1: 2022/01/08(土) 18:11:05.744
ゴトゴトゴト…

女上司「あー、終電出ちゃったね」

男「惜しかったですね」

男「……ん?」

男(時刻表によると終電発車時刻は0時10分、今の時刻は0時20分。特に電車遅延の情報はない)

男(ということは、今の電車は……!?)

男「まさかあんた……“能力者”か!?」

女上司「あら、鋭いわね。バレちゃったか」

3: 2022/01/08(土) 18:14:23.719
男「このところ起きてる“人が電車に轢かれてるような”連続殺人、あんたの仕業だったのか!」

女上司「その通り」

男「なら……捕まえてやる!」

女上司「できるかしらね」クスッ

男「!?」

女上司「私の能力は『いつでも終電を出す能力』……これがどういうことか分かる?」

男「……?」

女上司「つまり、いつでも電車を出せるってことよ!」

5: 2022/01/08(土) 18:17:08.450
女上司「発車ァ!」

グオオオオオッ!

男(目の前にいきなり終電が現れた!)

男(速ッ)(回避――)(無理)(激突……!)(氏)





ドゴォンッ!!!

6: 2022/01/08(土) 18:21:17.003
病院――

妹「お兄ちゃんは!?」

友人「容態はどうなんでしょう?」

医者「全身を強く打ち……意識不明の重体です」

医者「仮に命が助かっても、意識が戻るかどうか……」

妹「そんな……」

友人「妹ちゃん……」

友人「あいつを……見せてもらうことはできますか?」

医者「本来はできませんが、かまわないでしょう」

7: 2022/01/08(土) 18:25:04.563
男「……」

妹「お兄ちゃん……!」

友人「くっ、ひでえ……ボロボロだ……」

男「……」ボソッ

妹「?」

男「で……ん……しゃ……」

妹「電車!? 今、電車って!」

友人「無意識の内に俺らにヒントを残してくれたのか!」

9: 2022/01/08(土) 18:28:04.049
友人「これでなんとなく分かった、敵の能力!」

妹「電車……ですね」

友人「これ以上病院にいても、あいつにしてやれることはない。俺たちは力を蓄えよう」

友人「力を蓄えて、敵を倒し、あいつが目覚めるのを待つんだ!」

妹「はいっ!」

…………

……

10: 2022/01/08(土) 18:31:16.774
友人(敵との戦いに備えて俺がやることは……筋トレ!)

友人(腕立て伏せ!)グッグッ

友人(スクワット!)グッグッ

友人(ダンベルを持ち上げ!)グイッ

友人(バーベルを持ち上げ!)グンッ

友人(ひたすらに己を鍛え上げるッ!)

11: 2022/01/08(土) 18:33:43.898
友人(妹ちゃんはどうかな?)

妹「……」スタスタ

『囲碁教室』

友人(囲碁教室!?)

友人(なんであんなところに? 囲碁を通じて視野を広めようとかそういう狙いか?)

友人(まあ、彼女には彼女なりの戦略があるのだろう。今日も俺は筋トレするぜ!)

12: 2022/01/08(土) 18:37:09.376
やがて――

友人「どうだい、妹ちゃん」ムキッ

妹「すごいです! ボディビルの大会に出てもダントツで優勝できますよ!」

友人「君の仕上がりはどうだい?」

妹「もう少しというところなんですけど……」

友人「分かった。じゃあ俺一人でちょいと敵討ちに行ってくるよ」

妹「危険です!」

友人「心配いらない。俺の筋肉に勝てる奴はもはやこの世に存在しない!」

13: 2022/01/08(土) 18:40:17.466
女上司「あなたは?」

友人「あいつの友人……といえば分かるだろう」

女上司「ああ、彼ね。今も病院で生氏をさまよってるらしいわね。どうせ助からないだろうけど」

友人「貴様……!」

友人「俺の筋肉で、貴様の悪行を打ち砕いてくれるわ!」ムキッ

女上司「たかが筋肉で私の能力に“勝とう”だなんて、まさしく“下等”ね」

友人「ほざけェ!」

14: 2022/01/08(土) 18:41:28.750
ダジャレでワロタ

15: 2022/01/08(土) 18:43:18.906
女上司「発車ァ!」

グオオオオッ!

友人(終電が出てきた! だが、予想通り! あいつのヒントのおかげだ!)

ガシッ!

女上司「受け止めたですって!?」

友人「……」ニヤッ

友人(このまま一気に押し戻してやる!)

16: 2022/01/08(土) 18:46:18.109
友人「ん……?」グッ

友人「あ、あれ……?」ググッ

女上司「あなた、電車をナメすぎ」

女上司「電車は一両あたり40トンはあるのよ。ちなみに私の終電は十両編成。人間がちょっと体を鍛えたぐらいで押し返せるわけないでしょ?」

友人「な……!」メキメキ…

女上司「トドメよ」

友人「うおおおおっ!」メキゴキ…

ドゴォンッ!!!

17: 2022/01/08(土) 18:49:32.339
医者「重体です……」

友人「うう……」

妹「友人さん……」

友人「すまない……俺一人でカタをつけたかったんだが……」

妹「いえ……よく頑張ってくれました。お兄ちゃんもきっと喜んでます」

妹「あいつは今日も殺戮を繰り返してる。これ以上野放しにはできない」

妹「女上司は……必ず私が倒してみせます!」

友人「た、頼んだよ……」

18: 2022/01/08(土) 18:52:10.653
女上司「今度は誰?」

妹「あなたが電車で轢いた男の妹よ! よくも友人さんまで倒してくれたわね!」

女上司「あなたたちも懲りないわね」

女上司「まあいいわ。あなたを倒したら、入院してる残り二人にもトドメを刺す」

女上司「そしたら邪魔者のいない世界で、私は終電パワーでこの国に君臨するのよ!」

妹(お兄ちゃん、友人さん、見てて。私、必ず女上司を倒す!)

21: 2022/01/08(土) 18:54:14.023
終電って恐ろしいんだな

22: 2022/01/08(土) 18:55:19.667
女上司「発車ァ!」

グオオオオッ!

妹「……」パチッ

スルッ

ドガシャァンッ!

女上司「な……!? 私の終電が……!」

女上司(妹にぶつかる前にコースを変えて横転した……!)

24: 2022/01/08(土) 18:58:12.183
女上司「今度こそ……発車ァ!」

グオオオオッ!

妹「……」パチッ

スルッ

ズガァンッ!

女上司「どうして!? なぜまっすぐ走らず、ぶつからないの!?」

妹「……」

女上司(さっきから鳴ってる『パチッ』という音……まさか!?)

25: 2022/01/08(土) 19:01:22.665
女上司「置き石か!」

妹「当たり」

妹「あんたの出した終電の前に置き石をして、横転させてたの」

妹「私が囲碁教室に通ったのは……電車の天敵である置き石を極めるため!」

妹「あんたの電車は私には通用しない!」

女上司「そう何度も同じことができるものか!」

グオオオオオッ!

スルッ

ドガァンッ!

妹「無駄だってば。置き石を極めた私にもう電車は届かない」

女上司「うぐぐぐぐ……」

26: 2022/01/08(土) 19:05:00.885
女上司「発車! 発車! 発車ァ!」

女上司「……出ない!? SP(終電ポイント)切れか!」

妹「どうやら一度に出せる終電は三本までみたいね」

女上司「ぐぬ……」

妹「これまで色んな人を終電で轢き頃した罪、今こそ償わせてやる!」

女上司「うふ、ふふふ……」

妹「?」

27: 2022/01/08(土) 19:06:16.272
周囲の被害とんでまなさそう

28: 2022/01/08(土) 19:08:18.158
女上司「甘いわね、お嬢ちゃん」

妹「何がよ?」

女上司「横転させた電車には……当然乗客がいるのよ?」

女上司「もちろん、ただの乗客じゃない。私が生み出した乗客なんだから、全員私の使い魔みたいな存在なのよ」

ウゾウゾ…

妹「な……!」

女上司「さあ、みんな! この妹をなぶり頃してあげなさい!」

乗客A「ウオオオオオン……」

乗客B「コロス……コロス……」

ウジャウジャ…

妹(どうしよう! 置き石じゃこいつらを倒せない!)

31: 2022/01/08(土) 19:11:34.917
バキィッ!

乗客A「グゲッ!」

妹「あっ!?」

女上司「なにっ!?」

友人「へへへ……退院してきちまったぜ……」

女上司「バカな! 瀕氏の重傷のはず!」

友人「筋トレは……無駄じゃなかったってことだな……。体はボロボロでも、こんな乗客どもなら蹴散らせる……」

友人「今だ、あの女上司に強烈な一手をお見舞いするんだ!」

妹「はいっ!」

33: 2022/01/08(土) 19:14:11.862
妹「だああああっ!」ダッ

女上司「この気迫……プロ棋士にも匹敵する!」

女上司(だけど甘いのよ! 私はまだほんの少しだけSPを残している!)

女上司「発車ァ!」

グオオオッ!

妹「!」

女上司「一両編成の小さな終電だけど……これを喰らえばひとたまりもない! 置き石も間に合わないッ!」

34: 2022/01/08(土) 19:17:31.613
妹「読んでいたわ」サッ

女上司(かわした!?)

妹(ありがとう、囲碁教室の人たち。おかげで鋭い“読み”を手に入れることができた)

女上司「ひいっ!」

妹「喰らえッ!」

妹「あんたの天元(のうてん)に……トドメの一手を!」



バチィンッ!



女上司「が……!」

女上司(私の頭に碁石がめり込んで……)

メキメキ…

女上司「ぐはぁぁぁ……! 終電を支配し、自在に生み出せるこの私がぁぁぁ……!!!」

妹「人生を……“投了”したようね」

35: 2022/01/08(土) 19:20:46.623
乗客C「ギィィィィ……」

乗客D「グエェェェ……」

シュゥゥゥ…

友人「あの女が氏んだら、乗客も消えていく……。全て、終わったんだ……」

友人「妹ちゃん、やったな!」

妹「はいっ!」



…………

……

36: 2022/01/08(土) 19:24:32.268
医者「奇跡です……! 奇跡的に意識が戻りました!」

妹「お兄ちゃん……!」

友人「戻ってきたか!」

男「二人とも……」

妹「お兄ちゃんのヒントのおかげで、あいつは倒せたよ!」

友人「妹ちゃんの強烈な一手が決まったんだ」

妹「ううん、友人さんがいなきゃ、私は乗客たちにやられてたよ」

男「とにかく、これ以上被害者が出ることはない……本当によかった……」

39: 2022/01/08(土) 19:28:18.954
男「ところで……もう一つ俺に報告することがあるんじゃないか?」

妹「え……」

友人「流石に鋭いな、お前は」

妹「実は戦いをきっかけに、私と友人さん付き合ってるの」

友人「もしかしたら、俺がお前の弟になる日も近いかもしれねえ」

妹「……もう! 友人さんったら!」

男「二人の幸せそうな姿が、俺にとってのなによりの回復薬だよ」





― 完 ―

41: 2022/01/08(土) 19:31:48.118

囲碁ってすげえ!

引用元: 女上司「あー、終電出ちゃったね」男「まさかあんた……“能力者”か!?」