3: 2010/07/17(土) 23:19:22.64
憂「どうしたの、急に真剣な顔で」

和「私はいつも真面目じゃない」

憂「……確かに。それで、お姉ちゃんの事って?」

和「最近、唯があんまり私に構ってくれないの」

憂「あははっ、和ちゃんは本当にお姉ちゃんが大好きだね!」

和「///」カァッ

憂「もっと素直になって、お姉ちゃんに直接言えばいいのに」

和「言うって?」

憂「寂しいから、もっと構って、って」

和「そ、そんな事、言える訳がないわよ!」


4: 2010/07/17(土) 23:27:21.00
憂「んー、でも確かに。最近のお姉ちゃんは軽音部で忙しそう」

和「やっぱりそうなのね」

憂「和ちゃんも生徒会の仕事が忙しいんじゃないの?」

和「そんなの、唯が構ってくれないから暇つぶしにやってるようなものよ」

憂「暇つぶし、って……」

和「もし唯が部活の後、私と一緒に帰るために校門で待っててくれるなら、仕事なんか全部瞬頃するわ」

憂「和ちゃんの場合、本当に瞬殺できそうだからなあ」

和「たとえ会議があっても中断するわ」

憂「それはダメだよ!」

和「冗談よ。でも実際は、唯は軽音部のみんなと帰っちゃうから……」クスン

6: 2010/07/17(土) 23:35:05.52
憂「そうだね。お姉ちゃんはいつも軽音部のみんなと帰ってるみたい」

和「時々アイス屋に寄ったり、ゲーセンに寄ったりしてるんでしょ」

憂「う、うん……(時々じゃなくて、いつもだけど)」

和「どうして私と一緒に帰ってくれないのかしら」

憂「中学までは、よく一緒に帰ってたもんね。和ちゃんとお姉ちゃん」

和「そうよ。でも高校に入ってからというものの、そんな記憶は数えるほどしかないの。悲しいわ」

憂「そこまで言うなら、和ちゃんが校門のところで待っててあげれば……」

和「ダメよ、そんなの」

憂「どうして?」

和「私が寂しくて、唯に構ってほしいみたいじゃない」

憂「……いや、その通りじゃないの?」

和「その通りだけど、唯にそんな事を気付かれたら、私もう学校に行けないもん!」

16: 2010/07/17(土) 23:45:58.40
憂「『行けないもん!』って……」

和「はぁ、困ったわ」

憂「えーと、つまり和ちゃんは」

和「うん」

憂「お姉ちゃんに構ってほしい事を悟られないように」

和「うん」

憂「お姉ちゃんに構ってもらいたい、って事だよね」

和「さすがね、憂。話が早くて助かるわ」

憂「さーて、どうすればいいんだろう? お姉ちゃんは別に、和ちゃんを軽く扱ってる訳じゃないと思うんだけど」

和「軽音部のみんなの事ばっかりじゃなくて、もうちょっと私の事も気にかけてほしいのよ」

憂「うーん……」

和「中学の頃みたいに、とまでは言わないけど、いや、やっぱりあれくらい一緒にいてくれたら嬉しい」ニヘラ

17: 2010/07/17(土) 23:52:19.51
憂「ひとつ思ったんだけど」

和「うん」

憂「お姉ちゃんにとって、和ちゃんは空気みたいな存在なのかもしれない」

和「く、空気!?」ガーン

憂「あっ、いや、そっちの意味の空気じゃなくて」

和「じゃ、じゃあ……」

憂「近くにいる事が当たり前すぎて、ありがたみに気付かないっていうか」

和「うん」

憂「逆にいなくなったら氏んじゃうみたいな」

和「そう聞くと、悪くない気もしてくるわね」

憂「そうでしょ?」

和「でも、やっぱりそれだと寂しいじゃない。唯が私の存在を気にかけてくれない、って事は変わらないし」


19: 2010/07/18(日) 00:05:30.59
憂「和ちゃんは、小学校に入る前からずっとお姉ちゃんと一緒だったからね」

和「そうね、もう10年くらい経つのかしら」

憂「だからお姉ちゃんにとって、和ちゃんがそういう存在になるのは、ある意味では仕方ないと思う」

和「そんな……」

憂「ほら、結婚して何年も経った夫婦は、どうしてもマンネリに陥るって言うでしょ」

和「私と唯は熟年夫婦!?」

憂「あははっ、和ちゃんはきっと世話焼き女房さんだね」

和「……それはちょっと本気で嬉しいけど、でもね」

憂「うん」

和「マンネリ、まさにそれだと思うの」

憂「うん」

和「何年も一緒にいた私よりも、高校で出会った軽音部のみんなの方が、唯にとって刺激的なんでしょうね」

22: 2010/07/18(日) 00:11:42.09
憂「マンネリを打破する方法は、いくつかあると思うよ」

和「たとえば?」

憂「手っ取り早いのはイメチェンかな?」

和「イメチェン……」

憂「そう。和ちゃんのキャラクターを、がらっと変えてみるの」

和「ど、どうすれば変えられるのかな?」

憂「とりあえずメガネを外してみるとか!」

和「わ、わかった」スチャ

憂「はい、鏡。どうかな?」

和「……残念だけど」

憂「えっ、どうしたの?」

和「メガネが無いと、この距離でも鏡がよく見えないわ」


23: 2010/07/18(日) 00:16:34.49
憂「うーん、そっか。でも和ちゃん、メガネを外すとイメージが変わって、すごくいいよ!」

和「具体的には、どんな感じ?」

憂「とっても可愛くて、とってもかっこいいよ!」

和「そ、そう。ありがと……」

憂「だからメガネをやめて、コンタクトレンズにしてみようよ」

和「コンタクトレンズ!?」

憂「どうしたの、急に大きな声で」

和「そんなの無理よ。却下、却下」

憂「えっ、どうして?」

和「だって、目の中に何か入れるなんて、怖いじゃない……」プルプル

25: 2010/07/18(日) 00:26:31.66
憂「……わかったよ、和ちゃん。コンタクト案は無しだね」

和「う、うん。ていうかメガネ付けるわね。これが無いとよく見えなくて不安になるから」カチャ

憂「じゃあメガネは付けたままで、イメチェンする方法を考えよう。たとえば髪型とか」

和「髪型って言っても……」

憂「どうしたの、困ったような顔して?」

和「ほら、私は髪が短いでしょ」

憂「そうだね」

和「この長さじゃ、ヘアアレンジの種類も限られてくるんじゃないかしら」

憂「大丈夫、私に任せてよ!」ガラッ

和「……憂?」

憂「こんな時のために、色々なウィッグを用意してあるから!」

27: 2010/07/18(日) 00:33:03.47
和「ウィッグって、おしゃれ用のカツラの事ね。どうしてそんなものを持ってるのよ……」

憂「いやー、お姉ちゃんの髪を切ってあげてるうちに、色々と道具が増えてきちゃって」

和「憂が切ってあげてたの!?」

憂「そうだよ、知らなかった?」

和「確かに、そう言えば、唯が美容室に通うところを見た事がないわ……」

憂「おかげで最近では、エクステまで自分で結べるようになっちゃった」

和「そ、それは凄いわね……」

憂「だから和ちゃんのヘアアレンジも、私に任せてね!」

和「わかったわ、憂に全部任せてみる」

28: 2010/07/18(日) 00:40:17.34
憂「まずは、お手軽なアレンジからやってみようか」

和「これは、ヘアバンド?」

憂「カチューシャだよ。前髪を上げて、まとめるように付けてみて」

和「……これって、律が使ってるものと同じじゃない」

憂「そうだよ。イメチェンってね、誰かをお手本にして、その人のイメージに近づけてみるといいんだよ」

和「確かに、ただ漠然とこんなイメージ、ってやるよりも効果的ではありそうだけど」

憂「ほら、カチューシャで前髪を上げるだけで違うでしょ。律さんみたいに、元気で自由奔放な感じがする」

和「う、うん。言われてみれば、随分と印象が変わるものね」

31: 2010/07/18(日) 00:46:51.23
憂「ただ髪型を変えるだけじゃなくて、キャラクターも変えてみるといいかも」

和「キャラクターを変えるって?」

憂「普段の和ちゃんのイメージって、真面目で静かなキャラクターだと思われてるでしょ?」

和「まぁ、きっとそんな感じでしょうね」

憂「そんな和ちゃんが、ある日突然、元気いっぱいの太陽みたいなキャラクターになって、お姉ちゃんの前に現れたら」

和「なるほど」

憂「いつもと違う和ちゃんの魅力に、お姉ちゃんもドキドキ。マンネリなんて飛んで行っちゃうよ!」

和「それ、いいわね!」

33: 2010/07/18(日) 00:57:54.93
憂「それじゃ、律さんの喋り方や仕草を真似してみよう!」

和「律の真似、ねぇ……」



和「よっしゃあ、今日も頑張るぜー!」



和「こ、こんな感じかしら?」

憂「うーん……」

和「何か変だった?」

憂「いや、律さんの元気な感じはよく出てたと思うの。ただ……」

和「ただ、何よ?」

憂「ちょっとリアリティが足りないと言うか、律さんの魅力の一部しか表現しきれていないような気がするの」

和「別に私は、田井中律の役を演じる女優じゃないんだけど……」

35: 2010/07/18(日) 01:03:27.45
憂「忘れちゃいけないのは、あくまで目的はお姉ちゃんを振り向かせる事なんだよ」

和「そうね」

憂「ただ律さんの口調で言ってみるだけじゃなくて、律さんとお姉ちゃんの関係を再現するくらいの気持ちでやらないと」

和「そうは言っても……」

憂「私も協力するよ。私がお姉ちゃんの役をやるから、律さんになりきって、私に接してみて」

和「わ、わかったわ」

憂「それじゃ私は、髪をほどいて、ピンで留めて……」

和「憂が唯の髪型になると、本当にそっくりね」ドキドキ

憂「ついでにストッキングも、と」

和「それ、まさか唯のものじゃないわよね!?」

憂「あははっ、そんな訳ないじゃない!」

和(……本当かしら?)

36: 2010/07/18(日) 01:11:29.91
憂「それじゃ、やってみるよ?」

和「う、うん」



憂「りっちゃん、おはよう~」

和「おぉ唯、今日も元気だな~」



憂「……ちょっと一旦ストップ」

和「もう、何よ?」

憂「今の感じ、すごくいいんだけど、もう一捻り欲しいの。律さんの悪戯心を取り入れてみたい」

和「悪戯心って、どういう事よ」

憂「『げへへ~、今日はどんなパンツ履いてるの~?』みたいな、しょうもない冗談を言ってみるとか」

和「憂、律に対してどんなイメージを持ってるのよ……」

37: 2010/07/18(日) 01:16:12.26
憂「それじゃ、もう一度いくよ?」

和「わかった」



憂「りっちゃん、おはよう~」

和「おぉ、唯。今日も元気だな、パンツは何色だ~」ピラッ



憂「……きゃあっ!?」

和「って、素に戻らないでよ」

憂「いや、だって、本当にスカートをめくるとは思わなかったんだもん!」

和「……もしかして、違った?」

憂「律さんの悪戯は可愛らしいけど、和ちゃんのは完全に工口オヤジだったよ!」

和「エ、工口オヤジだなんて」

39: 2010/07/18(日) 01:28:43.26
憂「もう一回やるよ。下ネタも爽やかにね!」

和「わ、わかったわよ……」



憂「りっちゃん、おはよう~」

和「おぉ、唯。今日も元気だな、どんなパンツ履いてるんだ?」

憂「うふふふ。実は黒パンツなんですのよ、奥さん」ヒソヒソ

和「なんとなんと、そりゃ~大胆じゃないか」ヒソヒソ

憂「そう、今日の私はいつもと違う、大胆な平沢唯なのですっ!」

和「やっほーい、黒パンツ最高ー!」


41: 2010/07/18(日) 01:35:37.65
憂「……」

和「ど、どうかな?」

憂「やっぱり工口オヤジっぽいね」

和「そ、そんな!」

憂「でも律さんの元気な感じは再現できてたし、ヒソヒソ話でさり気なく肩に手を回したのもポイント高いよ!」

和「そう言えば、律の真似をしようと思ったら、自然とそうなったわね」

憂「いつもの和ちゃんだと、恥ずかしがって、お姉ちゃんにあそこまで接近できないでしょ?」

和「確かに……」

憂「ほら、これが物真似の力だよ。普段できないような事も、誰かの真似ならできる」

和「うん」

憂「そして、その真似を続けてみると、いつの間にかそれが自分のキャラクターとして定着しちゃうんだよ」

和「なるほど」


43: 2010/07/18(日) 01:48:15.22
憂「よーし、この調子。次は澪さんでやってみようか」

和「まずは髪型ね。これは地毛じゃ長さが足りないから……」

憂「黒髪ストレートのロングだから、このウィッグを付けてみてね」

和「こう、かしら……」ファサッ

憂「うん、これもいい。和ちゃんは元々の顔立ちが整ってるから、どんな髪型も合うね」

和「ちょっと照れるわね///」カアッ

憂「和ちゃんの恥ずかしがり屋なところ、澪さんに近いものがあるかも」

和「確かにそうかもね」

憂「でも、澪さんのキャラクターになりきるには、さらに付け足す要素があるよ」

和「それは何なの?」

憂「怖がりで、泣き虫なところ」

和「なるほど、それは私には無いわね」

憂「和ちゃんはいつも冷静だからこそ、澪さんみたいな意外な一面を持っていると、ギャップがあっていいと思うんだ」

和「わかった、やってみましょう」

45: 2010/07/18(日) 02:02:52.70
憂「じゃあ、同じようにやってみるよ」

和「わかった」



憂「澪ちゃん、おはよう~」

和「おはよう、唯」

憂「そうだ、ねぇねぇ聞いてよ~」ズイッ

和「な、何だよ」

憂「昨日ね、何となく、コピー用紙をまぶたに挟んでみたんだ」

和「う、うん」ビクビク

憂「それでね、思いっきりピュッ!って横に……」

和「わー、わー、わー!!!」

46: 2010/07/18(日) 02:07:23.37
憂「……迫真の演技だったね」

和「そ、そうでしょ。澪とはクラスも一緒だったし」

憂「ていうか、演技じゃなくて本気で怖がってた?」

和「そそそ、そんな事ないわよ。今のは澪の性格をイメージして」

憂「……眼球に傷が付いちゃって、視界が急に紅く」

和「きゃあっ、ストップ!」

憂「……和ちゃん」

和「な、何よ」

憂「かわいいね、和ちゃん」ニッコリ

和「憂、私の事バカにしてるでしょ!?」

憂「そんな事ないよ~」ニコニコ

和「その言葉が信用できない!」プンスカ


49: 2010/07/18(日) 02:24:19.80
憂「どうやら澪さんのキャラクターは真似するまでもないみたいだから」

和「うぅっ、私の抗議が軽く流された……」

憂「次は紬さんみたいな、おっとりぽわぽわ和ちゃんを試してみようね」

和「ていうか憂、私で遊んでるでしょ!?」

憂「だからそんな事ないってば~」ニコニコ

和「もう、何を言っても無駄みたいね……」

憂「はい、このブロンドのウィッグを付けて」

和「こうね」ファサッ

憂「これは……」

和「ど、どう?」

憂「金髪に赤フレームのメガネが、なんだかとってもおしゃれな感じ!」

和「ありがとう。私もこれは普通にアリだと思うわ、イメージも変わるし」

50: 2010/07/18(日) 02:32:21.36
憂「そうそう、肝心なものを忘れてた」

和「何かしら?」

憂「はい、付け眉毛」

和「……付け眉毛!?」

憂「紬さんのキャラクターになりきるなら、髪型だけじゃなく、あの眉毛も再現しなきゃね」

和「それ、本当に必要あるの!?」

憂「似合うようだったら、明日から眉毛を付けて学校に行くのもいいと思うよ」

和「そんな斬新なファッション、聞いた事もないわよ。ペンシルで書けばいいじゃない」

憂「私が毎日、和ちゃんのメイクをしてあげられるなら、それもいいんだけどね」

和「どういう事よ?」

憂「紬さんの眉毛は独創的すぎて、お化粧の苦手な人には書きづらいよ。それで付け眉毛を用意したんだから」

51: 2010/07/18(日) 02:38:51.34
憂「……うん、眉毛も付けた事だし」

和「一応付けてみたけど、これって本当に必要なのかしら」

憂「和ちゃんはわかってないよ!」

和「わかってないって、何が?」

憂「眉毛のない紬さんなんて、紬さんじゃないよ!」

和「いや、だから、それを私が再現する必要があるのかって」

憂「……」

和「……」

憂「それで、紬さんのキャラクターになるために、あの独特の口調をマスターしてみようよ。特に間の取り方を意識して」

和「また流された!?」

69: 2010/07/18(日) 09:04:42.41
憂「はい。じゃあ紬さんをお手本に、真似してみようか」

和「うーん、今回はちょっと難しいわね」

憂「自分は紬さんで、私はお姉ちゃんだと、思い込むんだよ」

和「……やってみるわ」



憂「ムギちゃん、おはよう~」

和「唯ちゃん、おはよう~」

憂「今日は暑すぎて何もやる気が出ないよ~」

和「うん、とっても暑いの~」

憂「どうしてこんなに暑いのかな?」

和「はっ、わかったわ!」

憂「おぉ、何?」

和「きっと夏だからよ!」

71: 2010/07/18(日) 09:08:49.41
憂「……えーと、一旦ストップ」

和「また何か変なところがあった?」

憂「確かに紬さんの天然っぽいところは再現できてたよ」

和「うん、ありがとう」

憂「でもね、これじゃお姉ちゃんとダブルボケ合戦してるみたいで、会話が発展しないよ」

和「……確かにそうね」

憂「紬さんは、おっとりぽわぽわお嬢様だけど、時々ものすごい積極性と意志の強さを見せるんだよ」

和「言われてみれば。ていうか憂、軽音部の先輩をよく観察してるわね」

憂「ついでに言うと、強いのは気持ちだけじゃなくて、力も強いんだよ」

和「あのキーボード、軽々と持ち歩いてるもんね」

73: 2010/07/18(日) 09:14:11.67
憂「以上を踏まえて、もう一度」

和「どんとこいです」

憂「いや、まだ始まってなかったんだけど、まぁいいや始めます」

和「お願いしますっ!」



憂「ムギちゃん、おはよう~」

和「唯ちゃん、おはよう~」

憂「今日は暑すぎて何もやる気が出ないよ~」

和「まだ朝礼まで時間もあるし、学校を抜け出して、コンビニまでアイス食べに行っちゃおうか?」

憂「おぉ、ムギちゃんさすがだよ!」

和「私、一度でいいから、唯ちゃんと朝から学校抜け出してみたかったの♪」

74: 2010/07/18(日) 09:18:15.29
憂「そうと決まれば、早速レッツゴー!」

和「唯ちゃん、ちょっと待って」

憂「ほえ?」

和「暑いなか外を歩くの、大変でしょ?」

憂「うーん、そうだね」

和「だから私が唯ちゃんをお姫様抱っこで連れて行ってあげる!」

憂「……えぇ!?」

和「私、唯ちゃんをお姫様抱っこして歩くのが夢だったの♪」ハァハァ

憂「ちょっ、ちょっと待ってよムギちゃん!?」

和「では、失礼しますっ!」ハァハァ

75: 2010/07/18(日) 09:24:19.27
ガラガラガシャーン

憂「……痛いよぅ」

和「ごめんね、大丈夫!?」

憂「うん、何とか。和ちゃんの筋力じゃ、お姫様抱っこはちょっと厳しいよ」

和「そうね」

憂「紬さんのキャラクターになりきっても、紬さんの怪力が手に入る訳じゃないんだから」

和「……反省するわ」

憂「ところで和ちゃん」

和「うん」

憂「さっきから和ちゃんの身体が、私の上に乗っかってるんだ」

和「あっ、転んだ拍子に!?」

憂「……押し倒されたみたいな格好だよ」

和「へ、変な事を言わないでよっ!?」

77: 2010/07/18(日) 09:30:57.26
憂「……」ドキドキ

和「……」ドキドキ

憂「と、とりあえず、下りてくれる?」

和「あっ、ご、ごめんね」ササッ

憂「えーと、和ちゃん。顔が真っ赤だよ?」

和「いや、その、だって」

憂「だって?」

和「……憂、唯みたいな格好してるし」

憂「じゃあ、お姉ちゃんを押し倒したみたいだから、そんな風に恥ずかしくなったの?」

和「あっ、でも、唯だから、って訳でもなくて、唯じゃなくても、あの体勢は」

憂「うんうん、それで?」ニコニコ

和「もうっ!! そ、それよりさっきの、ムギの真似はどうだったのよ、憂から見て!?」

80: 2010/07/18(日) 09:40:08.25
憂「そうだね、すごく良かったよ」

和「うん、ありがとう」

憂「ぽわぽわっとしているようで、いざやると決めたら強引にでも実行するところなんか」

和「そんな感じだったわね」

憂「まさに、和ちゃんに無いものを、紬さんは持ってると思うの」

和「確かに私は、強引に物事を進めるような性格じゃないわね」

憂「そうそう。軽音部のみんなのいいところを、ちょっとずつ吸収していけば、いいイメチェンが出来るはずだよ」

和「……みんなのいいところ、か」

憂「和ちゃん?」

和「何でもないわ。さぁ、次に行ってみましょうか」

81: 2010/07/18(日) 09:43:54.78
憂「最後は梓ちゃんだよ」

和「このツインテールのウィッグを被ればいいのね」ファサッ

憂「うん」

和「……どうかしら?」

憂「……えーと」

和「正直に言ってよ」

憂「うん。なんかコスプレっぽいかも」

和「コスプレ!?」

憂「ツインテールにメガネって、深夜のアニメに出てきそうな、狙いすぎ感がするよ」

和「深夜のアニメって、私たちも……。いや、そこには突っ込まない事にするわ」

83: 2010/07/18(日) 09:51:24.66
憂「見た目はとりあえず置いておこう。中身のキャラクターの方が大切だよ」

和「そ、そうよね」

憂「梓ちゃんのキャラクターのポイントは、ずばり『後輩力』だと思うの」

和「後輩力?」

憂「お姉ちゃんから見て、梓ちゃんは、本当に可愛い後輩なんだよ」

和「うん」

憂「真面目で、生意気で、なのに手懐けるとすごく甘えてくる」

和「そうね、梓ちゃんの魅力はそこにあるのかも」

憂「なんだかんだ言ってお姉ちゃんに甘えてしまう、あのキャラクターは……」

和「私には無いもの、って事か……」

憂「だからこそ、真似して見習うべきなんだよ」

和「そうね、やってみるわ!」

84: 2010/07/18(日) 09:52:28.21
憂「じゃあ、いきます」


85: 2010/07/18(日) 09:55:45.78
憂「じゃあ、いきます」

和「うん」



憂「あずにゃん、おはよう~」

和「唯先輩、おはようございます」

憂「えーい、今日のあずにゃん分を補給!」ダキッ

和「へっ、はわっ、やめてください!」

憂「もうちょっとだけ、もうちょっとだけ!」スリスリ

和「うぅっ、もう、すぐ終わりにしてくださいね?///」

86: 2010/07/18(日) 09:59:27.05
憂「あずにゃんがそう言うなら、終わりにします」パッ

和「えっ……」

憂「どうしたの、あずにゃん?」ニヤニヤ

和「いや、その……」

憂「もしかして、まだ抱き締めてほしいのかな?」ニヤニヤ

和「そ、そんな事ないですっ!」

憂「じゃあ今日は終わり。今日のあずにゃん分はチャージ完了したし」

和「そ、そんな……」

88: 2010/07/18(日) 10:04:21.82
憂「ねぇ、あずにゃん?」

和「……はい」

憂「言いたい事があるなら、素直に言わなくちゃ」

和「……もう一回、ギュッってしても、いいですよ///」カアッ

憂「してください、の間違いじゃないの?」

和「……してください///」カアッ

憂「むふふ。じゃあオプションで猫耳を付けて、っと!」スチャ

和「な、何ですかこれ!?」

憂「あずにゃーん!」ダキッ

和「はうぅ」ドキドキ

憂「ニャーって鳴いてみてよ、ニャーって!」スリスリ

和「にゃ、にゃあ……」

89: 2010/07/18(日) 10:09:06.51
憂「……和ちゃん、どうだった?」

和「えーと、正直に言うとね」

憂「うん」

和「幸せだったわ」

憂「そっか~」ニコニコ

和「いきなり唯から、それも毎日のように、抱きつかれるなんて」

憂「お姉ちゃん、女の子だったら誰にでも抱きつく癖があるからね」

和「でも私には、あんなに毎日抱きついてくれないのよ。どうやったら、梓ちゃんになれるのかしら」ハァ

憂「私なら、毎日でもいいんだけどなぁ」ボソッ

和「……えっ?」

憂「ううん、何でもないよ」

和「そ、そう」

90: 2010/07/18(日) 10:16:00.78
憂「これで軽音部のメンバー全員分、一通り終わったね」

和「色々とヒントになるところがあったわね」

憂「あっ、でも最後にもう一人、物真似してみようよ」

和「えっ、誰?」

憂「私です!」

和「……憂?」

憂「お姉ちゃんと一緒にいる時間だったら、私が一番長いし。私とお姉ちゃんの関係を再現してみるのも、ヒントになると思うよ?」

和「まぁ、一理あるわね」

憂「今回も私がお姉ちゃん役をやるから、和ちゃんは私になりきってみて」

和「わかったわ」

憂「髪型は、ひとつに結ぶだけだから、和ちゃんの地毛で足りるよ」

和「うん。こうするのね」ギュッ

93: 2010/07/18(日) 10:19:43.11
憂「じゃあ、いくよ?」

和「うん」



憂「憂、おはよう~」

和「お姉ちゃん、おはよう」

憂「朝のチューしよ~」

和「うん、わかった……」



和「って、ちょっと待って!!」

憂「和ちゃん、どうしたの?」

和「朝のチューって何よ!?」

憂「私とお姉ちゃん、海外に住んでた時期もあったし、挨拶はキスとハグだよ?」

和「えっ、本当に?」

97: 2010/07/18(日) 10:24:46.89
憂「だから、私とお姉ちゃんの関係を再現するためには、これは欠かせない要素なの」

和「そ、そんな」

憂「……もしかして、和ちゃん」

和「な、何よ?」

憂「キスした事ないの?」

和「そ、そんな訳ないじゃない!」ガタッ

憂(本当はキスした事ないんだな……)

和(本当はキスした事ないけどね……)

憂「それなら何も問題はないね」

和「で、でも、キスってのは、好きな人とするもので」

憂「私の事、和ちゃんは好きじゃないの?」

和「い、いや、別に、好き、だけど」

憂「じゃあオッケーだね!」ニッコリ

和「うぅっ……」

98: 2010/07/18(日) 10:29:04.47
憂「それじゃ、始めるよ」

和(私のファーストキスが、こんな形で奪われるなんて……)



憂「憂、おはよう~」

和「お姉ちゃん、おはよう」ドキドキ

憂「朝のチューしよ~」

和「う、うん、わかった」ドキドキ

憂「じゃあ、いただきます」ギュッ

和(もう、どうにでもなれ!)ギュッ

チュッ



ガタッ

唯「ただいま~、遅くなっちゃった」

101: 2010/07/18(日) 10:31:39.87
憂「えっ」

和「えっ」

唯「……えーと、あれ?」

憂「お、お姉ちゃん」

和「ゆ、唯」

唯「……」

憂「……」

和「……」

唯「お、お邪魔しました~」

バタン

和「ちょっと待って、唯!?」

108: 2010/07/18(日) 10:36:19.95
こんにちは、平沢唯です。

今日も部活が終わって家に帰ったら、私と妹が抱き合ってキスしていました。

いや、正確に言うと、私の格好をした妹の憂と、妹の格好をした幼馴染みの和ちゃんです。

何を言っているかわからないと思いますが、私にも訳がわかりません。

ただ一つ確かな事は、私はあのタイミングで家に帰るべきではなかったという事です。

軽音部の誰かに電話して、今夜だけ泊めてもらおうと思います。

……明日から、どんな顔で二人に会えばいいのかな?

きっと、何も見なかった事にするのが、一番いいのかな?

110: 2010/07/18(日) 10:40:39.62
こんにちは、真鍋和です。

幼馴染みの唯にもっと構ってほしくて、その妹の憂に相談しに行きました。

……と思ったら、何故か憂の格好にさせられ、唯の格好をした憂にファーストキスを奪われました。

おまけにその姿を、帰ってきた唯に目撃されてしまいました。

何を言っているかわからないと思いますが、私にも訳がわかりません。

ただ一つ確かな事は、憂に相談する前よりも、状況が悪化したという事です。

明日から私はどうすればいいのか、まったくわかりません。

本当に困っています。助けてください。

112: 2010/07/18(日) 10:45:04.66
こんにちは、平沢憂です。

今日、お姉ちゃんの事が大好きな和ちゃんが、どうすればお姉ちゃんに振り向いてもらえるか、相談に来ました。

正直に言うと、私は和ちゃんの事が大好きなので、ムッとしてしまいました。

なので、和ちゃんの相談に乗るふりをしながら、あの手この手で和ちゃんとイチャイチャする事にしました。

律さんの格好で、スカートをめくってもらったり。

澪さんの格好で、痛い話で怖がってもらったり。

紬さんの格好で、お姫様抱っこしてもらったり。

梓ちゃんの格好で、私から抱きついてみたり。

想像以上に和ちゃんが天然だったので、私が狙っていた以上に、色々とおいしい思いをする事ができました。

115: 2010/07/18(日) 10:48:38.31
そして最後には、私がお姉ちゃんの格好をして、和ちゃんが私の格好をして、チューしました。

お互い、これがファーストキスだったみたいです。へへへっ///

ちなみに、我が家の挨拶がキスとハグだなんて、真っ赤な嘘ですからね。

何を言っているかわからないと思いますが、すべて私の計算通りです。

ただ一つ誤算だったのは、その姿をお姉ちゃんに見られちゃった事です。

明日から、お姉ちゃんと和ちゃんに、どうやって接していこうかな?

今夜のうちに、幸せな気分でベッドに入って、じっくり考えようと思います。



おわり

118: 2010/07/18(日) 10:50:46.06
おつ!!

127: 2010/07/18(日) 11:02:44.42
出掛ける前に終えられて良かった
支援レス感謝、ではでは

引用元: 和「唯の事で相談があるの」 憂「……和ちゃん?」