1: 2013/02/08(金) 20:41:43.06
男「泊めてほしいって?」
狐娘「うむ」
男「……急な話だな」
狐娘「空を見てみい」
男「空……」チラッ
男「うわっ、眩しっ!!」
狐娘「……」
男「で、空がどうした」
狐娘「分からんのか」
男「目も眩むほど快晴だってことを今身をもって知ったところ」
狐娘「……一雨くるぞ」
男「マジか」
狐娘「と、いう訳だ。世話になるぞ」
男「まぁ、そういうことなら……」
狐娘「うむ」
男「……急な話だな」
狐娘「空を見てみい」
男「空……」チラッ
男「うわっ、眩しっ!!」
狐娘「……」
男「で、空がどうした」
狐娘「分からんのか」
男「目も眩むほど快晴だってことを今身をもって知ったところ」
狐娘「……一雨くるぞ」
男「マジか」
狐娘「と、いう訳だ。世話になるぞ」
男「まぁ、そういうことなら……」
5: 2013/02/08(金) 20:46:06.93
――昼下がりの午後、自宅、居間
狐娘「炬燵の電源をつけてくれ」
男「はい」パチッ
狐娘「……おー、あったかあったか」
男「雨宿りするだけなら、自分の住処に篭ってたらよかったんじゃないのー……あったかあったか」ホクホク
狐娘「屋根に穴が空いてしまっての」
狐娘「直す暇もなかったから、ここへきた」
男「ふぅん……」
男「……でも、ここに来てよかったの?」
男「またお仲間に人間くさいだの言われるよ」
狐娘「なぁに。そんな事を言う輩なんぞ、八つ裂きにしてくれるわ」
男「おーこわ……」
狐娘「炬燵の電源をつけてくれ」
男「はい」パチッ
狐娘「……おー、あったかあったか」
男「雨宿りするだけなら、自分の住処に篭ってたらよかったんじゃないのー……あったかあったか」ホクホク
狐娘「屋根に穴が空いてしまっての」
狐娘「直す暇もなかったから、ここへきた」
男「ふぅん……」
男「……でも、ここに来てよかったの?」
男「またお仲間に人間くさいだの言われるよ」
狐娘「なぁに。そんな事を言う輩なんぞ、八つ裂きにしてくれるわ」
男「おーこわ……」
7: 2013/02/08(金) 20:47:45.48
狐娘「なにはともあれ、また会えて嬉しいぞ、男」
男「……そっか。そういやこうして向かい合うのは久しぶりだ」
狐娘「元はといえば、お主のせいではないか」
狐娘「『人間くさいのがうつるからダメっ』とか抜かすから……」
男「あとあと、そっちはめんどくさいだろ?」
狐娘「男も同じではないか」
狐娘「お主の周りの者――虚無僧、だったか。物の怪の臭いに敏感なのだろう?」
男「僕は別にいいんだよ。そういうの慣れてるから」
狐娘「余も慣れている」
男「……そういう頑固なとこ、変わってないね」
狐娘「その台詞、そのまま返すぞ」
男「僕も頑固なのかな」
狐娘「そうとも」
男「……そっか。そういやこうして向かい合うのは久しぶりだ」
狐娘「元はといえば、お主のせいではないか」
狐娘「『人間くさいのがうつるからダメっ』とか抜かすから……」
男「あとあと、そっちはめんどくさいだろ?」
狐娘「男も同じではないか」
狐娘「お主の周りの者――虚無僧、だったか。物の怪の臭いに敏感なのだろう?」
男「僕は別にいいんだよ。そういうの慣れてるから」
狐娘「余も慣れている」
男「……そういう頑固なとこ、変わってないね」
狐娘「その台詞、そのまま返すぞ」
男「僕も頑固なのかな」
狐娘「そうとも」
10: 2013/02/08(金) 20:49:12.97
狐娘「せんべいもらうぞ」
男「どうぞ」
狐娘「では……」ヒョイ
狐娘「……」ボリボリ
男「お茶、持ってくるよ」ガタッ
狐娘「すまぬな」
・
・
・
男「はい」コトッ
狐娘「うむ」
狐娘「……」ズズズッ
狐娘「やはり、煎餅にはこれがないと」
男「ばばくさい奴め」
狐娘「ばばくさいとな。おぬしの目は節穴か」
男「どうぞ」
狐娘「では……」ヒョイ
狐娘「……」ボリボリ
男「お茶、持ってくるよ」ガタッ
狐娘「すまぬな」
・
・
・
男「はい」コトッ
狐娘「うむ」
狐娘「……」ズズズッ
狐娘「やはり、煎餅にはこれがないと」
男「ばばくさい奴め」
狐娘「ばばくさいとな。おぬしの目は節穴か」
11: 2013/02/08(金) 20:53:03.88
男「冗談だよ、ごめん」
狐娘「ならよい」ズズッ
狐娘「男は、あれから何をしていたのだ?」
男「いつもと変わらないよ」
男「畑の世話をしたり、作物を出荷したり、……いつもと変わらない。農夫らしい毎日だったよ」
狐娘「ほうか」ボリボリ
男「そっちは?」
狐娘「同じようなものだ」
狐娘「飯食って寝る。それだけ」ズズッ
男「うらやましい」
狐娘「なら、農夫なんぞやめて余のところへくればよい」
狐娘「歓迎するぞ」
男「……いや」フルフル
狐娘「……そうか」
狐娘「ならよい」ズズッ
狐娘「男は、あれから何をしていたのだ?」
男「いつもと変わらないよ」
男「畑の世話をしたり、作物を出荷したり、……いつもと変わらない。農夫らしい毎日だったよ」
狐娘「ほうか」ボリボリ
男「そっちは?」
狐娘「同じようなものだ」
狐娘「飯食って寝る。それだけ」ズズッ
男「うらやましい」
狐娘「なら、農夫なんぞやめて余のところへくればよい」
狐娘「歓迎するぞ」
男「……いや」フルフル
狐娘「……そうか」
13: 2013/02/08(金) 20:57:12.94
ザァァァァァアア……
男「あっ……ホントに降ってきた」
狐娘「疑っておったのか」
男「……いやぁ」
狐娘「余は悲しいぞ……」ショボーン
男「悪かったよ」
男「代わりに、今日は稲荷寿司作るから」
狐娘「……約束だぞ」
男「うん、約束。ゆびきりしよう」スッ
狐娘「ゆびきり?」
男「手を出して」
狐娘「ん」スッ
男「それで……小指と小指を、こう、絡めるんだ」ギュッ
男「あっ……ホントに降ってきた」
狐娘「疑っておったのか」
男「……いやぁ」
狐娘「余は悲しいぞ……」ショボーン
男「悪かったよ」
男「代わりに、今日は稲荷寿司作るから」
狐娘「……約束だぞ」
男「うん、約束。ゆびきりしよう」スッ
狐娘「ゆびきり?」
男「手を出して」
狐娘「ん」スッ
男「それで……小指と小指を、こう、絡めるんだ」ギュッ
18: 2013/02/08(金) 21:01:05.40
狐娘「……それで?」
男「ゆびきりげんまん嘘吐いたら針千本のーます、ゆびきった」パシッ
男「……こんな感じ」
狐娘「このような行為に何の意味が……」
男「おまじないだよ。約束を守るための」
狐娘「呪い」
男「うん」
狐娘「なら、余は稲荷寿司を食べられるのだな」
男「そういうことになる」
狐娘「嘘吐いたら針千本飲むのだな?」
男「いや……それはどうだろう」
狐娘「嘘なのか?」
男「物の喩えだからなぁ……」
男「ゆびきりげんまん嘘吐いたら針千本のーます、ゆびきった」パシッ
男「……こんな感じ」
狐娘「このような行為に何の意味が……」
男「おまじないだよ。約束を守るための」
狐娘「呪い」
男「うん」
狐娘「なら、余は稲荷寿司を食べられるのだな」
男「そういうことになる」
狐娘「嘘吐いたら針千本飲むのだな?」
男「いや……それはどうだろう」
狐娘「嘘なのか?」
男「物の喩えだからなぁ……」
19: 2013/02/08(金) 21:04:25.16
男「じゃあこうしよう。嘘吐いたら、狐娘のしたいこと、一つだけなんでもしてあげる」
狐娘「なんでもか」
男「うん」
狐娘「なんでも聞くのだぞ、絶対だぞ」
男「分かった」
男「まぁ、嘘は吐かないからそうなることはないけどね」
狐娘「むぅ」
男「ははっ」
狐娘「……ふふっ」
男「さて……といっても、夕方まではまだ時間があるんだよね」
狐娘「そうだな」
男「なにかする?」
狐娘「男となら、なんでもいいぞ」
狐娘「なんでもか」
男「うん」
狐娘「なんでも聞くのだぞ、絶対だぞ」
男「分かった」
男「まぁ、嘘は吐かないからそうなることはないけどね」
狐娘「むぅ」
男「ははっ」
狐娘「……ふふっ」
男「さて……といっても、夕方まではまだ時間があるんだよね」
狐娘「そうだな」
男「なにかする?」
狐娘「男となら、なんでもいいぞ」
21: 2013/02/08(金) 21:07:54.52
男(そういう答えが一番困るんだけどなぁ……)
男「ふぅむ」
男「……ゲームでも、する?」
狐娘「げぇむ?」
・
・
・
狐娘「くぬっ……」
チュドーン
狐娘「あぁっ……やられた」ガクリ
狐娘「もう一回だっ」
カチャカチャ
男(……随分と熱くなってるなぁ)
男(シューティングゲームを起動するのなんて何年振りだろう)
チュドーン
狐娘「ぬぅううううっ!!」
男「ふぅむ」
男「……ゲームでも、する?」
狐娘「げぇむ?」
・
・
・
狐娘「くぬっ……」
チュドーン
狐娘「あぁっ……やられた」ガクリ
狐娘「もう一回だっ」
カチャカチャ
男(……随分と熱くなってるなぁ)
男(シューティングゲームを起動するのなんて何年振りだろう)
チュドーン
狐娘「ぬぅううううっ!!」
22: 2013/02/08(金) 21:10:00.75
狐娘「男、やれっ!」バシッ
男「はいよ……」
カチャカチャ
狐娘「……」ジーッ
カチャカチャ
狐娘「おおっ、スイスイ避けていくぞっ!」
狐娘「すごいな男!」
男「それほどでもあるかな」フフン
チュドーン
男「あっ」
狐娘「格好悪いの、男」
男「ぐぬぬ」
男「もう一回っ」
男「はいよ……」
カチャカチャ
狐娘「……」ジーッ
カチャカチャ
狐娘「おおっ、スイスイ避けていくぞっ!」
狐娘「すごいな男!」
男「それほどでもあるかな」フフン
チュドーン
男「あっ」
狐娘「格好悪いの、男」
男「ぐぬぬ」
男「もう一回っ」
23: 2013/02/08(金) 21:12:15.00
狐娘「……」ジーッ
チュドーン
男「……」
狐娘「最速でやられたの」
男「……他のゲーム、しようか」
狐娘「うむ」
・
・
・
チュドーン
男「……」
狐娘「最速でやられたの」
男「……他のゲーム、しようか」
狐娘「うむ」
・
・
・
25: 2013/02/08(金) 21:15:19.60
カチャカチャ
男「……」
カチャカチャ
狐娘「……」
ユー ルーズ
狐娘「……」スッ
男「やめろ、コントローラを叩きつけようとするなっ!」ガシッ
狐娘「なんだこのげぇむは!?」
男「格闘ゲームだ」
狐娘「くそげーではないかっ!」
男「まぁまぁ……もう一回やってみればいいじゃない」
狐娘「……これで最後だぞ」
男「うん」
男「……」
カチャカチャ
狐娘「……」
ユー ルーズ
狐娘「……」スッ
男「やめろ、コントローラを叩きつけようとするなっ!」ガシッ
狐娘「なんだこのげぇむは!?」
男「格闘ゲームだ」
狐娘「くそげーではないかっ!」
男「まぁまぁ……もう一回やってみればいいじゃない」
狐娘「……これで最後だぞ」
男「うん」
26: 2013/02/08(金) 21:18:14.75
カチャカチャ
男「……」
カチャカチャ
狐娘「……」
狐娘「ぬっ、今防御してたぞ」
男「めくりって奴ですね。表から攻撃してるように見えて裏から攻撃してる」
狐娘「くそげーではないか!!」ポーン
男「コントローラを投げるな」パシッ
狐娘「大体、余はげぇむ自体今日が初めてなのだぞっ!? 手加減せい!!」
男「ごめんごめん」
男「他のゲームをしよう」
狐娘「……うむ」
・
・
・
男「……」
カチャカチャ
狐娘「……」
狐娘「ぬっ、今防御してたぞ」
男「めくりって奴ですね。表から攻撃してるように見えて裏から攻撃してる」
狐娘「くそげーではないか!!」ポーン
男「コントローラを投げるな」パシッ
狐娘「大体、余はげぇむ自体今日が初めてなのだぞっ!? 手加減せい!!」
男「ごめんごめん」
男「他のゲームをしよう」
狐娘「……うむ」
・
・
・
27: 2013/02/08(金) 21:22:12.44
ギュイーン
男「……」
ギュイーン
狐娘「……」ユラッ
ギュイーン
男「……」チラッ
ギュイーン
狐娘「……」ユラッ
男「いや、体傾けなくても曲がるからね、このレースゲーム」
狐娘「傾けておったか?」
男「うん」
狐娘「そうか……気をつける」
ギュイーン
狐娘「……」ユラッ
男「……」
ギュイーン
狐娘「……」ユラッ
ギュイーン
男「……」チラッ
ギュイーン
狐娘「……」ユラッ
男「いや、体傾けなくても曲がるからね、このレースゲーム」
狐娘「傾けておったか?」
男「うん」
狐娘「そうか……気をつける」
ギュイーン
狐娘「……」ユラッ
29: 2013/02/08(金) 21:26:17.77
狐娘「あっ」グラッ
トン
男「傾けすぎて倒れる人、始めてみた」
狐娘「す、すまぬ……」
狐娘「……」
男「……狐娘?」
狐娘「こうして肩をくっつけてると、あったかいな」
男「そうだね」
狐娘「もう少し、このままでよいか?」
男「……うん、いいよ」
狐娘「そうか」
ガシッ
狐娘「!?」
トン
男「傾けすぎて倒れる人、始めてみた」
狐娘「す、すまぬ……」
狐娘「……」
男「……狐娘?」
狐娘「こうして肩をくっつけてると、あったかいな」
男「そうだね」
狐娘「もう少し、このままでよいか?」
男「……うん、いいよ」
狐娘「そうか」
ガシッ
狐娘「!?」
30: 2013/02/08(金) 21:29:37.15
男「いや、その姿勢のままは辛いだろうから……肩をつけるなら、ちゃんと姿勢よく、な」
男「他意はないぞっ」
狐娘「……それもそうか」スッ
ピトッ
男「これでよし」
狐娘「うむ」
男「……」ドキドキ
狐娘「……」チラッ
男「……なに」
狐娘「いいや、『随分と顔が赤い』と思っての」
男「……分かってて言ってるな?」
狐娘「さぁ。どうかの」
男「他意はないぞっ」
狐娘「……それもそうか」スッ
ピトッ
男「これでよし」
狐娘「うむ」
男「……」ドキドキ
狐娘「……」チラッ
男「……なに」
狐娘「いいや、『随分と顔が赤い』と思っての」
男「……分かってて言ってるな?」
狐娘「さぁ。どうかの」
32: 2013/02/08(金) 21:35:17.41
男「そっちだって、顔赤いぞ」
狐娘「えっ」
男「真っ赤っ赤だ」
狐娘「……こっちをみるでない」グイッ
男「あだだだだっ」
男「なんだよ……」
狐娘「ふん」
男「……」
狐娘「……」
ザァァァァアア……
男「雨、止まないな」
狐娘「うむ」
男「早く、止むといいな」
狐娘「……そうだの」
狐娘「えっ」
男「真っ赤っ赤だ」
狐娘「……こっちをみるでない」グイッ
男「あだだだだっ」
男「なんだよ……」
狐娘「ふん」
男「……」
狐娘「……」
ザァァァァアア……
男「雨、止まないな」
狐娘「うむ」
男「早く、止むといいな」
狐娘「……そうだの」
33: 2013/02/08(金) 21:39:08.54
男「……」
狐娘「……」
グゥー
男「……もう夕方だ。そろそろ夕食の準備をしなくちゃ」
狐娘「もうそんな時間か」
狐娘「……男といると、時間があっという間に流れてしまう」
男「楽しい時間は、いつだって短く感じるものだよ」
狐娘「不思議な現象だ」
男「これまでにも同じような体験をしたことあるだろ?」
狐娘「……いいや」フルフル
狐娘「余は妖だからの。人間とは違う」
狐娘「思い返してみれば、余の過去は随分と味気ない」
男「……今は?」
狐娘「それを余の口から言わせるのか」
狐娘「……」
グゥー
男「……もう夕方だ。そろそろ夕食の準備をしなくちゃ」
狐娘「もうそんな時間か」
狐娘「……男といると、時間があっという間に流れてしまう」
男「楽しい時間は、いつだって短く感じるものだよ」
狐娘「不思議な現象だ」
男「これまでにも同じような体験をしたことあるだろ?」
狐娘「……いいや」フルフル
狐娘「余は妖だからの。人間とは違う」
狐娘「思い返してみれば、余の過去は随分と味気ない」
男「……今は?」
狐娘「それを余の口から言わせるのか」
34: 2013/02/08(金) 21:43:33.34
男「どうせなら、キミの口から聞きたいからね」
狐娘「ぐぬぬ」
狐娘「ほれっ、夕げの時間だ。早く仕度せい」グイッ
男「なんだよ……ちぇー」
スタ スタ スタ……
狐娘「まったく……」
狐娘「……」
タッ タッ……
狐娘「ぐぬぬ」
狐娘「ほれっ、夕げの時間だ。早く仕度せい」グイッ
男「なんだよ……ちぇー」
スタ スタ スタ……
狐娘「まったく……」
狐娘「……」
タッ タッ……
35: 2013/02/08(金) 21:44:48.69
――台所
グツグツグツ……
男「こんな具合でいいかな」
男(煮た油揚げを取り出して……)
ヒョイ ヒョイ
男(広げて冷ましておいて、と……)
男(よし、酢飯をつくろう)
狐娘「男」
男「……どうしたの。稲荷寿司はまだ出来てないよ」
狐娘「なにか、手伝える事はないか」
男「別にいいよ。狐娘はお客さんなんだから」
狐娘「客ではない。余は友人としてここにおる」
男「……そう。じゃ、手伝ってもらおうかな」
狐娘「うむ、任せておけ」
男「じゃあこれ」パシッ
グツグツグツ……
男「こんな具合でいいかな」
男(煮た油揚げを取り出して……)
ヒョイ ヒョイ
男(広げて冷ましておいて、と……)
男(よし、酢飯をつくろう)
狐娘「男」
男「……どうしたの。稲荷寿司はまだ出来てないよ」
狐娘「なにか、手伝える事はないか」
男「別にいいよ。狐娘はお客さんなんだから」
狐娘「客ではない。余は友人としてここにおる」
男「……そう。じゃ、手伝ってもらおうかな」
狐娘「うむ、任せておけ」
男「じゃあこれ」パシッ
36: 2013/02/08(金) 21:48:55.31
狐娘「……団扇ではないか。今は冬だぞ」
男「それでこのご飯を扇いでね。僕はご飯をお酢と一緒に混ぜ合わせるから」
狐娘「扇ぐだけ?」
男「うん」
パタパタパタ……
コネコネ……
狐娘「手伝っている気がせんのだが……」
男「それ、結構重要な役目だから。頑張って」
狐娘「そうなのか?」
男「うん。冷蔵庫で冷やしてもいいけど、それだと米がバラけて、あまり美味しくないんだよね」
狐娘「冷蔵庫は覚えているぞ。あの四角い箱のことだろう?」
男「そうそう」
パタパタパタ……
コネコネ……
男「こんなもんかな」
男「それでこのご飯を扇いでね。僕はご飯をお酢と一緒に混ぜ合わせるから」
狐娘「扇ぐだけ?」
男「うん」
パタパタパタ……
コネコネ……
狐娘「手伝っている気がせんのだが……」
男「それ、結構重要な役目だから。頑張って」
狐娘「そうなのか?」
男「うん。冷蔵庫で冷やしてもいいけど、それだと米がバラけて、あまり美味しくないんだよね」
狐娘「冷蔵庫は覚えているぞ。あの四角い箱のことだろう?」
男「そうそう」
パタパタパタ……
コネコネ……
男「こんなもんかな」
37: 2013/02/08(金) 21:53:55.82
男「ちょっと味見してみて」
狐娘「わかった……はむっ」パクッ
狐娘「……」モグモグ
狐娘「おおっ、美味いぞ」パァア
男「よかった」
男「次は、冷やしてあった油揚げの煮汁を、こうして破れない程度の力を加えて搾り出す」ギューッ
男「やってみて」
狐娘「……」ギューッ
男「上手上手」
狐娘「それで、次は何をするのだ?」
男「酢飯を握る」
ニギ ニギ……
男「大体このくらいのサイズ。親指が一回りくらいでかくなったの」
狐娘「ふむ……」
狐娘「わかった……はむっ」パクッ
狐娘「……」モグモグ
狐娘「おおっ、美味いぞ」パァア
男「よかった」
男「次は、冷やしてあった油揚げの煮汁を、こうして破れない程度の力を加えて搾り出す」ギューッ
男「やってみて」
狐娘「……」ギューッ
男「上手上手」
狐娘「それで、次は何をするのだ?」
男「酢飯を握る」
ニギ ニギ……
男「大体このくらいのサイズ。親指が一回りくらいでかくなったの」
狐娘「ふむ……」
39: 2013/02/08(金) 21:56:26.66
ニギ ニギ……
狐娘「こうか」
男「……狐娘の場合は、二回りくらい大きい方がいいかな」
狐娘「遠回しに余をチビと言っていないか」
男「言ってない言ってない」
男「女の子の手がごつくても仕方ないだろ?」
狐娘「……そうなのか?」
男「うん、そう」
狐娘「なら、よい」
ニギ ニギ……
狐娘「今度こそ、どうだ」
男「うん。いいね」
男「その握った酢飯を、こうして油揚げにつめる」グイッ
男「これで完成」
狐娘「こうか」
男「……狐娘の場合は、二回りくらい大きい方がいいかな」
狐娘「遠回しに余をチビと言っていないか」
男「言ってない言ってない」
男「女の子の手がごつくても仕方ないだろ?」
狐娘「……そうなのか?」
男「うん、そう」
狐娘「なら、よい」
ニギ ニギ……
狐娘「今度こそ、どうだ」
男「うん。いいね」
男「その握った酢飯を、こうして油揚げにつめる」グイッ
男「これで完成」
40: 2013/02/08(金) 21:59:37.50
狐娘「……」グイッ
狐娘「おおぉ……」キラキラ
狐娘「出来たぞっ、余にも料理が出来たぞっ」
男「うん。これで嫁入りできるね」
狐娘「よ、嫁入りっ!?」
男「冗談」
狐娘「……なんだ、冗談か」
男「稲荷寿司が出来た程度で、料理を会得したとは言えないしね」
狐娘「ふむぅ、嫁入りとは中々難しいのだな」
男「いや、そっちじゃなくて、料理の方ね」
狐娘「ぬっ、そうであったか」
狐娘「では、料理が出来なくても嫁入りは出来るのか?」
男「お互いの同意があれば、いいんじゃない」
狐娘「そうかそうか」
狐娘「おおぉ……」キラキラ
狐娘「出来たぞっ、余にも料理が出来たぞっ」
男「うん。これで嫁入りできるね」
狐娘「よ、嫁入りっ!?」
男「冗談」
狐娘「……なんだ、冗談か」
男「稲荷寿司が出来た程度で、料理を会得したとは言えないしね」
狐娘「ふむぅ、嫁入りとは中々難しいのだな」
男「いや、そっちじゃなくて、料理の方ね」
狐娘「ぬっ、そうであったか」
狐娘「では、料理が出来なくても嫁入りは出来るのか?」
男「お互いの同意があれば、いいんじゃない」
狐娘「そうかそうか」
41: 2013/02/08(金) 22:04:00.45
男「でも、男の僕の希望としては、嫁さんには料理くらいは出来ててほしいね」
狐娘「そういうもの、なのか」
男「多分。人間の世間一般的にはそう」
狐娘「……ふむ」
男「さっ、残りも詰めちゃおうか」
狐娘「うむ」
――居間
男「いただきます」
狐娘「いただきます」
狐娘「はむっ」
狐娘「……」モグモグ
狐娘「! 美味いぞっ、男!」
狐娘「そういうもの、なのか」
男「多分。人間の世間一般的にはそう」
狐娘「……ふむ」
男「さっ、残りも詰めちゃおうか」
狐娘「うむ」
――居間
男「いただきます」
狐娘「いただきます」
狐娘「はむっ」
狐娘「……」モグモグ
狐娘「! 美味いぞっ、男!」
42: 2013/02/08(金) 22:08:54.16
男「それはよかった……はむっ」
男「……」モグモグ
狐娘「……」ジーッ
男「うん。狐娘の作った稲荷寿司も美味しいよ」
狐娘「……当然だっ」フフン
男「キミが来てくれたおかげで、久しぶりに稲荷寿司を食べられたよ」
狐娘「これまでにも作る機会はあったであろう?」
男「普段作ろうと思わないからね。割と手間が掛かるし」
狐娘「今日見た限りだと、酢飯は一人で作れないぞ」
男「まぁあれ以外にも酢飯を作る方法はあるけど……あれが一番美味しいんだよ」
狐娘「ふぅん」
男「僕の味覚上での話だけどね。あんなことしなくても、もっと美味しい酢飯の作り方はあるかもしれない」
男「……」モグモグ
狐娘「……」ジーッ
男「うん。狐娘の作った稲荷寿司も美味しいよ」
狐娘「……当然だっ」フフン
男「キミが来てくれたおかげで、久しぶりに稲荷寿司を食べられたよ」
狐娘「これまでにも作る機会はあったであろう?」
男「普段作ろうと思わないからね。割と手間が掛かるし」
狐娘「今日見た限りだと、酢飯は一人で作れないぞ」
男「まぁあれ以外にも酢飯を作る方法はあるけど……あれが一番美味しいんだよ」
狐娘「ふぅん」
男「僕の味覚上での話だけどね。あんなことしなくても、もっと美味しい酢飯の作り方はあるかもしれない」
43: 2013/02/08(金) 22:12:19.39
狐娘「……余は、あれでいい」
狐娘「男が米を混ぜ合わせ、隣で余が団扇を扇ぐのだ」
男「うん。僕もそう思う」
狐娘「そうか。お揃いだな」
男「お揃いだ」
ザァァァァア……
男「……まだ、止みそうにないな」
狐娘「うむ……」
男「これ食べ終わったら、風呂でも入る?」
狐娘「おぉ、風呂か。気持ちよくて好きだぞ。是非」
男「うん」
狐娘「男が米を混ぜ合わせ、隣で余が団扇を扇ぐのだ」
男「うん。僕もそう思う」
狐娘「そうか。お揃いだな」
男「お揃いだ」
ザァァァァア……
男「……まだ、止みそうにないな」
狐娘「うむ……」
男「これ食べ終わったら、風呂でも入る?」
狐娘「おぉ、風呂か。気持ちよくて好きだぞ。是非」
男「うん」
44: 2013/02/08(金) 22:17:15.02
男「……いや。どうせなら、温泉に行くか」
狐娘「温泉? 近くにそんなところ、あったかの」
男「ま、見てからのお楽しみってことで」
狐娘「そうか。楽しみだ」
狐娘「……だが、外は雨だぞ」
男「雨避けの屋根があるから問題ないさ」
男「行きはちょっと冷えるかもしれないけど、我慢できるか?」
狐娘「余を誰だと思っておる」
男「……そうだったね、愚問だった」
狐娘「温泉? 近くにそんなところ、あったかの」
男「ま、見てからのお楽しみってことで」
狐娘「そうか。楽しみだ」
狐娘「……だが、外は雨だぞ」
男「雨避けの屋根があるから問題ないさ」
男「行きはちょっと冷えるかもしれないけど、我慢できるか?」
狐娘「余を誰だと思っておる」
男「……そうだったね、愚問だった」
46: 2013/02/08(金) 22:26:42.46
――裏山
ザァァァァア……
狐娘「……ほぉー。こんなとこに湯が」
男「巷じゃ結構知れてる場所なんだけど……知らなかったんだ」
狐娘「引きこもっておったからの」
男「そうなの?」
狐娘「特にやることもないのでな」
狐娘「同属どもの諍いの調停に駆り出されるくらいだ」
男「……今更だけど、結構高位の妖なんだね、狐娘って」
狐娘「うむ」
狐娘「ところで、巷で知れている、といったな」
男「うん」
狐娘「なら、他に誰かが来るかもしれないではないか」
男「この時間は大丈夫だよ」
ザァァァァア……
狐娘「……ほぉー。こんなとこに湯が」
男「巷じゃ結構知れてる場所なんだけど……知らなかったんだ」
狐娘「引きこもっておったからの」
男「そうなの?」
狐娘「特にやることもないのでな」
狐娘「同属どもの諍いの調停に駆り出されるくらいだ」
男「……今更だけど、結構高位の妖なんだね、狐娘って」
狐娘「うむ」
狐娘「ところで、巷で知れている、といったな」
男「うん」
狐娘「なら、他に誰かが来るかもしれないではないか」
男「この時間は大丈夫だよ」
47: 2013/02/08(金) 22:32:37.22
男「そもそも、ここって僕の温泉みたいなものだから」
狐娘「男のものなのか」
男「これを最初に見つけたのが僕だから。ここを使う際には僕の許可がいる――」
男「――みたいな話が人伝いにどんどん広がっちゃってね」
男「別にそんなことしなくても。勝手に入ればいいのにね」
男「だいたい、この野湯を、こうして屋根つけたり脱衣所つけたり、周辺を整備したのはみんななのにさ……」
男「……と、いう訳で、今は貸切みたいなものだよ」
狐娘「家を留守にしてる間に、お主の許可を取りに訪れる輩がいるかもしれんぞ」
男「いないもん。許可の取りようがないから帰るさ」
狐娘「……男は時々強かだの」
男「褒め言葉として受け取っておくよ」
男「先、入っていいよ」
狐娘「?」
狐娘「男のものなのか」
男「これを最初に見つけたのが僕だから。ここを使う際には僕の許可がいる――」
男「――みたいな話が人伝いにどんどん広がっちゃってね」
男「別にそんなことしなくても。勝手に入ればいいのにね」
男「だいたい、この野湯を、こうして屋根つけたり脱衣所つけたり、周辺を整備したのはみんななのにさ……」
男「……と、いう訳で、今は貸切みたいなものだよ」
狐娘「家を留守にしてる間に、お主の許可を取りに訪れる輩がいるかもしれんぞ」
男「いないもん。許可の取りようがないから帰るさ」
狐娘「……男は時々強かだの」
男「褒め言葉として受け取っておくよ」
男「先、入っていいよ」
狐娘「?」
49: 2013/02/08(金) 22:37:19.34
男「いや、一緒に入るわけにもいかないでしょ」
男「僕は外で待ってるから」
ザッ……
狐娘「お主も一緒に入ればいいではないか」
ピタッ
男「……いや、ダメでしょ」
狐娘「別に構わんぞ」
男「……」
男「…………」
男「……………………」
狐娘「入りたいのなら入りたいと言えばよかろう」
男「!?」
男「いや別に入りたい訳じゃなくて別々に入るのは手間かなーとか別々に入った場合の帰り道で悪漢に襲われたりしたらあれかなーとかそんな事を考えていてだな」
狐娘「……」クスクス
男「……からかったな」
男「僕は外で待ってるから」
ザッ……
狐娘「お主も一緒に入ればいいではないか」
ピタッ
男「……いや、ダメでしょ」
狐娘「別に構わんぞ」
男「……」
男「…………」
男「……………………」
狐娘「入りたいのなら入りたいと言えばよかろう」
男「!?」
男「いや別に入りたい訳じゃなくて別々に入るのは手間かなーとか別々に入った場合の帰り道で悪漢に襲われたりしたらあれかなーとかそんな事を考えていてだな」
狐娘「……」クスクス
男「……からかったな」
51: 2013/02/08(金) 22:44:12.80
狐娘「いや? 余は思ったことを述べただけだ」
狐娘「それに……余一人では、この温泉は広すぎる」
男「……そっか。そうだな」
男「一緒に入ろうか」
狐娘「うむっ」
――温泉
プカー
狐娘「あー気持ちいいのー」
男「タオルも巻かずに仰向きに浮くなっ!」パコン
狐娘「いだっ」
ザブゥン……バシャン
狐娘「ぶはぁ……いきなりでこを叩くでないっ」
男「叩くわっ!」
男「……もうちょっと、考えてくれよ」
男「僕は男で、キミは……見た目は女なんだから」
狐娘「それに……余一人では、この温泉は広すぎる」
男「……そっか。そうだな」
男「一緒に入ろうか」
狐娘「うむっ」
――温泉
プカー
狐娘「あー気持ちいいのー」
男「タオルも巻かずに仰向きに浮くなっ!」パコン
狐娘「いだっ」
ザブゥン……バシャン
狐娘「ぶはぁ……いきなりでこを叩くでないっ」
男「叩くわっ!」
男「……もうちょっと、考えてくれよ」
男「僕は男で、キミは……見た目は女なんだから」
53: 2013/02/08(金) 22:51:26.48
狐娘「そういうものか」
男「そういうものだ」
男「ほら、これで体隠せ」スッ
狐娘「……」
マキマキ……
狐娘「これ、窮屈だぞ」
男「何言ってるんだ、窮屈になるほど胸もないのに」
狐娘「……そうなのだ。胸が、小さいのだ」
狐娘「周りを見ると、みんな余より大きいのだ」
狐娘「これは異常なのか?」
男「……さぁ。僕は妖事情に詳しくないから、分からないよ」
狐娘「なら質問を変える」
狐娘「男はどう思う?」
男「どう思うって、なに」
男「そういうものだ」
男「ほら、これで体隠せ」スッ
狐娘「……」
マキマキ……
狐娘「これ、窮屈だぞ」
男「何言ってるんだ、窮屈になるほど胸もないのに」
狐娘「……そうなのだ。胸が、小さいのだ」
狐娘「周りを見ると、みんな余より大きいのだ」
狐娘「これは異常なのか?」
男「……さぁ。僕は妖事情に詳しくないから、分からないよ」
狐娘「なら質問を変える」
狐娘「男はどう思う?」
男「どう思うって、なに」
54: 2013/02/08(金) 22:56:03.45
狐娘「大きい方がいいのかどうか」
男「どっちでもいい」
狐娘「優柔不断なやつめ」
男「むっ」
男「そういわれるのは心外だな」
狐娘「なら答えてみい」
男「強いて言うなら、どっちでもいい」
狐娘「いっしょではないかっ!」
男「まてまて。まだ続きがあるんだ」
狐娘「……ふむ」
男「好きになった人なら、大であれ小であれ構わないってことだよ」
狐娘「上手い事逃げおって」
男「そんなつもりじゃないって」
狐娘「そうか」
男「そうだよ」
男「どっちでもいい」
狐娘「優柔不断なやつめ」
男「むっ」
男「そういわれるのは心外だな」
狐娘「なら答えてみい」
男「強いて言うなら、どっちでもいい」
狐娘「いっしょではないかっ!」
男「まてまて。まだ続きがあるんだ」
狐娘「……ふむ」
男「好きになった人なら、大であれ小であれ構わないってことだよ」
狐娘「上手い事逃げおって」
男「そんなつもりじゃないって」
狐娘「そうか」
男「そうだよ」
55: 2013/02/08(金) 23:01:19.01
ザァァァァア……
狐娘「確かに気持ちいいが……」
男「ま、仕方ないね。雨音がするのは」
狐娘「だのう……」
狐娘「……男」
男「んん?」
狐娘「そこ」ビシッ
男「……?」
狐娘「隣、いっていいか」
男「……あぁ。いいよ」
スィー……
男「なぜ泳いでくる」
狐娘「その方が早いだろう」
ピタッ
狐娘「ほら、早い」
狐娘「確かに気持ちいいが……」
男「ま、仕方ないね。雨音がするのは」
狐娘「だのう……」
狐娘「……男」
男「んん?」
狐娘「そこ」ビシッ
男「……?」
狐娘「隣、いっていいか」
男「……あぁ。いいよ」
スィー……
男「なぜ泳いでくる」
狐娘「その方が早いだろう」
ピタッ
狐娘「ほら、早い」
57: 2013/02/08(金) 23:05:09.11
ザァァァァア……
男「雨、止まないかなぁ」
狐娘「……?」
男「雨降ってるから、帰り、寒いだろ」
狐娘「ならなぜ来たのだ」
男「そりゃあ……温泉みせたら、どんな反応するかなって思って」
狐娘「ふぅん」
男「どうだ、温泉は」
狐娘「始めに言っただろう。『気持ちいいのー』と」
狐娘「きてよかった」
男「ならよかった」
男「雨、止まないかなぁ」
狐娘「……?」
男「雨降ってるから、帰り、寒いだろ」
狐娘「ならなぜ来たのだ」
男「そりゃあ……温泉みせたら、どんな反応するかなって思って」
狐娘「ふぅん」
男「どうだ、温泉は」
狐娘「始めに言っただろう。『気持ちいいのー』と」
狐娘「きてよかった」
男「ならよかった」
59: 2013/02/08(金) 23:11:53.41
――帰り道、山道
ピチャン ピチャン……
男「……そりゃあ、水溜りも出来るよね」
狐娘「当然だの」
ビュウゥウウウ……
狐娘「わっ」
バッ
狐娘「あっ」
ヒュゥウー……
男「……傘、下に落ちちゃったな」
男「ほれ、ちょっと狭いけど」スッ
狐娘「すまぬ……」
ピチャン ピチャン……
狐娘「寒い」
男「おい、行きの時の自信はどこへやった」
狐娘「体は温かいのだ。でも、手足が寒い」ブルブル
ピチャン ピチャン……
男「……そりゃあ、水溜りも出来るよね」
狐娘「当然だの」
ビュウゥウウウ……
狐娘「わっ」
バッ
狐娘「あっ」
ヒュゥウー……
男「……傘、下に落ちちゃったな」
男「ほれ、ちょっと狭いけど」スッ
狐娘「すまぬ……」
ピチャン ピチャン……
狐娘「寒い」
男「おい、行きの時の自信はどこへやった」
狐娘「体は温かいのだ。でも、手足が寒い」ブルブル
61: 2013/02/08(金) 23:17:17.73
男「……じゃあ、手でも繋いどく?」
狐娘「……いいのか?」
男「僕も寒いから、寧ろ歓迎」
ギュッ
男「ほら。これでどうだ」
狐娘「男の手、冷たいぞ」
男「え゛っ」
男「……そういえば冷え性だった…………」シクシク
狐娘「でも、繋いでないよりマシだ。このままでいい」
男「ごめんな……」
狐娘「謝る事ではないぞ」
狐娘「余の手はどうだ。冷たくはないか?」
男「……あったかい」
狐娘「そうか、よかった」
狐娘「……いいのか?」
男「僕も寒いから、寧ろ歓迎」
ギュッ
男「ほら。これでどうだ」
狐娘「男の手、冷たいぞ」
男「え゛っ」
男「……そういえば冷え性だった…………」シクシク
狐娘「でも、繋いでないよりマシだ。このままでいい」
男「ごめんな……」
狐娘「謝る事ではないぞ」
狐娘「余の手はどうだ。冷たくはないか?」
男「……あったかい」
狐娘「そうか、よかった」
62: 2013/02/08(金) 23:20:39.54
ピチャン ピチャン……
男「帰ったら、また風呂入ろうかな……」
狐娘「またか」
男「ところどころ濡れてるしさ」
男「やっぱ、温泉は来るべきじゃなかったかも」
狐娘「だが、おかげで貴重な体験が出来たぞ」
男「……まぁ、貴重な体験はしたかな」
男(狐娘と混浴……)
狐娘「鼻の下が伸びておるぞ」
男「マジでか」
狐娘「嘘だ」
男「しょうもない嘘をつくな」
ギュゥウウウ
狐娘「いだだだだっ」
男「帰ったら、また風呂入ろうかな……」
狐娘「またか」
男「ところどころ濡れてるしさ」
男「やっぱ、温泉は来るべきじゃなかったかも」
狐娘「だが、おかげで貴重な体験が出来たぞ」
男「……まぁ、貴重な体験はしたかな」
男(狐娘と混浴……)
狐娘「鼻の下が伸びておるぞ」
男「マジでか」
狐娘「嘘だ」
男「しょうもない嘘をつくな」
ギュゥウウウ
狐娘「いだだだだっ」
63: 2013/02/08(金) 23:24:46.03
――夜、自宅、居間
狐娘「炬燵の電源を」
男「はい」パチッ
狐娘「……おー、あったかあったか」
男「もう夜だし、そろそろ寝るか」
狐娘「もう寝る時間なのか……やっぱり、時間はあっという間だの」
男「寝る時は僕の部屋のベッド――寝床、使っていいよ」
狐娘「男はどうする」
男「居間で布団敷いて寝るよ」
狐娘「……そうか。すまぬな」
男「前は遠慮してたのにね」クスッ
狐娘「遠慮したところで、男が引かぬからの」
男「よくわかってらっしゃる」
狐娘「……では、そろそろ寝るとするか」
狐娘「炬燵の電源を」
男「はい」パチッ
狐娘「……おー、あったかあったか」
男「もう夜だし、そろそろ寝るか」
狐娘「もう寝る時間なのか……やっぱり、時間はあっという間だの」
男「寝る時は僕の部屋のベッド――寝床、使っていいよ」
狐娘「男はどうする」
男「居間で布団敷いて寝るよ」
狐娘「……そうか。すまぬな」
男「前は遠慮してたのにね」クスッ
狐娘「遠慮したところで、男が引かぬからの」
男「よくわかってらっしゃる」
狐娘「……では、そろそろ寝るとするか」
65: 2013/02/08(金) 23:28:12.68
男「部屋の場所、分かる?」
狐娘「二階の突き当りを左、だろう?」
男「うん」
男「おやすみ」
狐娘「おやすみ」
――深夜、2階、男の部屋
ザァァァァァア……
狐娘「……」
ザァァァァァア……
狐娘(雨音がうるさくて寝れん)
狐娘「……」
狐娘(男は、もう寝たかの)
狐娘「二階の突き当りを左、だろう?」
男「うん」
男「おやすみ」
狐娘「おやすみ」
――深夜、2階、男の部屋
ザァァァァァア……
狐娘「……」
ザァァァァァア……
狐娘(雨音がうるさくて寝れん)
狐娘「……」
狐娘(男は、もう寝たかの)
66: 2013/02/08(金) 23:33:22.58
――居間
ザァァァァァア……
男「……」
男(……雨、止まないな)
タッ タッ タッ……
男(……足音?)クルッ
狐娘「なにをしておる」
男「それはこっちの台詞」
狐娘「……雨音が気になって寝れなくての」
男「僕も、そんなとこ」
男「だからこうして窓際で外を眺めてた」
狐娘「隣、いいか」
男「うん」
タッ タッ……
狐娘「……」スッ
男「……」
ザァァァァァア……
男「……」
男(……雨、止まないな)
タッ タッ タッ……
男(……足音?)クルッ
狐娘「なにをしておる」
男「それはこっちの台詞」
狐娘「……雨音が気になって寝れなくての」
男「僕も、そんなとこ」
男「だからこうして窓際で外を眺めてた」
狐娘「隣、いいか」
男「うん」
タッ タッ……
狐娘「……」スッ
男「……」
67: 2013/02/08(金) 23:39:16.77
ザァァァァァア……
狐娘「冷える」
男「そりゃあ暖房も何も点けてないからね」
男「点ける?」
狐娘「……いや、いい」
男「そう」
男「……」
ピトッ
狐娘「……なんだ」
男「いや、こうして肩をくっつけてるとあったかいって、昼間言ってたし」
狐娘「そうだったかの」
男「やめたほうがよかったかな」
狐娘「……いや、いい。このままで」
男「そっか」
狐娘「うむ」
狐娘「冷える」
男「そりゃあ暖房も何も点けてないからね」
男「点ける?」
狐娘「……いや、いい」
男「そう」
男「……」
ピトッ
狐娘「……なんだ」
男「いや、こうして肩をくっつけてるとあったかいって、昼間言ってたし」
狐娘「そうだったかの」
男「やめたほうがよかったかな」
狐娘「……いや、いい。このままで」
男「そっか」
狐娘「うむ」
68: 2013/02/08(金) 23:42:53.14
ザァァァァァア……
男「初めて会った時も、こんな大雨の日だったね」
狐娘「……あまり覚えておらぬ」
男「こんな、大雨の日だったんだよ」
男「最初はビックリしたなぁ。いきなり泊めてくれだなんて言われて」
狐娘「恥ずかしいからやめろ」
男「でも、どうしてここに来たの?」
男「他にも家は沢山あるのにさ」
狐娘「……たまたま」
男「そっか。偶然この家だったってだけなんだ」
狐娘「……うむ」
狐娘「……いや、嘘を吐いた」
狐娘「本当は、美味そうな匂いがしたから……」
男「あぁ。そういえば、あの時も稲荷寿司を食べたっけ」
男「初めて会った時も、こんな大雨の日だったね」
狐娘「……あまり覚えておらぬ」
男「こんな、大雨の日だったんだよ」
男「最初はビックリしたなぁ。いきなり泊めてくれだなんて言われて」
狐娘「恥ずかしいからやめろ」
男「でも、どうしてここに来たの?」
男「他にも家は沢山あるのにさ」
狐娘「……たまたま」
男「そっか。偶然この家だったってだけなんだ」
狐娘「……うむ」
狐娘「……いや、嘘を吐いた」
狐娘「本当は、美味そうな匂いがしたから……」
男「あぁ。そういえば、あの時も稲荷寿司を食べたっけ」
70: 2013/02/08(金) 23:48:33.55
狐娘「あの時の稲荷寿司は、一人で作ったのか?」
男「うん。あんまり美味しくなかったでしょ」
狐娘「あれが初めてだったからの……」
狐娘「今日食べたものの方が美味かったとは言える」
男「そうだろうねぇ」
狐娘「稲荷寿司は割と手間が掛かるから普段は作らない、そう言っておったな」
男「うん」
狐娘「では、なぜあの時は作っていたのだ?」
男「……たまたま」
狐娘「偶々か」
男「……いや、嘘を吐いた」
男「本当は、あげようと思って」
狐娘「誰に」
男「狐の妖怪」
男「うん。あんまり美味しくなかったでしょ」
狐娘「あれが初めてだったからの……」
狐娘「今日食べたものの方が美味かったとは言える」
男「そうだろうねぇ」
狐娘「稲荷寿司は割と手間が掛かるから普段は作らない、そう言っておったな」
男「うん」
狐娘「では、なぜあの時は作っていたのだ?」
男「……たまたま」
狐娘「偶々か」
男「……いや、嘘を吐いた」
男「本当は、あげようと思って」
狐娘「誰に」
男「狐の妖怪」
71: 2013/02/08(金) 23:51:42.41
狐娘「……」
男「たまーに見かけてたんだ。キミのこと」
男「でも、妖に関わるのはダメだって両親から釘を刺されてたからさ」
男「話しかけづらかったんだ」
男「でも、一人暮らしだからね。ちょっと関わったくらいでバレる訳がないと思って」
男「キミがここに訪れた時は、悩んだ挙句、泊めちゃった」
狐娘「バレていたではないか」
男「そうだね。酷く叱られた」
男「でも、今はもう居ないから、平気」
狐娘「……氏んでしまったのか?」
男「いや。縁を切った」
狐娘「……なぜそのようなことを」
男「知ってるだろ? 父は虚無僧で、僕にあとを継がせようとしてたんだ」
男「そんなの嫌だったから、切ってやった」
男「たまーに見かけてたんだ。キミのこと」
男「でも、妖に関わるのはダメだって両親から釘を刺されてたからさ」
男「話しかけづらかったんだ」
男「でも、一人暮らしだからね。ちょっと関わったくらいでバレる訳がないと思って」
男「キミがここに訪れた時は、悩んだ挙句、泊めちゃった」
狐娘「バレていたではないか」
男「そうだね。酷く叱られた」
男「でも、今はもう居ないから、平気」
狐娘「……氏んでしまったのか?」
男「いや。縁を切った」
狐娘「……なぜそのようなことを」
男「知ってるだろ? 父は虚無僧で、僕にあとを継がせようとしてたんだ」
男「そんなの嫌だったから、切ってやった」
73: 2013/02/08(金) 23:58:10.08
狐娘「随分とあっさりしているのだな」
狐娘「そういうのは、もっと躊躇するものではないのか?」
男「躊躇なんてするもんか」
男「虚無僧は悪い霊や、……妖だって退治する職業だからね」
男「そんなのに成り下がるのはごめんだ」
狐娘「……そうか」
男「大体、妖の悪い面ばかりみすぎなんだよ」
男「例えば……土地が豊かでいられるのは、妖が守っているからなんだろう?」
狐娘「そのような者もおる」
男「……確かに、悪い妖はいる。自分の身を守る為に……退治しなきゃいけない時もあると思う」
男「でも、全部が悪と決めてかかる虚無僧にはなりたくない」
男「全部悪だと決め付けるのは楽だけどさ。見定める必要もなくて、手間がないかもしれないけどさ……」
男「そんなの絶対おかしいよ」
狐娘「そういうのは、もっと躊躇するものではないのか?」
男「躊躇なんてするもんか」
男「虚無僧は悪い霊や、……妖だって退治する職業だからね」
男「そんなのに成り下がるのはごめんだ」
狐娘「……そうか」
男「大体、妖の悪い面ばかりみすぎなんだよ」
男「例えば……土地が豊かでいられるのは、妖が守っているからなんだろう?」
狐娘「そのような者もおる」
男「……確かに、悪い妖はいる。自分の身を守る為に……退治しなきゃいけない時もあると思う」
男「でも、全部が悪と決めてかかる虚無僧にはなりたくない」
男「全部悪だと決め付けるのは楽だけどさ。見定める必要もなくて、手間がないかもしれないけどさ……」
男「そんなの絶対おかしいよ」
74: 2013/02/09(土) 00:02:55.01
狐娘「……そんな事を考えておったのか」
男「うん」
男「なんか、ごめん。愚痴みたくなっちゃったな」
狐娘「構わん」
狐娘「余は、男の事をまだよく知らぬ」
狐娘「だが、今ので少し詳しくなったぞ」
男「詳しくなってどうするんだよ」
狐娘「……どうするのだろう?」
男「僕に聞かれても分からないよ」
狐娘「うむ……そうだの」
ザァァァァァア……
狐娘「なぜだか、今はこの雨音が心地よい」
男「だね」
狐娘「男もそう思うか」
男「うん……なんでだろうね」
狐娘「さぁの」
男「うん」
男「なんか、ごめん。愚痴みたくなっちゃったな」
狐娘「構わん」
狐娘「余は、男の事をまだよく知らぬ」
狐娘「だが、今ので少し詳しくなったぞ」
男「詳しくなってどうするんだよ」
狐娘「……どうするのだろう?」
男「僕に聞かれても分からないよ」
狐娘「うむ……そうだの」
ザァァァァァア……
狐娘「なぜだか、今はこの雨音が心地よい」
男「だね」
狐娘「男もそう思うか」
男「うん……なんでだろうね」
狐娘「さぁの」
75: 2013/02/09(土) 00:07:11.38
男「……」チラッ
男「うわっ、もう三時になろうとしてるっ」
狐娘「? 三時になると夜更かしなのか?」
男「あと三時間ほどしたら夜が明ける、っていえば実感湧く?」
狐娘「おぉ、それは夜更かしだ」
狐娘「もう寝床に戻らないとダメか」
男「……」
男「もうちょっと、こうしててもいい?」
狐娘「……うむ」
男「ありがとう」
狐娘「うむ……今回限りだぞ」
男「なんと、今回限りですか」
狐娘「不満か」
男「多いに不満だ」
男「うわっ、もう三時になろうとしてるっ」
狐娘「? 三時になると夜更かしなのか?」
男「あと三時間ほどしたら夜が明ける、っていえば実感湧く?」
狐娘「おぉ、それは夜更かしだ」
狐娘「もう寝床に戻らないとダメか」
男「……」
男「もうちょっと、こうしててもいい?」
狐娘「……うむ」
男「ありがとう」
狐娘「うむ……今回限りだぞ」
男「なんと、今回限りですか」
狐娘「不満か」
男「多いに不満だ」
76: 2013/02/09(土) 00:12:07.80
狐娘「じゃあ……後二回くらい」
男「後二回か」
狐娘「うむ」
男「もう一声」
狐娘「……三回」
男「それで手を打とう」
狐娘「うむ、交渉成立だ」
男「ところで、これってなんの回数だろう」
狐娘「しらんかったんかいっ!」
男「いやだって、もう少しこうしていたいって言ったのに、回数を指定されるってどゆこと」
狐娘「……確かに」
狐娘「……これ、なんの回数?」
男「僕に聞くなよ」
男「後二回か」
狐娘「うむ」
男「もう一声」
狐娘「……三回」
男「それで手を打とう」
狐娘「うむ、交渉成立だ」
男「ところで、これってなんの回数だろう」
狐娘「しらんかったんかいっ!」
男「いやだって、もう少しこうしていたいって言ったのに、回数を指定されるってどゆこと」
狐娘「……確かに」
狐娘「……これ、なんの回数?」
男「僕に聞くなよ」
77: 2013/02/09(土) 00:17:15.66
狐娘「ふぅむ……」
狐娘「……ふぅむ」
狐娘「……頼みごとを聞く回数、とか?」
男「僕の頼みごとを三回聞いてくれるのか」
狐娘「聞くだけだがの」
男「ちぇー」
狐娘「言ってみい。聞くだけ聞いてやるぞ」
男「……急にそんなこと言われてもなぁ」
男「こうしてるだけで十分っていうか……」
狐娘「無欲なやつよの」
男「保留ってことで」
狐娘「雨が止むまでの間、保留にしてやろう」
狐娘「……ふぅむ」
狐娘「……頼みごとを聞く回数、とか?」
男「僕の頼みごとを三回聞いてくれるのか」
狐娘「聞くだけだがの」
男「ちぇー」
狐娘「言ってみい。聞くだけ聞いてやるぞ」
男「……急にそんなこと言われてもなぁ」
男「こうしてるだけで十分っていうか……」
狐娘「無欲なやつよの」
男「保留ってことで」
狐娘「雨が止むまでの間、保留にしてやろう」
79: 2013/02/09(土) 00:20:36.57
ザァァァァァア……
男「……雨、止まないな」
狐娘「……」
男「……」
狐娘「……」
男「なぁ、狐娘」
狐娘「……」
男「……狐娘?」
コツン
狐娘「……」zzZ
男「……先に寝るとは。許すまじ」
男(僕も、このまま寝てしまおうか……)
狐娘「すぅ……すぅ……」
男「……雨、止まないな」
狐娘「……」
男「……」
狐娘「……」
男「なぁ、狐娘」
狐娘「……」
男「……狐娘?」
コツン
狐娘「……」zzZ
男「……先に寝るとは。許すまじ」
男(僕も、このまま寝てしまおうか……)
狐娘「すぅ……すぅ……」
81: 2013/02/09(土) 00:25:41.91
男「……」
男(風邪引くといけないからな。ちゃんと布団に寝かせよう)
ギュッ
狐娘「んん……すぅ……すぅ……」
男(そんなにくっつかれると、身動きが取れないんだけど……)
男「……」
ギュッ
男(ちっちゃい体だな……ちゃんと飯食ってるのかな)
男「……」
ウツラ ウツラ……
男「……ぐぅ」zzZ
男(風邪引くといけないからな。ちゃんと布団に寝かせよう)
ギュッ
狐娘「んん……すぅ……すぅ……」
男(そんなにくっつかれると、身動きが取れないんだけど……)
男「……」
ギュッ
男(ちっちゃい体だな……ちゃんと飯食ってるのかな)
男「……」
ウツラ ウツラ……
男「……ぐぅ」zzZ
82: 2013/02/09(土) 00:29:29.70
――朝
狐娘「……んんっ」ブルッ
狐娘「手足が寒い……」
狐娘「……おろ」
狐娘(男に腕で拘束されて動けない)
男「ぐぅ……ぐぅ……」
狐娘「おい、こら」ペシペシ
男「んんん…………」パチッ
男「んー……」チラッ
男「……あっ」バッ
狐娘「……んんっ」ブルッ
狐娘「手足が寒い……」
狐娘「……おろ」
狐娘(男に腕で拘束されて動けない)
男「ぐぅ……ぐぅ……」
狐娘「おい、こら」ペシペシ
男「んんん…………」パチッ
男「んー……」チラッ
男「……あっ」バッ
84: 2013/02/09(土) 00:33:55.23
狐娘「余を抱き枕かのようにかかえておったの」
男「ご、ごめん……」
男(あれ? 寝落ちする前は確か逆だったような気がするんだけど……)
狐娘「まぁよい」
チュン チュン……
男「雀が鳴いてる……」
狐娘「……雨、止んだの」
男「……」
男「朝飯、食べてくか?」
狐娘「……いいや」フルフル
男「ご、ごめん……」
男(あれ? 寝落ちする前は確か逆だったような気がするんだけど……)
狐娘「まぁよい」
チュン チュン……
男「雀が鳴いてる……」
狐娘「……雨、止んだの」
男「……」
男「朝飯、食べてくか?」
狐娘「……いいや」フルフル
85: 2013/02/09(土) 00:39:02.24
――玄関前
狐娘「世話になったの」
男「久々にキミと話せて、楽しかったよ」
狐娘「……それじゃあ、の」
ザッ ……
男「……」
男「雨、止まないな」
狐娘「……止んでおるではないか」
男「……」フルフル
男「また降りだしてきたみたいだよ」
狐娘「……キザな男」
男「だったら、別れ際にそんな顔しないでよ」
男「そんな、今にも泣き出しそうな顔を見せられたら、雨が降っちゃうよ」
狐娘「……なら。雨宿り、させてもらおうかの」
狐娘「世話になったの」
男「久々にキミと話せて、楽しかったよ」
狐娘「……それじゃあ、の」
ザッ ……
男「……」
男「雨、止まないな」
狐娘「……止んでおるではないか」
男「……」フルフル
男「また降りだしてきたみたいだよ」
狐娘「……キザな男」
男「だったら、別れ際にそんな顔しないでよ」
男「そんな、今にも泣き出しそうな顔を見せられたら、雨が降っちゃうよ」
狐娘「……なら。雨宿り、させてもらおうかの」
86: 2013/02/09(土) 00:39:43.44
おわり
87: 2013/02/09(土) 00:40:33.33
ほんわかした乙
88: 2013/02/09(土) 00:40:36.56
乙
89: 2013/02/09(土) 00:43:11.60
何の山もなくてすまんな
92: 2013/02/09(土) 00:49:55.27
最後は雨が止んで狐の嫁入りかと思ったが違った
乙
乙
引用元: 男「雨、止まないな」狐娘「うむ」
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