1: 2014/04/13(日) 22:21:27.02 ID:97h1V6ZE0
うだるような暑さ。
空から降り注がれる光は地を焼き、世界を歪ませる。
私は雪で作られた偶像。
その暑さで少しずつ溶けていく。
指先から、髪の毛から、雫は垂れて、美しさはすでに醜さに変わり、水たまりになる。
そして、いつしかそれは気体になる。まるで、最初からなにもなかったかのように。
世界から忘れられた私は、どこへ行く?
――――あなたの元へ戻りたい。
季節外れの雪を降らせて、今度はあなたと共に輝きたい。
また、1から私に手を差し出してくれますか?
また、1から私を作ってくれますか?
あなたと共に新しい夢を見てみたい。
私はもう2度と消えないから。
空から降り注がれる光は地を焼き、世界を歪ませる。
私は雪で作られた偶像。
その暑さで少しずつ溶けていく。
指先から、髪の毛から、雫は垂れて、美しさはすでに醜さに変わり、水たまりになる。
そして、いつしかそれは気体になる。まるで、最初からなにもなかったかのように。
世界から忘れられた私は、どこへ行く?
――――あなたの元へ戻りたい。
季節外れの雪を降らせて、今度はあなたと共に輝きたい。
また、1から私に手を差し出してくれますか?
また、1から私を作ってくれますか?
あなたと共に新しい夢を見てみたい。
私はもう2度と消えないから。
2: 2014/04/13(日) 22:22:25.97 ID:97h1V6ZE0
「ふぅ、できた」
日課としている自作詩の作成を終え、ゆっくりと机の上に置いてあるお茶に手を伸ばす。
うん、美味しい。
冷たいお茶が私に安らぎと余裕を与えてくれる。
今日の詩は夏の暑さと私をイメージして書いてみた。
もう一度、最初から最後まで推敲してみては、なかなかいい出来だと自画自賛してみる。
これを、プロデューサーや真ちゃんに見せたらどんな反応をするのだろう。
恥ずかしいけど……褒めてくれるかな?
日課としている自作詩の作成を終え、ゆっくりと机の上に置いてあるお茶に手を伸ばす。
うん、美味しい。
冷たいお茶が私に安らぎと余裕を与えてくれる。
今日の詩は夏の暑さと私をイメージして書いてみた。
もう一度、最初から最後まで推敲してみては、なかなかいい出来だと自画自賛してみる。
これを、プロデューサーや真ちゃんに見せたらどんな反応をするのだろう。
恥ずかしいけど……褒めてくれるかな?
3: 2014/04/13(日) 22:24:15.63 ID:97h1V6ZE0
「暑いよぉ……」
今日は夜になっても暑いままで。
冷たいお茶がくれた心地よさはすぐに熱に変わり、汗が頬を沿って落ちてくる。
再び、お茶を口に含ませる。さっき飲んだときより、満足のいく安らぎは与えてくれなかった。
本当にこのまま溶けてしまいそう……。
この詩のように消えた存在になってしまいそう……。
そんな中、窓越しから空を見上げている女性が事務所にいた。
銀色の髪の毛を持った女性、四条貴音さん。
暑さなんてものとしないまま、月を眺めている。
今日は夜になっても暑いままで。
冷たいお茶がくれた心地よさはすぐに熱に変わり、汗が頬を沿って落ちてくる。
再び、お茶を口に含ませる。さっき飲んだときより、満足のいく安らぎは与えてくれなかった。
本当にこのまま溶けてしまいそう……。
この詩のように消えた存在になってしまいそう……。
そんな中、窓越しから空を見上げている女性が事務所にいた。
銀色の髪の毛を持った女性、四条貴音さん。
暑さなんてものとしないまま、月を眺めている。
4: 2014/04/13(日) 22:25:26.34 ID:97h1V6ZE0
「凄い……綺麗……」
思ったことが口に出てしまう。
お淑やかで可憐でそして、ミステリアスで……。
銀色の髪からして、本当に月から来たお姫様のような感じがして。
彼女は彼女自身の行動に自信が溢れているのが感じ取れる。
私はどうだろうか。
正反対の人間。
彼女が月なら、私は雪。
月が出ているときは雪は降らない。
そう、空ではどうやっても交わらない存在。
地上に落ちた雪は夜になると月を見上げて羨むしかない。
本当に、羨ましい……。
思ったことが口に出てしまう。
お淑やかで可憐でそして、ミステリアスで……。
銀色の髪からして、本当に月から来たお姫様のような感じがして。
彼女は彼女自身の行動に自信が溢れているのが感じ取れる。
私はどうだろうか。
正反対の人間。
彼女が月なら、私は雪。
月が出ているときは雪は降らない。
そう、空ではどうやっても交わらない存在。
地上に落ちた雪は夜になると月を見上げて羨むしかない。
本当に、羨ましい……。
5: 2014/04/13(日) 22:26:28.33 ID:97h1V6ZE0
「雪歩、どうしたのです?」
「!? い、いや、なんでもないですぅ」
び、びっくりしたぁ……。
いつの間にか四条さんの顔が私の顔の近くに来ていた。
独特の香りが鼻を通って……、綺麗な女性ってこんなにもいいにおいがするの……かな?
「まさか、また、雪歩自身のことを蔑んでいるのですか?」
心の奥底に生まれた気持ちが四条さんに読み取られる。
じっと、私の顔を見てくる四条さん。
猫の前の鼠、鵜の前の鮎。
体が強張って震え、視線を外したくなる。
「!? い、いや、なんでもないですぅ」
び、びっくりしたぁ……。
いつの間にか四条さんの顔が私の顔の近くに来ていた。
独特の香りが鼻を通って……、綺麗な女性ってこんなにもいいにおいがするの……かな?
「まさか、また、雪歩自身のことを蔑んでいるのですか?」
心の奥底に生まれた気持ちが四条さんに読み取られる。
じっと、私の顔を見てくる四条さん。
猫の前の鼠、鵜の前の鮎。
体が強張って震え、視線を外したくなる。
6: 2014/04/13(日) 22:27:10.88 ID:97h1V6ZE0
「どうなのです、雪歩?」
「……はい」
彼女を見ていると自信をなくしてしまう。
彼女みたいに自信を持ちたい、けどなれるわけがない。
一生かかっても無理だ……。
そう決めつけてしまっている私がいる。
そして、一瞬の静寂が流れる。
「では、雪歩。少し散歩に行きませんか?」
「……はい」
彼女を見ていると自信をなくしてしまう。
彼女みたいに自信を持ちたい、けどなれるわけがない。
一生かかっても無理だ……。
そう決めつけてしまっている私がいる。
そして、一瞬の静寂が流れる。
「では、雪歩。少し散歩に行きませんか?」
7: 2014/04/13(日) 22:28:07.99 ID:97h1V6ZE0
部屋の中は暑かったのに、外はほどよい冷たさの風が流れていて、
体からあふれ出ていた汗は知らない間に引いていた。
「どこにいくのですか?」
「……」
「あ、あの四条さん?」
「……」
答えてくれない。もしかして、嫌われた……とか?
この後、人がいないところで罵倒され、終いには……。
良くないことが頭をよぎる。
少しずつ、少しずつ、人影が無くなっていき――。
体からあふれ出ていた汗は知らない間に引いていた。
「どこにいくのですか?」
「……」
「あ、あの四条さん?」
「……」
答えてくれない。もしかして、嫌われた……とか?
この後、人がいないところで罵倒され、終いには……。
良くないことが頭をよぎる。
少しずつ、少しずつ、人影が無くなっていき――。
8: 2014/04/13(日) 22:28:39.32 ID:97h1V6ZE0
「着きましたよ」
「あ、あの、すみません! わた――」
「しっ、静かに」
四条さんの指が私の唇の止まり、発言を制する。
「もうすぐですよ」
そう言った瞬間だった。
「あ、あの、すみません! わた――」
「しっ、静かに」
四条さんの指が私の唇の止まり、発言を制する。
「もうすぐですよ」
そう言った瞬間だった。
9: 2014/04/13(日) 22:29:30.33 ID:97h1V6ZE0
「……!!」
言葉を失った。
形容できない世界が目の前に広がっていた。
黄緑の光が不規則な軌道で宙に浮きながら点滅し、私を魅了させる。
「蛍の光とは、まこと、雪のようですね……。静かにそして力強く輝く、あなたのようです……」
夏に降る雪と月が一緒に存在している。
月光浴を楽しんでいるように、小さな光たちが踊っていた。
言葉を失った。
形容できない世界が目の前に広がっていた。
黄緑の光が不規則な軌道で宙に浮きながら点滅し、私を魅了させる。
「蛍の光とは、まこと、雪のようですね……。静かにそして力強く輝く、あなたのようです……」
夏に降る雪と月が一緒に存在している。
月光浴を楽しんでいるように、小さな光たちが踊っていた。
10: 2014/04/13(日) 22:30:29.08 ID:97h1V6ZE0
「どうですか、雪歩。貴女は決して弱い光ではありません。
貴女自身の力で輝いているのです。
どうか、自信を持ってください」
四条さんが笑顔で私に囁いた。
四条さんは私を認めてくれている。
それだけで嬉しかった。
その言葉を心の奥底に、目の前に広がる風景をじっくりと脳裏に焼き付けた。
ずっと、ずっと、時間が経つのを忘れて……。
貴女自身の力で輝いているのです。
どうか、自信を持ってください」
四条さんが笑顔で私に囁いた。
四条さんは私を認めてくれている。
それだけで嬉しかった。
その言葉を心の奥底に、目の前に広がる風景をじっくりと脳裏に焼き付けた。
ずっと、ずっと、時間が経つのを忘れて……。
11: 2014/04/13(日) 22:30:59.55 ID:97h1V6ZE0
「あの、四条さん。ありがとうございます。
私、自信を持てるようになりました!
あ、あれ?」
辺りを見渡すと、四条さんの姿は無くなっていた。
ど、どこにいったの!?
と、とりあえず、事務所に戻ろう……。
私、自信を持てるようになりました!
あ、あれ?」
辺りを見渡すと、四条さんの姿は無くなっていた。
ど、どこにいったの!?
と、とりあえず、事務所に戻ろう……。
12: 2014/04/13(日) 22:31:49.67 ID:97h1V6ZE0
「し、四条さん!」
「雪歩、どうでしたか?」
「はい、とっても綺麗でした……。
って、なんで私を置いてくんですかぁ!?」
「雪歩が見惚れていましたので。
雪歩の満足いくまで、待っていようと思っていましたが、
らっぷらぁめんのお湯が出来上がる時間でしたので、
先に帰らせてもらいました」
「……」
……四条さんらしい。
「雪歩、どうでしたか?」
「はい、とっても綺麗でした……。
って、なんで私を置いてくんですかぁ!?」
「雪歩が見惚れていましたので。
雪歩の満足いくまで、待っていようと思っていましたが、
らっぷらぁめんのお湯が出来上がる時間でしたので、
先に帰らせてもらいました」
「……」
……四条さんらしい。
13: 2014/04/13(日) 22:32:18.43 ID:97h1V6ZE0
「雪歩、このお湯でお茶を入れてくれませんか?」
「はい、わかりました」
私はまだ何もできないけど、これから四条さんに少しずつお返しをしていこう。
万が一、四条さんに何かあったら、真っ先に私が駆けつけよう。
「はい、わかりました」
私はまだ何もできないけど、これから四条さんに少しずつお返しをしていこう。
万が一、四条さんに何かあったら、真っ先に私が駆けつけよう。
14: 2014/04/13(日) 22:35:41.98 ID:97h1V6ZE0
「雪歩のお茶はとても心地いいですね」
「そうですか?」
「ええ。飲んでみては?」
四条さんに勧められて、私も飲んでみる。
熱いお茶なのに、不思議と心地よかった。
その心地よさはずっと体から離れず、心を潤してくれているようで。
「ありがとうございます、雪歩」
「こちらこそ、ありがとうございます」
微笑んだ四条さんの表情に反応するかのように、笑顔を返した。
これから、もっと自信を持とう。
これから、頑張って、もっと四条さんに認めてもらう。
だから、今日見た、季節外れに降る雪を私は決して忘れない。
「そうですか?」
「ええ。飲んでみては?」
四条さんに勧められて、私も飲んでみる。
熱いお茶なのに、不思議と心地よかった。
その心地よさはずっと体から離れず、心を潤してくれているようで。
「ありがとうございます、雪歩」
「こちらこそ、ありがとうございます」
微笑んだ四条さんの表情に反応するかのように、笑顔を返した。
これから、もっと自信を持とう。
これから、頑張って、もっと四条さんに認めてもらう。
だから、今日見た、季節外れに降る雪を私は決して忘れない。
15: 2014/04/13(日) 22:36:10.12 ID:97h1V6ZE0
おわり
引用元: 雪歩「季節外れの雪」
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