1: 2013/01/16(水) 00:16:41.34 ID:6xv0Ois+0
 私の父の実家は自宅から車で二時間弱くらいの所にある。
 農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校生になってから、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行ってた。
おじいちゃんとおばあちゃんも「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。

 春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われてじいちゃんの家にバスで行った。
まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。

「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ……」

女「? 何だろうこの音」

 庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。生垣の上に置いてあったわけじゃない。
 帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで来ると、一人女性が見えた。
まあ、帽子はその女性が被っていたわけだ。その女性は白っぽいワンピースを着ていた。

5: 2013/01/16(水) 00:18:03.73
女「!」ドキッ

女(綺麗な人……///)

 でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高い人なんだろう。
 ドキドキしていると、彼女はまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。
また、いつのまにか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。

女「あっ……」

女「お話、したかったな……」

 それは、一目惚れだった。

7: 2013/01/16(水) 00:18:45.17
 その後、居間でお茶を飲みながら、おじいちゃんとおばあちゃんにさっきのことを話した。

女「さっき、とっても綺麗な人を見たんだ~/// 背が高くって、スタイルも良かったなあ//」

祖母「へぇ~」ニコニコ

女「どれくらいかって言うとね! 垣根より背が高かったの! 帽子を被っていてね、『ぽぽぽ』って可愛い声を出してたんだ」

祖父・祖母「!」

9: 2013/01/16(水) 00:19:16.20
 その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」
と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。
 おばあちゃんは心なしか震えているように見えた。

女(有名人だったのかな。そりゃ綺麗なわけだ)

ガラッ

祖父「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」

女「え?」

12: 2013/01/16(水) 00:19:56.90
祖父「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」
と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。

女「ねえおばあちゃん。何がどういうことなの?」

祖母「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何にも心配しなくていいから」ビクビク

女「えっ!」カァァ

女「み、魅入るって……そういうことだよね……///」ドキドキ

女「……」

女「ふおおおおおおおおっ!」

祖母「!?」

17: 2013/01/16(水) 00:21:09.88
 それからおばあちゃんは、おじいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。

女(都市伝説かあ。……でも、凄い綺麗な人だったなあ)

 そのうち、おじいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。

Kさん「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」
 Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。
それから、おじいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。
 おばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。

19: 2013/01/16(水) 00:22:05.95
 しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅には盛塩が置かれていた。
 また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、その上に小さな仏像が乗っていた。
 あと、どこから持ってきたのか「おまる」が二つも用意されていた。これで用を済ませろってことなのかな。

祖父「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。
俺もばあさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。
そうだな、明日朝の七時になるまでは絶対ここから出るな。七時になったらお前から出ろ。家には連絡しておく」

21: 2013/01/16(水) 00:23:12.74
Kさん「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。何かおきたら仏様の前でお願いしなさい」

女「うん! 私、絶対に八尺様をモノにするからね!」

祖母「かわいそうに……あまりの怖さでおかしくなっちゃって……ううっ……」ポロポロ

祖父「きっと、大丈夫だ……」ダキッ

22: 2013/01/16(水) 00:24:07.72
~夜~

 テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。

女「どうしよう……どの服がいいかな……」

 私は持ってきた着替えと睨めっこをしていた。

女「あ、このお菓子おいしい。八尺様にもあげよっと」

女「いつ来るんだろう……まだかなぁ」

 いつのまにか眠っていたようで、目が覚めたときには、何だか忘れたが深夜番組が映っていた。
携帯を見たら、午前一時すぎだった。

23: 2013/01/16(水) 00:24:41.64
 なんか変な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえた。小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。

女「も、もしかして!」ドキドキ

女「こんな時間に会いに来てくれるなんて……八尺様ってば///」

24: 2013/01/16(水) 00:25:14.05
 そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」
 思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。

女(つまり、この声の主は八尺様! というか声真似上手だなあ……)

 また声がする。
「どうした、こっちに来てもええぞ」

女「はぁはぁ……今行きますね!」

 扉は鎖で固く閉められていた。

25: 2013/01/16(水) 00:26:00.10
女「ちょっ、誰なの! こんなことしたの!」グギギギ

「……」

女「ぐへ、ぐへへ……今開けますからね……」

「や、やっぱこっちに来んでもええぞ」

女「もうっ/// 八尺様ったら照れちゃって!」

バキッ

女「……開いた……」

「ひいっ!」

27: 2013/01/16(水) 00:26:31.80
女「はぁはぁ……八尺様……」ガラッ

 そこには、端麗な顔立ちを歪ませ、今にも泣きだしそうな大柄の美女がへたり込んでいた。

女「会いに来てくれたんですね……////」

八尺様「い、いやっ!」

ガシッ

女「八尺様……いや、八尺さん……」ギュ

八尺様「!」

28: 2013/01/16(水) 00:26:45.29
ワロタ

29: 2013/01/16(水) 00:27:11.90
女「……好きです……/// 私も、一目見たときから魅入っていました///」

八尺様「……」

八尺様「……わ、わけわかんないっ!」ドンッ

女「きゃっ」

 押された衝撃で床に頭をぶつけてしまい、女は朝まで眠ることとなった。

32: 2013/01/16(水) 00:28:02.44
 朝、ドアを開けると、そこには心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。
ばあちゃんが、よかった、よかったと涙を流した。

女「振られた……」ドヨーン

 下に降りると、父も来ていた。
おじいちゃんが外から顔を出して「早く車に乗れ」と促し、庭に出てみると、どこから持ってきたのか、ワンボックスのバンが一台あった。
そして、庭に何人かの女性たちがいた。

34: 2013/01/16(水) 00:28:35.39
 ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、
庭にいた女性たちもすべて乗り込んだ。全部で九人が乗り込んでおり、八方すべてを囲まれた形になった。

女性1「大変なことになったわね。気になるかもしれないけど、これからは目を閉じて下を向いていなさい。私たちには何も見えないけど、あなたには見えてしまうだろうから。
いいと言うまで我慢して目を開けないでね」

 右隣に座った三十歳くらいのお姉さんがそう言った。

36: 2013/01/16(水) 00:29:12.34
 そして、おじいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、後に父が運転する乗用車という車列で走り出した。
 車列はかなりゆっくりとしたスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。

間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。

37: 2013/01/16(水) 00:30:13.90
女「はぁ、お別れかあ……」

 ここで笑い声が聞こえてくる予定なのに何も聞こえてこない。

女「……」

女「……ぽぽぽぽ~……」

女「ぽぽ、ぽぽぽ~?」

女「ぽぽ!」

女性2「この子憑かれてるんじゃないかしら……」

38: 2013/01/16(水) 00:30:58.90
 女性1の忠告を無視して両目をがん開きしていたが、車窓には何も映らない。

女「はぁ……」

 なんとなくガラスを叩いてみる。
コツ、コツ、コツ

女「あっ、来た来た! 来たよ!」

女性3「……」

 女の奇行に触れなかったKさんが「うまく抜けた」と声をあげた。
それまで黙っていた周りを囲む女性たちも「よかったわね」と安堵の声を出した。

39: 2013/01/16(水) 00:31:42.37
 やがて車は道の広い所で止り、父の車に移された。
父とおじいちゃんが他の女性たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろ」と近寄ってきた。
 お札を見てみたが、何ら変わりはなかった。
Kさんは「え、ええっと……も、もう大丈夫だと思うがな、まあ……念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」と新しいお札をくれた。必要ない。

41: 2013/01/16(水) 00:32:24.28
女「あのお地蔵さんのせいだ……!」ダダダッ

女「おらあっ!」ゲシゲシ

Kさん「ちょっ」

 そんなときだった。
お地蔵さんのある木陰、つまり私の傍に白いワンピースの彼女が現れた。
大人たちがどよめいた。見えているらしい。

42: 2013/01/16(水) 00:33:00.11
女「は、八尺さん……」

八尺様「……」

女「会いたかったです……」ギュッ

八尺様「っ……」

女「……」

女「……望むのなら私を頃してください。それか……私に……」

 女はつばを飲み込んでからこう言った。

女「私に、キスを、してください」

43: 2013/01/16(水) 00:33:49.28
 八尺様は驚く表情を隠せなかった。

八尺様「……正直、こんな人間は初めてだ……」

八尺様「……私は何人もの人間を頃してきた……だから、もちろん、皆は私を恐れた。当たり前だ」

女「……」

八尺様「だが、お前は私を恐れない……いや、そんな奴は何人もいたが、もちろん頃した」

八尺様「みんな頃した……」

八尺様「だけど、だけど……お前はどうも、殺せそうにない……」

女「八尺、様……」

八尺様「あと、このよくわからない気持ちも、殺せないんだ……////」

八尺様「……この感情を人間では何と言うんだ……? ……女、答えて」

女「……」

44: 2013/01/16(水) 00:34:22.14
女「恋。恋です。八尺様」

八尺様「そうか……恋か……」

女「……はい」

八尺様「恋とは……凄くいいものだな」シャガミ

チュッ

女「んっ……///」

八尺様「んむ……////」

 愕然とする大人たちをよそ目に、その行為は数十分にも渡って行われたという。

47: 2013/01/16(水) 00:35:11.95
~完~

49: 2013/01/16(水) 00:36:29.83
起・承・転・結

イマココ

50: 2013/01/16(水) 00:42:42.71
それでそれで?

65: 2013/01/16(水) 01:07:42.11

66: 2013/01/16(水) 01:09:57.19
明日、というか今日も書くと思う。口裂け女とか書きたい
この話の続きみたいな感じで。女の設定を高校生に戻すかもしれないけど……

引用元: 百合少女「八尺様……?」