1: 2010/02/27(土) 16:07:15.13
雲一つないよく晴れた夏の暑い日

ずっと前の方に見慣れた後ろ姿を見つけて走って追い掛ける

律「澪ーっ!はぁはぁ…おはよう」

澪「おはよう。走って追い掛けてきたのか?」

律「まぁね、あっついあっつい」

数十メートルもなかったと思うけど、全力で走ったからさすがに疲れた

呼吸を整えて胸に手をあてると心臓が8ビートを刻んでた

2: 2010/02/27(土) 16:10:15.88
律「今日は朝からあっついなー」

澪「あんな走るからだよ、お前は小学生か」

律「でも私が走って追い付いて来なかったら澪は一人ぼっちで登校だったんだぜ」

澪「私は一人で登校しても別に寂しくない」

律「またまた強がっちゃってー」

澪「そういう律が一人ぼっちで登校が寂しいから走って追い掛けてきたんじゃないか?」

律「ないない、私だって一人ぼっちで登校でも寂しくないし」

4: 2010/02/27(土) 16:14:56.11
唯「おーい、澪ちゃんりっちゃんおはよー!」

律「おう!唯おはよ」

澪「おはよう」

唯「今日も2人で一緒に登校なんてラブラブだね、朝から暑いのは2人のせいだね!」

澪「ラブラブなんかじゃない!暑いのは夏だからだろ」

律「唯はいつもラブラブな憂ちゃんがいないな?だらけ過ぎてついに捨てられたか」

唯「憂は日直だから先に行っただけで捨てられてなんてないもんね」

5: 2010/02/27(土) 16:18:33.05
唯「今日のムギちゃんのお菓子なにかなぁ…暑いからアイス食べたいな」

澪「アイス持ってきても放課後までに溶けちゃうよ」

唯「クーラーボックスだっけ?あれに入れてくるとか」

澪「ムギにどれだけ負担かけるんだよ」

唯「ダメかなぁ?」

律「さすがのムギでもそれは難しいだろう」

唯「学校の中にアイス屋さんとかあればいいのになぁ」

6: 2010/02/27(土) 16:23:58.11
律「小学生の時に試験管にいれたジュース凍らせてアイス作ったりしたよな」

澪「そういえばそんなのしたなー」

唯「なにそれ!?私そんなのやったことないよ」

律「なんだ唯のいた学校はやらなかったのか」

唯「今度学校にジュース持ってきて勝手に作ってみよう」

澪「怒られるぞ」

唯「やっぱり?」

私達3人はそんな他愛もない話をしながら学校までの道程を歩いた

7: 2010/02/27(土) 16:26:22.99
教室に着くとムギはもう来ていた

紬「あ、みんなおはよう」

律「おはようムギ、今日も早いな」

唯「ムギちゃぁんアイスとかないよね?」

紬「アイスクリーム?持ってないわ」

唯「やっぱり……今度アイスも持ってきてー」

澪「コラッ、ムギにばっかり負担かけるなって」

唯「えへへ、ごめんごめん」

律「唯はほんとにアイス大好きだな」

唯「うん!アイスは私の命の源だからね」

8: 2010/02/27(土) 16:27:53.31
長かった午前中の授業が終わった

日が昇っていくとともに暑さも増していき授業にはまるで集中できなかった

涼しい日もとくに授業に集中はしていない気もするけど…

律「ゆいーアイスでも買いに行こうぜ」

唯「いいよー、でもアイスどこに買いに行くの?」

律「近くのコンビニでいいかな」

唯「外出だね、なんかワクワクするね」

澪「ちゃんと外出届書いて行けよ」

律「めんどくさいし書かなくていいだろ」

唯「書かない方がなんかワクワクするしねっ」

9: 2010/02/27(土) 16:31:34.14
律「では行くぞ!唯隊員!」

唯「オッケー!りっちゃん隊員!」

澪「あのバカ2人…」

紬「2人ともとっても楽しそうね」

和「唯達走ってどこか行ったけど、どうしたの?」

澪「アイス買いに行くんだって」

紬「私達は先にお昼ご飯を食べてましょう」

和「そうね」

11: 2010/02/27(土) 16:34:49.23
律「よし…誰もいないみたいだな…行くぞ唯」

唯「了解…」

唯「ねぇりっちゃん…なんでダンボールなんて被って行かなきゃダメなの?」

律「見つかったら怒られるからな、隠密といったらダンボールって決まってるだろスネーク」

唯「でも暑いし歩きにくいし逆に目立ってる気がするよ」

律「校門を出るまでなんだから我慢だ我慢」

教師「そこのダンボール何してる!」

律「やべぇ見つかった!」

唯「逃げようりっちゃん」

12: 2010/02/27(土) 16:37:48.61
唯「アイスのために捕まるわけにはいかないよー」

律「やっぱり外出届書いてくればよかったな」

教師「待てお前ら!」

律「こうなったら…くらえ太陽拳!」

教師「うわっ…目が、目がぁ!」

唯「おぉ!りっちゃんすごーい!」

律「ほら早く走るぞ」

唯「ほ、ほいっ!」

13: 2010/02/27(土) 16:40:08.58
律「なんとか逃げ切ったな…」

唯「無駄に汗かいて疲れただけだった気がするよー」

律「でも苦労して食べるアイスは格別にうまいぜ」

唯「そうだよね、それに…」

いらっしゃいませ―…

唯「コンビニに入った時の涼しさも格別だよ」

律「幸せや…」

唯「アイス何にしようかな…」

律「私はパピコにしようかな」

14: 2010/02/27(土) 16:43:21.09
唯「ここは贅沢にハーゲンダッツ!でもやっぱりたくさん食べたいからガリガリ君!」

律「たくさん買ったら食べる前に溶けるぞ」

唯「そうだよね、じゃあガリガリ君2本くらいにしておこうかな」

律「話聞いてたか?」

唯「ちゃんと聞いてたよー!溶ける前に2本一気に食べるもんねー」


ありがとうございました―…

唯「食べながら帰ろう」

律「ほんとに2本同時に食べるんだな」

15: 2010/02/27(土) 16:47:28.34
唯「ほいひいほー」

律「くわえながらしゃべるなよ」

唯「はっへはひゃくはべにゃいひょほけひゃうひょ」

律「なに言ってるか全然わかんないよ」

唯「んー………早く食べないと溶けちゃうよって言ったんだよー」

律「分かるか!」

唯「おおうっ!やったー当たりだ!ラッキー」

律「なんだ運がいいやつだな」

唯「えへへー学校帰りに取り替えようっと」

17: 2010/02/27(土) 16:51:41.59
「募金おねがいしまーす」

律「ん?」

街角で一団が呼び掛けている
なにやらアメリカで心臓移植をするための募金らしい

唯「あー!私募金してくるー!」

そう言って唯が走り寄っていく、まさかガリガリ君の当たり棒を渡したりしないだろうな
唯ならやってもおかしくない気がする…アイスは命の源って言うくらいだからな

唯「ただいまー行ってきたよー」

律「まさかガリガリ君の当たり棒渡したりしてないよな?」

唯「そんな事してないよー当たったからガリガリ君分のお金募金してきたんだよ」

18: 2010/02/27(土) 16:55:06.74
律「唯のくせにいいことしてんな」

唯「えっへん!」

偉そうに軽く背伸びして得意げな顔をする唯に触発されてか

ほんの少しだけど私もさっきのお釣りを募金してきた

「ありがとうございます!」

とくにこの人が助かってほしいと思って募金したわけでもない
学校を抜け出してアイスを食べてる罪滅ぼしのつもりで募金したのかな…

それでも学校を抜け出したのが無しになる訳はなく戻ってからきっちりと怒られた

20: 2010/02/27(土) 16:58:35.33
放課後は音楽室でいつものように5人でテーブルを囲みティータイムをしていた

澪「だから外出届を出していけば怒られる事もなかったのに…だからバカ律なんだよ」

律「澪にはこのロマンはわかりませんよだ」

梓「昼休みに窓から見てましたけど、あのダンボールの中って唯先輩と律先輩だったんですね」

唯「完璧な擬態だったでしょ!」

梓「いえ、めちゃくちゃ目立ってたしバレバレでしたよ」

唯「あずにゃんも今度一緒やろうよーメタルギア」

梓「嫌です」

24: 2010/02/27(土) 17:01:17.27
紬「私はやってみたいわ、とっても楽しそうだもの」

律「ムギなら光学迷彩服とか準備できそうだよな」

澪「さすがのムギでもそれは無理だろう」

紬「用意はできるけど、私はそんな物よりダンボールに隠れたいわ」

澪「用意できるのかよ」

梓「それより皆さん練習しましょうよ、このままじゃまたダラダラタイムになっちゃいます」

澪「そうだな、そろそろ始めるか」

律「えーっ!もうちょっとティータイムを…」

澪「ダメだ!練習するぞ練習」

26: 2010/02/27(土) 17:05:00.40
ジャジャーン♪

澪「うん、なかなかだな」

澪「あとふわふわ時間をあわせてみよう」

律「いくぜー!ワンツースリーフォー」

♪~♪~

唯「君を見てるといつもハートDOKIDOKI♪」

律「…う…………」

何か急に胸のあたりを突かれる感じがする…

唯「揺れるおも……あれ?」

澪「律?どうした?急に止まって」

律「…」

澪「律?」

28: 2010/02/27(土) 17:08:16.41
律「ん?…あ、あぁ!どうした?」

澪「どうした?はこっちのセリフだよ、急に止まってどうしたんだ?」

律「あー…そっか、そうだよな!えっと…少しぼーっとしてた」

澪「なんだよそれ」

梓「律先輩しっかりして下さいよ」

紬「少し休憩した方がいいんじゃない?」

律「そうしよう、そうしよう」

梓「もう休憩ってまだあまり練習してませんよ」

唯「私も少し疲れたから休憩したーい」

澪「しょうがないな、少しだけだぞ」

29: 2010/02/27(土) 17:10:30.58
澪「そうだ、律さっきのドラムまた走り気味だったぞ」

律「疾走感があってカッコよかっただろ?」

澪「何言ってるんだ、リズム隊はリズムが命だろ」

律「いや、勢いだよ勢い!勢い命だ」

澪「リズム」律「勢い」澪「リズム」律「勢い」

紬「2人とも相変わらず仲がいいわねぇ」

澪律「どこがだよ!」

唯「息ピッタリじゃん」

紬「そういえば2人はどうしてそんな仲良しになったの?」

32: 2010/02/27(土) 17:12:17.39
律「それは小学生の頃にいじめられてた澪を私が助けてからだな」

澪「捏造するな」

唯「あはは、りっちゃんってどちらかと言うといじめる側っぽいもんね」

律「失礼な、私はそんな悪いやつじゃないぞ」

紬「で、実際はどうしてそんなに仲良くなったの?」

律「それは~…あの時からかな?」

澪「あぁ、小学生4年生の時の」

紬「その話詳しく聞かせて!」

35: 2010/02/27(土) 17:21:31.04
お茶を飲みながら私と澪は小学生の頃の思い出話をみんなに聞かせた

紬「澪ちゃんとりっちゃんが仲良くなったのにはそんなエピソードがあったの、いい話ねぇ~」

梓「律先輩、昔は良い子だったのになんで今はこんなになっちゃったんですか…」

唯「りっちゃんなら澪ちゃんにさらにプレッシャーをかけて潰しにいくくらいしそうなのに」

律「おいおい…」

紬「それで作文の発表はどうだったの?」

澪「律のおかげでうまくいったよ。それから律とよく遊ぶようになったな」

37: 2010/02/27(土) 17:23:23.85
律「澪にいろいろ教えてあげたよな」

澪「ほとんどためになることは教えてもらわなかったけどな、ただ音楽を勧めてくれたのには感謝してるよ」

律「みおしゃん…」

澪「あと軽音部に誘ってくれたのにもな、誘われなかったら文芸部に入って今みんなとこうしてる事はなかったしな」

紬「澪ちゃん文芸部に入ろうとしてたのね」

澪「あぁ、律に入部届を破られて軽音部に無理矢理入らされたんだ」

唯「拉致したんだね、りっちゃんらしい」

梓「律先輩のくせにいい仕事してますね」

39: 2010/02/27(土) 17:25:58.49
律「よし!じゃあそろそろ…」

梓「練習再開ですね」

律「帰るか」

梓「はい?」

律「なんか練習って感じじゃなくなったからさ、みんなで遊びに行こうぜ」

唯「いいねいいね、行こう行こーう!」

紬「私もみんなと遊びに行きたいわ」

律「よーし、過半数になったから遊びに行くぜー」

澪「まったく…仕方ないな」

律「梓は行かないのか?」

梓「澪先輩も行くならしょうがないです。私も行きます」

40: 2010/02/27(土) 17:29:06.69
梓も渋々納得し部活を早めに切り上げみんなで遊びに行く事になった

唯「Under the name of Justice You can't break my soul♪」

紬「私カラオケって初めてきたわ」

澪「意外だな」

唯「Under the name of Justice Kill yourself♪」

律「ファーストフードもゲームセンターも駄菓子屋も行ったことなかったくらいだもんな」

梓「そうだったんですか?」

唯「Think you moran Fall out of line you cockroach♪」

紬「そうなのよ、みんなのおかげで貴重な経験ができたわ」

41: 2010/02/27(土) 17:31:13.91
唯「The dark dark Sunday the blood stains You can't save yourself♪」

律「貴重な経験ってたいしたとこに連れていってないんだけどな」

紬「ううん、私にとってはすごく楽しい経験だったわ」

唯「The dark dark Sunday the blood stains♪」

澪「また今度時間をつくってムギといろんな所に遊びに行くか」

律「逆に私はムギが普段行ってる所に連れていってもらいたいよ」

梓「場違いになるからやめた方がいいと思いますよ」

唯「One day I will fuck your parents♪」

42: 2010/02/27(土) 17:32:53.91
カラオケを終えて外へ出るとすでに日は沈み辺りは暗くなってきていた

唯「いやぁ!楽しかったね!」

紬「うん!またみんなでどこか行きましょうね」

梓「時間も時間ですし今日はそろそろお開きですかね」

澪「暗くなってきたしな」

律「じゃ今日はここで解散だな!また来週に学校でな」

私達は別れの挨拶をすると各々の家の方へと歩き始めた

43: 2010/02/27(土) 17:35:52.43
澪「今日は楽しかったな」

律「部活を早めに切り上げて遊びに行ってよかっただろ?」

澪「そうだな。でも来週の部活はしっかり練習するからな」

律「分かってるって、ドラムガンガン叩くよ」

澪「そうじゃなくてちゃんとリズムキープしてくれよ」

律「私なりに頑張るよー」

澪「なんか元気ないな……じゃまたな」

律「うん、またなー」

45: 2010/02/27(土) 17:39:00.04
家の方へと歩いていく澪の後ろ姿が見えなくなるまで見送ってから帰路につく

疲れたな…部活中からなんか調子悪かったし早く帰って寝よう

律「ただいま…」

聡「姉ちゃんおかえり!ご飯できてるよ」

律「あー私いらないや」

聡「今日ステーキだよ、ステーキ!姉ちゃんの分まで食べちゃうよ」

律「んー…別にいいよー」

聡「いいの?……変な姉ちゃん」

48: 2010/02/27(土) 17:41:40.82
――――――――――

律「あれ…?」

私は…いつの間にか寝てしまっていたのか?

目を覚ました時に目に入ってきたのは見慣れない真っ白な天井だった

律「ここは~どこだろう…」

身体を起こしてまわりを見る

真っ白で清潔感のある部屋…間違いなく私の部屋ではない

その時ガラガラと音をたててドアが開き人が入ってきた

49: 2010/02/27(土) 17:44:42.85
聡「あ、姉ちゃん気がついたの!」

律「う…うん?」

聡「今医師とかお母さん呼んでくるから」

そう言い残して聡は急いで部屋を出て行った

医師ってことはここは病院か、私どうしたんだっけ?
家に帰ってきてから………ダメだ。よく覚えてないや

考え込んでいる時に再びドアが開き今度は母さんと医師っぽい人が入ってきた

50: 2010/02/27(土) 17:47:36.60
律母「よかった、目が覚めたのね」

母さんは微笑んでいたが、その笑顔はどこか不安そうだった

律「うん。……私どうしたの?」

律母「覚えてないの?あなた昨日帰ってきてから突然倒れて病院に運ばれたの」

律「もしかして病気かなんかなの…?」

母さんは俯いて少しの沈黙の後、口を開いた

律母「律あなたは心臓の病気なの」

律「心臓の……冗談だろ」

51: 2010/02/27(土) 17:49:54.70
律「治るんだよな?」

律母「え、ええ!大丈夫よ!今日から入院することになるけど、きっと治るわ!」

律「あぁ…治らないんだな…」

律母「えっ…何言ってるの?ちゃんと治るのよ」

律「いいよ、嘘つかなくても顔見てれば分かるし」

母さんが医師の方を見ると医師は困ったような顔をしていた

律「本当のこと話してよ」

医師「分かった。これから話すから落ち着いて聞いてくれよ」

52: 2010/02/27(土) 17:53:24.73
医師により私の病状が語られた

私の病気はまだ原因不明の病で現在の医療では治すことはできない

そして私の命はもう長くて半年あるかどうかだという

律「なんだそりゃ…突然過ぎるだろ…映画やドラマの見すぎじゃないですか?」

律母「律…そんなこと言っちゃダメでしょ」

医師「信じられない気持ちは分かるが、本当のことなんだ」

突然の宣告に驚きその後の母さんと医師が話しかけてきたが、私の耳にはまるで入ってこなかった

55: 2010/02/27(土) 17:55:42.86
病室に一人になり見慣れない天井を眺めながら考え込む

律「氏ぬのか?こんなに身体は普通に動くのに」

医師に言われた事をまだにわかに信じられずにいた

もしかしてムギが仕掛けたドッキリなんじゃないか、夢でも見てるんじゃないかと思ったりもした

でもあんなに充血した母さんの目を見たらドッキリなんて思えないし、自分の頬を抓ってみたが確かに痛みがあった

どうやらこれは現実みたいだ

57: 2010/02/27(土) 17:58:25.06
入院して2日目

明確な医療法もないのに入院させられるというのはなんだかな…

医師の話しが本当なら私の命はあと半年もない
なら私としては普通に動けるし外に出てやりたい事をやりたい

しかし外出は許可されず私は何もない病室で聡に持ってきてもらったゲームをするくらいしかなかった

ぱよえ~ん、ぱよえ~ん…

律「今なら憂ちゃんに勝てそうだな」

律「はぁ…」

58: 2010/02/27(土) 18:00:52.63
入院して5日目
私が入院したと知ったみんながお見舞いにきてくれた

唯「りっちゃんおーす!」

澪「コラ唯。病院では静かにしろ」

紬「りっちゃん大丈夫?」

梓「律先輩が入院なんて落ちてる物でも拾って食べたんですか?」

そうか、みんなは私がなんで入院したかとか病状は知らないんだよな

紬「りっちゃん?」

律「あぁ…うん!平気平気!大丈夫だから心配するなよムギ!」

59: 2010/02/27(土) 18:03:22.88
紬「よかった、メロン持ってきたの!食べる?」

律「ありがとうムギ!だけど今食べようとすると唯に食われそうだから後にするよ」

唯「え~食べないの~」

律「私のだもんね」

唯「ぶー……それにしてもりっちゃん個室なんてVIP待遇だね」

澪「まさか悪い病気とかじゃないよな?」

律「ないない、たまたまここしか空いてなかったんだろ」

梓「それで退院はいつ頃できるんですか?」

律「うーん…まだ分からないけど、元気だしすぐ退院できるだろ」

60: 2010/02/27(土) 18:06:26.98
梓「なら学園祭ライブには間に合いそうですね」

律「あぁ!もう3年だし、おもいっきしやらないとな」

唯「そうだ!りっちゃん1人じゃ寂しいと思って私のお気に入りのぬいぐるみ持ってきたんだ」

唯はライオンの頭、虎の体、ゴリラみたいな腕、鳥の羽がある奇妙なぬいぐるみを取り出した

律「これなんて合成生物…」

唯「ボロボロになって捨てられてたぬいぐるみの綺麗なパーツを縫い合わせて作ったの!可愛いでしょ!」

律「いやいや、怖いから夜とか動き出しそうだから」

61: 2010/02/27(土) 18:08:35.33
澪「みんなそろそろ帰るか」

唯「えっ?もう帰るの?」

澪「長くいるのも悪いだろ、律は元気で大丈夫そうだし」

梓「ですね」

紬「りっちゃん美味しいお茶いれて待ってるから早く退院してね」

律「おう!次お見舞い来る時はナース服でこいよムギ」

唯「りっちゃんまた会う日までー」

梓「ご飯ちゃんと食べなきゃダメですよー」

律「子供扱いするな」

62: 2010/02/27(土) 18:11:19.87
お祭りのように賑やかだった病室が急に静かになる

唯が置いていったぬいぐるみ…暗くなると迫力たっぷりで怖そうだな

ムギが持ってきてくれたメロン…母さんがきたら切ってもらおう

ムギが持ってくるんだからきっと高級なメロンに決まってる

律「楽しみだな」

コンコン…

静かな病室内にドアをノックする音が響いた

律「はーい!どうぞー!」

63: 2010/02/27(土) 18:21:19.78
澪「律…」

ドアが開いて入ってきたのは澪だった

律「澪か…」

澪「うん…302号室…覚えやすいな」

律「?…あぁ、30でミオってか」

澪「なるほど、それもあったな…ていうか、それじゃ301とか303も当て嵌まるだろ」

律「あ、そっか…じゃあ?」

澪「302の32(スリーツー)でリツって、ちょっと強引かな?」

律「ちょっと強引だな」

64: 2010/02/27(土) 18:22:52.56
律「で…そんな事言うために来たんじゃないだろ。どうしたんだ?忘れ物でもしたか?」

澪「そうじゃなくて」

律「あっ!もしかしてムギのメロンが食べたくて仕方なかったとか?」

律「しょうがないなぁ、切ってくれたら少しわけてやるよ」

澪「そうじゃない」

律「まさか…唯の合成生物ぬいぐるみが可愛くて欲しいとか言い出すんじゃないだろうな?」

澪「そんな事じゃなくて!」

澪「律…私達に何か隠してないか?」

65: 2010/02/27(土) 18:25:26.27
律「隠し事?ムギの持ってきたお菓子を澪の分まで食べたのは私とかか?」

澪「あれ食べたのやっぱり律だったのか…じゃなくて入院してる事でだ」

律「入院してる事?」

澪「そう、分かるんだよ。律の様子がいつもと違うからさ」

澪「本当はなんか重い病気とかなんじゃないのか?」

なるべくいつもの変わらないようにしてたつもりだったんだけどな…

律「澪に隠し事はできないな…」

66: 2010/02/27(土) 18:27:44.49
澪「やっぱり何か重い病気なのか?」

律「まぁとくに心配することはないと思うけど、心臓の病気で今の医療じゃ治すことも出来なくて長くてもあと半年の命なんだってさ」

澪「そっか………ってなんだって!」

律「いや、だから…」

澪「それ本気で言ってるのか!?」

律「本気だよードッキリとかじゃないからなー」

澪「ならなんでそんな笑ってられるんだよ!氏んじゃうかもしれないんだろ!?」

67: 2010/02/27(土) 18:29:54.67
澪の目から大粒の涙がこぼれていた

律「その~…なんかさ氏ぬなんて気がしなくてさ、確かに最近少し調子悪い時があったりしたけど氏ぬほどでもなかったし」

澪「だけど…医者にそう言われたんだろ」

律「まあな。まだなんかの間違いなんじゃないかって思ってるよ」

澪「律……氏んじゃダメだからな!」

律「そんな事言われたってなぁ…医者も治せないって言うし」

68: 2010/02/27(土) 18:32:27.29
澪「それなら私が治してやるっ!」

律「どうやってだよ…」

澪「今から医療とか学んで医師になって…」

律「そこまで待ってらんないって」

澪「ならどうすればいいんだよ!律は軽音部の心臓みたいなものなんだぞ!」

澪「律が私を軽音部に引っ張っていってくれたから私は今こんなに楽しい生活が送れてるんだ。律がいなくなるなんて絶対嫌だからな!」

澪「いつまでもずっと一緒だからな!」

69: 2010/02/27(土) 18:36:42.03
律「分かってるって私もこんな元気だし!そんな簡単にいなくなったりしないよ」

律「……ん………」

突然胸のあたりに突かれるような痛みが走った

澪「どうした?」

律「な、なんでもない」

律「とにかくさ!大丈夫だから不治の病なんてぷよぷよみたいに4つくっつけて消してやるよ!だから泣くなよ」

澪「なんだそれ…大体私は泣いてなんてない!」

律「めちゃくちゃ涙流しながら言われてもな…」

70: 2010/02/27(土) 18:39:41.27
澪「う、うるさいな!」

律「あははは」

澪「………話したらなんか思ったより元気そうで安心した」

律「だから心配いらないって言っただろ」

澪「…もう時間も遅いし帰るよ」

律「澪」

澪「なんだ?」

律「絶対いなくならないってずっと一緒だって約束するから」

澪「私もだ。絶対律を1人にしたりしないいつまでも一緒だって約束するよ」

律「それじゃーな」

澪「またな」

71: 2010/02/27(土) 18:42:58.32
その日からもとくに体調が悪くなることもなく
氏期が近いとは感じられないまま入院生活を過ごしていた

病気のことはほかの軽音部メンバーにも話した
元気な私を見て信じられないという顔をしていたが、本当の事だと話すとみんなに大泣きされた

私は病気なんかに負けないから病気を治してまた一緒にバンドやろうぜって笑顔で言ったらみんなも笑顔で頷いてくれた

みんなも私なら大丈夫だと信じてくれるのだろう

73: 2010/02/27(土) 18:46:11.46
澪はほぼ毎日のようにお見舞いにきてくれていろいろな事を話してくれた

唯は私を励ますために病室でギターを弾いて歌ってくれた
もちろん後でかなり怒られていた

ムギは琴吹家の財力をあげて何とかするなど言い出したが
私1人のためにそんな大金つかわせるのは気が引けるのでなんとか思い止まらせた

梓は普段あまり心配するそぶりを見せないが1人で千羽鶴を折ってきたりした
澪が言うには1番心配していたのは梓だったという

74: 2010/02/27(土) 18:49:09.02
私の状態は良好でもしかしたらこのまま何もなかったように退院できるんじゃないかと思った

しかし、そう甘くはなかった

律「………た……」

また胸を突かれるような痛みが…最近増えてきている

それにだんだん身体を動かすのが辛くなり身体を起こすのも難しくなってきた

それとともにみんなと会う機会も減っていった
というより私の起きている時間が減っていった

最近では起きている時間より眠っている時間の方が多くなっていた

75: 2010/02/27(土) 18:52:09.44
枕もとにはみんなからのメッセージが置いてあった

励ましの言葉や優しい言葉…読んでいると自然と涙が流れた

律「…………ん…」

今度は胸を刺すような痛みが走る

私は自分の胸に手をあてると心臓は弱々しく一定のリズムで鼓動している

こんなの私らしくないと自分の胸を強く叩いた

76: 2010/02/27(土) 18:54:02.50
それから何日がたったのか…今では自分の力で起き上がることもできず

機械に繋がれもう自分で生きているのか、生かされているのかよく分からなくなってきた

律「もうダメなんだな…」

眠くなってきた

いつもの眠気とは違う

なんとなくだけど分かる

このまま眠ったらもう二度と目が覚めることはないって

77: 2010/02/27(土) 18:56:23.76
ゆっくり目を閉じると身体が浮いているような感覚になる

目を開くと今までの思い出が見えた

律「走馬灯って本当に見えるんだな……」

軽音部メンバーで過ごした楽しい日々や澪と過ごした幼い日々

いろいろなことを思い出しながら私は真っ暗な闇の中に沈んでいく

自分の胸に手をあてると心臓はもう動いていなかった

何もない闇の中…私の隣には澪がいた

78: 2010/02/27(土) 18:58:04.11
澪は笑ってこっちを見ていた

私は澪に謝らなくちゃいけなかった
絶対いなくならない。いつまでも一緒にいるって約束守れなかったから

律「澪…ゴメンな…」

澪「何謝ってるんだよ」

律「だって約束守れなかったから」

澪「何言ってるんだ?」

律「だからずっと一緒だって約束」

澪「それは律だけの約束じゃないだろ?律がダメでも私がずっと一緒いてあげるよ」

その瞬間目の前が真っ白になる

81: 2010/02/27(土) 19:00:17.24
あまりの眩しさに手で目を覆う

目が慣れてきたらゆっくりと手を退かして目を開く

するとそこには今はもうすっかり見慣れてしまった真っ白な天井があった

私の身体に繋がれていた機械もすでになかった

見回すとそこはいつもの病室の風景だった

ガラガラ…

ドアが開いて唯が入ってきた
唯は目をいっぱいに見開いてこっちを見ていた

律「あ…唯…」

唯「みんなー!りっちゃんが起きたよー!」

82: 2010/02/27(土) 19:01:50.86
唯「りっちゃーんよかったよー」

物凄い勢いで抱き着いてくる唯

律「ちょ…唯苦しいって…」

紬「りっちゃんが起きたって本当!?」

梓「律先輩!大丈夫なんですか!?」

唯の後に続いてみんなも病室に入ってくる

紬「よかったわ、りっちゃん目が覚めて」

唯「もう起きなかったらどうしようかと思ったよ」

律「とりあえず……苦しいから離れてくれ………」

唯「ゴメンゴメン!」

83: 2010/02/27(土) 19:05:59.47
律「私生きてるのか…?」

梓「そうですよ!」

紬「夢じゃないのよ」

唯「手術が成功したんだって聞いたよー!」

みんなは泣き笑いながら抱き合って喜んでいる

手術…?

さっきまでのあれは夢だったのか?

私はまだ自分が生きているというのが信じられずにいる

自分が生きていることを確かめようと胸に手を押し当ててみる

私の胸の中で確かに心臓は低い音で力強く鼓動していた


おわり

87: 2010/02/27(土) 19:08:23.65
これで終わりです
読んでくれた方サンクス

89: 2010/02/27(土) 19:09:16.24
終わりか

引用元: 澪「いつまでもずっと一緒だからな!」