1: 2010/10/08(金) 18:52:38.21

梓「なんですか? 唯先輩」

唯「そ、その……」

唯「もうすぐバレンタインだね! えへへ」

梓「あー、もうそんな時期ですか。すっかり忘れてました」

唯「あずにゃんは誰かにチョコあげるの?」モジモジ

梓「んー、まだ考えてませんね」

唯「そっかあー」チラッ チラッ

梓「そんなに人の顔チラチラ見ないで下さい」

唯「うっ、ごめんね……」



律「おい……かわいいな」

紬「唯ちゃん」キラキラ

澪「なんというか……梓もよく気づかないな」

2: 2010/10/08(金) 19:01:47.03
梓「あ、でも」

唯「何っ!?」

梓「憂と純にはあげるかも……」

唯「……」

梓「ど、どうしたんですか?」

唯「なんでもないよ……」



律「梓……」

紬「唯ちゃん! 私がおいしいチョコあげるから元気だして!」

澪「唯も自分も欲しいって言えば……言えないか」

3: 2010/10/08(金) 19:05:19.74
梓「ゆ、唯先輩は誰かにチョコあげるんですか?」

唯「……うん、あげるよ」

梓「そ、そうなんですか!」

唯「うん……」

梓「あ、えーっと……」

唯「誰にあげるかとか聞かないの?」

梓「あんまり踏み込むのも悪いかなって……」

唯「あずにゃんのばか」

梓「えっ」



律「唯がチョコ渡す人って……」

紬「梓ちゃん!」

澪「梓だな」

4: 2010/10/08(金) 19:10:21.74
梓「ばかって……」

唯「なんでもないよ。ごめんね」

梓「い、いえ……」

唯「……ばか」

梓「えっ? えっ?」

律「こっちを見て助けを求められても困る」

梓「あ、す、すいません……」

唯「ちぇー、つまんない」

澪「ま、まあまあ」

紬「唯ちゃんケーキ食べて元気だして?」

唯「ありがと……」モグモグ

5: 2010/10/08(金) 19:16:58.63
律「あ、梓は好きな人とかいるのかー? な、なんちゃって」

梓「どうしたんですかいきなり」

澪「わ、私も気になる!」

梓「澪先輩まで?」

紬「唯ちゃんも気になるよね?」

唯「う、うん」

梓「なんでまた急に」

律「いいじゃんかおしえろよー! 私達の仲だろー? このっこのっ」

梓「わ、わかりましたからやめてください!」

紬「教えてくれるの?」

澪(よくやった、律!)

梓「好きな人ですよね?」

律「あ、ああ」ゴクリ

8: 2010/10/08(金) 19:29:42.67
梓「いるのはいます」

澪「ほ、ほんとか!?」

梓「はい」

律「誰なんだ?」

梓「言える訳ないじゃないですか」

唯「あずにゃん、私?」

梓「そうでs……じゃなくってなんでそうなるんですか!!」

紬(あら?)

紬「梓ちゃんはその人にチョコはあげないの?」

梓「逆に渡せませんよ。緊張しちゃって」

律「そういうもんなのかー?」

梓「そういうもんなんです!」

10: 2010/10/08(金) 19:46:56.21

澪「け、軽音部の中の誰かとか?」

梓「そ、そんなわけないです!!」チラッ

唯「ん?」

梓「な、なんでもないです……」

律「でもその慌て方は怪しいな」

梓「な、何を」

律「もしかして私だったりして?」

唯「」ピクッ

梓「それはないです」

律「ムギ、聞いたか……」

紬「よしよし」ナデナデ


12: 2010/10/08(金) 19:50:42.57
唯「あ、じゃ、じゃあ私だったりして!」

梓「あうっ……」

紬「あら? どうしたの梓ちゃん」ニヤッ

梓「な、なんでもないです!」

唯「ねえ! 私だったりして! ねえ!」

梓「ちょっ、ちょっと唯先輩は黙っといて下さい!」

唯「」ガーン

唯「ムギちゃん……」

紬「よしよし」ナデナデ

澪「結局軽音部の中の誰かなのか?」

梓「な、内緒です!」

14: 2010/10/08(金) 20:00:28.43
律「教えてくれよ梓ー」

梓「嫌ですよ。律先輩でも私と同じ立場だったら言わないはずです」

律「私は好きな人いないからなー」

澪「な、なんだって!?」
律「ん?」
紬「あらあら……」

唯「あずにゃん!」

梓「な、なんですか」ドキッ

唯「気になる!」

梓「何がですか?」

唯「あずにゃんの好きな人!」

梓「うっ……」

唯「教えて?」ジーッ

梓「ぐっ……」

紬「梓ちゃん! その誘惑には負けるべきよ! 負けるべきなの!」

梓「うぐぐ……」
唯「……」ジーッ

16: 2010/10/08(金) 20:08:05.72
梓「……わかりました」ハァ

唯「ほ、ほんと!?」

梓「でも名前までは教えません!」

律「ちぇー、梓のやつ私には言わないって言ったくせに」

澪「律、いつでも私を頼ってくれていいんだぞ?」
律「ん?」

紬「じゃあ何を教えてくれるの?」

梓「あ、えーっと……さっきから皆さんに聞かれてるやつです」

唯「軽音部かどうかってやつ?」

梓「はい」

律「どうなんだ?」

澪「軽音部なのか!?」

梓「……は、はい」

17: 2010/10/08(金) 20:13:34.96
紬(唯ちゃんで決まりみたい)

紬「で、その軽音部の中の誰なの?」

梓「えっと……ってムギ先輩! からかわないでください!」

紬「うふふ♪ 梓ちゃんかわいい♪」

梓「もう!」

唯「むーっ」ムスッ



律「澪、唯のやつあれ嫉妬か?」

澪「律のばか」

律「え?」

澪「もういいよ唯唯ってさ……」

律「み、澪しゃん?」

20: 2010/10/08(金) 20:27:42.88
紬「特徴とかはないの?」

梓「特徴ですか……?」

紬「例えば黄色いヘアピンつけてるとか!」

唯「」ピクッ

梓「そ、そんなの言ったらもうバレちゃうじゃないですか!」

唯「私! 私黄色いヘアピンつけてるよあずにゃん!」

紬「唯ちゃん、落ち着いて?」

梓「そ、それはやっぱり言えませんよ」

律「じゃあ「絶対この人ではない!」ってやつは誰なんだ?」

梓「律先輩です」

律「澪~!」ギュッ

澪「り、律!」ギュッ

25: 2010/10/08(金) 21:02:53.16
唯「じゃあ、あずにゃんは何色のヘアピンならいいの!?」

梓「ずれまくってますよ唯先輩……」

紬「……いいこと思いついちゃった!」

律「ん? どうしたムギ」

澪「何を思いついたんだ?」

紬「梓ちゃん」

梓「はい?」

紬「皆に一回ずつ抱き着いてみて?」

梓「にゃ!? む、無理ですよそんなの!」

律「私は別にいいぞー」

澪「律!」

律「あ、いやー……ははは」

27: 2010/10/08(金) 21:07:15.42
梓「ほ、ほら! 律先輩や澪先輩も反対みたいですし……」

紬「じゃあ唯ちゃんだけ!」

唯「え?」

梓「なっ……む、無理です!」

唯「あずにゃん、私の胸に飛び込んできて!」バッ

梓「もう! 変にのらないでくださいよ唯先輩も!」

紬「梓ちゃんの反応で誰が好きなのか分かると思ったのに残念♪」

梓「からかわないでください!」


28: 2010/10/08(金) 21:12:40.95
澪「梓、そろそろ教えて欲しいな」

梓「澪先輩まで私を困らせないでください……」

律「ほらほらー! 早く言わないと唯に抱き着いちゃうぞー!」

唯「え? なんで私?」

梓「ダ、タダ、ダメに決まってます!」
澪「そうだぞ!」

律「じょ、冗談だってー」

律(やっぱり梓の好きな人は唯か……?)

梓「とにかく! もうこの話はこれで終わりです!」

唯「えー嫌だよ! あずにゃんの好きな人知りたい!」

梓「……そんなに言うなら、唯先輩は好きな人いるんですか?」

唯「え? わ、私!?」

紬「あら……」

澪「そうきたか」

29: 2010/10/08(金) 21:17:35.00

梓「どうなんですか?」

唯「わ、私は……えーっと」

梓「教えてください!」

律「そうがっつくなよ梓」

梓「だって気になります!」

紬「梓ちゃんの好きな人だから?」ボソッ

梓「な、なななっ!///」

唯「え? 何?」

梓「なんでもありません!」

紬「うふふ♪」

律「恐ろしや……」

澪「さすがムギだな……」

32: 2010/10/08(金) 21:32:52.98

梓「と、とにかく! 今は唯先輩に好きな人がいるかいないかです!」

梓「どうなんですか?」

唯「いるよー! 軽音部だよ!」

律「いやにあっさりしてるな……」

澪「すごいな……」

律(まあ唯の好きな人は梓以外はとっくに気づいてるんだけどな)

梓「うっ……こんなにあっさり答えられたらどう追及していいのかわかりません」

紬「唯ちゃん、どんな特徴の人なの?」

律「唯、私なんだろー?」

澪「こら律!」

唯「律ちゃんも好きだよー」

律「え?」

澪「え?」

34: 2010/10/08(金) 21:40:59.01

唯「でもそういうのじゃないかな」

律「あ、なんだびっくりした」

澪「よ、よかった……」ホッ

律「ん? よかった?」

澪「あはは! いやーいい天気だな!」

律「澪?」


45: 2010/10/09(土) 00:26:37.36
梓「じょ、冗談はさておき、どんな特徴の人なんですか?」

唯「んー……特徴かあ」

紬「なんでもいいの、例えばツインテールとか!」

唯「ム、ムギちゃん!」

梓「それだったら私だけになっちゃうじゃないですか!」

唯「う~……だって難しいよ。皆個性的なんだもん」

律「まあ、確かに唯の言う通りだ」

梓「一つ特徴言えばすぐに誰なのか分かっちゃいます」

澪「じゃあ唯も一人一人抱き着いてみたらどうだ?」

唯「あずにゃ~ん!」ダキッ

梓「ちょ、ちょっと唯先輩!!」

律「そうか、唯には通用しないな……」

47: 2010/10/09(土) 00:34:54.09
紬「……うーん」

澪「ムギ、何か思いつきそうか?」

紬「澪ちゃん、ちょっと来て?」チョイチョイ

澪「ん? なんだ?」

紬「それっ♪」ダキッ

澪「ム、ムギっ!?」ダキッ

律「おいムギ!」

紬「澪ちゃんいい匂い♪」チラッ

唯「ムギちゃんどうしたの?」

律「ムギ! 離れろー!」ジダンダ

紬「ふふっ♪ ごめんね」パッ

澪「だ、大丈夫だけど……」

梓「何がしたかったんですか?」

紬「ちょっと実験してみたの」

48: 2010/10/09(土) 00:41:00.36
梓「実験って……」

紬「それっ♪」ダキッ
梓「にゃっ!?」ダキッ

唯「!!」

紬「梓ちゃんかわい~いっ!」

梓「ちょ、ちょっと! どうしちゃったんですかムギ先輩!!」

唯「ムギちゃん!!」

紬「どうしたの唯ちゃん?」

唯「あずにゃんから離れて! ずるいよ!」

紬「あら? なんで?」

唯「そ、それは……もう! いいから離れて!」

律(あ、なるほど。唯に嫉妬させたかったのか)

澪(ムギは考えることが違うな……)

紬「ごめんね、唯ちゃん」パッ

梓「あっ……」

唯「……」ムスッ

53: 2010/10/09(土) 01:01:01.21
梓「唯先輩……?」
唯「」ムスッ
梓「あの……」

唯「あずにゃんムギちゃんにくっつかれて嬉しそうな顔してた」ムスーッ

梓「いや、あの……び、びっくりしただけです!」

律「梓が唯にくっつけば解決するんじゃないか?」
梓「な、なんでそうなるんですか!」

澪「唯の顔見てみろ」

梓「え?」

唯「あずにゃんから私に……?///」

梓「うっ……」

紬「梓ちゃん! ファイト!」
律「梓! 応援してるぞ!」
澪「が、がんばれ!」

梓「もう! なんですかこの空気!」

唯「さああずにゃん! 私は準備OKだよ!」バッ

梓「しなくていいです! というか立ち直り早すぎです!」

唯「ちぇー」

55: 2010/10/09(土) 01:12:19.83
唯「……だもん、……あずにゃんなんてさ……けち……」ブツブツ

律「ほら! 唯がすねちゃっただろ!」
梓「そ、そんなこと言われても困ります!」

紬「思い切っちゃえばいいじゃない!」
梓「電化製品買う時みたいに言わないでください」

澪「梓……」

梓「澪先輩にそんな目で見られたら本気でへこみます……」

唯「あずにゃん……」ウルウル

梓「うっ……」

梓「と、というか! 当初の目的と変わってきてませんか!?
  唯先輩の好きな人を聞くんじゃなかったんですか!?」

律「いや、楽しいし……」テヘッ

梓「最低です」

律「澪~!」

澪「いや、今のはお前が悪い」

律「え?」

紬「あらあら♪」

57: 2010/10/09(土) 01:30:04.73
梓「ほ、本題に戻ります! 唯先輩の好きな人は誰なんですか?」

唯「えーっ……」

律「梓、ちょっとストレートに聞きすぎじゃないか?」

梓「律先輩は黙っといてください!」

律「澪……私はもうダメみたいだ」
澪「よしよし」ナデナデ

紬「唯ちゃんに質問があるの!」ビシッ

唯「ん? なにー? ムギちゃん」

紬「さっき私が梓ちゃんにくっついた時、どんな気持ちになった?」

唯「そ、それは……」

梓「……」ドキッ

唯「あずにゃんをとられたくないっていうか……」

梓「な、なに言ってるんですか!///」

律「梓「心配しなくても私はどこにもいかないわ!///」」イヤーン

澪「こらっ!」ボカッ

律「あいたー!」

61: 2010/10/09(土) 01:53:12.85

紬「梓ちゃんは今の聞いてどう思った?」

梓「いや……その……う、うれしかったです///」

紬「じゃあ二人は付き合うべきだと思うの♪」

唯「ム、ムギちゃん!!」
梓「あ、ありえません!!」

律「つっこむタイミング同じとか……」
澪「息ピッタリだな」

唯「え゙っ! ありえないの!?」ガビーン

梓「あ、いやそうじゃなくて! 違います!」

紬「じゃあありえるの?」ウフフ

梓「うっ……ムギ先輩、いじわるです」


64: 2010/10/09(土) 02:09:39.77
紬「梓ちゃん、一つ質問していい?」

梓「なんですか?」

紬「今でもその人にチョコ渡せないって思う?」

梓「あっ……なんでだろ。全然嫌じゃないです」

紬「うふふ♪」

唯「じゃ、じゃあこの中であずにゃんからチョコ貰った人があずにゃんの好きな人!?」

律「そういうことだな。楽しみにしとけよ! 唯!」

唯「う、うん!」

梓「な、なんで唯先輩に渡すみたいになってるんですか!」

唯「」ガーン

梓「そ、そういう意味じゃないです! 今誰に渡すか言ったら意味がなくなるというか……」

澪「梓も渡すの楽しみなんだな」

梓「はい……」

紬「楽しみだわー♪」

65: 2010/10/09(土) 02:17:51.16

2月14日! 唯

 あずにゃんからチョコを貰えた人が、あずにゃんの好きな人。

誰なのかはわからないけど、変に期待してしまう自分がいる。

この日はなんだか一日中ソワソワしてしまった。

あずにゃんに会いに行こうかと何度も考えたけど、なんとなくやめておいた。

今日初めて見るあずにゃんが、私にチョコを渡してくれるあずにゃんだったらどんなにいいだろう。

そんなことを考えてしまったから、会いに行けなかった。

なんだか自惚れすぎている気もする。期待しすぎると、違ったときのショックが大きいから、少し自分を落ち着かせることにした。

69: 2010/10/09(土) 02:25:17.47

そうして机に突っ伏していると、五限の終了を告げるチャイムが響いた。

今まで長かったけど、後一つで放課後になる。

部活以外のことで放課後が楽しみになるなんて経験は、初めてのことだった。

「唯、なんだか具合悪そうよ? 保健室行く?」

前の席の和ちゃんが、私を心配して声をかけてくれた。

そんなに顔色が悪いのかな。でもこれは仕方ない。

だって、すごく緊張するんだもん。

「んーん、大丈夫だよ!ちょっと緊張してるだけ!」

そう言って、また自分の腕に顔をうずめた。

71: 2010/10/09(土) 02:34:55.98

2月14日! 梓

 今日は待ちに待ったバレンタインデーだ。

この日のために一生懸命作ったチョコは、まだ鞄の中に眠っている。

これを渡そうと考えている人は、今何をしてるのかな。

もしかしたら会いに来てくれるかも知れないと思って、何度も教室の扉に目をやったけど
そこから見える風景は、誰もいない廊下だけだった。

机の上に置いてある鞄に、ぽすんっと頭を預けた。

「もし受け取ってくれなかったらどうしよう」

なんて不安になっている自分がいる。

軽音部の先輩方に限ってそれはないだろうけど、今回は義理ではなく本命チョコなのだ。

しかも、私がチョコを渡す人が私の好きな人なのだと、全員が認識している。

つまり、その人の思っている私の好きな人がその人じゃなかったら、遠慮して受け取ってもらえない可能性もある。

はぁ、とため息をついて椅子に深くもたれた。

「早く授業終わらないかな……」

73: 2010/10/09(土) 02:44:54.54

5限目が終了し、なんとなく鞄の中の箱を取り出してみる。

黄色い用紙に包まれたそれは、まるで生きているかのように輝く。

自分の思いを精一杯こめて作ったチョコだ。

この思いがしっかりと、霞みなく伝わったらどんなに嬉しいだろう。

放課後のことを考えていると、自然と頬が緩んでしまう。

「どうしたの梓ちゃん」

ふと顔をあげると、私の席の周りには憂と純がいた。

「唯先輩にあげるんだ?」

私の手に抱えられている黄色い箱を見て、純が問い掛ける。

「うん……まあ、そんなとこ」

あまりに素直な私に、二人は顔を見合わせている。

自分の気持ちはごまかさないよ。
だって、このチョコだけは本物なんだから。

75: 2010/10/09(土) 02:51:31.67

6限目! 唯

 結局そのあとも、気持ちが落ち着くことはなかった。

今の私に、あずにゃんのことを考えないようにするなんて、到底無理だった。

あの小さな手で、誰にチョコを渡すのか。

それだけが気になって仕方がなかった。

本当は、今すぐにでも立ち上がって音楽室まで駆け出したいところなんだけど
そうしてしまうと今までの苦労が全部無駄になってしまうので、グッと堪えた。

「ああ、早く授業が終わればいいのに」

そんな言葉ばかりが、頭に浮かんでは消えていった。

76: 2010/10/09(土) 02:56:57.91

いつもの十倍はあるんじゃないかと思うくらい長く感じた6限目が、やっと終わった。

私は、誰に声をかけられるよりも早く、教室を飛び出した。

この日のために用意していたチョコが入った鞄を、しっかりと手に握っている。

立ち止まることなく廊下を走り抜け、何段もとばしながら階段を駆け上がった。

ガチャッと、勢いよく音楽室の扉を開ける。

しかし、そこにはまだ誰の姿もなかった。

当たり前か。こんなに急いできたんだもん。

私は、いつもの席に座り、皆の到着を待つことにした。


78: 2010/10/09(土) 03:04:07.49

放課後! 梓

 6限目の終了が、教師による課題発表のせいで少し遅れていた。

こんなにも先生を恨んだことは過去になかったかもしれない。

ジダンダを踏む私の足音が教室に響いていた。

憂と純が、なんだか微笑みながらこちらを見つめている。

もどかしい。本当にもどかしい。

今すぐにでも音楽室に行きたいのに。


79: 2010/10/09(土) 03:05:40.18
間違えた。訂正。


6限目! 梓

 6限目の終了が、教師による課題発表のせいで少し遅れていた。

こんなにも先生を恨んだことは過去になかったかもしれない。

ジダンダを踏む私の足音が教室に響いていた。

憂と純が、なんだか微笑みながらこちらを見つめている。

もどかしい。本当にもどかしい。

今すぐにでも音楽室に行きたいのに。


80: 2010/10/09(土) 03:11:36.30

ようやく長い長い諸連絡が終わり、授業から解放された。

それと同時に鞄を手に取り、教室から飛び出す。

中のチョコが崩れないように、早歩きで行かないといけないのがまたもどかしい。

本当なら全力疾走で向かいたいくらいだけど、なるべく良い状態で唯先輩に食べてほしい。

音楽室へと通じる階段へたどり着き、一歩一歩上っていく。

おかしい。音楽室から何も聞こえてこない。

私は授業で少し遅れたから、先輩方はもう到着しているはずだ。

色々と疑問に思いながらも、確実に階段を上っていった。


82: 2010/10/09(土) 03:15:47.20

放課後! 唯

自分の席についたものの、とくにやることがないので、ただソワソワしてしまう。

私の心臓は、壊れそうなくらい高鳴っていた。

もう10分は待っているはずなのに、何故か誰もこない。

不思議に感じながらも、私はそのまま大人しく待ち続けることにした。

机の木目が魚に見える。


85: 2010/10/09(土) 03:22:34.41

「あずにゃん、遅いな」

15分ほど待ったところで、さすがにおかしいと思い、椅子から立ち上がった。

もしかしたら今日は部活が休みなのかも……。

いや、でもそんなはずは……。

たくさんの不安が私を襲う。

携帯電話を開いて見てみたけど、なんの連絡もない。

考えれば考えるほど、私の不安は大きくなっていった。

とにかく皆を探さないと。

そう思って、音楽室の扉に手をかけた。

その瞬間、ガチャリという音とともに、待ちに待った小さな体が私の前に現れた。


86: 2010/10/09(土) 03:31:17.07

音楽室 梓

ようやく階段を上りきり、音楽室の扉を開けると、変な体勢でこちらを見ている唯先輩がいた。

「何してるんですか?」

私の問い掛けに

「あんまり遅いから皆を探しにいこうと思って」

と、照れながら応える唯先輩。

「すいません。授業が長引いちゃって」

平然を装いながら言った。
ここまで凄い早歩きで来たなんて、なんだか恥ずかしくて言えなかった。

「寂しかったよあずにゃーん!」

ぎゅっ、と私を包む暖かい感触。

「な、何するんですか!」

そう言いながらも、とても安心して、目をつむってしまった。

91: 2010/10/09(土) 03:38:33.38

とりあえずいつもの席に座る私と唯先輩。

鞄はお互い、音楽室にある青いソファーの上に置いておいた。

「他の先輩方はどうされたんですか?」

「わかんない、誰も来ないね。連絡してみよっか!」

そう言いながら携帯を取り出す唯先輩。

私はそれを慌てて止める。

「い、いいです! 大丈夫ですから!」

その言葉を聞いて、「そうかな?」と答えた後、唯先輩は再び携帯をポケットに戻した。

途端に訪れる静寂。

いてもたってもいられなくなった私は、一つの提案をした。

「……ギター弾きませんか?」

「いいよ!」

両手をいっぱいに広げて肯定するその姿が、とても可愛らしかった。

93: 2010/10/09(土) 03:47:59.54

ギー太を抱えて、青いソファーに座る唯先輩。

私はそんな唯先輩の目の前に立ち、運指の細かい部分を指摘する。

一生懸命にギー太と向かい合う姿も、また可愛らしかった。

そんな唯先輩を見ていると、私はある一つの衝動に駆られた。

すごくドキドキして、自分でも顔が赤くなっているのが分かる。

そんな私の顔を見て、唯先輩が問い掛けてきた。

「あずにゃん、どうしたの?」

その言葉を聞いて、私は唯先輩に抱き着いた。

あったかい、唯先輩独特の温もりが私を包み込む。

窓から差し込む夕陽と、どこからか聞こえてくるソフトボール部の掛け声だけが、辺りを覆った。

95: 2010/10/09(土) 03:54:17.14

夕陽の差し込む音楽室 唯

 急にあずにゃんに抱き着かれてすごく驚いたけど、その温もりにすぐ私の心は落ち着いた。

自然と、手があずにゃんの頭を撫でる。

ぎゅっと抱きしめてくる小さな手が、とても愛しい。

「ふふっ、あずにゃんかわいいね」

微笑みながらそういうと、あずにゃんは慌てて身を引いた。

「な、ななな、何を言ってるんですか!」

トマトみたいに真っ赤な顔が、私を見つめる。

空気が、フッと変わった気がした。

なんだろう。あずにゃんの方に吸い込まれていく。

小さな静寂の中、私とあずにゃんはキスをした。


97: 2010/10/09(土) 04:00:12.45

「えへへ……」

今、自分はどんな顔をしているのだろう。

きっと、さっきのあずにゃんみたいに真っ赤っかなんだ。

何故だか、恥ずかしくて仕方がなかった。

その恥ずかしさを紛らわすように、私は鞄をあさった。

「あ、あずにゃん……これ」

そして、赤色に包まれた箱を、あずにゃんの目の前に差し出した。

「これって……」

「うん、チョコだよ。あずにゃんのために一生懸命作ったんだ」

「唯先輩の手作りですか?」

「もちろん!」


103: 2010/10/09(土) 04:06:47.53
その言葉を聞いたあずにゃんも、慌てて鞄の中をあさり始めた。

「あ、あのっ! 唯先輩!」

私の方に差し出された手には、黄色い箱が握られていた。

「あずにゃん……じゃあ……す、好きな人って」

「唯先輩、ですよ」

ニッコリと笑うあずにゃん。

ああ、本当なんだ。

あずにゃんが私にチョコをくれたんだ。

「私もあずにゃんが好き!」

勢いに任せて、言ってしまった。

「何泣いてるんですか」

優しい表情で、困ったように笑うあずにゃん。

「えへへ……嬉しくて」

104: 2010/10/09(土) 04:12:39.61

あずにゃんが、私の涙をハンカチで拭ってくれた。

「あずにゃんも手作りなの?」

「そうですよ。がんばって作りました」

「ほんとに? ありがとうあずにゃん! 一生大事にするよ!」

「いや、食べて下さいよ……」

止まることのない涙をあずにゃんに拭ってもらいながら、他愛もない会話をした。

全てが嘘みたいだけど、現実なんだ。

私はあずにゃんと……

ん? あずにゃんと?

「……あずにゃん!」

「はい、なんですか?」

「私と付き合って!」

突然の私の告白に、目を丸くするあずにゃん。

107: 2010/10/09(土) 04:18:13.09

「……ずるいですよ、唯先輩」

「え?」

「それ、私が言おうと思ってたのに」

「……ってことは」

「はい。よろしくお願いします」

そう言いながら、にこりと微笑むあずにゃん。

あまりの嬉しさに、止まりかけていた涙がまた溢れてくる。

「毎日お味噌汁作ってね!」

「憂に怒られちゃいますよ。それにそれはプロポーズです」

呆れた顔のあずにゃん。

私は今、すごく幸せです。



終わり

109: 2010/10/09(土) 04:20:41.90
おつ乙
よかったよ

110: 2010/10/09(土) 04:21:02.71
追い付いたと思ったら終わった!!乙!

130: 2010/10/09(土) 15:03:26.71

舞台裏!

 2月14日 澪

今日は梓と唯にとって、かけがえのない一日になるだろう。

主役の二人のために、軽音部は休みにしようと律から提案があった。

普段は馬鹿なことばかり考えているくせに、こういう時はしっかりと部員を思いやれる。

そういうところが、律の良いところだ。

そんな律に、私はチョコを渡そうと考えている。

うん。

もちろん、理由は梓と同じだ。


133: 2010/10/09(土) 15:12:32.36

一日中、緊張しっぱなしの自分がいる。

そのせいか、廊下で後輩が何人か声をかけてくれたけど反応すらできなかった。

きっと、青ざめた顔でカチコチと歩いていただろう。

ふと唯に目をやると、震えるように机に突っ伏していた。

放課後に、ビックイベントが控えているからだろう。

私も同じ気持ちだ。

苦笑いしながら前を向くと同時に、5限目の終了を告げるチャイムが響いた。

135: 2010/10/09(土) 15:19:10.97

舞台裏!

 2月14日 律

おかしい。絶対におかしい。

私はずっと疑問に思っていた。

だって、澪が一個もチョコを貰っていないのだ。

「どうなってんだ?」

小声で独り言をいいながら、澪の方に視線を向ける。

そこには、青白い顔で震えている澪がいた。

「具合でも悪いのか?」

とにかく、授業が終わったら澪のところに行ってみようと思った。


136: 2010/10/09(土) 15:30:05.23

気になってソワソワしている内に、5限目が終了した。

それと同時に私は立ち上がり、澪の席へ向かった。

澪は下を向いて、何かを唱えていた。

「ダイジョウブダイジョウブダイジョウブ……」

何が大丈夫なのかはわからなかったが、とりあえず正気に戻そうと顔の前で手を振ってみる。

「おーい、澪ー。戻ってこーい」

その声が届いたのか、澪はビクッと身体を震わせた。

「り、律!?」

そんなにビックリしなくてもいいだろ!


137: 2010/10/09(土) 15:36:27.56

休憩時間! 澪

 自分を落ち着かせようと必氏になっていると、律が私の席までやってきた。

話を聞くと、私の調子が悪そうだったので心配してきてくれたらしい。

机の上に置いてある鞄からお茶を取り出し、一口飲む。

なんだか喉がかわいて仕方がないのだ。

今日は、律がいつもと違ってみえた。

目の前にくるだけで、ドキドキしてしまう自分がいる。

いつもより、その存在を意識してしまうからだろうか。

「澪しゃん顔真っ赤だぞー」

ケラケラと笑う律が、私の額に手を置いた。


138: 2010/10/09(土) 15:45:05.21

「澪、誰かにチョコあげるの?」

ノートを手に抱えた和が、唐突に話し掛けてきた。

きっと、開けっ放しになっている鞄から顔を覗かせているチョコが、目に入ったんだ。

途端に額を人差し指でポリポリかきはじめる律。
なんだか動揺しているように見えるのは私の気のせいだろうか。

「あ、ああ!」

精一杯に答えたつもりだが、こんなことしか言えなかった。

「渡せるといいわね。ところで、律は誰かに渡すの?」

ビクッ、と同時に震える私と律。

待て、なんで律まで震えるんだ?

まさか……

「り、律も誰かに渡すのか!?」

前のめりになって叫んでしまった。

140: 2010/10/09(土) 16:03:02.37

休憩時間! 律

 和に聞かれたくないことを聞かれてしまった。

しかも澪の目の前で。今まで隠していたのに。

「あー。いや、まあ……」

曖昧に答えることしかできない。

「どうなんだ!?」

さっきまでの青白い顔はどこにいったんだ。
赤みを帯びた興奮気味の顔で私を問い詰めてくる澪。

観念した。もう逃げられないだろう。

「う、うん……。渡すよ」

「誰にだ!?」

目の前の顔に、私は圧倒される。
渡す人に誰に渡すと聞かれて、答えられるわけがない。

高く鳴り響くチャイムによって、私は助け出された。

148: 2010/10/09(土) 18:39:23.21
書き始めたけど書けなくなったすまん
うっすら考えていたあらすじを書く

授業が終わり律と一緒に帰ろうと提案するつもりの澪だったが、律が見当たらない。
鞄はあるのでとりあえず学校内を探すことにした。
律は和に呼ばれ部活の書類を提出しに行っていたが、手違い判明で生徒会室で直していた。
ようやく書類が片付き、澪と帰るために教室に行くも見当たらない(澪は鞄を持って校内で律を探している途中)
律は澪がチョコを渡す人は自分じゃないと勘違いする。(澪は誰かにもうチョコを渡して帰ってしまったんだ、と勘違い)
律帰宅。

澪、律の鞄を確かめに教室に戻る。だが、さっきまであったはずの鞄が見当たらない。
澪も、律は誰かにチョコを渡して帰ってしまったんだと勘違いする。
すれ違いによる誤解で、澪は落ち込みながらも家に帰る。

律は「ガラじゃない」と感じる自分と葛藤しながらも、やはりどうしても諦められず、澪の家の前で待っていた。
そしてなんやかんやある(書きながら考えようと思っていた)

終わり

以上ですすいません

引用元: 唯「ねぇ、あずにゃん」