9: 2013/02/12(火) 23:07:25.15 ID:XogkQb2T0
夢の世界へ連れてって。
あなたの声に付いて行く。



怜「竜華、たぶんこっちやで」

竜華「怜、詳しいなあ」

怜「前に一回来たことあるしな」

竜華「一人でやんな」

怜「うん、一人やったから迷って、
寂しかったから帰ったんや」

竜華「今は寂しくない?」

怜「寂しくないで」

竜華「それは、よかった」

11: 2013/02/12(火) 23:10:43.49 ID:XogkQb2T0
二人で川を渡るのね。
こんなに流れ早いのよ。




竜華「怜?これ、すごい流れが早いで?」

怜「うん、けど、これ渡らなあかんねん」

竜華「二人で、やんな?」

怜「うん、二人でこの川を渡るねん」

竜華「二人なら、平気やな」

怜「平気や、安心や。それに、この先へ行けば少しは流れがゆっくりになるんや」

竜華「じゃあ、そこへ行こか」

怜「うん、少し距離があると思うけど、行こか」

竜華「…怜とならどこへでも」

怜「うち、竜華と一緒に来てよかった」

竜華「私も、怜と一緒でよかった」

16: 2013/02/12(火) 23:14:00.30 ID:XogkQb2T0
あなたの腕をつかんだ後で
私はきっとお願いするわ。



怜「どれくらい歩いたやろ?」

竜華「さぁ…同じ風景ばっかでわからへんな」

怜「曲がり角とかの目印はだいたい思い出したんやけど、
距離とかは全然覚えてないねん」

竜華「まあ、ゆっくりでええやん。道さえわかれば」

怜「そやな…あ、竜華、ちょい待って」グイ

竜華「ん?どしたん」

怜「疲れてしもた…」

18: 2013/02/12(火) 23:15:37.83 ID:XogkQb2T0
竜華「こっちへ来ても疲れとかあるんやな」

怜「そうや、ここはまだ向こうやないねん」

竜華「川を渡るまでは、向こうの住人ではないんやな」

怜「そう、普通に疲れるで。けどお腹は減らへんみたい」

竜華「あぁ、そういえば…なんか変な感じやな」

怜「うちは慣れてるけどな」

20: 2013/02/12(火) 23:18:13.21 ID:XogkQb2T0
丘を登った草原。
からだを休ませて、からだを休ませて。



竜華「怜、もう少しだけ行って、あの丘を登ってからにしよ?」

怜「ん、ちょっと頑張る」

竜華「うん、そしたら、休憩しよ」

怜「竜華の膝枕やな」

竜華「ふふ、なんぼでもしてあげるで」

怜「そら、楽しみやなぁ」

竜華「あんなに青々とした草原はなかなかないで」

怜「気持ちがよさそうやなぁ」

竜華「寝転がるんもよさそうやなぁ」

怜「寝転がってもええけど、膝枕忘れたらあかんで?」

竜華「わかってるって」

21: 2013/02/12(火) 23:21:35.58 ID:XogkQb2T0
風が優しい。



怜「竜華の膝枕は最高やなぁ」

竜華「んもう、そんなだらしない顔して」

怜「ええやん。誰もいてないし」

竜華「…そやなぁ。二人きりやなぁ」

怜「あぁ…いい風やな」

竜華「眠くなりそうや」

怜「こういう穏やかな風はええよな」

竜華「うん、…優しい感じがする」

怜「優しい風か…ええな」

竜華「まだ少し歩くんやろ?」

怜「たぶん」

竜華「ほな、もうちょっとこの風に当たろうや」

怜「…賛成や」

22: 2013/02/12(火) 23:24:21.83 ID:XogkQb2T0
私は決めているの、
ずっとあなただけ。



怜「竜華、一緒に来てくれてありがとう」

竜華「え?なに、急に」

怜「うちには、竜華が必要やねん。ずっと、竜華だけ」

竜華「嬉しいけど、恥ずかしいわ、もう」

怜「竜華は?」

竜華「私にも、怜だけやで。ずっとずっと、怜だけ」

怜「バカップルやな、これ」

竜華「言い出しっぺは怜やで」クスクス

怜「…言いたいことは、言えるうちに言うておかんと」

竜華「それもまあ、そやな」

23: 2013/02/12(火) 23:28:58.49 ID:XogkQb2T0
私は決めているの、
心を許す人。



怜「竜華になら、全てをあげるで」

竜華「怜…」

怜「うちにとって竜華は、唯一の人やから」

竜華「私もやで。そやから、こんなとこまで付いてきた」

怜「ごめんな」

竜華「今更やろ、…この身は、この心は全て怜のもんや」

怜「…ありがとう、竜華」

竜華「ううん、ええよ…あ、少し、急ぐ?」

怜「うん、そうしよ」

26: 2013/02/12(火) 23:32:55.15 ID:XogkQb2T0
夢の世界へ連れてって。
あなたの声についていく。



怜「あ、こっち、右や」

竜華「うん、わかった。怜がいてよかった」

怜「うちは2回目やしな。しかも、1回目めっちゃ迷ったし」

竜華「迷って迷って、戻ってきたんやな」

怜「迷ったから帰れたし、一巡先も見えるようになったんかも」

竜華「けど、今回は帰る必要ないんやで」

怜「うん、そやから、迷わんように進むだけた」

竜華「私は怜に付いて行くだけやから」

怜「…任してや、竜華」

28: 2013/02/12(火) 23:36:25.47 ID:XogkQb2T0
二人で町を歩くのね。
誰かが見てる私たち。



怜「お、見えた見えた」

竜華「あれが怜の言う町ってやつ?」

怜「うん、そうやで。川を渡る前に、みんなが過ごす場所や」

竜華「…みんな?誰もいてないで?」

怜「けど、気配感じるやろ?」

竜華「気配…?」

怜「姿は見えへん。けど、向こうにもうちらは見えてないんよ」

竜華「え、どういうこと?」

怜「お互い、心を許した人同士の姿しか見えてないってことや」

竜華「なるほど…じゃあ、あのお店も、あっちも、誰かはいるってこと?」

怜「そうや」

竜華「ほな、見てるようで見えてなくて」

怜「見えてないようで、見てるってことや」

29: 2013/02/12(火) 23:39:31.42 ID:XogkQb2T0
あなたのことは全部教えて。
明日のために仲良くしたい。



竜華「怜、向こうへ行ったらどうなるん?」

怜「さぁ…それは行ってみないことには」

竜華「そらそうやんな」

怜「それでも、何があっても、一緒やで」

竜華「うん、約束」

怜「そうや、竜華…」

竜華「どしたん?」

怜「うちが知らん竜華ってある?」

竜華「ないで、怜は全部知ってる」

怜「じゃあ竜華も、うちのこと全部知ってる?」

竜華「当たり前やで」

怜「そっか、よかった」

30: 2013/02/12(火) 23:42:49.38 ID:XogkQb2T0
角を曲がったお店は、
紅茶が美味しいの、紅茶が美味しいの。



怜「あ、竜華、そこ曲がろ」

竜華「え?ここ?なんかあるん?」

怜「そこを曲がった先に、ええお店があるんよ」

竜華「お店かぁ、何のお店?」

怜「紅茶が美味しいお店」

竜華「紅茶?へぇ…ええなぁってお腹減らへんのちゃうの?」

怜「減らへんけど、食べたらあかんわけちゃうし」

竜華「それもそうか」

怜「前回、フラっと入ったら美味しかったんよ」

32: 2013/02/12(火) 23:45:26.45 ID:XogkQb2T0
竜華「けど、誰が紅茶を出してくれるん?」

怜「お店の人や」

竜華「え?けど、お店の人には私らが見えてないんやろ?」

怜「うん、そやけどほら、気配が、な?」

竜華「うーん、行ってみなわからんな」

怜「そやそや、ほら、ここや」

竜華「ほう、んっ…あ、匂いが」クンクン

怜「入るで~」

33: 2013/02/12(火) 23:50:13.00 ID:XogkQb2T0
時間も止まる。


怜「そこ、座ろか」

竜華「…なんか、怜の言う気配がわかる気がする」

怜「やろ?お店の人はこの町の住人さんやから余計、気配に敏感でな」

竜華「ほうほう」

怜「って、聞いたんよ」

竜華「え、誰に?ここで姿が見える人に会ったん?」

怜「…誰に聞いたか思い出せへんねん。さっきからずっと考えてるんやけど」

竜華「誰やったんやろなぁ」

怜「姿が見えて声も聞こえたってことは心許してる人のはずやんなぁ」

竜華「心当たりないん?」

怜「ないなぁ」

36: 2013/02/12(火) 23:55:06.33 ID:XogkQb2T0
竜華「そっか、ってなんでそのこと話してくれへんかったん?」

怜「お店の人が気配に敏感ってことは、ここに来るまでずっと忘れてた」

竜華「町の人の気配がどうの、は覚えてたやん?」

怜「うーん、なんかこう、記憶に曖昧なとこがあるみたいや」

竜華「こっちの記憶も一緒に帰っていくわけじゃないってことか」

怜「ま、多分そういうこと…あ、来たで」

竜華「おぉ、知らん間にカップが…ええ匂いや」

怜「時間はいっぱいあるし、ゆっくりしよう」

竜華「…うん」

37: 2013/02/12(火) 23:58:13.05 ID:XogkQb2T0
私を離さないで、
喧嘩しただけで。



怜「竜華、うちらって喧嘩したことないな」

竜華「そやっけ?」

怜「ないで、竜華は優しいから喧嘩になる前に折れてくれるし」

竜華「ははは、確かに」

怜「けどもし喧嘩になったら、」

竜華「なったら?」

怜「どうする?」

竜華「どうもせぇへん、解決を探るだけや」

怜「ふふ、竜華らしいわ」

竜華「やろ?」

怜「…うちを離したらイヤやで?」

竜華「何を当たり前なことを言うてんの、もう」

38: 2013/02/13(水) 00:01:47.92 ID:Kqft79Ep0
私を離さないで、
涙を流しても。



怜「竜華って涙もろいよな」

竜華「どうやろ?自覚ないけど、竜華はすぐ泣くって怜は言うやん?」

怜「泣き虫やで、竜華」

竜華「感受性が豊かやねん」

怜「自分で言うかー」

竜華「けど、私が泣いても、どれだけ泣いても」

怜「ん?」

竜華「怜は、私を離したらあかんよ?」

怜「それこそ、当たり前やな」

40: 2013/02/13(水) 00:05:51.10 ID:Kqft79Ep0
私は決めているの、
ずっとあなただけ。



怜「竜華、そろそろやで」

竜華「…うん」

怜「ちょっと緊張するな」

竜華「そやな…」

怜「ほら…水の音や」

竜華「ん…水の音やなぁ」

怜「何回でも言うけど、いい?」

竜華「何回でも、聞く」

怜「…うちにはずっと竜華だけやから」

竜華「私にも、ずっと怜だけや」

怜「ほな…もう行こか」

竜華「うん、行こう」

42: 2013/02/13(水) 00:09:28.60 ID:Kqft79Ep0
私は決めているの、
心を許す人。



怜「…やっぱ流れ早いなぁ」

竜華「元来た場所よりはマシやけどな」

怜「うん、でも、やっぱり早いのは早いし」

竜華「怖い?」

怜「少しだけ」

竜華「でも、渡ってしまえばええんやろ?」

怜「うん、たぶん」

竜華「じゃあ、一歩、踏み出そ」

43: 2013/02/13(水) 00:12:58.27 ID:Kqft79Ep0
私を離さないで、
喧嘩しただけで。



怜「竜華、…もし、戻るなら」

竜華「イヤや!」

怜「もし、もしもの話」

竜華「絶対イヤや!私は絶対離れへんし、約束やろ?」

怜「うん、…ありがとう竜華」

竜華「一緒に川を渡る、怜とずっと一緒にいたい」

怜「うちもや…ほな、行くで」

竜華「…うん」

46: 2013/02/13(水) 00:16:26.06 ID:Kqft79Ep0
私を離さないで、
涙を流しても。



竜華「繋いだ手、絶対離したらあかんで」

怜「うん、絶対離さへん」

竜華「これは、悲しいことでも辛いことでもないんや」

怜「当然や」

竜華「だか、ら…絶対、離したら、あかん」

怜「…竜華、何で泣いてるん」

竜華「わからへん…でも!でも、離さんといて!」

怜「うん…約束」

48: 2013/02/13(水) 00:19:25.34 ID:Kqft79Ep0
夢の世界へ連れてって。
二人で川を渡るのね。



竜華「うっ、この水圧は想像以上やっ」

怜「いける、竜華、ゆっくりやっ」

竜華「うん、怜は大丈夫?」

怜「大丈夫…」

竜華「あと、少し、少し…」

怜「この先には、何が、あるんかな」

竜華「さぁっ、でも、きっと」

怜「きっと?」

竜華「こんなに、きついし、大変やし」

怜「うん、きっついなぁ」

竜華「いいことが、あるって信じてる、絶対!!」

怜「うん、絶対!」

49: 2013/02/13(水) 00:25:00.27 ID:Kqft79Ep0
夢の世界へ連れてって。
二人で町を歩くのね。



竜華「えっ…ここは…さっきと同じ場所?」

怜「…そう見えるけど、うちらちゃんと渡ったやんな?」

竜華「渡ったで、きつかったやん」

怜「けど、目の前に広がるこれはさっきと同じ町…やな」

竜華「あ、怜!人がいる!見えるで!」

怜「ほんまや…」

竜華「渡った先は、人が見える町ってこと?」

怜「そうかも…」

竜華「怜以外の人、めっちゃ久しぶりに見たかも…」

怜「目移りしたらあかんで?」

竜華「当たり前や」

50: 2013/02/13(水) 00:28:54.42 ID:Kqft79Ep0
怜「ほな竜華、少し町を歩こうや…手をつないで?」

竜華「うん」

怜「で、全く同じ町なんやったらあそこに行こうや」



竜華「紅茶の美味しい店?」

怜「そう、紅茶の美味しい店」






おしまい

54: 2013/02/13(水) 00:32:52.96 ID:Kqft79Ep0
以上です、支援ありがとうございました

元ネタというか、2行1行の詩みたいなやつは
Buono!というグループの「紅茶が美味しい店」という歌です

その歌詞を自分なりに解釈してみました
よかったら聞いてみてください

55: 2013/02/13(水) 00:40:37.64 ID:6g/iln0c0

引用元: 竜華「紅茶の美味しい店?」怜「そう」