1: 2013/12/13(金) 08:57:32.34
ガルパン×まどマギのクロスSSです

2: 2013/12/13(金) 09:13:21.79
初めまして、こんにちは。西住みほです

大洗女子学園で、戦車道の隊長をつとめ
させていただいています。

以前、母校の存続を賭けた、戦車道全国大会に出場し、仲間全員の協力により
優勝することができました。

さらに精進するべく、今回、××県見滝原市へ強化遠征に行くことになったんです。

その時、私の人生を大きく変える出来事に遭遇しました。



3: 2013/12/13(金) 09:16:10.08
濃い灰色一色の空 どこまでも続く丘陵

その中を、轟音響かせ疾駆する影が一つ
何かの大群に追われている。

大洗女子の隊長車 四号戦車である。


4: 2013/12/13(金) 09:23:34.58
みほ「沙織さん!通信は!?」

沙織「ダメ!誰とも通じない!何なのよあいつらー!!」

通信手、武部沙織が悲鳴をあげる。

四号戦車は「何か」に追われていた。

黒い球体に、細い四本足のついた格好の
それは


ドンッ!ドドンッ!ドッ!ドンッ!!

華「ーーーーっ!」

5: 2013/12/13(金) 09:29:59.77
球体上部に据えられた筒から砲弾と思しきものを撃ってくる。

車体を揺さぶる衝撃は、砲手、 五十鈴華の
目を鋭くさせる。

優花里「西住殿!逃げてばかりでは埒が明きません!応戦しましょう!」

装填手、秋山優花里が進言する

みほ「・・・・・・」


6: 2013/12/13(金) 09:38:42.04
車長、西住みほは、ずっと後ろを…
追いかけてくる「何か」を見ていた。

「何か」が放つ砲弾は、戦車の周りに着弾すると、小さな粒をばら撒き、

それは補助装甲板(シュルツェン)に当たると細かな音をたてる。

みほ(榴弾…戦車相手にはあまり効果は無いのに。何故?)

7: 2013/12/13(金) 09:44:42.31
疑念はそれだけでは無い。
どう見ても「何か」は砲弾を車体に当てる気があるようには見えないのだ。

麻子「西住さんヤバそうなところに入ったぞ」

操縦手、冷泉麻子の言葉に、みほは、
周囲を見回した。

いつの間にか、左右を小高い土手に挟まれた小道に追い込まれていた。

8: 2013/12/13(金) 09:50:45.53
………話は少し前に遡る

マミ(遠距離からの榴弾攻撃…使い魔も
考えるものね)

自身の周りにマジカル☆マスケットを
数挺浮かばせ、巴マミは呟いた

目の前に横たわるのは黒い球体から細い四本足が生えた「何か」…もとい使い魔
である。


9: 2013/12/13(金) 09:55:45.88
マミ(数体相手ならまだしも、包囲されたら厄介この上無い…早く魔女を倒さないと。)

使い魔を産み、使役し、この結界という
空間に潜み、人を食らう存在、

それが魔女

彼女、巴マミは、そんな魔女を狩る者
魔法少女である。

10: 2013/12/13(金) 10:01:42.49
「ヘェ~、あんた、まだ生きてたんだ」

マミ「ーーー!」

後ろからの声に振り返ると、
槍を肩にかけ赤い衣で身を包み、
衣と同じ赤い髪を後ろで縛った少女が
立っていた。

マミ「佐倉さん…。何故ここにいるの?あなたのテリトリーは、隣街の風見野でしょう?」

11: 2013/12/13(金) 10:16:39.09
その少女は佐倉杏子

かつてマミと袂を分かった魔法少女で、
一番弟子でもあった。

杏子「その風見野の魔女を狩りすぎたん
だよ。
今は使い魔が人を食って魔女に成
長すんのをまってんのさ。
その間、あんたのおこぼれを頂戴
しようってワケ。」

マミ「まだそんなことを…。」

杏子「それは私のセリフさ。あんた、ま
だ性懲りも無く使い魔退治までして
るっぽいじゃん。グリーフシード
出さないのに」

マミ「使い魔も人を食らうわ、放って
おけないの。あなたと違ってね」

杏子「・・・」

杏子は黙って右手を差し出し卵の形をした宝石を掲げて見せた。

12: 2013/12/13(金) 10:24:49.68
杏子「この魔翌力の源…ソウルジェムは
力を使うほど濁りが溜まる。
だから魔女を倒してグリーフ
シードを手にいれ浄化する。
知ってんだろ?」

マミ「知っているわ、充分過ぎるほどね
あなたも知っているはずよ、
私がこの生き方をやめない理由を

杏子「………。」

13: 2013/12/13(金) 10:32:16.67
マミ「あなたこそ、わざわざ私にかまう
なんて。何が目的?」

杏子「たまたま入った結界に、あんたが
いただけさ。ついてねえよ、
あいつに伝言まで頼まれたし。」

マミ「あいつって、まさか…。」

杏子「こっちにまっすぐ行った所にさ。


杏子は一方向を指差して見せた。

14: 2013/12/13(金) 10:36:33.43
杏子「一般人が囚われてるらしいぜ。
さて、正義の魔法少女ならどうする
?」

その言葉が終わるや否や、マミは杏子が指差した方向へ駆け出した。

15: 2013/12/13(金) 10:45:40.34
ーーー再び四号戦車ーーー

みほ(この地形…)

戦車は左右を土手に挟まれた小道に追い込まれていた。

その幅は戦車二台分、 機動力を制限された形になる。

ドーーーーン!!!!!

車体のすぐ近くで榴弾が破裂し、
子弾がみほの周りにばら撒かれる。

優花里「西住殿、身を乗り出すのは危険
です!ハッチを閉めてください
!!」
みほ「うん…」


16: 2013/12/13(金) 10:50:26.08
みほは進言通り身をかがめる。

沙織「みぽりん、どうするの?やる?」

華「みほさん。」

麻子「…………。」

みほ(敵が何者なのか分からないうちは
無闇に攻撃するべきではない……。
でも…。)

みほの腹はきまった。

17: 2013/12/13(金) 10:53:26.88
みほ「優花里さんの言うとおり、
逃げるだけじゃ状況は変わらない
むしろ悪くなっちゃう。」

優花里「で、では!」

みほ「うん、ちょっと荒っぽいことに
なるけど。」

18: 2013/12/13(金) 11:00:19.07
砲塔が回転し、真後ろの目標に狙いを
定める。

優花里「装填よし!」

みほ「華さん、照準は常に目標を狙って
合図と一緒に撃ってください。
沙織さんは機銃を。」

沙織「まっかせて!」

みほ「じゃあ、麻子さんお願い!」

麻子「おう」

19: 2013/12/13(金) 11:05:32.21
麻子が操縦管をひねると、戦車は左手の
土手に乗り上がった。

「何か」の群れは後を追うも

みほ「撃て!」

ズガアァァァァァァァン!!!!!!!

狙い済ました75mm主砲の一発に、その
思いは砕かれる。

やがて、戦車は土手を登りきった。

みほ「停車!全速後退!!」

20: 2013/12/13(金) 11:09:17.28
戦車は土煙を上げ、後退しながら
混乱するする群れの背後に駆け下りる。

みほ「機銃掃射!!」

沙織「おりゃりゃりゃりゃりゃーーー!

ズガガガガガガガガガガガ!!!!!!

優花里「装填よし!」

みほ「撃てーーーーーーーーーーー!」

21: 2013/12/13(金) 11:14:42.80
丘陵地帯を、マミは急ぐ。

その耳が、遠くからの砲声らしき音を
とらえた。

嫌な予感を覚え、さらに足を急がせ
ようとすると、

かすかな地響きがしてきた。

マミ「ーーーー?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

響きは次第に大きくなり、やがて、
前方の丘から何かが現れた。

マミ「何なの……あれ。」

22: 2013/12/13(金) 11:18:44.40
優花里「西住殿!前方に何かいます!」

沙織「えー!さっきのお化け!?」

華「人影のようにも見えますが……。
遠くてよくわかりません。」


麻子(……やっぱり、いたか。)

23: 2013/12/13(金) 11:25:15.99
マミ(使い魔?何にしても私を阻むなら)

手を一閃させ、マミは周囲に数挺の
マジカル☆マスケットを召喚する。

みほ「ー!麻子さん車体を斜めに!!」

麻子がみほの指示を実行すると同時に
銃声が響いた。

ドンッ!ドドンッ!ドーン!

その弾丸は、車体・砲塔に直撃し
戦車に激しい衝撃を与える。

24: 2013/12/13(金) 11:28:46.42
みほ「麻子さん後退して!」

沙織「戻っちゃうの!?」

みほ「あんな小銃で戦車を揺らす相手に
正面から向かえないよ。」

優花里「しかし、正面からじゃなければ
?」

みほは小さく頷いた。

25: 2013/12/13(金) 11:33:15.88
前方の影が、後退を始める。

マミ(いけない!あっちには囚われた人が
!!」

やがて、その姿が丘の向こうに消え、
マミもまた、そいつがいたところに
いたった。

みほ「撃て!!」

ズガアァァァァァァァン!!!!!!!


26: 2013/12/13(金) 11:36:40.93
四号戦車の主砲が、マミのいた
丘の頂上を吹き飛ばした。

華「やったんで……しょうか?」

みほ「みんな油断しないでください
このまま後退して…」

麻子「できないぞ。」

みほ「!」

27: 2013/12/13(金) 11:41:12.53
何かが素早く空を切り、車体を拘束する

みほが上部ハッチ側面の観測孔から
外をみると、それは、黄色いリボン
だった。

続いてみほは、少し離れた所に降り立つ
人影を見止めた。

28: 2013/12/13(金) 11:46:03.59
みほ(人間?)

華「みほさん、砲塔が動きません!」

麻子「車体も」

みほの見止めた人影は、車体右側へ
どんどん近づいてくる。

みほ「どうすれば…。」

優花里「西住殿、自分に一つ考えが
あります。」

29: 2013/12/13(金) 11:55:50.00
拘束したものを、マミはしげしげと
眺めた。

マミ(さっきは遠くてよく分からなかった
けど…これって、
いわゆる戦車ってやつ?)

戦車に向けて腕を伸ばし、銃を出す。

マミ(攻撃してきたし、敵よね?
犠牲者を助けるのを邪魔するなら
排除するのみ。)

その時、物体の側面についていた
扉らしきものが開いた。

マミ「なっ!?」

その中から出てきたのは、
四号戦車車長西住みほ、その人であった

30: 2013/12/13(金) 12:06:02.94
側面ハッチから身を乗り出したみほは、
微動だにせず。

ただ、無言で目の前の人物を凝視する。

みほ(人間…だよね?しかも女の子…)

異常な事態の連続に乱れつつある心を
鎮め、みほは作戦を成功させようとする

対峙する少女、巴マミもまた、
一言も発することなく、相手の出方を
待った。




優花里「うおおおおおおおりゃああああ
あああああ!!!!!!!!」

その背中に優花里の奇声が浴びせられた

31: 2013/12/13(金) 12:10:21.65
スコップを振りかざし、優花里は
マミの頭に打ちかかる。

マミ「くっ!!!」

すかさずマミは振り返り、その手に
拳銃を出現させ、

パァン!!

迫り来るスコップを弾き飛ばす。

優花里「西住殿ぉ!!!」

みほ「えーーーーーい!」

32: 2013/12/13(金) 12:14:43.95
背中を見せたマミを、みほが押し倒す。

沙織「やっちまえーーー!!!」

華「わ、わーーーーー!」

麻子「おー」

マミは抵抗するも、四号戦車、あんこうチームの一団が、
よってたかって群がって、
完全に動きを封じ込められてしまった。


33: 2013/12/13(金) 12:21:00.76
みほたちはうつ伏せになっていたマミを
ひっくり返し、仰向けにする。

沙織「こらっ!暴れないの!」

その言葉でまみはおとなしくなる。

みほ「えーと…その…あなた、人間…
だよね?」

マミは小さく頷いた。

と、同時に地面から無数のリボンが
現れ、土煙をあげる。

優花里(煙幕!?西住殿!)

34: 2013/12/13(金) 12:25:57.54
土煙の勢いに、あんこうチームは
マミを手放してしまう。

やがて土煙がおさまると、
みほの目には、こちらに銃をかまえる
マミと、スコップを持ちみほを身を呈し守らんとする優花里の姿が写った。

35: 2013/12/13(金) 12:29:34.00
睨み合うマミと優花里。

周りでは、残りの者が動けないでいる。



《マミ、その人たちは敵じゃない。
君が救おうとした犠牲者たちさ。》


場違いな声が、マミの脳内に響いた。

36: 2013/12/13(金) 12:34:12.08
マミ「え…じゃあ、にんげん…?」

沙織「そ、そうそう、私たち人間、
敵じゃないよ。」

マミ「あ、あああああ、」

マミの顔がみるみる青ざめて行く

みほ「ねえ、もし良かったら、あなたが
誰なのか教え……。」

麻子「魔法少女だ」

華「麻子さん?。」

37: 2013/12/13(金) 12:40:13.11
寡黙な麻子から似つかわしくない
言葉が出され、
一同の視線が麻子に集中される。

みほ「麻子さん、今、なんて?」

みほが問いかけるも、その言葉は
続かなかった。



ヒュルルルルルル……




大気を切り裂き、何かが飛翔する音

もとい、砲弾の落下音が、
聞こえてきたからだ。

38: 2013/12/13(金) 12:46:03.82
みほ「みんな伏せて!」

目の前の優花里を押し倒し、みほは
仲間に呼びかける。

間を置かず、周囲に砲弾が雨あられと
降り注ぎ、容赦無く地面を震わせる。

その威力は、使い魔の砲弾の比ではない

沙織「なんなのよ、もー!さっきからー
!!」

マミ「それっ!!」

39: 2013/12/13(金) 12:52:32.46
マミが上空に向けて手をかざすと

無数のリボンが現れ、寄り集まり、
巨大な傘を形成する。

ズガン!ズガアァァァン!

ドオォォォォォォン!!!!!!


これまた数えきれない砲弾がを直撃
するも、傘はびくともしない。


あんこうチームの面々は、伏せたまま
呆然と、不思議な術を使う少女を
見つめる。

ただ一人、冷泉麻子を除いて。

40: 2013/12/13(金) 13:00:32.40
麻子は落ち着き払って立ち上がる。

ズドオォォォォォォォン

麻子「沙織、みんな、いこう。」

ズガアァァァァァァァン

沙織「ね、ねえ麻子。あんた何か
知ってんの!?。」

麻子「今はそれどころじゃないだろ、
ここを離れるのが先決だ。」

みほ「そうだね。みんな戦車に乗って!
離脱します!
あなたも!!」

マミ「は、はい!」

41: 2013/12/13(金) 13:08:29.46
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー

はるか彼方で砲煙が上がっている。

命からがら、脱出に成功した一行は、
ある丘の陰に身を隠すこととした。

みほ「ただいまー」

二人の人影が戦車に近づく。
偵察に出ていた、みほと優花里である。

沙織「おかえりー。」

優花里「武部殿、何か変わったことは?


やや声を荒げた優花里が問う。
その時、ちらっとマミのほうを見た。

42: 2013/12/13(金) 13:15:34.65
沙織「心配御無用!何たって、この、
魔法少女マミちゃんが
いるもんね!」

みほ「まほーしょーじょ?」

優花里「武部殿!西住殿が戻られるまで
何もしないようにと……!」

沙織「ゴメンゴメン、でも好奇心には
勝てなくてさ。色々聞いちゃった
んだ。」

戦車から沙織、華、麻子が降りてくる。
その後から、マミが続いた。

マミ「あの………」

43: 2013/12/13(金) 13:26:21.56
華「巴さん、二度手間になってしまい
ますけど、もう一度自己紹介お願い
します。」

マミ「はい。ええと、西住さんに秋山さ
んですね。
私、見滝原中学校三年
巴マミです。」

言い終えると、マミは深々と頭を下げた

マミ「先程は、間違いとはいえ、
申し訳ございませんでした!

みほ「えー、と、気にしないで。
私たちも同じようなものだし。」

44: 2013/12/13(金) 13:47:04.81
みほは、ふと、あることに気づく。

みほ「あれ?巴さんって年下?」

華「そうなんです、みほさん。
そして、その正体は!」

沙織「災いをもたらす魔女と、世のため
人のため日夜戦い続ける
正義の魔法少女!…でいいよね?

華と沙織にはやしたてられ、
まみは赤面する。
満更でもなさそうだが。


沙織「聞いてよみぽりん!マミちゃんて
すごいんだよ!
私たちより二歳も下なのに
毎日、魔女や、さっきの使い魔
とかいうのと戦ってるんだって。


華「人しれず、世界を裏から守り
その姿は華麗、かつ力強い…。
私の求めていたものかもしれません
。」


45: 2013/12/13(金) 13:56:00.19
マミは少々混乱していた。

日頃から異常なことには慣れている
つもりだったが、
戦車を乗り回す犠牲者には、面食らって
しまった。

マミ(何で、こんなことに?)

自分が言うべきことを次々言われ、
どうしたものかと思案する。

マミ(うーん…)

麻子「二人とも、巴さんが困ってるぞ
少し落ち着け。」

46: 2013/12/13(金) 14:00:36.49
麻子に場を鎮めてもらい、
マミは説明を始める。

魔法少女に魔女のこと、
使い魔、結界、etc、etc…。

マミの口から語られる
奇想天外奇天烈極まる別世界に
みほと優花里は驚きを持って聞きいる。

47: 2013/12/13(金) 14:12:19.96
しばしの沈黙、最初に口を開けたのは
優花里だ。

優花里「俄かには、信じ難い話です。」

その目には不信の色が浮かんでいる。

マミ「突拍子もない話だと思います。
でも、これが現状なんです。」

沙織「まあ、信じるしかないよね。
私たちも、ついさっき使い魔と
戦ったんだし。」

マミ「たたかった?」

沙織「機銃で穴だらけにしたけど、
ダメだった?」

マミは記憶の中をさぐり、使い魔に
立ち向かって勝った一般人を探す
もちろん、いない。

48: 2013/12/13(金) 14:19:24.51
沙織「しっかし、驚きだねー。
こんな結界が、実はあちこちに
あって、その中でお化けが
うようよしてるなんてさ。」

華「私は、魔女の口づけが怖いです。
人の心絶望満たし、殺人や自殺に
追い込むなんて…。」

沙織「それよか、私は彼氏の口づけが
怖いね!
一発で昇天する自信あるもん!」

麻子「お前はとことんそれか。」

優花里「・・・・・・」

49: 2013/12/13(金) 14:26:00.74
みほ「優花里さん、どうしたの?
さっきから元気が無いみたい。」

優花里「いえ、何でもありません。
ただ、異常なことが続いたもの
ですから。」

声をかけられ、優花里はみほのほうを
向く。

ふと、みほの手をみると、
優花里は目を見張った。

優花里「西住殿!それって…」

みほ「うん?」

50: 2013/12/13(金) 14:35:04.08
みほの手。

その手には一ページにびっしりと
文字が書き込まれたメモ帳があった。

沙織「みぽりん、何なのそれ」

みほ「今まで巴さんから聞いたことを
纏めてみたの。
それと、いつまでここにいるか
わかんないから節約しなきゃね。」

言い終えるとみほはマミのほうを向く。

みほ「説明ありがとう巴さん、
一つ確認したいんだけど、この
結界から脱出できるの?」

マミ「それなら大丈夫です。
閉じ込められた訳ではないので
安心してください。」


51: 2013/12/13(金) 14:50:45.55
みほ「よかったあ、それだけ気がかり
だったんだよね。」

優花里「それなら早く出ましょう!」

麻子「しかし、あそこを通らないと
いけないぞ。できるのか?」

マミ「あ…」

麻子の言うとおりだった。
脱出するには、今しがた砲撃を受けた
所を通る必要がある。

優花里「し、しかし、巴さんの力を
もってすれば!」

みほ「確かにあの弾幕を突破するのは
キツイかな、
もし、巴さんがやられたら……」

マミ「私なら平気です!必ず皆さんを
出口まで連れていきます!」

みほ「そう言っても、敵の全容が
分からないうちは、無闇に
動けないよ。」

マミ「でも、私は…」

ぐぎゅるるるるるるるる~

52: 2013/12/13(金) 15:04:18.30
みほ「華さん?」

華「すいません、帰れると思ったら、
気が緩んでしまいました。」

沙織「ねえねえ、さっきから色々
話してるけどさ、逃げる以外に
何かないの?」

マミ「ない事はないですけど…
一番は魔女を倒すことですね。
そうすれば結界が消滅し、
帰れます。」

沙織「ならさ、マミちゃんを魔女の所
まで送ってあげようよ!」

マミ「へ?」

華「それはいいですね。もっと巴さんと
お話できます!」

マミ「あ、あの。ちょ…」

言い返す暇もなく。二人に押し切られた
マミは、
気がつくと戦車に乗せられていた。

53: 2013/12/13(金) 15:08:28.07
第一部 完です


一旦休みます

あと携帯からなので、すごく遅いです

すいません

初めてなので色々グダグダです

それでも、よろしければお付き合い
ください

55: 2013/12/13(金) 21:39:57.43
再開します

56: 2013/12/13(金) 21:48:07.05
使い魔の存在を確認しつつ、戦車がいく

その中で、巴マミは何の因果か、紅茶を
啜っている。

華「巴さん、窮屈ではありませんか?」

マミ「いえ、それほどでもありません。
思ったより快適です。」

沙織「ほら、ゆかりんの取り越し苦労
だったでしょ?
一緒に乗っても全然大丈夫
じゃない。」

優花里(そういう意味で言ったのでは、
ないのですが…)


魔法少女になって、一年
こんな経験はない。

マミの頭の中で様々な事が交錯する。


57: 2013/12/13(金) 21:56:44.14
再度、偵察を行った結果、
結界の出口までには、大砲を主体とした強固な防御陣が展開されていることが
判明した。

そして、このまま強行脱出するのは
酷であると判断されたのである。

マミはそれでも、彼女達を脱出させ
たかったが、沙織と華に言いくるめ
られてしまった。

マミ(移動だけでも魔力は減るから
正直、助かっているけど…)

これでいいのだろうかと思いつつ、
マミは紅茶を飲み終えた。

58: 2013/12/13(金) 22:07:28.85
戦車道

鎌倉時代の馬上薙刀道より発展した
武道で、女子のたしなみとされている。

マミ(戦車道……か。)

マミはふと、持っているティーカップに
目をやる。

大量生産の類いではない。
丹念に職人の手が施されている一級品だ

話によると、聖グ口リアーナという
学校と親善試合を行った際、
友情の証として茶葉とともにもらった
らしい。

この茶葉もまた、一級品である。

マミ(友情…)

この言葉にマミの心は少し曇った。


59: 2013/12/13(金) 22:21:46.20
みほ「巴さん、咽頭マイクの調子は?」

マミ「え、はい、よく聞こえます。
こっちからは?」

マミは首にかけた咽頭マイクに手を
かける。
うるさい車内だとこれ無しでは
話もできない。

みほ「感度良好だよ。紅茶を飲む音も
ばっちり。」

沙織「この紅茶すっごく美味しいよ
マミちゃん!
やっぱりいれる人が変わると
味も変わるのかな?」

みほ「魔法で出したお湯で入れたから?
巴さん、お茶が大好きなんだね」

マミ「それを五十鈴さんに口臭で
悟られるなんて、びっくり
しました。
歯磨きはしたんですけど。」

沙織「あー気にしないで、華って、毎日
花いじっているから鼻が
めちゃくちゃ効くの。」

マミ「花を?ガーデニングですか?」

沙織「ううん、華道やってんの。それも
五十鈴流っていう家元のお嬢様。」

華「・・・・・・・」


60: 2013/12/13(金) 22:28:49.64
華はマミをじっと見ている。

その目に決意を満たして。

沙織「どしたの華、ずっとマミちゃんの
顔見て、黙っちゃって。」

華「…巴さん、率直に申し上げます。」

マミ「?」

華「魔法少女になるにはどうすればよい
のですか?」


優花里「!!!」

麻子「!!!!!!!!!」

ギギギギギギギギギギッッッ!!!

戦車が急停車した。

61: 2013/12/13(金) 22:36:11.12
沙織「アイタタタ…もう!急にとまん
ないでよ麻子!!」

みほ「はにゃぶつけた……」

優花里「あああ!西住殿、鼻血があ!」

マミ「冷泉さん使い魔ですか!?…て、
あれ?」

操縦席を見ると、麻子が消えていた。

何事かと思っていると、外から
コンコンと音がする。

麻子「開けて」




62: 2013/12/13(金) 22:45:36.62
優花里が側面ハッチを開けると
麻子が入ってきた。

マミ「な…何か?」

麻子「私は気にするな、続けて。」

マミと優花里の間に麻子は座った。

その目で凄まれたマミは理由を聴くのを
やめ、華の話を聞くことにした。」

華「はい、是非にも。どうすればいいか
教えてください。」

マミ「その前に理由を言ってください。
それが分からないうちは、
教える訳にはいきません。
魔法少女というのは…」

華「そうですね、すいません、先走って
しまって。では…」


華の語りが始まった。

63: 2013/12/13(金) 22:58:11.61
華「私は沙織さんの言うとおり、華道の
家元、五十鈴家の一人娘です。
そのため、幼少より華道の手習いを
仕込まれてまいりました。」

最初はゆっくりと

華「でも、自分の作品にどうしても、
もの足りなさを感じる時期があり
さらなる成長のため、戦車道を
始めることにしたのです。」

目がキラリと光る

華「戦車道を通して、新たなる境地へ
至ろうとし、実際にそうすることが
出来ました。
ですが、近頃それでも満足出来なく
なって来たのです。」

目から光が失せる

華「焦りを覚え始め、どうしようと
思っていた時、巴さん、魔法少女の
あなたに会えたのです。」

64: 2013/12/13(金) 23:06:46.25
マミ「もしかして、華道の精進のため
魔法少女になるというんですか?」

華「はい!巴さんの勇姿は照準器から
拝見させていただきました。
戦車を前にしてひるむことない
力強さ、
そして、優雅な立ち振る舞い、
それこそ、私が求めていたものです
!!」

沙織「落ち着いて華!いきなりなに
言ってんの?」

華「華道は私の生き甲斐なんです。
魔法少女になれば、もっと…」

マミ「残念ですが、そのような理由では
教える訳にはいきません。」

65: 2013/12/13(金) 23:30:22.09
華「そのようなって…私は!」

マミ「成長しようというその気持ちを
否定する訳ではありません。
ただ、そのために魔法少女に
なるべきではありません。」

マミの声に鋭さがにじむ。

マミ「魔法少女になるにはキュゥべえに
願いを叶えてもらう必要があります
その対価として魔法少女となり、
魔女との戦いを受け入れるのです。
一生、氏を覚悟で。」

沙織「氏って…そんなにハードなの?」

マミ「だからこそ、人生を賭けてもいい
願いでないと絶対に後悔します。」

そもそも、とマミは続ける。

マミ「一度、魔法少女になれば、それが
生活の基本となり、他のことに
かまっていられません。
戦車道と同じではないんです。」

優花里「つまり、魔法少女をしながら
華道はできない、と。」

麻子「本末転倒だな。」








66: 2013/12/13(金) 23:33:47.58
麻子がつぶやくと、華はうなだれた。

沙織「華、どうするの?」

親友が覗き込むも、彼女は黙ったまま。

それを見るマミは、どこか辛そうだ。

優花里「巴さん、一ついいですか?」

マミ「何でしょう」


67: 2013/12/13(金) 23:44:30.67
優花里「さっき巴さんは、魔法少女に
なるにはキュゥべえに願いを
叶えてもらうと言ったけど…
キュゥべえとは?」

マミ「!!!」

マミは自分の迂闊さに気付くも、
遅かった。

マミ(どうしよう、流石に本人がいないと
説得力がないし…
何度もテレパシー送っているのに
何で出てきてくれないの!?)

魔法少女の基本能力テレパシー

マミはそれを使って友を呼ぶも、
待ち人はこない。

68: 2013/12/13(金) 23:52:33.61
麻子《巴さん。キュゥべえなら私が呼ぶ
までこないぞ。》

マミ「え!?冷泉さん!?」

優花里「?」

突然、マミは動揺し出した。

しかし、さらに驚くべき存在が、
その膝の上に乗っていた。



69: 2013/12/14(土) 00:09:23.93
QB「まったく、なかなか出させて
くれないなんて。マミが困っている
じゃないか麻子。」

麻子「久しぶりだなキュゥべえ、
会いたくなかったぞ。」

QB「なら呼ばなければいいじゃないか」

麻子「巴さんの話に説得力をもたせる
ためだ。
お前がいないと決め手に欠ける。」

QB「それなら最初から呼べばいいじゃ
ないか。」

麻子「さっきも言ったろ、巴さんに
必要になったからだ。
最初から呼んでいたらお前は…」

沙織「あのー麻子?その子だれ?」



70: 2013/12/14(土) 00:24:38.28
いきなり、白い猫もどきと話し出した
幼馴染に沙織は声をかける。


麻子「仕方ないから紹介するぞ。
キュゥべえだ。」

QB「初めまして、僕、キュゥべえ。
早速だけど、僕と契約し」

契約という言葉が出た途端
麻子がキュゥべえの口を塞ぐ。

QB「麻子はひどいなあ。」

マミ「キュゥべえ!何度もテレパシーを
送ったのに何で来てくれなかったの
?」

QB「テレパシーの圏外だったからさ。
だから、杏子に伝言を頼んだんだ。
やっと伝わるところまできたら、
今度は麻子に口どめされたよ。
出てきたら耳を千切るってさ。」

麻子「なんだ本気にしてたのか。」

QB「ひどいなあ。」

71: 2013/12/14(土) 00:30:29.46
沙織「話してるとこ横から悪いけど、
麻子って魔法少女の関係者?」

麻子「昔、キュゥべえに契約を迫られた
ことがあるだけだ。
両親が交通事故で亡くなった
直後にな。」

麻子の言葉にマミは目を見開く。

マミ「まさか冷泉さん、あなたも?」

麻子「いや、私は契約していない。
する気にならなかったからな。」



72: 2013/12/14(土) 00:40:54.53
話終えると、麻子は一同を見渡した。

麻子「西住さん、私が巴さんと
キュゥべえのいうことは本当だと
保証する。
どうか信じて欲しい。
貴重な情報源だ。」

沙織「ちょっと待って麻子、それじゃ
みぽりんがマミちゃんを信じて
無かったっていうの?」

麻子「その通りだ。証拠もないのに
いきなり信じるなんて、無理な
話だろ。」

優花里「情報は真偽をしっかり確認
すべし!
そうですよね、西住殿!?」

73: 2013/12/14(土) 00:47:50.71
みほの賛同を期待しつつ、優花里は
その顔を見る。

みほ「麻子さんの言うとおり、最初から
全部信じる訳にはいかなかったのは
本当だけど…」

我が意を得たりと優花里の表情は
自然と緩む。

沙織「みぽりんまで、そんな…」

麻子「逆に何でお前は信じれるんだ。」

沙織「麻子もみぽりんも斜めにかまえ
すぎだよ!だってマミちゃん…」

74: 2013/12/14(土) 00:55:53.48
口論を始める沙織と麻子。

優花里がとりなそうとし、

華は未だに黙っている。

みほ(まずいな…)

よくない状況だ。

情報の確実性を求めた結果、
仲間の結束が揺らいでしまった。

みほ(この状況では、連携こそ重要なのに)

得たものはあった。

麻子が保証するなら、巴マミ、及び
キュゥべえとやらのいうことは、
本当のことと思っていい。

75: 2013/12/14(土) 01:14:00.24
しかし、対価は安くなかった。

情報を活用するには連携が必要だが、
その連携が失われつつある。

みほ(みんなを何かに集中させられれば…
何か… みんながびっくりするものを)


QB《お困りのようだね、みほ》

みほ《えっ?》

QB《僕だよ、キュゥべえさ。これは、
魔法少女の基本能力、テレパシー。
話相手を思い浮かべて、
念じてごらん。》

みほ《でも私、魔法少女じゃ
ないのに?》

QB《魔法少女の素質を持つ者は、僕を
中継してテレパシーを使えるんだ。
そして、君にはすごい素質がある》





78: 2013/12/14(土) 10:22:48.81
みほ「私が…魔法少女?」

思わず呟いたその言葉に
みほは、全員の注目を集める。

麻子「西住さん、何言ってるんだ?」

みほ《麻子さん、みんな、聞こえる?
私、魔法少女の素質があるみたい》

麻子「なっ!?」

沙織「すごっ!なにこれ!?」

優花里「テレパシー…というやつで
しょうか?」

QB「その通り、そして、テレパシーを
受信出来たということは、
全員、魔法少女の素質があると
いうことさ。」


79: 2013/12/14(土) 10:31:31.57
あんこうチームはQBの説明を受けた。

麻子は嫌がったが、QBはマミに守られ
話した。

QB「魔法少女になるには、僕と契約
するんだ。そして、
魔女との戦いを受け入れる代わりに
何でも一つ願いを叶えてあげるよ」

みほ「私にすごい素質があるとは?
……詳しく聞かせて。」

優花里「西住殿!?」

80: 2013/12/14(土) 10:36:51.23
ぶつかり合いかけた仲間たちは、
ひとまず落ち着いた。

少々、驚きはあったものの、この状況を
利用しない手はない。

しかし、魔法少女が話題の中心である
ことに変わりはなく、
分裂の危険はまだある。

もう一押し欲しい、話の本質を変える
何かが。

みほ「なぜ、私にそんなものが?」

QB「それは、君の持つ因果が大きい
からさ。」

81: 2013/12/14(土) 11:14:01.27
思い当たる節はあった。

だが、今はどうでもいい。
皆の口論を興ざめさせるのだ。

連携を維持するためであり、

何より仲間がいがみ合うのは嫌だった。

みほ「因果というと?」

QB「君たちにとっての悲劇的な過去、
または、大いなる偉業といった
ところかな。
つまりは人生の濃さということだよ」

沙織「納得だね。だってみぽりん
戦車道で辛いことあったもん。

優花里「さらには戦車道全国大会優勝に
よって、
学園艦を廃校から救い、
そこに住む多くの人の生活を
守りました。
もっともな話です。」

優花里はどこか辛そうな顔をした。


82: 2013/12/14(土) 11:27:38.17
QB「偉業が元で、強い素質を持つ者は
少ないんだ。大抵は…」

キュゥべえは何かに気付き
麻子とマミを見る。

QB「大抵は、悲劇的な過去を持つ者が
強い素質を持つ。
そういえば、マミと麻子は似た
過去を持っているね。」

マミ「キュゥべえ!それは…」

QB「一つ分からないことがある、
どうして君は、五十鈴華の契約に
理由をつけてまで反対したんだい?
仲間を欲しがっていたじゃないか。」

華「そう…なのですか?巴さん」

ずっと黙っていた華が、顔をあげる。

沙織「それに、麻子と似た過去って…」

マミ「…………」



83: 2013/12/14(土) 11:32:44.12
みほは複雑な気持ちだった。

話題は魔法少女から、巴マミの過去へと
移りつつある。

みほが望んでいたことだが、
そのためには、マミが辛い思いを
しかねない。

しかし、中途半端に話を切り上げれば、
別の意味で雰囲気が悪くなる。

みほ(どうしようかなあ…)

84: 2013/12/14(土) 11:39:08.49
マミ「あの…」

沙織「えーと、マミちゃん?
別に言わなくても私、気にしないよ?」

マミ「いえ、いいんです。確かに
私と冷泉さんの過去は似ています」

麻子「交通事故が…か?」

マミ「はい、それが私の人生を大きく
変えました。」

85: 2013/12/14(土) 11:49:15.16
マミは朗々と語り出す。

両親とのドライブ、

楽しい思い出になるはずだった。

それが一瞬にして悪夢へ変わる。

強い衝撃を感じて気を失い、

気がつくと、ひっくり返った車内で

自分は氏にかけていた。

マミ「その時、キュゥべえに出会い
ただ、自分一人助かりたいがために
契約したんです。
それからは、魔女との戦いと
他の魔法少女との競争の日々でした」

麻子(私にはおばあがいるが、この子は…)

みほ「ねえ、何で競争なんか?」

沙織「そうだよ、仲良く協力すれば
いいじゃん。」

マミは無言で、黄色い宝石を出した。

86: 2013/12/14(土) 12:00:05.82
マミ「これは魔法少女の力の源、
ソウルジェムというものです。
力を使うほど、この中に濁りが
溜まります。それを」

マミ「この、グリーフシードで浄化
します。
これは、魔女を倒すと手に入る
いわば、報酬ですね。」

グリーフシードをソウルジェムに
近づけると、
ソウルジェムから黒い煙が立ち昇り、
グリーフシードへ吸い込まれる。

マミ「キュゥべえ曰く、濁りが溜まり
切ると氏ぬそうです。」

沙織「そうなの?」

QB「うん、魔法少女としての氏だ。」


87: 2013/12/14(土) 12:17:27.25
マミ「力を使わずとも濁りは溜まり
しかも、グリーフシードの数には
限りがあるんです。
当然、奪い合いになります。」

QB「まあ、君はそのかぎりでは
なかったけどね。」

無視してマミは続ける。

マミ「もっと早く伝えるべきでした。
魔法少女は孤独なものなんです。」

マミは華の方を向いた。

マミ「五十鈴さん、あなたにはもう
仲間がいます。
一人ぼっちになってほしく
ないんです。」


マミの目は華の顔を離れ、壁の一部に
向けられる。

そこには、いくつかの写真がはられて
いた。




88: 2013/12/14(土) 12:36:29.81
様々な戦車と人があんこうチームと 一緒に写っている。

おそらく今までの戦歴だろう。

どれも、互いの健闘を称え合い
友情を感じあって見える。

マミ(この人たちを、私たちの世界に
引き込むわけにはいかない。)



魔法少女は孤独である。

それは、マミが一番知っている。

マミ(そう…ひとりぼっちは私だけで充分)

両親を生き返らせず、一人助かる道を
選んだ結果…


89: 2013/12/14(土) 12:43:48.31
足元でハッチが開く音がする。

誰か外へ出るようだ。

華「沙織さん?」

優花里「武部殿!不用意に出ては…!」

友の制止も効果無く。

やがて、側面ハッチをたたく音がする。

麻子が入ってきた扉だ。

優花里が開けると沙織が入ってくる。

そして、麻子と優花里を押しのけ

マミの前に至った。

マミ(???)

沙織「マミちゃん!」

90: 2013/12/14(土) 12:52:19.69
マミ「な、なにか?」

沙織「魔法少女になるのは、
無理っぽいけど。」

マミ「?」




沙織「私、マミちゃんのお姉ちゃんに
ならなれるかな!?」

マミ「はい?」


麻子「なに、言ってんだお前。」

91: 2013/12/14(土) 13:13:03.71
沙織「魔法少女になったら、
マミちゃんと争うかもしれないん
でしょ?
それなら、ならなきゃいいんだ。」

優花里「まあ、そうですね。」

沙織「それだとマミちゃんは
ひとりぼっちのまま。
でも、魔法少女の気持ちは
魔法少女じゃないと
分からないかもしれない。」


麻子「何が言いたい」

沙織「魔法少女にならず、なおかつ
マミちゃんの気持ちを知るには、
どうすればいいか!
私は考えたんだ。」

みほ「で、それが…」

沙織「義兄弟ならぬ、義姉妹になること
だよ!
そうすれば、私とマミちゃんの
間にある、魔法少女とかいう
壁はなくなるのさぁ!」




92: 2013/12/14(土) 13:21:57.44
しばしの沈黙

やがて、くすくす笑う声がしてくる。

沙織「こらー!笑わなーい!
一大決心だったんだからねー!!」

みほ「ごめんなさい、でも、何で?」

沙織「カワイイ後輩が、孤独に悲しむ
なんて、お節介かもだけど許せない
私がマミちゃんの世界に入る
わけにはいかないなら、
マミちゃんを私たちの世界に
入れちゃえばいいんだよ。」

麻子「それで、妹か?」

沙織「うん!」

華「巴さん、いかがです?」

93: 2013/12/14(土) 13:34:41.62
マミは目を閉じ何も答えない。

反応のないマミに、
沙織はようやくあわてだした。

沙織「あー、えーと、ごめん。
いきなりすぎたよね? 正直、
自分でもなに言ってるか…」

マミ「いえ、違うんです。その…
嬉しくて。」

マミは目を開け沙織を見る。

毒気が抜けたような顔をしていた。

マミ「沙織さん。」

沙織「はい、何でしょう!」

マミ「あまり、いい妹ではありませんが
よろしくお願いします。」

沙織の顔が一気に明るくなった。


94: 2013/12/14(土) 13:42:06.40
沙織「よっしゃあ!カワイイ妹が
出来たぁ!」


華「おめでとうございます!さっそく
盃を交わしましょう!」


麻子「ちょっと違うぞ、それ。」


沙織「そんじゃ、さっさと魔女退治と
行こうか!みぽりん!」


みほ「じゃあ…パンツァー・フォー!」



95: 2013/12/14(土) 13:51:18.07
あんこうチーム内のいさかいは回避され

巴マミとの関係も良好となった。

以前、仲間との通信は不可能であり、
心配だが、

今は、魔女の元へ向かうしかない。


優花里(しかし…)


秋山優花里のみは、未だ、 マミを信じきれていない。

だが、隊長たる西住みほは、
マミを信用に足る人物とみているようだ


優花里(西住殿と考えを違えるなんて…
そんなの、嫌だ。)


96: 2013/12/14(土) 13:58:16.43
マミはマミで、華のことが
気になっていた。

さっきから壁の方を向いて黙っている。

正しいと思っていた考えを否定された
ようなものだ。

いくらかショックをうけたのだろう。

何か話さねば。

マミはその思いに、自然と至った。


マミ「あの、五十鈴さん?」


華「ふぁい?」


振り返った華の口は芋で溢れていた。

97: 2013/12/14(土) 14:14:26.56
華「あ、食べます?大洗名物の干し芋」


マミ「五十鈴さん、あの…」


華「魔法少女のことですか?
もう、大丈夫ですよ」


そういう華は、どこかふっきれた様子だ


華「私の悪いところです、これはと
思うと、ろくな考えなしに
首をつっこんでしまう。」


マミ「・・・・・・・」


華「でも、諦めた訳ではありません。
契約なしでも、魔法少女から
学びとれることはあるはずです。」


マミ「前向きですね、羨ましいです。」


華「巴さんも、現状を悲観しないで。
あなたのしていることは、
素晴らしいことだと、
私は胸をはって言えます。」


華は、壁の一部に目をやる。
写真が貼ってあるところだ。


華「今度は、私たちの紹介を
しましょうか。」


98: 2013/12/14(土) 14:24:51.89
結界の中を戦車がゆく。

その中では、大洗女子の紹介が写真を
用いつつ行われていた。


マミ「えーと、この人たちがカバさん
チーム。で、こっちが
アヒルさんチーム。
当たってます?」


沙織「マミちゃん記憶力いいねー、
お姉ちゃん嬉しいよ!」


みほ「巴さん、大体分かって貰えた?」


マミ「おかげさまで。みなさん個性的で
すぐ覚えられました。」


華「そうですね、カバさんチームは
歴史が好きで、
アヒルさんチームは元々
バレー部でしたし。」


沙織「言われてみればそうだね。
我ながら濃い仲間だこと。」



優花里「・・・・・・・」

99: 2013/12/14(土) 14:39:35.83
マミ「学園艦というのもびっくりです、
船の上に学校や街があるなんて
初めて知りました。」


沙織「それは、こっちのセリフだよ。
見滝原中学って地上にあるんでしょ
学校はみんな学園艦の上にあると
思ってた。」


華「街一つが乗るほど大きな船は、
維持費も大変ですから、最近は
安くつく地上に学校を建てることが
見直されてきているんらしいです。」



優花里「・・・・・・・・」



談笑にふける三人を横目に
優花里はテレパシーを試してみた。

相手はみほである。


100: 2013/12/14(土) 14:50:06.26
優花里《西住殿、内密の話があります》


みほ《テレパシー…優花里さん?
口に出せない話?》


優花里《巴さんのことです。私は、
どうもあの子を信用しきれません》


みほ《そんな…魔法少女や契約のことに
ついては、麻子さんが保証すると…》


優花里《そのことではありません、
巴さん自身についてです。彼女、
まだ何か言ってないような
気がします。》









101: 2013/12/14(土) 14:58:59.24
みほ《確かに巴さんは、完全に私たちの
味方になったとはいえないのは
事実だよ。
もしかしたら、寝首をかかれる
かもしれない。》


優花里《では!》


みほ《でも、巴さんが今の状況を一番
的確に対処できるのもまた事実。
協力はどうしても必要だよ。》


優花里《・・・・・》


みほ《優花里さん、ひとりで
気張らないで。それに、
さっきみたいなことはもうしないで》


さっきみたいな、とは、すなわち
巴マミと最初に出会った時である。

102: 2013/12/14(土) 15:13:41.87
最初は、優花里が単独でマミの背後に
回り込み、奇襲する予定だった。

ここで、みほがオトリをかってでたのだ

優花里は当然、反発したが、
みほに押し切られてしまった。


みほ《自己犠牲は美徳だけど、その前に
みんなで補い合うことが大事だと
思うな。》


優花里《わかり…ました。》


みほ《ありがとう、じゃあ、巴さんが
言ってないこと、聞いちゃおうか》


優花里《へっ!?》

103: 2013/12/14(土) 15:30:13.74
みほ「巴さん、ちょっといい?
聞きたいことがあるの。」


マミ「はい、何でも聞いてください。」


みほ「巴さんが、魔法少女は互いに
争い合う関係と言った時、
キュゥべえが巴さんはそのかぎり
では無いって言ったよね。」


マミ「あ……」


みほ「もしかしてそれは、
昔、一緒に協力
していた仲間がいたってことじゃ
ないかな。」

104: 2013/12/15(日) 10:06:39.27
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー


薄暗い空が様々な音がこだましている。

丘の上を銃声と共に、光線が一筋二筋
飛び交い。

砲声に続いて、地面がえぐられる。

杏子「はあ…はあ…はあ…。」

そのただ中で、佐倉杏子は満身創痍の
体を成し。
巨大な敵と対峙している。


いうまでもなく、魔女である。




105: 2013/12/15(日) 10:15:03.62
杏子「こんなデケェ結界の主って
いうくらいだからよぉ…」


杏子は槍を持ち直し、改めて相手をみる


全体としては、山そのもの、
高さは百メートルをゆうに超すだろう。


その表面たるや機銃、大砲、索敵レーダー
その他諸々埋めつくし。


堂々たる様は難攻不落を体現したかの
ごとくである。


杏子「魔女要塞……てか。」


流れ出る血をもろともせず。
杏子は再度、槍を構えた。

106: 2013/12/15(日) 10:20:33.62
ダダダダダダダダダダッッッッッ!!!


機銃の応射が始まる。

避けようとするも


ドンッ! ドドンッ!ドンッ!!


大砲に狙い撃ちされてしまう。

退けば大砲、寄せれば機銃。

杏子は近づくことすらままならない。


杏子(相性が悪すぎる…)


彼女のソウルジェムは、すでに
六割ほど濁っている。

107: 2013/12/15(日) 10:24:35.31
杏子(マミ…)


一瞬、かつての師であり、戦友であった
者の姿を思い浮かべる。

しかし、すぐにその思いを振り払う。


ズガガガガガガガガ!!!!!


槍を変化させた多節槍で、飛んできた
砲弾を叩き落とすも、体はフラフラで
ある。



108: 2013/12/15(日) 10:29:29.03
巴マミのように、遠距離から
攻撃できる能力が望ましい。

マミの支援があれば…


杏子「何考えてんだよ…私…」


かつて、自分からマミに三下り半を
突きつけたのである。

マミの協力を求めるなどプライドが
許さない。


ズガガガガガガガガ!!!!!


109: 2013/12/15(日) 10:34:07.09
ズドオォォォォォン!!!

要塞の中腹より光がまたたき、直後、
足元の地面が吹き飛ぶ。

杏子は飛び上がって難なく避けると

ある丘の頂上に降り立った。


杏子(さぁて、本格的に何とかしねーと…)


ざわざわ… ざわざわ…


杏子(あれ?)


杏子は前方の地面が波打っていることに
気付いた。

110: 2013/12/15(日) 10:39:50.64
ざわざわ ざわざわ ざわざわざわ

前だけではない、後方、左右も同じく
波打つ。


ボゴォォォォォォ!!!!!


杏子「!」


地面の中から使い魔の大群が現れ
杏子を取り囲む。

伏兵だ。


杏子「飛んで火にいる虫ってか…?」


体が限界に近づくも杏子は笑みを
浮かべてみせる。


杏子「上等だ、かかってきな!!!」


111: 2013/12/15(日) 10:44:24.74
シュルルルルルルルルルルルッ


突然、黄色いリボンが現れ、
杏子の体を拘束し、空中へ持ち上げる。


杏子「何だぁ!?」


地上を見ると、使い魔の群れは
黄色いリボンで出来たいくつかの檻で
小分けに閉じ込められている。


杏子(このリボン…)



マミ「ティロ・リチェルカーレ!!」

112: 2013/12/15(日) 10:51:02.74
多目標同時砲撃魔法ティロ・リチェルカーレ


放たれた砲弾は、それぞれの檻を直撃し

使い魔を肉塊へと変える。



一方の杏子は、縛られたままどこかへ
つれていかれる。

やがて見えてきたのは、かつて見知った
顔。そして、


杏子「戦車?」


杏子はエンジン音を響かせる鉄の塊の
上に降ろされた。


マミ「また会ったわね、佐倉さん。」


杏子「何で、あたりまえみたいに戦車
乗ってんだよ」



113: 2013/12/15(日) 10:59:03.69
マミ『こちら巴マミ、佐倉さんの回収に
成功しました。どうぞ。』


マミが咽頭マイクより通信を送ると
砲塔上部ハッチが開いた。


みほ「お疲れ様です、巴さん。
あなたが佐倉さんですか?
私、西住みほと言います。」


それに続き


パカッ


沙織「おおー、大漁だねマミちゃん。」


パカッ


華「大丈夫ですか? ひどいケガ…」


パカッ


優花里(増えた…)


パカッ


麻子「乱暴そうな奴だな。」


いたる所から見知らぬ顔が飛び出す。


杏子「?????????」

114: 2013/12/15(日) 11:04:45.68
マミ「あなたの協力が欲しかったけど
そのケガじゃ無理そうね。」


杏子「な!?おい何言ってんだ離せ!」


自分が縛られいることを思いだし、
杏子は暴れる。

マミは何も言わず、杏子の胸についた
ソウルジェムにグリーフシードを近づけ
浄化した。


マミ「キュゥべえ!」

115: 2013/12/15(日) 11:13:20.70
マミは濁りを吸収し切った
グリーフシードをキュゥべえに投げ渡す

それはキュゥべえの背中に吸い込まれた


沙織(へー、ホントにそうやって処理
するんだ。)


マミ「みなさん、佐倉さんのこと
お願いします。」


杏子「勝手に何決めてんだ、オイ!!」


マミ「そんなボロボロで戦える訳
ないじゃない。どうせ、また、
後先考えず突っ込んだんでしょう」


杏子「うるさい!あれは私の獲物だ!」


マミ「魔女とは私が戦います。でも、
傷を直して加勢してくれたら
手に入れたグリーフシードは全部
あげる。
それでどう?」

116: 2013/12/15(日) 11:37:40.17
しばし杏子は黙る。

やがて、その顔に不満の色がありありと
浮かんだ。


杏子「……変わってねえ、
その勝手な所といい、
馬鹿みてえに自分を犠牲にする
所といい…」


マミは何も答えず、杏子を縛ったまま
砲塔の中へ押し込んだ。


杏子「おい、やめろ!私はそれでいい
なんて言ってないぞ!!」


マミ《そのリボンには治癒魔法が付加
されているから、早い治るわ。》


杏子「はなせはなせはなせーーー!!」


杏子の怒声も虚しく、マミは戦地へ
飛び立った。


117: 2013/12/15(日) 11:42:32.34
押し込められた杏子を、
あんこうチームが取り囲む。


みほ「佐倉さん。どうか落ち着いて。」


杏子「うるせえ!何なんだあんたら!」


華「私たちは巴さんに助けられた者です
色々無理を言って、一緒に来させて
もらいました。」


杏子(あのヤロー…)


沙織「ねえ、ちょっと聞きたいことが
あるんだけど。」

118: 2013/12/15(日) 11:47:57.73
杏子「……何だよ」


沙織「マミちゃんから聞いたよ。
あんた、一番弟子だったんでしょ」


杏子「何が言いてえんだ、本題をいえよ」


沙織「あんたと会う前、そして別れた後
マミちゃんはホントにずっと
一人で戦ってきたの?」


杏子「そうだよ、たまに他の奴と協力
してたみてーだけど、大抵
裏切られてたね。」

119: 2013/12/15(日) 12:28:38.26
沙織(・・・・・・)


杏子「これもマミから聞いたか?
魔法少女は孤独なんだ。」


沙織(・・・・・・)


杏子「魔女を退治しても、誰も褒めたり
してくれない。なのに、
マミは人の為に魔法少女をしてる
馬鹿な奴さ。」


沙織「そんなことない!」


沙織は通信器に手をかけ電波をだした。

120: 2013/12/15(日) 12:37:03.55


マミ(大物ね……。)


魔女要塞を臨む丘に、マミは降り立った


突然、通信が入る。咽頭マイクをつけた
ままだった。


沙織『あー、マミちゃん聞こえる?』


マミ『武部さん?どうされたんです?
まさか、佐倉さんが…』


沙織『そうじゃないの、ちょっと
言い忘れたことがあってね。』


マイクから息を吸う音がした。

121: 2013/12/15(日) 12:42:45.12
沙織『いってらっしゃい!
早く帰ってきてね!』


マミ「っ!」


久しく聞いていない言葉だった。

何と返せばいいか、一瞬、思い出せない



沙織『おーい、どうしたのー?
マミちゃーん?』


やっと思い出した時、胸の底が熱くなる


マミ「いえ…いってきます!」

122: 2013/12/15(日) 12:47:05.63
マミは再び魔女要塞と向き合う。

周囲に数門の大砲を出現させ、
狙いを定める。


マミ(絶対にみんなを助ける!だって…)


砲火が輝き、轟音が轟く


マミ(私は、もう一人じゃない!)

123: 2013/12/15(日) 12:55:18.94
その頃、戦車の中では


麻子「粋なことするな、沙織は。」


華「とっても、カッコ良かったです!」


沙織「そーお?まあ、お姉ちゃんなら
言うべきかなーって思ってさ。」


展開された人情話しに三人は盛り上がる


杏子「……」


みほ《佐倉さん…お話、いいかな?》


124: 2013/12/15(日) 13:06:38.91
杏子《テレパシー…》


みほ《あなたは、巴さんがずっと一人で
戦ってきたと言ったけど、
佐倉さんも?》

杏子《……そうだよ、》


みほ《さみしくなかった?》


杏子《…………》


みほ《ごめんなさい、変なこと聞いて。
佐倉さん、怒りつつも何だか、
巴さんを気にかけている
みたいだったから。》


みほはそういうと、再び外へ身を出した

125: 2013/12/15(日) 13:12:48.71
砲塔の中杏子は縛られ転がっている。


杏子(どうしてこうなった?)


戦車道、大洗女子学園、あんこうチーム


みんなの説明を受けたが、頭に入らない


QB《混乱しているようだね、杏子。》


杏子《キュゥべえか…》


QB《僕としてはそうしてくれれば助かる
これから仕事があるんだ。》


杏子《ーーー!!》


QB《西住みほ、彼女の素質は素晴らしい》

126: 2013/12/15(日) 13:23:10.24
ドーン!! ドドーン !! ドーン!!!


双眼鏡の向こうで砲火が飛び交っている

ズドオォォォォォン!!!

マミの攻撃により、巨大な魔女要塞が
その身を震わせ


ズガン!ズガン!ズガン!ズガァァン!


負けじと魔女要塞も撃ち返し、
マミの周りに大きな穴を作っていく。
戦車など一発で粉々になる威力だ


マミは軽々と避け、反撃する。



みほ(これが、魔法少女の戦い…)


司令塔から顔を出しみほは観戦していた


そして、その横にキュゥべえがいる。





127: 2013/12/15(日) 13:26:34.95
QB《驚いているのかい?みほ》


みほ《うん、巴さんってとっても
強いんだね。》


QB《確かにマミは強い。でも、今回は
少々、分が悪そうだ。》


みほ《えっ…》

128: 2013/12/15(日) 13:34:47.53
QB《マミは先程、杏子のソウルジェムを
手持ちのグリーフシードで浄化した
実は、それが最後の一つだったんだ。》


みほ《つまり、どういうこと?》


QB《あの魔女を倒すまで、マミは
浄化ができなくなるということさ、
その前に濁りが溜まると、彼女は
氏んでしまう。》





129: 2013/12/15(日) 13:39:38.48
みほ《なら、その前に倒せば…》


QB《理想としてはね。しかし、今回の
魔女はかなり強力だ、マミは
ベテランだけど、一人では心もとない》


みほ《じゃあ…》


QB《そう、君が契約して加勢すれば
勝利の確率は跳ね上がる。》

130: 2013/12/15(日) 13:47:17.67
みほは自分にも何かできないかと
悩んでいた。


しかし、目の前の戦場は、その思いが
身のほどに合わぬものであると
彼女に思いしらせた。


みほ(何かできるとすれば、契約を…)


そうすれば、みんな助かる。


また、助けられてばかりも嫌だ。


ドガァァァァァァァン!!!


みほ「!?」


131: 2013/12/15(日) 13:52:41.42
マミのいた所に砲弾が直撃した。


沙織『マミちゃん大丈夫!?』


マミ『かすった…だけです!』


『ズガガガガガガガガ!!!!!』


マミ『くぅ!!』


沙織『マミちゃん!』


マミが押されている?


みほ(やっぱり、私が…!)



杏子《聞こえるかー?センパイ》

132: 2013/12/15(日) 13:58:55.82
みほ《うえっ!?》


杏子《キュゥべえにえらく気にいられ
てんじゃん。すごい素質だってな》


みほ《うん、だから契約を…》


杏子《慌てんな、マミはあんなやつに
負けやしない。それに、あんたが
行っても足手まといだ。》


みほ《・・・・・・》


杏子《先輩として言っとくぞ、誰かの為
魔法少女になんかなるな。》

133: 2013/12/15(日) 14:04:24.81
みほ《何故そんなこと、私に?》


杏子《ただの気まぐれさ、魔法少女自体
いいもんじゃない。私を見りゃ
わかんだろ。》


ボロボロになった杏子を思い出し
みほの決心しかけた心が揺れる。


杏子《それに、これ以上魔法少女が
増えても困る。グリーフシードの
取り分が減るしよ。》

134: 2013/12/15(日) 14:10:42.26
みほが思いを巡らす中キュゥべえが
つぶやく。


QB《困っているね。みほ。杏子の差し金かい?》


みほ《…………》


QB《まあ、無理にとは言わないけどね
おすすめできないのも事実だ》


みほ《え?》


杏子《んなっ!?》



135: 2013/12/15(日) 14:16:07.23
杏子《キュゥべえ…おまえ…?》


QB《あれ?僕はあたり前のことを言った
だけだよね?》


杏子は驚いた。

キュゥべえは一度見つけた標的には、
しつこく、しつこく、つきまとう。


こんなことをいうタマではない。


杏子(なに企んでいやがる。…)

136: 2013/12/15(日) 14:21:55.04
ズドオォォォォォン!!!


いきなりの轟音に、みほは我に帰った。

見ると、魔女要塞の中腹が大きく
吹き飛んでいる。


沙織「やったよみぽりん!マミちゃんが
やった!」


華「よくわかりませんが、もう少しです!」


車内は一気に盛り上がる。


ドシュッ!ドシュッ!ドシュッ!


優花里「西住殿!何か飛んできます!」

137: 2013/12/15(日) 14:28:29.58
要塞から撃ち出れたそれは弧を描き
戦車の周りに着弾した。


みほ(あれは…。)


見ると、それは円筒型の物体だった。

やがて、縦に一筋線が入り


みほ(まさか…)


ぱかり、と左右に割れた。

その中から使い魔の群れが飛び出した。


みほ「麻子さん、出して!」

138: 2013/12/15(日) 14:32:10.65
魔女をあと一歩まで追い詰めたマミだが

咽頭マイクからの悲鳴にあんこうチームの
ほうを振り返る。

マミ「みんな!」


その目に映ったのは使い魔の大群に
囲まれた戦車だった。

139: 2013/12/15(日) 14:38:53.68
マミ『みんな!大丈夫ですか!?』


マミから通信が入る


みほ『こちら、あんこうチーム。現在
敵に包囲されています!』


優花里「装填よし!」


華「えい!」


ズガァァァン!!!


戦車砲が群れの一角を吹き飛ばす。

しかし、使い魔の勢いは止まらない。


バキバキバキバキ…


群がる使い魔を履帯で踏み潰すも
一匹潰せば十匹が群がってくる。



140: 2013/12/15(日) 14:44:53.12
華「このっ!!」


砲塔を左右に振り回し、車体に取り付く
使い魔を幾らか叩き落とすも効果は無い


みほ(どうする?このままじゃ…)


一瞬、契約の二文字が頭に浮かぶ。


みほ(く……)


杏子《助けてやろうか?》

141: 2013/12/15(日) 14:53:16.57
みほ《え?》


杏子《このリボン解いてくれたら、
助けてやるってんだ。》

麻子《ちょっと信じられないな。》

麻子が即座に反論する。


杏子《マミが、加勢したら、とった
グリーフシード全部くれるって
言ったんだ。あんたら助けるのも
加勢のうちだ。》


みほ《本当に?あなたが逃げ無いという
保証は?》


杏子《私が逃げるにしても、使い魔を
吹っ飛ばさなきゃならない。
そしたら、あんたらはその後を
ついてくればいいだろ。》


みほは聞き終えると、無言で
杏子の拘束をはずしにかかった。

142: 2013/12/15(日) 14:58:43.49
ズドドドドドオォォォォォ!!!!!!


地中から現れた複数の巨大な多節槍が
空を切り

戦車に取り付いていたもののみならず
周囲にいた使い魔も吹き飛ばす。


攻撃が収まると、戦車の上に
杏子が仁王立ちでたっていた。


杏子「いまの私はムシャクシャしてんだ
…覚悟しな。

143: 2013/12/15(日) 15:07:41.85
多節槍が宙を舞い、並みいる使い魔を
屠っていく。


杏子「オラオラオラオラオラァ!!!」


みほ「いける!全速前進!!!」


命令と共に戦車が速度を上げる。


使い魔を吹き飛ばしながら進む
戦車の姿は壮観である。


マミ《佐倉さんあなた…》


杏子《魔女に集中しろマミ!》


144: 2013/12/15(日) 15:11:41.41
麻子「で、どこ行くんだ?」


みほ「とりあえず、この場を離脱します
方角を見失なわないで!」


麻子「わかっ・・・。」


優花里「うわっ!?」


沙織「ひゃあ!?」


華「これは?」


突然の異変が戦車を襲った。

145: 2013/12/15(日) 15:21:03.46
いきなり車体が持ち上がり、
前進が止まったのだ。


みほ「何が!?」


杏子《使い魔だ!使い魔に持ち上げられてる!》


麻子「履帯がカラ回りしてる。上手に
持ち上げられたな。」


優花里「佐倉さん!排除願います!」


杏子《言われなくても・・・・って
うわあああああ!!??》


ズドオォォォォォォォォォン!!!!!

ズドドオォォォォォォォォォン!!!


持ち上げられた戦車に砲弾が降り注ぐ

最初みほたちを砲撃した大砲だ。


杏子(動きを止めて狙い撃ちってか!?)


杏子により砲弾は防がれるも

使い魔の排除ができない。

陥落は時間の問題だ。



146: 2013/12/15(日) 15:25:29.78
『たい・・・ちょ・・・』


沙織「?」


ズドオォォォォォン!!!


車体の下で何かが爆発し、戦車が着地する。


優花里「これは…?」

みほ「麻子さん、前進して!」

147: 2013/12/15(日) 15:28:28.75
続いて、戦車の周りで砲声が響いた。


状況を確認するため、みほは司令塔から
顔を出す。


その横を見慣れた影がすれちがった。


148: 2013/12/15(日) 15:34:47.73
『撃て撃て撃てぇーーー!!!!』


『隊長に指一本触れさせるなぁ!!』


『これでもくらえーーーーー!!!』


通信機から懐かしい声が聞こえてくる。


ズドオォォォォォン!!ズガァァァァァァァン!!ドガガガガガガ!!!!!!


追い迫る使い魔たちはたちまち引き裂かれていった。


みほ「みんな…みんなだ…。」

149: 2013/12/15(日) 15:36:18.41
第二部 完 です


ちょうど半分です


早くおわらせたいです

152: 2013/12/16(月) 09:14:07.55
杏「西住ちゃーん、だいじょーぶー?」


エルヴィン「隊長!ケガは無いかぁ!!
グデーリアンは!?」


優季「せんぱーい!」


ナカジマ「たいちょー、どっか壊れて
ないー?」


続々と通信がはいる。

間違えるはずの無い仲間たちの声だ。


みほ(これで…)


優花里「これで脱出できます!
我々だけでは無理でも、みんな
一緒なら!」


そうすれば、あの人は…






153: 2013/12/16(月) 09:19:47.65
ヒュルルルルルル………



みほ『ーーー!みんな!後退して!』


ズガァァァァァァァン!!!!!!


あや『ひゃあああああああ!?』


左衛門佐『何事だ!?』


みほ『大砲です!戦車が一発で破壊されるくらいの!』


ツチヤ『戦略的撤退!』



ズドオォォォォォン!!!



154: 2013/12/16(月) 09:25:25.18
見えない大砲からの砲撃に続き
魔女要塞も大砲を向ける。


マミ「よそ見しない!」


ドンッ!ドンドンッ!ドドンッ!


スキを見逃さず、マミは攻撃を加える。


マミ『西住さん、何が起こったんです!?』


みほ『みんなだよ、みんながきてくれた!』


マミ(みんなって…)

155: 2013/12/16(月) 09:30:07.47
マミは、みほたちがいるであろう
方角を見た。


戦車が五台走っている。


三号突撃砲 M3リー ヘッツァー

そして、ポルシェティーガー


いずれも、みほに教えてもらった戦車だ


しかし、


マミ(足りない?)

156: 2013/12/16(月) 09:35:30.42
ブシュウウウウウウウウ!!!!!!


マミ「なに!?」


魔女要塞の砲という砲から、白い煙が
吹き出した。


マミ(煙幕!?いけない!)


シュウウウウウウウ…………


その煙はすぐに、みほたちの所へ達した


あゆみ「なんだぁ!?」

157: 2013/12/16(月) 09:40:57.24
煙が立ち込める中、マミは敵の所在を
探る。


マミ(これは?)


みほ『巴さん、状況はわかりますか?』


マミ『……魔女と使い魔の反応が…
消えました。』


みほ『それって…?』


マミ『半径十キロ以内に敵はいません』


やがて、煙幕は晴れ、停止した戦車
たちが姿を現した。

158: 2013/12/16(月) 09:43:48.12
みほはハッチを開け、砲塔の上に立った


他の戦車も次々とハッチが開かれ、

懐かしい顔を覗かせる。


それらは地面に飛び降り、

我先に四号戦車へ駆け寄ってきた。

159: 2013/12/16(月) 09:49:11.82
あや「たいちょー!あいたかったですー!」


優季「怖かったー!無線もケータイも
つながらなかったー!!」


桂利奈「あいーーーーーーーー!!!」


あゆみ「ちょ、ちょっと落ち着いてぇ!」


紗希「・・・・・・・・・・・・・・」


みほに一年生チームこと
ウサギさんチームがとびつく。

160: 2013/12/16(月) 09:51:46.21
梓「隊長。」


そんな中、ウサギさんチームリーダー
澤梓がみほに声をかける。


みほ「澤さん、大変だったね。」


梓「…………」


何も答え無い。ただ静かに敬礼をした。

161: 2013/12/16(月) 09:58:36.03
エルヴィン「生きてたかぁ!グデーリアン!!」


優花里「エルヴィンさん、左衛門佐さん
カエサルさん、おりょうさん!」


おりょう「なんちゃあのうて、まっこと
えいがったぜよ。」


左衛門佐「見たところあんこうは全員
揃っているな。」


カエサル「本当に何もないか?
心配したんだぞ。」


杏「いやいや、おつかれさんだね~。」

162: 2013/12/16(月) 10:04:50.15
杏「いやいや、西住ちゃん、
大変だったね~。」


ひょっこり現れたのは、カメさんチーム
リーダーであり、生徒会長の、角谷杏。
そして副会長の小山柚子である。


杏「なにしても連絡つかないから、
心配したよ。」

163: 2013/12/16(月) 10:09:53.19
みほ「会長、一つ聞いていいですか?」


杏「んー?いいよー。」


みほ「河嶋先輩はどこに?それに何人か
足りないようなんですけど。」


柚子「実は桃ちゃん、この事態に気絶
しちゃって…」


杏「あと、アリクイさんチームに、カモ
さんチームに、アヒルさんね。
これ見てよ。」


杏はケータイを操作し、一通のメールを
見せた。

164: 2013/12/16(月) 10:14:41.08
みほ「これ…そど子さんからの?」


そど子こと、園みどり子
風紀委員である。同時に、


麻子「みせてください。」


麻子と奇妙な関係を維持している人である。

165: 2013/12/16(月) 10:30:01.57
それは、試合中にアリクイさんチームの
三式中戦車、
アヒルさんチームの89式
中戦車、
さらにカモさんチームの
ルノーB1bisが相手チームに
撃破されたことを知らせる内容だった。


杏「どうしても連絡つかないから、私に
メールで伝言頼んだんだ。
風紀委員は真面目だねぇ。」


柚子「だから、今この変なところにいる
のは、私たちで全部です。」


麻子「確かにそど子のアドレスだ。」


みほ「………」




166: 2013/12/16(月) 10:33:43.05
腑に落ちないところはあったが
筋は通っている。

何より信じたかったのでそうすることに
した。


杏「それよりさー」


杏はこちらを見つめる、奇妙な服装の
少女たちを横目で見た。


杏「なんか面白そうなことやってんじゃん」


そういいつつ、杏は芋をくわえた。

168: 2013/12/16(月) 10:57:32.18
荒野のただ中に数台の戦車が停まり

その中の一つ四号戦車の前に人だかりが
できている。


みほ「…以上がこの結界と魔女、そして
魔法少女についてです。」


QB「きゅっぷい」


マミとキュゥべえの助力を得つつ、
みほは今の状況を説明した。


予想通り、皆一様に困惑の色をありありと浮かべ、

ある者は顔を見合わせあい、ある者は
先々の不安に身をすくませ、

またある者は芋をほおばり…


杏「あ、食べる?」


杏子「くれ」


みほ「んな!?」

169: 2013/12/16(月) 11:06:11.46
ホシノ「会長は相変わらずか?」


スズキ「どこでも、芋があればいいもんな」


ツチヤ「肝っ玉でかいよねー、後は
ちっちゃいけど。」


杏「聞こえてんぞー、あんたらもたべな」


自動車部ことレオポンさんチームの
茶々に、杏が間抜けた声で答えると。
全員の空気が少し和んだ。


その後、芋の袋が全員に回された。


170: 2013/12/16(月) 11:12:21.75
杏「ほら、あんたも。」


マミ「あ、ありがとうございます。」


杏「んでさ、西住ちゃん、これから
どうすんの?」


みほ「いま、優花里さんと沙織さんに
偵察を頼んでいます。まずは、
情報を集めないと。」


噂をすれば影。その二人が帰ってきた。


沙織「みぽりん、いってきたよー!」


優花里「報告します!敵部隊、
現地点より5キロ四方に展開!」


みほ「!!」

171: 2013/12/16(月) 11:19:41.11
優花里は声が大きすぎたと気づくも
遅かった。

再び動揺が広まる。


桂利奈「私たち、食べられちゃう?」


あや「いやだよそんなの!隊長ぉ!」


優季「これからどうなるの?あゆみちゃん。」


あゆみ「わ、私に言われても…。」




172: 2013/12/16(月) 11:24:28.67
最初、バラバラに結界に囚われ、

使い魔に追い回されているうちに
みんな合流したと杏は話した。

やっと振り切った矢先、みほたちを
見つけたという。


再び恐怖が蘇り、ウサギさんチームが
顕著である。

173: 2013/12/16(月) 11:26:51.17
みほ「え…と、みんな?その、」


梓「みんな!落ち着いて!!!」


恐怖が沸点に至る直前、梓の一喝で
その場は収まる。


梓「隊長、指示をお願いします。」

174: 2013/12/16(月) 11:30:46.98
優花里の説明、再度の偵察により、


幾つかの敵部隊は、間隔をあけて
完全に戦車隊を包囲していることが
わかった。


しかし、攻撃のそぶりは、全く見せない


ナカジマ「何で襲ってこないかね?」


カエサル「こちらが恐怖に震えるのを
笑っているのか?」


様々な意見が飛び交った。

175: 2013/12/16(月) 11:37:08.67
杏「ねー、巴ちゃんだっけ?ちょっといい?」


マミ「何でしょうか、角谷さん。」


杏「魔女とか使い魔ってさ、お腹とか
空くの?」


マミ「人を食べたりしますけど、基本、
何も食べなくても……まさか。」


杏「じゃー、あれだね、兵糧攻めじゃ
ないの?」


みほはハッとした。

包囲戦において、最小の犠牲で最大の
戦果を成すには一番の方法だ。


相手はいくらでも待てるのだから。

176: 2013/12/16(月) 11:44:29.59
左衛門佐「まるで、備中高松攻めか、
小田原攻めのようだ。」


おりょう「いや、ここは会津若松ぜよ」


エルヴィン「スターリングラード…
は、言い過ぎか。」


マミ「??????」


カエサル「巴さん、これが普通だから
気にするな。して、隊長、
これからどうする?」


それは、みんなの疑問であり、みほは、
返答に困る。」




QB「私見だけど、このままじゃ状況は
変わらない。むしろ、悪くなるね」


代わりにキュゥべえが、いつか聞いた
言葉を口にした。


177: 2013/12/16(月) 11:51:29.91
杏子(こいつ…)


QB「僕が見えるということは、みんな
魔法少女の素質があるということ。
誰か一人でも、契約すれば、全員
助かる。」

マミ「キュゥべえ!!」


QB「でも、さっきみほが言った通り、
代償は大きい。それに、
君たちは契約無しでも、この状況を
打開できる力を持っている。」


梓「つまり、こちらから打って出ると?」


QB「その通りさ。」


全員の脳裏に、戦車で進軍する己の姿が
浮かぶ。




178: 2013/12/16(月) 11:59:48.35
みほ「……優花里さん、食糧は持って
どのくらい?」


優花里「会長の干し芋と私の戦闘糧食が
全部食べられるとして、
二日ほどでしょうか。」


みほは、しばし視線を落とし、やがて、
顔を上げた。


みほ「各車車長は集まってください。
残りの人は戦車の点検を。
それと巴さん、」


マミ「はい。」


みほ「会議で意見してください。」

179: 2013/12/16(月) 12:03:44.12
ナカジマ「んじゃ、あんたたち、整備
よろしく。」


ホシノ「ボルト締め直すぐらいしか
できないんじゃ?」


スズキ「溶接ごてあったよね、他に色々
できるよ。」


ツチヤ「燃えるねぇ♪」

180: 2013/12/16(月) 12:09:42.00
優季「梓ちゃん…。」


梓「しっかり!こういう時は気持ちが
大事だよ!」


あゆみ「だ、だよね!前向きにいこう!」


桂利奈「怖がらされた分お返しだ!」


あや「食われてたまるかってんだあ!」


紗希「・・・・・・・」


一同にわかに活気づいた。

181: 2013/12/16(月) 12:16:05.12
全員、自分なりの仕事を見つけ、
務めをはたす中、

佐倉杏子は、ある人物をつけていた。


副会長 小山柚子である。


車長会議に出る角谷杏と別れた後、
カメさんチーム車 ヘッツァーに戻る
ところだ。


杏子(キュゥべえもあいつも、なに隠して
やがる。)


それに柚子が言った言葉も気になる。

182: 2013/12/16(月) 12:19:13.42
杏子(モモ……)


かつて、自分の祈りのせいで氏に別れた
妹の顔が浮かぶ。


杏子(違う…それが気になる訳じゃ…)


麻子「なにこそこそしてる?」


杏子「うおっ!?」

183: 2013/12/16(月) 12:25:31.08
突然、後ろから声をかけられ
杏子は情けない声を出した。

その口を麻子が抑える。


杏子「なにしてんだ、びっくりすんだろ」


麻子「小山先輩に聞きたいことがある。
お前はどうしてだ?」


杏子「……………」


麻子「言いたくなければいい。」

184: 2013/12/16(月) 12:31:29.91
ヘッツァーは他の戦車とは、やや離れた
場所に停められていた。

周囲の丘がうまく隠している。


杏子「私はわかるけど、なんでアンタも
こそこそしてんだよ。」


麻子「今、先輩は一人で警戒している。
河嶋先輩のいるヘッツァーに戻り、
安心したスキをつくんだ。
その方が聞きやすい。」


杏子「聞くって何を。」


麻子「全体の士気、特に西住さんに
関わることだ。」


杏子(西住さんねェ…)

185: 2013/12/16(月) 12:49:16.00
麻子「どうした?」


杏子「その西住って人、えらく仲間に
親しまれてんじゃん。あと、
キュゥべえにも。」


麻子「あいつは余計だ。西住さんも誰も
契約なんかさせない。
あんな運命背負わせられるか。」


杏子「マミに聞いたよ、あんたも昔、
キュゥべえにあったんだろ。」


麻子「ああ、両親が交通事故で氏んだ
直後にな。」

186: 2013/12/16(月) 12:56:32.06
杏子「あっさり言うな、あんた…。
てか、あんたもかよ。」


麻子「巴さんもそうらしいな。一緒に
事故にあったかどうかの違いだ。」


杏子(そうじゃねぇよ。)



麻子は話し終え、前をみる

そこには、柚子がこちらをみて立っていた。

187: 2013/12/16(月) 13:01:28.15
柚子「冷泉さんに…佐倉さん?何か
ご用?」


麻子「ふにょ!?」


杏子(あっ、バレた。)


少々声が大きかったようで、尾行が
バレてしまった。

今度は麻子が情けない声を出す。


杏子《あんた、カワイイ声出すのな。》


麻子「小山先輩、聞きたいことがある」


杏子のテレパシーを無視するも、
その顔は赤かった。

188: 2013/12/16(月) 13:10:10.66
柚子「見当たらない人たちのこと?それなら…」


麻子「あのアドレスはそど子のものじゃ無かった。
何か訳があるとふんで話を合わせただけです。」


柚子「………」


麻子「それに、真面目なあいつが、
連絡をメールで頼むとは考えにくい。」


麻子に問い詰められた柚子は黙ってしまう


杏「あはは、やっぱ無理があったか。」


後ろからの声に振り返ると杏が立っていた。




189: 2013/12/16(月) 13:12:48.82
柚子「会長…会議は?」


杏「芋が切れたから抜けてきた。
話したげようよ、その代わり
絶対、秘密ね。」

190: 2013/12/16(月) 13:23:20.13
杏の話によると、

最初、結界に入ったとき
カメさんチームだけだったそうだ。

そして、周囲を確認するため一際高い
丘へ登った。


柚子「その時見たの、すごく遠かったけ ど、
今いない人の戦車が使い魔に追いかけられてるところ。」


杏「あっという間に消えちゃってさ、
こっちにも追手がきたから、逃げて
そのままそれっきり。」


杏は自嘲的に口元を歪ませる。


麻子「つまり、安否はわからない、と?」

191: 2013/12/16(月) 13:30:34.30
柚子「大丈夫…絶対、氏んでなんか…」


杏「小山、どーどー。」


一瞬、感情を噴き出す柚子を、杏がいさ める。


杏子「このこと知ってんのはあんたたち
だけか?なんで言わねえんだ。」


杏「佐倉ちゃんだっけ?もちろん
知ってるのは私たちだけ、
教えないのは士気の低下を防ぐため。
そして…」


杏「佐倉ちゃんは西住ちゃんに会うのは
初めてだから…
そうだね、イチから説明するよ。」


192: 2013/12/16(月) 13:37:37.58
西住みほ

彼女は元々、大洗の人間ではない。

かつて熊本県は黒森峰女学院に在校し、

戦車道流派「西住流」を伝える西住家の次女であった。

そして、姉の西住まほ率いる戦車隊の
副隊長を務めていた。

193: 2013/12/16(月) 13:42:51.07
柚子「黒森峰は全国大会を連覇するような
強豪校であと少しで十連覇ってとこまで
きていたの。」


杏「ある大会の決勝で、味方戦車が川に
落ちちゃってね。助けようとしたら
そこを攻撃されて連覇ならず。
責任感じてトラウマもらったわけ」

194: 2013/12/16(月) 13:53:34.04
杏子(それなりの過去持ってんだな。)


杏「なのに、傷心気味ところ強引に
戦車道を履修させたのが私たちでさ
酷なことしたなーって思ってる訳よ」


麻子「そのことなら、西住さんは克服した。」


杏「だからだよ、本当のこと知ったら、
西住ちゃん心配するでしょ?
下手したら、またトラウマもらい
かねない。
そんなのいやなんだ。」


麻子「……………」



195: 2013/12/16(月) 14:01:11.60
杏子「………いつかバレるぞ、それ。」


杏「バレたときは、甘んじて罰を受けるよ。
それに、少なくとも今、私たちが話さない限り
西住ちゃんは悩まない。」


柚子「私たち生徒会は、西住さんだけ
心配する訳にもいかないの、
最低限、今いる人たちだけでも
無事に帰さなければいけない。」


杏「私たちの力じゃ出来無いけど、
西住ちゃんにはその力がある。
心配事かかえて全力出せなくなっても
困るんだ。」

196: 2013/12/16(月) 14:04:41.56
杏子「勝手だな、あんたたちも。」


二人とも何も答えなかった。




桃「う、うう~~~~~~」


柚子「あ、桃ちゃん気がついた。」


杏子(こいつが…モモ?)

197: 2013/12/16(月) 14:07:28.70
麻子「すっかり忘れてたな、この状況で
気絶してたんだっけ。」


杏「あー、それはホントね。」


柚子「桃ちゃん、大丈夫?」


桃「桃ちゃんいうな!って誰だあんた。」


杏子「………………」

198: 2013/12/16(月) 14:11:05.15
桃「それより会長、ここはどこなんです?」


杏「あ~、それはだね~。」


杏子「………………」


杏子はじっと、桃の顔を見ている。


桃「な……なに?」


杏子「どんな奴か思ったら…がっかりだな。」


桃「はあ!?」

199: 2013/12/16(月) 14:17:36.11
納得いかない桃の罵声を背に浴びつつ

二人は帰路についた。


麻子「結局、お前は何しにいったんだ?」


杏子「身内にモモって奴がいた。同じ
名前だから、気になっただけだ。」


麻子「……………」


杏子「なぁ、こっちからもいいか?」


麻子「うん?」


杏子「何で親を生き返らせられたのに、
そうしなかったんだよ。
マミみたいに自分が氏にかけてた
わけじゃなかったんだろ?」

200: 2013/12/16(月) 14:29:49.69
麻子「・・・腹が立ったんだ。」


杏子「ハラが?」


麻子「あいつは、キュゥべえは、こっちが
気にしたくないことをを、
延々とほじくり返して契約を迫ってきた。
だから、どうしようもなく腹が立って
断ったまでだ。」


杏子「マミと似たようで違うな。後悔とかねぇの?」


麻子「無いといえば嘘になる。
巴さんは、自分一人助かることを
願って、それを後悔してると言った。
私も自分の都合で契約しなかったから
似たようなもんだ。」



杏子「………………それで、いいんだよ。」


201: 2013/12/16(月) 14:35:29.93
麻子「何?」


杏子「何かを願うのも願わないのも、
自分のためにすべきなんだ。
他人のためになんかしても裏切られ るだけだ…」


麻子「昔、何かあったか?」


杏子「別に、」


杏子は懐から菓子を取り出し、
口にくわえた。



杏子(どいつもこいつも、昔の私みてぇに
人のためって……………。
ほっとけなくなるじゃねえか。)

202: 2013/12/16(月) 14:45:25.60
ある丘のふもと、戦車に囲まれた平地に
戦車長会議の席はあった。


ナカジマ「あれ?会長は?」


梓「芋が切れたから一抜けだそうです。」


マミ「………………」


マミは会議から離れ、意見がまとまるのを
待っていた。


マミ(こんな会議…)


結論がどうなろうとマミの答えは既に
出ていた。



エルヴィン「巴さん、だったか?」


不意に横にいたエルヴィンにマミは声を
かけられた。

203: 2013/12/16(月) 14:51:12.69
エルヴィン「お礼がまだだったな、
隊長を守ってくれてありがとう。」


マミ「あたり前のことをしたまでです。
…松本さん、でしたっけ?」


エルヴィン「エルヴィンでいい、みんな
そう呼んでいる。」


マミ「じゃあ、エルヴィンさん?」


エルヴィン「ん?」


マミ「会議には参加しないんですか?
さっきから黙ってて。」


エルヴィン「私は隊長の命令に従うだけさ
信じているからな。」

204: 2013/12/16(月) 14:57:16.85
マミ(そうなんだ……)


エルヴィン「一つ聞いていいか?
あの魔女はなぜ逃げたり
したのか。」


マミ「あいつは相当の戦上手です。
みなさんという未知の勢力を警戒
したんでしょう。」


エルヴィン「勢子やら伏兵やらも使うらしいな、
侮れない相手だ。」




みほ「巴さん?いいかな。」

205: 2013/12/16(月) 15:00:54.26
気がつくと、議論が終わり、
みんながマミを見ている。


マミ「意見は、まとまりましたか?」


みほ「その前に、巴さんに質問したいの。
いいかな。」


マミ「…………」


みほ「あの魔女に勝てる?」

206: 2013/12/16(月) 15:06:22.34
マミ「……負けることは、ありません。」


ナカジマ「ホントにホント?濁りとか
大丈夫?」


マミ「………………」



梓「決まり、ですね。」


マミ「え?」


梓「私たちが巴さんと共に敵陣を突破し
脱出するということです。」


マミ「そんな!みなさんに苦労かける
わけには…」


ナカジマ「それはコッチのセリフ。」

207: 2013/12/16(月) 15:10:06.13
マミ「いえ、こうなった以上は全員
私が守りながら脱出させます!
戦車を捨ててください、
こっそりといったほうがいいです。」


エルヴィン「そういうわけにはいかないな。」


みほ「キュゥべえから聞いたよ。もう、
グリーフシード無いんでしょ。」


マミ「それは…」

208: 2013/12/16(月) 15:15:07.03
梓「出しゃばりがすぎるかもしれない。
でも、年下のあなただけ苦労かける
わけにはいかないの。
私たちも出来ることがしたい。」


梓がまくし立てる。彼女が主戦派の筆頭
らしい。


みほ「巴さんの方法だと何日かかるか
わからないし、第一巴さんが
まいってしまう。だから、
おねがいします。」

209: 2013/12/16(月) 15:19:24.58
マミは無言で賛成の意を表した。

車長たちはそれを見ると、腰を浮かす。


みほ(早く脱出しないと…私の指揮に
かかってるんだ…。)



行方不明の仲間も気がかりだが、
それを知るすべはない。

杏の話を信じるしかなかった。



みほ(もしものときは、私が…)

210: 2013/12/16(月) 15:29:15.93
会議はお開きとなり、会議をしていた
場所には、マミが残っている。


エルヴィン「あんまり一人で背負い
こむなよ。」


エルヴィンがマミの肩を叩き、励ます。


マミ「エルヴィンさん、私…」


エルヴィン「しっかり働いてもらうぞ、
歩兵の支援がない戦車は
めっぽう弱いからな。」


マミ「そうなんですか?」


エルヴィン「今回の戦法は電撃戦、どんな戦法でもそうだが
事前の偵察がカギを握る。
そこで相談なんだが…」


マミ「?」

211: 2013/12/16(月) 15:38:32.67
麻子と杏子がみんなの元にもどると
何やら大掛かりなことになっていた。

バチバチバチバチバチバチッッッ!!!


戦車のあちこちで溶接の火花が散る。

二人があっけに取られていると
麻子のこめかみに銃が突きつけられる。


エルヴィン「Griff auf!!!」


麻子「エルヴィンさん、何やってんだ?
それにこれは?」


エルヴィンは奇妙な銃を持っている。

212: 2013/12/16(月) 15:47:28.54
エルヴィン「今、巴さんと偵察から帰ってきた所だ。
武器にと飾りのMG34を巴さんに術を
施してもらい、強化したんだ。」


カエサル「私の愛槍もしてもらったぞ。」


左衛門佐「弓道部の腕を見せる時がきた!」


おりょう「今宵の陸奥守吉行は血に餓えちょるぜよ。」


みな、飾りやお守りとして持っていた
ものを強化してもらったという。

歴女たちは誇らしげにそれぞれの得物を
掲げて見せた。



みほ「麻子さんどこ行ってたの?
心配したよ。」

213: 2013/12/16(月) 15:54:21.60
麻子「ちょっとトイレにな。それより、
何でこんなことに?」

みほ「これから打って出るって決まって
予定が立ったからみんな張り切ってるの。」


エルヴィン「隊長も隊長だ。いいというのに
一緒に偵察に行くときかなかった。」


左衛門佐「大将はどっしりしてればいい」


みほは苦笑し、杏子の方を見た。


みほ「佐倉さん、ちょっと話したいことがあるの。
いいかな。」


杏子「いいけど…」

214: 2013/12/16(月) 16:01:43.85
優花里(西住殿?)


空薬莢を捨てる作業をしていた優花里は
みほが杏子を連れ、どこかにいくのを
見つけた。

優花里(…………)



沙織「あれ?ゆかりん空薬莢持って
どこいくの?」


優花里「え……と、お手洗いに…」


沙織「え"っまさかその中にすんの!?」


優花里「い、いってきます!」


華「お気をつけて。」

215: 2013/12/16(月) 16:02:41.40
一旦休みます

216: 2013/12/16(月) 22:01:09.58
杏子はみほについていき、少し離れた
所に至る。

そこにはマミがいた。


みほ「お待たせ、巴さん。」


杏子「マミ……」


マミはいつになく神妙な面持ちで、
静かに口を開いた。


マミ「あんこうチームのみんなを助けて
ありがとう佐倉さん。でも…」

217: 2013/12/16(月) 22:10:22.03
マミより先に杏子は察した。


杏子「これ以上。、協力する義理はないってか?」


マミ「ええ、成り行き上、協力を求めた
けど、そもそも、あなたにとって
大洗の人たちを助けることで、
利益はないわけだし…」


みほ「会議の結果、打って出ると決まり
ました。だから、魔女が私たちに
気を取られているスキに脱出して
ください。」


杏子「…………」


マミ「何にもお礼はでき無いけど、
せめて…」


杏子「うぜえ。」

218: 2013/12/16(月) 22:20:05.31
マミ「え?」


杏子「うぜえっつってんだ。みんなして
勝手なこと言いやがって、
気遣ってるつもりか?」


みほ「でも…」


杏子「申し合わせたみてえに他人のため
他人のため。 西住とか言ったかアンタ
キュゥべえから聞いたけど、大層な
素質持ってんだってね。」


みほ「そうみたいです。いざという時は
私が契約します。」

マミ「………………」

219: 2013/12/16(月) 22:26:12.20
杏子「その様子じゃ、マミも承知済みか」


マミは、無言で肯定する。


杏子「アンタさ、契約してみんな助けて
魔法少女になって。それから
どうする気だ?」


みほ「それは…後から…」


杏子「魔法少女は一生の仕事なんだ。
行き当たりばったりで決める
もんじゃない。
ましてや、人助けのためなんか
論外だ。裏切られるのがオチさ。」


220: 2013/12/16(月) 22:30:13.57
杏子は口をしかめ、横目でみほを見る。


杏子「私は人の為に何かすんのとか
キライだ。それにな…」


突然、杏子は口をもごもごしだした。」


杏子「約束忘れる奴もキライだ…
一緒にいく。」


マミ「はい?」

221: 2013/12/16(月) 22:39:29.22
杏子「約束だよ約束。言ったろ?
加勢したらグリーフシード全部
くれるって。」


マミ「ああ、あれならもう…」


杏子「無しにされてたまるか。あんな
大物見逃せねえ。それに一人じゃ
ヤバかったろ。」


マミ「協力してくれるの?昔みたいに?」


杏子「アンタが私にだ…勘違いすんな。
一人より二人のほうが勝率は上がる
私はそっちをとったまでだ…。」


飄々とした態度はなりを潜め、杏子の
口調はしどろもどろになる。

その様子を見てマミは微笑んだ。





222: 2013/12/16(月) 22:46:47.49
みほ《いったいどうしたの?佐倉さん》


マミ《私は納得しました。素直じゃない
けど、根はいい子なんです。》


杏子「まあ、そういうわけだ。あんたが
契約しなくても事足りるって
ことだよ。」


気持ちを落ち着かせた杏子が言った。


杏子「それと、さっきから心配してる
奴がいるみたいだぜ。」



優花里「!」

223: 2013/12/16(月) 22:51:30.25
物陰から優花里が姿を現した。


みほ「優花里さん?」


優花里「契約、してしまうんですか?」


みほ「それは…」


優花里「そんなのイヤです。」


みほ「ぇ?」


優花里「西住殿が遠くに行ってしまう
なんてイヤです。」


みほ「…………」

224: 2013/12/16(月) 23:03:46.82
優花里「西住殿が魔法少女のことを知ってから、
いつ契約するか気が気ではありませんでした。」


口調に嗚咽が混じる。


優花里「巴さんを快く思わなかったのも
西住殿を遠くに連れて行って
しまいそうな気がしたからです。」


マミ「……」


みほ「優花里さん…」


優花里「自己犠牲は美徳です。しかし、
今はそれをしないでください!
勝手な言い分かもしれません!
でも、契約したら西住殿は…」


優花里は深々と頭をさげ、懇願した。

足元には涙の後が幾つかできた。


優花里「西住殿は私の憧れです…
ずっと一緒に…戦車道をしたい…」

225: 2013/12/16(月) 23:12:53.84
杏子「泣かせるねえ。で、どうすんだ
隊長さんよ。」


すっかり本調子を取り戻した杏子が
みほに問う。


みほ「ごめんね、優花里さん。心配させて。」


優花里「いえ!そんな…」


みほ「自分の力をだし切らないで、
願いを叶えるようなんて、そもそも
間違ってる。」


優花里「それじゃあ…」


みほ「契約はしないよ。一緒に頑張ろう
優花里さん。」

226: 2013/12/16(月) 23:18:04.55
マミ(いいなあ…)向かい合う二人の戦友
同士を見て、マミは思った。

自然と隣にいる元仲間に目がいく。


杏子「何だよ。」


マミ「ううん、別に。」


杏子「どーせ、仲間っていいなとか、
そんなだろ。」

マミ(うぐっ!)


みほ「…ねえ巴さん、私たち仲間に
なれないかな。」



227: 2013/12/16(月) 23:28:03.89
マミ「いえ、そんな、私なんて…
そもそも、あの時あんこうチーム
だけでも脱出させられていたら
こんな事態には…」


みほ「そうしなかったから、私たちは
みんなに会えたんだよ。それに、
私、巴さんに謝らなきゃならない
ことがあるの。」


マミ「私に謝ることなんか…」


みほ「私ね、最初から巴さんのこと
信用してたわけじゃないんだ。」


マミ「!?」


みほ「魔女と必氏に戦っている姿を見る まで、
本当に正義のため戦っているんだなって
確信できなかったの。
だから、ごめんなさい。」

228: 2013/12/16(月) 23:29:31.86
マミ「いえ、そんな、私なんて…
そもそも、あの時あんこうチーム
だけでも脱出させられていたら
こんな事態には…」


みほ「そうしなかったから、私たちは
みんなに会えたんだよ。それに、
私、巴さんに謝らなきゃならない
ことがあるの。」


マミ「私に謝ることなんか…」


みほ「私ね、最初から巴さんのこと
信用してたわけじゃないんだ。」


マミ「え…?」


みほ「魔女と必氏に戦っている姿を見る まで、
本当に正義のため戦っているんだなって
確信できなかったの。
だから、ごめんなさい。」

229: 2013/12/16(月) 23:39:06.22
みほは頭をさげ、非礼をわびた。


みほ「こんな私が仲間になろうなんて言う
資格ないかもだけど、巴さん…」


マミ「そっか、そうだったんだ。」


みほ「…」


マミ「大洗のみなさんが西住さんに
会えた時、あんなに喜んだ理由が
わかった気がします。
西住さんなら、誰でもついて
いきますよ。」


みほ「え?そんなこと、」


慌てるみほの前でマミは握手を求めた。


杏子「……」


マミ「ほら、あなたも!」


杏子「お、おう。よろしく…」


四人は固い握手をしあった。


230: 2013/12/16(月) 23:43:24.50
第三部 完です


次の第四部で終了です


ちょっと書いて、今日は終わります。

231: 2013/12/16(月) 23:48:41.42
薄暗い空にエンジン音が響く。

四号戦車がその身を震わすと、
僚車もそれに続き、黒い煙を吐き出す。


みほ『巴さん、状況は?』


マミ『敵部隊、依然と変化ありません、
前進してください。』


みほ『では・・・・』


息を整える、みほは叫んだ。


みほ「パンツァー・フォー!」

232: 2013/12/16(月) 23:56:50.38
土煙を身にまとい、次々と戦車が
出撃して行く。


四号戦車を頂点とした、クサビ型陣形をとり、
左斜め下にヘッツァー、右斜め下に
三号突撃砲、M3、ポルシェティーガーと続く。


みほ『河嶋先輩、もう気分は大丈夫ですか?』


桃『西住か、もう平気だ。しかしな、』


みほ『しかし?』


桃『なぜこいつがヘッツァーに乗ってい る?』


杏子『こっちのセリフだっつーの』


ヘッツァーの上に乗っている杏子が
横から入る。


233: 2013/12/17(火) 00:04:30.95
ヘッツァーは厳密には戦車ではない。

車体と砲塔が一体となった
自走対戦車砲である。

しかも、設計の都合で主砲は右よりに
配置されている。


みほ『だから、右側の視界がとり辛いの
右の守りは、私たちが固めるから 佐倉さんは索敵と防御をお願いします。」


直接、車体を向けねば照準を合わせられ
ない、カメさんチームに対する
みほの采配である。


234: 2013/12/17(火) 00:14:56.77
マミは一足早く偵察にでていた。

後方からエンジン音が聞こえ、

振り返ると、そこに友軍の姿を見止めた


機会を見計らい、近づいてきたM3に
飛び乗る。


M3もまた変わった戦車で、ヘッツァー
同様、車体と主砲が一体となっている。

しかし、上部に360度回る副砲が
ついている。


梓『巴さん、乗り心地は?』


マミ『快適です、それに遠くまで見渡せます。』


ナカジマ『急ごしらえで取っ手つけたけど、
あくまで気休めだからねー。』


兵士が戦車に背負われ、共に突撃する

これを、タンクデサントという。

235: 2013/12/17(火) 00:20:28.22
みほ『みなさん、こんなことになって
まだ、混乱しているとおもいます。』


全車に対し通信が飛ぶ。


みほ『でも、今は気を引き締めてください。
これは、戦車道の試合ではありません。
下手をうてば…』


言葉が続かなかった。むごい現実だった。


沙織(みぽりん…)


修羅の戦場に放り出された戦友の運命は
みほの判断一つで、いかようにも変わる。

236: 2013/12/17(火) 00:24:20.32
梓『隊長、隊長が動揺すれば、全体が
乱れますよ。』


みほ『澤さん…』


エルヴィン『今更何を言う、今は
至る所を制すのみだ。』


ナカジマ『そうそう、気張らない気張らない。』


杏『リラックスしなー。芋でもくうかい?』


みほ(みんな…)

237: 2013/12/17(火) 00:31:49.56
華「一本取られましたね、みほさん。」


沙織「頑張ろうよ、みぽりん!」


麻子「しっかりしろ。西住さんのことなら、
何でも聞く。」


優花里「西住殿!一緒に頑張るとの約束です!」


みほ「・・・・・・・・」


みほは、無言で皆の優しさを噛み締めた。




豪裂の音土を呑み エンジンの調べたからかに

恐れを知らぬ鋼鉄のけだものは

敢然と、その歩みを進める。

238: 2013/12/17(火) 00:45:26.16
地平線の彼方、いつか見た使い魔の
群れが現れる。

マミの報告によると、左右800m
前後50mにおよぶ陣地である。


M3に跨り、マジカル☆マスケットを
握るマミは、自然とその手に力を込める。


みほ「華さん、敵との距離は?」


華「大きさから察するに3000mです。」


みほ(まだだ…)


華「距離、2400m!」


沙織「みぽりん…」


みほ(まだ…)

239: 2013/12/17(火) 00:50:56.04
さらに戦車隊は近付く。


華「距離、1000!」


みほ「みんな、今です!!」


時は来た。


号令一下、戦車隊はよく訓練された
踊り子たちのような正確さで向きを変え

敵陣左翼端へ殺到する

砲塔は砲塔で左翼端にピタリと照準を合わせ、

別名を待つ。


みほ「撃て!」

240: 2013/12/17(火) 00:58:35.10
ドンッ!!ドドンッ!!

ズガァァァァン!!!!!!

回転砲塔を持つ 四号 M3
ポルシェティーガーが弾丸を吐き出し、
敵陣を吹き飛ばす。


中央、及び右翼端の使い魔たちは
あわてて向きを変えるも


みほ『巴さん!!』


マミ「ティロ・ボレー!!!!」


ズダダダダダダダダーーーン!!!!!


右側を向いた使い魔たちの横っ腹に
遅れて移動させて来た
マジカル☆マスケットが宙を舞い、
銃撃を浴びせる。

241: 2013/12/17(火) 01:02:24.98
桃「フハハハハハハハ!!!!!
敵陣突破成功ぉ!!!!
圧倒的ではないかぁ!!!!!」


杏「かーしまー、おちつけー。」


杏子《そーだぞ、モモちゃん。》


桃「モモちゃんいうな!!」


みほ『気を抜かないで!敵もすぐ反撃
してきます!!』

242: 2013/12/17(火) 01:08:52.30
ヒュルルルル・・・・・・

ヒュルルルルルルルル・・・・・


みほ「この音…!」


忌まわしき大砲の音。

魔女要塞以外で唯一戦車に抗える存在である。



ズドォォォォォォォォォン!!!!!!


ズズンッ!!!ズガァァァァン!!!!


いつかの衝撃が戦車を揺らす。


あや「いくら何でも早すぎでしょうがー!」


優季「きゃああああああーーーー!!」


あゆみ「どこだぁ!ぶっとばしてやる!」


桂利奈「でてこーい!!!!!」

243: 2013/12/17(火) 01:14:14.53
マミ『西住さん!前方に大砲陣地の反応
左右二つあり!このままだと
十字砲火を受けます!!」


みほ『みんな!これから巴さんと佐倉さんの
支援を受けつつ、左の大砲陣地に
突撃します!』


エルヴィン『我らの出番か!』


カエサル『突撃砲の真髄、見せてくれる!』


桃『わ、私たちも忘れるな!』

244: 2013/12/17(火) 01:19:35.92
マミのリボンが巨大な傘を作り
砲弾を防ぐ


みほ『巴さん、大砲陣地はどこ!?』


マミ『あそこ!正面の丘の向こうです!」


麻子『あれか』


一つの丘に戦車隊は狙いをつけ突進する


しかし、



ボンッ!!!!


みほ「なっ!?」




245: 2013/12/17(火) 01:24:00.74
ヘッツァーの履帯が爆発音と共に
吹き飛んだ。


桃「何だ!?どうしたぁ!!??」


杏「んー?地雷かねー?」


柚子「西住さん!状況を!」


みほ『おちついて!履帯が千切れただけです!
全車停止!!地雷原です!」



246: 2013/12/17(火) 01:28:39.27
ズガァァァァン!!!!
ドガァァァァァァァン!!!!!

目の前の丘の頂上に無数の砲弾が
撃ち込まれる。

ズガァァァァン!!!!!!

一歩たりとも通すまいという勢いだ。


近すぎて狙いが定まらず、こちらに
当たることはないが、
少しも動けない。

247: 2013/12/17(火) 01:38:28.96
みほ(どうすれば…)

マミ『まかせてください!佐倉さん!』


杏子「あいよ、オラァ!!!」


杏子は槍を多節槍へと変化させ、
前方の地面を掘り起こし、
埋められていた地雷を宙に舞い上げる。


杏子「いまだ!マミ!!」


マミの周りに無数の銃が現れ、一斉に
発射される。


ズダダダダダーーーーーーーン!!!


放たれた弾丸は正確に舞い上がった
地雷を撃ち抜き破壊した。


エルヴィン「仕上げだ!巴さんに続け!」


ドンッ!!ドドンッ!!ドォン!!!


地雷の破壊により生じた煙幕を隠れ蓑に

三号突撃砲の砲弾が大砲陣地を破壊した。



248: 2013/12/17(火) 01:44:03.81
手柄を奪われたカメさんチームだが
それどころではなかった。


桃「履帯が壊れたあああああーーー!!!
もうダメだぁぁぁぁぁーーー!!!」


杏「治してらんないし、タンクデサントでもする?」


マミ『それには及びません!』


マミはリボンを出すとヘッツァーの
転輪に巻きつけ履帯の代わりとした。


杏「こやまー、いける?」


柚子「いけます!ありがとう巴さん!」


桃「あうぅ…ううぅ~…」


杏子(ホントなんなんだこいつ…)

249: 2013/12/17(火) 01:50:14.72
ズガァァァァン!!!!!!


もう一つの大砲陣地より、砲弾が撃ち込 まれる。


みほ『レオポンさん!ウサギさん!
砲撃用意!!』


ホシノ『了解!!!』


あや『クロスファイア返しぃぃぃ!!!』


四号の75? ポルシェティーガーの
88? M3の37?副砲


狙いをつけた、その勇姿は


みほ『撃て!』


ズドォォォォォン!!!!ズドン!!!
ズガァァァァン!!!!!!

一斉に火を吹き、陣地を粉砕した。

250: 2013/12/17(火) 01:55:25.06
後顧の憂いを絶ち、さらに進軍は続く。

小隊規模の使い魔たちが何度か肉迫してくるも、
マミの銃撃と杏子の多節槍が難なく
撃退する。


彼女たちの通った跡は履帯の跡と
使い魔の肉片が残るのみ。



みほ(あれは!?)


もうすぐ出口というところで

巨大な影が姿を現した。

251: 2013/12/17(火) 02:00:12.46
みほ(魔女要塞…やはり出口付近にいた。)


向こうも気づき、無数の砲口を向ける。


桂利奈「きたきたきたぁぁぁ!!!」


ツチヤ「どーすんのこれ!?」


おりょう「我に一計あり、ぜよ。」


みほ『全車停止!!』



ズドドドドォォォォンッッッッ!!!!
ズガァァァァン!!!!!!ズガァァァァン!!!!!!ズガガガガガガ!!!
ズガァァァァン!!!!!!!!!!!

252: 2013/12/17(火) 02:04:24.80
魔女要塞から撃ち出された砲銃弾は

地面にいくつもの穴をあけ、
自身よりも高い砲煙を立ち上らせ、


マミ「ティロ・……」


そして、その砲煙の中から


何本もの巨砲が現れた。

253: 2013/12/17(火) 02:09:45.78
マミ「フィナアアアアァァァァァァァ レエエエエェェェェェェェ!!!!!!!!!」


パンツァー・ハイとなったマミは、
渾身の一発を放ち、


それは、魔女要塞の上半分を消しとばした。


マミ「イヤッホォォォォ……!あら、
いけない。」

254: 2013/12/17(火) 02:16:57.64
魔女要塞は氏んではいないものの
かなりの損害だ。

しばらく動けないだろう。


左衛門佐『このまま突っ込め!出口はどこだ!?」


梓『隊長!前方に何か見えます!』


確かに三キロほど離れた所に何かある。


マミ『結界の出口です!』


みほ『全車突撃!帰ろう、大洗へ!!』


我先に戦車が詰め寄る。


みほたちは安心し切っていた。


その時だった。



陣形右側の戦車、即ち


三号突撃砲 M3 ポルシェティーガー


三台の戦車が忽然と姿を消したのだ。



巴マミとともに。

256: 2013/12/17(火) 09:18:29.49
何が起きたのかわからなかった。

やがて、エルヴィンは乗っている
三号突撃砲がひっくり返っていることに
気付いた。


エルヴィン「おい、しっかりしろ!」


気絶していた仲間を起こしつつ、
戦車の外にでる。


カエサル「戻れたのか?」


エルヴィン「いや…違う。」


少し離れた所に、ポルシェティーガーが
同じくひっくり返っている。


そして、そこは異形の世界だった。



257: 2013/12/17(火) 09:24:05.32
マミ(いけない、いけない、いけない!)


巨大な柱が等間隔に並ぶ中を
マミは走っている。

マミ(はぐれてしまうなんて、早く合流
しないと!)


建物の中らしいが、奥が霞むほど広い。


マミ(まさか、結界の中に結界ができる
なんて…)


ふと、行方不明の大洗生徒を思い出した。


使い魔は、人を食べて魔女になる。

嫌な予感を振り払い、マミは先を急いだ。

258: 2013/12/17(火) 09:29:55.44
残りのM3は比較的無事だった。

しかし、他の仲間は見当たらない。

さらには、


梓「桂利奈ちゃん、動く!?」


桂利奈「ダメッ!全然!」


優季「通信もできないよ!」


紗希「……………」


あや「なんだよ…来るならこいよ!
化け物!」


あゆみ「かかってこい!相手になってやる!」


梓は状況を確認しようとハッチから
身を乗り出した。


それがいけなかった。


259: 2013/12/17(火) 09:35:50.33
初めに気付いたのは、大野あやだった。

横にいた梓が、フッと消えたのだ。


あや「あ、梓ちゃん?」


あゆみ「あ……あああ……。」


山郷あゆみが、車体の前に何かいるのに
気づく。


紗希「………!」



それは、手足が長く、大きな目と口を
した猿のような怪物、もとい魔女だった。

そして、そいつの口からは人間の足が
飛び出ていた。


優季「梓…ちゃん?」

260: 2013/12/17(火) 09:39:03.66
梓「ーーーーーー!ーーーーーー!」


澤梓は頭からくわえられ、右へ左へ
振り回されている。


全員、どうすることも出来なかった。


ただ、固まっていた。


しかし、絶望だけでは無かった。




ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!



どこからか、銃声が響く。

261: 2013/12/17(火) 09:46:13.46
エルヴィン「うおおおおおお!!!!!」


ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!


エルヴィンの放つMG34が魔女の腹に
ことごとく命中する。

その衝撃で、魔女は梓を離した。


エルヴィン「カエサル!おりょう!
左衛門佐ぁ!!!!!」


かけ声とともに左衛門佐が弓を放ち
魔女の片目を潰す。

ひるんだスキにカエサルが槍を魔女の
腹に突き刺し

なおも梓につかみかかるその手を
おりょうの刀が一閃し切り落とす。

262: 2013/12/17(火) 09:50:12.88
ナカジマ「M3だ!無事だ!」


ホシノ「動く?」


スズキ「あれ?澤さん?」


自動車部の面々も駆けつけ、梓を見つけた。

その体は舐め回され、服は裂かれ、
ヨダレまみれである。


ツチヤ「ひどい…」


エルヴィン「籠城だ!M3に乗って、
隊長を待つんだ!」



263: 2013/12/17(火) 09:54:52.13
遠くから銃声が聴こえる。
エルヴィンの銃だ。


マミ(あそこに、!)


しかし、それは彼女たちが危険に
さらされている証拠でもあった。

マミ(急がないと……あれ?)


地響きを感じ、マミは立ち止まった。


キュラキュラキュラキュラキュラ……


マミ(キャタピラの音?西住さんたち?)


やがて、柱の陰から巨大なモノが現れた。

264: 2013/12/17(火) 10:01:29.88
ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!


エルヴィンは魔女を近づけさせまいと
銃を撃ちまくる。

しかし、魔女も素早い動きで弾丸を避け
じりじりと距離を詰めていく。


ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!


ウサギさんチームは変わり果てた梓の
姿を見て絶句し、
次は自分かと恐怖にふるえている。


エルヴィンがちらっとその様子を見て瞬間、
魔女が戦車に掴みかかった。


エルヴィン「しまっ・・・」



ズガーーーーーン!!!!!


265: 2013/12/17(火) 10:06:53.53
何かが横から飛来し魔女を弾き飛ばす。

砲声がした方向をみると、
鉄の塊がエンジン音と砲煙を上げていた。


カエサル「89式…アヒルさんチーム?」


マミ『みなさん大丈夫ですか!?』


典子『おーい、助けにきたぞー!!』


アヒルさんチーム、89式中戦車である。

そして、その上にマミが乗っている。


266: 2013/12/17(火) 10:12:14.21
89式はM3と未だ横たわる魔女の間に
割り込んだ。


妙子『みんなー!久しぶりー!』


おりょう『生きちょったか、おんしら!」


マミ『さっきそこで出会ったんです!
無事で良かった!』


エルヴィン『巴さん、後ろ!』


魔女が息を吹き返し、起き上がる。


典子「佐々木ぃ!」


あけび「はいっ!キャプテン!」

267: 2013/12/17(火) 10:17:39.60
油断なく魔女に砲塔を向けていた89式は
徹甲弾を叩き込む。


ズガーーーーーン!!!!!


魔女はたまらず退却を始めた。


典子「逃がすな!追え!」


忍「了解!」


典子「巴さん、あれが魔女って奴か?」


マミ「そうです!」


典子「他にも色々聞きたいけど後だ!
今は、あいつを倒す!」


「「「「それそれそれーーー!!」」」

268: 2013/12/17(火) 10:25:07.00
遁走する魔女をマミと89式が追いかける

やがて、それらは見えなくなった。


エルヴィン「巴さんも89式もきた、
これで一息つける。」


カエサル「隊長も喜ぶぞ、いい土産と
共に帰れる。」


左衛門佐「勝利をそえてな!そうだろ、
おりょう。」


おりょうは何も答えず、黙って左衛門佐に
寄りかかった。


左衛門佐「おりょう?」


その胸からは、彼女の愛刀が生えていた。



梓「・・・・・・・・・」


ウサギさんチームも嫌に静かだった。

269: 2013/12/17(火) 10:33:27.69
一つ心配事が消えると、また一つ
心配事ができる。


マミ(いそげ!いそげ!いそげ!)


今度は結界の外のみほたちが気になる。

ソウルジェムの濁りは、その気持ちに
反応してか、無視できないほどになっている。


忍「アターーーーーック!!!!!」


89式は柱の一つに魔女を押し付け、
動きを封じる。


典子「佐々木!巴さん!今だ!」


マミ「ッ!!」


ドンッ!ドドンッ!


ズガーーーーーン!!!!!


89式とマミの攻撃により、
魔女はこと切れた。

270: 2013/12/17(火) 10:37:38.87
マミは焦っていた。

魔女を倒した。早く合流せねばの思いだけだった。

だからこそM3に帰った時、
嫌にひっそりしていても、

魔女を倒したのに結界が消滅しなくても
変に思わなかった。


砲塔からは梓が顔を出している。

271: 2013/12/17(火) 10:42:21.29
マミは、M3に駆け寄った。


マミ「澤さん!魔女を倒しました!
もう安心です!」


梓「・・・・・・・・」


マミ「澤さん…?」


梓は微笑みを崩さず、黙っている。

マミは、その首筋に何かを見つけた。


マミ「澤さん!」


梓「うわああああああ!!!!!!!」


ズガガガガガガッッッッッッ!!!!!

272: 2013/12/17(火) 10:47:42.57
エルヴィンの銃で、マミは梓に撃たれ
倒れ伏た。


マミ(魔女の…口づけ…?)


迂闊だった。油断していた。安心し切っていた。


マミ(魔女は…倒した…のに、結界も…)


暗くなっていく視界の先で、梓が
89式の中にMG34を突っ込み、
撃ちまくっている。


マミ(なん…で…)


マミの視界は闇に覆われた。

273: 2013/12/17(火) 10:51:48.98
梓「あはは…あんなのイヤ…氏ぬより…
イヤ…」


体じゅうまさぐられ、もてあそばれ、辱められ、


梓「だから…その前に氏んだほうが…
いいよね?」


梓は喉元に銃口を当て引き金を引き、

仲間の亡骸に囲まれ、絶命した。

274: 2013/12/17(火) 10:57:04.00
QB『マミ、君はまだ氏んでいない、目を
覚ますんだ。』


暗闇の中、キュゥべえの声がする。

目を開けると傷は完全に塞がっていた。


QB「無意識のうちに治癒魔法を使ったんだ。
大したものだよ君は。」


マミ「私…どうしたの?氏んだんじゃ…」


マミの目が倒れている梓を捉える。


マミ「澤さん…みんな…!」

275: 2013/12/17(火) 11:03:39.81
マミは梓の体を揺さぶる。


QB「ムダだよ、君も分かっているだろう?
彼女たちは…」


マミ「うぅ…うううううぅぅ…」


守れなかった後悔と絶望がマミの心を
満たしていく。

ソウルジェムの濁りが限界寸前だ


QB「そろそろだね。でも、まだダメだ。」


マミ「何の…こと?」


QB「君はもうじき魔女になるということさ。
それをもう少し待って欲しい。」



276: 2013/12/17(火) 11:10:19.59
マミ「変な冗談はやめて!どういうこと?
だって、魔女は使い魔が人を食らって
成長したものでしょう!?」


QB「その他に魔法少女由来の魔女も
いるということさ。
まず、ソウルジェムについて説明するよ。
それは、君たちの魂を物質化したものだ。」


マミ「え…」


QB「つまり、ソウルジェムが君の本体で
その体はソウルジェムによって
操られている氏体ということだよ。」


マミ「なな…な…」


277: 2013/12/17(火) 11:18:18.61
QB「ソウルジェムが壊れない限り、
氏ぬような傷を負っても平気だ、
今の君がそうだろう?」


マミ………百歩譲ってそうだとしましょう。
ねえ…魔女になるなんて嘘でしょう?
だって、あなた言ったじゃない!」


QB「人としての氏、魔法少女としての氏
そして、魔女としての始まりという訳だよ。
ソウルジェムに濁りが溜まり切ると
魔女になる。だからこそ、魔女を倒しても、
魔女の口づけの効果が続いたり、この
結界が維持されたりしている。
君がそうしているんだ。」

278: 2013/12/17(火) 11:22:07.84
マミ「私が…魔女になりかけているから?」


QB「その通りさ。」


マミ「ならなくちゃいけないの?」


QB「それが、君たちの運命だ。」


マミ「それなら!」


マミは、濁り切ったソウルジェムを出し
同じく召還した拳銃を向けた。

279: 2013/12/17(火) 11:28:37.31
QB「自害するつもりかい?」


マミ「ええ、ソウルジェムを壊せば
いいのでしょう?」


QB「そうだけど、君が魔女になる瞬間を
みほに見てもらわないと困るんだ。」



マミ「え!?」



杏子「マミィィィィィ!!!!!!」


杏子のかけ声と同時に赤い鎖がマミを拘束する。


杏子「キュゥべえが、マミが自頃しようと
してるっていうから急いでみたら…
何やってんだ!!」

280: 2013/12/17(火) 11:39:32.26
マミのそばに四号戦車とヘッツァーが
停まる。


みほ「巴さん!何があったの!?」


沙織「はやまらないでマミちゃん!」


華「氏んで花実は咲きません!巴さん!」


必氏にマミを止めようと、仲間たちが
叫ぶ。

その横で、優花里が梓の氏体を見つけた。


優花里「澤さん!そんな…なんで!?」


麻子「何がどうなってる…?」


あまりの惨状に、全員言葉を失う。


杏子「マミ!なんか言え!何があった!?」


マミ「ちがう…ちがうの…」






ソウルジェムの濁りが限界を超えた。



281: 2013/12/17(火) 11:52:07.63
マミ「イヤァァァァダァァァァァ!!!!!!!!!」


マミの絶叫が響き渡り、同時に起こった
凄まじい風に、
全員たまらず目を閉じ、収まりを待つ。


風が止み、目を開けると


杏子「なんだ…これ…」



様々な色が混じった絨毯。
山と積まれたプレゼントの箱。

それらに囲まれた大きな机には茶会の
準備ができており、その席には


みほ「みん…な?」


すでにこと切れたマミと、
あんこう、カメさん以外の仲間全員が
座っていた。

282: 2013/12/17(火) 12:01:15.04
ウサギさん カバさん アヒルさん アリクイさん レオポンさん カモさん

ぴくりともうごかない。

麻子「そど子!」


駆け寄ろうとした麻子を杏子が止める。


麻子「はなせ…」


杏子「何考えてんだ!あいつらどうみてももう…」


麻子「………」


柚子「ねえ、あれなんだろう?」


柚子が上を指さした。


283: 2013/12/17(火) 12:46:50.21
キャンデロロ「~♪」


天井近くを小さな黄色いものが飛んでいる。


杏子「あれは?」


QB「かつて巴マミだったものだよ、
立派な魔女になったようだね。」


沙織「そんな、ウソでしょ!ねえ!」


QB「ウソじゃないよ、魔法少女は魔女に
なる運命なんだ。」


華「・・・!!!」


QB「君たち人間は、実際にその目で
見ないと信じないから苦労したよ。」



284: 2013/12/17(火) 12:54:19.37
桃「うわあぁぁ!!なんだこれぇ!!」


桃の悲鳴に、あんこうチームは
ヘッツァーのほうを見た。


柚子「いやっ!やめて!」


杏「この!はなせ!こらあ!」


黄色いリボンが生徒会の三人と
ヘッツァーの車体を、包み込んでいく。

履帯の代わりとしていたリボンが
増殖しているのだ。


みほ「会長!」


やがて、全身が包まれると
魔女キャンデロロがヘッツァーの中に
入り、エンジンがかかる。




285: 2013/12/17(火) 13:06:37.96
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー


茶会場を出ると、長い廊下になっていた。

一直線にどこまでも続いている。

そこを四号戦車は逃げ回っている。


ズガァァァァァァァン!!!!


ヘッツァーの砲撃を受けながら。


286: 2013/12/17(火) 13:14:48.20
ズガァァァァン!!ズガァァァァン!!


逃げる四号をキャンデロロ・ヘッツァーが
追いかける。


QB「すばらしい魔女だね。かなりの
エネルギーを回収できた。」


杏子「うるさい!おい、マミ!しっかり
しろ!」


沙織「マミちゃん!正気に戻って!」



華(こんな…こんなものに私は…なろうと?)

287: 2013/12/17(火) 13:22:49.86
戦車道で使われる戦車の内壁は
カーボン加工により、安全性が保たれている。

しかし、追うヘッツァーの砲撃は、
魔女により何倍にも強化されており。

ズガァァァァァァァン!!!!

一発でも致命傷となる。


杏子「このぉ!!」

杏子は多節槍を展開し、放たれる砲弾を
はじく。


廊下の幅はいつかの土手と同じく
車幅二台分

高い垂直な壁に挟まれ、回り込めない。

288: 2013/12/17(火) 13:28:21.50
沙織「マミちゃん!会長!もうやめてぇ!!」


QB『ムダだよ、彼女たちは完全に
魔女に取り込まれた。』


杏子「魔女じゃねぇ!マミだ!」


沙織「キュゥべえ!元に戻せるんでしょ!?
キュゥべえ!」


QB『できないよ。
そんなの不可能に決まってるじゃないか。』

289: 2013/12/17(火) 13:36:02.07
杏子「マミは知ってたのかよこのこと!」


QB『知らなかったよ。教えたところで
証拠がなければ信じなかったろうし
知られてさっきみたいに自害
されそうになっても困るしね。』


杏子「ってことは、私…」


QB『君がマミを止めてくれたおかげで
マミは無事、魔女となり、僕らは
エネルギーを回収できた。』


沙織「そんな言い方ないじゃない!
佐倉ちゃんはマミちゃんを思って…
ていうか、エネルギー回収とか
なんなの!?」

290: 2013/12/17(火) 13:48:32.14
全員の脳内にキュゥべえの声が響く。


QB『僕たちが契約を迫るのはね、
この宇宙を維持するためなんだよ。」


杏子(…………)


QB『この宇宙に存在するエネルギーは、
形を変えるごとにロスが生じ、 全体的に目減りしていく一方なんだ。』


みほ(…………)


QB『魔法少女がソウルジェムに濁りを
溜め切って魔女になる時、熱力学の
法則を無視して莫大なエネルギーが
生まれる。』


沙織(…………)


QB『僕らはそれを回収してこの宇宙を
維持しているんだ。』


華(…………)

291: 2013/12/17(火) 13:53:21.25
QB『ごく少ない犠牲だけで、この宇宙は
維持され、より多くの生命を育む
ことになる。』


麻子(…………)


QB『この国では、自己犠牲が美徳とされて
いるから、理解できるだろう?
だから、みほ。僕と…』



優花里「うああああああああああっっ!!!!」


優花里の発した大声に驚き、杏子は
スキを作る。


何故か魔女は攻撃してこなかった。

292: 2013/12/17(火) 13:59:05.00
優花里「戦いましょう西住殿!
四号の主砲をもってすればヘッツァーなんて!」


杏子「おい、何言ってんだ!諦めんのかよ!」


沙織「そうだよ、ゆかりん!マミちゃん
だけじゃなく、会長たちも乗ってるんだよ!?」


優花里「いまは敵です!命を脅かす敵です!
生き残った者が生き残ろうとするのは、
義務であります!」


杏子「何だとテメェ!私とマミはなぁ!」


華(そうですよ…あんなの認めない!)

293: 2013/12/17(火) 14:03:29.98
鉄のきしむ音と共に砲塔が真後ろを向く


沙織「華!?」


華「戦いましょう。敵は攻撃をやめています。
チャンスです。」


沙織「敵ってそんな…麻子、何か行ってよ!」


麻子「隊長は西住さんだ。私が何言っても
無駄だ。」


優花里「西住殿!」


全員の視線がみほに集中する。

294: 2013/12/17(火) 14:09:53.04
みほ(…………………





杏子「おい、戦うとか言わねえよな?」


みほ(………どう言えばいいの?)


華「みほさん、このまま何もしないおつもりで?」


みほ(………どうすればいいの?)


沙織「何か言ってよみぽりん!」


みほ(………どう言えばいいの?)


麻子「どこにでも行ってやる。」


みほ(わからない、わからないよ…!)


優花里「ええい!装填よぉし!」


みほ「!」


優花里「五十鈴殿ぉ!!」

295: 2013/12/17(火) 14:13:51.14
華(認めない……あんなのが巴さんだなんて!)


華は主砲の引き金を引いた。



カチッ



華「?」



カチッ カチッ



華「不発…?」


優花里「そんな…」


みほ「ー!みんな逃げて!!不発弾が
爆発する!!!」

296: 2013/12/17(火) 14:15:52.20
ヘッツァーの主砲が火を吹いた


吐き出された砲弾は、今まさに
爆発しそうな四号戦車の砲塔を直撃し、


乗員ごと吹き飛ばした。

297: 2013/12/17(火) 14:22:28.61
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー

優花里「う……ん」


杏子「気が付いたか?」


気絶していた優花里は、杏子の作った
防御陣の中で目覚めた。


杏子「まだ動くな、ここは安全だから。」


優花里「みんな…は?」


杏子「………………あきらめな。」


優花里「そんな…いやだ…」


杏子「西住って奴に感謝すんだね。
そいつがあんたを庇ったから。
助かったんだ。」


QB「その通りさ。」

298: 2013/12/17(火) 14:35:10.34
杏子はキュゥべえを掴み上げた。


杏子「テメェ…どうして契約する前に
魔女になるって言わなかった?」


QB「聞かれなかったからさ。でも、
マミには言ったよ、証拠を揃えてね。
みほに魔女化の瞬間を見せたかったから
少し強引になったけど。」


杏子「一体何が目的何だ、西住みほに
目をつけときながら、全然勧誘しねえし
そんなの見せたりするし。」


QB「末路をしれば、普通は契約してくれない。
でも、みほは仲間のほとんどを失い、そして
その状況を逆転できる立場にある。」


杏子「何…言ってやがる。」

299: 2013/12/17(火) 14:47:32.86
QB「昔、よく使っていた手を用いたまでさ。
まあ、今時ここまで条件がそろうなんて
稀だけどね。」


優花里「…………」


QB「僕らが契約をもちかければ、仲間
思いのみほのことだ、その復活を、
ほぼ確実に願うだろう。
そうすれば、いずれ魔女になるかも
しれない事を知っているけど、
そうせざるを得ない。」


優花里「……………」


QB「そのおかげで、今、みほの魂は
絶望と無力感で満ちている。
僕らはそうなるまで勧誘を控えていたんだ。
その状態で契約すれば、すぐ濁り切った
ソウルジェムができる。」


杏子「まてよ、オイ。ソウルジェムと魂に
何の関係があるって言うんだ!」

300: 2013/12/17(火) 14:51:47.31
QB「君には言ってなかったね。
ソウルジェムは君たちの魂を物質化した物
その魂に絶望という濁りが溜まりきると
魔法少女は魔女になる。」


杏子「な………?」


杏子は言葉を失い、掴んでいたキュゥべえを離す。


QB「黙っていてくれると助かるよ。
やっと説明ができるじゃないか。」

301: 2013/12/17(火) 14:58:18.95
僕たちは、魔法少女が魔女になる時に発生する
エネルギーを回収している。


でも、確実に回収できるとは限らない。
魔女化前に戦氏してしまうことがあるからね。


こんな非効率的な方法では、安定して
エネルギーを回収できない。
そこで僕たちは考えたんだ。



ソウルジェムの元となる魂が、あらかじめ
絶望で満ちていれば、契約と同時に
魔女となり、

確実かつ迅速にエネルギーを回収できるんじゃないかとね。

302: 2013/12/17(火) 15:10:58.01
QB「契約の末路を知らせ、
呪いを振りまく存在になると知りつつも
契約せざるを得ない状況に追い込む。」


QB「絶望に満ちた魂に契約を迫る。
これが僕たちの考えた新しい方法だ。」


QB「結果は大成功だったよ。」


QB「昔はやりやすかった、相次ぐ戦争や
災害で、都合のいい条件が集まりやすかったからね。」


QB「絶望に身を浸しても叶えたい願いが
ごまんとあった。」


QB「でも、今ではこっちが非効率的な
ものになってしまった。
元々、兵器だった戦車を使うスポーツが
出来るくらい平和になったしね。」


QB「いくらかの演出と、なにより運が
必要なこの方法は、今ではほとんど
使われなくなくなった。」

303: 2013/12/17(火) 15:21:11.40
QB「でも、今回みほに出会って驚いた
この方法が使えそうな条件がそろって いたんだ。」


QB「彼女が結界に入った時点で仲間の
一部は、既に食べられていた。
絶望させるには丁度いい。」


QB「でも、出来れば残りの仲間を全滅
ぐらいしてほしかった。自分一人で 無力感と絶望を感じて欲しかったんだ。」


QB「苦労したのは、契約の末路をどう
知らせるかだった。
こればかりは直接見せたほうがいいからね。」


QB「それについてはマミが役だ…」


杏子「いうな!」


マミの名が出ると同時に、京子の槍が
キュゥべえを貫いた。


杏子(これで……)


QB「ムダだよ。」

304: 2013/12/17(火) 15:27:35.80
周囲からの視線に気付いた杏子は
周りを見渡した。


杏子「何だよ、これ…」


防御陣はたくさんのキュゥべえに囲まれていた。


QB「僕らは一つの意識を多数の個体で
共有している。
何体潰されても平気さ。」


杏子「…………クソっ」


QB「もういいかい?これからみほと
契約しなきゃいけないんだ。」


杏子「何言ってんだ、西住みほはもう…」


QB「彼女の命は僕ら維持している。
そして、僕らのテレパシーでだけ会話
できるようにしているんだ。」

305: 2013/12/17(火) 15:32:21.72
QB「これなら、君たちに邪魔されず
ゆっくり説得できる。
こんな手間暇かけてもいいくらい、
彼女の素質は素晴らしいんだ。」


杏子「やめろ!」


杏子は目の前のキュゥべえを潰した。


QB「ムダだと言っているのに…では。」



キュゥべえはみほにテレパシーを送った。




QB『みほ、聞こえるかい?』




306: 2013/12/17(火) 15:33:08.50
今日は一旦ここまでにします


明日全部書きます

310: 2013/12/18(水) 00:18:23.15
みほ『……………』


QB『みほ、君の仲間はほとんど全滅だ』


みほ『……………』


QB『でも、君が契約してくれれば、
こんな状況、簡単にひっくり返せる。』


みほ『……………』


QB『だから、僕と契約して、魔法少女に
なってよ!』


みほ『……………いらない。』


QB『!?』

311: 2013/12/18(水) 00:22:35.99
みほ『こんな私…いらない。みんなを
守れなかった私なんて…いらない。』


QB『みほ?』


みほ『魔女になりたくない…
みんな、生き帰って欲しい…』


QB『落ち着くんだ、みほ!』


みほ『ああ…そうだ…こうすれば…』


312: 2013/12/18(水) 00:25:52.68
廊下の彼方、魔女キャンデロロが
氏んだ仲間を取り込み去った方。


そこから、まばゆい光が溢れ、

杏子と優花里のいるところまで達した。


杏子(契約の光……やりやがった!)


優花里「…………」

313: 2013/12/18(水) 00:31:00.94
やがて、光がさす方から、杏子は
微かな魔女の反応を捉えた。


杏子(全部あいつの思い通りかよ…)


QB「やれやれ、まさか、あんなことを
願うなんてね、」


杏子「キュゥべえ!テメェ、何叶えたんだ!」






QB「…………この世界を、自分が最初から
存在しなかった世界にしてくれってさ。」



314: 2013/12/18(水) 00:44:49.31
杏子「何だと?」


QB「要は歴史を書き換えるんだ。
そうすれば、仲間全滅の結果は確かになくなる。
自分が存在しないのだから、魔女になる
こともないと考えたんだろうね。」


杏子「でも、反応が…」


QB「世界を変えようと、魔女化は避けられない
そんなうまい話あるわけないじゃないか。」


杏子「……あいつ、どうなるんだ?」


QB「まだ完全にではないけど、
じきに人の心を失い、改変された世界で
生き返った仲間すら食らって、
魔女として生きていくだろう。」


優花里「…………」


QB「途方もない願いだから、完成まで
もう少し時間がかかる。
記憶も消えるだろうから、このデータを
今後に活かせないのが残念だ。」


優花里「…………」


優花里は音もなく立ち上がり
おもむろに口を開いた。

315: 2013/12/18(水) 00:48:35.76
優花里「そうだよ…人間のままだと
いつか、氏に別れるんだよ…」


杏子「お、おい。あんた…」


優花里「今って、絶好の好機…ずっと一緒に…」


優花里は、キュゥべえの方を向いて言った。


優花里「キュゥべえ!私の願いを叶えろ!」

316: 2013/12/18(水) 00:53:27.16
杏子「なに言ってんだ!今の話聞いてたのか!?」


杏子を無視し、優花里は叫んだ。


優花里「西住殿が人の心を無くし、
災いをバラまくなら、無くさなければいい!」


QB「……………」


優花里「西住殿の心を消さないで!
魔女になっても、西住殿の心をそのままにして!」


QB「………それが、君の願いかい?」


優花里は、無言で大きく頷いた。

317: 2013/12/18(水) 00:57:30.85
ソウルジェムが形成された。



優花里の手に握られたそれは、
オリーブドラブ色に輝き、

魂が、喜びに満ちていることを表した。


そして、優花里は今だ輝く光のほうへ
歩き出した。


杏子「おい、どこ行くんだ。そっちは…」


またも、優花里は耳をかさない。

318: 2013/12/18(水) 01:01:34.08
優花里の目は光を失い、反面、
口元には笑みが浮かぶ。

そして、輝く光源のすぐ前で立ち止まった。


優花里「西住殿……ずっと一緒ですよ。」


そう言うと、優花里は光の中へ飛び込んだ。


魔女、いや、西住みほに自ら取り込まれたのだ。

319: 2013/12/18(水) 01:08:31.27
優花里が取り込まれてから、杏子は
ただ座ってうつむいている。


それはキュゥべえにとって、なんら
関心を寄せるものでなく。


頭にあるのは、どうにか記憶を改変後の
世界へ持ち込めないかということだった


QB(願いの完成まで、まだかかる。ここは
じっくりと……あれ?)




キュゥべえは異変に気付いた。

320: 2013/12/18(水) 01:21:19.86
杏子もそれに気づく。


杏子「なんだ…?、グリーフシードの反応?」


QB(それだけじゃない、魔女の反応もだ!
これは…)



ゴオオオオオオ!!!!!!


杏子「っ!!」


轟音と共に、黒い煙がいく筋も宙を蛇行し、
みほが契約した、光をはなつ所へむかう。


QB(あれは魔女?結界の外から来たのか!?)


より集まった煙は、完全に光を包み、
黒い魂を形作った。



321: 2013/12/18(水) 01:31:47.11
『キュゥべえ、いやインキュベーター、
聞こえる?』


QB『みほなのかい?これは一体…』


『あなた、相当恨まれているんだね。
あなたに報復する同氏を集めたら
こんなにたくさんになった。』


『みんな、微かに意識が残っている。
それに私は呼びかけたの。』


『体は無くなって、もう人としても、
魔法少女としても生きていけない。』


『でも、私たちはあなたを許さない。
エネルギー回収なんてさせない。』


『魔女になってなお、消えなかった
あなたへの恨み、思い知りなさい。』

322: 2013/12/18(水) 01:36:52.80
『一緒になった人たちが、
色々教えてくれる。力を貸してくれる。どんな相手にも負けないよ。』


QB『まさか…』


『そう、私たちは魔法少女を
魔女になる前に頃していくことにする。』


『そうすれば、あなたはエネルギー回収が
できなくなる。』


323: 2013/12/18(水) 01:40:46.12
杏子『ふざけんな!どうしちまったんだよ
アンタ!』


『佐倉さん、私たちを身勝手だと思う?』


『その通りだよ、でも、仕方ないことなの。』


『だって、私たち魔女だもん。』


杏子『させねえ!ここでブッ潰してやらぁ!』

324: 2013/12/18(水) 01:42:49.35
杏子は勇ましく槍を構えるも、足元が
フラつく。


地面が激しく揺れ出したのだ。


QB(地面だけじゃない、時間まで不安定に
なっていく!)

325: 2013/12/18(水) 01:55:25.95
『あなたの相手をする気はないの佐倉さん、
私たちの相手は歴史のあちこちにいるからね。』


QB『君は…時間を超えるつもりかい?
そんなことしたら、歴史がめちゃくちゃに…』


『そうはならないよ、私たちのすることは
みんな、必然なこと。
これから改変される世界はそういうものに
なるの。』


『それに、今の私たちは何でもできるの
そして、どんな手を使ってでも
目的を果たす!』


『あなたの思い通りになんかさせない!』


黒い球体にヒビが入り


中から異形の存在が産まれた。


『巴さんは連れていかないよ。
インキュベーターに恨みはないって。
改変された世界で生き返るから
佐倉さん、今度は仲良くしてね。』



326: 2013/12/18(水) 02:01:24.04
青と白のツートンカラードレスを
身にまとい。

巨大な歯車のような形をした駆動輪が
飛び出している。

小さな頭を下に駆動輪を上にした姿勢で
宙を舞うそれは、


杏子「魔女?いや違う、あれは…」


地震、もとい時震は、とうとう二人を
飲み込み、しかるべき場所へ運んだ。



『さあ、優花里さん、みんな、いこう。』

327: 2013/12/18(水) 02:09:28.57
その身にあわぬ願いを秘めて

そいつはみんなで旅だった

改変された歴史のなかで

永く伝えて残される

そいつはどこからやってきた?

そしてどこへと去っていく?

誰もご存知ありません

強大過ぎる御前では

神仏ですら一要素

下手な舞台を盛り立てる

そんな役しか務まらぬ

名無しのそれを呼ぶならば

この名前こそふさわしい

世界のすべてはこれ戯曲

『舞台装置の魔女』と呼ぼう

328: 2013/12/18(水) 02:14:13.89
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー


ポンポンと肩を叩かれ、麻子は我に帰った。

目の前に誰か立っている。


「四号の操縦はあなたが?」


思い出せない、だれだこいつは?


沙織「ほら、麻子しっかり、決勝で戦った
黒森峰の西住まほさんだよ。」


麻子「ああ…」

329: 2013/12/18(水) 02:24:42.21
まほ「素晴らしい足さばきだった、完敗だよ。」


思い出した

私たちは戦車道全国大会で優勝したんだった。

学園艦の存続をかけて、ド素人の集まりが
やってのけたのだ。


杏「武部ちゃーん、冷泉ちゃーん
そろそろ帰るぞー。」


華「今日は車長が自慢のあんこう鍋を
振舞ってくれるそうですよー!」


桃「お"お"ーい"、早く"こ"ーい"」


柚子「泣きすぎだよ桃ちゃん!」


桃「桃ちゃんいうな!
マネージャーの分際でぇ!」


まほ「あの人たちが車長と装填手と砲手か
呼んでるぞ、早く行ったほうがいい。」



330: 2013/12/18(水) 02:28:00.06
沙織「はーい!いま行きまーす!」


沙織が駆け足でむかった先で
大洗の仲間たちが手を振っている。


まほ「ほら、あなたも。」


麻子「…なあ、西住さんて」


まほ「ん?」


麻子「妹とかいないか?」

331: 2013/12/18(水) 02:31:51.38
まほ「いや、私は一人っ子だが…まあ
同い年だが妹がわりならいる。
副隊長の逸見エリカという奴だ。」


麻子「そうですか。」


まほ「なぜ、そんなことを?」


麻子「いえ、別に。変なこと聞いて
ごめんなさい。」

332: 2013/12/18(水) 02:35:04.65
麻子はまほに謝ると、沙織のあとを
追いかけた。


何かが引っかかる。


誰かが足りない気がする。


でも、今は素直に喜ぼう。


麻子はそう思うことにした。




~♪



沙織「あっカレからメールだ♪」



おわり

333: 2013/12/18(水) 02:40:23.66
『これが、私が人間であることをやめ
永遠に戦い続ける存在になったお話です。』


『これまでに何人もの魔法少女を倒し
取り込んできました。』


『いまでは、みんな立派な戦友です。』



『次は、あの桃色の服を着た人と戦います。』



『あの人とも、仲間になれたらいいな?』



真のおわり

334: 2013/12/18(水) 02:45:45.53
終わりました

ガルパンにまどマギの要素を組み込んだら

こうなりました

長くなってしまい

もっと短くまとめたかったです


長々とつけたにもかかわらず
読んでくださった方々に感謝感激です


本当にありがとうございました


今日はもう遅いので 夜があけたら
落とし方を調べ直して落とそうと思います

335: 2013/12/18(水) 03:06:01.93

救いなんて無かった
それにしても優花里の願いがなんとも残酷だな

336: 2013/12/18(水) 09:31:47.57

引用元: みほ「マホウショウジョ?ウォー!」