1: 2009/12/27(日) 18:21:22.94
誰が一番好きかと聞かれた。

私は澪先輩と答えた。

特に特別な日でもない時の何の変哲もない昼食時の会話だ。

私と憂と純の三人でお弁当を囲んでいたときにこの学校の中で誰が一番好きかという話題になった。

つまるところは憧れの人はいるかと。

その質問に至った経緯も、二人のうちのどちらがその質問を投げかけたのかも今は覚えていない。

共学校の女の子ならよくある会話なのだろうが、女子高である桜が丘高校ではその手の話題は若干のタブーをはらんでいた。

3: 2009/12/27(日) 18:23:22.15
憂は即答で唯先輩と答え、純は私も憂も知らない人の名を口にした。

おそらくジャズ研の先輩なのだろう。

前にかっこいい人がいたと言っていたのでその人のことかなと思った。

そしてバトンは最後に私に回ってきた。

私の頭の中に軽音部の先輩たちが浮かんできた。

律先輩は真面目に練習してくれないし、ムギ先輩は少し苦手だし、唯先輩は練習しないしよく抱きついてくるしで頭の中には澪先輩が残った。

残った澪先輩のことを改めて思ってみると技術はすごいし、真面目だし、だけど弱点もありとおよそ憧れかつ近寄りがたくない存在だと思った。

だからその質問にためらいなく答えることには僅かな気恥しさ以外に何も無いはずだった。

しかし、私が澪先輩と口にしようとしたとき、何かが胸に引っかかったような違和感がした。

4: 2009/12/27(日) 18:26:29.25
『私は・・・・・・澪先輩かな』

言い出してから数秒の沈黙ののち、私はそう答えた。

そんな私に憂は『澪先輩ってしっかりしているもんね~』と言った。

どうやら二人には違和感は伝わらなかったようだ。

そのまま別の話題にシフトしても私の胸にはその質問と違和感が引っかかっていた。

何かすっきりしなかったがそれは気のせいだろうと自分の中で解決した。

しかしその時はその違和感に気付かなかったが今ならわかる。

私はこう答えたかったのだ。

『私の好きな人は唯先輩』と。

7: 2009/12/27(日) 18:30:32.29
どうしてあの時そう答えなかったのだろうか。

憂が最初にそう答えたから?

憂に遠慮したから?

練習もろくにしないのにギターの才に恵まれている唯先輩をどこかで認めたくないという気があったから?

確かにそのどれもが有っただろう。

だけど一番ウェイトを占めていたのはこれが理由だろう。


私が唯先輩を、――――として好きだったから。

9: 2009/12/27(日) 18:35:33.06
唯先輩のことをその意味で好きだったからこそ私はその時唯先輩と答えることができずに澪先輩と答えたのだろう。

好きな漫画を答えるときにマイナーだけど本当に好きな漫画を答えずに、人気のあるメジャーな作品を好きと言うのと同じ感じだ。

そこには一切の否定が欲しくなかったと言うことと、秘密をやすやすとさらけ出したくないと言った気持ちがあったのだろう。

こころの中で澪先輩に謝る。

しかしもう一度同じ質問をされたところでもう意味が無い。

すべては終わったのだ。

時計は巻き戻らないし覆水は盆に帰らないのだ。

10: 2009/12/27(日) 18:41:00.86
~3年前

ガチャッ
梓「こんにちはー」

唯「あーずーにゃん」ギュッ

梓「ちょ、ちょっとやめて下さい」

この人はいつも抱きついてくる。
ただ授業が終わって音楽室に入ってきただけじゃないか。

唯「えへへ~ あずにゃん暖かい~」ギュー

梓「すみません先輩、とりあえず中に入れてください」

唯「ぶー あずにゃんのけちー」

紬「うふふ」

誰がケチだ、私は心が広いほうだ。
でも悪い気はしないな、そんなことを思いながらいつものように部活が始まる。

11: 2009/12/27(日) 18:46:28.36
紬「梓ちゃんはコーヒーにする?紅茶にする?」

梓「それじゃあ紅茶でお願いします」

唯「あずにゃんも紅茶派だよ 仲間だね~」

律「お前はただコーヒーが苦くて飲めないだけだろうが」

軽音部の活動といえばまずはティータイムから始まる。
ムギ先輩の持ってくる最高級の紅茶に、毎日変わるお菓子。
まずは心を落ち着けて精神の豊かさを獲得するのだとは律先輩の弁。

13: 2009/12/27(日) 18:51:45.05
自堕落だけど退廃してない時間。

みんなが好きなこの時間。

例に漏れず私もこの時間が好きだ。

この部に入りたての頃を思えばクスりとしてしまう。

あの頃は私はこの時間が許せなかったなと。

のんびりお茶を飲んでお菓子をつまんでいる先輩たちを見て激昂してしまったなと。

今の自分ははたして適応したのか堕落したのか。

16: 2009/12/27(日) 18:58:11.46
澪「さーてそれじゃあそろそろ練習するぞ」

唯&律「え~」

律「もう少ししてからにしようぜ~」

唯「そうだよ~」

梓「何言ってるんですか先輩たち、早く練習するですよ」

唯「ちぇ~ あずにゃんがそういうなら」

紬「がんばろうね」

こうしていつも通りに軽音部の活動は始まった。

18: 2009/12/27(日) 19:03:36.04
~夜

憂「お姉ちゃん、ご飯よー」

唯「今行くー」

唯「わぁ、今日も美味しそうだよういー」

憂「ありがとうお姉ちゃん」

唯「それではいただきまーす」

憂「いただきます」

20: 2009/12/27(日) 19:08:59.08
唯「美味しいよ~ 憂は料理の天才だね!」モグモグ

憂「そ、そんな///」

憂「あ、そうだお姉ちゃん」

唯「なにー?」

憂「今日ね、梓ちゃんたちとこんな話をしたんだけど」

――
――――
――――――

21: 2009/12/27(日) 19:15:06.55
~翌日の放課後

ガチャッ
梓「こんにちはー」

梓「・・・あれ?」

いつもと何かが違っている気がした。
そう、それはいつも半ば恒例行事のように行われている・・・。

律「あれ? 唯、梓に抱きつかないのか?」

澪「そういえばそうだな、唯らしくも無い」

紬「ガーン そんなの唯ちゃんじゃない・・・」

そうだ、それだ。
いつもは私が入ってくるだけで私に抱きついてくる唯先輩が今日はなぜか抱きついてこなかったのだ。
抱きつかれると自由が奪われるような気がしてどこか嫌だったのだが、この寂しさはなんだろう。

22: 2009/12/27(日) 19:21:03.86
唯「そ、そんな人を抱き魔みたいに言わなくても・・・」

律「抱き魔だろ」

澪「抱き魔だな」

紬「抱き魔よ」

梓「抱き魔ですね」

唯「ひどい!」

23: 2009/12/27(日) 19:26:26.90
紬「それでどうしたの唯ちゃん!!」

唯「わっ! 声大きいよムギちゃん」

律「大好物の梓が目の前にぶら下がってるんだぞ」

梓「ぶら下がってるって・・・そんな言い方しないでくださいよ」

24: 2009/12/27(日) 19:33:00.11
唯「ぶー、だってさぁ」

澪「どうしたんだ唯?」

唯「・・・」

唯「あずにゃんって澪ちゃんが好きなんでしょ」

澪&律&紬&梓「!!!」

27: 2009/12/27(日) 19:40:59.42
澪「な・・・え・・・?///」カァッ

紬「それこそどういう事なの唯ちゃん!!!」

唯「頭ゆらさないで~」ガクガク

律「アズサガミオスキ アズサガミオスキ ミオガアズサスキ」

梓「・・・はっ」

一足先に冷静になってみんなを見てみるとみんな面白い反応をしていた。
唯先輩はムギ先輩にものすごい勢いで体を揺すられて目がぐるぐるマークになっていた。
ムギ先輩は目がマジだった。
律先輩はここからじゃぶつぶつとしか聞こえないが、なにやらよくわからないことを唱えていた。
そして澪先輩は真っ赤になって手で頬を抑えていた。

28: 2009/12/27(日) 19:47:52.15
唯先輩の一言で混沌に陥った音楽室をなんとかしてもとに戻すべく私は周りを見渡した。
そこで見つけたそれを使うことにした。

梓「みんな冷静になってくださいー!!」

ギュイーン!!!

唯&澪&律&紬「!!!」

私はアンプにつながっていたコードをボリュームを下げずに引っこ抜いた。

34: 2009/12/27(日) 20:02:28.95
梓「・・・っ!」

当然だけど一番ダメージが大きいのは一番近くにいた私だ。
爆音を直に受けてしまって今私の耳はキーンな状態だ。
少しの間は音が聞こえない。
それでもこの喧騒が収まったのだからよしとしよう。

35: 2009/12/27(日) 20:08:54.38
梓「冷静に・・・なってください・・・」

律「そうだな・・・」

澪「ああ・・・」

紬「はっ! 唯ちゃん、唯ちゃーん!!」

唯「ほげー」グルグル

耳が聴こえないので自分の発した言葉が聞こえずに上手く伝わるか不安だったけれどこの様子じゃ伝わったようだ。
そして唯先輩はムギ先輩に揺すられ続けたせいで完全に伸びていた。

36: 2009/12/27(日) 20:14:16.08
紬「ごめんね唯ちゃん・・・それで梓ちゃん、どういうことなの!?」ガシッ

梓「今度は私っ!?」

今度は私の体を揺すろうとしてきた。
ムギ先輩あなた、氏人を一人だしたのに懲りてないようですね。

律「あーそこまでだムギ、被害をこれ以上増やすわけにはいかない」ガシッ

紬「そんな~」

律先輩がムギ先輩の首根っこを引っ張ってそのまま隅まで追いやってくれた。
ふぅ、助かった。

38: 2009/12/27(日) 20:20:36.72
澪「そっ、それでどういう事なんだ?」

澪「その・・・私のことが好きって・・・!?」

律「そうだな」

律「唯を問い詰めても良いんだが・・・今気絶してるところだしな」チラッ

律「話してくれるとありがたい」

紬「そうよ 洗いざらい話しなさい!」

助かってなかった。
私はチラと横になっている唯先輩を見て、あとで小言の一言でも言おうと決心した。

39: 2009/12/27(日) 20:26:39.96
梓「えっとですね・・・」

澪&律&紬「じーっ」

梓「そ、そんなに見つめられると言いにくいんですが・・・」

紬「それじゃあこれだけ答えてちょうだい」

紬「澪ちゃんのこと好きなの?」

梓「それは・・・」

唯「そうだよ!」

唯「憂がそう言ってたもん!!」

タイミングよく目が覚めるなよ。

40: 2009/12/27(日) 20:34:04.92
澪「っ///」カァッ

紬「さっきはごめんね唯ちゃん それで早速だけど経緯を教えてちょうだい」

律「何があったんだ?」

唯「えっとね」

唯「憂が言うには昨日の昼休みに誰が好きなのかって話になってみたいで」

唯「その時にあずにゃんは澪ちゃんが好きって言ったらしくて」

澪「ぁ///」

紬「キマシタワー」

・・・本人の言質取らないで何盛り上がってるんだこいつら。

41: 2009/12/27(日) 20:41:51.72
紬「それで梓ちゃん、今の話は本当なの?」

澪「・・・」ドキドキ

律「・・・」

唯「・・・」プンスカ

梓「・・・ええ、確かにそういいましたけど」

紬「モウシンデモイイワ」

澪「!!!///」プシュー

律「!」

唯「・・・」シュン

梓「だけどそれは憧れの先輩って意味で別に他意は」

梓「って聞いちゃいねぇ!」

42: 2009/12/27(日) 20:47:27.41
紬「それで澪ちゃん、澪ちゃんは梓ちゃんの気持ちにどう答えるの?」

澪「私は・・・私は・・・」

律「・・・梓」

律「澪をよろしく頼む!」

唯「あずにゃん、澪ちゃん・・・おめでとう」グスッ

・・・何この雰囲気。

49: 2009/12/27(日) 21:39:19.33
澪「あ、あ、あ、あの、不束者ですがよろしくお願いします!///」

梓「ええと・・・」

律「幸せになれよ!」

唯「あずにゃん・・・これからは澪ちゃんに抱きついてもらってねっ」

紬「総力を上げて支援するわ」

言えない、今更真実はもう言えない。

50: 2009/12/27(日) 21:43:00.08
しかし、別にこうなったらこうなったらでいいのではないか?

少なからず好意はあるのだし、別に誰も偽ってなどいないのではないか?

澪先輩を尊敬しているのも事実なのだし、私は澪先輩が好きなんじゃないのか?

そうだよ、きっと私は澪先輩のことが好きなんだよ。

梓「えっと・・・こちらこそよろしくお願いします」

51: 2009/12/27(日) 21:47:04.81
律「よし、これからパーティーだパーティー」

唯「おー! 飲むぞ食べるぞーやけだー!」

紬「うふふ それならちょっと待ってて」プルルル

紬「斉藤、5分以内にパーティー用のセットを持ってきなさい」

斉藤『はっ、お嬢様!』

澪「な、なんかすごいことになっちゃったな」

梓「ええ・・・」

52: 2009/12/27(日) 21:51:14.00
律「唯ー、いつでも私に抱きついていいんだからなー」

唯「え~だってりっちゃん固いんだもん・・・」

律「固いってなんだー!」

唯「ふわふわしてるムギちゃんの方が良い」ギュッ

紬「あらあら」

唯「えへへ~」

梓「・・・っ!」

澪「ど、どうした梓・・・?」

梓「いえ・・・なんでありません」

今の違和感はなんだったのだろう。
まるで大事なものが他人にやすやすと触れられてしまったような・・・
まあいいか。
こうして、本意なのか不本意なのか、私と澪先輩は付き合うことになった。

53: 2009/12/27(日) 21:58:17.55
~翌日

純「へぇ~ 澪先輩と付き合うことになったんだ」

憂「梓ちゃんやるね~ 私もお姉ちゃんと///」

梓「・・・」

純「どうしたの梓? 嬉しくないの?」

憂「せっかく想い人と結ばれたんだからもっと嬉しそうにしててもいいのにね」

梓「いや・・・ただ現実感がわかないだけだよ」

純「ふ~ん そんなものなのかねぇ」

55: 2009/12/27(日) 22:03:16.64
梓「それより純こそその先輩に告白してみなよ」

憂「いいね、それ」

純「う~ん、やめとく」

梓「どうして?」

純「先輩は尊敬できる対象として好きだけど恋愛感情とは違うかなって」

梓「・・・っ」

憂「どうしたの?」

梓「いや・・・なんでもない」

56: 2009/12/27(日) 22:08:44.93
~一ヶ月後

律「ところでだ」

澪「どうしたんだ、練習しないのか?」

律「澪、梓 お前ら付き合ってるんだよな?」

澪「ああ///」

梓「そうですが」

律「これまでは聞かないでいたんだが」

紬「あなた達ぶっちゃけどこまで進んだの?」

57: 2009/12/27(日) 22:15:01.85
澪「す、進んだって・・・///」

紬「A?B?それともC?」

梓「いやいやいやいやいや」

紬「何が違うのよ!」

紬「愛し合ってる二人ならそれが自然よ!」

チクリ
『愛し合ってる』に少し胸が痛んだ。

59: 2009/12/27(日) 22:19:31.62
澪「アイシアッテル///」

梓「その・・・」

梓「手を繋ぐまでいきました」

唯「えっ?」

律「えっ?」

紬「えっ?」

60: 2009/12/27(日) 22:22:17.62
澪「それに私たちは映画館デートもしたんだぞ///」

梓「そうですよ」

紬「内容を詳しく話して」

澪「えっと、まずは昼食をとって」

梓「その後に映画を見に行きましたね」

澪「見終わった後は洋服の買い物に行ったよな」

梓「ええ、そうでしたね」

紬「それでその先は?」

62: 2009/12/27(日) 22:26:37.70
澪「その先って・・・それで終わりだぞ」

梓「夕ごはんまでには帰らなければいけなかったですしね」

紬「・・・ハァ」

紬「それじゃあ何の映画を見たの?」

梓「それはあれです」

澪&梓「ハリー・ポッター」

そう答えた後、ムギ先輩から恐ろしい波動が出た、気がした。

64: 2009/12/27(日) 22:31:36.40
紬「それは友達って言うのよ! と・も・だ・ち!!」

紬「あなた達付き合ってもう一ヶ月もたつのよ!」

紬「それなのにまだ手を繋いだだけってどういうことよ!」

唯「ムギちゃん怖い・・・」

紬「これじゃありっちゃんや唯ちゃんととってたスキンシップのほうが遥かに激しかったじゃない!」

梓「!」

なんでなんだろう。
唯先輩に抱きつかれていた自分を思い出して、私は・・・。

67: 2009/12/27(日) 22:36:49.28
澪「私たちには私たちのペースがあるんだ」

澪「今のままでも十分お互いの気持ちがつながってるよな梓?」

梓「・・・」

澪「梓?」

梓「! はっ、はい! なんでしょう?」

澪「どうしたんだ?」

梓「すみません・・・少しぼーっとしていました」

私のこころの中ではひとつの疑問が渦巻くようになっていた。
決して周りには言えない疑問。
私は本当に澪先輩のことを恋愛対象として好きなのかと。

69: 2009/12/27(日) 22:42:04.18
そんなある日、唯先輩が放課後こなかった。
音楽室に行って聞いてみると学校自体を休んでいるみたいだった。
前も風邪で休んでいたことがあったので今回も風邪引いたのかなと思った。

紬「唯ちゃんったら今日のテスト休んじゃってだいじょうぶだったのかしら」

律「むしろ唯のやつそれで休んだんじゃないのか」

澪「いくらなんでもテストくらいで学校を休まないだろう」

紬「それにそんなことで休もうとしたら憂ちゃんにおこられちゃうわ」

72: 2009/12/27(日) 22:49:21.90
澪「そういえば梓、憂ちゃんはなにか言ってなかったのか?」

梓「熱っぽかったから休ませたそうですよ」

澪「そうか」

律「まあたまには欠席することくらいあるさ」

律「そのおかげで今日のお菓子は量が増えたし♪」

必要以上に特には誰も気にしていないようだし、私も特には気にしていなかった。
風邪が流行っているのか教室でもちらほらと空席が見えていた。

75: 2009/12/27(日) 22:53:34.92
~一週間後

ガチャッ
梓「こんにちはー」

律「おー」

紬「いらっしゃい」

梓「今日も唯先輩はきてないんですか?」

澪「ああ・・・もう一週間になるな」

律「流石に心配になってきたな 今日辺りお見舞いにでも行くか」

紬「私友達の家にお見舞いに行くの夢だったの」

澪「どんな夢だよ・・・」

78: 2009/12/27(日) 22:59:50.72
律「そういや憂ちゃんは何か言ってたか?」

梓「唯先輩の風邪が長引いてるとしか」

澪「あーやっぱり風邪か」

紬「最近流行っているわよね」

律「私たちも気をつけないとな~」

澪「そうそう他人事じゃないぞ 気をつけろよ梓」

梓「はい」

その日もいつも通りに練習をした。
ただやはり唯先輩がいない軽音部には活気がなく、活動を早々と切り上げてお見舞いに行くことにした。

80: 2009/12/27(日) 23:03:45.49
ピンポーン
憂「はーい」ガチャッ

梓「唯先輩のお見舞いに来ました」

律「唯のやつは大丈夫なのか?」

憂「お姉ちゃんは風邪ひいて寝込んでいます・・・」

澪「やっぱりそうか・・・」

澪「今唯が寝てるようならまた後日来ることにするけど今大丈夫そうか?」

憂「ちょっと待っててくださいね」

82: 2009/12/27(日) 23:07:25.14
憂「今起きていますのでみなさんお姉ちゃんに会ってあげてください」

律「ほいよ」

紬「お邪魔します」

憂「っとその前に」

梓「?」

憂「みなさんに風邪をうつしちゃいけないのでマスクとビニール手袋をどうぞ」

みんな「で、できた子だ」

84: 2009/12/27(日) 23:11:47.14
コンコン
憂「お姉ちゃん入るよー」ガチャッ

みんな「おじゃましまーす」

唯「おーみんなよく来たねぇ」ゴホゴホ

憂「それじゃあ私は下で家事続けてるね」

そこにはベッドに寝込んで入る唯先輩がいた。
机の上にはあまり箸が進んでいないお粥と封を来られた飲み薬の袋があった。
ふと私は力なく病床についている唯先輩を見て言いようの無い不安感に襲われた。

87: 2009/12/27(日) 23:15:37.33
律「ん? どうした梓、真っ青だぞ」

唯「ひょっとしてあずにゃんも風邪ひいてるの?」

そこで私は我に帰った。
いけないいけないとカブリを振って唯先輩を見つめた。

梓「いえ・・・なんでもありません」

律「それにしても唯が元気ないとどうも調子狂っちゃうよな~」

こんなのはとっさに出た言葉に過ぎない。
言いようの無い、得体の知れない不安感はまだまだ継続中だった。

89: 2009/12/27(日) 23:19:43.05
紬「唯ちゃんお見舞い品よ~」

律「うわー」

澪「これは」

梓「すごいですねぇ」

ムギ先輩がずっと袋に入れていたそれを取り出すと皆顔の色が変わった。
中から出てきたのはメロンだった。
まるまると大きく、完璧に熟しきっているであろうメロン。
きっと私たちが値段を聞けば氏に目にすら送るのをためらうほどの超高級品なんだろう。

92: 2009/12/27(日) 23:24:28.79
唯「おー」

唯先輩は目をキラキラさせて言葉を失っているほど感動している。
私たちですらあのメロンには心を奪われるほどなのだから甘いもの好きの唯先輩にはまるでお菓子の家のように魅力的すぎるのだろう。

唯「ムギちゃんありがとう!」

紬「いえいえ~」

唯「私今すぐ食べたいよっ」

唯「みんなで食べようよ!」

澪「だがこれは切る必要があるぞ」

律「それに私たちが帰ってからなら取り分が多くなるぞー」

唯「ううん、私はみんなといっしょに食べたいよ」

梓「それじゃあ私は憂に切ってもらうように言ってきます」

紬「お願いしますね」

私はそのずっしりとして身がつまっていることを全体で主張しているメロンをもって憂のところに行った。

94: 2009/12/27(日) 23:29:35.51
グスッ・・・ヒグッ・・・

少し歩いたあたりで誰かがすすり泣くような声が聞こえた。
しかも声は私が歩みを運ぶほどにより明瞭に聞こえるようになった。

梓「憂?」

私が声を掛けるとはっと息を飲み、立ち上がった気配を感じた。

憂「な、何梓ちゃん?」

梓「ムギ先輩が持ってきてくれたメロンを切ってもらおうと思って・・・」

憂「う、うん」

憂「うわぁ これは立派だね」

憂「待ってて、すぐに切って持っていくよ」

憂は私が声をかけてからはいつもと微塵も変わらない態度を見せた。
でも私は見落とさなかった。
憂の目は微かに赤くなっていた。

97: 2009/12/27(日) 23:34:30.41
梓「う、憂?」

憂「ちょっと待ってね、これ中身が詰まりすぎてて切るのに一苦労なの」

憂はそう言ったが、私は好奇心の抑制に勝てずに訪ねてしまった

梓「どうして」

梓「どうして泣いてたの?」

ストン

やけに無機質で大きな音が聞こえた。
どうやらメロンを両断することに成功したらしい。
まな板に打ち付けた音の大きさがそのメロンの立派さをそのまま表していた。
そして、憂は包丁を手に持ったそのままで私のほうを振り向いた。

98: 2009/12/27(日) 23:39:26.32
全身にゾワゾワという悪寒が走った。
これが猫ならば全身の毛を逆立てているのだろう。
それはまるで目の前に天敵が現れたみたいな感覚で・・・。

憂「私、泣いてなんかいないよ?」

憂「どうしてそういうこと言うの?」

いつもの明るく、姉バカの時はさらに嬉しそうになる声の憂とはまるでちがった。
まるで機械、私はそうとまで思ってしまった。
そこには一切の感情もなく、教科書の活字を読んでいるのとまるで変わらない感じがしたのだ。

99: 2009/12/27(日) 23:44:12.25
やばい、何か言わなくては。
そう思いつつもとっさに言葉が思いつかない。

憂「別に私普通でしょ?」

梓「うっ・・・普通じゃないよ!」

梓「何か心に刺さっていることがあるなら全部私に言って!」

梓「だって・・・私と憂は親友でしょ?」

梓「親友が苦しんでるなら役に立ちたいよ」

憂「っ!!」

憂の目に生気が戻ってきた。
ワナワナと体を震わせているが、そこには私の知る憂がいた。

102: 2009/12/27(日) 23:48:41.30
憂「・・・梓ちゃん」グスッ

梓「その前に憂ストーップ、まずはその手に持ってるものを話して」

憂「手?」

憂「! 私こんなの持ったままで!!」

憂「ごめん梓ちゃん!!」

憂は包丁を持っていることすら忘れていたようだった。
つまりは私を刺そうだなんて気は微塵もなくて。
・・・私の野生の勘はあてにならないな。

103: 2009/12/27(日) 23:52:47.68
梓「それでどうしたの憂?」

梓「とても切羽詰ってる感じがするよ」

憂「うん・・・」

梓「もしかして・・・唯先輩のこと?」

憂「!!」

露骨に反応した、どうやら当たりなようだ。

104: 2009/12/27(日) 23:56:33.19
梓「唯先輩のこと?」

憂「・・・うん」

蚊の鳴くような声で肯定の言葉を発したのを私は聞いた。
先程までとの機械のような様子から180度反転した様子。
今の憂は感情が溢れていた。

憂「あのね・・・あのね、お姉ちゃん実は・・・」

107: 2009/12/28(月) 00:01:40.93
憂の言葉を聞きながらようやく私は先程感じた不安感の正体に気づいた。

それは律先輩の言っていたことと同じこと。

しかし、律先輩は友達としてそう言っていたが私は違ったのだ。

だからこそ我が身のように焦り、我が身のように痛みを感じたのだ。

そう、私は本当は・・・。

108: 2009/12/28(月) 00:05:25.48
ガチャッ
梓「・・・」

律「おい遅いぞ」

律「唯のやつ寝ちゃったじゃないか」

唯「zzz」

梓「すみません・・・」

澪「起こしちゃ悪いしそろそろ帰るとするか」

110: 2009/12/28(月) 00:09:48.70
律「それじゃあおじゃましました」

紬「唯ちゃんが元気になることを祈ってるわ」

澪「なにかあったらすぐ連絡してくれ」

憂「みなさんありがとうございました」

梓「それじゃあね憂」

梓「あんまり一人で溜め込まないでね」ボソッ

帰り際、私は憂の耳元でそうつぶやいた。

111: 2009/12/28(月) 00:14:11.34
~夜

夕方聞いた憂からの真実。

それは私の心の九割に居座り続けた。

帰るときも、帰ってからも、ご飯を食べてる時も、お風呂に入っている時も。

その真実は私の心の大部分に訴えかけていた。

そして、私はベッドから天井を見上げながらある決心をした。

112: 2009/12/28(月) 00:18:22.25
~翌日の放課後

ガチャッ
梓「こんにちは」

律「おー」

紬「今日の紅茶は一味違うわよ~」

しかし、私はそんな二人には目もくれずにある人物の前まで足早に移動した。

梓「澪先輩、お話があります」

澪「何だ?」

梓「二人きりで話したいのでちょっと来て下さい」

114: 2009/12/28(月) 00:22:18.55
~空き教室

澪「どうしたんだ?」

澪「あ、もしかして週末どこに行こうかって話か?」

澪「だったら別に二人のいる前でも構わないのに」

梓「・・・澪先輩」

梓「あの、私・・・」

私がそれを告げようとしたとき、目の前にサッと手を出されて静止させられた。
そして彼女はこう言った。

115: 2009/12/28(月) 00:27:30.75
澪「私、さ 嬉しかったんだ」

澪「私たちが一年の時は律も唯も練習にはあまり乗り気じゃなくて私一人で空回りして部の空気を悪くしているのかななんて思っててさ」

澪「だから梓が入ってきてくれて私と同じようなことを言ってくれていた時」

澪「私の言っていたことは間違ってなかったんだ、私は正しかったんだって思えてさ」

澪「それからお前を意識するようになったんだ」

澪「私と梓は似ているなって」

澪「同じ考えを持つ仲間がいると、味方がいるとますます世界は彩り鮮やかになった気がしたんだ」

118: 2009/12/28(月) 00:31:21.98
梓「澪先輩・・・」

澪「実はな、梓」

梓「なんでしょう?」

澪「私はそのことを最初からわかっていたのかもしれないんだ」

梓「え・・・?」

澪「お前のことをずっと見ていたからかな」

澪「だから私はお前が誰を見ているのかがわかっていたんだよ」

119: 2009/12/28(月) 00:34:49.34
澪「それなのに、それなのに私はな」

澪「あの時の言葉に舞い上がっちゃってさ」

澪「同時に不安になったんだ」

澪「今を逃すともう永遠に梓を手に入れられないって」

澪「雰囲気を味方にして梓の気持ちを考えないで・・・私って最低だよな」

121: 2009/12/28(月) 00:38:54.96
梓「そんなことないです!」

澪「梓?」

梓「好きな人を手に入れようと努力したり偶然に乗っかったりするのは悪いことなんでしょうか?」

梓「それは程度の差はあれ誰もがすることじゃないんでしょうか?」

梓「例えば相手と自分しかいない放課後の教室の中、暖かい夕日の中で告白すること」

梓「例えば高層ビルの最上階でディナーをしながら窓の向こうに夜景が広がる中で告白すること」

梓「場所や状況を活かして持てる限り、考えつく限りの理想に近づけて告白することは誰でもやっています」

梓「それのどこが最低な行為なのでしょうか」

澪先輩に偉そうにそう言いながら私は半ば自動的に言い続けてる口を尻目にこう思った。
どの口がそれを言うのだ、と。

124: 2009/12/28(月) 00:42:40.18
澪「・・・行ってこい」

澪「律には私から言っておく」

梓「澪・・・先輩・・・?」

梓「でも・・・っ!」グスッ

澪「そんな顔をするな」

澪「私みたいな美少女をフってまで行くんだぞ?」

澪「それ相応の顔をしてくれないと私が困る」

梓「・・・はい!」

梓「・・・行ってきます」

澪「ああ、・・・行ってらっしゃい」

私は走った。
校則を無視し、明日までの宿題が入ってる鞄も無視し。
私は走った、ある人のいるところへ。

125: 2009/12/28(月) 00:46:40.34
『お姉ちゃんね、ただの風邪じゃなくて入院しなきゃいけないみたいなの。』

『なんでも免疫力が低下しているって・・・』

『風邪の治りが遅いなって病院に行ったらそう告げられて』

『だから免疫力が戻るまで学校に行けないの・・・』

『お姉ちゃんはみんなには言うなって』

『でも私・・・こんなの一人で耐えられないよ』ボロボロ

走りながら私の頭の中には昨日憂から聞かされた言葉が反芻していた。
そして、もしかしたら唯先輩がいなくなっちゃうと思ったとき、私は私の本当の気持ちに気づいたのだった。
我ながら鈍感だなと呆れたものだ。
そのせいで澪先輩を傷つけ、軽音部を巻き込んで。
それでも私は止まらない。

127: 2009/12/28(月) 00:49:43.39
澪「あーあフラれちゃったなー」

澪「・・・」

澪「・・・ヒッグ」

澪「・・・エッグ」ポロポロ

律「みーおーちゃん」ガバッ

澪「律・・・」

律「ほら、私の胸を貸してやるよ」

澪「え・・・?」

律「泣きたいときは泣けば良い 遠慮する必要なんてどこにもないんだ」

律「それにな、澪 お前のことを気にかけてるのは少なくとも一人はいるはずだぜ」

131: 2009/12/28(月) 00:53:28.89
私は走った。

決して近くはない学校から病院までの私はまるで風になったかのように走り続けた。

これほどまでに人間の体の限界を恨んだことはないだろう。

どうして光の速さで向かうことができないのか。

それでも私は走るしかない。

そこにはあの人がいるから。

そこには大切なものがあるから。

だから私はこの体躯を最大限まで酷使して走り続けた。

137: 2009/12/28(月) 00:57:37.93
梓「すみ・・・ません・・・ハァ、平沢・・・唯さんは・・・何号室・・・でしょうか?」

病院についた私は息も絶え絶えにフロントの看護婦さんに問いかけた。
看護婦さんはこんな様子の私を見て驚きの色を浮かべていたが、特に私のことに触れずに何号室か教えてくれた。
―――号室。
そこに唯先輩がいる。
そこに私が解決しなきゃいけない問題がある。

140: 2009/12/28(月) 01:00:56.65
ガラッ
梓「唯先輩!!!」

唯「わっ! ・・・あずにゃん!?」

四人部屋の、しかし三つのベッドは空白で唯先輩しかいないその部屋に私は飛び込んだ。
唯先輩は心の底から驚いていた。
唯先輩は誰にも言わないようにと口止めしていたのだ。
だから私が来ることなんて完全に予想外だったのだろう。

144: 2009/12/28(月) 01:04:56.13
唯「どっ、どうしてここに・・・?」

梓「憂が、教えてくれました」

梓「どうしてですか、どうして何も言ってくれなかったんですか!?」

唯「えっと・・・それは・・・」

梓「・・・わかっています」

梓「先輩は優しいですからね」

そして私は言った、魔法の言葉を。
あの時の昼から言いたかった言葉を。

梓「唯先輩、私は先輩のことが好きです!!!」

148: 2009/12/28(月) 01:08:35.04
唯「・・・ほぇっ?」

唯先輩は完全に面食らっていた。

唯「で、でもあずにゃんは澪ちゃんと付き合っていて・・・」

梓「澪先輩とは、別れたんです」

唯「えっ・・・?」

152: 2009/12/28(月) 01:13:17.79
梓「ひどいですよね私・・・澪先輩を傷つけて」

梓「それでも、私は唯先輩に伝えたかったんです」

梓「唯先輩に抱きつかれていたとき、あの時は気づきませんでしたが私は嬉しかったんです」

梓「失って初めて気づいた大切さってやつなんでしょうか」

梓「それに・・・最後のひと押しをしてくれたのは澪先輩なんです」

梓「もう一度言います 私は唯先輩のことが大好きです」

唯「・・・あずにゃん」

154: 2009/12/28(月) 01:17:33.53
唯「私は弱い人間だよ」

唯「憂になんでも任せちゃうような人間だよ?」

唯「ご飯の前にアイス食べるような悪い子だし、頭だって良くない」

唯「人の気持ちをくめないときだってあるし、ひとつのものに熱中しちゃうと他のことに目がいかなくなっちゃう」

唯「こんな欠点だらけの私だよ?」

梓「私は唯先輩のすべてが好きなんです」

梓「そんなことは大した問題じゃありません」

唯「・・・あずにゃん」グスッ

唯「私も、私もあずにゃんのことが大好きだよ!!」

157: 2009/12/28(月) 01:22:27.76
唯「ずっと・・・ずっと大好きだったんだよ・・・!」

梓「先輩・・・」

梓「それでは・・・その、付き合ってください!」

唯「えへへ 私のほうこそ付き合ってください」

梓「ふふ」

唯「えへ」

そして私たちはキスをした。
免疫力が低下しているので直接ではなくてサランラップごしだったけれど。
それでも、確かにそれは本物のキスだった。
ちなみになんでサランラップがあったのかと聞くと、憂が果物を切りすぎちゃうために持ってきていたそうだ。

158: 2009/12/28(月) 01:29:13.05
唯「ねえあずにゃん」

梓「なんでしょう?」

唯「直接キスはだめでも抱きつくだけならいいよね?」ギュッ

梓「・・・っ///」

これだ、これが私が求めていたものだったのだ。
鼻腔をくすぐる唯先輩の甘い匂い。
全身を抱かれていることで得る安心感。
大好きな人が目の前にいることでもらう力。
そして私は再び言った。

梓「唯先輩大好きです!」

160: 2009/12/28(月) 01:34:28.23
これが独白と想起の終了。

あれからいろいろなことがあったがここでは割愛させてもらおう。

当時高校一年だった私は三年たって現在大学一年生となった。

高校を卒業し少し遠い音楽学校へと進路を進めた。

両親からは女の子の一人暮らしなんて危険だと反対され、私のように遠くから来る者のために学校が所有している共同生活用の物件を借りることになった。

私は二人部屋のルームシェアを利用していて、今はその相手はまだ帰っていなく私一人だった。

161: 2009/12/28(月) 01:37:42.21
私はふとカレンダーを見た。

この卓上カレンダーは私のではなく同居人のものだった。

それが置かれている机の上は小物などが散らばっていて整理している様子がない。

―そういえば今日が唯先輩が入院した日だったな。

ふと暦を見ながらそう思った。

162: 2009/12/28(月) 01:41:32.60
時間と言うのは一度過ぎたら決して戻らない。

ただ、私は時間をどう過ごそうと行き着く先の運命は同じなんだと思う。

それは人間は必ず氏からは逃れられないように。

運命の相手もどのパラレルワールドに行ったとしても変わらないのだと思う。

時計は巻き戻らないし覆水は盆に帰らない。

しかし、結局は同じことなのだ。

時計が巻き戻ろうが巻き戻らなかろうが運命は変わらない、運命の相手も変わらない。

だって神様が時間ごときに縛られるワケが無いじゃないか。

164: 2009/12/28(月) 01:45:24.32
ガチャリ
ようやく同居人が帰ってきたようだ。

唯「たっだいま~」

梓「おかえり」

唯「えへへ、何を渡そうか迷っちゃって」

梓「まったくもう プレゼントなんかより唯と少しでも長くいたいのに」

唯「ごめんね~」

そう、入院してから三年目ということは今日が付き合って三年目ということでもある。
今日は私たちの記念日だ。
だから私はこう言おう。
陳腐でありきたりなセリフ、だけどとても暖かい言葉。

梓「唯、大好き!」

~fin~

166: 2009/12/28(月) 01:48:04.33
というわけで終わりです
付き合ってくれた人どうもありがとう
ちなみに唯は深刻な病気などではないです ちょっとバランスが崩れちゃった程度のつもりです
そのあたりを澪語り手の後日談的にして言わせようとしたけど上手く文章がつながらなくて削りましたw
それじゃあお疲れーノシ

167: 2009/12/28(月) 01:48:28.75

168: 2009/12/28(月) 01:50:07.88
なんだ凄い重い病気なんじゃないかと心配してたぜw

引用元: 梓「唯先輩が大好きです!」