693: 2015/06/07(日) 01:22:20.53
ほむら「ゲッターロボ!」 第八話
あの日・・・
私は、強大な力で灰燼と帰そうとしている見滝原の街にいた。
空に浮かぶは、異形の巨大な魔女。
私たち魔法少女が「ワルプルギスの夜」と呼んで恐れる、最強最悪の魔女。
奴が災厄を見滝原にまき散らすために、やってきたのだ。
・・・戦わなければならない。
たとえ勝てなくとも。
覚悟を決めてワルプルギスへと挑もうとした、まさにその時。
希望は突如として現れたのだ。
私は、強大な力で灰燼と帰そうとしている見滝原の街にいた。
空に浮かぶは、異形の巨大な魔女。
私たち魔法少女が「ワルプルギスの夜」と呼んで恐れる、最強最悪の魔女。
奴が災厄を見滝原にまき散らすために、やってきたのだ。
・・・戦わなければならない。
たとえ勝てなくとも。
覚悟を決めてワルプルギスへと挑もうとした、まさにその時。
希望は突如として現れたのだ。
695: 2015/06/07(日) 01:24:55.12
それは真紅に輝く身体を持った、一体の巨人。
突然上空に現れたそれは、ワルプルギスにも引けを取らない体躯をものともせず、猛烈なスピードで魔女へと向かっていった。
やがて繰り広げられる、激しい空中戦。
私は、その時。
ただ、ただ・・・圧倒されてしまって・・・
その戦いの帰趨を、地上から見守ることしかできなかった。
ただ一つ。
分かった事があった。
あの巨人は、味方なのだと。
父が愛した、この街を守ってくれる希望なのだと。
突然上空に現れたそれは、ワルプルギスにも引けを取らない体躯をものともせず、猛烈なスピードで魔女へと向かっていった。
やがて繰り広げられる、激しい空中戦。
私は、その時。
ただ、ただ・・・圧倒されてしまって・・・
その戦いの帰趨を、地上から見守ることしかできなかった。
ただ一つ。
分かった事があった。
あの巨人は、味方なのだと。
父が愛した、この街を守ってくれる希望なのだと。
696: 2015/06/07(日) 01:26:53.92
そして・・・
戦いは終わった。
戦いに敗れ、その存在を抹消されたのは、ワルプルギスの夜の方だった。
助かった!救われた!
私は歓喜の叫びを上げずにはいられなかった。
あの巨人が何者なのかはわからない。
魔女の一種なのか、魔法少女の使う魔法の一つなのか。
はたまた、私の想像の及ばない、もっと他の何かなのか。
だけれど。
そんな事は、私にとっては些細なことでしかなかった。
重要なのはただ一点。
あの巨人が、見滝原を救った救世主であるということのみ。
・・・本気で、そう思っていた。
新たな脅威が、突如として現れるまでは。
戦いは終わった。
戦いに敗れ、その存在を抹消されたのは、ワルプルギスの夜の方だった。
助かった!救われた!
私は歓喜の叫びを上げずにはいられなかった。
あの巨人が何者なのかはわからない。
魔女の一種なのか、魔法少女の使う魔法の一つなのか。
はたまた、私の想像の及ばない、もっと他の何かなのか。
だけれど。
そんな事は、私にとっては些細なことでしかなかった。
重要なのはただ一点。
あの巨人が、見滝原を救った救世主であるということのみ。
・・・本気で、そう思っていた。
新たな脅威が、突如として現れるまでは。
697: 2015/06/07(日) 01:29:03.97
そう、その力は、そして姿は、何としても形容しがたい。
まるでワルプルギス程度、その者の前では単なる前座の役割しか与えられていなかったのだ、と。
そこまで思えてしまうほどに。
そして、再び。
・・・殺戮と破壊が始まった。
せっかくワルプルギスの災禍を免れた見滝原の街が、人が。
災いの下に形と命を失っていく。
私は叫んだ。
やめて、と。父の願いが眠るこの街を、壊さないでと。
まるでワルプルギス程度、その者の前では単なる前座の役割しか与えられていなかったのだ、と。
そこまで思えてしまうほどに。
そして、再び。
・・・殺戮と破壊が始まった。
せっかくワルプルギスの災禍を免れた見滝原の街が、人が。
災いの下に形と命を失っていく。
私は叫んだ。
やめて、と。父の願いが眠るこの街を、壊さないでと。
698: 2015/06/07(日) 01:30:33.15
・・・そして。
私は願った。
助けてと。
ワルプルギスを撃退したと同じように、新たな災いも排除してくださいと。
真紅の巨人に願ったわ。
だけれど・・・
私の願いは・・・
・・・
・・・届かなかった。
私は願った。
助けてと。
ワルプルギスを撃退したと同じように、新たな災いも排除してくださいと。
真紅の巨人に願ったわ。
だけれど・・・
私の願いは・・・
・・・
・・・届かなかった。
699: 2015/06/07(日) 01:33:46.04
・・・
・・・
織莉子 「・・・私の能力は、未来を見ること。いつもは暫定的な未来しか見えないのだけれど、この時だけはずいぶん具体的に未来を見ることができたわ」
ほむら 「・・・」
織莉子 「予知の中で見た、真紅の巨人。あれがロボットでゲッターロボという名前だというのは、しばらくしてからキュウべぇから聞かされた」
竜馬 「乗っているのが、俺たちだということも、だな」
織莉子 「ええ」
竜馬 「それで、お前の願いが叶えられなかったとは?その事が、俺たちが卑怯者呼ばわりされる事に、どう関わりが?」
織莉子 「・・・逃げたのよ、あなたたち」
軽蔑の色を濃くにじませた瞳で、織莉子が私たちを睨み付けた。
逃げた・・・?
・・・
織莉子 「・・・私の能力は、未来を見ること。いつもは暫定的な未来しか見えないのだけれど、この時だけはずいぶん具体的に未来を見ることができたわ」
ほむら 「・・・」
織莉子 「予知の中で見た、真紅の巨人。あれがロボットでゲッターロボという名前だというのは、しばらくしてからキュウべぇから聞かされた」
竜馬 「乗っているのが、俺たちだということも、だな」
織莉子 「ええ」
竜馬 「それで、お前の願いが叶えられなかったとは?その事が、俺たちが卑怯者呼ばわりされる事に、どう関わりが?」
織莉子 「・・・逃げたのよ、あなたたち」
軽蔑の色を濃くにじませた瞳で、織莉子が私たちを睨み付けた。
逃げた・・・?
700: 2015/06/07(日) 01:37:28.13
竜馬 「俺たちが、敵を目の前にして、しっぽを巻いて逃げたと?」
織莉子 「そうよ。だから、ああ呼んだのよ?あなたたちに相応しい呼び名で、卑怯者、と」
杏子 「おいおい・・・あいつの言ってること、本当なのかよ」
ほむら 「・・・」
織莉子 「あなたたちが卑怯なふるまいをした結果、見滝原は壊滅。私の喜びは、ぬか喜びに終わったと、そういうわけ」
武蔵 「馬鹿な!そんなわけないだろう!」
織莉子の言葉に、武蔵が噛みつく。
武蔵 「敵がどんなに強大であれ、マミちゃんたちが住む街を俺たちが、守るのを放棄して逃げ出すなんて、そんな事あるはずがないだろう!」
マミ 「お兄ちゃん・・・」
竜馬 「その通りだな。言ったはずだぜ、俺たちの中に卑怯者なんざいない、とな。一度敵に背を向けて逃げたら、そいつはもう一生、負け犬だ」
織莉子 「・・・」
竜馬 「そんな生きざま、俺はまっぴらごめんだぜ」
織莉子 「そうよ。だから、ああ呼んだのよ?あなたたちに相応しい呼び名で、卑怯者、と」
杏子 「おいおい・・・あいつの言ってること、本当なのかよ」
ほむら 「・・・」
織莉子 「あなたたちが卑怯なふるまいをした結果、見滝原は壊滅。私の喜びは、ぬか喜びに終わったと、そういうわけ」
武蔵 「馬鹿な!そんなわけないだろう!」
織莉子の言葉に、武蔵が噛みつく。
武蔵 「敵がどんなに強大であれ、マミちゃんたちが住む街を俺たちが、守るのを放棄して逃げ出すなんて、そんな事あるはずがないだろう!」
マミ 「お兄ちゃん・・・」
竜馬 「その通りだな。言ったはずだぜ、俺たちの中に卑怯者なんざいない、とな。一度敵に背を向けて逃げたら、そいつはもう一生、負け犬だ」
織莉子 「・・・」
竜馬 「そんな生きざま、俺はまっぴらごめんだぜ」
701: 2015/06/07(日) 01:41:09.09
キリカ 「なんだよ!じゃあ、織莉子が嘘を言ってるっていうのか!?」
竜馬 「そうじゃない。ただ、お前の未来予知は完ぺきではないのだろう?」
織莉子 「・・・?」
竜馬 「必ず、見た通りの未来になる。そうであったなら、お前が未来を変えようとゲッターを奪うなんてマネ、するはずがない」
織莉子 「驚いた。脳筋タイプかと思ったら、意外に頭が回るのね」
竜馬 「何とでも言え。ただ、断言してやるぜ。今回ばかりは、お前の予知は当たらない。なぜなら俺たちは、絶対に逃げないからだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「だろう、暁美」
ほむら 「・・・」
竜馬 「そうじゃない。ただ、お前の未来予知は完ぺきではないのだろう?」
織莉子 「・・・?」
竜馬 「必ず、見た通りの未来になる。そうであったなら、お前が未来を変えようとゲッターを奪うなんてマネ、するはずがない」
織莉子 「驚いた。脳筋タイプかと思ったら、意外に頭が回るのね」
竜馬 「何とでも言え。ただ、断言してやるぜ。今回ばかりは、お前の予知は当たらない。なぜなら俺たちは、絶対に逃げないからだ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「だろう、暁美」
ほむら 「・・・」
702: 2015/06/07(日) 01:43:24.40
・・・織莉子の見た未来の世界では、何らかの要因によってまどかは魔女化してしまったのだろう。
それを見た私が、その時間軸をあきらめ、今までと同様に時間をループさせた。
私も乗っていたはずの、ゲッターロボ、もろともに。
そんな未来を予知したのなら、ゲッターロボが逃げ出したのだと織莉子に解釈されるのも仕方がない。
・・・いや。
織莉子にとっては、紛れもない事実、か。
ほむら 「・・・」
竜馬 「暁美・・・?」
それを見た私が、その時間軸をあきらめ、今までと同様に時間をループさせた。
私も乗っていたはずの、ゲッターロボ、もろともに。
そんな未来を予知したのなら、ゲッターロボが逃げ出したのだと織莉子に解釈されるのも仕方がない。
・・・いや。
織莉子にとっては、紛れもない事実、か。
ほむら 「・・・」
竜馬 「暁美・・・?」
703: 2015/06/07(日) 01:45:27.45
織莉子 「暁美さんは、否定ができないようね」
ほむら 「そうね。だけれど・・・」
それは、まどかが魔女化してしまったらという場合の話。
そんな未来、私は認めないし、現実にさせるつもりもない。
この時間軸の事を、私は絶対に諦めたくはない!
ほむら 「あなたの未来予測は外れるわ。ゲッターがワルプルギスを倒した時点で、この見滝原は救われる。その後の災いも現れやしない」
織莉子 「・・・」
ほむら 「そして、それを成し遂げるのは私たちよ」
織莉子 「なぜ、そう言い切れるの?」
ほむら 「・・・」
織莉子 「あなたはどれだけの時間軸をループしてきたの?いったいどれだけの時間軸を見捨ててきたの?」
ほむら 「え・・・」
ほむら 「そうね。だけれど・・・」
それは、まどかが魔女化してしまったらという場合の話。
そんな未来、私は認めないし、現実にさせるつもりもない。
この時間軸の事を、私は絶対に諦めたくはない!
ほむら 「あなたの未来予測は外れるわ。ゲッターがワルプルギスを倒した時点で、この見滝原は救われる。その後の災いも現れやしない」
織莉子 「・・・」
ほむら 「そして、それを成し遂げるのは私たちよ」
織莉子 「なぜ、そう言い切れるの?」
ほむら 「・・・」
織莉子 「あなたはどれだけの時間軸をループしてきたの?いったいどれだけの時間軸を見捨ててきたの?」
ほむら 「え・・・」
704: 2015/06/07(日) 01:48:29.07
織莉子 「どれだけの見滝原に住む人々を、見頃しにしてきたの?」
ほむら 「そ、それは・・・」
竜馬 「・・・おい、いい加減にしろよ」
織莉子 「そのような人の、のたまい事。信用するに値しないわね。ただ、それだけの話」
仁美 「お判りでしょう、暁美さん。あなた方に美樹さんと上条君が生きるこの街を、任せることはできない。で、あるならば」
キリカ 「戦える者が、戦うための力を持つ。至極、まっとう」
ほむら 「・・・くっ」
まどかの事を織莉子たちに話せない以上、言葉で彼女たちを納得させる術がない。
ほむら 「そ、それは・・・」
竜馬 「・・・おい、いい加減にしろよ」
織莉子 「そのような人の、のたまい事。信用するに値しないわね。ただ、それだけの話」
仁美 「お判りでしょう、暁美さん。あなた方に美樹さんと上条君が生きるこの街を、任せることはできない。で、あるならば」
キリカ 「戦える者が、戦うための力を持つ。至極、まっとう」
ほむら 「・・・くっ」
まどかの事を織莉子たちに話せない以上、言葉で彼女たちを納得させる術がない。
705: 2015/06/07(日) 01:50:11.20
どうやってこの場を切り抜けるべきか。
せめて、私の手を取っている仁美を振り切れれば、何とかできるかもしれないのに・・・
織莉子 「話はこれまで・・・」
織莉子は一方的に話を打ち切ると、スッと・・・
物音ひとつ立てずに、滑るように私の横まで歩み寄ってきた。
私を挟んで、仁美と反対側へと立つ織莉子。
ほむら 「な、なに・・・?」
織莉子 「ふふっ」
軽く笑うと、彼女は私の手を取り、そっと握った。
ほむら 「・・・?」
せめて、私の手を取っている仁美を振り切れれば、何とかできるかもしれないのに・・・
織莉子 「話はこれまで・・・」
織莉子は一方的に話を打ち切ると、スッと・・・
物音ひとつ立てずに、滑るように私の横まで歩み寄ってきた。
私を挟んで、仁美と反対側へと立つ織莉子。
ほむら 「な、なに・・・?」
織莉子 「ふふっ」
軽く笑うと、彼女は私の手を取り、そっと握った。
ほむら 「・・・?」
706: 2015/06/07(日) 01:52:32.15
織莉子 「仁美さん、暁美さんのお目付け役、お疲れ様。交代の時間ね。さ、あなたは打ち合わせの通りに」
仁美 「心得ていますわ」
織莉子と入れ替わるように、私のそばを離れる仁美。
ほむら 「何を考えているの?」
織莉子 「ゲッターロボを出しなさい」
ほむら 「!?」
織莉子 「出さねば、巴マミのソウルジェムを砕かなくてはいけなくなる」
ほむら 「なぜ、わざわざ入れ替わって・・・志筑仁美に何をさせるつもり!?」
織莉子 「予知能力の発動を制御できない私では、不都合があったから彼女とキリカにお願いすることにしたの」
ほむら 「分かるように言って!」
織莉子 「ゲッターを渡せば、わかる」
ほむら 「・・・っ」
仁美 「心得ていますわ」
織莉子と入れ替わるように、私のそばを離れる仁美。
ほむら 「何を考えているの?」
織莉子 「ゲッターロボを出しなさい」
ほむら 「!?」
織莉子 「出さねば、巴マミのソウルジェムを砕かなくてはいけなくなる」
ほむら 「なぜ、わざわざ入れ替わって・・・志筑仁美に何をさせるつもり!?」
織莉子 「予知能力の発動を制御できない私では、不都合があったから彼女とキリカにお願いすることにしたの」
ほむら 「分かるように言って!」
織莉子 「ゲッターを渡せば、わかる」
ほむら 「・・・っ」
707: 2015/06/07(日) 01:54:31.58
織莉子 「流竜馬」
竜馬 「・・・なんだ?」
織莉子 「あなたもゲッターに乗ってもらうわ」
ほむら 「え・・・っ?」
杏子 「こ、こいつ・・・いったい何を考えてやがるんだ」
武蔵 「なぜわざわざ、奴らにとって危険な真似を、あえてしようとしているんだ・・・?」
竜馬 「・・・理由は?」
織莉子 「単純な話。ゲッターロボの動かし方を私たちは教わらなくてはいけない。ゲッターは三人乗りなのでしょう?だから一機には流さんに乗ってもらうわ」
キリカ 「残りには、私たちが乗らせてもらうよ」
竜馬 「・・・理にはかなっているな」
ほむら (だけれど、それだけとは思えない・・・)
竜馬 「・・・なんだ?」
織莉子 「あなたもゲッターに乗ってもらうわ」
ほむら 「え・・・っ?」
杏子 「こ、こいつ・・・いったい何を考えてやがるんだ」
武蔵 「なぜわざわざ、奴らにとって危険な真似を、あえてしようとしているんだ・・・?」
竜馬 「・・・理由は?」
織莉子 「単純な話。ゲッターロボの動かし方を私たちは教わらなくてはいけない。ゲッターは三人乗りなのでしょう?だから一機には流さんに乗ってもらうわ」
キリカ 「残りには、私たちが乗らせてもらうよ」
竜馬 「・・・理にはかなっているな」
ほむら (だけれど、それだけとは思えない・・・)
708: 2015/06/07(日) 01:56:07.60
織莉子 「元より、あなたに拒否権はないわ。お友達の、大切な妹を犠牲にしても良いというなら、話は別だけれど」
マミ 「ご、ごめんなさい」
武蔵 「りょ、リョウ・・・」
竜馬 「分かってる、分かってるさ。今はお前らに従おう。暁美、とりあえずはそれで良いな」
ほむら 「そうするしかないものね。でも、リョウ・・・それで良いの?」
ゲッターロボのパイロットであることに無上の誇りを持っている竜馬。
人質を取られているとはいえ、彼があっさり織莉子の要求を受け入れたのは意外だった。
竜馬 (並の人間に乗りこなせるほど、ゲッターロボは甘くない)
織莉子 「何か言った?」
竜馬 「いーや、別に。じゃ、とっとと始めるが、巴マミの命の保証はしてくれるんだろうな」
織莉子 「彼女の命を奪うことが目的ではないもの。ゲッターロボを受け取ったなら、きちんと解放してあげるわ」
竜馬 「・・・暁美」
竜馬が振り向いて、私にうなずいて見せる。
今は従うほかはない。
私はバックラーに念を送る。
程なくして、魔女の結界内にゲッターロボが実体化した。
マミ 「ご、ごめんなさい」
武蔵 「りょ、リョウ・・・」
竜馬 「分かってる、分かってるさ。今はお前らに従おう。暁美、とりあえずはそれで良いな」
ほむら 「そうするしかないものね。でも、リョウ・・・それで良いの?」
ゲッターロボのパイロットであることに無上の誇りを持っている竜馬。
人質を取られているとはいえ、彼があっさり織莉子の要求を受け入れたのは意外だった。
竜馬 (並の人間に乗りこなせるほど、ゲッターロボは甘くない)
織莉子 「何か言った?」
竜馬 「いーや、別に。じゃ、とっとと始めるが、巴マミの命の保証はしてくれるんだろうな」
織莉子 「彼女の命を奪うことが目的ではないもの。ゲッターロボを受け取ったなら、きちんと解放してあげるわ」
竜馬 「・・・暁美」
竜馬が振り向いて、私にうなずいて見せる。
今は従うほかはない。
私はバックラーに念を送る。
程なくして、魔女の結界内にゲッターロボが実体化した。
709: 2015/06/07(日) 01:57:02.26
キリカ 「うわっ、本当に出た!」
仁美 「なんて巨大な・・・」
A子たち 「わーわーきゃーきゃー」
織莉子の取り巻きたちが驚嘆の声を上げる中で、ただ一人。
織莉子 「・・・」
美国織莉子のみが、複雑な表情でゲッターロボを見上げていた。
どこか悲痛な、先ほど私たちを睨み付けた時とは、まるで別人のような眼差しで。
ほむら (予知の中でとはいえ、一度ゲッターを目にしている彼女なら、他の子たちと感じ方も違うのは当然か・・・)
織莉子 「では、まずは流さん。あなたから乗って下さい」
竜馬 「了解だ」
キュウべぇ 「ちょっと待ってよ」
どこから湧いて出たのか、竜馬の足元にはいつの間にやら、キュウべぇが佇んでいた。
竜馬 「お前は本当に、ボウフラのような奴だな」
キュウべぇ 「僕も竜馬と同行させてもらうよ」
竜馬 「なに言ってるんだ、お前」
キュウべぇ 「僕にも役割というものがあってね。ねぇ、織莉子」
織莉子 「そうね」
仁美 「なんて巨大な・・・」
A子たち 「わーわーきゃーきゃー」
織莉子の取り巻きたちが驚嘆の声を上げる中で、ただ一人。
織莉子 「・・・」
美国織莉子のみが、複雑な表情でゲッターロボを見上げていた。
どこか悲痛な、先ほど私たちを睨み付けた時とは、まるで別人のような眼差しで。
ほむら (予知の中でとはいえ、一度ゲッターを目にしている彼女なら、他の子たちと感じ方も違うのは当然か・・・)
織莉子 「では、まずは流さん。あなたから乗って下さい」
竜馬 「了解だ」
キュウべぇ 「ちょっと待ってよ」
どこから湧いて出たのか、竜馬の足元にはいつの間にやら、キュウべぇが佇んでいた。
竜馬 「お前は本当に、ボウフラのような奴だな」
キュウべぇ 「僕も竜馬と同行させてもらうよ」
竜馬 「なに言ってるんだ、お前」
キュウべぇ 「僕にも役割というものがあってね。ねぇ、織莉子」
織莉子 「そうね」
710: 2015/06/07(日) 01:58:56.24
竜馬 「美国が絡んでるなら、俺に断われるはずもない。好きにしたが良いさ」
キュウべぇ 「それじゃ、よいしょっと」
キュウべぇはひょいっと飛び上がると、竜馬の肩先に落ち着いた。
まるでアニメのマスコットキャラのように、竜馬の肩に乗っかってゲッターに乗り込むつもりのようだ。
竜馬 「なれなれしいな、お前」
キュウべぇ 「しばらくの間、よろしく頼むよ。竜馬」
竜馬 「・・・」
織莉子 「彼がゲッターロボに乗り込んだら、こちらも順次、乗り込みにかかるわよ」
キュウべぇ 「それじゃ、よいしょっと」
キュウべぇはひょいっと飛び上がると、竜馬の肩先に落ち着いた。
まるでアニメのマスコットキャラのように、竜馬の肩に乗っかってゲッターに乗り込むつもりのようだ。
竜馬 「なれなれしいな、お前」
キュウべぇ 「しばらくの間、よろしく頼むよ。竜馬」
竜馬 「・・・」
織莉子 「彼がゲッターロボに乗り込んだら、こちらも順次、乗り込みにかかるわよ」
719: 2015/06/08(月) 00:06:35.50
・・・
・・・
かくして・・・
竜馬に引き続いて、織莉子の指名を受けた彼女の取り巻きたちが、ゲッターロボへと乗り込んでいった。
白羽の矢をたてられたのは予想通り、織莉子の腹心ともいうべき呉キリカと志筑仁美。
そして・・・
新米魔法少女の中からも、4人が選ばれて、キリカ達とともにジャガー号とベアー号に分乗して行った。
つまり、ジャガー号とベアー号にはそれぞれ、3人づつの魔法少女が乗っていることになる。
ほむら 「一人乗りに無理やり3人も乗り込ませるなんて、人口過多も大概だわね・・・」
武蔵 「まぁ、前例が無いわけじゃない。俺が初めてゲッターに乗った時も、狭いイーグル号の中に3人がすし詰め状態だったからな」
ほむら 「リョウと武蔵さんと・・・隼人さん?」
・・・
かくして・・・
竜馬に引き続いて、織莉子の指名を受けた彼女の取り巻きたちが、ゲッターロボへと乗り込んでいった。
白羽の矢をたてられたのは予想通り、織莉子の腹心ともいうべき呉キリカと志筑仁美。
そして・・・
新米魔法少女の中からも、4人が選ばれて、キリカ達とともにジャガー号とベアー号に分乗して行った。
つまり、ジャガー号とベアー号にはそれぞれ、3人づつの魔法少女が乗っていることになる。
ほむら 「一人乗りに無理やり3人も乗り込ませるなんて、人口過多も大概だわね・・・」
武蔵 「まぁ、前例が無いわけじゃない。俺が初めてゲッターに乗った時も、狭いイーグル号の中に3人がすし詰め状態だったからな」
ほむら 「リョウと武蔵さんと・・・隼人さん?」
720: 2015/06/08(月) 00:09:26.35
武蔵 「いや、俺とリョウと、あとは原始人だ」
杏子 「はぁ、ナニソレ」
武蔵 「胸糞悪い事件で、あまり細かいことは話したくないんだが、とにかく図体のでかい男でも3人くらいは、無理をすれば乗れるって話だ」
ゆま 「見た目とおんなじ、中もおっきいんだね!」
武蔵 「もっとも、シートに座れるのは一人だけだ。残りの二人は、体を支えることもできず、機内を転がりまわることになるけどな」
織莉子 「心配はご無用よ。私たちは魔法少女。魔法の障壁を張って、身体を守ることくらい、なんてことはないもの」
武蔵 「そうかい」
ほむら 「だけれど、どうしてあんな無茶を?」
織莉子 「・・・ゲッターロボに乗るのにも、慣れが必要でしょう?」
ほむら 「そうね」
杏子 「はぁ、ナニソレ」
武蔵 「胸糞悪い事件で、あまり細かいことは話したくないんだが、とにかく図体のでかい男でも3人くらいは、無理をすれば乗れるって話だ」
ゆま 「見た目とおんなじ、中もおっきいんだね!」
武蔵 「もっとも、シートに座れるのは一人だけだ。残りの二人は、体を支えることもできず、機内を転がりまわることになるけどな」
織莉子 「心配はご無用よ。私たちは魔法少女。魔法の障壁を張って、身体を守ることくらい、なんてことはないもの」
武蔵 「そうかい」
ほむら 「だけれど、どうしてあんな無茶を?」
織莉子 「・・・ゲッターロボに乗るのにも、慣れが必要でしょう?」
ほむら 「そうね」
721: 2015/06/08(月) 00:12:17.87
織莉子 「ワルプルギス襲来まで、あと一週間。私たちには時間がない。ゲッターに慣れる事一つをとっても、効率の良い方法を選ばなければならないの」
ほむら 「それで、いっぺんに複数の仲間を、ゲッターに乗り込ませた。そういうのね」
織莉子 「ええ」
ほむら (嘘を言っている・・・)
確信はないけれど、私は織莉子の言葉の中にまやかしの色が含まれていることを感じ取っていた。
だけれど、それは何のための嘘なのか。
そこまで掴み取れるほど、私は織莉子の心の内を知り抜いているわけじゃない。
ほむら 「それで、いっぺんに複数の仲間を、ゲッターに乗り込ませた。そういうのね」
織莉子 「ええ」
ほむら (嘘を言っている・・・)
確信はないけれど、私は織莉子の言葉の中にまやかしの色が含まれていることを感じ取っていた。
だけれど、それは何のための嘘なのか。
そこまで掴み取れるほど、私は織莉子の心の内を知り抜いているわけじゃない。
722: 2015/06/08(月) 00:15:40.15
ただ、一つ言えることは。
A子 「良いなぁー。私もロボット乗ってみたかったよ」
B子 「順番だもの、仕方がないわ。私たちは次の機会に乗ればいいのだし。ねぇ、C子」
C子 「そうだね!」
居残って、マミのソウルジェムに三人がかりで武器を突き付けている魔法少女たち。
彼女たちも、織莉子の語った説明を、寸分うたがわずに信じている様子だという事。
ほむら (何を考えているの・・・美国織莉子)
織莉子の心の内も、そして現在のゲッターロボの中で、どんな会話が交わされているのかも。
外側にいる私には、うかがい知る事などできるはずもなかった。
A子 「良いなぁー。私もロボット乗ってみたかったよ」
B子 「順番だもの、仕方がないわ。私たちは次の機会に乗ればいいのだし。ねぇ、C子」
C子 「そうだね!」
居残って、マミのソウルジェムに三人がかりで武器を突き付けている魔法少女たち。
彼女たちも、織莉子の語った説明を、寸分うたがわずに信じている様子だという事。
ほむら (何を考えているの・・・美国織莉子)
織莉子の心の内も、そして現在のゲッターロボの中で、どんな会話が交わされているのかも。
外側にいる私には、うかがい知る事などできるはずもなかった。
723: 2015/06/08(月) 00:17:03.44
・・・
・・・
竜馬 「おい、お前ら」
イーグル号のコクピットから、竜馬は通信機で他の二機に語りかけていた。
竜馬 「分かっていると思うが、ゲッターはどういうわけか魔法少女の魔力をエネルギーとしている。そこら辺、対策はしているんだろうな」
仁美 「問題ありませんわ」
即座にベアー号の仁美から返事があった。
仁美 「魔力補給用のグリーフシードは持って来ています。心配には及びませんわ」
竜馬 (なら、良いがよ。ゲッターの中で魔女化なんて事態だけは、まっぴらごめんだからな)
キリカ 「織莉子には全て分かっている事さ」
こちらはジャガー号に乗り込んでいる、呉キリカだ。
キリカ 「君は余計な心配なんかしないで、私たちの言うとおりにしていれば良いんだよ」
・・・
竜馬 「おい、お前ら」
イーグル号のコクピットから、竜馬は通信機で他の二機に語りかけていた。
竜馬 「分かっていると思うが、ゲッターはどういうわけか魔法少女の魔力をエネルギーとしている。そこら辺、対策はしているんだろうな」
仁美 「問題ありませんわ」
即座にベアー号の仁美から返事があった。
仁美 「魔力補給用のグリーフシードは持って来ています。心配には及びませんわ」
竜馬 (なら、良いがよ。ゲッターの中で魔女化なんて事態だけは、まっぴらごめんだからな)
キリカ 「織莉子には全て分かっている事さ」
こちらはジャガー号に乗り込んでいる、呉キリカだ。
キリカ 「君は余計な心配なんかしないで、私たちの言うとおりにしていれば良いんだよ」
724: 2015/06/08(月) 00:19:41.67
竜馬 「そうかよ。なら、俺はこれから何をすればいいんだ」
キリカ 「そうだね。まずは適当にこの空間内を動いてもらおうかな」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「その様子を僕が見ているよ。ゲッターの操縦法を僕が記憶して、あとで織莉子たちにビジョンとして見せる」
竜馬 「なるほど、それがお前の役割か。生きたマニュアルってわけだ」
キュウべぇ 「便利だろう?」
竜馬 「・・・」
言われたとおり、竜馬はゲッターで広場内をうろついて見せた。
巨大なゲッターで限られた空間を歩くのだ。足元のほむら達を踏みつぶさないように気を配ることも忘れない。
キリカ 「そうだね。まずは適当にこの空間内を動いてもらおうかな」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「その様子を僕が見ているよ。ゲッターの操縦法を僕が記憶して、あとで織莉子たちにビジョンとして見せる」
竜馬 「なるほど、それがお前の役割か。生きたマニュアルってわけだ」
キュウべぇ 「便利だろう?」
竜馬 「・・・」
言われたとおり、竜馬はゲッターで広場内をうろついて見せた。
巨大なゲッターで限られた空間を歩くのだ。足元のほむら達を踏みつぶさないように気を配ることも忘れない。
725: 2015/06/08(月) 00:23:25.89
竜馬 「これでいいのかよ?」
仁美 「・・・」
キリカ 「・・・」
竜馬 「・・・おい?」
キリカ (これは・・・けっこう来るモノがあるね)
仁美 (少し動いただけで、この魔力の喪失感。確かに織莉子さんの言っていた”方法”でもとらないと、瞬く間にジリ貧になってしまう。たとえ、その方法が・・・)
キリカ ・仁美 (外道の極みなのだとしても・・・!)
竜馬 「お前ら・・・大丈夫なのか?」
仁美 「あ、は、はい・・・平気ですわ。では流さんは引き続き、ゲッターに様々な動きをさせてください。キュウべぇ、記録はよろしくお願いしますわね」
竜馬 「分かった・・・」
キュウべぇ 「そこは任せてもらっていいよ」
仁美 「ええ」
キリカ (さて、いよいよ始まるか・・・)
仁美 「と、その前に・・・」
仁美はシート越しに、後ろから様子をうかがっていた少女たちに声をかけた。
仁美 「では、D子さん。私と交代ですわ。E子さんももう少し前に来て、ゲッターロボがどういうものなのか、計器とかをよく見ておいて下さい」
D子 「あ、う、うん・・・じゃあ・・・よいしょっと」
E子 「それよりも志筑さん・・・私たち、ちょっとソウルジェムがヤバめになってきたんだけれど」
仁美 「・・・」
仁美 「・・・」
キリカ 「・・・」
竜馬 「・・・おい?」
キリカ (これは・・・けっこう来るモノがあるね)
仁美 (少し動いただけで、この魔力の喪失感。確かに織莉子さんの言っていた”方法”でもとらないと、瞬く間にジリ貧になってしまう。たとえ、その方法が・・・)
キリカ ・仁美 (外道の極みなのだとしても・・・!)
竜馬 「お前ら・・・大丈夫なのか?」
仁美 「あ、は、はい・・・平気ですわ。では流さんは引き続き、ゲッターに様々な動きをさせてください。キュウべぇ、記録はよろしくお願いしますわね」
竜馬 「分かった・・・」
キュウべぇ 「そこは任せてもらっていいよ」
仁美 「ええ」
キリカ (さて、いよいよ始まるか・・・)
仁美 「と、その前に・・・」
仁美はシート越しに、後ろから様子をうかがっていた少女たちに声をかけた。
仁美 「では、D子さん。私と交代ですわ。E子さんももう少し前に来て、ゲッターロボがどういうものなのか、計器とかをよく見ておいて下さい」
D子 「あ、う、うん・・・じゃあ・・・よいしょっと」
E子 「それよりも志筑さん・・・私たち、ちょっとソウルジェムがヤバめになってきたんだけれど」
仁美 「・・・」
726: 2015/06/08(月) 00:25:44.63
E子 「そろそろグリーフシード、貰ってもいいかな」
仁美 「・・・まだ早いですわ。これから先は長いのですもの。限りある資源は節約して使わないと」
D子 「で、でもぉ・・・」
仁美 「大丈夫。今はゲッターロボに慣れる事だけに集中して」
E子 「まぁ、織莉子さんが認めたあなたがそう言うなら、従うけどさぁ・・・」
仁美 「・・・」
同じようなやり取りは、ジャガー号の中でも行われていた。
キリカは操縦席を同乗していたF子に譲って、その様子をのぞき込んでいるG子のさらに後ろへと移動していた。
そして、念を集中して、外の織莉子にだけ聞こえるように、念話を飛ばす。
キリカ (織莉子、程なくして”限界”が訪れる。いよいよ、実行のとき迫る、だよ)
仁美 「・・・まだ早いですわ。これから先は長いのですもの。限りある資源は節約して使わないと」
D子 「で、でもぉ・・・」
仁美 「大丈夫。今はゲッターロボに慣れる事だけに集中して」
E子 「まぁ、織莉子さんが認めたあなたがそう言うなら、従うけどさぁ・・・」
仁美 「・・・」
同じようなやり取りは、ジャガー号の中でも行われていた。
キリカは操縦席を同乗していたF子に譲って、その様子をのぞき込んでいるG子のさらに後ろへと移動していた。
そして、念を集中して、外の織莉子にだけ聞こえるように、念話を飛ばす。
キリカ (織莉子、程なくして”限界”が訪れる。いよいよ、実行のとき迫る、だよ)
727: 2015/06/08(月) 00:27:34.93
織莉子 (キリカ・・・ごめんなさいね。あなたと仁美さんにだけ手を汚させるような真似をしてしまって)
キリカ (構わない。私は織莉子の言う事にはすべて従うと、心に固く誓ってるんだ。それにそれが、織莉子の好きなこの街を守ることにつながるんだろう)
織莉子 (ええ・・・)
キリカ (だったら、全く問題なし。織莉子はこの後の事だけを考えていればいいんだよ。私は君が導いてくれないと、たちまち道に迷ってしまうのだからね)
織莉子 (キリカ、あなた・・・)
キリカ (じゃ、通信終わり!またあとでね!)
念話を切り上げると、キリカは再び視線を自分の前にいる、二人の魔法少女へと向けた。
未知の存在であるゲッターに、わき上がる興味を隠しもせず、無邪気に語り合っている二人の少女。
キリカ (ごめんね)
今度は誰にも届かないように。
キリカは心の内でだけ、そっとそうつぶやいた。
キリカ (構わない。私は織莉子の言う事にはすべて従うと、心に固く誓ってるんだ。それにそれが、織莉子の好きなこの街を守ることにつながるんだろう)
織莉子 (ええ・・・)
キリカ (だったら、全く問題なし。織莉子はこの後の事だけを考えていればいいんだよ。私は君が導いてくれないと、たちまち道に迷ってしまうのだからね)
織莉子 (キリカ、あなた・・・)
キリカ (じゃ、通信終わり!またあとでね!)
念話を切り上げると、キリカは再び視線を自分の前にいる、二人の魔法少女へと向けた。
未知の存在であるゲッターに、わき上がる興味を隠しもせず、無邪気に語り合っている二人の少女。
キリカ (ごめんね)
今度は誰にも届かないように。
キリカは心の内でだけ、そっとそうつぶやいた。
728: 2015/06/08(月) 00:30:04.42
・・・
・・・
キリカ達に言われるまま、ゲッターを操縦し続ける竜馬。
キュウべぇは竜馬の肩の上から、彼が操る操縦桿をじっと見つめていた。
その様子はキュウべぇたち共有のデータバンクに逐一送られ、必要な時にはいつでも取り出すことができる。
キュウべぇ (間もなくだ・・・このプランが確立されれば、僕たちのエネルギー回収のノルマは飛躍的に達成に近づける)
個人的な感情を持ち合わせない彼だったが、種全体としての喜びが体の奥から湧き上がってくることは抑えようがなかった。
それは、本能からくる喜びだった。
キュウべぇ (さて・・・)
この男、流竜馬にだけは本当の事を、今。
ここで話しておかなければならないなと、キュウべぇは思った。
キュウべぇ (どのみち今回の事が終わった後には、ほむら達にもすべてが知られてしまうことになるだろうけれど・・・)
この全てにおいて規格外の男が、いざとなったら何をしでかすのか。
悠久の歴史の中で様々な人間を観察してきたキュウべぇにも、測りかねるものがある。
そんな不測の事態が起こる前に、憂いの芽は摘んでおかなければならない。
・・・
キリカ達に言われるまま、ゲッターを操縦し続ける竜馬。
キュウべぇは竜馬の肩の上から、彼が操る操縦桿をじっと見つめていた。
その様子はキュウべぇたち共有のデータバンクに逐一送られ、必要な時にはいつでも取り出すことができる。
キュウべぇ (間もなくだ・・・このプランが確立されれば、僕たちのエネルギー回収のノルマは飛躍的に達成に近づける)
個人的な感情を持ち合わせない彼だったが、種全体としての喜びが体の奥から湧き上がってくることは抑えようがなかった。
それは、本能からくる喜びだった。
キュウべぇ (さて・・・)
この男、流竜馬にだけは本当の事を、今。
ここで話しておかなければならないなと、キュウべぇは思った。
キュウべぇ (どのみち今回の事が終わった後には、ほむら達にもすべてが知られてしまうことになるだろうけれど・・・)
この全てにおいて規格外の男が、いざとなったら何をしでかすのか。
悠久の歴史の中で様々な人間を観察してきたキュウべぇにも、測りかねるものがある。
そんな不測の事態が起こる前に、憂いの芽は摘んでおかなければならない。
729: 2015/06/08(月) 00:33:34.56
キュウべぇ 「竜馬」
竜馬 「なんだよ」
キュウべぇ 「操縦を続けたままで良いから、聞いてほしい事があるんだ」
竜馬 「改まって、気持ちが悪いな」
キュウべぇ 「この先、何が起こっても、君には取り乱さずに、そのまま操縦に専念していてほしい。その事を念押ししておこうと思ってね」
竜馬 「お前らが今更、なにを企もうが驚くほどの事なんざねぇだろうがよ」
キュウべぇ 「それを聞いて安心したよ」
竜馬 「・・・で?その、念押しの具体的な内容を聞いておこうじゃないか」
キュウべぇ 「では・・・」
キュウべぇ 「 」
竜馬 「なんだよ」
キュウべぇ 「操縦を続けたままで良いから、聞いてほしい事があるんだ」
竜馬 「改まって、気持ちが悪いな」
キュウべぇ 「この先、何が起こっても、君には取り乱さずに、そのまま操縦に専念していてほしい。その事を念押ししておこうと思ってね」
竜馬 「お前らが今更、なにを企もうが驚くほどの事なんざねぇだろうがよ」
キュウべぇ 「それを聞いて安心したよ」
竜馬 「・・・で?その、念押しの具体的な内容を聞いておこうじゃないか」
キュウべぇ 「では・・・」
キュウべぇ 「 」
730: 2015/06/08(月) 00:35:28.06
竜馬 「な、なんだと・・・!」
驚く事はない。
そう断言していた竜馬だったが、キュウべぇの話を聞き終えるや、彼の顔から血の気がみるみる引いていった。
信じられないモノを見るような目で、肩の上のキュウべぇを凝視する。
竜馬 「お前ら、正気か・・・いや、お前は分かる。人を人とも思っていない、お前なら・・・」
キュウべぇ 「ひどい言われようだね」
竜馬 「だが・・・美国織莉子・・・あいつ、そんな事を考え付くなんて・・・人か?人を捨てるつもりなのか?」
キュウべぇ 「織莉子の成そうとする正義のためだからね。それが彼女の望みなんだ。仕方がない」
竜馬 「そんなの、ただのエゴだろうが!」
キュウべぇ 「僕は長い歴史の中で様々な人間を見て来たけれど・・・エゴの絡まない望みを持った人間なんて、数えるくらいしか出会ったことがなかったよ」
竜馬 「だからと言って、やって良い事と悪い事があるだろうが!!」
キュウべぇ 「・・・やはり君には事前に話しておいて良かった。このまま”コト”が起こったら、何をされるか分かったものじゃなかったからね」
驚く事はない。
そう断言していた竜馬だったが、キュウべぇの話を聞き終えるや、彼の顔から血の気がみるみる引いていった。
信じられないモノを見るような目で、肩の上のキュウべぇを凝視する。
竜馬 「お前ら、正気か・・・いや、お前は分かる。人を人とも思っていない、お前なら・・・」
キュウべぇ 「ひどい言われようだね」
竜馬 「だが・・・美国織莉子・・・あいつ、そんな事を考え付くなんて・・・人か?人を捨てるつもりなのか?」
キュウべぇ 「織莉子の成そうとする正義のためだからね。それが彼女の望みなんだ。仕方がない」
竜馬 「そんなの、ただのエゴだろうが!」
キュウべぇ 「僕は長い歴史の中で様々な人間を見て来たけれど・・・エゴの絡まない望みを持った人間なんて、数えるくらいしか出会ったことがなかったよ」
竜馬 「だからと言って、やって良い事と悪い事があるだろうが!!」
キュウべぇ 「・・・やはり君には事前に話しておいて良かった。このまま”コト”が起こったら、何をされるか分かったものじゃなかったからね」
731: 2015/06/08(月) 00:37:08.27
竜馬 「・・・くっ!」
竜馬がコンソール上の通信機に手を伸ばそうとする。
警告しなければ。キリカや仁美と同乗している、名も知らぬ魔法少女たちに。
・・・だが。
キュウべぇ 「待ちなよ」
それを、抑揚のないキュウべぇの声が制した。
キュウべぇ 「言ったはずだ、君はこのまま操縦を続けるように、と」
竜馬 「だまれっ、てめぇの指図は受けねぇ!」
キュウべぇ 「君がこちらの指示に従わない場合、僕は即座にその事を、外の織莉子に念話で告げる」
竜馬 「・・・っ」
キュウべぇ 「巴マミ・・・彼女の身にもしもの事があれば、巴武蔵は君の事をどう思うだろうね」
竜馬 「てめぇ・・・!」
キュウべぇ 「もちろん、暁美ほむらや他の子たちも無事では済まないだろう。君が止めようとする行為は、仲間の命より尊い事なのかい?」
竜馬 「・・・くっ、くそっ!」
キュウべぇ 「さぁ、ここで成り行きを見守ろうじゃないか。上手くいくかは結果を御覧じろ・・・だけれどね」
竜馬 (くそ、俺にはどうすることもできないのか・・・!?)
竜馬がコンソール上の通信機に手を伸ばそうとする。
警告しなければ。キリカや仁美と同乗している、名も知らぬ魔法少女たちに。
・・・だが。
キュウべぇ 「待ちなよ」
それを、抑揚のないキュウべぇの声が制した。
キュウべぇ 「言ったはずだ、君はこのまま操縦を続けるように、と」
竜馬 「だまれっ、てめぇの指図は受けねぇ!」
キュウべぇ 「君がこちらの指示に従わない場合、僕は即座にその事を、外の織莉子に念話で告げる」
竜馬 「・・・っ」
キュウべぇ 「巴マミ・・・彼女の身にもしもの事があれば、巴武蔵は君の事をどう思うだろうね」
竜馬 「てめぇ・・・!」
キュウべぇ 「もちろん、暁美ほむらや他の子たちも無事では済まないだろう。君が止めようとする行為は、仲間の命より尊い事なのかい?」
竜馬 「・・・くっ、くそっ!」
キュウべぇ 「さぁ、ここで成り行きを見守ろうじゃないか。上手くいくかは結果を御覧じろ・・・だけれどね」
竜馬 (くそ、俺にはどうすることもできないのか・・・!?)
732: 2015/06/08(月) 00:40:16.52
・・・
・・・
ジャガー号
内部
F子 「え・・・え・・・どういうこと、呉さん・・・」
G子 「ど、どうして・・・」
キリカは抜きはらった武器を、仲間であるはずの二人の魔法少女に突き付けていた。
微塵でも動けば切り刻む。
キリカの彼女たちを睨む目が、言外にそう告げていた。
キリカ 「良いから、そのまま。大人しく座っていて。そうすれば、手荒な真似はしないからさ」
F子 「だ、だけど、このままじゃ私たち、ソウルジェムが・・・ソウルジェムが!」
G子 「もう限界なんだよ!は、早くグリーフシードをちょうだい!」
キリカ 「黙りなよっ!」
F子・G子 「ひぃっ!!」
キリカ 「君たちのソウルジェムには、このまま黒く濁りきってもらうよ」
F子 「な、なんで!?なんでよぉ・・・!」
・・・
ジャガー号
内部
F子 「え・・・え・・・どういうこと、呉さん・・・」
G子 「ど、どうして・・・」
キリカは抜きはらった武器を、仲間であるはずの二人の魔法少女に突き付けていた。
微塵でも動けば切り刻む。
キリカの彼女たちを睨む目が、言外にそう告げていた。
キリカ 「良いから、そのまま。大人しく座っていて。そうすれば、手荒な真似はしないからさ」
F子 「だ、だけど、このままじゃ私たち、ソウルジェムが・・・ソウルジェムが!」
G子 「もう限界なんだよ!は、早くグリーフシードをちょうだい!」
キリカ 「黙りなよっ!」
F子・G子 「ひぃっ!!」
キリカ 「君たちのソウルジェムには、このまま黒く濁りきってもらうよ」
F子 「な、なんで!?なんでよぉ・・・!」
733: 2015/06/08(月) 00:42:27.26
キリカ 「そうすれば、ソウルジェムは砕けて、グリーフシードとなって生まれ変わる」
G子 「え・・・」
キリカ 「君たちは、魔女になるんだよ」
F子 「な、なに言ってるの・・・?」
キリカ 「言葉の通りさ。やがて魔女になる運命なのさ、魔法少女は。君たちも、私も」
G子 「・・・う、うそだ・・・ぁ・・・」
キリカ 「本当だよ。だけれど、魔女にならずにすむ方法が、たった一つだけある。知りたい・・・?」
F子 「え?え?」
キリカ 「それは、ね・・・」
G子 「え・・・」
キリカ 「君たちは、魔女になるんだよ」
F子 「な、なに言ってるの・・・?」
キリカ 「言葉の通りさ。やがて魔女になる運命なのさ、魔法少女は。君たちも、私も」
G子 「・・・う、うそだ・・・ぁ・・・」
キリカ 「本当だよ。だけれど、魔女にならずにすむ方法が、たった一つだけある。知りたい・・・?」
F子 「え?え?」
キリカ 「それは、ね・・・」
734: 2015/06/08(月) 00:43:55.50
・・・
・・・
ベアー号
内部
仁美 「それは、魔女となる前に氏んでしまう事・・・」
D子 「は、はい・・・?」
E子 「あんた、何を言って・・・うぐっ!い、良いから早く、あんたが手に持ってるグリーフシードをよこしなさいよぉ!」
仁美 「動くなぁっ!!」
仁美が、今まで見せたこともない顔と声音で、飛びかかろうとするE子を叱りつけた。
ビリビリとコクピット内の空気が震えるほどに、それは激しい叱責だった。
取り乱していた二人の魔法少女の動きが、押さえつけられたかのようにピタリと静まる。
仁美 「そう、それで良いのです。あなたがたはただ、運命を受け入れれば、それで良い・・・」
D子 「な、なによぉ・・・志筑さん、あなたいったい何なのよぉ・・・」
E子 「私たちに、氏ねというの・・・?」
仁美 「ええ」
絶望に震えた声での問いかけにも、仁美は平然とうなずいて見せた。
・・・
ベアー号
内部
仁美 「それは、魔女となる前に氏んでしまう事・・・」
D子 「は、はい・・・?」
E子 「あんた、何を言って・・・うぐっ!い、良いから早く、あんたが手に持ってるグリーフシードをよこしなさいよぉ!」
仁美 「動くなぁっ!!」
仁美が、今まで見せたこともない顔と声音で、飛びかかろうとするE子を叱りつけた。
ビリビリとコクピット内の空気が震えるほどに、それは激しい叱責だった。
取り乱していた二人の魔法少女の動きが、押さえつけられたかのようにピタリと静まる。
仁美 「そう、それで良いのです。あなたがたはただ、運命を受け入れれば、それで良い・・・」
D子 「な、なによぉ・・・志筑さん、あなたいったい何なのよぉ・・・」
E子 「私たちに、氏ねというの・・・?」
仁美 「ええ」
絶望に震えた声での問いかけにも、仁美は平然とうなずいて見せた。
735: 2015/06/08(月) 00:45:22.06
E子 「いったい、何のために!」
仁美 「この、見滝原を守るために・・・」
D子 「わけわかんない!やだよ、氏にたくないよ!なんでこんなことするのよ!助けてよぉ!」
仁美 「どのみち、私たちは遠からず、人としての生を摘み取られるべき存在。それが、分を超えた望みを持った私たちの償い・・・」
E子 「・・・なに、言ってるのさ」
仁美 「氏ぬ時期が、多少違うというだけ。私も近いうちにあなたたちの所へ行くことになる。だから、ねぇ・・・?」
D子 「・・・」
仁美 「今は、おとなしくソウルジェムを黒く染め上げて下さいな」
D子 「そんなの嫌だよ、助けてよ!う・・・うぐっ!?」
E子 「う・・・う、ぁ・・・」
そして・・・
その時が、訪れた。
仁美 「この、見滝原を守るために・・・」
D子 「わけわかんない!やだよ、氏にたくないよ!なんでこんなことするのよ!助けてよぉ!」
仁美 「どのみち、私たちは遠からず、人としての生を摘み取られるべき存在。それが、分を超えた望みを持った私たちの償い・・・」
E子 「・・・なに、言ってるのさ」
仁美 「氏ぬ時期が、多少違うというだけ。私も近いうちにあなたたちの所へ行くことになる。だから、ねぇ・・・?」
D子 「・・・」
仁美 「今は、おとなしくソウルジェムを黒く染め上げて下さいな」
D子 「そんなの嫌だよ、助けてよ!う・・・うぐっ!?」
E子 「う・・・う、ぁ・・・」
そして・・・
その時が、訪れた。
743: 2015/06/09(火) 01:20:19.81
E子 「う、うう・・・ああ・・・」
D子 「ああああああああっ!!」
ゲッターに魔力を吸い取られ続けた二人の少女のソウルジェムに、限界が来たのだ。
ぴしっ・・・と。
亀裂が走る音が、コクピット内に響く。
それは、ソウルジェムが形を失い、グリーフシードへ生まれ変わる為の産声。
仁美 「失敗は許されない。間髪入れず終わらせる・・・」
仁美は狭いコクピットの中、得物である剣を中段に構え、二人の少女に狙いを定める。
そして、待った。
ソウルジェムが砕ける、その瞬間を。
D子 「ああああああああっ!!」
ゲッターに魔力を吸い取られ続けた二人の少女のソウルジェムに、限界が来たのだ。
ぴしっ・・・と。
亀裂が走る音が、コクピット内に響く。
それは、ソウルジェムが形を失い、グリーフシードへ生まれ変わる為の産声。
仁美 「失敗は許されない。間髪入れず終わらせる・・・」
仁美は狭いコクピットの中、得物である剣を中段に構え、二人の少女に狙いを定める。
そして、待った。
ソウルジェムが砕ける、その瞬間を。
744: 2015/06/09(火) 01:23:45.30
少女たちの断末魔の絶叫が、コクピット内を悲惨の色で染め上げる。
だけれど仁美の心は、穏やかな水面のごとくに静謐だった。
成すべき事のため、大切な人の住む世界を守るために。
仁美 (そのために、私は人であることを捨てたのだもの)
そして。
パリンっという破裂音とともに、E子とD子のソウルジェムがほぼ同時に砕けた。
代わりに姿を現したのは、新たなグリーフシード。
そう、魔女が誕生しようとしているのだ。
仁美 「いまっ!」
仁美は鋭い掛け声とともに、渾身の力を込めて剣を薙いだ。
だけれど仁美の心は、穏やかな水面のごとくに静謐だった。
成すべき事のため、大切な人の住む世界を守るために。
仁美 (そのために、私は人であることを捨てたのだもの)
そして。
パリンっという破裂音とともに、E子とD子のソウルジェムがほぼ同時に砕けた。
代わりに姿を現したのは、新たなグリーフシード。
そう、魔女が誕生しようとしているのだ。
仁美 「いまっ!」
仁美は鋭い掛け声とともに、渾身の力を込めて剣を薙いだ。
745: 2015/06/09(火) 01:25:30.81
・・・
・・・
竜馬 「なんてこった・・・」
竜馬はその様子をモニター越しに、全て見ていた。
竜馬 「これが、お前の企みなのか」
キュウべぇ 「そうだよ、竜馬。本当はこの役、君にやってもらえれば、ゲッターを強奪するなんて回りくどいことをせずに済んだのだけれどね」
竜馬 「・・・どういうことか説明しやがれ」
キュウべぇ 「発想の転換だよ」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「僕の目的が、魔法少女が魔女になる際に放出されるエネルギーを回収することだとは、君も知っているよね」
竜馬 「ああ」
キュウべぇ 「そのエネルギーというのは、正確にはソウルジェムが砕けた瞬間に放出されるのだけれどね。つまり、別に魔女化自体は僕にとってはどうでもいいことなのさ」
竜馬 「・・・」
・・・
竜馬 「なんてこった・・・」
竜馬はその様子をモニター越しに、全て見ていた。
竜馬 「これが、お前の企みなのか」
キュウべぇ 「そうだよ、竜馬。本当はこの役、君にやってもらえれば、ゲッターを強奪するなんて回りくどいことをせずに済んだのだけれどね」
竜馬 「・・・どういうことか説明しやがれ」
キュウべぇ 「発想の転換だよ」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「僕の目的が、魔法少女が魔女になる際に放出されるエネルギーを回収することだとは、君も知っているよね」
竜馬 「ああ」
キュウべぇ 「そのエネルギーというのは、正確にはソウルジェムが砕けた瞬間に放出されるのだけれどね。つまり、別に魔女化自体は僕にとってはどうでもいいことなのさ」
竜馬 「・・・」
746: 2015/06/09(火) 01:27:19.22
キュウべぇ 「そして織莉子たちの目的は、ゲッターロボを運用するために必要な、グリーフシードの確保。この両者を両立させるためには、さてどうするか」
竜馬 「ま、まさか・・・だから美国は魔法少女を仲間に集め、志筑たちはあんなまねをしたと?」
キュウべぇ 「相変わらず君は察しがいい。もう分かったよね」
竜馬 「ゲッターにエネルギーを吸い取らせ、ソウルジェムをグリーフシード化させ・・・」
キュウべぇ 「そこから魔女となる寸隙をついて、人の姿をしている内に魔法少女を頃してしまう。そうすれば僕はエネルギーを回収でき、織莉子たちは戦わずにグリーフシードを手に入れられる」
竜馬 「人間の考える事じゃねぇぞ・・・!」
キュウべぇ 「それはそうさ。だって僕が提案した策なのだから」
竜馬 「ど外道がっ!!」
竜馬 「ま、まさか・・・だから美国は魔法少女を仲間に集め、志筑たちはあんなまねをしたと?」
キュウべぇ 「相変わらず君は察しがいい。もう分かったよね」
竜馬 「ゲッターにエネルギーを吸い取らせ、ソウルジェムをグリーフシード化させ・・・」
キュウべぇ 「そこから魔女となる寸隙をついて、人の姿をしている内に魔法少女を頃してしまう。そうすれば僕はエネルギーを回収でき、織莉子たちは戦わずにグリーフシードを手に入れられる」
竜馬 「人間の考える事じゃねぇぞ・・・!」
キュウべぇ 「それはそうさ。だって僕が提案した策なのだから」
竜馬 「ど外道がっ!!」
747: 2015/06/09(火) 01:30:54.59
キュウべぇ 「僕に人間の世界での罵倒は意味がないよ。にしても、この方法。正直、少し賭けの部分があったんだ。魔法少女の命を絶つタイミングが、けっこうシビアだからね」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「でもまぁ、呉キリカと志筑仁美は上手くやってくれたよ。おかげで確立された。これから僕は、この方法でどんどんエネルギーを回収できる。ノルマの達成も早まるというものだよ」
竜馬 「俺たちのゲッターをそんな事のために・・・」
キュウべぇ 「魔法少女による、エネルギーの永久機関さ。資質の高い魔法少女を探して回るより、よほど効率的だとは思わないかい?」
竜馬 「てめえっ、絶対に許せねぇ・・・!!」
竜馬が怒りのあまり、顔を朱に染めた、その時。
? (リョウ・・・)
唐突に。
どこからか、彼を呼ぶ声が聞こえたのだ。
竜馬 「え・・・?」
どこか、聞き覚えのある、懐かしい男の声。
この空間にいるのは自分とキュウべぇだけだが、当然そのどちらの声でもない。
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「でもまぁ、呉キリカと志筑仁美は上手くやってくれたよ。おかげで確立された。これから僕は、この方法でどんどんエネルギーを回収できる。ノルマの達成も早まるというものだよ」
竜馬 「俺たちのゲッターをそんな事のために・・・」
キュウべぇ 「魔法少女による、エネルギーの永久機関さ。資質の高い魔法少女を探して回るより、よほど効率的だとは思わないかい?」
竜馬 「てめえっ、絶対に許せねぇ・・・!!」
竜馬が怒りのあまり、顔を朱に染めた、その時。
? (リョウ・・・)
唐突に。
どこからか、彼を呼ぶ声が聞こえたのだ。
竜馬 「え・・・?」
どこか、聞き覚えのある、懐かしい男の声。
この空間にいるのは自分とキュウべぇだけだが、当然そのどちらの声でもない。
748: 2015/06/09(火) 01:34:10.52
? (リョウ)
今度は、先ほどよりさらに強く。
再び謎の声が、竜馬を呼んだ。
その声は、すぐ近くで聞こえたようでいて、裏腹にはるか遠くの、どこか他の世界から囁かれている様にも聞こえた。
耳からじゃない・・・
まるで頭の中に直接語りかけてくる様な、不思議な響きを持った声。
キュウべぇ 「・・・竜馬。君ではないよね、この声は・・・いったいどこから聞こえてくるのだろう?」
竜馬 「・・・お前にも聞こえているのか」
キュウべぇ 「これは空気を振動させて伝わってくる、いわゆる”声”とは別の物のようだね。むしろ僕や魔法少女が使う念話に近い・・・」
竜馬 「この声がどこから聞こえてくるか、分からねぇ、が・・・」
だが。
竜馬 「声の主には心当たりがある」
今度は、先ほどよりさらに強く。
再び謎の声が、竜馬を呼んだ。
その声は、すぐ近くで聞こえたようでいて、裏腹にはるか遠くの、どこか他の世界から囁かれている様にも聞こえた。
耳からじゃない・・・
まるで頭の中に直接語りかけてくる様な、不思議な響きを持った声。
キュウべぇ 「・・・竜馬。君ではないよね、この声は・・・いったいどこから聞こえてくるのだろう?」
竜馬 「・・・お前にも聞こえているのか」
キュウべぇ 「これは空気を振動させて伝わってくる、いわゆる”声”とは別の物のようだね。むしろ僕や魔法少女が使う念話に近い・・・」
竜馬 「この声がどこから聞こえてくるか、分からねぇ、が・・・」
だが。
竜馬 「声の主には心当たりがある」
749: 2015/06/09(火) 01:35:54.28
以前。
ほむらは謎の声に導かれ、ゲッターを呼び出しパイロットとして認められた。
その声の主。ゲッターに宿る、その謎の人物こそが、今。
自分に語りかけてきてきているのだろう。
そして、その声の正体とは・・・
竜馬 「お前か・・・?」
? (リョウ)
竜馬 「お前なのか、隼人!!」
ほむらは謎の声に導かれ、ゲッターを呼び出しパイロットとして認められた。
その声の主。ゲッターに宿る、その謎の人物こそが、今。
自分に語りかけてきてきているのだろう。
そして、その声の正体とは・・・
竜馬 「お前か・・・?」
? (リョウ)
竜馬 「お前なのか、隼人!!」
750: 2015/06/09(火) 01:38:25.34
・・・
・・・
ジャガー号。
内部。
キリカ 「はぁはぁ・・・」
キリカは乱れた息を整えつつ、自分の武器を見つめていた。
爪に似た形状の得物。それには血がべっとりとこびり付いていた。
それは今、彼女が手にかけた二人の少女の生血。
キリカ 「・・・」
キリカの足元には、先ほどまで己の運命も知らず、コクピット内をもの珍しそうに眺めていた少女たちが倒れていた。
今はもう、何を見ることも語ることもできない。
キリカが、頃してしまったのだから。
・・・
ジャガー号。
内部。
キリカ 「はぁはぁ・・・」
キリカは乱れた息を整えつつ、自分の武器を見つめていた。
爪に似た形状の得物。それには血がべっとりとこびり付いていた。
それは今、彼女が手にかけた二人の少女の生血。
キリカ 「・・・」
キリカの足元には、先ほどまで己の運命も知らず、コクピット内をもの珍しそうに眺めていた少女たちが倒れていた。
今はもう、何を見ることも語ることもできない。
キリカが、頃してしまったのだから。
751: 2015/06/09(火) 01:40:51.34
キリカ 「う、うう・・・」
コクピット内に充満する血の臭いにむせながらも、彼女は氏体からある物を回収する。
それは、魔法少女たちの生まれ変わりともいうべき、二個のグリーフシード。
キリカ 「やった・・・織莉子、やったよ!うまくいったよ・・・!」
その時、ジャガー号内のモニターに灯がともり、仁美の顔が映し出された。
仁美 「呉さん、首尾はどうですの?」
画面の中の仁美が、キリカとは対照的な澄ました顔で言った。
キリカ 「上々さ。ほら、これ」
仁美 「グリーグシード・・・ふふっ、これで実証されましたわね。織莉子さんが示された方法は、やはり正しかったのだと」
コクピット内に充満する血の臭いにむせながらも、彼女は氏体からある物を回収する。
それは、魔法少女たちの生まれ変わりともいうべき、二個のグリーフシード。
キリカ 「やった・・・織莉子、やったよ!うまくいったよ・・・!」
その時、ジャガー号内のモニターに灯がともり、仁美の顔が映し出された。
仁美 「呉さん、首尾はどうですの?」
画面の中の仁美が、キリカとは対照的な澄ました顔で言った。
キリカ 「上々さ。ほら、これ」
仁美 「グリーグシード・・・ふふっ、これで実証されましたわね。織莉子さんが示された方法は、やはり正しかったのだと」
752: 2015/06/09(火) 01:41:53.34
キリカ 「・・・」
仁美 「どうかしました?」
キリカ 「いや・・・」
仁美 「変な人。まぁ、良いですわ。さて、次に考えなくてはならないのは、更なる効率化をいかに進めるか、ですわね」
キリカ 「どういうこと?」
仁美 「今回、得られたグリーフシードは4個。ですが、私とキリカさんは魔力維持のため、二つのグリーフシードを使っていますわ。結果、黒字となったのはたった二つのみ。これでは効率が悪い・・・」
キリカ 「え、と、言うことは・・・」
仁美 「一度に処理できる魔法少女の数を増やす必要がありますわね。とはいえ、魔女化する瞬間を狙って殺さなければならないのですから。いたずらに増やすだけでは、手が回らなくなってしまう」
キリカ 「処理って、あんた・・・」
仁美 「瞬時にして何人を屠れるか。私たちは知っておかなければなりませんわ」
キリカ 「・・・驚いたよ。虫も殺さないような顔をしておいて、ずいぶんとえげつない事を考えるんだね、仁美は」
仁美 「あら・・・」
モニターの中の仁美が、意外なものを見るように、目をまん丸く見開いた。
仁美 「もしかして、呉さん・・・罪悪感、お持ちですの?」
仁美 「どうかしました?」
キリカ 「いや・・・」
仁美 「変な人。まぁ、良いですわ。さて、次に考えなくてはならないのは、更なる効率化をいかに進めるか、ですわね」
キリカ 「どういうこと?」
仁美 「今回、得られたグリーフシードは4個。ですが、私とキリカさんは魔力維持のため、二つのグリーフシードを使っていますわ。結果、黒字となったのはたった二つのみ。これでは効率が悪い・・・」
キリカ 「え、と、言うことは・・・」
仁美 「一度に処理できる魔法少女の数を増やす必要がありますわね。とはいえ、魔女化する瞬間を狙って殺さなければならないのですから。いたずらに増やすだけでは、手が回らなくなってしまう」
キリカ 「処理って、あんた・・・」
仁美 「瞬時にして何人を屠れるか。私たちは知っておかなければなりませんわ」
キリカ 「・・・驚いたよ。虫も殺さないような顔をしておいて、ずいぶんとえげつない事を考えるんだね、仁美は」
仁美 「あら・・・」
モニターの中の仁美が、意外なものを見るように、目をまん丸く見開いた。
仁美 「もしかして、呉さん・・・罪悪感、お持ちですの?」
753: 2015/06/09(火) 01:44:29.53
キリカ 「そうじゃないよ。だけれど、私は今、自分と同じ魔法少女の命を摘み取ったんだ。仁美みたく平然としてられる気分でもないよ」
仁美 「意外と・・・肝がお小さいですこと」
キリカ 「なんだと!だったら仁美は、いま何も感じてないっていうのか!?」
仁美 「ええ、感じてませんわ。当然でしょ?」
キリカ 「なっ・・・」
仁美 「これくらいの事で動揺する程度であるなら、最初から魔法少女になどなっていませんわ。私は私の守るべきもののために願いを望み、代償として人であることを捨てたのです」
キリカ 「仁美、おまえ・・・」
仁美 「この期に及んで人間らしい感情なんて、紙に包んでゴミ箱にポポイ、ですわ」
キリカ 「・・・はっきりと、確信したよ」
仁美 「なにをですの?」
キリカ 「私、お前の事、大嫌いだ」
仁美 「奇遇ですわね。私も、あなたとは気が合わないと思っていましたのよ」
キリカ 「・・・」
仁美 「意外と・・・肝がお小さいですこと」
キリカ 「なんだと!だったら仁美は、いま何も感じてないっていうのか!?」
仁美 「ええ、感じてませんわ。当然でしょ?」
キリカ 「なっ・・・」
仁美 「これくらいの事で動揺する程度であるなら、最初から魔法少女になどなっていませんわ。私は私の守るべきもののために願いを望み、代償として人であることを捨てたのです」
キリカ 「仁美、おまえ・・・」
仁美 「この期に及んで人間らしい感情なんて、紙に包んでゴミ箱にポポイ、ですわ」
キリカ 「・・・はっきりと、確信したよ」
仁美 「なにをですの?」
キリカ 「私、お前の事、大嫌いだ」
仁美 「奇遇ですわね。私も、あなたとは気が合わないと思っていましたのよ」
キリカ 「・・・」
754: 2015/06/09(火) 01:46:59.65
仁美 「・・・何はともあれ、今回の結果を織莉子さんに伝えなければ。念話、飛ばしますわね」
キリカ 「・・・うん」
瞼を閉じ、念を集中し始める仁美。
だがすぐに、怪訝な顔で目を開く。
仁美 「え・・・」
キリカ 「どうかしたの?」
仁美 「おかしい。念話が、送れませんわ」
キリカ 「えっ・・・」
キリカ 「・・・うん」
瞼を閉じ、念を集中し始める仁美。
だがすぐに、怪訝な顔で目を開く。
仁美 「え・・・」
キリカ 「どうかしたの?」
仁美 「おかしい。念話が、送れませんわ」
キリカ 「えっ・・・」
755: 2015/06/09(火) 01:49:20.77
仁美 「もう一度、やってみます」
再び目を閉じ、集中する仁美。
だが、すぐに目を開き首を振る。
仁美 「だめ・・・」
キリカ 「どうして?だって私は、さっき織莉子と念話で話したばかりだ。よし、じゃあ私がもう一度やってみる」
だが、結果はキリカも同じだった。
確かに飛ばしたはずの念話が、なにか厚い壁にさえぎられて、跳ね返されてしまう。
そんな感覚だった。
それは、今までにない経験。
キリカ 「そんな馬鹿な、ありえない」
仁美 「仕方がありませんわね。原因の追及は後です。今はまず織莉子さんへの報告を優先しなければ。いったん外に降りましょう。じかに話せばいいのです」
キリカ 「そうだね・・・じゃあ、ハッチを開いて、と」
ハッチに手を伸ばし、扉開閉のスイッチを探す。
再び目を閉じ、集中する仁美。
だが、すぐに目を開き首を振る。
仁美 「だめ・・・」
キリカ 「どうして?だって私は、さっき織莉子と念話で話したばかりだ。よし、じゃあ私がもう一度やってみる」
だが、結果はキリカも同じだった。
確かに飛ばしたはずの念話が、なにか厚い壁にさえぎられて、跳ね返されてしまう。
そんな感覚だった。
それは、今までにない経験。
キリカ 「そんな馬鹿な、ありえない」
仁美 「仕方がありませんわね。原因の追及は後です。今はまず織莉子さんへの報告を優先しなければ。いったん外に降りましょう。じかに話せばいいのです」
キリカ 「そうだね・・・じゃあ、ハッチを開いて、と」
ハッチに手を伸ばし、扉開閉のスイッチを探す。
756: 2015/06/09(火) 01:51:51.78
だが・・・
キリカ 「あれ・・・」
キリカは愕然とする。
乗り込んだ時に確認し、確かにあったはずのスイッチが、まるで削ぎ落とされたかのように消え失せていたのだ。
キリカ 「ばかな・・・仁美!」
仁美 「呉さん、スイッチがありませんわ」
キリカ 「そっちも・・・?」
いったい何がどうなっているのか。
仁美 「・・・流君に聞いてみましょう。流君・・・流君っ!・・・え?」
キリカ 「仁美・・・?」
仁美 「イーグル号との通信が繋がりません、わ・・・」
キリカ 「!?」
キリカ 「あれ・・・」
キリカは愕然とする。
乗り込んだ時に確認し、確かにあったはずのスイッチが、まるで削ぎ落とされたかのように消え失せていたのだ。
キリカ 「ばかな・・・仁美!」
仁美 「呉さん、スイッチがありませんわ」
キリカ 「そっちも・・・?」
いったい何がどうなっているのか。
仁美 「・・・流君に聞いてみましょう。流君・・・流君っ!・・・え?」
キリカ 「仁美・・・?」
仁美 「イーグル号との通信が繋がりません、わ・・・」
キリカ 「!?」
757: 2015/06/09(火) 01:55:11.83
外との念話が遮られてしまう。
機外に出るためのスイッチが消えてしまった。
そして、ゲッターの事を熟知している竜馬との通信もできない。
仁美 「これは・・・」
めったなことでは動じない仁美の心に、焦りと戸惑いの波が押し寄せてきた。
仁美 「呉さん、私たち・・・」
キリカ 「ど、どうなってるんだよ、どんな状況だよ、これ・・・」
仁美 「閉じ込められてしまった・・・?」
機外に出るためのスイッチが消えてしまった。
そして、ゲッターの事を熟知している竜馬との通信もできない。
仁美 「これは・・・」
めったなことでは動じない仁美の心に、焦りと戸惑いの波が押し寄せてきた。
仁美 「呉さん、私たち・・・」
キリカ 「ど、どうなってるんだよ、どんな状況だよ、これ・・・」
仁美 「閉じ込められてしまった・・・?」
771: 2015/06/12(金) 01:26:24.67
・・・
・・・
ほむら (・・・?)
どうしたのだろう。
織莉子の顔に、焦りの色が浮かんでいる。
ゲッターの中で、何かがあったのだろうか。
先ほどからゲッター内にいる仁美たちへと念話を飛ばしているようなのだけれど・・・
ほむら (私に向けられていない念話では、何を話しているのか分からないわね)
かといって、私が念話を飛ばしたところで、あの二人が応えてくれるとも思えない。
今は大人しく、推移を見守る他はないようだわ。
・・・
ほむら (・・・?)
どうしたのだろう。
織莉子の顔に、焦りの色が浮かんでいる。
ゲッターの中で、何かがあったのだろうか。
先ほどからゲッター内にいる仁美たちへと念話を飛ばしているようなのだけれど・・・
ほむら (私に向けられていない念話では、何を話しているのか分からないわね)
かといって、私が念話を飛ばしたところで、あの二人が応えてくれるとも思えない。
今は大人しく、推移を見守る他はないようだわ。
772: 2015/06/12(金) 01:30:01.97
ほむら (に、しても・・・)
のしのしと動き回っていたゲッターも今は歩みを止め、不気味な静寂を結界内にもたらしていた。
ほむら (ゲッターが止まってから、もう数分。いくらなんでも動きが無さすぎる。中で何かが起こっているのかしら)
織莉子 「暁美さん・・・」
不意に織莉子が話しかけてきた。
どことなく心細そうな、頼りなげな声音。
まるで先程までの、泰然としていた彼女とは別人のようだ。
ほむら 「え・・・な、なに?」
織莉子 「あなた、中の流さんにコンタクトをとることはできる?」
のしのしと動き回っていたゲッターも今は歩みを止め、不気味な静寂を結界内にもたらしていた。
ほむら (ゲッターが止まってから、もう数分。いくらなんでも動きが無さすぎる。中で何かが起こっているのかしら)
織莉子 「暁美さん・・・」
不意に織莉子が話しかけてきた。
どことなく心細そうな、頼りなげな声音。
まるで先程までの、泰然としていた彼女とは別人のようだ。
ほむら 「え・・・な、なに?」
織莉子 「あなた、中の流さんにコンタクトをとることはできる?」
773: 2015/06/12(金) 01:33:18.03
彼女の質問の意図を計りかね、私は首をかしげる。
ほむら 「え、無理よ、そんなの。私は通信機を持ってないし、リョウは魔法少女ではないから、念で話もできないもの」
織莉子 「そうよね・・・」
ほむら 「ていうか、なぜ私にそんなことを聞くの?中の様子が知りたいなら、仲間の二人に応えてもらえばいいじゃない」
織莉子 「・・・」
ほむら 「・・・?」
そのまま織莉子は押し黙ってしまった。
やむを得ず、私も再び視線をゲッターに戻す。
・・・ふりをしながら、周囲の状況を再確認。
ほむら 「え、無理よ、そんなの。私は通信機を持ってないし、リョウは魔法少女ではないから、念で話もできないもの」
織莉子 「そうよね・・・」
ほむら 「ていうか、なぜ私にそんなことを聞くの?中の様子が知りたいなら、仲間の二人に応えてもらえばいいじゃない」
織莉子 「・・・」
ほむら 「・・・?」
そのまま織莉子は押し黙ってしまった。
やむを得ず、私も再び視線をゲッターに戻す。
・・・ふりをしながら、周囲の状況を再確認。
774: 2015/06/12(金) 01:35:40.82
ほむら (マミに武器を突き付けている3人は、まったく隙がないわね。こちらが変な動きをしようものなら、瞬く間にマミのソウルジェムは砕かれてしまうに違いない・・・)
よく飼いならされているものだ。織莉子の統率力には感心する。
ゆまは不安げに武蔵の足にぴったりと抱き着いたまま、オロオロしている。幼い彼女の事だ、状況に対応できなくても仕方がない。
その、ゆまに頼られている武蔵も、最愛の妹を人質に取られては、どうにも動きが取れない。そんな無念さをにじませた表情でマミたちを注視している。
杏子 「・・・」
問題は杏子だ。
杏子のあの目・・・これまでの時間軸で、嫌というほど見てきた。
あの赤い目が不敵な輝きを灯す時。
あれは何かを企んでいる、そんな瞳だ。
ほむら (・・・今は、彼女が頼りかも)
きっと何か事が起これば、杏子はただちに何らかの行動を起こすだろう。
そこに、今のこの状況を切り抜けるチャンスが潜んでいるに違いない。
よく飼いならされているものだ。織莉子の統率力には感心する。
ゆまは不安げに武蔵の足にぴったりと抱き着いたまま、オロオロしている。幼い彼女の事だ、状況に対応できなくても仕方がない。
その、ゆまに頼られている武蔵も、最愛の妹を人質に取られては、どうにも動きが取れない。そんな無念さをにじませた表情でマミたちを注視している。
杏子 「・・・」
問題は杏子だ。
杏子のあの目・・・これまでの時間軸で、嫌というほど見てきた。
あの赤い目が不敵な輝きを灯す時。
あれは何かを企んでいる、そんな瞳だ。
ほむら (・・・今は、彼女が頼りかも)
きっと何か事が起これば、杏子はただちに何らかの行動を起こすだろう。
そこに、今のこの状況を切り抜けるチャンスが潜んでいるに違いない。
775: 2015/06/12(金) 01:38:03.09
ほむら (問題は、その不測の事態が起こるのか否か・・・なのだけれど・・・)
今の織莉子の様子。ただ事ではない。
きっと中では何かが起こっている。そこに私たちが付け入るスキが生じるはずなのだ。
ほむら 「・・・あ」
その機会は、案外早く訪れたのかもしれない。
織莉子 「え、なに?」
ほむら 「ゲッターの足元のハッチが・・・」
そこは、ゲッターロボの各機コクピットと通じている、共通のハッチだった。
そこが今、唐突に開いたのだ。
今の織莉子の様子。ただ事ではない。
きっと中では何かが起こっている。そこに私たちが付け入るスキが生じるはずなのだ。
ほむら 「・・・あ」
その機会は、案外早く訪れたのかもしれない。
織莉子 「え、なに?」
ほむら 「ゲッターの足元のハッチが・・・」
そこは、ゲッターロボの各機コクピットと通じている、共通のハッチだった。
そこが今、唐突に開いたのだ。
776: 2015/06/12(金) 01:40:12.63
そして・・・
竜馬 「・・・」
出てきたのは、竜馬ただ一人。
ほむら 「リョウ・・・」
織莉子 「え、どうしたと言うの。誰がゲッターから降りて良いと?」
竜馬 「・・・」
織莉子 「キリカと仁美さんは?答えなさい!」
竜馬 「・・・」
切りつけるような織莉子の叱責にも動じず、竜馬が無言で、地べたに何かを叩き付けた。
無様に地面を転がり、みじめな姿をさらしたモノは・・・
ほむら 「・・・っ!?」
・・・キュウべぇ?
竜馬 「・・・」
出てきたのは、竜馬ただ一人。
ほむら 「リョウ・・・」
織莉子 「え、どうしたと言うの。誰がゲッターから降りて良いと?」
竜馬 「・・・」
織莉子 「キリカと仁美さんは?答えなさい!」
竜馬 「・・・」
切りつけるような織莉子の叱責にも動じず、竜馬が無言で、地べたに何かを叩き付けた。
無様に地面を転がり、みじめな姿をさらしたモノは・・・
ほむら 「・・・っ!?」
・・・キュウべぇ?
777: 2015/06/12(金) 01:43:44.97
織莉子 「な、どういうこと・・・きゅ、キュウべぇ・・・?」
しかし、問いかけられたキュウべぇは一言も発しないどころか、身じろぎ一つすることはなかった。
気を失っているのか、あるいは・・・
だけれど、そんな思索も織莉子の詰問の声の前では、かき消されてしまう。
織莉子 「キリカは!?」
悲鳴のような織莉子の声が、結界内に響く。
織莉子 「キリカはどうしたの?あなたが、何かをしたの!?」
竜馬 「俺は何もしていない」
言いながら、竜馬は織莉子と私の方へと歩み寄ってきた。
無言で一回。
静かに私にうなづいて見せると、竜馬は織莉子に向かって手を差し出した。
しかし、問いかけられたキュウべぇは一言も発しないどころか、身じろぎ一つすることはなかった。
気を失っているのか、あるいは・・・
だけれど、そんな思索も織莉子の詰問の声の前では、かき消されてしまう。
織莉子 「キリカは!?」
悲鳴のような織莉子の声が、結界内に響く。
織莉子 「キリカはどうしたの?あなたが、何かをしたの!?」
竜馬 「俺は何もしていない」
言いながら、竜馬は織莉子と私の方へと歩み寄ってきた。
無言で一回。
静かに私にうなづいて見せると、竜馬は織莉子に向かって手を差し出した。
778: 2015/06/12(金) 01:45:12.91
織莉子 「・・・え?」
握られたままの拳。
何かを持っているようだ。
竜馬 「受け取れ」
織莉子 「なんだというの・・・」
警戒しながらも、空いた方の手を竜馬に差し出す織莉子。
その掌の上に、ポン、と。
竜馬が何かを置いた。
握られたままの拳。
何かを持っているようだ。
竜馬 「受け取れ」
織莉子 「なんだというの・・・」
警戒しながらも、空いた方の手を竜馬に差し出す織莉子。
その掌の上に、ポン、と。
竜馬が何かを置いた。
779: 2015/06/12(金) 01:47:15.42
織莉子 「これって・・・グリーフシード?」
竜馬 「呉キリカだ」
織莉子 「・・・っ!?」
ほむら 「なっ・・・?!」
驚愕の色を隠しもせず、手渡されたグリーフシードを織莉子は凝視していた。
そして、驚かされたのは私たちも同じ。
マミ 「ど、どうして・・・」
ゆま 「・・・あ・・・ぅ」
杏子 「・・・」
武蔵 「な、中で何があったってんだ!?おい、リョウ!」
だが、竜馬は浴びせられる問いかけには一切答えず、今度は私に向かって手を差し出す。
まさか、この流れは・・・
竜馬 「呉キリカだ」
織莉子 「・・・っ!?」
ほむら 「なっ・・・?!」
驚愕の色を隠しもせず、手渡されたグリーフシードを織莉子は凝視していた。
そして、驚かされたのは私たちも同じ。
マミ 「ど、どうして・・・」
ゆま 「・・・あ・・・ぅ」
杏子 「・・・」
武蔵 「な、中で何があったってんだ!?おい、リョウ!」
だが、竜馬は浴びせられる問いかけには一切答えず、今度は私に向かって手を差し出す。
まさか、この流れは・・・
780: 2015/06/12(金) 01:49:29.73
ほむら 「も、もしかして・・・」
言いながら、私も空いた方の手をリョウに向ける。
その上に、織莉子としたのと同じように、彼は一つのグリーフシードを乗せた。
ほむら 「これって・・・」
竜馬 「志筑仁美だ・・・」
ほむら 「ーーーーーっ!」
予想はしていた。
だけれど、面と向かって放たれた竜馬の言葉に、私の心がついていけない。
仁美が・・・氏んだ?
ほむら 「こ、これが・・・」
今、手のひらの上にある無機質で冷たい物体が。
つい先ほどまで言葉を交わしていた、学校では笑顔を交し合った志筑仁美だと竜馬は言うのだ。
信じられない。いや、信じたくなかった。
言いながら、私も空いた方の手をリョウに向ける。
その上に、織莉子としたのと同じように、彼は一つのグリーフシードを乗せた。
ほむら 「これって・・・」
竜馬 「志筑仁美だ・・・」
ほむら 「ーーーーーっ!」
予想はしていた。
だけれど、面と向かって放たれた竜馬の言葉に、私の心がついていけない。
仁美が・・・氏んだ?
ほむら 「こ、これが・・・」
今、手のひらの上にある無機質で冷たい物体が。
つい先ほどまで言葉を交わしていた、学校では笑顔を交し合った志筑仁美だと竜馬は言うのだ。
信じられない。いや、信じたくなかった。
781: 2015/06/12(金) 01:51:01.90
ほむら 「うっ・・・」
ゾクっと。
私の背筋を悪寒が走りぬける。
私たち魔法少女にとって、グリーフシードは同胞の氏体にも等しい存在。
今、私の手の中には・・・
友達の氏体が、すっぽりと収まっているのだ。
ほむら 「りょ、リョウ・・・聞かせて、いったい中で何が・・・」
竜馬 「・・・」
織莉子 「そうよ!言いなさい、流竜馬!」
織莉子が今までになく声を荒げた。
織莉子 「事と次第によっては、巴マミを頃すわ!」
ゾクっと。
私の背筋を悪寒が走りぬける。
私たち魔法少女にとって、グリーフシードは同胞の氏体にも等しい存在。
今、私の手の中には・・・
友達の氏体が、すっぽりと収まっているのだ。
ほむら 「りょ、リョウ・・・聞かせて、いったい中で何が・・・」
竜馬 「・・・」
織莉子 「そうよ!言いなさい、流竜馬!」
織莉子が今までになく声を荒げた。
織莉子 「事と次第によっては、巴マミを頃すわ!」
782: 2015/06/12(金) 01:52:39.81
だが・・・
マミを人質にとっている3人の魔法少女たちも、私たちほどではないにしろ、動揺に心を奪われていた。
A子 「え・・・え・・・キリカちゃんと仁美さんがグリーフシードになっちゃったって・・・」
B子 「どういうこと?グリーフシードって、魔女の卵じゃなかったの?」
C子 「ていうか、二人とも氏んじゃったってこと・・・ちょっと・・・あのロボットってやばいんじゃないの・・・?」
こそこそと囁きあっている。
織莉子 「何をしゃべっているの、あなたたち!きちんと人質に集中していて!」
A子 「あ、う、うん。ごめん、織莉子ちゃん・・・」
織莉子は自分の取り巻きたちを厳しい口調で叱責すると、再び竜馬を睨み付けるように視線を戻した。
織莉子 「さぁ・・・」
竜馬 「分かってる。だが、俺だって混乱しているんだ。あまり、せかさないでくれ・・・」
竜馬にしては弱気な言葉を吐いたものの、それでも彼はポツリポツリと思い出すように語り始めた。
マミを人質にとっている3人の魔法少女たちも、私たちほどではないにしろ、動揺に心を奪われていた。
A子 「え・・・え・・・キリカちゃんと仁美さんがグリーフシードになっちゃったって・・・」
B子 「どういうこと?グリーフシードって、魔女の卵じゃなかったの?」
C子 「ていうか、二人とも氏んじゃったってこと・・・ちょっと・・・あのロボットってやばいんじゃないの・・・?」
こそこそと囁きあっている。
織莉子 「何をしゃべっているの、あなたたち!きちんと人質に集中していて!」
A子 「あ、う、うん。ごめん、織莉子ちゃん・・・」
織莉子は自分の取り巻きたちを厳しい口調で叱責すると、再び竜馬を睨み付けるように視線を戻した。
織莉子 「さぁ・・・」
竜馬 「分かってる。だが、俺だって混乱しているんだ。あまり、せかさないでくれ・・・」
竜馬にしては弱気な言葉を吐いたものの、それでも彼はポツリポツリと思い出すように語り始めた。
783: 2015/06/12(金) 01:53:52.42
竜馬 「どこから話すべきか・・・そうだな・・・」
ほむら 「・・・」
私も今は。
黙って竜馬の話に耳を傾けるほか、なすべき事が無かった。
掌の中のグリーフシード。
これが本当に仁美なのか。そうであるなら、どうしてこのような姿に成り果ててしまったのか。
私は・・・友達として知らなければならないから。
杏子 「・・・」
ほむら 「・・・」
私も今は。
黙って竜馬の話に耳を傾けるほか、なすべき事が無かった。
掌の中のグリーフシード。
これが本当に仁美なのか。そうであるなら、どうしてこのような姿に成り果ててしまったのか。
私は・・・友達として知らなければならないから。
杏子 「・・・」
795: 2015/06/18(木) 01:15:53.09
・・・
・・・
竜馬は不可思議な空間にいた。
身体はイーグル号のコクピットに座って、モニターで仁美たちの様子を見ている。
それは間違いがない。
だが、意識はもっと別のところにいた。
高い所から、全てを見下ろしているような・・・
まるで魂だけが体を抜け出し、ふわふわと浮かんでいるような胡乱な感覚。
竜馬 「こ、これは・・・」
形容しがたい状況に置かれ、竜馬の心に不安の波が押し寄せてくる。
いったい、何が起こっているのか。
・・・
竜馬は不可思議な空間にいた。
身体はイーグル号のコクピットに座って、モニターで仁美たちの様子を見ている。
それは間違いがない。
だが、意識はもっと別のところにいた。
高い所から、全てを見下ろしているような・・・
まるで魂だけが体を抜け出し、ふわふわと浮かんでいるような胡乱な感覚。
竜馬 「こ、これは・・・」
形容しがたい状況に置かれ、竜馬の心に不安の波が押し寄せてくる。
いったい、何が起こっているのか。
796: 2015/06/18(木) 01:17:26.61
? (リョウ・・・心を静かに保て)
謎の声が、再び竜馬に語りかけてきた。
だが、先程までとは違って、今度の声は竜馬のすぐ前から。
普通に会話を持ちかけられたように、ごく自然に聞こえてきた。
竜馬 「あ・・・」
竜馬がそちらへと視線を向ける。
そこには・・・
? 「リョウ」
懐かしい友の姿が・・・
竜馬 「あ、ああ・・・」
自分と相対するように浮かんでいたのだ。
謎の声が、再び竜馬に語りかけてきた。
だが、先程までとは違って、今度の声は竜馬のすぐ前から。
普通に会話を持ちかけられたように、ごく自然に聞こえてきた。
竜馬 「あ・・・」
竜馬がそちらへと視線を向ける。
そこには・・・
? 「リョウ」
懐かしい友の姿が・・・
竜馬 「あ、ああ・・・」
自分と相対するように浮かんでいたのだ。
797: 2015/06/18(木) 01:20:00.54
竜馬 「は、隼人!」
そう、そこにいたのは。
自分と共にゲッターに命をささげ、そして散って逝ったかけがえの無い友。
神 隼人。その人であったのだ。
竜馬 「やはりお前だったのか・・・隼人」
隼人 「この姿で会うのは、久しぶりだな。リョウよ」
竜馬 「・・・この姿、で?」
隼人 「俺はずっとお前と共にいたよ。ここで、この場所から、常にお前と共にあった」
竜馬 「この中って・・・お前は氏んだ後も、ゲッターの中にずっといたと言うのか?」
隼人 「俺は氏んではいないさ」
竜馬 「・・・氏んだろう?俺はお前の最期を看取ったんだ。お前は氏んだ。俺の腕の中で、確かに・・・眠るように・・・」
そう、そこにいたのは。
自分と共にゲッターに命をささげ、そして散って逝ったかけがえの無い友。
神 隼人。その人であったのだ。
竜馬 「やはりお前だったのか・・・隼人」
隼人 「この姿で会うのは、久しぶりだな。リョウよ」
竜馬 「・・・この姿、で?」
隼人 「俺はずっとお前と共にいたよ。ここで、この場所から、常にお前と共にあった」
竜馬 「この中って・・・お前は氏んだ後も、ゲッターの中にずっといたと言うのか?」
隼人 「俺は氏んではいないさ」
竜馬 「・・・氏んだろう?俺はお前の最期を看取ったんだ。お前は氏んだ。俺の腕の中で、確かに・・・眠るように・・・」
798: 2015/06/18(木) 01:22:13.93
隼人 「リョウ・・・目に見える事象が世界の全てではない。その事を心に深く刻んでおくんだ」
竜馬 「・・・お前、本当に隼人、なのか?」
隼人 「そうでもあるし、違うとも言える」
竜馬 「・・・わからねぇよ」
隼人 「リョウ、個は全で、全は個だ。今の俺の姿も、お前に馴染みのふかい姿を取っているに過ぎない」
竜馬 「隼人・・・」
キュウべぇ 「禅問答は、後にしてくれないかな」
不意に竜馬の肩に乗っていたキュウべぇが、二人の会話に割り込んできた。
竜馬 「・・・お前、本当に隼人、なのか?」
隼人 「そうでもあるし、違うとも言える」
竜馬 「・・・わからねぇよ」
隼人 「リョウ、個は全で、全は個だ。今の俺の姿も、お前に馴染みのふかい姿を取っているに過ぎない」
竜馬 「隼人・・・」
キュウべぇ 「禅問答は、後にしてくれないかな」
不意に竜馬の肩に乗っていたキュウべぇが、二人の会話に割り込んできた。
799: 2015/06/18(木) 01:26:06.83
竜馬 「お前も、ここに来ていたのか」
キュウべぇ 「込み入って話していたようなので、黙っていたけれどね。それにしても・・・」
キュウべぇがキョロキョロと辺りを見回す。
キュウべぇ 「ここは不思議な場所だね。いや、場所と言える物ではないのかな。僕たちの精神だけが、特殊な空間に飛ばされているとでも言うべきか」
竜馬 「分かるのか?」
キュウべぇ 「状況から予測しているに過ぎないけれどね。僕もこのような”場所”にくるのは初めてだ」
隼人 「・・・」
キュウべぇ 「ねぇ、君はいったい誰なんだい?こんな芸当ができる者が、僕たちや魔法少女のほかにもいるなんて驚きなんだけれど」
隼人 「さえずるなよ、インキュベーター」
竜馬 「いんきゅ・・・なんだって?」
キュウべぇ 「・・・僕の正式な名前さ。それを言い当てるとは、神隼人といったかい?君は、今を生きている人間ではないね」
隼人 「・・・」
キュウべぇ 「込み入って話していたようなので、黙っていたけれどね。それにしても・・・」
キュウべぇがキョロキョロと辺りを見回す。
キュウべぇ 「ここは不思議な場所だね。いや、場所と言える物ではないのかな。僕たちの精神だけが、特殊な空間に飛ばされているとでも言うべきか」
竜馬 「分かるのか?」
キュウべぇ 「状況から予測しているに過ぎないけれどね。僕もこのような”場所”にくるのは初めてだ」
隼人 「・・・」
キュウべぇ 「ねぇ、君はいったい誰なんだい?こんな芸当ができる者が、僕たちや魔法少女のほかにもいるなんて驚きなんだけれど」
隼人 「さえずるなよ、インキュベーター」
竜馬 「いんきゅ・・・なんだって?」
キュウべぇ 「・・・僕の正式な名前さ。それを言い当てるとは、神隼人といったかい?君は、今を生きている人間ではないね」
隼人 「・・・」
800: 2015/06/18(木) 01:30:02.03
キュウべぇ 「僕の予想だと、君はこのロボットに取り憑いている残存思念の類じゃないかと思うのだけれど、当たるとも遠からずじゃないかな」
隼人 「・・・お前の浅い知恵と乏しい経験則で、俺の何を図るつもりだ」
キュウべぇ 「悠久の歴史を紡いできた僕の経験を、乏しいと言い捨てるとはね」
隼人 「お前の企み、しかと聞いたぜ。さすが、進化の枠組みから自ら抜け出した連中の考えそうなことだ。底がな、あまりに浅いんだよ」
キュウべぇ 「進化から抜け出した・・・?僕たちが?いったい何のことだい・・・?」
隼人 「おこがましいんだよ、貴様。ゲッターを思い通りに扱えるとは、思い上がりも甚だしい」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬 「待てよ。じゃあやはり、お前が呉キリカと志筑仁美を外部から遮断しているのか。いったい、何のために・・・」
隼人 「インキュベーターの薄汚い企てに乗った連中には、ふさわしい報いを受けてもらう」
竜馬 「なに、それってどういう意味だ・・・?」
隼人 「それが進化の流れの反逆者に加担した者の末路だ」
隼人 「・・・お前の浅い知恵と乏しい経験則で、俺の何を図るつもりだ」
キュウべぇ 「悠久の歴史を紡いできた僕の経験を、乏しいと言い捨てるとはね」
隼人 「お前の企み、しかと聞いたぜ。さすが、進化の枠組みから自ら抜け出した連中の考えそうなことだ。底がな、あまりに浅いんだよ」
キュウべぇ 「進化から抜け出した・・・?僕たちが?いったい何のことだい・・・?」
隼人 「おこがましいんだよ、貴様。ゲッターを思い通りに扱えるとは、思い上がりも甚だしい」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬 「待てよ。じゃあやはり、お前が呉キリカと志筑仁美を外部から遮断しているのか。いったい、何のために・・・」
隼人 「インキュベーターの薄汚い企てに乗った連中には、ふさわしい報いを受けてもらう」
竜馬 「なに、それってどういう意味だ・・・?」
隼人 「それが進化の流れの反逆者に加担した者の末路だ」
801: 2015/06/18(木) 01:31:22.92
竜馬 「ま、待て!あいつらをどうするつもりだ!」
思わず隼人に詰め寄ろうとする竜馬。
だが、すぐ近くにいるはずの隼人なのに、なぜか竜馬には指先一つの距離さえ縮める事が出来ない。
竜馬 「は、隼人・・・!」
隼人に向かって伸ばした腕も、むなしく虚空を掴むのみ。
竜馬 「・・・っ」
もはや竜馬には、目の前の隼人を見つめる以外になす術がなかった。
思わず隼人に詰め寄ろうとする竜馬。
だが、すぐ近くにいるはずの隼人なのに、なぜか竜馬には指先一つの距離さえ縮める事が出来ない。
竜馬 「は、隼人・・・!」
隼人に向かって伸ばした腕も、むなしく虚空を掴むのみ。
竜馬 「・・・っ」
もはや竜馬には、目の前の隼人を見つめる以外になす術がなかった。
802: 2015/06/18(木) 01:34:11.95
・・・
・・・
ベアー号内
仁美 「あ、ああああっ!!」
それは突然だった。
ゲッターが魔力を吸い上げる量が、急激に増加したのだ。
現在ゲッターは動きを止めている。過度なエネルギーの吸収は行われないはずだというのに。
なのに現実として、仁美のソウルジェムは瞬く間に輝きを吸い取られて行っている。
仁美 「これは一体、何が起こっているんですの!?」
だが、その問いに応える者はいない。
代わりにスピーカーから漏れ聞こえてくるのは、キリカの切なげな呻き声のみだった。
仁美 (ジャガー号でも、同じことが起こっている!?)
・・・
ベアー号内
仁美 「あ、ああああっ!!」
それは突然だった。
ゲッターが魔力を吸い上げる量が、急激に増加したのだ。
現在ゲッターは動きを止めている。過度なエネルギーの吸収は行われないはずだというのに。
なのに現実として、仁美のソウルジェムは瞬く間に輝きを吸い取られて行っている。
仁美 「これは一体、何が起こっているんですの!?」
だが、その問いに応える者はいない。
代わりにスピーカーから漏れ聞こえてくるのは、キリカの切なげな呻き声のみだった。
仁美 (ジャガー号でも、同じことが起こっている!?)
803: 2015/06/18(木) 01:37:26.73
ともかく、今は現状をどうにか切り抜けなければならない。
このままでは数分を待たず、自分は魔力を吸い尽くされ魔女化してしまう。
仁美は先ほど回収したばかりのグリーフシードを懐から取り出し、魔力を吸収しようとした。
仁美 (大切なグリーフシードだけれど、背に腹は代えられませんわ!)
しかし・・・
仁美 「えっ・・・!?」
仁美は愕然とした。
先ほど誕生したばかりのグリーフシード。魔力は満タンのはずだったのに。
仁美 「二つとも・・・魔力が・・・からっぽっ!?」
このままでは数分を待たず、自分は魔力を吸い尽くされ魔女化してしまう。
仁美は先ほど回収したばかりのグリーフシードを懐から取り出し、魔力を吸収しようとした。
仁美 (大切なグリーフシードだけれど、背に腹は代えられませんわ!)
しかし・・・
仁美 「えっ・・・!?」
仁美は愕然とした。
先ほど誕生したばかりのグリーフシード。魔力は満タンのはずだったのに。
仁美 「二つとも・・・魔力が・・・からっぽっ!?」
804: 2015/06/18(木) 01:40:16.27
ありえない事態に、仁美が息をのむ。
どうして・・・と考えて、思いつく可能性は一つだけ。
仁美 「まさか、ゲッターがグリーフシードのエネルギーを、じかに吸収してしまった!?」
そんなことが起こり得るのか?だけれど、可能性としては、それしか考えられなかった。
しかし、それでは。
外へ出るどころか、連絡の手段すら奪われた自分の行く末は窮まってしまったという事になる。
仁美は絶望に身を震わせた。
それはこのまま、このコクピットで魔女となるのを待つ他ないという現実。
突き付けられたのは、目前に迫った”氏”。
どうして・・・と考えて、思いつく可能性は一つだけ。
仁美 「まさか、ゲッターがグリーフシードのエネルギーを、じかに吸収してしまった!?」
そんなことが起こり得るのか?だけれど、可能性としては、それしか考えられなかった。
しかし、それでは。
外へ出るどころか、連絡の手段すら奪われた自分の行く末は窮まってしまったという事になる。
仁美は絶望に身を震わせた。
それはこのまま、このコクピットで魔女となるのを待つ他ないという現実。
突き付けられたのは、目前に迫った”氏”。
805: 2015/06/18(木) 01:42:00.50
仁美 「ま、まだ・・・まだ氏ねない」
氏は覚悟していた。
いずれ訪れるであろう自分の運命も受け入れていた。
だけれど、それは今ではない。
彼女にはまだ、遣り残している事があるのだ。
仁美 「さ、さやかさん・・・」
仁美は恋敵でもある一番の親友の名を呼びながら、開かないハッチを幾度も叩いた。
しかし、鉄の扉は無情にも、冷たい沈黙を守ったままで、びくとも動かない。
仁美 「上条君・・・」
愛おしい男性の名を呼びながら、目の前のコンソールをまさぐる。
この現状から脱する手がかりを求めて。
だが、彼女の希望に沿うようなものは、まったく見出す事が出来なかった。
氏は覚悟していた。
いずれ訪れるであろう自分の運命も受け入れていた。
だけれど、それは今ではない。
彼女にはまだ、遣り残している事があるのだ。
仁美 「さ、さやかさん・・・」
仁美は恋敵でもある一番の親友の名を呼びながら、開かないハッチを幾度も叩いた。
しかし、鉄の扉は無情にも、冷たい沈黙を守ったままで、びくとも動かない。
仁美 「上条君・・・」
愛おしい男性の名を呼びながら、目の前のコンソールをまさぐる。
この現状から脱する手がかりを求めて。
だが、彼女の希望に沿うようなものは、まったく見出す事が出来なかった。
806: 2015/06/18(木) 01:43:18.90
仁美 「あ、ああ・・・」
そうしている間にも、仁美のソウルジェムの輝きは、刻一刻と失われつつあった。
仁美 「まだ、なにも・・・何もなし得ていませんわ」
藁にもすがろうと、仁美の手が虚空を掴む。
仁美 「上条君へのお別れも、さやかさんに上条君を託す一言も、私はまだ言っていない・・・」
その手の動きも、だんだんと緩慢になってくる。
吸われ続ける魔翌力とともに、仁美の思考も徐々に明瞭さを失っていった。
仁美 「上条君・・・」
そうしている間にも、仁美のソウルジェムの輝きは、刻一刻と失われつつあった。
仁美 「まだ、なにも・・・何もなし得ていませんわ」
藁にもすがろうと、仁美の手が虚空を掴む。
仁美 「上条君へのお別れも、さやかさんに上条君を託す一言も、私はまだ言っていない・・・」
その手の動きも、だんだんと緩慢になってくる。
吸われ続ける魔翌力とともに、仁美の思考も徐々に明瞭さを失っていった。
仁美 「上条君・・・」
807: 2015/06/18(木) 01:50:10.61
・・・
・・・
竜馬 「隼人、やめろ!」
竜馬には、この瞬間にゲッター内で起こっている事が、モニターを通さずとも全てが見えていた。
感覚が、全てを掴みとる。
目に見えないはずの、仁美やキリカの心情ですらも、文章化されたように心の中へと流れ込んでくるようだ。
心が痛かった。二人が感じている絶望や恐怖が、我が事のように竜馬の心を締め付ける。
竜馬 「魔法少女は魔力が尽きると、魔女となってしまうんだ!このままでは、志筑と呉は魔女となってしまう!」
キュウべぇ 「しかも、今度は先ほど殺された子たちと違い、魔女化を食い止める者はいない。ゲッターの中に二つも、魔女の結界が誕生してしまう事になるね」
竜馬 「冗談じゃない!隼人、あいつらを追い詰めているのがお前なら、すぐにやめてくれ!」
隼人 「すべての存在には分際というものがある。それを弁えなかった者には、相応の報いがあって当然だろう」
竜馬 「だが、それでは・・・」
隼人 「リョウ、彼女たちは魔女にはならない」
竜馬 「・・・え?」
・・・
竜馬 「隼人、やめろ!」
竜馬には、この瞬間にゲッター内で起こっている事が、モニターを通さずとも全てが見えていた。
感覚が、全てを掴みとる。
目に見えないはずの、仁美やキリカの心情ですらも、文章化されたように心の中へと流れ込んでくるようだ。
心が痛かった。二人が感じている絶望や恐怖が、我が事のように竜馬の心を締め付ける。
竜馬 「魔法少女は魔力が尽きると、魔女となってしまうんだ!このままでは、志筑と呉は魔女となってしまう!」
キュウべぇ 「しかも、今度は先ほど殺された子たちと違い、魔女化を食い止める者はいない。ゲッターの中に二つも、魔女の結界が誕生してしまう事になるね」
竜馬 「冗談じゃない!隼人、あいつらを追い詰めているのがお前なら、すぐにやめてくれ!」
隼人 「すべての存在には分際というものがある。それを弁えなかった者には、相応の報いがあって当然だろう」
竜馬 「だが、それでは・・・」
隼人 「リョウ、彼女たちは魔女にはならない」
竜馬 「・・・え?」
808: 2015/06/18(木) 01:51:37.55
隼人 「なぜなら、彼女たちは絶望しないからだ」
竜馬 「それって・・・どういう意味だ?」
キュウべぇ 「ばかな、ありえないよ」
隼人 「見ていればわかる」
それきり。
隼人は竜馬が何を話しかけても、再び口を開こうとはしなかった。
ただ黙って、事の成り行きを見守れと言うように、不思議な深みのある目で竜馬を見つめるのみ。
竜馬 「・・・隼人」
竜馬も今は。
隼人に従って、事の推移を見守る以外に為すべき術は残されていなかった。
竜馬 「それって・・・どういう意味だ?」
キュウべぇ 「ばかな、ありえないよ」
隼人 「見ていればわかる」
それきり。
隼人は竜馬が何を話しかけても、再び口を開こうとはしなかった。
ただ黙って、事の成り行きを見守れと言うように、不思議な深みのある目で竜馬を見つめるのみ。
竜馬 「・・・隼人」
竜馬も今は。
隼人に従って、事の推移を見守る以外に為すべき術は残されていなかった。
823: 2015/06/22(月) 00:28:55.59
・・・
・・・
キリカ 「織莉子・・・」
もはやつぶやく程度の力しか残されていない。
何が起こったのかは分からない。が、これから先。自分がどうなるかは、呉キリカにも分かっていた。
キリカ 「報い、なのかな・・・」
視線を移すと、そこには二人の少女が横たわっていた。
さきほど自分が手にかけた、今は物言わぬ二つの骸。
キリカ 「・・・君たちにだって、やりたい事はたくさんあったはずだよね。だから願いをかなえて魔法少女になったのだもの。だけれど、私がその望みを、全て摘み取ってしまった」
そのこと自体に、悔いはない。自分が最も大切に思っている、織莉子の願いを叶えるためだったのだから。
そして、それこそが、自分の願いでもあったのだから。
だけれど・・・
・・・
キリカ 「織莉子・・・」
もはやつぶやく程度の力しか残されていない。
何が起こったのかは分からない。が、これから先。自分がどうなるかは、呉キリカにも分かっていた。
キリカ 「報い、なのかな・・・」
視線を移すと、そこには二人の少女が横たわっていた。
さきほど自分が手にかけた、今は物言わぬ二つの骸。
キリカ 「・・・君たちにだって、やりたい事はたくさんあったはずだよね。だから願いをかなえて魔法少女になったのだもの。だけれど、私がその望みを、全て摘み取ってしまった」
そのこと自体に、悔いはない。自分が最も大切に思っている、織莉子の願いを叶えるためだったのだから。
そして、それこそが、自分の願いでもあったのだから。
だけれど・・・
824: 2015/06/22(月) 00:30:35.70
キリカ 「人の願いを潰しておいて、自分だけ悲願を達成するなんて、虫のいい話があるはずなんてないか」
キリカは自嘲を込めて笑った。
キリカ 「ふふ、だったら良いよ。私も君たちの所に行く。だから・・・」
織莉子が願いを叶えることだけは、許してあげて欲しい。
それだけを切に思った。
そうしておいて、あとは流れに身をゆだねるつもりで、そっと目を閉じる。
黙っていれば、長くてもあと数分で魔力が底をついてしまうだろう。
それは、呉キリカとしての生の終焉を意味する。
キリカ 「織莉子・・・」
目を閉じれば、瞼に浮かぶのは愛おしい彼女の顔ばかりだった。
キリカは自嘲を込めて笑った。
キリカ 「ふふ、だったら良いよ。私も君たちの所に行く。だから・・・」
織莉子が願いを叶えることだけは、許してあげて欲しい。
それだけを切に思った。
そうしておいて、あとは流れに身をゆだねるつもりで、そっと目を閉じる。
黙っていれば、長くてもあと数分で魔力が底をついてしまうだろう。
それは、呉キリカとしての生の終焉を意味する。
キリカ 「織莉子・・・」
目を閉じれば、瞼に浮かぶのは愛おしい彼女の顔ばかりだった。
825: 2015/06/22(月) 00:32:45.49
自分がいなくなった後、織莉子はどうなるのだろう。
彼女は自分を欠いて、それでも願いを叶えることができるのだろうか。
キリカ 「織莉子、織莉子・・・」
キリカの心に、不安と孤独感が激流となって押し寄せてきた。
織莉子をおいて氏ぬことの恐怖。
二度と織莉子と会えないことへの恐怖。
二つの恐怖がないまぜとなって、キリカの心を不安の色で染め上げようとする。
キリカ 「・・・っ!!」
間もなく恐怖は最大の絶望となって、わが身と心を覆ってしまうだろう。
そうなってしまう前に・・・
キリカ 「終わらせなきゃ・・・!」
彼女は自分を欠いて、それでも願いを叶えることができるのだろうか。
キリカ 「織莉子、織莉子・・・」
キリカの心に、不安と孤独感が激流となって押し寄せてきた。
織莉子をおいて氏ぬことの恐怖。
二度と織莉子と会えないことへの恐怖。
二つの恐怖がないまぜとなって、キリカの心を不安の色で染め上げようとする。
キリカ 「・・・っ!!」
間もなく恐怖は最大の絶望となって、わが身と心を覆ってしまうだろう。
そうなってしまう前に・・・
キリカ 「終わらせなきゃ・・・!」
826: 2015/06/22(月) 00:35:01.99
織莉子の願いを繋ぐゲッターの中で、自分が魔女の結界を発生させてしまうなんて事態は、なんとしても避けなければならない。
だから。
自分自身の手で、呉キリカの人生に終止符を打たなければならない。
キリカ 「よし・・・し、氏ぬぞ!」
キリカは最後の力を振り絞り、己の武器の切っ先を自分のソウルジェムへと向けた。
一撃を振り下ろせば、虫ほどの力しか残されていないキリカでも、たやすく氏ねるはずだ。
キリカ 「織莉子の願いを妨げない。そのためなら、氏ぬ程度の事、どうってことない・・・っ!!」
覚悟を定め、キリカは武器を振り下ろした。
だが・・・
その切っ先がソウルジェムに届くことはなかった。
なぜなら・・・
キリカ 「え・・・!?」
・・・武器を手にした腕を、何者かにそっと握られたから。
だから。
自分自身の手で、呉キリカの人生に終止符を打たなければならない。
キリカ 「よし・・・し、氏ぬぞ!」
キリカは最後の力を振り絞り、己の武器の切っ先を自分のソウルジェムへと向けた。
一撃を振り下ろせば、虫ほどの力しか残されていないキリカでも、たやすく氏ねるはずだ。
キリカ 「織莉子の願いを妨げない。そのためなら、氏ぬ程度の事、どうってことない・・・っ!!」
覚悟を定め、キリカは武器を振り下ろした。
だが・・・
その切っ先がソウルジェムに届くことはなかった。
なぜなら・・・
キリカ 「え・・・!?」
・・・武器を手にした腕を、何者かにそっと握られたから。
827: 2015/06/22(月) 00:36:44.31
キリカ 「だ、だれ・・・!?」
自分しか、動く者のいないはずのコクピット。
それなのに、キリカの自害を押しとどめた者がいる。
驚きつつも、キリカは力の入らない首を必氏に巡らした。
その何者かがいる方へと。
そして見た姿に、キリカはさらに驚愕させられる。
キリカ 「な、なんで君たちが・・・」
キリカは、やっとの思いでそう一言。
そう問いかけるだけで精いっぱいだった。
なぜなら、そこにいた者は・・・
先ほど自分が手にかけたはずの。
いや・・・
現に今も、コクピットの床に、冷たくなった体を横たえているはずの、F子とG子の姿だったからだ。
自分しか、動く者のいないはずのコクピット。
それなのに、キリカの自害を押しとどめた者がいる。
驚きつつも、キリカは力の入らない首を必氏に巡らした。
その何者かがいる方へと。
そして見た姿に、キリカはさらに驚愕させられる。
キリカ 「な、なんで君たちが・・・」
キリカは、やっとの思いでそう一言。
そう問いかけるだけで精いっぱいだった。
なぜなら、そこにいた者は・・・
先ほど自分が手にかけたはずの。
いや・・・
現に今も、コクピットの床に、冷たくなった体を横たえているはずの、F子とG子の姿だったからだ。
828: 2015/06/22(月) 00:39:58.57
・・・
・・・
ベアー号の中でも、同様の事が起こっていた。
仁美が手にかけた少女が二人、生前と同様の姿で現れ、そして今。
仁美の傍らに立って、静かに彼女を見下ろしているのだ。
仁美 「私を・・・迎えに来たんですの?」
仁美 「恨んでいるでしょうね。憎んでおいででしょう。今や瀕氏の私に、とどめを刺しに参ったのですね・・・」
仁美 「・・・」
仁美 「え、違う・・・?でも、だって・・・」
仁美 「憎んでない・・・?どうして・・・だって私は、あなたたちを騙して、頃してしまったのですよ?」
仁美 「・・・」
仁美 「なるべくして、なるようになった・・・そうおっしゃるの?え、それは私も・・・?」
・・・
ベアー号の中でも、同様の事が起こっていた。
仁美が手にかけた少女が二人、生前と同様の姿で現れ、そして今。
仁美の傍らに立って、静かに彼女を見下ろしているのだ。
仁美 「私を・・・迎えに来たんですの?」
仁美 「恨んでいるでしょうね。憎んでおいででしょう。今や瀕氏の私に、とどめを刺しに参ったのですね・・・」
仁美 「・・・」
仁美 「え、違う・・・?でも、だって・・・」
仁美 「憎んでない・・・?どうして・・・だって私は、あなたたちを騙して、頃してしまったのですよ?」
仁美 「・・・」
仁美 「なるべくして、なるようになった・・・そうおっしゃるの?え、それは私も・・・?」
829: 2015/06/22(月) 00:42:22.57
仁美 「あなた達と一つになる?でも、私はまだ、遣り残したことが・・・」
仁美 「え・・・遣り残したことも、今の現状も、全ては定められていた事?それって・・・」
仁美 「・・・あなたたちの氏も、ですの?」
仁美 「・・・」
仁美 「そう、そういう事でしたか。ああ、私にも見えてきましたわ・・・」
仁美 「ゲッターが私に流れ込んでくる・・・いいえ、私と交わる。一つになる・・・」
仁美 「あなたたちとも、いずれは上条君やさやかさんとも・・・」
D子とE子がそっと。
仁美に向かって、手を差し伸べる。
瞳もそれに応え、二人の手を静かに取った。
仁美 「ともに・・・」
受け入れの言葉とともに。
仁美 「え・・・遣り残したことも、今の現状も、全ては定められていた事?それって・・・」
仁美 「・・・あなたたちの氏も、ですの?」
仁美 「・・・」
仁美 「そう、そういう事でしたか。ああ、私にも見えてきましたわ・・・」
仁美 「ゲッターが私に流れ込んでくる・・・いいえ、私と交わる。一つになる・・・」
仁美 「あなたたちとも、いずれは上条君やさやかさんとも・・・」
D子とE子がそっと。
仁美に向かって、手を差し伸べる。
瞳もそれに応え、二人の手を静かに取った。
仁美 「ともに・・・」
受け入れの言葉とともに。
830: 2015/06/22(月) 00:45:50.23
・・・
・・・
竜馬 「志筑・・・呉・・・」
キュウべぇ 「まさか氏んだ人間が、揃いも揃って姿を現すとはね」
竜馬 「どういうカラクリなんだよ・・・」
隼人 「あれは、俺と同じ存在だ」
竜馬 「キュウべぇの言っていた、残存思念とか言うやつなの、か・・・」
隼人 「志筑仁美が濁りはじめたソウルジェムを浄化しようとした時の事を思い出せ」
竜馬 「・・・え?」
キュウべぇ 「満タンであって然るべき、新しいグリーフシードの魔力がカラだったよね」
竜馬 「志筑はグリーフシードから、直にゲッターが魔力を吸い取ったと考えたようだが・・・」
隼人 「そうじゃない。あれは、元から空っぽだったのさ」
キュウべぇ 「・・・意味が分からないよ。そんな事があるはずがない」
隼人 「だから言ったのさ。浅はかな存在のてめぇ如きに、ゲッターは理解できないとな」
キュウべぇ 「・・・」
・・・
竜馬 「志筑・・・呉・・・」
キュウべぇ 「まさか氏んだ人間が、揃いも揃って姿を現すとはね」
竜馬 「どういうカラクリなんだよ・・・」
隼人 「あれは、俺と同じ存在だ」
竜馬 「キュウべぇの言っていた、残存思念とか言うやつなの、か・・・」
隼人 「志筑仁美が濁りはじめたソウルジェムを浄化しようとした時の事を思い出せ」
竜馬 「・・・え?」
キュウべぇ 「満タンであって然るべき、新しいグリーフシードの魔力がカラだったよね」
竜馬 「志筑はグリーフシードから、直にゲッターが魔力を吸い取ったと考えたようだが・・・」
隼人 「そうじゃない。あれは、元から空っぽだったのさ」
キュウべぇ 「・・・意味が分からないよ。そんな事があるはずがない」
隼人 「だから言ったのさ。浅はかな存在のてめぇ如きに、ゲッターは理解できないとな」
キュウべぇ 「・・・」
831: 2015/06/22(月) 00:48:29.11
竜馬 「待てよ。じゃあ、元から空だったというなら、その中身はどこに行っちまったんだ。それにそれと、今の出来事のどこに関わり合いが・・・」
疑問を言いかけた竜馬が、はっとして口をつぐんだ。
キュウべぇ 「・・・竜馬?」
竜馬 「隼人・・・あの二人、お前と同じ存在だと言ったな」
隼人 「ああ」
竜馬 「確かに氏んだはずのお前が、今はこうして。俺の前に姿を現している。そして、あの二人の少女たちも。これは・・・」
隼人 「・・・」
竜馬 「理屈は分からねぇ。だから、これは俺のゲッター乗りとしての本能が告げる、単なる予想に過ぎない」
隼人 「リョウ。お前は今、真実の扉を開けようとしている」
竜馬 「お前も氏んだ魔法少女たちも・・・ゲッターに取り込まれた・・・」
隼人 「違う。だが、近い」
竜馬 「いや・・・ゲッターと一つに交わった、のか!」
疑問を言いかけた竜馬が、はっとして口をつぐんだ。
キュウべぇ 「・・・竜馬?」
竜馬 「隼人・・・あの二人、お前と同じ存在だと言ったな」
隼人 「ああ」
竜馬 「確かに氏んだはずのお前が、今はこうして。俺の前に姿を現している。そして、あの二人の少女たちも。これは・・・」
隼人 「・・・」
竜馬 「理屈は分からねぇ。だから、これは俺のゲッター乗りとしての本能が告げる、単なる予想に過ぎない」
隼人 「リョウ。お前は今、真実の扉を開けようとしている」
竜馬 「お前も氏んだ魔法少女たちも・・・ゲッターに取り込まれた・・・」
隼人 「違う。だが、近い」
竜馬 「いや・・・ゲッターと一つに交わった、のか!」
832: 2015/06/22(月) 00:49:52.56
人 「そうだ、リョウ。故に彼女たちは絶望に陥らない。人としての生を終える直前に、すべてを悟ったのだからな」
キュウべぇ 「では、魔力はどこに・・・」
隼人 「グリーフシードの持つ魔力は、元となった魔法少女の生命力そのものだ。彼女たちが自らゲッターと同化することを望んだのだから、あとに残されたグリーフシードは単なる抜け殻以外の何物でもない」
キュウべぇ 「馬鹿な・・・」
隼人 「感情を捨てたお前でも、驚きを隠せないか」
キュウべぇ 「だったらこれから先、どれだけゲッターを使って魔法少女の魔力を吸い取っても、僕はエネルギーを回収できないってことになるじゃないか!」
隼人 「く・・・くくく・・・やっと結論にたどり着いたのか、進化を放棄したものよ。そうだ、お前の言うとおりだ。魔力を吸われた少女たちは、”俺”と同化するのだからな」
キュウべぇ 「計画を練り直さなくては・・・そうとなれば、もうゲッターなんて用済みだ。僕は失礼させてもらうよ」
竜馬 「あ、おい・・・!」
キュウべぇがテレポートの体勢を取ろうとした、その瞬間。
隼人 「逃さねぇ」
隼人が静かに一言を発した。
まるでそれが合図でもあったかのように、キュウべぇはビクンと激しく一度痙攣して、竜馬の肩の上で意識を失ってしまった。
キュウべぇ 「では、魔力はどこに・・・」
隼人 「グリーフシードの持つ魔力は、元となった魔法少女の生命力そのものだ。彼女たちが自らゲッターと同化することを望んだのだから、あとに残されたグリーフシードは単なる抜け殻以外の何物でもない」
キュウべぇ 「馬鹿な・・・」
隼人 「感情を捨てたお前でも、驚きを隠せないか」
キュウべぇ 「だったらこれから先、どれだけゲッターを使って魔法少女の魔力を吸い取っても、僕はエネルギーを回収できないってことになるじゃないか!」
隼人 「く・・・くくく・・・やっと結論にたどり着いたのか、進化を放棄したものよ。そうだ、お前の言うとおりだ。魔力を吸われた少女たちは、”俺”と同化するのだからな」
キュウべぇ 「計画を練り直さなくては・・・そうとなれば、もうゲッターなんて用済みだ。僕は失礼させてもらうよ」
竜馬 「あ、おい・・・!」
キュウべぇがテレポートの体勢を取ろうとした、その瞬間。
隼人 「逃さねぇ」
隼人が静かに一言を発した。
まるでそれが合図でもあったかのように、キュウべぇはビクンと激しく一度痙攣して、竜馬の肩の上で意識を失ってしまった。
833: 2015/06/22(月) 00:52:20.00
竜馬 「隼人・・・お前、頃したのか?」
隼人 「頃す価値もないさ、こんなやつ」
竜馬 「では・・・」
隼人 「言ったはずだ、奴には報いを受けてもらう、とな。もっともこいつの代わりはいくらでもいるようだが・・・」
竜馬 「・・・何をしたんだ」
隼人 「インキュベーターを代表して、この個体に役に立ってもらおうと思ってな。悪いようにはしないから、こいつは連れて帰れ」
竜馬 「・・・志筑と呉は?」
隼人 「彼女たちは、すでにゲッターと共にあることを選んでいる」
竜馬 「・・・っ」
竜馬は再び、ジャガー号とベアー号に意識を向けた。
だが、そこにはもう、キリカも仁美の姿もなく・・・
ただポツン、とむなしく。
座席の上にグリーフシードだけが、残されているのみだった。
隼人 「頃す価値もないさ、こんなやつ」
竜馬 「では・・・」
隼人 「言ったはずだ、奴には報いを受けてもらう、とな。もっともこいつの代わりはいくらでもいるようだが・・・」
竜馬 「・・・何をしたんだ」
隼人 「インキュベーターを代表して、この個体に役に立ってもらおうと思ってな。悪いようにはしないから、こいつは連れて帰れ」
竜馬 「・・・志筑と呉は?」
隼人 「彼女たちは、すでにゲッターと共にあることを選んでいる」
竜馬 「・・・っ」
竜馬は再び、ジャガー号とベアー号に意識を向けた。
だが、そこにはもう、キリカも仁美の姿もなく・・・
ただポツン、とむなしく。
座席の上にグリーフシードだけが、残されているのみだった。
834: 2015/06/22(月) 01:01:44.83
・・・
・・・
竜馬 「・・・しばらくして、俺は通常の空間に戻された。その時にはもう、隼人の姿もなく・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・いや、隼人だけじゃない。ゲッターの中で生きていたのは、俺とこいつだけになっていたのさ」
言いながら、こつんと軽く。
竜馬が地べたに横たわっているキュウべぇを蹴飛ばした。
だけれどそれでも、キュウべぇはピクリとも動かない。本当に生きているんだろうか・・・
竜馬 「これが・・・俺がゲッターに乗り込んでから降りるまでの、顛末のすべてだ」
そう言って、竜馬は話を終えた。
先ほどまで生きていた6人の少女たちが、今はもういない。
しかも、その氏が明らかにしたのは、ゲッターロボの、私たちの理解が及ばない恐ろしい一面。
しょせん子供でしかない私たちが受け止めるには、それはあまりに重い現実。
衝撃を受けないはずがない。私たちは、誰もが語るべき言葉を失っていた。
・・・
竜馬 「・・・しばらくして、俺は通常の空間に戻された。その時にはもう、隼人の姿もなく・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・いや、隼人だけじゃない。ゲッターの中で生きていたのは、俺とこいつだけになっていたのさ」
言いながら、こつんと軽く。
竜馬が地べたに横たわっているキュウべぇを蹴飛ばした。
だけれどそれでも、キュウべぇはピクリとも動かない。本当に生きているんだろうか・・・
竜馬 「これが・・・俺がゲッターに乗り込んでから降りるまでの、顛末のすべてだ」
そう言って、竜馬は話を終えた。
先ほどまで生きていた6人の少女たちが、今はもういない。
しかも、その氏が明らかにしたのは、ゲッターロボの、私たちの理解が及ばない恐ろしい一面。
しょせん子供でしかない私たちが受け止めるには、それはあまりに重い現実。
衝撃を受けないはずがない。私たちは、誰もが語るべき言葉を失っていた。
835: 2015/06/22(月) 01:05:01.78
そんな中。
沈黙を最初に破ったのは、動揺の色を隠せないままの織莉子だった。
織莉子 「そんな馬鹿な。じゃあ、私たちの計画は・・・?だったら私は、何のために罪のない少女たちを魔法少女に仕立て上げたの・・・」
ほむら 「・・・」
織莉子 「キリカは、何のためにこんな姿になったというの・・・」
グリーフシードと変わり果てた友を呆然と見つめ、誰に言うとでも無くつぶやいている。
だけれど、動揺しているのは織莉子ばかりじゃない。
私も仁美という友人の最期を聞いて、心がざわめくのを留められないでいた。
でも、それ以上に・・・
A子 「え・・・え・・・私たち・・・殺されるために集められたって事なの?」
B子 「そんな・・・それに、いずれは魔女になっちゃうって、どういうことなのよ!」
C子 「聞いてない!これじゃ、せっかく願いが叶ったって、意味ないよ!」
心酔していた人に裏切らていたことを知り、事実上の氏刑宣告まで受けた織莉子の取り巻きたち。
彼女たちの取り乱しようは、私たちの比ではなかった。
・・・そんな混乱のるつぼにあって、ただ一人。
状況を冷静に見通していた者がいた。
杏子だ。
沈黙を最初に破ったのは、動揺の色を隠せないままの織莉子だった。
織莉子 「そんな馬鹿な。じゃあ、私たちの計画は・・・?だったら私は、何のために罪のない少女たちを魔法少女に仕立て上げたの・・・」
ほむら 「・・・」
織莉子 「キリカは、何のためにこんな姿になったというの・・・」
グリーフシードと変わり果てた友を呆然と見つめ、誰に言うとでも無くつぶやいている。
だけれど、動揺しているのは織莉子ばかりじゃない。
私も仁美という友人の最期を聞いて、心がざわめくのを留められないでいた。
でも、それ以上に・・・
A子 「え・・・え・・・私たち・・・殺されるために集められたって事なの?」
B子 「そんな・・・それに、いずれは魔女になっちゃうって、どういうことなのよ!」
C子 「聞いてない!これじゃ、せっかく願いが叶ったって、意味ないよ!」
心酔していた人に裏切らていたことを知り、事実上の氏刑宣告まで受けた織莉子の取り巻きたち。
彼女たちの取り乱しようは、私たちの比ではなかった。
・・・そんな混乱のるつぼにあって、ただ一人。
状況を冷静に見通していた者がいた。
杏子だ。
836: 2015/06/22(月) 01:11:48.73
杏子 「・・・武蔵っ!」
それは突然だった。
杏子が叫ぶのと同時に、風を裂くように駆け出したのだ。
彼女が駆ける先には、マミに武器を突き付けたまま狼狽えている、三人の魔法少女たちがいた。
・・・そして。
杏子に呼ばれた武蔵も、瞬時に状況を理解すると、彼もまた巨体に似合わぬ俊敏さで行動に出た。
杏子 「ロッソ・ファンタズマぁっ!!」
技名を叫ぶのと同時に三人に分身した杏子が、各々の獲物に向かって武器を振りかざす。
杏子 「やぁあっ!!」
気合の声もろとも突き出された槍の穂先は、それぞれ狙いたがわず少女たちの体を貫き、切り裂いていた。
突然の惨劇に見舞われ、鮮血を上げながら、悲痛な叫びをあげるA子たち。
それは突然だった。
杏子が叫ぶのと同時に、風を裂くように駆け出したのだ。
彼女が駆ける先には、マミに武器を突き付けたまま狼狽えている、三人の魔法少女たちがいた。
・・・そして。
杏子に呼ばれた武蔵も、瞬時に状況を理解すると、彼もまた巨体に似合わぬ俊敏さで行動に出た。
杏子 「ロッソ・ファンタズマぁっ!!」
技名を叫ぶのと同時に三人に分身した杏子が、各々の獲物に向かって武器を振りかざす。
杏子 「やぁあっ!!」
気合の声もろとも突き出された槍の穂先は、それぞれ狙いたがわず少女たちの体を貫き、切り裂いていた。
突然の惨劇に見舞われ、鮮血を上げながら、悲痛な叫びをあげるA子たち。
837: 2015/06/22(月) 01:13:59.94
織莉子 「・・・え!?」
突然の成り行きにやっと我に返った織莉子だったが、時すでに遅しだった。
武蔵 「ほむらちゃん!!」
ほむら 「!」
武蔵がこちらに突進してくる。
私は強引に織莉子の手を振りほどく。と、同時に、ステップを踏むように一歩、後ろへと飛びのいた。
織莉子 「しまっ・・・」
武蔵 「女だからって、容赦しないぜ!」
そこに飛び込んできた武蔵が織莉子に躍りかかると、彼女の襟と腕をつかみ・・・
武蔵 「そらぁっ!!」
目にもとまらぬ速さで一本背負いを決めていた。
突然の成り行きにやっと我に返った織莉子だったが、時すでに遅しだった。
武蔵 「ほむらちゃん!!」
ほむら 「!」
武蔵がこちらに突進してくる。
私は強引に織莉子の手を振りほどく。と、同時に、ステップを踏むように一歩、後ろへと飛びのいた。
織莉子 「しまっ・・・」
武蔵 「女だからって、容赦しないぜ!」
そこに飛び込んできた武蔵が織莉子に躍りかかると、彼女の襟と腕をつかみ・・・
武蔵 「そらぁっ!!」
目にもとまらぬ速さで一本背負いを決めていた。
838: 2015/06/22(月) 01:27:44.71
織莉子 「あ、ああ・・・っ!」
宙高く投げ出され、受け身も取れないまま地面にたたきつけられる織莉子。
織莉子 「くあっ!!あ、ううう」
ほむら 「・・・」
声にならないうめきを上げながら身もだえている。
私はバックラーへと手を差し入れながら、そんな織莉子へと近づいて行った。
中から取り出したのは、一丁の小銃。
安全装置を外し、引き金に指を駆けると、織莉子へと向かって銃口を突き付ける。
ほむら 「やっと形勢逆転ね・・・」
宙高く投げ出され、受け身も取れないまま地面にたたきつけられる織莉子。
織莉子 「くあっ!!あ、ううう」
ほむら 「・・・」
声にならないうめきを上げながら身もだえている。
私はバックラーへと手を差し入れながら、そんな織莉子へと近づいて行った。
中から取り出したのは、一丁の小銃。
安全装置を外し、引き金に指を駆けると、織莉子へと向かって銃口を突き付ける。
ほむら 「やっと形勢逆転ね・・・」
839: 2015/06/22(月) 01:29:19.29
織莉子 「くぅ・・・」
杏子 「へ・・・この時を待ってたんだよ。こいつの気がそれて、取り巻きまで気が回らなくなる、その時をな」
分身を解いた杏子もやって来て、織莉子の顔を覗き込みながらニヤリと笑った。
ほむら 「あの子たち、頃したの?」
杏子 「頃すかよ、後味が悪い。身体は切り刻んでやったが、ソウルジェムには傷一つ付けてないぜ」
織莉子に注意を向けたまま、ちらりとそちらを確認する。
確かに杏子にやられた少女たちは、血の海に横たわりながらも、切なげな呻き声を上げ続けていた。
間違いなく、生きている。私はホッと、息を吐いた。
・・・敵だったとはいえ、今はもう、誰の氏も目にしたくない。
ほむら 「そう・・・ありがとう」
杏子 「へ・・・この時を待ってたんだよ。こいつの気がそれて、取り巻きまで気が回らなくなる、その時をな」
分身を解いた杏子もやって来て、織莉子の顔を覗き込みながらニヤリと笑った。
ほむら 「あの子たち、頃したの?」
杏子 「頃すかよ、後味が悪い。身体は切り刻んでやったが、ソウルジェムには傷一つ付けてないぜ」
織莉子に注意を向けたまま、ちらりとそちらを確認する。
確かに杏子にやられた少女たちは、血の海に横たわりながらも、切なげな呻き声を上げ続けていた。
間違いなく、生きている。私はホッと、息を吐いた。
・・・敵だったとはいえ、今はもう、誰の氏も目にしたくない。
ほむら 「そう・・・ありがとう」
840: 2015/06/22(月) 01:37:30.96
杏子 「な、なんだよ、気持ち悪いな」
ほむら 「この状況、打開できるとしたら、あなたが鍵だと思っていたから。その通りになったわ、だから」
杏子 「まぁ、な。こいつ、予知ができる割には、すごい動揺しまくってたからさ。ていう事は、今のこの瞬間の予知は出来てないんじゃないかって、そう思ったんだよ」
ほむら 「さすが、ベテランね。ビンゴよ。感の冴えは一流だわ」
杏子 「よせよ、褒めたって何も出ねぇよ。それよりも、だ」
ほむら 「そうね・・・」
私は屈みこむと、織莉子の顔を覗き込んだ。
ほむら 「ねぇ、美国織莉子」
言いながら、彼女のソウルジェムに銃口を突き付ける。
ほむら 「万策尽きた美国織莉子さん・・・あなたはこれからどうするつもり?」
筒先がソウルジェムにコツンっと触れ、無機質な音を結界内に響かせた。
ほむら 「この状況、打開できるとしたら、あなたが鍵だと思っていたから。その通りになったわ、だから」
杏子 「まぁ、な。こいつ、予知ができる割には、すごい動揺しまくってたからさ。ていう事は、今のこの瞬間の予知は出来てないんじゃないかって、そう思ったんだよ」
ほむら 「さすが、ベテランね。ビンゴよ。感の冴えは一流だわ」
杏子 「よせよ、褒めたって何も出ねぇよ。それよりも、だ」
ほむら 「そうね・・・」
私は屈みこむと、織莉子の顔を覗き込んだ。
ほむら 「ねぇ、美国織莉子」
言いながら、彼女のソウルジェムに銃口を突き付ける。
ほむら 「万策尽きた美国織莉子さん・・・あなたはこれからどうするつもり?」
筒先がソウルジェムにコツンっと触れ、無機質な音を結界内に響かせた。
841: 2015/06/22(月) 01:39:13.92
・・・
・・・
次回予告
美国織莉子たちの脅威は去り、再びグリーフシード集めに奔走するほむら達。
全ては一週間後に迫った、ワルプルギスの夜を乗り越えるため。
そんな中、かりそめの日常を送るほむらだったが、彼女はまどかにひとつの真実を告げる決意をする。
それがまどかを悲しみの底に突き落とす事となると知りながらも・・・
すべてはまどかのために。その想いの元に・・・
そしてついに、運命の日が訪れる!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第九話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
美国織莉子たちの脅威は去り、再びグリーフシード集めに奔走するほむら達。
全ては一週間後に迫った、ワルプルギスの夜を乗り越えるため。
そんな中、かりそめの日常を送るほむらだったが、彼女はまどかにひとつの真実を告げる決意をする。
それがまどかを悲しみの底に突き落とす事となると知りながらも・・・
すべてはまどかのために。その想いの元に・・・
そしてついに、運命の日が訪れる!
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第九話にテレビスイッチオン!
842: 2015/06/22(月) 01:40:27.70
以上で第八話終了です。
何となく、終わりが見えてきました。
次回もまた、お付き合いいただけたら嬉しいです。
何となく、終わりが見えてきました。
次回もまた、お付き合いいただけたら嬉しいです。
844: 2015/06/22(月) 01:50:09.21
神と悪魔、進化、全てはゲッターの意思……
そうか、そう言うことだったのか……
そうか、そう言うことだったのか……
845: 2015/06/22(月) 09:56:51.84
>>844
虚無ってしまったか
虚無ってしまったか
846: 2015/06/22(月) 11:35:09.67
原作者がちょくちょく虚無るんだよなゲッターロボはww
847: 2015/06/22(月) 13:28:24.93
乙です
848: 2015/06/22(月) 13:28:42.33
このSSは虚無らず終わるよな?
849: 2015/06/22(月) 20:17:00.73
>>848
ゲッターに身を委ねろ…!そうすればそんな些細な事は気にもならなくなる…!(ぐるぐる目)
ゲッターに身を委ねろ…!そうすればそんな些細な事は気にもならなくなる…!(ぐるぐる目)
引用元: ほむら「ゲッターロボ!」 第三話
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