1: 2011/07/03(日) 21:23:45.89
シトシトと降る雨。

空はどんよりと曇り、辺りは薄暗い。

澪「それにしてもよく降るな」

どんよりとした空を見上げながら、澪がぽつりと呟いた。

梓「そうですね」

澪の隣には梓が並んで歩き、澪の差す傘にチョコンと収まっていた。

いわゆる、相合い傘。

3: 2011/07/03(日) 21:25:18.65
10分ほど前

澪『ったく何で律が忘れた書類を私が書かなくちゃいけないんだ』

梓『まあ、そう言わずに』

澪『梓も付き合わせちゃって悪いな』

梓『いえ、私一応書記ですから』

澪『良し、これで完成だ』

梓『お疲れ様です』

澪『梓も、お疲れ様。雨降って来ちゃってるし帰ろう』

梓『はい』

5: 2011/07/03(日) 21:28:03.04
澪『天気予報見ておいて良かった。夕方から雨降るって言ってたから傘持ってきてたんだ』

梓『あ、私もです』

澪『ってあれ?傘立てに入れておいた私の傘が・・・』

ガサゴソ

澪『・・・無い』

梓『急な雨だったから誰かに持って行かれちゃったんですかね』

澪『そんな・・・』

梓『私のは無事ですね』


6: 2011/07/03(日) 21:31:42.30
梓『・・・・・あの』

梓『もし良かったら私の傘に一緒に入っていきます?』

澪『え?良いの?』

梓『は、はいどうぞ///』

そう言い、傘を広げる梓。

バサッ

澪『あ、傘は私が持つよ。入れてもらった上に持たせたんじゃ悪いしな』

梓『じゃあ、お願いします』

8: 2011/07/03(日) 21:34:57.12
澪『もっと近くに寄らないと濡れちゃうぞ』

傘の柄を中心に開いている2人の距離に澪が呼びかける。

澪の言う通りに距離を詰める梓。

それでもまだ、少し離れてる梓を澪は抱き寄せる。

澪『もっと』

梓『あ・・』

お互いの身体が触れるくらいまで近付くと、澪がにっこりと笑った。

澪『じゃあ行こうっか』

梓『はい』

10: 2011/07/03(日) 21:40:18.91
澪「最近ずっと雨だな」

梓「梅雨ですもんね」

傘の先端からポタポタと滴が落ちる。

その滴が梓を濡らさぬ様に、澪は傘を持つ手を少し自分の方へと傾けた。

澪の気づかいに、梓の顔が思わず顔がほころぶ。

そんな梓に澪が唐突に、

澪「私、好きなんだ」

梓「ええっ?!///」

澪の突然の言葉に動揺する梓。

12: 2011/07/03(日) 21:42:27.77
澪「え?・・・ああ、好きって雨の事ね」

梓「あ・・・///」

澪がそう言うと梓はようやく自分の勘違いに気付いた。

澪「何の事だと思ったんだ?」

ちょっと意地悪だなと思いながらも梓に問いかける。

梓「何でもないです///」

その梓の様子が可愛くて思わずくすくすと笑ってしまう。

梓は顔を赤くしながらもプクッと頬を膨らませた。

澪「ごめん、ごめん」

そう言い梓の頭を撫でる。

16: 2011/07/03(日) 21:45:06.82
ゴロゴロゴロ・・・

澪「あれ?雷?」

梓「ですね」

澪「うわー、嫌だな」

梓「落ちたら嫌ですね」

澪「早く帰ろう」

少し小走りで家路を急ぐ。

17: 2011/07/03(日) 21:48:21.62
ゴロゴロ ピカッ!

澪「うわ、光った」

ドーン!!

梓「結構近いですね」

澪「雨も強くなって来ちゃったし、私の家で雨宿りして行きなよ」

梓「え、そんな悪いですよ」

澪「駄目だ、雷鳴ってるのに梓を帰らせるわけにいかないだろ?」

いつになく、厳しい顔立ちの澪に、梓はドキリとしてしまう。

梓「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」

20: 2011/07/03(日) 21:50:59.47
秋山家

澪「ただいまー」

梓「お邪魔します」

澪「走ったから結構濡れちゃったな」

梓「そうですね」

澪「待ってて、タオル持ってくるから」

澪「はいタオル」

梓「ありがとうございます」

21: 2011/07/03(日) 21:55:48.43
澪「髪まで濡れちゃったな」

ふきふき

澪「乾くまで髪上げてよっと」

そう言い、ポニーテールにする澪。

澪「梓も髪、結構濡れてるぞ」

梓「そうですか?」

25: 2011/07/03(日) 21:58:35.70
澪「拭いて上げる。ちょっと髪解くね」

ふきふき

梓「何か照れくさいですね///」

澪「良し、拭けた。後は髪を縛って、と」

キュッ

梓「あれ、これって?」

澪「ポニーテール」

梓「澪先輩とお揃いですね」

澪「一度やってみたかったんだ。梓とお揃い」

梓「お揃い嬉しいです///」

27: 2011/07/03(日) 22:03:05.65
ゴロゴロゴロ ドーン!!

澪「うわ、結構近いな」

梓「どうしたんですか、お腹押さえて?」

澪は、まるで妊婦のように両手でお腹を押さえている。

澪「だって、その・・・雷様におへそを取られちゃうから///」

梓「へ?」

澪「昔から言うだろ?雷様におへそを取られちゃうって」

梓「ぷっ、くくく」

澪「あーっ、笑ったな///」

梓「ごめんなさい、でも澪先輩らしいな」

さっき意地悪な質問されたお返しにとばかりにクスクス笑う梓。

30: 2011/07/03(日) 22:07:51.03
澪「おへそ取られても知らないからな///」

梓「じゃあ、私も」

そう言い、澪の真似をしておへそを両手で隠す梓。

澪「もう///」

ゴロゴロゴロ ドーン!!!

一際大きな音を立てる、雷が落ちる。

澪「うわーっ!!」

梓「きゃっ!」

澪は梓の胸に顔を埋めてしまう。

澪「い、今の落ちたよな?」

梓「大丈夫ですよ」

32: 2011/07/03(日) 22:10:13.20
ゴロゴロゴロ ドーン!!!!

澪「うわーっ!!!!」

梓の胸に顔を埋めたまま澪の腕が背中に回り、ギュッと抱きしめられる。

澪の身体の熱が梓に伝わってくる。

澪「し、しばらくこのままにしてて良いか?」

梓「はい///」

自分の胸で子犬のように震える澪の頭を撫でる。

少し雨に濡れた黒髪は、より一層艶やかに見える。

梓(うぅ、どうしよう。胸のどきどきが止まらない。澪先輩に気付かれちゃう///)

梓(静まれ静まれ///)

その体勢のまま、しばしの時間が流れた。

34: 2011/07/03(日) 22:13:23.20
梓「雷、止んだみたいですよ///」

梓「・・・澪先輩?」

澪「スースー」

梓「あれ?寝てる?」

梓は澪の寝顔を見て微笑むと、まるで子供に語りかけるのように話し始めた。

梓「さっき、好きって言ったのを何の事だと思ったんだ?って聞きましたよね?」

梓「私てっきり澪先輩に告白されたのかと思って舞い上がっちゃいました」

梓「ずっと、ずっと澪先輩の事が好きだったから」

梓「でも、告白する勇気なんて無いんです」

35: 2011/07/03(日) 22:16:47.08
梓「澪先輩、ごめんなさい」

そう言って、澪の頬に掛かっている髪をかき上げると、そっと頬にキスをした。

梓「澪先輩、大好きです」

澪「あの・・・」

梓「へ?///」

梓「澪先輩、起きてたんですか?!」

澪「実は・・・」

梓「ど、どの辺から聞いてました?///」

澪「澪先輩に告白されたのかと思って~辺から」

梓「うわ///」

36: 2011/07/03(日) 22:18:51.23
澪「告白ならせめて、起きてる時にして欲しかったかな」

梓「えと、あのこれは、その///」

澪「私も、梓の事好きだから」

耳に入った言葉が信じられなくて、梓はゆっくりと澪を見つめる。

澪「・・・梓大好き」

そう言って澪は梓を抱きしめた。

先ほどまでの、雷の恐怖から逃げるために抱きついていたのとは違う優しい抱きしめ。

突然の事に、頭が混乱していた梓もようやく我を取り戻し、自分の思いを伝える。

梓「私もずっと、ずっと澪先輩が好きでした・・・」

そう言って梓からも澪を抱きしめる。

いつの間にか雨は止んでいた。

37: 2011/07/03(日) 22:20:51.90
ガチャッ

澪ママ「澪ちゃーん、誰か来てるの?」

澪梓 ドッキーン!!

慌てて離れる二人。

梓「お、お邪魔してます」

澪「ママ、ノックくらいしてよ///」

澪ママ「あら澪ちゃんが二人?分身の術?」

澪「来た早々、大ボケかまさないでよ・・・」

澪ママ「いや、良く見ると一人は小さいわ。ひょっとして・・・」

澪ママ「澪ちゃんの妹!いつのまに澪ちゃんに妹が!」

澪「何で妹が突然出来るんだよ・・・」

澪ママ「あら?違ったのね」


40: 2011/07/03(日) 22:23:51.53
澪「紹介するよ、この娘は中野梓。軽音部の後輩」

澪「そして・・・私の大事な恋人」

梓「澪先輩・・・」

澪ママ「まあそうだったの!梓ちゃん良かったらお夕飯食べていく?刺身だけど」

梓「・・いえ、遠慮しておきます。もう遅いしそろそろ帰りますね」

澪ママ「あらそう?お刺身美味しいのに」

澪「あ、私家まで送っていくよ」


42: 2011/07/03(日) 22:26:27.10
澪「ごめんな、変なママで」

梓「いえ、それより嬉しかったです。大事な恋人って紹介されて///」

中野家到着

澪「じゃあ、また明日学校でな」

梓「あの、澪先輩。一つだけお願い聞いてもらって良いですか?」

澪「何?」

梓「お休みのキスして下さい」

そう言うと梓は眼を閉じて顔を少し上げた。

澪「えっ?///」

唐突な梓のお願いに澪は一端躊躇したが

澪(ここでしなかったら女が廃る)

澪(ヤッテヤルデス!!)

澪(だ、誰も見てないよな?///)

キョロキョロ



44: 2011/07/03(日) 22:29:06.14
梓の頭を抱き寄せ前屈みになり顔を近づける。

梓も澪の腰に手を回す。

ちゅっ

唇が触れた瞬間、澪の頭は沸騰寸前だった。

ゆっくりと唇を離す。

澪「お休み」

そう言い、梓の頭を撫でる。

梓「お休みなさい」

47: 2011/07/03(日) 22:34:28.48
澪(そう言えば、明日も夕方から雨の予報だったな)

澪(私の傘無くなったままだった。まいっか、もし雨降ったらまた梓と相合い傘で帰ろう///)

澪(むしろ、雨降って下さい)

ちなみに澪の傘の行方

唯「あれ?この傘秋山って書いてあるよ?」

律「やっべ、この傘澪のだ!」

律「同じデザインだったから自分のかと思った」

律「自分で準備良いと思ってたが、そんな事は無かったぜ」



おしまい

53: 2011/07/03(日) 22:40:33.64
乙乙!

引用元: 澪「五月雨」