856: 2015/07/31(金) 23:20:27.35
ほむら「ゲッターロボ!」 第九話
ほむら 「ねぇ、美国織莉子」
言いながら、私は彼女のソウルジェムに銃口を突き付ける。
ほむら 「万策尽きた美国織莉子さん・・・あなたはこれからどうするつもり?」
筒先がソウルジェムにコツンっと触れ、無機質な音を結界内に響かせた。
マミ 「・・・」
その様子を複雑な表情をしながら、解放されたマミが見守っている。
美国織莉子。
この危険な魔法少女をどうするか、どうするべきなのか。
織莉子が何を成そうとしていたのか。その目的のためには、非常な手段も厭わない冷徹な心の持ち主なのか。
分かってしまったからこそ、このまま野放しにはできない。
だけれど・・・
言いながら、私は彼女のソウルジェムに銃口を突き付ける。
ほむら 「万策尽きた美国織莉子さん・・・あなたはこれからどうするつもり?」
筒先がソウルジェムにコツンっと触れ、無機質な音を結界内に響かせた。
マミ 「・・・」
その様子を複雑な表情をしながら、解放されたマミが見守っている。
美国織莉子。
この危険な魔法少女をどうするか、どうするべきなのか。
織莉子が何を成そうとしていたのか。その目的のためには、非常な手段も厭わない冷徹な心の持ち主なのか。
分かってしまったからこそ、このまま野放しにはできない。
だけれど・・・
858: 2015/07/31(金) 23:23:19.77
優しいマミには、私に引き金を引くように促す事もできない。
そんなジレンマで頭を悩ませているというのが、ありありと見て取れる顔だった。
そしてそれは、最愛の妹を危険な目にあわされた武蔵も同様のようで・・・
ほむら (本当に似たもの兄妹なのね・・・)
その中にあって、ただ一人。
杏子だけが怒りをあらわに気炎を上げていた。
杏子 「・・・ほむら、何やってるんだよ。はやく殺っちまえよ」
ほむら 「佐倉さん・・・」
杏子 「こいつは生かしておいちゃダメな奴だ。おまえにだって、そんなの分かってるんだろ」
そんなジレンマで頭を悩ませているというのが、ありありと見て取れる顔だった。
そしてそれは、最愛の妹を危険な目にあわされた武蔵も同様のようで・・・
ほむら (本当に似たもの兄妹なのね・・・)
その中にあって、ただ一人。
杏子だけが怒りをあらわに気炎を上げていた。
杏子 「・・・ほむら、何やってるんだよ。はやく殺っちまえよ」
ほむら 「佐倉さん・・・」
杏子 「こいつは生かしておいちゃダメな奴だ。おまえにだって、そんなの分かってるんだろ」
859: 2015/07/31(金) 23:24:47.27
ほむら 「ええ・・・」
分かっている。
美国織莉子は賢い娘だ。
万策尽きたといっても、時を得ればどのように新たな企みを企てるか。
私には、皆目見当もつかなかった。
・・・それに。
ほむら (野放しにしておけば、いずれまどかの行く末を予知してしまうかも知れない)
そうなれば、呉キリカというパートナーを欠いたとはいえ、かつての時間軸での惨劇が繰り返されないとも限らないのだ。
ほむら (逃してはいけない)
そう思ったから、それが分かっていたから、こそ。
かつての時間軸では、私はためらう事無く、彼女の命を奪う事ができたのだ。
・・・だけれど。
分かっている。
美国織莉子は賢い娘だ。
万策尽きたといっても、時を得ればどのように新たな企みを企てるか。
私には、皆目見当もつかなかった。
・・・それに。
ほむら (野放しにしておけば、いずれまどかの行く末を予知してしまうかも知れない)
そうなれば、呉キリカというパートナーを欠いたとはいえ、かつての時間軸での惨劇が繰り返されないとも限らないのだ。
ほむら (逃してはいけない)
そう思ったから、それが分かっていたから、こそ。
かつての時間軸では、私はためらう事無く、彼女の命を奪う事ができたのだ。
・・・だけれど。
860: 2015/07/31(金) 23:27:42.51
杏子 「・・・お前がやらないなら、あたしがやるぞ」
ほむら 「佐倉さん?」
杏子 「こいつは許せない。そっちの雑魚たちとは違う。あたしはこいつを頃したって、心が痛まない自信があるね」
杏子が顎をしゃくって示したのは、いまだ呻き声を上げながら倒れている織莉子の取り巻きたち。
と、そこへ。
ととと・・・と、駆けてゆく小さな影があった。
それは・・・
ほむら 「え・・・ゆま?」
杏子 「ちょっ、ゆま、待てよ!?」
慌てて駆けだした杏子が、ゆまの前に立ちふさがって、叱るような口調で問いただす。
杏子 「お前、何やってるんだ。どこに行こうとしてるんだ?」
ほむら 「佐倉さん?」
杏子 「こいつは許せない。そっちの雑魚たちとは違う。あたしはこいつを頃したって、心が痛まない自信があるね」
杏子が顎をしゃくって示したのは、いまだ呻き声を上げながら倒れている織莉子の取り巻きたち。
と、そこへ。
ととと・・・と、駆けてゆく小さな影があった。
それは・・・
ほむら 「え・・・ゆま?」
杏子 「ちょっ、ゆま、待てよ!?」
慌てて駆けだした杏子が、ゆまの前に立ちふさがって、叱るような口調で問いただす。
杏子 「お前、何やってるんだ。どこに行こうとしてるんだ?」
861: 2015/07/31(金) 23:41:27.19
ゆま 「どいて、きょーこ。あのお姉ちゃんたち、助けてあげなきゃ」
杏子 「助けるって・・・織莉子の取り巻きたちをか」
ゆま 「うん」
ゆまが悪びれる様子もなく、こくんとうなづいた。
杏子 「ば、バカか、お前。放っておけよ。だいたい、ソウルジェムには傷一つ付けてないんだ。あとはてめーらで体でも何でも、修復するだろうさ」
ゆま 「でも痛がってる。かわいそうだよ」
杏子 「だから・・・」
マミ 「佐倉さん」
二人の押し問答に、マミが割って入った。
マミ 「この子たちのソウルジェムを見て」
杏子 「マミ・・・何だってんだよ」
文句を言いながらも、マミに促されて少女たちのソウルジェムに目をやる杏子。
杏子の軽く息をのむ音が、私の所まで聞こえてきた。
杏子 「助けるって・・・織莉子の取り巻きたちをか」
ゆま 「うん」
ゆまが悪びれる様子もなく、こくんとうなづいた。
杏子 「ば、バカか、お前。放っておけよ。だいたい、ソウルジェムには傷一つ付けてないんだ。あとはてめーらで体でも何でも、修復するだろうさ」
ゆま 「でも痛がってる。かわいそうだよ」
杏子 「だから・・・」
マミ 「佐倉さん」
二人の押し問答に、マミが割って入った。
マミ 「この子たちのソウルジェムを見て」
杏子 「マミ・・・何だってんだよ」
文句を言いながらも、マミに促されて少女たちのソウルジェムに目をやる杏子。
杏子の軽く息をのむ音が、私の所まで聞こえてきた。
862: 2015/07/31(金) 23:43:55.55
杏子 「・・・限界だな」
マミ 「ええ。この上でさらに魔力なんて使わせたら、この子たちまで魔女化してしまいかねないわ」
ほむら (なるほど、それは・・・そうなるわよね・・・)
信じていた人に裏切られ、自分たちの末路を知り、そのうえ身体を切り刻まれる。
それだけされれば、誰だってソウルジェムの輝きを曇らせるだろう。
ましてや彼女たちは、キュウべぇに大量生産された”バーゲン品”なのだ。
こんな事態になって、耐えられるほど強いはずもない。
杏子 「だから、だからってなんだよ。そんなの自業自得じゃないか。マミはこいつらに、何されたのか、もう忘れたのか!」
マミ 「この子たちは、そっちの子にただ従っていただけだもの。この子たちに対する遺恨なんて、私にはないわ」
マミ 「ええ。この上でさらに魔力なんて使わせたら、この子たちまで魔女化してしまいかねないわ」
ほむら (なるほど、それは・・・そうなるわよね・・・)
信じていた人に裏切られ、自分たちの末路を知り、そのうえ身体を切り刻まれる。
それだけされれば、誰だってソウルジェムの輝きを曇らせるだろう。
ましてや彼女たちは、キュウべぇに大量生産された”バーゲン品”なのだ。
こんな事態になって、耐えられるほど強いはずもない。
杏子 「だから、だからってなんだよ。そんなの自業自得じゃないか。マミはこいつらに、何されたのか、もう忘れたのか!」
マミ 「この子たちは、そっちの子にただ従っていただけだもの。この子たちに対する遺恨なんて、私にはないわ」
863: 2015/07/31(金) 23:46:03.61
杏子 「ちっ、良い子ぶりやがって、そんな所が昔から気に食わなかったんだ」
マミ 「そう言うあなたも相変わらずね」
杏子 「・・・それにさ。どのみち、さ。早いか、遅いかの差なんだろ」
マミ 「え・・・」
杏子 「そいつらも、あたし達も。結局行きつく先は同じなんだろ。だったら、変な情けをかけてやるだけ無駄ってもんじゃないのか」
マミ 「そ、それは・・・」
マミが言葉に詰まり、あたりに一瞬の静寂が訪れる。
竜馬がポツリ、正論だな、とつぶやいた。
だけれど。
ゆま 「じゃましないなら、どいて」
そんな二人のやり取りなんか目に入らないかのように。
ゆまが杏子とマミの脇を、すたすたと通り過ぎようとする。
マミ 「そう言うあなたも相変わらずね」
杏子 「・・・それにさ。どのみち、さ。早いか、遅いかの差なんだろ」
マミ 「え・・・」
杏子 「そいつらも、あたし達も。結局行きつく先は同じなんだろ。だったら、変な情けをかけてやるだけ無駄ってもんじゃないのか」
マミ 「そ、それは・・・」
マミが言葉に詰まり、あたりに一瞬の静寂が訪れる。
竜馬がポツリ、正論だな、とつぶやいた。
だけれど。
ゆま 「じゃましないなら、どいて」
そんな二人のやり取りなんか目に入らないかのように。
ゆまが杏子とマミの脇を、すたすたと通り過ぎようとする。
864: 2015/07/31(金) 23:56:30.19
杏子 「おい、今のあたしの話、聞いてなかったのかよ!」
ゆま 「ゆまたち、氏ぬんだよね」
杏子 「あ・・・え・・・?」
ゆま 「きょーこもほむらお姉ちゃんも、ここにいる魔法少女たちもみんな、氏んじゃうんだよね」
杏子 「そ、そうだよ!だからさ!」
ゆま 「じゃあ、きょーこは今日氏ぬの?みんな今日氏んじゃうの?」
杏子 「・・・う?!」
ゆまがゆっくりと杏子を見上げ、そしてにこりと笑った。
ゆま 「・・・氏ぬのは、今日じゃないよ」
どこかさみしげで、これまでのゆまには似つかわしくない。
どこか達観した雰囲気の笑顔・・・
ゆま 「ゆまたち、氏ぬんだよね」
杏子 「あ・・・え・・・?」
ゆま 「きょーこもほむらお姉ちゃんも、ここにいる魔法少女たちもみんな、氏んじゃうんだよね」
杏子 「そ、そうだよ!だからさ!」
ゆま 「じゃあ、きょーこは今日氏ぬの?みんな今日氏んじゃうの?」
杏子 「・・・う?!」
ゆまがゆっくりと杏子を見上げ、そしてにこりと笑った。
ゆま 「・・・氏ぬのは、今日じゃないよ」
どこかさみしげで、これまでのゆまには似つかわしくない。
どこか達観した雰囲気の笑顔・・・
865: 2015/08/01(土) 00:02:05.06
ほむら 「・・・あっ」
そして、私は気づかされる。
他に手いっぱいで、ゆまの事にまで気が回らなかった自分の迂闊さに。
ほむら 「さ、佐倉さん・・・私、私たち・・・まだ教えてない・・・」
杏子 「ああ?」
ほむら 「ゆまに、魔法少女がいずれ、魔女となる定めにあるという事・・・」
杏子 「あ・・・ああっ・・・!」
ゆま 「・・・」
そう、ゆまも織莉子の取り巻きたちと同じ。
今日知ったのだ。
やがては魔女となり、この世から消え去らねばならないという、自分の残酷すぎる運命に。
杏子 「ゆま、お前・・・」
ゆま 「・・・」
866: 2015/08/01(土) 00:03:11.40
あとはゆまは何も話さなかったし、誰もゆまの行動を阻もうとしなかった。
いや、できなかった。
そんな私たちを尻目に、ゆまは傷ついた魔法少女たちを得意の治癒魔法で癒し始めた。
マミ 「暁美さん、佐倉さん。こちらの事は、私に任せて」
マミが武器を構えながら、ゆまの傍らにそっと寄り添う。
傷を癒した魔法少女たちが逆襲に出ないよう、見張りを買って出てくれたのだ。
ちょうど、先ほどまでの立場が逆転した形。
もっとも。
ほむら (今さら、あの子たちが織莉子に義理立てして、私たちには向かってくるとも思えないけれど・・・)
いや、できなかった。
そんな私たちを尻目に、ゆまは傷ついた魔法少女たちを得意の治癒魔法で癒し始めた。
マミ 「暁美さん、佐倉さん。こちらの事は、私に任せて」
マミが武器を構えながら、ゆまの傍らにそっと寄り添う。
傷を癒した魔法少女たちが逆襲に出ないよう、見張りを買って出てくれたのだ。
ちょうど、先ほどまでの立場が逆転した形。
もっとも。
ほむら (今さら、あの子たちが織莉子に義理立てして、私たちには向かってくるとも思えないけれど・・・)
867: 2015/08/01(土) 00:04:25.95
何にしても、千歳ゆま・・・
魔法少女の真実に触れても、泣くことも取り乱すこともなかった。
幼い彼女の事を気遣い、事実を隠ぺいしようとした私たちの気づかいは、けっきょく気の回しすぎだったという事なのだろうか。
それとも・・・
ほむら (ううん・・・考え込むのは後だ。今はそれより)
美国織莉子の処置を考えなくてはいけない。
佐倉杏子は織莉子を殺せと言う。その意見は正しい。かつての私もそう思ったからこそ、躊躇なく引き金を引けたのだ。
だけれど・・・
織莉子 「撃たないの?」
かつてと同じように。
自嘲とも諦観とも取れない微笑を浮かべながら、織莉子が言った。
ほむら 「撃つわ」
対する私も、かつて自分が織莉子に言ったのと同じセリフを、再び彼女に投げつけた。
だけれど、言葉と心は裏腹だと証明するように、引き金にかけた私の指が、こわばって動かない。
魔法少女の真実に触れても、泣くことも取り乱すこともなかった。
幼い彼女の事を気遣い、事実を隠ぺいしようとした私たちの気づかいは、けっきょく気の回しすぎだったという事なのだろうか。
それとも・・・
ほむら (ううん・・・考え込むのは後だ。今はそれより)
美国織莉子の処置を考えなくてはいけない。
佐倉杏子は織莉子を殺せと言う。その意見は正しい。かつての私もそう思ったからこそ、躊躇なく引き金を引けたのだ。
だけれど・・・
織莉子 「撃たないの?」
かつてと同じように。
自嘲とも諦観とも取れない微笑を浮かべながら、織莉子が言った。
ほむら 「撃つわ」
対する私も、かつて自分が織莉子に言ったのと同じセリフを、再び彼女に投げつけた。
だけれど、言葉と心は裏腹だと証明するように、引き金にかけた私の指が、こわばって動かない。
868: 2015/08/01(土) 00:10:17.84
ほむら 「・・・っ」
私の心の内に。
先ほど織莉子から指摘された言葉が蘇る。
(織莉子 「あなたはどれだけの時間軸をループしてきたの?いったいどれだけの時間軸を見捨ててきたの?」 )
(織莉子 「どれだけの見滝原に住む人々を、見頃しにしてきたの?)
織莉子の言う通り、私は自分の目的のため、直接的・間接的を問わず、たくさんの人を見頃しにしてきた。
織莉子と私は、目的や手段が違うだけで、本質的には同質の存在でしかないのだ。
もちろん、まどかを危険な目にあわせ、仁美を結果的に氏に追いやった彼女の事を許すことはできない。
だけれど・・・
ほむら (それを、同じ事をしてきた私が、織莉子を断罪する資格なんてあるはずがない・・・)
私の心の内に。
先ほど織莉子から指摘された言葉が蘇る。
(織莉子 「あなたはどれだけの時間軸をループしてきたの?いったいどれだけの時間軸を見捨ててきたの?」 )
(織莉子 「どれだけの見滝原に住む人々を、見頃しにしてきたの?)
織莉子の言う通り、私は自分の目的のため、直接的・間接的を問わず、たくさんの人を見頃しにしてきた。
織莉子と私は、目的や手段が違うだけで、本質的には同質の存在でしかないのだ。
もちろん、まどかを危険な目にあわせ、仁美を結果的に氏に追いやった彼女の事を許すことはできない。
だけれど・・・
ほむら (それを、同じ事をしてきた私が、織莉子を断罪する資格なんてあるはずがない・・・)
869: 2015/08/01(土) 00:13:02.16
どうして良いのか分からない。
私は救いを求めるように、傍らに立つ竜馬に視線を向けた。
ほむら 「りょ、リョウ・・・」
竜馬 「・・・暁美」
だが、振り仰いだ竜馬の口から出たのは、私の期待した答えとは別の言葉だった。
竜馬 「ここはもう限界のようだぜ」
ほむら 「え・・・」
言われた私も 竜馬に倣って周囲を見渡す。
そして、気がつかされた。
ほむら 「結界の、崩壊が・・・始まってる?」
竜馬 「首の皮一枚で生かされていた魔女が、とうとう力尽きたらしいな」
ほむら 「じゃあ、私たちはもうすぐ、通常に空間に・・・」
戻されることになる。
そんな会話を交わしているそばから、結界の崩壊は加速度的に進んでゆく。
織莉子の処遇をどうするのか。その事を決める間もないほどに。
ほむら (彼女の事は、結界内で片を付けておきたかったのだけれど・・・)
と、その時だった。
私は救いを求めるように、傍らに立つ竜馬に視線を向けた。
ほむら 「りょ、リョウ・・・」
竜馬 「・・・暁美」
だが、振り仰いだ竜馬の口から出たのは、私の期待した答えとは別の言葉だった。
竜馬 「ここはもう限界のようだぜ」
ほむら 「え・・・」
言われた私も 竜馬に倣って周囲を見渡す。
そして、気がつかされた。
ほむら 「結界の、崩壊が・・・始まってる?」
竜馬 「首の皮一枚で生かされていた魔女が、とうとう力尽きたらしいな」
ほむら 「じゃあ、私たちはもうすぐ、通常に空間に・・・」
戻されることになる。
そんな会話を交わしているそばから、結界の崩壊は加速度的に進んでゆく。
織莉子の処遇をどうするのか。その事を決める間もないほどに。
ほむら (彼女の事は、結界内で片を付けておきたかったのだけれど・・・)
と、その時だった。
870: 2015/08/01(土) 00:15:37.37
織莉子 「・・・っ!!!」
結界の崩壊に気を取られ、皆の注意が織莉子からそれた、その一瞬。
彼女が不意に立ち上がり、私に当身を喰らわせて来たのだ。
ほむら 「・・・っ!」
突然の事に、身をかわすだけでやっとの私。
だけれど、当身を避けられた織莉子は二撃目を繰り出すでもなく、そのまま私の脇をすり抜けてしまう。
竜馬 「待て、美国!」
杏子 「野郎!」
織莉子の本来の目的は、私にダメージを受けさせることにあったのではなく、この場からの逃走にあったのだ。
さすがに場馴れしている竜馬と杏子の行動は素早く、とっさに織莉子を捕まえるべく駆けだそうとしたが、その瞬間。
パリンッ、と・・・
耳障りな亀裂音が響き渡り、まるでガラスが砕けたかのように結界を包む壁面が雪崩のように崩れ始めた。
結界の崩壊に気を取られ、皆の注意が織莉子からそれた、その一瞬。
彼女が不意に立ち上がり、私に当身を喰らわせて来たのだ。
ほむら 「・・・っ!」
突然の事に、身をかわすだけでやっとの私。
だけれど、当身を避けられた織莉子は二撃目を繰り出すでもなく、そのまま私の脇をすり抜けてしまう。
竜馬 「待て、美国!」
杏子 「野郎!」
織莉子の本来の目的は、私にダメージを受けさせることにあったのではなく、この場からの逃走にあったのだ。
さすがに場馴れしている竜馬と杏子の行動は素早く、とっさに織莉子を捕まえるべく駆けだそうとしたが、その瞬間。
パリンッ、と・・・
耳障りな亀裂音が響き渡り、まるでガラスが砕けたかのように結界を包む壁面が雪崩のように崩れ始めた。
871: 2015/08/01(土) 00:16:48.53
ほむら 「織莉子っ!!」
天井も崩壊し、私たちの頭へとガラガラ音を立てながら、降り注いでくる。
残骸が視界を塞ぎ、私たちは逃げ去る織莉子の背中を見失ってしまった。
ほむら 「美国織莉子っ!!」
・・・そして、静寂が訪れ。
私たちは全員、元の廃工場跡へと放り出されていた。
美国織莉子、一人を除いて。
杏子 「お前、何やってるんだよ・・・」
呆れ顔で私を見つめる杏子の視線が痛かった。
返す言葉もない・・・
天井も崩壊し、私たちの頭へとガラガラ音を立てながら、降り注いでくる。
残骸が視界を塞ぎ、私たちは逃げ去る織莉子の背中を見失ってしまった。
ほむら 「美国織莉子っ!!」
・・・そして、静寂が訪れ。
私たちは全員、元の廃工場跡へと放り出されていた。
美国織莉子、一人を除いて。
杏子 「お前、何やってるんだよ・・・」
呆れ顔で私を見つめる杏子の視線が痛かった。
返す言葉もない・・・
878: 2015/08/02(日) 21:09:57.83
・・・
・・・
その後。
ゆまによる治療を終えた三人の魔法少女たちは、おとがめなしで解放された。
織莉子に騙されていたと知った今、これ以上あの子たちが私たちと敵対するはずがないと判断したからだ。
もっとも、手向かってきたところで、ブレーンのいない彼女たちが、私たちと渡り合えるはずもない。
マミ 「あの子たち・・・」
めいめいに去ってゆく三人の背中を見つめながら、マミが悲しそうにつぶやく。
マミ 「・・・きっと、長くないわね」
杏子 「そりゃそうだろう。戦う力も気力もない。遠からず魔女に食われるか、てめーが魔女になっちまうか」
マミ 「かわいそうね・・・」
杏子 「自業自得だろ。いっそ、あの場で見捨ててやった方が、苦しみが短くって済んだのかもしれないぜ」
ゆま 「・・・」
・・・
その後。
ゆまによる治療を終えた三人の魔法少女たちは、おとがめなしで解放された。
織莉子に騙されていたと知った今、これ以上あの子たちが私たちと敵対するはずがないと判断したからだ。
もっとも、手向かってきたところで、ブレーンのいない彼女たちが、私たちと渡り合えるはずもない。
マミ 「あの子たち・・・」
めいめいに去ってゆく三人の背中を見つめながら、マミが悲しそうにつぶやく。
マミ 「・・・きっと、長くないわね」
杏子 「そりゃそうだろう。戦う力も気力もない。遠からず魔女に食われるか、てめーが魔女になっちまうか」
マミ 「かわいそうね・・・」
杏子 「自業自得だろ。いっそ、あの場で見捨ててやった方が、苦しみが短くって済んだのかもしれないぜ」
ゆま 「・・・」
879: 2015/08/02(日) 21:11:56.17
武蔵 「おい、そういう言い方はないだろう」
杏子 「うるせーな。あたしが何か、間違ったことを言ったか?」
武蔵 「ゆまちゃんに当て付けるような物言いはよせと言ってるんだ。目の前で人が氏にかけていたら、助けてやりたいって思うのが人情だろうが」
杏子 「綺麗ごとは要らないんだよ。どーせあいつらは、将来のあたしたちの姿なんだ」
ほむら 「・・・」
杏子 「あたしらもああなるんだよ。その時、誰かが憐れんだり、同情してくれるっていうのかよ!」
ほむら (そうね・・・)
私はポケットに忍ばせている”志筑仁美”を、そっと撫でた。
杏子 「うるせーな。あたしが何か、間違ったことを言ったか?」
武蔵 「ゆまちゃんに当て付けるような物言いはよせと言ってるんだ。目の前で人が氏にかけていたら、助けてやりたいって思うのが人情だろうが」
杏子 「綺麗ごとは要らないんだよ。どーせあいつらは、将来のあたしたちの姿なんだ」
ほむら 「・・・」
杏子 「あたしらもああなるんだよ。その時、誰かが憐れんだり、同情してくれるっていうのかよ!」
ほむら (そうね・・・)
私はポケットに忍ばせている”志筑仁美”を、そっと撫でた。
880: 2015/08/02(日) 21:14:03.93
仁美の氏の真相を知っているのは、魔女の結界の中にいた限られた者たちだけ。
仁美の家族もクラスメイトも・・・
彼女と関わりの深かった者は、誰も仁美が氏んだことを知る術がない。
やがて仁美の存在は、人々の記憶の底へと埋没して消えてしまうのだろう。
そしてそれは、明日の我が身の姿だと、そう杏子は言っているのだ。
だけれど、今は・・・
ほむら 「やめましょう、仲間内で言い争いなんて」
杏子の正論を正論だと認めたくない、私がいた。
だから、不毛な議論を私が遮る。
ほむら 「疲れた・・・今はただ、疲れたわ。今日はもう、帰りましょう」
仁美の家族もクラスメイトも・・・
彼女と関わりの深かった者は、誰も仁美が氏んだことを知る術がない。
やがて仁美の存在は、人々の記憶の底へと埋没して消えてしまうのだろう。
そしてそれは、明日の我が身の姿だと、そう杏子は言っているのだ。
だけれど、今は・・・
ほむら 「やめましょう、仲間内で言い争いなんて」
杏子の正論を正論だと認めたくない、私がいた。
だから、不毛な議論を私が遮る。
ほむら 「疲れた・・・今はただ、疲れたわ。今日はもう、帰りましょう」
881: 2015/08/02(日) 21:16:00.33
時計を確認すると、日付はすでに変わっていた。
もう深夜なのだ。
竜馬 「そうだな。考えなきゃならないことはいくらでもあるが、今日は色々ありすぎた。みんな混乱してるだろうし、そんな頭で、何を話し合ったところで意味がない」
一晩寝て、頭と心をすっきりさせるのが先だ。
そう言って、竜馬が場をしめてくれた。
杏子 「ち、分かったよ、分かりました。それじゃ、これで解散だな」
マミ 「そうね。じゃあ私たち、帰らせてもらうわね・・・」
ほむら 「ええ」
マミ 「その・・・今日は迷惑をかけて、本当にごめんなさい。でも、おかげで助かったわ」
武蔵 「ありがとうな、みんな」
杏子 「・・・」
マミ 「・・・?どうしたの、佐倉さん。私の顔をじっと見ちゃって」
もう深夜なのだ。
竜馬 「そうだな。考えなきゃならないことはいくらでもあるが、今日は色々ありすぎた。みんな混乱してるだろうし、そんな頭で、何を話し合ったところで意味がない」
一晩寝て、頭と心をすっきりさせるのが先だ。
そう言って、竜馬が場をしめてくれた。
杏子 「ち、分かったよ、分かりました。それじゃ、これで解散だな」
マミ 「そうね。じゃあ私たち、帰らせてもらうわね・・・」
ほむら 「ええ」
マミ 「その・・・今日は迷惑をかけて、本当にごめんなさい。でも、おかげで助かったわ」
武蔵 「ありがとうな、みんな」
杏子 「・・・」
マミ 「・・・?どうしたの、佐倉さん。私の顔をじっと見ちゃって」
882: 2015/08/02(日) 21:18:45.43
杏子 「いやさ・・・マミ。もう平気なのか?その、今日の事だけじゃなくって。ええと、色々と、さ」
マミ 「あ、うん・・・佐倉さんにも心配させちゃったよね。ごめんなさい。そして、ありがとう」
杏子 「別にあたしは心配なんてしてないぞ!ただ、これからの事を考えると、足を引っ張られたくないだけというか・・・」
マミ 「そうね。もう平気よ。お兄ちゃんとも色々話し合ったし、私もこれからどう生きていくか、覚悟も定まったから」
杏子 「そ、そうか・・・」
杏子・・・ほっとした表情をしている。
嬉しいんだろうな。
こんなことを指摘しても、彼女は絶対に認めたりはしないだろうけれど。
やっぱり杏子にとって、マミは特別な人なんだなと、今更ながらに思わせてくれる顔だ。
マミ 「あ、うん・・・佐倉さんにも心配させちゃったよね。ごめんなさい。そして、ありがとう」
杏子 「別にあたしは心配なんてしてないぞ!ただ、これからの事を考えると、足を引っ張られたくないだけというか・・・」
マミ 「そうね。もう平気よ。お兄ちゃんとも色々話し合ったし、私もこれからどう生きていくか、覚悟も定まったから」
杏子 「そ、そうか・・・」
杏子・・・ほっとした表情をしている。
嬉しいんだろうな。
こんなことを指摘しても、彼女は絶対に認めたりはしないだろうけれど。
やっぱり杏子にとって、マミは特別な人なんだなと、今更ながらに思わせてくれる顔だ。
883: 2015/08/02(日) 21:20:03.24
マミ 「その節はごめんね。見苦しいところをたくさん見せちゃった・・・暁美さんも、ね?」
杏子 「よせよ、さっきから何回謝るつもりさ。律儀なのも度が過ぎると、鬱陶しいだけだぜ」
マミ 「そうね、うん、分かった」
ほむら 「巴マミ。もし、今日の事を借りだと思ってくれているなら、これからの事、きちんと話がしたいわ」
マミ 「ええ、もちろんよ」
ほむら 「その返事だけで、十分よ」
おそらく、武蔵と二人きりで過ごした数日間の間に、彼女の心の中で何かが一皮むけたに違いない。
心の迷いから解放された巴マミは、この上なく心強い仲間となってくれるはずだ。
ほむら (それが分かった事が、今日の辛い一日の中での、唯一の収穫だわ)
杏子 「よせよ、さっきから何回謝るつもりさ。律儀なのも度が過ぎると、鬱陶しいだけだぜ」
マミ 「そうね、うん、分かった」
ほむら 「巴マミ。もし、今日の事を借りだと思ってくれているなら、これからの事、きちんと話がしたいわ」
マミ 「ええ、もちろんよ」
ほむら 「その返事だけで、十分よ」
おそらく、武蔵と二人きりで過ごした数日間の間に、彼女の心の中で何かが一皮むけたに違いない。
心の迷いから解放された巴マミは、この上なく心強い仲間となってくれるはずだ。
ほむら (それが分かった事が、今日の辛い一日の中での、唯一の収穫だわ)
884: 2015/08/02(日) 21:22:33.68
武蔵 「よし、それじゃあ、マミちゃん。帰ろうぜ」
マミ 「ええ。ところで佐倉さん、あなたはどうするの?」
杏子 「いつも通りさ。適当に寝床を探して、適当に飯を食って寝るだけだよ」
マミ 「だったら、今晩はうちに泊まらない?良いでしょ、お兄ちゃん」
武蔵 「まぁ、歓迎するぜ」
杏子 「うーん・・・まぁ、今からどこで寝るか決めるのも億劫だし・・・お邪魔するか」
マミ 「決まりね。じゃ、行きましょ。では、暁美さん。また明日、ね」
ほむら 「ええ、明日」
竜馬 「巴マミ」
去りかけたマミを、不意に竜馬が呼び止めた。
マミ 「ええ。ところで佐倉さん、あなたはどうするの?」
杏子 「いつも通りさ。適当に寝床を探して、適当に飯を食って寝るだけだよ」
マミ 「だったら、今晩はうちに泊まらない?良いでしょ、お兄ちゃん」
武蔵 「まぁ、歓迎するぜ」
杏子 「うーん・・・まぁ、今からどこで寝るか決めるのも億劫だし・・・お邪魔するか」
マミ 「決まりね。じゃ、行きましょ。では、暁美さん。また明日、ね」
ほむら 「ええ、明日」
竜馬 「巴マミ」
去りかけたマミを、不意に竜馬が呼び止めた。
885: 2015/08/02(日) 21:23:42.07
マミ 「なぁに?」
竜馬 「こいつ、俺が連れ帰ってもいいんだよな?」
言いながら竜馬が目線を走らせた先には、今だ気を失ったまま身動き一つしないキュウべぇの姿があった。
結界崩壊時に私たちと一緒に、外に放り出されていたのだ。
マミ 「・・・どうして私に許可を取るの」
竜馬 「お前さんがこいつとは一番付き合いが長いからさ。生かすも頃すも、まずは巴マミにお伺いを立ててからと思ってな」
マミ 「わ、私は・・・」
武蔵 「好きにしてくれ」
思わず口ごもるマミに代わって、武蔵が答える。
キュウべぇに騙された事を知った今となっても、情の深いマミはキュウべぇを見捨てるような言葉は、口から出しにくいのだと思う。
だから・・・武蔵はナイスサポート。さすが、お兄さんだわ。
武蔵 「良いな、マミちゃん」
そして、有無を言わせぬ口調でマミに同意を迫る。
この辺り、ただの甘いお兄さんという訳ではなさそうだ。
竜馬 「こいつ、俺が連れ帰ってもいいんだよな?」
言いながら竜馬が目線を走らせた先には、今だ気を失ったまま身動き一つしないキュウべぇの姿があった。
結界崩壊時に私たちと一緒に、外に放り出されていたのだ。
マミ 「・・・どうして私に許可を取るの」
竜馬 「お前さんがこいつとは一番付き合いが長いからさ。生かすも頃すも、まずは巴マミにお伺いを立ててからと思ってな」
マミ 「わ、私は・・・」
武蔵 「好きにしてくれ」
思わず口ごもるマミに代わって、武蔵が答える。
キュウべぇに騙された事を知った今となっても、情の深いマミはキュウべぇを見捨てるような言葉は、口から出しにくいのだと思う。
だから・・・武蔵はナイスサポート。さすが、お兄さんだわ。
武蔵 「良いな、マミちゃん」
そして、有無を言わせぬ口調でマミに同意を迫る。
この辺り、ただの甘いお兄さんという訳ではなさそうだ。
886: 2015/08/02(日) 21:25:50.68
マミ 「え、ええ・・・」
竜馬 「よし、了解だ」
そして。
手を振りながら、今度こそマミたちは帰って行った。
やがて三人の人影は、夜の帳に溶け込むように消えて。
あとに残されたのは、私とリョウとゆまの三人。
ほむら 「そいつ、捨てて帰ってもいいと思うのだけど・・・」
竜馬 「俺もそうは思うんだが、隼人の言った一言が、どうにも気になってな」
悪いようにはしないから、キュウべぇを連れ帰るように。
ゲッターの中で、隼人は竜馬にそう告げたという。
ほむら 「いったい、どういう意味なのかしらね・・・」
竜馬 「皆目見当もつかないが・・・意味のない事を言うはずもない。あの隼人が・・・いや」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「ゲッターが、な」
ほむら 「そうね・・・」
竜馬 「よし、了解だ」
そして。
手を振りながら、今度こそマミたちは帰って行った。
やがて三人の人影は、夜の帳に溶け込むように消えて。
あとに残されたのは、私とリョウとゆまの三人。
ほむら 「そいつ、捨てて帰ってもいいと思うのだけど・・・」
竜馬 「俺もそうは思うんだが、隼人の言った一言が、どうにも気になってな」
悪いようにはしないから、キュウべぇを連れ帰るように。
ゲッターの中で、隼人は竜馬にそう告げたという。
ほむら 「いったい、どういう意味なのかしらね・・・」
竜馬 「皆目見当もつかないが・・・意味のない事を言うはずもない。あの隼人が・・・いや」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「ゲッターが、な」
ほむら 「そうね・・・」
887: 2015/08/02(日) 21:30:35.22
確かに、そうかも知れない。
連れ帰れという言葉の真意は、きっとキュウべぇが目を覚ました時に、明らかになるのだろう。
だからこの件は、ひとまず竜馬に任せることに決めた。
ほむら 「それじゃ、キュウべぇの事は任せたわ。そ、それと・・・リョウ・・・」
竜馬 「なんだ?」
ほむら 「・・・ありがとう、ね?」
竜馬 「なんだよ、藪から棒に」
ほむら 「あの場をうまく収めてくれて。私は人をまとめるの、得意じゃないから」
竜馬 「俺だってそうさ。それに、俺は自分が思ったことを口にしただけだぜ」
ほむら 「・・・え」
竜馬 「言ったろ、今日は色々ありすぎた、と。俺も混乱してるんだよ。隼人が・・・いや、ゲッターが何を考えているのか」
ほむら 「リョウ・・・」
竜馬 「俺に何をさせようとしているのか、皆目見当がつかない。だが、考え込むには、俺は疲れすぎている」
ほむら 「・・・ねぇ」
竜馬 「?」
疲れている。そういった竜馬に追い打ちをかけるようで後ろめたかったけれど。
私は先ほどから抱いていた懸念を、竜馬に聞いてもらいたいと思った。
連れ帰れという言葉の真意は、きっとキュウべぇが目を覚ました時に、明らかになるのだろう。
だからこの件は、ひとまず竜馬に任せることに決めた。
ほむら 「それじゃ、キュウべぇの事は任せたわ。そ、それと・・・リョウ・・・」
竜馬 「なんだ?」
ほむら 「・・・ありがとう、ね?」
竜馬 「なんだよ、藪から棒に」
ほむら 「あの場をうまく収めてくれて。私は人をまとめるの、得意じゃないから」
竜馬 「俺だってそうさ。それに、俺は自分が思ったことを口にしただけだぜ」
ほむら 「・・・え」
竜馬 「言ったろ、今日は色々ありすぎた、と。俺も混乱してるんだよ。隼人が・・・いや、ゲッターが何を考えているのか」
ほむら 「リョウ・・・」
竜馬 「俺に何をさせようとしているのか、皆目見当がつかない。だが、考え込むには、俺は疲れすぎている」
ほむら 「・・・ねぇ」
竜馬 「?」
疲れている。そういった竜馬に追い打ちをかけるようで後ろめたかったけれど。
私は先ほどから抱いていた懸念を、竜馬に聞いてもらいたいと思った。
888: 2015/08/02(日) 21:35:58.14
ほむら 「・・・私も、ゲッターはあなた以上に分からない。いえ、知らない」
竜馬 「暁美・・・?」
ほむら 「だから思うの。私もいずれ、仁美たちみたいに、ゲッターにすべてを取り込まれてしまうのじゃないかしらって」
懸念というより、それは恐怖と言った方が良い感情だったかもしれない。
氏は恐れない。そんな覚悟は、とっくに定まっている。
まどかのためだったら、私はどんな運命だって受け入れる。
だけれど・・・
ほむら 「得体の知れない物に、納得がいかないまま氏を下されるのだけは、絶対に嫌なの」
竜馬 「暁美・・・すまないが、俺がその答えを出してやることはできない。言ったろ、俺もゲッターが何をやろうとしているのか、分からないんだ」
ほむら 「うん、知ってる。ただ、聞いてもらいたかっただけ。ごめんね」
明確な答えを期待したわけじゃない。
一人で抱え込むのが、あまりに重い感情だったから。
仲間に・・・竜馬に共有してほしいというだけの、私のわがまま。
竜馬 「だがな」
ほむら 「え・・・?」
竜馬 「暁美・・・?」
ほむら 「だから思うの。私もいずれ、仁美たちみたいに、ゲッターにすべてを取り込まれてしまうのじゃないかしらって」
懸念というより、それは恐怖と言った方が良い感情だったかもしれない。
氏は恐れない。そんな覚悟は、とっくに定まっている。
まどかのためだったら、私はどんな運命だって受け入れる。
だけれど・・・
ほむら 「得体の知れない物に、納得がいかないまま氏を下されるのだけは、絶対に嫌なの」
竜馬 「暁美・・・すまないが、俺がその答えを出してやることはできない。言ったろ、俺もゲッターが何をやろうとしているのか、分からないんだ」
ほむら 「うん、知ってる。ただ、聞いてもらいたかっただけ。ごめんね」
明確な答えを期待したわけじゃない。
一人で抱え込むのが、あまりに重い感情だったから。
仲間に・・・竜馬に共有してほしいというだけの、私のわがまま。
竜馬 「だがな」
ほむら 「え・・・?」
889: 2015/08/02(日) 21:38:24.23
竜馬 「隼人はお前を後継者と認めたんだし、敵とは認識していない。だったら、志筑や呉みたいな事にはならないはずだと、俺は思うがな」
ほむら 「そうかしら」
竜馬 「ああ。それに、仮にお前に何かしようってんなら、ぶん殴ってでも俺が隼人を止めてやる」
ほむら 「・・・」
竜馬 「あいつとは何度も殴り合った仲だが、けっきょく決着はつけられなかったままだからな。良い機会かもしれない」
ほむら 「・・・ふふ、ありがとう、リョウ。少し気持ちが軽くなったわ」
竜馬 「なによりだ。それじゃ、俺たちも帰るとしようか。部屋まで送るぜ」
ほむら 「・・・ありがとう。じゃあ、いきましょう、ゆま」
ゆま 「うん」
私たちは三人並んで、私の部屋への帰路を歩き始めた。
ほむら 「そうかしら」
竜馬 「ああ。それに、仮にお前に何かしようってんなら、ぶん殴ってでも俺が隼人を止めてやる」
ほむら 「・・・」
竜馬 「あいつとは何度も殴り合った仲だが、けっきょく決着はつけられなかったままだからな。良い機会かもしれない」
ほむら 「・・・ふふ、ありがとう、リョウ。少し気持ちが軽くなったわ」
竜馬 「なによりだ。それじゃ、俺たちも帰るとしようか。部屋まで送るぜ」
ほむら 「・・・ありがとう。じゃあ、いきましょう、ゆま」
ゆま 「うん」
私たちは三人並んで、私の部屋への帰路を歩き始めた。
890: 2015/08/02(日) 21:39:51.04
・・・
・・・
私たちは、ほとんど無言のままで歩を進めていた。
疲れすぎていたせいもあるけれど、それ以上に。
私も竜馬も、ゆまにどう声をかけたら良いのか。
判断がつきかねていたからだ。
ほむら (ゆま・・・魔法少女の真実を知っても、取り乱すところか、泣き言ひとつ言おうとしない)
平気なはずがない。自分が魔女になる運命から逃れ得ないと知れば、あの時のマミのように正体を失ってもおかしくはないのだ。
ほむら (いえ、むしろそれが正常なんだと思う)
それも幼い少女なのだ。受け止めきれるはずがない。
なのに・・・
私の横を歩くゆまは、眠気と疲労でふらふらしてはいても、別段ショックを受けているようには見えなかった。
・・・
私たちは、ほとんど無言のままで歩を進めていた。
疲れすぎていたせいもあるけれど、それ以上に。
私も竜馬も、ゆまにどう声をかけたら良いのか。
判断がつきかねていたからだ。
ほむら (ゆま・・・魔法少女の真実を知っても、取り乱すところか、泣き言ひとつ言おうとしない)
平気なはずがない。自分が魔女になる運命から逃れ得ないと知れば、あの時のマミのように正体を失ってもおかしくはないのだ。
ほむら (いえ、むしろそれが正常なんだと思う)
それも幼い少女なのだ。受け止めきれるはずがない。
なのに・・・
私の横を歩くゆまは、眠気と疲労でふらふらしてはいても、別段ショックを受けているようには見えなかった。
891: 2015/08/02(日) 21:41:56.94
強がり・・・を通せるほど、器用な子とも思えないし。
では・・・
ゆま 「ゆまの事ね、心配してくれてるんでしょ。ありがとう、ほむらお姉ちゃん」
ほむら 「え、あ・・・ううん、そういうわけじゃ・・・」
心を見透かされたように不意に話しかけられ、とっさの返事に詰まる私。
ゆま 「だけど平気だよ。ゆま、だいじょうぶだから」
私を見上げながら、柔らかく笑うゆま。
その笑顔はあまりに自然で、無理をしている様子は微塵も感じられなかった。
竜馬 「ガキのくせに、見かけ以上に強いやつなんだな、お前は」
竜馬がくしゃくしゃと、ゆまの頭を撫でる。
くすぐったそうにしながらも、えへへと笑いながら竜馬の愛撫を受け入れていたゆまだったけど。
ゆま 「・・・」
急に真顔に戻ると、うつむいてしまった。
では・・・
ゆま 「ゆまの事ね、心配してくれてるんでしょ。ありがとう、ほむらお姉ちゃん」
ほむら 「え、あ・・・ううん、そういうわけじゃ・・・」
心を見透かされたように不意に話しかけられ、とっさの返事に詰まる私。
ゆま 「だけど平気だよ。ゆま、だいじょうぶだから」
私を見上げながら、柔らかく笑うゆま。
その笑顔はあまりに自然で、無理をしている様子は微塵も感じられなかった。
竜馬 「ガキのくせに、見かけ以上に強いやつなんだな、お前は」
竜馬がくしゃくしゃと、ゆまの頭を撫でる。
くすぐったそうにしながらも、えへへと笑いながら竜馬の愛撫を受け入れていたゆまだったけど。
ゆま 「・・・」
急に真顔に戻ると、うつむいてしまった。
892: 2015/08/02(日) 21:43:34.53
何かを言いたげで、だけれど言っても良いのか分からない。
そんな迷いを、地面を見つめるゆまの表情が語っているように、私には感じられた。
ほむら 「ゆま、どうかしたの?」
ゆま 「うん・・・」
ほむら 「言いたいことがあったら、言っちゃって良いのよ。スッキリするから」
ゆま 「そうだね。あのね・・・」
ゆまは、うつむいた顔を上げないままで。
ぽつりぽつりと話し始めた。
ゆま 「リョウお兄さんはゆまのコト強いって言ってくれたけど、違うよ。ゆまね、強くなんかない。ただ、知ってるだけ」
竜馬 「知ってる?何を・・・?」
ゆま 「良い事があったらね、良くない事もいっしょに起こるって、それを知ってるだけ」
ほむら 「・・・え?」
そんな迷いを、地面を見つめるゆまの表情が語っているように、私には感じられた。
ほむら 「ゆま、どうかしたの?」
ゆま 「うん・・・」
ほむら 「言いたいことがあったら、言っちゃって良いのよ。スッキリするから」
ゆま 「そうだね。あのね・・・」
ゆまは、うつむいた顔を上げないままで。
ぽつりぽつりと話し始めた。
ゆま 「リョウお兄さんはゆまのコト強いって言ってくれたけど、違うよ。ゆまね、強くなんかない。ただ、知ってるだけ」
竜馬 「知ってる?何を・・・?」
ゆま 「良い事があったらね、良くない事もいっしょに起こるって、それを知ってるだけ」
ほむら 「・・・え?」
893: 2015/08/02(日) 21:46:07.76
ゆま 「魔法少女になった時もそうだったよ。ゆまね、怒られたくなたったの」
ほむら 「怒られる・・・?だれに?」
私も竜馬も、ゆまが何を願い、何を望んで魔法少女になったのかを知らない。
武蔵だけはそれとなく聞いていたようだったけれど、彼もゆま本人も私たちには教えようとはしなかった。
デリケートな問題だから、言いにくい事もあるのだろう。
そう思って、こちらから話題にすることは避けていたのだけれど・・・
ゆま 「パパとママに。だからね、キュウべぇにお願いしたの。もう、怒られるようなことが起こりませんように、って」
ほむら 「そ、それで・・・?」
ゆま 「叶ったよ。もう、ゆまは怒られない。二度と・・・」
ほむら 「それって・・・」
竜馬 「お前の親父さんたちは、それからどうなったんだ?」
ゆま 「いまなら、ゆまの事を”怒られない良い子にして下さい”って祈ればよかったのなって、そう思うけど。もしかしたら、ゆまはあの時・・・」
ほむら 「・・・」
ゆま 「あの時、心のどこかで怒りんぼのパパやママなんか、いなくなってしまえって。考えちゃってたのかもしれないなって」
竜馬 「ま、まさか・・・」
ほむら 「怒られる・・・?だれに?」
私も竜馬も、ゆまが何を願い、何を望んで魔法少女になったのかを知らない。
武蔵だけはそれとなく聞いていたようだったけれど、彼もゆま本人も私たちには教えようとはしなかった。
デリケートな問題だから、言いにくい事もあるのだろう。
そう思って、こちらから話題にすることは避けていたのだけれど・・・
ゆま 「パパとママに。だからね、キュウべぇにお願いしたの。もう、怒られるようなことが起こりませんように、って」
ほむら 「そ、それで・・・?」
ゆま 「叶ったよ。もう、ゆまは怒られない。二度と・・・」
ほむら 「それって・・・」
竜馬 「お前の親父さんたちは、それからどうなったんだ?」
ゆま 「いまなら、ゆまの事を”怒られない良い子にして下さい”って祈ればよかったのなって、そう思うけど。もしかしたら、ゆまはあの時・・・」
ほむら 「・・・」
ゆま 「あの時、心のどこかで怒りんぼのパパやママなんか、いなくなってしまえって。考えちゃってたのかもしれないなって」
竜馬 「ま、まさか・・・」
894: 2015/08/02(日) 21:50:25.88
ゆま 「パパもママも、食べられちゃった。ゆまの見てる前で魔女に」
ほむら・竜馬 「・・・っ!」
ゆま 「もう怒られない。でも、パパもママもいなくなっちゃった。良い事の後にはきっと、悪い事が起きるんだよ」
竜馬 「なんてこった・・・」
ゆま 「でもね」
ほむら 「・・・?」
ゆま 「ゆまは一人になっちゃったから、だからきょーこに拾ってもらえたの。ほむらお姉ちゃん達にも出会えて、優しくしてもらえたんだよ」
ほむら 「ゆま・・・私は・・・」
ゆまが時折見せるさみしそうな表情の裏で・・・
そのような事を考えていたなんて。
私は全然気がつけなかった。
ゆま 「だからね、そろそろじゃないかなって思ってたんだ。次は悪い事が起こる番。魔女になっちゃうなんて、そこまでは考えていなかったけど」
今の生活が、程なく壊れてしまうに違いない。
そんな不安と諦めの中で、弱音一つ吐かずに、彼女は私たちに笑顔を見せ続けてきたのだ。
幼いゆまにとって、それはどれほど辛い事だったのだろう。
ほむら・竜馬 「・・・っ!」
ゆま 「もう怒られない。でも、パパもママもいなくなっちゃった。良い事の後にはきっと、悪い事が起きるんだよ」
竜馬 「なんてこった・・・」
ゆま 「でもね」
ほむら 「・・・?」
ゆま 「ゆまは一人になっちゃったから、だからきょーこに拾ってもらえたの。ほむらお姉ちゃん達にも出会えて、優しくしてもらえたんだよ」
ほむら 「ゆま・・・私は・・・」
ゆまが時折見せるさみしそうな表情の裏で・・・
そのような事を考えていたなんて。
私は全然気がつけなかった。
ゆま 「だからね、そろそろじゃないかなって思ってたんだ。次は悪い事が起こる番。魔女になっちゃうなんて、そこまでは考えていなかったけど」
今の生活が、程なく壊れてしまうに違いない。
そんな不安と諦めの中で、弱音一つ吐かずに、彼女は私たちに笑顔を見せ続けてきたのだ。
幼いゆまにとって、それはどれほど辛い事だったのだろう。
895: 2015/08/02(日) 21:54:32.07
ゆま 「へへ・・・っ」
ゆまが顔を上げ、再び私を見上げた。
いつもと同じ、誰もが癒されるような、ヒマワリのように明るい笑顔を浮かべて。
ゆま 「だからね、ゆまは平気なの」
ほむら 「・・・あっ」
その笑顔に対し、私は二の句が継げなかった。
何と答えて良いのか分からない。
竜馬 「ならねぇよ」
そんな私に代わって、ゆまの話を受けてくれたのは竜馬だった。
竜馬 「魔女になんか、なりゃしねぇよ」
再びゆまの頭を撫でながら、竜馬が言う。
ゆまが顔を上げ、再び私を見上げた。
いつもと同じ、誰もが癒されるような、ヒマワリのように明るい笑顔を浮かべて。
ゆま 「だからね、ゆまは平気なの」
ほむら 「・・・あっ」
その笑顔に対し、私は二の句が継げなかった。
何と答えて良いのか分からない。
竜馬 「ならねぇよ」
そんな私に代わって、ゆまの話を受けてくれたのは竜馬だった。
竜馬 「魔女になんか、なりゃしねぇよ」
再びゆまの頭を撫でながら、竜馬が言う。
896: 2015/08/02(日) 21:57:03.02
竜馬 「絶望しなけりゃいいんだ。楽しい事を見つけろ。やりたい事を探せ。生きる意義を考えろ」
ゆま 「え・・・え・・・?」
竜馬 「悲しかった過去は後ろに置いて行け。前だけ見つめて歩き続けりゃ、人はそうそう絶望するもんじゃない」
ゆま 「だけど、そんな事・・・ゆまは弱いし、悲しかったことを忘れるなんて、できないし・・・」
竜馬 「できる。暁美が実証している」
ほむら 「・・・えっ」
竜馬 「暁美は守りたい者のために、今を生きている。その目的がある限り、暁美は絶望せずに前だけを向いて生きていけるんだ」
ほむら 「ちょ、ちょっと・・・」
不意に持ち上げられて、慌ててしまう私。
私はそんなに立派なものじゃない。じゅうぶん後ろ向きだし、心の均衡を保っているのも実はギリギリの綱渡りだ。
だけれど・・・
竜馬 「そうだろ、暁美」
確かに・・・
それでも絶望せずにいられるのは、まどかを守り通すという望みがあるため。
生きる目標があるからこそ、私は絶望の淵に身を沈めることなく、今日までやってこられたのだ。
ほむら 「そうね」
それに今は・・・
ゆま 「え・・・え・・・?」
竜馬 「悲しかった過去は後ろに置いて行け。前だけ見つめて歩き続けりゃ、人はそうそう絶望するもんじゃない」
ゆま 「だけど、そんな事・・・ゆまは弱いし、悲しかったことを忘れるなんて、できないし・・・」
竜馬 「できる。暁美が実証している」
ほむら 「・・・えっ」
竜馬 「暁美は守りたい者のために、今を生きている。その目的がある限り、暁美は絶望せずに前だけを向いて生きていけるんだ」
ほむら 「ちょ、ちょっと・・・」
不意に持ち上げられて、慌ててしまう私。
私はそんなに立派なものじゃない。じゅうぶん後ろ向きだし、心の均衡を保っているのも実はギリギリの綱渡りだ。
だけれど・・・
竜馬 「そうだろ、暁美」
確かに・・・
それでも絶望せずにいられるのは、まどかを守り通すという望みがあるため。
生きる目標があるからこそ、私は絶望の淵に身を沈めることなく、今日までやってこられたのだ。
ほむら 「そうね」
それに今は・・・
897: 2015/08/02(日) 22:02:33.62
ほむら 「リョウの言っていた事と、もう一つ。ともにいてくれる仲間が・・・友達がいれば。だから、ゆま」
ゆま 「はうっ」
竜馬の手の上から、私もゆまの頭へと手を添える。
ふんわりと。
竜馬の手を通して、ゆまの柔らかい髪の毛の感触と、そして。
彼女の体温が、じんわりと優しく伝わってきた。
ゆま 「・・・」
ほむら 「あなたが私の支えとなってくれているように、私やリョウがあなたの支えとなれたら、とっても嬉しい」
リョウのおかげで、仲間を信じる強さというものを、得る事ができた私だから。
ゆまにもそうあって欲しいと、切に思う。
ゆま 「良いの?ゆま、お姉ちゃん達のお友達でいて、本当にいいの?」
竜馬 「当然だ。佐倉や武蔵、巴マミだって同じ事を言うだろうぜ」
ゆま 「そっか・・・そっか・・・へへ・・・なんだか不思議」
ほむら 「なにが?」
ゆま 「良い事の後に、また良い事が起っちゃったよ。こんなの初めて」
ほむら 「ゆま・・・」
ゆま 「はうっ」
竜馬の手の上から、私もゆまの頭へと手を添える。
ふんわりと。
竜馬の手を通して、ゆまの柔らかい髪の毛の感触と、そして。
彼女の体温が、じんわりと優しく伝わってきた。
ゆま 「・・・」
ほむら 「あなたが私の支えとなってくれているように、私やリョウがあなたの支えとなれたら、とっても嬉しい」
リョウのおかげで、仲間を信じる強さというものを、得る事ができた私だから。
ゆまにもそうあって欲しいと、切に思う。
ゆま 「良いの?ゆま、お姉ちゃん達のお友達でいて、本当にいいの?」
竜馬 「当然だ。佐倉や武蔵、巴マミだって同じ事を言うだろうぜ」
ゆま 「そっか・・・そっか・・・へへ・・・なんだか不思議」
ほむら 「なにが?」
ゆま 「良い事の後に、また良い事が起っちゃったよ。こんなの初めて」
ほむら 「ゆま・・・」
898: 2015/08/02(日) 22:05:39.99
竜馬 「だったら、次も良い事が起こるだろうぜ。二度あることは三度あるって言うしな」
ゆま 「うん、えへへ」
照れくさそうにはにかむ、そんなゆまの笑顔を見ながら。
私はもう片方の手で、ポケットの中のグリーフシードを、そっと握っていた。
ほむら (もう、たくさんだ)
かつての時間軸で多くの仲間を失い、この時間軸でも友人を失った。
もうたくさんなのだ、あんな想いを味わうのは。
だから、これ以上はもう、絶対。
ほむら (誰の笑顔も、欠けさせてはいけない)
皆でワルプルギスの夜を乗り切り、私もまだ知らない未来を友達全員で生きるんだ。
左右の掌が触れている、それぞれの物に、大切な友人に。
私はそう誓ったのだった。
ゆま 「うん、えへへ」
照れくさそうにはにかむ、そんなゆまの笑顔を見ながら。
私はもう片方の手で、ポケットの中のグリーフシードを、そっと握っていた。
ほむら (もう、たくさんだ)
かつての時間軸で多くの仲間を失い、この時間軸でも友人を失った。
もうたくさんなのだ、あんな想いを味わうのは。
だから、これ以上はもう、絶対。
ほむら (誰の笑顔も、欠けさせてはいけない)
皆でワルプルギスの夜を乗り切り、私もまだ知らない未来を友達全員で生きるんだ。
左右の掌が触れている、それぞれの物に、大切な友人に。
私はそう誓ったのだった。
907: 2015/08/04(火) 19:55:55.66
・・・
・・・
まどか 「ほ、ほむらちゃーん!」
思いがけない出迎えに驚かされたのは、私の部屋にたどり着く直前の事だった。
私たちを見送ったあと、ずっと帰りを待っていたまどかが、まろぶように駆けてきたのだ。
ほむら 「ま、まどか・・・」
面喰ってしまった私にお構いなく、まどかが質問の嵐をまくし立てる。
まどか 「ほむらちゃん、マミさんは!?マミさんとお兄さんは無事なの!?あれからどうなったの!?ねぇ、ほむらちゃん!」
ほむら 「ちょ、お・・・落ち着いて・・・」
まどか 「ほむらちゃんー・・・」
私の両肩をがしっと掴んで、今にも泣くき出しそうな顔をグイグイと寄せてくる。
うあ・・・ち、近い・・・
908: 2015/08/04(火) 20:00:44.29
竜馬 「まぁまぁ、落ち着け、鹿目」
見かねた竜馬が間に入ってくれる。
まどか 「あ、流君・・・」
竜馬 「お前、ずっとここで俺たちの帰りを待っていたのか?」
まどか 「うん・・・ていうか、流君が持ってる白いのって、キュウべぇ・・・?」
竜馬 「あー、こいつの事は気にするな。寝ぼけて起きないから、俺の家に連れて帰るのさ」
まどか 「そ、そう・・・えと、そ、それでね。私、家でじっとなんてしてられなかったの。私のせいでマミさんがあんな事になっちゃったのに・・・」
竜馬 「お前のせいじゃないさ。鹿目はたまたま、あの場にいただけ、巻き込まれたのはお前の方だろう」
まどか 「うん・・・それでも・・・」
ほむら 「まどか・・・」
見かねた竜馬が間に入ってくれる。
まどか 「あ、流君・・・」
竜馬 「お前、ずっとここで俺たちの帰りを待っていたのか?」
まどか 「うん・・・ていうか、流君が持ってる白いのって、キュウべぇ・・・?」
竜馬 「あー、こいつの事は気にするな。寝ぼけて起きないから、俺の家に連れて帰るのさ」
まどか 「そ、そう・・・えと、そ、それでね。私、家でじっとなんてしてられなかったの。私のせいでマミさんがあんな事になっちゃったのに・・・」
竜馬 「お前のせいじゃないさ。鹿目はたまたま、あの場にいただけ、巻き込まれたのはお前の方だろう」
まどか 「うん・・・それでも・・・」
ほむら 「まどか・・・」
909: 2015/08/04(火) 20:05:53.38
竜馬 「それでも、お前の気持ちは分かるぜ、鹿目。だが、それはそれとして、こんな時間まで外にいて、家の人は心配してないのか?」
まどか 「う、うん、それは平気。ママには友達の家に泊まるって電話しておいたから」
竜馬 「電話一本で許してくれたのか。けっこう放任主義なのか、鹿目の親御さんは」
ほむら 「そうじゃない。信用されてるのよ」
なんにしても、まどかも無茶をする。
日付も変わってしまった深夜になるまで、若い女の子が一人で、こんな屋外で何時間も。
すでに季節は春とはいっても、日が落ちた後はまだまだ冷える。
そんな中を、いつ帰るかもわからない私たちを外で一人で何時間も待っているなんて・・・
さぞかし、心細かったことだろう。
まどか 「う、うん、それは平気。ママには友達の家に泊まるって電話しておいたから」
竜馬 「電話一本で許してくれたのか。けっこう放任主義なのか、鹿目の親御さんは」
ほむら 「そうじゃない。信用されてるのよ」
なんにしても、まどかも無茶をする。
日付も変わってしまった深夜になるまで、若い女の子が一人で、こんな屋外で何時間も。
すでに季節は春とはいっても、日が落ちた後はまだまだ冷える。
そんな中を、いつ帰るかもわからない私たちを外で一人で何時間も待っているなんて・・・
さぞかし、心細かったことだろう。
910: 2015/08/04(火) 20:12:04.13
ほむら 「なら、鹿目さん。本当にうちに泊まっていけば良いわ。泊まると断っている以上、今から帰っても却って心配させるだけでしょう」
まどか 「うぇひぃ・・・い、良いのかな。というより、それよりもマミさんの事を・・・」
ほむら 「その話もするわ。なんにしても、こんな所でたむろしていては、近所迷惑になるだけだから」
まどか 「あ・・・そ、そっか・・・ごめんね」
そんなやり取りの間に、気を利かせてくれたゆまが、ドアのカギを開けてくれた。
ゆま 「お姉ちゃん、どうぞ」
まどか 「あ、ありがとう。えっと、あなたは・・・」
ゆま 「千歳ゆまです!」
ほむら 「先日、お昼に言ったでしょ。私のお弁当箱を選んでくれた、知り合いの子の話。この子がそうよ」
まどか 「あ、そっかぁ・・・えっと、初めまして、鹿目まどかです」
ほむら 「私と同じ、魔法少女なんだけれどね」
まどか 「え・・・」
まどか 「うぇひぃ・・・い、良いのかな。というより、それよりもマミさんの事を・・・」
ほむら 「その話もするわ。なんにしても、こんな所でたむろしていては、近所迷惑になるだけだから」
まどか 「あ・・・そ、そっか・・・ごめんね」
そんなやり取りの間に、気を利かせてくれたゆまが、ドアのカギを開けてくれた。
ゆま 「お姉ちゃん、どうぞ」
まどか 「あ、ありがとう。えっと、あなたは・・・」
ゆま 「千歳ゆまです!」
ほむら 「先日、お昼に言ったでしょ。私のお弁当箱を選んでくれた、知り合いの子の話。この子がそうよ」
まどか 「あ、そっかぁ・・・えっと、初めまして、鹿目まどかです」
ほむら 「私と同じ、魔法少女なんだけれどね」
まどか 「え・・・」
911: 2015/08/04(火) 20:13:46.22
ほむら 「今は事情があって、一緒に住んでいるの」
ゆま 「えへへー」
まどか 「・・・」
まどかの表情が一瞬曇ったのを、私は見逃さなかった。
無理もない。敵対する魔法少女の存在を目の当たりにしたばかりなのだ。
今のまどかにとって、魔法少女という存在は、あこがれの対象とはまた違った意味を持ち始めているのだろう。
ほむら (それはいい傾向だわ。魔法少女に対する淡い幻想なんて、打ち砕かれてしまった方が良い)
ただ、ゆまに対する警戒感だけは解いておきたい。
ゆまの事、できればまどかにも好きになって欲しいから。
まどか 「そっか、魔法少女なんだ・・・」
ゆま 「・・・?」
ほむら 「良い子よ。本当の妹みたいに、思えるほどに」
ゆま 「えー///」
まどか 「そう・・・そっか。そうだよね、ほむらちゃんと一緒にいるんだもんね」
ゆま 「えへへー」
まどか 「・・・」
まどかの表情が一瞬曇ったのを、私は見逃さなかった。
無理もない。敵対する魔法少女の存在を目の当たりにしたばかりなのだ。
今のまどかにとって、魔法少女という存在は、あこがれの対象とはまた違った意味を持ち始めているのだろう。
ほむら (それはいい傾向だわ。魔法少女に対する淡い幻想なんて、打ち砕かれてしまった方が良い)
ただ、ゆまに対する警戒感だけは解いておきたい。
ゆまの事、できればまどかにも好きになって欲しいから。
まどか 「そっか、魔法少女なんだ・・・」
ゆま 「・・・?」
ほむら 「良い子よ。本当の妹みたいに、思えるほどに」
ゆま 「えー///」
まどか 「そう・・・そっか。そうだよね、ほむらちゃんと一緒にいるんだもんね」
912: 2015/08/04(火) 20:20:58.83
ほむら 「・・・さぁ鹿目さん、上がって。えっと・・・リョウは」
竜馬 「俺は帰るぜ。それでな、暁美」
ほむら 「え・・・?」
竜馬が顔を近づけ、私の耳元で一言。
竜馬 「志筑の件、鹿目には黙っておいた方が良いんじゃないか」
ほむら 「・・・」
それだけを言うと、竜馬は手を振りつつ、スタスタとその場から去っていった。
志筑仁美の件、言うべきではない。竜馬がそう言うのは分かるし、私だって言いたくはない。
言えば、どれだけまどかが悲しむか。そんなの想像するまでもない事だもの。
だけれど、真実に蓋をして、まどかを騙すようなことをして、それで本当に正解と言えるのだろうか。
・・・私には、すぐに答えを出す事なんてできない。
まどか 「ほむらちゃん、どうかしたの?」
ほむら 「え、ううん・・・なんでも。さぁ、入って。鹿目さん、お腹がすいたでしょう?」
私は思索を打ち切って、まどかを部屋へと招き入れた。
まずはお腹に何かを入れよう。まどかだけじゃない。ゆまにも何か食べさせてあげなくてはいけないし、私だってお腹がぺこぺこだ。
ほむら (こんな状況なのに、お腹はきちんと減るものなのね)
竜馬 「俺は帰るぜ。それでな、暁美」
ほむら 「え・・・?」
竜馬が顔を近づけ、私の耳元で一言。
竜馬 「志筑の件、鹿目には黙っておいた方が良いんじゃないか」
ほむら 「・・・」
それだけを言うと、竜馬は手を振りつつ、スタスタとその場から去っていった。
志筑仁美の件、言うべきではない。竜馬がそう言うのは分かるし、私だって言いたくはない。
言えば、どれだけまどかが悲しむか。そんなの想像するまでもない事だもの。
だけれど、真実に蓋をして、まどかを騙すようなことをして、それで本当に正解と言えるのだろうか。
・・・私には、すぐに答えを出す事なんてできない。
まどか 「ほむらちゃん、どうかしたの?」
ほむら 「え、ううん・・・なんでも。さぁ、入って。鹿目さん、お腹がすいたでしょう?」
私は思索を打ち切って、まどかを部屋へと招き入れた。
まずはお腹に何かを入れよう。まどかだけじゃない。ゆまにも何か食べさせてあげなくてはいけないし、私だってお腹がぺこぺこだ。
ほむら (こんな状況なのに、お腹はきちんと減るものなのね)
913: 2015/08/04(火) 20:27:31.37
・・・
・・・
さすがに今からでは、料理をする気にはなれない。
私は久々に、買い置きの出来合いを食卓に並べることにした。
ゆまが慣れた手つきで、食器を並べたり湯を沸かしてくれたりと、てきぱきと手伝ってくれる。
そして出来上がった食事を口にしながら、私はマミ救出の顛末を語ることにした。
ほむら (食べながら話した方が、深刻な感じにならなくて話しやすそうだから・・・)
私はできるだけ簡潔に、まどかと別れた後の出来事を語って聞かせた。
そう、簡潔に・・・省略できることは省いて。
敵対した魔法少女たちの中に仁美がいたという事と、仁美を含めた数人が氏んでしまった事。
それらの事にはわざと触れずに、あくまでマミを無事救出できたことのみを強調し、最後に敵の親玉には逃げられてしまった事。
それだけを付け加えて、私は話を終えた。
・・・
さすがに今からでは、料理をする気にはなれない。
私は久々に、買い置きの出来合いを食卓に並べることにした。
ゆまが慣れた手つきで、食器を並べたり湯を沸かしてくれたりと、てきぱきと手伝ってくれる。
そして出来上がった食事を口にしながら、私はマミ救出の顛末を語ることにした。
ほむら (食べながら話した方が、深刻な感じにならなくて話しやすそうだから・・・)
私はできるだけ簡潔に、まどかと別れた後の出来事を語って聞かせた。
そう、簡潔に・・・省略できることは省いて。
敵対した魔法少女たちの中に仁美がいたという事と、仁美を含めた数人が氏んでしまった事。
それらの事にはわざと触れずに、あくまでマミを無事救出できたことのみを強調し、最後に敵の親玉には逃げられてしまった事。
それだけを付け加えて、私は話を終えた。
914: 2015/08/04(火) 20:29:26.90
ほむら (仁美の事、いつまで黙っているべきなのかは分からない。分からないけど、今は・・・)
マミの事で焦燥し、今にも泣きだしそうな顔で賭けよって来た時のまどかの顔を思い浮かべると・・・
とても今、この場で話す事なんて、私にはできなかった。
だって・・・
まどか 「ほんと!?よかった・・・良かったぁー!マミさんにもしもの事があったら、私どうしようかと・・・」
マミの無事を知り、うれし涙を流さんばかりに喜んでいるまどかの顔を、悲嘆の涙で曇らせる真似なんて、私には・・・
まどか 「今からメールしたんじゃ、迷惑かな。マミさん、明日学校に来るよね。朝一番で、教室に会いに行かなきゃ!」
ほむら 「・・・」
まどか 「うぇひっ、ごめんね、ほむらちゃん。私一人ではしゃいじゃって」
ほむら 「・・・ううん、良いのよ。さ、ご飯が終わったら、もう休みましょ。すっかり遅くなってしまったわ」
まどか 「うん、朝寝坊しないようにしないとだね。えへへ・・・」
ほむら 「そうね・・・」
・・・言えるはず、ないじゃないか。
マミの事で焦燥し、今にも泣きだしそうな顔で賭けよって来た時のまどかの顔を思い浮かべると・・・
とても今、この場で話す事なんて、私にはできなかった。
だって・・・
まどか 「ほんと!?よかった・・・良かったぁー!マミさんにもしもの事があったら、私どうしようかと・・・」
マミの無事を知り、うれし涙を流さんばかりに喜んでいるまどかの顔を、悲嘆の涙で曇らせる真似なんて、私には・・・
まどか 「今からメールしたんじゃ、迷惑かな。マミさん、明日学校に来るよね。朝一番で、教室に会いに行かなきゃ!」
ほむら 「・・・」
まどか 「うぇひっ、ごめんね、ほむらちゃん。私一人ではしゃいじゃって」
ほむら 「・・・ううん、良いのよ。さ、ご飯が終わったら、もう休みましょ。すっかり遅くなってしまったわ」
まどか 「うん、朝寝坊しないようにしないとだね。えへへ・・・」
ほむら 「そうね・・・」
・・・言えるはず、ないじゃないか。
915: 2015/08/04(火) 20:34:49.57
・・・
・・・
竜馬の家への帰路。
キュウべぇ 「・・・」ぶるぶるっ
キュウべぇが竜馬の肩の上で、身体を大きく震わせた。
竜馬 「・・・お、気がついたか」
キュウべぇ 「こ、ここは・・・?」
竜馬 「俺の家へ帰る途中さ。お前にはしばらく、俺と付き合ってもらうぜ」
キュウべぇ 「な、なぜ・・・?」
竜馬 「隼人がお前を連れて帰るように促したのさ。悪いようにはしないと」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「それで、これから僕をどうするつもりだい?・・・僕を頃すの?」
竜馬 (なんだ、こいつ・・・なんだか様子・・・というか、雰囲気が変だ)
・・・
竜馬の家への帰路。
キュウべぇ 「・・・」ぶるぶるっ
キュウべぇが竜馬の肩の上で、身体を大きく震わせた。
竜馬 「・・・お、気がついたか」
キュウべぇ 「こ、ここは・・・?」
竜馬 「俺の家へ帰る途中さ。お前にはしばらく、俺と付き合ってもらうぜ」
キュウべぇ 「な、なぜ・・・?」
竜馬 「隼人がお前を連れて帰るように促したのさ。悪いようにはしないと」
キュウべぇ 「・・・」
竜馬 「・・・?」
キュウべぇ 「それで、これから僕をどうするつもりだい?・・・僕を頃すの?」
竜馬 (なんだ、こいつ・・・なんだか様子・・・というか、雰囲気が変だ)
916: 2015/08/04(火) 20:39:28.41
竜馬 「お前をどうするかは、まだ考えていないが・・・頃すつもりなら、わざわざ連れて帰ったりなんざしねぇよ」
キュウべぇ 「そ、そう・・・」
竜馬 (こいつ・・・殺されないと聞いて、”ホッと”したのか?感情の無いはずの、キュウべぇが?)
竜馬 「・・・」じー・・・
キュウべぇ 「な、なんだい・・・?僕をそんな、じっと見たりして・・・」
竜馬 「やっぱり、お前」
キュウべぇ 「え・・・?」
竜馬 「怯えているのか?」
キュウべぇ 「・・・!?」
竜馬 「さっきから、態度がおおよそお前らしくねぇ。いったいどうしたってんだ?」
キュウべぇ 「ぼ、僕が怯えている・・・?そんな馬鹿な・・・え、でも、今僕は狼狽えて・・・」
竜馬 「・・・」
キュウべぇ 「そ、そう・・・」
竜馬 (こいつ・・・殺されないと聞いて、”ホッと”したのか?感情の無いはずの、キュウべぇが?)
竜馬 「・・・」じー・・・
キュウべぇ 「な、なんだい・・・?僕をそんな、じっと見たりして・・・」
竜馬 「やっぱり、お前」
キュウべぇ 「え・・・?」
竜馬 「怯えているのか?」
キュウべぇ 「・・・!?」
竜馬 「さっきから、態度がおおよそお前らしくねぇ。いったいどうしたってんだ?」
キュウべぇ 「ぼ、僕が怯えている・・・?そんな馬鹿な・・・え、でも、今僕は狼狽えて・・・」
竜馬 「・・・」
917: 2015/08/04(火) 20:48:20.40
それきりだった。
これ以後のキュウべぇは、竜馬が何かを話しかけてもブツブツと一人で呟いているだけで、一切反応をしなくなってしまった。
やむなく竜馬は、キュウべぇを肩にぞんざいに乗せたまま、再び家路をたどり始める。
そして、間もなく家の明かりが見える間際となって。
キュウべぇ 「竜馬・・・」
やっとキュウべぇが、独り言以外の言葉を発した。
竜馬 「なんだ?」
キュウべぇ 「君に頼みがある」
竜馬 「頼み?お前が、俺に?ろくでもない事を抜かしたら、ぶん殴るぜ」
キュウべぇ 「そうじゃない。切実な願いなんだ。竜馬、どうか僕を」
竜馬 「・・・お前を?」
キュウべぇ 「僕を助けてほしい・・・!!」
これ以後のキュウべぇは、竜馬が何かを話しかけてもブツブツと一人で呟いているだけで、一切反応をしなくなってしまった。
やむなく竜馬は、キュウべぇを肩にぞんざいに乗せたまま、再び家路をたどり始める。
そして、間もなく家の明かりが見える間際となって。
キュウべぇ 「竜馬・・・」
やっとキュウべぇが、独り言以外の言葉を発した。
竜馬 「なんだ?」
キュウべぇ 「君に頼みがある」
竜馬 「頼み?お前が、俺に?ろくでもない事を抜かしたら、ぶん殴るぜ」
キュウべぇ 「そうじゃない。切実な願いなんだ。竜馬、どうか僕を」
竜馬 「・・・お前を?」
キュウべぇ 「僕を助けてほしい・・・!!」
918: 2015/08/04(火) 20:54:17.64
・・・
・・・
心も体も。
疲れ切っているはずなのに、どうしてなのか眠れない。
明かりを消した部屋の中で、私は天井を見つめながら、とめどない思索の旅を繰り返していた。
私の隣では、まどかが静かな寝息を立てている。
私もまどかも、床に布団を敷いての雑魚寝だ。ベッドはゆまに明け渡してしまった。
お客さんを床で寝かせるのが心苦しかったので、ゆまとまどかの二人でベッドを使うように勧めたのだけれど。
律儀なまどかは、私と一緒に床で寝ることを望んでくれた。
ほむら (どんな時でも、自分の事は二の次なのね)
それでこそ、まどからしいと言えるのだけれど。
そんな彼女が、仁美の事を知ったら、いったいどうなるのだろうか。
取り留めもなく、そんな事を考えていたら、すっかり寝そびれてしまった。
・・・
心も体も。
疲れ切っているはずなのに、どうしてなのか眠れない。
明かりを消した部屋の中で、私は天井を見つめながら、とめどない思索の旅を繰り返していた。
私の隣では、まどかが静かな寝息を立てている。
私もまどかも、床に布団を敷いての雑魚寝だ。ベッドはゆまに明け渡してしまった。
お客さんを床で寝かせるのが心苦しかったので、ゆまとまどかの二人でベッドを使うように勧めたのだけれど。
律儀なまどかは、私と一緒に床で寝ることを望んでくれた。
ほむら (どんな時でも、自分の事は二の次なのね)
それでこそ、まどからしいと言えるのだけれど。
そんな彼女が、仁美の事を知ったら、いったいどうなるのだろうか。
取り留めもなく、そんな事を考えていたら、すっかり寝そびれてしまった。
919: 2015/08/04(火) 20:58:47.48
ほむら (仁美は氏んでしまったけれど、氏体は永久に見つからない)
身体は消滅してしてしまったから。
だから、仁美は未来永劫行方不明のまま。生きているのか氏んでいるのか、普通の人には分からない。
ほむら (だけれど・・・)
まどかは仁美が魔法少女になったことを知らない。
でも、魔法少女と魔女の存在は知っている。そして、仁美は魔女に囚われたのではという疑いを抱いているのだ。
ほむら (・・・いずれ、真相にたどり着くかもしれない)
・・・時間を於けば於くほどに。
真実に触れた時の衝撃は、激しいものになるだろう。
だったら、なるべく早く、本当の事を知らせた方が良いのではないか。
ほむら (リョウは、黙っていた方が良いと言っていたけれど・・・)
それが本当に、まどかのためになるのだろうか。
なにが、まどかのために最善なのか。
私は答えにたどり着けない。
身体は消滅してしてしまったから。
だから、仁美は未来永劫行方不明のまま。生きているのか氏んでいるのか、普通の人には分からない。
ほむら (だけれど・・・)
まどかは仁美が魔法少女になったことを知らない。
でも、魔法少女と魔女の存在は知っている。そして、仁美は魔女に囚われたのではという疑いを抱いているのだ。
ほむら (・・・いずれ、真相にたどり着くかもしれない)
・・・時間を於けば於くほどに。
真実に触れた時の衝撃は、激しいものになるだろう。
だったら、なるべく早く、本当の事を知らせた方が良いのではないか。
ほむら (リョウは、黙っていた方が良いと言っていたけれど・・・)
それが本当に、まどかのためになるのだろうか。
なにが、まどかのために最善なのか。
私は答えにたどり着けない。
920: 2015/08/04(火) 21:05:29.95
ほむら (何にしても、事実を告げるのは今でない事だけは確かだわ)
仁美の件に続き、マミが囚わるような事件が起こってしまい・・・
しかもそれは自分のせいだと、マミの無事が分かるまでまどかは懊悩し続けていたに違いない。
今、マミの無事を知り、まどかは心から安堵しているのに、再び奈落の底に落とすようなこと・・・
私の隣で安らかな寝息を立てている、そんなまどかにそんなひどいことを・・・
ほむら (私にできるはず、ないじゃない)
いずれ言うべき時が来るのかも知れない。
いま言わないことが、単なる問題の先送りでしかないのかもしれない。
それでも・・・
ほむら (明日・・・その事をリョウに相談してみよう)
どうするかは、それから先の話だわ。
そう心に決めると、私は毛布を頭からすっぽりとかぶった。
明日も学校。
無理にでも寝てしまわなくては。
色々ありすぎた”今日”という日を過去に置いて行くためにも、一日を終わらせてしまう必要があるのだから。
仁美の件に続き、マミが囚わるような事件が起こってしまい・・・
しかもそれは自分のせいだと、マミの無事が分かるまでまどかは懊悩し続けていたに違いない。
今、マミの無事を知り、まどかは心から安堵しているのに、再び奈落の底に落とすようなこと・・・
私の隣で安らかな寝息を立てている、そんなまどかにそんなひどいことを・・・
ほむら (私にできるはず、ないじゃない)
いずれ言うべき時が来るのかも知れない。
いま言わないことが、単なる問題の先送りでしかないのかもしれない。
それでも・・・
ほむら (明日・・・その事をリョウに相談してみよう)
どうするかは、それから先の話だわ。
そう心に決めると、私は毛布を頭からすっぽりとかぶった。
明日も学校。
無理にでも寝てしまわなくては。
色々ありすぎた”今日”という日を過去に置いて行くためにも、一日を終わらせてしまう必要があるのだから。
921: 2015/08/04(火) 21:10:39.43
・・・
・・・
翌朝。
ゆまに留守番を託し、私はまどかと連れ立って部屋を出た。
まどか 「ゆまちゃん、学校に行かないの?遅れちゃうよ?」
ほむら 「・・・今は事情があって、学校はお休みしているの。昼前には知人が彼女を迎えに来るから」
口では厳しい事を言いながら、杏子は何くれとなくゆまの面倒を見てくれていた。
今日も昼頃にゆまを迎えに来て、一緒に魔女探しをする事になっている。
日課なのだ。
まどか 「そう・・・ところで・・・」
ほむら 「なに?」
まどか 「仁美ちゃんの事なんだけれど・・・」
やはり来たか。
・・・
翌朝。
ゆまに留守番を託し、私はまどかと連れ立って部屋を出た。
まどか 「ゆまちゃん、学校に行かないの?遅れちゃうよ?」
ほむら 「・・・今は事情があって、学校はお休みしているの。昼前には知人が彼女を迎えに来るから」
口では厳しい事を言いながら、杏子は何くれとなくゆまの面倒を見てくれていた。
今日も昼頃にゆまを迎えに来て、一緒に魔女探しをする事になっている。
日課なのだ。
まどか 「そう・・・ところで・・・」
ほむら 「なに?」
まどか 「仁美ちゃんの事なんだけれど・・・」
やはり来たか。
922: 2015/08/04(火) 21:12:02.83
昨日は巴マミの事でいっぱいいっぱいだったまどかは、マミの無事を知った後も仁美の話を切り出すことはなかった。
彼女のキャパが許容範囲を超えていたせいだと思う。
だけれど一晩寝て、頭を整理させてスッキリすれば。
ほむら (当然、次に出てくるのは仁美の話題になるわよね)
まどか 「えっと、ほむらちゃん。私、お願いごとばかりしてしまって、ホント悪いなって思うんだけど・・・」
ほむら 「分かってるわ・・・」
分かってるとは答えながらも、今の私はこの話題、どうお茶を濁そうかと、そればかりを考えていた。
今は誤魔化す。
まどかに仁美の事をどう告げるにしても、まずは竜馬に相談してからだ。
ほむら 「ひとまず急ぎましょう。遅刻してしまってはいけないわ」
まどか 「う、うん」
釈然としない顔をしながらも、まどかは頷いてくれた。
彼女のキャパが許容範囲を超えていたせいだと思う。
だけれど一晩寝て、頭を整理させてスッキリすれば。
ほむら (当然、次に出てくるのは仁美の話題になるわよね)
まどか 「えっと、ほむらちゃん。私、お願いごとばかりしてしまって、ホント悪いなって思うんだけど・・・」
ほむら 「分かってるわ・・・」
分かってるとは答えながらも、今の私はこの話題、どうお茶を濁そうかと、そればかりを考えていた。
今は誤魔化す。
まどかに仁美の事をどう告げるにしても、まずは竜馬に相談してからだ。
ほむら 「ひとまず急ぎましょう。遅刻してしまってはいけないわ」
まどか 「う、うん」
釈然としない顔をしながらも、まどかは頷いてくれた。
923: 2015/08/04(火) 21:18:24.27
後は二人、ほぼ無言で学校への道を早歩きに歩く。
・・・と、その時だった。
ほむら 「・・・」
私は立ち止まって、周囲を見渡す。
目につくところには、なにも変わりはない。
・・・けど。
まどか 「うぇひっ?ほむらちゃん、急に立ち止まっちゃって、どうしたの?」
ほむら 「ううん・・・」
・・・気のせい?なわけがない。
確かに感じたのだ。
まとわり付くような、ジメジメとした・・・
まるで梅雨時の湿っぽさのような、鬱陶しい視線を。
・・・と、その時だった。
ほむら 「・・・」
私は立ち止まって、周囲を見渡す。
目につくところには、なにも変わりはない。
・・・けど。
まどか 「うぇひっ?ほむらちゃん、急に立ち止まっちゃって、どうしたの?」
ほむら 「ううん・・・」
・・・気のせい?なわけがない。
確かに感じたのだ。
まとわり付くような、ジメジメとした・・・
まるで梅雨時の湿っぽさのような、鬱陶しい視線を。
924: 2015/08/04(火) 21:18:59.22
ほむら (間違いない・・・キュウべぇだ・・・)
キュウべぇが監視している。
対象は私ではなく、間違いなくまどかの方だろう。
ほむら (あいつ、今度は何を企んでいるのかしら・・・)
程なくして、奴の視線が発していたプレッシャーが、霧に溶け込むように掻き消えた。
少なくとも、今この場で何かをしようというつもりはないらしい。
それとも、邪魔な私がまどかの側にいるせいか・・・
まどか 「ほむらちゃん・・・」
ほむら 「何でもない、行きましょう」
・・・そういえば、竜馬に預けた”キュウべぇ”は、あれからどうなったのだろう。
キュウべぇが監視している。
対象は私ではなく、間違いなくまどかの方だろう。
ほむら (あいつ、今度は何を企んでいるのかしら・・・)
程なくして、奴の視線が発していたプレッシャーが、霧に溶け込むように掻き消えた。
少なくとも、今この場で何かをしようというつもりはないらしい。
それとも、邪魔な私がまどかの側にいるせいか・・・
まどか 「ほむらちゃん・・・」
ほむら 「何でもない、行きましょう」
・・・そういえば、竜馬に預けた”キュウべぇ”は、あれからどうなったのだろう。
932: 2015/08/08(土) 21:26:51.81
・・・
・・・
朝。ホームルーム前の教室。
ざわめき続けるクラスメイト達。無理もない。行方不明となっている志筑仁美の続報が、何一つないのだ。
ただただ心配する声。
幼いなりの推理で、仁美の現況を想像する声。
心配のあまり、こらえきれない嗚咽を漏らす子も。
いつもは賑やかなさやかは一人、机に突っ伏している。
寝ているわけではないだろう。
人一倍感受性の強い彼女の事だ。皆の輪に加わったら最後、誰よりも激しく取り乱してしまうに違いない。
それが自分で分かっているから、一人静かに机だけに今の疲れた表情を見せているのだと思う。
・・・
朝。ホームルーム前の教室。
ざわめき続けるクラスメイト達。無理もない。行方不明となっている志筑仁美の続報が、何一つないのだ。
ただただ心配する声。
幼いなりの推理で、仁美の現況を想像する声。
心配のあまり、こらえきれない嗚咽を漏らす子も。
いつもは賑やかなさやかは一人、机に突っ伏している。
寝ているわけではないだろう。
人一倍感受性の強い彼女の事だ。皆の輪に加わったら最後、誰よりも激しく取り乱してしまうに違いない。
それが自分で分かっているから、一人静かに机だけに今の疲れた表情を見せているのだと思う。
933: 2015/08/08(土) 21:32:14.44
ほむら (・・・)
まどかも・・・
私という頼る先がある分、他のみんなよりは冷静でいられるようだけれど・・・
ほむら (教室の喧騒に呑まれつつあるようだわ。まどかだって長くはもたない・・・黙ったままでなんて・・・)
そんな中、喧噪の波を裂いて、彼の声が私の耳に飛び込んできた。
竜馬 「暁美」
ほむら 「リョウ・・・」
他のみんなに気を取られすぎて、彼がすぐ側まで来ていたことに気がつかなかったのだ。
でも、ちょうど良かった。彼には伝えたい事がある。
ほむら 「リョウ、あのね」
ほむら・竜馬 「話がある(わ)」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・」
ほぼ同時に同じ言葉を発しあって、私たちはしばし見つめ合ってしまった。
まどかも・・・
私という頼る先がある分、他のみんなよりは冷静でいられるようだけれど・・・
ほむら (教室の喧騒に呑まれつつあるようだわ。まどかだって長くはもたない・・・黙ったままでなんて・・・)
そんな中、喧噪の波を裂いて、彼の声が私の耳に飛び込んできた。
竜馬 「暁美」
ほむら 「リョウ・・・」
他のみんなに気を取られすぎて、彼がすぐ側まで来ていたことに気がつかなかったのだ。
でも、ちょうど良かった。彼には伝えたい事がある。
ほむら 「リョウ、あのね」
ほむら・竜馬 「話がある(わ)」
ほむら 「・・・」
竜馬 「・・・」
ほぼ同時に同じ言葉を発しあって、私たちはしばし見つめ合ってしまった。
934: 2015/08/08(土) 21:35:08.31
ほむら 「・・・急いで相談したい事が。できれば次の昼休みにでも」
竜馬 「奇遇だな。俺も一刻も早くお前に伝えたい事がある。それと、あいつもな・・・」
ほむら 「え・・・?」
竜馬の視線に促されて。
私が顔を向けた先は、教室の窓。
そこには・・・
キュウべぇ 「やあ」
外から中を覗き込む、キュウべぇの姿があった。
竜馬 「奇遇だな。俺も一刻も早くお前に伝えたい事がある。それと、あいつもな・・・」
ほむら 「え・・・?」
竜馬の視線に促されて。
私が顔を向けた先は、教室の窓。
そこには・・・
キュウべぇ 「やあ」
外から中を覗き込む、キュウべぇの姿があった。
935: 2015/08/08(土) 21:41:40.79
・・・
・・・
お昼休みの屋上。
キュウべぇ 「鹿目まどかが危ないよ」
屋上に他の生徒の姿がないことを確認して、ベンチに腰掛けて弁当箱を開く私と竜馬。
急に誰かがやって来た場合に備えて、あくまでも見た目は、普通に昼食をとっている体でいなくてはいけない。
そんな私たちに開口一番、キュウべぇがそう言ったのだ。
ほむら 「なんなの、藪から棒に」
キュウべぇ 「言葉通りさ。ゲッターを用いたエネルギー回収案は失敗してしまった。となれば、僕たちの計画は当然白紙へと戻る」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「つまり、資質の高い少女への接触へと、回帰するわけだね。これは当然のプロセスだ」
ほむら 「だから、今朝はやけにお前たちの気配を感じたというわけね。まどかと接触するために・・・」
奴の言う事は理に適っている。
最も効率の良い方法が失敗したのだ。当然、次善の策を用いようとするだろう。
それは、キュウべぇたちの矛先がまどかへ再び向けられることを意味する。
・・・
お昼休みの屋上。
キュウべぇ 「鹿目まどかが危ないよ」
屋上に他の生徒の姿がないことを確認して、ベンチに腰掛けて弁当箱を開く私と竜馬。
急に誰かがやって来た場合に備えて、あくまでも見た目は、普通に昼食をとっている体でいなくてはいけない。
そんな私たちに開口一番、キュウべぇがそう言ったのだ。
ほむら 「なんなの、藪から棒に」
キュウべぇ 「言葉通りさ。ゲッターを用いたエネルギー回収案は失敗してしまった。となれば、僕たちの計画は当然白紙へと戻る」
ほむら 「・・・」
キュウべぇ 「つまり、資質の高い少女への接触へと、回帰するわけだね。これは当然のプロセスだ」
ほむら 「だから、今朝はやけにお前たちの気配を感じたというわけね。まどかと接触するために・・・」
奴の言う事は理に適っている。
最も効率の良い方法が失敗したのだ。当然、次善の策を用いようとするだろう。
それは、キュウべぇたちの矛先がまどかへ再び向けられることを意味する。
936: 2015/08/08(土) 21:42:59.82
・・・しかし。
ほむら 「それをなぜ私に?」
教える必要があるのだろう。奴の言葉を借りれば”意味が分からない”だわ。
キュウべぇ 「僕はもう、群れには戻れないからね」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「暁美・・・」
ほむら 「リョウ、あなたもどうして、わざわざこいつと私の仲立ちをするような真似をするの?」
竜馬 「俺がキュウべぇと、取引をしたからだ」
ほむら 「えっ!?」
私は、信じられない物を見る目で竜馬を見つめた。
私の仲間が、キュウべぇと取引を・・・!?
ほむら 「あなた、正気?!自分が何を言っているのか分かっているの?」
ほむら 「それをなぜ私に?」
教える必要があるのだろう。奴の言葉を借りれば”意味が分からない”だわ。
キュウべぇ 「僕はもう、群れには戻れないからね」
ほむら 「・・・?」
竜馬 「暁美・・・」
ほむら 「リョウ、あなたもどうして、わざわざこいつと私の仲立ちをするような真似をするの?」
竜馬 「俺がキュウべぇと、取引をしたからだ」
ほむら 「えっ!?」
私は、信じられない物を見る目で竜馬を見つめた。
私の仲間が、キュウべぇと取引を・・・!?
ほむら 「あなた、正気?!自分が何を言っているのか分かっているの?」
937: 2015/08/08(土) 21:44:04.31
竜馬 「正気だ。暁美、まずは俺の話を聞け」
ほむら 「き、聞くけど・・・でも・・・」
竜馬 「思い出せ、暁美。俺は昨日話したはずだ。こいつを連れて帰るようにと、隼人から言われたことを」
ほむら 「うん・・・」
竜馬 「隼人が・・・ゲッターが意味のない事を俺に勧めるはずがない。そしてその意味がな、こいつと話していて分かったんだよ」
ほむら 「なんなの、その意味っていうのは・・・」
竜馬 「・・・暁美。お前、こいつの事をどう思ってる?」
ほむら 「どうって・・・」
いきなり、何を言い出すのか。
そう思いながらも、私はキュウべぇを見る。
私がこいつをどう思うか?
そんなの決まっている・・・
ほむら 「頃してやりたいわ。たとえそれが意味のない行為だとは分かっていても。多くの人の人生を弄び、狂わせたこいつの事を」
竜馬 「・・・」
ほむら 「私がキュウべぇに抱いている気持は、掛け値なしの憎しみよ」
ほむら 「き、聞くけど・・・でも・・・」
竜馬 「思い出せ、暁美。俺は昨日話したはずだ。こいつを連れて帰るようにと、隼人から言われたことを」
ほむら 「うん・・・」
竜馬 「隼人が・・・ゲッターが意味のない事を俺に勧めるはずがない。そしてその意味がな、こいつと話していて分かったんだよ」
ほむら 「なんなの、その意味っていうのは・・・」
竜馬 「・・・暁美。お前、こいつの事をどう思ってる?」
ほむら 「どうって・・・」
いきなり、何を言い出すのか。
そう思いながらも、私はキュウべぇを見る。
私がこいつをどう思うか?
そんなの決まっている・・・
ほむら 「頃してやりたいわ。たとえそれが意味のない行為だとは分かっていても。多くの人の人生を弄び、狂わせたこいつの事を」
竜馬 「・・・」
ほむら 「私がキュウべぇに抱いている気持は、掛け値なしの憎しみよ」
938: 2015/08/08(土) 21:55:37.58
言いながら、知らず知らずのうちに奴を見る目が険しくなっていく。
普段は理性で押さえつけている感情が、むき出しの殺意となって私の胸の奥から溢れ出してゆく。
キュウべぇ 「・・・ひぃっ」
え・・・?
今、キュウべぇが短くだけれど。
悲鳴なような声を上げなかった?
キュウべぇ 「・・・暁美ほむら。お願いだから、そんな目で僕を見ないでほしい」
まさか・・・
ほむら 「お前、震えているの?」
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「怯えてる・・・の?」
私の殺気に、感情の無いキュウべぇが怯えている・・・?
そんな馬鹿な。
ほむら 「リョウ!?」
普段は理性で押さえつけている感情が、むき出しの殺意となって私の胸の奥から溢れ出してゆく。
キュウべぇ 「・・・ひぃっ」
え・・・?
今、キュウべぇが短くだけれど。
悲鳴なような声を上げなかった?
キュウべぇ 「・・・暁美ほむら。お願いだから、そんな目で僕を見ないでほしい」
まさか・・・
ほむら 「お前、震えているの?」
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「怯えてる・・・の?」
私の殺気に、感情の無いキュウべぇが怯えている・・・?
そんな馬鹿な。
ほむら 「リョウ!?」
939: 2015/08/08(土) 21:58:52.92
竜馬 「隼人の奴、こいつに何か細工をしたらしい」
ほむら 「それって、つまり・・・」
キュウべぇ 「今の僕には、君の眼差しが心底恐ろしい・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「芽生えたらしいぜ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「感情って奴が、な」
キュウべぇに感情が?ゲッターが奴に細工を?どうして、そんな真似を・・・
だけれど、確かに・・・
私の殺気を恐れるキュウべぇには、一見して感情が湧いて出たように見えないこともない。
だけれど、私は知っている。
私やまどか達がキュウべぇの本性を知る以前。
奴は私たちの前で、まるで感情があるかのようにふるまっていたことを。
ほむら (今度も演技かも知れない。だとしたら・・・)
ほむら 「それって、つまり・・・」
キュウべぇ 「今の僕には、君の眼差しが心底恐ろしい・・・」
ほむら 「・・・」
竜馬 「芽生えたらしいぜ」
ほむら 「・・・」
竜馬 「感情って奴が、な」
キュウべぇに感情が?ゲッターが奴に細工を?どうして、そんな真似を・・・
だけれど、確かに・・・
私の殺気を恐れるキュウべぇには、一見して感情が湧いて出たように見えないこともない。
だけれど、私は知っている。
私やまどか達がキュウべぇの本性を知る以前。
奴は私たちの前で、まるで感情があるかのようにふるまっていたことを。
ほむら (今度も演技かも知れない。だとしたら・・・)
940: 2015/08/08(土) 22:02:39.02
ほむら 「こいつに感情が生まれたとして、リョウはどんな取引に応じたというの?」
竜馬 「とりあえず、こいつの命を守ってやる」
ほむら 「命・・・?狙われているの?いったい、誰から?」
キュウべぇ 「他のキュウべぇたちからだよ、暁美ほむら」
ほむら 「・・・どういう事?」
キュウべぇの話を要約すると・・・
このキュウべぇは、キュウべぇ全体を繋ぐ統合意識から追い出されたのだという。
理由は彼が感情という、”精神疾患”を負ってしまったため。
キュウべぇの統合意識は、疾患が種全体の意識へと拡散することを防ぐため、些末な一個体を切り捨てたのだ。
そして、その次の手段として。
キュウべぇ 「僕は、他のキュウべぇから殺されることになる」
ほむら 「だから、それはどうしてなの?」
キュウべぇ 「簡単さ。僕は色んな事を知りすぎている。全体として制御できなくなった僕は、殺される以外にない」
ほむら 「そう・・・」
道理は通っている。
だけれど・・・
竜馬 「とりあえず、こいつの命を守ってやる」
ほむら 「命・・・?狙われているの?いったい、誰から?」
キュウべぇ 「他のキュウべぇたちからだよ、暁美ほむら」
ほむら 「・・・どういう事?」
キュウべぇの話を要約すると・・・
このキュウべぇは、キュウべぇ全体を繋ぐ統合意識から追い出されたのだという。
理由は彼が感情という、”精神疾患”を負ってしまったため。
キュウべぇの統合意識は、疾患が種全体の意識へと拡散することを防ぐため、些末な一個体を切り捨てたのだ。
そして、その次の手段として。
キュウべぇ 「僕は、他のキュウべぇから殺されることになる」
ほむら 「だから、それはどうしてなの?」
キュウべぇ 「簡単さ。僕は色んな事を知りすぎている。全体として制御できなくなった僕は、殺される以外にない」
ほむら 「そう・・・」
道理は通っている。
だけれど・・・
941: 2015/08/08(土) 22:06:06.06
ほむら 「虫の良い話ね。今まで散々少女たちを食い物にしてきておいて、自分が危なくなったら庇護を求める。それも敵である私たちに・・・」
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「無様ったら、ありゃしないわ」
竜馬 「暁美。それでも、こいつには利用価値がある。俺たちが知りたい情報をこいつから聞き出せるかもしれないんだ」
ほむら 「それが命を守ってやることへの代償という訳?・・・そうね、だけど」
私は懐に手を突っ込むと、あらかじめ仕込んでおいた銃を引き抜いてキュウべぇへと向けた。
竜馬 「お前、制服の下になんて物を隠してんだよ!」
ほむら 「織莉子の件もあったし、護身用に・・・ね?さっそく役に立つ時が来て嬉しいわ」
キュウべぇ 「・・・ぼ、僕を撃つつもりかい?」
ほむら 「ええ。あのね、今までどうして私が、必要以上にお前を殺さないできたか、分かっている?」
キュウべぇ 「・・・意味がないからだろう?僕の代わりは、いくらでもいるから」
ほむら 「ご名答。それで、ね。今のお前には、感情があるわけよね?」
キュウべぇ 「そ、そうだよ・・・」
ほむら 「殺されたら、嫌なわけよね。氏にたくないって事よね。痛いの、怖いわけよね・・・?」
キュウべぇ 「・・・っ!」
キュウべぇ 「・・・」
ほむら 「無様ったら、ありゃしないわ」
竜馬 「暁美。それでも、こいつには利用価値がある。俺たちが知りたい情報をこいつから聞き出せるかもしれないんだ」
ほむら 「それが命を守ってやることへの代償という訳?・・・そうね、だけど」
私は懐に手を突っ込むと、あらかじめ仕込んでおいた銃を引き抜いてキュウべぇへと向けた。
竜馬 「お前、制服の下になんて物を隠してんだよ!」
ほむら 「織莉子の件もあったし、護身用に・・・ね?さっそく役に立つ時が来て嬉しいわ」
キュウべぇ 「・・・ぼ、僕を撃つつもりかい?」
ほむら 「ええ。あのね、今までどうして私が、必要以上にお前を殺さないできたか、分かっている?」
キュウべぇ 「・・・意味がないからだろう?僕の代わりは、いくらでもいるから」
ほむら 「ご名答。それで、ね。今のお前には、感情があるわけよね?」
キュウべぇ 「そ、そうだよ・・・」
ほむら 「殺されたら、嫌なわけよね。氏にたくないって事よね。痛いの、怖いわけよね・・・?」
キュウべぇ 「・・・っ!」
942: 2015/08/08(土) 22:08:59.33
ほむら 「だったら、私にはお前を頃す理由があるって事になる。なにせ、お前に犠牲にされた少女たちの気持ちを、思い知らせる事ができるって訳なのだから」
キュウべぇ 「あ、あう・・・」
ほむら 「お得意の跳躍で、逃げても良いのよ?今は逃しても、私はお前を必ず追い詰め、鉛の弾をぶち込んでやるから」
キュウべぇ 「逃げるって・・・そんな、僕には・・・」
ほむら 「そうよね。私たちの元から離れたら、今度は他のキュウべぇたちから狙われる。殺される相手が、変わるだけだもの。逃げ場なんて、無いわよね」
キュウべぇ (がたがた・・・がた・・・)
竜馬 「暁美・・・よせっ!」
ほむら 「全ての時間軸で氏んでいった、さやかや杏子、マミ・・・他の名も知れない魔法少女たち・・・」
キュウべぇ 「た、たすけ・・・たすけて・・・」
ほむら 「まどかの悲しみ。まどかを守れなかった私の無念。全ての恨みを、一発の銃弾に込めるわ。思い知れ!」
竜馬 「暁美っ!!」
キュウべぇ 「あ、あう・・・」
ほむら 「お得意の跳躍で、逃げても良いのよ?今は逃しても、私はお前を必ず追い詰め、鉛の弾をぶち込んでやるから」
キュウべぇ 「逃げるって・・・そんな、僕には・・・」
ほむら 「そうよね。私たちの元から離れたら、今度は他のキュウべぇたちから狙われる。殺される相手が、変わるだけだもの。逃げ場なんて、無いわよね」
キュウべぇ (がたがた・・・がた・・・)
竜馬 「暁美・・・よせっ!」
ほむら 「全ての時間軸で氏んでいった、さやかや杏子、マミ・・・他の名も知れない魔法少女たち・・・」
キュウべぇ 「た、たすけ・・・たすけて・・・」
ほむら 「まどかの悲しみ。まどかを守れなかった私の無念。全ての恨みを、一発の銃弾に込めるわ。思い知れ!」
竜馬 「暁美っ!!」
943: 2015/08/08(土) 22:14:33.80
キュウべぇ 「・・・ひっ!!!」
キュウべぇが、目前の氏への恐怖に、固く目を閉じてうずくまる。
だけれど・・・
ほむら 「・・・」
銃声はいつまでたっても轟くことは無かった。
当然・・・私には撃つつもりが、無かったのだもの。
キュウべぇ 「・・・?」がたがた
ほむら 「本当に撃つと思ったの?ここは学校よ、大問題になっちゃう」
竜馬 「お、お前・・・驚かすなよ」
ほむら 「ごめんね。だけれど、確信できたわ。こいつ、嘘は言っていないと思う」
言いながら見下した先のキュウべぇは、無様に腰を抜かした格好で、不格好に震えていた。
感情が無ければ、ここまで愚かしい取り乱しようなんて、こいつにはできないだろう。
キュウべぇが、目前の氏への恐怖に、固く目を閉じてうずくまる。
だけれど・・・
ほむら 「・・・」
銃声はいつまでたっても轟くことは無かった。
当然・・・私には撃つつもりが、無かったのだもの。
キュウべぇ 「・・・?」がたがた
ほむら 「本当に撃つと思ったの?ここは学校よ、大問題になっちゃう」
竜馬 「お、お前・・・驚かすなよ」
ほむら 「ごめんね。だけれど、確信できたわ。こいつ、嘘は言っていないと思う」
言いながら見下した先のキュウべぇは、無様に腰を抜かした格好で、不格好に震えていた。
感情が無ければ、ここまで愚かしい取り乱しようなんて、こいつにはできないだろう。
944: 2015/08/08(土) 22:15:24.14
ほむら (確かにかつて、キュウべぇは感情のあるふりをして私たちに近づいてきたけれど・・・)
喜びや悲しみ、驚きや痛みなど。
感情の表面を撫でるくらいの演技しか、奴は私たちに見せたことは無かったのだ。
それも当然、そもそも感情の本質がどんなものか、キュウべぇには理解できていなかったのだから。
それが今、迫る氏を目前にして、奴は見苦しいほどに狼狽して見せた。
・・・氏の恐れを知らなければ、とてもできない芸当だ。
キュウべぇ 「ぼ、ぼぼ、僕を騙したのかい・・・暁美ほむら」
ほむら 「それがどうしたの?お前は今まで、どれだけの魔法少女たちを騙してきたと思っているの?殺されずに済んでいるだけでも、ありがたいと思う事ね」
キュウべぇ 「・・・」
明らかにむっとした顔で、私を睨むキュウべぇ。
こいつ、こんな顔もできたのか。
喜びや悲しみ、驚きや痛みなど。
感情の表面を撫でるくらいの演技しか、奴は私たちに見せたことは無かったのだ。
それも当然、そもそも感情の本質がどんなものか、キュウべぇには理解できていなかったのだから。
それが今、迫る氏を目前にして、奴は見苦しいほどに狼狽して見せた。
・・・氏の恐れを知らなければ、とてもできない芸当だ。
キュウべぇ 「ぼ、ぼぼ、僕を騙したのかい・・・暁美ほむら」
ほむら 「それがどうしたの?お前は今まで、どれだけの魔法少女たちを騙してきたと思っているの?殺されずに済んでいるだけでも、ありがたいと思う事ね」
キュウべぇ 「・・・」
明らかにむっとした顔で、私を睨むキュウべぇ。
こいつ、こんな顔もできたのか。
945: 2015/08/08(土) 22:19:57.50
ほむら 「まぁ、良いわ。話を先に勧めましょう」
竜馬 「お、おう・・・」
ほむら 「リョウの話というのは、キュウべぇのこの事?」
竜馬 「ああ」
ほむら 「じゃあ、せいぜい役に立ってもらいましょ。聞き出したい事は、いくらでもある・・・」
だけれど、それも今は、いったん後回しだ。
竜馬 「そうだな。それで、お前の方の話ってのは?」
ほむら 「うん、ちょっとリョウに相談に乗って欲しい事があったんだけれど・・・」
竜馬 「なんだよ、歯切れが悪いな」
ほむら 「事情が変わったから。ねぇ、リョウ。今日は先に帰ってもらっていい?」
竜馬 「そりゃ構わないが、魔女探しはどうするんだよ」
ほむら 「一日だけ休みをもらう。ちょっと、まどかと話したい事があるから」
竜馬 「・・・おまえ、まさか。志筑の事を・・・」
ほむら 「言ったでしょ、事情が変わったと。まどかに話すわ。全てを。そして・・・」
ほむら 「まどかの、魔法少女への幻想を叩き割るわ。粉々にね」
腹立たしいけれど、キュウべぇの情報は、さっそく役に立ってくれたのだ。
竜馬 「お、おう・・・」
ほむら 「リョウの話というのは、キュウべぇのこの事?」
竜馬 「ああ」
ほむら 「じゃあ、せいぜい役に立ってもらいましょ。聞き出したい事は、いくらでもある・・・」
だけれど、それも今は、いったん後回しだ。
竜馬 「そうだな。それで、お前の方の話ってのは?」
ほむら 「うん、ちょっとリョウに相談に乗って欲しい事があったんだけれど・・・」
竜馬 「なんだよ、歯切れが悪いな」
ほむら 「事情が変わったから。ねぇ、リョウ。今日は先に帰ってもらっていい?」
竜馬 「そりゃ構わないが、魔女探しはどうするんだよ」
ほむら 「一日だけ休みをもらう。ちょっと、まどかと話したい事があるから」
竜馬 「・・・おまえ、まさか。志筑の事を・・・」
ほむら 「言ったでしょ、事情が変わったと。まどかに話すわ。全てを。そして・・・」
ほむら 「まどかの、魔法少女への幻想を叩き割るわ。粉々にね」
腹立たしいけれど、キュウべぇの情報は、さっそく役に立ってくれたのだ。
946: 2015/08/08(土) 22:22:18.87
・・・
・・・
その日の放課後。
誰もいない私の部屋に、まどかを招き入れる。
まどか 「へへ・・・朝はほむらちゃんの部屋から登校して、またここに戻ってきちゃった。ただいまって言うべきなのかな」
ほむら 「・・・」
まどか 「う・・・うぇひっ・・・そ、それでほむらちゃん、話っていうのは・・・?」
ほむら 「ええ・・・」
まどか 「もしかして、仁美ちゃんの事・・・?」
ほむら 「そう。見つかったから。一番にまどかに知らせようと思って」
まどか 「ほ、ほんとっ!!?」
花が咲いたように、まどかの顔が喜びの色でこぼれそうになる。
私はこれから・・・この顔を悲しみに歪ませなくてはならないのだ。
全てはまどかのため・・・やらなければいけない事、だから。
・・・
その日の放課後。
誰もいない私の部屋に、まどかを招き入れる。
まどか 「へへ・・・朝はほむらちゃんの部屋から登校して、またここに戻ってきちゃった。ただいまって言うべきなのかな」
ほむら 「・・・」
まどか 「う・・・うぇひっ・・・そ、それでほむらちゃん、話っていうのは・・・?」
ほむら 「ええ・・・」
まどか 「もしかして、仁美ちゃんの事・・・?」
ほむら 「そう。見つかったから。一番にまどかに知らせようと思って」
まどか 「ほ、ほんとっ!!?」
花が咲いたように、まどかの顔が喜びの色でこぼれそうになる。
私はこれから・・・この顔を悲しみに歪ませなくてはならないのだ。
全てはまどかのため・・・やらなければいけない事、だから。
947: 2015/08/08(土) 22:23:22.03
ほむら 「・・・」
まどか 「ほむらちゃ・・・っ!?まさかっ!!」
私のただならない雰囲気に、まどかが最悪の事態を察してしまう。
まどか 「仁美ちゃんの身に何かあったの?!ねぇっ!」
ほむら 「慌てないで・・・すぐに会わせてあげるから」
まどか 「え・・・」
私は・・・
通学カバンに手を突っ込むと、ずっとそこに入れていた”ある物”を取り出して、まどかに渡した。
まどか 「え、なにコレ」
ほむら 「グリーフシード。魔法少女がソウルジェムを浄化するために使う、大切なものよ」
まどか 「あ・・・マミさんが使ってるの見たことある。あれかぁ・・・でも、少し形が違うような・・・」
ほむら 「形はそれぞれなのよ。個性がね、目に見える姿で形作られるから」
まどか 「ほむらちゃ・・・っ!?まさかっ!!」
私のただならない雰囲気に、まどかが最悪の事態を察してしまう。
まどか 「仁美ちゃんの身に何かあったの?!ねぇっ!」
ほむら 「慌てないで・・・すぐに会わせてあげるから」
まどか 「え・・・」
私は・・・
通学カバンに手を突っ込むと、ずっとそこに入れていた”ある物”を取り出して、まどかに渡した。
まどか 「え、なにコレ」
ほむら 「グリーフシード。魔法少女がソウルジェムを浄化するために使う、大切なものよ」
まどか 「あ・・・マミさんが使ってるの見たことある。あれかぁ・・・でも、少し形が違うような・・・」
ほむら 「形はそれぞれなのよ。個性がね、目に見える姿で形作られるから」
948: 2015/08/08(土) 22:24:16.80
まどか 「個性・・・?」
ほむら 「生前の性格が、形に現れると言っているの」
まどか 「生前・・・え・・・?」
まどかの表情が、徐々に曇ってゆく。
断片的な情報から、何か不吉なものを感じ取ったよう。
まどか 「ほむらちゃん、何を言ってるの・・・?」
ほむら 「グリーフシードはね、元々は魔女の卵なのよ。それを私たちはエネルギー源にしている」
まどか 「ま、魔女!?」
ほむら 「心配しないで。今のそれは、もう安全だから。なにせ、その持ち主は、すでに氏んでいるのだから」
まどか 「・・・」
ほむら 「ねぇ、まどか。どうして魔法少女が、魔女の卵から魔力をもらえると思う?」
まどか 「・・・そんなの・・・分からないよ・・・」
ほむら 「根っこがね、一緒だからよ」
まどか 「だから・・・意味が分からない・・・」
ほむら 「根っこ。つまり、魔法少女も魔女も、元は人間だったという事よ」
まどか 「・・・っ!!」
ほむら 「生前の性格が、形に現れると言っているの」
まどか 「生前・・・え・・・?」
まどかの表情が、徐々に曇ってゆく。
断片的な情報から、何か不吉なものを感じ取ったよう。
まどか 「ほむらちゃん、何を言ってるの・・・?」
ほむら 「グリーフシードはね、元々は魔女の卵なのよ。それを私たちはエネルギー源にしている」
まどか 「ま、魔女!?」
ほむら 「心配しないで。今のそれは、もう安全だから。なにせ、その持ち主は、すでに氏んでいるのだから」
まどか 「・・・」
ほむら 「ねぇ、まどか。どうして魔法少女が、魔女の卵から魔力をもらえると思う?」
まどか 「・・・そんなの・・・分からないよ・・・」
ほむら 「根っこがね、一緒だからよ」
まどか 「だから・・・意味が分からない・・・」
ほむら 「根っこ。つまり、魔法少女も魔女も、元は人間だったという事よ」
まどか 「・・・っ!!」
949: 2015/08/08(土) 22:26:02.59
愕然とした顔で、私と手の中のグリーフシードを交互に見るまどか。
情報の断片から導き出した答えに、口元がわなわなと震えている。
まどか 「ま、まさか・・・まさか・・・まさか・・・」
ほむら 「志筑仁美よ・・・」
まどか 「・・・っ!!」
ショックのあまり、まどかの体が激しく震えた。
彼女の手元から零れ落ちたグリーフシードが、乾いた音を立てながら、むなしく床の上に落ちて転がる。
まどか 「嘘だ・・・」
ほむら 「本当よ」
まどか 「嘘だ嘘だ!ほむらちゃん、私を驚かせようって、そんな嘘を・・・」
ほむら 「真実なの。魔法少女はね、早かれ遅かれ、いずれはその姿になってしまう。宿命なの」
まどか 「え・・・」
ほむら 「・・・」
まどか 「それって・・・マミさんも?」
ほむら 「ええ」
まどか 「ほむらちゃんも、そうなの・・・?!」
ほむら 「・・・」
情報の断片から導き出した答えに、口元がわなわなと震えている。
まどか 「ま、まさか・・・まさか・・・まさか・・・」
ほむら 「志筑仁美よ・・・」
まどか 「・・・っ!!」
ショックのあまり、まどかの体が激しく震えた。
彼女の手元から零れ落ちたグリーフシードが、乾いた音を立てながら、むなしく床の上に落ちて転がる。
まどか 「嘘だ・・・」
ほむら 「本当よ」
まどか 「嘘だ嘘だ!ほむらちゃん、私を驚かせようって、そんな嘘を・・・」
ほむら 「真実なの。魔法少女はね、早かれ遅かれ、いずれはその姿になってしまう。宿命なの」
まどか 「え・・・」
ほむら 「・・・」
まどか 「それって・・・マミさんも?」
ほむら 「ええ」
まどか 「ほむらちゃんも、そうなの・・・?!」
ほむら 「・・・」
950: 2015/08/08(土) 22:27:04.33
腰が抜けてしまったのだろう。
ぺたり、床に膝をついてしまったまどか。
フルフルと震えながら、目をまん丸に見開いてこちらを見ている。
・・・胸が痛い。
だけれど、言わなくてはいけない。
まどかを守るため。それでもし、まどかに嫌われてしまっても、私にとって、それは本望なのだ・・・
ほむら 「・・・まどか。お父さんやお母さんは好き?家族の事を愛している?」
まどか 「うん・・・愛しているよ・・・」
ほむら 「では、言っておくわね。まどか、あなたには魔法少女としての、計り知れない資質が眠っている」
まどか 「それ・・・キュウべぇも言ってたよ・・・」
ぺたり、床に膝をついてしまったまどか。
フルフルと震えながら、目をまん丸に見開いてこちらを見ている。
・・・胸が痛い。
だけれど、言わなくてはいけない。
まどかを守るため。それでもし、まどかに嫌われてしまっても、私にとって、それは本望なのだ・・・
ほむら 「・・・まどか。お父さんやお母さんは好き?家族の事を愛している?」
まどか 「うん・・・愛しているよ・・・」
ほむら 「では、言っておくわね。まどか、あなたには魔法少女としての、計り知れない資質が眠っている」
まどか 「それ・・・キュウべぇも言ってたよ・・・」
951: 2015/08/08(土) 22:28:14.55
ほむら 「あなたの力をもってすれば、あるいは志筑仁美一人くらい、元の姿に戻すのも容易いのかもしれない」
まどか 「え・・・っ!?」
事実、他の時間軸では魔女化してしまったさやかを、救った事だってあったのだ。
単なる想像じゃない。間違いなく、まどかになら可能だろう。
だからこそ、私の口で釘を刺しておかなければならないのだ。
ほむら 「だけど」
まどか 「・・・」
ほむら 「まどか。あなたがキュウべぇと契約を結んでしまったら、最後よ。そのグリーフシードは、将来のあなたの姿の鏡となってしまう」
まどか 「あ・・・で、でも・・・」
ほむら 「まどかを愛してくれているご両親を、かわいい弟を・・・あなたは裏切ってしまう事になる。それで良いの?」
まどか 「だけど、それで仁美ちゃんが助かるなら!」
ほむら 「あなたが氏んだら、お父さんもお母さんも、きっと無事には生きていけなくなる!」
まどか 「・・・っ!」
まどか 「え・・・っ!?」
事実、他の時間軸では魔女化してしまったさやかを、救った事だってあったのだ。
単なる想像じゃない。間違いなく、まどかになら可能だろう。
だからこそ、私の口で釘を刺しておかなければならないのだ。
ほむら 「だけど」
まどか 「・・・」
ほむら 「まどか。あなたがキュウべぇと契約を結んでしまったら、最後よ。そのグリーフシードは、将来のあなたの姿の鏡となってしまう」
まどか 「あ・・・で、でも・・・」
ほむら 「まどかを愛してくれているご両親を、かわいい弟を・・・あなたは裏切ってしまう事になる。それで良いの?」
まどか 「だけど、それで仁美ちゃんが助かるなら!」
ほむら 「あなたが氏んだら、お父さんもお母さんも、きっと無事には生きていけなくなる!」
まどか 「・・・っ!」
952: 2015/08/08(土) 22:29:03.07
ほむら 「最愛の娘を亡くして、あなたのご両親がそのままでいられると、まどかは本当に思っているの!?」
まどか 「それは・・・だけど・・・っ!」
ほむら 「親だけじゃない。あなたがいなくなることで、間違いなく弟さんの人生も歪む。家族が消えるって、そういう事よ!」
まどか 「た、たっくんの・・・人生も・・・?」
ほむら 「それに、家族だけじゃない。あなたを愛しているのは、家族だけでなんか、決してない!」
まどか 「え・・・?」
ほむら 「マミもさやかも、あなたの友達は、みんなあなたを愛している!それに、わ・・・私も・・・っ」
まどか 「ほむらちゃん・・・?」
ほむら 「う・・・ぐっ、なんでも・・・何でもないわ」
自分の気持ちを、高ぶった胸の内をすべてぶつけてしまいたい。
そんなこみあげてきた欲求を、私はすんでの所で噛み潰す。
私の気持ちなんて、今は関係ないのだから・・・
まどか 「それは・・・だけど・・・っ!」
ほむら 「親だけじゃない。あなたがいなくなることで、間違いなく弟さんの人生も歪む。家族が消えるって、そういう事よ!」
まどか 「た、たっくんの・・・人生も・・・?」
ほむら 「それに、家族だけじゃない。あなたを愛しているのは、家族だけでなんか、決してない!」
まどか 「え・・・?」
ほむら 「マミもさやかも、あなたの友達は、みんなあなたを愛している!それに、わ・・・私も・・・っ」
まどか 「ほむらちゃん・・・?」
ほむら 「う・・・ぐっ、なんでも・・・何でもないわ」
自分の気持ちを、高ぶった胸の内をすべてぶつけてしまいたい。
そんなこみあげてきた欲求を、私はすんでの所で噛み潰す。
私の気持ちなんて、今は関係ないのだから・・・
953: 2015/08/08(土) 22:29:48.74
ほむら (とにかく、言うべきことは全て言った)
魔法少女が辿る運命と、それに翻弄されることになる家族の行く末を語って聞かせて・・・
キュウべぇの甘言なんかに惑わされないように。
そして、まどかが魔法少女になるという未来の芽を摘むことによって、織莉子がまどかに辿り着けないようにするため。
そのために、今日ここに、私はまどかを連れてきたのだ。
ほむら 「分かって。友人を亡くして辛い気持ちは、私にだって分かるわ」
そう、だれよりも。
ほむら 「だけれど、もしあなたが短慮を起こしてしまったら、今のあなたと同じように・・・ううん、それ以上に、もっともっと多くの人を悲しませる事になる」
まどか 「わ、私・・・」
ほむら 「自分を大切にして。あなたが周りの人を大切だと思うのなら、お願い・・・」
まどか 「ほむらちゃん・・・どうして・・・」
ほむら 「え・・・?」
まどか 「どうして、私をそこまで気にかけてくれるの・・・?」
ほむら 「そ、それは・・・」
魔法少女が辿る運命と、それに翻弄されることになる家族の行く末を語って聞かせて・・・
キュウべぇの甘言なんかに惑わされないように。
そして、まどかが魔法少女になるという未来の芽を摘むことによって、織莉子がまどかに辿り着けないようにするため。
そのために、今日ここに、私はまどかを連れてきたのだ。
ほむら 「分かって。友人を亡くして辛い気持ちは、私にだって分かるわ」
そう、だれよりも。
ほむら 「だけれど、もしあなたが短慮を起こしてしまったら、今のあなたと同じように・・・ううん、それ以上に、もっともっと多くの人を悲しませる事になる」
まどか 「わ、私・・・」
ほむら 「自分を大切にして。あなたが周りの人を大切だと思うのなら、お願い・・・」
まどか 「ほむらちゃん・・・どうして・・・」
ほむら 「え・・・?」
まどか 「どうして、私をそこまで気にかけてくれるの・・・?」
ほむら 「そ、それは・・・」
960: 2015/08/12(水) 07:46:43.47
・・・
・・・
川辺。
夕暮れの日を映し、赤く染まりながら滔々と流れ続ける川を、竜馬は眺めていた。
川辺の草原に腰を下ろし、何をするでもなく、ただ茫洋と。
? 「リョウ」
背後からかけられた馴染みのある声に、彼は顔を上げた。
竜馬 「来たか、武蔵」
武蔵 「ああ、呼び出して悪かったな」
竜馬 「なに、暁美にも用事ができたし、ちょうど良かったさ」
そうか、と笑いながら、武蔵も竜馬の隣へと腰を下ろす。
・・・
川辺。
夕暮れの日を映し、赤く染まりながら滔々と流れ続ける川を、竜馬は眺めていた。
川辺の草原に腰を下ろし、何をするでもなく、ただ茫洋と。
? 「リョウ」
背後からかけられた馴染みのある声に、彼は顔を上げた。
竜馬 「来たか、武蔵」
武蔵 「ああ、呼び出して悪かったな」
竜馬 「なに、暁美にも用事ができたし、ちょうど良かったさ」
そうか、と笑いながら、武蔵も竜馬の隣へと腰を下ろす。
961: 2015/08/12(水) 07:47:42.53
武蔵 「川を見ていたのか」
竜馬 「ああ。まったく見知らぬ場所に来てしまったが、水の流れる姿はどこでも一緒だな、なんて思ってな」
武蔵 「いつになく、感傷的だな」
武蔵 「こちらに来てから、もうかなり経つ。これからどうなるかも分からないんだ、感傷的にもなるさ」
武蔵 「そうか・・・」
言いながら、武蔵も竜馬に倣って川の流れへと目を移した。
武蔵 「リョウ・・・この川な。幼いころ両親に連れられて、よくマミちゃんと一緒に泳ぎに来てたんだ」
竜馬 「・・・」
武蔵 「ちょうど小学校の帰り道にもあたっててさ。親に黙って遊んでて、危うく溺れかけたこともあったりしてな」
竜馬 「・・・そうか。まぁ、ガキならありがちなことだな」
武蔵 「あとでこっぴどく叱られてなぁ・・・」
竜馬 「・・・」
竜馬 「ああ。まったく見知らぬ場所に来てしまったが、水の流れる姿はどこでも一緒だな、なんて思ってな」
武蔵 「いつになく、感傷的だな」
武蔵 「こちらに来てから、もうかなり経つ。これからどうなるかも分からないんだ、感傷的にもなるさ」
武蔵 「そうか・・・」
言いながら、武蔵も竜馬に倣って川の流れへと目を移した。
武蔵 「リョウ・・・この川な。幼いころ両親に連れられて、よくマミちゃんと一緒に泳ぎに来てたんだ」
竜馬 「・・・」
武蔵 「ちょうど小学校の帰り道にもあたっててさ。親に黙って遊んでて、危うく溺れかけたこともあったりしてな」
竜馬 「・・・そうか。まぁ、ガキならありがちなことだな」
武蔵 「あとでこっぴどく叱られてなぁ・・・」
竜馬 「・・・」
962: 2015/08/12(水) 07:49:53.97
武蔵 「・・・リョウ」
竜馬 「ああ」
武蔵 「すまん」
竜馬 「ま・・・うすうす、こうなるんじゃないかって思っていたぜ」
武蔵 「もう既に、この街で過ごした日々は、俺の記憶に深く刻まれてしまった。俺はもう、こっちの世界の人間に・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「マミちゃんを置いて、俺だけ”あっち”の世界に戻るなんて・・・とてもできやしない。リョウ、俺を殴ってくれ」
言って、武蔵は目を閉じた。
どうなじられても良い。こっぴどく殴られたって、文句は言えない。
そう覚悟して、歯を食いしばりながら。
だけれど、いくら待っても拳どころか、文句の一つすら返っては来なかった。
武蔵 「リョウ・・・お前・・・」
恐る恐る開けた武蔵の目に映ったものは、そんな彼を優しげに見つめる竜馬の笑顔だった。
武蔵 「なんで・・・笑ってるんだよ」
竜馬 「ああ」
武蔵 「すまん」
竜馬 「ま・・・うすうす、こうなるんじゃないかって思っていたぜ」
武蔵 「もう既に、この街で過ごした日々は、俺の記憶に深く刻まれてしまった。俺はもう、こっちの世界の人間に・・・」
竜馬 「・・・」
武蔵 「マミちゃんを置いて、俺だけ”あっち”の世界に戻るなんて・・・とてもできやしない。リョウ、俺を殴ってくれ」
言って、武蔵は目を閉じた。
どうなじられても良い。こっぴどく殴られたって、文句は言えない。
そう覚悟して、歯を食いしばりながら。
だけれど、いくら待っても拳どころか、文句の一つすら返っては来なかった。
武蔵 「リョウ・・・お前・・・」
恐る恐る開けた武蔵の目に映ったものは、そんな彼を優しげに見つめる竜馬の笑顔だった。
武蔵 「なんで・・・笑ってるんだよ」
963: 2015/08/12(水) 07:52:05.69
竜馬 「分かってたからだよ。守りたい人ができたから・・・だから、こちら側の自分を肯定しないわけにはいかなくなった。そういう事だろう」
武蔵 「お、俺・・・」
竜馬 「それでこそ、武蔵だ。俺のダチ公だぜ」
武蔵 「だが、俺は恐竜帝国との戦いを、お前だけに任せて降りてしまう事になる。隼人だって、もういないってのに・・・」
竜馬 「まぁ、そっちの事は俺に任せておけ。何とでもしてやるよ。俺は絶対に負けはしない。安心しろ。そのかわり」
武蔵 「・・・ああ」
竜馬 「お前は、お前の成そうと決めた事を、必ず成し遂げろ。我が身を捨ててでも守り通せよ、大切な妹を」
武蔵 「分かってる。約束する・・・!」
友の真情を心に刻み、あふれ出る涙を留め得ず。
武蔵は男泣きに泣きながら、何度も何度も頷いて見せた。
頷きの数だけ、友への感謝と、そして信念を貫いて見せるとの誓いを込めながら。
武蔵 「お、俺・・・」
竜馬 「それでこそ、武蔵だ。俺のダチ公だぜ」
武蔵 「だが、俺は恐竜帝国との戦いを、お前だけに任せて降りてしまう事になる。隼人だって、もういないってのに・・・」
竜馬 「まぁ、そっちの事は俺に任せておけ。何とでもしてやるよ。俺は絶対に負けはしない。安心しろ。そのかわり」
武蔵 「・・・ああ」
竜馬 「お前は、お前の成そうと決めた事を、必ず成し遂げろ。我が身を捨ててでも守り通せよ、大切な妹を」
武蔵 「分かってる。約束する・・・!」
友の真情を心に刻み、あふれ出る涙を留め得ず。
武蔵は男泣きに泣きながら、何度も何度も頷いて見せた。
頷きの数だけ、友への感謝と、そして信念を貫いて見せるとの誓いを込めながら。
964: 2015/08/12(水) 07:54:08.00
竜馬 「さて、じゃあ、あとは俺がどうやって、元の世界へ戻るか・・・だがな」
武蔵 「そ、そうだな。リョウ、なにか、心当たりでも見つかったのか?」
竜馬 「まぁな。これ以上無いっていう事情通が、こっちに転がり込んで来てくれたよ。・・・ゲッターのおかげでな」
武蔵 「・・・?どういう意味だ?」
竜馬はキュウべぇとの取引の経緯を語って聞かせた。
武蔵 「・・・あのキュウべぇに感情が?にわかには信じがたいが」
竜馬 「まぁ、お前も実物を見てみればわかるさ。で、とりあえず今夜からでも、キュウべぇから色々聞き出すとするよ。もっとも・・・」
武蔵 「?」
竜馬 「今までの話からすると、俺たちがこちらに飛ばされた事自体には、キュウべぇは関わってはいなかったようだ。はてさて、有益な話が聞ければもっけもんなんだがな」
武蔵 「それなんだがな・・・」
竜馬 「どうした?」
武蔵 「お前をもとの世界に戻す事。それだけなら、何とかなるかも知れない」
武蔵 「そ、そうだな。リョウ、なにか、心当たりでも見つかったのか?」
竜馬 「まぁな。これ以上無いっていう事情通が、こっちに転がり込んで来てくれたよ。・・・ゲッターのおかげでな」
武蔵 「・・・?どういう意味だ?」
竜馬はキュウべぇとの取引の経緯を語って聞かせた。
武蔵 「・・・あのキュウべぇに感情が?にわかには信じがたいが」
竜馬 「まぁ、お前も実物を見てみればわかるさ。で、とりあえず今夜からでも、キュウべぇから色々聞き出すとするよ。もっとも・・・」
武蔵 「?」
竜馬 「今までの話からすると、俺たちがこちらに飛ばされた事自体には、キュウべぇは関わってはいなかったようだ。はてさて、有益な話が聞ければもっけもんなんだがな」
武蔵 「それなんだがな・・・」
竜馬 「どうした?」
武蔵 「お前をもとの世界に戻す事。それだけなら、何とかなるかも知れない」
965: 2015/08/12(水) 07:57:23.34
竜馬 「・・・なんだと!?武蔵、お前・・・何か知っているのか?!」
武蔵の意外な一言に、竜馬の顔色が変わる。
武蔵 「知らないよ、お前以上に、何もな。だが、一つな・・・俺に考えがあるんだ」
竜馬 「もったいぶるなよ。なんだ、その考えってのは」
武蔵 「まぁ、待て。確実ってわけでもないし、俺も不確かな事は言いたくない。その時が来たら話すから、今は俺にも一案がある程度に、覚えておいてくれ」
竜馬 「・・・早まったマネ、するつもりじゃねぇだろうな」
武蔵 「マミちゃんを泣かすようなことだけはしないと、胸を張って誓えるぜ」
竜馬 「・・・なら、良いがよ」
武蔵は何を言わんとしたのか。
知りたいと思う心が後を引きながらも、友が進んで話そうとしない以上は、竜馬もそれ以上詮索するつもりはなかった。
それよりも今は、キュウべぇから情報を引き出す方が先だ。
竜馬 「武蔵、今夜は暁美の部屋に俺とともに来い」
武蔵 「分かったぜ」
武蔵の意外な一言に、竜馬の顔色が変わる。
武蔵 「知らないよ、お前以上に、何もな。だが、一つな・・・俺に考えがあるんだ」
竜馬 「もったいぶるなよ。なんだ、その考えってのは」
武蔵 「まぁ、待て。確実ってわけでもないし、俺も不確かな事は言いたくない。その時が来たら話すから、今は俺にも一案がある程度に、覚えておいてくれ」
竜馬 「・・・早まったマネ、するつもりじゃねぇだろうな」
武蔵 「マミちゃんを泣かすようなことだけはしないと、胸を張って誓えるぜ」
竜馬 「・・・なら、良いがよ」
武蔵は何を言わんとしたのか。
知りたいと思う心が後を引きながらも、友が進んで話そうとしない以上は、竜馬もそれ以上詮索するつもりはなかった。
それよりも今は、キュウべぇから情報を引き出す方が先だ。
竜馬 「武蔵、今夜は暁美の部屋に俺とともに来い」
武蔵 「分かったぜ」
966: 2015/08/12(水) 07:58:55.96
・・・
・・・
同時刻。
見滝原市の某所。
杏子とゆまは、日課である魔女退治を首尾よく成し遂げ、帰途に就こうとしていた。
ほむらやマミとは違い、魔法少女の活動自体を生業としている杏子の、魔女結界を嗅ぎ付ける能力は抜群だった。
もはや、天性の才覚とさえいえる。
今回も短時間のうちに二か所も結界を発見、目的のグリーフシードを手に入れていた。
杏子 「へへっ、大量大量」
ホクホク顔の杏子に反して、ゆまは少し浮かない顔だ。
杏子 「・・・なんだよ、辛気臭い顔して。グリーフシードが手に入ったんだ、もっと嬉しそうな顔をしろよ」
ゆま 「でも、それ・・・元はソウルジェムだったんだよね?それなのに、喜んでちゃ悪いなって思って」
杏子 「悪いって、魔女の元になった魔法少女にか?」
ゆま 「うん」
・・・
同時刻。
見滝原市の某所。
杏子とゆまは、日課である魔女退治を首尾よく成し遂げ、帰途に就こうとしていた。
ほむらやマミとは違い、魔法少女の活動自体を生業としている杏子の、魔女結界を嗅ぎ付ける能力は抜群だった。
もはや、天性の才覚とさえいえる。
今回も短時間のうちに二か所も結界を発見、目的のグリーフシードを手に入れていた。
杏子 「へへっ、大量大量」
ホクホク顔の杏子に反して、ゆまは少し浮かない顔だ。
杏子 「・・・なんだよ、辛気臭い顔して。グリーフシードが手に入ったんだ、もっと嬉しそうな顔をしろよ」
ゆま 「でも、それ・・・元はソウルジェムだったんだよね?それなのに、喜んでちゃ悪いなって思って」
杏子 「悪いって、魔女の元になった魔法少女にか?」
ゆま 「うん」
967: 2015/08/12(水) 08:01:29.16
杏子 「・・・はぁー」
杏子は大げさにため息をつくと、軽くゆまの脳天にチョップを食らわす。
ぽこんと小気味のいい音が、ゆまの頭から飛び出した。
ゆま 「あいたっ」
杏子 「お、いい音」
ゆま 「もー、きょーこ!なんで叩くの!」
杏子 「下らねぇことで、ウジウジ言ってったからだよ。さっきの魔女が、元は何だったとしても、あたし達はそいつらを狩らなきゃ生きていけないんだろうが」
ゆま 「そーだけど・・・」
杏子 「魔女がかわいそうだからと、遠慮してたらさ。あたし達が魔女になってしまうんだ。そうなったらさ・・・」
ゆま 「・・・?」
杏子 「魔女が増えて、けっきょく力のない人間が、よけいに犠牲になるだけだろ」
ゆま 「あ・・・うん、そうだよね・・・」
杏子 「だから、あたし達は良い事をしてるの!はい、これでこの話は終わりだ!分かったら笑え!」
杏子は大げさにため息をつくと、軽くゆまの脳天にチョップを食らわす。
ぽこんと小気味のいい音が、ゆまの頭から飛び出した。
ゆま 「あいたっ」
杏子 「お、いい音」
ゆま 「もー、きょーこ!なんで叩くの!」
杏子 「下らねぇことで、ウジウジ言ってったからだよ。さっきの魔女が、元は何だったとしても、あたし達はそいつらを狩らなきゃ生きていけないんだろうが」
ゆま 「そーだけど・・・」
杏子 「魔女がかわいそうだからと、遠慮してたらさ。あたし達が魔女になってしまうんだ。そうなったらさ・・・」
ゆま 「・・・?」
杏子 「魔女が増えて、けっきょく力のない人間が、よけいに犠牲になるだけだろ」
ゆま 「あ・・・うん、そうだよね・・・」
杏子 「だから、あたし達は良い事をしてるの!はい、これでこの話は終わりだ!分かったら笑え!」
968: 2015/08/12(水) 08:04:06.75
ゆま 「・・・」
杏子 「なんだよ、納得してないって顔だな」
ゆま 「ちがうよ、そうじゃないよ」
杏子 「だったらなんだよ。言えよ」
ゆま 「・・・きょーこって優しいよね」
杏子 「は、はぁっ!?」
突然ゆまの口から告いで出た予想外の言葉に、思わず上ずった声を上げてしまう杏子。
杏子 「お、おまえ、いきなりなに言っちゃってくれてんの!?」
ゆま 「きょーこは・・・口は悪いけど、ゆまの事をいつも心配してくれるよね。気にしてくれてるよね」
杏子 「バカか、いつも言ってるだろ。あたしは、誰かに足を引っ張られたくないだけで、それ以上の事は何も・・・」
ゆま 「ゆま、きょーこと一緒にいたいな・・・」
ゆまが上目づかいに、杏子をちらりと見上げる。
杏子 「なんだよ、納得してないって顔だな」
ゆま 「ちがうよ、そうじゃないよ」
杏子 「だったらなんだよ。言えよ」
ゆま 「・・・きょーこって優しいよね」
杏子 「は、はぁっ!?」
突然ゆまの口から告いで出た予想外の言葉に、思わず上ずった声を上げてしまう杏子。
杏子 「お、おまえ、いきなりなに言っちゃってくれてんの!?」
ゆま 「きょーこは・・・口は悪いけど、ゆまの事をいつも心配してくれるよね。気にしてくれてるよね」
杏子 「バカか、いつも言ってるだろ。あたしは、誰かに足を引っ張られたくないだけで、それ以上の事は何も・・・」
ゆま 「ゆま、きょーこと一緒にいたいな・・・」
ゆまが上目づかいに、杏子をちらりと見上げる。
969: 2015/08/12(水) 08:06:05.80
杏子 「・・・一緒にいるじゃないか」
ゆま 「ううん、そうじゃなくって。わるぷるぎすのよるをやっつけた後・・・きょーこ、風見野に帰っちゃうんでしょ」
杏子 「そりゃぁ、あそこがあたしのテリトリーなんだからな。いつまでも留守にするわけには・・・て、まさか・・・」
ゆま 「ついてく」
杏子 「だめだ!」
ゆま 「どーして?」
杏子 「どうしてもだっ!」
ゆま 「・・・」
強い口調で拒絶され、さすがに落胆してうつむいてしまったゆま。
杏子 「だいたいさ・・・なんだってあたしに着いてきたいなんて言うんだよ。お前、ほむら達とはうまくやれてるんだろ?」
ゆま 「うん、優しくしてくれるよ」
杏子 「だったら、このまま見滝原にいろよ。あたしはほむらみたいに優しくはしてやれねぇぞ」
ゆま 「・・・そしたら、きょーこが一人になっちゃう」
杏子 「・・・はぁ?」
ゆま 「ほむらお姉ちゃんには、見滝原にお友達がいるから。だけど杏子は・・・」
杏子 「お前・・・あたしを寂しい奴みたいに言うのはやめろよ・・・」
ゆま 「ううん、そうじゃなくって。わるぷるぎすのよるをやっつけた後・・・きょーこ、風見野に帰っちゃうんでしょ」
杏子 「そりゃぁ、あそこがあたしのテリトリーなんだからな。いつまでも留守にするわけには・・・て、まさか・・・」
ゆま 「ついてく」
杏子 「だめだ!」
ゆま 「どーして?」
杏子 「どうしてもだっ!」
ゆま 「・・・」
強い口調で拒絶され、さすがに落胆してうつむいてしまったゆま。
杏子 「だいたいさ・・・なんだってあたしに着いてきたいなんて言うんだよ。お前、ほむら達とはうまくやれてるんだろ?」
ゆま 「うん、優しくしてくれるよ」
杏子 「だったら、このまま見滝原にいろよ。あたしはほむらみたいに優しくはしてやれねぇぞ」
ゆま 「・・・そしたら、きょーこが一人になっちゃう」
杏子 「・・・はぁ?」
ゆま 「ほむらお姉ちゃんには、見滝原にお友達がいるから。だけど杏子は・・・」
杏子 「お前・・・あたしを寂しい奴みたいに言うのはやめろよ・・・」
970: 2015/08/12(水) 08:09:21.62
ゆま 「それに・・・ゆまをいちばん最初に助けてくれたの、きょーこだから。だから、今度はゆまが助けてあげたいって・・・」
杏子 「・・・」
ゆま 「そう・・・おもうから・・・」
杏子 「ゆま、お前・・・」
そして、二人は口をつぐむ。
ゆまは言いたい事を全て言ってしまったから。
そして、杏子は。
杏子 「はぁ・・・」
杏子はこの日、二度目かの溜息を再び漏らした。
杏子 「だから、嫌だったんだよ。仲間とか友達とか、家族とかさ・・・」
ゆま 「きょーこ・・・?」
杏子 「愛着がわいたらわいた分だけ、いざ別れる時に悲しい思いをする。辛くなる、から・・・」
ゆま 「・・・」
杏子 「そんな思いをするくらいだったら、ずっと一人でいたほうが気楽だと、あたしは”あの時”に思ったんだ」
ゆま 「あの時・・・?」
杏子 「・・・」
ゆま 「そう・・・おもうから・・・」
杏子 「ゆま、お前・・・」
そして、二人は口をつぐむ。
ゆまは言いたい事を全て言ってしまったから。
そして、杏子は。
杏子 「はぁ・・・」
杏子はこの日、二度目かの溜息を再び漏らした。
杏子 「だから、嫌だったんだよ。仲間とか友達とか、家族とかさ・・・」
ゆま 「きょーこ・・・?」
杏子 「愛着がわいたらわいた分だけ、いざ別れる時に悲しい思いをする。辛くなる、から・・・」
ゆま 「・・・」
杏子 「そんな思いをするくらいだったら、ずっと一人でいたほうが気楽だと、あたしは”あの時”に思ったんだ」
ゆま 「あの時・・・?」
971: 2015/08/12(水) 08:12:47.20
杏子 「おい、ゆま」
ゆま 「はいっ!」
杏子は膝を折ると、目線をゆまの高さへと合わせた。
初めて、対等の相手としてゆまと接したのだ。
杏子 「良いか、あたしを助けると言ったんだ。一度言った事は、絶対守り抜けよ」
ゆま 「あ、え、えっと・・・」
杏子 「一緒に行くからには、絶対にあたしのそばを離れるな。絶対に、絶対に・・・」
ゆま 「・・・」
杏子 「あたしより先に逝くんじゃねぇぞ・・・」
ゆま 「・・・うん」
ゆまがそっと。
杏子の首に手を回して、抱き着いてきた。
杏子もそれに応え、ゆまの背へと腕を回す。
ゆま 「はいっ!」
杏子は膝を折ると、目線をゆまの高さへと合わせた。
初めて、対等の相手としてゆまと接したのだ。
杏子 「良いか、あたしを助けると言ったんだ。一度言った事は、絶対守り抜けよ」
ゆま 「あ、え、えっと・・・」
杏子 「一緒に行くからには、絶対にあたしのそばを離れるな。絶対に、絶対に・・・」
ゆま 「・・・」
杏子 「あたしより先に逝くんじゃねぇぞ・・・」
ゆま 「・・・うん」
ゆまがそっと。
杏子の首に手を回して、抱き着いてきた。
杏子もそれに応え、ゆまの背へと腕を回す。
972: 2015/08/12(水) 08:19:06.30
距離が縮まり、杏子の鼻腔へふんわりと、くすぐるように・・・
子供特有の、甘い香りが流れてきた。
杏子 (この香り・・・モモ・・・)
胸に、懐かしいものがこみあげてくる。
杏子 (神様も幽霊も信じないけれどさ・・・モモ・・・見ていたら、こいつの事を守ってやってくれよな)
杏子は妹を失ってから・・・”あの時”から始めて、心の内で亡き妹へと語りかけていた。
子供特有の、甘い香りが流れてきた。
杏子 (この香り・・・モモ・・・)
胸に、懐かしいものがこみあげてくる。
杏子 (神様も幽霊も信じないけれどさ・・・モモ・・・見ていたら、こいつの事を守ってやってくれよな)
杏子は妹を失ってから・・・”あの時”から始めて、心の内で亡き妹へと語りかけていた。
973: 2015/08/12(水) 08:27:33.16
・・・
・・・
次回予告
来るべき日に備え、日常の中の非日常を生きる魔法少女と竜馬たち。
それぞれの成すべき事と想いを胸に、少しづつ歩みを未来へと進めてゆく。
そんな中にあって、一人。
真実を知りながらも蚊帳の外に置かれ、まどかは懊悩していた。
その弱った心を穿つように、あの白い影が、不気味な静けさで忍び寄る。
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第十話にテレビスイッチオン!
・・・
次回予告
来るべき日に備え、日常の中の非日常を生きる魔法少女と竜馬たち。
それぞれの成すべき事と想いを胸に、少しづつ歩みを未来へと進めてゆく。
そんな中にあって、一人。
真実を知りながらも蚊帳の外に置かれ、まどかは懊悩していた。
その弱った心を穿つように、あの白い影が、不気味な静けさで忍び寄る。
次回 ほむら「ゲッターロボ!」第十話にテレビスイッチオン!
974: 2015/08/12(水) 08:37:45.77
以上で第九話終了です。
本来はワルプルギス戦手前まで行きたかったのですが、スレをまたぐくらいなら次回に持ち越そうと思ってここまでとしました。
故に、前回の次回予告と食い違ってしまった点、ご容赦ください。
(今回に限った事ではありませんが・・・)
それでは次スレの十話以降もお付き合いいただければ、幸いに思います。
次スレ ほむら「ゲッターロボ」第十話
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439336135/
本来はワルプルギス戦手前まで行きたかったのですが、スレをまたぐくらいなら次回に持ち越そうと思ってここまでとしました。
故に、前回の次回予告と食い違ってしまった点、ご容赦ください。
(今回に限った事ではありませんが・・・)
それでは次スレの十話以降もお付き合いいただければ、幸いに思います。
次スレ ほむら「ゲッターロボ」第十話
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439336135/
975: 2015/08/12(水) 09:56:47.77
乙でした
976: 2015/08/12(水) 16:53:57.82
乙です
引用元: ほむら「ゲッターロボ!」 第三話
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります