「総武高校のみなさん、始めまして!今回君たちの職場見学を担当することになった嵐山隊の嵐山准だ。よろしく!」
今回も嵐山隊が担当らしい
キャー嵐山隊だー、とかすげー本物だー、とか聞こえる
偽者がいるか
劣化ならいるけど
てか、あー
来ちまったよ
つか逃げられなかった
そう、それは昨日のことだ…
『よう比企谷』
『平塚先生…どうしたんすか?』
503: 2016/03/08(火) 21:39:59.01
『職場見学の件聞いたぞ。なかなか良い解決法だった』
『はぁ』
『これからも頑張りたまえ』
『うっす』
『ところで君はボーダーに行くそうだな』
『そうっすけど…それがどうかしたんすか?』
『職場体験の現場には先生が巡回で訪れることは知っているな?』
嫌な予感がする
『ボーダーは希望者が多すぎてな。いちいち巡回などしてられん、ということで常に先生が一人つくことになった』
『まさか…』
『そう、わたしだ』
なん…だと…
504: 2016/03/08(火) 21:45:43.94
『あぁ、安心したまえ。君たちと常に一緒にいるわけではない。基本的にラウンジというらしい場所にいるからたまに見に行ったり、問題が起こったらすぐ対応する、といった感じだ』
ちょっと安心した
『それにしても…いやー、君は実に健康そうだなぁ。明日病気で休むなんてことはなさそうで良かったよ』
『い、いや…分かりませんよ?もしかしたら急にものすごい重い病気が…』
『サボるなよ?』
『はい…』
ってわけだ
まぁサボると後日提出しなければならないレポートが出せなくなってしまう
そうなるとさらに面倒くさい課題をこなさなくてはならないようだ
ならばサボるよりも来た方がマシか
505: 2016/03/08(火) 21:48:11.05
そして相も変わらずこういうことは嵐山さん達が担当になるのね
いつもいつもご苦労様です
本当に
ちなみに今日は土曜日なので嵐山さん達も授業はない
今この場には総勢約100名近い総武高校の生徒がいる
めちゃくちゃ多いな
雪ノ下や由比ヶ浜も向こうの方に見える
ついでにあの縦ロールも
「それと、安心してほしい。我々ボーダーの職務はネイバーから町を守ることだが、今回君たちに実際に本物のネイバーと戦ってもらうわけではない」
そりゃそうだ
「主な体験内容としては、普段ボーダー隊員が行っているものをやってもらおうと思う。まずは訓練だ。着いてきてくれ!」
そう言うと嵐山さん先導でいつもの訓練場に全員が向かう
506: 2016/03/08(火) 21:53:07.90
「おっすハッチー」
「ハッチーもここなんだな」
「米屋と出水か」
「わたしたちもいるよ~」
米屋と出水に加えて宇佐美、三上、綾辻だ
宇佐美はボーダーに行くと知っていたのでこの三人組は全員ボーダーだろうとは予想がついてた
「秀次と奈良坂もいるぞ」
「結構いるんだな」
「氷見達は別のとこ行ってるみたい」
「辻はなるべく会話が少ないところがいいとかいってライン工に行ったらしい」
なにやってんだあいつ
507: 2016/03/08(火) 21:54:27.59
「とにかく、俺はなるべくボーダー隊員であることを隠すつもりだからお前らもあんまり話しかけるなよ」
「まだ言ってなかったのかよ」
「まぁあんな過去があればねぇ」
17歳組の面々は既に事情を知っている
結構前に無理やり話させられたからな
「ま、そういうわけだから俺は先行く」
「じゃあなー」
みんなと別れて再びボッチになる
しかしすぐ戸塚が近寄ってきた
小動物みたいだな
ぎゃんかわ
「ようやく見つけたよ八幡。どこ行ってたの?」
「トイレだよ、トイレ」
「そっか。もうすぐ着くみたいだよ」
戸塚の言葉通りそこの角を曲がってちょっといけば訓練場だ
508: 2016/03/08(火) 21:56:41.84
「さぁここが訓練場だ。だがまずはいろいろ説明しなければならないな…君、ちょっとコレを持ってトリガーオンと言ってみてくれ」
「ぼ、ぼくがですか!?」
モブが驚きながらもトリガーを起動する
訓練用のトリガーだ
「まず始めに正隊員になる方法を教える。君、左手の甲を見てくれ」
「1000?」
「そう。入隊するとまず訓練用トリガーを一つ選んで使えるようになる。その数字は自分の使っているトリガーをどれだけ使いこなしているかを表しているんだ。これを4000まで上げること、それが正隊員になる条件だ」
へーとかふーんとか聞こえる
509: 2016/03/08(火) 22:00:19.15
「上げる方法は主に二つ。一つは合同訓練、そしてもう一つがランク戦となる。まず君達には訓練を行ってもらう。木虎」
「はい」
木虎が操作して訓練室に小型のバムスターが現れる
なんだ、まるっきり入隊のやつと同じだな
「君達にはこのネイバーと戦ってもらう!これは再現されたデータのようなものなので安心してくれていい。トリガーはそこに全種類3つずつあるが、人数が多いから交代で使ってくれ。分からないことがあったら聞くように。では始め!」
嵐山さんの掛け声で生徒達が訓練室に入っていく
みな始めてのトリオン体なのでその身体能力にまず驚いているようだ
俺も最初はちょっと浮かれてたっけな
3分の1ほどが終わったようだ
俺はまぁやらんくてもいいだろ
510: 2016/03/08(火) 22:05:17.65
米屋達もやっていないな
縦ロールがやりぃ!なんて言いながら訓練室から出てくる
タイムは1分11秒
へぇ、まぁそこそこだな
『記録、25秒』
おおっ!
と歓声が上がる
向こうの訓練室を見るとどうやら雪ノ下のようだ
流石だな
トリオン体なら体力の心配もないし、ボーダーに入ったらいいんじゃないか?
かなり才能あるだろあいつ
「八幡、僕4分もかかっちゃったよ」
「俺は56秒だったな」
戸塚と葉山が話しかけてくる
516: 2016/03/09(水) 10:08:09.80
「1分切れればいい方らしいぞ」
俺があたかも今知ったようなそぶりで話す
「へー!じゃあ葉山君すごいね!」
「はは、ありがとう」
「よし、半分ほどは終わったかな」
嵐山さんの掛け声でみんな静かになる
「今のところ最速はさっきの女の子の25秒だな。初めてでこれはかなり立派な数字だ!」
「さすが雪ノ下さんだね」
「才色兼備ってまさにこういうことを言うんだろうなー」
なんてモブ達がざわついている
517: 2016/03/09(水) 10:09:03.70
「ふふっ、だがみんな。気づいているだろうか?」
全員はてなマークを浮かべている
「どうやら君達の中には何人かボーダー隊員がいるじゃないか。彼らはまだやっていないようだ」
モブがややざわつく
嵐山さんが米屋と出水の方を向く
二人はげっといったような顔をしている
「出水、米屋。前に来てくれ」
二人はマジかーなんていいながら前に出て行く
518: 2016/03/09(水) 10:11:42.77
「最速は25秒。だがこれは初心者の記録だ。今から君達には熟練者達の記録を見てもらおうと思う。二人共、自分のトリガーで本気でやってみてくれ」
「へーい」
「了解っす」
出水と米屋が自分のトリガーを起動して訓練室に入っていく
『始め!』
「アステロイド」キン
「旋空弧月」
ドッ! ザンッ!
『記録、1秒36』
『記録、0.97秒』
おおおおーー!!
とギャラリーが沸く
まぁあの二人ならあんなもんだろう
519: 2016/03/09(水) 10:26:52.08
「二人共、お疲れ様」
「うーっす」
「お安い御用ですよ」
「見ての通り正隊員、しかもA級ともなればこのようにかなり速いタイムを出せるようになる」
「あの、一つ質問いいですか?」
「ん?なんだい?」
「初心者で過去最高の記録ってどれくらいなんですか?」
モブが質問する
「そうだな。最速だと草壁隊の緑川だと思う。記録は確か4秒だ」
「よ、4秒!?」
「あとは…あれ?そういえば…」
520: 2016/03/09(水) 10:28:12.36
ん?
嵐山さんと目が合った…
ちょっと待ってください
なんだがものすごく嫌な予感が…
「おーい、比企谷―。お前ってこれやったことないんじゃないか?確かお前が入隊したのって4年前だろ?」
…
嵐山さん何やってくれてんすかー!?
モブ達が比企谷?だれ?なんて会話をしている
知らなくていいよマジでさぁ!
「は、八幡ってボーダー隊員だったの!?」
「知らなかったぞ」
「ま、まぁな…」
戸塚と葉山も心底驚いた様子だ
521: 2016/03/09(水) 10:30:54.61
「あ、あのすいません」
「ちょっといいですか?」
「ん?」
見ると由比ヶ浜と雪ノ下が嵐山さんに質問しようとしている
「比企谷…というのは比企谷八幡のことでしょうか?」
「お、君は25秒をたたき出した子か。そうだよ、比企谷八幡だ!」
「ヒッキーが…ボーダー隊員…?」
「おや、知らなかったのかい?」
やべぇよ
マジでやべぇよ
そういえば嵐山さんには事情を説明していない
出水や米屋などの他のボーダー隊員と同じようにみんなに知られているもんだと思っていたのだろう
522: 2016/03/09(水) 10:32:41.96
「あれ?みんな知らなかったのかい?」
「えぇ…初耳ですね」
「ヒッキーそんなこと一回も言ってない…」
「あー、えっと…まずいことしてしまったかな…?」
本当っすよ
まぁ知らなかったのだからしょうがないけどさ
嵐山さんにも言っとけばよかったな
「比企谷君」
雪ノ下が急に呼ぶ
「…んだよ」
「この訓練、あなたもやりなさい」
「は?いや俺は…」
「いいからやる」
「うっす…」
何故か今日の雪ノ下はいつもの数倍迫力がある気がする
523: 2016/03/09(水) 10:34:07.72
「すまん、比企谷。みんなが君がボーダー隊員だと知らないとは思わなかった。言ってしまってすまない」
「いえ、しょうがないですよ。こうなったらこうなったです」
嵐山さんが申し訳なさそうな顔をしているが、この人は別に悪気があってやったわけじゃないし責めるのはお門違いだ
「トリガーオン」キィィン
俺は自分のポケットからトリガーを取り出し、起動する
服装はC級のようなものではなく、米屋や出水のように玉狛のエンブレムが入った専用の隊服だ
『開始!』
「ふっ!」
524: 2016/03/09(水) 10:36:47.12
俺は地面を思いっきり蹴り、トリオン兵の弱点である「目」に一瞬で肉薄し、そのまま顔面ごと両断する
『記録、0.67秒』
げっ
空閑の記録に負けた
もう1回やろうかな
そう思いながらも取り合えず訓練室外に出る
なんかやけに静かだな、と思って周りを見回すと全員ポカーンとしている
だがボーダー隊員のやつらは特に表情は変わらず、出水と米屋だけは悔しそうにしていた
「さすがだな比企谷」
「いえ、慣れればみんなこんなもんでしょう」
「それでもだよ。これほど手際がいいのはやはりA級レベルじゃないと無理だろう。みんな、彼らA級隊員達のように高タイムが出せるよう頑張ってみてほしい!ではまだやり終わっていない者はどんどん続けてくれ!」
嵐山さんの号令でギャラリーが散っていく
525: 2016/03/09(水) 10:41:05.83
カツ…カツ…
なにやら後ろからこちらに向かってくる足音がする
…なんか嫌な予感がするぞ
「オイ比企谷ぁ!てめぇ本部にいるならいるって言えよコラァ!」
げっ
こんな時に限ってカゲさんと出会うとは…
「てめぇにはまだ通算で負け越してんだ。今からバトるぞ!」
「カゲさん、俺は今社会見学中です」
「あ?社会見学?」
「そうです。なので今は無理ですよ。また後日に…」
526: 2016/03/09(水) 10:43:51.89
「お、影浦じゃないか!」
「…!嵐山さん」
「比企谷とランク戦しに来たのか?」
「そうっすけど」
「比企谷、受けるのか?」
「はぁ、そのつもりっすけど」
「ふむ、どうせなら今からやらないか?」
「え…」
どういう意味だ?
「ん。よし、これで全員終わったようだな。さっきも説明した通り、B級に上がるための方法の一つが、今みんなにやってもらった訓練だ。そしてもう一つ、ランク戦についても詳しく説明しよう。みんなついてきてくれ!」
嵐山さん先導でゾロゾロとランク戦ブースへと移動していく
まさか…
527: 2016/03/09(水) 10:52:04.73
「さぁここが俗にランク戦室と呼ばれる部屋だ。隊員達はここで日々互いに切磋琢磨している。隊員同士が戦い、ポイントを奪い合うことをランク戦と言うんだ。時間にあまり余裕がないから、これは何人かだけに体験してもらおう。その前に、お手本を見せたいと思う。比企谷、影浦、頼めるか?」
やっぱり
多分断ることも出来るのだろう
そうなったら米屋あたりがカゲさんとやることになるだろうな
うーん
目立つのがちょっと嫌だけど、まぁもうバレてしまっているのだから構わないか
「別にいいっすよ」
「影浦は?」
「元からそのつもりなんで。ギャラリーの視線がチクチクうぜーっすけど」
「助かるよ。では頼む」
528: 2016/03/09(水) 10:56:30.86
「今日こそは勝ち越してやるからな」
「今通算どんなもんでしたっけ?」
「俺が24勝26負だ」
「なるほど」
「今日俺が勝ち越せば差はなくなるからな」
「あ、すいません。時間ないんで1本だけらしいです」
「あぁ!?」
「まぁまぁ。また今度付き合うんで勘弁してください」
「てめぇ前もそう言ってしばらく本部に来なかったじゃねぇか!」
「今度はちゃんと約束しますよ」
「絶対だからな!」
俺もカゲさんもブースへと入る
529: 2016/03/09(水) 11:00:56.21
『開始!』
さーて
カゲさん相手は久しぶりだ
この人中距離ですら半端なく強いから困る
まずは牽制だな
「バイパー」キィン
レーダーを見てそれっぽいところに飛ばす
手ごたえなし
まぁ当たり前か
「さぁ、楽しもうぜ!」
ビルの向こうから姿を現したカゲさんが突っ込んでくる
530: 2016/03/09(水) 11:02:48.95
俺も旋空や射撃トリガーを使っているから中距離に対応できないこともない
が、やはりカゲさんの方が圧倒的に上だ
近距離ならば互角、いや俺の方がまだ上だろうか
なので近づかなければジリ貧
距離を詰める他ない
「ふっ!」
「!!」ガキン
地を思いっきり蹴り、カゲさんに急接近
その勢いのまま弧月でカゲさんの動きを止める
「チッ!」
「アステロイド」キン
「!」
ドドドドド!
531: 2016/03/09(水) 11:04:19.43
意表をつく近距離からのアステロイド
しかし
「あめぇあめぇ」ニヤッ シュゥゥ
シールドで防がれたか
「おらぁ!」
今度はカゲさんのスコーピオンによる怒涛のフルアタック
近距離なら俺に分があると思っていたが、この分じゃどっこい、下手したら俺より上かもしれん
これは流石に弧月1本で凌ぐのはきついな
「メテオラ」キン
「!!」バッ
カゲさんが距離を取った
532: 2016/03/09(水) 11:04:55.51
ドドォン!
メテオラの爆風で砂煙が舞い上がり、視界が悪くなる
今のうちにカゲさんの射程外に…
ビュッ!
ドッ!
「!!」
突然煙から伸びてきた鞭のようなスコーピオンで左腕をとられる
「くっ!」ブシュウ
ちっ、俺の視線の「トゲ」で正確な場所がばれたか
やっぱり敵にすると厄介なサイドエフェクトだぜ
533: 2016/03/09(水) 11:11:40.53
「おらおらぁ!どうした比企谷ぁ!」
その後も鞭のスコーピオンがビュンビュン飛んでくる
「ちっ、旋空弧月」
「!」
ズカッ!
一度牽制の旋空
そして今度はカゲさんでも届かない距離まで離れる
「逃げんなコラ!」
「いやそりゃ逃げますって」
534: 2016/03/09(水) 11:13:33.90
どんどん距離を取る
追いかけてくるカゲさんだが
ピンッ
「!?」
ドォォン!
『戦闘体活動限界 緊急脱出』
ドンッ!
決まりましたー
レイジさん直伝メテオラトラップ
さっきのメテオラでの砂煙の時に仕掛けておいたメテオラとスパイダーを組み合わせたトラップにカゲさんがかかり、その爆発をモロに受けたカゲさんが緊急脱出した
いやー、今日もしかしたら使うかもと思ってスパイダーセットしてきてよかったぜ
535: 2016/03/09(水) 11:16:26.54
「テメェざけんなコラァ!」
「俺の勝ちは勝ちっすよカゲさん」
「ぐ、ぐぬ…!」
「いやぁ流石ハッチー」
「使うタイミングばっちしだな」
「まさかのトラップ」
「すごいね」
「うん。すごいはすごいんだけど…なんか…」
「「「「「…汚いよな(ね)」」」」」
出水、米屋、宇佐美、三上、綾辻
お前ら覚えてろ
536: 2016/03/09(水) 11:18:41.70
「もう1回だ比企谷!」
「いやですから時間ないんですって」
「お、いたいた」
カゲさんに迫られていると横から声がかかる
「あ、ゾエさん」
「よう、比企谷。久しぶり」
「お久しぶりです」ペコ
「なんでゾエがこんなとこにいやがる」
「それはこっちのセリフだよ~。今から防衛任務だよ?」
「ア?マジか?」
「大マジだよ。ほらいくよ」
537: 2016/03/09(水) 11:19:47.57
「ちっ…仕方ねぇ。比企谷、後で暇な日ラインしろ!」
「うっす。暇で覚えてたらラインします」
「テメェそれやらねぇフラグだろ!」
「はいはい、いくよー」ガシ
「ちょ、まてやゾエ!」ズルズル
カゲさんがゾエさんに問答無用で引っ張られていった
流石生身の戦闘力ではレイジさんに匹敵するだけのことはある
547: 2016/03/10(木) 21:34:47.13
「さて、今のようにボーダーには様々なトリガーとそれによる多種多様な戦法が存在する。単純な斬り合いも途中であったし、良い戦いだったんじゃないかな。トップレベルの隊員達はあのように高度な戦いを繰り広げているんだ。もし入隊する気のある者がいたら是非彼らを目指してくれ。さて、では今度は実際に何人かに体験してもらおう。やりたい人は挙手してくれ」
生徒達はざわざわと周りの友達とどうする?なんて会話しながら決めかねているようだ
「八幡!」
戸塚が近寄ってきた
「八幡ってすごく強いんだね!A級隊員なんでしょ?」
「ん、何で知ってるんだ?」
「さっき八幡が戦ってる最中に嵐山さんが教えてくれたよ。比企谷はA級で、その中でもかなり強いぞってね」
「そ、そうか…。まぁといっても俺より強い人なんて普通にいるけどな」
548: 2016/03/10(木) 21:37:14.40
1対1で勝てないとなると太刀川さん、迅さん、忍田さん、風間さん、二宮さん、あと互角なのが小南とカゲさん
こうしてみるとやっぱりまだまだ上はバケモノ揃いだ
うちのボスもかなり強いらしいしな
戦ってるのみたことねぇけど
腕がなまるといけないとかでたまに忍田さんと模擬戦してるらしいが、なかなか互角の戦いをするそうだ
「これからも頑張ってね!」
よし、取り合えずソロで1位目指すか
「うーん、これじゃあ逆に少なすぎるなぁ」
天使の応援でやる気がカンストした俺は嵐山さんの声で我を取り戻した
いかんいかん
やる気を落ち着かせねば
やる気がどんどん落ちていくのが分かる
俺ってすげー
549: 2016/03/10(木) 21:38:29.36
嵐山さんはやや困った様子だ
どうやら思っていたより全然手が上がらなかったらしい
「比企谷君」
嫌な声がした
「…なんだ雪ノ下」
「私と戦いなさい」
「断る」
「負けるのが怖いのかしら?」
「何とでも言え」
「…」
「お、じゃあ俺とやるか?ハッチー」
「米屋。いや俺は…」
「なにあなた?わたしとはやらないのにそこの人とはやるのかしら?」
「いやだから…」
「比企谷君?」
あぁもう!
551: 2016/03/10(木) 21:42:09.48
「分かった分かった。やればいいんだろやればよ…」
「最初からそう言いなさい」
よし決めた
こいつはボコボコにする
嵐山さんからブースの使い方を教えてもらった雪ノ下達数名のモブと俺がそれぞれブースに入っていく
「私は115に入るわ」
「俺は117だ」
「あれ、俺は?」
「ハッチー取られちまったな。んじゃ俺とやろうぜ、米屋。カゲさんとハッチーの戦いみて俺もウズウズしてきた」
「出水!よっしゃやるか!」
「お、お前達もやるのか。よし、なら総勢10名だな。注目は出水と米屋、それと比企谷と雪ノ下さんだな!みんなもよく見ていてくれ」
552: 2016/03/10(木) 21:42:57.15
『開始!』
「ちゃっちゃと終わらせたいから瞬殺でいくぞ」
「やれるものならやってみなさい」
雪ノ下の使うトリガーはスコーピオンか
だが雪ノ下は訓練用トリガー
正直万に一つもお前に勝ちはないと思うぞ
ダッ!
雪ノ下がジグザグに接近してくる
的をしぼらせないためか
「ふっ!」
「!」
553: 2016/03/10(木) 21:47:31.39
ズカッ!
弧月を縦に振りぬく
が、避けられたか
「シッ!」ヒュッ
「!!」ガキキンキン
逆に雪ノ下からフルアタックのスコーピオンで攻め立てられる
ちっ、なかなか鋭いな
けど
「そらっ」ビュッ
「っ!」ガギッ
そろそろ反撃させてもらおう
555: 2016/03/10(木) 21:50:26.53
「…っ!」ガギンガギギン
数度斬りあうだけで雪ノ下のスコーピオンが割れてきた
訓練用は割れるのも早い
たまらず下がって距離を取る雪ノ下
だが残念
その間合いはこちらの射程圏だ
これで終わりだな
「旋空弧月」キィン
「!」
ズカッ!
決まった
556: 2016/03/10(木) 21:52:51.58
かのように思われたが
「やっぱり。このくらいの距離だとあなたは距離をつめるのではなく、それを使うと思ったわ」
「!?」
雪ノ下は横なぎの旋空を低い姿勢でかわす、その勢いのままこちらに突撃してきた
釣られたか!?
「くっ!」ガギン
「これでおしまいね」ヒュッ
右手のスコーピオンを弧月で防いだところで左手のスコーピオンが飛んでくる
シールドで防げるか?
いや、訓練用の出力でもフルガードじゃないと割られるだろうな
557: 2016/03/10(木) 21:54:28.55
…ちっ、仕方ない
「エスクード」キン
「っ!?」
ドガン!
雪ノ下と俺は突如下から生えたバリケードによって空中に打ち上げられる
「っ!そんなものまであるのね…!」
「弧月と旋空以外は使うつもりはなかった」
着地後、二人共距離を取る
558: 2016/03/10(木) 21:55:27.42
「使うつもりはなかった、とは?」
「お前はスコーピオンしか使えないのに俺だけ何種類もトリガー使ってたらただでさえ出力で不公平なのにさらに不公平になっちまうからな」
「あら、そんな遠慮はいらないわ。あなたを倒すにはこれだけで十分だから」
そういって右腕のスコーピオンを俺の方に向けてきた
「そうかい…」
認めよう
こいつは強い
緑川や木虎、黒江なんかと同じ天才だ
しかも斬り合いや駆け引きなんかでは緑川や黒江よりも上かもしれん
そんな雪ノ下が全力で俺を倒しにきている
ならば…俺も全力をもって叩き潰すのが礼と言うものだろう
559: 2016/03/10(木) 21:58:43.36
「分かったよ…俺も全力を出そう。さっき見せた戦いとは全くの別物だ」
「あら、あといくつのトリガーを使うのかしら?」
「そうだな…あと二種類だ。まず一つ…」バチバチ
俺の身体からエフェクトが発生する
「ヤマト オン」キィィィン
「…!」
『特別体解除まで60秒、カウントダウン開始』
「和服に日本刀…?それは…武器、というだけではなさそうね」
「あぁ、これは俺を強化するものだ。そして…」
左手でトリオンキューブを展開する
560: 2016/03/10(木) 21:59:28.94
「メテオラ+弧月」ギュワン
「合成…?そんなことも出来るのね」スッ
雪ノ下が即座に回避できるようにするためか、構える
「爆塵弧月」ビッ
俺が放った斬撃は雪ノ下へは向かわず、あらぬ方へと飛んでいく
「…?あら、どこを狙っているのかしら。そっちは民家…」
カッ!
「!?」
561: 2016/03/10(木) 22:01:10.81
ドォォン!
雪ノ下の右方向にあった民家に俺の斬撃が当たり、その周囲を爆発が巻き込む
『戦闘体活動限界、緊急脱出』
ドンッ!
雪ノ下は緊急脱出したようだ
やはり初見のやつにはこれに限るな
ブースに戻された俺は外へと出る
「お疲れ、比企谷」
「ういっす」
嵐山さんは一声かけてくれた後、そのまま残りの決着のついていない生徒達の戦いの解説に回った
562: 2016/03/10(木) 22:01:45.06
「さすがだなハッチー」
「容赦ねぇな。あれ使うのかよ」
出水と米屋が話しかけてきた
こいつらの戦いは既に終わっていたようだ
「使えって言われたようなもんだったからな。お前らはどうだった?」
「俺の勝ち」ブイ
「ちっ、次は負けねぇぞ槍バカ」
出水と米屋の勝負は米屋が勝ったみたいだ
570: 2016/03/10(木) 22:19:06.98
「比企谷君」
「ん…」
「今回はわたしの負けね」
563: 2016/03/10(木) 22:03:23.16
なんだ簡単に認めたな
こいつのことだから何か言ってくるもんだと思ってたが
ん?てか今、今回はって言ったか?
「今回はってなんだ。次回はねぇよ」
「あら、そうでもないかもしれないわよ?」
「あ?お前何言って…まさか…!」
「ふふっ、楽しみにしていなさい。いつか泣いて許しを乞うまでボコボコにしてあげるわ」
「冗談だろ…?」
「わたしは本気よ」
おいおい
まさか…
嘘だといってくれ…
564: 2016/03/10(木) 22:06:25.00
「わたしもボーダーに入隊することにするわ」
神は俺を見放した
いや確かにボーダー入ればいいんじゃないかって一回は思ったけどさぁ
あんなん冗談だって…
まさか本当になるなんて…
「え、雪ノ下さんボーダー入るの?」
「マジで?」
俺が呆然としていると、横から出水と米屋が驚いた表情で言う
「そのつもりよ。そうなったらよろしく頼むわね」
「マジか!初めてでハッチーとそこそこ渡り合えるやつなんて緑川以来じゃねぇか!?うひょー、楽しみになってきた!」
「入隊したらうちの隊来るか?その腕なら歓迎するぜ」
「あ!てめぇ抜け駆けすんな弾バカ!」
565: 2016/03/10(木) 22:07:35.49
てめぇらはどこぞの太刀川さんか
はしゃぎやがって
てか三輪隊は既に4人だから無理だろうが
「そんなわけだからあと2ヶ月後、首を洗って待っていなさい。比企谷君」
クスッと笑いながら言う雪ノ下は俺にとってさながら悪魔の微笑に思えた
オーマイゴット
俺の安寧の時間が高2になってからゴリゴリと削られていってるんだが…
その後は簡単な事務作業などの隊員がこなす仕事を一通り体験や説明されたところで解散となった
566: 2016/03/10(木) 22:08:15.30
「比企谷」
職場体験も終わったので家に帰ろうとボーダーの正面玄関に差し掛かったところで後ろから声をかけられた
「平塚先生…」
「聞いたぞ」
「…」
「何故ボーダー隊員であると秘密にしていた?場合によっては問題になる可能性もあるぞ」
適当な言い訳で逃げることは出来るが…
恐らくこの人には通用しないだろうな
仕方ない
「そうっすね…俺が中学生の時の話です…」
567: 2016/03/10(木) 22:11:46.71
「そうか…そんなことがあったとは…。君の母親が第一次大規模侵攻で亡くなったことは聞いていたが…。君が奉仕部に入りたがらなかったのは放課後に防衛任務を行っていたからか?」
「まぁそうですね」
半分はただ単に部活なんぞ面倒だったからなのだが
まぁこれは言わない方がいいか
「こんな話を聞いてしまったからには君を無理に奉仕部に縛ることは私には出来ない。君が選びたまえ。続けるか、辞めるか」
「…」
奉仕部、か
「あ、ようやく見つけたよヒッキー!」
「ん?」クルッ
由比ヶ浜…
569: 2016/03/10(木) 22:14:32.37
「あ、平塚先生も」
「やぁ由比ヶ浜。今回の職場体験で何か得られるものはあったかね?」
「え?えーっと…多分?」
「何故疑問系なのだ」
平塚先生ははぁ、とため息をもらす
「比企谷。何も返事は今すぐ、というわけではない。よく考え、君の好きな時に来たまえ。あぁそれと、特例として君がボーダー隊員だと言うのは他の教師には黙っておこう。だから安心したまえ。ではな」
そう言い残して平塚先生は玄関を出て去っていった
571: 2016/03/10(木) 22:20:03.64
奉仕部
面倒なのは間違いない
それは今でもそうだ
けど…何故だろうか
俺は今迷っている
何か俺が迷う要因があるのか?
だとしたらそれはなんだ
一体俺は…
「ヒッキー?」
「!」
由比ヶ浜の声で我に返る
「なんだ?そういえば俺を探してたとか言ってたな。俺に何か用があるのか?」
「打ち上げだよ!クラスのみんなもうサイゼに行っちゃったよ?早く行こ?」
「俺なんかを待たずにさっさと行けばよかったじゃねぇか」
「い、いやー、置いてきぼりはかわいそうかなーって…えへへ」
572: 2016/03/10(木) 22:21:05.91
本当健気で良い奴だな
「…まぁ俺は行かないけどな。帰って寝る」
「えー!?なんで!?」
「クラスに友達がいない俺が行ったところで楽しめるとは思えん」
「うっ…で、でも彩ちゃんもいるよ?」
スー…フゥー…
行こっかなー…
「あ、そういえばヒッキー何でボーダーだって黙ってたし!」
「…事情があんだよ」
「事情?」
「お前は知らなくていい」
由比ヶ浜がムーっとむくれている
573: 2016/03/10(木) 22:21:49.20
「隠し事しないでよ!」
「いや人間黙っておきたいことの一つや二つあるだろうが。お前だってそうだろ?」
「え?」
「…お前ん家の犬の件、とかな」
「ヒッキー…覚えてたの?」
「いいや。小町から聞いた」
「そっか…小町ちゃんからか」
由比ヶ浜はあはは、と笑いながら下を向いてしまう
「すまん、気を使わせてたみたいだな」
「…え?」
574: 2016/03/10(木) 22:23:01.89
「あの事故がなくても俺はどうせ学校じゃボッチだったろうよ。それは今までの経験から容易に想像できる。だからお前がわざわざ気を使って俺に優しくしてくれなくてもいいんだ。それに、俺にはボーダーのやつらがいるしな」
「やー…べ、別にそういうんじゃないんだけどなー。…そんなんじゃ…ないよ…」
由比ヶ浜の顔がどんどん暗くなっていく
目には薄っすら涙が浮かんでいるのが見えた
「だから、もう俺に構う必要はない。そんな気持ちで俺に関わろうとするな」
由比ヶ浜がはっと顔を上げる
「…バカ」
そういい残して由比ヶ浜は走っていってしまった
「やー…べ、別にそういうんじゃないんだけどなー。…そんなんじゃ…ないよ…」
由比ヶ浜の顔がどんどん暗くなっていく
目には薄っすら涙が浮かんでいるのが見えた
「だから、もう俺に構う必要はない。そんな気持ちで俺に関わろうとするな」
由比ヶ浜がはっと顔を上げる
「…バカ」
そういい残して由比ヶ浜は走っていってしまった
575: 2016/03/10(木) 22:24:36.88
結局その日はそのまま家に帰った
俺にはわからない
何故奉仕部をさっさと辞めてしまわないのか
何故俺は迷っているのか
何故由比ヶ浜は涙を流していたのか
597: 2016/03/13(日) 16:10:54.09
「先生」
「比企谷か。結論は出たのかね?」
「まぁ一応っすけど」
俺は土日あけの月曜、廊下で平塚先生と話していた
「では聞かせてもらおうか」
「取り合えず続けようと思います」
「ほう。君のことだからやめると思っていたのだが…意外だな」
「自分でもそう思ってますよ。ただ、何故か迷ってるんです」
「迷っている?」
「はい。面倒くさいと思ってる自分がいれば、まだ続けていたいと思う自分もいる。何故続けたいと思っているのか、考えていました」
「…」
598: 2016/03/13(日) 16:11:38.18
「だから、ボーダーの先輩達に相談してみたんです。俺はどうしたらいいですかって。そうしたら…」
『迷ってるのなら取り合えず続けてみるのもいいだろう。焦ることでもないんだろう?ならじっくりと今の環境で考えてみればいい。そうして続けたいと思っている理由を見つければいい。まぁ一度離れてみるのも一つの手だが…それはお前が決めることだ』
「…と」
「なるほどな。いい先輩じゃないか」
レイジさんにはいつも相談に乗ってもらってるから本当助かる
今度ちゃんと何かお礼しないとな
「それで君は続けることを選んだわけか」
599: 2016/03/13(日) 16:12:23.41
「暫定っすけどね。残る意味はないと判断したらやめます」
「そうか…わかった。君の意見を尊重しよう」
「うっす」
「また正式に答えが出たら言ってくれ」
「はい」
「では私は職員室に行かなければならないので、またな」
平塚先生とはそこで別れた
さて、答えはいつ得られるか…
600: 2016/03/13(日) 16:13:01.70
職場体験から1週間ほどが過ぎた金曜日、部室で勉強をしていると雪ノ下に突然話しかけられた
「そういえば何故あなたはボーダー隊員ということを黙っていたのかしら?言っていればそれを理由に奉仕部にも入れられなくて済んでいたのかもしれないわよ」
「まぁいろいろ事情があんだよ」
「事情?」
「…」
「…そう。まぁ深くは追求しないわ」
珍しく雪ノ下が簡単に引き下がったな
多分、踏み込みすぎるのは良くないと判断したのだろう
こいつも川崎の件で学習したようだ
601: 2016/03/13(日) 16:14:36.78
「由比ヶ浜さんは今日も来ないそうよ。さっきメールがあったわ」
突然話題変わったなおい
「そうか」
「あなた…由比ヶ浜さんと何かあったの?」
「いや別に」
「彼女が来なくなってからもう1週間よ?何もなかったら来なくなったりしないわ。喧嘩でもしたのかしら?」
「してねーよ」
雪ノ下がジーっとこちらを見てくる
なんだよ…
602: 2016/03/13(日) 16:15:12.10
「諍いとか?」
「違う」
「では戦争?」
「遠くなった」
「殲滅戦?」
「かけ離れた」
「ではすれ違い、といったところかしら?」
「まぁそんな感じかもな」
「そう。なら仕方がないわね」
少しばかりの沈黙が流れる
603: 2016/03/13(日) 16:16:53.00
「まぁこういうのはあれだろ、一期一会ってやつだ。出会いがあれば別れもある」
「あなたは出会いも別れもないでしょう」
どういう意味だコラ
「けど、確かにその通りね。人との関係なんて些細なことで簡単に壊れてしまう」
「だが些細なことで結ばれもするのだよ。まだ諦めるような時間じゃない」ガラッ
「平塚先生、ノックを…」
そんな雪ノ下の言葉を先生は手で遮る
「由比ヶ浜が来なくなって1週間。今の君たちならば自分たちでどうにかすると思っていたのだが…ここまで重症だったとはな」
由比ヶ浜がここを離れたいと思ったのならば、俺にはそれを止める理由はない
それは雪ノ下も同様だろう
だから俺は由比ヶ浜が何らかの理由で来なくなったとしても特に何もアクションを起こしていない
例えあの件が理由だとしても、だ
604: 2016/03/13(日) 16:17:41.47
「それで、用件はなんですか?」
雪ノ下が切り返す
「そうだな。以前言っていた勝負の件についてだが、新しいルールを追加しようと思う」
「?」
「君たちには…頃し合いをしてもらいます」
「は?」
俺も雪ノ下も怪訝な顔をする
「君たちには冗談が通じんのか…。つまりだな、簡単に言うと三つ巴のバトルロワイアルにする、ということだ。もちろん共闘などもアリだぞ」
ふーん…
605: 2016/03/13(日) 16:18:19.75
「それだと比企谷君が不利になりますが…」
蜂の巣にしたろうかコイツ
「というかそもそも二人しかいないんすけど」
「そう、そこでだ。由比ヶ浜も来ないようだし良い機会だ。欠員を補充する意味でも侵入部員の獲得に乗り出したほうがいいだろう」
「まってください。由比ヶ浜さんはやめたというわけでは…」
「来ないのなら同じだ」
雪ノ下はぐっ、と黙ってしまう
606: 2016/03/13(日) 16:18:45.23
「君たちは何か勘違いしていないかね?奉仕部は仲良しクラブではない。ここは君たちの自己変革のための場だ」
自己変革ね…
俺はそのためにここに残っているのだろうか?
うーむ、分からん
「とはいえ由比ヶ浜のおかげで部員が増えると活動が活発化する事が分かった。だからこその三つ巴なのだがな。君たちは月曜までにもう一人、やる気と意思を持った者を確保したまえ」
えー
面倒くさい
しかも今日金曜だから月曜までって実質あと三日、いや今日はもう終わりだからあと二日しかねぇじゃん
無理だな
俺なんもアクション起こさなくていいな
どうせ俺が何しても無駄だろ
607: 2016/03/13(日) 16:19:29.06
「では今日の部活はここまで。君たちは三人目を確保する算段でも考えたまえ」
そう言うと平塚先生は出て行った
そういえば最近この人から暴力を受けることがなくなったな
おめでとう、平塚は暴力教師からお節介教師に進化したゾ☆
「さて、どうする?一応駄目元でボーダーのやつらに声かけるか?」
俺もそのくらいなら出来るからな
一声かけるだけだけど
「それだともし入ってくれる人がいても、やる気と意思という条件をクリアできないでしょう」
「それもそうか」
じゃあ俺にはもう出来ることはないな、うん
608: 2016/03/13(日) 16:20:05.40
「わたしにはその条件をクリアしてくれそうな人に心当たりがあるわ」
「戸塚か?よし、あいつは今部活中だと思うから今すぐテニスコートに…」ガタッ
「違うわ。というか気持ち悪いわダニ谷君。由比ヶ浜さんよ」
「由比ヶ浜?あいつは辞めただろうが。というかダニってなんだ」
「ちょっと噛んだだけよミジンコ谷くん。だったらもう一度入りなおせばいいのよ。平塚先生は人員補充をしろと言っていたのだし、何も問題はないわ」
「絶対わざとじゃん。もうミジンコとかどうあっても言い間違えないだろうが。お前の作戦には問題ないが、お前の俺に対する態度に問題がありまくる」
「ぐちぐちと男のくせにうるさいわね」
「上等だ。その首飛ばしてやろうか?」スッ
「やれるものならどうぞ。そんな度胸もないくせに」
「あ?」
「なにか?」
「…」
「…」
609: 2016/03/13(日) 16:20:36.21
にらみ合うがやがて雪ノ下ははぁ、とため息を吐いて顔を背けた
俺とは反対の窓の方を向いている
「…いつもならここで由比ヶ浜さんが止めに入るのよね」
「そうだな…」
「二人共そこまでだよ、とか喧嘩両成敗、などと言って怒られたこともあったわね」
「そう…だな」
「彼女がいないとどうも静かね…えぇ、静か過ぎるくらいに。今まではそれが普通だったというのに…」
「…」
そういう雪ノ下はふふっと笑っている
610: 2016/03/13(日) 16:21:19.28
「意外だな。お前がそんな風に笑うのは」
「ええ、自分でもそう思うわ。2ヶ月前の私が今の私をみたら何て言うかしらね」
「あなた、私にとても似ているけれど…一体どなた?とかか?」
「…今のは私のモノマネかしら?不愉快だわ」
「なんでだよ。結構似てただろ」
「だから不愉快なのよ」
「ふっ…」
「クスッ」
俺も由比ヶ浜に当てられたかな
いや、もしかしたら俺がここに残りたいと思っているのはこれが原因なのかもしれないな
多分…いやきっとそうだろう
611: 2016/03/13(日) 16:21:52.99
「とにかく、由比ヶ浜さんが戻ってくるようにしましょう。案はいくつか考えたわ」
「随分やる気だな」
「ええ。最近分かったことことなのだけれど、私…この2ヶ月をそれなりに気に入ってるのよ」
「そうか…」
「あなたも…でしょう?」
「さぁな…」
「素直じゃないのね」
「お前に言われたくない」
そうだ
俺はここが、この奉仕部という場所が気に入っていたのだろう
俺に喧嘩を売ってくる雪ノ下がいて、その喧嘩を買う俺がいて、俺達を止める由比ヶ浜がいる
そんな奉仕部が…俺は好きだったのかもしれん
雪ノ下の毒はそれなりに面倒だがな
612: 2016/03/13(日) 16:22:38.92
「取り合えず由比ヶ浜を戻す方向で動く、ということだな?」
「ええ」
「それは部長命令か?」
「…!…えぇ、そうよ」クスッ
雪ノ下がクスッと笑う
素直じゃなくて悪かったな
これが俺、比企谷八幡なんだよ
「そうか…なら仕方がないな。部長命令なら俺もそれに従うしかないわけだ」
「本当、面倒くさい人ね」
「だからお前に言われたくない」
それに由比ヶ浜がここを去ってしまった原因は俺だろう
理由はまだ分からんが…
なら俺も働かないとな
613: 2016/03/13(日) 16:23:14.59
この日はこれで解散となった
俺が奉仕部を辞めない理由
俺はあの場所が、あの奉仕部という場所を気に入っている
ボーダーのやつらと同じなのだ
気の許せるやつらだ
軽口を叩き合って、たまには喧嘩をして、最後は誰かの仲介で仲直り
ボーダーのやつらとは幾度かそういうやり取りをした
雪ノ下や由比ヶ浜も同じだ
だからこそ俺はいつの間にかあの場所を気にいってしまったのだろう
まったく…
だから本当…仕方がないことなのだ
614: 2016/03/13(日) 16:23:51.24
そういえば俺はこの日、雪ノ下と電話番号とメールアドレスを交換した
土日では会えないから連絡を取るにはこれしかないのでしょうがなく、というのが雪ノ下の言葉だ
だがそれを言っている最中の雪ノ下はややもじもじとしていて、緊張しているようだった
実際にも
『ひ、比企谷君。あの…で、電話番号を…教えてくれない…かしら?』
と顔を赤らめながら聞いてきた
中学時代に散々経験を積んできた俺じゃなきゃドキッとして雪ノ下を好きになっていたとこだぜ
危ない危ない
さすが俺だ
621: 2016/03/16(水) 12:24:52.44
「で?どういうことだこれは?」
俺は現在東京わんにゃんショーが開催されている幕張メッセに来ている
それはいい
昨日小町とチラシを見てくることにしてたからな
問題は…
「こんにちは、比企谷君」
「なんでお前がいる。雪ノ下」
俺がトイレから戻ってくると何故か小町の隣には雪ノ下がいた
「小町が雪乃さんを見かけて声かけたんだよ。なんか道に迷ってたみたいだったし」
「屈辱だわ…」
いやいや
ここそんな広くねぇぞ
どんだけ方向音痴なんだこいつは
622: 2016/03/16(水) 12:30:45.02
「ここにいるってことは何か見に来たのか?」
「えぇ、まぁ、そのいろいろと」
俺は見てしまった
こいつのパンフレットの猫ゾーンにでかでかと赤丸がつけてあるのを
こいつ猫好きだったのか
「あなたたちはどうなの?」
「俺達は毎年来てるんだよ」
「うちの猫と会ったのもここなんですよー」
「猫…比企谷君の家では猫を飼っているの?」
「ああ。かまくらって名前のな」
「そ、そう…」
ボソッといいなぁって声が聞こえたけどスルーだ、スルー
623: 2016/03/16(水) 12:36:24.17
「じゃあ俺達はもう行くから。じゃあな」
「えぇ、じゃあ」
「ちょいまちちょいまち!」
なんだよ小町
今良い感じに離れられそうだったろうが
「雪乃さん、せっかくなので一緒に回りましょうよ!」
「え…邪魔じゃないかしら…比企谷君が」
「俺はお前らの後ろを黙ってついてくから心配すんな」
「それはそれで不審者ね」
「どうあっても俺を除外したいんだな」
「冗談よ。冗談」クスッ
「ちっ…」ガシガシ
どうも調子がくるう
昨日からこいつの様子がどうもおかしい
いや良い方に変化しているのだから良いことは良いんだがな
624: 2016/03/16(水) 12:37:51.26
「仲が大変よろしいようですな~」ニヤニヤ
「やめてちょうだい小町さん。虫唾が走るわ」
前言撤回
全然良くなってない
「じゃあ一緒に回りましょうか。何か見たいものはあるかしら?ないのなら…」
「どうせなら普段見れないものを見たいですよねー」
「…」
我が妹は空気が読めるのか読めないのかイマイチ分からん
結局最初は鳥ゾーン、続いて小動物ゾーンに入ることになった
するとそこで意外な人物と遭遇した
625: 2016/03/16(水) 12:40:42.38
「こんなとこにいるなんて意外ですね、太刀川さん」
「ん?おー!比企谷じゃねぇか!」
なんと太刀川さんだ
この人がこういうとこに興味あるとはかなり意外だ
だって戦闘狂だし
「比企谷君、この方は?」
「太刀川慶。ボーダー所属の大学生だ」
「よろしく。というか、あれ?なんだ比企谷、珍しく女の子を引き連れて。やるなぁお前!」
そんなこといいながら背中をばんばん叩いてくる
痛い、痛いっすよ太刀川さん
626: 2016/03/16(水) 12:44:53.44
「ちなみにこの人はアタッカー1位、個人総合1位というバケモンだ」
「あら、ではとても強いのかしら?」
「まぁな」
はっはっはと笑いながら太刀川さんが謙遜もせずに肯定する
まぁ事実なのだから否定しようもないんだがな
「あ、太刀川さんだ!」
「ん?おー、小町ちゃんか。久しぶりだな」
「お久しぶりですー!」
小町と太刀川さんは結構仲がいい
俺と太刀川さんは同期なので隊員が少なかった昔はよく迅さんやレイジさん、風間さんなども誘ってご飯を食べにいったりしていたのだが、その時小町もちょくちょく参加していたのだ
だから地味に小町はボーダーの古株達と交友がある
627: 2016/03/16(水) 12:46:43.05
「ところで、太刀川さんは一人なんですか?」
「いや、加古と堤もいるぞ。今日は加古に誘われてきたんだ。なんかペンギンが見たいとかでな。今は二人共トイレ行ってるけどもうすぐ戻って…お、噂をすれば」
「あら?比企谷君じゃない」
「ん?本当だ。やぁ、比企谷」
「うっす。加古さん、堤さん」
「小町もいますよー!」
「お、小町ちゃん」
「あらあら!小町ちゃんじゃない。久しぶりねぇ」
「はいお久しぶりです堤さん、加古さん」
小町が20歳組と仲良くお喋りを開始する
我が妹ながらコミュ力の塊だなこいつは
628: 2016/03/16(水) 12:51:01.39
「あの、比企谷君…?」
「あぁ、今来た二人もボーダーだよ。加古さんなんてA級6位チームの隊長だ」
「へ、へぇ…」
「俺なんて1位チームの隊長だぞー」
「あ、そうだ太刀川さん。こいつ今度ボーダー入るらしいんすよ。結構強かったんで期待してていいと思いますよ」
「お。マジか!」
「あら、そうなの?じゃあ入ったらよろしくね」
「よろしく」
「え、えぇ…どうも」
雪ノ下がちょっとオロオロしている
629: 2016/03/16(水) 12:52:17.28
「結構強かったって、比企谷君と戦ったのかしら?」
「そうっす。この前の職場見学でボーダーに来た時に1本だけですけど。油断してたとは言え、ちょっと危なかったですね」
「おお、比企谷にそこまで言わせるなんて」
「本物だな」
「あなたお名前は?」
「雪ノ下雪乃といいます」
「Y.Y.か。残念ね」
「…?」
加古さん、場合によっては勧誘するつもりだったな
630: 2016/03/16(水) 12:54:04.50
「じゃあ俺達はそろそろ行きますんで」
「今度また風間さん達誘って飯行こうぜ、比企谷、小町ちゃん」
「うっす」
「是非是非!お待ちしてます」
「じゃあ私も久しぶりにチャーハンを振舞っ…」
「「「「それはちょっと待ってください」」」」
雪ノ下以外の俺達4人が一斉にハモる
それだけは駄目だ
絶対に
「あら、なによ」
「と、とにかく、またな。比企谷、小町ちゃん」
「はい、さようなら~」
堤さんが加古さんの背中を押して鳥ゾーンへと入っていった
ファインセーブですぜ、堤さん
631: 2016/03/16(水) 12:55:10.91
「なんというか…濃い人たちだったわね」
まぁボーダーはいろんな意味で濃い人が多いかもな
ちなみに雪ノ下は鳥、小動物どちらのコーナーでも触ってはみたものの首をかしげて途中でやめてしまった
どうやら求めている質感はこれらではないらしい
まぁ猫だもんな、お前が求めているものは
「比企谷君、なにやらあなたの方から嫌な視線を感じるのだけれど」
「気のせいだ。それより次は猫ゾーンだな」
「猫…」
雪ノ下の目が露骨に変わった
どんだけだよお前
がんがん進んでいく雪ノ下だが途中でピタッと止まり、突然俺の背後に回ってきた
632: 2016/03/16(水) 12:58:17.30
「なにしてんだお前?」
「いえ…」
改めて前を向くとそこには犬ゾーンの看板が
こいつ犬苦手なのか?
「…一応言っておくがここは子犬しかおらんぞ」
「な、なんのことかしら?」
「はぁ…まぁいい。俺が先行けばいいんだろ」
このやり取りを小町は終始にやにやしながら眺めていた
なので頭をチョップしてやった
633: 2016/03/16(水) 12:59:52.16
「いったーい…」
「何をしているのあなたたち…。ところで、比企谷君は…犬派?」
「なんだ突然。無派閥だ」
「そう…意外ね。てっきりあなたは犬派かと思っていたけれど…」
「はぁ?なんで?」
「あんなに必氏だったからよ…」
は?
こいつが何を言っているのかさっぱり分からない
俺がこいつの前で必氏になったことなどないはずだが…
猫ゾーンに到着するとまず最初に平塚先生を見つけるという珍事に遭遇した
遠目だが間違いないだろう
てか先生…一人、なんですか…
634: 2016/03/16(水) 13:01:15.66
小町はさっさと奥の方へと歩いていってしまった
雪ノ下はすぐ手前の猫を凝視している
怖いからやめてやれ
というかこれはどっちに着いていればいいのだろうか?
うーむ
迷子になってた雪ノ下の方か?
いやでもやっぱり最愛の小町の方に…
「ちょ、ちょっとサブレ!って首輪駄目になってるし!」
どっちに着くか迷っていると突然犬が俺の方へとダイブしてきた
「お?なんだこいつ?」
「ひっ、い、犬が…」
取り合えず犬を抱きかかえるとくんかくんかと俺の匂いを嗅いで、指を猛烈な勢いで舐めてきた
く、くすぐったい…
635: 2016/03/16(水) 13:02:59.34
「この犬…」
ん?雪ノ下は見覚えあるのか?
「すいませーん!うちのサブレがご迷惑を…」
「由比ヶ浜さん?」
「え…?ゆき…のん?」
由比ヶ浜?
こいつ由比ヶ浜の犬だったのか
由比ヶ浜は雪ノ下に続いて横にいる俺も見る
「え、ゆきのんと…ヒッキー?え?」
由比ヶ浜がえ?え?と混乱している
636: 2016/03/16(水) 13:04:21.76
「こんなところで奇遇ね、由比ヶ浜さん」
「うっす」
「あ。う、うん…。二人は…なんで一緒なの?珍しいよね…」
「あ?いや別にこいつとは…」
「あ、いややっぱいい!大丈夫!そう、だよね。休日に二人でこんなとこくるなんて、そんなの決まってるよね。なんであたし気づかなかったんだろうなー…。あはは、空気読むことだけがあたしの取り得なのに…」
ちょっと待て
こいつ盛大な勘違いをしていないか?
「じゃ、じゃああたしもう行くね!」
そう言うと由比ヶ浜は俺の腕の中で大層リラックスしていた犬(サブレだっけか?)をむんずと奪ってさっさと去ろうとする
637: 2016/03/16(水) 13:11:16.29
「由比ヶ浜さん、明後日の月曜日部室に来てくれないかしら?私たちのことであなたに話しておきたいことがあるの」
「あ、あー…あんまり聞きたくないかなぁって…あ、あはは…」
「わたしこういう性格だから上手く伝えられなかったのだけれど…。あなたにはきちんと話しておきたいの」
「…ん」
そう返事なのかも分からない微妙な返答をして由比ヶ浜は歩いていった
「由比ヶ浜に話って?」
俺が雪ノ下に問う
「6月18日、なんの日か知ってる?」
?
特に祝日というわけでもないよな?
638: 2016/03/16(水) 13:11:58.80
「分からん」
「由比ヶ浜さんの誕生日よ。多分ね」
「そうなのか…ん?多分?」
「ええ。アドレスに0618って入っていたから、多分」
んなもん直接本人に確認すればいいだろ…
まぁそこはこいつのコミュ力
無理だろうな
「だから誕生日のお祝をしてあげたいの。例え今後由比ヶ浜さんが戻ってきてくれなかったとしても、今までのお礼はちゃんとしたいから…」
「そうか…」
「それで…ひ、比企谷君。お願いがあるのだけれど…」
「あ?」
639: 2016/03/16(水) 13:12:41.68
なんだこいつ急にもじもじしやがって
「その…つ、付き合ってくれないかしら?」
「…は?」
660: 2016/03/20(日) 13:43:25.12
翌日、日曜日
さて久しぶりに問題です
俺は今どこにいるでしょーか
はい、残念
正解は東京BAYららぽーとでしたー
ちなみに面子は昨日と一緒の小町と雪ノ下でーす
何故こんなことになっているのかと言うと、昨日の雪ノ下の付き合ってくれというのは買い物に、という意味だったからである
まぁ昨日の流れから常識的に考えてそういう意味だよね
決して一瞬別の方の意味として捉えたことはない
うむ…決してない
小町同伴なのはまぁ当然である
雪ノ下と俺のセンスは壊滅的と言っていいだろうからな
661: 2016/03/20(日) 13:45:03.09
「驚いた…かなり広いのね」
「だな。じゃあ俺はこっち回るわ」
「では私は反対側を…」
「ストップです♪」
小町が案内板を指していた俺の人差し指をくきっと折る
「いてぇ…」
「何か問題でもあるのかしら?」
「なんで単独行動したがるんですか二人共…。せっかくなのでみんなで回りましょうよ!結衣さんの趣味的に押さえておけばいい場所は把握済みなので時間も大丈夫です!」
「まぁ俺はいいけど…」
「わたしも構わないわ」
「じゃあ出発です!」
662: 2016/03/20(日) 13:46:29.64
小町の指定した店を回る
いくつか回ったがどれもこれも若い女の子が好みそうな店だった
なるほど、さすが小町だ
「なぁ小町、次は…」クルッ
次の店に行くために歩いている最中、振り返ると小町がいないことに気づいた
やべぇ、迷子か?
「雪ノ下」
「なにかしら?」
通りの店を物色していた雪ノ下が戻ってくる
「小町見なかったか?」
「小町さん?…そういえばさっきから見かけてないわね。携帯にかけてみたら?」
「そうするか」
663: 2016/03/20(日) 13:48:01.87
だがいくら電話しても全く出る気配がない
しょうがないので諦めて小町に電話しろとメールして先に進むことにした
しばらく進むといかにも女の子専用ゾーンですといったところに入った
「で?何買うんだ?」
「そうね、普段から使えてかつ長期的の使用に耐える耐久性を持ったもの、かしら」
「事務用品かよ…」
「それも考えたのけれどね。どうせなら由比ヶ浜さんの趣味に合わせることにするわ」
まぁそれが正解だな
ちなみに小町は、一人で回って帰るから後はお二人で~とか電話してきやがった
小町め、どういうつもりだ
664: 2016/03/20(日) 13:49:14.47
「取り合えずここに入りましょう」
「…おい」
「何かしら?」
「ここ俺入れない雰囲気だろ」
雪ノ下が入ろうとしたお店はまさに女子女子してるといった感じだった
男の俺にはやや抵抗が残る
「下手したら店員さんに不審者に間違われる。ソースは小町の買い物につき合わされたことのある俺」
「不審者の雰囲気を出さなければいいのよ。あ、ごめんなさい。無理を言ってしまったわね」
「それはつまり俺が今不審者のオーラを出してると?」
「今ではなく常に、よ」
相変わらずの毒だな
慣れてきた俺が怖い
665: 2016/03/20(日) 13:52:13.31
「じゃあなおさら俺はこの店に入るわけにはいかないな。あっちのベンチで…」
「待ちなさい」
なんだよ…
と暗に言っている視線を雪ノ下に向ける
「あなた、私のセンスに任せる気?」
「自分のセンスがおかしいって自覚はあったんだな」
「悔しいことにね」
「それで?」
「だから、その…手伝ってもらえると助かる、のだけれど…」
始めからそう言えよな
こいつも面倒な性格してやがる
666: 2016/03/20(日) 13:52:54.40
「けど俺店に入れねぇし…」
「この際仕方がないわ。あまり距離をあけないようにしてちょうだい」
「は…?」
「今日一日に限り恋人のように振舞うことを許可すると言っているのよ鈍感谷君」
だから語呂わりぃって…
「ずいぶん上から目線なんだな」
「何か不満でも?」
「別に不満はねぇよ」
「え…そ、そう…」
やや驚いた様子の雪ノ下
俺が即答で不満はないと言ったからだろう
こいつはどうせ俺が断ると思っていたのだろうが、俺にとっては別に断る理由がないからな
667: 2016/03/20(日) 13:55:18.06
「むしろお前はいいのかよ?」
「えぇ、だって他人に見られたところで風評被害にあう心配もないもの。知人に見られたら不登校になってしまうかもしれないわね」
「だったらやめよう。知り合いがいない可能性は0じゃないからな」
「え…」
毒舌に対する報復だ
言い方はアレだがこれはイジワルと言っていいのだろうか?
「一人で頑張れよ。俺は外のベンチで待ってるからよ」
「ちょっと待ちなさい。さっきは不満がないと言っていたのに、男に二言があるというの?」
「お前が言ったんだろう?俺と一緒にいるとこを知り合いに見られたら不登校になるほど嫌だ、と」
「ぐっ…」
ふっふっふ
いつも言われてばかりの俺だと思うなよ
668: 2016/03/20(日) 13:57:44.76
「いいわ…一人で行くもの…!」
おっと、いじめ過ぎたか?
そろそろやめとくか
「冗談だ。俺も行くよ」
「…なによ今更。ころころ意見が変わるのね」
「すまんすまん。少しいじわるだったな」
「あなた…わたしを子供か何かと思っていないかしら?」
「…」
「否定しないのね…良い度胸だわ…」
「落ち着け。由比ヶ浜へのプレゼントを選ぶんだろ?早く行こうぜ」
「あっ、ちょっと待ちなさい!」
俺がスタスタと歩くと雪ノ下が何やら文句を言いながらついてくる
こいつかわいいところもあるな
669: 2016/03/20(日) 13:58:23.06
「で、それか?」
「いいでしょう?由比ヶ浜さんの弱点を補うという意味でも」
俺達は由比ヶ浜の得意分野ではなく弱点、もとい苦手分野に関するプレゼントで攻めることにした
それならば下手なことにはならないだろうという考えからだ
そして雪ノ下が選んだのはエプロンだった
なるほど、由比ヶ浜の料理は壊滅的だからな
「それで…なんでお前が着けてる?」
「私もそろそろ新しいのが欲しいのよ。どう?似合うかしら?」
そう言って俺に見せてくる
黒を基調とした落ち着いた雰囲気のエプロンだ
確かにこいつには似合ってるのだろう
670: 2016/03/20(日) 14:00:49.18
「似合ってるんじゃないか?」
「そう、ありがとう」
「いや待て待て。お前のエプロンはどうでもいいんだよ」
「…」
「由比ヶ浜のだろ?あいつはもっとふわふわぽわぽわ頭の悪そうなやつの方を好むだろ」
「…」ジー
「なんだよ…」
「別になんでもないわ。あなたの言うことも一理あると思っただけよ」
いや絶対嘘じゃん
めっちゃ不満そうじゃん
え、なんか地雷踏んだか?
どこだ?いつ踏んだ?
671: 2016/03/20(日) 14:01:45.48
「これならどうかしら?」
「え、あぁ…いいんじゃないか?」
今度見せてきたのはよさそうだ
ピンクを基調とした花などの模様があるまさに女子が着けるためにあるようなエプロンだ
「ではこれにするわ」
「てかお前もちゃっかりいろいろ買ってるよな」
「エプロンは予定になかったのだけれどね。ではレジに行って来るわ」
「おう」
雪ノ下がレジの列に並んでいる間、俺は向かいのペットショップを物色していた
まぁ由比ヶ浜へのプレゼントは事前に決めていたから物色はついでなのだが
672: 2016/03/20(日) 14:02:46.48
「あなたは何を買ったの?まぁ大体想像はつくのだけれど」
「じゃあ多分お前の想像してるものであってるよ。さぁ用事は済んだんだ。帰ろうぜ」
「そうね。帰りましょうか」
用事が終わったらさっさと帰る
これが出来るのがこれほどすばらしいとはな
出水や米屋、小南などと出掛けると当初の用事が済んでもそこらじゅう引っ張りまわされるからとても疲れる
まぁたまになら悪くはないが
が、やはりそうは問屋が降ろさない
雪ノ下が途中のゲームコーナーで突然立ち止まったのだ
なにやらクレーンゲームの中の景品をジーっと見つめている
なになに?パンさん?
確かデスティニーランドのキャラクターだったっけか?
こいつパンさん好きなのかよ…
673: 2016/03/20(日) 14:03:38.81
「…欲しいのか?」
「べ、別に…」
そうは言っても歩みは進まない
やっぱり欲しいんじゃねぇかよ
「やってみればいいだろ。まぁ取れんと思うが」
「あら、なかなか挑戦的な物言いね」
「いやガチで取れないんだよこういうのは。慣れないと無理だ」
「なら慣れるまでやればいいだけよ」
そういって100円玉を機械に投入した
負けず嫌いが原因なのかパンさんが欲しいのか原因なのか
俺には判断がつかなかった
674: 2016/03/20(日) 14:04:31.22
「ちょっと、今完全に掴んでいたでしょう?どうしたらあそこで外れるのかしら?」
「…」
「くっ…この!」
「…」
「この、いい加減に…!」
「…」
「っ…!」
結果
500円投入しても取れませんでした、と
まぁ俺は予想ついてたけどな
「お前へったくそだな」
「なっ!そこまで言うのならあなたは上手いんでしょうね?」
「まぁお前よりかはな。ちょっと貸してみろ」
俺が100円玉を投入する
675: 2016/03/20(日) 14:05:20.37
「ここだな」
ウィーン…ガシ…ズリッ
アームはパンさんを掴むことなく、ややズラしただけに終わった
「ふっ、なによ。結局あなたも取れないじゃない」
「まぁ見てろって」
俺はもう100円投入する
ウィーン…ガシ…ウィーン…
「うっし」
「なっ…!?」
今度はアームがきちんとパンさんを掴み、持ち上げる
そのまま取り出し口へとパンさんが落ちた
676: 2016/03/20(日) 14:05:56.38
「ま、こんなとこだな」
「ぐ…!」
最初の位置ではどうも向きが悪かったので100円を犠牲にして向きを変えたのだ
「あなたなんでこんな上手いのよ…」
「よく取ってくれってせがまれるんだよ。小町とか小南とか…てか小南の野郎取って欲しいって言うクセになんで金が俺持ちなんだよおかしいだろどう考えてもよ。お金は出すから取ってくれってのが普通だろうがよ…。しかも取れるまでやらせるし拒否したら小町に言いつけるとか言うし…」
「そ、そう…理由は分かったわ。分かりたくないことまでね…」
ちょっと雪ノ下が引いている
おっといけねぇ
俺のトラウマが出てきてしまったぜ
そんなことを思いながらパンさんを取り出し…
677: 2016/03/20(日) 14:06:56.43
「ほらよ」ポイッ
「!」パシ
雪ノ下へと軽く投げる
「欲しかったんだろ?」
「え…」
「やるよ。そのために取ったんだしな」
「あ、ありがとう…」
雪ノ下が少しうつむいて礼を言う
なかなか正直でよろしい
そして俺が歩き出そうとすると突然
「あれー?雪乃ちゃん?あ、やっぱり雪乃ちゃんだ!」
なんて声が後ろの方から聞こえた
あ?誰だこの人?
「姉さん…」
685: 2016/03/21(月) 20:27:22.04
「は?ねえさん?」
雪ノ下の姉さんという言葉を聞いて再度顔を確認する
こちらに歩いてくる女性はなるほど、確かに雪ノ下に似ている
美人で、露出が多い服装をしており、周囲の男子の視線を独り占めにしているが
歳は20歳くらいだろうか?
「こんなとこでどうしたの?あ、まさかデート?デートだな!このこのっ!」
「…」
雪ノ下姉が雪ノ下を肘でうりうりとつついているが、雪ノ下はそれを鬱陶しそうにしているだけだ
「君は雪乃ちゃんの彼氏かな?」
「「違うわ(います)」」
はもったー
686: 2016/03/21(月) 20:29:26.05
「息ぴったりー!」
「ちっ…」
あれ?
今舌打ちしなかった?
したよね?
俺とハモるのそんなに嫌?
合唱コンクールでもそこまで言われたことないよ俺?
「彼はただの同級生よ」
「まったまたぁ!照れなくていいのにー!」
雪ノ下が姉を思いっきり睨みつけているが姉はそんなこと気にもならないようでニヤニヤ笑っているだけだ
ふむ…
687: 2016/03/21(月) 20:32:51.90
「雪乃ちゃんの姉の雪ノ下陽乃です。雪乃ちゃんと仲良くしてあげてね!」
「はぁ…比企谷です」
「比企谷…へぇ…」
雪ノ下姉は俺を品定めするかのように上から下までざっと流し見た
なるほど、こういう人か
「比企谷君ね!うん、よろしく!」
「俺はよろしくしたくないですね」
「んー?」
雪ノ下姉、まぁこれからは雪ノ下さんとでも呼ぶか
彼女は俺が社交辞令さえも断る返答に笑顔のままそう言った
688: 2016/03/21(月) 20:33:53.84
「直接あなたみたいな人に会ったって経験はないですけど、今までにあなたの劣化みたいな人はちょこちょこ見てきてるんですね。まるで男子の理想のような女性。俺の中ではそれだけでもう違和感ばりばりなんですよね」
「ひ、比企谷君?」
「…」
雪ノ下はやや動揺し、雪ノ下さんからは笑顔が薄れていく
「まぁその経験から言わせてもらうと、あなたは特に警戒に値する人なんですよ。しかもさっき俺を品定めしてましたしね。だから嫌いとか、苦手とかではなく、警戒です」
「へー…」
「今の反応でそれが確定しました。まぁだからあなたには関わりたくありません。なのであなたとはよろしく出来ないです」
「…ふふっ」
ここまで言ってまだ笑うか
怖いな
689: 2016/03/21(月) 20:36:37.86
「面白い子だね!」
「は…?」
急に笑顔でそんなことを言うのだから俺も驚いてしまった
「うんうん!君みたいに初見で気付いた人は静ちゃん以来だなー」
多分あなたの本性を初見で見抜く人はボーダーにはたくさんいますよ、とは言わなかった
二宮さんとこの人が出会ったら恐ろしいことになりそうだな、なんて思う分には俺もまだ余裕がある
「ねぇねぇ比企谷君、今度お茶行こうよ」
「嫌です。俺の話聞いてなかったんですか?」
「そんなこと言わずにさー!」
「…」
俺がものすごく嫌な顔をして身体ごと雪ノ下さんから離れる
690: 2016/03/21(月) 20:40:14.24
「ちぇー。まぁいいや、じゃあ私はそろそろ行くね。大学のみんなも待たしてるし。ばいばい雪乃ちゃん、比企谷君」
はぁ、ようやく帰るのかこの人
出来ればもう二度と関わりたくないな
「また、ね。比企谷君?」ニコッ
その笑顔を見た瞬間、背筋が凍った
この人…どういうつもりだ…?
また、なんて二度と来るな
雪ノ下さんが去ってからは数秒沈黙が続いた
「比企谷君」
「…なんだ」
先に口を開いたのは雪ノ下だった
691: 2016/03/21(月) 20:43:25.73
「その、姉がごめんなさい」
「お前が謝ることじゃない」
「そう…。それにしても、一発でアレの本性を見抜くなんてね」
「あぁ、まぁな」
「別に褒めてるわけではないわよ」
「知ってるよ」
「…。帰りましょうか」
「そうだな」
「じゃあ私はこっちだから」
帰りの電車を降り、改札を抜けたところで雪ノ下がそう言って北口を指差す
692: 2016/03/21(月) 20:45:36.24
「俺はこっちだ。じゃあな」
俺の家は反対の南口からの方が近いのでそこで分かれる
まぁ時刻はまだ夕方
外も十分明るいし送っていかなくてもいいだろう
「ええ、さようなら。今日は楽しかったわ」
そう言って歳相応の笑顔をする雪ノ下に俺はしばらく見ほれていた
結局雪ノ下の背が見えなくなるまで俺は目が離せなかった
693: 2016/03/21(月) 20:48:01.10
翌日の放課後、奉仕部の教室にて俺と雪ノ下、そして由比ヶ浜が集合した
3人集まるのは結構久しぶりだ
「え、じゃあ二人は付き合ってないの?」
「やっぱそういう勘違いしてたか」
「冗談でもやめてちょうだい由比ヶ浜さん」
誤解はすぐ解けた
三人集まるなり即俺が質問したからな
お前何か盛大な勘違いをしていないか、とな
「だいたい俺が彼女なんか作れると思うか?第一もし作れたとしても彼女なんていらんわ。これ以上俺の一人の時間を奪われてたまるか」
「…」ジー
「…」ジー
「な、なんだよ二人して…」
「ヒッキーこじらせてるね…」
「全くこの男は…」ハァ
ひどい言われようだ
694: 2016/03/21(月) 20:49:48.79
「まぁとにかくそういうわけだ」
「じゃ、じゃあなんでゆきのんと二人で出掛けてたりしたの?」
「わんにゃんショーのことか?あれは本当にたまたま出会っただけだ。俺は小町と来てたのにトイレから出たらこいつが突然現れてたんだよ」
「あ、そうなんだ…」
「言い方にやや不満があるけれど、まぁその通りね」
ふぅ、これで面倒くさそうなことは回避できそうだ
「それと…由比ヶ浜さん、これ」
「え…?ケーキ!?なんで!?」
「なんでって…そういえば言ってなかったかしらね。今日はあなたの誕生日をお祝いしたくて呼んだのよ」
「へ?」
「それとこれも…」
そう言って雪ノ下は、昨日買ったプレゼント用の包装紙に包まれたエプロンを由比ヶ浜に渡した
695: 2016/03/21(月) 20:54:15.73
「プレゼント…?」
「由比ヶ浜さん最近部活に来ていなかったし…その、これからも励んでほしいという意味と感謝の意味を込めて。まぁ私だけが買ったわけではないのだけれど」
「え…っていうと…」
「ほらよ」
俺も鞄からプレゼントを取り出し、由比ヶ浜に渡す
「ヒッキーがプレゼント用意してくれてるとは思わなかったな…。その、こないだから微妙だったから…」
「別に誕生日だからってだけじゃないんだよ」
「え…?」
696: 2016/03/21(月) 20:56:10.97
「これでチャラってことにしないか?俺がお前ん家の犬助けたことも、それでお前が俺に気を遣ってたことも、全部だ」
「ヒッキー…」
「大体、そもそもお前に気を遣われるいわれがないんだよ。入院費だってちゃんともらってるし謝罪だって…だから同情してくれなくても…」
「ヒッキー!」
突然由比ヶ浜が大きな声で遮る
俺はやや気まずくて目線を合わせないようにしていたのにその声で由比ヶ浜の方を向いてしまい、目が合った
その目はやや涙汲んでおり、悲しそうな顔をしていた
「気を遣うとか同情とか…私は、そんなこと一度も思ったことないよ」
「え…」
698: 2016/03/21(月) 21:04:23.35
「私は私がしたいからこうしてるんだよ。ヒッキーに気を遣ってるわけじゃないの。私は私のためにここにいるし、ヒッキーと一緒にいる。だって…ゆきのんがそう教えてくれたから」
『何故周りに合わせるの?…不愉快だからやめてくれないかしら』
雪ノ下がかつて言った言葉が頭に浮かぶ
「由比ヶ浜…」
「私たちの関係がおかしいものだと思うなら、やり直そうよ」
「え…」
「そうね。あなたたちならちゃんと始めることが出来るわ」
そういう雪ノ下はやや寂しげな顔持ちだ
699: 2016/03/21(月) 21:11:04.38
「雪ノ下まで…」
「ヒッキー…これからはちゃんと向き合おう。お互いに」
そう言って右手を差し出してくる
やれやれ、こいつには敵わんな
「あぁ…そうだな…。またこれからもよろしく頼む、由比ヶ浜」
「えへへ。うん、よろしく!」
俺も右手を出し、しっかりと握手する
由比ヶ浜の顔はさっきまでとは打って変わり、とても明るいものだった
かく言う俺も今笑っていることは自覚している
さぞ気持ち悪い笑顔だろうな
全く、やっぱりこいつらと関わってると面倒なことばかりだ
まぁそんな碌でもないことが、人生においては重要なのかもしれんが…
700: 2016/03/21(月) 21:12:12.58
「ねぇねぇ二人共、これ空けていい?」
「えぇ、どうぞ」
「それはもうお前の物だ。好きにしろ」
「やったー!えっとこれは…エプロン?わぁ、かわいい!」
由比ヶ浜が雪ノ下からもらったエプロンを見て屈託のない笑顔ではしゃいでいる
雪ノ下はそんな反応に慣れていないのかやや恥ずかしそうに頬を赤く染めている
「どう?似合う?」
「えぇ、とても良く似合っているわ」
「お、おう…悪くないんじゃないか?」
「えへへー」
制服にエプロンってなんか…
いいよな
701: 2016/03/21(月) 21:16:11.33
「ヒッキーのは…わぁ、ちょっと待ってて」
由比ヶ浜が俺のプレゼントの中身を見るないなやそれを手にとって後ろを向いた
ちょっと待て
まさかこいつ…
「えへへ…どう?に、似合うかな?」
やっぱりやっちまいやがった
「由比ヶ浜さん…あの、それは…」
「ん?」
「由比ヶ浜…それ、犬用の首輪だぞ」
「っ!?」
途端に由比ヶ浜の顔が恥ずかしさで真っ赤になっていく
にしてもこいつ、犬用の首輪なのになんでこんな似合ってるんだよ
702: 2016/03/21(月) 21:17:48.70
「さ、先に言ってよバカ!」
そういって包み紙を俺に投げつけてきた
え、これ俺のせい?
「ふふっ、私は平塚先生に人員補充完了の報告をしてくるからケーキは少し待っていてくれるかしら?」
「わ、分かった!」
「おう」
その後は戻ってきた雪ノ下がケーキを取分けるための包丁を忘れたとかで、結局三人でフォークで突いて食べることになった
こいつにもこんなドジすることあるんだな
703: 2016/03/21(月) 21:22:31.64
「二人とも、今日はありがと!」
「えぇ、どういたしまして」
「おう」
こうして俺たち奉仕部の日常が戻った
由比ヶ浜とも無事和解し(和解と言っていいのかは分からんが)、再スタートという形だ
ただ、雪ノ下が寂しそうな顔をしていたことだけがきにかかる
まるで俺たち二人とは相容れないとでも言うような表情の雪ノ下だけが…
710: 2016/03/24(木) 12:15:17.14
それから季節は流れ、現在は7月中旬
夏休みが遂に始まった
そしてアレも始まる
そう、年に4回あるボーダーの入隊式だ
前回はトリガー無断使用の罰として補助をやらされたが今回は何もないので大丈夫
例によって今回も監督は嵐山隊らしいが、まぁ前回より以前は俺無しでも回ってたんだ
俺がいなくても問題ない
「と、考えてた時期が俺にもありましたよ、えぇ」
「なんで今回もいるんですか、比企谷先輩」
「俺が聞きたいわ…」
711: 2016/03/24(木) 12:17:15.25
どうやら今回はいつもより入隊者がかなり多かったらしく、嵐山隊だけではカバーしきれないかもしれないとのことだ
なので嵐山隊を補助をしてくれる人を募集する
という通知が来ていたことは知っている
もちろん給料も出るのだが、そんな面倒なこと俺が進んでやるわけもなく、我関せずでスルーしていたのだが…
1週間前、夏休みに入る直前のことだ
『比企谷君』
『なんだ?』
『もうすぐボーダーの入隊式ね』
『あ?そういやもうそんな時期か』
712: 2016/03/24(木) 12:18:00.12
『ゆきのん本当にボーダーに入るんだ』
『えぇ。比企谷君と同じ部活後に防衛任務を入れれば大丈夫よ』
『よく親が許したな。ボーダーに入りたいけど親が許さないから入隊出来ないって人はめちゃくちゃいるんだがな』
『母は珍しく肯定的だったわ。けどお父さんは否定的だったわね。だからまぁ押し切ることは出来たわ。お父さんは私を心配してくれていたのでしょうけれど、母はどうせ私が活躍してくれればイメージアップに繋がるとでも考えてたのではないかしら』
『ふーん…』
『な、なんだか複雑だね…』
『私は入隊出来れば良かったのだから問題ないわ』
713: 2016/03/24(木) 12:19:26.43
『それで?なんでわざわざ入隊式の話題出したんだ?』
『今回は監督役の人員が不足しているそうね』
『…なんでお前が知ってる』
『この前米屋君と出水君と廊下で偶然会って少し雑談した時に教えてくれたわ』
『何やってんだあいつら…。いや別に機密事項とかじゃないからいいんだろうけどさ…』
『それで、あなたは立候補しないのかしら?』
『するわけねぇだろそんな面倒なこと。給料出たとしても嫌だわ』
『でも前回はやったのでしょう?』
『なんで知って…それもあいつらか…』
『なら今回もやればいいじゃない』
『前回は罰としてやらされてただけだ。自主的じゃない』
714: 2016/03/24(木) 12:20:58.97
『罰?』
『…テニスの件だよ』
『あ…ヒッキー最後めちゃくちゃ強かったけど、まさかあの時…』
『誰にも言うなよ』
『何をしているのあなた…』ハァ
『とにかく、自主的に仕事するなんてごめんだ』
『いいじゃない、1回も2回も同じでしょう』
『同じじゃねぇよ…。なんでお前そんなに俺にやらせたがる…?』
『専業主夫が夢だなんて言う駄目人間が少しでもまともな人間になるために必要なことだと思ったからよ』
『…』ジー
『…っ』フイッ
『あ、ゆきのん目逸らした…』
715: 2016/03/24(木) 12:22:44.29
『お前…まさか一人で不安なのか?』
『何を言っているのかしらこのウジ虫君は。私が不安になる?そんなこと常識的に考えてあるわけないでしょう。大体私はいつだって一人で様々なことをしてきているのよ。今更一人だからって不安になるわけがないじゃない。こんなこと少し考えればわかることなのにそんなことも分からないのね。呆れるわ。そんなことだからあなたはいつまでたっても駄目谷君なのよ』
『…』
『ゆきのん…』
『はぁ…はぁ…』
『お前…照れ隠ししたい時にそうやってまくし立てる癖治した方がいいぜ』
『てっ…!?』
『はぁ…分かった分かった。しょうがねぇなぁ…』
『ちょっと、誰が照れ隠ししてるというの?』
716: 2016/03/24(木) 12:24:09.30
『ヒッキー、ゆきのんのことお願いね』
『へいへい…』
『ちょっと?聞いているの比企谷君?』
『んじゃ忍田さんに連絡しますかね』
『く、屈辱だわ…!』
というわけだ
俺もずいぶん甘くなったもんだ
忍田さんからは、比企谷が自ら…!?なんていわれる始末だし…
「まぁでも比企谷先輩なら前回もいましたし、勝手が分かっている分私たちも助かります」
「おう、そこは任せろ」
「今挨拶が終わったとこですね。私は先に訓練室に行っているので、これで」
「あぁ」
そう言って木虎は足早に訓練室へと歩いていった
717: 2016/03/24(木) 12:24:54.29
今回も後ろの方から全体を見回してみる
なるほど、確かに多い
前回の1.5倍ほどはいるだろうか?
こうした波はよくあることらしい
極端に少ない時もあれば、逆に多い時もある
多い時は大抵どっかの学校の集団がまとめて応募してきた時とかだとか言ってた
こういう集団はリーダー格がやるって言ったら周りまでついて来やがるからな
そんな軽い気持ちでよく親も許すもんだ
ちなみに雪ノ下は早い段階で見つけた
遠くからでも分かるほどダントツの容姿してるからな
周りの男子どももチラチラと雪ノ下のことを見ている
やめとけ、迂闊に近づくと火傷どころか焼氏体になるぞ
雪ノ下は最初不安気な様子だったが、俺を見つけるやいなや安堵とした表情になる
ちょっと照れるからそういうのやめろよ
718: 2016/03/24(木) 12:28:55.93
「それじゃあ最初の訓練に移ろうと思う。ついてきてくれ」
嵐山さんの掛け声でぞろぞろと移動が始まる
スナイパー組は佐鳥、東さん、古寺が監督らしい
東さんがいるなら大丈夫だ
「比企谷君」
「ん」
雪ノ下が声をかけてきた
「本当に来てくれ…んんっ…なんであなたがここにいるのかしら?」
流石に今のは無理があると思うぞ
「まぁ…由比ヶ浜に頼まれたからな」
「そう。あなた彼女には甘いのね」
「そりゃお前もだろ」
「…否定はしないわ」
そんな会話をしながら訓練室へと続く廊下を歩く
719: 2016/03/24(木) 12:30:25.58
「そういや今からやるのは職場体験の時にやったやつだ。1回やってるからもう慣れただろ?」
「そうね、あの程度なら問題ないわ」
「10秒きれるように頑張れよ」
「あなたの記録も抜いてあげるわよ」
いやぁ
それは流石に無理だな
「さぁ着いたぞ。まずここで行うのは…」
訓練室に着き、嵐山さんの説明が始まったので俺は雪ノ下と分かれる
給料をもらう仕事なのだ
やるべきことはちゃんとしなくてはならない
「何か分からないことがあったら俺や充、そこにいる彼などに聞いてくれ。それじゃあ始め!」
入隊生達が早速訓練を始める
例によってあの訓練だ
720: 2016/03/24(木) 12:31:20.18
大半が終わった
現時点で最も速いタイムは53秒
まぁそこそこって程度だ
今回もあまり期待できるやつはいなさそうだ
一人を除いて…
『記録、8秒』
おぉ!と歓声が上がる
さすが雪ノ下だな
前回より遥かに記録がいいし、10秒もきっている
これならばB級上位やA級の面々からも注目されるだろう
勧誘されすぎて疲れなきゃいいけど…
「まぁ及第点ね」
訓練室から出てくるなり雪ノ下がそんなことを言うもんだから周りのモブ達は既に尊敬の眼差しを送るものまで現われ始めた
木虎もこんな感じだったとかなんとか
こいつら結構似てるかもな
721: 2016/03/24(木) 12:32:24.49
「あの、すいません」
「ん、どうした?」
「これなんですけど…」
入隊生からトリガーの性能についての質問をされたのでそれに答える
これも仕事の一つだ
雪ノ下は特にやることもなくなったのかボケーっと他の人の訓練を見ている
「よし、終わったようだな!じゃあ…」
全員がそつなく訓練も終わり、次の訓練に移行する
今度は合同訓練だ
地形踏破や隠密行動、探知追跡などなど
こればっかりは経験や知識がものを言う
流石の雪ノ下も思うようにいかないようだ
722: 2016/03/24(木) 12:34:36.89
「なかなか難しいのね」
「それでも地形踏破は1位じゃないか」
「体力がきれないから」
「あぁ、なるほど」
体力がきれないからこいつも自由に思いっきり動くことが出来る
コツを掴むのはダントツで早い雪ノ下だ
既にトリオン体での動きはほぼ把握したのだろう
「今が1082ポイント、4000まであと2918…このままでは先は長いわね」
「なんだ、仮入隊しなかったのか?」
「仮入隊?」
「事前に素質があるかどうかチェックするようなものだ。その結果によってはポイントが上乗せされてスタートするんだ。例えば木虎なんかは最初から3600ポイントだったぞ」
「知らなかったわ…」
「ちゃんとHPにも書いてあるはずだが…惜しいな。お前なら3000ポイントは確実だったろうに」
「今更嘆いていても仕方がないわ。ポイントが少ないのなら奪えばいいのよ」
「まぁな」
もはや強盗のセリフだ
723: 2016/03/24(木) 12:35:57.31
「取り合えず3000くらいのやつらからいってみろ。んで余裕そうならもっと上狙っていけばいい。まぁ3000超えしてるやつ自体あんまりおらんけど」
「えぇ、行ってくるわ」
そう言ってブースに入っていった雪ノ下はそれはもう悪魔のようだった(他の訓練生談)
そこらじゅうから毟るand毟る
3880ポイントなんていうもうすぐB級のやつも倒してしまったのでポイントがめちゃくちゃ動く
10本勝負の結果、一気に3548ポイントまで落ち、涙目になっていた
ご愁傷様です
雪ノ下は既に2000ポイントを突破している
はやすぎぃ!
「比企谷…」
「ん?お、ハッチーじゃん」
「ん、三輪と米屋か」
「ハッチーが一人でここにいるなんて珍しいな。どした?」
「大体お前のせいだよ…」
「え?俺ハッチー呼んだっけ?」
「分からんならもういい…」
「?」
724: 2016/03/24(木) 12:36:51.74
三輪と米屋が話しかけてきた
俺がここにいる原因は一重に雪ノ下に人員不足の情報を流した出水と米屋にある
こいつらがリークしていなければ俺は今ここにいないのだ
「ん?あれ雪ノ下さんか?本当に入隊したんだな!」
「雪ノ下?」
「秀次も知ってるだろ?J組の雪ノ下さんだよ」
「あぁ…常に学年1位のやつか」
「三輪、お前そういう覚え方してんのか…」
「たまたまだ」
「というか雪ノ下さん職場体験にいたじゃん。ハッチーと模擬戦もしてたし」
「興味なかったから見ていなかった」
「三輪らしいな…」
三輪もむやみに噛み付いてくることがなくなって、こうして普通に会話が出来るまである
いまだに迅さんや空閑には敵対心というか警戒してるらしいが
725: 2016/03/24(木) 12:37:57.34
「というか雪ノ下さんすげぇな。さっきから1本も取られてねぇぞ」
「まぁあいつはスペックだけはアホみたいに高いからな。唯一の弱点の体力もトリオン体なら関係ないし」
「あの動きならB級上位にもそこそこ通用するだろうな。あと数ヶ月もすればA級レベルまで到達するだろう」
「お、珍しく秀次が高評価」
「客観的な評価をしたまでだ」
「まぁでもそんくらいだろうな。証拠にさっきから勝ちまくってるし」
もはや相手がかわいそうになってきた
結局雪ノ下は1時間程毟りとってブースから出てきた
ポイントは既に2500ポイント近くまで到達している
空閑を彷彿とさせるな
そういえば空閑は既にB級に上がっている
入隊からわずか2週間で3000ポイントも獲得したのだ
まさにスピード出世
だが雨取はまだC級である
もう少しでB級に上がれそうだとか言っていた
まぁそんなわけで雨取がB級に上がってくるまで隊が組めないので三雲、空閑はランク戦には参加していない
個人戦はしているらしいが
空閑と緑川なんてしょっちゅう戦っているらしいし
739: 2016/03/31(木) 21:13:09.23
「ふぅ」
雪ノ下は一息ついて俺の隣に腰掛ける
「どうだった?」
「簡単ね。特に苦戦するような人はいなかったわ」
「そりゃ結構なこって。ほい」
「あら、これは?」
「みりゃわかんだろ。お茶だよ」
「そういうことを言っているのではないわ。何故私に、という意味よ」
「差し入れみたいなもんだ。素直に受け取れ」
「…そうね。有難く頂くわ」
雪ノ下はお茶を飲んでリラックスした様子だ
ちなみに三輪と米屋は現在個人ランク戦中だ
二人も戦うためにここに来たらしい
10本勝負で現在三輪が5-3で勝ち越している
740: 2016/03/31(木) 21:14:58.02
「あら、今戦ってるの米屋君じゃない」
「あぁ」
「相手は?米屋君に勝ちこしているようだけれど」
「A級7位三輪隊隊長の三輪秀次。ちなみに米屋は三輪隊のアタッカーだ」
「へぇ、二人とも流石A級ね。動きが大違いだわ」
訓練生とA級で比べんな
「ちぇー、今日こそは勝ち越せそうだったんだけどなぁ」
「まだまだ動きが荒いぞ、陽介」
「これが俺の動きなんでぇい」
二人がブースからでてくる
結果は6-4で三輪の勝ち
三輪はボーダーでもトップ3に入るオールラウンダーだ
まだ米屋ではなかなか勝ちこせないだろう
741: 2016/03/31(木) 21:16:47.21
「お、雪ノ下さん終わったんだ。うっす!」
「こんにちは、米屋君」
米屋と雪ノ下が挨拶を交わす
「それと三輪君、だったかしら?」
「雪ノ下雪乃だったか、よろしく。陽介が迷惑かけてないか?」
「よろしく。大丈夫よ。今のところはね」
「今のところなのかよ!今後も大丈夫だ…と思う」
米屋が突っ込みを入れる
だが俺は既に想像できている
学校の定期試験直前に雪ノ下や俺達に頭を下げている米屋の様がありありと
もはや恒例行事だからな
742: 2016/03/31(木) 21:19:14.93
「何かあったら言ってくれ。出来るだけ力を貸そう」
「ありがとう。でも多分大丈夫だわ。いざとなったらこのミジンコを使うから」
「おい、それは俺のことか」
「あなた以外に誰がいるのかしら?」
「ちょっと強いからって調子乗ってねぇか?今すぐボコボコにしてやってもいいだぞ?」
「上等よ。むしろ願ってもないわ。あなたこそ今になって止めてくださいなんて言わないでよね」
「おーけーおーけー。ブース入れ」
そう言って俺達二人はブースへと入っていく
「…仲がいいんだな」
「だよなぁ。言い合ってる言葉は悪いけどな」
「そろそろミーティングの時間だ。行くぞ、陽介」
「あいよー」
三輪と米屋はそんなことを言いながら自隊の作戦室へと帰っていった
743: 2016/03/31(木) 21:20:39.31
結局この勝負は当たり前だが俺の勝ち
10-0の圧勝だ
まだまだ負けん
ランク外対戦なのでポイントの上下は起きないが、雪ノ下は1本も取れなかったという理由で相当悔しそうだった
はっ、ざまぁみろ
元アタッカー3位舐めんな
744: 2016/03/31(木) 21:21:15.56
またまた季節は流れ、現在は8月初旬
俺は現在自宅の自室にてごろごろしている
今日は防衛任務もミーティングもないので存分に休むことが出来る
こんな日はそうそうないぞ
あー、自由って素晴らし…
Prrrrr…
…
Prrrrr…Prrrrr…
なんだろう
ものすごく嫌な予感がする
Prr……
お、切れた
745: 2016/03/31(木) 21:25:27.57
「お兄ちゃん電話ー」ガラッ
「…誰からだ?」
「なんか平塚先生?って人から」
ふぁっ!?
「いいから出てよ、ほら」
「お、おう…。も、もしもし」
『何故出なかった…?』
こわっ!?
「いや、あのですね、ちょうどトイレに行っていてですね…」
『そうか。妹さんはずっと部屋にいたと行っていたが…どっちが嘘をついているんだろうなぁ?』
「すいません、面倒だったんで着信無視してました、はい」
746: 2016/03/31(木) 21:28:22.55
『はぁ…もういい。手短に用件だけ伝えよう。夏休み中も奉仕部の活動を行う』
「えっ」
『日時は来週の月曜日。千葉駅に来なさい』
「いや、防衛任務が…」
『その日から3日は入っていないだろう?』
「な、なぜ俺のシフトを…」
『なに、とあるツテから得た情報だ』
ツテ?
『そういうわけだ。必ず来い。拒否権はない』
「…問答無用っすね」
『あぁ、それと君の妹…小町君だったか?彼女にも来てもらっても構わない』
「は?小町を?奉仕部関係ないじゃ…」
『まぁ小町君以外にも君の知る面々が多くいるが…それは当日のお楽しみだな』
「は?…え?」
『それではな』プツリ
なんだったんだ?
てか来週の月曜日って3日後じゃん
今度は何をやるつもりだあの教師は
747: 2016/03/31(木) 21:30:23.21
そしてその来週の月曜日…
「なんじゃこりゃ…」
思わずそんな普段とは違う口調が出た
それも無理はない
俺は今平塚先生が命令された通り千葉駅に来ている
格好は動きやすいものを、ということだったのでとても身軽な物だ
問題はそんなことではない
目の前に広がる光景が問題だ
「あ、ヒッキーだ。やっはろー」
「あら、ようやく来たのね。もう少しで遅刻よ比企谷君」
「おはよう、八幡」
「おーっすハッチー」
「秀次、顔が暗いぞ。どした?」
「なんで俺はこんなところにいるんだ…」
「いい加減諦めなさいよ三輪」
俺の目の前には由比ヶ浜、雪ノ下、天使(戸塚)、出水、米屋、三輪、小南の総勢7人もの人がいる
748: 2016/03/31(木) 21:31:13.56
「なにが…どういう…?」
「はいはい、お兄ちゃん呆けてないで行くよー」
だが小町は事前に知っていたのだろう
何も触れずに彼らの元へと歩いていく
「やぁ、比企谷」
「平塚先生…これは一体…」
「前に電話で言っただろう?奉仕部の活動をするんだ」
「由比ヶ浜と雪ノ下…戸塚もまぁ分かるとして、他の4人は…?」
「まぁそれを説明するには事の始まりから話したほうが良いだろう。あれは夏休みに入る直前くらいのことだ…」
749: 2016/03/31(木) 21:32:08.03
『失礼します』
『話ってなんすか?平塚先生』
『やぁ、呼び出してすまないな。出水、米屋』
『いえ、それは別に構わないですよ』
『それで話とは?』
『うむ、単刀直入に聞く。君たちボーダー隊員の防衛任務のシフトを確認することは出来ないか?』
『シフトをっすか?』
『うーん、多分無理だと思いますね。いろんな人のシフトとかも書かれてるんで』
『そうか…』
『見たいのはハッチーのっすか?』
『ハッチーの?』
『ん?まぁそうだが…』
750: 2016/03/31(木) 21:33:51.71
『どこが空いてるのかとかなら口頭で教えることくらいなら出来ますよ。見せるのは無理ですけどね』
『そうか!では比企谷のこの月曜から3日間のシフトを知りたいのだが…』
『ちょっと待ってくださいね……ハッチーは…入ってないですね。全部空いてます』
『なるほど。ありがとう、助かったよ』
『いえいえ』
『その日にハッチーなんかあるんすか?』
『なに、奉仕部の活動の一環で小学生の林間学校、つまりはキャンプだな。これのサポートをするのだよ。だがヤツに事前に教えると逃げるとも限らんからな。こうして秘密裏に外堀を埋めていっているのだ』
『な、なるほど…』
『…それって奉仕部だけなんすか?』
『ん?いや、それでは人員が全然足りないので生徒から何人か募集するつもりだよ』
751: 2016/03/31(木) 21:34:57.99
『それ俺も行けます?』
『米屋!?』
『それはもちろん構わないが…防衛任務はいいのか?』
『俺もその3日間は入ってないので大丈夫っす』
『えー、ずりぃぞ!俺は最初の日に入ってるからよぉ…』
『白チビに変わってもらえば?あいつ夏休み中ほぼ毎日暇してるって言ってたぜ』
『うーん…まぁ戦力的には太刀川さん一人でも大丈夫だからなぁ…。忍田さんとかに相談してみるわ』
『そうしてみ』
『では二人共参加するものだと考えておこう』
『それでお願いします』
『また分かり次第連絡しますんで』
『あぁ、頼む。ところであと2、3人はほしいのだが、誰かいないか?』
『うーん…そうなると防衛任務入ってないやつらが良いよなぁ…』
『秀次連れてくか?俺と同じ隊だからシフト同じで空いてるだろうし』
『あいつがこういうイベント来るか?』
『騙して連れて行こうぜ。適当に理由つけてよ』
752: 2016/03/31(木) 21:36:21.94
『…俺は知らねーぞ』
『大丈夫だって』
『ふむ、ではその秀次という子もだな』
『あと一人は…』
『先生、他校のやつとかは駄目っすかね?』
『他の高校の友人か?別に構わないが…』
『誰誘うつもりだ?』
『小南とか空いてるかなーって』
『え、女子誘っていいんすか?』
『女子でも大丈夫だぞ。少なくとも2人は女子が参加する予定だしな』
『んじゃ聞いてみようぜ』
『そうするか』
『ふむ、ではまた随時連絡してくれ』
『了解です』
『んじゃ失礼しまーす』
753: 2016/03/31(木) 21:38:24.36
「というわけだ」
つまりまた出水と米屋のせい、と
あいつらの方をジロッと向くと露骨に顔を背けやがった
あと出水、吹けないのに口笛はやめとけ
761: 2016/04/02(土) 15:31:14.80
「てか3日間ってなんすか。俺ほぼ手ぶらっすよ」
「その点は心配ない。君の妹が実に優秀だったからな」
「えへへー」
「?」
「ここ最近下着やTシャツの数が少なかったと感じたことはなかったかね?」
「え?あっ…」
「そういうことだよ、お兄ちゃん」
「ほら、君の荷物だ」ポイッ
「小町…なんということを…」パシッ
「事前に平塚先生に送っといたんだー」
「実に出来る妹だ」
「…そりゃ兄として嬉しい限りです」
「さぁみんなそろそろ出発するぞ。乗り込めー」
もう諦めるしかないようだ
まぁいいか
たまにはキャンプとしゃれこもうじゃないか
763: 2016/04/02(土) 15:34:01.25
「で、なんでこいつらまでいる…」
キャンプ場についた俺達を待っていたのは
「やぁヒキタニ君」
「ハヤ×ハチきたぁ!」
「姫菜擬態しろし」
「めっちゃ森!マジやべーっしょ!」
なんと葉山、ホ〇の人、縦ロール、っべーさんの4人だ
名前?
確か正しくは海老名さんに三浦、あとは戸部?だったか
まぁそれはどうでもいいや
平塚先生曰く
「彼らにも来てもらった。なに、コミュニケーション能力という点においては彼らは高いからな」
とのことだ
それは暗に俺のコミュ力が低いって言ってません?
「それと後ろの人達は…」
葉山が俺に続いて車から降りてきた面々を見ると出水達もそれにきづいたようで
764: 2016/04/02(土) 15:37:35.84
「出水だ、よろしく。葉山隼人だろ?名前はよく聞くよ」
「俺は米屋陽介な。よろしくー」
「三輪秀次だ…」
「小南桐絵よ。学校は違うけどよろしくね」
「比企谷小町ですー。兄がお世話になってます!」
「へー!ヒキタニ君って妹いたんだ!マジよろしくなー!俺は戸部!」
「俺は出水君の言う通り葉山隼人って名前だ。よろしく」
「あー、君とかつけなくていいぞ。俺らタメだろ?堅苦しいのは無しでいこうや」
「そうそう」
「そうか…、じゃあ改めてよろしくな。出水、米屋、三輪、小南、小町ちゃん」
「あぁ…」
「はいはい、よろしくー」
その後も小町や戸塚、三浦達を交えて自己紹介的なものが続いた
最初出水と米屋は縦ロールに対してやや言葉少なく、といった感じだったが会話が進むに連れてそれも解消されていったようだ
あのテニスの件を出水と米屋は見ていたからな
俺としては仲良くやってくれた方が面倒じゃないので助かる
765: 2016/04/02(土) 15:38:50.16
「おーい、ハッチー!ハッチーもこっち来いよ!」
「ん、あぁ。今行く」
少し思考に没頭しすぎたか
しかしここは気持ちが良いな
空気はひんやりとしていて風が心地良い
たまに避暑地としてこういうとこに来るのも悪くないかもしれん
「さぁ、諸君。きりきり働いてもらうぞ!」
こうしてまた面倒な仕事がスタートした
「はい、みんなが静かになるまでに3分かかりました」
でた
この叱り方も高校生になると懐かしいと感じる
今現在は小学生も到着し、先生が挨拶を行っているところだ
俺達は脇の方で待機していたのだが、先生が俺達の紹介をすると葉山が一歩前に出て挨拶をした
まぁ俺達の代表って感じだな
「お前は挨拶しなくていいのか?」
俺が小さい声で雪ノ下に言う
766: 2016/04/02(土) 15:40:09.33
「わたし人前に立つのはあまり好きじゃないの。人の上に立つのは好きなのだけれど…」
「好き、というか自然に人の上に立ってるよなお前は」
「そんなに褒めないでくれないかしら。照れるわ」
「いや、皮肉のつもりだったんだが…」
「知ってるわよ。冗談に決まっているでしょう」
「さいですか…」
そんなこんなで挨拶もスムーズに終わり、次はオリエンテーリングだそうだ
小学生達は5、6人のグループになってきゃいきゃいと森の中へと進み始めた
「やっべーわー!マジ小学生若いわー!」
「ちょっと戸部。あーしらが年取ってるみたいじゃん」
「いやいや!そんなつもりで言ったんじゃないべ!」
「まーでも戸部の言うことも分かるわ。わたしにもあんなにはしゃいでた頃があったんだなーって思うと…」
「つい数年前は小町もあんなふうにはしゃいでたんだなー、とは思いますー」
767: 2016/04/02(土) 15:41:40.54
「だべ?だべ?いやー、小町ちゃんに桐絵っちマジ分かるわー!」
「誰が桐絵っちよ!」
「うるさいぞ桐絵っち」
「声がでけぇぞ桐絵っち」
「真っ二つにするわよ弾バカに槍バカ」
「っべー…桐絵っちマジ怖いわぁ…」
「だろ?こいつすぐ暴力に訴えてくるんだよなー」
「ついたあだ名が女子高生(斧)」
「まじ?っべーわー…」
「あんたらそこに正座しろ」ゴゴゴゴゴ
「「「ウッス、スイマセンチョウシノリマシタ」」」
「米屋と出水、流石のコミュ力だな」
「陽介は基本誰とでもすぐ仲良くなるからな」
「お前も見習ったらどうだ?」
「その言葉、そっくりそのままお前に返す」
「あ、あはは…」
俺と三輪と戸塚は一歩引いてその光景を眺めていた
768: 2016/04/02(土) 15:43:01.03
「戸部ともすぐ仲良くなったようだな」
「葉山…」
「…」
「三輪に比企谷もみんなと仲良くやろうぜ。そのほうが絶対楽しいしさ」
葉山がそんなことを言い出した
「あぁ、そのうちな」
「考えておく」
「そ、そうか…」
俺達の返答に葉山はやや引き気味だ
まぁこんな根暗が二人揃っていては流石にやりづらいのかもしれない
戸塚は終始苦笑いしていた
「しゅーごー!」
平塚先生の掛け声で俺達は平塚先生の前に集まり、黙って話を聞く体制に入る
「君達の最初の仕事はオリエンテーリングのゴール地点で弁当と飲み物を配膳することだ」
「配膳ですか。了解です。ここに来た時の車に乗ればいいですか?」
葉山が問う
769: 2016/04/02(土) 15:48:22.43
「車?そんなもの使えるわけがないだろう」
「え…」
「きりきり歩きたまえ。それと当然だが小学生よりも早く着きたまえよ。配膳するのに遅れたら大変だ」
…
確か小学生の初陣は結構前に出発したよな?
やべぇ!
みんな同じことを思ったのか焦り顔ですぐ出発の準備を始める
出発した俺達は流石に小学生とは体力も歩幅も違うのでガンガン追い抜いていく
途中葉山や三浦などが小学生に声をかける
三浦なんて明らかに葉山に対するポイント稼ぎのアピールだ
葉山もそれに気付いているようで、三浦が葉山の方をちらちらと見るたびに苦笑いしている
てか米屋と小南
小学生と一緒に走って上るのはやめろ
出水も出水で後ろで笑いながら発破をかけるな
戸塚と小町も笑顔でそれに着いていく
楽しそうだけど小学生がめっちゃ肩で息してるぞ
これ頂上に着く頃にはバッテバテになってるだろうな
770: 2016/04/02(土) 15:53:57.42
だが途中、気になる案件があった
葉山がとある小学生の一団を少し手伝っている時だ
「比企谷…」
「三輪も気付いたか」
「あぁ」
「あら、あなた達も?」
「雪ノ下もか」
葉山が手伝っている女の子5人組
その中の一人が明らかにハブられている
4人は葉山ときゃいきゃいお話しながら歩いているのに対し、残りの1人はそこから数歩離れたところで首にかけているカメラを持ちながらとぼとぼと歩いていたのだ
さらに前方を歩く4人はその後ろの子を見てお互いにだけ伝わるようなクスクス笑いをしている
小学生でもこういうことをやるのか、と思う人もいるだろうが、実は小学生の方がこういうのはよく行っている
いや、それだと語弊があるな
正しくは小学生の方が分かりやすいからよく見かける、だな
中学、高校になると露骨にやる人がどんどん減っていく
年齢が上がっていくごとにすることが陰湿で他者からは分かりづらいものになるのだ
つまり関係のない人から見ると、そんなイジメはないように見えてしまう
その分小学生は中高校生ほどは悪知恵がないので、いくらか分かりやすいのだ
だからいじめの件数自体は実は小中高と大して変わらないのかもしれない
771: 2016/04/02(土) 15:55:12.30
「どこにでもあるよな、ああいうの」
「俺はああいったことは特に受けたことがないが、見かけることはよくあったな」
「はぁ…」
雪ノ下はため息をつく
「チェックポイント見つかった?」
葉山が声をかけた
「…いいえ」
「そっか。じゃあみんなでさがそう!名前は?」
「…鶴見留美」
「俺は葉山隼人、よろしくね。あっちの方とか隠れてそうじゃないか?」
葉山がボッチの少女、鶴見とか言ったか、彼女の背中を押す
ここらへんは流石と言うしかない
だが…
「まずいな」
「あぁ」
「あれでは悪手ね」
俺達三人は気付いていた
そして俺達の思っていた通りのことが起こる
いや、既に起こっている
772: 2016/04/02(土) 15:56:25.81
葉山が鶴見に話しかけている間、葉山の後ろでは残された4人が鶴見のことを睨んでいる
葉山がやったことは最悪という他ない
もし鶴見が葉山の申し出を断っていたとしても生意気なやつだと思われ、受け入れても嫉妬の対象としてうらまれる
つまりどうあがいても悪い方向にしかいかないのだ
葉山は現状話しかけるのではなく、あくまで少し気にかける程度で抑えるべきだったのだ
「あいつは善意であれをやっているのか?」
「少なくとも良かれと思ってやってるんだろうな」
「ああいった無責任な善意は時として毒となる。彼は気付いていないのでしょうね」
「葉山はみんな仲良く、とか言ってたしな」
「理想論だ。反吐が出る」
「同感ね。教室というわずか数十人の集団ですらそんなことも叶わないのに、本当夢物語だわ」
かつて人を救うだなんて言ってたやつが言うセリフとは思えないな
と、心の中でのみ呟く
「とにかく、あれは俺達が簡単に口を挟んで言い案件じゃないだろう」
「そうね」
「先を急ごう。既に陽介や小南はかなり先まで行ったようだ」
773: 2016/04/02(土) 15:58:35.66
頂上に着くと既に由比ヶ浜、戸部、海老名さん、出水、米屋、小南、戸塚、小町が準備に取り掛かっていた
「あら、やっと来たのねアンタたち」
「おっせーぞハッチー!秀次!」
「あ、ゆきのん!こっちだよー!」
俺達が到着したすぐ後に葉山と三浦も到着したので、これで全員が小学生より早く着けたようだ
その後は特に問題もなく準備は完了した
するとそのすぐ後くらいに小学生の第一陣が到着したのでなかなかギリギリだったようだ
それから時間は流れ、現在は夕方
俺達は休憩を挟んで現在はキャンプ場の下にある調理場に来ている
作る予定のものは当然、キャンプといったらカレーである
774: 2016/04/02(土) 16:03:27.46
「ヒッキー無駄にうまい…きもい」
「家でも進んでやってくれると嬉しいんですけどねぇ」
「きもいってなんだ。専業主夫希望なめんな。あと小町、それは素直にすまん」
「でも意外ね。男子にしては本当上手だわ」
「伊達にレイジさんに料理を習ってるだけはあるってことね」
「お前はカレーしか作れんもんな。その点今日はカレーで良かったじゃねぇか」
「へー、桐絵ちゃんカレー作れるの?」
「えぇ。カレーなら私に任せなさい!」
「カレーだけかよ…」
「うっさいわね弾バカ」
「みんな仲いいね~。特にイズ×ハチとかもう…ぐ腐腐腐腐」
「え…」
「落ち着け出水、動揺したら負けだと思え」
俺、小町、由比ヶ浜、雪ノ下、小南、出水、海老名さんの7人は野菜や肉のカットなどの主に仕込み担当だ
葉山、戸部、戸塚、米屋は火起こしとその番をしたいと言ったのでそちらに
三浦は葉山に金魚の糞のように着いていき、三輪も米屋の面倒を見るとかでそちらの方へ向かった
三輪も苦労してるんだな
775: 2016/04/02(土) 16:05:30.30
「米研ぎ終わったよー」
「では火の方へ持っていってくれるかしら。飯ごうで炊くにはやや時間がかかるから先にやっておかないと」
「おっけー。じゃあ持ってくねー」
「結衣だけじゃ持ちきれないでしょ。わたしもいくね」
「うん、ありがとう」
「気をつけてね」
由比ヶ浜と海老名さんがお米を持っていく
由比ヶ浜には包丁を持たせるなという俺と雪ノ下の暗黙の了解があり、由比ヶ浜でも米研ぎくらいは出来るだろということで海老名さん監修の下でやらせたのだ
とても自然な流れでその方へもっていけたので雪ノ下と俺は見えないところで小さくガッツポーズをした
「桐絵さん切るのはやーい」
「お、ほんとだ。包丁の扱いが上手い…なんかイメージ通りだな」
「それどういう意味よ。切るわよ」
「なんか斬るの文字違わねぇ!?微妙にそっちの方が怖いんだけど!?」
「気のせいよ」
776: 2016/04/02(土) 16:06:43.22
「ほら、あと少しなんだから早くやってしまいましょう」
「そうだな」
「アンタ、雪ノ下さんの言うことなら素直に聞くんだ…」ジト
「あ?別にそんなこと…」
「まぁ当然ね。それは私の下僕なのだし」
「え!?そうなの!?」
「今俺のことそれって言ったか。あと雪ノ下、変な嘘はやめろ。小南は極度の信じやすさで有名なんだよ」
「あら、嘘を言ったつもりはないのだけれど?」
「…?…??」
「ほら見ろ、小南が混乱してる。おい、俺は別にこいつの下僕なんかじゃない」
「…??」
「駄目だこりゃ…」
結局手が止まった小南の分は小町が切り、全てのカットが完了した
「おーっす、そっちはどうだー?」
出水の声で米屋達がこっちに振り向く
「おー、いい感じだぜ」
「ほらこれ。食材よ」
「サンキュー桐絵っち!」
「だから桐絵っちはやめろっての!」
カレーは別に対して作るのは難しくない
だがそこはカレー奉行の小南
終始仕切っていたのは言うまでもない
777: 2016/04/02(土) 16:07:46.03
「やっぱりこういうところで食べるご飯は美味いな」
「マジ木に囲まれて食べるカレーとか最高っしょ!」
「んー、おいしい」
「ほら結衣、顔にちょっと着いてる」
「あはは、優美子お母さんみたいだね」
「ちょっ!?」
「俺おかわりしてこよーっと」
「あ、俺も行く」
「じゃあ僕も行こうかな」
米屋と出水、戸塚がおかわりしに席を立つ
「戸塚ってあんまり食べるイメージないけど結構食べるんだな」
「うん!僕運動部だしね」
「あー、そういやテニスやってたっけ」
「あれ、知ってるの?」
「前ハッチーと練習してただろ?そん時見たんだよ」
「そうそう、三浦と試合してた時」
「あー、なるほど!」
778: 2016/04/02(土) 16:08:28.45
「お兄ちゃんはおかわり行かないの?」
「んー、多分行く」
「雪乃さんと三輪さんは?」
「私はもう結構だわ」
「俺ももういい」
「じゃあお兄ちゃん、私の分もお願い」
「えー…いいよ」
「さすが!」
俺達は食事を終え、食休みの後、小学生のカレー作りのサポートに入った
火のグループと食材を扱うグループに分け、それぞれで小学生を手伝うようだ
785: 2016/04/02(土) 21:12:21.51
調理も終え、小学生みんなが食べているとき、俺、雪ノ下、三輪はやや離れた位置で涼んでいた
すると鶴見がこちらにやってくるのが見えた
「ほんと、バカばっか」
俺達の近くで腰を下ろした鶴見はそんなことをボソッと文句たれる
「まぁ世の中は大概そうだ。早めに気付けてよかったな」
「あなたもその大概でしょう」
「お前が言えたことじゃない」
ふぅ~
雪ノ下だけじゃなく三輪も俺いじめに参戦っ!
「名前」
「あ?」
鶴見が俺達の方を見てそう言った
動詞は?
「名前聞いてんの。普通今ので伝わるでしょ」
「人に名前を聞く時はまず自分から名乗るものよ」
雪ノ下の鋭い視線に鶴見もややたじろぐ
786: 2016/04/02(土) 21:13:32.38
「…鶴見留美」
まぁ名前知ってるんですけどね
「私は雪ノ下雪乃よ」
「三輪秀次だ」
「そこのは…ヒキ…ヒキガ…」
「言わせねーよ?比企谷八幡だ」
「八幡…ね。なんかこっちの3人は向こうの人達と違う感じがする」
「そりゃそうだろうな。ここにいるのは根暗ばかりだ」
「私を根暗扱いしないでくれるかしら?」
「…」
「三輪君も否定しなさいよ」
「いや、否定出来ないからな」
「はぁ…」
雪ノ下はこめかみに手を置いてやれやれと言うように首を左右にふっている
「みんなガキばっか…」
「なにがあったのかしら?」
その後は鶴見が自分の事情を話してくれた
なるほどな
この歳でなかなかキツイ境遇だ
787: 2016/04/02(土) 21:14:49.10
「中学でも…変わらないのかなぁ…」
最後の最後に鶴見は今にも泣きそうな声でそう言い残し、去っていった
カレー作りとその片付けはそつなく完了した
特に誰かが怪我をしたということもなく、無事終わったと言っていいだろう
そして現在、時刻は夜の10時近く
俺達は夕飯でカレーを食べた席に全員着いていた
こんな時間に何をしているのかというと、昼間孤立してした少女、鶴見留美の対処についてた
雪ノ下が平塚先生に彼女のことを話すと、俺たちで解決せよとのことだ
どうやらこれも奉仕部の活動らしい
まぁキャンプのサポートよりかはこっちの方が幾分か本来の活動に近いだろう
だが問題は…
「そもそも鶴見はSOSをだしていたのか?」
全員が全員どう現状を打破するか、彼女にも問題があるのではないか、などと議論している中で俺がそうきりだす
「どういうことだ?」
葉山が怪訝な様子で問う
788: 2016/04/02(土) 21:18:16.04
「簡単なことだ。SOSを出していないのならば俺達が勝手に動いてもマイナスにしか動かん」
「俺も同意する」
三輪も俺と同意見のようだ
「でもSOSを出したくても出せないってこともあるじゃん?」
「だからまずはそれを確認することから始めよう、と暗に言っているのかしら?」
「雪ノ下さすが、小南だめ」
「駄目って!?」
「けどみんなと仲良く出来ればそれに越したことはないんじゃないか?」
葉山が反論する
それに三浦もうなずいている
「…葉山、お前昼間に鶴見に声をかけたよな?」
「あ、あぁ。それがどうした?」
「それがどういう結果になったか知ってるか?」
「え…?」
葉山は困惑した様子だ
789: 2016/04/02(土) 21:19:14.57
「お前が声をかけたことで他の4人から嫉妬、妬みの視線が鶴見に注がれたんだよ。お前の見えてないところでな」
「な…!?」
「やはり気付いていなかったのか」
三輪も呆れた様子だ
「つまりはそういうことだ。良かれと思ってやったことが裏目に出ることもよくある。人間関係ってのはそれほど難しいんだ」
「理解したのならもう無責任な真似はするな。逆に被害が出る可能性がある」
「…っ」
葉山は歯噛みしている
三浦もこれには反論出来ないようで下を向いて黙っている
取り合えず葉山にまた勝手なことをされてこれ以上悪化してはたまらんからな
その点はこれで大丈夫だろう
「けれど…」
「雪ノ下?」
「けれど、助けを求められたのならば、私は全力でことに向かうわ」
「…そうだな」
俺と三輪、それに雪ノ下は知っている
彼女、鶴見が今にも泣きそうだったことを
確証はないが、それでも、やはり彼女は本音では現状を嘆いているのだろう
790: 2016/04/02(土) 21:21:44.44
結局この日はこれ以上進展はなかった
俺達は風呂、歯磨きを済ませ疲れもあったのですぐ眠りについてしまった
翌日、米屋と出水にたたき起こされた俺は朝から不機嫌オーラ全開で朝食の席に向かったのだが、そこで戸塚が笑顔で手を振ってくれ、俺は不機嫌から上機嫌へと完全にシフトした
さぁ今日も仕事しますかね!
「今日の仕事はキャンプファイヤーの型作りと肝試しの驚かし役だ。時間に余裕はあるので途中で遊んでくるといい」
「いやったぜー!」
「アンタ達!川行くわよ、川!」
「ったりめーだろ!何のために水着持ってきたと思ってんだ!」
出水、小南、米屋のテンションがおかしなことになってるが、まずは仕事だ
だが男手がこんなにあればただ木を組む作業などすぐに終わる
なので終わり次第すぐにみんな川へと突撃していった
元気やなぁ…
791: 2016/04/02(土) 21:23:19.94
「比企谷も行くのか?」
「あー、まぁ一応。けど水着が荷物に入ってなかったから見てるだけな」
「それならば俺も行こう。比企谷も川に入るのならば一人で散歩でもするつもりだったが」
「…それもアリだな」
「お兄ちゃーん!早くいくよー!」
「…まぁ小町に誘われたら断れねぇよな」
「シスコン…」
「お前には言われたくねーよ。お前にだけは」
俺達が川に着くと既に全員が水着になって遊んでいた
てか何故か平塚先生もいる
こうして改めて見るとあの人スタイルは抜群なんだけどなー…
しばらく木の陰で寝転びながら彼ら彼女らを見る
…あれだな
美男美女がこうも勢ぞろいだと、なんというかまぶしいな
隣にいた三輪は眠くなったのかうつらうつらと船を漕いでいた
俺もちょっと眠たいな…
そんなことを思っているとすぐ後ろの茂みから鶴見が現れた
小学生達は今日一日自由行動が許されている
だが一人でいるものなど、こいつだけだろう
792: 2016/04/02(土) 21:24:53.57
「よう」
「ん…」
え、今のそれ挨拶?
「ねぇ、八幡はさ、小学生の頃の友達とかいる?」
「あ?いるわけねぇだろ」
即答である
「そ、そうなんだ…」
「何をしているのかしら口リ谷君」
雪ノ下が鶴見の姿を見てこちらにやってきた
そして三輪も目を覚ましたようだ
「寝てしまっていたか…」
「おう。そりゃもうグッスリと」
「それで、鶴見さんは何が言いたかったのかしら?」
「…高校生くらいになれば変わるかな?」
「どうだろうな。少なくとも知り合いが圧倒的に減るから最初の偏見は少ないだろうな」
「…」
793: 2016/04/02(土) 21:26:54.50
「しかし、お前が変わらなければ結局は同じことだ」
「え…」
「そうね。周りが変わってくれるかもしれないけれど、あなたがそのままでは同じことになる可能性が高いわね」
「鶴見。お前は今が辛いか?」
「辛いって言うか…惨めっていうか…」
「惨めなのは嫌か」
「…うん」
鶴見は泣きそうになりはするが、力強くうなづいた
「肝試し、楽しいといいな」
俺はそう告げて立ち上がる
やることは決まったな
794: 2016/04/02(土) 21:33:20.73
「おい、本当にいいのか?」
「あぁ」
「まぁ俺は何もしてこれなかったからさぁ。これくらいは…」
「ふんっ…」
「俺も大丈夫だぜ。少しは力にならせてくれよハッチー」
「こういうのもちょっと面白そうだよな。やられる側はたまったもんじゃないだろうけど」
「わかった…じゃあ任せるぞ」
「おう」
今現在行っていることは肝試しだ
小学生が決められたルートをたどり、道中俺達がお化けなどに仮装して驚かす、といった具合だ
そしてこの肝試しを利用して鶴見留美を取り巻く環境を、めちゃくちゃにする
5人全員の仲が悪くなれば鶴見が惨めな思いもせずに済む
問題の解決にはならないが、解消にはなるだろう
そして今、最後である鶴見のグループが出発したようだ
スタート地点での案内役の小町から今行ったとのメールが入る
795: 2016/04/02(土) 21:34:41.99
『今通過した』
『今通って行ったわ』
三輪と雪ノ下からのメールでもうまもなく鶴見達のグループが来ることが分かった
『もう来るぞ。頼んだ』
出水にそうメールを送る
他俺を含めた全員は本来驚かし役だったが、この鶴見のグループの時だけは違う
由比ヶ浜、戸塚、小南は少し離れたところで待機してもらっている
「あ、お兄さん達だ」
来たようだ
葉山達は昼間と変わらない格好で肝試しのルートのど真ん中に立っているだけなので驚かすも何もない
「普通の服だし隠れてもないじゃん」
「ださー!もっとやる気だしてよー!」
「この肝試し全然怖くないしさー」
「高校生なのに頭わるーい」
4人はけらけらと笑っている
が…
796: 2016/04/02(土) 21:36:20.32
「は?」
「なにタメ口聞いてんだお前ら」
「え…」
米屋と出水の冷え切った声で小学生達は一瞬で顔がこわばる
あいつらノリノリかよ
「ちょっと調子乗ってねぇかお前ら?」
「つーか今なんかあーしらのことバカにしたやついたよね?誰?」
小学生達はお互いの顔を見合わせる
答えることなんて出来ないだろう
「誰が言ったのかって聞いてんのー」
「早く出て来いよ」
三浦と戸部もガンガンせめていく
小学生達は今にも泣き出しそうだ
「ご、ごめんなさい…」
「は?あーし謝れって言った?誰がバカにしたのかって聞いてんだけど?」
「舐めてんのか?おい?葉山さーん、こいつらやっちゃっていいっすか?」
797: 2016/04/02(土) 21:38:17.61
小学生達が一斉に葉山の方を見る
一番優しかっただけに期待しているのだろう
優しくしてくれるのではないか、と
だが現実は甘くない
「そうだな…こうしよう。半分は見逃してやろう。残りの半分は残れ。誰が残るかは自分達で決めろ」
その一声で小学生達の顔は絶望に染まり、さらにはお互いにあんたが残れ、いやあんたが残りなさいよ、の応酬となった
「鶴見…あんた、残りなさいよ」
「そう…そうよ…!」
「…」
鶴見は予想していたのか大して動揺していない
「一人は決まったか。じゃああと二人だな。さぁ、早く決めろ。後30秒だけ待つ」
葉山がせかす
798: 2016/04/02(土) 21:39:20.49
「由香がさっきあんなこと言わなければ…」
「そうだよ…」
「由香残りなよ…」
「違う!仁美が最初に…!」
「あたしは何も言ってない!森ちゃんが…!」
「はぁ!?あたし何もいってないじゃん!」
まさに阿鼻叫喚である
一人が泣き出した
「そろそろ時間だな」
俺と三輪と雪ノ下は茂みに隠れて様子を伺っていたが、これだけやればもう十分だろう
あとは実はドッキリでした~、なんて出て行けば解決する
だが俺が出ていこうとする直前…
強烈なフラッシュがあたりをつつんだ
800: 2016/04/02(土) 21:41:48.46
「なっ!?」
「走れる?こっち」
かろうじて見えたのは鶴見が由香とか言う子の手を掴んで走りだしたところだ
あいつ、助けたのか?
ガサッ
「え…?」
だが、逃げようとする小学生の横の方から突然そんな音が聞こえた
ガサ…ガサ…
しかも音はどんどん近づいてきている
「なんだ?向こうの茂みって誰か隠れてたか?」
「いえ…そんなはずは…」
801: 2016/04/02(土) 21:42:46.28
ガサッ…ガササッ…
「な…なに…?」
小学生達はその音に恐怖し、後ずさりで葉山達のところまで戻ってきてしまっていた
だが小学生達も今はそんなことはどうでもいいようだ
「出水」
「あぁ、分かってる」
米屋と出水はその一言だけで意思を疎通し、両者ともポケットに手を入れる
「三輪、念のため準備しろ」
「あぁ、分かってる」
「…?あなたたち…一体何を…」
万が一の場合に備え、ポケットに手を入れる
ガサササッ!
「グルルルルル…」
「ひっ!?」
802: 2016/04/02(土) 21:45:02.81
「熊っ!?」
「戸部、優美子!小学生達を!」
「ま、まじかよ…」
「あ…あぁ…」ヘタッ
「優美子!しっかりしろ!」
「あ、足が…助け…!」
「ガァァ!」
熊は怯えて動けない三浦にターゲットを絞って走り始めた
「ひっ…!!」
「シールド」
ガン!
「ガッ!?」
熊が突然壁にぶつかったように跳ね返される
803: 2016/04/02(土) 21:46:36.06
「「「トリガーオン」」」
ズアァァァァ!
俺に続いて三輪、米屋、出水も換装する
小学生や三浦を背にして熊の前に俺、三輪、米屋、出水がトリオン体で立ちふさがった
「ひ、比企谷…!」
「葉山、戸部、小学生を避難させろ。雪ノ下は換装して三浦を担かついで退避。出水と米屋はそのカバーだ。こいつは俺と三輪で気絶させる」
「「「了解」」」
「あ、あぁ、分かった!」
「マジやべーっしょ!洒落になんねぇ!」
「トリガーオン!三浦さん、つかまって」
「う、うん…グスッ」
「いけ!」
「ガァアァァァアァ!!!」
熊が叫ぶ
みすみす餌を逃がすまいとこちらに突撃してくる
だが
804: 2016/04/02(土) 21:47:27.46
「「シールド」」
ガンッ!
「グガッ…!!」
熊のすぐ目の前に再び俺と三輪がシールドを展開する
ミサイルでさえ簡単に防ぐシールドだ
熊の突撃程度ではビクともしない
「こんな人里にまで降りてくる始末だ…お前も相当飢えているんだろうが…悪いが森に帰ってもらうぞ」
「グ…ガァアア!!」
「エスクード」キンッ
ドガンッ!
「ゴ…ガ…!」
熊の真下から猛烈な勢いで伸びてきたエスクードが熊の顎を直撃した
そして熊はその場で倒れた
上手く気絶させることができたようだ
805: 2016/04/02(土) 21:48:57.78
「比企谷!何があった!」
すると後ろの方から平塚先生が大声を出してこちらに走ってくるのが見えた
「熊が出ました。今は気絶させていますがいつ起きるのか分かりません。至急猟友会などに連絡して麻酔弾やゲージを用意させてください」
「あ、あぁ!わかった!」
「俺達はここでこいつを見張っています」
三輪の迅速な指示で平塚先生は急いで携帯電話を取り出し、連絡する
その間に出水と米屋が戻ってきた
「無事送れたか」
「あぁ」
「小学生は全員広場にまとめさせて、その周囲は小南と雪ノ下さんに見張らせてる」
「よし、プロが来るまではこいつがいつ起きても対処できるように監視だ」
「あいよ」
「りょーかい」
「比企谷、20分もすればこちらに到着するようだ」
「分かりました」
806: 2016/04/02(土) 21:51:32.65
その後は熊も目を覚ますことなく、猟友会の人達によって麻酔を打たれた後、ゲージに入れられて運ばれていった
なんとか一件落着なようだ
正直言うと、マジで焦った
なんとか平静を保ってたけど、内心心臓ばっくばくだっつうの
その後のキャンプファイヤーは俺達が周囲を見張ることによって行われることになった
小学生達には熊が出たことは伝えていない
キャンプファイヤーも変に中断すれば怪しまれてしまうからな
後日親御さん達、そして子供達にも伝えるようだ
鶴見のグループは見るからに気まずそうだ
誰一人として喋っていない
熊の恐怖もあるだろうが、ほとんどはその前の擦り付け合いが原因だろう
問題は解消してやった
あとは自分でなんとかしろよ、鶴見
「君達がいてくれて助かったよ」ザッ
「平塚先生…」
807: 2016/04/02(土) 21:53:15.20
「君達が何かやっていたことは知っているが、それがなかったら今頃小学生の子達は何人か…大怪我をしたり、最悪氏んでいたかもしれん」
「たまたまですよ」
「それでもだ。感謝するよ」
「…どういたしまして」
「鶴見君の問題はどうなった?」
「あー…解決は出来なかったっすけど解消にはなったんじゃないっすかね?」
「ふむ…?なるほどな…」クルッ
平塚先生は鶴見達がいる方を見る
それだけで理解したようだ
「少なくとも孤立はしていないな。林立といったところか」
「まぁそんな感じですね」
「なんとも君らしいな」
「まぁそうっすね」
「さて、出水達にも労いと感謝の言葉を伝えてこなくてはな」
「お疲れ様です」
平塚先生は俺達全員に感謝の意を伝えるようだ
親御さん達から子供を預かっている身としては全員無事だったのが何よりなのだろう
808: 2016/04/02(土) 21:54:29.05
「お疲れヒッキー」
「辛気臭い顔をしているわね」
「…これが俺の普通の顔だよ」
今度は由比ヶ浜と雪ノ下だ
「でも熊なんてびっくりだよねー」
「この辺りではなく、もっと向こうの山ではよく出るらしいのだけれど…」
「へー」
「よほどお腹が空いていたのでしょうね」
「だろうな。じゃなけりゃこんなとこまで降りてくるはずがない」
その後は少しばかりの沈黙が流れる
「でも今日は少し見直したわ。かっこよかったわよ比企谷君」ボソッ
「へっ!?」
「あ?今なんつった?」
「なんでもないわ。それじゃあ私はそろそろ行くから」
「ちょっとゆきのん!?いまの…!?」
「は?おい、なんだよ」
結局雪ノ下と由比ヶ浜はさっさと歩いて行ってしまい、話しは聞けなかった
809: 2016/04/02(土) 21:56:02.49
キャンプファイヤーも終わり、片付けに入る
小学生達は今日は万が一のことを考えて全員宿舎に泊まることとなった
「いやー、マジあん時はびびったっしょ!」
「比企谷達がいて助かったよ」
「八幡大活躍だね!」
「そりゃどうも。戸塚もサンキューな」
俺達も片付けを済ませ、今は入浴に向かう途中だ
「けどハッチーの指示も的確だったな。さすがの落ち着きだぜ」
「いや実はあの時心臓やばかった」
「あ、そうなの?」
「…見ていた感じそうは思えなかったが」
「見てくれだけな。内心はめっちゃ心臓バクバクしてた」
そんな会話をしながら風呂に向かう途中、三浦と海老名さん、それと由比ヶ浜が風呂上りなようで逆にこちらに歩いてくる
すれ違う時に葉山と三浦達が何やら会話をしているが俺は関係ないのでそのままスルーして風呂場へ直行しようとする、が
810: 2016/04/02(土) 21:57:34.34
「ヒ、ヒキオ!」
「…は?それ俺のことか?」
なんと三浦に話しかけられた
「あんた以外に誰がいるし!」
「あぁ、そうっすか…で?なんか用か?」
「あ、あの……その…」
「?」
「あり…う…」ボソボソ
「なんだよ、もっと大きな声でちゃんと喋れ。全く聞こえん」
「あ、ありがとうって言ってんの!」
「うおっ!?」キィーン
「ふんっ!」スタスタ
「あ、優美子待ってよー」
「あははは…あ、また明日ね!ヒッキー」
「お、おう……。なんだったんだ?」
出水と米屋と戸部はニヤニヤしており、葉山は意外だといった顔をしている
なんなんだよ…
811: 2016/04/02(土) 21:58:20.97
翌日、俺達の仕事は昨日の時点で終了しているので後は帰るだけ
行きと同じメンバーで平塚先生の車に乗って学校の校門まで帰ってきた
葉山達は別の先生に自宅まで乗せてってもらったらしい
ちなみに道中はみんな爆睡
俺も気付いたら寝ていた
そしてその後は特に何もなく、普通に解散となった
さすがの出水や米屋、小南も疲れているらしく、大人しく帰ったのは助かった
さぁーて明日からゆっくり休むぞー
明日って昼から防衛任務じゃね?
うぼぁー
822: 2016/04/04(月) 21:05:20.17
「比企谷君」
「…予想は出来てるが、一応言ってみろ。なんだ?」
「なんで誰も私と戦ってくれないのかしら?これではポイントを稼げないのだけれど」
「やっぱりそれか…」
今は8月の中旬、あのキャンプから1週間ほどが経過した
俺は現在ランク戦室に来ている
雪ノ下はB級に上がるためにランク戦をしまくっているのだが、今日は俺も緑川と戦う約束をしたのでここに来た
今は緑川との対戦も終え休憩しているところなのだ
そこで雪ノ下が話しかけてきたといった感じだ
「空閑も同じこと言ってたなぁ…」
「誰も彼もが私が申し込んでも拒否ばかり。やる気がないのかしら?」
「そりゃお前と戦っても負けてポイント奪われるのは目に見えてるからなぁ…」
「ねぇ、どうすればいいのかしら?」
「どうするもなにも、勝負してくれるやつが現れるまで待つしかねぇだろ。それか合同訓練で地道に稼ぐか」
「かったるいわね…」
女の子がそんな言葉使うんじゃありません
823: 2016/04/04(月) 21:10:12.55
そういえばあの熊撃退事件で、俺達は学校の全校集会で表彰されることになったが俺は辞退した
そんな目立つもの無理ですってな
結局出水や三輪、米屋は表彰されていたが、俺の名前は出さないでくれという要望通り、俺に関しては全く触れずに終わった
ボーダーでは根付さんが大喜びしながら特別報酬を出すとかなんとかはしゃいでた
こっちは俺も遠慮なく頂いた
臨時収入が入ってウハウハだぜ
「ハッチー先輩、飲み物買ってきたよー」
「おー、サンキュー」
「あら?この子は?」
「緑川駿。A級4位草壁隊のアタッカーだ」
「ん?この人ハッチー先輩の知り合い?」
「あぁ」
「始めましてお姉さん。緑川駿です」ペコッ
「あら、礼儀正しいのね。雪ノ下雪乃よ、よろしくね」
緑川は空閑にボコられてから年上の人に対して礼儀正しくなった
良いことだ
824: 2016/04/04(月) 21:13:03.34
「4位…。ということは米屋君より強いの?」
「いや、そういうわけでもない」
「よねやん先輩とはどっこいくらいかな。最近はちょっと負け気味だけど」
「なるほど…。隊の順位と隊員個人の強さは必ずしも直結するわけではない、ということね」
「まぁな。実際B級上位は個人総合2位の人や本来ならアタッカー3位の人とかいて、かなりの粒揃いだ。A級7位三輪隊の奈良坂もスナイパー2位だし」
「なるほど」
「雪ノ下先輩は今C級?」
「えぇ、そうよ。けど誰も戦ってくれないからなかなかポイントが伸ばせないのよ」
「遊真先輩と同じこと言ってる…」
「俺の所属してる玉狛支部に空閑遊真ってやつがいるんだけど、お前と同じように無双しまくってたら3500ポイントを超えたあたりからめっきり対戦してくれる人が少なくなったって言ってたな」
「私のように強い人はみな同じ境遇なのね…」
「この人今自分で強いって言ったよ…」
「こいつはこういうやつだ」
「まぁしょうがないから地道に行くしかないわね」
「そうだな」
「ところで緑川君は比企谷君と戦っていたの?」
「うん、そうだよ。まぁボロ負けしちゃったんだけどね」
「何対何だったの?」
「8-2」
「しかも2本のうち1本は運良く取れたって感じかな」
「相変わらず憎らしいほど強いのねあなたは…」
「褒めるな、照れる」
825: 2016/04/04(月) 21:14:45.46
「ハッチー先輩全然照れてないじゃん」
「この男はこういう人よ」
「…なんか二人って似てるよね」
「「やめろ」」
「…ほら」
「うるせぇ。さて、俺はもう支部に帰る。雪ノ下、あとは頑張れよ」
「えぇ、言われなくとも」
「じゃあ俺も作戦室に帰ろーっと。ばいばい、ハッチー先輩、雪ノ下先輩」
「さようなら」
支部に帰ると時刻は既に昼過ぎの13時半
どうりでお腹が空いてるわけだ
「あー、腹減った」
「お、比企谷先輩」
「八幡か」
「あ、レイジさん、京介。うっす」
「お前も飯食べるか?今ちょうど俺と京介と宇佐美の分を作ってたところだ」
「マジっすか。じゃあお願いします」
「分かった。もう少し待ってろ」
826: 2016/04/04(月) 21:16:43.09
「小南は?」
「今日は学校に用事があるとかで1時間前くらいに出て行きましたよ」
「ふーん。迅さんと宇佐美は?」
「迅は知らん。宇佐美は研究室にこもってイルガーの改造プログラムを作ってる」
「迅さんはどうせまた本部でしょうね。宇佐美のやつも相変わらずだな…」
「比企谷先輩はどこ行ってたんすか?」
「本部で緑川とバトってた。前の約束がうやむやになってたからな」
「雪ノ下先輩は?」
「あいつも苦労してたよ。空閑と同じで対戦相手が見つからなくてイライラしてた」
「それこの前も同じこと言ってませんでした?」
「だからあいつも苦労してるんだろうよ」
雪ノ下はこの玉狛支部によく出入りしている
レイジさんや京介、俺からも特訓させてもらえるからだ
レイジさんも京介も雪ノ下の腕には感服していた
あと上手い飯も出てくるしな
レイジさんのご飯を食べた時なんざ
『くっ…!わ、わたしのよりもおいしい…!』
827: 2016/04/04(月) 21:17:36.32
なんて本気で悔しがっていたものだ
あとは見ていれば分かるが、この玉狛支部の雰囲気が気に入っているのだろう
ここほどアットホームな職場、という言葉が似合う場所もない
尊敬できる先輩やかわいい後輩
雪ノ下もここに来ると自然と笑みがこぼれるまでになっていた
由比ヶ浜が嫉妬しそうだな
「さぁ、出来たぞ」
「お、待ってました」
「俺は宇佐美のとこへも持っていく。先に食べていろ」
「んじゃ遠慮なく。頂きます」
「頂きます」
今日は肉肉肉野菜炒めだ
これは俺も大好きなので箸が進む進む
「雪ノ下先輩ってB級に上がったらどの隊に入るつもりなんすか?」
「さぁ、俺も知らん。いろんなとこから勧誘が来るらしいけどな」
「あの腕だったらそうでしょうね」
828: 2016/04/04(月) 21:18:41.90
「太刀川隊、影浦隊なんかも勧誘したらしい」
「影浦さんが?それは意外っすね」
「だろ?あの二人のことだから喧嘩が始まるんじゃないかと心配したけど、大丈夫だったみたいだ」
「でもそうなるとウチにはなかなか来れなくなるので寂しくなりますね」
「俺は学校でもしょっちゅう会ってるからなぁ」
そんなたわいもない会話をしながら食べているとレイジさんも戻ってきた
その後は3人で談笑しながらご飯を食べる
俺はこの時間が好きだ
そんなこと恥ずかしいから誰かに言うことなんぞ絶対しないが、それでもこの気持ちだけは間違いのないものだ
今日はいないが三雲達や小南、最近では雪ノ下がいる時もそれはそれで面白いしな
「今日は天気あんまり良くないっすね」
京介が外を見て言う
確かに今日は暗い雲が空一面を覆っている
今にも雨が降り出しそうだ
こういう空を見ているとむしょうに不安になる
なんだか胸騒ぎがするような…
829: 2016/04/04(月) 21:19:42.20
ウゥ~~~~~~~!!
だよな
俺も今フラグたったと思ったもん
『非番の隊員に告ぐ!敵の大規模な攻撃が開始された!これに全戦力で迎撃に当たる!戦闘開始だ!!』
チチチチチチチ
「緊急招集…!」
「八幡、京介」ガタッ
「分かってます」
「小南に連絡します。今から迎えに行きますか?」
「あぁ、すぐに出る。行くぞ」
「「了解」」
遂に来たか
以前迅さんから聞かされていたことだ
『ここ数日の間で大規模な攻撃が来る』
それがつい2日前のこと
くそったれめ
ネイバーのやつらも面倒なことしやがる
830: 2016/04/04(月) 21:21:43.09
俺達は換装してすぐにバギーへと乗り込む
「宇佐美」
『ジジッ はいはい。小南は学校からこっちに向かって走ってきてます。合流地点を送りますね』
「あぁ、頼んだ」
まずは小南との合流だ
「今回の侵攻、どう見ます?」
京介が問う
「今のところ人型は確認されていないそうだ。だがトリオン兵は4年半前よりはるかに多いらしい。5方向にバラけているようだが…」
「狙いはやっぱり市民っすかね?」
「まだ断定は出来ん。先のラッド騒ぎやイルガーのこともある。そんな入念な準備をする敵がただトリオン兵を展開して市民を攫うことだけが目的とは考えにくい」
「…敵の目的が何かイマイチ判明してないってのは不利っすね」
「あぁ。俺達は遊撃隊の命令が下された。長期戦になるぞ」
「了解です」
「2方向は迅さんと天羽で対処済みらしいっすね。俺達は取り合えず残りの3方向っすか?」
「そうだ。今のところ南がやや対処が遅れているらしい。小南を拾い次第南方向へ行く」
「「了解」」
831: 2016/04/04(月) 21:24:42.59
『レイジさん、小南が合流地点に着いたって』
「俺達もあと3分ほどで着く」
『了解』
敵の狙いはなんだ?
普通に考えれば何の力も持たない市民の捕獲だろうが…
上空を飛んでいるトリオン兵も気になる
さっきからあいつら攻撃をせずにぐるぐると回っているだけだ
偵察、斥候か?
…まぁ今は考えていたって仕方がないか
トリオン兵を減らすことだけを考えよう
「小南!」
「やっと来た!もう私一人で戦いに行こうかと思ってたわよ!」
「いいから行くぞ。早く乗れ」
小南を拾って今度は南方向へとレイジさんがバギーを飛ばす
「状況は?」
「今のところはトリオン兵だけだ」
「ですがまだ敵の狙いがはっきりとは判明してません。俺達は遊撃隊としてしばらくはトリオン兵の排除に徹します」
「おっけー!やってやろうじゃないの!」
832: 2016/04/04(月) 21:26:02.92
『ジジッ 全隊員に告ぐ!新型トリオン兵、ラービットを確認した。サイズは3メートルほどで人型に近いフォルムをしている。小さいが戦闘力は高く、なによりアイビスを弾くほどに硬い』
「ラービット?」
「新型…。硬いのは厄介っすね」
『その戦闘力はA級でさえ単独で挑めば危険なほどだ。特徴として隊員を捕らえようとする動きがある。各員十分注意せよ!』
「隊員を捕獲ですって!?」
「しかもA級でもやばいとなると…こりゃ厳しいかもしれんぞ」
『けどそんな強いならコストも莫大なはずだよ!多分量産はされてないと思う!』
「そんなんが量産されてたら洒落にならんな」
「まぁけど私らなら大丈夫でしょ」
「そりゃお前は双月があるから大丈夫だろうけどさ」
「全身が硬いというわけでもないだろう。全身が硬かったら動くこともままならないはずだからな。柔らかいところから崩していけばいい」
「なるほど」
「そうだな…よし。俺達はそのラービットの排除に回る。他のトリオン兵はB級に任せる」
「「「了解」」」
恐らくラービットに対抗できるのはB級上位以上の隊だけだ
単独ならばほんの一握りの隊員でしか相手にならないだろう
その点俺達ならばいくらか楽に倒せるはずだ
小南もいるしな
ボーダー最強の部隊、玉狛第一を舐めるなよ
833: 2016/04/04(月) 21:27:23.66
「本部、こちら木崎。我々はラービットにターゲットを絞る。ラービットの位置情報をくれ」
『ジジッ…ザ…ザザッ…』
「本部?」
なんだ?
「レイジさん!」
「!!」バッ
京介が見ている方向は本部
だがその右から2体ほど巨大な飛行物体が本部に向かって飛来していた
「あれは…イルガー!」
「自爆モードで突っ込む気か!?」
ドッ!
「うおっ!?」
1体は撃墜出来たようだがもう1体は墜とせなかったようだ
とてつもない爆発が本部に直撃する
その余波が俺達のところにまで届いた
おい、やべぇんじゃねぇか!?
834: 2016/04/04(月) 21:28:19.68
「おいおい…」
「いや、大丈夫だ」
煙が晴れるとそこには傷こそついているものの、今だ健在の本部があった
「第二波!今度は3体か!」
「あと3発も耐えれるの!?」
「…」
レイジさんは黙って行く末を見ていた
「1体は…墜とせたか」
基地からの砲撃で1体を撃墜
「あと2体…!」
すると突然、残りの2体のうち1体が4分割され墜落していくではないか
「なにが…?」
「太刀川だ」
「太刀川?あいつがあれやったの!?」
「さすがっすね」
ノーマルトリガーであんなことできるのあの人と忍田さんだけだろうな
残りの1体は直撃したが大丈夫なようだ
第三波も見受けられない
乗り切ったようだ
835: 2016/04/04(月) 21:29:55.48
『木崎、通信が乱れてすまなかった。ラービットにターゲットを絞るということだな。任せていいか?』
「もちろんです」
『今沢村君から宇佐美君へ位置情報を送った』
「ありがとうございます」
『頼んだぞ』プツッ
了承が出たようだ
「既に嵐山隊、風間隊が1体ずつ仕留めたようだ」
「さすが准ね!」
「俺達も続くぞ」
「うっす!」
836: 2016/04/04(月) 21:30:24.88
「あーらら、もうラービットが2体もやられちまったぜ」
赤い槍を持つ全身青のタイツのようなもので身を包んだ男が言う
「いやはやこれは、ミデンの進歩も目覚しいということですかな」
風格のある老人が言う
「大したことねぇよ。ラービットはまだプレーン体だろ?」
長髪で黒髪の男は不敵とばかりに言う
「いやいや、分散の手にもかからなかったし、なかなかに手ごわいぞ」
豪気な口調で赤髪の男が言う
「我々も出撃いたしますか?ハイレイン隊長」
一際若そうな青年は落ち着いた様子で言う
「いや、まだだ。お前達が出るのはミデンの戦力の底を見てからだ。ミラ」
青髪で隊長と呼ばれた男はそう言う
「はい。次の段階に進みます」
唯一の女性で冷たい目の女性は静かにそう言う
「雛鳥を捕まえる準備は進んでいる。お前達の出番ももうすぐだ」
837: 2016/04/04(月) 21:31:08.79
ガキンッ!
「硬ったいわねコイツ!」
俺達は今南西方向に現れたラービットの排除を行っている
2体も同時に現れたようで速やかに撃破することが求められる
小南の双月、今は両手持ちの二刀斧で交戦しているが、それでは弾き返されるらしい
「まぁだからどうってことはないけど」
『コネクター オン』
「おりゃあ!」
ドガンッ!
今おりゃあって言ったよ
女子高生がおりゃあって言ったよ
頭から真っ二つにされたラービットはピクリとも動かなくなった
「そっちは?」
「既に終わってる」
俺、レイジさん、京介の連携で残りのもう1体のラービットは1分も持たずに沈黙した
838: 2016/04/04(月) 21:33:42.54
「次は?」
「南西方向に1体、東に2体だ」
「じゃあ次は東ね!」
「あぁ」
『木崎!聞こえるか!』
「忍田さん?どうしました?」
『現在西方向で避難にあたっていたC級、およびそれのフォローをおこなっていた木虎、三雲両隊員の目の前に色違いのラービットが3体出現した。それによって木虎もやられた。恐らく敵の狙いはC級だ。今すぐ援護に向かってほしい!』
「色違い…」
「分かりました。今すぐ向かいます」
「敵の狙いがC級…?」
「どういうこと!?」
「なるほど、緊急脱出か…」
「え?」
839: 2016/04/04(月) 21:35:05.51
「ラッド騒ぎやイルガーの件で敵はC級に緊急脱出機能が付いていないことを見つけたんだろう。俺達正隊員を捕まえようとしても緊急脱出があるから逃げられてしまう。市民を捕まえてもトリオン能力がある人間を捕まえられるのかは分からない。だからC級を狙ったわけだ」
『比企谷の言う通りだろう。ネイバーフットのどの国でもボーダーでもトリガーを持たせてもらえるのは一定のトリオン能力がある人間だけだ。数や資源には限りがあるからな。それと色違いのラービットは攻撃方法が変化しているようだ。現在確認されているのは砲撃を行なうタイプと身体から液体のようなものを出し、それを固めてブレードとして攻撃してくるタイプだ』
「なるほど…だからC級を…」
「攻撃方法が違うラービット…また面倒な…」
『とにかく急いでほしい。三雲隊員だけでは凌ぐのは厳しいだろう』
「既にバギーを全速力で飛ばしています」
『敵の狙いが分かった以上これ以上好きにはさせんぞ!』
「「「「了解!」」」」
「チカ子に手ぇ出してんじゃねぇぞこんにゃろー!」
C級スナイパー、夏目出穂がアイビスを放ちながら叫ぶ
だがそれをラービットは腕で弾くと夏目を腕でがっちりと捕獲する
「うぶっ!ちょっ、タンマ!きもいきもい!」
ラービットは彼女を自分の腹の中に格納しようとする
840: 2016/04/04(月) 21:36:21.27
「夏目さん!」バッ
ガキキン!
「くっ…!硬い…!?」
雪ノ下が夏目を助けるためにスコーピオンでラービットに攻撃をしかけるが弾かれてしまう
「チカ子!逃げろ!」
「千佳!逃げるんだ!」
『わたしも、自分で戦えるようになりたいです』
涙目になっていた雨取の目に力がこもる
「友達は…私が助ける!」
ドッ!
「どわぁ!」
「きゃっ!」
「な…!」
「はぁ…はぁ…」ペタン
ギギ…
「まだ生きて…!」
「フッ!」
半身を雨取の砲撃でぶち抜かれたにも関わらずまだ動こうとしていたラービットは、雪ノ下のとどめで完全に沈黙した
841: 2016/04/04(月) 21:38:30.90
「忍田本部長!現在新型数体と戦闘中!木虎が既に捕獲されました!敵の狙いはC級です!」
『状況はほぼ把握した。あと少しだけ凌いでくれ。木虎の報告を受けて、ボーダー最強の部隊が既にそちらに向かっている!』
「ボーダー最強の部隊…!?」
「なんだ?今のトリオン反応は…?黒トリガーか?」
「いえ、反応は通常のトリガー…のはずです」
「新手の強敵か?」
「いえ、雛鳥の中にいるようだわ」
「思いがけず金の雛鳥か。作戦変更だ」
ハイレインが顔を上げる
「ランバネイン、エネドラ。お前達は予定通りミデンの兵を蹴散らしてラービットの仕事を援護しろ」
「はっ、俺が全員八つ裂きにしちまうかもな」
「ヴィザ、ヒュース、クーフーリン。お前達は金の雛鳥を追え。もしかすればここで、新しい神を拾えるかもしれない」
「ぶっぱなせチカ子!」
「駄目だよ!家に当たっちゃう!」
ゴォッ!
ラービットの豪腕が千佳と夏目を吹っ飛ばそうとものすごい勢いで迫る
が…
ドシッ!
842: 2016/04/04(月) 21:39:18.57
「っ!?」
「木崎さん!?」
「木崎さん…!」
「雨取、スナイパーの基本は忘れたのか?」ギギッ
「スナイパーは居場所を知られたら負け。まずは姿を隠すこと。相手に見つかったまま戦ってはいけない。です」
「よし、覚えてるならいい」
ドンッ!
ラービットの腕を素手で受け止めたレイジさんはそのまま得意のスラスターパンチでラービットを吹っ飛ばし、そのままもう1体のラービットごと吹き飛ばす
「メテオラ」ボボボボッ
「旋空弧月」キン
ドガガガガガガッ!
ザンッ!
ドドドドン!
「無事か?三雲」
「比企谷先輩…!」
「来るのが遅いのよ、比企谷君」
「うるせぇ。これでも全速力で来たんだよ」
「修、遊真はどうしたの?」
「この声…小南先輩…!?」
キィィィン ボッ!
「!!」
む、まだ1体がかろうじて生きてたか
843: 2016/04/04(月) 21:40:41.14
「エスクード」
ドンッ!
「京介ナイス」
「いえ。遅くなったな、修」
「烏丸先輩…!」
「おらっ!」ザンッ
もう既にぼろぼろだったラービットも俺がしとめ、これで障害はすべて無くなった
「よし、終わったな。木虎を回収するぞ。コイツの腹の中にいるはずだ」
「了解です」
「いや、待ってください!まだあのゲートを開けるやつが…!」
バチッ!バチッ!
突然俺達の目の前にゲートが開き
「転送完了」
ズズズズズズズ!
人型が三体も現れた
「戦闘開始です」
849: 2016/04/07(木) 13:47:32.84
こんにちは
投下します
投下します
850: 2016/04/07(木) 13:50:02.91
「人型…!」
「しかも角付き…」
俺達の前に人型ネイバーが3体も現れた
C級を攫うために随分な戦力を投下してくるじゃねぇか
「自分が目標を捕らえます。ヴィザ翁とクーフーリン殿には援護をお願いしたい」
「ほう…いいぜ。やってみな」
「よいでしょう。しかし目標も相当なトリオンの持ち主だという話だ。用心なさい、ヒュース殿」
「注意します。頃してしまわないように」
『もはや疑問の余地はない。相手はアフトクラトルだ』
「お?レプリカ?なんか随分とちっこくなってんな」
『救援助かる、ハチマン。これは本体の子機のようなものだ。本体は遊真といる』
「なるほど。便利だな」
「あの、比企谷君…」
「お前は他のC級と一緒に下がってろ。こいつらとは俺らがやる」
「えぇ…分かったわ」
851: 2016/04/07(木) 13:53:29.95
「角でトリオンを強化した怪人…だっけ?また厄介なトリガーを開発したものよね」
「小南、木虎とC級は回収出来たのか?」
「ええ、終わったわ」
「よし。C級のカバーを最優先だ。人数の差では勝っているとは言え、油断は出来ん。無茶はするな」
「「「了解」」」
「三雲、お前はC級のフォローだ」
「りょ、了解!」
「いつも通り小南の一撃につなげるぞ。もう二人にも注意しろ」
ドドドドドド
レイジさんと京介がアステロイドで射撃する
が、それは全て相手のトリガーで全て防がれている
反射盾のようなもので全て弾かれているのだ
ありゃなんなんだ?
どういう仕掛けだ?
「無駄だ」ガキキキキン
852: 2016/04/07(木) 13:57:15.40
「…」パチン
ドドドドドド
ギュワン
「ぐっ!?曲がる弾丸…!?」ガギギギ
京介のバイパーも防がれるか
だが…
「シッ!」
「はっ!」
微妙に体勢が崩れたところを俺と小南がつめる
「おっと!」ガキン
「!!」
ガンッ!
「ほっほ、元気なお嬢さんだ」
だが俺は槍を持つ全身青タイツの男に、小南は老人に防がれた
「てめぇのことは知ってるぜ。ラッドを通じて見てたからな。イルガーを何体も落してくれたやつだろ?」
「…覗きは犯罪だぜ」
「あいにく覗きの趣味はねぇよ」
ガンッ!
俺も小南も一度距離を取る
853: 2016/04/07(木) 13:59:34.24
「ヒュース殿、手練れと無理に戦う必要はない。目的を果たして引き上げましょう」
「…分かっています」ザァッ
キィィィィィィ ボッ!
バチッ!
「きゃっ!?」
「千佳!?」
「雨取さん!」
なに…?
「捕らえました」ジジッ
「え…わ、わあ…!」ググググ
「!?千佳、捕まれ!」
三雲が雨取の手を掴む
だがその三雲ごと引っ張られていく
「引っ張られる…!」
「京介!」
「了解」ドドドドドドド
(同じ手は食わない!)
ガキキキキン
854: 2016/04/07(木) 14:01:41.78
人型ネイバーは反射盾のようなものを広げて全身をカバーする
だが…
ドッ!
「!?」
(防御を広げて盾が薄くなったところを…!?)
レイジさんのパンチで人型が吹き飛ぶ
「おいおい、ヒュース。やられてんじゃねぇか」
「…っ!」ググッ
『なるほど、やつのトリガーの仕掛けが分かった。磁力だ』
『磁力?』
『あの欠片一つ一つが磁力のような引き合い、反発する力で操作されている。俺の攻撃もそれで威力を大幅に殺された』
なるほど
レイジさんのパンチをまともに受けてまだ生きていることがそのなによりの証拠だろう
まともに食らったら今頃首から上がなくなってるだろうからな
855: 2016/04/07(木) 14:04:13.56
『しかもこの感じだと敵の狙いは雨取に絞られてますね』
『雨取の膨大なトリオンに目をつけたんだろう。やつの射程に雨取を近づけさせるな』
『了解』
あれから15分ほどがたった
今だ状況は膠着状態
既にあちこちで人型やラービットと交戦が始まっているらしい
しかもいきなり風間さんが敵の黒トリガーによって緊急脱出させられた
他方面でも苦戦を強いられてるらしい
ラービットもまだまだ出てくる
正直状況はかなり悪い
『まずいっすね』
『あぁ…』
さてどうするか
ブワン
「む?」
「ほう…ランバネイン殿が…」
「…」
なんだ?
『ジジッ みんな吉報だよ!出水君、陽介、緑川君の3人がB級合同と組んで人型ネイバーの一人を撃退!しかもそのA級三人はC級のフォローをしにこっちに向かってるって!』
お、流石だな
頼りになるぜ
856: 2016/04/07(木) 14:07:56.89
「いやはや…ランバネイン殿が落されるとは…」
「やるじゃねぇか」
敵も驚いているようだ
「しかしランバネイン殿が落されたとあっては我々もうかうかしていられませんな」
「そろそろ俺達も本格的にやるか?ヴィザ翁」
「そうですな…」
「手間取ってしまい、申し訳ありません」
「なに、気にするな。敵も相当やりやがるからな」
「では我々も動きましょうか…」
まずいな…
恐らくだが、今戦ってるこの人型よりも後ろの二人の方が強い
角付きは今戦っているやつだけだが、後ろの二人が角無しでも遠征に来ていることから相当な実力者だと分かる
全く、厄介にもほどがあるぜ
『どうします?後ろ二人も動きそうですよ。このまま全員で本部までじりじり引きますか?』
『…』
レイジさんも考えているようだ
そしてレイジさんが口を開こうとした瞬間
857: 2016/04/07(木) 14:09:21.93
ヒュンッ ドォン!
「!?」
「なんだ…?なにかが降ってきたぞ…?」
「あいたたた。レプリカ先生、これちょっと勢いつきすぎじゃない?間に合ったからいいけどさ」
「迅さん!」
「迅…!」
「よう、みんな。まだ生きてるか?」
「縁起でもないこと言わないでくださいよ。まだみんなピンピンしてますよ」
「そっか。始めまして、アフトクラトルのみなさん。ここからは俺も参戦するんでよろしく」
「こいつは…?」
ズドッ!!
今度は空閑がものすごい勢いで老人に向かって落ちてきた
だが老人はそれを杖でガードしている
「おっと間違えた。俺も、じゃなくて俺達も、だった」
「強印二重」キィィィン
ドンッ!
空閑の攻撃は今度はかわされた
858: 2016/04/07(木) 14:11:43.63
「はっ、続々と集まってくるな」
「ふむ、しかも全員が相当な手練れのようだ…」
「チッ…」
キィィィン ボッ!
磁力使いから再び磁力片が空閑に向かって発射される
だが空閑はそれを首を動かすだけでかわす
「!!」
しかし空閑の後ろには雨取が
こいつら、とことん雨取狙いか!
バチッ!
「くっ!」
「お、メガネ君ナイス」
だが三雲がそれを腕を伸ばして防いだ
「三雲、C級を連れていけ。こいつらは俺達が足止めする」
「りょ、了解!」
「出水と米屋、緑川がすぐそばまで来てる。合流して本部に向かえ」
「はいっ!」
859: 2016/04/07(木) 14:12:28.76
「比企谷君…頑張ってね」
「おう、任せろ」
レイジさんの指示で三雲がC級を連れて退いていく
「ほっほ、ここまできて逃げられるのは遠慮したい」キィィン
老人が始めて攻撃を仕掛けようとする
正直こいつが一番不気味だ
「動くな」
ジャララララララ
ガキン!
「これは…!?」
「鎖?」
老人が鎖で首のあたりをぐるぐる巻きにされ、動けなくなった
「チッ!」
「にがさねぇぜ」
今度は角付きと槍兵だ
860: 2016/04/07(木) 14:14:11.14
「「「エスクード」」」
ドドドドドドド!
俺と迅さんと京介のエスクードで道をふさぐ
「うお、なんだこりゃ」
「道に壁が…!?」
「もうあいつらには追いつけないよ。俺のサイドエフェクトがそういってる」
「なに…?」
「やれやれ…ミデンの戦士は本当に曲者揃いだ。ヒュース殿、クーフーリン殿、作戦を切り替えましょう。この方達をどうにかせねば我々は雛鳥を追えないようです」
「そうだな」
「了解しました…」
『どうする?バラけさせるか?』
『うん。多分その方がいい』
『じゃあどうやって分けます?』
『俺達が爺さんをやる。さっきつけた印があるし』
『おっけー。じゃあ俺が角付きをやろう』
『分かった。俺達で残りの一人をやる』
『了解です』
『おっけー!』
861: 2016/04/07(木) 14:16:05.81
「レプリカの子機を一つ残してくよ」
ニュッ
「三雲にもついてたやつか」
『何かあったら私を通じて遊真にすぐ連絡できる』
「わかった」
「よし、行くぞ、レプリカ」
『心得た!』
ドッ!
「!!」
空閑が地面を蹴ると岩盤がめくりあがり、土煙があたり一面を覆いつくした
「せーっの!」
そんな声が聞こえると同時に空閑ははるか向こうの方に飛んでいった
「八幡、一撃だけ貸してくれ」
「了解です。ヤマト、オン」キィィン
『特別体解除まで残り12秒』
862: 2016/04/07(木) 14:16:46.14
「斬空弧月 氏突」キィン
ボッ!
「!!」ガキィィン
俺が放った氏突が角付きをとらえる
それは反射盾にガードされるが…
ガガガガガガガガ!
(ぐっ!!止まらない…!?)
ガァンッ!
その勢いのまま角付きは遥か向こうの方へと吹き飛んでいった
「サンキュー」バッ
そして迅さんもそれを追いかけて去っていく
「ほう、分断か。まぁ賢明な判断だぜ」
『特別体維持限界 ヤマト解除』バシュウ
863: 2016/04/07(木) 14:17:20.83
「あれ、それ止めちまうのか?」
「…ヒーローには活動時間ってもんがあるんだよ」
「なんだそりゃ」
「本当アンタなに言ってんのよ」
「なに言ってるんですか比企谷先輩」
「…うるせぇ。俺も今ちょっと恥ずかしいんだ。スルーしろや」
「お前ら集中しろ」
「く、くはははははは!お前ら面白ぇな!」
「そりゃどうも…」
槍の人型は腹をかかえて笑っている
「じゃあ笑かしてあげた代金として退いてくれ」
「はははは…おいおい、そりゃ無理な相談だろ」スッ
人型が真剣な顔つきで、だが余裕の笑みは崩さずに俺達に向き直る
「アフトクラトルから来たってことが分かってるなら、俺達の角についても知ってるってことか?」
「…角でトリオンを強化してるってやつでしょ?量と質が変化するとかなんとか。あんたは角ないけど」
「そうそう。博識だな嬢ちゃん」
「子供扱いしないでくれる?」
「それと黒トリガーと適合した場合は黒く変色する、とか」
「おー、なんか目つき悪いお前も結構知ってるんだな」
「目のことは余計なお世話だ」
「まぁ今二人が言ったことが大まかな角の性能だ。細かいことは他にもいろいろあるらしいが…ま、無視していい」
『…さきほどから何のつもりだ?何が言いたい?』
レプリカが問う
864: 2016/04/07(木) 14:18:05.27
「ん?だからよ…」
ビュン
「「「「!?」」」」
消えた!?
「こういうことだ」ヒュッ
『背後だ!』
『後ろ!』
「「エスクード!」」
ガキィン!
「お、これ結構かてぇんだな」
レプリカと宇佐美の声にいち早く反応した俺と京介でガードする
そして俺達は素早く人型から距離を取る
『なんだ今の…テレポートっすかね?』
『分からん…。だがボーダーのテレポーターとは違う。やつの視線は下を向いていた』
『アフトはそういうトリガーを開発したってことですか?』
『まだそこまでのことは分からん』
『情報が少なすぎる…せめてトリガーの名称が分かればユーゴの記録から性能が判明できる可能性があるのだが…』
865: 2016/04/07(木) 14:18:46.79
「俺に角はない、が、俺は角有りのやつらと同等かそれ以上に強いぞってことだ」
人型は悠々と自己を語る
「あぁそれと、今俺がテレポートした、と思ってるか?」
「!!」
「やれやれ…その程度の認識じゃまだまだだな」
ちっ、おちょくってやがる…
『…そういうことか。やつがさっきまでいた場所を見ろ』
レイジさんの声でさっきまで人型がいたところを見る
…?特に変わったことは…
『地面がえぐれてる…』
え?
『つまり…あいつは異常な力で地面を蹴って移動した、ということですか?』
『考えられる最有力の説はそれだな』
『マジか…』
「お?その様子だと気付いたか?」
866: 2016/04/07(木) 14:19:27.66
人型がさっきまでいた場所の地面がえぐれている
しかもその中心には足跡らしきものまである
つまりこれはやつがテレポートをしたのではなく、ただ単に超高速で移動したということになる
『あんなスピードで動かれたら攻撃が当たんないっすよ』
『…』
レイジさんも思案しているようだ
「まぁ気付いたところでてめぇらにはどうしようも出来ないけどな」
ビュン
またか!
『小南!後ろ!』
「!!」バッ
ドスッ!
「くっ!」ブシュゥ
「小南!」
『動きが早すぎる…!』
867: 2016/04/07(木) 14:20:02.23
「胸を貫くつもりだったんだが…今のを避けるとはな」
「避けられてないわよ…。思いっきり肩にくらったじゃない」シュゥゥ
「本来の狙いと別の場所に攻撃が当たったらそれはもう避けられたってことだろ」
「…問答はいい」
「つれねぇな」
『八幡』
『はい』
『目でやつの動きは追えたか?』
『…正直微妙なとこっすね。一回目は見えなかったっすけど、二回目は移動の最初と最後の方だけはかろうじて見えました。途中の最高速あたりは全く見えないです』
『そうか…』
『ハチマンの目でも追えないとなると…厳しいな』
やつのトリガーはスピードをとことん強化するものか?
今のところそれしか見られないが…
俺の目でもほとんど追えないとなると、それこそテレポーター並みだ
京介の機動力特化とは比べ物にならないほどに速い
あんな速度、普通のトリオン体で出せる限界をゆうに超えてる
…考えたくなかったが、角も無しであの性能だと…
『黒トリガーっすかね?』
『恐らくな』
『恐らくそうだろう』
レイジさんとレプリカも同じ考えのようだ
868: 2016/04/07(木) 14:20:43.74
「どうしたよ?ヒュースと戦ってた時に比べて随分と大人しいじゃねぇか」
「あんたみたいに超高速で動ける相手に迂闊に動けるかよ」
「そりゃそうか」
「あんた黒トリガーでしょ?」
「ん?そうだ…と言ったら?」
「別に驚きはしない」
「ははっ…その通りだ。お前さん達の想像している通り、俺のトリガー『ゲイボルグ』は黒トリガーだ」
『ゲイボルグ…!ユーゴの残した記録によると、ゲイボルグはアフトクラトルに太古から存在する黒トリガーだ。ネイバーフットでトリガー技術が発明された辺りに作られたものと言われている。性能は…すまないが記録に残っていない』
「そうか…」
「そんな昔の黒トリガー…」
「…」
性能が分からないのが最も厄介だ
869: 2016/04/07(木) 14:21:37.42
「性能は…まぁ言わねぇよ。自分達でよく考えな」
「サービスしてくれよ」
「嫌なこった。それじゃあつまんねぇだろうが」
「ケチな野郎だ」
「はっ、ハイレインの野郎にもケチとは言われたことねぇぜ」
『とにかく、まずはやつの機動力をどうにかする方法を考えるべきだ』
『あぁ』
『そうですね』
レプリカの言ったことは誰もが考えていたことだ
ブワン
人型の耳元に小さなゲートのようなものが出現する
「ん?ハイレインの野郎が…?」
『って言ってもそんな方法あるの?私らは誰も鉛弾セットしてないし、セットしてたとしても当てれるとは思えないわよ』
『スパイダーは?』
『あぁ、試す価値はある』
870: 2016/04/07(木) 14:22:12.01
『俺は今日スパイダーセットしてきてないっすよ』
『じゃあレイジさんに任せるしかないわね。私たちの仕事はレイジさんの仕事に気付かせないように邪魔をすること、かしら?』
『了解です』
『そうだな』
「お、作戦は決まったか?」
「待っててくれたのか?随分と優しいんだな」
「紳士なもんでな」
「戦場に紳士もクソもないわよ」
「口が悪いぞ嬢ちゃん」
(それに、ハイレインが金の雛鳥捕獲のために出撃した。となると俺の役割はこいつらの足止めってことになるしな)
『行くぞ』
『『『了解』』』
871: 2016/04/07(木) 14:22:50.18
今日はここまで
次回はいつになるかまだわかんないです
ではでは
876: 2016/04/09(土) 21:53:36.33
「バイパー+メテオラ トマホーク」ギュワン
「メテオラ」キン
「む?」
ドドドドドドドドン!
(当てに来ていない…土煙を上げて煙幕のつもりか?)
ボッ!
(当てに来ているのもあるか。だが遅い)
ヒュンヒュヒュン
(その場から少し動いただけでそんなものかわせ…)
ギュン
(なに!?弾が戻ってきた!?)
「チィッ!」
ビュン
ドドドドドォン!
(ヒュースの野郎にも使ってた曲がる弾丸か…。それに爆発の効果を付与させたのか?なかなか面白いトリガーだ。そして…)
ボッ!
「後ろだろ!見えてるぜ!」グルン
「!!」
877: 2016/04/09(土) 21:55:09.44
ガンッ!
「くっ!」
土煙に紛れて人型の背後から京介が斬りかかるがそれはあえなく弾き返される
さらに京介に追撃が迫る
「エスクード!」
ゴッ!
俺が京介と人型の間にエスクードを発生させる
これでひとまずは…
「ゲイボルグがスピードだけのトリガーだと思ったら大間違いだぜ」
なに!?
ドギッ!
「っ!」ブシュウゥ
あいつ、エスクードを軽く貫きやがった!
並の攻撃なら寄せ付けもしないものを…!
「大丈夫か、京介」トッ
「無事、とは言えないですね。トリオンもどんどん漏れてます」シュゥゥ
わき腹の貫かれた傷を押さえる
878: 2016/04/09(土) 21:56:23.98
「ねぇ、なんなのコレ。肩の傷が全然塞がらないんだけど」シュゥゥ
「!?」
小南の肩を見ると、人型からつけられた傷からいまだにトリオンが漏出しているではないか
おかしい
傷の浅さから見てもとっくに塞がってていいはずだ
「ようやく気付いたか?」
人型が口を開く
「これもアンタのトリガーの能力ってわけ?」
「そうだ。ゲイボルグがつけた傷はトリオン体を再構成でもしない限り塞がることはない」
『なんという能力だ』
「チートが…」
「黒トリガーだからな」
アホみたいな機動力に加えて、傷が塞がらない攻撃
ちっ、さすが黒トリガーなだけはあるってか
『しかもさらに厄介なことは使い手の腕も熟達のものだということだな』
「それなんだよな…」
せめて使い手がしょぼかったらいくらでもやりようはあるんだがな
879: 2016/04/09(土) 21:58:14.20
『傷が塞がらない…。そうなると…まずいですね。俺がつけられた傷は小南先輩よりも深い。今でもがんがん漏れてます』
『トリオンは今どんくらいだ?』
『6割と少し…このままだとあと10分ほどで緊急脱出します』
『10分か…』
(む?そういえば…さっきからあの短髪の野郎の姿が見えないな…。見るからにリーダー格だったが…まさか逃げたわけではあるまい)
『ジジッ みんな大変!修君達のところに新たに人型ネイバーが出現!しかも黒い角!』
「マジか…」
『能力はトリオンで出来てるものを全てキューブに変えること。武器もシールドも、全部!こんなの無茶苦茶だよ!』
また黒トリガーだと…!?
風間さんをやったやつも黒い角だったらしいから、これで黒トリガー持ちが3体…
多すぎるぞ
『どうなっている…』
「レプリカ?」
『遊真の相手も黒トリガーだと判明した。しかもアフトクラトルの国宝の一つ、オルガノンの使い手だ。国宝の使い手に加えて、それ以外にも黒トリガーが三つ…これだけの戦力を遠征につぎ込むなど…。一体、アフトクラトルに何が起こっている』
880: 2016/04/09(土) 22:00:01.25
そうだ
明らかにおかしい
普通遠征に黒トリガーなんぞ投入されない
されたとしても一つ、多くても二つだ
それが四つも、さらにその一つは国宝だと…?
莫大な戦力だ
本国の守りはどうなっている?
『よし、粗方完了した』
レイジさんがスパイダーの設置を完了させたようだ
余計な思考は一旦停止だ
目の前の敵に集中しなければ
『了解です。人型をそっちまで誘導します』
『ここで仕留めるぞ』
『…ってことは』
『そうだ。今迅から連絡が入った。この戦争、あと20分ほどで決着がつくそうだ』
『20分ですか…』
『短いようで長いわね…』
『ユーマもかなり苦戦している。私の本体をオサムの援護に向かわせたからな。だがそれでもオサム達が危険なことには変わりない』
『出水達も人型とラービットに苦戦しているらしい。修達への援護が早急に必要だ。一瞬で勝負を決めるぞ』
『『『了解』』』
881: 2016/04/09(土) 22:01:23.36
「いくわよアンタたち!」
「おう」
「メテオラ!」キン
「む!」
ドドドドドドドォン!
小南のメテオラでまずは場を動かす
さらに
「ハウンド」キン
ボボボボボ!
それにまぎれて俺がハウンドを放つ
「二度も食らうか!」ババッ
人型も流石にメテオラがどういうものかを理解したようで、後ろにさがって簡単に避けた
だがそこに俺のハウンドが追撃する
「追尾弾か…!?ちっ!」ビュン
だが人型も超高速でこれをさらに避ける
まぁ避けられるだろうな
ハウンドはそんなに弾速早くないし
882: 2016/04/09(土) 22:04:11.29
けど、狙い通りだ
「レイジさん、『入り』ました」
「全開戦闘だ」バチチッ
(なんだ…!?)
「フルアームズ オン」ギィィン
「ガイスト オン ブレードシフト」バチッバチッ
『緊急脱出まで150秒 カウントダウン開始』
「コネクター オン」キィィン
「ヤマト オン」キィィィン
『特別体解除まで180秒 カウントダウン開始』
(なんだこいつら…?今何をした?)
久しぶりの玉狛第一全開戦闘だ
だが京介のガイストが思ったより短い
傷の影響か
「いくぞ」
ドドドドドドドドドドドド!
(なにっ!?)
レイジさんによるフルバースト
ものすごい弾幕が人型を覆っていく
「レイジさん、『入り』ました」
「全開戦闘だ」バチチッ
(なんだ…!?)
「フルアームズ オン」ギィィン
「ガイスト オン ブレードシフト」バチッバチッ
『緊急脱出まで150秒 カウントダウン開始』
「コネクター オン」キィィン
「ヤマト オン」キィィィン
『特別体解除まで180秒 カウントダウン開始』
(なんだこいつら…?今何をした?)
久しぶりの玉狛第一全開戦闘だ
だが京介のガイストが思ったより短い
傷の影響か
「いくぞ」
ドドドドドドドドドドドド!
(なにっ!?)
レイジさんによるフルバースト
ものすごい弾幕が人型を覆っていく
883: 2016/04/09(土) 22:08:14.18
ビュン
(あいつ、ここでトリオンを使い切る気か?)
「3時の方向です。ハウンド+弧月」ギュワン
『小南先輩!』
『分かってるわよ!』
『ジジッ クーフーリン、気をつけなさい。敵のトリオン反応が軒並み上昇したわ。全員私達の角有りのトリガー並だと思いなさい』
「なんだと…!」
「蜂追弧月」ドッ
俺が上空に向かって斬撃を放つ
「フッ!」
「せりゃあ!」
ガンッ!
小南と京介の左右からの挟撃
だがそれを京介の剣は避け、小南の攻撃は槍で受け止める
(まだ遅…ぐっ!?)ビリビリ
「あたしの攻撃を受け止められると思ってんの?」ゴォッ
「ぐぉっ!?」
ドォン!
小南の攻撃は人型の槍でも止められず、小南の振るった斧に弾き飛ばされた人型がビルに突っ込む
884: 2016/04/09(土) 22:10:28.21
「京介!」
「ガンナーシフト」キィィン
キュドドドドドドドド!
ゴォォォォ!
レイジさんと京介の射撃、俺の蜂追弧月が同時に人型へと降りかかる
(ぐっ!まずい…!弾に囲まれる!)ビュン
初めて人型の表情から余裕が消えた
超高速でその場から離脱したようだ
だが
ギッ!
バィンッ!
(なっ!?)
人型が逃げた先にはスパイダーのワイヤー
人型は自らが高速で動きすぎるが故に細いワイヤーを視認できなかった
(しまった…!空中では…!)
ワイヤーに弾かれた人型は宙を舞っている
「斬空弧月 斬波」ドッ
そこを巨大な斬撃が空中で身動きが取れない人型を襲う
これなら逃げられねぇだろ!
「入った!」
885: 2016/04/09(土) 22:13:29.52
ドゴォン!
「「「!?」」」
「なにっ!?」
完全に決まった
俺達がそう思った瞬間、俺の斬波を赤い光線のようなものが真ん中から貫いた
それによって斬波は無残にも消し飛ばされてしまう
「まさかこれを使うことになるたぁな」シュゥゥゥ
「うそだろ…」
「あいつ…まだ隠し玉を持ってたの…」
「とことん黒トリガーってのは嫌になりますね」
「…」
『なに今の…。一瞬だけど、ものすごいトリオン値を計測したよ。黒トリガーの1.5倍はいってる!』
「ふざけた出力だ」
レイジさんでも辟易している
886: 2016/04/09(土) 22:14:57.17
「おい、まだ手の内を隠してたのかよ」
「…出来れば使いたくはなかった」
「余裕だな」
「違う。今のはゲイボルグの真骨頂であり、同時に諸刃の剣でもあるものだ」
「トリオン出力の値から見て、ごっそりトリオンを持ってかれる、ってとこか?」
「…その通りだ」
「なるほど…乱発は出来ないってことね」
人型の表情は真剣そのもの
もはや余裕の笑みなど欠片も見られない
「俺にこの技を出させたこと、賞賛に値する」
「そりゃどうも」
「だがそれがお前達の命取りになったな」ズッ
なんだ?
やつの槍が赤いモヤのようなもので覆われていく
「まず一人目は…お前だ」
一人目…?
「その心臓貰い受ける!」ゴォッ
887: 2016/04/09(土) 22:16:08.46
「「京介!」」
「ディフェンスシフト」キィィン
「ゲイ…ボルグ!!」キュドッ
「エスクード!」
ドンッ!
巨大なエスクードが俺達の前に出現する
ドギィン!
ガイストで強化されたエスクードだ
さっき貫かれたものとは強度、範囲が段違いだぜ
「無駄だ!」
ドゴォン!
「なっ…!?」
ボッ!
「京介!」
エスクードを貫通した赤い光線が京介の胸を貫いた
「ぐっ…すいません…」
『戦闘体活動限界 緊急脱出』
ドンッ!
897: 2016/04/14(木) 01:09:49.16
「とりまる…!」
「くそっ…!ガイストで強化されたエスクードを貫くだと…!?」
「…」
「ふぅ…これでバランサーは消えたぜ?」
やはりバレてたか
俺達が全開戦闘をする時、実は京介が最も重要になる
あいつのガイストは能力値全てを上げることが出来る
まぁ同時には無理だが
しかしそれによってあらゆる局面に対応でき、なおかつ本人の腕もあってその役割は非常に多岐にわたる
まさにバランサーだ
京介以外がほぼ攻撃に偏っているため、京介がいるといないでは大きく違うのだ
それを見抜かれた
全く…これだから強い敵は嫌なんだ
『レイジさん、どうします?俺のヤマトもあと50秒で解けます。再び起動することも出来ますけど…残りのトリオンはあと3割ほどなので出来れば後50秒で決着つけたいです』
『…』
『どうするも何も、京介がいないんじゃひたすら攻撃しかないでしょ』
『んなこと分かってる。どうやって崩して攻撃するかって言ってるんだよ』
『ふ、ふーん…』
だが本当どうするか…
追い詰めても最後の最後でさっきのを使われたら全てが無駄になる
後何発撃てるかは知らんが、少なくとももう1発は撃てるだろう
898: 2016/04/14(木) 01:21:40.82
『…!まずいな…』
「レプリカ?」
『ジジッ みんな…千佳ちゃんと雪ノ下さんがキューブにされちゃった…。今は修君が二人を抱えて逃げてるけど…いつ追いつかれるか…』
っ!!
雪ノ下が…!
まて、落ち着け
今焦っても良いことは何もない
まずは目の前の敵に集中するんだ
三雲を、後輩を信じろ!
『時間もない、か…。仕方がない。よし、八幡、小南、聞け』
『!』
(残存トリオンはあと4割と少し…2発も使ったせいでかなり減ってるな。普通に撃てばあと2発、もう片方ならばあと1発が限度…。それだけ放てば後はもうゲイボルグを撃てるほどのトリオンはなくなる。さてどうするか…)
「行くぞ」
(む?)
レイジさんの作戦…
正直一か八かだ
失敗すれば俺とレイジさんが、下手をすれば全員緊急脱出だ
勝負は一瞬…!
899: 2016/04/14(木) 01:23:10.92
キィィィィン キュド!キュド!
レイジさんの肩から雨取のアイビスのような威力の砲撃が発射される
普通のシールドやエスクードではまず防げないほどの威力だ
(さっきまでの弾幕とは違って一撃一撃の威力を高めたのか?だが…)
ビュン
(馬鹿なのか…?弾幕ですら当てられないというのに、弾数を減らしたらさらに当てられなくなるというものを…何か他の意図があるのか?)
「10時の方向。バイパー+弧月」ギュワン
(あいつ…さっきから俺のことを目で追えてやがる…!厄介だな…。ならば次のターゲットはお前だ!)ダンッ
「!!」
まずいっ!
今は合成中で身動きが…!
900: 2016/04/14(木) 01:24:28.28
ドスッ!
「ぐっ!」ブシュゥ
「チッ!」
あぶねぇ!
あと数センチ上だったらトリオン供給器官をやられるとこだ
「メテオラ!」ボボボッ
「むっ!」バッ
ドドドドドン!
くそっ、かなりでかい傷だ
このままではあと数分でトリオンが底をついちまう
「馬鹿が!」ボッ
「っ!」ガギン
小南のメテオラも完全に見切ってやがる
人型はメテオラをかすりもせずに避け、逆に小南に反撃する
901: 2016/04/14(木) 01:26:33.63
「蛇空弧月!」ボッ
ゴォッ!
「斬撃…!」バッ
小南の後ろから俺の蛇空弧月が人型を襲う
人型はすぐさま槍で防御体勢を取った
だが
ギュワン
(斬撃も曲げるかっ…!!)
ビュン
上空3時の方向…!
よし!
902: 2016/04/14(木) 01:27:49.63
ビィン!
(ぐっ!?ここにもワイヤーか!)
「八幡!」
「分かってます!」ザッ
俺がレイジさんの隣にすぐさまつく
(ちっ!だが何をしようが俺のゲイボルグの前では…!)ズァッ
再び人型の槍が赤いモヤに覆われる
「最大出力で放つぞ!」キィィン
「威力極振りでいきます!アステロイド+弧月」ギュワン
(まさか…俺のゲイボルグを正面から打ち破る気か…!?)
「出力値から考えて、レイジさんの最大出力の砲撃と俺の氏突が合わされば張り合える!」
測定出来た出力は黒トリガーの約1.5倍
俺とレイジさんの二人同時ならばなんとか…!
903: 2016/04/14(木) 01:29:41.73
「はっ…馬鹿が!あれが俺の最大の出力だと思ったか!!」ズアァアァ
「!?」
『え…なんで…!さっきよりもトリオン反応が…!』
(ここは空中!この高度ならば、『投擲』が出来る!!)
「これで貴様らも終わりだ!ゲイ…」
「ちっ!!放て!」キュド
「氏突!」ドッ
「ボルグ!!」ボッ
!?
槍を…投げた!?
904: 2016/04/14(木) 01:31:35.65
ガギィィィィィン!!!
「ぐっ…!?」ビリビリ
「レイジさん…これ…まずいっすよ…!!」ギギギギギ
「投擲によるゲイボルグの出力はさっきまでのとはケタ違いだ!その程度では止められんぞ!!」
ガギギギギギギギギ!
くそっ!
どんどん押し込まれる!
(投擲によるゲイボルグの出力は通常の黒トリガーのおよそ2倍!その分トリオン消費もかなり大きいが…これで貴様ら二人は終わりだ!)
ガギギギギギ!
「ぐっ…!!が…!」
止まらねぇ…!!
905: 2016/04/14(木) 01:33:07.84
(まだ俺のトリオンはわずかだが残っている!この二人さえ倒せば残りの一人はどうとでも……待て。残り…一人…?)
「…っ」ニヤッ
(はっ!!もう一人の斧使いの女はどこに…!?)バッ
ヒュッ!
「おい、俺達は…最初に言ったはずだぜ?人型ネイバー!人の話しは…よく聞いとくんだな!」ガギギギ
「遅い!」ババッ
「!!うしっ…!!」
「俺達の作戦は最初から唯一つ。『小南の一撃につなげる』こと。チェックメイトだ」
ザンッ!!
906: 2016/04/14(木) 01:34:29.49
「がっ…!!」
人型は右肩から左腰へと真っ二つに両断された
ピシッ…ピシッ…
ドンッ!!
っしゃ!
どうだこの野郎!!
やってやったぜ!
玉狛舐めんな!
バキンッ!
使い手のトリオン体が破壊されたせいか、やつが放った槍も消滅した
ふぅ、正直あぶなかった…
もう目と鼻の先まであいつの投げた槍が来ていた
あと1秒遅かったら俺もレイジさんも吹き飛んでただろうな
『特別体維持限界、ヤマト解除』バシュウ
『フルアームズ、オフ』キュウゥゥン
「ふぅ…」
「やったわね比企谷!レイジさん!」
「あぁ。京介もよくやってくれた」
『ありがとうございます』
907: 2016/04/14(木) 01:35:52.85
「まさか…この俺が負けるとはな…」
煙の中から普段着のような格好をした人型が現れる
耳には赤いクリスタルのようなイヤリング
あれがトリガーか?
「マジでぎりぎりだったけどな。正直お前の赤いレーザーみたいなやつを耐えられるかは賭けだった。しかも最後は前の2回よりも威力高かったし」
「お前達はその賭けに勝ったというわけだな。全く…この俺としたことが、冷静さを欠いていたか?」
「普通に実力だボケ」
「ふんっ…」
「クーフーリン」
ブワン
「っ!!」ババッ
908: 2016/04/14(木) 01:37:09.15
「また人型…!」
「しかも黒い角…黒トリガーか」
『5つ目の黒トリガーだと…!』
「あなたの任務はここまでよ。時間稼ぎも十分してくれたわ」
「そうかい」
『ジジッ その人型、空間操作の使い手みたい!他の人型もそいつに回収されたりしてる!ラービットもそれでいろんな場所に配置したりしてるって!』
「つまりこいつが敵の生命線、キーマンってわけね…」ググッ
「待て小南」
「レイジさん…?」
「相手が引くなら今はそれでいい。深追いはするな」
「その通りだ小南」
「…分かったわよ」
909: 2016/04/14(木) 01:38:34.16
「小僧、名前を聞かせろ」
「あ?人に名を聞く時はまずは自分から名乗るもんだろうが」
「はっ、最後まで生意気なやつだ…。クー・フーリンだ」
「比企谷八幡だ。もう会うこともないだろうけどよろしく」
「ハチマンか…覚えとくぜ。何故かお前とはまた会う気がするんだよな」
「それは遠慮したい。いやマジで」
「クーフーリン、急ぎなさい。私も隊長の援護をしなければならないわ」
「時間切れだ。じゃあなハチマン。楽しかったぜ」
「じゃあなクーフーリン。全然楽しくなかったぜ」
「最後まで減らず口かよ…」
ブワン
910: 2016/04/14(木) 01:40:01.04
「ふぅ…ようやく行ったか」
「あんた何敵と仲良くなってんのよ」
「んなつもりねぇよ」
「宇佐美、レプリカ。迅と遊真はどうなっている?」
『迅さんは足止めに徹してるみたい』
『ユーマも敵の黒トリガー使いを撃破した。今はオサム達の援護のために本部の方へと移動中だ』
「おぉ、さすが空閑」
『そうか、角付きは上手く迅が足止めしてくれているか。これならば…。…っ!!』
「??どうした?レプリカ」
『いや…なんでもない』
なんだ?
今、レプリカの声にノイズが走ったような…
911: 2016/04/14(木) 01:41:24.57
「宇佐美、他の地区の現状はどうなっている?」
レイジさんが問う
『南西地区の対処が遅れてます。ラービットを倒せる隊員が足りていない模様』
「南西地区…。そ、そうだ!宇佐美、雪ノ下や三雲はどうなってる!?」
『本部まであと少しのところまで来てる…。三輪君が人型を一人止めてるけどもう一人の空間操作の使い手が現れて…』
「っ!」ダッ
「あ、ちょっと比企谷!」
「すいません、レイジさん!南西は頼みます!」ゴォォ
「…」
「ちょっとレイジさん!あいつ、勝手なこと…!」
「いや…いい。どのみち修達の援護は遊真以外にも必要だ。俺達で南西のラービットを含むトリオン兵を撃滅するぞ」
「…あぁもう!分かったわよ!比企谷!」
912: 2016/04/14(木) 01:43:19.83
『ジジッ なんだよ!』
「ちゃんと修達を守りなさいよ。雪ノ下さんもね!」
『あぁ!言われなくても!』プツッ
「ったく…!」
「行くぞ小南。南西の被害も小さくない」
「えぇ!」
俺は屋根の上を全力で駆ける
下を走るよりもやや遅いが、屋根をつたっていけば直線の最短距離でいける
けど…くそっ、本部が遠い…!
「宇佐美!修達のところまでは!?」ダンッダンッ
『あと2kmくらい!けど護衛のラービットもやられそう…。このままじゃギリギリ間に合わないかも…!』
「2km…!」
今も槍使いから受けた胸の近くの傷からトリオンががんがん漏れている
俺の残りのトリオンはもう1割もない…
頼む…間に合え…!
913: 2016/04/14(木) 01:45:17.66
『オサム…一つ提案がある』
「提案…?」
『このまま基地に向かっても入り口を開けるのに20秒かかる。今の私がオサムを20秒間守りきるのは難しい。だがネイバーのシステムならば、1秒もかからず解析・侵入できる』
「敵の遠征艇を狙うのか…!」
『迅の予知から外れるため、オサムの生存率は保障できないが、オサムの策と合わせればチカとユキノを守りきれる確率はかなり高くなる』
「そうだな…。敵の狙いは千佳にしぼられてる。雪ノ下さんも千佳とは別の場所に隠しておいたから、もし何かあっても雪ノ下さんはまず大丈夫なはずだ…」
『…』
「フー…」
『オサム…』
「分かってる…」
『作戦を実行に移すなら三輪が戦っている今しかない』
「あぁ、千佳を守るためだ…覚悟は決まった」
914: 2016/04/14(木) 01:47:04.30
ドォォン!
(ラービット…1体やられたか…)
「今だ!」ダッ
『!!運び手が出ました!』
『運び手を狙ったまま待て』キィィン
キュパパパッ
バチチッバチッ
(ラービットがやられた…!)
『ラービットは仕留めた。ミラ、捕まえろ』
『了解しました』
ブワン
「っ!!」
キュドドドド!
「ぐ…!」
915: 2016/04/14(木) 01:48:06.90
(これで終わりだ…!)キィィン
ザァァァァァ!
(ここからが本当の勝負だ…!)
「トリガー、オフ!」
ビュゥン ダッ!
(なにっ!?)
「換装を解いた…!?」
ボッ!ボボッ!
「チッ!ミラ、やつを!」
「待て!お前らの相手は俺だ!」
「煩いぞ!」ブワン
(緑川を倒したワープを通じての攻撃…!)
「来たなバカが!それはもう知ってる!!」バッ
916: 2016/04/14(木) 01:48:59.78
(…!?)
「バイパー!」ドドドドドドド
(しまった…!)
ドパァン!
「くたばれ!」ダッ
「隊長!」
ブワン!
「!?」
ズッ!
917: 2016/04/14(木) 01:50:35.83
「ここは…!」
『基地から引き離された…!』
「ワープ女のトリガーか!」ギリッ
『よし、ここまで来れば…!』
「あぁ!弾印(バウンド)、二重(ダブル)!」ドッ
「宇佐美!まだ見えないのか!?」
『あと150mくらい…!もう駄目…!修君が追いつかれる…!』
「150m…!!」
『修君…!』
「射程圏だ!」
『え…?』
918: 2016/04/14(木) 01:51:35.78
「金の雛鳥を渡しなさい!」
ビキキッ!
「なっ!?トリオン切れ…!?」
(大窓を使いすぎた…!!それに、この傷で…!)
ドッ!
「!!」
(やつは砦までおよそ20歩。だが相手は生身、すぐに追いつく…!)ゴォォォ
919: 2016/04/14(木) 01:52:52.04
「レプリカ!」
「豆粒!」
「宇佐美!」
「「「敵の位置を教えろ!!!」」」
「強印(ブースト)+射印(ボルト)、五重(クインティ)!!」
ギィィィィン!!
「トリガーオフ!」ビュゥン
バッ!
「風刃、起動!!」
ズアァッ!!
「ヤマト、オン!」
ギィィィィィン!!!
『特別体解除まで6秒、カウントダウン開始』
920: 2016/04/14(木) 01:54:53.14
(人型が来る…!三輪先輩はやられたのか…!?けど、この距離ならギリギリに間に合う!)
(残った攻撃用トリオンをかき集めて…)バチッ
「運び手を止めるのは…私の役目!」キィィン
ズドッッ!!
「がっ…!?」
(追いついた…よくやったミラ)ゴォォォ
「がはっ…!あと…少しで…!」
『投げろ!オサム!』
「!!」
(…?なんだ?何をするつもりだ…!?)
921: 2016/04/14(木) 01:56:37.23
「う…ぐ…!!」ググッ
(…!!こいつの狙いは…我々の艇か!させるか!!)
「撃てぇ!!」
ドドドドドドド!
バチチチッ!バチチッ!
(援護射撃…!取り逃がした雛鳥か?だがこれは目眩まし…本命は…ヴィザを倒した使い手!)
『そこだ!ユーマ!』
キュドドドッ!
(右後方から来る…。それさえ分かっていれば…こいつを頃すのに支障はない!!)
ギュン ザキキキキン!!
(…っ!?斬撃!?どこから…!!)
922: 2016/04/14(木) 01:58:22.28
キュン ボッッ!!!
「チィッ!!」
グラッ… ザザァ!
(だが!)
『馬鹿な…!!まだ…!?』
「ぐっ…!身体が…!くそっ!動けっ!!」
(トリオン体はまだ破壊されていない!バランスは崩されたが…相手は所詮生身!手を伸ばせば…殺せる!!)
「我々の勝ちだ!ミデンの運び手!!」
ゴォッ!
「三雲から…離れやがれ!!」
923: 2016/04/14(木) 02:00:36.19
キュドッ!!!
「なっ!?」
ドォォォン!
『ハッチー!氏突が命中!人型が吹き飛んだ!』
「はっ!」ニッ
「人型が…吹き飛んだ…!?」
『オサム、今だ!』
「っ!」
「あああああああぁぁぁあ!!!」
ブンッ!
ビシッ!
『侵入完了!』
バチチッ!
924: 2016/04/14(木) 02:02:07.97
三雲の投げたレプリカの本体が敵の遠征艇に侵入し、強制的に動かす
「隊長!」
「艇を調べろ!」
「はい!……これは…!帰還の命令が実行されています!命令を変更…出来ません!」
「…まんまとやられたということか」
「金の雛鳥を持って早く艇へ!」
「分かっている」
ザッザッザッ ガッ
「!?これは…!」
「隊長…?」
「これは…違う。ただのトリオンキューブだ」
「なっ!?」
「もう片方も…やはりか…」
「替え玉…!いつの間に…!?」
925: 2016/04/14(木) 02:03:43.99
(恐らく、あの無意味だと思っていた攻撃か…)
「艇を狙ったのも、本物を捜す時間を与えないためか…」
「時間がありません!隊長!」
「…仕方ない。金の雛鳥は放棄する。発進までに艇のゲートでヴィザを回収しろ」
「了解です。ヒュースは…いかが致しますか?」
「あぁ…。金の雛鳥を捕らえられなかった以上、予定通りここに置いていく」
『オサム…お別れだ。ユーマを頼む』
「…っ!!」
ゴゥン!
ギィィィィィィィ ドッ!!!!
『人型ネイバーが…撤退した…のかな?』
「へへ…やったぜ。ざまぁみろ…」ピシッピシッ
『戦闘体活動限界、緊急脱出』
ドンッ!
雨取と雪ノ下は守りきれたっぽいな
へへっ…
この戦争…俺達の、勝ちだ!
926: 2016/04/14(木) 02:05:26.41
「うーっす」ガラッ
「あら、こんにちは。比企谷君」
「ちょっとヒッキー!なんで先行くし!」ダダダッ
「由比ヶ浜さんもこんにちは」
「あ、ゆきのんやっはろー!!」
「…っ!耳元ででけぇ声出すな」キーン
あの戦い、第二次大規模侵攻と呼ばれる戦いから1週間が経った
この戦いで多くの負傷者、そしてC級隊員の拉致、さらにはボーダー職員に氏者までもが出てしまった
建物もそこらじゅうが全壊や半壊
だが奇跡的に市民の氏者は0らしい
本当みんな頑張ったよ
うん…特に俺
めっちゃ頑張った
ひょっとして一番頑張ったんじゃね?
その証拠に一級戦功もらったし!
…まぁ空閑や太刀川さんは特級戦功もらってたけど…
ま、まぁ、頑張ったことには変わりないし?
評価もされてるし?
927: 2016/04/14(木) 02:07:08.66
「あなたさっきから表情がコロコロ変わっているけれど…大丈夫?」
「ヒッキーきもい…」
「え?表情に出てた?てかきもい言うなビXチが」
「だからビXチじゃないし!!」
こうして平穏も取り戻せた
被害は出たが…けどまぁ三雲が記者会見で啖呵切ったからな
無茶なこと言いやがって…
攫われたやつらを取り返す、か
先輩として応援しないわけにはいかんな
それに、久しぶりに俺達も遠征チーム狙うのもアリかもな
今度レイジさんに言ってみよ
あ、でもそうすると三雲達の門が狭くなるか?
うーん、どうしようか…
「おーっすハッチー!」ガラッ
「いるかー?」
あ?
928: 2016/04/14(木) 02:08:38.07
「あら、出水君に米屋君。いらっしゃい。ヒキガエル君ならそこにいるわよ」
「誰がヒキガエルだ。で?どうした、何の用だ?」
「この前の戦いのお疲れ会ってことでさ、また高2組で飯行こうって話になったんだけどよ…」
「そうなのか。え、それわざわざ言いに来たのか?メールとか電話してくれりゃ…」
「だってハッチーに電話しても全然出ねぇし」
「あん?あ…電源切ってた…」
「おい、なんかデジャヴが…」
「まぁハッチーにだけじゃないけどな。雪ノ下さんもどうかなって思ってよ」
「私も?」
「ハッチーから聞いたぜ。雪ノ下さんもうB級になったんだろ?」
「えぇ、まぁ…」
929: 2016/04/14(木) 02:10:04.59
「へー!おめでとうゆきのん!」
「ありがとう由比ヶ浜さん。あと比企谷君?何を勝手に言いふらしてるのかしら?」
「い、いや別に隠すことじゃねぇだろ?」
「わたしがB級に上がったってことが広まればまた勧誘の嵐が来るじゃない」
「あぁ…」
「全く…まぁいいわ。それで、その食事会は私も参加していいのかしら?」
「あぁ、もちろんだ!歓迎するぜ!」
「いいなぁ…」
「由比ヶ浜さんもボーダーに入隊すれば来られるわよ?」クスッ
「は?おいやめろ」
「うーん…どうしよっかなぁ…」
「いやマジでやめろ…おい、やめてください」
「ヒッキーは黙ってて!」
「…っ」
「まぁまぁ」ポン
「どうなっても知らんぞ…」
930: 2016/04/14(木) 02:10:46.23
はぁ、まったく
どいつもこいつも
まぁ確かに?
ボーダーには尊敬できる先輩はいっぱいいるし?
かわいい後輩もたくさんいるし?
なんやかんや仲の良い同学年のやつらもいるし?
上層部も出来る人達ばかりだし?
なにより…俺にとって温かい場所だしな…
恐らく俺はこれからも関わり続けるのだろう
時には苦しい時もあるだろう
けど、昔と違って今は仲間がいる
最高の仲間が
それが、俺にとっての始まりの場所…
931: 2016/04/14(木) 02:11:51.36
「ボーダーか…」
― 終 ―
932: 2016/04/14(木) 02:14:37.46
くぅ~w疲れま(ry
これで完結です
長い間読んでくださってありがとうございました
依頼出してきますね
感想いただけたら幸いです
続きはまた書くかもしれませんし書かないかもしれません
では失礼します
934: 2016/04/14(木) 03:22:17.39
お疲れ様でした!
935: 2016/04/14(木) 08:36:06.20
おつでした
ワートリ側はこれ以上進めるの難しいけど俺ガイル側は修学旅行や文化祭もあるし時系列いじってもいいからそこら辺のイベントに
ワートリ勢が絡む展開も見たかったり…
ワートリ側はこれ以上進めるの難しいけど俺ガイル側は修学旅行や文化祭もあるし時系列いじってもいいからそこら辺のイベントに
ワートリ勢が絡む展開も見たかったり…
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