1: 2011/07/18(月) 16:38:42.32
律「……」
ガチャッ キー
律「」ピク
梓「あ、やっぱりここにいた」
律「……何だお前か」
梓「何だとは何ですか」
律「何しに来たんだよ」
梓「お昼を食べに」
律「教室で食え」
梓「一緒に食べましょうよ」
律「一人で静かに食いたいんだ」
梓「けち」
律「何とでもいえ」
梓「せっかくウインナーあげようと思ったのに」
律「」ピクリ
梓「ほら、たこさんウインナー」
律「……」
梓「私の手作りですよ。早起きして作ったんです」
律「……」
梓「料理は慣れてないんですけど案外上手くいきました」
律「……卵焼き」
梓「へっ?」
律「その卵焼きもつけろ」
梓「よくばり」
律「うっせ」
梓「仕方ないですね、それでいいですよ」
律「ん。座れよ」
梓「失礼します」
2: 2011/07/18(月) 16:39:38.47
梓「いい天気ですね」
律「ん。暑いぐらいだ」
梓「夏ですから」
律「そっか。もう夏か」
梓「でも、日陰だから涼しいです」
律「暑い日陰があってたまるか」
梓「それもそうですね」
律「……」
3: 2011/07/18(月) 16:40:33.82
梓「はい、どうぞ」
律「……何してんだ」
梓「何って、あーん」
律「自分で食えるから」
梓「……」シュン
律「……分かったよ、さっさとしろ」
梓「!」パアァ
律「ちっ」
梓「はい、あーん」
律「」パクッ
律「……」モグモグ
梓「どうですか?」
律「甘い」
梓「……」
律「……」
梓「甘い卵焼きは嫌いでしたか?」
律「……」
梓「ごめんなさい、気がつきませんでした」
律「……」
梓「そっか、失敗」
律「美味しい」
梓「えっ?」
律「美味しいって言ったんだよ」
梓「本当ですかっ?」
律「お前にお世辞なんか言うか」
梓「わぁ、嬉しいです」
律「……ウインナーも」
梓「はい、どうぞ」
律「……」モグモグ
梓「……」
律「」ング
梓「……」ジー
律「……美味しい」
梓「えへへ」
4: 2011/07/18(月) 16:41:39.27
律「……」ムシャムシャ
梓「……」ジー
律「何だよ」
梓「律先輩ってお昼はいつもサンドウィッチなんですか?」
律「別に。何となく」
梓「栄養偏っちゃいますよ」
律「ほっとけ」
梓「いーえ、ほっとけません」
律「……」
梓「うーん……そうだ! 今度私がお弁当を作ってきます!」
律「いらん」
梓「そんなこと言わないで。頑張って作りますんで」
律「いらんものはいらん」
梓「あうぅ……」
律「……」
梓「ぐすん」
律「……作ってくれたら食べるよ」
梓「本当ですか!?」
律「材料がもったいないからな」
梓「わぁい! 私、頑張ります!」
律「ん、頑張れ」
5: 2011/07/18(月) 16:42:31.78
梓「ふぅ~、お腹いっぱいです」ポンポン
律「ウインナーと卵焼きごっそさん」
梓「お粗末様です」
律「……」
梓「」ゴロリ
律「何してんだ」
梓「うぅん、律先輩のひざ枕気持ちいいです」
律「暑い。重い。どけ」
梓「いいじゃないですか」
律「よくねーし」
梓「……けち」
律「ほら、どいたどいた」
梓「あぁもう、ひざたてないでくださいよ」
律「私の勝手だ」
梓「肩なら寄りかかってもいいですか?」
律「……」
梓「いいんですね」
律「好きにしろよ」
梓「ありがとうございます……んしょ」
律「……」
梓「えへへ~、楽ちん楽ちん」
律「……やっぱ重いからどけ」
梓「いやですよーだ」
律「肩動かすぞ」
梓「やめてください。頭地面に打っちゃいます」
律「受け身でもとれよ」
梓「とりません」
律「何でだよ」
梓「何でも」
律「……」
梓「どかさないんですか?」
律「めんどい」
梓「そうですか」
律「……」
梓「えへへ」
律「……」
梓「やっぱり律先輩は優しいです」
律「うっせ、黙ってろ」
梓「くすっ、恐い恐い」
6: 2011/07/18(月) 16:43:44.17
キーンコーン カーンコーン
律「……」
梓「チャイム鳴りましたよ」
律「んなもん聞きゃ分かる」
梓「そうですね」
律「……」
梓「戻らないんですか?」
律「ん、めんどい」
梓「授業は?」
律「知らね」
梓「ふぅん」
律「……」
梓「……」
律「お前は戻れ」
梓「私ももう少しいます」
律「いや帰れよ」
梓「……」
律「二年のうちからサボんじゃねえ」
梓「律先輩こそ受験生のくせにサボっちゃ駄目じゃないですか」
律「私はいいんだ」
梓「後になって苦労しますよ」
律「今でも大いに苦労してるよ」
梓「嘘つき」
律「嘘じゃねーよ。部活にバンドにドラムに……」
梓「全部軽音部絡みなんですね」
律「悪いか」
梓「いえいえ、ご立派」
律「……」
梓「いつも部長の仕事頑張ってますもんね」
律「ん、多分」
梓「律先輩は、やることはちゃんとやる人です……不真面目だけど」
律「一言余計だ」
梓「それは失礼」
律「ちっ……」
7: 2011/07/18(月) 16:44:33.29
律「……」
梓「……」
律「……あっ」
梓「どうしたんですか?」
律「もう一つ苦労してることがあった」
梓「?」
律「後輩」
梓「……それも軽音部絡み」
8: 2011/07/18(月) 16:45:20.17
律「お前はやけに私に絡むよな」
梓「いけませんか?」
律「別に」
梓「じゃあ、いいじゃないですか」
律「うん、まあ」
梓「……」
律「……」
律「私に付き合って不真面目になっていいのかよ」
梓「私の自由です」
律「そうだけど。でも、お前っていかにも真面目キャラだし」
梓「まあ、中学までは授業さぼらない程度には真面目でした」
律「高校入ってからは?」
梓「この通りです」
律「ふぅん」
梓「律先輩のせいですね」
律「何でだよ」
梓「律先輩がサボるから」
律「それこそ私の自由だ」
9: 2011/07/18(月) 16:46:30.48
律「お前は澪とかムギの方に懐きそうなのに」
梓「二人ともすごく尊敬してますよ」
律「ふぅん」
梓「格好いい澪先輩、優しいムギ先輩……もちろん明るい唯先輩も尊敬してます」
律「私は?」
梓「尊敬とは別次元です」
律「どういう意味だよ」
梓「さぁ」
律「何だそれ」
梓「悪い意味じゃないと思いますよ?」
律「なら許す」
梓「相変わらず単純ですね」
律「うっせ」
梓「くすくす」
10: 2011/07/18(月) 16:47:41.74
梓「あ、見て律先輩」
律「ん?」
梓「入道雲」
律「ほんとだ」
梓「でっかいですね」
律「こっち来なきゃいいな」
梓「あっちいけー、あっちいけー」
律「それじゃ雨乞いしてるみたいだぞ」
梓「……はっ」
律「ずっと北の方にあるし大丈夫だよ」
梓「じゃあ、あっちの方は大雨ですか?」
律「多分な」
梓「雷とか鳴ってるんですか?」
律「そうじゃねーの」
梓「こわいです……」ギュッ
律「……」
梓「……」ギュウゥ
律「どさくさに紛れて抱きつくな」
梓「分かりました?」
律「大体お前は雷なんか怖がるような性格じゃないだろ」
梓「そうでした」
11: 2011/07/18(月) 16:48:29.05
律「……」
梓「……」
律「放せよ」
梓「いやです」
律「暑い。重い」
梓「無理矢理放せばいいじゃないですか」
律「……」
梓「放さないんですか?」
律「めんどい」
梓「そうですか」
律「……」
梓「満更でもないって顔してますよ」
律「黙ってろ」
梓「はーい」
律「……」
梓「りーつせんぱい」キュッ
律「……」ハァ
25: 2011/07/20(水) 00:45:29.41
イッチニー ファイト イッチニー ファイト
梓「かけ声が聞こえてきますね」
律「暑い中ご苦労なこった」
梓「あれ律先輩のクラスじゃないんですか?」
律「さぁ」
梓「ほら、澪先輩やムギ先輩らしき人が」
律「……」
梓「後ろの方でへばってるのは唯先輩かな?」
律「……」
梓「あ、こけた」
律「っ?」
梓「大丈夫かな……あ、誰か近づいていった」
律「……」
梓「あの眼鏡の人は和先輩かな」
律「……」
梓「ふふ、幼なじみっていいなぁ」
26: 2011/07/20(水) 00:46:18.10
律「おい、梓」
梓「何ですか?」
律「日陰入っとけ」
梓「ちょっと暑いけど大丈夫ですよ」
律「お前すぐ日焼けするだろ」
梓「あ、それは嫌かも」
律「それに、熱中症なっても知らねーぞ」
梓「……そうなったらどうします?」
律「ほっとく」
梓「嘘つき」
律「……」
梓「律先輩はきっと必氏になって助けてくれます」
律「んなこと分からねーし」
梓「じゃあ、一度熱中症になってみようかな」
律「ばか言ってないでこっち来いっ」
梓「……はーい」
27: 2011/07/20(水) 00:47:00.49
梓「それにしても、体育なんだったらサボらなくてもよかったのに」
律「めんどい」
梓「怠け者」
律「何を今更」
梓「ドラム叩いてるときはあんなに一生懸命なのに」
律「そのときは集中できるんだ」
梓「その集中力を授業にも回しましょうよ」
律「授業は嫌い。ドラムは好き」
梓「頑張りましょうよ、受験生」
律「そもそも受験するかも分からないし」
梓「じゃあどうするんですか」
律「さぁ」
梓「……律先輩は仕方のない人です」
律「ほっとけ」
28: 2011/07/20(水) 00:48:12.95
梓「ここって先生が見回りに来たりしないんですか?」
律「ん。来たことないな」
梓「ふぅん」
律「大体、こんな暑い日に屋上まで見回るのはよっぽどの物好きだよ」
梓「それもそうですね」
律「……」
梓「そういえば、律先輩と初めて会ったのも屋上でしたね」
律「そうだっけ」
梓「去年の四月です。覚えてないんですか?」
律「忘れた」
梓「……ばか」
律「うるせーし」
29: 2011/07/20(水) 00:49:09.75
梓「屋上に上がっていく人を見かけたから、ちょっと覗いてみたら律先輩がいて」
律「……」
梓「そしたら律先輩、いきなり仏頂面で睨んできたんですよ」
律「ふぅん」
梓「覚えてないんですか?」
律「うん」
梓「……」
30: 2011/07/20(水) 00:49:45.66
梓「恐喝とかされるのかなって思っちゃいましたし」
律「んなことするかっ」
梓「だって、不良の人に見えたんですもん」
律「あのなぁ」
梓「けど、話してみたら意外にいい人だなって」
律「意外には余計だ」
梓「くす、ごめんなさい」
律「ちっ……」
梓「そっか、まだ一年か」
律「もう一年だろ」
梓「……そうですね」
律「ぁん?」
31: 2011/07/20(水) 00:53:15.40
失礼、>>30訂正
梓「屋上に上がっていく人を見かけたから、ちょっと覗いてみたら律先輩がいて」
律「……」
梓「そしたら律先輩、いきなり仏頂面で睨んできたんですよ」
律「ふぅん」
梓「覚えてないんですか?」
律「うん」
梓「……」
梓「恐喝とかされるのかなって思っちゃいましたし」
律「んなことするかっ」
梓「だって、不良の人に見えたんですもん」
律「あのなぁ」
梓「けど、話してみたら意外にいい人だなって」
律「意外には余計だ」
梓「くす、ごめんなさい」
律「ちっ……」
梓「そっか、まだ一年か」
律「もう一年だろ」
梓「……そうですね」
梓「屋上に上がっていく人を見かけたから、ちょっと覗いてみたら律先輩がいて」
律「……」
梓「そしたら律先輩、いきなり仏頂面で睨んできたんですよ」
律「ふぅん」
梓「覚えてないんですか?」
律「うん」
梓「……」
梓「恐喝とかされるのかなって思っちゃいましたし」
律「んなことするかっ」
梓「だって、不良の人に見えたんですもん」
律「あのなぁ」
梓「けど、話してみたら意外にいい人だなって」
律「意外には余計だ」
梓「くす、ごめんなさい」
律「ちっ……」
梓「そっか、まだ一年か」
律「もう一年だろ」
梓「……そうですね」
32: 2011/07/20(水) 00:53:50.58
梓「さっき澪先輩、熱心に走ってましたよ」
律「あいつは真面目だからな」
梓「いいんですか、どんどん置いてかれますよ?」
律「別に、ずっと前に差をつけられてるよ」
梓「……律先輩っていつから澪先輩と一緒なんですか?」
律「さぁ、十年ぐらいかな」
梓「そっか、十年か……」
律「それが?」
梓「幼なじみっていいなって」
律「別に、何てことないよ」
梓「でも親友とは違うじゃないですか」
律「んーそうか?」
梓「そうですよ……幼なじみは子供のときにしか作れませんから」
律「別に幼なじみだからって特別扱いはしないけど」
梓「周りがしちゃうんです」
律「ん?」
梓「……何でもありません」
33: 2011/07/20(水) 00:55:00.67
梓「……」
律「……」
梓「こうやってのんびり空を眺めてるってのもいいですね」
律「だな。ちょっと雲が増えてきたけど」
梓「私は快晴よりも、少しぐらい雲がある方が好きですよ」
律「何でまた」
梓「だって、雲一つない空って寂しいじゃないですか」
律「そういうもんかな」
梓「ほら、あんな風にちぎれた雲とかいいなって思います」
律「ふぅん」
梓「他からはぐれちゃってるけど、何だかその分生き生きしてて」
律「私には行き場をなくしてるように見えるけど」
梓「行き場も何も、別にどこに行ってもいいんです。雲なんだから」
律「ん。それもそうか」
34: 2011/07/20(水) 00:56:14.08
梓「……確かに律先輩って雲みたい」
律「何だよ急に」
梓「澪先輩が以前言ってたんですよ」
律「またあいつは変なことを」
梓「ふわふわしてて、気ままに生きてる感じが似てるって」
律「……」
梓「そういう律先輩が羨ましいって言ってましたよ」
律「知らねーし」
梓「すごく的確なたとえだと思うんですけど」
律「雲みたいって言われてもなぁ」
梓「高い所とか好きそうだし」
律「何とかとけむりは高い所が好きってか?」
梓「そんなこと言ってません」
律「……」
梓「それに、高い所は私も好きですよ」
律「知ってる。こうやって屋上に来るぐらいだもんな」
梓「……まぁ、そういうことです」
35: 2011/07/20(水) 00:57:12.20
律「ふぁ~あ」
梓「眠いんですか?」
律「ん。普段なら寝てる時間だから」
梓「今って普段でも授業中ですよね」
律「そうだよ。それが?」
梓「……」
律「んー我慢できない」トローン
梓「ちょっと律先輩っ?」
律「あ、ダメだ。寝ちゃいそう」
梓「今から寝るには中途半端な時間ですよ」
律「うん、だから梓起こして」
梓「私がですか?」
律「チャイム鳴るまで寝る」
梓「……」
律「お願い」
梓「分かりました、鳴ったら起こしますね」
律「ん、よろしく」
36: 2011/07/20(水) 00:57:50.23
律「そんじゃ、おやすみ」
梓「……」ジー
律「……何だよ」
梓「ひざ枕はいかがですか?」
律「は?」
梓「コンクリートの壁だと硬くて痛いですよ」
律「いやいつもこうやって寝てるし」
梓「さっき肩貸してもらったお礼です」
律「……」
梓「ね?」
律「んじゃ、お言葉に甘えて」
梓「はーい」
律「……」ゴロン
梓「頭痛くないですか?」
律「ん、大丈夫。おやすみ」
梓「おやすみなさい、律先輩……」
43: 2011/07/22(金) 01:12:19.13
律「」スヤスヤ
梓「……」
梓(寝付きのいい人)
梓(いつもは目つき悪いくせに、寝顔は可愛いんだなぁ)
梓(本当に無邪気な顔……律先輩に似合わない)クスッ
44: 2011/07/22(金) 01:12:47.43
梓(……)
梓(ホイッスルが聞こえる。先輩たちのかけ声も)
梓(あ、ヒコーキ雲だ。きれいな二本筋)
梓(中々消えないってことは、明日は雨かな)
梓(……)
梓(さっきの雲どっか行っちゃった。入道雲もとっくに見えない)
梓(……空って目まぐるしく変わるんだな)
律「……」スースー
梓(……)
梓(いきなり消えたりしたらいやですよ、律先輩)
45: 2011/07/22(金) 01:13:14.56
梓(それにしても、あれから一年しか経ってないなんて)
梓(……)
梓(律先輩は忘れたかもしれませんけど、私にとっては大切な思い出なんですよ)
梓(…………)
46: 2011/07/22(金) 01:14:44.10
――――
律『へぇ、ジャズが好きなんだ』
梓『はい、親がジャズ奏者なんです』
律『サラブレッドってやつか』
梓『そんな大したものじゃないですよ』
律『部活はジャズ研とか?』
梓『それがその、どうもしっくりこなくって』
律『ふぅん』
梓『何か、私のやりたいことと違ったっていうか……』
律『……』
梓『多分、部活には入らないと思います』
律『……』
梓『でも音楽は続けたいから、外バンを組もうかなと』
47: 2011/07/22(金) 01:15:10.65
律『……じゃあさ』
梓『?』
律『軽音部に来るか?』
梓『軽音部って……あったんですか?』
律『失礼な』
梓『あ、ごめんなさい』
律『これでも一応部長なんだ』
梓『へぇ~』
律『……』
梓『……溜まり場ですか?』
律『ちげーよ!』
48: 2011/07/22(金) 01:17:37.40
律『私含めて四人だけの小さな部だけどさ。楽しいぜ、すっごく』
梓『どんな部なんですか?』
律『お茶して駄弁って、時々練習』
梓『……練習は時々ですか』
律『めんどいし』
梓『……』
律『今日ちょうど新歓ライブやってるから来いよ』
梓『はぁ』
49: 2011/07/22(金) 01:18:05.25
ジャーン ジャジャッ
ワーワー! パチパチ!
憂『わぁ~、お姉ちゃん格好いい!』
梓『……』
憂『ごめんね、わざわざ付き合ってもらって』
梓『……』
憂『えっと、梓ちゃん?』
梓『……』
50: 2011/07/22(金) 01:18:55.93
ガチャッ
梓『し、失礼します』オズオズ
澪『あ、いらっしゃい』
律『おぉ! 来てくれたんだ、ありがとう』ニコニコ
梓『は、はい』
律『ほら、この前話した逸材だよ』
澪『へぇ、この子が』
梓『……』
律『ささ、中入りなよ。お茶とお菓子用意するから』
梓『はい、それじゃ』
梓(あれ? この前会ったときよりいい人に見える)
律『……』ニヤリ
梓『?』
律『唯、ムギ。退路を断て』
唯『イエッサー!』
紬『りょうか~い』
梓『へっ?』
律『……』ノッシノッシ
梓『え、え~と?』
律『』ギュッ
梓『あ、あの……?』
律『部員一名、確保』
梓『えぇ!?』
51: 2011/07/22(金) 01:19:25.23
梓『ちょ、やめてください!』
さわ子『うん、よく似合ってるじゃない』
唯『あずにゃん可愛い~!』
梓『あずにゃんって何ですか!』
唯『ネコ耳が似合うから』
梓『……』
さわ子『このままメイド服にも挑戦しましょ』
唯『さんせい!』
梓『り、律先輩! お茶飲んでないで助けてください!』
律『何で。いいじゃん』
梓『よくないです!』
律『可愛いよ』
梓『!』ドキッ
唯『ほぇ?』
律『』ズズ
梓『……』
唯『どしたの、あずにゃん』
さわ子『へぇ~……』
52: 2011/07/22(金) 01:19:57.29
ガチャッ キー
梓『……』コソコソ
律『ん、何だ梓か』
梓『は、はい』
律『お前が屋上来るなんて珍しいな』
梓『その、話がありまして』
律『話?』
53: 2011/07/22(金) 01:20:23.76
律『……』
梓『やっぱり、一年生が私だけだと後々大変かなと』
律『……』
梓『ただでさえ少ない人数が減ることになって』
梓『……その、軽音部には申し訳ないんですけど』
律『梓。勘違いすんな』
梓『』ビクッ
律『別に一人減ったところで何もないだろ。軽音部は四人で一年間やってきたんだから』
梓『……』ズキッ
律『人数減るのはどうでもいい。私たちの代で軽音部がなくなるのは残念だけど』
律『最終的に決めるのは梓だから、それは仕方ないと思う』
梓『……はい』
54: 2011/07/22(金) 01:20:50.27
律『だけど、私は梓に辞めてほしくない』
律『軽音部のためにとかじゃなくて……お前とバンドやるの楽しいから』
梓『へっ?』
律『……』
梓『あ、あの。今何て』
律『お前とバンド続けたいっつったんだ!』
梓『!』
律『……何度も言わすな』
梓『え、えっと』
律『……』プイッ
梓『律先輩……』
55: 2011/07/22(金) 01:21:25.34
――――
律「……」スースー
梓「そろそろチャイム鳴りますよ」
律「……」
梓「もう、仕方ないですね」
律「……」
梓「……」
梓(不真面目で怠け者で、口の悪い先輩)
梓(それでも私が惹かれたのは、時々優しい所があるから)
律「……」
梓「……」
梓(ぐうたらなようで案外頑張りやで、冷たいようで優しくて)
梓(気配りが利くようで、実は鈍感……)
梓(いつになったら私の気持ちに気づいてくれるのかな)
律「……」スヤスヤ
56: 2011/07/22(金) 01:22:17.20
梓「……」ジー
律「……」
梓「りーつ」
律「……」
梓「りっちゃん」
律「……」
梓(えへへ。普段は呼び捨てなんかできないもんね)
梓(ひざ枕と目覚まし係のお代です)
律「……」
梓(……)
梓(いつか、名前で呼び合えるような関係になりたいな)
57: 2011/07/22(金) 01:22:44.09
梓(それにしても本当にいい天気)
梓(風通りがよくて、適度に涼しくて。私まで眠くなっちゃう)
梓(律先輩が授業サボってまで屋上にいたいってのも分かるな)
律「……」
梓「」ナデナデ
律「ん~……」
梓「くすくす」
58: 2011/07/22(金) 01:23:15.87
梓(私も屋上が好きですよ)
梓(こうやって空を見ていたら、嫌なことがあってもどうでもよくなっちゃうし)
梓(このほわほわした穏やかな時間も大好きだし)
梓(それに……)チラッ
律「……」スースー
梓「……」
梓(……雲に一番近いから)
59: 2011/07/22(金) 01:23:54.67
・
・
・
律「ん~~」
律「あれ、今何時だ」ムクリ
律「……六限入ってんじゃん」
律「梓、起こせって言った……」
梓「むにゃむにゃ」
律「……」
律「目覚まし時計が寝てどうすんだよ」
梓「……」スヤスヤ
律「たくっ、しゃあねえの」
60: 2011/07/22(金) 01:24:22.11
梓「……」ゴロン
律「……」
律「無邪気に眠りやがって」
梓「……」
律「はぁ~、こりゃさわちゃんに大目玉食らうな」
さわ子「よく分かってるじゃない」
律「」
さわ子「こんな所で何してるのかしら?」
律「いつからいたんだよ」
さわ子「ついさっき。見回りにね」
律「ちっ……」
61: 2011/07/22(金) 01:24:52.87
梓「……」スースー
さわ子「こんな可愛い子にひざ枕できて、いいご身分じゃない」
律「うっせーし」
さわ子「何よ、弁当箱出したまま」
律「昼飯食べてたんだよ」
さわ子「てことは昼休みからここにいる訳?」
律「まぁ」
さわ子「呆れた。こんな暑い日に」
律「日陰だから大丈夫だよ」
さわ子「授業はどうしたの?」
律「……」
さわ子「サボった訳ね」
律「……」プイッ
62: 2011/07/22(金) 01:25:20.44
さわ子「あなた受験生でしょう」
律「受験するって決めてないし」
さわ子「じゃあ就職するの?」
律「さぁ」
さわ子「あのねぇ」
律「……」
さわ子「私はりっちゃんがどの道に行こうと応援してあげるけど」
律「……」
さわ子「まずはそれを決めてもらわないと、応援もできないじゃない」
律「……」
さわ子「とにかく、早く決めなさい」
律「分かってるよ」
さわ子「本当に分かってる?」
律「あーもう! 本当だって」
さわ子「……」
63: 2011/07/22(金) 01:25:48.77
さわ子「そんなことでその子を養っていけるの?」
律「なっ!?」
さわ子「あら、図星だったかしら」
律「違うわい!」
さわ子「顔真っ赤になってるわよ」
律「ひ、日焼けだよ!」
さわ子「ふぅん」
律「大体、バンドメンバーで、しかも後輩に! んなことある訳ないだろ!」
さわ子「そんなに必氏になっちゃ肯定してるようなものよ」
律「うぐっ」
梓「……」スヤスヤ
64: 2011/07/22(金) 01:26:19.27
律「……誰にも言うなよ」
さわ子「そんな野暮なことしないわよ」
律「……」
さわ子「青春ね」
律「うっせ」
さわ子「伝えないの?」
律「女同士なんておかしいし」
さわ子「そんなの関係ないじゃない」
律「……」
65: 2011/07/22(金) 01:26:47.11
さわ子「私は応援するわ。きっと、みんなも応援してくれるはず」
律「別にいいよ、そんなの」
さわ子「あらそうかしら」
律「……」チラッ
梓「……」スースー
律「梓にとっちゃ、私はただの先輩だから」
さわ子「……」
律「変なこと言って困らせたくない」
さわ子「そっか」
66: 2011/07/22(金) 01:27:37.55
さわ子「りっちゃんはそれでいい訳?」
律「……」
さわ子「私には逃げてるだけに見えるんだけど」
律「さわちゃんには関係ないだろ」
さわ子「確かに私に口出しする権利なんてないわ」
律「……」
さわ子「ただ、軽音部の顧問として……あなたの担任として一つだけ言わせて」
律「?」
さわ子「どうして真面目な梓ちゃんが授業サボってまでここにいるのかしらね」
律「よっぽど屋上が好きなんじゃねーの」
さわ子「……」ハァ
律「何だよ」
さわ子「こりゃ筋金入りだわ」
律「何がだよっ」
梓「……」スースー
67: 2011/07/22(金) 01:28:04.10
律「」ナデナデ
梓「ん~」
さわ子「可愛いわね」
律「……」
さわ子「私も」ソー
律「触んな」
さわ子「おーこわ」
律「……」
68: 2011/07/22(金) 01:29:13.07
さわ子「ま、もっとちゃんと考えることね」
律「……」
さわ子「あなたは将来何になりたいのか。梓ちゃんとどうなりたいのか」
律「……」
さわ子「たくさん悩んで納得のいく結論を出しなさい……進路も恋愛も」ヨイショ
律「帰るの?」
さわ子「私は仕事があるの」
律「そっか、大変だ」
さわ子「ええ、誰かさんみたいな不良生徒のせいでね」
律「そりゃどうも」
さわ子「早く授業に戻りなさいよ」
律「……」
梓「……」スヤスヤ
さわ子「……期待はしないけど」
69: 2011/07/22(金) 01:29:40.88
さわ子「あ、それから」
律「?」
さわ子「放課後、職員室に来るように」
律「へいへい」
さわ子「それじゃね、ご両人」
律「ちっ……」
70: 2011/07/22(金) 01:30:08.96
律「……」
梓「……」スヤスヤ
律「なあ、梓」
梓「……」
律「どうしてお前は私につきまとうんだよ」
梓「……」
律「こっちの気も知らないでさ」
71: 2011/07/22(金) 01:30:35.03
律「梓?」
梓「……」
律「」チョイチョイ
梓「……」スースー
律「ん。寝てるな」
梓「……」
律「好きだよ」
梓「……」
律「寝てるときなら言えるんだけどなぁ」
72: 2011/07/22(金) 01:31:01.98
律「お前とどうなりたいかなんて、そんなもん決まってる」
梓「……」
律「でも……」
律「私はお前とこうしてるのが好きだから」
梓「……」
律「想いを伝えて、この時間がなくなるのが恐いんだ」
梓「……」
律「だから、この気持ちは胸に閉まっとく」
梓「……」
73: 2011/07/22(金) 01:32:38.73
梓「……」ムニャ
律「たくっ、幸せそうに寝やがって」
梓「……」
律「わがままで腕白で」
律「明るくて笑顔が絶えなくて」
律「……ホントお前は可愛い後輩だよ」
梓「……」
律「卒業するまででいいからさ」
律「こうやって、側にいてくれ」
梓「……」
74: 2011/07/22(金) 01:33:05.51
梓「……リーツ」
律「」ビクッ
梓「ムニャムニャ」
律「寝言かよ」
梓「……スキ」
律「!?」ギクゥ
梓「……」
律「」ドキドキ
75: 2011/07/22(金) 01:33:47.79
律「すーっ、はーっ」
梓「……」スヤスヤ
律「ふーっ」
梓「……」
律「何言ってんだこいつは」
梓「……」
76: 2011/07/22(金) 01:34:30.46
律「……」ジー
梓「……」スヤスヤ
律「……」
『どうして真面目な梓ちゃんが授業サボってまでここにいるのかしらね』
律「……」
律「そんなの、ありえねーし」
77: 2011/07/22(金) 01:35:18.40
律「……」
梓「……」
律「雲の流れが速いなぁ」
梓「……」
律「……」
律「放課後までには起きてくれよ」
梓「……」
律「まぁ、ずっとこうしてるのもいいけどさ」
梓「……」
律「……」ナデナデ
梓「……」
梓(……律先輩)
End
78: 2011/07/22(金) 01:38:53.04
以上です
書きたかったのはへたれりっちゃんと一途で健気なあずにゃんでした
本当はもう少し短くまとめるつもりだったのですが……
次はもっとアホっぽい二人でコメディ系のssをやれたらなと思いつつ
ここまでお読みいただきありがとうございました
書きたかったのはへたれりっちゃんと一途で健気なあずにゃんでした
本当はもう少し短くまとめるつもりだったのですが……
次はもっとアホっぽい二人でコメディ系のssをやれたらなと思いつつ
ここまでお読みいただきありがとうございました
81: 2011/07/22(金) 01:55:59.07
乙
二人ともかわいくてよかった
二人ともかわいくてよかった
引用元: 律「雲と後輩は高い所が好き」
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