1: 2022/01/12(水) 20:00:07.118
ワァァァァ……!
大男(賞金に釣られて、闘技大会に出場したはいいが……)
大男「オイオイ、一回戦の相手はこんなチビかよ!」
少年剣士「絶対……絶対負けられない!」
大男「無理すんなよ。足震えてるじゃねえか」
少年剣士「そんなことない! 絶対勝つ!」
大男「ったく、しょうがねえな……」
審判「始めっ!!!」
大男(賞金に釣られて、闘技大会に出場したはいいが……)
大男「オイオイ、一回戦の相手はこんなチビかよ!」
少年剣士「絶対……絶対負けられない!」
大男「無理すんなよ。足震えてるじゃねえか」
少年剣士「そんなことない! 絶対勝つ!」
大男「ったく、しょうがねえな……」
審判「始めっ!!!」
5: 2022/01/12(水) 20:03:07.089
ワァァァァ……!
大男「二回戦の相手は爺さんかよ。どうなってんだ?」
老人「ほっほっほ、ゆくぞ若いの」
大男「若いのって、本当に大丈夫かよ?」
老人「大丈夫じゃ! 心配されるほど耄碌しとらん! ワシは勝たねばならんのじゃ!」
審判「始めっ!!!」
大男「二回戦の相手は爺さんかよ。どうなってんだ?」
老人「ほっほっほ、ゆくぞ若いの」
大男「若いのって、本当に大丈夫かよ?」
老人「大丈夫じゃ! 心配されるほど耄碌しとらん! ワシは勝たねばならんのじゃ!」
審判「始めっ!!!」
9: 2022/01/12(水) 20:06:05.238
ワァァァァ……!
大男「決勝は……ずいぶん細い奴だな」
イケメン「フッ……」
大男「正々堂々勝負といこうぜ!」
イケメン「悪いけど、勝たせてもらうよ。一瞬で決めさせてもらう」
審判「始めっ!!!」
大男「決勝は……ずいぶん細い奴だな」
イケメン「フッ……」
大男「正々堂々勝負といこうぜ!」
イケメン「悪いけど、勝たせてもらうよ。一瞬で決めさせてもらう」
審判「始めっ!!!」
12: 2022/01/12(水) 20:09:42.703
審判「優勝は大男!」
ワァァァァ……!
審判「主催者より表彰式を行います」
主催者「賞金だ、おめでとう」
大男「うっす」
大男「しかし、こんな小さな大会にしちゃ、やけに賞金が多いような……」
主催者「我々を楽しませてくれた礼だよ」
大男「はぁ、じゃあありがたく」
ワァァァァ……!
審判「主催者より表彰式を行います」
主催者「賞金だ、おめでとう」
大男「うっす」
大男「しかし、こんな小さな大会にしちゃ、やけに賞金が多いような……」
主催者「我々を楽しませてくれた礼だよ」
大男「はぁ、じゃあありがたく」
14: 2022/01/12(水) 20:12:21.063
……
大男「……」
女「どうしたの?」
大男「先日闘技大会出て、優勝して、賞金ゲットしたんだけどよ」
女「さすがね。戦いに関しちゃあんたに敵う奴はいないわ」
大男「っていうか出てる選手が、みんな素人ばかりでよ……子供とか爺さんとか」
大男「なのに、執念が尋常じゃなくて……なるべくケガさせねえように倒すのに苦労したよ」
大男「客層もかなり下品だったしよ」
女「体は大きいのに、お優しいことで」
大男「体の大きさと優しさは別に反比例したりしねえだろ」
大男「……」
女「どうしたの?」
大男「先日闘技大会出て、優勝して、賞金ゲットしたんだけどよ」
女「さすがね。戦いに関しちゃあんたに敵う奴はいないわ」
大男「っていうか出てる選手が、みんな素人ばかりでよ……子供とか爺さんとか」
大男「なのに、執念が尋常じゃなくて……なるべくケガさせねえように倒すのに苦労したよ」
大男「客層もかなり下品だったしよ」
女「体は大きいのに、お優しいことで」
大男「体の大きさと優しさは別に反比例したりしねえだろ」
17: 2022/01/12(水) 20:15:20.988
女「たしかに妙な話ね」
大男「だろ?」
女「だけど、大会は終わっちゃったんだし、あんたは賞金手に入れたんだし、もう気にしてもしょうがなくない?」
大男「まぁ、そうなんだけどさ」
女「それはそうと……」
大男「?」
女「今新しい薬の研究してて、収入あったんならちょっとお金貸してもらえたらなーと」
大男「へいへい」
大男「だろ?」
女「だけど、大会は終わっちゃったんだし、あんたは賞金手に入れたんだし、もう気にしてもしょうがなくない?」
大男「まぁ、そうなんだけどさ」
女「それはそうと……」
大男「?」
女「今新しい薬の研究してて、収入あったんならちょっとお金貸してもらえたらなーと」
大男「へいへい」
20: 2022/01/12(水) 20:18:14.165
<町中>
大男(今日は豪勢なメシにするか。でかい肉を……)
大男「ん?」
少年「……」トボトボ
大男(あん時の子供じゃねえか)
大男「おーい!」
少年「あ……」
大男「あの時は強めに張り手入れちまったな。大丈夫か?」
少年「うん、平気……」
大男(なんか元気ねえな。ダメージは残ってないはずなんだが)
大男(今日は豪勢なメシにするか。でかい肉を……)
大男「ん?」
少年「……」トボトボ
大男(あん時の子供じゃねえか)
大男「おーい!」
少年「あ……」
大男「あの時は強めに張り手入れちまったな。大丈夫か?」
少年「うん、平気……」
大男(なんか元気ねえな。ダメージは残ってないはずなんだが)
21: 2022/01/12(水) 20:21:07.689
大男「お前の気迫、なかなかだったぜ」
少年「ありがとう……」
大男「だが、どうしてあんな大会に出たんだ? 客層も悪かったし、子供が出るような大会じゃねえだろ」
少年「どうしてもお金が必要だったから……」
大男「金? 欲しいもんでもあったのか?」
少年「ううん、お母さんが病気なんだ……」
大男「え……」
少年「ありがとう……」
大男「だが、どうしてあんな大会に出たんだ? 客層も悪かったし、子供が出るような大会じゃねえだろ」
少年「どうしてもお金が必要だったから……」
大男「金? 欲しいもんでもあったのか?」
少年「ううん、お母さんが病気なんだ……」
大男「え……」
23: 2022/01/12(水) 20:24:24.715
<少年の家>
少年「お母さん、お客を連れてきたよ」
大男「ども……」
母「あら、こんにちは……」
大男「これ、フルーツです。少しでも召し上がって下さい」
母「これはまあ、ありがとうございます……」ケホッ
大男(ホントに具合悪そうだな……)
少年「お母さん、お客を連れてきたよ」
大男「ども……」
母「あら、こんにちは……」
大男「これ、フルーツです。少しでも召し上がって下さい」
母「これはまあ、ありがとうございます……」ケホッ
大男(ホントに具合悪そうだな……)
25: 2022/01/12(水) 20:27:19.923
大男「いつぐらいからああなんだ?」
少年「あの大会の二週間ぐらい前からかな。急に具合が悪くなって」
少年「だけど、お医者さんは高いし、診てもらうことも難しくて……」
少年「そしたら、大会に出てみないかって誘いがあって……。ぼく、剣術をちょっとやってるから……」
大男「ふうん……」
大男(なるほど、事情は分かった。そりゃ必氏にもなるわけだ)
大男(何とかしてやりたいが……そうだ!)
少年「あの大会の二週間ぐらい前からかな。急に具合が悪くなって」
少年「だけど、お医者さんは高いし、診てもらうことも難しくて……」
少年「そしたら、大会に出てみないかって誘いがあって……。ぼく、剣術をちょっとやってるから……」
大男「ふうん……」
大男(なるほど、事情は分かった。そりゃ必氏にもなるわけだ)
大男(何とかしてやりたいが……そうだ!)
26: 2022/01/12(水) 20:30:04.770
大男「今度、俺の知り合いを連れてくる!」
少年「え、どんな人?」
大男「薬の研究やってて……もしかしたら力になれるかもしれねえ」
少年「だけどお金が……」
大男「なあに、そこは俺に任せとけ!」
少年「ありがとう!」
少年「え、どんな人?」
大男「薬の研究やってて……もしかしたら力になれるかもしれねえ」
少年「だけどお金が……」
大男「なあに、そこは俺に任せとけ!」
少年「ありがとう!」
27: 2022/01/12(水) 20:33:32.066
次の日――
女「こんにちは~!」
少年「こんにちは」
大男「こいつが薬の研究者だ」
少年「よろしくお願いします」
女「こちらこそ! お母さん、病気なんだって?」
少年「はい……」
女「なんだかワクワクしてきちゃった! 楽しみ~!」
少年「うう……」
大男「こういう奴なんだ。気にしねえでくれ」
女「こんにちは~!」
少年「こんにちは」
大男「こいつが薬の研究者だ」
少年「よろしくお願いします」
女「こちらこそ! お母さん、病気なんだって?」
少年「はい……」
女「なんだかワクワクしてきちゃった! 楽しみ~!」
少年「うう……」
大男「こういう奴なんだ。気にしねえでくれ」
28: 2022/01/12(水) 20:36:16.139
<少年の家>
母「ゴホゴホ、いらっしゃいませ」
女「こんにちは~!」
母「この人は?」
少年「薬の研究者で、お母さんを診てくれるっていうんだ」
母「それはどうも……」
女「じゃ、さっそくお体を拝見……」
母「ゴホゴホ、いらっしゃいませ」
女「こんにちは~!」
母「この人は?」
少年「薬の研究者で、お母さんを診てくれるっていうんだ」
母「それはどうも……」
女「じゃ、さっそくお体を拝見……」
30: 2022/01/12(水) 20:39:18.871
女「……」
少年「どうでした?」
女「うん、ちょっとまだ判断がつかないかな」
少年「そうですか……」
大男(並みの医者より知識のあるこいつでも判断がつかないとは……かなりの難病だな)
女「ちょっと来て」グイッ
大男「おう、どした」
少年「どうでした?」
女「うん、ちょっとまだ判断がつかないかな」
少年「そうですか……」
大男(並みの医者より知識のあるこいつでも判断がつかないとは……かなりの難病だな)
女「ちょっと来て」グイッ
大男「おう、どした」
31: 2022/01/12(水) 20:42:15.733
女「あのお母さん……病気じゃないわ」
大男「は? 仮病ってことか?」
女「違うわよ。あれは……毒よ」
大男「毒!?」
女「声が大きい! 毒なんて知ったら、心が弱っちゃうかもしれないでしょ。“病は気から”なのよ」
大男「す、すまねえ」
女「診てすぐ分かった。彼女は何者かに毒を盛られて、あんなに弱ってるのよ」
女「命に危険のある毒ではないけど、体の弱い人や女性だと、あんな風になっちゃう」
大男「だけど、どうやって毒なんて盛るんだ?」
女「あら? 方法なんていくらでもあるわよ」
大男「は? 仮病ってことか?」
女「違うわよ。あれは……毒よ」
大男「毒!?」
女「声が大きい! 毒なんて知ったら、心が弱っちゃうかもしれないでしょ。“病は気から”なのよ」
大男「す、すまねえ」
女「診てすぐ分かった。彼女は何者かに毒を盛られて、あんなに弱ってるのよ」
女「命に危険のある毒ではないけど、体の弱い人や女性だと、あんな風になっちゃう」
大男「だけど、どうやって毒なんて盛るんだ?」
女「あら? 方法なんていくらでもあるわよ」
32: 2022/01/12(水) 20:45:15.181
女「商人を装って試食でもさせたり、毒の粉末を風上から流したり、井戸に毒を混ぜたり……」
女「相手が王侯貴族ならまだしも、庶民に毒を盛るなんてあまりにも簡単よ」
大男「やけに詳しいな。まさかやったことあるんじゃないだろうな」
女「どうかな」クスッ
大男「……聞かないでおくわ」
女「それはさておき」
女「母親が弱った息子のところに、賞金を稼げる大会の知らせが届く……これって偶然かな?」
大男「あ……!」
女「とりあえず、私はあのお母さんのために薬を作るから……」
大男「分かった。他の出場者も何とか見つけ出して、なんで大会に出たか聞いてくるぜ!」
女「相手が王侯貴族ならまだしも、庶民に毒を盛るなんてあまりにも簡単よ」
大男「やけに詳しいな。まさかやったことあるんじゃないだろうな」
女「どうかな」クスッ
大男「……聞かないでおくわ」
女「それはさておき」
女「母親が弱った息子のところに、賞金を稼げる大会の知らせが届く……これって偶然かな?」
大男「あ……!」
女「とりあえず、私はあのお母さんのために薬を作るから……」
大男「分かった。他の出場者も何とか見つけ出して、なんで大会に出たか聞いてくるぜ!」
33: 2022/01/12(水) 20:48:27.997
……
……
大男「あいつのお母さんは?」
女「大丈夫。私が調合した薬がよく効いてるわ。そっちは?」
大男「俺にやられた後、病院行った奴がいて、そこから何人か出場者を見つけられた」
大男「そしたら……案の定だ」
大男「俺とやった爺さんは、奥さんが病気になっちまって……」
大男「決勝でやったイケメンは彼女が詐欺師に引っかかって借金こさえちまったらしい」
大男「どれもつい最近の出来事だ」
女「決まりね」
……
大男「あいつのお母さんは?」
女「大丈夫。私が調合した薬がよく効いてるわ。そっちは?」
大男「俺にやられた後、病院行った奴がいて、そこから何人か出場者を見つけられた」
大男「そしたら……案の定だ」
大男「俺とやった爺さんは、奥さんが病気になっちまって……」
大男「決勝でやったイケメンは彼女が詐欺師に引っかかって借金こさえちまったらしい」
大男「どれもつい最近の出来事だ」
女「決まりね」
35: 2022/01/12(水) 20:51:29.828
女「多分、その闘技大会は強さを競わせるような大会じゃなく、ただの娯楽」
女「まず、そこらの素人をあの手この手で金に困るような状態にして、大会出場に追い込む」
女「ついでにあんたみたいなちゃんと強い奴にも出場させる」
女「観客は『金に困って必氏になってる素人たちが絶対勝てない大会に挑む図』を観戦できるって寸法よ」
大男「なんつう悪趣味な……」
大男「そうか、『楽しませてくれた礼』ってのもそういう意味だったのか!」
大男「くそっ、俺は知らずにそんな試合をやっちまった……」
女「あんただったからまだよかったわよ。もし血の気の多い奴が出てたら……あの子だってどうなってたか」
女「まず、そこらの素人をあの手この手で金に困るような状態にして、大会出場に追い込む」
女「ついでにあんたみたいなちゃんと強い奴にも出場させる」
女「観客は『金に困って必氏になってる素人たちが絶対勝てない大会に挑む図』を観戦できるって寸法よ」
大男「なんつう悪趣味な……」
大男「そうか、『楽しませてくれた礼』ってのもそういう意味だったのか!」
大男「くそっ、俺は知らずにそんな試合をやっちまった……」
女「あんただったからまだよかったわよ。もし血の気の多い奴が出てたら……あの子だってどうなってたか」
37: 2022/01/12(水) 20:54:14.378
大男「あの大会の主催者……許せねえ!」
女「同感。せめて出場者たちの分のお返しはしたいわね」
大男「こうなったら、もう一度俺を誘いに来るのを待つか……」
女「そんなことしてたら、またいつ会えるか分からないわよ」
大男「う……確かに」
女「それより……こういう時はこっちから釣るのよ。フィッシング」
大男「餌は?」
女「あんた!」
大男「俺!?」
女「同感。せめて出場者たちの分のお返しはしたいわね」
大男「こうなったら、もう一度俺を誘いに来るのを待つか……」
女「そんなことしてたら、またいつ会えるか分からないわよ」
大男「う……確かに」
女「それより……こういう時はこっちから釣るのよ。フィッシング」
大男「餌は?」
女「あんた!」
大男「俺!?」
38: 2022/01/12(水) 20:56:34.087
……
大男「お、いいリンゴがあるじゃねえか!」
商人「いらっしゃいませ」
大男「よこしな!」サッ
商人「あっ!」
大男「……」シャクッ
大男「うん、うめえ! 果汁たっぷりだぜぇ!」
商人「あの……代金は……」
大男「んなもん払うわけねえだろ!」
商人「ひっ!」
大男「お、いいリンゴがあるじゃねえか!」
商人「いらっしゃいませ」
大男「よこしな!」サッ
商人「あっ!」
大男「……」シャクッ
大男「うん、うめえ! 果汁たっぷりだぜぇ!」
商人「あの……代金は……」
大男「んなもん払うわけねえだろ!」
商人「ひっ!」
39: 2022/01/12(水) 20:59:19.584
ドンッ
大男「……ってえな」
通行人「す、すみません!」
大男「あ~、今ので肩折れちまったぁ……」
通行人「肩って……こっちの肩がそっちのわき腹に当たった感じだったような……」
大男「うっせえな! お前が思ってるより重傷なんだよ! 治療費よこしな!」
通行人「は、はい!」
大男「……ってえな」
通行人「す、すみません!」
大男「あ~、今ので肩折れちまったぁ……」
通行人「肩って……こっちの肩がそっちのわき腹に当たった感じだったような……」
大男「うっせえな! お前が思ってるより重傷なんだよ! 治療費よこしな!」
通行人「は、はい!」
40: 2022/01/12(水) 21:01:24.721
大男「……ふう」シャクッ
大男(このリンゴは前もって金払ってたやつだし、あの通行人にも一芝居打ってもらった)
大男(何日もこういうことをやってるが、これでホントに獲物が引っかかるんだろうか……)
大男「!」
黒服「失礼します」
大男「お前は……」
黒服「このところ町を見回っていたのですが、なにやら金欠のようですね」
大男「おうよ、あの大会の賞金もすっからかんよ」
黒服「そこでまたお金を稼げる話を持ってまいりまして……」
大男(……かかった!)
大男(このリンゴは前もって金払ってたやつだし、あの通行人にも一芝居打ってもらった)
大男(何日もこういうことをやってるが、これでホントに獲物が引っかかるんだろうか……)
大男「!」
黒服「失礼します」
大男「お前は……」
黒服「このところ町を見回っていたのですが、なにやら金欠のようですね」
大男「おうよ、あの大会の賞金もすっからかんよ」
黒服「そこでまたお金を稼げる話を持ってまいりまして……」
大男(……かかった!)
41: 2022/01/12(水) 21:04:09.080
<会場>
大男「よう」
主催者「この間はどうも」
大男「今日は何をすりゃいいんだ?」
主催者「試合をして頂きます」
大男「またトーナメントか?」
主催者「いえ……今日は一試合だけして頂きます」
大男「オッケー。せいぜい稼がせてもらうぜ!」
主催者「楽しい試合を見られることを期待してます……」
大男「よう」
主催者「この間はどうも」
大男「今日は何をすりゃいいんだ?」
主催者「試合をして頂きます」
大男「またトーナメントか?」
主催者「いえ……今日は一試合だけして頂きます」
大男「オッケー。せいぜい稼がせてもらうぜ!」
主催者「楽しい試合を見られることを期待してます……」
43: 2022/01/12(水) 21:06:11.819
ワアァァァァ……!
司会「お待たせ致しました! ただいまよりスペシャルマッチを行います!」
ワアァァァァァ……!
大男(相変わらず下品な客どもだぜ……。ブン殴ってやりてえ)
司会「大男選手に対するは……」
ズシン…
大男「!」
大男「なんだこりゃあ……!」
司会「お待たせ致しました! ただいまよりスペシャルマッチを行います!」
ワアァァァァァ……!
大男(相変わらず下品な客どもだぜ……。ブン殴ってやりてえ)
司会「大男選手に対するは……」
ズシン…
大男「!」
大男「なんだこりゃあ……!」
44: 2022/01/12(水) 21:09:17.124
司会者「ドラゴンだァーッ!」
ワァッ!!!
ドラゴン「……」
大男「……!」
大男(マジかよ……)
大男(このサイズ、子供だと思うが……子供といえど俺よりでかいし、子供といえどドラゴン!)
ドラゴン「グルルル……」
大男(しかもメチャクチャやる気じゃねえか! 目がイッちまってる!)
ワアァァァァァ……!
大男(これが今日のショーってわけか……悪趣味すぎるぜ!)
ワァッ!!!
ドラゴン「……」
大男「……!」
大男(マジかよ……)
大男(このサイズ、子供だと思うが……子供といえど俺よりでかいし、子供といえどドラゴン!)
ドラゴン「グルルル……」
大男(しかもメチャクチャやる気じゃねえか! 目がイッちまってる!)
ワアァァァァァ……!
大男(これが今日のショーってわけか……悪趣味すぎるぜ!)
45: 2022/01/12(水) 21:11:41.001
ドラゴン「ガァァッ!!!」グワッ
ドゴンッ!
大男「ぐうっ!」
大男「なんてパンチ……」ビリビリ…
ドラゴン「グオオオッ!!!」
ザシッ!
大男(爪も鋭い! ナイフでも切れねえ自信あるのによ!)
ドゴンッ!
大男「ぐうっ!」
大男「なんてパンチ……」ビリビリ…
ドラゴン「グオオオッ!!!」
ザシッ!
大男(爪も鋭い! ナイフでも切れねえ自信あるのによ!)
46: 2022/01/12(水) 21:14:07.835
ドラゴン「ガオオッ!」
バチィンッ!
大男「ぐううっ!」
大男(尻尾の攻撃も強烈だ……!)
ドラゴン「ガ、ウウウ……」
大男「……?」
ドラゴン「ガウウ……ガウ……グゥ……」
大男(なんだ……? 必氏に自分を抑えようとしてるようにも見える……)
バチィンッ!
大男「ぐううっ!」
大男(尻尾の攻撃も強烈だ……!)
ドラゴン「ガ、ウウウ……」
大男「……?」
ドラゴン「ガウウ……ガウ……グゥ……」
大男(なんだ……? 必氏に自分を抑えようとしてるようにも見える……)
47: 2022/01/12(水) 21:19:18.896
大男(もしかして!)
大男「お前……なんかおかしなことされてんのか!?」
ドラゴン「グ……ググ……」
大男(未熟なドラゴンを捕らえて、薬品かなにかで従順かつ凶暴にして、戦わせてるのか!)
大男(許せねえ……! 主催者も……観客どもも!)
大男(こういう時は――)
大男「来い、ドラゴン! 思い切り暴れてみな! そうすりゃきっとスッキリする!」
ドラゴン「!」
大男「安心しな。お前みたいな未熟ドラゴンにやられるほどヤワじゃねえ……」
ドラゴン「ダケド……」
大男「オイオイ、相手はこんなチビかよ!」
ドラゴン(コノヒトナラ……キットダイジョブ……)
ドラゴン「グ……グオオオオオオッ!!!」
大男「お前……なんかおかしなことされてんのか!?」
ドラゴン「グ……ググ……」
大男(未熟なドラゴンを捕らえて、薬品かなにかで従順かつ凶暴にして、戦わせてるのか!)
大男(許せねえ……! 主催者も……観客どもも!)
大男(こういう時は――)
大男「来い、ドラゴン! 思い切り暴れてみな! そうすりゃきっとスッキリする!」
ドラゴン「!」
大男「安心しな。お前みたいな未熟ドラゴンにやられるほどヤワじゃねえ……」
ドラゴン「ダケド……」
大男「オイオイ、相手はこんなチビかよ!」
ドラゴン(コノヒトナラ……キットダイジョブ……)
ドラゴン「グ……グオオオオオオッ!!!」
48: 2022/01/12(水) 21:21:05.589
ドラゴン「ガアアアアアアアアアアッ!!!」
ドゴンッ! ドガンッ!
大男「……!」
ドボォッ!
大男「ぐぅ……!」
ウオォォォォォ……!
観客A「す、すげえ! ノーガードで受けてやがる!」
観客B「どうなってんだ!? まぁいいや、楽しいぜぇ! 頃し合え!」
ドゴンッ! ドガンッ!
大男「……!」
ドボォッ!
大男「ぐぅ……!」
ウオォォォォォ……!
観客A「す、すげえ! ノーガードで受けてやがる!」
観客B「どうなってんだ!? まぁいいや、楽しいぜぇ! 頃し合え!」
50: 2022/01/12(水) 21:23:19.066
ドラゴン「ガアッ!!!」
バチンッ!
大男「……」ニヤッ
ドラゴン「フゥ……フゥ……」
大男「スッキリしたか?」
ドラゴン「ウ、ン……」
大男「じゃあ今度はこっちの番だなァ!!!」ガシッ
ドラゴン「!」
バチンッ!
大男「……」ニヤッ
ドラゴン「フゥ……フゥ……」
大男「スッキリしたか?」
ドラゴン「ウ、ン……」
大男「じゃあ今度はこっちの番だなァ!!!」ガシッ
ドラゴン「!」
51: 2022/01/12(水) 21:25:34.380
大男「ふんぬっ!!!」
グググ…
ドラゴン「オオッ……?」
大男「うおおおおおおおおおおっ!!!」グオオオオッ
ドラゴン「ワァッ……」
司会「も、持ち上げたァーッ!! 大男選手、ドラゴンを持ち上げました!」
大男「よっこいしょぉ!!!」
ズガァンッ!!!
グググ…
ドラゴン「オオッ……?」
大男「うおおおおおおおおおおっ!!!」グオオオオッ
ドラゴン「ワァッ……」
司会「も、持ち上げたァーッ!! 大男選手、ドラゴンを持ち上げました!」
大男「よっこいしょぉ!!!」
ズガァンッ!!!
53: 2022/01/12(水) 21:28:38.291
大男「……」
ドラゴン「……」
大男「ど~よ、スッキリしたろ。暴れまくった上、頭から叩きつけられてよ」
ドラゴン「ウ、ン……」
ワアァァァァ……!
大男「うぐ……!」ガクッ
大男(流石にドラゴン相手にノーガード戦法はやりすぎだったかな……)
ドラゴン「……」
大男「ど~よ、スッキリしたろ。暴れまくった上、頭から叩きつけられてよ」
ドラゴン「ウ、ン……」
ワアァァァァ……!
大男「うぐ……!」ガクッ
大男(流石にドラゴン相手にノーガード戦法はやりすぎだったかな……)
54: 2022/01/12(水) 21:31:14.483
主催者「ハッハッハ、お見事お見事」パチパチ
大男「おう」
主催者「素晴らしい試合を見せてもらった。さあ、賞金――」
大男「賞金なんざいらねえよ」
主催者「え……」
大男「おおかた、金に目がくらんだチンピラがドラゴンにブチ殺されるのを期待してたんだろうが残念だったな」
主催者「!」ギクッ
大男「賞金はいらない代わりに……これから俺はもうひと暴れすることにした!」
主催者「な……!」
大男「おう」
主催者「素晴らしい試合を見せてもらった。さあ、賞金――」
大男「賞金なんざいらねえよ」
主催者「え……」
大男「おおかた、金に目がくらんだチンピラがドラゴンにブチ殺されるのを期待してたんだろうが残念だったな」
主催者「!」ギクッ
大男「賞金はいらない代わりに……これから俺はもうひと暴れすることにした!」
主催者「な……!」
56: 2022/01/12(水) 21:34:09.328
大男「お前も頭打って、スッキリしたろ?」
ドラゴン「ウン……モウダイジョブ……アタマスッキリ……」
大男「どうだ、俺ともう少し暴れねえか?」
ドラゴン「ウン!」
主催者「ひっ!」
大男「よっしゃ、とりあえずまずお前からだ!」
ボゴォッ!
主催者「ぎゃぶああっ!」
ドラゴン「ウン……モウダイジョブ……アタマスッキリ……」
大男「どうだ、俺ともう少し暴れねえか?」
ドラゴン「ウン!」
主催者「ひっ!」
大男「よっしゃ、とりあえずまずお前からだ!」
ボゴォッ!
主催者「ぎゃぶああっ!」
57: 2022/01/12(水) 21:36:14.394
ドラゴン「グオオオオッ!」
黒服A「コラ、やめろ!」ダッ
黒服B「暴れるな!」ダッ
バチィンッ!
黒服AB「ぶげえっ!」
大男「観客どもも同罪だぜ……どういう戦いか知ってて見物してるはずだしな!」
観客A「ゲ、こっち来るぞ!」
観客B「逃げろぉ!」
タタタッ…
黒服A「コラ、やめろ!」ダッ
黒服B「暴れるな!」ダッ
バチィンッ!
黒服AB「ぶげえっ!」
大男「観客どもも同罪だぜ……どういう戦いか知ってて見物してるはずだしな!」
観客A「ゲ、こっち来るぞ!」
観客B「逃げろぉ!」
タタタッ…
58: 2022/01/12(水) 21:38:35.202
マスク女「おーっと逃がさないわよ」
「うわっ!」 「なんだあの女!」 「どけぇ!」
マスク女「ほ~ら、新開発した痺れガス」
ブシュゥゥゥゥゥ…
「うぎゃああっ!」 「ひいいいっ!」 「助けて……!」
マスク女「あんたらみたいなゲスな奴らなら、罪悪感なしに実験できて助かるわ~」
「うわっ!」 「なんだあの女!」 「どけぇ!」
マスク女「ほ~ら、新開発した痺れガス」
ブシュゥゥゥゥゥ…
「うぎゃああっ!」 「ひいいいっ!」 「助けて……!」
マスク女「あんたらみたいなゲスな奴らなら、罪悪感なしに実験できて助かるわ~」
59: 2022/01/12(水) 21:40:48.930
ワァァァ… ヒエェェェ… ギャァァァァ…
大男(ちょっとやりすぎだろ……)
大男「どうだ」
主催者「あぐ……ひ、ひぃぃ……いだい……」
大男「命を弄ばれる側になった気持ち、少しは分かったか?」
主催者「は、はい……」
大男「俺は正義の味方じゃねえし、賞金だってもらった身だ。てめえらを捕まえる気はねえ」
大男「だが、俺が出た大会の出場者全員、しっかり救済してやれ」
主催者「わ、分かりまひた……」
大男(ちょっとやりすぎだろ……)
大男「どうだ」
主催者「あぐ……ひ、ひぃぃ……いだい……」
大男「命を弄ばれる側になった気持ち、少しは分かったか?」
主催者「は、はい……」
大男「俺は正義の味方じゃねえし、賞金だってもらった身だ。てめえらを捕まえる気はねえ」
大男「だが、俺が出た大会の出場者全員、しっかり救済してやれ」
主催者「わ、分かりまひた……」
61: 2022/01/12(水) 21:42:47.347
大男「それともし……」
主催者「?」
大男「またどこかで、無理矢理弱い連中を闘技試合に出すようなことがあったら……」
大男「ドラゴンにも勝ったこの剛腕でブチのめしに行くぜ!」ギロッ
主催者「はいぃぃぃぃっ!」
大男「ふん」クルッ
主催者「?」
大男「またどこかで、無理矢理弱い連中を闘技試合に出すようなことがあったら……」
大男「ドラゴンにも勝ったこの剛腕でブチのめしに行くぜ!」ギロッ
主催者「はいぃぃぃぃっ!」
大男「ふん」クルッ
62: 2022/01/12(水) 21:45:07.901
マスク女「催涙ガス!」ブシュゥゥゥゥ
マスク女「嘔吐ガス!」ブシュゥゥゥゥ
マスク女「激痛ガス!」ブシュゥゥゥゥ
「ひぎゃああっ!」 「うげぇぇぇっ!」 「助けてくれぇぇっ!」
マスク女「たーのしー!」
大男「……」
大男(俺の知らぬ間に地獄絵図が広がっているのであった)
マスク女「嘔吐ガス!」ブシュゥゥゥゥ
マスク女「激痛ガス!」ブシュゥゥゥゥ
「ひぎゃああっ!」 「うげぇぇぇっ!」 「助けてくれぇぇっ!」
マスク女「たーのしー!」
大男「……」
大男(俺の知らぬ間に地獄絵図が広がっているのであった)
65: 2022/01/12(水) 21:48:19.476
大男「こんぐらいやればだいぶ気も晴れたぜ」
ドラゴン「カラダ、ダイ、ジョブ?」
大男「なんとかな。鍛え方が違うぜ」
女「ドラゴン相手にあんな戦い方して……あまり無茶しないでよ」
大男「俺の体がこんなにデカイのは無茶するためだぜ」
女「バカなこといって。ほら、薬塗ってあげる」
大男「サンキュー!」
ドラゴン「カラダ、ダイ、ジョブ?」
大男「なんとかな。鍛え方が違うぜ」
女「ドラゴン相手にあんな戦い方して……あまり無茶しないでよ」
大男「俺の体がこんなにデカイのは無茶するためだぜ」
女「バカなこといって。ほら、薬塗ってあげる」
大男「サンキュー!」
66: 2022/01/12(水) 21:51:11.290
大男「元気でな」
女「もう二度と捕まらないようにね!」
ドラゴン「アリ、ガト」
女「さてと、あいつらは反省するかな?」
大男「さあな。だけどあんだけ脅したんだ。もう悪趣味な見世物はやらねえだろ」
女「そうね。私なんか観客に『悪さしたら氏ぬガス』を吸わせたっていってやったし!」
大男「んなもんあるのか?」
女「そんなのあったら、とっくに世界は平和になってるわよ」
大男「だよな」
女「もう二度と捕まらないようにね!」
ドラゴン「アリ、ガト」
女「さてと、あいつらは反省するかな?」
大男「さあな。だけどあんだけ脅したんだ。もう悪趣味な見世物はやらねえだろ」
女「そうね。私なんか観客に『悪さしたら氏ぬガス』を吸わせたっていってやったし!」
大男「んなもんあるのか?」
女「そんなのあったら、とっくに世界は平和になってるわよ」
大男「だよな」
67: 2022/01/12(水) 21:53:08.764
<少年の家>
母「薬が効いて、すっかりよくなりまして……」
少年「ありがとうございます!」
女「どういたしまして」
少年「大きいお兄さんもありがとう!」
大男「いやいや、大した毒じゃなくてよかったぜ」
少年「もし、ぼくが強くなったら……またいつか勝負してね!」
大男「おう、受けて立つ! 今度は手加減しねえからな!」
女「あらら、手強いライバルができそうね」
母「薬が効いて、すっかりよくなりまして……」
少年「ありがとうございます!」
女「どういたしまして」
少年「大きいお兄さんもありがとう!」
大男「いやいや、大した毒じゃなくてよかったぜ」
少年「もし、ぼくが強くなったら……またいつか勝負してね!」
大男「おう、受けて立つ! 今度は手加減しねえからな!」
女「あらら、手強いライバルができそうね」
69: 2022/01/12(水) 21:56:11.437
女「あれから……他の出場者たちもちゃんと救済されたみたいね」
大男「ったく、芝居するわ、ドラゴンと戦うわ、苦労したぜ」
女「今回の件で、私……あんたに惚れ直しちゃったかも」
大男「なにいってやがる」
女「ホントだってば。強くて優しくて大きくて、あんたは最高の男だよ」
大男「あ、ありがとよ……」
女「あーあ、その逞しさと優しさで私を包み込んでくれないかなぁ……」チラッ
大男「……!」ドキッ
大男「ったく、芝居するわ、ドラゴンと戦うわ、苦労したぜ」
女「今回の件で、私……あんたに惚れ直しちゃったかも」
大男「なにいってやがる」
女「ホントだってば。強くて優しくて大きくて、あんたは最高の男だよ」
大男「あ、ありがとよ……」
女「あーあ、その逞しさと優しさで私を包み込んでくれないかなぁ……」チラッ
大男「……!」ドキッ
70: 2022/01/12(水) 21:58:04.925
女「ねえ、今夜あんたのところ行くからね。いいでしょ」
大男「オイオイ……今夜の相手はお前かよ!」
女「ふふっ、寝かさないんだから!」
―おわり―
大男「オイオイ……今夜の相手はお前かよ!」
女「ふふっ、寝かさないんだから!」
―おわり―
74: 2022/01/12(水) 22:03:25.843
おつ
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