?」

雪乃「サンタ…?そうね…4歳くらいまで、かしら」

結衣「4歳!?はやっ!?」

雪乃「そうかしら?まぁ、それまで信じていた、というより4歳の時に、父に向かって『プレゼントをいただけるのなら、枕元に置かれるより、すぐに開けられる昼間いただいたほうが効率が良いと思います』と言ってしまったのよ。それ以来サンタからのプレゼントも24日の昼間のうちにもらえるようになったわ」

八幡「可愛くねぇ幼女だな…」

結衣「ヒッキーは?」

八幡「俺は小3の頃だな、小町がすごいこと教えてあげるっていうから聞いたらそうだった」

結衣「小町ちゃんに教えてもらったんだ…てか小町ちゃんもその頃小1だよね…」

八幡「まぁな。まぁあいつの場合、気づいていないフリしてその先もプレゼントもらい続けてたけどな」

結衣「計算高すぎる…」

雪乃「そういうあなたはいつまで信じていたのかしら?」

結衣「え、あたし?あたし中2」

雪乃「え?」

八幡「は?」

雪乃「由比ヶ浜さん、中2というと中学2年生ということで間違いないのかしら。それだと3年前まで信じてという計算になるのだけれど」

結衣「う、うん…」

八幡「まじかよ、お前。どんだけ頭お花畑なんだよ。初春かよ」

結衣「お花畑じゃないし!っていうか初春ってなんだし!」

八幡「んで、なんで気づいたの?」

結衣「え?あ、あのね、25日の朝にウキウキしながらサンタさんからのプレゼント開けてたらママが来て『結衣、あなた。いつまでサンタを信じているなんて言うつもりなの?』って」

八幡「うわぁ…」

雪乃「きっと、お母様もいたたまれなくなったのね…」

八幡「じゃあ、今はサンタもトナカイもいないって分かっているわけだ」

結衣「あったり前だし!でもそれまで、ずっといるって信じてたからびっくりだよね!?」

八幡「………」

雪乃「………」

結衣「え…?二人ともどしたの?」

八幡「由比ヶ浜…。トナカイ…は、いるぞ」

雪乃「もう、あなた小学生からやり直したら?今なら学年の真ん中くらいの成績は取れるんじゃないかしら」

結衣「ひどい!ゆきのんひどい!てか馬鹿にしすぎだからぁ!」

八幡「(そうでもないだろ…。どうしてこいつ総武高受かったんだろ…)」

43: cMVCB/0/0 2013/08/01(木) 23:26:01.35
「ななふしぎ」



結衣「学校ってさー、七不思議ってあるよね」

八幡「ああ、あるな」

雪乃「いわゆる学校の怪談みたいなお話ね」

結衣「小学校の時はー、夜な夜な歩く人体模型とか、勝手になり出すピアノとか、あとーなんだっけ…。あ!階段が13段になるって話もあった!」

雪乃「どれも定番ね」

八幡「うちの小学校にもあったな七不思議。集合写真の時にいきなり映り込む謎の男子とか、グループ決めの時にいつの間に近くにいる謎の男子とか、合唱コンクールの時に聞いたことのない謎の男子の声が混じってるとか、一人でオクラホマミキサー踊ってる謎の男子、とか」

結衣「それ全部ヒッキーのことじゃん!!」

雪乃「その存在の薄さは、期せずして心霊現象とまで認識されてしまうのね…。さすがは比企谷くんだわ」

八幡「まぁな」

雪乃「別に、褒めたつもりはないのだけれど…」

結衣「まぁ、ヒッキーも自分でネタにするくらいだし、慣れちゃってるから。でもさ、うちの高校で七不思議って聞かないよね?」

雪乃「高校生にもなって七不思議もなにもない、ということじゃないかしら。総武高は仮にもそこそこ優秀な高校なわけだし」

八幡「あ、それなら一つ、俺らの身近なところで七不思議知ってるわ」

結衣「え!?身近なところ!?聞きたい!聞きたい!なになに!」

八幡「試験を突破できたはずがないのに、学校に出没する謎の女子高生、由比ヶ浜結衣、とか」

結衣「な、し、失礼な!!」

雪乃「比企谷くん、世の中には言っていいことと、悪いことというのがあるのよ」

結衣「ゆきのん!!」

雪乃「由比ヶ浜さんの件に首を突っ込むのは、社会の暗部に土足で踏み込むことと同じよ。一介の男子高校生が知るには重すぎる真実だわ」

結衣「ゆきのん!?」

八幡「確かにそうだな…、この件は七不思議というよりは宇宙の真理みたいなカテゴリに関わってくるからな」

結衣「あ、あたしが高校入学できたことって、そんな大げさな話に関わってくるんだ!?」

八幡「すまん、由比ヶ浜。こんな話を持ち出した俺が軽卒だった」

結衣「え?う、うん大丈夫。気にしてな…って違う!あたしもちゃんと一般入試で受かったんだからね!?二人ともひどい!馬鹿にしすぎだからぁ!」

58: cMVCB/0/0 2013/08/02(金) 14:10:09.05
「おかいもの」

結衣「ふんふふーんふーん」

小町「あ!結衣さんだ!結衣さーん!やっはろー!」

結衣「あ、やっはろー!小町ちゃんにヒッキーも!こんなとこでなにしてんの?」

八幡「おう。何ってお前、買い物に決まってんだろ。相撲見に来たように見えんの?」

小町「また、お兄ちゃんはそういう言い方を…」

結衣「いや、だってヒッキーたちの家からここって、ちょっと遠いぃじゃん?ちょっと気になっただけ!」

小町「今日はこのスーパー、卵が安いんですよぅ!休みの日は、兄が『暇』に任せて数ある激安情報の中から最良のものを選び出してくれるので助かってるんです!」

八幡「ちょっと?あんま暇を強調すんのやめてくんない?俺が休みの日に遊ぶ友達の一人もいないような寂しい奴みたいだろ」

結衣「100%事実じゃん…」

八幡「で、お前はこんなとこで何してんの?あんま近場で材料集めると、事件が発覚した時すぐアシがつくぞ」

結衣「だから暗殺じゃないし!!ママが忙しくて出られないから、あたしが晩ご飯の買い出しを頼まれただけ!」

八幡「マジかよ、お前のかーちゃんどんだけ勇敢なんだよ。レオニダスかよ」

小町「あ!それで結衣さんは何買うんです?小町でよければー、お手伝いしますよ!」

結衣「ほんと!?小町ちゃんいい子だー。助かったよー」

八幡「主に由比ヶ浜家3人の命が、な」

結衣「ヒッキーうっさい!ていうかしつこい!」

小町「ええっと、かごの中身は…玉ねぎ、まいたけ、キャベツににんじん、ニラに…わっかりました!今晩のメニューはお鍋ですね!?」

結衣「ううん、クリームシチュー」

小町「え?」
八幡「は?」
結衣「うん?」

八幡「いや、お前はキョトンと首ひねってんじゃねえよ。おかしなことやってるって自覚しろ」

小町「玉ねぎと、にんじんは分かるんですけど…ニラとかまいたけもシチューに入れるんですか?変わってますね」

八幡「これお前のかーちゃんが買ってこいっつったの?」

結衣「んーん?ママはクリームシチュー作るから材料買ってきてって言っただけ」

八幡「あぁ、今まで確信持てなかったけど、ママヶ浜さんはやっぱりお前のかーちゃんで間違いないわ」

結衣「どういういみだぁ!」

小町「キャベツはギリギリ許せるとして…ニラはシチュー全体がニラくさくなっちゃいますよ?それにこれ、牛乳じゃなくて豆乳ですし」

結衣「え?嘘!?マジ!?」

小町「それに小麦粉ですけど…買い置ききれちゃってるんですか?それのしたって2Kgは買い過ぎだと思うんですが…それに…」


20分後


結衣「ほんと小町ちゃん、ありがとうね!おかげでいいものできそうだよ!美味しいのできたら写メするね!」

小町「あ、はい。楽しみにしてます」

八幡「お前、次回から買い物来る時は、ちゃんと買い物メモ持たせてもらったほうがいいって。家族の平和のためにも」

結衣「ヒッキーうっさい!ていうか馬鹿にしすぎだからぁ!今日だってちゃんと買えたでしょ!?」

八幡「(そうでもないだろ。今日だって小町いなかったらニラとまいたけの豆乳煮込みが出来上がってたぞ…)」

結衣「それじゃあ、二人とも!今日はありがとね!」
パタパタパタパタ!



小町「ねぇ、お兄ちゃん…?」

八幡「ん?なんだ小町?」

小町「小町、ちょっと結衣さんを侮ってたよ…」

八幡「あぁ、まあな。お前、後半のテンションの下がりぐあい半端なかったもんな。由比ヶ浜は気づいてなかったみたいだけど」

小町「うん…、小町さすがいちょっと疲れた…買い物して早く帰ろう?」

八幡「(直接食わしたわけでもないのに、元気が取り柄の小町をここまで弱らせるとか、マジで由比ヶ浜の料理は兵器クラスだな…。毎朝食わされてるパパヶ浜さんに敬礼!)」

62: cMVCB/0/0 2013/08/02(金) 15:36:49.25
「おれおれさぎ」


ブーブー
八幡「ん?」

八幡「はい?もしもし?」

??「あ、ヒッキー?あたし、あたし」

八幡「俺にあたしと言う知り合いはいねぇ」ブツッ

ブーブー
八幡「あい、もしもし?」

??「ちょ!なんで切るし!あたしだってば!」

八幡「最近いろいろ物騒だから、名乗らない奴には気をつけろって、親父にうるさく言われてるんですよ。そういうことなんで切りますね」

??「ちょ、ちょっと!だからあたしだってばぁ!由比ヶ浜結衣!」

八幡「んだよ、由比ヶ浜かよ。さっさと言えよ、あやうく着信拒否にするところだったぞ」

結衣「いきなりそこまでいっちゃうんだ!?ていうか登録してるんだから名前でてるでしょ!?」

八幡「いや、俺のiphoneだから相手の名前出ないんだよ」

結衣「あ、そうなんだ…。って、いやいや!それは嘘だって私にだって分かるし!それに声で分かるでしょ!?」

八幡「いやいや、普通わかんねえだろ」

結衣「そうなの?あたしヒッキーの声聞いたら一発でわかるけど…、ヒッキーは…分かんないの?」

八幡「…いや…まぁ…、わかるっちゃわかる…つうか、よく聞くし、区別くらいつくけど」

結衣「そうなんだ、えへへ…」

八幡「………」

結衣「………」

八幡「………」

結衣「………」

八幡「ちがう!そうじゃない!お前なんか用事あったから電話してきたんだろ!?」

結衣「あ!そうだった!明日2限国語でしょ?宿題でわかんないとこあるから、ヒッキーに教えてもらおうと思って」

八幡「………」

結衣「え…、どしたのヒッキー。嫌だった…?」

八幡「由比ヶ浜。別に明日学校に行くのはお前の自由だから止めないけどな」

結衣「どういう意味?」

八幡「いや、お前。明日はこの前の振替休日で学校休みだろうが」

結衣「え…」

八幡「………」

結衣「そ、そうだったぁあ!あたしの苦労はああ!?」

八幡「ま、提出水曜だから、それまで自力で頑張れよ」

結衣「う、うん…お騒がせしてごめんね、ヒッキー。また電話する。それじゃあ、おやすみなさい」

八幡「おう…じゃあな」ブツッ

八幡「………」



バタン
小町「おにいちゃーん、お風呂あいたよー!!……って何、携帯握りしめてニヤニヤしてんの、おにいちゃん…」

67: cMVCB/0/0 2013/08/02(金) 17:53:30.43
「ばいと」


結衣「うーん、今月ピンチだなぁ。アルバイトしなきゃだめかなぁ」

雪乃「あなた、先月もそんなこと言っていたわよね。いったい何にそんなにお金を使っているの?」

結衣「うーん、でもねゆきのん。これでも色々節約はしてるんだよ?でもファミレスとかカラオケとか…色々付き合いでお金付き合わなきゃいけなくて…」

八幡「お前らは小遣いの値上げ交渉をしてる時のうちの両親か。まぁでも由比ヶ浜は俺たちと違って交友関係広いからな、しょうがない部分もあるんじゃないか?」

雪乃「勝手に『たち』ってあなたと一纏めにしないでもらえるかしら。ひどく不愉快だわ」

八幡「はいはい、そーですか」

結衣「そういえばヒッキーは、今はアルバイトしてないの?」

八幡「ん?まぁ、俺は最近、錬金術の甲斐あって潤ってるからな。たまに日雇いのするくらいだな」

結衣「それ、例の詐欺じゃん!」

雪乃「由比ヶ浜さん、だいたい聞かなくてもわかることじゃない。この男にまともな労働が務まるはずがないわ」

八幡「失礼な。これでも1年の頃はいくつもバイトしてたんだぞ。まぁ大概、人間関係になじめず数日でバックレてきたけどな」

雪乃「務まっていないじゃない…」

結衣「そっかぁ…そうだよね。新しく人間関係作んなきゃ!ってのはあるよね。お金入っても友達増えちゃったら付き合いも増えちゃうし、マックはやめといたほうがいいのかなぁ」

八幡「マグロナルドか?やめとけって。時給も安いし、金たまったからってすぐにゃやめられんだろ。その点日雇いはいいぞ、初対面の人が多いから人間関係気にしなくていいからな。まぁお前、ちーちゃんに声似てるし、マックも似合うっちゃ似合うかもしれないけど」

結衣「………。そうなんだ、でも日雇いって男の人の仕事って感じがする」

八幡「いや、別に力仕事ばかりってわけじゃないぞ。コンサートスタッフとかだと力仕事では役に立たないと判断された男と、女はもぎりに回されることが多いしな。もぎり最高だぞ、なんせ機械的に手を動かしてればいいからな」

雪乃「役にたたないと判断されてしまったのね…。懸命な判断だわ」

八幡「当たり前だ。俺は楽をするためには全身全霊をかけて努力するぞ」

雪乃「努力の方向性が間違っているのだけれど…。まぁいいわ、今日はもう暗くなってきたし、そろそろ解散にしましょう」

結衣「あ、ごめんゆきのん!あたしちょっとヒッキーに聞きたいことがあるから、今日は先帰ってて?」

八幡「は!?」

雪乃「そう?なら部室の鍵、ちゃんと返しておいてね。あと話す時は、携帯電話で110を入力して、通話ボタンに指をかけておきなさいね」

八幡「おい、この紳士を捕まえて、変質者扱いすんな!」

雪乃「はっ」
ガラガラ、ピシャ

八幡「あいつ鼻で笑いやがった…」

結衣「…あのさ、ヒッキー…」

八幡「は、はひ!」

結衣「そ、そのさ…」

八幡「……(おいおい、マジかよ。なんなのこのシュチュエーション…まずいんじゃないの)」ゴクリ

結衣「ち、ちーちゃんってだれ!?あたしに声が似てるってどういうこと!?マックの制服姿を見たことあるの!?」

八幡「あ?」

八幡「…やっぱお前馬鹿だろ。帰るわ」

結衣「え!?ちょ、ちょっと!馬鹿っていうなし!じゃなくて!質問に答えてよ!ねぇ!ヒッキー!?」

75: cMVCB/0/0 2013/08/02(金) 19:44:50.16
「おとしだま」




結衣「もーいくつ寝ーるとー、おしょおがつー」

雪乃「ご機嫌ね、由比ヶ浜さん」

八幡「つーか気がはやすぎだろ、まだずいぶん先じゃねえか」

結衣「でもさでもさ、お正月ってなんかワクワクしない?お年玉もらえるしー、おもち食べれるしー、あ!初詣の時の屋台もワクワクするよね!」

八幡「 なに?好きなの?餅。あれカロリー高いから、気をつけないと結構太るぞ」

結衣「太らないし!てか女の子にそういうこと言わないでよ!ヒッキー、デリカシーなさすぎ、マジキモい!」

雪乃「ちょ、ちょっと待って。比企谷くん、今の会話にはそれより先に指摘する点があったように思うのだけれど」

八幡「は?何言ってんの?お前」

結衣「どういうこと?」

雪乃「いえ、聞き違いじゃなければ、由比ヶ浜さんはさっきお年玉をもらっているとか言わなかったかしら」

八幡「ああ、言ったな」

雪乃「でしょう?…私はてっきりそういうものは小学校で卒業するもの、と二人で指摘する流れになると思っていたのだけれど」

八幡「つっても、俺も貰ってるからな」

雪乃「え?」

八幡「まぁ、俺の場合、小町が貰ってるからついでに渡されてるみたいなもんだけどな」

雪乃「私の感覚がおかしいのかしら…」

八幡「いや、貰えるもんは貰うだろ。自慢じゃないが、俺は大学に行こうが、社会人になろうが、くれるというならありがたくお年玉を貰うぞ。絶対に断らない。絶対にだ」

結衣「うわぁ…。あたしももらっといて何だけど、息子がこんな風になったらやだなぁ…、あんま似ないようにしつけないと…」

八幡「だいたい、そういう固定観念の押しつけや周りがそうだから、という姿勢はお前が一番嫌うところだろう?逆説的に言って俺たちは周りに流されないしっかりとした自我をもった人物ということになる」

雪乃「そう…なのかしら」

八幡「そうとも。それに民主主義の大前提である多数決の理論を考えてみろ、高校生になってもお年玉を貰う派が2票で、全得票数の3分の2を占めている。これをうちの学校の生徒に換算すればおよそ、470人以上がお年玉をもらう派という計算になる。したがって俺たちはまちがっていない!」

雪乃「………」

結衣「す、すごい。ヒッキーがゆきのんを言い負かした…!」ゴクリ

雪乃「言いたいことは…もう終わりかしら…比企谷くん。異議あり…よ」

八幡「何!?」

雪乃「よく戦った…、褒めてあげるわ。ただあなたは一つとても大事な前提条件を忘れている…」

結衣「ゆ、ゆきのんにはまだ何か秘策が…!?」ゴク

雪乃「………」スゥ……



雪乃「総武高校の生徒は『あなたほどクズ』でも『由比ヶ浜さんほどバカ』でもないわ!」

八幡「な、なにいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

結衣「ゆきのおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」

雪乃「証明…終了ね」

八幡「くそっ!結局こうなるのか!俺としたこと『由比ヶ浜のバカさ』を計算に入れてなかっただなんて!」

結衣「うわーーん!二人ともひどい!!ていうか結局そうなるの!?二人とも馬鹿にしすぎだからああああ!!」

80: cMVCB/0/0 2013/08/02(金) 21:20:19.61
「ほっとどっぐ」



結衣「二人と部活の後に一緒で遊ぶなんて滅多にないし!嬉しいな!」

八幡「まぁ、俺は今日は、小町が次の生徒会の連中に呼び出されて帰りが遅いっていうから付きあっただけだけどな」

結衣「はいはい、シスコンシスコン」

雪乃「けれど、どこに行くつもりなの?」

結衣「んー、カラオケかー、ゲームセンター?その後でファミレス行くのもいいかも!」

八幡「そういうことなら、先になんか食おうぜ。今日昼軽かったから、腹へってんだ」

結衣「なら、なんか買って食べる?ホットドッグとか、あ!クレープもいいな!」

八幡「クレープじゃ腹にたまらんだろ…。つーか由比ヶ浜知ってるか?ホットドッグって犬の肉を使ってるからホットドッグって言うんだぜ?」

結衣「え!?マジ!?…ってないない!あたしにもそのくらいわかるし!日本人犬食べたりしないし!」

八幡「ばっかおまえ、日本の伝統楽器である三味線だって猫の皮をだなー」
雪乃「比企谷くん」

八幡「ん?」

雪乃「その話はやめなさい」

八幡「でも…」

雪乃「やめなさい」

八幡「はい…」

結衣「でも、じゃあなんでホットドッグっていうんだろうね」

雪乃「一般的な話だと、形がダックスフンドに似ているから、と言われているわね」

結衣「そうなの!?じゃあ本当に犬から来てるんだ!」

雪乃「ええ、当初は『レッド・ホット・ダックスフンド・ソーセージ』と言う名前で呼ばれていたそうよ。長いからだんだん短くなっていったのでしょうね」

結衣「そっかー。あ、ソーセージって言えばさ。あの外側のってなんなんだろうね。プチプチってするし、食べられるゴム?」

八幡「………」

雪乃「………」

結衣「あ、あたし、また変なこと言った?」

雪乃「いえ…元々ソーセージというのは腸詰めといって、肉を羊の腸などにつめたものなの。ただ現代ではプラスチックやセルロースに詰めるものもあるから、人工物だから間違いというのは言い切れないわね。ただそういうのは外側は食べられないから、皮ごと食べるものは本来の腸で作ったものか、コラーゲンでできたものになるわね」

結衣「そうなんだー。あ、でもコラーゲンって知ってる!お肌がぷるぷるになるやつでしょ?」

八幡「まぁコラーゲンってのは食うと、アミノ酸に分解されちまうから、コラーゲンの形で食べてもブラセボ以上の効果はないけどな」

結衣「あ!ブラセボってしってる!あの救急車とかが走ってった時とかに音が変わるやつでしょ!?」

雪乃「それはドップラー効果でしょう…。何一つあってないわ…」

結衣「あ、そうなんだ…」

雪乃「………」

八幡「………」

結衣「………」

雪乃「………」

八幡「………」

結衣「あ、じゃあ…」

八幡「お前、馬鹿だから恥しかかかないんだしちょっと黙ってれば?」

結衣「ひどい!ヒッキー!ひどいっていうかキモい!馬鹿にしすぎだからぁ!」

90: cMVCB/0/0 2013/08/02(金) 23:10:37.41
「めがね」



結衣「うーーん」

雪乃「どうしたの?由比ヶ浜さん。さっきから鏡を見て唸っているけれど」

結衣「うん、あのね。眼鏡かけてる人ってなんとなく賢そうに見えるでしょ?」

八幡「だから指で輪っかつくって目のところであわせてたのか。ものすごい馬鹿っぽかったぞ。というか馬鹿だったぞ、馬鹿だなお前、馬鹿だろ」

結衣「馬鹿馬鹿言わないでよ!傷つくからぁ!ヒッキーまじでキモい!」

八幡「俺のキモさは、お前の馬鹿さと関係ないだろ。ほんと馬鹿だなお前」

結衣「また言った!2回もいった!」

雪乃「それで由比ヶ浜さんは、眼鏡をかけて賢く見られたい、というわけね」

結衣「そうそう!」

雪乃「だとしたら愚かな考えね。眼鏡と学力の高さは全くもって比例しないもの…なにせ」

結衣「なにせ?」

雪乃「私が眼鏡なんてかけていないもの」ドーン

八幡「そこから自慢につなげんのかよ…」

雪乃「そもそもあなた別に目は悪くないでしょう?」

八幡「そういや視力いくつあるんだ?」

結衣「え…視力…?に、2.0」

八幡「は!?両目とも?」

結衣「りょ、両目とも…」

八幡「まじかよお前、玄海師範なの?目ぇよすぎだろ、野生児かよ」

雪乃「由比ヶ浜さんは、勉強もしないし、読書もしないものね。視力が悪くなる要素がないもの、当然と言えば当然ね」

結衣「ゆ、ゆきのん…」

八幡「そもそも眼鏡をかければ賢く見えるって前提自体が間違ってんだよ」

結衣「え~!?どうして賢そうに見えるじゃん!」

八幡「お前、俺らの周りで眼鏡をかけてる奴思い出してみろって…」

結衣「まわり……?………あ」

雪乃「あの男ね」

結衣「ちゅ、中2…」

八幡「まぁ、それでもかけてみたいっていうんならすぐ呼んでやるぞ。多分1コールで出ると思う」

結衣「い、いやいいよ」

八幡「遠慮すんなよ、あいつ女子が自分の眼鏡かけるっていったら飛んでくるぞ。まぁ眼鏡に塩の結晶とかついてるとは思うけど」

結衣「いい、いいってばぁ!私が悪かったからぁ!もう眼鏡かけたいとか言わないからぁ!」



98: cMVCB/0/0 2013/08/02(金) 23:52:59.11
「めがね」おまけ


結衣「ねぇねぇ姫菜!眼鏡かしてー?」

海老名「眼鏡?結衣どういうこと?」

結衣「ほら、あれ!姫菜の言う眼鏡っ子?あれになってみたいと思って!」

海老名「そう…。なら貸してあげる…。ちょっと度が強いから…色々気をつけてね」スッ

結衣「色々?う、うん、ありがとう。じゃあさっそく」スチャ

海老名「Welcome to BL world.」

結衣「!?」

海老名「かけたね?結衣かけたね?」

結衣「う、うんかけたよ。姫菜、かけたよ」

海老名「ぐ腐腐…、その眼鏡をかけたらはやはちしか目に入らなくなるんだよ…ぐ腐腐腐腐腐」

結衣「ええ!?隼人くんとヒッキー!?それは困る!困るよ!姫菜!」

海老名「大丈夫、困らない困らないよ、結衣。ぐ腐、ぐ腐腐腐腐腐」

海老名「男と男の組んず解れつ!捻くれ系美少年を鬼畜系男子が巧みに攻める!!キマシ、キマシタ、キマシタワー!!!」ブシャアアアアア

結衣「美少年!?」

三浦「ちょ、ユイ!エビナの眼鏡とんなし!眼鏡なくなったら海老名歯止め聞かなくなるんだから!ほらヒナ、ちーんしなちーん!」

結衣「あは、あはははははは…」



八幡「まったく何やっとんだ、あいつは…」

104: cMVCB/0/0 2013/08/03(土) 01:58:45.15
「ちぇいんめいる」



結衣「う…うう」

雪乃「どうしたの?由比ヶ浜さん」

結衣「ちょっと変なメールが来たの…」

雪乃「比企谷くん、以前言ったはずよね。あまり変なメールを送っていると、事件になるって。このメールは裁判ではあなたにとって不利な証拠として働くわよ」

八幡「ナチュラルに俺を犯人扱いするのやめてくんない?だいたい由比ヶ浜、どんな内容のメールなんだ?」

結衣「うん…、これ」

八幡「なになに、このメールを送られた人は24時間以内に友人2人に転送してくださいぃ?送らないと殺された彼の霊が、あなたが犯人であると断定して殺しに…。かっ!くっだらねー」

雪乃「差出人はどうなっているの?」

八幡「差出人は…とべっち…?戸部かよ…」

八幡「(ていうか戸部も由比ヶ浜のアドレス知ってんだな…まぁ、つるんでんだし当然か)」

雪乃「となると、いよいよ比企谷君の犯行である可能性が高くなってきたわね」

八幡「いや、どーしてだよ。戸部から送られてんだぞ、100%無罪だろ」

雪乃「あなたが、海外サーバーの一つや二つ経由させた上で、戸部くんの携帯にクラッキングをしかけメールを送った可能性もあるでしょう?いえ、むしろ可能性は高いわ」

八幡「なんで俺が由比ヶ浜に嫌がらせのメールを送ることを目的に、そんなスパイ映画ばりの行動をしなきゃならねんだよ。ありえねえだろ」

雪乃「そうかしら?努力の方向性が間違っていることに関しては、あなたの右に出る人はいないと思うけれど」

結衣「……」

雪乃「まぁ、それはいいわ。由比ヶ浜さん大丈夫?さっきからずいぶん静かだけれど…」

結衣「あ…うん。ありがとうゆきのん…。ちょっと怖くってさ…。霊が殺しにくるとか書いてるし…無視しても大丈夫…かな」

八幡「馬鹿か、お前。こんなんで殺されてたら俺なんか中学時代に20回は殺されなきゃならんぞ。クラスの女子に向こうからはじめてメールが送られてきて浮かれてたら、この手のメールで、そのまま誰にも転送できないまま期限切れとか腐るほどあったっつーの」

雪乃「あなたは友達がいないもの、メールが送られてきた時点で既に詰んでるのよね。由比ヶ浜さん、だいたい霊なんているはずがないのよ、ましてや犯人を探しだすためにメールを使いこなす霊だなんて、お笑い草だわ。絶対にありえない、私が保証するわ」

結衣「うん…ありがとうゆきのん」

八幡「ま、それでも不安だってんなら、俺と小町にでも転送すりゃあいい。俺らが身をもってこんなの嘘だって証明してやるよ」

結衣「ヒッキー…!ありがとう。やっぱりヒッキーって優しいね」

八幡「やっと俺の魅力に気がついたか。そうとも、俺は優しいんだよ」

雪乃「まあ、あなたが送ったものだものね。責任をとるのは当然よね」

八幡「おい!どこまで俺を犯人にするつもりなんだよ」

結衣「あは、あはは」



20:35 比企谷家 

ブーブー
八幡「メール?由比ヶ浜から、か」

ヒッキー、今日は(。uωu)ァリガト♪すごく怖かったけどヒッキーのおかげで元気がでたよ!(w´ω`w)
あたし馬鹿だからいつも迷惑かけてばかりだけど、これからもヽ(・ω・。ヽ)ヨロ♪(ノ。・ω)ノ シク♪(σ。・ω)σね!

八幡「……ふ。『当然ことしただけだろ、気にすんな』っと。はい送信」



小町「ぎゃーーー!!!」

八幡「お、おい!どうした小町!」

小町「ゆ、結衣さんから、きょ、恐怖のメールが!!」

八幡「あの…馬鹿。ったく、恐怖のあまりテンパって転送したのか?…『いいから早く俺にも転送しろ』っと」

113: cMVCB/0/0 2013/08/03(土) 13:29:59.89
「まねっこ」


ガラガラ
八幡「おう、由比ヶ浜だけか。雪ノ下はどした?」

結衣「あら比企谷くん、教室ぶりね。ゆきの…下さんならさっき遅れてくるって連絡が入ったわよ」

八幡「………。へぇ。珍しいこともあるもんだな。あいつが部活に遅れてくるなんてはじめてじゃないか?」

結衣「確かにそうね。なんかクラスの話し合いって言ってたよ…わよ」

八幡「あー…なるほどなー。J組って女子ばかりだからな、話し合いさせたら結論出ずに堂々巡りすんじゃないか?」

結衣「ヒッキーそれはひど…じゃなくて比企谷くん、それはひどいわよ。そういう言い方はやめたほうがいいわよ」

八幡「そうです、かっと」

結衣「………」

八幡「………」

結衣「ちょっとはつっこんでよ!!」

八幡「いや、相手にすんの色々めんどそうだなーって思ってな」

結衣「めんどいってなんだし!あたしすっごい普通だし!あたしほど相手にしやすい娘いないし!」

八幡「自分で言っちゃうんだ…。いやお前気づいてないかもしれんが、普段から相当めんどくさいぞ。一言で言えばめんどくさい女だ」

結衣「なんか傷つく言い方された!?」

八幡「で、なに?さっきのは何?雪ノ下のマネのつもりなの?」

結衣「あ、うん。考えたんだけどさ。ゆきのんって頭いいし、しゃべり方もなんか頭よさげじゃない?だからゆきのんのマネすればちょっとは賢く見えるかもって思って」

八幡「はぁ~あ…」

結衣「これみよがしに、大きなため息をつかれた…!」

八幡「由比ヶ浜、いいか…俺はさっきこう言った『J組って女子ばかりだからな、話し合いさせたら結論出ずに堂々めぐりすんじゃないか?』」

結衣「うん、言ってたね」

八幡「これはな。結果から言えば、雪ノ下へのパスになってんだよ」

結衣「パス?」

八幡「そうだ。俺がこういえば雪ノ下なら例えば、そうだな」コホン

八幡「『あなた、考え方が古い古いとは思っていたけれど、そこまでひどい男女差別主義者だったとは思ってもみなかったわ。あなたの存在は人類の発展の妨げにしかならないのだし、そろそろお休みになったらどうかしら』とか、『めんどくさいのは女子に限ったことではないでしょう?とびきりめんどくさい人間というのが今私の目の前にいる訳だし。…あ、ごめんなさいね、比企谷くんはそもそも話し合いに呼ばれないもの…疎ましがられる以前の問題よね。浅慮だったわ、謝るわ』とかそんな感じだろ」

結衣「な、なんか声マネがまたうまくなってるし…」

八幡「つまりだな。俺の発言から「男女差別」的なニュアンスを嗅ぎ分けてるのは、お前も雪ノ下も変わらない。だが、その先の持って行きかたが根本的に違う」

結衣「持ってきかた…」

八幡「お前の場合、ただ単純に「ひどい」と断じてしまうだけだから、会話はそこで終了だ。だが雪ノ下の場合、それを相手を攻撃する材料として昇華させる。一つの単語を分解し、肉付けし、関連ワードと結びつけるんだ。教えていないはずのことを知っていれば「ストーカー」、そこから「警察に通報」、「社会的に抹殺」みたいな感じにな。ようは超高性能コンピューターでやる連想ゲームみたいなもんなんだろうな、つっても俺じゃあいつの考えは読み切れんけど」

結衣「なんか、難しくてよくわかんない」

八幡「まぁ、それが答えだろ。あいつはああいう言葉遣いをするから優秀なんじゃない、優秀だから、ああいうしゃべり方をしても、まだ許されるんだ。あれであいつが馬鹿だったら、ただの口の悪い、性悪女だぞ」

結衣「ヒッキーその言い方ひどいし!」

八幡「事実だろ。別に悪く言ってるわけじゃない、ようは人それぞれっつーこった。お前は雪ノ下みたいにはなれないが、雪ノ下だっておまえみたいにはなれんだろ。ようは人それぞれ、変に変えようとすりゃ歪みも出る。それはお前の良さってやつをただ損ねちまうだけなんじゃねえの」

結衣「あたしの良さ…?そんなのあるのかな?」

八幡「あるんじゃねえの?ま、ちょっとどでかい馬鹿さ加減って幕で覆われちゃいるけどな」

八幡「ま、見えるやつには見えてるだろ」ボソッ

結衣「ヒッキーうっさい!!てかマジキモい!ありえない!馬鹿にしすぎだからぁ!……ありがと」

115: cMVCB/0/0 2013/08/03(土) 14:20:02.82
「りれきしょ」


雪乃「由比ヶ浜さん、それは…履歴書を書いているのね」

結衣「うん!この前言ってたバイトしてみようと思って!」

八幡「あぁ、コンサートスタッフのやつか。確かにはじめの一回は履歴書必要だったよな」

雪乃「由比ヶ浜さん、あまり字がはみだしたりしないように気をつけなさいね。字は下手でもいいの、丁寧に書きなさい?」

八幡「お前はたかしの母ちゃんか」

結衣「大丈夫大丈夫!前にバイトした時も履歴書書いたから!慣れてるから!あとは写真を張って…っと」

雪乃「ちょっと待ちなさい」

結衣「え?」

雪乃「え?じゃないわ。あなたそれ以前二人でとったプ、プリ、プリキュア?、じゃない」

八幡「惜しい。プリクラな。ていうかお前、前にも履歴書書いたことあんだろ?そん時もまさかプリクラ張ったの?」

結衣「んーん。そん時はちゃんと証明写真つかったよ?」

雪乃「じゃあ、なぜ今回はこんなものを使おうと考えたのかしら」

結衣「え!?だってこれ二人ともよく写ってるし、仲良し!って感じがするでしょ?あたしのお気に入りなんだー」

雪乃「由比ヶ浜さん…」

八幡「いやいや、だからってなんでプリクラ張んの?どんだけ発想が飛躍してんだよ、お前は伸び盛りのベンチャー企業かなんかなの?あと雪ノ下、お前も仲良しって言葉だけで説得されかけてんじゃねえよ。由比ヶ浜に甘過ぎだろ」

雪乃「はっ!そうよ由比ヶ浜さん、そもそも私まで写っているのが問題じゃない。初めて見る人はどちらが由比ヶ浜さんか、わからないでしょう?」

八幡「まぁ、一度会えば馬鹿っぽさで判断できるだろうけどな」

結衣「うっさい!でもゆきのんの言うことももっともだね。これは書き直さなきゃ…」

八幡「しかしお前、前に履歴書書いた時は普通だったんだろ?日に日に知識と常識が漏れ出して行ってんじゃねえの?どっかに穴あいてるかもしれないから、一度検査してもらったほうがいいって」

結衣「ヒッキー!!何言ってんの!?」

雪乃「そうね…。仮にそうだとすると、高校になぜ受かったのかも説明ができてしまうわ。比企谷くんにしては冴えているわね」

結衣「ゆきのんまで!?うわーん!二人ともひどい!馬鹿にしすぎだからぁ!!」

雪乃「そうでもないでしょう?」

八幡「(言っちゃったよ、こいつ)」

120: cMVCB/0/0 2013/08/03(土) 16:01:43.43
「てすと」




結衣「ゆきのーん!!」

雪乃「いきなり、どうしたの、騒々しい」

結衣「これぇ!みてみて!」

雪乃「これは…テスト…?……!?こ、これは本物なの!?由比ヶ浜さん!?」

八幡「なんだ、雪ノ下までそんな慌てて…。これ、今日返却された数学の小テストじゃねえか…って64点!?由比ヶ浜が64点!?」

結衣「ふふーん」

雪乃「これは…夢でも見ているのかしら…。由比ヶ浜さんが数学のテストで…いえ、テストと名のつくもので6割を超えてくるだなんて予想していなかったわ…。よく…頑張ったわね、由比ヶ浜さん」ニコ

結衣「ありがとう!!ゆきのーーん!!」ガバッ

雪乃「………」ナデナデ

八幡「まじかよ…なんか今日三浦たちがいつもにましてうるさかったのはそのせいか…。ほんと明日は槍でも降るんじゃないの?いくら答えが選択式つったって…ん?選択式?」ペラッ

八幡「………」ペラッ

八幡「なぁ由比ヶ浜…一つ、聞いていいか?」

結衣「え…?なに…?」

八幡「おまえ途中式はどこにあんの?表にも裏にもほとんど書いた形跡がないんだが」

結衣「え…それは……。その、別の紙で計算して、こ、答えだけ移して」

八幡「いや、あの時机に出していいのは、このテストの紙と筆記用具だけだったろ」

結衣「あ、えっと、それは…その」

八幡「まあ「選択式」だからな、答えがあってさえいれば点数はでるけどな」

結衣「……」

雪乃「由比ヶ浜さん、離れてもらえるかしら」

結衣「ゆきのん!?」

雪乃「あなたがカンニングだなんて卑劣なマネをしただなんて、私は思ってはいないわ。ただ…理由を聞かせてもらえるかしら」

結衣「うう…、そ、それはその」

雪乃「………」

結衣「…で…いたの」

雪乃「え?」

結衣「全部勘で書いたのぉ!!」

八幡「はぁ!?勘!?」

結衣「ほとんど分かんなかったから、残りは全部勘で答えたの!!そしたらなんかいっぱいあたちゃって!!」

八幡「マジかよ、勘で書いて6割あたったのかよ。お前野生の勘鋭すぎだろ、視力といい、もうお前群馬にでも行ってアマゾネスにでもなったほうがいいんじゃないの?」

結衣「アマゾネスってなんだし!!てかなんで群馬!?」

雪乃「…もう、いっそあなたは勉強は諦めてその運の良さを磨いた方がいいかもしれないわね…センター試験はマークシートなのだし…奇跡が起こるかもしれないわ」

八幡「だな。俺だってわかんないところは全部埋めたけど、9点だったからな。由比ヶ浜、お前の運の良さは誇っていいぞ」

結衣「うわーーん、なんか今日は二人が妙にやさしい!!馬鹿にされたほうがましだからぁ!!生暖かい目でみないでよぉ!!」


122: cMVCB/0/0 2013/08/03(土) 17:43:03.67
「ついったー」


結衣「ねぇねぇ2人ってツイッターってやってる?」

雪乃「やってないわ」

八幡「やってねえな」

結衣「ええ~?やろうよー!楽しいよツイッター!?」

雪乃「いやよ。今のメールですら面倒くさいのに、これ以上負担は増やしたくないわ」

八幡「だいたいああいうのは、リアルが充実してる連中がネット上でもつながるためにやるもんだろ。俺みたいのがやってもネット上でもボッチになるだけだっつーの」

結衣「そうかなぁ?新しい友達とか増えるかもしんないよ?」

八幡「いらんいらん、そんなうっすい友達こっちから願いだっつーの」

雪乃「だいたいツイッターて最近よく事件になっているじゃない。そういうのは大丈夫なの?」

結衣「へーき、へーき。あたしがつぶやくのって今日何食べたーとか、誰と遊んだーとかそういうのばっかだし」

八幡「見事に何の生産性もないな。まぁつぶやくのは勝手だけど、個人情報につながる情報つぶやいたり、顔写真あげたりすんなよ?出会い系に勝手につかわれたりすんぞ」

結衣「大丈夫、大丈夫。これでもあたしネットリテラシーはしっかりしてるほうだから」

八幡「お前の口からネットリテラシーとかいう言葉が出てきたのがびっくりだよ…」

結衣「実はさっきねー、昨日とったうちのペットの可愛い写真をアップしたんだよ?ええと、ほらほらゆきのんの携帯でも見られるよ!ほらほら!」

雪乃「ちょっと、由比ヶ浜さん!勝手にいじるのは!?………。これが可愛いペットの写真…なのかしら…」

結衣「うん!!可愛いでしょ!!うまく撮れてね!お気に入りなの!!」

雪乃「そう…いえ…人の好みは千差万別だし、付き合い方は人それぞれだと思うから、それをとやかく言うつもりはないのだけれど」

八幡「まぁお前は、苦手だもんな。でもさがしゃあ猫の写真とかもあんじゃねえの?」

雪乃「………」ジロリ

八幡「なんで睨むんだよ…」

結衣「えー?そんなに変かなぁ……。ゆきのんが犬苦手なのは知ってるけど、サブレの写真、結構うまくとれ…ってぶぅえへえへぇ!」

八幡「お、おい。大丈夫か、なんかあったのか?」

結衣「ヒッキーごめん…こ、これ」

ゆいゆい yuiyui0618

あたしんちの可愛いサブレちゃんでーす!宜しくd(ゝ∀・*)ネッ!!
すっごい甘えん坊で、よく色々なところをペロペロしてくるの!゚.+:。(〃ω〃)゚.+:。 キャァ♪
いっつもいっつもヾ(  `-ω)ω<*) ムリヤリチュッ♪
もうだいしゅき━・:*(〃・ω・〃人)*:・━!!


八幡「俺の写真じゃねええかあああああああああああああああああ!!!」

八幡「はやく消せ!すぐに消せ!!間に合わなくなってもしらんぞ!!」

yumiko-2F
なにこれ、ユイこれヒキオじゃん
ebina-bina
ペロペロだなんて、やだ///ユイったらダ・イ・タ・ン!
tobe-tobe
まじかー、ヒキタニ君まじパナいわー!乗り換えんのはやすぎっしょ!!
yamato-senkan
これからはペット系だよな!
Oh-Oka
え…ユイさんマジなんですか…?
H・H
ユイ、間違えたんならすぐ消したほうがいい。顔写真はまずいぞ

八幡「つつぬけじゃねえええかあああああああああああ!!!お前らネットリテラシーどこいっったああああああああああ!!こいつら名前間違えてるだけで本名しってたら、さらされてんぞおおおおおおおおお!!!」

結衣「ヒッキーまじごめん!!!あたしが馬鹿だったぁぁ!!すぐに消すからあぁあああ」

雪乃「やっぱり、ツイッターなんてしなくて…正解ね…」

126: cMVCB/0/0 2013/08/03(土) 18:44:37.28
「ついったーおまけ」

H-Komachi-machimachi
ユイさんありがとうございます!うちの駄犬で良ければいつだってもらってやってください!掃除、洗濯、料理機能に今なら菓子折りもついてくる!
あ、今の(略
megu-megu
仲がいいのはいいことだね!もしかして私、間違ってなかったかな??
kaori-mobmob
ていうか、こいつナルが谷じゃね?
isogo-mob2
オタが谷だろwww
izumi-mobrin
あいつソウブなのかwww
nakahara-moob
だれかRTしてやれよwww

八幡「中学のやつらにまで広がり出してんじゃねええかああああ!!!お前まじふざけんなあああ!!」

132: cMVCB/0/0 2013/08/03(土) 23:45:29.86
「こそだて」


結衣「さぁ、ワタルくん~。お散歩いきまちょうねー」

ワタル「あくるすき」

結衣「そうでちゅねー、お散歩楽しいでちゅねー」

ワタル「だえ」

八幡「………」

結衣「でちゅねー、どこいきまちょー」

結衣「って、ひ、ヒッキー!?」

八幡「……おう」

結衣「………」

八幡「……じゃあな」

結衣「ちょ、ちょっと待ったー!」

八幡「…んだよ?離せよ、俺本屋行くんだよ」

結衣「違う!違うから!」

八幡「別に法的に問題があるわけじゃないんだから、いいだろ。子供、大事にしろよ」

結衣「だから!違うの!法律が良くてもヒッキーに誤解されたらあたしが困るの!!」

八幡「……はぁ。で?その親戚の子供がどうしたんだ?」

結衣「だから、ちが…へ?ひ、ヒッキーあたしの子供だって勘違いしたわけじゃないんだ!?」

八幡「当たり前だろ。何言ってんだ?お前に三歳くらいの子供がいるなんて、どうやったら俺が思うっつんだよ。常識で考えろよ」

結衣「そっか…よかった…って、じゃあなんでさっき逃げようとしたの!?」

八幡「いや、お前に関わると面倒だなって思ってな」

結衣「ひどい!!ヒッキー!…や、やっぱりこないだのこと怒ってる?」

八幡「あ?それツイッターのこと言ってんの?なら気にすんなよ。三浦と大岡にガンつけられた上に、葉山からは哀れみの視線を向けられ、それを見た海老名さんが鼻血を流し、戸部から『サブレちゃ~ん』って呼ばれた上、家にかえりゃ小町に荷造りされてたくらいだからな、気にすんなよ」

結衣「やっぱり怒ってるし!気にすんなって二回いったし!……ほんとにごめんね。ヒッキー……」

八幡「あー……、いやまぁ、本当に気にすんな。男の顔写真なんて、女の顔写真に比べりゃなんの利用価値もないしな。ただまぁ、あの調子で自分とか雪ノ下の写真あげたりすんなよ?三浦とかにもよく言っとけ」

結衣「う、うん、ごめんね。ヒッキーありがと」

八幡「っ!ま、まぁ、そういうわけだから。俺先いくわ。じゃあな?ってあ?」

ワタル「ぱあもまあといっしょ、あくる」ギュー

結衣「わ、わたるく~ん?そ、その人はパ、パパじゃないし、わ、わたしもマ、ママじゃないよ」

ワタル「や、ぱぁとまぁいっしょあくる」ギュー

八幡「………。ま、そこの公園までなら本屋に向かう通り道だからな」

結衣「え……、あ!!うん!!」ギュウ

八幡「………」

結衣「………」

雪乃「………」

結衣「あれぇ!?え!?ゆきのん!?」

雪乃「…こんにちは。…さようなら」スタスタ

結衣「ちょ、ちょっとまってゆきのん!これは違うの!!訳があるの!!まってゆきのん!!ゆきのおおおおおおおん!!!」

八幡「(なんなの。今日に限ってエンカウント率高すぎでしょ。乱数調整どうなってんの…)」

142: cMVCB/0/0 2013/08/04(日) 11:50:54.46
「めいたんてい」



コンコン
雪乃「どうぞ」

めぐり「失礼しま~す」

結衣「あ、城廻先輩!」

めぐり「こんにちわ、由比ヶ浜さん。今日も元気そうだね」

結衣「はい!元気です」

めぐり「うんうん、いいねいいね。元気が一番だよ~、雪ノ下さんも、比企谷くんも元気そうでなによりだよ~」

雪乃「はい、ありがとうございます。それできょー」

めぐり「あ、比企谷くんちょっとちょっと」チョイチョイ

八幡「はぁ…なんでしょう」

八幡「(ていうか相変わらずこの人近いな)」

めぐり「みたよぉ?ツイッタぁー?」ヒソヒソ

八幡「え!?あ、あれはですね。色々事情がありまして…」

めぐり「またまたぁ、由比ヶ浜さんいい子だしー、可愛いんだから、大事にしてあげないと、ダメだよ?」ヒソヒソ

八幡「だから、本当にそういうんじゃー」

めぐり「それでね!雪ノ下さん、今日はまた相談があってきたんだ」

八幡「(って聞いてねえし)」

結衣「………」ジッ

八幡「んだよ?」

結衣「べつにっ!」プイッ

めぐり「実はね、文芸部から消えた本を見つけ出して欲しいんだ」

雪乃「はぁ、本、ですか」

めぐり「そうなの!文芸部の部長をやってる子がいるんだけど、その子に頼まれちゃって」

雪乃「しかし盗まれた本を捜す、というのは私たちにはちょっと…。それはもう警察の領分ですし、私たちの出る幕ではないのでは」

めぐり「その子あまり目立つのが好きじゃない子でね、できれば警察とかには伝えたくないんだって。それに盗まれたのも文庫本が数冊だから、もし伝えてもちゃんと動いてはくれないと思うし…」

雪乃「それは…。そうですね」

めぐり「おねがい!頼まれてくれないかな?」

雪乃「しかし、どうして私たちに?」

めぐり「実ははるさんにー、雪ノ下さんが手紙を見ただけで犯人から何から当てちゃったって聞いて!」

八幡「(あの人そのこと知ってるのかよ…。平塚先生が自分で言ってまわるとは思えんし、まじで草でも放ってんじゃねえの…)」

雪乃「姉さんに…?……なるほど。そういうことならお話は彼が伺います。解決したのはこの男ですから」

八幡「え、ちょ、おま。俺が聞くの?」


143: cMVCB/0/0 2013/08/04(日) 11:59:23.21
めぐり「比企谷くんが名探偵だったんだね!!実はやる子だって思ってたよ~。ね、お願い、頼まれてくれないかな?」ギュ

八幡「あ…いや、あの。解決したって言っても流れでたまたまそうなっただけっていうか…。別に犯人を追いつめたわけでもないので」

めぐり「ううん、犯人を探し出したいってわけじゃないからそれでいいの。その子としては先輩達から引き継いだ本がちゃんと返ってくればそれでいいって」

八幡「いやでも、見つかるかどうかなんて保証は全然できないっすよ?」

めぐり「うんうん、それでもいいの!」

八幡「はぁ…その…じゃあ、まぁやるだけなら…。なんで手ぇ離してもらってもいいっすかね」

めぐり「あ、ごめんね。私ついつい興奮しちゃって。これでもホームズとか読んだりするんだよ!」パッ

八幡「はぁ…そうですか」チラッ

結衣「………」ジトー

八幡「はぁ…それで、先輩たちから引き継いだ本って数はあるんですか?」

めぐり「うん、私も見せてもらったけど、ちょっとした図書室並みだよ~?蔵書は、歴代の卒業生達がどんどん寄贈していったものらしいの。自分の読んでいた本とか、お気に入りの本とか、後輩に読んでもらいたい本、とかね。まぁ、家に置ききれなくなった本を押し付けたなんてのもあったみたいだけど」

八幡「なるほど…」

めぐり「それでね。これが今回なくなった本のリスト、預かってきたんだー」

なくなった本リスト

アルジャーノンの花束を          ダニエル・キイス    早川書房
海底二万里(下)             ジュール・ヴェルヌ   新潮文庫
仮面山荘殺人事件             東野圭吾        講談社文庫
さよなら妖精               米澤穂信        創元推理文庫
斜陽 人間失格 桜桃 走れメロス 外七編 太宰治         文春文庫
ジュリアとバズーカ            アンナ・カヴァン    サンリオSF文庫
十五少年漂流記              ジュール・ヴェルヌ   新潮文庫
たんぽぽ娘                ロバート・F・ヤング  集英社文庫 コバルトシリーズ
吾輩は猫である              夏目漱石        新潮文庫


八幡「………」

八幡「なくなった本が何かすべて分かっているんですね」

めぐり「うん、文芸部で管理していた本も部の備品扱いになっていたからね。目録を作って全部管理していたみたいだよー」

八幡「じゃあ、目録と付き合わせてなくなった本を見つけ出したってことですか」

めぐり「うん、そうみたいだね~、すごい重労働だよね!」

八幡「(えらい他人事だな。まぁ他人事か)」

めぐり「文芸部も見た方がいいっていうなら、話しとくけどどうする?現場百遍っていうし!」

八幡「あー、いや。別に刑事じゃないんで、現場にいったところで何か分かるわけでもないと思いますんで、大丈夫です」

めぐり「…そっかー。うん、そうだね。でも見たくなったらいつでも連絡して?これ私のアドレス」

八幡「は…、はぁ。てか先輩名刺なんて持ってるんですね…」

めぐり「ふふーん。なにせ、生徒会長だからねぇ!あ、でももうすぐ『元』になっちゃうけどね」

結衣「………」

めぐり「あ!雪ノ下さんに由比ヶ浜さんも!名刺どうぞどうぞ!」

雪乃「はあ、どうも」

結衣「あ、ありがとうございます」

めぐり「あ、それじゃあ私ちょっと行かなきゃ行けないところあるから!またよるね。よろしくね、比企谷くん、雪ノ下さん、由比ヶ浜さん!」

145: cMVCB/0/0 2013/08/04(日) 12:22:54.91
八幡「相変わらずすごい人だよなぁ…」

雪乃「そうね…」

結衣「………」ムスー

八幡「お前はなんでむくれてんだよ…」

結衣「別に!だいたい、何!?手握られてニヤニヤしちゃって!ヒッキーの変態!キモい!スケベ!」

八幡「な!お前、別にニヤニヤなんかしてねえだろ!」

結衣「してたじゃん!このムッツリ!ムッツリスケベ!!」

八幡「おま…言うに事欠いてだなぁ」

雪乃「言っておくけれど、あなた、本当にニヤニヤ気持ち悪かったわよ。由比ヶ浜さん、これに懲りたらもう胸元が強調されるような服装をするのはやめなさいね。この気持ち悪い男がいつもチラチラ見ているわよ。本人は気づかれていないつもりだったんでしょうけど」

八幡「おい、おまえ、やめろ。まじで」

結衣「ふーん…、いっつもチラチラ見てるんだ…。ふーん…」

八幡「いや、みてない。ぬれぎぬだ、やめろ」

結衣「ふん…ま、いいけど…!ヒッキー、まじきもい」フフッ

151: cMVCB/0/0 2013/08/04(日) 13:27:14.88
雪乃「まぁ、それはいいのだけど。あんなこと引き受けて何か策はあるの?」

八幡「はぁ!?お前が押し付けたんだろうが、なんなのその言い方」

雪乃「別に私は引き受けろだなんて一言も言っていないわよ。どこかの男が勝手にハニートラップに引っかかって、引き受けてしまうだなんて完全に想定外だわ」

八幡「ぐ…。反論できねぇ…」

結衣「はにーとらっぷ?はにとー?」

雪乃「一言で言えば色仕掛けで相手から情報を得たりする行為のことよ、由比ヶ浜さん。女スパイなんかが使うって言われているわ。性欲に忠実な獣のような男が引っかかるのよ、この男みたいな」

八幡「おい、倒置法で人を揶揄すんのやめろ。だいたいそれじゃめぐり先輩が某国のスパイみたいだろ、訂正しろよ」

雪乃「しかし、このリストの本にはなんの統一性もないわね」

八幡「おい。……まぁそうだな。そもそもなんでこの本を盗んだのか、だ」

結衣「読むためじゃないの?」

八幡「いや、その可能性はないわけじゃないが低いだろうな」

結衣「どうして?」

八幡「そもそも、このリストにはパッと見でわかる変なところがあるんだ」

雪乃「ジュール・ヴェルヌね」

八幡「ああ。これだけ2冊入ってるってのもあるが、問題は海底2万里のほうだ」

結衣「海底二万里…。あ!これだけ下になってる!」

八幡「ああ、海底2万里はかなり長いんだよ。リストに乗ってる新潮文庫じゃなくて、岩波書店版がうちにもあるけど、あれも上下巻に分かれてる」

結衣「そっか…なのに下だけ持って行くのは…」

八幡「ああ、ちょっと不自然だろ?それに…」

八幡「リストの本は…『さよなら妖精』…はともかく。どれも結構有名なのが多い、図書館に行きゃだいたい読めるんだよ。芥川とか太宰、たんぽぽ娘なんかもそうだが、著作権がきれててネット上で読めるやつもある。読むだけならわざわざ盗み出すことはない」

雪乃「そうね…とするとやはり読む意外で本を何かに使ったということになるのかしら…」

八幡「本読まない代表の由比ヶ浜?読む以外で本を使うとしたら何に使うと思う?」

結衣「変な代表にすんなし!!うーん、例えば…重ねて枕にする?」

八幡「お前は摩耶花たそかよ」

結衣「誰?それ?」

八幡「いや、いい。他には?」

結衣「うーーん、家具の下にしいて高さを調節?」

雪乃「本への冒涜ね…」

八幡「他は?」

結衣「服の下につめて防弾チョッキ!!」

八幡「ああ、もういいわ」

結衣「自分が聞いたんでしょ!?じゃあもう、盗んだんだから売ったんじゃないの!?」

雪乃「由比ヶ浜さん、これらは全部文庫本よ?売ったって二束三文だわ」

八幡「…………」

結衣「ヒッキー、どうしたの、怖い顔して?」

八幡「いや、確かにリストを見た時から引っかかってることはあるんだ…。だがそれが何かがわからん。どっかで見た気がすんだよな。うーん………!」

結衣「なんか思いついたの?」

八幡「……いや。すまんちょっと図書館行ってくる」

結衣「え?どうしたの、急に?」

八幡「憶測で話を進めんのは危険だ。リストの本が本当にうちの図書館で読めないか確認してくる。ちょっと待っててくれ」
ガラガラ、ピシャ

154: cMVCB/0/0 2013/08/04(日) 14:46:45.84
ガラガラ

結衣「あ、ヒッキーおかえりー。本あった?」

八幡「おう、全部あったぞ。米澤穂信も『インシテミル』どころか『氷菓』まであったわ。うちの図書館品揃えすげーわ、そりゃ『ぐりとぐら』もあるわけだよな」

結衣「またその話~?」

八幡「あとあれだ、引っかかってた理由もわかった。やっぱり由比ヶ浜お前の考えが正しかった」

結衣「え?じゃあ枕にしたの?」

八幡「ちげーよ。なんでそうなんだよ。売るために盗んだって話だよ」

雪乃「売るために…?でも、リストの本は全部文庫本でしょう?」

八幡「ここにその答えがある。『ビブリア古書堂』、だ」

雪乃「『ビブリア古書堂』…、名前は聞いたことある気がするけど。読んだことはないわね」

八幡「だろうな。お前が読んでたら多分一発で答えにたどり着いてたはずだ」

雪乃「………。それはどうも」

結衣「びぶりあ、びぶりあ…あ!!思い出した!!前にドラー」

八幡「おい!!その話はすんな!!」

結衣「え…でも…」

八幡「黒髪、ロング、ストレート!栞子さんのイメージは決して崩されちゃいけない神域なんだよ!!いいか、ドラマなんてなかったんだ!!」

結衣「なに…ヒッキー…急に。きもいし。っていうかヒッキー、黒髪のロングが好きなの…?」

雪乃「………」フ…

八幡「あ?別にんなこと言ってねえだろ。イメージの問題だよ、イメージの」

雪乃「………。それで?気持ち悪い比企谷くんは、その本から何を導きだすというのかしら」

八幡「いちいち罵倒語を挟むなよ…。あれだ、この物語は本にまつわるちょっとした謎とかを、栞子さんが持ち前の観察力でー」

雪乃「そんなことは聞いていないわ。結論だけ言ってもらえるかしら」

八幡「……。リストの本の中にこの作品の中で紹介されている本がある『ジュリアとバズーカ』と『たんぽぽ娘』だ。特に『集英社文庫 コバルトシリーズ たんぽぽ娘』は作品中でそのまま、高額文庫として紹介されてる」

結衣「高額って…どのくらい高いの?」

八幡「ああ、それもamazonで調べてみた。『たんぽぽ娘』のほうは今現在で49800円から69800円の間で値がついてる。『ジュリアとバズーカ』のほうも12998円から2万円の間だな」

結衣「文庫本一冊で!?」

八幡「ああ。多分、犯人も俺と同じで『ビブリア古書堂』を読んでたんだろうな。そしたら文芸部の部室で本に出てくるのと、同じもんを見つけちまった」

雪乃「それで盗んだ…ということね。他の本を盗んだのは偽装工作ということかしら」

八幡「だろうな。本を隠すには、本の中ってことだ。実際俺たちも、盗まれた本の関係性なんつーことを考えてたわけだしな」

雪乃「…現実は小説のようにはいかないのね」

結衣「でもさでもさ、だったらもう犯人は本を売ってお金に買えちゃったんじゃないの?」

八幡「いや、その心配はないと思うぜ」

結衣「どうして?」

八幡「いや、本を売ったりする古物取引っつーのは、盗難物が取引されるのを防ぐため、住所とか名前、それに身分証明書とかださないといけないんだよ。古本屋なんて高校生にゃ敷居が高いし、そんな高校生がいきなりあんな高額文庫を持ち込めば、店員の記憶に残っちまう可能性も高いだろ?かといってブックオフなんかに持ってっても金にはならんからな」

雪乃「でも犯人がそんなことを気にしない人間である可能性もあるでしょう?お金にしようと窃盗したわけなのだし」

八幡「いや、まあ、それはあれだ…。実を言うと、怪しい奴を見つけた」

155: cMVCB/0/0 2013/08/04(日) 15:39:48.46
八幡「これを見てくれ」

結衣「それって…さっき見たamazonの『たんぽぽ娘』のページじゃん」

八幡「ああ、この文庫本を出品してる奴らの中に新規出品者が二人いる」

結衣「どういうこと?」

八幡「ようはこいつらは、これまでamazonを使って本を売ったことが一度もない。古本屋とかなら当然何十件、何百件、何千件と取引実績があってもおかしくないからな。この二人は個人である可能性がある」

結衣「でもこういうのってお店じゃないと出品できないんじゃないの?」

八幡「いや、実はそうじゃない。こうやってamazonの出品…アマゾンマーケットプレイスっていうんだが、これは実際は法人じゃなくても登録できる。表示されてるなんとか書店なんつーのは、ニックーネームみたいなもんにすぎないんだ」

八幡「もちろん、実店舗を持っている連中はそれに名前をあわせるし、結構大きな企業も参入したりしてるけどな。ただそれと同じ土俵で個人が商品を販売することが可能なんだよ」

雪乃「やけに詳しいのね」

八幡「ああ、まぁな。実をいうと中学ん時はここで本売ったりしてたんだよ。送料込みで定価の100円引きとかでも、結構買ってくれたりするからな。ブックオフみたいなとこに持ってくより全然いいし、ヤフオクみたいにやり取りしないで済むしな。あ、ちなみに店舗名は『ブックス小町』だった」

結衣「いちいちシスコン挟まなくていいからぁ!」

雪乃「それで?その二人が怪しいというの?」

八幡「ああ、まぁ一人は埼玉だからな完全にシロだ。ただもう一人の出品者は千葉のやつなんだよ」

結衣「そ、それじゃ」

八幡「ああ、気になって見てみたら同じ出品者が『サンリオSF文庫 ジュリアとバズーカ』も出品してるんだよ。このタイミングで高額文庫…しかもこの二冊を、取引実績のない千葉のやつが出品してんだ。まぁかなり怪しいよな」

雪乃「確かに…怪しいけれど、決め手にはかけるでしょう?何か策でもあるの?」

八幡「カマをかける」

結衣「かま?どういうこと?」

八幡「確かにこの出品者は連絡先が非公開になってるから、そこから調べることはできないんだが、メールは送れるんだよ。在庫とか状態を確認するように用意されたアドレスがな。これはamazon側で暗号化されてるから、メールアドレスそのものはわからんが内容そのものを送ることはできる」

雪乃「間違っていたらどうするの?問題になるわよ」

八幡「大丈夫。その時は千葉に住む無実の人間が、ただ意味のわからない問い合わせメールを受けるだけだ」

結衣「だけって…」

雪乃「………。そう、相変わらず強引な手段ね。まぁいいわ、あなたが受けた依頼なわけだし、あなたの気に済むようにしたらいいわ」

八幡「ああ、そうさせてもらう。ま、せいぜい文章は工夫するさ。犯人しかわからない情報をふんだんにもりこんで、な」

翌日


めぐり「もうほんと助かったよ~!文芸部の子が今日部活にいったら、部室のドアの前に本が入った袋が置いてあったんだって!」

結衣「ヒッキーの考え当たってたんだ!」

めぐり「もう~!すごいよ比企谷くん!ほんとに名探偵だね!」ガシッ

八幡「いや!その!たまたま運が良かっただけなので!だからその、手は!」

めぐり「謙遜しない!謙遜しない!ほんとにびっくりしてるんだよ~!あ、そうだ~、今度お礼にーなんかおごってあげるね!!」ブンブン

八幡「いや、ほんとに!そんなんじゃないんで!全然気にしないでください!マジで!」

めぐり「うんうん、天狗にならないのも名探偵の資質だよね!!いいねいいね、最高だよ~君~、かっこいいよ~?」ギュウウ

八幡「いや、だから!」

めぐり「雪ノ下さんも、由比ヶ浜さんもありがとね~!!ほんとに相談して良かったよ!」

結衣「い、いえ!」

雪乃「お気になさらず」

めぐり「それじゃあ、三人共!!また何かあったらよろしくね!」

ガラガラ、ピシャ


八幡「やれやれ…」

結衣「………」

雪乃「………」

八幡「なんなのお前ら、怖い、怖いよ。殺気立ちすぎだろ、赤と青のオーラみたいの出てんぞ」

雪乃「ふぅ…。まあいいわ」





雪乃「さぁ比企谷くん。本当のことを話してもらえるかしら?」

八幡「………。何言ってんだ雪ノ下?」

結衣「ゆ、ゆきのん?どういうこと?」

雪乃「比企谷くんは、私たちに隠し事をしている。そうよね?」

八幡「なにを根拠にそんなことを…」

雪乃「私は昨日帰った後、例のマーケットプレイスについて調べたわ」

八幡「………」

雪乃「既にその時には出品は取り消されていたけれど、興味深いことがわかったわ」

結衣「興味深いこと?」

雪乃「ええ、連絡先を非公開にしている場合、住所はまったく表示されないのよ。都道府県だろうとね」

八幡「それが、なんだよ」

雪乃「あなたは昨日出品者は連絡を非公開にしている、と言っていた。でも出品者が千葉の人間だとも言っていたわ。あら?矛盾しているわね?」

八幡「そんなこと言ったか?」

雪乃「言ったわ。あなた、私の記憶力がいいのは知っているでしょう?下手な言い逃れはやめなさい」

八幡「………」

雪乃「それに昨日のあなたはやけに自信ありげだった。根拠があんなに薄いにもかかわらず、ね」

雪乃「私はこう考えているわ。出品者の連絡先は『非公開』なんかになってはいなかった。あなたは犯人の住所を知っていたでしょう?だからあんなに自信を持って行動することが出来た、違うかしら?」

八幡「………」

雪乃「沈黙は肯定ととらせてもらうわよ。それに図書館からの帰りもやけに遅かった」

結衣「で、でも、本を一冊一冊調べていたらあのくらい時間かかるんじゃないの」

雪乃「この男がそんな面倒くさいことを進んでやるわけがないでしょう?楽をするためには努力を惜しまない、なんて豪語する男なのよ?図書委員に頼むこともできるし、検索用PCでどの本があるかくらいは検索することくらいできるわ。それに調べたと嘘をつくことも、ね」

八幡「……っ!」

雪乃「私は今日の昼休み図書館に行って調べてきたわ。結果『さよなら妖精』はうちの図書館にはなかったわ。確かに『インシテミル』や『氷菓』はあったけれど。つまりあの時、比企谷くんは別のことをしていたの、そうでしょう?」

八幡「それはだな……。その、なんだ。……はぁ…降参だ」

結衣「ヒッキー…!?」


雪乃「さぁ、すべて話してもらうわよ」

八幡「雪ノ下の言う通りだ。例の出品者の住所は公開されてた。最初からな」

結衣「ヒッキー…」

八幡「最初は本当に高いのか確認して、あとはヤフオクにでも出品されてないか調べるつもりだったんだけどな。まさかいきなり当たりを引くとは思わなかった」

八幡「住所はうちの学校の近所だったよ。バスか、下手すりゃ徒歩でも通えるくらいのな。それでほとんど確信したが、あの時はその確認をとりに行ったんだ」

結衣「確認ってどうやって?家に行ったの?」

八幡「違う。平塚先生を通じて確認した」

雪乃「まったく…あなたにもだけど、平塚先生にも呆れるわね。そんなことを生徒に漏らすだなんて」

八幡「いや、先生はそんなことしてない。ただ名簿を出したまま煙草を吸いに席をはずしてな、その隙に俺が盗み見ただけだ」

雪乃「はぁ…。まぁ、そういうことにしておくわ。それで?」

八幡「まぁ、住所は一致したよ。めぐり先輩と同じ三年生。つい最近、文芸部を引退した人だった」

結衣「犯人わかっちゃってたんだ!」

雪乃「それで、犯人が分かっていながらどうして捕まえようとしなかったというの?」

八幡「いや、まあ。なんだ。そいつも3年だしもう受験だからな。今の時期に事件にでもなれば受験に差し障りがでるだろ?」

雪乃「そんな理由で犯罪者を逃がしたとでも言うの?甘いのね」

八幡「別に、そうじゃねえよ。ただこれで受験に失敗すりゃ、確実に逆恨みされんだろ?部活動でそんな恨み買うなんてあわんだろうが」

結衣「じゃあ、ヒッキーはあたしたちに恨みが来ないようにしたの?」

八幡「ばっか言え。俺は自分が一番可愛いんだよ。自分を守っただけだ」

雪乃「本当に素直じゃない男ね。まぁ、そういうことにしといてあげるわ」

八幡「だいたいだな。依頼は『犯人を捕まえる』ことじゃなくて、『本を取り戻す』ことなんだよ。別に犯人を追いつめる必要なんてこれっぽっちもないじゃねえか」

雪乃「…そうね。まぁ、今考えれば依頼人は最初から犯人分かっていたのかもしれない」

結衣「え!?そうなの!?めぐり先輩が!?」

八幡「違う。めぐり先輩に依頼した、文芸部のやつだ。うちもそうだが、部室に入るには職員室で鍵を借りなきゃいけないから、鍵を壊しでもしない限り中には入れない。だから部室で盗みを働ける人物なんて、現役の部員か、元部活関係者、ようするに出入りしても疑われない人間でしかありえねぇんだ。仮に人がいない隙をみて忍び込んだとしても、盗まれたのは本、しかも高額文庫だ、例えばカメラみたいに忍び込んですぐ簡単に値段が高いと分かるもんじゃない。つまりは事前にそこに高額文庫があったことを知っていた身内の犯行って可能性ははじめから高かったんだ」

結衣「そっか…」

八幡「犯人であるとの確証を持てなかったのか、確証はあっても攻められなかったのかは知らんけどな。外部の人間に解決してもらう、のが一番いいって考えたんだろ。自分は関わっていないって体でな。だからわざわざめぐり先輩を通して依頼してきたんだ、その証拠に本人は顔一つださんだろ?」

結衣「むぅ…、そっか…。でもなんかそれってやーな感じだね」

八幡「別に、まあいいんじゃねえの?ちょっとした気分転換にもなったし、このまま総武高校の汚い折木を名乗るのも悪くない。省エネ主義はなかなか俺にもあっているしな」

結衣「まーた、なんか変なこと言い出した!だいたい折木って誰!?」

雪乃「比企谷くんが言っていた『氷菓』の主人公ね。それにしても自分に『汚い』という形容詞をつけてしまうあたり、さすが比企谷くんだわ」

八幡「まぁな。あ、そうそう。お前の推理、一つだけ間違ってるぞ?」

八幡「犯人はな。住所を非公開にしていたわけじゃない。基本設定じゃ住所は表示されないんだ。犯人は、ご丁寧に住所が「表示される」ように設定してあったんだよ」

雪乃「なぜそんなことを?」

八幡「さあな、ちゃんと説明を見てなかったか。そうしなきゃいけない、と思い込んでたのか、俺にはわからん。というより古本屋で住所を出すのは嫌で、ネットに晒すのは大丈夫だなんて感覚、俺には理解不能だ」
八幡「ただ、ツイッター時にも思ったんだがリア充ってやつは、ネットで平気で本名プレイをしやがる。葉山を除けば、アカウント名まで本名だったしな。まぁ、そういうのの延長上にあったって事かもな。知らんけど」

雪乃「相変わらず適当なのね…。まぁ、今回はあなたのお手柄ね。よくやったわね、褒めてあげるわ」

八幡「また、えらく上からだな。おい」

結衣「う、うーーー」

八幡「どうしたんだよ、由比ヶ浜。そんなむくれて」

結衣「ゆきのんもヒッキーもすごいのに。あたしだけ今回なんの役にもたてなかった…」

八幡「なんだ、そんなことか。いいんじゃねの?お前はいるだけ、で」

結衣「いるだけってなんだし!!あたしがそんな役立たずだっていいたいの!?」

八幡「ちげーよ、馬鹿。そういうこと言ってんじゃないんだよ馬鹿。わかれよ馬鹿」

結衣「馬鹿馬鹿いうなし!!わかるわけないでしょ!?意味わかんないし!!」

雪乃「そうね、由比ヶ浜さんは『いてくれる』だけで十分だわ」

結衣「うわーーん!ゆきのんまで!二人ともひどい馬鹿にしすぎだからぁ!!」

176: cMVCB/0/0 2013/08/04(日) 21:46:55.36
「だいろっかん」


結衣「今日はなんか部活早く終わったね!ゆきのん、これから何か用事でもあるの?」

雪乃「いえ、そういうのではないのだけれど。ただ少し嫌な予感がしたものだから」

結衣「嫌な予感って第六感ってやつ?」

八幡「おー、よく言葉がでてきたな由比ヶ浜。花丸をやろう」

結衣「いらないし!あたし小学生じゃないし!花丸で喜ばないし!」

八幡「まぁ、でもあれだな。雪ノ下が嫌な予感なんてもんで動くなんて、こりゃよっぽどー」

陽乃「はぁ~い♪ゆ・き・のちゃん!」

八幡「(あー、よっぽどきちゃったわー)」

雪乃「……はぁぁ。姉さん…」

陽乃「そんなおっきなため息つかないでよぉ?お姉ちゃん傷つくなぁ。せっかくこんなところで偶然出会えたんじゃない」

雪乃「偶然?必然でしょう?大方携帯電話のGPSで確認して、待ち伏せていたというところかしら。一体なんの用なの?」

陽乃「さっすが雪乃ちゃん!話が早いなぁ。めぐりから聞いたよ?最近いろんな事件を解決してまわってるんだって?」

雪乃「その話なら、あの男に聞きなさい。事件はほとんど彼が一人で解決しているようなものだもの」

八幡「(また俺にふんのかよ)」

陽乃「ありゃあ、ガハマちゃんにサブレちゃん!やっはろー!」

八幡「……どうも」

結衣「やっはろーです…ってえええ!?陽乃さん、なんで知ってるんですか!?」

八幡「(別に驚くことじゃねえだろ。むしろ知らなかったらそっちのが驚きだよ)」

陽乃「ええ?知ってるってなんのことぉ?うーん、それにしてもガハマちゃんの肌ってツルツル、プニプニだねぇ。サブレちゃんがいっぱいペロペロしてあげてるのかなぁ?」

結衣「そそそ、そんなんじゃないです!!」

陽乃「うんうん、仲がよくってよろしい!でもサブレちゃん、たまには雪乃ちゃんを相手してあげなきゃ、だめだぞ?ああ見えてー、雪乃ちゃんさびしんぼうなんだから」

八幡「はっはっはっはっは。んで、なんか用があって来たんじゃないんですか。雪ノ下さん」

陽乃「んー?」キョロキョロ

八幡「いや、なんで不思議そうな顔してあたり見回してるんですか」

陽乃「え~?だってこの場には雪ノ下が二人もいるもの~、ちゃんと雪乃ちゃんを雪乃って呼んであげるかー、わたしのことをはるおねーちゃんって呼んでくれないとわからないなぁ?」

八幡「いや、分かってるじゃないですか。呼び捨てが雪ノ下で、さん付けが雪ノ下さんでしょ」

陽乃「え~?比企谷くんたらわけのわからないことを言うねぇ?」

雪乃「わけのわからないことを言っているのは姉さんのほうでしょう。用事がないのならさっさと帰ってちょうだい」

陽乃「え~?でも~、ここって天下の往来だよ~?雪乃ちゃんが帰れ、なんて言える権限ないと思うんだけどなぁ?」

雪乃「そう。なら私たちが去るわ。行きましょう、由比ヶ浜さん、比企谷くん」

陽乃「あ~ん、言っちゃうの雪乃ちゃーん。お姉ちゃんはー、雪乃ちゃんの味方だから頑張ってねー。ガハマちゃんも優勢だからって油断しちゃだめだよぉ?サブレちゃんはお姉ちゃんをペロペロしたくなったらいつでも言うんだぞ♪」

結衣「あ、じゃ、じゃあ失礼します」ペコリ

テクテク

八幡「………ッス」ペコ

結衣「陽乃さん…何しに来たんだろうね」

八幡「……からかいに来たんだろ。個人的にはもう少し早くくると思ってたぞ。まぁお前みたいな馬鹿じゃなくてもあの人の考えは読めんだろ」

結衣「ヒッキー!!ひどい!馬鹿にしす…ぎでもないよね…うん……」

結衣「………オチつかないね……」

八幡「いちいち会話にオチもとめんじゃねえよ…、関西人かよ……」

198: cMVCB/0/0 2013/08/05(月) 01:13:26.47
「かわさき」





結衣「あれー?ヒッキーじゃん?」

八幡「お?ああ、由比ヶ浜か。珍しいな、お前が一人でファミレスにいるなんて。なにしてんの」

結衣「それこっちのセリフだしー。優美子たちと遊ぶ約束してたんだけど、急に風邪引いたって連絡が来ちゃって。ママには外で食べてくるって言っちゃったから、ここで食べようと思ったの。ヒッキーは?」

八幡「俺は小町と待ち合わせだ。あいつの塾が終わったら一緒に遊びに行くんだよ。たまには気分転換させてやらないとな」

結衣「あ!小町ちゃん来るんだ!ねぇ、あたしもここ座っていい?」

八幡「え~?」

結衣「そんな嫌そうな顔すんなし!」

八幡「だって小町と二人っきりの時間を邪魔されたくないんだけど~?」

結衣「言い方がキモいし!いいじゃん!時間までいるだけなんだから!」

八幡「え~?」

小町「およ?結衣さんじゃないですか!やっはろーです!」

結衣「あ!!小町ちゃん!!やっはろー!」

大志「お兄さん!お久しぶりっす!」

八幡「…………。お前なんだよ、誰だよ、誰もお前を求めてねえんだよ。マジで空気読めよ。ていうかお兄さんって呼ぶな。大気圏外まで第2宇宙速度でぶっ飛ばすぞ」

大志「ええ!?死んじゃうっすよ!大志っす!川崎大志っす!川崎沙季の弟の大志っす!」

八幡「知らねえよ。うるせえよ。お前まじ何なの、お呼びじゃねえんだよ。何で来たんだよ。ていうか誰なんだよ」

結衣「なんかヒッキーがすごいテンションになってる……!!」

大志「大志っす!川崎大志っす!!チャリで来たっす!!」

八幡「うるせえよ。何なんだよ。そういうこと聞いてんじゃねえんだよ。うまいこと言ったみたいな顔してんじゃねえよ。小町~!!何でこいつ連れてきたんだよ。大体誰なんだよ、こいつ!!」

小町「同じ塾の川崎大志くんだよ!大志「川崎大志っす!」ほら、志望校一緒だし。せっかくだから一緒にパーっと遊ぼうと思って!」

八幡「え~!?小町~!今日はお兄ちゃんとデートだって言ったじゃんか~!!あと大志は小町の言葉にかぶってんじゃねえよ、絞め落とすぞ」

大志「川崎大志っす!!死んじゃうっすよ!ってあれ!?誰だって聞かないんすか!?」

八幡「うるせえよ。それ持ちネタにしてんじゃねえよ。いい加減しつこいんだよ」

結衣「まぁまぁヒッキー。こんにちは、大志くん、だったよね?サキサキの弟さんの?」

大志「そ、そうっす!!大志っす!お、お久しぶりっす!!」

八幡「お前なんで、だったよねとか言ってんの?話聞いてた?今までの流れでほとんどこいつの名前の話しかしてねえだろうが」

結衣「ヒッキーうっさい!ちょっと確認しただけじゃん!ていうかちょっと頭に血ぃ登り過ぎなんじゃないの!?」

小町「まぁまぁ、早く座ってみんなでご飯食べましょうよ!!」

結衣「うん、そうだね!」

大志「お、お兄さん!お兄さん!」チョイチョイ

八幡「んだよ、手招きすんなよ。ていうかお兄さんって呼ぶなよ、で、なんだよ」

大志「や、やばいっす!天使っす!超絶美少女が来たっす!」ヒソヒソ!

八幡「………。なに、お前。それ由比ヶ浜のこと言ってんの?」ヒソヒソ

大志「そうっす!結衣さんっす!やばいっす!この前は緊張してまともに顔見られなかったっすけど。直視したらヤバいっす。しかもいい匂いがするっす!」ヒソヒソ!

八幡「………。お前匂いとか嗅いでんじゃねえよ。利根川に沈めんぞ。……お前あれだ。ちょっとあいつに常識クイズだしてみろ」ヒソヒソ

大志「え、常識っすか?ええと、結衣さん!」

結衣「ん?どしたの?」

大志「江戸幕府を起こしたのは!?」

結衣「織田信長!!」

大志「ヨーロッパにあるブーツの形をしていることで有名な国は!?」

結衣「メキシコ!!」

大志「北極と南極、陸地のあるほうは!?」

結衣「北極!!」

小町「うわぁ…」

大志「………」

結衣「………」

八幡「……どう?」

大志「あ、目が覚めたっす」パッチリ

八幡「だろ?」

結衣「なんかひどい!!」

大志「あ、でもおかげさまでなんか総武高受かる気がしてきたっす」

結衣「ひどい!!大志くんひどい!!みんなそろって馬鹿にしすぎだからぁ!!」

212: cMVCB/0/0 2013/08/05(月) 14:53:53.09
「ぷりくら」






小町「うーん!小町ゲーセンなんて久しぶりです!結衣さん!今日はがっつり遊びましょう!!」

結衣「うん!!私も今日は小町ちゃんの気分転換にばっちり付き合うよ!!」

八幡「それ、単にお前が遊びたいだけなんじゃねえの?つか3人で遊べるゲームつったら何があったかな」

大志「まってください!お兄さん!俺もいるっす!4人っす!RPGの基本パーティーっす!」

八幡「………」

大志「あれ!?どうしたっすか!俺っす!川崎大志っす!」

八幡「知らねえよ。うるせえよ。お兄さんって呼ぶんじゃねえよ。なんでお前がいつまでもついてくんだよ。お前は存在自体が出落ちみたいなもんだろうが、いつまでもしゃしゃってくんじゃねえよ」

大志「でも、俺も小町さんに誘われたっす!たまにはパーっと盛り上がりたいっす!!」

八幡「うるせえよ。親しげに小町さんとか呼ぶんじゃねえよ。ふざけんなよ。そんなに盛り上がりたいなら、花火にくくりつけて一緒に打ち上げんぞ」

大志「へっ、汚ねぇ花火だ。っすね」ニヤ

八幡「うるせえよ。別にうまいこと言ってねえんだよ。ドヤ顔すんじゃねえよ。カワサキスマイルかよ」

小町「まぁまぁ、お兄ちゃん、せっかくだからみんなで遊ぼうよ!」

八幡「え~~?小町~!!昨日、お兄ちゃんと二人~で遊ぶ~っていったじゃあん。お兄ちゃん小町と二人がいいんだけどぉ~!!」

結衣「な、なんかヒッキーがだだっ子みたいになり始めた…」

小町「それでどうしましょうか。2、2で別れてクイズゲームとか?」

結衣「それを小町ちゃんはスルーだし!!」

大志「チーム戦っすか!…でもそれだと結衣さんと組んだほうが圧倒的不利になっちゃわないっすか?はじめっからハンデ戦みたいなもんっす」

八幡「おー、今のはうまい事言ったぞ大志。褒めてやろう」

大志「へへ」

結衣「褒めなくていいし!!っていうか大志くんと会ったのこれで二度目だよねぇ!?ちょっと辛辣すぎない!?ヒッキーみたいになってるよ!?」

小町「あー…、じゃあクイズゲームはやめて、レースゲームはどうでしょう!チーム戦で一周ごとにドライバー交代するんです!」

結衣「あ!それ面白そうかも!」

大志「でもそれでもやっぱり結衣さんのチームが不利じゃないっすか?結衣さん、道路標識の意味とか分からず、片っ端からなぎ倒していきそうっす!」

結衣「ちょっと!!」

八幡「大志。今のはあまりうまくない」

大志「そ、そうっすか…」

結衣「なんかダメ出しされてるし…どういう関係性なの?あの二人…」

213: cMVCB/0/0 2013/08/05(月) 14:54:26.37
小町「あー、じゃあとりあえずプリクラ撮りましょうか!!」

結衣「あ!いいね!せっかくだし、記念にね!」

八幡「なに?二人のデートを邪魔された記念?」

結衣「ヒッキーしつこい!どんだけ根に持ってんの!?」

大志「………」

八幡「おい、どうした大志?」

大志「お兄さん、これはヤバいっす!緊急事態っす!エマージェンシーっす!」ヒソヒソ!

八幡「何がだよ。ていうかお兄さんって呼ぶなっつってんだろ。ふざけんなよ」ヒソヒソ

大志「びびび、美少女二人とプリクラっすよ!?あの狭い個室の中に入るんすよ!?」ヒソヒソ!

八幡「まぁ、俺もいるけどな。落ち着け大志」ヒソヒソ

大志「お、落ち着けないっす!同じ年齢の小動物系プリティー美少女と、年上のエロ小悪魔系美少女なんすよ!?これで落ち着いてるお兄さんのほうがおかしいっす!!」ヒソヒソ!

八幡「お兄さんって言うなって言ってんだろ。…よし、大志。今のうちに復習をしておこう」

大志「復習…っすか。あまり好きな言葉じゃないっす」

八幡「まぁ聞け。以前、お前のねーちゃん含め4人でファミレス行った時、小町がなんつったか覚えてるか?」

大志「覚えてるっす!『何があっても友達。絶対友達。霊長類ヒト科オトモダチ』って言われたっす!素敵な笑顔だったっす~!!」

八幡「よし受験生。これを現代語訳、できるな?」

大志「もちろんっす!『お前と恋人になることなんて、天地がひっくり返ってもないから安心しろ。サハラ砂漠に置き去りにすんぞ』っす!」

八幡「よし、よく出来た大志。今度は由比ヶ浜だ。さっきの出来事を思い出してみろ。あいつは何だった?」

大志「アホだったっす!!アホの子とかじゃなくて、アホだったっす!!」

八幡「上等だ大志。さて、お前はあの二人とこれからプリクラを撮る…さぁ、どう思う?」

大志「………」

大志「なんか急激に全然嬉しくなくなってきたのを感じるっす。血が冷たくなっていくのを感じるっす」

八幡「よし…、お前は資質があるぞ大志。これでお前は大丈夫だ。撮影の時は棒立ちで目の焦点をあわせない、これでいくぞ」

結衣「っていうか全部聞こえてるし!!2人してなんなの!?馬鹿にしすぎでしょ!?ほんと馬鹿にしすぎだからぁ!!」

219: cMVCB/0/0 2013/08/05(月) 21:49:57.95
「だぶるでぇと」





結衣「今日は楽しかったね~!」

小町「はい!小町も結衣さんと遊べて嬉しかったです!!」

結衣「でも、随分遊んだからお腹すいちゃったね。はやく料理…あ!きたきた!」

小町「はいはい、回してー回してー」

大志「了解っす!あ、これお兄さんの分っすね。どうぞっす!!」

八幡「………」

大志「あれどうしたんすか!!お兄さん反応薄くないっすか!?俺っすよ!?川崎大志っす!!」

八幡「うるせえよ。それは知ってんだよ。何でお前まだいんだよ。もういい加減帰れよ。なんで晩飯までお前と一緒に食わなきゃなんねえんだよ。川崎大志トリロジーかよ。そんな三部作、誰も求めてねえんだよ。ふざけんなよ。ていうかお兄さんって呼ぶんじゃねえよ」

結衣「すごい勢いだ…!」

大志「スペシャル・エクステンデッド・エディションも発売される勢いっす!」

八幡「知らねえよ。いらねえよ。お前との会話のノーカット版なんてどこに需要があんだよ、追加シーンとかいらねぇんだよ」

小町「ま、まぁまぁ、とりあえず冷めないうちにいただきましょうよ!」

結衣「そ、そうだよ!!ん!!美味しいね!!」

小町「そうですね!」

大志「んー!!たまの洋食は胃に染み渡るっす!うまいっす!」

八幡「…なに?お前あんまり洋食食わねえの?」

大志「そうっすね。最近姉ちゃんが晩飯作ってくれることが多いんすけど、和食派なんであまりハンバーグとか作ってくれないんすよ。久しぶりに食べると超うまいっす」

結衣「そうなんだ!!てかサキサキも料理するんだね!!和食派かぁー、確かに大和撫子って感じだもんね?」

八幡「どこがだよ。あれ、大和撫子じゃなくて侍だろ。肩があたっただけで斬り捨てそうな顔してんぞ。あと髪型とか」

結衣「あれポニーテールだし!ちょんまげじゃないし!!ていうか似合ってて超かわいいじゃん!!」

大志「あ、姉ちゃんって言えばなんすけど、お兄さんってうちの姉ちゃんとなんかあったんすか?」

八幡「あ?何かってなんだよ。別になんもねえよ、ていうかお兄さんって呼ぶんじゃねえよ」

大志「そうなんすか?うーん…」

結衣「どうかしたの?」

大志「いや、なんか最近、お兄さんの話するとうちの姉ちゃん顔真っ赤にして『あいつの話はするな』って怒るんすよ。だから何かあったのかなって思ってたんす」

結衣「顔を真っ赤に…?へぇ…」

八幡「…怖、怖いよ。お前目が怖ええよ。雪ノ下みたいになってんぞ」

結衣「ゆきのんに失礼だし!それにあたし全然怖くないし!なんか後ろめたいことがあるからそう感じるんじゃないの!?」

小町「た、大志くん!?その話をこの場でするのは、さすがの小町的にもポイント低いかなーって」

大志「え?そうすか?でも俺きになー、すいませんっす。もう言わないっす。だから睨まないで欲しいっす。怖いっす」

結衣「あ、てか怖いって言えばさー。みんなで撮ったプリクラ!!二人の顔が死んでる上に、美白効果でまっしろになってるからなんか不気味で怖いんだけど!ていうか二人の分もあたしが持ってるし、ちゃんと自分の分は持って帰ってよ!」

大志「あ、結構っす、大丈夫っす、いらないっす」

結衣「大丈夫とかじゃないし!!何その適当な断り方!?」

小町「え~?大志くんも持って帰ろうよ!せっかく今日のダブルデートの記念だよ~?」

大志「これデートだったっすか!!マジっすか!!もらうっす!持って帰るっす!」

結衣「なにその変わり身の早さ!?ていうか昼間はもっと素直な子だったよね!?この数時間で何があったし!!」

八幡「………」

結衣「はぁ…なんかもう、怒ったら熱くなってきたし…上脱ぐ」

大志「………!?」ゴクリ

大志「や、ヤバいっす!お兄さん!あれデカメロンが鈴なりっす!俺のポケットモンスターが暴れだすっす!」ヒソヒソ!

八幡「うるせぇよ。お前、胸見てんじゃねえよ、マジでぶっ飛ばすぞ。ていうかポケットモンスターはやめろ、実際にアレのスラングなんだよ。Chinpokomon知らねぇのか」ヒソヒソ

大志「マジっすか!知らなかったっす!」ヒソヒソ!

八幡「ていうかお前、今日一日で何を見てきたんだよ。確認するぞ、由比ヶ浜は何だった?」ヒソヒソ

大志「引くくらいのアホだったっす!」ヒソヒソ!

八幡「そうだ。そしてあいつは胸がデカい。さぁ受験生、導き出される解はなんだ?」ヒソヒソ

大志「………。ハッ!栄養が全部胸にとられてるっす!」ヒソヒソ!

八幡「そうだ。半年ほどあいつと付き合ってきて、あいつの胸は日に日に肥大していることを確認している。既に一回り半くらいはでかくなっているんだ」ヒソヒソ

大志「え!?お兄さんって結衣さんと付き合ってたんっすか!?なんか怪しいと思ってたっす!」ヒソヒソ!

八幡「………。うるせえよ。違ぇよ。そういう付き合うじゃねえんだよ。お前ヒモなしでバンジーさせんぞ、マジで」ヒソヒソ

大志「すんませんっす!」ヒソヒソ!

八幡「いいか。大志、次の問題だ。栄養を胸にとられている奴の胸が日に日にでかくなる。導き出される結果はなんだ?」ヒソヒソ

大志「日に日にアホに拍車がかかっていくっす!!!」ハッ

結衣「いきなり人の顔見て何言いだすし!!失礼だし!!」

大志「お、お兄さん!俺、目が覚めたっす!危うくまた道を踏み外すとこだったっす!!」

八幡「わかってくれたか大志!だが二度とお兄さんと呼ぶな、2chに住所晒すぞ」

結衣「もう、なんなのこの二人…超失礼だし!!」

駅前

大志「比企谷さんにお兄さん!今日は呼んでもらえてよかったっす!超楽しかったっす!」

小町「うんうん、小町も楽しかったよ」

八幡「てかお前、お兄さんって呼ぶなって言ってんだろ。縛り付けてカラスにつつかせんぞ。……まぁ受験がんばれよ」

大志「ありがとうございまっす!あ、結衣さんもありがとうございましたっす!おかげで受験受かる気がしてきたっす!」

結衣「うん、どういたしまして…って!それ絶対褒めてないよね!?もう!!ヒッキーみたいのが二人に増えたら手が付けられないんだけど!?」

大志「それじゃ失礼しまっす!」

小町「ばいばーい!!」

結衣「んじゃ、あたしたちも解散しよっか」

八幡「……ん。そだな」

小町「………」キラン

小町「あ!!そうだ小町!!ちょっと大志くんに言わなきゃいけないことがあるんだった!!ちょっと行ってくるね!!」

パタタタタタタ!

八幡「あ、おい…!用があるならメールすりゃいいだろ…まじで」

結衣「あはは。小町ちゃんらしいね」

八幡「………」

結衣「………」

八幡「……プリクラ」

結衣「え?」

八幡「あれ、一応もらっとくわ。……まぁ、そのなんだ?……記念だしな」

結衣「え。あ!!うん!!!じゃあ半分こね!!そうだ!ヒッキー!!携帯に張ってあげようか!?」

八幡「いらんわ、なんでこんな写真を目に見えるところに張らんといかんのじゃ」

結衣「なにそれ!感じ悪い!」フフッ

八幡「(ま、たまにはこういうわいわいするのも悪くない……かな)」



233: cMVCB/0/0 2013/08/05(月) 23:15:13.27
「しゅんかんせっとく」





沙希「あんた、ちょっといい?」

八幡「あ?あー、えーと、なんだよ?か、川、かわご、か…何の用だよ。俺、これから部活でアレなんだけど?」

沙希「は?つーか、あんた。うちの大志に何吹き込んでくれたわけ?」

八幡「何の話だよ?」

沙希「あの子さ。ちょっと遅く帰ってきた日以来、急に総武高なんて楽勝とか、言い出したわけよ。で、問いつめたらあんたと遊んだっていうじゃない?」

八幡「自信持てたのはいいことじゃねえか。感謝こそされど、責められる筋合いはねえよ」

沙希「は?根拠のない自信なんて何の役にもたちゃしないでしょ。だいたい今の時期は大志にとっても大事な時期なんだから、変に遊びとか連れてって邪魔しないで欲しいんだけど?」

八幡「あ?つか、お前の弟が勝手に来たんだっつの。こっちだって、せっかくの小町とのデート邪魔されて迷惑したんですけど?」

沙希「は?何あんた、うちの大志が悪いって言いたいわけ?喧嘩売ってんの?」

八幡「あ?お前、マジでブラコンなの?引くわー、肉親にダダ甘とかマジ引くわー。どん引きだわー」

沙希「は?ていうか妹とデートとかいうシスコン野郎に言われたくないんだけど?」

八幡「あ?」

沙希「は?」

八幡「あ?」ジ

沙希「っ!!」プイッ

パタパタパタパタパタパタ!

八幡「……まぁ、遊んだのは事実だが、別に俺があいつに受験が楽勝だなんて吹き込んだわけじゃあない」

沙希「……どういうこと」

八幡「俺が、お前を、たった一言で、納得させてやろう」

結衣「あれぇ?サキサキにヒッキー?珍しいね!何話してんの??」



八幡「そん時、こいつもいたんだよ」



沙希「………」

結衣「え?え?サキサキどしたの?」

沙希「……悪かったね。あんたを疑って」

八幡「分かってもらえたか」

結衣「え?なに!?サキサキ?どういうこと!?今あたし馬鹿にされたの!?ねぇ!?ちょっと!ヒッキー!?サキサキ!!?」

246: cMVCB/0/0 2013/08/06(火) 02:43:05.70
「あくむ」







八幡「お、射線に入ってきたな…」カチ、パーン

八幡「………」カチカチ

八幡「また戻ってきた。キョロキョロしてんな。まだこっちの場所分かってねぇのかよ。AIMの前に観察力を身につけろっつの…糞noob乙っと」カチ、パーン

八幡「あ、つかもうこんな時間じゃねえか。このラウンドが終わったら寝るか…」
ブーブーブーブーブー

八幡「って、んだよ。誰だよ。こんな時間に…」

八幡「……由比ヶ浜?」

ピッ

八幡「もしもし?んだよお前?なんなの、こんな時間に?嫌がらせ?」

結衣「ひ、ヒッキー!?ヒック、あのい、生きてる!?」

八幡「は?お前いきなり何言ってんの?あー、まぁお前のせいで今、現在進行形で死にそうだけどな、おー撃たれてる。撃たれてる」ガガガガガガ

結衣「ひ、ヒッキー怪我してるの!?ヒック、う、撃たれてるってどういうこと!?ヒック、ち、血が出てるの!?きゅ、救急車!」

八幡「いや、お前待てって。ゲームの話だから…てかお前何?泣いてんの?」

結衣「ヒック…泣いて…グス…なんかないし…」

八幡「いや、お前、嘘つくなよ…完全に泣いてんじゃねえか…ちょい待て、今、ログアウトするから。切るなよ?」

結衣「う、うん…ヒック…グスッ」

八幡「で?どうしたんだよ、お前?なんかあったの?」

結衣「………グスッ、笑わない?」

八幡「………笑わんだろ、多分」

結衣「こ、こわい…夢を見たの…スン」

八幡「は!?」

結衣「ひ、ヒッキーが倒れてて…ち、血が…グス…いっぱい出てて…それはあったかいのに…ヒッキーの体はど、どんどん…冷たく…」

八幡「………」

結衣「あ、あたしはいっぱいヒッキー、ヒッキーって言うんだけど…ぜ、ぜんぜん返事がなく…て、グス」

八幡「由比ヶ浜…それは…」

結衣「それで、あ、足も変な風にまがってるのに気づいて…あ、あの事故の時、みたいで…」

八幡「由比ヶ浜!」

結衣「だからあたしのせいだ!あたしのせいだって、あたしのせいでヒッキーが死んじゃう、もう会えなくなっちゃう!って…だからあたし怖くて、だから助けて!助けて!ってヒッキーを連れてかないでって!!だから!!あたしは!!」

八幡「結衣!!落ち着け!!」

八幡「いいか…俺は大丈夫だ!ピンピンしてる。それは夢だ。全部な」

結衣「う、うん…そうだよね…。あ、あ、あたし、怖くて、わけわかんなくなっちゃって…ごめん、ヒッキーこういうの嫌いって前言ってたよね…もう切るね…だから、その、嫌いに…ならないでね?」

八幡「馬鹿だ、馬鹿だとは思ってたけど、ほんとに馬鹿だな、お前」

結衣「……!うん……グス…ごめん……ほんとあたし、馬鹿だ…」

八幡「馬鹿。そういうこと言ってんじゃねえんだよ。これがだな、三浦と喧嘩しただとか、雪ノ下を怒らせたとかだったら、もう明日から一言も口きかねぇけどな。ただ、その、なに?仮にも俺なんかを、心配してかけてきた奴を嫌う要素があんの?」

結衣「……グスッ、でも夢…だし…」

八幡「まぁ、その心配が検討違いだってのは言っとかなきゃならんけどな。お前、俺のキルレシオ知ってる?6だぞ、6」

結衣「…グスッ、どういう意味?」

八幡「つまりだな。俺は戦う時は確実に退路を確認することから始めるし、必要ならば待ち伏せだって平気でする。移動する時にゃ他のやつらを弾よけがわりに使うのも忘れない。こちらから攻撃する時は、確実に相手の後ろか側面からだ。おかげで狙撃銃使ってないのに、糞芋呼ばわりされんのもしょっちゅうだ」

結衣「スン…何言ってるか全然分かんないんだけど…」

八幡「要するに俺は自分が生き残ることを、いつも最優先事項に置いてるっつーこった。デートすりゃレディーファーストも徹底するぞ?もしもの時、俺の盾になってもらわないといけないからな!」

結衣「グス…なにそれ?最低だし」フフッ

八幡「まぁ明日は何が起こるかわからないってのはあるけどな、ただ俺ほどリスク管理をやってる人間にしてみれば、その危険性は限りなく下げられるんだよ。だから、お前が心配するようなことは起きない、だから安心しろ」

結衣「ありがと…やっぱりヒッキーって優しいね。夢で泣いたなんて言ったらすっごい馬鹿にされるかと思った」

八幡「まぁ最初に結構、馬鹿馬鹿言ったけどな。お前、普段から馬鹿って言われ過ぎて、馬鹿って言葉に免疫ついちゃってんじゃねえの?明日から倍言うことにするわ」

結衣「やめてってばぁ!これでも結構傷ついてるんだからね!!」

八幡「ま、そういうことだから、今日はもう寝ろよ。明日また下駄箱で会えるから安心しろ」

結衣「ありがとヒッキー大す……と!えと、あの、違う!その、お、お、お、おやすみ!!」

八幡「お、おう」

プツッ

八幡「はぁ、なんなんだよ最後の…マジで。勘違いするっつの…。ああ、もう目が冴えちまったじゃねえか…もう数ゲームすっか…」

257: cMVCB/0/0 2013/08/06(火) 15:02:43.81
「しゃっくり」







八幡「…ヒック…ヒッ…ヒック…」

雪乃「鬱陶しいわね…」

八幡「しかた…ヒック…ねえだろ…ヒック…生理現象なんだか…ヒック…ら」

結衣「しゃっくり、止まらないね」

八幡「だな…ヒック、ああ、そういや昔、しゃっくりが100回止まらなかったら死ぬって話…ヒック…あったよな」

結衣「ヒッキーが死んじゃう!?」

雪乃「また、くだらないことを…しゃっくりはただの横隔膜の痙攣でしょう?…もちろん命に関わるような病気になった時に症状としてしゃっくりが出ることはあるけれど、それは病気だからしゃっくりが出るのであって、しゃっくりが出るから死に至るわけではないし、因果関係がそもそもー」

結衣「ゆきのん!!しゃっくりを止める方法って知ってる!?どうやったら止まるの!?」

八幡「お前、ヒック、いきなり何テンパってんの?ヒック、テンパリストなの?」

雪乃「そうね…眼球を圧迫する…とか」

結衣「眼球って目だよね!?圧迫って押せばいいの!?」

雪乃「そうね」

八幡「そうね、じゃねえよ、ヒック、そうねじゃ!やめろ!今のこいつじゃ、ヒック、本気にしかね、っておいおい!痛い痛い!!!マジ痛い!!!やめろ!!!」

結衣「ヒッキー!!?しゃっくり止まった!?!」

八幡「止まるかよ!ヒック、こんなんで!ヒック」

結衣「ゆきのん!?他には!?」

雪乃「そうね…舌を引っ張る、とか」

八幡「おい!ヒック、お前わざとそういうこと言ってんだろ!ふざけんな!ってお、おいくひにへぇうっこうあ!ひはひっはんあ!いあい!いあい!」

結衣「ヒッキー!!?しゃっくり止まった!?!」

八幡「止まるかよ!!ヒック、お前らマジふざけんなよ!!ヒック」

結衣「ううう~!!ゆきのん!他には!?」

雪乃「そうね、冷水を飲ませる…とかかしら」

八幡「お前、ヒック、普通それ最初に言うだろ!!ヒック、わざとだろ、お前、わざとだろ、ヒック」

結衣「水だね!?汲んでくる!!」ダダダダ

八幡「お前、ヒック、マジわざとやってんの?ヒック、いやがらせ?」

雪乃「なにが?それにしてもあなた舌先を使って口の中に残った由比ヶ浜さんの手の味を確かめようとするのはやめなさい。本当に気持ち悪いわよ」

八幡「してねえよ!ヒック、ていうかお前がさせたんだろうが!ヒック、ふざけんな!」

258: cMVCB/0/0 2013/08/06(火) 15:05:01.04
ガラガラ!
結衣「汲んで来た!!さぁヒッキーはやく飲んで!!」

八幡「っ!?!?いや!、飲んでってお前、いや、お前、これ、さっきまでお前が紅茶飲んでたカップだろ!」

結衣「今は入れものの形なんか気にしてるの場合じゃないでしょ!?ヒッキーは自分が生き残ることを最優先にするんじゃないの!?いいからさっさと飲んで!!」

八幡「いや、お前!そういうこと言ってんじゃ!が、っがぼ!っがっ!溺、溺れ、溺れる!!!」

結衣「ヒッキー!?しゃっくり止まった!?」

八幡「止まるか!…ってあれ、止まってんな」

結衣「はぁ……。よ、よかったぁ…ヒッキーが死んじゃうかと思った…グス」

八幡「いや、お前泣いてんじゃねえよ。だいたい、しゃっくりで死ぬわけねぇだろ」

結衣「でも、ヒッキーが言い出したんんじゃん!」

八幡「いや、死ぬと思ってたら自分で言い出さねえだろ…常識で考えろよ」

結衣「あ、そ、そっか…あ、あたしびっくりしちゃって、ご、ごめんね?ヒッキー」

八幡「いや、まぁ、いいけどよ…」

結衣「………」

八幡「………」

結衣「そ、それにしても水ってよく効くんだね!?一発で止まっちゃった!さすがゆきのん!」

雪乃「そうね…。ただその男は水を飲む前に既にしゃっくりは止まっていたみたいだけれど」

八幡「!?」

結衣「へ?どういうこと?」

雪乃「その男は、あなたが水を汲んできたカップをみた時点で既にしゃっくりは止まっていたのよ。しゃっくりを止める方法にこんなのもあったわね。『驚かせる』」

結衣「カップ?それって……あ!!こ、これってあたしが使ってた!!つ、つまりか、か、かか、かん、か」

八幡「いや、お前それは…」

結衣「ひ、ヒッキー!わざとやったの!?信じらんない!!キモい!変態!!あああ、ああああ、あとキス魔!!」

八幡「おい!!人聞きの悪いこと言うな!ていうか、お前が無理矢理飲ませたんだろうが!」

結衣「はぁ!?あたしのせいだって言いたいの!?マジ信じらんない!!あ、あたしもう今日帰る!ごめんねゆきのん!!」

雪乃「ええ…心中お察しするわ…。無理だとは思うけど、あまりショックを受けないようにね…」

八幡「おい!」

結衣「ヒッキーのばーか!!べぇーだ!!」

ガラガラ、ピシャ!

八幡「お前さ、わざとやってんの?」

雪乃「何が?あまり近くに寄らないでちょうだい、気持ち悪い。それと、あまり私のカップに変な視線を向けないでくれるかしら。怖気がはしるわ」

八幡「向けとらんわ!ふざけんな!ていうかなんでしゃっくりしてただけで、こんなボロクソに言われなきゃいけないの?マジで俺の青春まちがってんだろ…」

265: cMVCB/0/0 2013/08/06(火) 17:27:14.49
「かっそうろ」


結衣「ゆきのん大丈夫!!お、女の子の価値はそんなところで決まらないし!!」

雪乃「由比ヶ浜さんに言われても、説得力が皆無なのだけれど…」

結衣「い、いや!ほら!おっきいとなんか凄い肩こるし!走る時とかなんか邪魔だし!そ、それに、あ、ブラとかも可愛いの捜すの大変だったりするし!だからほら!ゆきのん大丈夫!!」

雪乃「………」

八幡「いや、お前それ慰めてるつもりなの?完全に追い打ちかけてるようにしか聞こえねえぞ。…あれだ古人曰く『貧乳は価値だ、ステータスだ』っていうしな、まぁ需要はあるとこにはあるんじゃねえの?」

結衣「はぁ?ていうかまじで何言ってんの、ヒッキー?今回ばかりは素でキモい。ていうか女の子の話に聞き耳たてないでよ、変態」

八幡「いや…お前らが部室でいきなり話はじめたんだろうが…俺悪くないだろ…。ていうかそんな冷たい目でこっち見んなよ。本気で傷ついちゃうだろ……」

雪乃「はぁ……。価値………。ステータス…………。貧………乳………」

266: cMVCB/0/0 2013/08/06(火) 18:56:14.94
「うらない」








結衣「むー…」

雪乃「どうしたの?由比ヶ浜さん、さっきから携帯電話を眺めて唸っているけれど。また比企谷くんからいやらしいメールが来たの?それなら優秀な弁護士を紹介するわよ」

八幡「おい、裁判沙汰にするなよ、示談ですませてくれ。ていうか違うから、俺はそんなメール送ってないから」

結衣「まぁ確かに、ヒッキーのメールって時々めちゃくちゃ長くてキモい時あるけど、大抵は1行か2行だもんね。しかも顔文字もないし」

八幡「いいじゃねえか、用件は伝わんだから。ていうか確かにとかいうなよ、キモいっていうなよ。お前がFPSについて聞いてくんのが悪いんだろ」

雪乃「そう…。比企谷くんじゃないとすると、何をそんなに悩んでいたのかしら」

結衣「んーん、別に悩んでたわけじゃないの。ただ今週双子座の運勢が悪いなーって思って、ほら見て順位も低いし、人間関係に問題が起こる可能性ありだって」

雪乃「なんだ、そんなこと…。だいたいこんなもの誰にでも当てはまることを並べ立てているだけよ」

八幡「バーナム効果ってやつだな」

結衣「ばんなむ効果?」

雪乃「バーナム効果よ、由比ヶ浜さん。人は一般的な事象を言われた時、自分に則したものだと勝手に判断してしまうものなの」

八幡「バンナム効果ってお前、完全版商法でもすんの?DLC大量販売すんの?」

結衣「たとえばどういうこと?」

雪乃「そうね。例えばさっきの話だと『人間関係に問題が起こる』というところね。『会社で上司と折り合いが悪くなる』ことも、『母親に叱られる』ことも、『友人と喧嘩する』ことも、どれも『人間関係に問題が起こる』ということでしょう?人は誰でも大なり小なり人間関係に問題は抱えているものだわ」

八幡「そう、だから誰にでも当てはまる。だが受け手側はそうは考えない、その占いは自分の『友人と気まずくなる未来』を『恋人と喧嘩する未来』を予知されるように感じちまうんだな」

結衣「なるほど…」

雪乃「それに人間の心理は、的中しなかったことより、的中したことのほうがより強く印象に残るものなの、だからその手の占いも、人は簡単に信じてしまうものなのよ」

結衣「なんか難しいね…」

雪乃「簡単なことよ。由比ヶ浜さん『あなたは人間関係に問題を抱えており、金銭的な悩みもある。快活に振る舞っていても、心の中に不安を抱えていることがあり、自分の行動や判断が正しかったのか疑問に思うことがある』わよね」

結衣「う、うん当たってる!!ていうかゆ、ゆきのん何者!?実は心が読めるの!?エスパー!?」

八幡「だからお前、人の話聞けよ。今、雪ノ下が言ったことはだいたい誰にでも当てはまることなんだよ。人間生きてりゃ、誰でも不安なことの一つや二つはあるし、過去や未来を含めりゃ自分の行動に100%の自信を持てる奴なんてのはいやしないだろ。貧乏人だったら金がないことに、金持ちだったら金を持っていること、つまり強盗に対する不安や、資産運用なんかで悩みがあるもんだろ」

結衣「あ、そ、そっか。そういうことなんだね。うーん、じゃあ占いってあんまりあてにならないんだ…」

八幡「まぁ、俺の場合、いい結果の時だけは信じてやるようにしてるけどな。そのくらいのほうが気が楽だろ」

結衣「そっか…うん!そうだね!!」

八幡「しかし、俺に言わせれば、さっきの雪ノ下の占いには最後に大事な一文が欠けていたように感じたけどな」

雪乃「あら?私に意見があると言うの?おもしろい…聞くだけ聞いてあげようじゃない」

八幡「『あと由比ヶ浜はアホ』」

雪乃「………。そうね、私としたことがそんな大事な一文を入れ忘れるだなんて迂闊だったわ。正しくは『あなたは人間関係に問題を抱えており、金銭的な悩みもある。快活に振る舞っていても、心の中に不安を抱えていることがあり、自分の行動や判断が正しかったのか疑問に思うことがある。あと由比ヶ浜さんはアホ』になるわね」

結衣「それじゃ全然一般的事象じゃないじゃん!!ただの悪口になっちゃったじゃん!!」

八幡「まぁ一般的事象というより、一般常識だわな」

結衣「もうなんなの!?全然占いと関係ないし!!なんで無理矢理そういう流れにするの!?二人とも馬鹿にしすぎだからぁ!!」

281: cMVCB/0/0 2013/08/06(火) 23:33:37.27
「くれーんげーむ」






結衣「あ!ゆきのんゆきのん!ほらあれ!あのクレーンゲーム、パンさんのぬいぐるみが入ってるよ!」

雪乃「っ!?……本当ね」

結衣「あ、でもあれってゆきのんの部屋にあるのとおんなじのだね」

雪乃「由比ヶ浜さん、何を言っているの?あのプライズ商品は先週末にラインナップに加わったばかりのものじゃない。ポーズも縫製も、どれをとってもうちにあるものとは全く違うわ。あなた一体どこを見てものを言っているの?あなたの目は節穴?」

結衣「ご、ご、ご、ごめん。ゆきのん」

八幡「まぁ、欲しいならやってみりゃいいんじゃねぇの?ま、お前の腕じゃとれるかは知らんけどな」

雪乃「……それは私への挑戦と受け取るわよ。いいわ、目にもの見せてあげようじゃない…今度はあなたの助けなんていらないわ」

八幡「へいへい、そうですか」

結衣「え!?ヒッキーがゆきのんにヌイグルミとってあげたことがあるの?」

八幡「あ?あぁ、前にお前のプレゼント買いにららぽ行った時にな。こいつがクレーンゲームに張り付いてトランペットを欲しがる少年みたいになってたからな。そこで俺がかっこ良く一発でとってやったってわけだ」

結衣「……そ、そうなんだ…」

雪乃「あなた、自分に都合よく記憶をねじ曲げるのはやめなさい。私はクレーンゲームに張り付いてなんていないし、あなたがやったことなんて店員を呼んでとってもらっただけのことでしょう?」チャリンチャリン

結衣「ひ、ヒッキー!かっこ悪!!」

雪乃「………」フェェェェェェ

八幡「別に結果は変わんねんだから、いいだろ」

雪乃「くっ!!」チャリンチャリン

結衣「そうかなぁ?とってあげたりとか、とってもらったりって、そういうのの過程が大事だと思うんだけど…」

雪乃「………」フェェェェェェ

八幡「いやかっこつけて手に入らないくらいなら、かっこつけないで手に入ったほうが万倍ましでしょ」

雪乃「この…!」チャリンチャリン

結衣「で、でも好きな人にぬいぐるみとってもらうとか。いい思い出になると、思うんだけどなぁ」

雪乃「いい加減に!!この!!」チャリンチャリン

八幡「なら雪ノ下相手だと、なおさらそんな過程必要ないだろ。つーかあれ見ろよ」

雪乃「っ!!」チャリンチャリン

八幡「あれ見て、まだ過程が大事とか言える?」

結衣「……。うーん…。確かになんか貯金箱みたいになってるね…」

雪乃「くっ、一体どうして!あなたは私の手足のように動いてくれないの!」ダンッ

282: cMVCB/0/0 2013/08/06(火) 23:36:25.57
八幡「あいつ、なんか変なこと言い出したな…」

結衣「う、うーん。ねぇ、あのさ、ゆきのん?こういうのは掴もうとするだけじゃなくて、爪でひっかけたり、クレーン自体で押したりいろいろと…」

雪乃「………。言うわね由比ヶ浜さん、そんなに言うならあなたはさぞ得意なのでしょうね?」

結衣「え?ど、どうだろ?まぁ、得意なほうではあるかなぁ。中学の時とか、結構やったし…」

雪乃「そう。……そうなに言うのなら、あなたがやって見ればいいじゃない。回数は残っているし、あなたの技術見せてもらうわよ」

結衣「え、ええ!?あたしがやるんだ!?」

八幡「しかもすっげぇ上から目線だしな…」

結衣「う、ううん。じゃ、じゃあやってみるね」フェェェェェェ

雪乃「…………」

結衣「あ、とれた」ゴトッ

雪乃「っ!?」

結衣「は、はい。ゆきのん!」

雪乃「いらないわ」

結衣「え…」

雪乃「あなたの挑戦、しかと受け取ったわ。私の腕を見せてあげるわ」

八幡「あーあ、お前わざわざ火に油を注いだな。こういうのは適当に失敗して『あぁ~、やっぱりあたじには無理だっだぁ。ぶぇへへ~、ごべんねゆきのん!』とか言っときゃ良かったんだよ」

結衣「あたしの真似すんなし!ていうか全然似てないし!あたし山田くんじゃないし!!だいたいなんでゆきのんのは似てるんいあたしのはそんななの!?ていうか本当にいらないの!?ゆきのん!?」

八幡「まぁ当然だろ。雪ノ下がお前に負けて黙ってるわけがないじゃねえか。本当大事なとこで空気読めねえよな」

283: cMVCB/0/0 2013/08/06(火) 23:37:42.54
30分後


雪乃「どう?見なさい、取れたわ。ふっ…どう見ても私のパンさんのほうが少し大きいわね」ドヤッ

結衣「ほ、ほんとだね!さ、さっすがゆきのん!!」

八幡「いや、釣りじゃねえんだからさ、サイズ違うわけないだろ…。しかも5千円以上使ってるしよ」

結衣「ヒッキーうっさい!!あ、で、でもさ。本当ゆきのんってパンさん好きだよね!!どんなところが好きなの?」

八幡「あーあ…」

雪乃「そうね。まずはもちろん文章から読み取れる彼が育った西洋文化と、執筆時にすんでいた中国で感じた東洋文化のメタファーが秀逸ね。これは時として、パンさんの住む山とそこに遊びに行く少年の生活という形で描かれているのだけれど、これが児童文学として読みやすいにも関わらず、その実鋭く当時の世相を斬っていると言ってもいいわ。もちろんそれを現代の社会に当てはめてみても十分に、その斬れ味を保っていることを考えれば、ランド・マッキントッシュの先見性の高さは特筆すべきものだわ」

結衣「な、なるほど」

雪乃「先見性と言えば、まだパンダという生き物がメジャーではなかった20世紀初頭という時代に、パンダを主人公に配したマッキントッシュはさすが、と言っていいわ。もちろんそれは息子が環境になじめるようにした、というのが一番だったというのはあるのだけれど、それが今日、世界中でパンダが愛されるようになった一つの原因となったことには疑う余地もないわね。作者の死後、中国政府からその功績をたたえて作者の息子に賞が贈られたのだけれど、これも当然と言っていいわね」

結衣「そ、そうなんだ!パンさんって作者の人が自分の子供のために作ったの?」

雪乃「ええ、あの作品は最初はいままで住んできた文化とはまったく違う環境に来て戸惑っていた息子のために描かれたものだったのよ。ディスティニー版でも男の子がでてくるでしょう?彼は他ならぬランド・マッキントッシュの息子、クリストファー・F・マッキントッシュをモデルにしているのよ。名前も彼からとっているわ。そのことから感じられるように作品の随所から父マッキントッシュの息子への愛情を感じられるところも私がパンさんが好きな理由の一つだわ」

結衣「へ、へぇ~、ゆきのん詳しいねぇ!わたしディスティニーの映画くらいしか見ていないかー」

雪乃「そうね。確かにディスティニーの映画もかなり出来がいいと言っていいわ。ただあれは、笹を食べて酔拳をするパンさんというデフォルメされたキャラクターを全面に押し出している作品で、パンさん自身の可愛らしさは原作より増していると言ってもいいけれど、やはり全体的な作品としての出来は原作のほうが上ね。もし出来ることならば、由比ヶ浜さんにも原作版を呼んでもらいたいところだわ。読みたいというのなら喜んで貸すけれど」

結衣「う、うん!読む読む!ゆきのんのおすすめなら読まないわけにはいかないし!」

雪乃「そう。なら明日にでも『Hello Mr.Panda』と、続編の『Mr.Pandy and Me』の原書を持ってくるわね」

結衣「うん!楽しみにしてるね!!」

八幡「おいおい、雪ノ下。さすがに英語の原書は由比ヶ浜にはハードルが高すぎるんじゃないの?」

結衣「えぇ!?英語!?原書って英語なの!?」

雪乃「大丈夫よ。私は小学生の頃にはこの二冊をすらすら読めていたもの。由比ヶ浜さんなら出来るわ」

結衣「ええ!?ちょ、ちょっとゆきのん!!ば、馬鹿にされるのも嫌だけどそれは買いかぶりすぎだからぁ!!私には無理だからぁ!!



300: cMVCB/0/0 2013/08/07(水) 02:16:42.19
「やっぱりびっち」








結衣「ふんふふんふんふーんふんふふーんふーんふーんふーん」

八幡「お前、なんで鼻歌でアメリカ国家歌ってんの?アメリカ人なの?」

結衣「え!?これってアメリカ国家だったの!?あたしアメリカの国歌って『うーうぃるろっきゅー!』とか言う奴かと思ってた」

八幡「なんなのお前、マイケルムーアなの?ザ・ビッグ・ワンなの?確かにあの歌詞はアメリカにピッタリっちゃピッタリだけどよ。だいたいクイーンはイギリスのバンドじゃねえか?70年代の曲だし、アメリカの国歌になるわけねえだろ」

結衣「そんなの知らないし!!なんとなくそう思ってただけじゃん!悪い!?」

八幡「逆ギレかよ…。んで?馬鹿な鼻歌歌いながら何読んでんの?うわ、お前また馬鹿そうな雑誌読んでんな。馬鹿面と馬鹿歌と馬鹿雑誌で馬鹿のスリーカードかよ」

結衣「馬鹿馬鹿言うなし!ていうかこれファッション雑誌だし!ヒッキーもちょっとは服装に気をつけたほうがいいんじゃないの!?休みの日、いっつも同じような服着てんじゃん!!」

八幡「…由比ヶ浜さん。あなた、なぜ私の普段着を知っているのかしら?ひょっとしてストーカー?ストーカー規制法を知らないの?女性にもちゃんと適用されるのよ?」

結衣「またゆきのんのマネだし…しかも超うまいし…いつ練習してんの…。ていうか時々休みの日にあうじゃん…」

八幡「いや、まぁ、なんつーかあれだ。服なんて着れりゃ十分事足りんだろ、しまむらやユニクロで十分なの」

結衣「でもさー、ヒッキーって目はともかく顔立ちはまあまあ整ってんじゃん?ちょっとオシャレな格好したら、カッコ良くなると思うんだけどなー。目はともかく」

八幡「うるせえよ、あんま目を強調するんじゃねえよ。いいんだよ、別に、モテたいわけじゃねぇんだし。不潔な格好じゃなけりゃ別にいいだろ」

結衣「まぁ…そりゃ…あんま、モテてもらっても困る…けど」

八幡「つーか、あれだ。俺の服の話はどうでもいいんだよ。この雑誌の話だよ、何なのこの表紙のビッチ系女子って、こんなの雑誌読んでるから、ビッチっぽくなってくんじゃねえの?」

結衣「はぁ!?あたし全然ビッチじゃないし!!今日のパンツとか超純白だし!!!超清純派だし!!!!」

八幡「………」

結衣「……あ」

結衣「え、えと。ご、ご、ごめん。つい女子ノリで…」

八幡「お、おう…」

結衣「あ、あのさ…い、今の発言は聞かなかったことに…」

八幡「あ、ま、ま、まぁ口が滑ることってのはあるからな…お前…馬鹿だし…な」

結衣「馬鹿…言うなし…。きょ、今日は否定できない…けど」

304: cMVCB/0/0 2013/08/07(水) 14:12:44.21
「なにもしてない」







ブーブーブーブー
八幡「あ?…なんだ。由比ヶ浜かよ。最近なんかこいつよくかけてくんな。何こいつ、俺のこと好きなの?」
ブーブーブーブー
八幡「………」
ブーブーブーブー
八幡「………いや、それはない。ただの世間話。八幡超クール、大丈夫」
ブーブーブーブー
八幡「………」
ブーブーブーブー
八幡「…あいよ、何?」

結衣「あ、ヒッキー?あたし、あたしー?ごめんね、忙しかった?」

八幡「いや?別に?あー、まぁちょっと携帯置いて席外しててな。んで何?」

結衣「あ、んと。あのね、ヒッキーってパソコン詳しい?」

八幡「あー、いや。俺はゆうちゃんじゃないしな。正直あんま詳しくはない。まぁ普通に使うぶんには使えるけどな。なんかトラブルか?」

結衣「あ、うん。あのね。今、パソコン使おうとしたらなんか壊れちゃってるみたいなの。ていうかゆうちゃんってだれ」

八幡「ふーん、んで?何かしたの?」

結衣「何って?なにもしてないよ?」

八幡「(あー、来たなー。やばいな。選択肢ミスったわー。これ面倒くさいパターンだわー)」

八幡「いや、何もしてなきゃ、壊れねぇだろ」

結衣「え、でもいつも通り電源入れて使おうとしただけだよ?」

八幡「いや、そういうことじゃなくて、最後に使った時何に使ってたか聞いてんだけど?」

結衣「え、あれ…?ていうか、なんかヒッキー怒ってる?」

八幡「別に怒ってねえけど」

八幡「(あー来ちゃったわー。これまとめで見たわー。怒ってじゃん!怒ってないよ、怒ってるでしょ、とかって問答になって話進まなくなるパターンだわーこれ。最後逆ギレされちゃうやつだわー)」

305: cMVCB/0/0 2013/08/07(水) 14:13:44.75

結衣「ご、ごめんね?急にこんな話されてもヒッキー迷惑だよね。ぱ、パソ部とかじゃないもんね」

八幡「(あれ?)」

結衣「ヒッキー?」

八幡「ああ、すまん。すまん。そういうわけじゃねえんだ」

八幡「(なんかまとめで見たのと展開が全然違うぞ。何こいつやっぱりすごいいい奴なの?馬鹿だけど)」

八幡「あー、あれだ。手に負えなくなったらすぐ投げるか気にすんな。んで?そもそも電源は入ってんの?」

結衣「うん、いっぱい模様が並んでて、その後ろにういんどうずとか言うのが出てるよ」

八幡「(模様ってのはアイコンの事だろうな。んで壁紙は初期から変えてない、と。デスクトップは出てんだな)」

八幡「じゃあ、壊れてるって何が壊れてるわけ?」

結衣「うん、あのね。調べものをしようと思って、いんたーねっとえくろろーらーを使ったんだけど。ヤフーに繋がらないの」

八幡「……他のサイトは?」

結衣「他のサイト?でもヤフーに繋がらないし」

八幡「ブックマー…お気に入りとかから行けんだろ。ちょっとやってみ」

結衣「あ、そっか。お気に入り…お気に入り…ね。んーん、ダメ。どれも繋がらないよ」


306: cMVCB/0/0 2013/08/07(水) 14:14:18.72
八幡「…そうか。そのパソコンは家族共有か?んで普段はリビンクかどっかに置いてるんじゃねえの?」

結衣「あ、うん。そうだよ。よくわかったね!」

八幡「んで、ラップト…ノートパソコンだろ?」

結衣「え!?なんでそこまでわかるの!?どっからか見てんの!?」

八幡「見てねえよ、やめろ。んで、お前は昨日パソコン使ってないけど。家族の誰かは使ってたんじゃないか?」

結衣「あ、うん。昨日はパパが使ってた」

八幡「しかも違う部屋で、じゃねえか?」

結衣「え?あー。うん。パパ自分の部屋に持ってってた。パパいつも自分のパソコン欲しがってるんだけど、ママがいいって言わなくてさー」

八幡「いや、その悲しいお父さん情報はいいわ。んじゃ。ちょっとパソコンの周りにケーブルが落ちてないか捜してみ」

結衣「けーぶる?でも電源コードはちゃんと刺さってるよ?」

八幡「ま、いいから。捜せ」

結衣「んー?んんん。あ!ヒッキーなんか先っぽがふにふになるやつが落ちてる!!」

八幡「ああ、それだわ。それ、パソコンの左右のどっちか、多分左側にきちんと刺さるところあるから」

結衣「んーと、ここじゃなくて…あ!!刺さった!!ヒッキー!!カチっていったよ!!」

八幡「んじゃ。もっかいエクスプローラー起動してみ」

結衣「うん。あ!繋がった!繋がったよ!!ヒッキーすごい!!パソコン大先生だ!!」

八幡「おいやめろ。その呼び名は色々と縁起が悪いからやめろ。将来が不安になっちゃうだろ」

結衣「でも、すごいねヒッキー!!見てもいないのにパソコン直しちゃうなんて!!」

八幡「いや、ただ抜けてたケーブル刺し直しただけだしな。そんな大げさな話じゃねえよ。まぁ大方、お前の親父さん、普段はきちっとなおしてんのに、昨日に限ってパソコンをリビングに戻したときに刺し直すの忘れてたんだろ。それだけのこった」

結衣「そっか。でもありがとう。助かっちゃった。こんなことゆきのんには相談できないし…」

八幡「俺なら良いのかよ」

結衣「いや、そういうことじゃなくって。ヒッキーはいつもなんだかんだいいながら、だけど。あたしのこと助けてくれるでしょ?だから…なんか頼っちゃうっていうか」

八幡「………」

八幡「あんま、俺に期待すんな。多分、幻滅することになるだけだぞ」

結衣「んーん。多分そんなことにはならないよ。だってあたしは…ってママ!?何こっち見てんの!?ちょ、ちょっとニヤニヤしないでよ!違う!!そんなんじゃないし!!ご、ごめん!ヒッキー!!もう切るね!!ちょっとママ!?」ブツッ

ガチャ

小町「お兄ちゃーん、リンゴ剥いたよ!食べる?」

八幡「おう、今行くわ」

八幡「(途切れたその言葉は潮騒のように心を掻き乱し、いつまでも逃げることは出来ないぞ、と決断を迫られているようにすら感じた。電話越しには、彼女がおそらく浮かべていただろう優しげな微笑みは見ることはできず、それが残念で、口惜しく、もどかしくて、そしてどこか安心していた。ないまぜになった感情を処理できずに、心のどこかがオーバーフローをー」

小町「お、お兄ちゃん。突然なに言い出したの…。途中から声出てるよ…なんか神界日記つけてた頃みたいになってるよ…。ちょっとキモいよ…」

318: cMVCB/0/0 2013/08/07(水) 20:06:58.07
「おとぎばなし」




結衣「やっはろー!!」

雪乃「こんにちは、由比ヶ浜さん。あら、今日随分たくさん本を持っているのね。図書館で借りてきたの?」

結衣「うん!!」

雪乃「シンデレラに白雪姫…ジャックの豆の木に…どれもおとぎ話ばかりね」

八幡「まぁレベル的には由比ヶ浜にはピッタリなんじゃねぇの?やっぱりハードルってのは順々に高くしなきゃな。いきなり高くしても下をくぐっちまうだけだしな」

結衣「違うから!あたしが読むんじゃないからぁ!今度またワタル君が来るから読んであげようと思っただけ!」

雪乃「ワタル君…と言えば以前、あなたたち二人が以前、往来で新婚さんごっこをしていた時に連れていた子、よね」

結衣「ゆ、ゆきのん!違うから!!そんなことしてたんじゃないからぁ!!」

八幡「いや…ていうか、何でお前はそんな殺気だってんの?ほんとビビるわ」

八幡「しかしおとぎ話ってのは子供に聞かせて言いものなんかね。正直、悪影響しかないと思うんだけど」

結衣「え~?どうして!?みんないいお話じゃん!!」

八幡「いや~、どれもこれも恐ろしい話だぞ?ジャックと豆の木のジャックなんて、勝手に他人…つまり巨人の家に侵入したあげく、財宝盗んで帰るしな」

雪乃「やっていることは完全に押し込み強盗ね」

結衣「う、う~ん…」

八幡「ヘンゼルとグレーテルなんかもっとひどい、森で迷っていたところを助けてくれた老婆を魔女呼ばわりしたあげく、オーブンに押し込んで逃げるしな」

雪乃「恩知らず…という言葉だけでは片付けられないわね…」

結衣「う、ううう」

八幡「白雪姫なんか、寝ている見知らぬ女性にいきなりキスだぞ?普通だったら事案だろ、事案。なんで美談になってるんだよ」

雪乃「比企谷くんなら確実に逮捕されているわね」

八幡「そもそも、毒食って何ヶ月もころがってるなんて完全に死体じゃねえか。それにキスするとかなんなの?ネクロフィリアなの?」

結衣「ねくろ…ってなんだし…」

八幡「西洋の話だけじゃねえぞ?桃太郎だってそうだ。鬼退治はいいけど、なんであいつら宝を全部持ち帰んの?より強力な悪が、鬼から宝を奪いとっただけじゃねえか」

雪乃「しかも正義を名乗っているから余計にたちが悪いわね…まるで比企谷くんのようだわ…」

結衣「あうううううう」

八幡「うるせえよ。いちいち俺を揶揄すんなよ。だいたい、そもそもなんだよ最後、『みんないつまでも幸せに暮らしました』って、リアリティのかけらもねえよ。それともなに?これは『悪は退治されることはなく、いつまでもはこびり続けました』って意味なの?いずれにしてもろくなもんじゃねえ。Q.E.D. 証明終了だ」


結衣「ぜ、全部がそんなんじゃないし!!ほ、ほらシンデレラとか!心優しい女の子が王子様と結ばれるし!超良い話じゃん!!」

八幡「あー、その話しちゃうんだー。そっかそっかー、わざわざその話は避けておいたのになー。でも話ふられたからには仕方ないなー」

結衣「な、何その言い方…す、すごい腹立つんだけど…」

八幡「だいたいだな。シンデレラは人殺しなんだよ」

結衣「ええ!?」

八幡「よく知られてるシンデレラをいじめる継母っているだろ?あれって、シンデレラにとっちゃ3番目の母親にあたるんだよ。2番目の母親、これも継母だけどな、はシンデレラの手で事故に見せかけて消されてる」

結衣「え、ええ~!?ほ、ほんとなのゆきのん!?」

雪乃「えぇ。まぁ世界中にはシンデレラに似たお話がいくつも存在するから、一概にそうだ、とは言い切れないのだけれど。確かにそういうお話は多いわね。中には最初のページがシンデレラの人殺しシーンという本も存在するわ」

結衣「そ、そうなんだ…な、なんかどんどん夢が壊れていくんだけど」

八幡「んで、母親を始末したシンデレラが父親に、家庭教師を新しい母親にするように父親に頼むんだよ。んで、その先はよく知るシンデレラのストーリーだな。だからシンデレラの境遇は自分が招いたものだ、とも言える」

結衣「で、でも王子様に認められて結婚するのとガラスの靴の部分は同じなんでしょ?なら素敵な話じゃん?」

八幡「お前、王子はほとんど話してもいないシンデレラに惚れてんだぞ?王子、ただの面食いじゃねえか。そこからどういう教訓を導き出せばいいの?結局人間、見た目が一番ってこと?希望もなにもありゃしねえじゃねえか」

結衣「う、うううううう」

八幡「ガラスの靴だってだな。お前、自分のものだから義姉妹の足にはあわないって知りつつも、サイズあわせるために足を切断するの手伝ったりしてんだぞ。それに結婚した後も、義姉妹の目玉をハトに突っつかせたりしてるしな。これでも心優しいとか言えんの?」

結衣「むぅうううううう!」

八幡「まぁ要するに王子様なんつーものは、非実在青年だっつーこった。あんま夢みんなよ」

結衣「………」

結衣「……る…もん!」

八幡「あ?」

結衣「王子様はいるもん!!いっつもあたしを助けてくれるもん!!ヒドいことも言うけど本当は優しいんだってあたし知ってるもん!」

雪乃「………」

八幡「はぁ!?……お前、いきなり何言ってんの?だいたい、もんもんもんもんってお前熊本県のゆるキャラなの?WORKING!!のオープニングなの?ていうかいきなりキレんなよ…」

結衣「だって、ヒッキーは…ヒッキーが…」

雪乃「由比ヶ浜さん、少しは落ち着きなさい。だいたいこの男ほど、そう言った存在からかけ離れた生き物もそうはいないでしょう?そもそもこの男はバクに食べさせるところがないほど、夢のない男なのだから。そんなこと言ったって通じはしないわよ」

結衣「そ、そうだね…ご、ごめんねヒッキー」

八幡「なんなの?おかしいでしょ?なんでいきなり責められなきゃいけないの?だいたい雪ノ下はこっち側だったんじゃないの?なんでいきなり由比ヶ浜を援護してんの?なんで二人掛かりで責められなきゃいけないの?なんで俺の理解力不足みたいな展開になってんの?どうしうことなの?おい、答えろよ!おい!」

323: cMVCB/0/0 2013/08/07(水) 22:42:38.66
「うそ」






結衣「ヒッキーってさー、嘘うまいよね」

八幡「……。お前いきなり何言ってくれてんの?今の台詞、俺氏に残る最悪の褒め言葉の部類なんだけど?」

結衣「あ!いや、そういうことじゃなくて!く、口がうまい!?、というか口八丁手八丁!?というか?詐欺師みたい!というか!?」

八幡「お前それフォローしてるつもりなの?ただ傷口に塩塗りこむだけになってんぞ……。で?なんでそんなこと言い出したんだよ」

結衣「あ、ほら。ヒッキーってさ、ぼっちって言ってるくせによくしゃべるじゃん?」

八幡「くせに、とか言うなよ…ぼっちは隅で膝でも抱えてろっていうのかよ…」

結衣「ああ、いやごめん。そうじゃなくて!!ゆきのんと二人で話してる時とかさ、すごいぽんぽん言葉が出てくるじゃん!それに嘘っぽい冗談言った時も、あたし全然わかんない時あるし。すぐ騙されるし」

八幡「それはお前、知識のレベル的がお前が俺たちについてこれてないだけだろ」

結衣「それはあたしが馬鹿ってことじゃん!!…まぁ、二人に比べて頭が回らないのは喋ってて感じるけど…」

八幡「……いやまぁ、そこまで自分を卑下することはないんじゃねえの?別にお前の能力云々じゃなくて、単純に勉強が足りてないって言ってんだよ」

結衣「あ、ヒッキー励ましてくれてるんだ。あんまフォローになってないけど」クスッ

八幡「バッカお前。俺なんか近所の公園でサッカーしてる時なんか、エア友の友君によく『ナイスアシストだぜ八幡!!』ってサムズアップされながら言われたもんだ。俺、まじファンタジスタ」

結衣「エア友ってようは妄想のことでしょ!?」

八幡「まぁな。『自分で自分を褒めてあげたいです!』って奴だ。まぁ、俺の場合、周りが誰も褒めてくれないから、自分で褒めるしかないんだけどな」

結衣「だからあたしが褒めてるんじゃん!!」

八幡「だから嘘上手いって褒めてねえだろ…」

結衣「あ、そっか…」

八幡「………」

結衣「………」

八幡「………」

結衣「でも、ほらあれ!」

八幡「まだ、あんのかよ」

結衣「あたしって、このままじゃ騙されやすい子になっちゃいそうじゃん?」

八幡「なっちゃう、っていうか既になってるだろ。手遅れだろ」

結衣「そうじゃなくって!!」

八幡「いや、まぁ言わんとすることはわかる。お前、このままじゃ変な宗教にはまったり、変な教材買わされたり、変な健康食品売らされたり、ダメな男に騙されたりしそうだからな、まぁ心配にならんこともない」

結衣「変なばっかりだし!…でも、心配してくれてるんだ」

八幡「………。いや、あれだ。まぁ、一応顔見知りだからな…」

結衣「そっか…。へへ…」


八幡「んで?だからどうしたの?」

結衣「あ、そうそう。だからヒッキーに特訓してもらおうかと思って」

八幡「特訓?」

結衣「そう。ヒッキーなんか嘘ついてみてよ!!あたし見破るから!!」

八幡「お前マジで言ってんの?嘘つくって言って嘘ついたら、わかるに決まってんんだろ」

結衣「いいじゃん!いいじゃん!とりあえずなんか言ってみてよ!!」

八幡「………。なんでもいいの?」

結衣「なんでもいいよ?」

八幡「………」

結衣「………」

八幡「………」

結衣「………」

八幡「そういやさ。俺彼女いるんだわ」

結衣「嘘!?マジ!?相手は誰なの!?あ!!ひょ、ひょっとしてゆきのん!?いつから付き合ってたの!?」

八幡「………」

結衣「………」

八幡「………」

結衣「あ、そ、そっか。嘘か。嘘だったよね…」

八幡「いやお前…今の反応はさすがにありえねえだろ…。イシュージョンかよ…」

結衣「いやー、ついつい…。でもこれじゃあんま練習にならないね」

八幡「あんまり。というか全くというべきだろ」


結衣「あ!そうだ!じゃあ、ゲームしようよ!」

八幡「ゲーム?どんな?」

結衣「会話するんだけど、その言葉の中にいくつか嘘を混ぜるの」

八幡「ああ。まぁ嘘の中に本当のことを混ぜるのは基本だな。嘘のリアリティが段違いになる」

結衣「ううん、そういうことじゃなくて嘘の言葉は全部嘘で、本当のことは全部本当のことにしなきゃいけないの」

八幡「ああ、はっきり嘘の言葉と本当の言葉を分けるってことか。まぁ、そりゃわかりやすくていいかもな」

結衣「でしょー?」

八幡「嘘は何個でもいいのか?」

結衣「何個でもいいよ。でも0はダメ。あと終わったあとでどれが嘘だったか追求するのもなし」

八幡「それ意味あんの?」

結衣「いいじゃん!どれが嘘だったか推理するのが面白いの!」

八幡「ああ、まぁそういうのもあるか…まぁいいぞ。どうせ暇だしな」

結衣「よし決まり!じゃあねぇ~。ヒッキーは彼女いるの?」

八幡「おい、なんだよそれ」

結衣「何って質問じゃん!ヒッキーは本当か嘘のことで答えるの」

八幡「ああ、そうか…じゃあ、いない」

結衣「好きな人はいるの?」

八幡「………。まぁな」

結衣「いるってこと?」

八幡「そうだ」

結衣「私の知っている人?」

八幡「だな」

結衣「じゃあ、今までの言葉に嘘は入ってる?」

八幡「………。…………はい。っていうかお前が質問してばっかじゃねえか。これただの尋問だろ」

結衣「そう?じゃあ今度はヒッキーが質問する番ね」

八幡「お、俺が?うーん」

結衣「なんなら、さっきの質問をそのまま返すんでもいいよ」

八幡「………。じゃあ…まぁ、思いつかないし な…そうするわ。彼氏はいるんですか?」

結衣「いません」

八幡「好きな人はいるんですか?」

結衣「います」ジッ

八幡「っ!……お、俺の知ってる人ですか?」

結衣「すごくよく知ってるよ」

八幡「いままでの言葉に嘘はありますか?」

結衣「……。はい」


八幡「………。つーか、このゲームになんの意味があんだよ。だいたい嘘かどうか言っちゃいけないなら、嘘を見破る練習にはならねえだろ」

結衣「そう?じゃあ、どれが嘘だったか確かめる?それでもいいよ?」

八幡「い、いや…いい。やめとく…」

結衣「いいの?変なヒッキー」フフッ

八幡「………」

八幡「なんか、今回お前に負けた気がすんな」

結衣「ふっふーん」ドヤッ

八幡「うぜぇ…」

結衣「じゃあ、あたしとヒッキーは互角ってことだね!!」

八幡「あ?んなわけねえだろ。なんで一回の負けで互角になんだよ?ありえねぇだろ、馬鹿」

結衣「馬鹿いうなし!ヒッキーのばーか!ヒッキーは自分で負けを認めたんだからね!ばーかばーか!!」フフ

328: cMVCB/0/0 2013/08/08(木) 00:34:37.44
「しんけんぜみ」


結衣「うーん…」

八幡「どうした由比ヶ浜、何を深刻な顔をして唸ってんだ?」

結衣「あのねー、今回のテストの成績が悪かったの…」

雪乃「由比ヶ浜さん、それは正しい言葉の使い方とは言えないわ。この場合『今回も』というのが正しいでしょう?」

結衣「ゆきのんひどい!!」

雪乃「でもあなたもそろそろ受験を意識して勉強を始めたほうがいいんではなくって?」

結衣「で、でもあたし私立文系だし…」

八幡「おい、お前全国の私立文系の学生の皆さんに謝れよ。私立文系ってのは馬鹿が自己弁護するための言葉じゃねえんだよ」

結衣「う、うう。ていうかひ、ヒッキーはどこ受けるの?」

八幡「俺か?まぁ、第一希望は早稲田の法かな」

結衣「え!?ひ、ヒッキー、早稲田いくの!?」

雪乃「まぁ希望するだけなら自由だものね」

八幡「おい。俺はこれでも予備校の模試では結構いい判定でてるんだよ。そもそも早稲田は国、英、社で受けられるから俺には都合がいいしな。まぁ、一応慶応も受けるけど、あっちは論文だからな」

結衣「け、慶応に早稲田かぁ…ちょ、ちょっとあたしにはハードルが高すぎるかなぁ」

八幡「いや、ちょっとどころじゃないでしょ。どんだけ自分を高く見積もってんだよ」

結衣「うっさい!!でも…できることならヒッキーと同じ大学いきたいし」

八幡「そうは言ってもだな。俺がお前のレベルにあわせてどこぞの女子短大を受けるわけにもいかんだろ。そもそも俺は人にあわせて志望校のレベル下げる気はねえし」

結衣「女子短大に行くのは決定事項なんだ!?」

雪乃「まぁ…こればかりは比企谷くんの言うことがもっともね。身の丈にあった希望を持たないと、確実に破滅が待っているだけだわ…」

結衣「あ、じゃ、じゃあ進研ゼミとかはじめるとか!!ほら、あ!これ進研ゼミでやったところだ!!ってやつ?」

八幡「ばっかおまえ、やめとけって。ああいうのは最初まじめにやるんだけど、そのうちだんだんやらなくなって手が付けられないほどの量がたまって、最後はおまけ漫画を読むだけになっちまうんだよ。ソースは俺」

結衣「じ、実体験なんだ…」

八幡「だいたいお前、そもそも自分で勉強をする習慣がないだろ?あれは、毎月参考書を買ってるようなもんだからな。結局自分で進んで計画たててやんねぇと終わらねえんだよ。ようは進研ゼミで成績をあげられるようなやつは、やらなくても成績をあげるすべを持ってるってこった」

結衣「う、ううん…」

八幡「だからお前の場合、同じ金をかけんなら、予備校に通う方がまだマシだな。ま、これはあくまで経験による個人的な見解だけどな」

雪乃「それに由比ヶ浜さんの場合、根本的な問題があるじゃない」

結衣「根本的?」

八幡「ものごとのおおもとに関することって意味だな。基本的なことがらってやつだ」

結衣「意味は分かってるし!!」

雪乃「由比ヶ浜さんの場合、高校の勉強をする前に、中学レベルの復習をしなくてはいけないでしょう?そうなるとその『進研ゼミ』とかいうのも5年分くらいは頼まないといけない、ということになるわ」

結衣「中1レベルからなんだ!?」

八幡「まぁ妥当だな。ただ由比ヶ浜の場合、それを学校に通いながらこなすというのは難しい話になってくるからな。卒業してから4年くらいかけてじっくりやることになるだろうな」

結衣「あたし、四浪もするんだ!?」

八幡「ま、その時には同じ学校に入れるくらいにはなっているかもな。由比ヶ浜…俺…ちゃんと…待っていてやるよ」

結衣「ひ、ひ、ひ、ヒッキー!!」

雪乃「ただ、その頃には比企谷くんは卒業になっているでしょうけどね」

結衣「ゆきのん!?」

八幡「まぁ、そうだな」

結衣「ヒッキー!?なんで二人そんなコンビネーションばっちりなの!?二人そろって馬鹿にしすぎだからぁ!!あたし勉強する!絶対に見返してやるんだからね!!」

350: cMVCB/0/0 2013/08/08(木) 14:28:02.23
結衣「ゆきのん!きいてきいて!」

雪乃「あら、どうしたの由比ヶ浜さん。随分うれしそうね」

結衣「これはこのあいだ返却されたばかりのテスト…こ、これは!な、なんてこと満点じゃない!!」

結衣「へっへーん!」

雪乃「私でさえ、98…だったのに…、さすがね。由比ヶ浜さん!やはりあなたにはかなわないわ!」

結衣「ふふーん、実はそれだけじゃないよ。ほら!!」

雪乃「こ、これは!古典に、歴史、地理に…さんすうまで!?ぜ、全部100点満点じゃない!あなたという人はどこまで底なしだったと言うの?」

結衣「ふふ、これでわかったでしょ!?ゆきのん!私の才能が!」
ガラッ
平塚「由比ヶ浜!前回の模試の結果だが、すごいぞ!早稲田も慶応もSSS判定だ!!」

結衣「平塚先生!?本当ですか!?」

平塚「ああ、合格間違いなし。既に先方から入学依頼まで来ている。だから来る時に彼にも伝えておいた」

結衣「彼?ま、まさか!」
ガラガラ
八幡「結衣…」

結衣「ヒッキー!どうしたの白馬に乗って白いタキシードなんて着て!そ、それに花束まで!?」

八幡「決まってるだろ?結衣。君を迎えに来たんだ」

白馬「ヒヒーン!」

結衣「ひ、ヒッキー!!」

八幡「もう、離さないぞ。結衣…」ギュ

結衣「あたしも絶対に離れない!!」ヒシ

雪乃「おめでとう!由比ヶ浜さん」

平塚「おめでとう!由比ヶ浜!」

小町「結衣さん!おっめでとうございまーす!」

パパ「おめでとう!結衣!比企谷くん!娘を頼んだよ!」

ママ「おめでとう結衣!ママ感動で涙が…」

サブレ「きゃんきゃん!」

戸塚「おめでとう!由比ヶ浜さん!八幡!」

沙希「おめでとう!」

三浦「結衣おめでとう!あとヒキオは結衣を幸せにしなかったら許さないかんね」

海老名「結衣おめでとう。ふ、夫婦になればあんなことやこんなこと、ぐ、ぐ腐腐腐腐」

葉山「結衣!おめでとう!」

戸部「パナいわー!」

大和「おめでとう!」

陽乃「ガハマちゃんおめでとう~!」

めぐり「う~ん、よかったね~由比ヶ浜さん~!」

結衣「ありがとうみんなっ!!みんな大好きっ!!」

八幡「おいおい…、そんなこと言って俺にジェラシーで身を焦がさせる気かい?俺は以外と…嫉妬深いんだぜ?」

結衣「ごめんね、ヒッキー!私の一番はヒッキーだよ」

八幡「そうだな。結婚しよう、結衣。さぁ熱い誓いの口づけを…」

結衣「ひ、ひっきぃ…」トロン

MINNA「YUI!HACHIMAN!YUI!HACHIMAN!YUI!HACHIMAN!YUI!HACHIMAN!」ワーワーワーワー

351: cMVCB/0/0 2013/08/08(木) 14:29:30.23
「ねごと」


結衣「むふ…むふふふふ……」ムニャムニャ

八幡「………」

雪乃「………」

結衣「やった…ごうかく…かくじつ…」ムニャ

雪乃「この前の気にしていたのかしら…」

八幡「まぁ、みたいだな…」

雪乃「なら勉強をすればいいのに…」

結衣「う、うーん。それだけは…」ムニャムヤ

八幡「………」

雪乃「………」

結衣「ひ、ひっきー…」モニョモニョ

雪乃「………。あなたのことを呼んでるわよ。答えてあげたら?」

八幡「いや…寝言に答えるのは体に良くないっつうだろ…?」

雪乃「まぁ、そうね…」

結衣「だ…だめだよ。ヒッキー…部室で…。ゆ、ゆきのんが…来ちゃうよ…?」ムニャムニャ

八幡「おい」

雪乃「あななたち…普段、いったい部室で何をやっているの?そういえばこの前も私が遅れて来たら、二人して妙な態度だったわよね?」

八幡「いやお前怖いよ…、ていうかこれただの由比ヶ浜の寝言だろ…。現実と混同すんなよ…、睨むなよ…」

雪乃「はぁ…、まぁいいわ。ちょっと私平塚先生に用があるから少し席を外さなくてはいけないのだけれど、言っておくけれど、寝ているのをいいことに、由比ヶ浜さんに妙なマネをしたらこの学校にはいられなくなると思いなさい」

八幡「しねーよ。ふざけんな。やめろ」

雪乃「どうだか」ハッ

ガラガラ、ピシャ

352: cMVCB/0/0 2013/08/08(木) 14:31:23.68
結衣「ううーん」ムニャムニャ

八幡「………」

結衣「うふふ。うん…すきぃ…」ムニャムニャ

八幡「(なにがだよ…)」

結衣「うん…うん…」ムニャムニャ

八幡「………」

結衣「うん…二人で頑張ってサッカーボール…作ろうね…」ムニャムニャ

八幡「なんでだよ!サッカーボール手作りかよ!あり得ねえだろ!普通はサッカーチームだろ!いやそれでもおかしいけど!!」

結衣「………」

八幡「(つい、つっこんでしまった…)」

結衣「そっか…さすがヒッキーだね…ふふ…」ムニャムニャ

八幡「納得した…」

結衣「………」スースー

八幡「(静かになったな…)」

結衣「………」スースー

八幡「………」

結衣「………」スースー

八幡「(しかし、改めてみるとこいつ顔立ち整ってるよな…美人系の雪ノ下とは系統が違うし…ちょっと童顔だけど)」

結衣「………」スースー

八幡「(ひょっとして写メとるくらいなら許されるだろうか…)」

結衣「………」スースー

八幡「(いや、これは後で『はっはっは、お前こんな顔して寝てたぞ』とか言ってみせるやつだから…)」

結衣「………」スースー

八幡「………」

結衣「………」スースー

八幡「(よし)」ソー

結衣「ううん…」ムニャムニャ」

八幡「っ!!」ビクッ

結衣「………」スースー

八幡「……」ソー

結衣「………」

八幡「………」パシャリ

結衣「……ん?んん?」

結衣「あれ!?あたし寝てた!?テストは!?100点は!?」

八幡「なんだよお前そんな夢、見てたのか?お前が100点なんてあるわけないだろ。分をわきまえろよ」

結衣「えー?って、て、ていうかヒッキーちょっと近くない!?何してたの?」

八幡「あ?別に普段通りの距離感だろ。まぁ…あれだ。アホ面によだれまでたらしてよく寝てんなーって思ってな」

結衣「え!?よだれでてた!?っていうか!!ひ、ひ、ひ、人の寝顔見てたの!?ひ、ヒッキーの最低!変態!キモい!ストーカー!!」

八幡「お前が部室で勝手に寝たんだろうが。はぁ……たく、ほんとお前…ずっと寝てりゃいいのにな」

結衣「どういう意味だぁ!ヒッキー!あたしを馬鹿にしすぎだからぁ!!寝てたほうがいいなんてことはないからぁ!!」



360: cMVCB/0/0 2013/08/08(木) 17:55:15.16
「おたんじょうび」









八幡「うーん…結構メールがたまってきてんな…」カチカチ

八幡「奉仕部に入ってから、まぁメール相手は増えたしな…。由比ヶ浜に、戸塚、平塚先生に…あとは材木座と大志か。最後2人はいらねえな…」カチカチ

八幡「っと、これは」



☆★ゆい★☆    13:25
no title

今日は(;`×,_υ×)ゞ アッツィー…ね。
サブレも超のびてるよー。(卍 )_ρ(д`。) 扇風機ポチッとな



八幡「あぁ、夏休みの頃のメールか」

八幡「なんて返したんだっけか」



八幡       13:30
Re

暑いな。つうかお前んちクーラーねえの?




八幡「うむ、実に素っ気ないいいメールだ。自分を偽らないところに好感が持てる。これもか」カチカチ



☆★ゆい★☆     11:25
no title

アイス食べたーい\(^o^)/


八幡        11:33
Re

食いたきゃ食えよ。ていうかなんで顔文字がオワタなの?


☆★ゆい★☆ 11:34
Re:Re

オタワ?(´・ω・`)


八幡        11:38

カナダの首都かよ



八幡「しかしほんとこいつとのメールってなんの生産性もないよな」

361: cMVCB/0/0 2013/08/08(木) 17:56:23.80
八幡「と…ん…ああこれは…」



☆★ゆい★☆      0:00
★?誕生日おめでとう?★

ヒッキー!!今日は誕生日(*・ω-)オメデトー!!
ヒッキーのお父さんとお母さんにもアリ(●´・ω・)(●´_ _)ガト♪
あたしの方がちょっとの間だけ、お姉さんだったけどこれでまた同い年だね!(・ω・*)
これからも(。・ω・。)ノョ━ロ━シ━ク━━ね?


八幡         0:22
Re:★?誕生日おめでとう?★

ありがとよ。で、誰がお姉さんだって?


☆★ゆい★☆      0:23
Re:Re:★?誕生日おめでとう?★

σ(・ω・´)ア・タ・シ!


八幡         0:34
Re:Re:Re:★?誕生日おめでとう?★

たった2ヶ月でお姉さんぶんじゃねえよ、アホ^^




八幡         2:57
RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE・・・

ていうかお前もう寝たほうがいいんじゃないの?もう3時になんぞ


☆★ゆい★☆       2:59
Re:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE・・・

あ!ほんとだね!遅くまで(*;ω人)ゴメンネ!
じゃあお休み~★'.・.LOVE~(-ω-*(-ω-*)~LOVE.・.・:☆


☆★ゆい★☆       2:59
Re:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE・・・

さごいのミス!忘れて!!


八幡          3:02
Re:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE・・・

おちけつ 



八幡「誕生日メール…か。ま、今年は小町とマックと…んで…三通か。ま、悪くないよな…」


小町「おにいちゃーん!ご飯!!」

八幡「あいよー」ゴトッ

携帯<由比ヶ浜フォルダ チカチカ

携帯 フッ


369: cMVCB/0/0 2013/08/08(木) 20:28:05.97
「たんじょうぱーてぃ」






結衣「ねぇ、ゆきのん!今度誕生日パーティーしようよ!」

雪乃「……いきなり何を言い出すの、だいたい誰の誕生日を祝うというのかしら…」

結衣「もちろんゆきのんのだよ!」

八幡「雪ノ下の誕生日って…お前また随分遠い話しだしたな。確か冬だったろ?12月24日?」

結衣「それクリスマスじゃん!」

八幡「じゃあ12月17日」

雪乃「私はベートベーンではないのだけれど…」

八幡「ああ、すまん。そうか12月21日だったな」

雪乃「人のことをソ連の独裁者扱いしたいのかしら…粛正が必要ね…」

八幡「それそれ、そういうとこだろ。まんまじゃねえか。ていうかいつだったっけ」

雪乃「あなたに教えなければならない必然性が感じられないのだけれど」

八幡「まぁ、そうだな。別に知りたくもねえしな」

結衣「ヒッキーひどいし!1月3日じゃん!」

雪乃「由比ヶ浜さん!?」

八幡「あー、三ヶ日かー。それだとあんま学校の奴らに祝ってもらえたことねえんじゃねえの?」

雪乃「あなたが言えたことじゃないでしょう。まぁ自慢じゃないけれど学校の友人に祝われた記憶なんて一切ないわね」

八幡「まぁ、そもそも友達いねぇもんな」

結衣「ヒッキー!!」

八幡「しかし正月ってーとあれだな。やれることも限られてくんじゃねえの?まぁ、でもファミレスとかカラオケは開いてるか。でもケーキ屋とか開いてねぇだろ、そのへんどうすんの?由比ヶ浜が作んの?」

雪乃「比企谷くん…あなたはさっきから何の話をしているのかしら…」

八幡「あ?何ってお前の誕生日会の話だろ、さっきから別に話題変わってねぇだろ」

雪乃「………」

結衣「ふふーん、ヒッキーもちゃんとゆきのんの誕生日会のこと考えてくれてたんだ~」

八幡「は?お前何言って…って。………。」

結衣「………」ニヤニヤ

雪乃「………」

雪乃「まぁ、二人の気持ちはありがたいのだけれど、先のことだし。それに父の会社関係の集まりもあるから…参加できるかどうか…正直難しいかもしれないわ」

結衣「そうなんだ…、で、でもでも、もしその日じゃなくても集まれそうならお祝いしようね!!」

雪乃「ええ、気持ちはありがたく受け取っておくわ。由比ヶ浜さん」

結衣「うん!!」

八幡「(まぁ、その言葉を返されたら普通は拒絶なんだけどな。まぁ黙っとこう)」

370: cMVCB/0/0 2013/08/08(木) 20:29:07.09
結衣「じゃあ、誰のお誕生日会なら出来るかなぁ。あ、さいちゃんの誕生日っていー」

八幡「5月9日だ」

結衣「食い気味に答えられたし!」

雪乃「私と随分反応が違うように思うのだけれど…」

結衣「でも5月かぁ…じゃあお誕生日会はまだ無理だねー」

八幡「あぁそうだ!俺たちが出会った時、既に戸塚は17歳の誕生日を迎えていたのだ!!あぁ、なんという運命のいたずらか!!あ、でも戸塚の誕生日会ならいつやってもいいんじゃねえの?明日やろうぜ」

結衣「やらないし!!もうどんだけさいちゃんのこと好きなの!?ていうかヒッキーあたしの誕生日は覚えてる!?」

八幡「………。あー6月19日だっけ」

雪乃「太宰治」

八幡「6月27日」

雪乃「小泉八雲」

八幡「6月25日?」

雪乃「上田秋成」

八幡「じゃあ6月15日は?」

雪乃「空海ね」

結衣「途中から趣旨変わってるし!!『じゃあ』とかただの有名人のお誕生日クイズになってるし!!6月18日だし!ヒッキー聞いてる!?覚えてて!覚えててよ!?」

380: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 01:47:26.53
「どりんくばー」




結衣「ゆきのん、ゆきのん!何頼む!?」

雪乃「そうね…こういうところにはあまり来ないから、よくわからないのだけれど…ミラノ風ドリアというものにしてみようかしら」

結衣「さっすが、ゆきのん!!あたしもそれにする!!ヒッキーは?」

八幡「あー、そうだな。んじゃ田舎風ミネストローネとマルゲリータピザあとペペロンチーノ…はやめとくか。ミネストローネとピザだけでいいわ」

結衣「ヒッキー、結構食べるよね?」

八幡「お前らが小食なだけなんじゃねえの?あ、あとドリンクバーな」

雪乃「あ、私もそれを」

結衣「じゃー、全員分ドリンクバーセットね!」

八幡「んじゃ俺、取ってくるわ。何飲む?」

雪乃「では私はアイスティーを」

結衣「あ、あたしはコーラお願いしていい?」

八幡「あいよ」



八幡「雪ノ下はアイスティーっと…ちょっとウーロン茶混ぜとくか?いや、ばれるな…」ジャー

八幡「由比ヶ浜はコーラっと」ジャー

八幡「俺もコーラでいいか」ジャー



結衣「そしたら大志くんのことで沙希がーあ、帰って来た」

八幡「はいよ、雪ノ下。アイスティーな」

雪乃「ありがとう」

八幡「お前は、コーラな?」

結衣「うん、ありがとー。あれ?ヒッキーもコーラにしたんだ。へへ、お揃いだね」

八幡「…ああ、そうだな」

八幡「(いやそれ、むちゃくちゃどうでもいい情報でしょ。言わんけど)」

結衣「そういやさー、ヒッキーって大志くんのこと嫌いなの?」

八幡「大志って誰だよ」

結衣「ほら!あの沙希の弟くんの!っすっすっすっす言う子!この前いっぱい話してたじゃん!」

八幡「ああ、あの毒虫な…。いや別に好きとか嫌いとかじゃねえよ。単純に小町の周りを飛び回る害虫は早めに駆除しなきゃいけないってだけだ」

雪乃「相変わらず、小町さんのこととなると凶暴性が増すのね…」

八幡「まぁな、小町は俺の月であり。常に1700万ゼノ以上のブルーツ波を放っているからな」

結衣「わけわかんないし!」

八幡「いや、まぁ大志はきけー」

結衣「あ、料理きた。はい、ゆきのん!」

雪乃「ありがとう。……。」スッ、ゴト

八幡「いや、お前。無言で目の前に置くなよ…ありがとう」

結衣「じゃあ!いただきまーす!」

雪乃「いただきます」

八幡「いただきます」

381: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 01:49:03.42

結衣「んーー!!んまあーー!!あ、それでさヒッキー、大志くんがどうしたの?」

八幡「ん?」

結衣「いや、なんかさっき言いかけて途中でやめたじゃん!」

八幡「お前が遮ったんだろ…いやまぁあいつの場合小町が全く興味を抱いてないから。毒虫としての小町に対する危険度は既にDマイナークラスと正直脅威ではないんだけどな」

結衣「あー、まぁ確かにそれは見ててそんな感じかも…」

八幡「そうは言っても小町を傷つける可能性は0じゃないからな。兄としては妹を守る最大限の努力をする義務があるわけだ!」

雪乃「なにかしら…比企谷くんが、まるで立派なお兄さんをしているかのように感じるわ」

八幡「なぜだろう…立派な兄じゃないと言われているように感じるな。それにあいつ…まぁ、いい奴ではあるし、ネタも通じるから嫌いなわけじゃないんだけどな。ただ時々、うざいだろ」

結衣「あ、ああ~。沙希には悪いけど…確かにそれはわかるかも…。この前なんか途中からヒッキーのコピーみたいになってたし…」

雪乃「比企谷くんが二人に増えるだなんて…それは相当に鬱陶しいわね…」

八幡「おい、それじゃまるで俺が鬱陶しいやつみたいだろ」

結衣「………」

雪乃「………」

八幡「おい、否定しろよ」

結衣「あ、あたし喉かわいちゃったなー!」ゴクゴク

八幡「おい!」

八幡「(あれ?さっきこいつ自分のコーラ飲み干してなかったか?今飲んだの俺のコーラじゃね?)」

結衣「あ、それでさゆきのん!この前の話なんだけど…」

八幡「(こいつすごいナチュラルに飲んだよな…俺の思い違いか…?)」

雪乃「なにを言っているの由比ヶ浜さん、それは…」

八幡「(いやでも雪ノ下の前にはアイスティーの入ったコップがあるし…由比ヶ浜の両側に空のコップ…)

結衣「え!?そうなの!?アポロって11号だけじゃないんだ!!」

八幡「(そして俺の側のコップはさっき由比ヶ浜が飲んだコップ…いや、これ結論一つでしょ)

雪乃「…けれどあなたが本当に私立文系にしぼるなら、3科目に絞るというのも選択のー」

八幡「(けどこれ指摘したら多分2人がかりで罵倒されるよな。俺悪くないのに…)」

結衣「…ッキー?」

八幡「(となればやれることは一つ。飲み物を汲んでくるのをかってでて、しらっとコップを一つ交換する…これで解決するはず)」

結衣「ヒッキー!?」

八幡「おおう…なんだよ…」

結衣「飲み物汲んでくるけど何飲む?」

八幡「え!?い、いやちょっと待て、いいよ。俺が行くって」

結衣「いいのいいの。ヒッキーはさっき行ってくれたじゃん!そのお礼だから!気にしないで」

八幡「いや、だけどな、その」

雪乃「いいじゃない。人の好意は素直に受け取るものよ」

八幡「(なんでこいつこんな時だけ俺に優しいの!?でもそれ結果的に俺への攻撃になってますよね!どんだけテクニシャンなんですか!!)」

八幡「え…いや、だから、その…あーじゃあ、コーラで…」

結衣「うん、わかった!じゃあ行ってくるね!!」



結衣「これが、ゆきのんの、アイスティー」ジャー

結衣「そしてこっちがヒッキーのコーラー」ジャー

結衣「んであたしのコーラっと」ジャー



八幡「………」

雪乃「………」モグモグ

八幡「………」

雪乃「………」モグモグ

結衣「おまたせー!ジュース汲んできたよー!はい!ゆきのん!アイスティー!」

雪乃「ありがとう。由比ヶ浜さん」

結衣「そしてー…あ、あれ!?」

結衣「………」

八幡「おい…まさか…」

八幡「(まさか、今度はどっちがどっちか分かんなくなったの!?どんだけお馬鹿さんなの!?)」

八幡「お前グラスが…」

結衣「違う!そんなんじゃないから!ちょっとヒッキーはちょっと黙ってて!どっちがどっちかわかんなくなっちゃうじゃん!」

結衣「ま、間違ったら間接キスに…なっちゃう…し」ボソボソ

八幡「(いやもう既にどっちがどっちかわかんなくなってるんだろうが…大体どっちでも同じなんだよ!お前どっちも口つけてんだよ!)」

雪乃「………」モグモグ

結衣「こっち…いやこっち…?ええと?こ、こっち…こっちっぽいかな…うん、多分こっち…。は、はい!ご、ごめんね?ヒッキーややこしくしちゃって…」

八幡「お、おう…」

雪乃「………」モグモグ

八幡「(マイペースですね雪ノ下さん!下界のことはどうでもいいっって感じなんですか?雪ノ下さん!)」

結衣「………」ゴクン

八幡「………」

八幡「(なんなの?俺はどうすればいいの?これ飲んだほうがいいの?まぁ喉は…渇いてる…けど)

結衣「…なんかミラノ風ドリア…味がよくわかんなくなってきたし…」ポショ…

八幡「(それはこっちのセリフなんだよ…もうなんでミネストローネなのに、トマトの味が感じられないの?ピザなのにチーズの味がよくわかんないの?サイゼリヤもラブコメの神様もちょっと大雑把な仕事しすぎなんじゃないの!?マジで!)

390: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 03:50:47.53
「やきいも」






結衣「んー!!焼き芋美味しいね!!」

雪乃「まさに秋の味覚…というものよね」

結衣「あれだ!食欲の秋ってやつだね!」

八幡「まぁ、たまに食うとこれはこれでうまいな」

結衣「でもこんなに美味しいと太っちゃいそうだよね!ほらなんか馬が太る秋?っていうじゃん!」

雪乃「天高く馬肥ゆる秋のことを言いたいのかしら。あれはそう言う季節だということを表した言葉であって…別に馬が太ることがどうこう言ったものではないのだけれど…」

結衣「あ、そうなんだ…」

八幡「まぁ、その点に関しては安心しろ。さつまいもは美容にもいいんだぜ?」

結衣「そうなの?」

八幡「ああ、そもそもだなサツマイモはトマトやレタスなんかよりずっとビタミンCを多く含んでる。しかもそのビタミンCはサツマイモのでんぷん質が保護してくれるから加熱処理をしても、たっぷり残るんだよ」

結衣「なんでそんな詳しいし…」

八幡「ソースは美味しんぼ。初期山岡さんが言っていたから間違いない。それにサツマイモは繊維質が豊富だからな、腸の働きをー」

プゥ

結衣「………」

雪乃「………」

八幡「………」

結衣「…あ、あnー」

八幡「すまん、雪ノ下。屁ぇこいたわ」

雪乃「比企谷くん!あなた下品、下品だとは思っていたけれど。少しは言い方を考えなさい」

結衣「あ、あの…」

八幡「いやー、すまんすまん。さすがに熱弁をふるったらちょっと弁が緩んでな。弁だけに」

雪乃「……うざ。まぁいいわ……私は先に帰るから、後のことはあなたが処理なさい」

ガラガラ、ピシャ

結衣「あの、ひ、ヒッキーありがとう…」

八幡「あ?お前何言ってんの?そんなに俺の屁が嗅ぎたかったの?そういう趣味でもあんの?」

結衣「ち、違うし!そう言うこと言ってるんじゃないし!ひ、ヒッキーほんとに気づいてないの?」

八幡「気づく?何を気づくってんだよ。ああ、お前の趣味のことなら今なんとなく気づきかけてー」

結衣「だから違うし!そんな趣味ないし!」

八幡「まぁ、今のご時世アイドルだって恋愛する時代だ。そりゃあクラスのアイドル比企谷八幡くんだっておならくらいするさ」

結衣「誰がアイドルだし!ただのボッチじゃん!……ありがと」

八幡「だからなんでお礼言ってんの?やっぱりそういう趣味なの?」

結衣「ぜんっぜん!違うし!あたしもう帰る!!馬鹿!!!べぇ!!」
バーン!

八幡「(ふぅ~、あれ?でもこれって大丈夫なの?さすがに超えちゃいけないライン超えちゃってない?いろんな人から怒られない?ついでに比企谷くん、部室で孤立編に突入しちゃったりしない?大丈夫かなぁ…でも思いついたこと言っただけだしな…まぁいいだろ)」

403: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 05:17:55.59
「ぱじゃまぱーてぃ」








小町「おっじゃましまーす!」

結衣「ゆきのん!やっはろー!」

雪乃「いらっしゃい。二人とも早かったのね」

小町「いえー!なにせ雪乃さんのお家にお泊まりできるなんてことになったらもう。昨日から興奮でいてもたってもいられなかったんですよぅ!今朝も兄の食事も作らず飛び出して来ちゃいました!!」

結衣「あ~、じゃあヒッキー今頃自分でご飯作ってるんだ…」

小町「そうですね~、しかも食材もあまり残していないので買い物にも行っているはずですぅ。まぁなにせこうでもしないと兄は外に出ないですから!」

雪乃「そう…。とりあえず二人はリビングでかけて待っていてちょうだい。今紅茶を入れてくるわ」

結衣「あ、ゆきのんあたしも手伝うよ!」

雪乃「いえ、あなたは小町さんを案内してあげて。もちろん迷うことはないでしょうけれど、初めてきた場所なわけだし」

結衣「あ、うん!」

小町「でも~!すごい、きれいなマンションですよね!清潔感もあるし!小町憧れちゃいます!!」

結衣「だよね、だよね!あ、小町ちゃんどんなパジャマ持って来たの!?」

小町「あ、これです!これ!」

結衣「うわぁ~これ、かわいい!これ普段から着てるの?」

小町「いえいえ~!これは今回にあわせて新調しましたっ!!結衣さんのはどんななんです?」

結衣「あたしのはこれ!」

小町「うわぁ、これも可愛いですねぇ!このピンクの色使い!結衣さんに似合いそうですっ!!」

結衣「本当!?ありがとう!!あ、そうだ。もう着ちゃう??」

小町「着ちゃいます?着ちゃいましょうか?着ちゃいましょう!」

雪乃「まったく、二人で何を騒いでいるの…紅茶、入ったわよ」

結衣「あ、ありがとうゆきのん!!ってあれ?その参考書とノートは何?」

雪乃「何って、高校入学レベルの数学と理科と参考書に決まっているでしょう?小町さんの勉強を見るのだから当然じゃない」

結衣「え!?」

雪乃「今回は小町さんが総武高を受験するにあたって、比企谷くんでは頼りにならない理系科目を見て欲しいというから、この催しを許可したんじゃない」

結衣「そ、そうなの?小町ちゃん?」ヒソヒソ

小町「う、確かに説得の時にそんなことをチラッといったような気がします」ヒソヒソ

結衣「ダメだよ!小町ちゃん!ゆきのんにそういうのは通じないんだから!やるといったらやるんだよ!?」ヒソヒソ!

小町「た、確かに小町の計算ミスでした!小町ショック!!」

結衣「ゆ、ゆきの~ん。せっかくの機会なんだし、べ、勉強は後でいいんじゃないかなぁ?」

雪乃「由比ヶ浜さん。あなたそうやって物事をすぐ先延ばしにするから、勉強だって出来ないのよ。私だって何も一晩中勉強をしよう、だなんて効率の悪いことを考えているわけではないわ。重要なポイントはあらかじめまとめてあるから、それを順番に片付けていきましょう?」

小町「は、はい…」

結衣「うう…じゃあ。その間あたしは何してようかな…」

雪乃「何を言っているの。あなたも一緒にやるのよ」

結衣「ええ!?でも高校入試レベルだよ!?」

雪乃「だからちゃんと復習しておくのよ。あなたがもし本当に比企谷くんと同じように私立文系に絞るにしても、このレベルの数学や理科は常識レベルの知識として、大学を出た後も関わってくる話になるわ。言ったでしょう?あなたは受験の前にしっかりとおさらいをしておかなければならないって」

結衣「あの5年分の教材って話は全部本気だったんだ!?ううう!ゆきのん、ひどい!!!さすがにそれは馬鹿にしすぎだからぁ!!あたしだってちゃんと受験受かったんだからぁ!!!あたしだってちゃんと小町ちゃんを教えられるんだからね!!」

407: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 07:11:42.03
「しゃめーる」






雪乃「さて、このぐらいにしときましょうか」

小町「お、終わったぁ!!」

結衣「な、なんとかなったね」

雪乃「さて…それじゃあ私は夜食でも作ってくるわ」

結衣「あ、じゃああたしもー」

結衣「大丈夫よ由比ヶ浜さん。本当に大丈夫。気にしないで。手を出さないで。小町さんは由比ヶ浜さんと一緒にいて彼女が妙な真似をしないか監視しておいてちょうだい」

結衣「ゆきのんひどい!」

小町「わっかりましたー!任せてください!」

結衣「小町ちゃんまで!?」

小町「とりあえず結衣さん!せっかくなのでパジャマに着替えませんか?」

結衣「う、うん。なんかちょっと複雑だけど…。そうしよっか!」




小町「うわ~!!結衣さんやっぱり可愛いですねぇ~!!すっごく似合ってます!!」

結衣「ほ、ほんと!?小町ちゃんも可愛いよ!すっごい似合ってる!!」

小町「あ!そうだ結衣さん、せっかくなので~、写メとってもいいですか!?」

結衣「え、え~?でもそれはちょっとそれはちょっと恥ずかしいよ~」

小町「だいじょぶ、だいじょぶです!小町ぃ、すっごく可愛く撮りますから!それにほら記念ですし!」

結衣「記念!!確かにそうだね!みんなでパジャマパーティーが出来るなんて思わなかったし!じゃあ、撮ってもらおうかな!」

小町「ニヤリ、じゃあポーズお願いしてもいいですか?」

結衣「ぽーずぅ?」

小町「はい!まずは後頭部の所に右手を置いてもらって少し斜めな姿勢で」

結衣「こ、こう?」

小町「いいですね!いいですね!最高です!!」パシャパシャパシャ

結衣「そ、そうかなぁ。えへへ。」

小町「じゃあ、今度はぁ右手はそのままで左手でちょっとすそのところを軽ーく掴んでみてください!!」

結衣「こ、こうかな?」

小町「もっ、最高です!結衣さん!!可愛いです!これはもう事件ですよ!」パシャパシャパシャ

結衣「ほんとぉ?えへへぇ」

小町「じゃあ、そのままちょっとだけすそをまくって見てください!!」

結衣「うん!!……ってそれは無理無理!それ、ちょっとエッチな写真じゃん!」

小町「だいじょぶです!ちょっとだけ裾をつまんで、おへそをチラッっとさせるだけですから!せっかくなので、ちょっとセクシー系も撮ってみましょうよう!せっかくなので!!」

結衣「う、ううん。そうかぁ、せっかくだしね…せっかく。じゃ、じゃあこんな感じ?」ヘソチラッ

小町「おほー!結衣さん最高ですよぅ!これはもう小町大興奮です!!」パシャパシャパシャ

小町「次はちょっと前屈み気味で行ってみましょう!ええ、せっかくなので!おほー!最高ですよ!結衣さん!そそ、ちょっとチラっとチラッと!せっかっくなので!せっかくなので!!!」パシャパシャ、パシャパシャパシャパシャ



小町「いやー、随分撮りましたねー。もう小町の携帯、結衣さんの写真で溢れかえってますよぅ!」

結衣「い、いやーなんか恥ずかしいなぁ。ていうか小町ちゃん本物のカメラマンさんみたいだったね!パパが持ってたドラマでなんかああいうの見たことあるよ!」

小町「え……。結衣さん、もしかしてそのドラマ最後まで見ちゃったりしました?」

結衣「え?ううん?なんか俳優さんも女優さんも全然知らない人ばっかりだし、演技も上手じゃなかったから最初だけ見てすぐ消しちゃった。どうかしたの?」

小町「い、いえ!見てないなら全然大丈夫です!そういう結衣さんの純粋なとこ、小町的にもポイント高いです!!」

結衣「え、そうなんだ。なんかありがとう!」

小町「コホン、じゃあ気を取り直して、今撮った写真の中からお兄ちゃんに送る写真を選びましょう!」

結衣「そうだね。ヒッキーに送る写真を…ってぶえふぇへぇ!?小町ちゃん!ないない!それはない!それはないよ!!」

小町「え~、そうですか~?せっかくなので送りましょうよ!せっかくなので~!」

結衣「小町ちゃん、そればっかじゃん!!それはさすがに恥ずかしすぎて無理だよ!!」

小町「そうですか~?でも結衣さんちょっと考えても見てください」

結衣「な、なにを?」

小町「今日はうちの両親は帰宅しません。つまり兄は今、あの家にたった一人ですごしているのです!」

結衣「たった一人…!あれ、でもそれっていつも通りな気もするけど」

小町「それが違うんですよぅ!結衣さん!ほら普段は小町がいつも近くにいますから!家では一人ぼっちじゃないんです!」

結衣「そ、そっか!!」

小町「一人寂しく、人恋しくなっている兄の元に届けられる結衣さんの素敵なパジャマ写真…!これにはもう!兄は大喜び!今日の夜のお供はきまりです!!」

結衣「よ、夜のお供!?そ、それって!」

小町「はい!!」

結衣「ひ、ひ、ひ、ヒッキーが、そ、そ、そ、添い寝とかしちゃうってこと!?」

小町「ん!?………んんん。そうですね!!まぁそんな感じです!!」

結衣「添い寝…ひ、ヒッキーが添い寝…」

小町「どうしましょう…いえ、やっぱり恥ずかしいですよね…今回はやめておきましょうか…」

結衣「ま、まって小町ちゃん!やるよ!あたしやるよ!ヒッキーのためだもん!」

小町「ニヤリ、本当ですか!結衣さん!!兄もきっと悦びます!!小町的にもうポイント2倍モードです!!」

結衣「じゃ、じゃあ。写真はどれがいいのかな」

小町「それなら兄の検索ワードを知り尽くしている女、比企谷小町に任せてください!そう兄の検索ワード…そして隠しファイルになっている『微分積分』フォルダの中身から推察するに!1枚はこのへそちら!次にこの前屈みで谷間チラ!そしてこの見返り美人の3枚が兄のドストライクゾーンにはまるはずですぅ!!」

結衣「さ、さすが小町ちゃん!ヒッキーの妹!!」

小町「じゃあ、この三つを送りますね!送りますよ!?送りました!!!」

結衣「………」ドキドキ


ブーブーブーブー

結衣「あれ!?着信だ!?ひ、ヒッキー!?」

小町「すごい!さすが写真効果ですね!兄がたまらず結衣さんの声を聞きたくてかけてきたんですよぅ!」

ブーブーブーブー

結衣「ほ、ほんと!?じゃ、じゃあ出るね!!」

結衣「も、もしもしヒッキー?」

八幡「………。俺だ」

結衣「あ、あのさ。ひ、ヒッキー写ー」

八幡「お前アホか。小町なんかに乗せられてんじゃねえよ。アホか」

結衣「え、え?」

八幡「お前マジでアホだろ。だいたいあんな写真、いくら小町が相手だからって撮らせんな。アホ」

結衣「あ、あの…」

八幡「そんだけ。じゃあな」

結衣「あ、ヒッキー!」

ツーツーツーツー

小町「あ、あの。ゆ、ゆいさん」

結衣「………」グスッ

結衣「なんかすっごい怒られた…いっぱいアホって言われた…」

小町「は、はい…その小町にもさっきから怒りのメールが…すいません。小町もこんなことになるとは…」

結衣「うあーん!!あたしのバカぁ!ほんとに馬鹿だぁ!!馬鹿すぎだからぁ!!」

雪乃「あなたたち…何をやっているの…あれほど変なことはするなと言ったはずでしょう?まったくいったいどうしたらこうなるのかしら…」

420: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 16:10:57.23
「ものおぼえ」








八幡「MAXコーヒー買ってくか…」

八幡「人生(コーヒー)の酸いも甘いも嗅ぎ分ける。男のMAXコーヒー(ステマ)」ドヤッ

八幡「まぁ金もらってねえから成立してねえけどっと」アタリダヨー

八幡「珍しいこともあるもんだな…じゃあ…まあカフェオレっと」

八幡「あと雪ノ下は野菜生活でよかったっけか」



八幡「うす」

結衣「あ、ヒッキー!」

雪乃「こんにちわ」

八幡「ほいよ、由比ヶ浜カフェオレやるわ」

結衣「え!?ありがとう。あ!出すよ!お金」

八幡「ああ、いいいい。そこの自販機で当たったんだよ。ほら当たりがでたらもう一本ってやつだ」

結衣「え!?あそこの自販機当たりでるんだ!!ただの飾りかと思ってた!」

八幡「ああ、俺もそう思ってたんだけどな。まぁそういうことだから気にせずもらっとけ」

結衣「うん。ありがとうヒッキー。えへへ…」

八幡「(………。当たりのジュースと引き換えにしちゃ、この笑顔はちょっともらい過ぎかもな)」

八幡「はいよ、雪ノ下。野菜生活な」

雪乃「あら。気が利くのね…。ありがとう」

八幡「(こいつは払うそぶりも見せねえな。まぁどのみち受け取らないの分かってるからなんだろうけど)」

結衣「あれ!?でもなんかこんなこと前にもあったよね!?」

八幡「……。ああ、そういやそんな気もすんな」

雪乃「それは今年の4月15日、16時27分頃のことね」

結衣「え…」

八幡「………。お前なんでそんな詳しく覚えてるの?完全記憶能力の持ち主なの?インなんとかさんなの?ていうかほんとビビるわ」

雪乃「馬鹿馬鹿しい。そんなわけないじゃない。その時起こった出来事を日付や時間と関連付けて覚えているだけよ」

八幡「普通はそれができないんだけどな、ルンゲ警部かよ」

八幡「(雪ノ下の頭の中ってどうなってんだろうな。もしかしてイベントCG閲覧モードとか、アルバムモードとかあんのかな。ふむ…だとするとあのテニスの時の着替えとか合宿の時の水着とかまざまざと思いだせんのか。色々と捗るな)」

雪乃「そ、それにあの日は由比ヶ浜さんと出会った日じゃない…強烈な記憶と共に海馬に記憶されたエピソードは忘却されにくいのよ」

八幡「お前は助手なの?」

八幡「(じゃあ、由比ヶ浜はまゆりだな、胸的に。まぁしかし実際、俺も覚えてはいたしな。いろんな意味で強烈な出来事であったのは確かだし。日付まではさすがに無理だが)」

結衣「ゆきのん!!」ヒシッ

雪乃「由比ヶ浜さん…」ナデナデ

八幡「(急にゆるゆりが始まった…まぁ結衣だしな。結衣先輩!!つっても実はあんま詳しくないからあの金髪の子が主役ってことぐらいしか知らんけど)」


結衣「でもそっか…てことはもう二人とあってから半年くらいたってるんだね。えへへ。なんか早いなぁ」

雪乃「まぁ、それなりに色々あったわよね」

八幡「あぁそうだな。インターハイ出たらいきなり強豪校と当たったのはビビったよな」

結衣「そんなことなかったし!ヒッキーの記憶どうなってんの!?」

雪乃「妄想と現実の区別つかなくなっているのね…さすがは比企谷くんだわ」

結衣「でもでも!みんなでした肝試し!超怖かったよね!?」

八幡「ん?」

雪乃「え?」

結衣「あれ?」

八幡「んなことしてねぇぞ…」

雪乃「確かに脅かす役はしたけれど…、脅かされるほうはやってないわね」

結衣「あ、あれー?これ、ヒッキーたちとじゃなかったっけ…?」

八幡「一体誰と行ったんだよ…。そっちのが怖ええよ…」

結衣「じゃあ三人で千葉動物公園…」

雪乃「行ってないわ」

八幡「行ってねえよ」

結衣「あ、あれー?」

雪乃「ワラビーだ、ミーアキャットだのという話はしたけれど…実際に訪れてはいないわね」

結衣「あ、あれ?パパとママと行ったんだっけ…?いや優美子と姫菜?」

八幡「それがどうして俺たちとの思い出になるんだよ…。ていうかお前の記憶ぐちゃぐちゃになりすぎだろ…俺の部屋かよ…」

結衣「じゃ、じゃあ!なんとか部との大富豪対決は!?」

雪乃「それはあったわ」

結衣「よ、よかったぁ~」

八幡「いやよくねえだろ…。的中率3分の1だぞ。お前人の記憶のこと言えねえだろ。どうなってんだよ。大体なんでそんなどうでもいいこと覚えてんの?俺のパン一みて興奮したの?」

結衣「そ、そんなわけないじゃん!!ヒッキー何言ってんの!?マジキモい!!ヒッキーと仲直りできた時のだからよく覚えてるんじゃん!!」

八幡「………」

雪乃「私としては記憶から消し去りたい光景のナンバーワンなのだけれど…。それはまぁいいわ。由比ヶ浜さん、あなた本当に一度セラピーとか受けたほうがいいかもしれないわね」

結衣「ゆ、ゆきのん…」

雪乃「大丈夫、大丈夫よ由比ヶ浜さん。何も心配することはないの。私がいいお医者さんを紹介するわ。とても腕のいい先生よ。すべて私に任せて安心してくれればいいわ」

結衣「ゆ、ゆきのん!そ、その妙にいい笑顔でこっちを見ないで…怖いよ!ていうかお医者さんとかいらないからぁ!!ただ記憶違いしてただけだからぁ!!馬鹿にしすぎだからぁあ!!!」

426: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 19:01:38.89
「とらんぷ」




結衣「ねぇねぇゆきのん!暇だし3人でトランプしようよ!!」

雪乃「脈絡もなくいきなり何を言い出すの…そもそもトランプと言ったってものがないでしょう?」

結衣「あたし持って来てるよ。ほら!」

八幡「お前はいつでもどこでも修学旅行気分かよ。ウノとかも持ってきてんじゃねえの?」

結衣「きてるよ?」

八幡「持ってきてるんだ…どんだけ遊ぶことに貪欲なんだよ…」

雪乃「あるのならまぁいいけれど、一体何をするの?」

八幡「いいんだ…。お前最近由比ヶ浜に甘過ぎだろ…」

結衣「じゃあ!まずはババ抜きから!!」



八幡「……こっちか…」スッ

結衣「…………」ズーン

八幡「……いや、やっぱこっちかな」スッ

結衣「…………!」パァァ

八幡「……いやいや、ここはこっち…」スッ

結衣「…………」ガアン

八幡「………まてよ。こっちという可能性も」スッ

結衣「………!」パァァ

八幡「(なんかちょっと可愛いな…)」

雪乃「比企谷くん…由比ヶ浜さんで遊ぶのはやめなさい」

結衣「ううう!次は七並べ!!!」



結衣「ちょっとヒッキー止めないでよ!!」

八幡「いや、そういうゲームだから」

結衣「止めてることは否定しないんだ!!ヒッキー性格悪い!!」

雪乃「そんなこと、初めて顔を見た時からわかることでしょう?由比ヶ浜さん今更、一体何を言っているの?」

八幡「むやみに俺を傷つけるのやめてくんない?」

結衣「ううう!次は神経衰弱!!」



雪乃「…………」ペラッペラッ

雪乃「…………」ペラッペラッ

雪乃「…………」ペラッペラッ

雪乃「…………」ペラッペラッ

雪乃「…………」ペラッペラッ

雪乃「…………」ペラッペラッ

結衣「いつまでもゆきのんの順番が終わらない…」

八幡「ただトランプを裏返してるだけみたいになってんな…。ていうか何でこれで勝負しようと思ったんだよ…」

結衣「ううう!次はダウト!!」

427: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 19:02:42.64
結衣「むぅぅぅぅぅ…は、8!!」

雪乃「ダウト」

八幡「ダウト」

結衣「何で分かるのぉ!?」

八幡「何で分からないと思うんだよ…」

結衣「つ、次はポーカー!!」




結衣「よし!いけそう!」ニコッ

八幡「………」

雪乃「………」フッ

八幡「っ!」ビクッ

結衣「っ!」ビクッ

雪乃「レイズ…」

八幡「っく…フォールド…!」

結衣「レ…あたしもフォールド…」

雪乃「…ふぅ。二人が降りてくれて助かったわ。私4の1ペアだったもの」

八幡「お前はなんなんだよ!なにものなんだよ!あの超こええ意味ありげな微笑もブラフか!」

結衣「あ、あたし…フォーカードだったのに…」

八幡「お前もなんなんだよ!それはいけるだろ!!ビビんなよ!!降りんなよ!!」





結衣「ああ、もう全然だめ~!ゆきのんに一つも勝てない~!」

八幡「言っとくけどお前、俺にも何一つ勝ててないからな。単独最下位独走状態だからな?広島みたいな感じだから」

結衣「ヒッキーうっさい!!でも何で全然勝てないんだろ…」

八幡「お前わかってねえの?お前、考えてること全部表に出てんだよ」

結衣「え~??」

八幡「もう見てれば、どのカード持ってるとか、何考えてるとか丸わかりなんだよ。神経衰弱は関係ねぇけど、あれでお前が俺ら…というか雪ノ下に勝てる要素が一つもないからな。当然だろ」

結衣「み、見ないでよ…」

八幡「い、いや、勝負ごとだし。か、観察も勝負のうちだし…」

結衣「そ、そっか…そうだよね」

雪乃「まぁ裏表がないのは由比ヶ浜さんの長所の一つ。ではあるのだけれどね」

八幡「お前もうお面かぶってたら?そしたらネックは頭だけになるだろ」

結衣「なにそれ!あたしの顔なんて見たくないってこと!?」

八幡「いや、お前そんなこといってねぇだろ…:

雪乃「つまり比企谷くんは表情を隠せと言いたいのよ」

結衣「表情ぉ?」

八幡「あぁ、見えなくすりゃ。読まれることもねえだろ?まぁそれはそれで残念ではあるけどな」

結衣「ざ、残念ってどういう意味?」

八幡「あ!い、いや!ほらお前!顔見えないと勝率さがるかも知れないしな!勝負事だしな!あ、いやでも心配ないよな。お前馬鹿だからそれ以前の部分でこっちが勝てるもんな!!」

結衣「ば、馬鹿いうなし!!これでも中学の時は結構強かったんだからね!?今度はウノしよう!?ウノ!!絶対目にもの見せてやるんだからね!?」

435: cMVCB/0/0 2013/08/09(金) 20:31:35.84
「いぬがはまさん」







結衣「ゆきのん!?これって、食べていいの!?ねぇ!ねえ!食べていい!?」

雪乃「ええ、大丈夫よ」

結衣「本当!?これって飾りじゃないの!?食べて大丈夫なの!?」

雪乃「えぇ、ミントだから大丈夫よ」

結衣「そっかぁ!あたし料理下手だから!ミントとか知らなかったから!」

雪乃「ええ。そうね」

結衣「うん!でもミントって言うんだ!食べていいんだぁ!ケーキと一緒に食べちゃっていいんだよね!」

雪乃「そうよ。食べていいのよ」

結衣「よかったぁ!じゃぁ食べようよ!ゆきのんも食べよう!」

雪乃「ええ、食べましょう」

結衣「あ~!!おいしいねゆきのん、ねえゆきのん!」

雪乃「ええ、美味しいわね。絶品だわ」

結衣「あぁーケーキ美味しいね、ゆきのん!!美味しいねぇー!」

八幡「こんなのどっかで見た気がすんな…」

453: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 00:02:58.19
「おさんぽ」







八幡「小町~、俺ちょっと本買い行ってくるわ」

小町「えー!お兄ちゃんじゃああたしもあたしも!」

八幡「受験生なんだから、お前は家で勉強してろ。ああ、あとついでに晩飯の材料も買ってくるから。何食う?」

小町「んー、じゃあ麻婆豆腐!!」

八幡「あいよ、んじゃ行ってくるわ」


ガチャ


サブレ「ひゃんひゃん!」

八幡「………」

サブレ「ひゃんひゃん!」

八幡「お前どした。なんでここにいんの?」

サブレ「く~ん、く~ん」

八幡「いや、腹見せんじゃねえよ。そういうこと言ってんじゃねえんだよ」ナデナデ

サブレ「ひゃんひゃん!」

八幡「ほんとあいつ何やってんの?」

八幡「…たく」ピピピ

八幡「しかも電話でねぇし…。とりあえずメール送っとくか『サブレは預かった。連絡しろ』。なんか脅迫メールっぽいか?いや、いいか」

八幡「………。つーか、おい、サブレ。お前事故現場から逃げ出してきた、とかじゃねえよな?」

サブレ「くぅん?」

八幡「……。いや、まぁ、んなわけねえよな。助け呼びにくるような奴じゃねえよな、こいつ」

サブレ「ひゃん!」

八幡「おーい、小町ー?うちってリードみたいのなかったっけ?」

小町「リード?なんでリード?およ、お兄ちゃんなんでサブレがここにいるの?さらってきたの?」

八幡「さらうか。こんなもん一つしか可能性ないだろうが、由比ヶ浜が散歩中にでも逃がしたんだよ」

小町「あぁ~、はっは…。まぁ結衣さんだしねぇ。んーリードってこの紐で大丈夫かな?」

八幡「おー、まぁ括り付けときゃ外れんだろ。あいつ電話でねぇし、ちょっとあいつの家方面行ってくるわ。途中でかち合うか、連絡つくかも知れんし。お前んとこに連絡きたら、俺に連絡しろって言っといてくれ」

小町「はいは~い。結衣さんによろしくねぇ~」

454: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 00:04:14.04

テクテク

サブレ!サブレェ~?

八幡「あ、いたわ」

サブレ「………」

結衣「サブレェ~!?どこ~!?」グスッ

八幡「おい」

結衣「うひゃあ!?ちょ、あ、ひ、ヒッキーかぁ!!び、びっくりさせないでよ!!ってあれ!?サブレ!?なんでヒッキーといんの!?」

サブレ「ひゃん!」

八幡「いやそれ、俺のセリフだから。毎度毎度こいつ逃がすなよ。つかお前携帯どした」

結衣「携帯…あれ!?家に置いて来ちゃった!?」

八幡「アホか。どうでもいい時に使いまくってんのに、大事な時に携帯してなかったら携帯の意味ねぇだろ。連絡つかねえからなんかあったのかと思っただろ」

結衣「ご、ごめんね?でも、ありがとヒッキー!!あたし2時間くらい捜してたんだけど…見つかんなくて…」

八幡「2時間も探してたのか…てかこの辺り探してても、そら見つからんわ。こいつ俺んちの玄関の前でお座りしてたぞ」

結衣「えぇ~!?ヒッキーんちで!?なんで!?」

八幡「俺が知るか、帰巣本能がバグってんじゃねえの?」

サブレ「ひゃん!」

八幡「…ああ、それかあれだ。前に預かった時こいつお前のこと忘れちまってたし、お前んち、こいつに家だと認められてねえんだよ。だからたったあれだけいただけで、俺んちのことを自分の家だと上書きしちまったんじゃねえの?」

結衣「ええ~!?ヒッキーひどい!!そんなことないよね!?サブレ!?」

サブレ「………」

結衣「お姉ちゃんの質問に答えてよぉ!サブレェ!」

八幡「感動の再会だな!ま、つーわけで本屋行くんで俺は行くわ。んじゃぁな」

結衣「あ、うん!ヒッキーありがとね!」

八幡「おう…。あ、いや、まて。つーかさ、俺てっきりそいつのリード外れんのって首輪のせいだと思ってたんだけど。リードの金具のほうがお前と同じで馬鹿になってんじゃねえの?」

結衣「馬鹿言うなし!!あ、でもそうかも…バネのところがみょいんみょいんなってる…」

八幡「みょいんみょいんってなんだよ…。まぁそれなら、悪いことは言わんから、早いうちに買い直しとけよ。今度は見つからんかも知れんぞ」

結衣「うん。そうする。ありがとヒッキー…。あ!!ねぇヒッキー!こっちのほう来て本屋ってことはマリンピアのほう行くんでしょ?」

八幡「あ?ああ、まぁそうなるな」

結衣「じゃ、じゃああたしも行っていい!?ほら!あそこペットショップもあるし!やっぱり早めに買い直さなきゃいけないし!」

サブレ「ひゃん!ひゃん!」

結衣「ほ、ほら!サブレもヒッキーと一緒にいたがってるし!いいでしょ?」

八幡「………。ん、ま、まぁそうだな。勧めたのは俺だし、な。まぁ、好きにすりゃいいんじゃねえの?」

結衣「うん!!そうする!!」

サブレ「ひゃん!ひゃん!」

結衣「うんうん!サブレありがとね!おかげで休みの日なのにヒッキーにあえてお出かけできちゃった!」ボソボソ!

サブレ「ひゃん!ひゃん!」ペロペロ

結衣「うんうん!ありがと!帰ったらいっぱいご飯あげるね!」

八幡「(飼い主とペットは似るって言うけど、こいつとサブレもやっぱりどこか似ている。アホっぽい行動も、それでいて、もしかしたらどこか計算高いのかも知れない性格も。そしてなにより、いつも尻尾を全力で振っているような、その人懐っこい性格が)」

結衣「あ!ヒッキー!向こうついたらお礼になんかおごったげるね!!」

八幡「いらんわ。そんな金あるならその分少しいいリード、買えよ」

458: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 02:21:17.18
「いやほん」









結衣「ーーー!ーーー?」

八幡「ん?」

結衣「ーーきー?聞いてる?」

八幡「いや、お前イヤホンしてたんだから聞こえるわけねえだろ。何?」カタミミハズシ

結衣「いや、ヒッキー何聞いてんのかなーって思って」

八幡「あー?いや、別に?なんつーか?普通の?J-POP?」

結衣「なーんか怪しいし!ちょっと貸して!」

八幡「お、おい」

八幡「(い、イヤホン半分こ…だと!?)」

結衣「へぇ~!結構いい曲だね!でもこの人聞いたことないかも。アニソン?」

八幡「なんでアニソンて決めつけんだよ…まぁアニソンだけど」

八幡「(ていうか顔近くね)」

結衣「やっぱりアニソンなんじゃん!なんで否定すんの?」

八幡「なんでってお前、前話したろ。アニソンと女子の組み合わせには、あんまいい思い出がねんだよ」

結衣「ふぅ~ん?でもこの曲も別にオタクっぽくないし、曲が良ければ別にいいと思うけど?」チラッ

八幡「(………目があった……、ていうか近ぇ…)」カァ

結衣「………!」カァァァ

八幡「………」メソラシー

結衣「って、て、て、てかさ!」

八幡「な、なんだよ」

結衣「あ!あ、あんま離れんなし。こ、コードがピーンってなっちゃうじゃん」

八幡「い、いや、お前がイヤホン返せばいいだけのことだろ。馬鹿かよ…」

結衣「あ、そ、そっか。てか馬鹿言うなし…」

八幡「んで?」

結衣「あ、そ、そうそう。なんかさ、そのイヤホンすっごい音よくない?」

八幡「あぁ、だろ?まぁ、これ結構いいやつだからな」

結衣「そうなん?5千円くらい?」

八幡「いや、アマゾンで2万くらいだった」


結衣「はぁ!?2万!?」バン

八幡「な、なんだよ」

結衣「なにそれ!イヤホン一つに2万円も使ったっていうの!?ヒッキー信じらんない!!」

八幡「別にいいだろ…なにも形のないものに金かけたってわけじゃないんだし…」

結衣「よくないし!だって最初っからついてくるイヤホンとあんま変わんないじゃん!!」

八幡「いや、お前さっき自分で音がすっごいいいって言ったばかりだろ。速攻で自分の言葉否定すんなよ」

結衣「そんなの値段聞いたら変わるし!2万円と0円との差じゃないじゃん!」

八幡「つうかだな。これ元は3万くらいするんだよ。35%オフの1万円ちょっと引きで19400円なの。だからお買い得なんだよ」

結衣「そういう問題じゃないし!そんな無駄遣いするのがいけないって言ってんの!」

八幡「いいだろ別に。俺が自分で稼いだ金で買ったんだから、お前に文句言われる筋合いはねえよ!」

結衣「だってそれ、ヒッキーが前に言ってたスクラップのお金でしょ!?じゃあそれご両親のお金じゃん!!ヒッキーが稼いだお金じゃないでしょ!!」

八幡「なんなの!?だいたい、何でお前にそこまで言われなきゃなんねんだよ!?お前は俺の嫁かなんかなの!?そうやって金勘定の時だけいちいち主婦っぽくなんのやめろ!!」

結衣「よ、よ、よ、よ、よ、よ、よ、よ、嫁とか!!嫁とかしゅしゅしゅしゅ、主婦とか!?ひ、ひ、ひ、ひ、ヒッキーな、なな、な、な、な、なに言ってんの!?」カアアアアアアアアア

八幡「あ……」カァ

八幡「(口がすべったぁぁぁぁぁぁ、前から思ってたことがつい勢いで!!)」

八幡「い、いや…あの…その…なんだ…す、すまん…つ、ついな」カァ

結衣「い、い、い、いや、べ、べ、べ、べ、べ、別に、ぜ、ぜ、ぜ、全然、き、気にしてないけど……!」カァァァァァァ

八幡「そ、そうか……」カァ

結衣「う、うん……」カァァァァァァ

八幡「…………」ドキドキ

結衣「…………」ドキドキ

結衣「あ、あのさ…、ひ、ヒッキー」

平塚「…………」ガタン

八幡「………あ」

結衣「………あ」

平塚「ゆ、雪ノ下は、ま、まだ来ないようだしな。わ、わたしはちょ、ちょっと出直してくることにしよう」

八幡「(そう言えばこの人最初からいたんだった…)」

結衣「ひ、平塚先生…」

平塚「じゃ、じゃあ…」

スタスタスタ、ガラガラピシャ

平塚「う、うわああああああああああああああ!!!結婚したいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!あんな喧嘩がしたいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」ダダダダダダダダダ!

八幡「誰か!!誰か!!もらったげてぇぇええええぇええええ!!!」

結衣「でもヒッキーはだめだからねぇぇぇぇぇぇえぇぇぇえええ!?」

477: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 14:04:51.13
「ねんがじょう」








結衣「ねぇ、ゆきのん!住所教えてー」

雪乃「住所って、あなたうちには何度も遊びに来ているじゃない。何を今更…」

結衣「あ、違うのゆきのん。お正月に年賀状出すでしょ?そのために教えて欲しいなって思って」

雪乃「ね…んが…じょう?」

八幡「何お前、年賀状とか書くの?リア充ってそういうのツイッターとかメールで済ますんじゃねえの?『あけおめ~』とか送りまくってメールサーバーパンクさせんじゃねえの?」

結衣「何その、やな言い方。まぁ確かに優美子とかはそういうのやらないって言ってたけど、あたしは普通に、毎年仲のいい友達には年賀状送ることにしてるよ?」

雪乃「仲の…いい…とも…だち…」カァ

結衣「うん!友達!」

雪乃「そ、そう。そういうことなら仕方ないわね、な、何かに書けばいいのかしら」

結衣「うん!あ、じゃああたしの手帳に書いてもらっちゃおうかなぁ」

八幡「(最近ますます雪ノ下のチョロイン化が激しくなってきたな…。そのうちちょろのんとか言われちゃうんじゃないの?まぁデレてんの由比ヶ浜に対してだけど)」

結衣「ヒッキーも住所教えて!」

八幡「あ?あー…あれだ。ほらうちはあれだから、忌中だから」

結衣「え!?そうなの!?そ、それはご愁傷さまで…ってそれ絶対嘘でしょ!?なんでそういう嘘つくの!?」

八幡「い、いや。う、嘘じゃねーし」

結衣「100%嘘じゃん!!目泳いでるし!!小町ちゃんに確認するよ!?ていうか何でそんな嫌がんの?」

八幡「………そう、あれは小5の頃の話だ。俺は友達だと思っていた奴ら10人くらいに手書きで年賀状を書いた。イラストも一人一人ちょっとずつ変える工夫もし、小粋な一言メッセージを添えるのも忘れなかった。だが正月…、俺宛の年賀状は一通もなかった…!それどころか、学校が始まるまで毎日朝一にポストを確認したのに、俺宛の年賀状の返信はついに来なかったんだ!!……それ以来年賀状には夢を見ないようにしてんだよ」

結衣「でもあたしちゃんと書くし~、ていうか今も年賀状一通も来てないの?」

八幡「ばっかおまえ。今は毎年ちゃんと5通くらいきてるぞ」

結衣「どうせ、全部お店からのやつなんでしょ?」

八幡「まずは近所の床屋だろ、TSUTAYAだろ…っておい!なんで知ってんだよ。俺の渾身のぼっちあるあるをキャンセルすんじゃねえよ」

結衣「もうヒッキーの考えてそうなこと、顔見ればわかるしー」

八幡「お、俺のことそんな理解すんなよ。やめろ…」



雪乃「由比ヶ浜さん。書けたわ」

結衣「あ、ゆきのんありがとう!!はい!じゃあヒッキーはここに書いてね」

八幡「結局俺も書くのかよ」

雪乃「でも比企谷くんではないけれど、私も年賀状というものを書いたことはないわ」

八幡「いや、俺は書いたけど帰って来なかったんだよ…」

結衣「そうなの?」

雪乃「えぇ、うちには父の仕事がら毎年たくさんの…本当にたくさんの年賀状が来ていたのだけれど、そのうちの多くの人は三が日の集まりや、新年のパーティーなんかに必ず顔も出すのよ。だから私には、年賀状なんてあまりに非効率で生産性のない活動にしか思えなかったわ」

結衣「ゆきのん…」

雪乃「でもだからこそ、今のマンションに引っ越してきた時は驚いたわ。新年になってもポストには一通も年賀状が入っていなかったんだもの。私…本当に家関係のつながりしか、なかったのね」

結衣「ゆきのん大丈夫!今年はちゃんとあたしが送るから!!」ヒシッ

雪乃「ありがとう。由比ヶ浜さん…」ナデナデ

八幡「(なんだよ。可哀想加減では俺の話も結構いい線行ってたろ。なんでひしって来ないんだよ。ちゃんとなでなでもするのに。いや来られても困るんですけどね)」

八幡「ていうか由比ヶ浜は全部手書きでやってんの?」

結衣「ううん、基本はパソコンで印刷して~、メッセージとかは自分で書くよ。うちはパパがそういうの得意だから、途中までやってくれるの」

八幡「ふーん」

八幡「(パパヶ浜さん、いいように使われてんな。多分娘に褒めてもらいたくて一生懸命やるんだろうな。うちの親父みたいに)」

結衣「あ、でも姫菜とかは一人一人に全部手書きでイラスト書くって言ってたんだよ!すごいよね!」

八幡「(それは果たして喜んでいいものなのだろうか。馬×蛇の擬人化イラストとか送られてきたら、俺は速攻で破り捨てるけどな。むしろトラウマになるまである)」

結衣「あ、あとは平塚先生とかにも送るかな、いつもお世話になってるし」

平塚「ふふ…年賀状…年賀状か…」

結衣「わ!!平塚先生いつの間に!!」

雪乃「先生、ノックを」

平塚「ふふふ、いいなぁ君たちは年賀状というものに希望を持っていて…」

八幡「せ、先生どしたんですか…いきなり出て来てちょっとやさぐれすぎでしょ…」

平塚「わ、私ぐらいの年になるとだな。送られてくるんだ、その、子供を抱いた幸せな家族写真や、え、干支そっちのけで子供たちの成長記録になっているような、年賀状が!!」

雪乃「自分で言ってダメージを受けるのなら、言わなければいいのに…」

結衣「せ、せんせい!だ、大丈夫ですよ!先生もきっとそのうち送れるようになりますよ!結婚さえすれば!!」

平塚「ぐはぁ!」

八幡「お前は鬼か…、先生が気にしてるとこそこなんだよ…。なんでピンポイントでえぐんだよ…」

平塚「うっ!」

ガラガラガラ、ピシャ!

平塚「うわあああああああああああああああああああああ!結婚したいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

雪乃「結局、先生は何をしに来たのかしら…」

八幡「(ほんともう、誰かもらったげて…。じゃないとほんとに俺がもらってしまいそうだ…)」

結衣「……!!ヒッキー!そ、それ、ぜ、絶対ダメだからね!?絶対だからね!?」

483: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 17:32:07.60
「おいしいうさぎ」


結衣「ねぇゆきのん!うさぎって美味しいの?」

雪乃「え?…そうね。私もあまり食べたことはないのだけれど、クセがなくて食べやすい感じだったかしら。食感的にも鶏肉に近いと感じたわね。急にどうしたの?」

結衣「ん?あのねー、歌にあるじゃん。『う~さ~ぎ~美味しかーのーやーま~』ってやつ?昨日テレビから流れてくるのを聞いたら気になっちゃって!」

八幡「ああ、ふるさとな。ていうかみんなの歌でも見てたのかよ」

雪乃「由比ヶ浜さん。あの歌詞は『兎追いし かの山』と歌っているの。つまりは野山で兎を追いかけた、その情景を思い出しているものなのよ。だから別に『うさぎを食べたら美味しかった』と言う感想を述べているわけではないのよ?」

八幡「おー、なんかお前由比ヶ浜に説明するの手慣れてきたな。なんか保母さんみたいになってんぞ」

雪乃「そう?ありがとう」

結衣「ゆきのんが保母さんならあたし園児ってことじゃん!ちょっと馬鹿にしすぎだし!!」

雪乃「けれど、先ほどの勘違いは確かに園児並みよ。初めてこの歌を聞いた五歳児くらいが考えそうなことだわ」

結衣「ゆきのんひどい!!」

八幡「でもまぁ、由比ヶ浜の話もあながち間違っちゃいないと思うけどな」

雪乃「どういうことかしら」

結衣「だよね、だよね!?あたし全然五歳児じゃないよね!?」

八幡「いや、そこは否定しねえけどな」

結衣「ヒッキー!?」

八幡「ほらうさぎを追いかけるにしろ、小鮒を釣るにしろやっぱり食べるためじゃねえかって思うんだよ。犬や猫じゃあるまいし、うさぎと追いかけっこして遊んでいたとも思えないだろ?鮒だってキャッチ&リリースをしてたとは思えないし」

雪乃「まぁそう言った見方をすれば、確かにそうね。昭和中頃までは、うさぎは普通に食べられていたわけだもの。田舎の小学校では学校行事でうさぎ狩りをしていたなんて話もあるものね」

結衣「昔ってことは、今はもううさぎ食べられないの?」

雪乃「いえ、フランスやイギリスなどの欧州各国では今でもうさぎは立派な食材として食べられているわ。食用としてうさぎを飼育している農家もあるくらいよ」

結衣「そうなんだー」

八幡「ちなみに言っとくと、あのピーターラビットのお父さんはうさぎパイにされて食べられてる。これ豆な」

結衣「そんな豆チいらないし!ちょっとショックだし!」

雪乃「まぁ、ただ日本の場合、例外的にうさぎ料理の専門店があったりはするけれど、うさぎを食べるのはもう一般的ではないわね」

八幡「安物のソーセージとかで知らんうちに食ってることはあるかもしれんけどな」

雪乃「あ!じゃあさ、ゆきのん!高校卒業したら二人でフランスに卒業旅行行こうよ!」

八幡「遠路はるばるフランスまでうさぎを食いに行くの?戸塚が聞いたら激怒すんな。お前、戸塚に謝れよ」

結衣「そういうことじゃないし!ちょっと思いついただけだし!どんだけさいちゃん好きなの!?」

雪乃「高校の卒業旅行で海外に行くと言うの?それは少し…非常識じゃないかしら。それに高校を卒業したばかりの女性が二人でフランスだなんて少し危険だと思うわ」

結衣「あ、じゃ、じゃあヒッキーも一緒に…」

雪乃「何を言っているの。この男を連れて行ったりなどすれば、道中や宿泊先での心配事を増やすだけでしょう?」

八幡「なに言ってるし!あたし超紳士だし!英語で言えば……わかんないし!!」

結衣「あたしの真似すんなし!て言うかジェントルメンくらいあたしにもわかるし!!!」

八幡「いや、ていうかねえよ。県外に出るのだって面倒くせぇのに海外とか、ダルすぎでしょ。未知との遭遇でしょ」

雪乃「由比ヶ浜さん…、それにあなたの場合。本当に3年で卒業できるかどうかを考えないと行けないんじゃなくって?」

結衣「そ、そんなことないし!ゆきのん!馬鹿にしすー」

雪乃「その言葉で逃げようととするのはやめなさい。そもそも最近のあなたの発言を聞いていると本当に不安になってくるわ」

結衣「う、ううー」

雪乃「由比ヶ浜さんちゃんと聞いているの?これはあなたのために言っているのよ?あなた、それでももう少しで受験生になるのだという自覚はあるの?」

結衣「うう…なんか真剣にお説教されてる…!!なんかママみたいなのに、ママより怖いし…!あ、はい。聞いてます。ごめんなさい…」





490: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 21:18:01.75
「さしすせそ」







結衣「ねぇねぇ、さしすせそって何?」

八幡「あ?ひらがなのさ行だろ。そこからなの?お前」

結衣「ち、違うし!料理のさしすせそってあるでしょ?あれって何かと思って」

雪乃「それは和食に使う基本の調味料のことよ」

結衣「そうなんだ!あ、あれ?」

雪乃「どうしたの?由比ヶ浜さん」

結衣「え、あ、あの教えてくれないのかなって思って…」

雪乃「由比ヶ浜さん、なんでもかんでも誰かに教わるのはあなたのためにならないのよ。調味料だというヒントはあげたのだから少しは自分で考えてごらんなさい」

結衣「えぇ~?調味料ー?調味料…」

八幡「………」

雪乃「………」

結衣「う、う~ん…」

八幡「………」チラッ

雪乃「………」コクン

八幡「わからんか、由比ヶ浜。なら、俺が教えてやろう」

雪乃「………」

結衣「ほんと!?」

八幡「まず、さは砂糖醤油、しは醤油、すは酢醤油、せはせうゆ、そはソイソースだ」

結衣「あ!!ほんとにさしすせそだ!!」

八幡「あぁ、ちなみにこれは調理の際入れる順番にもなってる。つまりこの場合は砂糖醤油から入れていくことになるな」

結衣「へぇぇ~、そうなんだ!すごくよく出来てるんだね!!」


雪乃「………はぁ」

八幡「な?信じただろ?」

雪乃「そうね…」

結衣「え?え?なんの話!?」

八幡「いや、あれだ。雪ノ下と俺とで、俺が言った適当なことを、お前が信じるか賭けたんだよ」

結衣「ええ!?いつ!?いつそんなことを!?」

八幡「そら、お前が部室に来るちょっと前だ。今日お前がなんか聞いてきたら、俺が適当なこと言うわってな」

雪乃「私は…由比ヶ浜さんが、騙されないことを信じていたのだけれど…残念だわ…」

結衣「ええ!?じゃ、じゃあさっきのも嘘なの!?そ、そう言えばせうゆとか聞いたことない!!!」

雪乃「いえ…それは合っているのよ。と言うよりそれしか合っていないわ」

結衣「え、そ、そうなの?でもせうゆとか聞いたことないんだけど」

八幡「それは醤油のことなんだよ。しょうゆじゃしおとかぶっちまうだろ?」

結衣「あ、しは塩なんだ…でもなんでせうゆが醤油になるの?」

八幡「そらあれだ。古い読み方なんだよ。『しょう』が『せう』になる。ほら古い文学作品なんかで『どこかに行きませう』みたいなの読んだことあんだろ?あれと同じだ」

結衣「な、ないけど…」

八幡「そうですか…」

結衣「でもあれ?ってことは…砂糖醤油…醤油…酢醤油に…せうゆ…それにソイソースって確か…ぜ、全部醤油じゃん!!」

八幡「お前やっと気づいたの?っていうか醤油って言葉そのものが三回も入ってるのに、それに気づくの遅すぎだろ。2分17
秒かかったぞ」

結衣「か、数えんなし!!てかなんでそんな嘘つくの!?信じらんない!!」

八幡「前に俺に嘘がうまいっつって、騙されないようにしたいって言ってきたのお前だろ?協力してやったんだよ」

結衣「う、そ、そうだけど。不意打ちは卑怯だし!」

八幡「ま、つーわけで。今日はジュースはお前のおごりな。あ、俺MAXコーヒーでいいわ」

結衣「え!?あたしがおごるの!?ゆきのんとヒッキーの勝負じゃなかったの!?」

雪乃「いいの、いいのよ由比ヶ浜さん。今日は私があなたにジュースを買ってあげるわ。だから元気をだして明日から一緒にお勉強をしましょうね?」ニコ

結衣「ゆきのんがなんか妙に優しい!!逆に傷つく!!あれ!?っていうか待ってよ、ゆきのん!さ、さしすせそってほ、本当はなんだったのー!?!?ねぇー!?ゆきのおおおん!?」


由比ケ浜結衣「馬鹿にしすぎだからぁ!」後編へ続く