1: 2009/12/06(日) 03:40:22.10
朝。お姉ちゃんはなかなか起きないのでいつも私が起こしてる。

憂「お姉ちゃん朝だよ起きて」

唯「う~あと5分」

憂「起きないと遅刻しちゃうよ」

唯「ういも一緒に寝よ~」

憂「馬鹿なこと言ってないで早く起きてよ」

本当はお姉ちゃんと一緒に寝たかったのはナイショ。

2: 2009/12/06(日) 03:42:57.63
唯「わぁ、もぉこんな時間!?」

憂「も~、だから言ったじゃない」

時計を見たお姉ちゃんがベッドから飛び起きて、制服に着替えるためにパジャマを脱ぎ始め…

憂「お姉ちゃん!?」

唯「なに~?」

憂「わわ、私が居る目の前で着替えないで!」

唯「姉妹だから気にするコトないじゃん」

そうなのかな?
私が意識し過ぎてるのかな?

唯「というか、なら早く出てってよ~。私の着替えを見たいなら居てもいいけど…」

憂「あっ、そそそうだね!ごめんなさいっ!」

3: 2009/12/06(日) 03:45:11.86
唯「ご飯食べてる時間あるかなぁ?」

ダダダダダッ、と慌ただしく階段を降りてきたお姉ちゃんが私に聞いてくる。
時計を見て、時間を確認する。お姉ちゃんがご飯を食べる位の余裕はまだあるよね。

憂「まだ大丈夫だよ。はい」

こんがり焼いたトーストにジャム。スクランブルエッグとオレンジジュースをお姉ちゃんの前に差し出す。

唯「うい~、ありがとぉ~」

お姉ちゃんが美味しそうに、幸せそうに、ジャムをたっぷりつけたトーストを頬張っている。
その姿にしばらく見惚れていた私は、お姉ちゃんの髪の毛の寝癖に気が付いた。

4: 2009/12/06(日) 03:47:05.88
憂「お姉ちゃん、髪の毛寝癖ってるよ~」

唯「おおっ!?ホントだ!あはは!」

自分の髪の毛を触って寝癖を確かめたお姉ちゃんは、少し驚いた顔をした後に笑う。

憂「このまま学校に行ったら皆に笑われちゃうよ、お姉ちゃん」

私が手で髪を梳くと、お姉ちゃんはその顔に、くすぐったそうに、先程とは違う、照れた笑みを浮かべた。

唯「笑われちゃうトコだったね、えへへ」

憂(か、可愛いっ…!!)

ほっとけないなぁ、もう!

5: 2009/12/06(日) 03:49:07.39
戸締まりをして、玄関も鍵を掛けて、二人で一緒に家を出る。
お姉ちゃんは、私がプレゼントした手袋を手に。
私は、お姉ちゃんにプレゼントとして貰ったマフラーを首に。

唯「ふぅ…、お、息が白いよ憂!」

憂「そーだね。それだけ寒いんだよ~」

二人で他愛もない話をして、ゆっくりと歩いていく。
ああ、幸せな時間。

6: 2009/12/06(日) 03:54:21.07
律「唯に憂ちゃん、おっはよー!」

後ろから元気の良い声が聞こえて、私とお姉ちゃんが振り向くと、

澪「おはよう、唯、憂ちゃん」

そこにはお姉ちゃんの友達である澪さんと律さんが居た。

唯「澪ちゃん、りっちゃん、おはよ!」

お姉ちゃんが嬉しそうに挨拶を返す。

憂「おはようございます」

7: 2009/12/06(日) 03:56:27.76
唯「二人で通学なんて、仲良いね!」

律「私達はたまたまそこで会っただけだよ」

澪「高校生になっても一緒に通学してる唯達の方が仲良いと思うぞ?」

唯「えっへん、当然だよ!憂と私は、憂が生まれた日からの仲良しだからね!」

憂「ふふっ、お姉ちゃんなぁにそれ」

お姉ちゃんがそんなことを言うから、思わず突っ込みを入れてしまう。

唯「だって憂、ちっちゃい時は私の手をずっと掴んで離さなかったんだからね~!あの頃はちゅーもいっぱいしたし!」

憂「お、お姉ちゃん!?」

お姉ちゃんの言葉に、澪さんと律さんが苦笑いをする。
恥ずかしい…。

憂(生まれた日からの仲良し、かぁ)

何だか、心があったかくなった。

8: 2009/12/06(日) 03:57:22.51
梓「憂はホント、何でも出来るよね」

3時間目の調理実習。フライパンでクレープの生地を作っていると、梓ちゃんがそう話かけてきた。

憂「そんなことないよ」

梓「勉強・運動・料理、何でも出来るじゃん」

憂「梓ちゃんだって、可愛いし、ギター上手だし」

梓「私はギターだけだよ。憂みたいになんでも出来たりは、ね」

純「ていうか憂だって愛いいじゃん!全くこの子は良く出来た子だよねぇ」

憂(良く出来た子、ね…)

10: 2009/12/06(日) 03:58:09.21
それは違うよ純ちゃん。果物を切りながら、私はお姉ちゃんの事を頭で思い浮かべていた。
子供の頃から、ずっと言われてきた言葉。

「平沢憂は、良く出来た子」


昔から良く親が家に居ない事が多くて。
お姉ちゃんと二人きりになる事が多くて。
だから、自然と家事炊事が出来るようになった。だけど、私一人だったら…。

「お姉ちゃんと比べて、憂ちゃんは良く出来た子だねぇ」

いや、違う。それは間違いなんだ。私は一人じゃ何も出来やしない。

11: 2009/12/06(日) 03:59:36.64
キーンコーンカーンコーン
3限の終了を告げるチャイムが鳴る。しばらくすると、廊下が騒がしくなってきた。
多分、家庭科室の近くの教室で、他のクラスが授業を行っていたんだろう。

「お、おい。マズイんじゃないか?」

あれ?この声…

「大丈夫だよ、今休み時間だもん」
「それにしたってさ…」
「りっちゃんは心配性だなぁ~」
「とっても良い匂いがするわ♪一体何を作ってるのかしら?」
「う~ん…確かクレープって言ってたかな?失礼しまぁーす!」

ガラガラとドアを引いて、お姉ちゃんがひょこっと顔を出す。

14: 2009/12/06(日) 04:02:01.94
梓「憂…唯先輩達…」

憂「う、うん。今日調理実習でクレープ作るって話はしたんだけどね…」
先生が顔をしかめて、お姉ちゃんと…どうやら律さんと紬さんも一緒みたい…に声をかけた。

「貴方達ねぇ…、今、一応授業中なんだけど?」

憂「せ、先生、待ってください」

唯「あ、う~い~!やっほー、食べに来ちゃった♪」

私を見つけたお姉ちゃんが手を振ってくる。

16: 2009/12/06(日) 04:04:28.11
憂「もう…、お昼に持っていってあげるっていったじゃない」

唯「えへへ~、だって食べたかったんだもん」

お姉ちゃん、なんて良い笑顔。
梓ちゃんが苦笑いをしながら、先輩らしいです、と呟いた。

「あのー…平沢さん?」

憂「あ、す、すいません先生。私が呼んだんです。お姉ちゃんにどうしても食べて貰いたくて」

「あら、そうなの。…まぁ、平沢さん達の班はもう出来上がってるみたいだし…いいでしょう。ただ、貴方達、次の授業には遅れないようにね」

唯「は~い、分かりましたっ」

17: 2009/12/06(日) 04:05:47.68
先生のお許しを得たところで、お姉ちゃんと、後ろでニコニコしてる紬さんと、
オロオロしてる律さんの3人にクレープを渡す。

律「いや~、私達まで悪いね憂ちゃん」

憂「いえいえ、いいんです。班の皆だけじゃこんなに食べ切れなかったですし」

紬「うん、とっても美味しいわ!」

憂「ありがとうございます紬さん」

唯「美味しくて当然だよ~。憂は料理とお菓子作りの天才だからねっ」

憂「お、お姉ちゃん言い過ぎ…。それに作ったの私だけじゃないからね~?」

憂「しかも、ほっぺにクリームつけて~…」


18: 2009/12/06(日) 04:07:07.77
ハンカチをポケットから出して、お姉ちゃんの頬に付いたクリームを拭き取る。

唯「あははっ、ありがと、うい!」

…やっぱり私は一人きりじゃ全然ダメなんだ。
この笑顔を見るために。この笑顔がどうしても見たくて。
お姉ちゃんが一緒に居るから、やる気や、勇気や。
休まずわいてきて、燃えるんだ。


19: 2009/12/06(日) 04:09:06.39
放課後。お姉ちゃんと一緒に帰りたいけれど、お姉ちゃんは勿論部活。
教室で梓ちゃんと別れた後、私は夕飯の買い物をするためにスーパーへ。

今日は、何を作ろうかな。
何を作れば、お姉ちゃんは喜んでくれるかな。

そんな事を考えながら店内を歩いていると、
『クリスマスケーキ予約受付中!』
というポスターが壁に貼られているのが目に入ってきた。

憂「クリスマス、かぁ」
今年も軽音部の皆さんとのクリスマスパーティ、やるんだろうか。
ふと、思い出す。

20: 2009/12/06(日) 04:10:29.13
『うーい、うーい!おきてー!』
『うぅん…、お姉ちゃん…?』
『そと!はやくはやくー!』
『わぁ…!』

外に出て見たのは
私だけの、ホワイトクリスマス。
お姉ちゃんが私だけのために、
用意してくれたサプライズ。

憂「どんな風に、お返しすれば、いいのかなぁ」

21: 2009/12/06(日) 04:11:50.97
唯「ただいま帰ったぞーっ!」

お姉ちゃんの声が聞こえて、私は玄関へ向かう。
憂「お帰りお姉ちゃん、冷蔵庫にアイス買って来ておいたよ」

唯「おおっ!流石憂は気が利くねぇ」

憂「ご飯食べてからだよ?後、風邪流行ってるから、手洗いとうがい、ちゃんとしてね?」

唯「あはは、子供じゃないんだから分かってるよ~」

22: 2009/12/06(日) 04:13:14.07
唯「憂はアイス食べないの?」

食器を洗い終えて、リビングで二人でぼーっとしていると、右手にアイスを持ったお姉ちゃんが私にそう聞いてきた。

憂「今はいいかな。ご飯食べたばっかりだしね」

唯「むー…」

お姉ちゃんが不満そうな顔でじーっと私を見つめてくる。

憂「な、何?」

そんなに見られると恥ずかしい…。

23: 2009/12/06(日) 04:14:47.44
唯「はい、あ~ん」

憂「?」

唯「はんぶんこ。一人で食べても楽しくないから。ほら憂、あーん」

憂「あ、あーん。んっ、あまい…」

唯「美味しい?」

憂「うん。美味しい」

唯「やっぱり二人で食べた方が美味しいよ」

憂「ふふっ、そうだね」

思えば、お姉ちゃんとはいつも何かをはんぶんこしていたかも。
でも、二人ではんぶんこする事で幸せは二倍に変わるんだ。

24: 2009/12/06(日) 04:15:27.77
いつか私とお姉ちゃんも離れる日が来るのだろうか。
お姉ちゃんに素敵な人が出来て、私も今は知らない素敵な誰かと出会って。
そんな日が来るのだろうか。
それまでに私はお姉ちゃんから貰った色々なモノを、教わった色々なコトを。
返せるかな?あげれるかな?

「ねえ、お姉ちゃん」

「なぁに、うい」

「私がお姉ちゃんの妹になる事は運命だったんだよ、絶対」

「私が憂のお姉ちゃんになる事も、絶対運命だったと思うよ」

「ふふっ」

「あはは」

25: 2009/12/06(日) 04:16:58.87
「…お姉ちゃん」

「なぁに、うい」


「私、お姉ちゃんの妹でホントに良かった」

おしまい

26: 2009/12/06(日) 04:17:39.26
読んでくれた人居たらありがとう
お休みーノシ

30: 2009/12/06(日) 04:44:11.93

寝る前に癒された

34: 2009/12/06(日) 09:12:36.35
おつ

引用元: 唯「らぶりぃ しすたぁ らぶ」