由比ケ浜結衣「馬鹿にしすぎだからぁ!」前編
506: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 23:56:41.86 ID:tGJnt+nB0
506: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 23:56:41.86 ID:tGJnt+nB0
「うでずもう」
結衣「ねぇねぇ、ヒッキーって腕相撲強いの?」
八幡「は?お前、いきなり何言ってんの?」
結衣「いやさー、今日、教室で隼人くんとかとべっちとか大和くんとかが腕相撲やっててさー」
八幡「あぁ…、そういやなんか騒がしかったな。そんなことしてたのか。例の4人?」
結衣「そうそう」
八幡「あれだろ。どうせ葉山が1位で、2位が大和だろ?」
結衣「え!?なんでわかったの?ヒッキー見てたの?」
八幡「いや、見てねえよ。ただの勘だ」
八幡「(やっぱりあいつらは単純な腕力でも葉山にかなわないんだな、哀れな…。つーか4人なのに1人だけ名前呼ばれない大岡くんカワイソス)」
結衣「そんでさー。それ見ててヒッキーはどのくらい強いのかなーって思ったの」
八幡「さぁなぁ、まったく想像もつかん」
結衣「え?どうして?」
八幡「いや、なんでってお前。俺は友達いねぇから生まれてこのかた腕相撲なんかしたことねぇんだよ。強さなんてわかるわけねえだろ」
結衣「あ、そ、そっか。ごめん…」
八幡「いや…」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「あ、そうだ!」
八幡「何?まだ俺を傷つけたりないの?」
結衣「違うし!ならさ、ヒッキー!あたしとしようよ!」
八幡「………あ?なにを?」
結衣「なにって腕相撲じゃん!」
八幡「はぁ?何言ってんのお前、勝負になるわけねえだろ。俺男だぞ」
結衣「でもヒッキー、運動しないし。引きこもりじゃん」
八幡「いや、お前。そうはいっても俺はコミュニュケーション取れないから団体スポーツが苦手なだけで、運動自体は割と得意なんだよ。それにほら腕相撲はまずいでしょ。色々と」
結衣「色々って?」
八幡「いや、ほらお前。…手とか掴むだろうが」
結衣「??そりゃ腕相撲なんだから当たり前じゃん。ヒッキー負けんのが怖いの?」
結衣「ねぇねぇ、ヒッキーって腕相撲強いの?」
八幡「は?お前、いきなり何言ってんの?」
結衣「いやさー、今日、教室で隼人くんとかとべっちとか大和くんとかが腕相撲やっててさー」
八幡「あぁ…、そういやなんか騒がしかったな。そんなことしてたのか。例の4人?」
結衣「そうそう」
八幡「あれだろ。どうせ葉山が1位で、2位が大和だろ?」
結衣「え!?なんでわかったの?ヒッキー見てたの?」
八幡「いや、見てねえよ。ただの勘だ」
八幡「(やっぱりあいつらは単純な腕力でも葉山にかなわないんだな、哀れな…。つーか4人なのに1人だけ名前呼ばれない大岡くんカワイソス)」
結衣「そんでさー。それ見ててヒッキーはどのくらい強いのかなーって思ったの」
八幡「さぁなぁ、まったく想像もつかん」
結衣「え?どうして?」
八幡「いや、なんでってお前。俺は友達いねぇから生まれてこのかた腕相撲なんかしたことねぇんだよ。強さなんてわかるわけねえだろ」
結衣「あ、そ、そっか。ごめん…」
八幡「いや…」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「あ、そうだ!」
八幡「何?まだ俺を傷つけたりないの?」
結衣「違うし!ならさ、ヒッキー!あたしとしようよ!」
八幡「………あ?なにを?」
結衣「なにって腕相撲じゃん!」
八幡「はぁ?何言ってんのお前、勝負になるわけねえだろ。俺男だぞ」
結衣「でもヒッキー、運動しないし。引きこもりじゃん」
八幡「いや、お前。そうはいっても俺はコミュニュケーション取れないから団体スポーツが苦手なだけで、運動自体は割と得意なんだよ。それにほら腕相撲はまずいでしょ。色々と」
結衣「色々って?」
八幡「いや、ほらお前。…手とか掴むだろうが」
結衣「??そりゃ腕相撲なんだから当たり前じゃん。ヒッキー負けんのが怖いの?」
507: cMVCB/0/0 2013/08/10(土) 23:57:14.21 ID:tGJnt+nB0
八幡「ばっかお前。負けるわけねえだろ。俺はこれでも腕立ての50や100は平気でできんだぞ。1回や2回しかできないお前に負けるわけねえだろ。だからやめとけよ」 結衣「は!?ていうかあたし今は5回くらいはできるようになったもん!馬鹿にしすぎだからぁ!!」
八幡「いや、お前そんなもん誤差みたいなもんでしょ、勝負にならねえよ」
結衣「何ヒッキーその言い方。ムカつく!!じゃああたし両手!!両手でやるから!!」
八幡「いやお前、両手でも同じだろ。というか両手は余計まずいだろ」
結衣「はぁ!?同じって何だし!!ヒッキー逃げんの!?いいからやるよ!!ほら!!」
八幡「いや、お前なにそれ親指たてて、手ぇ突き出してんの?それ指相撲だろ。腕相撲は肘つけて、ほらこうだろ」
結衣「あ…そっか。ごめん…。じゃああたしがこれ両手で掴めばー」
八幡「あ、おまー」ガシッ
八幡「…………」
結衣「…………」
八幡「…………」カァ
結衣「…………」カァァァァァァァァァァァ
八幡「…………」カァ
結衣「あ、そっか…まずいってこういう……」ポショ カァァァァァァァァァァァ
八幡「…………」カァァ
結衣「…………」カァァァァァァァァァァァ
八幡「……え、えーと。あ、あれだ。これってどうやってはじめんの!?」カァァァ
結衣「え…わ、わかんない。は、はっけよいのこった…とか…?」カァァァァァァァァァァァ
八幡「……いや、それ、普通の相撲だろ……何言ってんの?ていうか見てなかったのかよ…」カァァァ
結衣「……ご、ごめん」カァァァァァァァァァァァ
八幡「…………」カァァ
結衣「…………」カァァァァァァァァァァァ
八幡「……と、とりあえずあれだ。ひ、引き分けってことにするか!!」カァァ
結衣「そ、そ、そ、そうだね!」カァァァァァァァァァァァ
八幡「…………」カァァ
結衣「…………」カァァァァァァァァァァァ
八幡「……い、いやお前離せよ。終わんねぇだろ…」カァァ
結衣「あ、そ、そっか!ご、ごめん!」カァァァァァァァァァァァ パッ
八幡「…………」カァァ
結衣「…………」カァァァァァァァァァァァ
八幡「…………」カァァ
結衣「な、なんか。ご、ごめんねヒッキー…」カァァァァァァァァァァァ
八幡「お、おう……ま、まぁ気にすんなよ……お、お前馬鹿だし…な…」カァァ
結衣「ば、馬鹿いうなし…!」カァァァァァァァァァァァ
結衣「…………」カァァァァァァァァァァァ
結衣「………で、でも今日はちょっと…馬鹿でよかった、かも…」ボソ カァァァァァァァァァァァ
512: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 02:04:23.97 ID:wV0/3XGT0
「もみじがり」 結衣「ねぇねぇ、ヒッキーはさ。紅葉狩りってしたことある?」
八幡「あ?いや…ないな。存在は知ってるけど」
結衣「あれってどういうものなの?」
八幡「あー…あれだ。そもそも止まってるもの相手じゃ狩りにならんだろ?だから観測員って呼ばれるやつら、こいつらは風の流れとか読むのが得意なんだけど、そいつらが紅葉を風に流して、それを猟犬つれたハンターが追っかけるんだよ。結構見物だぞ」
結衣「んなわけないでしょ!?それあたしでも嘘ってわかるし!!ヒッキーあたしを馬鹿だと思ってんの!?」
八幡「え…?思ってるけど…?」
結衣「きょとんとした顔すんなし!そういうの一番傷つくんだからね!?っていうかこの前といい、なんでヒッキー嘘ばっかつくの!?信じらんない!」
八幡「お前、まだそのこと根に持ってんの?性格悪いな。俺かよ」
結衣「当たり前だし!結構傷ついたんだからね!?ていうか自分のこと性格悪い代表に自分の名前とか出しちゃうんだ!?」
八幡「あー、じゃあ。あれだ。広島のお菓子のことだよ」
結衣「それもみじ饅頭でしょ!?」
八幡「唐辛子混ぜ込んだ大根おろし」
結衣「それもみじおろしでしょ!?もう紅葉狩り関係なってきてるじゃん!ただの連想ゲームじゃん!!」
八幡「いや、由比ヶ浜。お前よくもみじ饅頭と、もみじおろしよく知ってたな。今ちょっと関心したぞ」
結衣「ふふーん。もみじ饅頭は前にパパが出張の時に買ってきて美味しかったし、もみじおろしは昨日の晩ご飯の時でてきたからね!覚えてた!」
八幡「なんだ、そりゃ随分タイムリーな話題だったんだな」
結衣「うん!」
八幡「…………」ペラッ
結衣「……あれ?」
八幡「…………」ペラッ
結衣「ちょ、ちょっと待ってよヒッキー!」
八幡「なんだよ、俺今読書中で忙しいんだけど~?」
結衣「なんだよじゃないし!まだ紅葉狩りの話終わってないし!」
八幡「だってお前紅葉狩りって柄じゃねえだろ。いいだろ、夢は夢のままで」
結衣「夢とかじゃないし!だってゆきのん来ないし、携帯の電池切れちゃってるから暇なんだもん!」
八幡「俺は暇つぶしの道具かよ」
結衣「そういうんじゃなくって!ちょっとお話したいって思っただけじゃん!そんなにあたしと話すのいや?」
八幡「……。いやそうじゃないけど…。だってはっきり言ってむちゃくちゃつまんねぇぞ?」
結衣「あ、あたしと話すのが!?」
八幡「いや、お前そうじゃねえよ。紅葉狩りのことだよ」
結衣「あ…よかった…。で、それ!一体何すんの?」
八幡「本当に聞くの?」
結衣「聞く聞く!!」
八幡「はぁ…。あれだ。山行って紅葉見んだよ」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「…それで?」
八幡「いや、それだけ」
結衣「え?それだけ?何それ超つまんないんだけど…」
八幡「だからそう言ったろ…」
結衣「じゃあなんで狩りとかいうの?」
八幡「あれだ。ぶどう狩りとかいちご狩りとかあるだろ。狩りって言葉は植物の収穫みたいな時にも使うんだよ。まぁ、そういうのが転じて、ただ見るだけなのも狩りっていうようになったんじゃねえの?詳しくは俺も知らん」
結衣「そうなんだ…それって楽しいのかな?」
八幡「さぁ?俺は今行ってもめちゃくちゃつまんねぇと思うけどな。まぁ年食っておっさん、おばさんにでもなりゃ面白くなるのかもな」
結衣「そっか……」
八幡「………」
結衣「あれ?でも今の説明なら一瞬で済んだじゃん。なんでヒッキー嘘ついたりして話遠回りしたの?」
八幡「………。いや……お前、あれだ。暇だったんだよ」
結衣「………。あれ、でも読書してて忙しいんじゃなかったの?」
八幡「………。いや、お前、あれだ。まぁ…読書中でも暇になったりすることくらいあんだよ。お前は読書しないからわかんないだろうけど」
結衣「………。ふぅん…。そっか…。えへへ…」
八幡「………」
結衣「ねぇ?ヒッキー?」
八幡「なんだよ」
結衣「いつかさ。紅葉狩りが楽しく思えるようになったら一緒に行こうね」
八幡「………」
八幡「まぁ、その時その機会があれば、まぁ適当に、な」
528: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 12:16:04.62 ID:wV0/3XGT0
「おて」 八幡「さて…」
結衣「あれ?ヒッキーどこ行くの?」
八幡「いや、ちょっと喉かわいたからな。マッ缶買ってくるわ」
雪乃「なら私には野菜生活を」
八幡「お前そればかっりな…そんなに健康志向高いの?由比ヶ浜は?」
結衣「あ、あたし?あたしもいいの?」
八幡「まぁ、ついでだからな」
結衣「えっと~、それじゃあカフェオレ!」
八幡「あいよ、んじゃほら」スッ
結衣「へ?あ、はい」ポン
八幡「………」
結衣「………」
八幡「いやお前何してんの?」
結衣「?」
八幡「いやお前きょとんと首ひねって不思議そうな顔するんじゃねえよ。飼い主の言うことが分からなかった時の犬かよ」
結衣「どういうこと?」
八幡「どういうこと、じゃねえだろ。なんでお前は俺の手の上に自分の手を乗せてんのか聞いてんの」
結衣「え、でもだってヒッキーが手を出すから…」
八幡「手出したら手ぇ置くの?お手なの?そういう躾がされてんの?おかしいでしょ?今の流れなら金出せって意味だろ、普通」
結衣「あ、そ、そ、そっか。そ、そうだよね、ご、ごめん」
八幡「いや……」
雪乃「比企谷くん…あなた由比ヶ浜さんの純粋さを利用して自分の欲望を満たそうとするのはやめなさい。もう気持ち悪いを通り越して、本当に気色が悪いわ」
八幡「気色悪いとか言うなよ…それ結構本気で傷つくだろ。…ていうか今の俺悪くねぇだろ。由比ヶ浜が勝手にやったんだろ」
結衣「う、うん…」
雪乃「それはあなたがすぐに手を離さなかったことや、さっきのにやけ顔、残り香を嗅いだりしていたことの言い訳にはならないでしょう」
結衣「ひ、ヒッキー!?そんなことしてたの!?」
八幡「してねえよ!そうやって雪ノ下の言うことをすぐ信じんのやめろ。ていうか由比ヶ浜は雪ノ下より近くにいたんだから見てただろうが、にやにやなんてしてないし、匂いなんて嗅いでなかっただろ」
結衣「あ、そ、そうだね…」
雪乃「まぁ、その話は法廷に持ち越しましょう」
八幡「いや、お前法廷とか言うなよ…、まぁいいやもうとりあえず買ってくる」
結衣「あ、ヒッキー!お、お金!お金は!?」
八幡「……いや、いいわ。なんか気ぃそがれちまったわ」
ガラガラ、ピシャ
スタスタスタスタ
八幡「………」
八幡「………」キョロキョロ
八幡「………」
八幡「………」スンスン
八幡「………」
八幡「………」スンスン
八幡「………」
八幡「……なんであいつほのかにクッキーみたいな匂いがすんの…赤ちゃんかよ…」
534: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 14:49:48.43 ID:wV0/3XGT0
「あかいくつ」 結衣「ねぇねぇ、ヒッキー、ゆきのん!」
雪乃「あら、今日は何かしら?」
八幡「お前も対応が手慣れてきたな」
結衣「あのね?赤い靴って童謡があるでしょ?あの歌でさ、赤い靴の女の子はなんでひいおじいちゃんに連れていかれちゃったの?『ひ~いじいちゃんに連~れられて~行~ちゃ~った」って言ってるでしょ?」
八幡「………」
雪乃「………」
八幡「………」
雪乃「………」
結衣「あ、あれ?」
八幡「由比ヶ浜、お前さ」
結衣「う、うん?」
八幡「今の『わざと』言っただろ」
結衣「え!?ええ!?い、いや!そ、そ、そんなことないし!!」
八幡「いや、バレバレなんだよ。普段ならお前、いきなり要領の得ない質問して、俺らが質問返してようやく意味が通じるじゃねえか。なのにお前、今日はいきなり全部自分で説明したじゃねえか。しかも超説明口調で。普段のお前見てりゃわかんだよ」
結衣「え?見、見てるの?普段?」
八幡「いや、見てない。全然見てない、やめろ」
雪乃「………」
結衣「い、いや…見ててもいいんだけど…」
八幡「い、いや、お前。論点そこじゃねえんだよ。大体だな、お前みたいな天然が話を作ると正直、ぜんっぜん面白くねえんだよ。だいたいさっきの話なに?異人さんがひいじいさん?さすがに無理があんだろ」
結衣「て、天然じゃないし!!」
八幡「はい、でたー。昔っから天然ものは否定する、養殖ものは主張する、って相場は決まってんだよ。お前が否定した時点でお前の天然は確定したの。Q.E.D 証明終了」
結衣「う、ううう!」
雪乃「比企谷くんではないけれど、さっきの発言は本当につまらなかったわよ。20点ね」
結衣「そ、そんなに低いんだ!?」
八幡「なんだ、雪ノ下にしちゃ随分採点が甘いな。由比ヶ浜が相手だからって手心を加えてんじゃねえの?」
雪乃「なんですって?言ってくれるわね比企谷くん。それなら12点よ」
結衣「いきなり8点も下がっちゃったし!ゆきのん、張り合わなくていいからぁ!」
八幡「甘いな。俺なら10点だ」
雪乃「なんですって?……それなら8点よ」
八幡「6点だな」
雪乃「5点」
八幡「4点」
雪乃「3」
八幡「2」
雪乃「1」
八幡・雪乃「ゼロッ!!」
結衣「とうとう0点になっちゃったし!!ていうかカウントダウンみたいになってるし!!というかなんで最後二人ハモったの!?なんでそんなに息ピッタリなの!?実は仲良しなの!?」
雪乃「やるわね…比企谷くん」
八幡「お前こそな」
結衣「なんか、友情が深まってるし…」
八幡「まぁ、ともかくだな。お前は自分で話のタネ作ろうなんて馬鹿なこと考えないで、普通に思ったこと話してりゃいいんだよ。そうすりゃ天然ものの馬鹿なんだから、結構おもしろい話になるから」
結衣「馬鹿馬鹿いうなし!!」
八幡「いや、今の褒めたんだけど?」
結衣「褒めてないし!!あたしだって頑張れば面白い話くらい思いつくんだからね!?馬鹿にしすぎだからぁ!!」
八幡「おー、ひさびさに出たな」
結衣「うっさい!!誘導すんなし!!ほんと馬鹿にしてるでしょ!馬鹿にしすぎだからぁ!!」
544: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 18:15:14.11 ID:wV0/3XGT0
「おたく」
結衣「ねぇねぇ、ヒッキーってさ漫画とかアニメ詳しいんでしょ?」
八幡「いや、お前いきなりなんで決めつけんの?」
結衣「だってさ、この前もアニソン聞いてたし。カラオケの時もアニソン縛りで歌ってたじゃん?だいたいそういうのに詳しくない人がその年でプリキュア見たり、プリキュアの柄の綿飴かったりしないでしょ?」
八幡「お前、花火大会の時それ見てたのかよ…。いやでもまぁ、一般人に比べりゃ相当詳しいとは思うけど、オタクって連中には全然届かないじゃねえかな、俺は」
結衣「そうなん?」
八幡「ああ。中学の時には、オタクって言われる連中の輪に入ろうとしたこともあったんだけどな。陰でにわかって呼ばれてるの聞いて、つるむのやめたりしてんだよ」
結衣「そう言えばにわかってあたしも前に中2に言われたんだけど、どういう意味なの?」
八幡「あれだ。流行とかに乗って急にそのジャンルに興味持っただけの連中を罵倒する言葉、みたいな感じか。あん時お前、FFの話したろ?んで『グラフィックが綺麗』だの、『超泣ける』だの語ったわけだ。だけどそう言うのって古くからのファン気取ってる材木座みたいなのにしてみれば『昔のいい頃を知らないのに知ったかぶりやがってムカつく』ってなるんだよ」
結衣「なにそれ…超めんどくさいし…」
八幡「まぁ材木座にしてみても、さらにディープな連中からしてみれば同じく『にわか』ではあるんだろうけどな。ネットの掲示板とか見てると、FFの一作目の発売日からやってるとかいう、まぁ多分40とかすぎてんじゃねえかな、まぁそういう人が中間くらいの作品から入ってきた人とかを罵倒してたりする。まぁ端から見ると結構異様な光景だな」
結衣「なんか怖い」
八幡「だからまぁ、クラスのオタク連中からしたら俺が表面的に流行のアニメ追ってるだけに見えたんだろうな。それにほら、俺は顔がいいからな!ああいう連中に混じると浮くんだよ」
結衣「また、そういうこと自分で先に言っちゃうしー」
八幡「まぁ、オタクってのは大概めんどくさいもんなんだよ。雪ノ下だってパンさん語らせたら異常な勢いで話すだろ?あれと同じだ」
結衣「うん…、立て石に水って感じだよね」
八幡「立て板に水な。お前にしたらかなり惜しいけど」
結衣「あ、そ、そっか。で、でもさ、ゆきのんの場合は可愛いからよくない?」
八幡「お前、可愛いからいいとか可愛くないから悪いとかさ。そういうこと容姿で判断すんの?それは差別だろ」
結衣「い、いや違くて!そういう見た目とかの話じゃなくって語ってる姿が可愛いって話!ていうか!ヒッキーはさっきからどっちの味方なの!?」
八幡「俺は常に強いものの味方だ」
結衣「なにそれ、最悪だし。っていうかそれぶりぶりざえもんじゃん!」
八幡「お、何?お前ぶりぶりざえもん知ってんの?」
結衣「うん、しんちゃんは昔から見てるし。あとドラえもんとかまるちゃんも見てるよ!あ、でもドラえもんってあたしたちが小学生の時に声変わったじゃん?だからなんか、たまに見るといまだに違和感があるっていうか」
八幡「ああ、分かるな。俺の中でのドラえもんはやっぱりのぶ代一択だわ」
結衣「でしょでしょ!!やっぱりドラえもんは『ぼぐドラえもんでず』って感じだよね!!」
八幡「何お前……。今のドラえもんのつもりなの?全然似てなかったぞ」
結衣「え、嘘…。あたし結構これ自信あったんだけど…」
八幡「あ、でもそれ聞いてちょっと閃いたわ。ほら例えばさ、今の子供が前のドラえもんの映画とかみて『こんなのドラえもんじゃない』とか言ったらお前ちょっとムカつくだろ?多分『にわか』ってそういう感覚なんだよ」
結衣「ああ~!!それならなんかわかる!!何言ってんの、ドラちゃんの声はこっちじゃん!って言いたくなるかも!!」
545: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 18:16:17.58 ID:wV0/3XGT0
八幡「だろ?あー、なんかちょっとスッキリしたわ。でもお前こういう話、結構語れんのな。どの辺までなら知ってんの?」 結衣「んー?どうだろ。自分ではよくわかんない」
八幡「せやかて工藤!」
結衣「あ!それ知ってる!コナンくんでしょ?」
八幡「まぁ、コナンは合ってるけど正確には服部だけどな」
結衣「それそれ!知ってる!西の名探偵でしょ!?…あ、でもさ。単純に疑問なんだけど、なんでコナンくんって小学生なのにあんな頭いいの?」
八幡「お前マジでそれ言ってんの?服部知ってんのに、それ知らないの?知識偏りすぎだろ。あれだ、お前、コナンは新一なんだよ」
結衣「え!?そうなの?新一って蘭ちゃんが好きな人でしょ?高校生じゃん!」
八幡「いや、だから。一話で変な薬飲まされて、ちっこくされちまったんだよ。だから見た目は子供、頭脳は大人!っつてんだろ?」
結衣「あれってそういう意味だったんだ!あたしすっごい天才児の話なのかと思ってた!!」
八幡「まぁなぁ、推理もので子供になる薬とか反則みたいなもんだしな。あ、でもお前、見た目は大人、頭脳は子供!って感じだし黒の組織に小さくしてもらえばいいんじゃないの?そしたら年相応になるだろ」
結衣「どおいう意味だぁ!!」
八幡「んで、他には?」
結衣「え、ほか?うーん…あ!あれ知ってる?宇宙兄弟ってやつ」
八幡「お?お前宇宙兄弟知ってんの?それ八幡的にちょっとポイント高いわ」
結衣「本当!?えへへ…」
八幡「なに?アニメ見てんの?」
結衣「んーん、アニメって日曜日の朝やってんじゃん?あたし日曜の朝はゆっくりしたいって言うか」
八幡「いや、あれ今土曜日の夕方に移ってんぞ」
結衣「え!?嘘!そうなんだ!?全然知らなかった」
八幡「まぁ、俺としちゃスーパーヒーロータイムに続けて見れてたから前のほうが都合がよかったんだけどな。ってことは何?漫画のほう?」
結衣「そうそう。あれ、前に映画やったでしょ?あれ友達と見に行ってさ。ずっと気になってたんだよねー。そしたら姫菜が全部持っててさ。借りて読んだの」
八幡「あー、海老名さん経由なー」
結衣「あ!映画って言えばさ、岡田将生くんってちょっとヒッキーに似てない?」
八幡「岡田将生って誰だっけ?」
結衣「ほら、映画でヒビトやった!ええと…この人!!」カチカチ
八幡「ん?……いやいや全然似てないでしょ。お前には世界がどう見えてんの?」
結衣「え?そう?この公式サイトのプロフィール写真とかカッコいいし、結構にてると思うんだけど…」
八幡「……。いや、そもそも目とか全然違うでしょ。ありえないでしょ」
結衣「いや、目はねー……しょうがないよ」
八幡「しょうがないとか言うなよ…」
結衣「あ、ああ、ご、ごめん」
八幡「でもまぁ、じゃああれか?キャラはヒビトが好きなわけ?」
結衣「んーん、ケンジ」
八幡「は?ケンジ?なんでだよ、それお前わかってない、わかってないわー」
結衣「え~!?なんで!?ケンジカッコいいじゃん!すっごいいいパパだし、ふーちゃん可愛いじゃん!」
八幡「いや、お前。宇宙兄弟っつたらピコさん一択だろ」
結衣「はぁ?ピコって誰だし、全然知らないんだけど!」
八幡「いやお前、帰還船設計した人だよ、『テンションの上がらねえことに、パワー使ってる場合じゃねえ……』とか超カッコいいじゃねえか」
結衣「なんでそんなマニアックな人選なの!?やっぱりヒッキーちょっとオタクなんじゃないの?」
八幡「いや、ピコさんマニアックじゃねえし。全然オタクじゃねえだろ」
結衣「はい、でたー。本物のオタクは否定する、養殖ものは主張する!!否定した時点でヒッキーのオタクは確定!Q.D.E証明終了!」
八幡「俺の真似すんなよ…。何?天然呼ばわりしたことまだ怒ってんの?あとQ.E.Dだからな?」
結衣「あったりまえじゃん!結構傷ついたんだからね!?」
八幡「そら、悪かった」
結衣「別にいいけどー。あ!じゃあさ。お詫びに今度ヒッキーのおすすめの漫画貸してよ!」
八幡「あー?まぁ別にいいけどよ、結構マニアックなのになるぞ」
結衣「うん!それでもいいよ。ヒッキーとこういう話できるの楽しいし。ヒッキーの好きな漫画なら読んでみたいし!」
八幡「そ、そうか」
結衣「あ、でもグロいのは苦手だから、そういうのはナシね」
八幡「そうか…。そうだな…んじゃ、まぁ適当に考えとくわ。今度部室で渡すわ」
結衣「でも、学校に持ってきたら没収されちゃうじゃん。しかも平塚先生、時々来るし」
八幡「ああ…まぁ、そうだな。え、じゃあどうすんの?」
結衣「んー、じゃあ今度の休みにでもサブレの散歩のついでにヒッキーん家に寄るよ。そん時貸して?」
八幡「いや…それはお前。遠いし…犬連れてはあれだろ?」
結衣「そう?じゃあヒッキーが、持ってきてくれる?あ、そうだ。『お詫び』だし?」
八幡「あ…む…そ、そうだな。じゃ、じゃあ、まぁあれだ。本屋行くついでにでも、ついでによるわ。そのついでだし、お詫びだしな」
結衣「ほんと?へへ…ヒッキーありがとっ!」
八幡「(……なんか由比ヶ浜さんマジ策士…またこいつに負けたぞ…どうなってんの…?)」
557: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 20:19:16.97 ID:wV0/3XGT0
「まんじゅうこわい」 結衣「ねぇねぇ、ヒッキーってさ。なんか苦手なものってあるの?」
八幡「あ?急になんだよ」
結衣「いや、ほ、ほら!二人に食べてもらおうと思ってなんか作ってきたら、ヒッキーの苦手なものだったりしたら困るじゃん?だから知りたいだけ!」
八幡「いや、苦手とか苦手じゃないとかじゃなくって、俺はお前の作ったものを口に運ぶ勇気はないんだけど?」
結衣「ひどいこというなし!!これでも少しは上達してきてるんだからね!てかパンケーキとか超上手に焼けるようになったし!なんでもいいから苦手なもの答えてよぉ!」
八幡「あー?じゃあ、お前?」
結衣「どういうこと!?苦手とかひどいんだけど!!ヒッキーありえない!」
八幡「いや、まぁ、結構苦手だぞ?いろんな意味で」
結衣「いろんな意味ってなんだし!ていうか食べ物じゃないじゃん!!」
八幡「あー、じゃあMAXコーヒー?」
結衣「ヒッキーマッ缶好きでしょ!?」
八幡「じゃあ、あれだ濡れ煎餅」
結衣「濡れ煎も好きでしょ!?嘘禁止!!」
八幡「なんで嘘ってきめつけんだよ。だいたいなんでお前は俺のことそんなに詳しいんだよ」
結衣「だって、マッ缶はいつも飲んでるし、濡れ煎は前に自分でアピってたでしょ!?ていうかよくこの組み合わせで食べてるって言ってたじゃん!なんで嘘つくの!?」
八幡「いやお前。落語の基礎中の基礎『まんじゅう怖い』を知らねえの?」
結衣「落語とか知らないし!…どういう話なの?」
八幡「どういう話ってお前あれだ。捻くれた奴がだな、饅頭好きなのに、実はにが……」
八幡「………」
結衣「??ヒッキーどうしたの?」
八幡「いやまぁ、知らねぇなら知らないでいいんじゃないの?落語とか知らなくても生きていけるしな。安心しろ」
結衣「え?どしたのヒッキー!?急にどうしたの!?どこ行くの?ねぇまんじゅうこわいってなんなの!?ねぇ!ヒッキー!?」
575: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 23:23:39.94 ID:wV0/3XGT0
「ぴこぴこ」 結衣「あれ!?ヒッキーそれゲームやってんの?」
八幡「おー、まぁな」
雪乃「比企谷くん…今は部活中よ?だいたい学校にピコピコを持ってくるだなんて、一体何を考えているのかしら…」
八幡「ピコピコって…だからお前はおばあちゃんかよ…」
結衣「そうだよヒッキー、非常識すぎ!信じらんない!」
八幡「いや、ウノやトランプを持ってきてるお前に言われたくねんだよ。いや、つかな。別に持ってきたくて持ってきたわけじゃねえんだわ。学校の鞄を机の近くに置いて、3DSは机の上に置いてたんだけど、今朝学校来たら鞄の中に入ってたんだよ」
結衣「またそういう嘘つくしー、ヒッキー信じらんない」
雪乃「………はぁ」
八幡「いやいや、待ってくれ。これは本当なんだよ。いや、絶対信じてもらえないとは思ったけど、実際本当なんだよ。入れた記憶全くねえんだよ」
雪乃「はぁ…、仮に…仮に、あなたのその作り話が本当だとして…」
八幡「いや、お前作り話って言っちゃってるから。信じる気0だから」
結衣「当然じゃん…」
雪乃「あなたがここでゲームをしていることの言い訳にはならないでしょう?手違いで持って来たんなら大人しく持って帰ればいいだけなのだし」
八幡「いや、それがだな。今日に限って本も携帯も持ってくんの忘れたんだよ。暇つぶしの道具がないんだよ」
結衣「ヒッキー嘘に嘘を重ねるの!?はやく罪を認めたら!?」
八幡「いや!すっげー嘘くさいのはわかってんだけど、全部本当なんだって!信じたげてよぉ!」
雪乃「もうあなた、狼少年扱いなのよ…自分の行動の報いを受けなさい。それで?それはどういったゲームなの?」
結衣「ゆきのん!?」
八幡「何?お前興味あんの?」
雪乃「と、当然でしょう。私は高翌齢者ではないのだから、このくらいたしなみの一つだわ」
八幡「(いや、その理屈はおかしい…。多分こいつおばあちゃん扱いされたのにカチンと来たんだろうな…)」
結衣「んーと、あれ?ヒッキーこれテトリスじゃん。地味なゲームやってるね。なんか意外」
八幡「いや、普段はやんねえんだけどな。昨日本の山が崩れたらその下から出てきたんだよ」
結衣「なんかまた嘘くさいし…」
雪乃「それで…てとりす?というのはどういうゲームなのかしら。四角い固まりや棒が詰み上がっているだけのようにしか、見えないのだけど」
八幡「げ!スタート押し忘れてたのかよ。あぁ…俺の新記録が…」
結衣「ゆきのんこれはねー、ブロックをがたーんってならべたら、ぴゅーんって消えるの」
雪乃「あまりに感覚的すぎて、まったくわからないのだけれど…」
八幡「上から振ってくる四角や棒状のブロックを並べてくんだけど、それを横の列にならべると消えて得点が入る。それを繰り返して高得点を狙うんだわ。んで上のラインをブロックが超えちまったら負け」
雪乃「単純なルールね」
八幡「ああ、あと列はまとめて消すこともできる。4列一気に消したりすると高得点だ」
雪乃「なるほど…やってみるわ」
576: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 23:25:17.86 ID:wV0/3XGT0
雪乃「………」カチカチ 結衣「………」
八幡「………」
雪乃「………」カチカチ
結衣「………」
八幡「………」
結衣「ひ、ヒッキー?ゆ、ゆきのんずっとやってるね」ヒソヒソ
八幡「だな…。まったく途切れねぇな」ヒソヒソ
結衣「て、テトリスってあんなに続くものなの?」ヒソヒソ
八幡「いや、俺もあんなに続くのは初めてみるわ…」ヒソヒソ
結衣「しかもものすごいスピードで指が動いてるね…」ヒソヒソ
雪乃「………」グッ
八幡「まとめて消えたんだな…」
結衣「…ゆきのん可愛い…」ボソッ
雪乃「………」カチカチ
結衣「………」
八幡「………」
雪乃「…比企谷くん、999,999ptsを超えてから数字が増えないのだけど。一体どうなっているのかしら」カチカチ
結衣「999,999pts!?ゆきのんすごっ!!」
八幡「初プレイでカンストかよ…お前の空間把握能力どうなってんの…?」
雪乃「どういうことかしら」カチカチ
八幡「ようは最高得点ってことだよ…」
雪乃「最高得点…?なるほど…」フッ
八幡「(ドヤ顔だ)」
結衣「ドヤ顔だ…。ゆきのん可愛い」
雪乃「じゃあ、これ返すわね。比企谷くん」
八幡「ああ…はい…どうも…」
結衣「ゆきのん!すごい!!あんなの初めてみたよ!」
雪乃「そう?ありがとう」フフッ
結衣「ヒッキー!?あたしもやっていい!?」
八幡「ああ…好きにしろ…」
577: cMVCB/0/0 2013/08/11(日) 23:26:14.34 ID:wV0/3XGT0
結衣「あ、あれー!?」 結衣「わわ!ちょっちょと落ちるのはやい!」
結衣「ええ!?このタイミングでこのブロック!?」
結衣「あ、終わっちゃった…」
八幡「………」
雪乃「………」
八幡「由比ヶ浜…」
結衣「な、なに?ヒッキー?」
八幡「なんかお前見てると落ち着くわ」
結衣「え!?」
八幡「いや、雪ノ下の人外プレイ見せられて正直方放心状態だったんだけど、治ったわ」
雪乃「失礼ね…」
八幡「だいたいお前なんなの?この画面?ブロック積み上げるゲームと勘違いしてない?ていうか何これ近代アートか何かなの?」
結衣「ヒッキー!うるさいし!別にわざとやってるわけじゃないし!」
八幡「いやー、最高記録時間1分とかなかなかできねえぞ。むしろ誇っていい」
結衣「馬鹿にすんなし!もう、もっかいやる!!」
八幡「おう、やれやーお、おいちょっとまて由比ヶ浜、ストップだ」
結衣「はぁ?何言ってんの!?馬鹿にされたまま終われるわけないでしょ!?」
八幡「いや!いいから返せって!まずいんだって!!」
結衣「何がまずいし!全然まずくないし!せめて一分半は続けないと終われないし!!」グイグイ
八幡「いや、だから!!」グイグイ
平塚「はい、そこまでだ比企谷ー」
結衣「あ、ひ、平塚先生」
平塚「禁止のゲーム機の持ち込みと使用の現行犯だ。比企谷、反省文を明日までに書いて提出したまえ」
八幡「ちょ、ちょま、先生!!持ち込みは認めますけど、使用は俺じゃ!?」
平塚「何を言っているのかね?比企谷。今現在そのゲーム機を握っているのは君じゃないか。その君を差し置いて誰が実行犯だと言うのかね?なぁ?雪ノ下」
雪乃「ええ、そうですね」
八幡「おい!」
平塚「まぁ、そういうわけだ。とりあえずこの3DSは私が明日まで、安全に管理しておいてやろう」ニヤ
結衣「あ、で、でも先生」
平塚「いいんだ。いいんだよ由比ヶ浜。何が間違っているって、この場に異質なものを持ち込んだこの男が間違っているのだよ。君は優しいからな、気持ちはわかるが、何、心配することはない」
八幡「おい!」
平塚「まぁ、そういうわけだ。提出は明日まで。異論、反論一切認めない。持ってこない場合は処分する。以上だ」
ガラガラ、ピシャ
結衣「ご、ごめんねヒッキー」
八幡「お、おう」
雪乃「しかし、思っていた以上にピコピコ鳴らないものなのね。少し勉強になったわ」
八幡「ですよね!!あなたそういう感想を言うと思ってました!!でも今言うことじゃないですよね!!マジふざけんな!」
589: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 02:07:12.37 ID:KdjDcTlQ0
「きょどうふしん」 雪乃「………」テクテク
結衣「あ!ゆきのんだ!」
雪乃「っ!!」ビクッ
結衣「おーい!ゆきのーん!何してるの!?」
雪乃「あら、由比ヶ浜さん。こんなところで奇遇ね」キリッ
結衣「うん!!」
雪乃「……それじゃ」スタスタ
結衣「え!?ちょ、ちょっと待ってよゆきのん!」
雪乃「……なにかしら?」
結衣「な、なにかしらじゃなくって!せ、せっかく休日に偶然会えたのに、なんでそんなすぐ行っちゃうの?あ、あたしのこと嫌いになった!?」
雪乃「ち、違うわ。そ、その。わ、わかった、わかったわ。わかったから袖を掴むのはやめて、由比ヶ浜さん」
結衣「ゆきのん!!」ヒシッ
雪乃「…はぁ」
結衣「それで、何してるの?」
雪乃「ええ…それは…その…買い物に…来たのよ」
結衣「やっぱり!あ、じゃあその袋…あれ?それってゲーム屋さんの袋?」
雪乃「…えぇ」
結衣「あ!わかったゆきのん3DS買いに来たんでしょ!!」
雪乃「……っ!どうして…わかったのかしら」
結衣「へへ~、ゆきのん、この前楽しそうだったからね。もしかしてハマちゃったんじゃないかなーって思ってたの!」
雪乃「そう…なの…?そんなに楽しそう、だったかしら」
結衣「うん!あ、じゃあテトリス買ったんだ?」
雪乃「え、ええ…それと…」
結衣「わぁ!パンさんのゲーム!こんなに出てるんだ!!」
雪乃「ええ、一つは『パンダのパンさん 笹山クッキングBOOK』と言ってデジタルブック…みたいなものかしら。一つの章ごとに料理のレシピとそれに関係する物語が展開されているらしいから、やはり見逃すわけにはいかないわね」
結衣「へぇー!じゃあこっちは!?」
雪乃「『パンダのパンさん 笹山のともだち』よ。これは以前DS初期に販売されていた『パンダのパンさん 笹山の仲間と1、2、3』を3DS用にリメイク、通信協力プレイを加えたものね。パンダのパンさん、それに通信協力プレイではほかの笹山の仲間も使って一緒に冒険をすることが出来るの。プロモーションビデオを見た限りではだけれど、キャラクターの動きもディスティニー版のアニメーションの動きをよく再現していて、とても可愛らしいのよ。実は先月、発売されたばかりなの」
結衣「じゃあ、出たばっかりなんだね!」
590: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 02:07:50.32 ID:KdjDcTlQ0
雪乃「えぇ…そ、その、ご、ごめんなさいね。由比ヶ浜さん、さっきは逃げようとしてしまって…。その…ゲームを買っているところを見られるのが少し恥ずかしかったものだから…」 結衣「ううん、気にしないで?あ、でもさゆきのん。恥ずかしかったならネット通販とか使ってもよかったんじゃないの?」
雪乃「そ、それがその。今日、インターネットでこのゲームのことを知ってしまったものだから…どうしても、その今日中に遊びたくなってしまって。通販だと明日になってしまうものだから…」
結衣「ゆきのんでも衝動買いとかしちゃうことあるんだ!」
雪乃「そ、そうね。普段は滅多にないのだけれど…その、好きなもののことだと時々抑えが効かなくなってしまうことがあるのよ。恥ずかしいこと、なのだけれど」
結衣「そんなことないよ、ゆきのん!そんなに好きなものがあるっていいことじゃん!あたしもわかる!」
雪乃「そ、そう、かしら」
結衣「あ、じゃあゆきのん!あたしもその『パンダのパンさん 笹山のともだち』買う!あたしもDS持ってるから!協力して遊べるんでしょ!?一緒に遊ぼう、ゆきのん!!」
雪乃「ま、まって由比ヶ浜さん、DSでは3DSのゲームは遊ぶことができないの」
結衣「え!?そうなのゆきのん!?でも形同じじゃない?」
雪乃「えぇ、形はとてもよく似ているのだけれど。実際はまったくの別物なの。DSに比べて上画面が大きいし、グラフィック性能も大きく向上しているわ。だからDSのソフトを3DSで遊ぶことは出来るのだけれど、逆は無理なのよ」
結衣「そ、そっかぁ…う、うーん。……」
雪乃「ええ、残念だけれど」
結衣「………」
結衣「よし!決めた!あたしも3DS買う!」
雪乃「な、何を言っているの由比ヶ浜さん。あなた以前お金がないとぼやいていたじゃない」
結衣「ううん、この前コンサートのアルバイトしてバイト代も入ったし。こういう時のためにお年玉も貯金してあったの!それになによりゆきのんと一緒にパンさんで遊びたいもん!」
雪乃「由比ヶ浜さん…」
結衣「じゃあ、あたしお金おろしてくる!!…あ、そうだゆきのん!この後、時間大丈夫?買ったら一緒に遊ぼう?ゆきのんの家行っていい!?」
雪乃「ええ、もちろん!もちろん大丈夫よ。由比ヶ浜さん」
結衣「やったぁ!じゃあちょっと行ってくるね!」
雪乃「ええ、じゃあ私はここで待っているわね。由比ヶ浜さん」
結衣「うん!すぐ戻ってくるね!!」タタタタタタタ
雪乃「………」
雪乃「………」
雪乃「………」ニヘラッ
雪乃「………」キリッ
594: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 10:22:28.93 ID:KdjDcTlQ0
「ぷりん」 結衣「ねぇねぇ二人ってプリンって好き?」
雪乃「ええ、嫌いではないわね」
八幡「好きだ」
結衣「へ!?ひ、ヒッキーいきなりなに言ってんの!?」
八幡「いや…お前こそいきなり何言ってんだよ…」
結衣「あ、そっか…プリンの話だよね、ぷ、プリンの」
八幡「(何この子、怖い。なんなの、平塚先生なの?)」
雪乃「……。それで、プリンがどうしたというのかしら」
結衣「あ、うん。あのね?バケツプリンってあるでしょ?」
八幡「あぁ、あるな」
結衣「あれって作ってきたら、三人で食べきれるかなー?って思って!一度食べてみたくって!」
八幡「いや無理だろ。大体ホムセンとかで売ってるバケツって最低でも3リットルとかだろ?3人で分けても一人頭、1リットルじゃねえか。プッチンプリン10個分くらいに当たるんじゃねえの?糖尿で死ぬだろ。ていうかお前の作ったプリンの時点でアウトだろ、死ぬだろ」
結衣「なぁ!?失礼な!!あたしだってママがプリンを作ってるとこみたことあるもん!!超簡単そうだったもん!!」
八幡「だからお前は料理鑑賞してないで、作るの手伝え。な?」
595: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 10:23:17.09 ID:KdjDcTlQ0
雪乃「ちょ、ちょっと二人ともいいかしら」 結衣「ん?どったの、ゆきのん?」
雪乃「さっきから何度もバケツ、バケツと言っているのだけれど、バケツプリンと言うのはバケツで作ったプリン、という解釈で間違っていないのかしら?」
八幡「あぁ、まぁそうだな」
雪乃「それって不衛生ではないかしら?」
八幡「そのへんは、まぁお前、当然新品のバケツ使うだろ」
雪乃「それは…まぁ、当然そうなのでしょうけど。それでも…やはり…」
八幡「(調理器具以外のもので料理を作るとか、こいつの常識からは外れてるんだろうな)」
結衣「でもゆきのん。美味しいよ?」
八幡「美味しいよ。ってお前食べたことねぇだろ。いい加減なこと言うなよ、俺かよ」
結衣「また、自分でそういうこと言っちゃうしー」
雪乃「それに、例えば10人分のプリンを作るなら1人分を10個作ったほうがいいでしょう?10人分をまとめて一つのプリンにすることになんの合理性も感じられないのだけれど」
八幡「そらまぁそうだわな」
結衣「んー、それはほら!パーティーとかでみんなで食べるんだよ!」
八幡「何?プリンの入ったバケツにみんなでスプーン片手に群がんの?それ絵面最悪だろ。餌やりシーンだろ」
結衣「バケツのまんま出すわけないし!!お皿にもったら超でかいプリンになるじゃん!!超テンションあがるじゃん!」
雪乃「大きいプリン…なるほど…」
八幡「何、お前そんなに大きいのがいいの?なんでも大きい方がいいの?大きいのが好きなの?喧嘩売ってんのか」
結衣「売ってないし!なんでそうなるし!」
雪乃「ようするにパーティーなどでケーキなどの変わりにプリンを出して、皆で取り分けるということね。理屈はわかったけれど、やはり私も比企谷くんと同じで食べてみたいとは思わないわね…」
結衣「えぇ~!?う、うーん。あ、じゃあフルーチェは!?すっごいいっぱい作れるよ!?」
八幡「いや、お前、それも同じ理由で却下だろ。リッター単位のフルーチェとか、苦痛通りこして拷問だろ」
結衣「え~!?でもバケツでどーんとかちょっと憧れない?」
八幡「いや、そもそもなんなの?お前はなんでそんなにバケツで作りたがるんだよ?あぁ…まぁ、そりゃ、最初からバケツで作っとけば製造から廃棄までスムーズなのは確かだよな。もういいから作ったら即捨てろよ」
結衣「捨てないし!ひどいし!!ゆ、ゆきのんは一緒に作って食べてくれるよね!?」
雪乃「嫌よ。絶対。何があっても。お断りだわ」
結衣「単語の羅列で断られた!!こ、こうなったら維持でもバケツプリン作ってくるんだからね!?部室でみんなで食べるからね!?」
八幡「(こいつが教室にバケツ持ち来んできたら…その日は部活休も…)」
599: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 12:26:14.90 ID:KdjDcTlQ0
「しょうぎ」 結衣「ねぇねぇ、ゆきのんって将棋って得意?」
雪乃「この世に私の不得意なことなんて存在しないわ」
八幡「お前すごい言い切ったな。感心するわ」
雪乃「そう?でも事実だもの。取り繕っても意味ないでしょう?」
結衣「あはは…」
八幡「でもお前体力ないだろ。さすがに長距離走は苦手じゃねえの?」
雪乃「……。言われてみればそうね…。不覚だったわ」
八幡「えらい素直だな」
雪乃「事実だもの」
結衣「あ、でもマラソンはあたしも苦手~。ていうか走るの苦手なんだよね~」
八幡「(それはどこかが重いせいじゃないですかね、どことは言わないけど)」
雪乃「そうね。疲れるわよね」
結衣「うん!」
八幡「………」ペラッ
雪乃「………」ペラッ
結衣「あ、あれ?」
八幡「なんだよ、由比ヶ浜」
結衣「あ、あのさ。しょ、将棋の話は?」
八幡「ああ、そう言えばそんな話してたな。なんで急にんなこと言い出したの?」
結衣「あのね、昨日パパに一緒に将棋しないか?って誘われたから断ったんだけど、その時将棋って面白いのかなって思って」
八幡「そう思ったんなら、一緒にやってやれよ…。とりあえず断ってから考えんなよ、お父さん可哀想だろ…。俺もそれよくするけどさ」
結衣「それで今日持ってきたの」
八幡「持って来ちゃったんだ…。お前の鞄は四次元ポケットなのかよ…」
八幡「ってあぁ、これあれか。マグネット式のやつか」
結衣「うん。それでゆきのんとやってみたいなーって思って」
雪乃「嫌よ。私が12手で勝つもの」
結衣「そんな瞬殺なんだ!?」
八幡「始める前から全部手を読まれちゃってるんだ…。でも雪ノ下、あれだ。その決着は賢い奴同士でしか起こりえないだろ。こいつ多分王手がかかってからも負けを認めず、王将で逃げ回るから無駄に手数はかかると思うぞ」
結衣「なんかあたしが賢くないって言われてるみたいに感じるんだけど…」
八幡「いや、そう言ってんだよ」
結衣「ヒッキー!?」
雪乃「でもそうね…由比ヶ浜さんの場合、実際に王将を取られるまで粘るに粘るでしょうね…私が浅慮だったわ」
結衣「ゆきのん!?」
600: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 12:27:47.00 ID:KdjDcTlQ0
雪乃「でも、どうしてもしたいと言うのなら、まずは比企谷くんで練習を積んでからにしなさい」 八幡「おい、俺に押し付けんなよ」
結衣「あ、じゃ、じゃあ、ひ、ヒッキー?あたしとしてくれる?」
八幡「………」
結衣「………」ジー
八幡「…っ!いや…お前、あれだ。あー…もう、じゃあ一局…一回だけな」
結衣「やったぁ!ありがとヒッキー!」
八幡「…んじゃ、ジャンケンで先攻、後攻きめんぞ」
結衣「うん!ジャンケンポン!!」
八幡「っと。あ、俺の勝ちか。んじゃ俺が先攻、お前は後攻な?」
結衣「おっけー!!」パチン
八幡「は?」
雪乃「え?」
結衣「ん?」
八幡「話聞いてた?先攻って俺が先って意味なんだけど…」
結衣「え?あれ!?」
雪乃「あなた、全然オッケーじゃないじゃない。あなた全く意図を理解していないじゃない」
結衣「あれ?あれ!?」
八幡「………。ま、ということで由比ヶ浜の反則負けってことで決着だな」
結衣「ええ!?」
雪乃「まさか、一手で決まってしまうだなんて…ごめんなさい。わたしまだあなたを買いかぶっていたのね…」
結衣「ゆきのん!?」
八幡「お前あれだ、3DSで『へぼ将棋』って出てるからそれでもやってろよ。人間様とやるのはまだはええよ。ホモサピエンスに進化してからにしろよ」
結衣「あたしが人間じゃないみたいな言い方された!!違うの!今のはちょっと間違えちゃっただけなの!!二人ともひどい!!馬鹿にしすぎだからぁ!!」
602: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 14:53:15.25 ID:KdjDcTlQ0
「へたれうけ」 三浦「じゃぁ、あーしちょっと今日、行くとこあるから」
結衣「あ、うん。わかった優美子。じゃあまた明日ね」
海老名「おつおつ~」
結衣「じゃあ、姫菜あたしも部活行くね。また明日ね」
海老名「待った」
結衣「え、な、何?」
海老名「実は今日は結衣にいいものを持って来たんだよ。ふふ」
結衣「い、いいもの?あんまいい予感がしないんだけど…」
海老名「さぁ!刮目してみなさい!私の渾身のはやはち本だよ!!」
結衣「え、ええ!?姫菜!?ま、まさか書いたの?」
海老名「ぐ腐腐腐、まぁまぁいいからいいからユーちょっと読んじゃいないよ、いいからいいから結衣好みだから!」
結衣「え、えええ?」
隼人「比企谷…もう自分を偽るのはやめにしないか…?」
八幡「な、何を言ってるんだ」
隼人「俺にはわかってるんだ。君が一連の行動で傷ついていることも…そして君の好意が誰に向けられているのかも、ね」
八幡「そ、それ以上は言うな…!やめろ!葉山!」
隼人「比企谷?お前は本当にやめて欲しいと思っているのか?」
八幡「葉山お前は何を言って…。…っ!やめろ!触るな!葉山!」
隼人「言葉は捻くれていても、体は正直だな、比企谷。ここをこんなに大きくして言っても説得力がないぞ」
八幡「やめろ…、やめてくれ……葉山」
隼人「………八幡」
八幡「っ!!隼人!!」
アッー
結衣「ちょっと!!!」
海老名「ぐ腐、ぐ腐腐腐腐腐腐」
結衣「ぐふふふじゃないでしょ!!姫菜!!こ、これ!ヒッキーと隼人くんが……その、アレしちゃってるじゃん!!」
海老名「あ、アレだなんて!結衣ダイタン!って海老名は海老名は赤面してみたり!!」
結衣「違う!褒めたんじゃないからぁ!!ていうかこれのどこがあたし好みなの!?」
海老名「ぐ腐腐腐、いいでしょ。ヒキタニくんの捻くれ美少年度が二割増だよ、結衣得でしょ。ぐ腐腐」
結衣「ええ!?二割増!?そ、そりゃちょっとは本物より美形に書かれてるかも知れないけど、二割ってことはないでしょ!?二割は!!」
海老名「ぐふふ、いいねいいね。結衣ならノマカプもありだね。ぐ腐腐腐腐腐」
結衣「姫菜ぁ!?ちょっと話聞いてよ!姫菜!」
海老名「ヒキタニくん、ヘタレだから、その本を見て参考にするといいよ。ぐ腐、ぐ腐腐腐腐腐腐腐」
結衣「ちょっと姫菜!これ置いてかないでよ!ねぇ、姫菜!?」
結衣「………」
結衣「………えー……」
ガラガラ
結衣「…や、やっはろー」
八幡「おう」
結衣「あ、あれ?ひ、ヒッキーだけ?ゆきのんは?」
八幡「さぁなぁ。さっき一人でどっか行ったぞ」
結衣「え?どこに?」
八幡「知らん。あいつ出て行く時に無言だったし、俺も何も聞かなかったしな」
結衣「さ、さすがヒッキーだ…」
八幡「ほっとけ…」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「………」ジー
八幡「………」
結衣「………」ジー
八幡「…んだよ?」
結衣「え!?いや!そのヒッキーって意外と睫毛長いなって思って!!」
八幡「いきなり何なのそれ…って言うか人のこと観察してんじゃねえよ……」
結衣「ご、ごめん…」
八幡「いや、別にいいけど…」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「…本を…参考…」ボソボソ
結衣「………」
結衣「いやいやいやいや!!ないないないないない!!」
八幡「お、お前いきなり何叫んでんの…?ちょっと怖いんだけど」
結衣「え!?い、いや!あたし、全然!全然怖くないし!平気!平気!」ガタッ
八幡「いや、こえーよ…どうなってんの?つか、なんか落ちたぞ」ヒョイ
結衣「あっ!!」
八幡「………」
結衣「あ、あのね…ヒッキー?こ、これは」
八幡「あっと…お、俺、今日は帰るわ」
結衣「ちょ、ちょっとヒッキー違う!」
八幡「い、いや。しゅ、趣味は人それぞれだしな。それに口を挟む気はねえよ。好きにしたらいいんじゃねぇの?」
結衣「だからあたしの趣味じゃないからぁ!仮にそうだとしても注意してよ!!ねぇ、ちょっとヒッキー!?話聞いてよ!!」
八幡「い、いや!は、離して!腕を掴まないで!離して!離してぇええ!!!」
616: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 18:04:19.44 ID:KdjDcTlQ0
「はろーはろーあろー」 結衣「なーんか、風強くなってきたねー」
雪乃「そうね」
八幡「なんか台風来てるらしいな。あー、明日休みになんねぇかなー。風強いなか学校くんのやなんだよ」
結衣「あぁ~、それわかる。傘とか壊れちゃったりするしね」
八幡「いや、それもあんだけどさ。風の強い日ってなんかクラスの奴が普段に増してやかましいだよ。『ものすごい風だったけどたちこぎなんて一切せずに学校にきたぜ!』とか自慢してるやつがいるしよ。こっちゃただでさえ強風のせいで腹たててんのに、不快度数急上昇なんだよ。なんなのあれ?」
結衣「あはは…確かに逆に元気になっちゃう人っているよね」
雪乃「まぁ、その人たちにとってはある種のイベントごとか、お祭り気分なのでしょうね」
八幡「あとさ。夜中のうちは出てたのに明け方になると解除される暴風警報な」
結衣「あるある!明日は休みになるのかな?って思って寝るのに朝になったら強風ハロー注意報とかになっちゃってるんだよね」
八幡「そう。こっちはもう休みになると見込んで夜更かししてんのにな」
結衣「それはヒッキーだけだし!」
雪乃「本当にある意味ポジティブよね。あなた」
結衣「あ、でもさ、強風ハロー警報って面白いよね!すごい風がこんにちわーって来るからハロー警報なんでしょ?気象台?の人も面白いこと考えるよね?」
雪乃「え?」
結衣「あ!そうだ!今度強風やっはろー!警報にしてくれないかハガキ送ってみようかな?どうしよ、名付け親として有名になっちゃうかも!!どう思う!?ゆきのん?」
雪乃「………」
八幡「………」ジ
結衣「あれ?」
雪乃「………」チラッ
八幡「…いや、多分こいつ今日は本気で言ってるわ」
雪乃「……そう」
結衣「え?あれ?どうしたの?ヒッキー!?ゆきのん!?」
雪乃「由比ヶ浜さん。暴風はろう注意報のはろうは『波浪』、つまり海面などのうねり…ようは風が原因で引き起こされる波のことを表しているのよ。だから…その…英語のHelloや、あなたのやっはろーとはなんの関係もないのよ…」
八幡「ようは風や波に注意しましょうっつーことな」
結衣「え、え!?そうなの!?」
雪乃「ええ…ごめんなさいね…。その…あなたの夢を、壊してしまって…」
結衣「い、いや。あのね」
雪乃「あ、で、でも、もしかしたら『やっ波浪注意報』と言うのはいい考えかもしれないわね。親しみが持ちやすくなると判断されて採用されるかも知れないわ。一緒に送ってみましょうか?」
結衣「ゆきのん、やめてってばぁ!!そんな優しい顔と言葉で慰めないで!!せめて叱ってよぉ!!悲しくなるからぁ!!」
619: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 19:57:21.66 ID:KdjDcTlQ0
「ちらりちらり」 結衣「あ、ゆきのんゆきのん!この前貸してもらってたお金、返すね」
雪乃「あら、そんなの別に気にしなくても良かったのに」
結衣「ううん、借りっぱなしだなんてそんなわけにはいかないもん!って、あっ!」チャリンチャリン
雪乃「あら」
八幡「おいおい、何してんの?」
結衣「あ、ごめんね。二人とも拾わせちゃって…。あー、後ろの机の下に入っちゃってるー。超とりにくいしー」カガミ
八幡「っ!!」
八幡「(ピンク!?)」
結衣「んー、もうちょっと…」
八幡「ちょ、ちょっと待て。由比ヶ浜そこ、変われ。お、俺がやる。俺がやるから」
結衣「んー?だいじょぶ!だいじょぶ!届くし!」
結衣「取れた!はい、ごめんね。ゆきのん!!」
雪乃「いえ、大丈夫よ。ありがとう由比ヶ浜さん」
八幡「………」
八幡「あのな、由比ヶ浜。お前はもう少し警戒心を持ったほうがいいぞ」
結衣「え?何のこと?」
八幡「いや、さっきあんなところで四つん這いになったろうが…あれ、下手したら下着見えるぞ?」
八幡「(いや、実際見えたんだけど)」
結衣「え!?」ガバッ
雪乃「………」
結衣「ちょ、ちょっとヒッキー何見てんの!?マジきもい!!」
八幡「いや、見てねえし…見えそうだったから、そう言うことをすんなって言ったんだろうが」
八幡「(いや、本当は見えたんだけど。この前は純白って言ってたのに今日は違うんだな)」
雪乃「比企谷くん…あなた、その抑えがたい獣欲を由比ヶ浜さんの若き肢体に向けるのはやめなさい。本当にいやらしいわよ」
結衣「!?ひ、ヒッキーありえない!!」
八幡「む、向けてねえし!お前の言い方のほうがやらしいだろ!!獣欲とか肢体とかなんなの!?普段官能小説でも読んでんの!?ていうか俺は、もし次に同じことして見えたりしないように、ちゃんと注意したんじゃねえか!感謝こそされど、責められる謂れはねえよ!」
八幡「いや、見えたけど!!ピンクだったけど!!」
結衣「な、な、な、ななな、ぴ、ぴ、ぴ、ピンク!?」カァ
雪乃「はぁ……」
八幡「っ!!」
結衣「ヒッキー!!や、やっぱり見てたんじゃん!!さ、サイテー!!超キモい!し、信じらんない!!あ、あ、あ、あとキモい!!」カァ
八幡「い、いや!ちょっと待て!誤解だ!何かの間違いだ!陰謀だ!」
結衣「そんなわけないし!誤解もなにもないし!し、下着の色合ってるし!絶対見てんじゃん!!」カァ
雪乃「由比ヶ浜さん…今日はもう帰りましょう。この獣とこれ以上一緒にいたら何をされるかわかったものじゃないわ。この場は戦略的撤退が上策よ」
八幡「おい!!」
結衣「うん、そうする、ゆきのん!ひ、ヒッキーの馬鹿!!ばーか!ばーか!!!ばーーーーーーか!!!」カァ
ガラガラガラ ピシャ
八幡「なんなの?俺が悪いの?完全に不可抗力だろ…」
八幡「ちょっと上げ幅と下げ幅が大きすぎるんじゃないの…?どうなってるの?」
八幡「………」
八幡「ピンク…か。なんで現実って…CG閲覧モードないんだろうな…」
627: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 22:35:30.79 ID:KdjDcTlQ0
「きみをおもう」 結衣「ねぇねぇ、ヒッキー。ヒッキーって映画って見るの?」
八幡「あ?まぁまぁ、かな。つっても高校に入ってからは、借りて来て家のテレビで見るほうが多いけどな」
結衣「へぇ~、洋画派でしょ」
八幡「ああ、まぁ、どちらかっつうとそうだな。お前、よくわかったな。つっても字幕は疲れるから吹き替えで見ることのが多いな」
結衣「あ!それあたしもおんなじ!お揃いだね、へへ」
八幡「……。まぁ、つってもあれだ。あんま吹き替えがひどい場合は字幕で見るぞ。特に棒読み女優や、前作ガン無視の起用してたりする場合な。最近ので具体的に言えばプロメテウスとかアベンジャーズとかだ」
結衣「うーん。あたし、その辺はよくわかんないかも。合ってればよくない?」
八幡「合ってれば、な。お前、絶対あれ見てないだろ。見てたらそんなこと言えねぇぞ?賭けてもいい」
結衣「ふぅん。じゃあヒッキーってどんな映画が好きなの?アクション?」
八幡「いや、アクションも見るけど、まぁ雑食だな」
結衣「具体的には?」
八幡「うーん…。あれだ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とかは割と好きなほうだな」
結衣「あ!それ知ってる!タイムマシンの奴でしょ?で、で、でれ、デレルヤン?」
八幡「デロリヤンだろ。なんだよ、デレルヤンて車なのにツンデレか、なんかなの?『あ、あんたなんか、乗せてあげないんだからねっ!』みたいな」
結衣「裏声だすなし!キモいし!てか結構おしいじゃん」
八幡「いや、惜しかねえだろ。的中率60%だぞ」
結衣「でもテストで60点だったら、結構よくない?」
八幡「60点でいい方なのかよ…お前進学校にいる意識低すぎんだろ…」
結衣「数学で9点取るヒッキーに言われたくないし!」
八幡「お前だって12点だろ。そもそも俺は理系ははなから捨ててるからいいんだよ」
結衣「まぁ、そうだけどー。てかちょっと意外『バック・トゥ・ザ・フューチャー』って結構有名じゃん?あたしでも知ってるし」
八幡「いやだってお前『12人の怒れる男』だの、『フォーン・ブース』だの『交渉人』だのっつてもわかんなくてポカンとすんだろ?メジャーどころ選んだんだよ」
結衣「あ、そっか。あたしの知ってそうなの選んでくれたんだ」
八幡「………。いや別にそういうわけじゃねえけどな。時間の無駄を省いただけだ」
結衣「なにそれ、感じ悪ーい。あ、じゃあさ、今は映画館はあんま行かないわけ?」
八幡「ああ。あれだ夏に戸塚と見に行ったくらいだな。高校入ってからだと」
結衣「え!?さいちゃんと映画行ったんだ!?」
八幡「おう!デートだぞ、デート!!あぁ…あの時の戸塚は可愛かったなぁ…!!」
結衣「ヒッキーキモいし!さいちゃん男の子じゃん!!」
八幡「ちげーよ。戸塚は戸塚って生き物なんだよ。愛でる対象なんだよ」
結衣「なにそれー…。……てかさいちゃんとは何見たの?」
八幡「あれだ『貞子3D』って奴だ」
結衣「あー、さいちゃんホラー好きだもんね。怖かった?」
八幡「いや、戸塚のほうばっかり見てたから。内容はよくわからなかったな」
結衣「また、それだし!!もうヒッキーさいちゃんのことどんだけ好きなの!?」
628: cMVCB/0/0 2013/08/12(月) 22:36:33.55 ID:KdjDcTlQ0
八幡「………」 結衣「………」
八幡「………」
結衣「映画って言えばさー」
八幡「続くのかよ」
結衣「当たり前じゃん。ほら、よく刑事役やってる人いるじゃん?頭のはげた」
八幡「ブルース・ウィリスか?」
結衣「いや、違くて。えーと…」
八幡「ああ、ニコラス・ケイジな」
結衣「そうそう!ニコラス刑事!」
八幡「あ?お前なんかイントネーションおかしくねえか?ニコラス・ケイジだろ」
結衣「え?だからニコラス刑事でしょ?」
八幡「ニコラス・ケイジ」
結衣「ニコラス刑事」
八幡「いや、だからなんで『コ』にアクセント入んの?……。おい、お前まさかニコラス・ケイジのケイジを役職の『刑事』とか言い出すんじゃないだろうな」
結衣「え!?違うの!?」
八幡「違うに決まってんだろ。『ケイジ』ってのは名字だよ」
結衣「そうなんだ!あたしてっきり本物の刑事だからそういう映画にでてるんだとばっかり思ってた…」
八幡「ありえねえだろ…なんで刑事が映画にでんだよ」
結衣「そりゃ、そう言われればそうなんだけど…」
八幡「……まぁ、でもあれだ。俺もガキの頃はニコール・キッドマンって名前聞いて男だったと思ってたからな。そういうこともあんのかもな」
結衣「なにそれ。ヒッキー、それフォローしてくれてるの?」
八幡「いや、半分以上皮肉だな。ポイントはガキの頃って部分な」
結衣「ヒッキーほんと素直じゃないし!」
八幡「でもあれだ。お前結構映画見んのな」
結衣「うちさ、パパが結構映画のDVD持っててさ。あたしパパっ子だったから、よくパパにくっついて見てたんだー」
八幡「パパっ子…そら、昔は懐いてたはずの娘からファブリーズかけられたら親父さんも傷つくわ。もうちょい優しくしてやれよ。つか『あたしの下着、パパのと一緒に洗わないでよ!』とか言ってねぇだろうな?パパさん泣くぞ」
結衣「言わないし!!ていうか、ヒッキー下着とか言うなし…き、キモいし…」
八幡「ああ…す、すまん」
結衣「いや、べ、別にいいけど…」
八幡「………」
結衣「あ、じゃ、じゃあさ、休みの日とかよく借りるの?」
八幡「まぁー、本読むことのが多いけどな。でもあそこのTSUTAYA土日貸し出しが安いだろ?だからたまに借りるな」
結衣「へ、へぇ~、今度の土日も?」
八幡「あ?どうだろうな。まぁどうせ暇だし、どのみち本読むか、ゲームするか、映画借りるかしかないからな、まぁ借りるかもな。けど別になにか借りようとか、考えてるわけじゃねえよ」
結衣「そうなんだ…暇なんだ」
八幡「そらそうだ。お前スケジュールの空き具合でいや俺の右に出るものはいないぞ。もっと言えば左にもいない。むしろ周りに誰もいないから孤立しているまである」
結衣「そ、そっか…な、ならさ」
八幡「な、なんだよ」
結衣「………」スーハー
結衣「一緒に試写会行かない!?実は応募したらあたちゃってさ!」
八幡「し、試写会?」
結衣「そ、その『タンゴ・リブレ』ってやつ!なんだけど!」
八幡「い、いや一人で行きゃいいんじゃねえの?」
結衣「いや、だってペアでしか入れないし!」
八幡「だったら、雪ノ下とか、それか三浦とか海老名を誘えばいいんじゃねえの?」
結衣「こ、こ、断られたの!みんな忙しいって言ってて!ほら!ヒッキーは暇なんでしょ!スケジュールの空きで右に出るものはいないんでしょ!?だ、だったらいいじゃん!!それにタダだよ!?」
八幡「わ、わか、わか、わかったよ。い、行くからちょっと離れろよ」
結衣「あ、ご、ごめん。って本当!?一緒に行ってくれるの!?」
八幡「………。まぁ、その、なんだ。タダだしな。お前せっかく当てたのに見れないっつーのも、アレだしな」
結衣「へへー。良かった。じゃあ、楽しみにしてるね!」
八幡「お、おう…」
ガラガラ
雪乃「由比ヶ浜さん。お待たせしてごめんなさいね。そろそろ行きましょうか」
結衣「あ、ゆきのん!うん!」
雪乃「じゃあ、比企谷くん。今日は戸締まりのほう、任せてしまって構わないかしら?」
八幡「ああ」
結衣「じゃ、じゃあねヒッキー!」
雪乃「さようなら」
八幡「おう」
ピシャ
八幡「………」
八幡「………」カチカチ
八幡「タンゴ・リブレ…か。あいつわざと後半省略したんかな…いや、うまい話あるわけないだろ。人数合わせだよ、人数合わせ」
八幡「……帰るか」
641: cMVCB/0/0 2013/08/13(火) 01:16:58.13 ID:GiALfJZE0
「しっと」 八幡「………」スッスッ
八幡「………」スッスッ
八幡「(人ごみに紛れているのに、誰にもぶつからない。俺マジ忍者)」
八幡「(ん!?あ、あれは!!後頭部でさえも可愛らしいあの姿は!!)」
八幡「と、とつ…」
戸塚「へぇ!?そうなーだ!でも僕はーいうとこーあんま見たことなーーかも」
八幡「(戸塚に…由比ヶ浜?なんであの二人が一緒に…)」
結衣「そーゃぁ、さいちゃんだからーーだよ!ーーーさいちゃんのこと大好きだから!」
八幡「(今、あいつ大好きって言わなかったか?)
戸塚「えぇ?そ、そーーなぁ。由ーー浜さんのーー仲良ーーけど」
八幡「(あの二人…もしかして付き合ってたのか…?)」
結衣「えーー!?なーーい!」
八幡「(そうだよな…戸塚も王子とか呼ばれるくらいだし、顔もいい。そら彼女の一人くらい)」
戸塚「あれ、あそーーの、ーーーじゃないかな」
八幡「(そういや…最初に話した時からやけに親しげではあったよな。最初は戸塚が女だと思ってたから気にしなかったけど)」
結衣「あ、ほーーだ。ひーーーだ。おーー。ーーキー?」
八幡「(いつもこれだ。勝手に期待して一人で盛り上がって。今回だけは違うはずだなんて、俺は結局ー)」
結衣「ちょっと!?ヒッキー!?」
八幡「うお…。なんだ由比ヶ浜か…」
戸塚「おっす!八幡!」
八幡「おう…」
戸塚「あれ?ど、どうしたの八幡?元気ないよ?」
八幡「いや、別になんでもない。気にすんなよ。戸塚」
結衣「ヒッキーどしたん?なんか顔色悪くない?」
八幡「いや、別になんでもねえよ。ほっとけ」
結衣「なんかさいちゃんと反応違くない!?」
八幡「いや、俺はもう行くわ。邪魔になりたくねえしな」
結衣「邪魔?ヒッキーなに言ってんの?」
戸塚「そうだよ!僕たちちょうど八幡の話してたんだよ!せっかくだからお話しようよ」
八幡「は?俺の話?」
結衣「そー、ヒッキーがあたしに嘘ばっかり教えるって話ー。そしたらさいちゃんが自分は嘘なんか聞いたことないっていうしさー!それもう絶対さいちゃんのこと大好きだからだよーって言ってー」
戸塚「そ、そんなことないよ。か、からかわないでよ由比ヶ浜さん」
八幡「………」
八幡「じゃあ、お前らはこんなところで二人で何してんの?」
結衣「何って?そこで会ったから歩きながら話してただけだよ?方向一緒だし」
戸塚「うん、僕これからスクールがあるんだよ」
結衣「あたしは優美子たちと待ち合わせー」
八幡「………」
八幡「いやー!はっはっは!相変わらず戸塚は練習熱心だなぁ!!」
戸塚「いきなりどうしたの。八幡?」
八幡「いやー、なんでもないさ。戸塚。んで?なんで由比ヶ浜はいつまでここにいんの?俺と戸塚との一時を邪魔すんなよ」
結衣「はぁ!?いきなり元気になったと思ったら失礼だし!一体なんなの!?ていうかどんだけさいちゃんが好きなの!?」
八幡「(そう、俺は戸塚がからむと正常な判断が出来なくなる、それだけだ。そう、だから断じて…そういうわけではない)」
八幡「さぁ、行こうぜ。戸塚!なんなら俺がスクールまで送っていくぞ!」
戸塚「八幡!」
結衣「ちょ、ちょっと!なんでそうなるし!あたしを置いて行かないでよぉ!ちょ、ちょっとヒッキー!?」
651: cMVCB/0/0 2013/08/13(火) 10:45:43.55 ID:GiALfJZE0
「ぼうそうはんとう」 結衣「ねぇねぇ、ヒッキーぼうそう半島ってなんか洋画のタイトルみたいじゃない?」
八幡「あ?お前何言ってんの?房総半島に洋画要素0でしょ。邦画要素だって木更津キャッツアイくらいしか思いつかねえぞ」
結衣「違くて!暴走してるみたいって話?」
八幡「あ?それってお前、暴走半島とか言いたいの?お前千葉なめてんの?ほんとに千葉県民?」
結衣「いや!本当にそう思ってるわけじゃないからぁ!なんでそんな怒るの!?」
八幡「いや、怒ってねえけど。でもいたよなー小学校の頃にはそういうこと言う奴。もう小学校からやり直したら?」
結衣「だからあたしコナン君じゃないし!やっぱり怒ってんじゃん!」
八幡「まぁ、でもあれだ『暴走半島』っつーことなら、わからなくもないな。あれだろ?もうメインストーリ関係なくて、カーアクションばっかしてるような映画だろ?」
結衣「そうそう!ほらイタリアとか舞台にして!」
八幡「あれ、何。お前イタリアが半島だったって知ってたの?この前は国名も出てこなかっただろ」
結衣「あのあとちゃんと調べたし!!さすがに大志くんにあそこまで馬鹿にされて終われないし!」
八幡「おー、勉強したのか。花丸をやろう」
結衣「だからそれいらないし!あたし花丸で喜ばないし!!小学生じゃないし!!」
八幡「ああ、じゃあ。こんなのはどうだ。まず冒頭でおっちょこちょいのドライバーが、自分の車と間違えてマフィアの運び屋の車に乗っちまうんだよ」
結衣「それでどうなるの?」
八幡「そらお前、ブツを取り返そうとするマフィアと、マフィアを捕まえようとする警察の両方に追われる展開に決まってんだろ。主人公、マフィア、警察による手に汗握る三つ巴のカーチェイスだ」
結衣「なにそれ、ちょっとおもしろそう!」
八幡「ばっかお前ここからもっと面白くなるぞ。状況は悪化し、マフィアはマシンガンで武装した攻撃部隊を、警察は特殊部隊まで投入し、さらには軍警察まで絡んでくる。そらもうあちこちで銃撃戦だ。飛び交う銃弾、炎上する車、もはやイタリアは戦場だ。主人公はローマやナポリを火の海にしつつ、ひたすら南へ南へと逃げるんだな」
結衣「そんなことになっちゃうんだ…。なんかイタリアの人に怒られそう。っていうかもう車返したらいいのに!」
八幡「いや、お前主人公は馬鹿だからそんなこと気づかないんだよ。んでとうとう主人公はイタリアの南端まで追いつめられる
。ここで、初めて主人公は車を降りるんだな。だがそこで由比ヶ浜が見るのは立ち並ぶ銃口、マフィアと警察に蜂の巣にされてDEAD ENDだ」
結衣「主人公あたしだったし!!ていうか警察にまで撃たれてるし!つか、あたし車返したらいいっていったじゃん!」
八幡「お前、それだよ、それ。なんでお前、俺の改心のオチを邪魔すんの?主人公なら、もうちょっと主人公らしいことしてくんない?」
結衣「改心のオチってあたしが撃たれちゃうだけじゃん!!もう、ヒッキー最低!!聞いて損した!!」
659: cMVCB/0/0 2013/08/13(火) 12:35:07.89 ID:GiALfJZE0
「めんきょ」 結衣「てかさー」
八幡「あー?」
結衣「あたしも免許とろうかなぁ」
八幡「お前今の流れでそんなこと言ってんの?マゾなの?」
結衣「そ、そんなんじゃないし!」
八幡「つか、俺たちの年齢じゃまだ車の免許はとれんだろ」
結衣「違くてー。原付の話!」
八幡「いや、お前…それはやめとけって。原付なんて娘に乗せさせたくない乗り物ナンバー1でしょ」
結衣「そうなの?なんの調査?」
八幡「いや、うちの親父の独断と偏見によるものだけどな」
結衣「ようは小町ちゃんを乗せたくないってことなんだ…」
八幡「いやでも一理はあると思うんだよ、車と違って原付ってのは乗ってる人間がむき出しだろ?例えば車と並走してる時に、ちょっと車道側によろけるか、こけでもしたら一発じゃねえか」
結衣「あー、それはそうかも…」
八幡「だいたいお前あれだろ?自転車だってまだ補助輪つけてるだろ?そんなやつが原付とか無謀すぎるでしょ」
結衣「つけてないし!馬鹿にしすぎだからぁ!てかヒッキーさっきからもしかして心配して言ってくれてるの?」
八幡「……。いや違うから、都合良く解釈すんなよ。ほらお前原付だって法廷速度は30キロだけど実際には60キロ以上のスピードがでんだぞ?それもう、完全に走る凶器でしょ。周りの人間を巻き込むっつってんの」
結衣「…そっかぁ。でもさ、学校はともかくとして原付みたいな足があると遠出する時とか便利じゃない?」
八幡「いや、お前の場合どうだろうな。多分お前、右折とかできないから、ずーっと左折し続けて同じとこぐるぐる周り続けるぞ。最後バターになるぞ」
結衣「ならないし!てか右折くらいできるし!……多分」
八幡「いや、どうだろうな。これは親父が大学生の頃の知り合いの女子の話で、実話らしいんだが、その女子はとにかく運転が下手で右折が怖くて出来なかったらしいんだよ。んでその人がある時大学に行こうとしたんだけど、右折ができないからもうとにかく左折を繰り返したんだと、大きな左折とか小さな左折とか繰り返してな。結果、その人は大学への2キロの道のりを進むのに40分かかった」
結衣「それ歩いたほうが早いじゃん!!」
八幡「しかも、その人は免許をとる時点で既に伝説を起こしてる。なにせ原付の免許をとるために、自動車学校へ行ったのに帰る時には自動二輪を契約して帰って来た。原付なんて5000円くらいで取れるのに、10万くらい払って帰ってきたんだよ。しかも実際に受講してバイクにまたがるまで気づかなかったらしいんだぜ?多分お前もそうなるよ」
結衣「ならないし!あたしそこまで馬鹿じゃないし!!」
八幡「いやぁどうだろうな…。まぁともかく、お前は原付とろうなんて考えんなよ。どっか出かけたいなら、公共交通機関つかうか、誰かに送ってもらえよ」
結衣「え~…?あ、じゃ、じゃあさ。ヒッキーが送ってくれる!?」
八幡「…。お前何言ってんの?さっきまだ車の免許はとれないって話したばかりじゃねえか、覚えてねえの?だいたい、お前のが誕生日早いんだから、免許とれるようになるのも早いだろうが」
結衣「そんなの、わかってるしー…。ちょっと言ってみたかっただけじゃん…。ていうか誕生日はあんま関係ないでしょ?どうせ高3で取ることはないんだし…」
八幡「まぁ、とっても大学入ってからにはなるよな。あれだ、まぁその時には俺らは違う大学行って縁も切れてるだろうからな。余計、送ったりなんてする機会はねえだろ」
結衣「それは…そんな…縁、切れるとか…ヒッキーひどいし…超ひどい…」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「………」グスッ
八幡「………!」
八幡「いや、まぁそのお前。あれだ。家もそんな遠いわけでもねぇし?連絡先も知ってるしな?だから、そのあれだ、まぁ同じ方面に行く用事があったりすりゃ、ついでに乗せてってやることくらいはあるかも知れねえよな。ガソリン代かわんねぇしな?あと親の車だけどな?」
結衣「………」
結衣「………ディスティニーランド……」スン
八幡「え?」
結衣「……ディスティニーランドの方面とかでもいいの?」
八幡「そ、そらお前、一緒に…つうか一緒のつうか…まぁ、そのあれだ。同じ方面に行く用事があれば、ついでだし…いいんじゃねえの?」
結衣「ふぅん…。そっか……。なら許す…。…えへへ」
八幡「別に…許しを乞いた覚えはねえけどな。…まぁ、だからなんだ。お前もまぁお前も受験頑張れよ。俺はその、大学のランクを落とす気はねえからな?」
結衣「うん、そうする!ついでの用事、作りたいもんね!」
666: cMVCB/0/0 2013/08/13(火) 14:11:09.26 ID:GiALfJZE0
「ごきぶり」 雪乃「ヒッ!」
結衣「ん?どしたの?ゆきのん?きゃっ!」
八幡「お前、今『きゃっ!』とか言わなかったか?」
結衣「ヒッキー!ごきぶり!」
八幡「お前、人をごきぶり呼ばわりするなよ」
結衣「ちがうし!ゴキブリが出たの!!」
八幡「あぁ…、お前らが食いもんとか持ち込むからだろ」
雪乃「ひ、比企谷くん!そんなことはいいから、早く退治して頂戴!」
八幡「お前らさぁ、普段ひどい扱いしてんのにこういう時だけ頼るのやめてくんない?てかこの前もこんなことあったろ、お前ら雑誌の下につぶれたゴキブリ放置しやがって。なんなの?いやがらせ?」
結衣「いいから!ヒッキー!いいからぁ!!後でいっぱい謝るからぁ!!はやく退治してよ!!100匹出て来ちゃう!!」
八幡「つってもな…。新聞紙とかねえし…あぁ、これでいいか」バシッ
雪乃「………!!」
八幡「うい、終わりっと。由比ヶ浜、ティッシュもってねぇ?これ捨ててくるわ」
結衣「あ、うん…はい。ヒッキーすごいね」
八幡「あ?普通だろ。ゴキブリぐらいでいちいびびんなよ。ただの虫だろ」
雪乃「比企谷くん…その、言いにくいのだけれど…あなたがゴキブリを倒したのって、そのノートじゃないかしら」
八幡「あ?ああ。手頃なのがなかったからな」
結衣「げ、ほんとだヒッキー!!ノートでつぶすとか信じらんない!!」
八幡「いや、いいんだよ。これ現国のノートだし、これから提出するやつだから」
結衣「え?何がいいの?…え!?ていうかそれ出すの!?平塚先生に!?」
八幡「おー、まぁ汁拭いときゃ大丈夫だろ。んじゃ、これ捨てるんと一緒についでにノートも出してくるわ」
結衣「え…?ああ…、うん…」
雪乃「…………」
結衣「…………」
雪乃「…………」
結衣「ねぇ、ゆきのん?」
雪乃「なにかしら…」
結衣「この、なんかモヤモヤした微妙な気持ちはなんなんだろうね…。動じないのはカッコいいとは思ったんだけど…」
雪乃「そうね…。どうにも言葉に言い表せないわ…強いて言うのなら『さすが比企谷くん』と言ったところ…かしら。色々な意味で」
670: cMVCB/0/0 2013/08/13(火) 15:25:22.27 ID:GiALfJZE0
「まま」 ガラガラ
平塚「おーい、雪ノ下はいるかー」
結衣「あ!ママ!ゆきのんなら…」
八幡「(あーあ…)」
平塚「………」
結衣「……あ」
平塚「ゆ、由比ヶ浜…わ、わたしは、さ、さすがにそんな年じゃないんだが…」
結衣「せ、せ、せ、先生すいません!先生を見てつい!?というか!!一瞬ママを思い出してうっかり!?というか!?」
平塚「………」
八幡「いやー、わからないですよね。先生がもし結婚出来るギリギリの年齢で結婚していたら、今頃このぐらいの娘がいる可能性も。プークスクスクス」
平塚「……ひ、比企谷…」
八幡「あれ?」
平塚「そ、その、さ、さすがに今の冗談は、き、きついんだが」ウルウル
結衣「ちょっと、ヒッキー最低!!先生に謝って!!」
八幡「いや!いい間違えたのお前だろ!俺悪くないだろ!」
結衣「あたしはつい『先生をママと見間違え』て、うっかり『先生のことをママって呼んじゃった』だけでしょ!?ヒッキーは『わざと』じゃん!!」
八幡「いや、お前ちょっと…」
結衣「もしヒッキーには先生が『そのぐらいの年齢に見える』んだとしても、『あんな言い方』をすることはないでしょ!?少しくらい『気を使えない』の!?『先生が結婚できないことを気にしている』って言ったのはヒッキーじゃん!!」
八幡「いや!落ち着け!落ち着け!今現在進行形でお前が一番傷つけてるから!」
結衣「あ……」
平塚「………」
八幡「………」
平塚「ゆ、雪ノ下は、せ、席をはずしているようだしな…わ、私はで、出直すとしよう」
結衣「あ、でも先生…ゆきのんなら…」
ガラガラ ピシャ
平塚「う、うう…」
平塚「なぜ、あの二人だけだと私はいつもこうも傷つくんだ!!なんで居てくれないんだ雪ノ下!!!!うわあああああああああああ!!結婚したいいいいいいいいいいいいい!!!うわあああああああああああああああああ!!」ダダダダダ
八幡「………」
結衣「もう…ヒッキーがもらってあげたら…、今回はあたしの…せいだし…」
八幡「………。お前のせいだったらなんで俺が責任とらないといけないんだよ…。因果関係がないだろ…。ていうか地雷をばらまいて、処理だけ俺に押し付けるなよ…カンボジアかよ…」
691: cMVCB/0/0 2013/08/13(火) 20:59:02.55 ID:GiALfJZE0
「くろすわーど」 結衣「ねぇねぇ、ゆきのん!北京で発見された化石人類…ええと、ホモ・えれくそす…ぺきねんしす…ってなんのこと!?」
雪乃「化石人類…北京猿人…もしくは北京原人のことかしら」
結衣「北京エンジンだね!!ええっと…ぺ・き・ん・え・ん・じ・んっと…」カリカリ
結衣「ええっとじゃぁじゃあ!国王ジェームズ2世のカトリックふっかつ政策とぎかいむしに反対した議会が国王を国外に追放した、英国の無血革命ってなに!?」
雪乃「名誉革命のことじゃないかしら」
結衣「なるほど、なるほど!め・い・よ・か・く・め・い、っと、ホントだ!ピッタリ!!」カリカリ
雪乃「由比ヶ浜さん。あなた今日は一体何をしているのかしら」
結衣「へへ~、あのね。クロスワードパズルだよ!」
八幡「はぁん、なんか珍しいのやってるな。由比ヶ浜とパズルなんて勇猛果敢なうさぎみたいな感じだけど」
結衣「なにその例え…意味わかんないし…」
雪乃「なるほど、結構大きなのをやっているのね」
結衣「でもやっぱり難しいからー、二人と一緒にやろうと思って!!」
八幡「一緒にやるっていうか。答え教えてもらって、お前は書きこむだけだろ」
結衣「ヒッキーうっさい!!ね!ゆきのん一緒にやろ!!」
雪乃「なるほど…えぇ、わかったわ。協力するわ。由比ヶ浜さん、問題を読み上げて言ってちょうだい」
結衣「うん!!」
八幡「(ほんとに由比ヶ浜に甘いな)」
結衣「ヒッキーもやるよ!」
八幡「へいへい」
結衣「ジョージア州の州都で1996年にオリンピックが行われた…」
雪乃「アトランタね」
結衣「おお、さすがゆきのん!あ・と・ら・ん・た」カリカリ
結衣「次は…ええっと…悪性…ええと…悪性…ゆきのん、これなんて読むの?」
雪乃「しゅよう、ね」
結衣「あ、そっか。えっと悪性腫瘍のぞくしょう。日本人の死因の多くを占める」
八幡「それはお前でも聞かなくてもわかるだろ。ガンだろガン」
結衣「ええっと、ちょうど二文字だし。あってるみたい!が・ん」カリカリ
結衣「ええっと次は…こ、こう、こうかくるい?がん…ヒッキー?これは?」
八幡「がんしょう」
結衣「岩礁にすむ大型のエビで体調35せ…」
雪乃「伊勢エビ」
結衣「え、ゆきのんはやっ!」
八幡「好きなのな、伊勢エビ」
692: cMVCB/0/0 2013/08/13(火) 20:59:56.24 ID:GiALfJZE0
結衣「ええっと次はもくひょうのたんさ…」
雪乃「由比ヶ浜さん、遅い。遅いわ。ちょっと貸しなさい」
結衣「え、で、でも」
雪乃「いいから渡しなさい。ふむ…これは、イージス艦ね…」カリカリ
雪乃「江戸末期…坂本龍馬…海援隊ね」カリカリ
雪乃「ふむ…、比企谷くん。がんだむというのはなんなのかしら」
八幡「あぁ、昔のロボットアニメだな」
雪乃「では、それにとても興味のある人たちをなんと言うのかしら」
八幡「ガノタじゃねえの?」
雪乃「いえ、スペースは7文字もあるのよ」
八幡「ならガンダムオタクだな」
雪乃「そのままなのね…安直だわ…」カリカリ
雪乃「次は、聖徳太子ね。そしてこれはアルカトラズ…島も必要なのね」カリカリ
結衣「あ、あのさゆきのん?」
雪乃「いいから、いいから由比ヶ浜さんは座って見ていなさい」
結衣「はい…」
雪乃「比企谷くん、この勇者王というのは…」
結衣「………」
結衣「………サミシイ」ポショ
雪乃「ふぅ…」
結衣「あ、お、終わったの?ゆきのん?」
雪乃「ええ…ほら、見なさい」
結衣「ほんとだ…ぜ、ぜんぶ…埋まってる…」
八幡「また見事なドヤ顔だな。でも言っとくが、それはお前の独力でやったわけじゃないぞ?」
雪乃「言うわね。比企谷くん。確かに、時々混じるオタク系の問題はオタクの比企谷くん無しでは埋まらなかったことは認めてあげてもいいわ。けれど8割…いえ…9割半は私がやったのよ。私が完成させ、と言って差し支えがないように思うのだけれど」
八幡「それはお前が俺に手を出させなかったから、だろうが、この程度の問題だったら俺にだってわかんだよ。ようはオタク的知識の分、俺が勝っていると言っていい」
雪乃「…へぇ、面白いわね…、それは私に勝負を挑んでいると判断していいのかしら」
八幡「あぁ、いいんじゃないか?さっきのパズル、同じのが二つあって同時にはじめてりゃ、多分俺が勝ってたと思うしな」
結衣「なんでヒッキーまで熱くなってるの?実はパズル好きなの?」
雪乃「ならば図書室に行きましょう。たしかパズルの本が2、3冊はあったはずだわ」
八幡「よし…わかった…」
結衣「え?二人とも本当に言っちゃうの?私は?私は言っていいの?ぶ、部室開けっ放しでいいの!?ねぇ、荷物も置きっぱなしだよ!?私は荷物を見てなきゃいけないの!?ねぇ!!聞いてってばぁ!!」
704: cMVCB/0/0 2013/08/13(火) 23:10:42.16 ID:GiALfJZE0
「あにめ」 結衣「ねぇねぇヒッキー、アニメ見たい」
八幡「見りゃいいだろ」
結衣「違くてー。ヒッキーのおすすめの奴を見てみたいってことー」
八幡「だったらそう言えよ。言葉足りなすぎだろ、お前高倉健なの?」
結衣「高倉健って誰だし!ていうか言葉足りなくないし!」
八幡「いや、言葉は足りてねえぞ。そこ否定すんなよ。つかお前健さん知らねえの?」
結衣「知らないし…。あ、いや名前は聞いたことあるかだけど、詳しくは知らない」
八幡「遅れてるな、お前。しんのすけだって高倉健知ってんだぞ。その辺勉強して出直せよ」
結衣「いやいや!違うし!それでごまかされないし!また適当な話に振っていい加減に会話終わらせようとしてるでしょ」
八幡「なんでわかんの?」
結衣「わかるし!いつものパターンだし!!そう何度も騙されたりしないから!!」
八幡「いいんじゃねえの?女子はちょっとくらい騙されやすくってアホっぽいほうが可愛いと思うぞ?」
結衣「え!?可愛い!?ほんと!?……えへへ」
八幡「……まぁ、一般論を述べただけだけどな」
結衣「ヒッキー!?」
八幡「んで?なんで今度はアニメなの?こないだ漫画貸したばかりだろ?あれはもう全部読んだの?」
結衣「ううん、ちょっとは読んだけど…っていうかヒッキー!あの寄生獣って漫画、超グロいじゃん!!」
八幡「そうか?あれ、ベルセルクとかに比べりゃ全然グロくねんだけど」
結衣「そんな漫画知らないし…あたし基準で言えばあれ超グロいし…」
八幡「つか、どこまで読んだんだ?」
結衣「あの、右手が変な形になって『残念だ…』とこ」
八幡「序盤も序盤じゃねえか」
結衣「でも、だって無理なんだもん!しょうがないじゃん!!あれ超怖かったし!」
八幡「そうか、まぁあそこの時点で無理なら別のやつのがいいかも知れないな」
結衣「でしょー?だからほかの漫画かー、それかほら!アニメって可愛い女の子とか、動物とかでてくるやつ多いんでしょ?ああいうちょっと癒されそうなやつ貸してよ!!」
八幡「えー?そういう萌系は材木座の担当なんだけど~?」
結衣「なんでそこで中2が出てくるし!別に中2から借りたいとか思わないし!」
八幡「おまえ、それ結構ひどいこと言ってること気づいてる?」
結衣「違うし!そういう意味じゃないし!!ヒッキーから借りたいって言ってるだけじゃん!」
八幡「………つってもなぁ。ああ、あれなんかいいかもな。魔法少女とつかサイカ!」
結衣「ヒッキー魔法少女ものなんて見てるの?それはさすがにあたしも小学校で卒業したんだけど…、ていうかとつかサイカってさいちゃんじゃん!さいちゃん魔法使えないし!アニメじゃないし!そもそも少女じゃないし!!」
八幡「いや、そこらの少女より実際可愛いだろ。癒されるだろ?」
結衣「そりゃ、癒されるけど!そういうこと言ってんじゃないし!ていうか、ほんとどんだけさいちゃんのこと好きなの!?」
八幡「なんなの、ちょっとわがまますぎるでしょ」
結衣「わがままじゃないし!ヒッキー、自分がむちゃくちゃなこと言ってるって自覚してる!?」
八幡「じゃあ、あれだ。魔法少女繋がりで『魔法少女まどかマギカ』でも見ればいいんじゃないの?」
結衣「あ、さいちゃんの話ってフリだったんだ…相変わらずわかりにくいし…てかどういうのなの?」
八幡「あー、それはひらあれだ。こういうの」カチカチ
結衣「なにヒッキー…アニメの画像携帯に保存してんの?」
八幡「なんで引いた顔してるんだよ…ちげえよ、公式サイト開いただけだろ」
結衣「うーん…でもなんかこの女の子たちっておもちみたいじゃない?」
八幡「おもちとか言うなよ…。てかこういう系が見たかったんじゃねえの?」
結衣「うーん…」
八幡「ほら、こういうのも出てるぞ?」
結衣「あ!なにこの動物超かわいいんだけど!!ヒッキーこれこれ!!あたしこういうのが見たかったの!!」
八幡「おー、そうか。ならTSUTAYAかどっかで借りて見てみろよ。動いてるともっと可愛いぞ」
結衣「ヒッキー持ってないの?」
八幡「もってねえな。円盤は高いから買えねぇっつか買わねえんだよ」
結衣「円盤って?」
八幡「アニメのブルーレイとかDVDとかのこと、そう呼ぶんだよ」
結衣「はぁー、なるほど」
八幡「まぁお前の場合、借りてきて一回みりゃ大丈夫だろ。3話にすごいシーンあるから。とりあえず、そこまで借りてみてみろよ」
結衣「うん!わかった!!」
比企谷家
八幡「…………」ハァ! 八幡「…………」ワタシニマカセテッ!
八幡「…ああ、くそ…メディックが…」サイモーン!
八幡「………」アーサー!
八幡「はいはい、全滅全滅」
ブーブーブーブー
八幡「…………」チラッ
ブーブーブーブー
八幡「…………」
ブーブーブーブー
八幡「…………」
ブッ
八幡「…………ふぅ」
ブーブーブーブー
八幡「…………」
ブーブーブーブー
八幡「…………」
ブーブーブーブー
八幡「…………」
ブツッ
トタトタトタトタ
八幡「あー、そう来たか」
ガチャ
小町「おにいちゃーん!結衣さんから電話ー!なんか変わってくれって!っていうかなんか珍しくちょっと怒ってるよ?なんかしたの?」
八幡「いや、別に」シッシッ
八幡「んで、何?」
結衣「何じゃないし!!なんで電話でないの!?」
八幡「いや、コンビニ行ってたから」
結衣「嘘つくなし!!今電話通じてるじゃん!!ていうか女の子死んだんだけど!!あれも十分グロじゃん!!ギャップで余計ダメージ受けたんだけど!?」
八幡「なー?結構来ただろ?」
結衣「『来ただろ?』じゃないし!!あたしそういうの求めてるって言ってないじゃん」
八幡「いや、ほらお前。俺も初めて見た時あれに結構ショック受けたんだよ。だからお前にも俺と同じ思いを感じて欲しかったんだよ」
結衣「お、同じ思い…?!」
八幡「………」
結衣「そ、そういうことなら仕方ないね…」
八幡「(あれ?)」
結衣「た、確かにあ、あたしもヒッキーと同じ思いを感じられてう、嬉しかったし、そ、そういうことなら…わ、わからなくもないから。で、でも!これはもう見ないからね!!今度はもうちょっとまともなの教えてよね!?」
八幡「あ、ああ…」
結衣「あ、それと、小町ちゃんに代わってもらえない?さっきのこと、ちょっと謝りたいし」
八幡「あ、ああ、わかった。おい、小町ー、由比ヶ浜が電話代われってー」
小町「およー?はいはーい、結衣さん。小町ですよー?え?いえいえー、そんなこと全然気にしないでください、もーこちらこそうちの愚兄が」
八幡「おい!!」
八幡「………」
八幡「てか、さっきのあの適当な一言で納得するとは思わなかったな…」
八幡「正直もうちょい遊ぶつもりだったんだけどな…」
八幡「はぁ…どんだけちょろいの…あの子。まぁ…人のことは言えん、か」
719: cMVCB/0/0 2013/08/14(水) 01:52:14.06 ID:O5qZLs1s0
「いかんのい」 八幡「そういや、昨日例の政治家捕まったよな」
結衣「それってちょっと前から話題になってた人のことでしょ!?へぇ~捕まったんだ!!」
雪乃「意外だわ…あなたは世間から隔絶されて、否が応もなく世の中の流れからは取り残されていると思っていたのだけれど、思っていたよりは文明的は生活をしていたのね…」
八幡「ばっかおまえ、社会が俺を置いてっているんじゃない、俺が社会を置いてっているんだよ。あれだ、動画サイトのランキングに入ってる動画なんて俺は5年前に見てたからな。5年前に」
雪乃「なんの自慢なのか、まったくわからないのだけれど。それとそういう話なら私は猫鍋もVery Angry Catも再生数が2桁の時から既に見ているわ。わたしの勝ちっということでいいかしら」
八幡「まったくわからないとかいいながら、完全に理解して自慢仕返してんじゃねえかよ…。ああ、もう、まぁいいよ、別にそれで」
雪乃「………」フッ
結衣「それで?その人って何したの?」
八幡「あぁ、まぁ建設関係の会社から金を受け取ってたんだよ。その見返りに工事の発注してたわけだからな。まぁ端的に言えば賄賂だな」
結衣「へぇ~!じゃあ汚職事件ってやつだね」
雪乃「っ!?」
八幡「っ!?」
結衣「ふふーん、どうしたの?二人とも?」
雪乃「由比ヶ浜さん…驚いたわ…」
八幡「同感だ。由比ヶ浜、俺はてっきり…」
結衣「てっきり、汚職事件を『お食事券』とか言うと思った?馬鹿にしすぎだから~!」
雪乃「由比ヶ浜さん…今日、部活の後、時間は開いているかしら。あなたの好きなケーキを買ってうちで二人で食べましょう?それと…昨日とてもいい茶葉が届いたの。ぜひ、あなたに飲んでもらいたいわ」
結衣「やったぁ!ゆきのん!!絶対行くよ!!」
雪乃「………」ナデナデ
八幡「(期待値が下がっていただけに、一気にめちゃくちゃスコア稼いだんだな…いまの雪ノ下は完全に慈愛の女神モード)」
結衣「ヒッキーもこれでわかった?私は実はやればできる子だってことに!!」
八幡「確かにな。まぁ雪ノ下と違って、これまでの失点が一気に覆るほどじゃないけどな。多少は見直したよ」
結衣「えへへぇ…そうでしょー。まぁこれに懲りたらあたしをあんまり馬鹿にするのはイカンのイだよ!!」
八幡「ん?」
雪乃「え?」
結衣「え?」
八幡「遺憾の意だろ…?」
結衣「うん、イカンのイ…でしょ…?」
八幡「お前さっきのそれ…イカンって…ダメって意味で使ってないか?」
結衣「え?だってそうでしょ?ダメって意味の言葉でしょ?大阪語でしょ?」
八幡「(アカン)」
雪乃「由比ヶ浜さん…その…遺憾の意の遺憾というのは『残念だという気持ち』を表すものであって…相手の行動などを否定する言葉ではないの…」
結衣「え、そ、そうなの?」
八幡「(アカン、アカンパターンやわ。これ。反動で雪ノ下はんにめっちゃダメージが入るパターンやわ)」
雪乃「ええ、それに…意というのはそのまま意味という意味であって『いかん』という言葉から『かん』をとって『い』にしたわけではないの…」
結衣「そ、そうなんだ…」
八幡「(アカンわー、雪ノ下はんのこんな表情はじめてみたわー。体全身で遺憾の意を表明しとるわー)」
雪乃「その…ごめんなさい…。さっきの、ケーキの話はなかったことにしてもらっても構わない…かしら。その…今日は一人で色々とこれからのことを考えたくなってしまったものだから…」
結衣「ゆ、ゆきのん…?」
雪乃「ごめんなさい。今日はもう…帰るわね…」
結衣「ゆ、ゆきのん!!ちょ、ちょっと待って!?」
雪乃「ごめんなさい…少し…一人にしてちょうだい」ウル
カラカラカラカラ パタン…
結衣「………」
八幡「………」
結衣「あ、あのさヒッキー?」
八幡「よし、雪ノ下も帰ったし今日は部活終わりでいいよな?俺たちも帰ろうぜ」
結衣「なんのフォローもなし!?ね、ねぇ!ちょっと待ってよ!ヒッキー!!慰めるか、叱るか、けなすかどれかしてよぉ!!放置しないでよぉ!!ねえ!!ヒッキー!?ねぇ!?」
733: cMVCB/0/0 2013/08/14(水) 11:00:27.22 ID:O5qZLs1s0
「うずうず」 八幡「つうか、この前の由比ヶ浜じゃないけど、子供の頃に勘違いしてた言葉ってのはあるよな」
雪乃「私には全く身に覚えがないのだけれど、いったいどういうものを指して言っているのかしら」
八幡「そうだな、まずは『透明高速道路』だな」
雪乃「なるほど…『東名』を『透明』と勘違いしているのね。確かに、子供の考えそうなことだわ」
八幡「だろ?これは多分由比ヶ浜も勘違いしてるぞ、多分帰省ラッシュのニュースとか見て『ねぇねぇゆきのん!透明高速道路の透明ってどこが透明なの!?もしかして地面!?それって下が見えて怖くないのかなぁ!』とか言うぞ」
雪乃「あなた、それは由比ヶ浜さんの真似をしているの?まったく似てないし、それにあなたの口からゆきのんという単語を出さないでもらえるかしら。あまりに気持ちが悪くて、胃の内容物が逆流しそうだわ」
八幡「そりゃ、すまんかった。ほら、ほかはあれだ。『カレー臭』とかな。『年をとるとカレーの匂いがするようになるの?』って聞いてくるだろう」
雪乃「そうね…あなたの似ていないモノマネはさておき、由比ヶ浜さんの言いそうなことよね。中途半端に真実が混ざっている分、あなたの嘘と一緒で質が悪いわ」
八幡「そうやっていちいち俺を攻撃すんのやめてくんない?あとはほら『学校の階段』な」
雪乃「それはないでしょう?以前、由比ヶ浜さんのほうからその話を振ってきたじゃない。さすがに『怖い話』という認識くらいはあるのではないかしら」
八幡「ああ、それはそうな…。でもこれは確実に間違えてるぞ『扶養家族』を『不要家族』って言う奴な」
雪乃「けれど、その言葉はある種、言い得て妙なのではないかしら。あなたの存在はご家族にとって必要性が皆無でしょう」
八幡「お前、俺がいらない子みたいな言い方するのやめてくんない?ていうか俺全然『不要』じゃねえし、家族に超愛されてるし」
雪乃「愛されている子供はバースディーケーキの名前を間違えられたり、家族旅行に置いていかれたりしないと思うのだけれど」
八幡「うるせー。別に置いてかれてるんじゃなくて自分で進んで家の守りを買って出てるんだよ、自宅警備隊なんだよ」
雪乃「別に、比企谷くんの家に誰も攻めてきたりはしないと思うのだけれど」
八幡「だいたいだな。俺はもう17年間養われる経験をつんできて、もはや養われることに関してはプロ級なんだよ。この先だってあと20年くらいは養ってもらわないいけないんだから、愛されてなきゃ困るじゃねえか」
雪乃「あなたそれ本当に『不要家族』化しているじゃない…。ご家族にとっての不良債権もいいところよ。早々に損切りを行うべきだわ」
八幡「もうすでに損が確定しているような言い方やめてくんない」
雪乃「そうね…時に真実はあまりに残酷でもあるものね…」
八幡「おい、悲しそうに目を伏せんのはやめろ」
雪乃「………」
八幡「………」
雪乃「………」ウズウズ
八幡「………」ウズウズ
雪乃「…それにしても遅いわね…」
八幡「…だな。多分また教室で三浦とかと話しているんじゃねえの?」
雪乃「……。まったくあの子は部活のことを一体なんだと思っているのかしら。だいたい授業が終わった時点で、あなたがすぐに彼女を連れてくれば済む話でしょう?」
八幡「いや、俺が教室であいつに話しかけるわけにもいかんでしょ。あいつにも立場ってもんがあるんだからさ。俺からは不干渉を貫くって決めてんだよ」
雪乃「まったく、自己認識に長けているのかいないのか、相変わらずよくわからない男ね、あなた。けれどあなたに話しかけられたりしたら、彼女の学校での立場が危うくなってしまいかねないものね、たしかに私の認識が甘かったわ」
八幡「………。………だろ?」
パタパタパタパタ!
雪乃「来たわね」
八幡「来たな」
パタパタパタパタ!
雪乃「じゃあ、今日は『カレー臭』でいく、ということでいいのかしら」
八幡「まぁ、いいんじゃねえの?」
ガラガラガラ!
結衣「やっはろー!!遅れてごめんね!!優美子たちと話し込んでたら遅くなっちゃって!」
八幡「おす」
雪乃「いいから、早く席につきなさい、由比ヶ浜さん。部活はもう始まっているのよ」
結衣「うん!」
八幡「(さて…まずはどうやってカレーという言葉を引き出すか…だ。そう言えば以前カレーパーティーがどうとか、こいつ言ってたよな……そうだな……まずはそこから派生させてーーー)」
751: cMVCB/0/0 2013/08/14(水) 16:40:00.19 ID:O5qZLs1s0
「わんわん」 結衣「ねぇ、ヒッキー?ゆきのんがにゃーんっていうの聞いたことある?あれ超可愛くない?」
八幡「いきなり、なんだよ。まぁ確かに意外ではあったな。つかお前も見たことあんの?」
結衣「あるよー?この前二人で買い物行った時に、ペットショップ寄ったらさー、ゆきのん猫の前から動かなくなっちゃって」
八幡「あいつらしいな」
結衣「でさ『わたしはここで待っているから、あなたは必要なものを買ってきたらどうかしら』とか言うの」
八幡「あいつらしいな。でもモノマネは似てねぇな」
結衣「だからサブレのおやつとか、色々買って戻ってきたんだけど。そしたらまだゆきのん、ほとんど微動だにせずにガラスの前に、張り付いててさー。小声で『にゃー』『にゃー』って言ってたの、もー超可愛くて萌え死ぬかと思ったー!」
八幡「お前、萌えとか使うの?どこで覚えたの?」
結衣「へ?あ、ほら。この前ヒッキーにおすすめしてもらったアニメで、あたしと同じ名前の女の子が使ってたじゃん」
八幡「ああ、けいおんな」
結衣「そうそう、あれの海行く話?ていうかその前から普通に知ってはいたよ?あんま使ってはなかったけど」
八幡「そうなんだ…オタクだけの言葉じゃなかったんだ…」
結衣「あれ?それでなんの話してたんだっけ?」
八幡「いや、雪ノ下がにゃーにゃーいう話だろ」
結衣「あ、そうそう!で、ヒッキーはいつ見たの?」
八幡「あー、ほら昔、川崎を猫で釣ろうとしたことがあったろ?」
結衣「あったあった!懐かしいね!」
八幡「あん時、雪ノ下うちのカマクラと話してたんだよ。にゃーにゃーにゃーにゃーってやり取りしててな。あいつ実は猫語も話せるんじゃないかって、ちょっと思ったな」
結衣「なにそれー、ゆきのん超かわいい…。あ、でもさでもさ!ゆきのんってなんとなく猫っぽいから本当に猫語とかわかりそうだよね!」
八幡「まぁ、他人に媚びないところとか、超マイペースなところとかな。でもそれ言ったらお前もすげぇ犬っぽいだろ」
結衣「え?そう?」
八幡「ああ、なんか人懐っこい感じのとことかな。つうかお前がサブレ連れて歩いてたら、一瞬どっちが由比ヶ浜だったか迷うくらいだ。実際、この前サブレがうちに来てた時とか、『あれ?由比ヶ浜、お前こんなところで何してんの?』とか話しかけちまったくらいだぞ」
結衣「ちょっと!それはいくら何でも失礼だし!」
八幡「いや、でもあれだ、雪ノ下に抱きついてる時とか超犬っぽいぞ。なんならぶんぶん振られてる尻尾がぼんやり見えるレベル」
結衣「わんわん!!」
八幡「おい」
結衣「わんわん!!」
八幡「おい、お前それはちょっとやめろ、色々やばいから」
結衣「くぅん?」
八幡「いや、くぅん?じゃねえから、首を傾げんじゃねえよ」
結衣「へへ、似てた?」
八幡「……。いや似てたっつうか、まんまだったな。お前のほうはまじで犬語が喋れんじゃねえの?」
結衣「へへ…あ!!じゃあさ、じゃあさ。あれ使おうよ」
八幡「あれってなんだよ」
結衣「ほら!ヒッキーの携帯に入ってるでしょ?」
八幡「俺の?ああ…イヌリンガルか。お前がサブレに『この人、だれー?』って言われたやつな」
結衣「それ言わないでってばぁ!!ちょっと傷つくからぁ!!」
八幡「えっと…ああ、これだ。夏以来使ってねぇから、削除したかと思ったわ。んで?これをどうすんの?お前がこれに話しかけんの?」
結衣「そうそう!!あたしが犬語しゃべれたらー、そこに訳が出るはずじゃん?」
八幡「あー、あるかもな。俺も未来(あす)への希望を託して『BOWBOW!』って吠えてみたらばっちり訳されたからな」
結衣「なんて言ったの?」
八幡「働きたくないでござる!!」
結衣「…うわぁ」
八幡「引くなよ…。いいだろ、自分偽ってるやつらよりは。自分に正直で」
結衣「ヒッキーはもうちょっと別のところで素直になったほうがいいと思うけど…?」
八幡「ほっとけ。つうかやるの?やらねえの?」
結衣「あ、ごめん、やるやる!!」
八幡「んじゃ…ほい、俺が持っとから、画面に向かって吠えてみそ」
結衣「わかった。うん、じゃあ。わんわん!!」
八幡「お、処理中になったな。認識したぞ」
結衣「なんて出るかな?」
ピロン
(ご主人様大好き!!)
八幡「………」
結衣「ちょ、ちょ、ちょ、な、な、な!!」
八幡「………」
結衣「ひ、ひ、ひ、ヒッキー!?こ、こ、これどういうこと!?あ、あ、あ、あたしご主人様なんて言ってないんだけど!?」
八幡「い、いや、そんな真っ赤になるほど俺に怒んなよ…!っていうか、お、俺がしたんじゃねえし!」
結衣「う、ううーー」
八幡「ああ、ほらこれはあれだ!!な、夏以来結構使いまくって酷使してたからな、こ、壊れてんじゃねえの?」
結衣「う、うううう」
八幡「それに、ほ、ほら、あれだ!!こんな犬語、自動翻訳機の精度とかあ、あてになんないし!?遊びみたいなもんだしな!?」
結衣「う、うううううう。あ、あ、あ、あたし今日はもう帰る!!!う、わーーーーーん!」
ガラガラ!ピシャ!
ダダダダダダダダ!
八幡「………」
ピロン
八幡「………?」
(馬鹿!!でも大好き!!)
八幡「このアプリの制作者…マジ何考えて生きてんの…?おかしいだろ?人を勘違いさせる趣味でもあるの…?まじでどうなってんの…」
「ぱんけーき」
八幡「なぁ、小町。お前、さっきから台所でバタバタして何してんの?」
小町「ちょっと準備をしてるんだよっと」
八幡「準備ってお前、勉強のほうはいいのかよ」
小町「7時に起きて、ちゃんとさっきまで勉強してたから大丈夫だよ」
八幡「はぁん、ならまぁ気分転換も必要か。でもなんだ、昼飯だったら俺が作るぞ?腹減ったし」
小町「いいのいいの!お兄ちゃんは座ってて!小町、ちょっと今日はお兄ちゃんに特別なもの食べてもらいたいと思ってるから!あ!今の小町的にポイント高い!」
八幡「はいはい、そうですね。ていうか特別なものってなんだよ」
小町「それ言ったらサプライズにならないじゃん。いいから、お兄ちゃんは座っててよ」
ピンポーン
八幡「お、客だ」
小町「お兄ちゃん、出てあげてー」
八幡「へいへい」
ガチャ
結衣「あ、ヒッキーやっはろー!」
八幡「あれ、どうしたサブレ?なんだお前また迷ったの?」
結衣「サブレじゃないし!あたしだし!!」
八幡「おお、そうか。すまんな。よく似てたからな」
結衣「似てるのはいいけど、見間違えるほどじゃないでしょ!?」
八幡「んで?どうしたんだよ、由比ヶ浜。って言うかお前はなんでゴミ箱持ってんの?最近の流行りなの?」
結衣「流行ってるわけないし!!これは来るときに100均で買ってきたの!!」
八幡「だからそのゴミ箱をなんで持って来たのか聞いてんだけど。いくら俺相手だからってゴミ箱渡すのはひどいだろ。なに?お前をゴミ箱に捨ててやろうか!?的な意味なの?泣くぞ」
結衣「違うし!!そういうんじゃないし!ていうかあたしは小町ちゃんと約束があって来たの!」
八幡「小町と?」
小町「あ、結衣さーん。やっはろーです!お待たせしました、ささ、どぞどぞあがってください」
結衣「小町ちゃん、やっはろー!!じゃあ上がらせてもらうね。ヒッキーもお邪魔します」
八幡「お、おう?」
× × ×
八幡「まぁ、座れよ」
結衣「あ、ううん。大丈夫。あたし準備があるから」
八幡「準備?おまえも?」
結衣「んしょ」
八幡「………」
八幡「…お前、何着てんの?」
結衣「何って?エプロンだけど?」
八幡「いや、そりゃ見りゃわかるんだけどさ…」
小町「結衣さーん。じゃあ、はじめましょー」
結衣「あ、はーい」
小町「あ、結衣さん例のものは?」
結衣「あ、これこれー」
小町「おー、これはこれは…ふんふん。これは形といい、大きさといいばっちりじゃないですか!いい仕事してますねぇ~」
結衣「でしょでしょー?」
八幡「どういうことなの…うちの妹はゴミ箱鑑定士かなんかなの?」
× × ×
八幡「………」
結衣「ふんふんふーん」
小町「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
八幡「んだよ、小町」
小町「どうどう?自分ちの台所にクラスメイトの女子が立っているのを見ている気分は?」
八幡「いや…お前、けどお前、正直、由比ヶ浜と台所って組み合わせの時点でいい予感はしないんだけど…?」
小町「まぁまぁ、今日は小町も付いてるから!あ、結衣さーん、フライパンはそこの使ってくださーい」
結衣「あ、はーい」
八幡「………」
八幡「(確かにくるものはある…アップにしてるからチラチラみえるうなじとか…ただ)
八幡「(一体どういうことなの?)」
八幡「………」
結衣「ひ、ヒッキー?お、お待たせ」コト
八幡「……あん?……これは、ホットケーキ?」
結衣「ぱ、パンケーキだよぉ!」
八幡「(同じだろ…)」
八幡「つか、どういうことなんだよ、小町ー?説明しろよ?」
小町「小町最初に言ったよ?『今日はお兄ちゃんに特別なもの食べてもらいたい』って、小町が作るとは一言も言ってないよ?」
八幡「ニヤニヤすんな…うぜぇ…」
結衣「ね、ねぇ!た、食べてみてよ!!」
八幡「お前、ま、まじで言ってんの?確かに見た目はまともだけどよ…」
結衣「味もまともだし!ほら!」
八幡「えー?」
八幡「………」ヒョイ・ムグムグ
結衣「………」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「………」ヒョイ・ムグムグ
結衣「ど、どう?」
八幡「………。まずかったらとっくにフォーク置いてるし、いまごろお湯でも湧かしてるだろ。だいたい二口目とかいってねぇっつの……」ムグムグ
小町「まーた、お兄ちゃんは…」
結衣「えーと…それって…。ほ、本当!?や、やったぁ!!」
小町「結衣さん、ハイタッチです!ハイタッチ!いえーい!」
結衣「いえーーい!」
八幡「(まぁ、ホットケーキの素とか置いてたし、卵と混ぜて焼くだけだもんな。でも、つーことはとにかく一つのことに集中させれば意外と光明はあんのか?)」ムグムグ
小町「じゃあ、結衣さん!私たちも食べましょう!!」
結衣「うん!!あ、ひ、ヒッキー?お、お代わりは?」
八幡「あ?………」
八幡「ああ…じゃあ…もらうわ。腹、減ってるしな」
八幡「(まぁ、問題は一つの料理につき…一人が犠牲になりかねないこと、だろうな。親父さんに…心臓を捧げよ!!)」ババッ
778: cMVCB/0/0 2013/08/14(水) 23:26:29.62 ID:O5qZLs1s0
「ぷるんぷるん」 結衣「ああ!?」
小町「ふっふっふ!」
結衣「ちょ、ちょっと!や、やめて小町ちゃん!」
小町「無理ですよ、結衣さん。小町からは逃げられませんよ?」
結衣「い、いや!やめて!小町ちゃん!それだけは!だめぇ!!」
小町「さぁ!観念してください!!」
結衣「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!」
ばよえ~ん、ばよえ~ん、ばよえ~ん、ばよえ~ん
結衣「ああ!?」ドサドサドサドサ
八幡「……なにやってんの、お前ら…」
小町「何ってぷよぷよだよ?」
八幡「(どこがぷよぷよするんですかね…)」
八幡「つか変な声だすのやめてくんない?また俺がご近所から白い目で見られるだろうが…俺、無実なのに…」
八幡「(妹に手を出したとか思われたんだぞ。童貞なのに。俺はあっちの千葉の兄とは違うのに…)」
結衣「あぁ~、負けちゃった…小町ちゃん強すぎー」
小町「まぁ、小町は兄の相手してめちゃくちゃやり込んでますからね!そう簡単には負けませんよ!」
八幡「てか由比ヶ浜、お前は時間大丈夫なのかよ?もう夕方になんぞ」
結衣「時間?あっ!小町ちゃん、そろそろかな?」
小町「あ!そうですね!そろそろ大丈夫だと思います!!」
八幡「お前ら何言ってんの?」
小町「はいは~い、お兄ちゃんどいてどいて」
八幡「お兄ちゃんの話聞けよ…」
結衣「よいしょっと…とと、これ結構重い…」
小町「あ、結衣さん手伝います!」
結衣「ありがとー小町ちゃん」
八幡「んで?なんでお前は俺んちの神聖な食卓の上にゴミ箱置いてんだよ?お前はゴミでも食ってろって意味なの?泣くぞ」
結衣「違うし~、あ、小町ちゃん。これどうやって落とせばいいのかな?」
小町「底を叩けばいいんじゃないですか?」
結衣「あ、そっか。えいえい!」バシバシ
八幡「(パワフルだな…)」
八幡「つか…皿の上で…ゴミ箱逆さまにして…底を叩いて…おい、まさか」
ドサっ!ぷるん!
小町「で、でたー!!」
結衣「やったぁ!!」
結衣・小町「いえ~~い!!!」パシン
八幡「バケツプリンじゃねえか!!」
小町「そうだよ?それもあって今日は結衣さん呼んだんだから」
八幡「そうだよ、じゃねえだろ…。パンケーキメインじゃなかったのかよ…」
結衣「でも本当にすごい!!おっきぃ!!ぷるんぷるんしてる!!」
小町「テンションあがりますね!!」
結衣・小町「いえ~~い!!!」バシン
八幡「お前らハイタッチしすぎだろ。やよいかよ」
結衣「ささ!!みんなで食べよ!!ヒッキーもヒッキーも!!」
八幡「ええ~……。まじで食うのかよ……」
× × ×
小町「…………」
結衣「…………」
八幡「…………」
結衣「……ダメ…あたし、もう食べれない…」
小町「小町もです……」
八幡「お前らテンション下がりすぎだろ。だから言っただろ、3リットルのプリンなんて無理だって…」
結衣「2リットルだし…」
八幡「かわんねぇだろ。多いことにはかわんねぇだろ…」
小町「お兄ちゃん、小町のあげる…」
結衣「あ、あたしのも…」
八幡「お前ら担当分半分も食ってねぇじゃねえか。つうか、食いかけをよこすなよ…」
結衣「だって…もう無理だし…」
小町「…………」
八幡「なんなの?これは俺をメタボにして殺害する計画なの?それとも糖尿病にするの?俺は小町の養育費のために消されるの?」
結衣「…もう、つっこむ元気もないし…」
小町「………」
八幡「あの小町が沈黙してるしよ…ていうか、お前ら勝手すぎだろ…」
× × ×
八幡「だああ!!もう食えねえ!!限界だ!!」
結衣「で、でもすごいヒッキー…二人分完食した!」
小町「まぁ、兄は意外と甘党ですからねぇ。このぐらい余裕ですよ」
八幡「お前ら勝手なこと言うなよ…つか復活したなら残り食えよ…捨てるのもったいないだろ…」
結衣「いやぁ…それはさすがに…」
小町「正直、それはもういいっていうか…」
八幡「お前ら勝手すぎだろ…自分たちで作ったんだからマジで責任とれよ…」
× × ×
結衣「いやー、小町ちゃん今日はありがとね~!おかげですごい楽しかった!」
小町「小町も楽しかったですぅ!それにバケツプリンもすごかったですし!」
結衣「だよね、だよね!!」
八幡「お前らさっきのこと忘れんなよ…プリン食ったの、ほとんど俺じゃねえか…。お前らテンション下がってたじゃねえか。どうなってんだよ」
結衣「いやー、でもあれはなかったねー。美味しかったら、部室でゆきのんと一緒に食べようと思ってたんだけど、絶対ゆきのん怒るし、作るのやめておくよ」
小町「そうですね!!絶対やめたほうがいいですね!絶対ですね!」
八幡「おい、やめろ。お前フラグたてようとするのやめろ。俺はもう絶対食わねえからな、フリじゃねえからな」
結衣「あはは…で、でもさ。ヒッキー今日はありがとう。プリンとか食べてくれて…そ、そのパ、パンケーキも…」
八幡「お、おう。、ま、まぁ、腹減ってたしな」
結衣「えへへぇ……じゃ、じゃああたし帰るね。小町ちゃんもありがとね!」
小町「はい!また是非来てください!あ、そうだ小町ぃ、サブレに会いたいのでー、ぜひ近いうちに連れてきてくださいよ」チラッ
結衣「…あ!!う、うん!こ、小町ちゃんに頼まれちゃったし仕方ないね!また近いうちに連れてくるね!」
小町「はい!!楽しみにしてます!!」ニヤ
八幡「まぁ、じゃあ気をつけて帰れよ」
結衣「うん!ありがと!じゃあまたね!!」
タタッ
小町「さってー、お兄ちゃん今日はもう晩ご飯いらないよね?」
八幡「ああ…まぁ、そだな。腹減ったら適当に夜食でも食うわ」
小町「夜食ね…。んーじゃあ『結衣さんの残したプリン』ラップして冷蔵庫に入れとくね」
八幡「おい、ちょっと待てお前」
小町「え?小町に他意はないよ?残したらもったいないって言ったの、お兄ちゃんでしょ?」
八幡「こいつうぜぇ…、ていうかお前が食えばいいだろ…」
小町「いやー、それはー。正直、小町的にはしばらくプリンは見なくていいっていうかー」
八幡「お前な、本当勝手すぎるだろ。特に今日はむちゃくちゃすぎんだろ」
小町「いやー、今日の小町はー、結構ポイント高かったと思うんだけどなー」
八幡「………」
小町「じゃ、小町はそのあと勉強するから!あ、小町。今日は勉強に集中するから、多分お風呂の時くらいしか降りてこないから。お兄ちゃんが何食べてても気づかないよ」
八幡「うるせえよ。ならさっさと勉強しにいけよ。今日はさんざんっぱら遊んだんだから」
小町「はいはーい!」
八幡「はぁ……、今日はどんだけプリンを食えばいいんだよ…」
787: cMVCB/0/0 2013/08/15(木) 01:34:04.86 ID:CS8kJClc0
「なげやり」 結衣「ねぇねぇ、ヒッキー!けいおんしようよ!」
八幡「おう、いいぞ」
結衣「えっ!あれ!?」
八幡「そうだな。まずお前は唯でいいだろ?天然だし、結衣だしな」
結衣「ちょ、ちょちょヒッキー、ゆ、結衣って!!…っていうかあたし天然じゃないし!!」
八幡「次に澪は平塚先生でいいよな?髪型似てるし、暴力的だし、よく泣くしな」
結衣「え、ちょ、ちょっと」
八幡「で、律っちゃんはめぐり先輩だな。デコ的に」
結衣「ちょ、ちょっと待って!ヒッキーおかしい!おかしいよ!!」
八幡「あ?なにが。あぁ、わかったお前。澪の配役に疑問があるんだろ?確かにな。先生を澪に当てはめるのは無いよな。俺が間違ってた。じゃあ雪ノ下だ。楽器はギターだけど、その点は目をつぶれ」
結衣「い、いやいやそうじゃなくって!!」
八幡「なに。先生はさわちゃんに当てはめとけばいいだろ。同じ行き遅れだし。問題ないだろ?」
結衣「い、いや、あのね?」
八幡「でも、こうなるとムギが難しいな。金持ちキャラの雪ノ下は使っちゃったしな。ああ、この際三浦でいいだろ、三浦で。髪の色一緒だしな。むしろ共通点そこしかないけど、この際しょうがないよな」
結衣「何がしょうがないの!?」
八幡「あずにゃんは年下キャラだし、こうなったら特別にうちの小町を貸してやろう。髪型とか全然違うけど、すごく可愛いから、それでいいよな」
結衣「それシスコンじゃん!!ていうかじゃなくて!!」
八幡「ああ、そうか。そう言えば、憂もいたな。うーん、これも可愛いから小町の一人二役で行こう。大丈夫。小町は器用だからな。安心しろよ」
結衣「あたしは何を安心したらいいの!?ていうかあたしが言いたいのはそういうことじゃないからぁ!!」
八幡「あ?じゃあ何?純ちゃんのこと言ってんの?それはもう大志でいいだろ、大志で。みんな髪型で区別するからモップかぶらせとけばいいだろ」
結衣「大志くん男の子でしょ!?」
八幡「男が女を演じちゃいけないって決まりはないだろ。つうか歌舞伎とか全部そうだろうが。つーわけで、俺は和ちゃんやるわ」
結衣「違う!!あたしが言いたいのはそういうことじゃないからぁ!!あたし別にごっこ遊びがしたいとかじゃないからぁ!!」
八幡「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」
ガラガラガラ、スタスタスタスタ
結衣「ちょっと!?ヒッキー!?ヒッキー生徒会なんて入ってないでしょ!?どういうことなの!?っていうか本当にどこ行くの!?ちょっと!!!ねぇ、ヒッキー!?ねぇ!!」
800: cMVCB/0/0 2013/08/15(木) 12:13:15.04 ID:CS8kJClc0
「ゆーふぉー」 結衣「ゆきのん!!ヒッキー!!見てみて!!」
八幡「んだよ」
雪乃「あら、デジタルカメラ?一体どうしたのかしら」
結衣「すごいの!とにかく見てみて、ほらここのとこ!!」
雪乃「…これは」
八幡「はぁん…」
結衣「すごいでしょ!?ばっちりUFOが写っちゃってるの!!あたしびっくりしちゃって!!」
雪乃「これは昨日の夕方撮ったということでいいのかしら」
結衣「うん、そうだよ!!なんか空の色が綺麗だったから撮ったんだけど、そしたらこんなものが写っているじゃない!?もうあたしびっくりしちゃって!!」
雪乃「昨日送られて来た、意味不明のメールはこのせいだったのね…」
結衣「すごいよね!!UFOが写るなんて信じらんない!!」
八幡「確かにすごいな。ある意味。つうかこれ、お前、ほかの連中にも見せたのかよ」
結衣「うん!優美子とかとべっちとか超興奮してた!!」
八幡「………。葉山は?」
結衣「え?隼人くん?そういえば隼人くんは静かだったかも」
八幡「…だろうな」
雪乃「由比ヶ浜さん、言いにくいのだけれど」
結衣「なになに!?」
雪乃「これ、電灯よ」
結衣「え?」
雪乃「電灯よ」
結衣「ど、どういうこと?」
雪乃「………。照明をつけたまま、外を撮影したりすると、室内の照明器具がガラスに反射してしまうことがよくあるの。あなたが撮影した部屋の照明、こういう形状のものじゃないかしら」
結衣「…たしかにこういう輪っか状のものだったかも……」
八幡「ま、天然系を語る芸能人や声優なんかがUFO見たって報告すんのは大概これだ。良かったじゃねぇか、持ちネタが増えて」
結衣「別にトークのネタを探してやったわけじゃないし!!あたし天然じゃないし!!…ていうかそうだったんだ……。すごいの撮れたと思ったのに、なんかショック…」
雪乃「ごめんなさい…由比ヶ浜さん…あなたの夢まで否定してしまうつもりはないのだけれど、UFOなんているはずがないでしょう」
結衣「否定してるし!」
八幡「一文中で論理破綻を起こしたな…雪ノ下にしちゃ珍しいな。まぁわざとだろうけど」
結衣「………。あたしちょっと優美子にメールする…」
八幡「戸部はいいのかよ」
結衣「とべっちは…まぁ、いいでしょ…」
八幡「いいんだ…。まぁ、いいよな…。どうでも」
結衣「………」カチカチ
結衣「…ふぅ、あれ!?」
雪乃「どうかしたの?」
結衣「ね、ねぇ!!あれ!あれ、何!?おっきい光が動いてる!!今度こそUFO!?UFO!?かな!?」
雪乃「ああ…あれはおそらくISSじゃないかしら」
結衣「あいえすえす?」
雪乃「International Space Stationの略でISS。国際宇宙ステーションのことよ、由比ヶ浜さん。人工衛星などに比べてサイズも大きいから。とても大きな光に見えるの」
八幡「ほら、宇宙兄弟でもムッタとヒビトが見てただろ。あれだ。でもあんな実際にあんな風に見えるのな、俺もはじめて見たわ」
雪乃「ISSは常に軌道を動かしながら地球の周りを回っているのよ。詳しいことは調べていないけれど、確か最近このあたりの上空を飛ぶ軌道に移った、とかいう話を聞いたわ」
八幡「まぁ、そういうわけだから。由比ヶ浜もUFOを探そうとするなんて馬鹿なことはやめとけよ。時間を無駄するにしたって、他にましなことがあんだろ」
結衣「うん……」
雪乃「………」ペラッ
八幡「………」ペラッ
結衣「二人とも本に戻っちゃった…。あたしもうちょっと見よ」
結衣「………」ジー
結衣「ISSって本物はあんな風に見えるんだ、すごいチカチカしてるし。わわ、今度はジグザグに動いてる。あんなふうに動くんだ、すごい…。あ、今度は超光ってるし、超まぶしい、って消えた…」
結衣「………」
結衣「ねぇ、二人とも!ISSってすごいね!」
八幡「まぁな」
雪乃「人類の叡智の結晶の一つであるのは確かですものね」
結衣「今度、また3人で見ようね!?』
雪乃「そうね」
八幡「ま、機会があればな」
結衣「へへー、約束ね!!」
810: cMVCB/0/0 2013/08/15(木) 16:13:37.47 ID:CS8kJClc0
「なぞなぞ」 結衣「ねぇねぇ、ゆきのん!クイズしようよ!!」
雪乃「クイズ?由比ヶ浜さん、あなたその類いのもので私に勝負を挑もうだなんて…あなた被虐趣味でもあるのかしら」
結衣「そんなんじゃないよ!ほら、これはなぞなぞだから、なんでも知っているゆきのんでもそうはわからないよ!!」
雪乃「……。へぇ…言うじゃない。面白いわ。ではその問題とやらを聞かせてもらおうかしら」
結衣「うん!じゃぁ、第一問!じゃじゃん!」
八幡「(効果音口で言っちゃうんだ)」
結衣「冷蔵庫に入れてから飾ると綺麗なお花はな~んだ?」
雪乃「冷蔵庫?由比ヶ浜さん、花屋では大抵の花は冷やして長期保存ができるようにしてあるでしょう?それに冷蔵庫にそのまま入れてしまうと冷蔵焼けを起こしてしまうわ。家庭で保存をするなら新聞紙にでもくるんで、野菜室に入れたほうがいいと思うわ。よって答えとしては花全般、ね」
八幡「(マジレスかよ…)」
結衣「ブッブー!!答えはヒヤシンス!!なぜなら冷やしんすだから!!」
八幡「(ドヤ顔、うぜぇ)」
雪乃「………」
結衣「じゃあ次の問題ね!日本人が犬を食べています。さぁどんな料理でしょう」
雪乃「そうね。まず現代でも犬肉は中国から輸入されているし、アジア系料理店では食材として提供されることがあるそうよ。だから具体的な料理名はわからないけれど、中華料理や、韓国料理…あとわずかにベトナム料理といったところ、かしら。さらに日本自体の過去の事象をあげるというのならば、臭みも強いし、味噌仕立ての鍋と言ったところじゃないかしら」
結衣「え…そうなんだ…。今でも食べることあるんだ…。あ、でも答えは違うよ?」
雪乃「なんですって?」
結衣「正解はわんこそば!!なぜなら『わんこ』そばだから!!」
雪乃「………」
八幡「(ああ…雪ノ下の顔が…)」
結衣「じゃあ次ね!ある日空から生き物が降ってきました!!さてこれはどんな動物でしょう」
雪乃「種類は断定しないけれど、これは鳥類ね。鳥は日常的に飛行中に突然死することがある生き物だから。2011年にもアメリカのアーカンソー州で、大量の鳥の死骸が空から降り注いだという事件が起きているわ」
結衣「ブブー!!正確はヒョウ!!!なぜなら豹は雹だから!!」
雪乃「………」
八幡「(ユキペディアが仇になってるな)」
結衣「ふっふっふ。やっぱりさすがのゆきのんでも、こういうなぞなぞには弱いんだね!!今回はあたしの『勝ち』だね!!」
雪乃「………」ピクッ
八幡「(あーあ…なんでこの子はいちいち雪ノ下を刺激しちゃうの?何が起こるかわからないの?なんでドヤ顔とかしてるの?アホなの?ああ…アホなんだっけ…)」
雪乃「上等よ、由比ヶ浜さん。なら今度は私が問題を出してあげるわ」
結衣「ゆきのんが?」
雪乃「ええ。まず第一問。国家権力を立法・司法・行政の3つに分け、相互に牽制を図ることで近代民主政治を確保しようとする原理とは何か?」
結衣「え?ええっと…」
雪乃「時間切れ。答えは三権分立。次の問題、アメリカの2大政党を答えよ」
結衣「え…?ええと自民…」
雪乃「不正解。正解は共和党と民主党。次の問題、平等院鳳凰堂を建立した人物は?」
結衣「ええ!?あ、あの、その…」
雪乃「答えは藤原頼通。続いて…」
結衣「ちょ、ちょっとまってゆきのん!!それ全然クイズっぽくないよ!まるで試験だよ!?」
雪乃「そう…?すべて『一般常識』レベルの問題なのだけれど。分かったわ、あなたは『クイズっぽい』問題を求めているのね。ならそう言った問題を出してあげるわ。問題、とても純粋な男の子。彼の好きな飲み物は?」
結衣「え、ええ~?ま、MAXコーヒー?」
雪乃「不正解。正解は純水(純粋)。だいたいMAXコーヒーが好きな人間に、純粋な人間など、いはしないわ。そこの男を見ればわかるでしょう」
八幡「おい、それは完全にとばっちりだろ。というかお前。俺はいいから、全国の、いや千葉県のMAXコーヒー愛好者の皆様に謝れよ」
雪乃「次の問題。ある男がある場所に近づいたら、『警告!この場所は大変危険です!』と注意を受けた。この場所は一体なにか」
結衣「ふ、ふみきり?」
雪乃「答えは渓谷(警告)。さて、この時点で既に5対3で私の勝ちが確定しているわけだけれど、それでもまだ続けるというつもりかしら?それならば、まだまだこちらには問題の用意があるのだけれど」
結衣「い、いや…ゆ、ゆきのんの勝ちでいいよ…そ、その、ごめんなさい…」
雪乃「いえ、私の勝ちだと言うことをはっきりと認識してくれていれば、それでいいのよ。けれどこれに懲りたら私に勝負を挑もうだなんて、分不相応な考えを持つのはやめなさいね」
結衣「はい…ごめんなさい…二度としません…」
八幡「(あーあ、なんなの?あの心臓が凍りそうな笑顔。ていうかもう、お前ら被虐趣味と嗜虐趣味で相性ばっちりじゃねぇか。もういいからお前らさっさと付き合えよ……)」
815: cMVCB/0/0 2013/08/15(木) 19:40:16.06 ID:CS8kJClc0
「かんそうぶん」 結衣「はい、ゆきのん!今週の分ね!」
雪乃「………」ペラッペラッ
雪乃「えぇ、確かに。よく頑張ったわね、由比ヶ浜さん」
八幡「お前ら、何やり取りしてんの?お友達料金?」
結衣「はぁ?ヒッキーいきなり何わけわかんないこと言ってんの?お友達料金ってなんだし!!」
八幡「いや、陰湿な掲示板のSSとかだとよくあんだよ。友達関係維持するために金渡すみたいな話が」
結衣「はぁ!?ふん!それが現実にあれば良かったのにね!そしたらヒッキーにも友達できたのにね!」
八幡「お前そういうこというなよ…」
結衣「最初に変なこと言ったのヒッキーでしょ!?」
雪乃「けれど…それは本当に残念ね…。もし現実にそんなシステムが存在すれば比企谷くんでも友達の一人くらいは買えたかもしれないもの」
八幡「お前さ、買うとかそういう生々しい表現使うのやめろよ。だいたい、俺の場合、そもそも金渡して維持するくらいなら友人いらねえっての。そもそもそれ以前に金を渡して維持する友人関係がねえしな」
結衣「あったり前でしょ!?いきなり友達料金とか言い出す人と誰が友達になりたいなんて思うの!?」
八幡「確かに。今、なんで俺になんで友達がいないのか、すごい納得しちゃったわ。鋭いな由比ヶ浜」
結衣「ふ、ふん!!」
八幡「んで?なら、それなんだよ」
雪乃「読書感想文よ」
八幡「は?読書感想文?うちの学校そんな課題あったか?」
雪乃「いえ、これは私が個人的に由比ヶ浜さんに課しているものよ」
八幡「は?個人的?」
雪乃「ええ、以前話していて由比ヶ浜さんがあまりの文章を読まない、書かないことを実感してしまったものだから。私が個人的に課題図書と選定して、由比ヶ浜さんに読んでもらっているのよ」
八幡「え?それで由比ヶ浜は毎週それを読んで律儀に提出してんの?」
結衣「だ、だってゆきのんの出してくれた課題だもん。やらないわけにはいかないでしょ!」
八幡「(えー、なにこの子従順すぎるでしょ。もしかしてお願いしたら色々させてくれるんじゃないの?絶対できないけど)」
八幡「で、それを雪ノ下は毎回読んで添削してんのか?」
雪乃「ええ、そうなるわね」
八幡「(えー、なにそのめんどくさいシステム。お友達料金よりめんどうさいんじゃないの?ていうかこういう友人関係は普通なの?俺友達いたことないからわからないんだけど)」
八幡「はぁん…友人関係にも色々あんのな…。で?課題図書ってなんなの?『ぐりとぐら』?」
結衣「だからそれ言うなし!っていうかそれもうちょっと懐かしいし!!」
八幡「つうか、文章のほうは少しは上達してんの?」
結衣「ヒッキー、無視すんなし!」
雪乃「……はぁ…読んでみたら?」
八幡「あー?」ペラッ
冒険者たちをよんで
2年F組 由比ヶ浜結衣
八幡「え?課題図書、『冒険者』たちなの?」
雪乃「え、ええ…さすがに絵本では由比ヶ浜さんの自尊心を傷つけてしまうと思ったものだから…」
結衣「ゆきのん!?聞こえてるよ!?そういう感じで選んでたの!?」
八幡「いやだって、これ小学校低・中向きだぞ。俺なんて2年生の時に読んだわ。あ、お前は高校2年だけど、俺は小学2年の時な?一応言っとくけど」
結衣「ヒッキーうっさい!!」
八幡「んで、どれどれ」
あたしは冒険者たちをよんで、ガンバたちはすごいなぁと思いました。
だってとても体がちいさいのに、大きなイタチとたたかうからです。
とってもゆうきがあってかっこいいと思います。
八幡「もういいわ。返すわ」
結衣「ちょっと、ヒッキー!?」
八幡「いや、お前いくらなんでもこれはひどすぎんでしょ。お前なんで『小さい』とか『戦う』とか『勇気』くらい漢字で書けないの?一瞬『冒険者』が書けてるのは偉いとか思ったけど、これタイトルに書いてあるからな?それ除いたらこの時点で名前と二文字くらいしか漢字が入ってないぞ。どうなってんだよ」
結衣「う、うう」
八幡「でも、これじゃ雪ノ下も添削が大変だろ」
雪乃「ええ…添削するところばかり、というか添削しないところがない、というか。基本的に修正するところしかない、といったところかしら」
八幡「あん?由比ヶ浜、どんなのが帰ってくんの?」
結衣「えっとね…だいたい直されたのが…あ、先週の見てもらった分があるよ。見る?」
八幡「おう」
結衣「じゃあ、はいこれ」
八幡「ん……。あー、雪ノ下。これは確かに由比ヶ浜もないけど、お前もないわ」
雪乃「なんですって?」
八幡「だってお前、これもう真っ赤っかじゃねえか。こういうのは添削じゃなくて書き直しって言うんだよ。もはや由比ヶ浜の文章の原型とどめてねえだろ」
雪乃「………」
八幡「だいたい、お前はだな。自分が出来すぎるが故に、できない人間の立場に立ててねえの。由比ヶ浜の文章は確かにどうしようもないし、小学生レベルだけど」
結衣「ちょっと!」
八幡「それでも自分の文章の文章が残ってなきゃ、どこが悪かったとかの反省のしようがねえじゃねえか。それをお前が書き直した文章が帰ってくるんじゃ、課題図書が2冊に増えたようなもんで、由比ヶ浜の作文の上達にはなんも役にたたねえよ」
雪乃「そう、随分な言い方ね。それにそれではまるであなたがそういったことが得意なように感じられてしまうわ」
八幡「俺は小町の勉強みたりしてるからな。勉強できない奴に教えんのは割と得意なんだよ」
雪乃「へえ?そう。ならあなたが見ればいいじゃない」
八幡「えっ?」
雪乃「由比ヶ浜さん。来週から少しルールを変更するわ。課題図書の選定はこれまで通り、私が行うけれど、感想文に関しては比企谷くんに提出なさい。どうやら素晴らしい添削をしてくれるそうだから」
結衣「え、う、うん」
八幡「おい、ちょっと待て」
雪乃「まさか、いまさらできないとか言い出すつもりはないでしょう?あなたあれだけ大口を叩いたのよ、ないところを無理やり絞り出してでも多少の男気を見せてもらいたいわね」
八幡「い、いや。お前だけどさ」
雪乃「なら、決まりね。なら私は図書館に行って『冒険者たち』を返却と次回分の課題図書の選定をしてくるわ。あ、そうそう。今週分の作文もその男に提出しておきなさい。早めに首輪につないで置かないと、その男はすぐに逃げてしまうもの」
八幡「お、おい雪ノ下」
ガラガラ・ピシャ!
結衣「………」
八幡「………」
結衣「あ、じゃ、じゃあ…こ、これから、よ、よろしくお願いします…」
八幡「あ、ああ…」
結衣「………」
八幡「じゃ、じゃあ、あれだ。い、一応師弟関係だしな。俺のことは比企谷先生と呼べ」
結衣「は、はい…比企谷先生…」
八幡「いや、本当に呼んでんじゃねえよ…どんだけ従順なんだよ…。え?ていうか本当にお前の文章、毎週、読むの…?」
839: cMVCB/0/0 2013/08/15(木) 23:18:37.74 ID:CS8kJClc0
「げっきょく」 結衣「ねえねぇ、げっきょくって大きい会社なの?」
八幡「あぁ?あれか?駐車場の管理とかしてる会社のことか?」
結衣「そうそう、駐車場によく書いてあるでしょ?あれどこ行っても見るからさー」
八幡「あれは確か月極定礎…なんだっけな、ホールディングスだったか。そんな名前の会社じゃなかったかな。確か」
結衣「おっきな会社なの?」
八幡「まぁ、メインの事業がお前の言う通り駐車場の管理とかビル管理だからな。表に出て目立つタイプの企業じゃないけどな。ただその手の業務をほぼ牛耳ってるから、めっちゃ儲かってるとか聞くぞ。社員の平均年収7千万とか聞くしな」
結衣「7千万!?そんなのありえるの!?」
八幡「まぁ俺も聞いた話だから、詳しくは知らんぞ。ただサラリーマンの生涯年収が平均して2億とか言うだろ?それを3年ちょっとで稼いじまうわけだもんな。やってらんないよな、マジで。本当働いたら負けだ」
結衣「まーた、始まった…」
八幡「でも、気持ちはわかるだろ?」
結衣「まぁねー。パパのお給料のことで、ママ時々愚痴ってるし」
八幡「お給料のことまで愚痴られてるんだ…、お父さんかわいそすぎだろ。もうお前くらいは優しくしてやれよ。ファブリーズとかかけんなよ…」
結衣「そりゃ別にパパのことは嫌いじゃないけどー、くさいものはくさいし」
八幡「素直な感想すぎる…」
840: cMVCB/0/0 2013/08/15(木) 23:19:25.28 ID:CS8kJClc0
結衣「………」 八幡「………」
結衣「てかさ、ヒッキー?」
八幡「あーん?」
結衣「さっきの嘘でしょ?またあたしのこと騙そうとしてるでしょ」
八幡「なんでお前そんな疑り深いの?何で決めつけんの?」
結衣「だってー!年収7千万とか超嘘くさいし!!」
八幡「いや、お前いくら何でも信用なさすぎだろ。ちょっと待て、えーと月極定礎ホールディングスっと」
結衣「そのパソコン使っていいの?」
八幡「あ?部活の備品、部員が使うのになんの問題もないだろ」
結衣「そっか」
八幡「お、でたでた。な?ほら、ちゃんとサイトもあるだろ?」
結衣「あ、ほんとだー。会社名もあってるし。えーと事業内容…駐車場の管理…。ほんとだ!!」
八幡「てかお前ちょっと近いっつの。俺下がるから、自分で操作しろよ」
結衣「あ、ご、ごめん」
八幡「いや、いいけどよ…。あぁ、そうそう。あと採用情報のとこ見てみ?」
結衣「採用情報…?うわ!ほんとだ!!ほんとに7千万とか書いてるんだけど!!」
八幡「な?俺、嘘言ってなかっただろ?」
結衣「うん!ご、ごめんね?ヒッキー。あ!てかさ!ヒッキー、ここ就職しなよ!!」
八幡「あー?そりゃ7千万とか俺だってできることなら、そうしてえよ。けど無理でしょ」
結衣「どうして?」
八幡「どうしてって、お前その下の条件のとこ見てみろよ」
結衣「えー?んと、ええ!?勲章所持!?5カ国語!?3000人の支持!?」
八幡「な?むちゃくちゃハードルたけぇんだよ。特に最後の3000人とか、俺には絶対無理でしょ。多分小町くらいからしかもらえねえぞ」
結衣「あ、あたしも推薦するよ!!」
八幡「そらどうも。でこ、それしたって、残り2998人はどうすんだよ」
結衣「あ、そ、そっか…厳しいね」
八幡「そらそうだ。年収7千万の道なんて、並大抵じゃねえんだよ。多分サラリーマンで他に同じくらいもらってるのとかって外資系証券会社のトップセールスマンとかなんじゃねえの。知らんけど」
結衣「そっかぁ…、てかヒッキー?この社長?の人あたしどっかで見たことあるんだけど」
八幡「ああ、まぁ。その社長自体は結構有名だからな。たしか本とかテレビとかで結構見るぞ」
結衣「へぇ~、そうなんだ」
雪乃「………」パタン
結衣「あ、ゆきのん。本読み終わったの?」
雪乃「ええ、ところで比企谷くん」
八幡「なに?」
雪乃「以前、言ったわよね。あまりいい加減なことでも、彼女は信じてしまいかねないからやめなさいって」
八幡「………」
結衣「え!?ゆきのんどういうこと?」
雪乃「さっきの話は全部この男の嘘、よ。由比ヶ浜さん。そもそも月極は『つきぎめ』といって一ヶ月ごとに契約することを指す言葉であり、げっきょくという個人名ではないの」
結衣「え?え?でもホームページもあったし!!」
雪乃「由比ヶ浜さん…ホームページなんて知識があれば誰にだって作れるのよ?大方、さっきのサイトは比企谷くんのよく言うネット掲示板の人たちが作ったジョークサイトか何かよ」
結衣「え、そうなんだ…」
雪乃「その証拠にこの代表者の顔写真。伊藤博文じゃない」
結衣「え……。ひ、ヒッキー!?な、なんでそういう嘘つくの?」
八幡「いや、嘘付いてねえだろ。いろんな本に出てくるじゃねえか。教科書だけど。あとテレビのドキュメンタリー番組とかもよく出てるじゃねえか」
結衣「ヒッキー!!そういうことじゃないでしょ!?」
八幡「い、いや大体だな。雪ノ下が突っ込んで来たら途中でやめる気だったんだけど、まったく反応がねえからさ。エスカレートしちまったんだよ。お前何してたの?」
結衣「人のせいにすんなし!!」
雪乃「いえ、何って本を読んでいただけよ。ただラスト数ページだったから、由比ヶ浜さんの話に関わって邪魔をされたくなかったのよ」
結衣「ゆきのん!?もう!二人ともなんでいっつもいつもあたしのことそうやってからかうの!?」
八幡「面白いから」
雪乃「面白いからよ」
結衣「うあーん!!ヒッキーもゆきのんもひどい!!二人してあたしのこと馬鹿にしすぎだからぁ!!からかいすぎだからぁ!!」
858: cMVCB/0/0 2013/08/16(金) 09:30:19.48 ID:pqsQvC0d0
「あるぺんおどり」 結衣「ねぇ、ゆきのん。ヨーロッパのほうではヤギの上で踊る習慣があるの?」
雪乃「いきなり何を言いだすの由比ヶ浜さん。…私の知る限り、そんな習慣や風習は聞いたことがないけれど」
八幡「いや、雪ノ下。こいつ多分アルプス一万尺の話してんだよ。だろ?由比ヶ浜」
結衣「そうそう!ヒッキーよくわかったね!」
雪乃「どういうことかしら」
八幡「あれだ。なぁ由比ヶ浜、ちょっとアルプス一万尺を歌ってみてくれねぇか?」
結衣「え!?ここで!?」
八幡「あぁ」
結衣「う、うう~ん。わ、わかった。え~と…コホン」
結衣「アルプス一万尺~、子やぎのう~えで、アルペン踊りをさ・あ・お・ど・り・ま・しょ!ヘイ!!らんらー」
八幡「ああ、その先はいいわ」
結衣「ちょっと!!せっかく乗って来たのに!」
雪乃「なるほど…そういうこと」
結衣「ゆきのん!何かわかったの?」
雪乃「ええ、まずそもそもの前提が間違っているのね。ふふっ」
結衣「え?どうしたの?ゆきのん!?」
雪乃「ああ、いえ、ごめんなさい。少し由比ヶ浜さんらしい可愛らしい間違いだ、と思って少しおかしくなってしまっただけだから」
結衣「そ、そう?」
八幡「(何いまの笑顔。また女神モードに入ったの?クリスタなの?)」
雪乃「まず、アルプス一万尺はヨーロッパのことを歌ったものではないの」
結衣「え!?そうなの?でもアルプス山脈ってヨーロッパにあるんじゃないの?」
八幡「よく知ってたな」
雪乃「そうね。けれど、ここでいうアルプスというのは日本アルプスのことを指しているのよ」
結衣「日本アルプス?」
雪乃「えぇ、富山、岐阜、新潟、長野の4県にまたがる飛騨山脈、通称北アルプスと中央アルプスと呼ばれる長野県の木曽山脈、長野、山梨、静岡の三県にまたがる南アルプスと呼ばれる赤石山脈。この三つを総称して日本アルプスと呼ぶの」
八幡「お前詳しいな」
雪乃「そんなこともないわ。ただ昔、夏になると長野のほうに避暑に訪れていたことがあるから、その時に覚えただけよ」
八幡「軽井沢とか、本当ブルジョアジーだな。お前は」
雪乃「軽井沢ではないわ。もう少しマイナーで自然の多いところよ。そのことは今は別にどうでもいいでしょう。大事なのはその次の部分よ。子やぎじゃなくて、小槍なのよ」
結衣「え?槍?武器の上で踊るの?」
雪乃「いえ、小槍というのは飛騨山脈にある槍ヶ岳…高さは3000Mちょっとでちょうど1万尺くらいらしいわね。それで名前の由来は形が槍の形ににているから名付けられたそうなのだけれど、その山頂付近にある大きな岩のことを小槍というの。やはりこれも遠目には槍のように見えるわ。私も登山をするわけではないから、実際に小槍の上で踊れるスペースがあるのかどうかについては、詳しくは知らないのだけれど」
八幡「まぁ、この歌自体、槍ヶ岳にのぼる時の歌うために歌詞がつけられたものらしいし、登山をしてないと意味がわからない部分ってのは多いらしいな」
結衣「そうなん?」
八幡「あぁ、そもそもこの歌詞ってどっかの大学の山岳部かなんかが作ったって話が有力らしいんだよ」
結衣「へぇ、部活で作ったんだ」
八幡「わざわざ作ったのか、山登りしてる間に歌ってた替え歌が知らずに定着したのかはよくわからんけどな」
結衣「え?替え歌なの?」
雪乃「まぁ、替え歌という言い方が正しいのかどうかはわからないけれど。元になった歌はアメリカの『ヤンキードゥードゥル』という歌ね。曲は同じだけれど、歌詞はまったくの別物で、アルプス一万尺はこの歌を訳したものではないわ」
結衣「ほほぉ~!アメリカの歌なんだ」
雪乃「もともとはイギリスあたりから、伝わったらしいのだけれどね。ヤンキードゥードゥルというのは元々アメリカ人を馬鹿にする目的の歌だったらしいのだけれど、そのうちにアメリカ人自身が歌うものとしてポピュラーになったの。今でも海外ドラマなどでこの歌を子供が歌っているシーンなどを見ることがあるわ」
結衣「そうだったんだ…なんかあれだなー」
八幡「あ、そういや知ってたか?アルプス一万尺って、実は29番とかまであるらしいぞ」
結衣「29番!?長くない!?」
八幡「いや、これにしたって山岳部によっちゃオリジナルの歌詞とかが加えられててもっと長いらしいけどな。まぁでも中には共感を感じられるいい歌詞もある」
結衣「どんなの?」
八幡「俺の一押しは11番だな。これだ。山のこだまは、帰ってくるけど、僕のラブレター、返ってこない、ヘイ!ランラー」
結衣「悲しい!!」
雪乃「さすが、比企谷くんだわ…」
八幡「んだよ。せっかく乗って来たのに邪魔すんなよ。でも切ないだろ?」
結衣「切ないけど!いろんな意味でぇ!!」
八幡「何が切ないってこんな悲しい歌詞を、この明るい曲調に乗せてお送りするところがまた切ないよな。多分作詞者はどっか吹っ切れちまったぼっちだったに違いないぞ。それはここからも読み取れる」
八幡「雲より高ぁい、この頂で、お山の大将『俺一人』!ヘイ!!」
結衣「やめてってばぁ!!間違いしてくれるだけで良かったのに、なんでそこまで夢を壊すこと言わないと気がすまないの!?」
八幡「ランラーランラ、ランランランラン、ランラーララ、ラララ!ランラーララ、ラララララ、ラララララ!!」
結衣「ヒッキーが壊れた!!」
八幡「(ま、個人的には10番も結構好きなんだけどな…夢オチで終わるとことか、超リアル)」
870: cMVCB/0/0 2013/08/16(金) 14:05:43.28 ID:pqsQvC0d0
「だめなひ」 結衣「ゆきのん!お菓子食べよう!?」
雪乃「あら、じゃあ紅茶を淹れるわね。今日はどんなお菓子を持って来たの?」
結衣「たけのこの里だよ!」
八幡「はっ!」
結衣「なにヒッキー…いきなり。キモいし」
八幡「お前たけのことかマジで言ってんの?」
結衣「何?ヒッキーたけのこの里嫌いなわけ?」
八幡「こういう時はきのこ一択に決まってんだろ。そもそもたけのことか持つところ小さすぎて手はチョコで汚れるだろうが」
結衣「ふーん。じゃあいいよ。ヒッキーは食べなくて。ゆきのんと二人で食べるから」
八幡「………」
結衣「でさ、ゆきのんー?」
八幡「あれ!?」
結衣「なに?」
八幡「いや、お前。今のはお前が『はぁ?何言ってんの?たけのこに決まってるでしょ!?』とか言って喧嘩になるパターンじゃないの?」
結衣「へ?なんでお菓子のことくらいでヒッキーと喧嘩しなくちゃならないの?ていうか真似すんなし」
八幡「あれ?」
雪乃「こっちを見ないでもらえるかしら。私も別にこの手のお菓子には特に思い入れはないから、誰かと喧嘩するほどは知らないのよ」
八幡「なん…だと」
雪乃「あなたが普段、どういったところでどういった話をしいれているのかは、まったくもって興味はないのだけれど、その手の話をあまり日常生活にまで持ち込むのはやめなさい。気持ち悪さが際立つわよ」
結衣「そーそー、ヒッキー、ネット脳とか言う奴なんじゃないの?」
八幡「えー……」
結衣「あ、そう言えばお菓子って言えばさー」
八幡「(あれ?やっぱり俺がおかしいの?そういえばこんな話他のやつらとしたことないもんな。いや、他の話もしたことないけど)」
結衣「そうそう!あれあれー!さいちゃんってちょっと微妙だよねー?あれと、も…」
八幡「は?お前何言ってんだよ!!戸塚最高だろうが!!あんな可愛い生き物ほかにいねぇだろうが!」
結衣「え…ヒッキー…今度は何言ってんの…?」
八幡「え?だって戸塚のこと微妙だって言ったろ?」
結衣「え?」
八幡「いや、さいちゃん微妙だって言ったろ?」
結衣「え?さいちゅう微妙だって言ったんだけど?」
八幡「さいちゅう…?」
雪乃「由比ヶ浜さん。あなたそれ最中のことを言っているんじゃないから」
結衣「え!?最中ってもなかって読むんだ!?あたしさいちゅうともなかってどう違うの?って聞こうと思ってたんだ!」
八幡「あ、あの、ガハマさん?どんだけさいちゃん好きなの!?とか言わないの?」
結衣「………。言わないし。今日なんかそんな気分じゃなくなってきたし。てかガハマさん言うなし」
八幡「そ、そうですか…」
雪乃「………。ええと、確かネット掲示板ではこういう場合、こんなことを言うのよね『先カンブリア期まで帰れ』だったかしら」
八幡「それ半年ROMれ!て言いたいの!?一文字もあってないじゃん!!馬鹿にしすぎだからぁ!!」
結衣「それやめろし。マジきもい」
八幡「…ええと、あの…」
雪乃「私のほうを見ないでもらえるかしら。二度はフォローしないわよ…」
875: cMVCB/0/0 2013/08/16(金) 16:57:43.44 ID:pqsQvC0d0
「くろれきし」 八幡「あれー、ドラクエVどこにしまったっけか?」
八幡「おー、あったあった。っと…これはまさか」パラパラ
八幡「うわぁ…かつての設定ノートじゃねえか…。何、ドラクエと一緒に宝箱に眠っていたの?こんなの掘り出したくなかったんだけど。うわぁ…こりゃひでえな」
八幡「つか、こんなの見てたら俺のSAN値減少がマッハだわ。もうお腹いっぱいだわ」ポイッ
八幡「ドラクエをしよう、ドラクエ…やはりVは至高…」
八幡「……は・ち・ま・ん。うむ、やっぱ名前4文字だと、こういう時迷わなくていい」カチカチ
ガチャ
小町「おにいちゃーん、作文の書き方まとめノート。机の上、置いとくねー?」
八幡「おー」
小町「てかさお兄ちゃん、これ何に使うの?お兄ちゃん自分でまとめたんだから内容知ってるでしょ?」
八幡「ま、色々あってな。由比ヶ浜に見せんだよ。ちょっと早急に文章が上手くなってもらわにゃならん」
小町「結衣さんに?へぇ、ノート貸し借りとかお兄ちゃん頑張ってるじゃん。っと…」
ドサドサ
小町「あ、ごめん!お兄ちゃん!机の上のもの落とした!」
八幡「お前なにやってんの?ちゃんと拾っとけよ」
小町「はいはーい。てかお兄ちゃんそれドラクエV?」
八幡「おー」
小町「またフローラ選ぶの?」
八幡「当然だろ。一択だろ。てかビアンカとか昔ちょっと一緒に遊んだくらいで、幼なじみ気どるとかありえねぇだろ」
小町「またお兄ちゃんは…だってビアンカと結婚しないと、ビアンカずっと独り身で可哀想じゃん」
八幡「いや、それこそねえわ。廃品処理じゃないんだからさ、結婚ってそういうもんじゃないだろ。だいたいー」
× × ×
結衣「やっはろー!!」
八幡「おう。雪ノ下なら来てないぞ」
結衣「あ、うん。知ってる。あたしのほうに今日休むって連絡入ってた」
八幡「珍しいな。つか俺のほうには連絡来てないんだけど?」
結衣「だってヒッキー、ゆきのんの携帯しらないじゃん!」
八幡「ああ、そういや。そだな」
結衣「本当、適当だしー」
八幡「つかさ。雪ノ下来ないなら、俺たちも帰ろうぜ。鬼の居ぬ間に洗濯ってやつだ」
結衣「ゆきのん鬼じゃないし!なんでそうやってすぐさぼろうとすんの?信じらんない!」
八幡「いやサボるとかじゃなくて、ドラクエがしたいんだよ」
結衣「それサボってるでしょ!?なんの言い訳にもなってないでしょ!?」
八幡「ああ、ドラクエで思い出したわ。ほい、これ」
結衣「なに、このノート?」パラパラ
八幡「ああ、俺が小町向けにまとめた作文のまとめノートだ。しっかり読んで参考にしろよ」
結衣「ふぅん?……あたしはこれを見て何をどう参考にすればいいの?」
八幡「章ごとにポイントまとめてあんだろ?」
結衣「ポイントって…この破壊神とか、創造神とかそういうのがそのポイントなわけ?」
八幡「は?え、ちょ!」
結衣「うわー、なにこれヒッキー超痛いんだけど!!うわー!ヒッキー本当は神様だったの!?転生体ってなに?」
八幡「ちょ、ちょ!よせ、お前!いいからやめろ!早く返せ!やめろ!」
結衣「いいじゃん!いいじゃん!わー、マジ、ヒッキー超痛いんだけど!これ今の中2よりひどいんじゃん?」
八幡「やめろぉ、やめてくれぇ」
結衣「ほーほー?この女神のモデルってもしかして小町ちゃん!?もしかして、この頃か…ら?」
八幡「………」
結衣「あ、あれ?ヒッキー?」
八幡「んだよ…」
結衣「あの、な、なんか涙目になってない?」
八幡「なってねえよ…うるせぇよ、ほっとけよ…」
結衣「あ、あ、あのさ。ええと、そのの、ノート返すね」
八幡「………」
結衣「あ、あのさー…。んと、その!ほら!いいじゃん!見られたのあたしだけですんだんだから!」
八幡「お前、そういう問題じゃねえんだよ。誰に見られたとか、そういうのは関係ねえんだよ…。誰かに見られたっつー事実自体が問題なの、こういう場合…。わかれよ…」
結衣「あの…その…う、うん…ご、ごめん…」
八幡「………」
結衣「て、てかさー。ヒッキー。なんで持って来ちゃったの…?それ…」
八幡「多分…、昨日、小町が部屋に来たとき…混ざった…。帰ったら絞める…」
結衣「ひ、ヒッキーが小町ちゃんを…ふ、普通じゃない…」
八幡「当然だろ…」
結衣「ううううううう」
八幡「………」
結衣「ううううううう!!」
八幡「お前何唸ってんだよ…」
結衣「考えてるの!!」
八幡「考えてるってお前なにをー」
結衣「だから!考えてるんだから、ちょっと黙ってて!!」
八幡「………」
結衣「ああ、もう決めた!!ヒッキーこれ!!」
八幡「お前。な、なんだよ、このノート…?」
結衣「いいから、読んで!!」
八幡「あー…?…『いつも見てたのに見てたと言えなくて』?」
結衣「音読すんなし!!黙って読んでよ!!」
八幡「…おい、お前なんなのこのポエム…」
結衣「だからポエム帳!!時々書いてるの!!」
八幡「いや…お前これは…」
結衣「痛いでしょ!?あたしも相当痛いでしょ!?ヒッキーと同じくらい痛いでしょ!?」
八幡「いや、これは…さすがの俺も引くくらい痛いな…。文章が下手なのもあいまって相当に痛いな」
結衣「でしょ!?あたしも痛いの!!だからヒッキーだけじゃないの!!しかもあたしの場合、現在形だよ!?もう昔の話になってるヒッキーに比べても相当に痛いでしょ!?」
八幡「…お前顔真っ赤だぞ。そんな怒んなよ…」
結衣「当たり前でしょ!?こんな恥ずかしいもの読まれて、普通でいられるわけないでしょ!!バカ!!」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「で…、どうなの?」
八幡「いや…まぁ…引くくらいには痛かった」
結衣「そうじゃなくて!!」
八幡「………。まぁ、多少慰めにはなったよ」
結衣「そ、そっか…。へへ…良かった…」
八幡「いや…でもさ。お前、普通こういうの自分から見せるか?」
結衣「ひ、ヒッキーが、あんな顔してるからでしょ…?その、あたしのせいだし…あ、あたしだって相当悩んだんだからね!?」
八幡「別に…お前のせいってんでもないだろ…。ノート持って来たのも、見せたのも俺自身だし」
結衣「そ、それでも。傷つけちゃったのは…あたしだもん…」
八幡「お前は本当に…」
結衣「あ!!でも絶対誰にもこのことばらさないでよ!?」
八幡「バラすかよ、つかバラせねえよ。こんなの…」
結衣「そ、そっか…。あ、あたしもさ。ヒッキーの秘密の事は誰にもばらさないって約束する!小町ちゃんにだってだよ!?」
八幡「まぁ、小町は多少知ってるけどな」
結衣「それでも!それでも、あたしはヒッキーの秘密はばらさない!その、ヒッキーが嘘ついたり、適当なこと言ってごまかそうとしてきたとしても、この話だけは絶対に別!!」
八幡「………」
結衣「だからヒッキーもあたしの秘密をばらさない!これ約束!!お互いに裏切らないこと!!」
八幡「…まぁ…互いの黒歴史を人質に取り合ってるようなもんだしな。裏切れないだろ?普通。その…まぁ、黒歴史が黒歴史じゃなくなるまでは、な」
結衣「黒歴史って…何?」
八幡「こういうノートみたいな記憶のことだよ」
結衣「そ、そっか。なら安心だ」
八幡「……だな」
結衣「………」
八幡「…ああ、ノート返すわ」
結衣「あ、うん」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「なぁ、由比ヶ浜?」
結衣「何?」
八幡「今日な…あー、あの、あれだ。その、たこ焼きでも…食って帰るか」
結衣「…え?………!!う、うん!!行く行く!!」
八幡「じゃあ、あの商店街の店で」
結衣「ええ~!?絶対駅前のあっちのが美味しいよ!!あ、あと先に言っとくけど割り勘だからね!」
八幡「なんだよ。こういう時だからおごらされるかと思ったぞ」
結衣「だって、ヒッキーとは対等でいたいもん!」
八幡「そ、そうか」
結衣「うん!!」
八幡「んじゃま…、そういうことに…しますか、ね」
889: cMVCB/0/0 2013/08/16(金) 22:06:28.86 ID:pqsQvC0d0
「ねっちゅうしょう」 結衣「ねぇねぇ、健康オタクのヒッキー?」
八幡「は?お前、いきなり何言ってんの?多少ビタミンDとかに詳しかったくらいでオタク呼ばわりとかやめてくんない?」
結衣「あはは、ごめんごめん、ちょっと言ってみたかっただけー」
八幡「んで?なんだよ」
結衣「ああ、あのね。今日、大岡くんが、野球部の子が昨日熱中症で倒れたって話してたんだけど。こんな時期に熱中症になるなんてあるの?」
八幡「そらまぁ、野球部が倒れたって言うんだから、あるんじゃねえの?」
結衣「…ヒッキー?」
八幡「いやさ、お前。俺だって別に詳しいわけじゃないんだからさ」
結衣「それでもいいから教えてよー、別に…内容がどうこうじゃ…ないんだし…」
八幡「あ?なに?」
結衣「いや!なんでもない!」
八幡「まぁ、あれだ。こんところ割と涼しかったのに、昨日はなんか熱かっただろ?ああいう日は熱中症もでやすいんだよ」
結衣「ふぅん?でも昨日なんて真夏に比べたら全然じゃん」
八幡「まぁな。けど問題は気温差なんだよ。人間の体ってのは順応性があるからな。暑い日が続けば、割と暑くても耐えられるようになってくんだよ。けどそれまで涼しいと体は涼しい環境に慣れちまうからな。真夏に毎日30度とかには耐えられても、この時期に急に25度とかになる方がリスクが高い場合もあんだよ」
結衣「そっかー。でもあれじゃん?やっぱヒッキーこういうの詳しいじゃん。やっぱり健康オタクなんじゃないの?」
八幡「なんでだよ、今の常識レベルでしょ。保険体育とかで習っただろ」
結衣「えー?そうだっけ?覚えてないよ?あたし結構昔から結構、保健体育の成績いいけど…」
八幡「見た感じ、そうだろうな」
結衣「え!?あたし保健体育の成績よさそうに見える!?」
八幡「まぁな…いろいろな」
結衣「そっかー…、でもヒッキーに成績良さそうとか言われたのはじめてだ…えへへ」
八幡「まぁ、季節の変わり目は風邪とかと同じで、熱中症にも気をつけようってことだわな」
結衣「ふーん、熱中症か…ん…ねっちゅうしょう?………」
結衣「………」
八幡「どした?由比ヶ浜…?」
結衣「あ、ううん。なんでもない!あ、あたしちょっとメールするね?」
八幡「ああ、そうか。あいよ」
結衣「………」カチカチ
八幡「………」ペラッ
結衣「ねぇ、あのさ。ヒッキー?」
八幡「あー?」
結衣「あ、あのさ。熱中症って言ってみて?」
八幡「は?なんで?」
結衣「いや!なんかさ!あたしさっき、ヒッキーと熱中症の言い方が違ったみたいな気がして!あたし、ヒッキーに時々発音おかしいって言われるでしょ?だからちゃんと教えてもらいたくて」
八幡「?。そうだったか?今…」
結衣「ねっちゅーしょう」
八幡「あぁ…確かになんかおかしいな」
結衣「やっぱり?」
八幡「熱中症、な」
結衣「ねっちゅーしょー」
八幡「だから、なんでそうなんの?熱中症だよ、熱中症」
結衣「だから!そんな何度も言われてもわかんないし!!ゆ、ゆっくり言ってよ!」
八幡「はー?そんな難しい言葉じゃねえだろ…。ね・ちゅう・しょう、だろ?」
結衣「あ、ああー熱中症?」
八幡「なんだ言えんじゃねえか。それだよ、それ」
結衣「そっかそっか、ありがとね?ヒッキー」
八幡「おー」
結衣「あ!あたしちょっとジュース買ってくる!」
八幡「唐突だな」
結衣「い、いいでしょ!ヒッキー、マッ缶買ってこようか?」
八幡「あー?ああ、じゃあ頼むわ。ほい」
結衣「あ、いいよ!このくらい」
八幡「いや、対等にしようっつってたのお前だろ」
結衣「そっか、そうだね。う、うん!ありがとう」
八幡「あー、こちらこそな」
結衣「じゃ、じゃあ言ってくる!」
八幡「おー」
ガラガラ・ピシャ
スタスタスタスタ
結衣「………」
結衣「………」キョロキョロ
結衣「………」
結衣「………」カチッ
携帯『は?なんで?』ピッ
結衣「ううん、ここじゃない…」
携帯『だからなんでそうなんの?熱中症だよ』ピッ
結衣「ううん…、もうちょっと先…」
携帯『はー?そんな難しい言葉じゃねえだろ…。ね、ちゅう、しよう、だろ?』ピッ
結衣「!!」カチカチ
結衣「…ええと、切り取り…はもったいない…から…コピーして…それを編集…」ピッ
結衣「………」カチカチ
結衣「………」カチカチ
携帯『ね、チュウ、しよう』
結衣「………」カァ
結衣「………」カチカチ
携帯『ね、チュウ、しよう』
結衣「………」カァ
結衣「えへ、えへへぇ…」ニヘラ
901: cMVCB/0/0 2013/08/17(土) 00:33:12.29 ID:oRXHlMYJ0
「ふたりのり」 結衣「あ、ヒッキー!」
八幡「おう、じゃあな」
結衣「ちょ、ちょっと待って!?」
八幡「んだよ?」
結衣「だって、せっかく会えたんだからちょっとお話しよーよー」
八幡「いや、お前せっかく会えたって。さっき部室で別れたばっかだろ」
結衣「いや、そうだけどー。ゆきのんはさっさと帰っちゃったし、寂しいんじゃん…」
八幡「俺は雪ノ下の代わりかよ…」
結衣「そ、そういうんじゃなくって!ほら!あたし今日バス乗り過ごしちゃったでしょ?」
八幡「でしょ?とか言われても知らないんだけど」
結衣「いいじゃん!そういう事じゃなくってぇ!だから…と、途中までヒッキーと帰りたいっていうか…」
八幡「あー…?お前俺に自転車押してけっての?めんどくさすぎでしょ、それ」
結衣「……ダメ?」
八幡「………」
八幡「いや、まぁ、別に…だめじゃねえけど…。まぁ途中までな」
結衣「うん!」
× × ×
八幡「じゃぁ、何、お前サブレと寝てんの?」
結衣「いっつもじゃないけどねー。寝ようとしてると、時々サブレが来てさー。足の間とかに入ってきて太もものとこに頭のっけたりするんだよ。もう超かわいいの!!」
八幡「はぁん…。つうか、いつもそんなところで寝させてんの?」
結衣「んーん、一番多いのは肩のところに乗って来て、腕枕みたいになったりするの。時々は胸の上に乗ってきたりするんだけど、それはささすがに重いから下ろすけどね~」
八幡「あーなるほどな…つか、なんなのサブレのやつ…」
結衣「人懐っこいんだよぉ」
八幡「親ばかはみんなその手の事いうよなー」
結衣「親ばかじゃないし!…あ」
エー!ソンナンジャナイシー!イヤイヤ、オマエフトッタンジャネーノ?オモイゾ。ヒドーイ!
八幡「………」
結衣「………」
八幡「…どした?」
結衣「ううん…なんでもない…」
八幡「そうか」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「ひ、ヒッキーはさ」
八幡「あん?」
結衣「お、女の子と自転車の二人乗りってさ…したこと…ある?」
八幡「ああ、あるぞ」
結衣「……え?」
八幡「なんだよ」
結衣「ひ、ヒッキーあるの…?」
八幡「ああ、小町とな。時々な」
結衣「ああ…そっか…。小町ちゃんか…びっくりした…」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「あのっ」
八幡「ここ」
結衣「え?」
八幡「おまえんち、その道まっすぐ行ったらすぐそこだろ。ここまでで、いいんじゃねえの?」
結衣「あ…うん…そう…だね…」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「…じゃ、明日な」
結衣「あ、ひ、ヒッキー!!待って!?」
八幡「なに?」
結衣「あ、あたし!してみたい!」
八幡「……なにを」
結衣「ふ、二人…乗り…。そ、そのしたことないし…」
八幡「つってもな…千葉の道交法では6歳未満の幼児以外は二人乗りできねぇからな」
結衣「ひ、ヒッキー小町ちゃんと時々するって言ってたじゃん!そ、それにさっきの二人もしてたし…」
八幡「いや、まぁ…そうなんだけどさ…」
結衣「じゃあ、後ろに座るだけ、ちょっと、座るだけでいいから…」
八幡「………。好きにすれば」
結衣「う、うん!!」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「満足?」
結衣「う、う~ん…」
八幡「………」
結衣「あ、あの。ちょっとだけ。ちょっとだけ…こいでもらえない…かな」
八幡「あー?やだよ、重いし」
結衣「重くないし!!失礼だし!いいじゃん!そこの電柱まででいいから!!」
八幡「はー……」
キコキコキコ、キキッ
八幡「満足?」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「…うん…。ありがと…ヒッキー…」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「…ふぅ」
結衣「………」
八幡「…そこ」
結衣「え?」
八幡「おまえんち、その道まっすぐ行ったらすぐそこだろ。そこまで行きゃ満足できるか?」
結衣「え?あ!!あ!うん!!」
八幡「んじゃ、行こうぜ」
結衣「う、うん!あ、ヒッキー掴まってもいい?」
八幡「あー…腰はやめろよ?腰は。せめて肩、な」
結衣「うん!!ヒッキー、ありがと!!」
913: cMVCB/0/0 2013/08/17(土) 12:46:53.41 ID:oRXHlMYJ0
「こうしえん」 結衣「ヒッキーってさ『タッチ』とか読まないの?」
八幡「あー?なんだよ急に」
結衣「いや、あのさー昨日パパの部屋にあったから、借りてちょっと読んだんだけど…」
八幡「お前さ、最近、親父さんの所有物だってことにすれば、強引な話なふっても大丈夫だとか思ってない?」
結衣「いやー、えへへ」
八幡「いや、褒めてねぇからな。てかその照れ笑いはやめろ。うつるだろうが」
結衣「そんで?」
八幡「そんで?って…ああ、まぁ読んだことくらいはあるけどな。あんま好きじゃねえんだわあだち充」
結衣「なんで?」
八幡「なんでってお前。俺があんな青春全開漫画好きになると思うの?」
結衣「あぁー、そ、それは確かに…」
八幡「だいたいだな。『H2』とか『カツ』とか読んでてもそうだけど、主人公が面がいい上に才能全開ってのが腹立つし、納得いかねえんだよ。なんなの?チートなの?葉山なの?」
結衣「なんでそこで隼人くんがでてくるし!」
八幡「いやだってあいつHayama HayatoでH2じゃねえか」
結衣「それ言ったらヒッキーだって、Hikigaya HachimanでH2でしょ!?」
八幡「ああ…そういやそうだな。なんだHachimanとHayatoでH2だったのか。そういうこと言うと海老名さんが寄ってきそうだからやめてくんない?」
結衣「自分で言ったんでしょ!?ほんと適当だし!」
八幡「いやまぁ、そもそもだな。俺は甲子園ってのが好きになれねえんだよ」
結衣「どうして?みんな頑張ってるのってすごくいいじゃん?」
八幡「いや、だってお前、甲子園なんてただの高校野球の全国大会のはずじゃねえか。なのに県大会レベルですら少し勝ちゃ、全校レベルで応援に行くだろ?甲子園進出なんて果たした日にゃ、大応援団引き連れて関西まで大遠征だ。ほかの部活だったら全国行ったって家族が応援に来るかすら怪しいぞ?なんで野球部だけそんな特別扱いなの?おかしいでしょ」
結衣「う、う~ん…そう言われればそうかもだけど」
雪乃「それは甲子園が既に高校野球の枠組みを飛び越えて、大きなカネの問題に絡んでくるからよ」
八幡「おー、これまで沈黙を守ってきた雪ノ下がとうとう喋ったな」
雪乃「別に黙っていようと思って黙っていたわけではないわ。私には漫画の話なんてわからないもの」
結衣「ゆきのん、お金の問題ってどういうこと?」
雪乃「そうね、そもそも春の甲子園は毎日新聞、夏の甲子園は朝日新聞が主催に入っているわけなのだけれど。新聞社などでは、ある程度全国に出場する高校が見えてくると、応援広告をうつために動き出すわ」
結衣「ふんふん」
雪乃「これはその高校出身の人物が経営を行っている会社などに対してアプローチが行われるわけなのだけれど、細かい名刺広告、3、5段などの段売り広告、大きい会社だと全面広告と呼ばれる1枚すべて埋める広告ね、これらをあわせると…もちろんこれはその高校のレベルにも左右されるのだけれど、新聞社一社でも数百万は動くことがあるらしいわ。もちろん全国には無数の新聞社、全国紙の地方版もあるから、全体としてはその何十倍にもなるのでしょうね」
八幡「すごいな、ユキペディア。お前はなんでも知ってるの?それともなんでもは知らないの?知ってることだけ知ってるの?」
雪乃「質問の意図がまったくわからないのだけれど。まぁ他にもテレビ局や、ラジオ局だって出場校の特番を組んだり、新聞社も密着記事を書いたりするでしょう?父関係の知り合いで地方紙の記者をしていた人物がいるのだけれど、彼も普段はまったく畑違いの仕事をしているのに、甲子園の時期になると野球の取材にかり出されていたそうよ」
結衣「へぇ~」
八幡「はぁん、そんなこともあんのね」
雪乃「もはや、甲子園というのは視聴者や読者にとっても無視できないほどに大きなコンテンツになっているということね」
結衣「コンセント?」
雪乃「コンテンツ、よ。由比ヶ浜さん。情報を含む文章、音、動画などのことを指すわ。それにさきほど比企谷くんが言っていた大応援団のことだけれど、これらも甲子園の周囲の宿泊施設などにとっては大きな収入源になっているわ。なかにはこの時期だけで年間の収益を確定させてしまう宿もあるそうだから」
結衣「そ、そうなんだ!!それってすごくない?」
雪乃「えぇ。もちろん、これまでにあげてきたのはただの実例の一つでしかないわ。実際にはまだまだお金が動く局面があるし、それらは複合的に絡み合って現状を築き上げているわ。もはや甲子園が与える経済的効果は無視できないレベルにまで膨らんでしまっているのよ」
八幡「それだよ、それ。何をするにしても甲子園の背後にはそういう金の動きが透けてみて気持ち悪いんだよ。全国から優秀な生徒集めてきたり、優秀な監督を引き抜いたり、高校スポーツの範疇を超えちまってんじゃねえか。プロスポーツならともかくそういうの学生スポーツに持ち込むのって不純だろ」
雪乃「あなたが不純だなんて言葉を使うだなんて思わなかったけれど、まぁ概ねは同意するわ。けれどあれだけ大きな大会よ、運営するためには相当なお金が必要だもの、だから一概に金を集めるのが悪いと言い切れない部分はあるのではないかしら。原理原則はともかく、さっき言ったように、既に甲子園は多くの人が興味を持つイベントに成長してしまっているのも事実だもの、そう言った情報を届けるのはマスコミの義務でもあるでしょう?」
八幡「まぁ、それもわからなくはないけどな…」
結衣「ううん…」
雪乃「あら、どうかしたの、由比ヶ浜さん」
結衣「なんか二人みたいに、頭がいいといろんな事考えて素直に楽しめなさそう…」
八幡「よかったなぁ!由比ヶ浜!!お前は人生が楽しそうで!」
結衣「それはあたしがなんにも知らない馬鹿って言いたいの!?」
八幡「え…?いや、自分でその話振ったんだろ…?」
結衣「引いた顔すんなし!!傷つくからぁ!!」
雪乃「大丈夫。大丈夫よ、由比ヶ浜さん。知識がないということを自覚しているということは、とても貴重なことだわ。少しずつ…少しずつでいいの。あなたのできることをお勉強していきましょうね?」
結衣「ゆきのんにお勉強とか言われたぁ!!幼稚園児を話すみたいに言われたぁ!!馬鹿にしすぎだからぁ!!」
八幡「そうでもないだろ」
雪乃「妥当だと思うわ」
結衣「ひどい!!!二人ともひどすぎだからぁ!!」
八幡「学んだな」
雪乃「今度は『馬鹿にしすぎ』は避けたのね。いい判断よ、由比ヶ浜さん」
結衣「うわーーーーん!!」
923: cMVCB/0/0 2013/08/17(土) 17:04:22.94 ID:oRXHlMYJ0
「うまれかわり」 結衣「やっはろー…」
雪乃「あら、由比ヶ浜さん。どうしたのかしら、今日は少し元気がないようだけれど」
結衣「あ、ううん…ごめん。昨日あんまり眠れなくて…」
八幡「なんだ、いつでもどこでも快眠できるのだけが取り柄の由比ヶ浜にしちゃ珍しい。どうしたんだ?」
結衣「ちょっと!そんなことないし!あたしのび太くんじゃないし!!あたしの特技一瞬で寝るとかじゃないし!!」
八幡「じゃあ、何が得意なんだよ」
結衣「え…?ええっと、アポロチョコのピンクのとこと黒いとこを分ける…とか」
八幡「お前何言ってんの?それに何の意味があんの…?」
結衣「え…?わかんない…」
八幡「お前マジで何言っちゃってんの…?意味わからなすぎだろ…」
雪乃「まぁ由比ヶ浜さんが、時々わけがわからないことを言いだすのは今に始まったことではないでしょう?」
結衣「ゆきのん!?」
雪乃「それで?一体どうして眠れなかったのか、聞いてもいいのかしら」
結衣「あ、うん…あのね。昨日、なんか急に死ぬってなんなんだろうって考えたら怖くなってきちゃって…。そういうのが頭にぐるぐる回って全然眠れなかったの…」
八幡「はぁん…」
雪乃「なるほど…」
結衣「…やっぱり…変だよね…」
八幡「いや、まぁ、そういうこともあるんじゃねえの?俺も小3の頃はそんなこと毎日考えてたぞ」
結衣「え?毎日?」
八幡「おー。なんかの本で地獄が出てくる話を読んでな。そんでそこに行く事になったらどうなんのか考えてたんだよ」
雪乃「あなたの場合、将来的なことを考えれば予習をしておくにこしたことはないものね」
八幡「おい、俺が地獄に行くの確定、みたいな言い方すんのやめてくんない?まだ天国に行ける可能性だって1割くらいは残ってるだろ」
雪乃「自分で1割とか言ってしまうのね…さすがは比企谷くんだわ…」
八幡「まぁ、それで授業そっちのけで死ってなんだろう、とか考えてたんだよ。ほら、小学校の頃とかって机の中に小物いれる籠とかあっただろ?あれにひたすら死って書き続けたりしてな。最後には死って文字で籠が真っ黒になってたぞ」
結衣「なにそれヒッキー!ちょっと暗いし、怖すぎ!!」
八幡「いや、まあ聞けよ。そしたらある日掃除の時間の時、机動かしてたらその籠が机からポロっとこぼれ落ちてな。それを担任が見ちまったから大変だ。いじめられてないのに、いじめられてることにされて学級会議がはじまってな、誰がこんなことしたのか犯人探しだよ。教師はいじめなんて許さないってぶちぎれるし、もう針のむしろだ」
結衣「う、うわー…」
雪乃「比企谷くん…、それは本当にいじめられていたのではないかしら。その…自己防衛反応として記憶を改ざんしてしまうことはあることでしょう?」
八幡「自己防衛とか言うなら、傷つけることを目的としてそういうこと言うのやめてくんない?結果的に学級会議では自分でやったと言い出せなかったけど、やってるのを見てたやつがいて、お前のせいで怒られたとかってハブにされたとかねえよ」
結衣「やっぱり、ちょっといじめられてんじゃん!」
八幡「まぁ、そういうこともあるから。人間誰しもそういう時期があるってことでそんな気にしなくていいんじゃないの?」
雪乃「そうなのかしら…私はあまりそういうことを考えたことはないのだけれど…」
結衣「なんかフォローされてるのに全然嬉しくないんだけど…。てか死んだらやっぱり天国か地獄に行っちゃうのかな…」
雪乃「私には、死んだ経験もないし、そういう経験のある知り合いもいないからあまりいい加減なことは言えないのだけれど」
八幡「むしろ、あったら怖いだろ」
雪乃「そうね…、ああ、そうだわ比企谷くん。ちょっと体験してレポートを提出してもらえないかしら?」
八幡「遠回し…いや、かなり直接的に死ねって言うのやめてくんない?」
雪乃「それで、宗教によっては死の後にはまた他の生き物に生まれ変わるって考え方があるのよ」
八幡「輪廻な」
結衣「りんね?」
雪乃「ええ、生前の行い…つまりどんなことしたかによって次に生まれ変わる生き物が決まるという考え方ね。そうね…この場合…比企谷くんがなぜ人間に生まれてこれたのかは、非常に不思議なところなのだけど」
八幡「おい!」
雪乃「来世では、おそらく昆布かなんかに生まれ変わるだろう、という考え方ね」
八幡「おい!昆布ってなんだよ。俺はそんなに業が深いのかよ」
結衣「こんぶ…」
雪乃「いずれにせよ。生きている我々が死んだ後の世界を考えたところで結論がでるはずはないわ。けれど…その…もし天国と地獄があるのならば、あなたはきっと天国に行けるはずだし。輪廻があるとしたら、きっとあなたはまた人間に生まれてくることが出来ると思うわ。だから…安心なさい」
結衣「うん…!ありがと、ゆきのん!」ヒシッ
雪乃「いえ…いいのよ…」ナデナデ
結衣「あ、でもさ…」
八幡「あん?」
結衣「あたし、生まれ変われたても、また二人に会いたいし。天国があるなら3人で行きたいな。だから…その仲良くしてね?」
雪乃「由比ヶ浜さん…」
八幡「まぁ、俺の場合。地獄に行くか、昆布になるかは決定らしいけどな」
結衣「ヒッキー…」
雪乃「なら、死ぬまでにはしっかりとこの男が徳をつめるよう、あなたが指導してあげることね。由比ヶ浜さん。この男のカルマを善の方向に傾けることは並大抵の努力ではできないわよ。がんばりなさい?」
八幡「は!?」
結衣「ゆきのん!!よーし!聞いたでしょ!?ヒッキー!明日から一日一善!!がんばろうね!!」
940: cMVCB/0/0 2013/08/17(土) 21:34:04.41 ID:oRXHlMYJ0
「ちゅうしゃ」 ひゃんひゃん!ひゃんひゃん!
八幡「ん…?」
ひゃんひゃん!ひゃんひゃん!
八幡「聞き覚えのある馬鹿っぽい鳴き声が聞こえるな」
結衣「………」
サブレ「ひゃんひゃん!ひゃん!ひゃん!」
結衣「………」
サブレ「くぅ~ん?」
八幡「なんか…やけに深刻な顔してんな…」
八幡「………」ポリポリ
テクテクテク
八幡「おい」
結衣「うひゃあぁ!!」
八幡「…おう」
結衣「な、なんだ、ヒッキーか…。びっくりしたぁ」
八幡「お前、何深刻な顔して児童公園にいんの?もしかしてブランコのこぎ方がわからねぇの?よつばかよ」
結衣「よつばって誰だし!!ていうかブランコのこぎ方くらいわかるし!!ヒッキーこそこんなとこで何してんの?」
八幡「いや、本屋行くんだよ」
結衣「あはは。ヒッキー休みの日に会うといっつもそればっかりだね」
八幡「俺が休みの日にすることって言ったらそんぐらいしかねえんだよ。だいたいそこそこの品揃えある本屋行こうと思ったら、こっち方面にでてくるしかねえんだよ」
結衣「そっかー」
八幡「んで?お前は何してんの?つうかちょっと元気なくねぇか?」
結衣「………。笑わない?」
八幡「約束はできん」
結衣「ううん…。まぁ、いっか…その怖くて…さ」
八幡「怖いって何が?体重計?」
結衣「ヒッキー失礼だし!そんなんじゃないし!ていうかちょっとデリカシーたんないんじゃないの!?」
八幡「じゃあ、一体なんなんだよ」
結衣「だから…その…注射…」
八幡「………」
結衣「………」
941: cMVCB/0/0 2013/08/17(土) 21:35:47.30 ID:oRXHlMYJ0
八幡「…じゃあ、頑張れよ」 結衣「ちょ、ちょっと!ヒッキー!?」
八幡「んだよ?なんなの?」
結衣「なんなの、じゃなくって!あたし怖いんだけど!」
八幡「何が?」
結衣「だから注射!!」
八幡「…そうか。頑張れよ」
結衣「ちょっと!ヒッキー!?それじゃさっきとおんなじじゃん!!」
八幡「もー?なんなのー?かまってちゃんなの?レヌール城なの?はいを選ぶまでえんえんと続くの?この感じ」
結衣「だるそうにすんなし!」
八幡「いやさぁ、お前の頭が幼稚園児並みってのは知ってたけど」
結衣「ちょっと!!」
八幡「でも、まさか。仮にもいい年した女子高生が注射受けんのが怖いって言ってるとは思わないだろ。予想GUYだろ。つか心配して損したわ」
結衣「違うし!あたしがするのが怖いって言うんじゃないの!サブレの注射なの!!」
八幡「はぁ?」
結衣「だからぁ!サブレに予防接種受けさせるために獣医さんとこに行く途中だったんだけど、ちょっと怖くなってここで時間つぶしてたの」
八幡「え?サブレが注射受けるのに、お前が怖がってたの?」
結衣「だから!そう言ってんじゃん!!」
八幡「え?これ意味がわからない俺が悪いの?サブレが注射受けるのに、お前が怖がる理由がわかんないんだけど。お前どんだけ感受性が豊かなんだよ。サブレと同調しちゃってんの?」
結衣「そうじゃなくてさ、サブレの注射する時って…そのサブレ、嫌がって暴れるから、抑えなきゃなんだけど…その…そん時すごい悲しそうな声だすから…」
八幡「はぁん…」チラッ
サブレ「へっへっへっへ」
八幡「つったってだな。予防注射だろ?それしなくて病気になるかもしれないのサブレじゃねえか。だったらしてやんのが飼い主の責任ってやつなんじゃねえの?」
結衣「うん…。それはわかってるし…だからちゃんと行こうとしてたんじゃん…。でも途中で去年のこと思い出しちゃって…ちょっと勇気が出なかったの!」
942: cMVCB/0/0 2013/08/17(土) 21:37:47.54 ID:oRXHlMYJ0
八幡「だったらお前、お袋さんか親父さんか誰かに付いてきてもらうか、代わりに行ってもらえばよかったじゃねえか」 結衣「誰か…?」
八幡「………」
結衣「じゃあ、ヒッキー来てくれる?」
八幡「は?」
結衣「…ううん…なんでもない。ちょっと言ってみたかっただけ。ヒッキー本屋行くんでしょ?気にしないで」
八幡「あー…」
結衣「………」
八幡「あそこか?駅前んとこ?」
結衣「んーん…大通りの…あそこの角にあるでしょ?」
八幡「あー、あっちか」
八幡「………」ポリポリ
八幡「んじゃ。さっさと行こうぜ」
結衣「へ?」
八幡「いや、注射。行くんじゃねえの?」
結衣「い、いや!いいよ!気にしないで!悪いし!ちょっと話を聞いてもらいたかっただけで…。そ、そんなつもりで言ったんじゃ…ないし」
八幡「………」
結衣「………」
八幡「………」
結衣「あの…ほんとにいいの?」
八幡「いいんじゃねえの?方向一緒だろ?」
結衣「そ、そっか…えへへ…じゃぁ…頼んでもいい?」
八幡「おー」
結衣「ありがとね…ヒッキー」
八幡「まぁいいけどよ。慣れろよ?今回で。来年もどうせ行くんだろ」
結衣「う、うん。そだね。……あ、でもさ。もし今回で慣れなくて、次回も怖かったら…さ。その…ヒッキーも来てくれる?」
八幡「は?お前さ。行く前からダメだってこと前提に考えんのやめろよ」
結衣「あぁ…そ、そだよね…。ごめん…」
八幡「でもま…。そん時はそん時なんじゃねえの?」
結衣「そん時はそん時?」
八幡「そん時はそん時」
結衣「う、うん!じゃあその時はよろしくね!?」
八幡「いや、だから。行ってから考えろよ」
結衣「うん!!ヒッキーありがとね!!」
照りつける灼熱の太陽、熱せられた砂塵まじりの空気。
そこには累々といくつもの肉の固まりが転がっていた。
漂う、むせ返るような血と硝煙の臭い。
それに死体から流れ出る吐瀉物と排泄物の臭いがないまぜになり、あたりはまさに地獄の様相を呈していた。
ーいや、そこにいたのは死体ばかりではなかった。死肉を喰らうカラスに混じり、二つの人影が動いている。
一人は中肉中背、その体はわずかに前傾姿勢をとっており、手にしたM4カービンを油断なく動かし、警戒の体勢を緩めない。
一人はデ…軍人とは思えない幅の広い体系をしており、ミニミを軽々と片手で持っていることもさることながら、戦闘服の上からコートを着込んでいるのがこの中東の大地にあってあまりにも異様であった。
彼らはお互いを援護しあいながら、一軒の建物へと吸い込まれるように入って行く。
侵入者たちの歩みにあわせ、砂塵ともホコリとも知れぬものが宙にまい、差し込む陽光にキラキラと輝いた。
それは地獄の戦場にあって、どこか幻想的な光景でもあった。
「クリア」
「こちらも、クリアだ」
彼らは素早く室内を確認すると、わずかに安心した様子を見せた。
「ふむん。やはり我らのほかは全滅のようだな」
コートの声の男が口を開くと
「まだ連中の反応は消えたわけじゃない。決めつけんなよ」
もう一人の男が短く答える
「だが、八幡よ。彼らのほとんどは新兵ではないか。確かに『彼女』も向こう側にいた。そう信じたい気持ちはわかるがー」
「黙れ材木座。その話はするなと言ったろうが」
向けられた銃口がギラリと光り、材木座と呼ばれた男からタラリと汗が流れ落ちた。
「す、すまぬ。我が軽卒だった…。だから八幡よ、銃を…下ろしてくれ」
「ふん…」
材木座の懇願に八幡は素直に従った。別に彼は目の前の男に情けをかけたわけではない。銃声で敵に位置がばれ、自分の命が危険に晒されることを恐れたのだ。……というか材木座に撃ち込む弾丸がもったいない。
「しかし一体この状況からどうするのだ?」
材木座が尋ねると、八幡はわずかに開いた窓の隙間から外を指し示した。
「俺たちが他の連中との合流地点に行くには、あの橋をわたらなきゃいけない…だが」
「あの建物か」
「ああ、あれが厄介だ。俺の見立てだと、あの建物にゃおそらく3人はいる」
「ふむ。となれば気づかれず通り抜けるのは不可能!殲滅するしかなかろう」
材木座の言葉に八幡が頷いた。八幡にとって材木座の言葉に同意するのは正直スゲームカつー目の前の男と意見が重なるなど許しがたい屈辱ではあったが、状況が状況であった
「材木座お前はここかー」
ヒュン。
刹那。何かが空気に切り裂く音が響いた。
その音が敵が放った鉛玉が作り出した音であることを歴戦の勇士たる比企谷八幡が気づかぬわけもなかった。
「伏せろ!材木座!!」
八幡の言葉に材木座がその身からは信じられないほどの瞬発力を発揮し、物陰に隠れることで答えた。
相変わらず逃げることに関しては、動ける[ピザ]すぎて気持ち悪い。
「八幡どうする!撃ってきたぞ!!ばれているではないか!!」
材木座が叫ぶ。うるせえ黙れ。
「やることは変わらん!材木座!お前はここから撃ちまくれ!!俺は側面から回り込む!!」
材木座の答えも聞かず、八幡はドアから飛び出した。建物に侵入した時点で彼は外にある遮蔽物の位置も完全に把握していた。
正面の建物からはここは確実に、死角となるはずだった。
彼が飛び出した建物から、銃口が突き出され、5.56mm NATO弾が戦のリズムを奏でた。
それに答えるように向かいの建物からも銃声が響く、2、いや3。材木座は十分に囮としての役割は果たしているようだった。
「上等…!」
八幡は路地裏を進んだ。行動は迅速に、しかし決して慌てずに。その無駄のない動きは、さながら精密機械のようであった。
その動きはまさに、彼が戦場で過ごしてきた日々のー結晶ー
目標の建造物にたどりつくと、八幡は建物の壁に張り付き。内部の様子を伺った。
銃声の位置を聞き、それを頭の中の地図に落とし込む。
敵の位置は把握した。
扉を蹴破ると八幡は部屋の中へと飛び込んだ。
タン・タン・タン!
まるで良く出来た打楽器の演奏のように、リズム良く放たれた弾丸が1発は頭に、2発は胸へと吸い込まれ、一人目の男が糸の切れたマリオネットのように倒れ込むのを比企谷八幡は見るでもなく見た。
八幡の意識は既に二人目の相手に注がれ、相手が反応する間もなくさらに三発を放つ。
二人目を撃ち倒すと、八幡は視線を三人目へと向けた。
三人目の相手は、今の階下の騒ぎをまるで解さないかのように、いまだに外に向かって、おそらくは材木座に向かって発砲を続けていた。いっそ、やっつけてくんないかな。あの人。
だが自己保身を第一義とする八幡にとって仲間…いちおう味方…が撃ち倒され、敵と一対一でやり合うことなるのは避けたいことであった。
彼はセカンダリーウェポンであるM9に持ち替えると、未だに発砲をし続けている2階の男に近づき、その頭に向けて引き金を引いた。
外に出ると材木座がこちらに近づいてくるのが目に入った。ちっ、やっぱり生きてたか。
だが八幡の意識は、すぐにその後ろから近づいてくる人物へと移って行った。
戦闘服の上に、幼さの残る顔立ち、お団子にまとめられた茶色い髪。その可愛らしい容貌に、手に持ったカラシニコフはひどく不釣り合いに写った。
「ヒッキーー!!!あぶなーーーいい!!!」
彼女の口が聞き覚えのある名前を呼び、聞き覚えのないフレーズを口にした。
7.62ミリ弾が唸りをあげ、弾丸が次々と吸い込まれて行く。
材木座に。
959: cMVCB/0/0 2013/08/18(日) 00:31:23.16 ID:4fnsm8OK0
「えふぴーえす」 八幡「それ、材木座!材木座!」
結衣「え!?ヒッキー材木座って誰!?」
材木座「え!?俺なんですけど!」
八幡「素に戻ってんじゃねえよ、材木座。由比ヶ浜、中2だよ、中2」
結衣「え?今の中2だったの?ヒッキーに近づいていくから敵かと思った!」
八幡「いや、敵なのは間違いないんだけどよ。一応チーム的には味方なんだよ」
材木座「い、いや!なにを言っているのだ八幡よ」
八幡「うるせぇ、黙れ」
結衣「ご、ごめんね。中2」
材木座「う、うむん…特別にゆrー」
八幡「いや、材木座を倒したのはよくやったんだけどな」
材木座「は、八幡!?」
八幡「お前さっきから味方しか撃ってないからな、由比ヶ浜」
結衣「え!?嘘!?」
八幡「お前スコア見てみろよ」
結衣「どうやって見るの?」
八幡「スタート」
結衣「えっと…これか。あれ?-19とかになってる!!」
八幡「そうそう。それがお前が倒した仲間の数な。言っとくけど、さっきからチャットではお前の悪口しか流れてねえから」
結衣「え!?嘘!?マジ!?」
八幡「つーか、お前。それ親父さんのアカウントなんだろ?言っとくけど、あと一人間違えたらBANされるからな?」
結衣「バンってなに?銃の音?」
八幡「違う。追い出されて二度とサーバーにー」
結衣「あ!敵だ!!」
八幡「違う!それ味方味方!!てか話きけよ!!」
結衣「うりゃああああ!!!」ガガガガガガガガガ
結衣「よし!たおー」
lovely daughter 0618 が kick されました
八幡「………」
材木座「………」
八幡「………」
材木座「………」
八幡「まぁ…続きやるか」
材木座「う、うむん…」
970: cMVCB/0/0 2013/08/18(日) 05:02:10.62 ID:4fnsm8OK0
「ひとにあい」 雪乃「………」
八幡「………」
雪乃「…それにしても遅いわね…」
八幡「…だな。多分また教室で三浦とかと話しているんじゃねえの?」
雪乃「……。まったくあの子は部活のことを一体なんだと思っているのかしら」
八幡「あいつにはあいつの付き合いってもんがあるんだよ」
雪乃「…そうね。あの子は私たちとは違って交友関係が広いものね」
八幡「前は俺と一括りにするなとか言ってなかったか?」
雪乃「事実だもの。こちらから言う分には別に構わないわ」
八幡「そうですか…」
雪乃「………」
八幡「………」
雪乃「………」
八幡「なぁ、雪ノ下…」
雪乃「なにかしら?」
八幡「あいつはさ。なんで俺たちみたいなのに構うんだろうな」
雪乃「あなたと一括りにしないでもらえるかしら」
八幡「お前、さっき自分で、構わないって言ったばかりじゃねえか」
雪乃「自分で言う分にはかまわない、と言ったのよ」
八幡「さいですかっと」
雪乃「………」
八幡「………」
雪乃「そうね…」
八幡「………」
雪乃「由比ヶ浜さんは浅慮だし、慎みがないし、深く考えずに思いつきだけで物を言うし、その場しのぎでごまかすし、何かと騒がしいし、いい加減だし、すぐに調子に乗るし…」
八幡「……随分な物言いだな」
雪乃「けれど…」
雪乃「彼女は誰が相手でも、いいところを見つけられる。きっとそんな才能を持っているのよ。それがたとえ…」
八幡「………」
雪乃「………」
八幡「美しいものを、美しいと思えるあなたの心が美しい」
雪乃「相田みつを、ね」
八幡「ああ」
雪乃「あなたにしてはいい事をいうじゃない。本人に聞かせてあげたら?きっと喜ぶわよ」
八幡「言えるか、こんなこと。だいたい言ったところで通じねぇだろ」
雪乃「それもそうね、きっともう少しストレートに言ってあげないと通じないでしょうね」
八幡「だろうな」
雪乃「………」
八幡「………」
雪乃「天に星、地に花、人に…」
八幡「武者小路実篤だったっけか?」
雪乃「大元を辿ればゲーテに行き着くのだけれど」
八幡「そうなのか」
雪乃「ええ…けれど、広めたのは彼の功績よね」
八幡「…だな」
雪乃「きっと、人にはどんな形でも不可欠なものなのよ」
八幡「そうか?お前らしくもない気がするが」
雪乃「そんなことはないわ。それに…多分彼女は私にそれを与えてくれたもの」
八幡「それ、聞かせてやれよ。きっと泣くぞ、感動で」
雪乃「言えないわ、そんなこと。恥ずかしいもの」
八幡「だろうな」
雪乃「きっと、与えてくれるわ。あなたにも」
八幡「………。言ったろ、俺からは不干渉を貫くって決めてんだよ」
雪乃「そうかしら?相変わらず自己認識に長けているのかいないのか、よくわからない男ね」
八幡「………」
雪乃「………」
パタパタパタパタ!
雪乃「来たわね」
八幡「来たな」
パタパタパタパタ!
雪乃「じゃあ、今日はいつも通りということでいいのかしら」
八幡「そうじゃないと、顔あわせらんねぇだろ」
ガラガラガラ!
結衣「やっはろー!!遅れてごめんね!!優美子たちと話し込んでたら遅くなっちゃって!」
八幡「おう」
雪乃「いいから、早く席につきなさい、由比ヶ浜さん。部活はもう始まっているのよ」
結衣「うん!!」
「女の子は得にならない相手には優しくしない」
アホの子のマイリトルシスタの発言にあって、これほど物事の真実をついた言葉はない、と俺は思う。
例えば中学時代、さんざんっぱら俺が好きになってきた『優しい女の子』達
今思うに、彼女らの優しさは俺がぼっちだった故にむけられていたのだ。
俺が「ぼっち」だからこそ、それに手を差し伸べる彼女らは『差別をしない』『心優しい』として株があがる。
それは必要以上に犬や猫を可愛いと言う、可愛いと言う私可愛いアピールとなんら変わりがない、周囲に対する「ぼっち」にすら優しくする私優しいアピールなのだ。
クラス内ヒエラルキーに置いて確かに存在する『優しい女の子ポジ』を得ようとする行為でしかなかった。
だから、その対象が、ただの憐れみの対象で踏み台とするだけの対象が、勘違いして好意を向けて来たとき、彼女らは一様に牙を剥いたのだ。
「は?あんた何調子のってんの?」 と
だから彼女らはこれまでの優しさをかなぐり捨てて、クラスメイトたちと一緒になって、いやむしろ間接的にはその中心となって、俺をなじるほうに回ったのだ。そのほうが、勘違いしたボッチに優しくし続けるより、よっぽど合理的で利のある行動だから。「優しいからキモい男に勘違いされた」という言葉で、彼女らの立場を確定させることができるから。
だが彼女は違う。俺に必要以上に優しくしようとはしない。
クラスで浮いている俺にわざと話しかけて、周りから注目を浴びるような真似は決してしない。
ボッチだからという理由で話しかけ、強引に輪の中に入れようとするような真似は決してしない。
嘘で塗り固めた曖昧な言葉で俺がぼっちであることや、痛い人間であることを否定しようとはしない。
だがそれでも彼女は俺に話しかける、誰も見ていないことを知っていて、それがクラスにおいて彼女の利にならないを知っていて。だから彼女の優しさはきっと本物だ。必死に絞り出してくれた本物の優しさだ。
だから考えてしまう。彼女にとって利のあることはなんなのだ? と
いつも感情が暴走して、理性が止めるのを無視して、強引にことを運ぼうとした。
結果、中学に入学してから3年の6月までの2年と2月で、俺は負けに負け続けた。
多分並の人間の一生分くらいの負けは経験したと言っても過言ではないだろう。
その負けっぷり、かませっぷりたるや、ベジータはおろかヤムチャですらかすむと言っていいくらい。
だから俺は自分の心を律すると決めた。
常に理性で自分を制し、感情を暴走させないように、と心に決めた。
そんな俺だから思わないわけじゃない
どうでもいい相手とギクシャクしたくらいで、あんなに悲しそうな顔を見せるはずがないということくらい
どうでもいい相手と仲直りできたくらいで、あんなに嬉しそうな顔をするはずがないということくらい
どうでもいい相手とわざわざ浴衣まで着て、2人で花火大会に行ったりしないということくらい
どうでもいい相手とあんなに一緒に出かけたがったりしないということくらい
それに多分、あんな笑顔を見せてくれるはずがない、ということくらい
今度は客観的事実がそれを肯定してるいるのに、感情がそれを否定する。
そんなものは、まやかしだ。夢を見るな勘違いだ。自意識過剰だ、そんなうまいこと起こるはずがないだろ。
また傷つきたいのか? と
それが間違いだったら?
もし正しかったとして、勘違いではなかったとして、その関係が終わりを告げた時どうなってしまうだろう。
結局のところ、ベクトルが変わっただけで。俺の本質は大して変わりはしていないのかもしれない。
ことが運ばないうちから、進めようともしないうちから、その先の心配をするだなんて、馬鹿げているし、自意識過剰もいいところ。雪ノ下の言葉ではないが、本当に気持ちが悪い。
だが、それを考えられずにはいられない。
あんな気持ちを誰かに向けられたことなんてないから。あんなにまっすぐに見つめられたことなんてないから。
だから失うことを恐れてしまう。
関係性を進めてみて、その先素晴らしい未来が待っているだなんて決めうちできるほど、俺は能天気にはなれない。
だから俺は今の関係性が割と好きだ。
3人で馬鹿話をするのが、2人して彼女をからかうのが、プリプリとした表情が、次第に照れ笑いになるのが、好きだ。
俺の話に目を輝かせて、嘘に落胆して、間違ったことを言ってしまったのではないかと必死にフォローの言葉を探して、ころころ変わる表情は見ていて飽きることがない。
彼女の笑顔を見ていると、彼女と親しい極炎の女王三浦ですら心優しい少女に写り、蜂蜜の染みていない出来損ないのハニートーストですら絶品に感じられる。心臓は早鐘を打ち、不整脈すら疑ってしまう。
その感情を言葉に言い表すのは難しい。いや簡単だと言うむきもあるかもしれないが、今の俺には難しい。
平塚静は、彼女が部を活性化させた、と言った。
それは間違いのないことだ。ぼっちとぼっちがいても、集団には決してならない。おそらく彼女がいなければ、俺と雪ノ下雪乃は今も、知り合いと呼べる存在にすらなっていなかっただろう。挨拶をして、二言、三言くらいは言葉をかわすかもしれない。だが多分それだけだ。ららぽに買い物に行く事も、文化祭のことで協力することすらなく。多分恐ろしいほどに個と個であり続けただろう。
だが彼女がいたことで、俺たちは『同じ空間にいる二人のぼっち』から、『3人の奉仕部員』へと…集団へと形を変えることが出来た。
だから俺は今の関係性が割と好きだ。
それは彼女が作り上げてくれたものだから、そしてとても心地いいものだから。
大きく踏み込むことさえしなければ、その笑顔を、感情を、しばらくは向け続けてもらえるのは確かだから。
俺と雪ノ下雪乃の関係が『同じ学校の生徒』から『知り合い』へと変化したように、彼女との関係もなんらかの変化を遂げなければならない日が、決断を迫られる日が訪れるのかも知れない。
だがその日を強引に迎えたいとは、まだ思えないから。
だから、俺はまだこの関係を、3人の奉仕部を今しばらく続けたいのだ。
そんなことをつらつらと考えてしまうのは、今日の俺の行動がその気持ちに反して、少し彼女に歩み寄る行為だからなのかも知れない。
でも俺だって、断りきれないことくらい、ある。
距離を計りかねることくらい、ある。
決断が鈍ることくらい、ある。
だから、まぁ、その、なに?
たまには…このくらいお目こぼししてもらいたい。
結衣「ヒッキー!!」
八幡「おう」
結衣「ご、ごめんね?待たせちゃった?」
八幡「いや?ピッタリ時間通りだろ?ていうかピッタリすぎてむしろ引くわ。お前ストップウォッチかなんかなの?」
結衣「違うし!!なんで、時間通りに来てそんな言われ方しなきゃいけないの!?」
八幡「そうか?つかこんな軽口いつものことじゃねえか。いい加減慣れろよ」
結衣「慣れないし!それ軽口っていうか悪口だし!」
八幡「まぁ、細かいことは気にすんなよ」
結衣「ヒッキーがそういうこと言う!?」
八幡「ま、こんなところで言い合ってたってしょうがねぇだろ。とりあえず、帰ろうぜ」
結衣「帰らないし!!」
八幡「そうか…。んじゃ、ま。行くか。試写会」
979: cMVCB/0/0 2013/08/18(日) 10:17:45.63 ID:4fnsm8OK0
一応1スレ目の締めはヒッキーのキモポエムで。 ちょっと早すぎた、かな。新スレ立てました
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