1: 2013/09/12(木) 20:36:05.23
 モバマス、佐久間まゆのSSです
 少しのあいだ、お付き合いいただければ幸いです

 【モバマス】「幸子、俺はお前のプロデューサーじゃなくなる」
 と、同じ世界観の話です

2: 2013/09/12(木) 20:37:24.73
「本日は、佐久間まゆさんにお越しいただきました。宜しくお願いします」

 ――宜しくお願いします。

「佐久間さんは、立ち振る舞いも、仕草もしっかりされていて、大人の女性といった感じです」

 ――実感はないんですけど、もしそうだとすれば、素敵な先輩方に囲まれているお陰だと思います。

「読者モデルから専属モデルの座に駆け上がったということで、ファンの喜びもひとしおでしょうね」

 ――応援いただいたファンの方々には、本当に感謝しています。

「ではまず、ご家族の構成を教えていただけますか」

 ――両親以外には、小学生の妹と弟が一人ずつです。

「妹さん、弟さんとは、けっこう、年が離れているんですね」

 ――手のかからない、できた子たちです。仲も良いですよ。

「では、一緒に休日を過ごされることも?」

 ――妹とは原宿や渋谷に服や小物を買いに行きますよ。お洒落にうるさい年頃ですからね。

 弟とは、美術館や水族館に出かけますね。この子は芸術の分野に興味があるみたいです。

「素敵なお二人ですね。ところで、佐久間さんのお住まいはどのような?」

 ――閑静な住宅街、とでも言うんでしょうか。二階建てで、洋風の家に住んでいますよ。

 母がガーデニングに凝っていて、庭には色とりどりの花が咲いているんです。

「是非、拝見してみたいものです。そういえば、佐久間さんはお料理が趣味と聞きましたが?」

 ――自慢できるほどの腕前ではありませんけど、休日には母の代わりに食事を作ることもありますね。

 母の友人にパティシエの方がいるんですけど、最近、ご指導いただいて、お菓子作りに凝ってます。

「スイーツですか。流行りですものね」

 ――実は、本日、自作のお菓子をお持ちしたんです。よろしければ、いかがですか。

「そんなサプライズが。気をつかっていただいて、ありがとうございます」

 ――素人仕事で、お恥ずかしい出来なんですけどね。

「ご謙遜を。これは、マカロンですね。では、失礼して……美味しいです」

 ――ありがとうございます。

「この雑誌を読まれている、佐久間さんのファンの方には垂涎の一品ですよ」

 ――お上手ですね。

「いえいえ、ファンの方の総意で間違いありませんよ」

 ――(笑)

3: 2013/09/12(木) 20:38:39.53
 インタビューを終えたまゆは、しぼりかすみたい。

 カフェの窓から射し込む光に頭がくらっとして、思わず表情を歪めてしまいます。

「まゆ、気を抜くなと言ったはずだ。自分が商品だということを忘れるな」

 脱色した金髪に、サングラスを掛けた姿のディレクターが、まゆに耳打ち。

 無言であごを引くと、彼は満足したように頷いて、スタッフさんたちの輪の中へ。

 日焼けした浅黒い腕で、インタビューのメモをしきりに指差し、何事かと騒ぎ立てています。

 おおかた、この言葉が気に食わないから書き直せとか、そういうこと。

 自分のインタビューがいじくり回されるのを、まゆは他人事みたいに見ているだけで……。

 その時、瞳の中に、ふっと、幻の少女の姿が浮かび上がります。

 その子はディレクターに身を寄せて、彼らの輪の中へとごく自然に滑り込む。

 苦い思いが込み上げて、まゆは唇を噛み締めます。

 くるりと、幻の少女が振り返り、まゆに向かって微笑んで。

 ぞくりとした。

 その顔は、まゆ自身とうりふたつ。

 まゆと同じ顔をした、だけど、まゆの知らない佐久間まゆ。

 その子がそこにいるだけで、誰もまゆを見ようとしません。

 まゆの方が幻みたい。

 あなたは、佐久間まゆじゃない。

 心の中で叫んでみたけど、その子はまゆよりずっと、可愛く、綺麗に、笑ってる。

 ぎりっと奥歯を噛みました。

 まゆは、ここにいるのに。

 誰か、気づいて。

 まゆを見て。

4: 2013/09/12(木) 20:40:48.36
 ディレクター主催の夕食会は、丁重にお断りしました。

 思ったよりも疲れが溜まっていたみたいで、帰りの電車で眠ってしまったみたい。

 最寄り駅を告げるアナウンスで目覚めて、慌てて飛び出せば、もう辺りが薄暗い。

 駅前のスーパーに行き、ポケットから折りたたんだチラシを取り出します。

 赤マジックで囲んだ食材たちを、次々と買い物かごに放り込み。

 にわかに精肉コーナーの辺りが騒がしくなり、まゆは目ざとく方向転換。

 バックヤードから、お肉のパックを載せた台車が出てきました。

 目をぎらつかせ、集まってくるおば様方に混じり、まゆはタイムセールに勝負を挑みます。

 押し合い、へし合いされた末、お肉のパックを片手によろよろと戦場から逃げ出しました。

 会計を済ませて、バス停の列の最後尾へと。

 バスに揺られ、辿り着いたのは、延々と田んぼが続くのどかな停留所。

 夕陽に焼かれ、ときおり汗を拭いながら、田舎道を歩きます。

 指に食い込む買い物袋の重さが辛くなり始めた頃、ようやく家が見えてきました。

 強風一つで崩れ落ちそうな、木造のぼろぼろ一軒家。

 立てつけが悪くて、動かすのが一筋縄じゃいかない扉を、右隅を蹴って開けました。

「ただいま」

 玄関で靴を脱ぐのもそこそこに、どたどたと廊下を駆けてくる音が。

「うわぁぁん、まゆ姉ちゃぁん!」

 顔を真っ赤にした弟が、垂れた鼻水も気にならない様子で抱きついてきます。

5: 2013/09/12(木) 20:41:16.12
「どうかしたの?」

 膝立ちになり、鞄から取り出したティッシュで、弟の鼻を拭います。

「あのバカが、僕のアイスを食べたんだ。と、とと、取っておいたのに!」

「あらあら、可哀想に」

 遅れて、廊下の向こうに現れた妹が、不満そうな顔つきで歩いてきます。

「今の話、本当なの?」

「いらないものだって思ったの! この子、おやつの時間に食べなかったし!」

「まゆ姉ちゃんに、あげるつもりだったんだ!」

 まゆは弟の頭をそっとなで、妹と視線を合わせてみます。

「ちゃんと確認を取るべきだったね。悪気がないのは分かったけど、謝らないとだめよ」

 すると、ほら。

 唇を尖らせていた妹が、急に泣きそうな顔になってうつむきます。

「……ごめんなさい」

「素直に謝れる子、まゆは好きよ。素敵なお姉ちゃんになってあげてね」

「うん……」

 台所に向かうまゆの後ろを、妹と弟がついてきます

「まゆ姉ちゃん、おなかすいた。今日のごはん何?」

「ミンチのお肉が安かったから、ハンバーグにするわ」

「あのう、学校の宿題、難しくて……後でお姉ちゃんに教えてほしいんだけど」

「いいわよ。ご飯食べたら部屋で待ってて」

「僕、宿題、やるの忘れてた……どうしよう。先生に怒られる」

「仕方ないわね、お姉ちゃんが手伝ってあげるわ。でも、これっきりよ」

「うん、ありがとう!」

 まゆはエプロンを着ると、時計をちらりと見ます。

 もう、結構な時間です。二人には、悪いことをしてしまいました。

 何気なく居間を振り返れば、二人が、玩具を手に、笑いながらじゃれ合っていて。

 まゆはまぶしいものを見るみたいに目を細め、たまねぎの皮を剥き始めます。

6: 2013/09/12(木) 20:42:50.75
 二人をようやく寝かしつけ、時計の針は間もなく今日の終わりを告げようとしています。

 音を立てないようにふすまを閉めて、台所へと。

 水に浸けたままにしていた食器を洗っていると、ポケットの中で携帯電話が震えます。

 表示された名前を見て、まゆは驚きに目を見開いて。

『親愛なる我が友よ、現世で再び巡り合えた幸運に感謝する』

「……お久しぶりですねぇ。こんばんは、蘭子ちゃん」

 まゆはエプロンを脱ぎ捨てると、台所の床にぺたんと座り込みます。

 壁に背中を預けると、今日一日の疲労が押し寄せて、心地よい気だるさが全身を包みます。

『魔力が充実せし漆黒の夜!』

「ええ、今日は月も綺麗だわ。明かりいらずね」

 台所の窓から見える月は見事な半円で、表面の模様までもがくっきりと見えます。

『我が勘が鈍ったのでなければ……我が友よ、悪意渦巻く現世の瘴気に焼かれたか?』

「そうね……少しだけ、疲れたみたい。でも、大丈夫よ。へこたれてられないもの」

 わずかに気が楽になります。

 お仕事を通して、蘭子ちゃんみたいな子と知り合えたことは幸運でした。

「ところで、こんな時間にどうかした?」

『今宵より、我を縛る因果の鎖が効力を失う』

「もう夏休みなんて、早いわねぇ。私のところも、妹たちの学校も、まだ少し先よ」

『我が友の仮宿は魔力が噴出せし特異点! 傷ついた我が羽を癒すに至上の地!』

「来てくれるの? 明日は、学校だけど、仕事はオフだし、歓迎よ。あの子たちも喜ぶわ」

『二匹の小さき下僕! 我、再会を切望す!』

「夕方頃なら何時でもいいわよ。蘭子ちゃんのことは話しておくから、あの子たちに鍵をあけてもらって」

『我、感謝せり! 悠久の時を生きる我ら、存分に言の葉を交わさん!』

 電話を切ってしばらく、蘭子ちゃんの上機嫌な声が耳に残り、気分が上向きます。

 最近は、仕事が忙しくて連絡できていなかったけれど、元気そうで、嬉しい。

 アイドルと、モデル。歩む道こそ違うけれど、共感し合える部分は多いんです。

 蘭子ちゃんは、奇抜な言動とは裏腹に、素直で、まっすぐな心を持っていました。

 いったい、今、どんなアイドルになってるだろう。

 会うのが楽しみ。

7: 2013/09/12(木) 20:43:26.98
 食器洗いを終えたまゆは、裏の白いチラシとマジックを手に、居間へと。

 机の上に、ラップをかけて並べた夕食の脇に、チラシを置いて。

『お母さん、いつも遅くまで、お仕事お疲れ様です。

 まゆは先に寝ますね。おやすみなさい』

 そう書き残して、寝室に向かう。

 まゆは布団に潜り込む前に、月光に照らされた、妹たちの寝顔を見つめます。

 布団を蹴り飛ばし、おなかを出して眠る妹……おなかが冷えないよう、パジャマを引き、布団をかけます。

 よだれを垂らして眠る弟……柔らかな頬をつつくと、むにゃ、と可愛らしい声が漏れました。

 まゆの口元に、自然と微笑みが浮かびました。

8: 2013/09/12(木) 20:44:50.54
 学校からの帰り道、ディレクターから電話が来ました。

『まゆ、今すぐ事務所に来い。今後の方針について話がある』

「今日は、これから、予定が……」

『お前の予定は聞いていない。言う通りにしろ』

「はい……」

 重い溜め息を吐き出し、まゆは自宅とは反対方向の電車に乗り込みます。

 まゆが所属する芸能事務所は、実のところ、業界でも指折りの大手です。

 そこで働くまゆのディレクターは、豪腕で、自己中心的で、有能な人。

 お金を生み出す術を心得ている人。

 この人についていけば、きっと名を上げられるだろうという確信があります。

 だけど、彼は、まゆが途中で潰れたら容赦なく捨てて行くだろうし、

 まゆがぼろきれのようになったって、何ら思うことなんてないでしょう。

 それが、少しだけ、寂しい。

 いえ……少しでは、ないかもしれません。

 事務所に向かう道すがら、蘭子ちゃんに電話をかけてみます。

「もしもし、蘭子ちゃん?」

『闇に飲まれよ!』

 電話の向こう、妹と弟の騒ぐ声が背景音として聞こえてきます。

「ごめんね、実は急にお仕事入っちゃって……もう少しゆっくりしてて」

『ククク……焦らされるのもまた一興。下僕たちとの戯れを続けるとしよう』

「ありがとう、ごめんね。また連絡するわ」

 事務所に着くと、受付の女性から、第三会議室に行くよう指示された。

「失礼します」

 中に入ると、上座にディレクターが腰かけ、それ以外の席には見慣れない人たちがいます。

 制服姿のまゆは、恐縮しながら、たった一つ空いた席に腰を落とします。

「さて、主役が来たところで、本題に入りましょうか。資料は既に行き渡っていることかと思います」

 ディレクターがサングラスを指で押し上げ、銀歯を見せるように笑いました。

「現在、我が社で専属モデルとして契約している、佐久間まゆのアイドル活動についてです」

9: 2013/09/12(木) 20:46:05.33
 なにそれ。

 思わず顔を上げたけれど、ディレクターの、サングラスに隠れた瞳は別の方を向いてます。

 よく見れば、出席者たちの手元に置かれた資料が、当事者のまゆの席にだけありません。

「まず、佐久間まゆの現状について話をしましょう。資料の五ページを」

 声を失い、呆然とするまゆを、ディレクターだけじゃなく、誰ひとりとして見てません。

「佐久間まゆの主要な支持層は、小学生から高校生までの女性です」

「男性からの支持も低くはないですけど、女性票が圧倒的ですね」

「彼女の個性云々というより、仕事の幅の狭さが、支持層を狭めていると考えます」

 ディレクターに、感謝はしています。

 読者モデルとして、まゆを見出してくれ、まゆのことを高く買ってくれて。

 家計の足しになればと始めた仕事だったけれど、いつしか義務感でなく笑っていました。

 まゆみたいになりたいと、まゆの笑顔に力をもらえたと、雑誌の向こうのファンが言ってくれたから。

 まゆを信じてくれる人たちが、佐久間まゆを、ひとりのモデルにしてくれたんです。

「アイドル活動を通して、新たな分野へ進出し、支持層の拡大を狙うわけですね」

「本来の支持層からそっぽを向かれる危険もあるのでは?」

 だけど、いつからか、おかしくなっていました。

「アイドルには、物語が必要です。この子のようになりたいと、憧れ、共感し、恋するような」

 庭付きの、おとぎ話みたいにメルヘンな家に住み。

 非の打ち所がない家族と、何不自由なく暮らし。

 どこまでも高く、栄光の階段を駆け上がる。

 それこそが、佐久間まゆ。

 まゆではない人たちがつくりあげた幻です。

 今はもう、幻の方が主役みたい。

「佐久間まゆというアイドルを、私が管理し、コントロールしてみせましょう」

 おかしい、こんなの。

 だけど、何も言えません。

 そうして、光の中から滲み出るように、幻の佐久間まゆが現れます。

 その仕草は、優雅で、のびやかで。

 席でひとり縮こまるまゆが、みじめに思えるぐらい。

 ――まゆちゃんみたいになりたい。

 ――まゆさんの笑顔に励まされた。

 まゆを支えてくれるファンの方からの言葉さえ、あの子に奪われてしまったみたい。

 まゆは、何のために、ここにいるんでしょう。

10: 2013/09/12(木) 20:47:41.38
 打ち合わせが終わったのは、もう日が落ちきった頃です。

 蘭子ちゃんに合わせる顔がありません。

 連絡もなしに何時間も待たせて、きっと怒っています。

 もう、帰ってしまっているかもしれません

 今頃、妹と弟は、おなかを空かせて、まゆの帰りを待っている……。

 着信が何件も入っていたけれど、怖くて掛け直せず、電車を乗り継いでいきます。

 息を切らせて田舎道を走ると、ようやく、一軒家が見えてきました。

 家の電気は消えていたけれど、豆粒ほどに小さな、不審な光が見えます。

 煙草をふかす、スーツ姿の若い男性が、縁側に座っていました。

 悲鳴を上げかけ、けれど彼の膝を枕とし、眠る蘭子ちゃんを見て口をつぐみます。

 蘭子ちゃんは暑そうな黒衣を身にまとい、傍らの彼に気を許しきったように脱力しています。

 彼はまゆに気づいたみたいで、懐から取り出した携帯用の灰皿に煙草を入れました。

「初めまして、佐久間まゆさん。俺は、こういう……すみません、立ち上がれなくて」

 名刺を取り出した彼が、膝上の蘭子ちゃんを思い出したみたいに、苦笑します。

 まゆの方から、彼の傍まで歩み寄ります。

 暗がりで見えにくかったけれど、ぱっと見の印象よりもずっと若い。

「芸能プロダクションの、プロデューサーさん、ですか」

 受け取った名刺を、携帯の光で照らします。

「はい。蘭子を迎えに来たんですけど、あなたを待つと言って聞かなくて。結局、この有様です」

 ちっとも迷惑には思ってなさそうな、優しげな瞳で、蘭子ちゃんの髪をそっとなでていました。

「差し出がましいことを言いますけど、女の子の前で煙草というのは、嫌われますよ」

「お恥ずかしい。長く禁煙していたんですが、最近吸わずにはいられない出来事がありまして」

「女性絡みですか?」

「担当アイドルの去就についてですので、まあ、あながち間違ってはいません」

「それも、別の女の子の前で言うのは厳禁ですよ。蘭子ちゃんがおねむで、助かりましたねぇ」

 冗談めかして微笑むと、彼もまた微笑み返してくれます。

「読者モデル時代から知っていますが、佐久間さんの笑顔は、やはり魅力的ですね」

 ひどくまっすぐな賞賛に、まゆの心が高鳴って、だけれどすぐにしぼんでしまいます。

 まゆの心の、弱い部分から這い出した、もう一人の佐久間まゆが、にやにやと笑っていて。

 褒められてるのはお前じゃないんだと、幻のくせに主張しているんです。

11: 2013/09/12(木) 20:48:41.31
「幻滅、しましたか」

「はい?」

「モデルの佐久間まゆは、庭付きの豪邸で、家族と優雅に暮らす、完璧な子みたいですから」

 口にしてみて、自分の卑屈さに心が冷え込むよう。

 無言のままでいる彼の視線が痛くて、思わず顔を背けてしまう。

「佐久間さん、一度、家の中に戻ってはどうでしょう。荷物も邪魔でしょうしね」

 まゆは頷いて、気まずい空気から逃れます。

 扉を開ければ、しんと静まり返った家が待っていて。

 まゆがいない間、あの子たちは、どうしていただろう。

 食事はおろか、掃除や洗濯、洗い物やお風呂だって、ひとりではできない子たちなのに。

 居間に足を踏み入れて、深呼吸をひとつしてから、電気をつけます

「えっ……」

 いつも、玩具が散らばり、雑然とした居間が、掃除した後であるように綺麗になっていました。

 テーブルの上には、大皿に入ったカレーライスと、小皿のサラダとが、ラップ掛けにされています。

 信じられない思いで、まゆはテーブルに近づきます。

 見れば、カレーライスの具材も、野菜も、大きく不恰好で、包丁の扱いに慣れてない人が切ったみたい。

 大皿の下には、二枚のチラシが挟み込まれていました。

『まゆ姉ちゃん、お仕事おつかれさまです。

 いつも、ぼくたちのためにがんばってくれてありがとう。

 まゆ姉ちゃんは、ぼくのじまんのお姉ちゃんです』

『いつも、優しくて、きれいで、いっしょうけん命なお姉ちゃんが、大好きです。

 めいわくかけてばかりで、ごめんなさい。

 お姉ちゃんみたいな、立派なお姉ちゃんに、私もなります。

 体に気をつけて、お仕事がんばってください』

 まゆは二枚のチラシを拾い上げ、壊れ物を扱うみたいに胸へと押しつけます。

 寝室に向かって歩いていき、ふすまを開けました。

 暗がりの中に、小さなふたりが、眠っています。

 非の打ち所のない子たちというわけでは、ないけれど。

 本当のまゆを見てくれる、大切な家族。

 まゆは、眠る二人の頬に、そっと指先を触れさせました。

「ありがとう……お姉ちゃん、頑張るから」

 お仕事を始めてから、はじめて流す涙が、ぽたりと布団を打ちました。

12: 2013/09/12(木) 20:49:54.37
 家を出たまゆに、外で待っていた彼が、全てを見透かすみたいに笑います。

「素敵な、家族じゃないですか」

「はい……」

 かすれた声で、頷いて。

 瞳の奥が熱いです。

 会ったばかりの人に無防備な姿をさらすなんて、おかしいって思うのに。

 感情の高波が、まゆの目から新たな涙をこぼれさせ、手にしたチラシに染みをつくります。

「もう少ししたら、まゆは、モデルから、アイドルになります。そう、決まりました」

 彼は少なからず驚いたみたいです。

「おめでとう。無責任だって思うかもしれないけど、佐久間さんならきっと成功する」

 まゆは無言でうつむきます。

 きっと、成功、しますよ。

 ディレクターがつくりあげた、幻ですから。

「アイドルっていう立場が、佐久間さんは、不満かな」

「そんなこと、ありません。多くの人に笑顔を与える、素晴らしい仕事だと思います」

 彼は目を細めて頷くと、いまいちど、蘭子ちゃんの髪をなでます。

「この子は、本当に楽しそうによく笑う。アイドルであることが、蘭子に笑顔を与えているみたいに」

 彼の声は、自信に満ち溢れていて。

「蘭子の笑顔は多くの人々を魅了すると、確信してます。今はまだ無名ですけどね」

 蘭子ちゃんの持つ可能性を誰より信じてるんだっていうのが、伝わってきた。

「雑誌で見た佐久間さんも、ここにいるあなたも、凄く魅力的な表情をしていました」

 まるで、幻の向こう側から、まゆを見つめるような眼差しです。

「だから、どうか、自分を見失わないでください」

 はっとします。

 気がつけば、幻の佐久間まゆが、まゆを嘲笑うみたいに指を振っていて。

 結局、頷くことが、できませんでした。

13: 2013/09/12(木) 20:50:52.86
 学校が夏休みに入って、間もない頃。

 佐久間まゆがモデルからアイドルに転向すると、大々的に報じられました。

 取材の依頼が次々と舞い込み、先物買いみたいな仕事がいくつも飛んできて。

 ディレクターの手で、まゆのスケジュールは完璧に管理されます。

 そうして迎えた初めてのステージで、まゆは大勢のファンの前に立ちます。

 百貨店の一階に築かれた特設会場で、衣装で着飾ったまゆは、スポットライトを浴びました。

 数歩先には、まゆと全く同じ衣装を身にまとった、もう一人のまゆが立っています。

 だけど、構いません。

 音楽が鳴り始め、まゆは、幻を振り払うみたいに精一杯の思いを歌に乗せる。

 体が引き裂かれてしまわんばかりに、豪快なダンスを披露します。

 自分の全てを絞りつくすみたいに。

 こうすれば、いつか、幻の背中に手が届くはず。

 今までに奪われたものを、取り返してみせると。

 そんな思いで、歌い、踊った、ステージでした。

 だけど、舞台裏に戻ったまゆを待ち受けていたのは、憤怒の形相をしたディレクターです。

「まゆ! 何だ、今のステージは!」

「え……」

「粗雑で醜い、お前の歌と踊りだ! あの必氏で泥臭い姿を、佐久間まゆのファンが見たいと思うのか!」

 奈落の底に落ちていくみたい。

「まゆはただ、自分らしく……」

「自分らしさなど不要だ! お前を通して見る、美しい幻にこそ、人々は熱狂する! お前は夢を見せる装置であればいい!」

 びしりと、心にひびが入る音がしました。

 その巨大な隙間から、するりと、幻の佐久間まゆが這い出てきた。

『何も疑問を持たない、お人形様のままでいれば、よかったのにねぇ?』

 まゆはよろよろと後ずさりして。

 心が軋みます。

 まゆは……もう。

14: 2013/09/12(木) 20:51:39.67
「闇に飲まれよ!」

 扉が勢いよく開いて、花束を抱えた蘭子ちゃんが飛び込んできます。

 呆然とするまゆの胸に、色彩豊かな花束が押しつけられて。

「何だ、お前は!」

「ククク……我を知らぬとは、瞳を持たぬ者か。高貴なる我が真名を聴くがよい。我、冥府より――」

 遅れてまた扉が開いて、今度は蘭子ちゃんのプロデューサーが入ってきました。

「申し訳ございません、蘭子がご迷惑をお掛けしまして。この子がどうしても、佐久間さんに花束を贈りたいと」

 彼が差し出した名刺を、ディレクターは横柄に取り上げて、ふんと鼻を鳴らします。

「うちのまゆと、どのようなご関係で?」

「我らは前世より深い絆を築きし――」

「蘭子は、ご友人として、佐久間さんによくしていただいております」

「ほう、友人ね……まゆ、本当か?」

 頷くと、ディレクターは、うさんくさそうな目で蘭子ちゃんを見ました。

 そんな目で、蘭子ちゃんを見ないで。

 そう思うのに、まゆは……。

「失礼ついでに……実は、折り入ってお願いしたいことがありまして、ご挨拶に参りました」

 プロデューサーさんは、鞄の中から冊子を取り出します。

「今度、秋葉原のカフェで、新人アイドルによるライブイベントがあります。小規模なイベントではありますが、取材も入ります。そして……これは私情になりますが、蘭子にとっては初めてのステージです。もし、よろしければ、佐久間さんにもご出演を願えないかと」

 心が高ぶったのは一瞬のこと。

 ディレクターは、下らない仕事だと一蹴するに、決まってますから。

「いいでしょう」

 思わずえっと声を上げました。

「まゆを出しますし、小規模なイベントだというなら我々がスポンサーとして出資しましょう。まゆと懇意にしてくれている、その子の門出を、盛大に祝おうじゃないですか」

「ありがとうございます! 本当に……感謝致します」

 まゆはディレクターの横顔を見つめ、そうしてから、目の前の蘭子ちゃんを見た。

 蘭子ちゃんの瞳が喜びに輝き、うっすらと涙さえ浮かんでいます。

「我、光を得たり!」

 まゆたちは、抱き合います。

 少し前、ディレクターにかけられた辛辣な言葉なんて、消えてしまったよう。

15: 2013/09/12(木) 20:52:13.70
 ディレクターは、約束通り、イベントをスポンサードし、資金を回してくれたみたいです。

 会場の規模が拡大し、取材の数も桁違いに増えるそうです。

 大勢の人がまゆたちを見に来てくれる、そのことが純粋に嬉しい。

 電話を掛ける度に、蘭子ちゃんは、緊張であたふたしていました。

 だけど、口調からは確かな自信がうかがえて……。

 まゆも、負けてはいられません。

 ライブイベントに備えて、今まで以上に、歌と踊りのトレーニングに励みます。

 まゆには専属のトレーナーさんがついて、マンツーマンでみっちりと。

 ファンの方にみっともない姿は見せられないから、手を抜くことなく全力で。

 その日は特に練習が厳しくて、全てをこなすともうぼろ雑巾みたい。

 今にも倒れそうな体に鞭打って、もうろうとした意識で家に帰り着きます。

 居間では、妹と弟が、夏休みの宿題に真剣な顔で向かっていました。

 まゆは足音を立てないよう、静かに台所に入ろうとして。

「まゆ姉ちゃん、おかえり。洗い物と後片付けは僕がやるからね」

「おかえり、お姉ちゃん。お風呂沸かすのと、後の掃除は私がやるわ」

 振り返ると、二人はまゆを見もせずに勉強の手を動かしている。

「ありがとう……助かるわ」

 ここから見える二人の背中……。

 こんなに、頼もしかったっけ……。

16: 2013/09/12(木) 20:53:25.81
 イベント当日、開始まで随分時間があるのに、会場周辺は大混雑していました。

 ディレクターの車で店舗前まで乗りつけると、何やら騒がしいです。

 警備の人と、押し問答をしている人たちがいて。

 蘭子ちゃんと、プロデューサーさんだ。

「そんなはずがない。確認をしてください!」

 プロデューサーさんが、声を荒げて警備の人に詰め寄っています。

 気合の入った衣装を着た蘭子ちゃんが、戸惑ったような顔をしています。

「どうか、しましたか」

 まゆの姿を見て、プロデューサーさんの興奮は少しおさまったようです。

「出演者の中に、蘭子がいないと言うんです。だから、通せないと。何かの伝達ミスだと、思うんですが」

「分かりました、すぐに……」

 ディレクターに誤解を解いてもらおう。

 振り返れば、ディレクターはもう目の前まで来ていて、まゆの腕をつかみます。

「行くぞ、まゆ」

「あのっ、蘭子ちゃんたちが、出演者って伝わってないみたいで……」

 サングラスの向こうの、ディレクターの瞳が、暗い輝きに満たされたように見えました。

「誰だ、そこの薄汚い奴らは」

「え?」

「まゆ、さっさと来い」

 痛いほどに強く手を引かれて、まゆは店舗へと連れられていきます。

「蘭子ちゃん!」

 伸ばした手の先に、目を見開いて立ち尽くす蘭子ちゃんの姿がありました。

 信じられないって顔をして、まゆをじっと見つめる、その瞳から……。

 強引に店舗内へと連れ込まれたまゆは、ディレクターの手を振り払います。

「どういうことですか! 蘭子ちゃんが、今日のことを、どれだけっ……」

「あのような、無名で、ふざけた輩は、お前の歩む道に必要ない」

 血が滲みそうなほどに唇を噛み締めて、ディレクターを睨みます。

「割り切れ。そして進め。俺がお前を頂上まで導いてやる。それこそが、お前を信じるファンに唯一報いる道だ」

17: 2013/09/12(木) 20:54:36.96
 まゆに背を向け、ディレクターが去っていきます。

 取り残されたまゆは、膝を抱えてきつく目を閉じました。

 それでも、外では、まゆたちのライブを待つファンの声が、止むことなく聞こえていて。

 逃げることなんて、できません。

 まゆが思い悩む間にも、時間はどんどん過ぎ去っていって。

 蘭子ちゃんを置き去りにしたままに、開演の時間を迎えてしまいます。

 一組目、二組目、と、ライブを終えた出演者たちが楽屋に戻ってきます。

 ここには、蘭子ちゃんがいるはずだったのに。

「まゆ、時間だ。誰もがお前に期待している。俺たちを失望させてくれるな」

 ディレクターに立ち上がらされ、まゆはステージへと進んでいきます。

 光射し、歓声が噴き上がる場所に、まゆは他人事みたいに立っています。

 気がつけば、まゆの前には、輪郭をはっきりさせた、幻の佐久間まゆ。

 音楽が流れ始め、まゆはマイクに向かって歌い出します。

 声援が、ひどく遠いです。

 まゆを呼ぶ声は、違う誰かを呼んでるみたい。

 みたいじゃなくて、実際、そうなんでしょう。

 だってほら、まゆじゃない、幻の佐久間まゆは、あんなにも、綺麗で、輝いて。

 誰も、まゆのことなんて、見ていない。

 なんて……からっぽ。

18: 2013/09/12(木) 20:55:51.80
「まゆ姉ちゃんーッ!」

 たくさんの歓声に混じって聞こえた、確かな声。

「お姉ちゃん、頑張れーッ!」

 幻のこちら側へと届く声。

 それが、虚勢を張っていた心に、とどめを刺したみたい。

 まゆの喉から声が途絶えて、歌が止まります。

 ……そして、踊りが止まり。

 音楽さえ止まり。

 ざわめきが広がり。

 ついには、静寂。

 まゆはマイクをきつく握り締めたまま。

 もう、喉からは、何も出てきません。

 ……おしまいです。

 すべて。

「我が友よ!」

 顔を上げる。

 観客席に、ひときわ目立つ格好をした、蘭子ちゃんがいました。

「我、冥府より、幾星霜の時を越えて降臨せし、真の魔王、神崎蘭子!」

 顔を真っ赤にして、声を張り上げて。

「我、友との絆を信じし者なり!」

 まゆを指さす、その指は、震えてます。

「悪辣な敵の奸計に、我はかからぬ!」

 まゆは……馬鹿です。

「前世より因果の糸で結ばれし我らを引き裂くことなど、神にも叶わぬ!」

 瞳から、熱いしずくが、こぼれて。

「我は無敵! 我の身を案ずるには、及ばぬ! 故に、だからっ……!」

 蘭子ちゃんは、天に向かって咆哮するみたいに。

「だから、まゆさん、頑張れーッ!」

 全身に血が巡ったみたい。

 幻の佐久間まゆが、唖然とした顔で、まゆを振り返っていました。

 まゆは、不敵な笑みを浮かべて。

 幻の鼻面を指さして。

 弱い自分を叩き潰すみたいに、言ってやる。

 消えちゃえ。

 それだけで十分。

 幻のまゆは、呆気なく、ばらばらに砕け散ります。

 まゆは、一歩を踏み出し、観客席を見渡すと。

 もう大丈夫だというように、マイクを高々と突き上げて。

 ディレクター曰く、必氏で、泥臭い、まゆの姿を。

 本当の自分を。

 存分に、披露します。

19: 2013/09/12(木) 20:57:04.80
 ライブを終えて、楽屋に戻ったまゆを、ディレクターが待ち受けていて。

「ディレクター、まゆはプロダクションを辞めます。最後まで、身勝手で、ごめんなさい」

 殴られることも、覚悟していました。

 だけれど、ディレクターは、サングラスを外して。

 ひどく寂しそうな目で、まゆのことを見下ろして。

「今までで、一番、まゆが、綺麗で、輝いていたステージだった。……悔しいが、それが答えということだろう」

 それだけ言って、ディレクターはまゆに背中を向けます。

 その大きな背中に、まゆは、深々とお辞儀をします。

 外に出た途端、蘭子ちゃんが、まゆの胸に飛び込んできてくれました。

 涙で顔をぐしゃぐしゃにした、蘭子ちゃんの背中を、ぽんぽんと叩いてあげます。

「ありがとう……蘭子ちゃん。信じてくれて」

 何度も頷く蘭子ちゃんの後ろから、プロデューサーさんが歩み寄ってきます。

「佐久間さん、素晴らしいステージだった。アイドルの真髄、見せてもらったよ」

「ありがとうございます。まゆはもう、アイドルじゃなくなりましたけどね」

 思いきり面食らう彼の顔を見て、おかしくなって笑ってしまう。

「ですけど、プロデューサーさん、まゆは、アイドルに未練がいっぱいなんです」

 彼を見ながら微笑んだ。

 幻の向こうにいた、本当のまゆを見つけてくれた、彼になら。

 まゆを委ねてみても、いいって、思えました。

 この気持ちは、もしかして。

 いえ……まさか、というやつでしょう。

「もし、よろしければ、まゆをアイドルとして導いてくれませんか?」

20: 2013/09/12(木) 20:58:03.95
 そして、夏はまだ終わりません。

「まゆ、こんな仕事、本当に引き受けていいのか?」

「まゆは新米アイドルなんですから、仕事なんて選んでられませんよ」

「だからってなぁ、顔も出ないし、どうなんだ、これは……」

 渋い顔をしたプロデューサーも、なかなか素敵だって思います。

「前まで、こういう仕事は、耳に入るまでもなく蹴られてたんです。だから、たまには、こういうのも、ね?」

 新しく開店する、コンビニエンスストアのバックヤードで、まゆは可愛らしく首を傾げます。

「そこまで言うなら、止めないさ。それにもう、遅いしな」

「そういうことです」

 まゆの半身は、着ぐるみのウサギに覆われていて。

 今、ウサギの頭を、がぼりと被りました。

 結構、重くて……熱いです。

 ハードなお仕事になりそうです。

 傍らで、携帯電話の鳴る音がします。

「……えっ、乃々がレッスンに来ない? そうですか、すみません……後で、俺から話しておきます」

 電話が切れて、重い溜め息がひとつ。

「どうかしましたかぁ?」

「俺の担当する新人が、レッスンをサボタージュだ」

「病気とか、そういうのでしょうかね」

「あいつは、性格的に、色々な……今度会ったら、ちゃんと話さないと」

「まあ、女の子は、色々ありますからねぇ」

 まゆは一気に興味を失って、訳知り顔で、適当な言葉を返します。

 他の子の話をされるのは、あまり……いえ、とても、良い気分がしませんから。

「まゆ、もし……乃々に会うことがあったなら、先輩アイドルとして、頼むぞ?」

「……考えて、おきますねぇ?」

 まゆは、くすりと微笑んで。

「まあ、でも、少なくとも――」

 まゆは前を向き、つっかえそうになりながら、バックヤードを後にします。

 外では、強い日差しの下、オーナーのおじいさんが、フランクフルトを焼き始めていました。

 まゆは、全身ウサギの姿で、プロデューサーさんの肩を叩きます。

「まゆは、いつでも、お仕事に全力投球なんですよぉ。知ってましたか?」

「ああ、知ってる」

「それでこそ、まゆのプロデューサーさんです」

 着ぐるみの中、まゆは密かに微笑みました。

21: 2013/09/12(木) 20:59:09.72
 以上となります。
 ありがとうございました。

22: 2013/09/12(木) 21:04:48.56

24: 2013/09/12(木) 21:14:59.60
あのウサギ、そうだったんだ……w
今回も乙乙!

25: 2013/09/13(金) 12:50:39.34

引用元: 【モバマス】「まゆ、お前は夢を見せる装置であればいい」