1: 2009/10/18(日) 20:14:28.21
~夕暮れの土手
唯「はぁ、今日の練習散々だったな。ライブも近いのにこのままじゃ完全に足を引っ張っちゃうよ」

唯「私って、才能ないのかな……」

???「なにを黄昏ておる」

唯「えっ、あの、どちら様ですか?」

クラウザーⅡ世「通りすがりの魔王とだけ言っておこうか」

4: 2009/10/18(日) 20:17:12.15
~三十分前の出来事

根岸「ハァハァ、やっと逃げ切れた。最近の社長はヒステリック過ぎるよ。僕はただ、オシャレなポップが歌いたいだけなのに……」

根岸「勢いだけで飛び出してきちゃったのはいいけれど、ここはどこだろう」

キョロキョロ

根岸「わぁ、なんて綺麗な夕焼けなんだ。こんな日くらい、ゆっくり座って夕焼けでもみよう。この真っ赤な夕焼けが僕の気持ちを優しく包んでくれるに違いない」

根岸「あれ? 先客がいる。女子高生みたいだけど。もしかして……泣いてる?」

根岸「ねぇ、君……ってしまった! クラウザーの格好のままだった!」

根岸(どどどどうしよう。ええい、いっちゃえ!)

~そして今に至る。

クラウザーⅡ世「そうか……。ギターの演奏が上手くいかないのか」

唯「はい。私だけいつも失敗して。何度も練習してるんですけど、どうしても上手く弾けないんです」

根岸(僕にもあったなぁ。必氏に練習したんだけど、ちっとも弾けなかった曲が。あの時はギターを持つの、怖くなったっけ)

クラウザーⅡ世「……その楽譜、今持っているか?」

5: 2009/10/18(日) 20:20:15.92
唯「えっ、あ、ハイ。これです」

ピラッ

クラウザーⅡ世「どれ、手本をみせてやろう」

唯「魔王さん、ギター弾けるんですか」

クラウザーⅡ世「ああ、むしろ頃しよりコッチが本職みたいなもんだ。ギターを借りるぞ」

唯のギー太を受け取るクラウザー。

クラウザーⅡ世「ほう、ギブソンか。うむ、手入れも行き届いておる。大切にしておるのだな」

唯「はい。ギー太は友達ですから」

クラウザーⅡ世「では……」

ピックを持った手を高らかに構えたクラウザーはギー太をかき鳴らす。長年ギターを扱ってきた根岸にとって、唯の差し出した楽譜に記された曲を弾くなど児戯に等しい。
しかし、クラウザーはそれを決して手を抜かずに全力で演奏してみせたのだ。

クラウザーⅡ世「大事なのは失敗を恐れぬ心だ! 一度ギターを構えたなら腕が千切れるまで弾く覚悟を持て! さすればァー」
ギュギュゥゥウン!

クラウザーⅡ世「こやつもお前の気持ちに答えるであろう」

6: 2009/10/18(日) 20:22:30.25
初見であるにも関わらず、根岸は見事に「Don't say "Lazy"」を弾ききったのだ。たった一度の演奏だったが、唯の心を振るわせるには十分過ぎた。

唯「すごい! 魔王さんすごいよ!」

目を丸く輝かせた羨望の眼差しは、夕日の輝きも相成って宝石のようだった。

根岸(キレイだ……)

7: 2009/10/18(日) 20:24:26.66
唯「どうしたの? 魔王さん」

クラウザーⅡ世「ン、ンンッ! いや、お、お前のキレイな瞳に――」

鼻チェーン「うおっ! ありゃクラウザーさんじゃねぇか!」

額に殺の男「間違いねぇ……。クラウザーさんはキレイな夕日をバックにあの女子高生をバックから犯すつもりなんだ!」

二人「GO TO DMC! GO TO DMC!」

クラウザーⅡ世「地獄の門限の刻! 我の次なる光臨を待て!」シュバッ

唯「あ、行っちゃった。あれ? 何だろコレ」

8: 2009/10/18(日) 20:27:50.00
足元を見ると、携帯電話が落ちていた。おそらく先ほどの魔王が落としたのだろうと唯は確信した。しゃがんで拾い上げた直後、魔王の携帯に似つかわしくないマヌケな着うたが土手に響いた。

唯「わわっ! 鳴ってる。どうしよう。勝手に出たらまずいよね。でも、この歌ちょっと恥ずかしいよ……」

チーズタルトーをやーいてたさぁ~ん♪ あ~まい、あ~ま~い♪ 僕のこ――ピッ

唯「もしもし?」

社長「根岸テメェ何処ほっつき歩いてんだこのファック! とっととあたしのコカンをナイアガラにするような曲を作ってこいって言ってんだろうが短小包茎インポ野郎! 腐抜けたまま帰ってきやがったら目玉をくり抜」

ピッ

唯「はわわわわっ」

電話の相手は魔王以上に恐ろしい何かだった。

10: 2009/10/18(日) 20:30:00.71
~よくじつ!

根岸「やっちゃったな~。まさか携帯落としちゃうなんて。昨日の土手を探しても無いや……。とりあえず、ダメ元で交番にでも届いてることを祈ろう。すいませーん」

ズンズンズン

根岸(あれ? この曲はDMCのアルバム「魔界遊技」のだ)

警官「どうかしましたか?」

根岸(ゲッ! この警官は!)

警官「おや、君は確かだいぶ前に財布を落とした子じゃないか。またなにか落とし物かい?」

13: 2009/10/18(日) 20:37:34.90
根岸「は、はい。あの、携帯の落とし物届いてませんか」

警官「ちょうど今朝方ひとつ届いてたんだよ。これかい?」

根岸「ああっ! そ、それです。よかったぁ」

警官「よかったね。ギターを持った可愛い女子高生が届けてくれたよ。じゃあ受け取りの用紙だけ記入してくれるかな」

根岸「はい。わかりました」

カリカリ

警官「はい、結構です。じゃあコレ携帯ね。あ、そうそう。その女子高生からこれ預かっているんだ」

根岸「封筒? なんだろう」
プルプルプル、ガチャ
警官「はい、もしもし。ナニ? 引ったくり? わかりましたすぐ現場に向かいます」

根岸「あ、じゃあ僕はこれで……」

警官「おのれクラウザーめ! なんたる非道! 今日こそ捕まえてやるぞー!」
ガラガラッ、バタン!
根岸「行っちゃった。もうあの人に関わるのは止めよう。ロクなことにならないよ。根は良い人なんだけどなぁ」
カサッ
根岸(中身、なんだろ?あっ、これって)

根岸「ライブのチケットだ」

14: 2009/10/18(日) 20:39:51.10
~某所の音楽スタジオ

律「どうしたの唯!? 昨日までのスランプが嘘みたいじゃん」

澪「うん。バッチリだったよ。一回もミスは無かった。これなら大丈夫だろう」

紬「音にパワーが宿ってるっていうか、全身からエネルギーを放出してるっていうか、とにかくすごかったよ」

梓「たった一日でどうしちゃったんですか?」

唯「えへへー、魔王さんにコーチしてもらったんだ」

律(……新手の宗教にハマったか?)

17: 2009/10/18(日) 20:43:25.25
~ライブ当日

律「もうすぐ開演だけど、みんな準備はいい?」

澪「あ、ああ。だけど、流石に緊張するな。手が震える」

梓「チケットは当日分も完売。箱は満員みたいですよ」

紬「これだけ大きなライブハウスは初めてだもんね。プレッシャーも相当なものね」

唯(魔王さん、来てくれたかなぁ)

~ライブハウス前

和田「よお、お待たせ根岸。お前がプライベートでメンバー誘うなんて珍しいな。つか、社長かなりブチ切れてたぜ。早めに詫び入れとかないと後が怖いぞ」

根岸「……そうだね。着信履歴が100件以上なんて初めてだよ。全部社長からだけどね。物騒なメッセージばっか入ってたし」

和田「しかし、メタルじゃない音楽なんて久しぶりだな。ガールズバンドかぁ。目の保養にはなりそうだな」

根岸「そろそろ時間だから入ろうか」

西田「……JKアワビ」ギィィイイ

26: 2009/10/18(日) 21:20:06.75
~ほんばん!

時間通りに幕が上がり、けいおん部のライブは始まった。しかし、会場は冷え切っていた。このライブハウスは由緒あるバンドたちの登竜門とも言える場所で、ここに来る客たちは皆、音楽関係者か長年ここの出身である有名バンドを支えてきたファンたちだ。耳は当然肥えている。
ライブとは、演奏、歌唱、パフォーマンスを総合して初めてエンターテインメントになる。
がむしゃらに若さだけをぶつける彼女らには、小手先の技術すらまだ未熟。音楽を愛する客たちも、観賞する姿勢に一切の妥協は無かった。
それが客側からの最大限の誠意ではあるが、彼女らの初陣には些か辛い洗礼であった。

澪「どうしよう、律。会場を暖めないと。このままじゃ皆がプレッシャーに潰されちゃう」

律「そ、それはそうだけど……でも」

メンバー内にも動揺が走る。その様子は当然、客側にも伝わっている。
いくら女子高生だからと言って金を取ってステージに立っている以上、逃げなど許されるわけはない。もはや意気消沈。だが、ただ一人は諦めていなかった。

28: 2009/10/18(日) 21:22:22.50
ギュイィィイインッ!

激しくかき鳴らされるギブソン。小手先の技術をすべてかなぐり捨て、情熱だけ込めた力技の演奏。メタル風にアレンジされているが、間違いなくこれは「Don't say "Lazy"」のイントロだった。

唯「まだまだ、ライブはァ……これからだあああああ!」

風向きが、変わった。

いつもより力強くドラムを叩く腕が
キーボードの上を華麗に走る指が
地の底から沸き上がるようなベースの重低音が
全体の音に新たな息吹を吹き込むリズムギターが

今、ひとつになった。

33: 2009/10/18(日) 21:33:04.42
澪「Please Don't say "You are Lazy"!!」

かつて無いほどのメンバーの一体感が、会場のボルテージを引き上げた。

客「うおおお! すげーぞあの女子高生たち!」

客「ギターの娘が他のメンバーを生き返らせやがった!」

場数を踏んだベテランでさえ、一度冷めた会場を暖めるのは至極至難。その氏線を唯は、見事に越えて見せた。後は飛べるとこまで飛ぶだけだ。その翼は、既に彼女たちに備わっている。

澪「次の曲、いきます。『翼をください』」

箱の熱気は最高潮。オーディエンスを味方につければ、ライブを制したも同然。
唯は持てる情熱をすべてギー太へと注いだ。しかし、今まで酷使してきた腕は情熱だけで動かすには限界だった。

唯「どんどんいくよ。次の曲――痛っ!」

唯の手から、ピックが落ちた。

35: 2009/10/18(日) 21:39:47.38
律「どうしたの!? 唯!」

梓「大丈夫ですか!?」

澪「腕の炎症がヒドいな。これ以上は厳しいかも知れん」

紬「とりあえず、一旦楽屋に戻ってアイシングしましょう。さあ、捕まって」

唯「ありがとうムギちゃん。でも大丈夫だから。言われたんだ。腕が千切れる覚悟でギターを引けって。まだいけるよ。まだ、やれるよ」

律「バカ! 腕が使い物にならなくなったらギターどころじゃないでしょう!」

唯「……りっちゃん」

???「そこのデコの言う通りだ」

37: 2009/10/18(日) 21:45:49.92
けいおん部一同「!!」

ステージに現れたのは異形の者。禍々しいギターを携えた悪魔の中の悪魔。メタルモンスター、ヨハネ・クラウザーⅡ世だった。

クラウザーⅡ世「貴様の想いが我を呼び寄せた。ここは我に任せてしばらく休むがよい」

客「うおおおおっ!クラウザーさんが出てきたぞー!」

客「なにがどうなってやがるんだー!?」

梓「ヨハネ・クラウザーⅡ世ですって!?」

澪「知っているのか、梓」

紬「ええ、聞いたことがあります。メタル界最強のバンド、デトロイト・メタル・シティのボーカリストで、メタルの祭典、サタニック・エンペラー制覇や東京タワーを公然レOプするなど築いた伝説は数知れず。
そして極めつけはあの禍々しい赤いギター。あれこそ、伝説のメタルシンガー、ジャック・イル・ダークを倒した者の証。つまり、彼が今現在で世界一のメタルシンガーです」

紬「そんな凄い人……いえ、悪魔がなんでここに」

律(デコとか言うなし)

40: 2009/10/18(日) 21:50:44.04
唯「悪魔さん、来てくれたんですね」

クラウザーⅡ世「ああ、だが存外に苦戦しておるようだな」

唯「最後に一曲、一緒に演奏しませんか?」

クラウザーⅡ世「……腕が使えなくなってもいいのか?」

唯「腕が千切れる覚悟で弾け。そう教えてくれたのは悪魔さんです」

クラウザーⅡ世「その意気や良し!我が腕を使わずともギターを弾く術を教えてやるわ。聴け!『ふわふわ時間~SATUGAI-MIX~』」

42: 2009/10/18(日) 22:04:57.25
額に殺の人「これはまさか……出るのか、出てしまうのか」

ギョリギョリギョリ!!

額に殺の人「出たー!『唯の歯ギター』だァ!」

唯の髪を掴み、歯をジャックのギターへ押し付けてかき鳴らすクラウザー。女子高生と伝説のギターに対してこの扱い。まさに悪魔の所業である。

更に、ベースに新しい音が加わった。澪の何倍も上手い。ただそれだけでこれといった特徴も面白みも無い上手いだけの演奏。澪の後ろから炎が上がったところで、ようやく音の主がわかった。

客「ジャギだー!澪の後ろで火を噴きながらベースを弾いてるぞー!」

鼻チェーン「す、すげぇパフォーマンスだ。人があんなに近くにいるのに火を吐くなんて。雌豚が一匹チャーシューになったところで何の問題も無いってことか」

次に客が見たものはとても異様な光景だった。

客「見ろ! ドラムの娘の手が四つあるぞ!」

四本の腕で四本のスティックを操る律の姿を見たのだ。

額に殺の人「いや、よく見ろ。あの娘の後ろにいるのはカミュさんだー!」

律「ちょっ、ちょっとなによアンタ……はぁぁあんッ!」

客「うおおおー!ドラムのスティックを捨てて律のてっぺん(乳首)を摘んでるぞー!」

45: 2009/10/18(日) 22:08:53.31
軽と重。五人の天使と三人の悪魔。陰と陽の異色のセッション。
相容れぬ二つの存在だが、確かに彼らの心は一つになっていた。
神懸かり的なまでに激しいギターとクラウザーのコーラスが唯の背中を押す。

「頑張れ。まだやれる。お前ならやれる。諦めるな」

彼が発するのは汚く卑猥な言葉の羅列だったが、唯は自分を励ます確かなものを感じていた。
それに気づけた時、ステージから見える景色が違って見えた。

唯「ふわふわターイム♪」

48: 2009/10/18(日) 22:16:38.31
豚「オゥオゥオゥ!」
クラウザーⅡ世「さぁ唯! 豚を踏め!汚物のよう蔑んだ目で踏むんだ」
ギュムゥゥゥ
豚「オ、オ、オフゥ~」
客「豚のヤツなんて満足そうな顔をするんだー!」
客「つーか、あの駄豚いつからいたんだー!」

クラウザーⅡ世「さぁて、仕上げた!」

額に殺の人「出るぞ。見たもの全て呪われる恒例のアレが」

ジャギ「ディー!」
クラウザーⅡ世「エム!」
唯「えっ、きゃぁぁあ!」
カミュ「……シー」
客「出たァー!地獄の人文字だー!クラウザーさんが唯ちゃんを、親が小さい子共をおしっこさせるみたいなポーズで無理やりM字開脚させてるぞー!」
客「そーか!唯はしまパンだったのかー!」

こうして、けいおん部の晴れ舞台は終わった。

~翌日。デスレコーズにて

社長「ヒャッハー根岸! 清純派ガールズバンドをブッ潰すなんてやるじゃねーかー!コカンが濡れ過ぎて事務所が浸水するかと思ったわ!」
和田「流石はメタルモンスター根岸だぜ」
根岸「……ゴメン、唯ちゃん」
西田「もしもし、言われた通りにちゃんとデコにもローション塗ってるだろうな?」ギィィイイ

おしまい。

51: 2009/10/18(日) 22:20:26.80

52: 2009/10/18(日) 22:23:36.23
支援してくれた方々、見てくれた方々、ありがとうございました。
実のところ、けいおん見たことありません。ウィキで調べたり、けいおんSSを見て何となくのキャラ設定で書いてました。
機会があれば、今度はちゃんとけいおん見てから書いてみたいと思います。
では、次回は
ジャガー「俺がけいおん部特別顧問のジャガー淳一だ」
でお会いしましょう。たぶん書きません

53: 2009/10/18(日) 22:24:43.07
>>52
さあ早くジャガー編を書け嫌書いてくださいお願いします

引用元: 唯「ですめた!」