1: ◆49.TJH/nk6 2014/12/25(木) 17:53:35.81 ID:d+AKASrKo
このSSは

千早「アクアリウム?」

の後日談的作品ですが、読んでなくても大丈夫です

2: 2014/12/25(木) 17:55:09.40 ID:d+AKASrKo
~ギャラリーフェイク展示場内~

千早「……」


サラ(ねえ、フジタ、あのお客さん、この数日、ずっとあの絵を見に来てるヨ)ヒソヒソ

藤田(シッ……)ヒソヒソ

サラ(しかも、アレって……)ヒソヒソ

藤田(話しかけてみるか……上客かもしれんしな)ヒソヒソ

3: 2014/12/25(木) 17:56:12.45 ID:d+AKASrKo
藤田「お客様、その絵がずいぶんお気に入りのようですね?」

千早「あっ、すみません……迷惑でしたか?」

藤田「いえいえ」

千早「……」

藤田「どうなされました?」

千早「あの……このギャラリーに展示してある作品は全部フェイク……なんですよね?」

藤田「はい、当ギャラリーでは、フェイクだけを扱っております」

4: 2014/12/25(木) 17:58:05.80 ID:d+AKASrKo
千早「それなら……この絵を売ってくださいませんか?」

藤田「申し訳ありませんが、このムンクの『月光』は非売品でして……」

千早「そうですか……」シュン

藤田「……余程お気に入りのようですね、差し支えなければ、事情をうかがってもよろしい
   ですか?」

千早「は、はい……」

no title

5: 2014/12/25(木) 17:59:13.94 ID:d+AKASrKo
千早「実は、私、アイドルをやっているんですが……」

サラ「アッ! どこかで見たと思ったら、如月千早ちゃんだヨ! あの歌姫の!」

千早「は、はい……実は最近、表現に行き詰っていて……」

藤田「ほう……貴女は昨年の大晦日以来、順調そのものだと思っていましたが……」

千早「そうなんですが……表現の幅が広がると共に、それまで見えなかった自分の欠点が見
   えるようになって……それで悩んでいた時に、このギャラリーのチケットを貰って、
   それで、この絵を見つけて雷に打たれたような感覚を味わったんです」

藤田「……」

サラ「……」

6: 2014/12/25(木) 18:00:00.60 ID:d+AKASrKo
千早「この絵が側にあれば自分の表現の幅も広がると思ったんですが……」

藤田「あいにく、コレはフェイクの中でも特別な代物ですから……お売りする事は出来ませ
   んが、少々なら解説して差し上げましょうか?」

千早「は、はい、お願いします」

7: 2014/12/25(木) 18:00:58.97 ID:d+AKASrKo
藤田「そもそもムンクは若い時から病弱で、常に氏の不安と葛藤していました」

千早「氏の……不安……」

藤田「この『月光』の左隅にも、喪服の女性が居るでしょう? これはムンクの氏への恐怖
   の現れです」

千早「でも絵全体は青が綺麗で……落ち着いた印象を受けますね」

藤田「その通り、優れた芸術とは、己の葛藤から生まれるものですから」

千早「葛藤……」

藤田「若い表現者がムンクに惹かれるのも納得ですな。
   芸術は、己の葛藤との戦いの繰り返しですよ」

千早「なるほど……分かる気がします」

8: 2014/12/25(木) 18:01:57.04 ID:d+AKASrKo
カランカラン

黒井「藤田玲司はいるか?」

千早「!……黒井社長……」

黒井「おや、誰かと思ったら如月千早か……フン、ここは曲がりなりにも人気のデートスポ
   ットだ、こんなところに居ると芸能記者の誤解を招くぞ?」

千早「……」

黒井「しかも、何を見ているかと思えば、ムンクか……いかにも若い者が好きそうな、青臭
   い絵だ」

千早「……」

9: 2014/12/25(木) 18:03:01.64 ID:d+AKASrKo
藤田「諍いはやめてもらいたいですな、これでもギャラリーですので、他のお客様の迷惑
   になります」

黒井「フン……貴様が藤田か」

藤田「はい、当ギャラリーの館長の藤田玲司です、貴方は?」

黒井「961プロの社長をしている、黒井崇夫だ」

藤田「ほう、業界大手の……して、当ギャラリーに何か御入用で?」

黒井「無論、そこに飾ってあるルノワールの『ピアノに向かう二人の若い娘』に用がある」

藤田「ああ……アレですか……」

10: 2014/12/25(木) 18:04:29.91 ID:d+AKASrKo
黒井「ここがフェイクを扱うギャラリーというのを隠れ蓑にして、裏で盗品や、表に出せな
   い品物を扱っているというのは知っている」

藤田「……」

黒井「あのルノワールは本物と見た……どうだ? 私に売らんか? 金に糸目は付けん」

サラ(ヤナ感じネー……)

藤田「あの絵でしたら……」

11: 2014/12/25(木) 18:05:33.54 ID:d+AKASrKo
藤田「三十万でお売りすることができますが」

黒井「さ、さんじゅうまん~!?」

サラ「!」

千早「?」

黒井「バカな……これがフェイクだというのか……」

藤田「ああ、倉庫にある三億の絵を御所望で?」

黒井「そ、それだ! それを譲ってくれ! 金なら用意できる!」

藤田「では、契約成立ということで」

12: 2014/12/25(木) 18:06:42.50 ID:d+AKASrKo
千早「何だかお邪魔みたいなので、私は帰りますね?」

藤田「ああ、如月さん、気が変わりました……『月光』のフェイク、お売りしましょう」

千早「! ほ、本当ですか? そ、それで、おいくらですか?」

藤田「三百万」

サラ「!!」

千早「三百万……大金ですね……」

藤田「と、言いたいところですが、割引しましょう」

千早「?」

13: 2014/12/25(木) 18:07:54.05 ID:d+AKASrKo
藤田「貴女のクリスマスコンサートのS席二人分のチケット……それと交換でいかがで
   す?」

千早「は、はい! 事務所にお願いして手配してもらいます!」

藤田「その代わり……最高の歌を聞かせてくださいよ、そうじゃなかったら、『月光』、返し
   てもらいますぜ」

千早「!……は、はい! 最高のパフォーマンスをお見せします!」

藤田「では、契約成立、ということで」

14: 2014/12/25(木) 18:08:59.03 ID:d+AKASrKo
~クリスマスコンサート会場、S席~

サラ「フジタ、いい加減、ギャラリーに本物混ぜて展示するの止めた方がいいヨ?」

藤田「フフ……ああして、『本物』を見分ける事が出来る客を見つけるのが俺の楽しみなん
   だ……いいじゃないか」

サラ「趣味悪いネー」

藤田「芸術は真に審美眼を持った者の物だ……『月光』も如月さんに買ってもらって光栄だ
   ろうよ」

サラ「アレ、億は下らないのにネー」

15: 2014/12/25(木) 18:10:09.74 ID:d+AKASrKo
藤田「別の所で回収できたからいいじゃないか」

サラ「ああ、黒井シャチョーに売ったアレネ……アレ、フジタが作ったフェイクじゃん」

藤田「俺は一言もフェイクだとは言っとらん」

サラ「フジタ、いつか地獄に落ちるヨー?」

藤田「地獄ならとうに落ちてるさ……芸術という名の地獄にな」

サラ「キザったらしいネー」

藤田「フフ……お、如月さんが出てきたぞ、いい顔をしている……」

サラ「……そうネー……」

藤田「やはり、若い内は悩んでナンボだ、そこから咲く花は美しい……」

サラ「……フジタ」

藤田「ん?」

サラ「メリークリスマス♪」

                      (完)

20: 2014/12/25(木) 23:22:46.94 ID:kvOJK/Jao
懐かしいスレだな
もう内容忘れちゃったから読み直すか

21: 2014/12/26(金) 01:23:46.42 ID:M7PGc99PO
こんなことやってるから金欠なんですぜフジタさん

22: 2014/12/26(金) 18:31:39.00 ID:eVP7UfPfo
カニチャーハンが食いたくなるな

引用元: 千早「ここがギャラリーフェイク……」