1: 2013/01/25(金) 04:02:33.04
杏「…………」

P「はい無視です。ソファーで寝っ転がってる杏ちゃんは話相手にもなってくれません!」

杏「もー、めんどくさいなぁ。事務所に来たばっかりなんだから静かにしててよ」

P「こんなに面倒臭がりの杏は、なんでも出来て周りからちやほや。片や俺は、いつも怒られて周りにペコペコ」

杏「社会人なんだから、普通じゃない? 大体、年下にそんな事言って恥ずかしくないのかな?」

P「それ言われたらおしまいだけどさ」

杏「終わったんだね。じゃあお休み」

P「だがしかし! このまま引き下がるわけにはいかぬ!」

3: 2013/01/25(金) 04:04:54.18
杏「杏を巻き込まなきゃ何してもいいよ」

P「世を正すため、いざ尋常に勝負を申し込むで候」

杏「……」

P「無理と言う事さえなくなったか……。けど、ここまでは予定通り!」
P「杏が勝った時の褒美を用意した」

杏「聞くだけ聞くよ」

P「それは……」

杏「引き延ばさなくていいから」

P「……まあいいけど。簡単に言うと、一生働かなくていい権利だ」

4: 2013/01/25(金) 04:06:57.50
杏「乗った! ……なんていうとでも思った?」

P「あれれ? おかしい反応だな」

杏「現実的に無理じゃん。一等+前後賞付きの宝くじの実物見せてくれたら話は別だけど」

P「そんなもんあったら自分の会社立ち上げるっての。代わりにこれ」

杏「なに? この用紙」

P「読んでみ」

杏「えっと、『わたくしPは一生双葉杏を養う事を誓います』?」

ガタッ!

杏「……すごい紙だね。読んだだけで事務所の椅子がいくつか足を鳴らしたよ」

P「タイミング良く何人かが立っただけだろ?」

杏(そのタイミングが問題だと思うけど、面倒だし、言わなくていっか)

7: 2013/01/25(金) 04:09:46.54
凛「しんどいなぁ。今日も仕事しないといけないなんて」

杏(一人目が釣れた。杏は完全な傍観者としてソファーで寝てよ)

P「凛、体調が悪いのか?」

凛「大丈夫。けど、才能があり過ぎて引っ張りだこって面倒だよね」

P「そう言うなって。いい事だぞ、仕事が絶えないのは」

凛「わかってるけど、家でハナコとゴロゴロして一生過ごせたらなぁ、って思ってね」

杏(杏の真似してるんだろうけど、凛からそんな風に見られてたんだ。自覚してるけど)

8: 2013/01/25(金) 04:12:49.35
P「んー、一生は無理だけど、なるべく休みを作ってみるよ」
P「ごめんな、凛の事考えずに仕事入れちゃって」

杏(プロデューサーは、凛の言動の意味を察するどころか勘違い)
杏(ちょっと面倒な流れだね、凛にしたら)

凛「あ、いや。えっと……冗談。冗談だから」

P「……無理しなくていいんだぞ?」

凛「本当だって。仕事減らしたら怒るよ」

P「わかった。けど、しんどくなったらちゃんと言ってくれ。仕事なんかより、凛を優先するから」

凛「……ありがと。じゃあ、ちょっと時間あるし、レッスンに行って来るね」

P「気を付けてな」

杏(凛、敗北っと)

9: 2013/01/25(金) 04:14:19.56
P「なんか凛、途中からテンション下がってたけど、変な事言ったかな?」

杏(むしろ、言わなかったからだと思うよ、プロデューサー)

美嘉「かったるぅ。でも、アタシってば、カリスマギャルなんて囁かれるほど才能に満ち溢れてるしぃ」

杏(凛の玉砕を目の当たりにして、よくやるね、美嘉)

12: 2013/01/25(金) 04:16:24.58
P「なんか新鮮だな、その言い方」

美嘉「はぁ?」

杏(うーん、凛の時とは少し変わった流れかな)

P「いやな、見た目はちょっと派手だけど、美嘉って真面目だし」

美嘉「そ、そう?」

P「うん。だから今時の子の少し小生意気っぽい言葉遣いって聞いた事がないからさ」

美嘉「生意気な言い方だったね……。ごめん」

13: 2013/01/25(金) 04:18:47.37
P「謝る事ないって。俺の方こそごめんな」

美嘉「どうしてプロデューサーが謝るの?」

P「美嘉にも無理なスケジュール組んじゃってたかもって思ってな」
P「ついこの前も寒い中薄着のイベントがあったし、ここいらで休養を入れるか」

美嘉「ど、どうって事ないよ! プロデューサーのコート、あったかかったし」

14: 2013/01/25(金) 04:21:10.59
美嘉「そうだ。ママがね、またご飯食べに来て、だって」

P「いいのか? じゃあお呼ばれされるかな」

美嘉「絶対だから!」

杏(音としては聞こえないけど、何人かから漏れてる舌打ちの幻聴が……)

美嘉「じゃあ、ちょっと出て来るね。欲しい雑誌が今日発売なんだ」

P「時間には余裕あるし、のんびりして来ていいぞ」

美嘉「なら、少し他の本も見てみる。いってきまーす」

P「いってらっしゃい」

15: 2013/01/25(金) 04:23:52.98
P「うーん。それにしても、凛も美嘉も大変だったんだな、あんな事言うなんて」
P「もっと仕事以外のサポートに力を入れないと」

杏(そうじゃないんだよ、そうじゃ)

卯月「はい、プロデューサー! 私は才能ないけど、今は忙しいって言えるほど充実してます!」

杏(あっ、卯月はちょっと変化球気味)

16: 2013/01/25(金) 04:25:58.33
P「おっ、そうか。そう言われるとプロデューサー冥利に尽きるな」

卯月「ただ、やっぱり将来は誰かに養って貰って、幸せな家庭で過ごしたいですね。えへへ」

杏(……見誤ってた。変化球は凛と美嘉の方だったんだ。卯月はド直球だったよ)

P「心配しなくても、卯月ならいい旦那さんを貰えるって」

卯月「じゃあ、貰えなかったら?」

杏(ここまではなかなか上手く誘導してると思うよ、卯月。プロデューサーはどう出るかな?)

17: 2013/01/25(金) 04:29:16.24
P「そうだなぁ。その時は」

卯月「その時は?」

P「いや、変に逃げ道を作っちゃ駄目だな。出来るって信じて真っ直ぐ進んだ方が卯月のためになるぞ」

卯月「……はぁ」

P「どうした? 溜息なんて吐いて」

卯月「いえ、なんでもありません。今年もおみくじが吉だったのがいけないんです」

P「? よくわからないけど、別に悪くはないんじゃないか? 特別よくもないけど」

卯月「近くの神社でおみくじ引いてきます。今なら吉以外が出るような気がしますから」

杏(出ると思うよ。吉より悪い方にだろうけど)

P「そ、そうか? まあ、大吉が出る事を祈ってるよ」

卯月「ありがとうございます。それじゃ」

18: 2013/01/25(金) 04:31:49.02
P「おみくじかぁ。今年引いたおみくじの内容、もう忘れちゃったな」

杏(卯月の努力は忘れるどころか知る事さえなかったけどね)

加蓮「あー……ちょっと体が重いなぁ」

杏(凛たち路線で行くんだ、加蓮。でも、それはいい選択じゃなかったと思うよ)

19: 2013/01/25(金) 04:34:34.85
P「ほ、本当か!? 熱は!? どこか痛くはないか?」
P「待ってろ! すぐ事務所の前に車運んでくる! 病院までの道のりは覚えてるから安心してくれ!」

加蓮「そこまでじゃないよ。ただ、私って体力ないでしょ? いざって時、頼れる人が傍にいてくれたらなって思う時はあるんだ」

杏(この落ち着きよう。加蓮、プロデューサーが慌てるところも計算してたんだね)

P「頼れるかどうかはわからないけど、俺でよければなるべく加蓮の傍にいるようにするよ」

加蓮「ずっと?」

P「ずっとだ。頑張ってアイドルを続けてくれる限りはな」

20: 2013/01/25(金) 04:37:13.44
加蓮「じゃあ、アイドル辞めちゃった後、私はどうなるの?」

P「こらこら。辞めた後の事を考えるなんて、まだ早いぞ」

加蓮「結婚話した卯月にはそんな事言ってなかったじゃん」

P「あれは妄想の域を出てなかったからな」

杏(結構酷い言われようだよ、卯月)

22: 2013/01/25(金) 04:40:32.70
加蓮「なら、これから言う話も妄想。ちょっと想像してみて、今より大人になった私を」

P「大人の加蓮を?」

加蓮「そう。で、私は一人で病室にいる」

P「にゅ、入院!?」

加蓮「アイドルは辞めて、凛たちとはたまに電話で話す程度の関係。私は、寂しくベッドの上」

P「なんてことだ……っ!」

加蓮「ふと私は思い出すの。こんな時、忙しくても傍にいてくれる人がいたな、って」

P「俺ならいつでも駆けつけるぞ!」

加蓮「毎日毎日懐かしい思い出に涙を流しながら、私は深い、深い眠りにつきました……」

P「かれぇぇぇぇえええん!」

杏(……なに、この茶番)

23: 2013/01/25(金) 04:43:03.24
P「グスッ。絶対に一人にしないからな、加蓮……」

加蓮「ふふっ、約束だからね」
加蓮「さてと、私もそろそろ出かけようかな」

P「送らせてくれ!」

加蓮「ありがと。けどそんなに遠くないから大丈夫」

加蓮(とりあえず、今日はこのくらいにしよ。一気に攻めるより徐々に、ね)
杏(とか思ってそう)

P「車に注意を払うんだぞ。信号が青でも油断したらダメだからな」

加蓮「そこまで子供じゃないよ。じゃあ、また後でね」

P「ああ」

24: 2013/01/25(金) 04:47:46.65
杏(客観的状況判断だけだと、加蓮が飛び抜けたね。プロデューサーの単純なところを突くなんて。けど――)

P「思わず感極まってしまった。いや、妄想みたいな事がないように、みんなを大切にしないとな」

杏(加蓮限定じゃないところを引くと、精々頭一つ分のリードってところかな)
杏(次は誰なんだろ? まだ何人かいるけど)

李衣菜「だるいよぉ。……ん? だりぃな。多田李衣菜がだりぃな。これって何かロックっぽい!」

杏(ただの寒いギャグじゃん)

P(楓さんが肩震わせて笑うの堪えてる)

25: 2013/01/25(金) 04:49:54.55
李衣菜「そうは思いませんか、プロデューサー!」

P「うん、李衣菜はそろそろ真剣にロックの意味を考えてみようか」

李衣菜「えーロックっぽいじゃないですか。けだるそうな感じとか」

P「はいはい。夏樹レベルとまでは言わないけど、せめてギターのコードが弾けるようになろうな」

李衣菜「そ、その話はもういいじゃないですか!」

P「衝動買いして埃被らせるってどうよ?」

李衣菜「うわーん、プロデューサーがいじめる!」
李衣菜「まあ、それはそれとしまして」

P「切り替え早いな、おい」

26: 2013/01/25(金) 04:52:23.94
李衣菜「ロックな私としましては、けだるい路線もありなんじゃないかと」

P「けだるい、ねぇ。例えばどんなのだ?」

杏(……一瞬視線を感じたのは気のせいじゃないんだろうなぁ)

李衣菜「めんどくさがりな感じですよ」

P「かなり抽象的発言だな」

李衣菜「普段は『呼吸するのもだりぃぜ』とか言いながら、ライブの時は『ロックは俺の生きる場所だ! うっひょー!』みたいな?」

P「うっひょーってお前……」

27: 2013/01/25(金) 04:55:00.29
李衣菜「いいじゃないですか! もう決定ですね」

P「……ところで話は変わるけど、この二枚の写真を見てくれ」

李衣菜「シンプルでかわいい衣装と、ごてごてした厳ついの衣装ですね」

P「どっちがいい?」

李衣菜「うーん。かわいい方ですかね。こっちのごてごては、ある意味ロック精神に反してる気がします」

P「そりゃよかった。かわいい方は次のイベントで李衣菜が着る衣装なんだ」

李衣菜「本当ですか!? うっわー、楽しみだなぁ」

P「実はな、衣装部屋にもう届いてあるんだ。試着してみたらどうだ?」

李衣菜「いいんですか!? じゃあちょっと着替えて来ます! ウッヒョー!」

28: 2013/01/25(金) 04:58:40.97
杏(にわか嵐が去った……)

P「李衣菜、ロック好きなのは良いけど、ロック自体に興味なさ過ぎだろ」
P「厳つい方の写真、伝説の女性ロックスターが着てた衣装なのに」

杏(しかも、プロデューサーに話しかけた当初の目的を忘れてるっていうね。流石、プロのにわか)

未央「おっはよー! って、あれ? なんか変な空気だね。事務所のみんなが牽制し合ってるような……?」

杏(ここで未央の登場。でも、今日の未央って確か……)

29: 2013/01/25(金) 05:01:48.79
P「おはよう、未央」

未央「プロデューサー、事務所でなにかあったの?」

P「特になにもなかったと思うけど。ん? 俺はなにかしたかった様な……」

未央「えっ、なになに? 私にハリウッドの依頼が入って狂喜乱舞したかったとか?」

P「それはちょっと現状じゃ難しいな」

31: 2013/01/25(金) 05:03:48.44
未央「言ってみただけ。けど、未来は僕らの手の中、だからね!」

P「おう、ハリウッドも未央の手に入ってるぞ」

未央「でしょ? それはともかく、今日は私の付き添いって事、忘れてないよね?」

P「それは問題ない。でも、ほんとになんだっけ? 人生をかけた事だったような」

未央「忘れちゃうような事なんて大した中身じゃないよ」

P「それもそうだな。来て早々で悪いけど、現場に向かうとしますか」

未央「うん!」

P「と言うわけで、行ってきまーす」

未央「みんな、また後でねー!」

33: 2013/01/25(金) 05:07:54.09
杏(……プロデューサーも出かけたね。でもまさか、この短時間で忘れるなんて)

杏(まあ、予想外な物を貰ったから杏としてはホクホクだよ)

杏(この紙はどうしようかな。一日毎に誰かに貸して、レンタル料でお金稼ぎも良いけど……)

杏(ううん、やっぱり止めよ。これは杏だけの物だから)

杏(だよね、プロデューサー)


終わり

35: 2013/01/25(金) 05:09:34.66
おつ

36: 2013/01/25(金) 05:09:54.61
乙乙

引用元: モバP「世の中は不公平だ!」